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特開2024-19132ECLベース電極、ECLベース電極の製造方法、ECLセンサ、ECLセンサの製造方法、核酸特異的サイト修飾のECL検出方法、及び核酸特異的サイト修飾のECL検出方法に用いられる核酸修飾検出用キット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019132
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ECLベース電極、ECLベース電極の製造方法、ECLセンサ、ECLセンサの製造方法、核酸特異的サイト修飾のECL検出方法、及び核酸特異的サイト修飾のECL検出方法に用いられる核酸修飾検出用キット
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240201BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240201BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240201BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20240201BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20240201BHJP
   C07K 16/44 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
C12M1/00 A ZNA
G01N33/53 M
G01N33/543 575
C12Q1/68 100Z
C12Q1/6876 Z
C07K16/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122747
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】202210897954.1
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515190906
【氏名又は名称】南京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン ハオ
(72)【発明者】
【氏名】シュ チチ
(72)【発明者】
【氏名】ウー シァオティン
(72)【発明者】
【氏名】ヂィー フアンシィェン
(72)【発明者】
【氏名】ウー ヂィエ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QR50
4B063QR54
4B063QR58
4B063QS33
4B063QS39
4B063QX04
4H045AA11
4H045DA76
4H045EA50
(57)【要約】
【課題】感度が高く、特異性が高く、検出限界が低い核酸特異的サイト修飾のECL検出方法を提供することである。
【解決手段】実施形態に係るECL(Electrochemiluminescence)ベース電極の製造方法は、電気触媒溶液と金属ナノ粒子を混合した後、混合した粒子懸濁液を電極の表面に滴下して、電気触媒-金属ナノ粒子で共修飾されたベース電極を得る工程を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気触媒溶液と金属ナノ粒子を混合した後、混合した粒子懸濁液を電極の表面に滴下して、電気触媒-金属ナノ粒子で共修飾されたベース電極を得る工程を含む、
ECL(Electrochemiluminescence)ベース電極の製造方法。
【請求項2】
前記電気触媒は、遷移金属化合物である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記電気触媒は、二セレン化モリブデン(MoSe)である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記金属ナノ粒子は、金(Au)ナノ粒子、銀(Ag)ナノ粒子、白金(Pt)ナノ粒子、銅(Cu)ナノ粒子、コバルト(Co)ナノ粒子、鉄(Fe)ナノ粒子、ニッケル(Ni)ナノ粒子及びそれらの多元合金ナノ粒子のうちの少なくとも一つである、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記金属ナノ粒子は、金(Au)ナノ粒子である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記電極は、ガラス炭素電極、ITO(Indium Tin Oxide)電極、及びスクリーン印刷電極のうちの一つである、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記電極は、ガラス炭素電極である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記電気触媒の剥離時間は、5時間以上である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記電気触媒の剥離時間は、5時間以上25時間未満である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記電気触媒と前記金属ナノ粒子との混合比率は、3.5mg/mLのMoSeと0.5mg/mLのAuNPsとの体積比で1:1~1:9である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記電気触媒と前記金属ナノ粒子との混合比率は、3.5mg/mLのMoSeと0.5mg/mLのAuNPsとの体積比で1:5~1:7である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
電気触媒溶液と金属ナノ粒子で共修飾された界面
を有する、ECLベース電極。
【請求項13】
電気触媒溶液と金属ナノ粒子を混合した後、混合した粒子懸濁液を電極の表面に滴下して、電気触媒-金属ナノ粒子で共修飾されたベース電極を得る工程を含むECLベース電極の製造方法によりECLベース電極を製造する工程と、
末端修飾された捕捉核酸を前記ベース電極の表面に結合させる工程と、
を含む、ECLセンサの製造方法。
【請求項14】
前記末端修飾された捕捉核酸は、メルカプト修飾された捕捉核酸、アミノ修飾された捕捉核酸、又はビオチン修飾された捕捉核酸である、
請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記末端修飾された捕捉核酸は、メルカプト修飾された捕捉核酸である、
請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記捕捉核酸を結合した電極の表面をブロッキング剤でブロッキングする工程をさらに含む、
請求項13に記載の製造方法。
【請求項17】
前記ブロッキング剤は、小分子ブロッキング剤及びタンパク質ブロッキング剤のうち少なくとも一つである、
請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記小分子ブロッキング剤は、6-メルカプト-1-ヘキサノール(MCH)である、
請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記タンパク質ブロッキング剤は、ウシ血清アルブミンである、
請求項17に記載の製造方法。
【請求項20】
電気触媒溶液と金属ナノ粒子で共修飾された界面を有するECLベース電極と、
前記ECLベース電極の表面に結合され、末端修飾された捕捉核酸と、
を有する、ECLセンサ。
【請求項21】
電気触媒溶液と金属ナノ粒子で共修飾された界面を有するECLベース電極と、前記ECLベース電極の表面に結合され、末端修飾された捕捉核酸とを有するECLセンサの表面に被験試料を滴下し、捕捉核酸により標的核酸を前記ECLセンサの表面に捕捉する第1工程と、
抗核酸修飾抗体を滴下し、前記標的核酸上の核酸特異的サイトに結合させる第2工程と、
ECLナノプローブを添加し、前記標的核酸を検出信号標識する第3工程と、
第3工程で得られたECLセンサを、共反応剤を含む検出溶液に浸してECL信号測定を行う第4工程と
を含む、核酸特異的サイト修飾のECL検出方法。
【請求項22】
前記ECLナノプローブは、二次抗体修飾済の金属ドープ無機酸化物ナノ粒子であり、
前記二次抗体は、前記抗核酸修飾抗体と親和結合するものである、
請求項21に記載の検出方法。
【請求項23】
前記無機酸化物ナノ粒子は、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、又は酸化鉄が被覆されているナノ粒子、二酸化ケイ素ナノ粒子、二酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、又は酸化鉄ナノ粒子である、
請求項22に記載の検出方法。
【請求項24】
前記無機酸化物ナノ粒子は、二酸化ケイ素ナノ粒子である、
請求項22に記載の検出方法。
【請求項25】
前記金属ドープ無機酸化物ナノ粒子は、金属ドープ無機酸化物ナノ粒子がトリス(ビピリジン)ルテニウム(II)錯体イオン(Ru(bpy) 2+)でドープされている二酸化ケイ素ナノ粒子である、
請求項22に記載の検出方法。
【請求項26】
前記共反応剤は、トリプロピルアミンである、
請求項21に記載の検出方法。
【請求項27】
前記核酸修飾は、核酸のメチル化修飾、メチロール化修飾、又はホルミル化修飾である、
請求項21に記載の検出方法。
【請求項28】
検出溶液のpHは、6.0以上であり、
捕捉核酸の濃度は、1nM~400nMであり、
捕捉核酸のインキュベーション時間は、5分以上であり、
標的核酸のインキュベーション時間は、5分以上であり、
抗核酸修飾抗体の濃度は、1μg/mL以上であり、
抗核酸修飾抗体のインキュベーション時間は、5分以上であり、
ECLナノプローブの濃度は、1μg/mL以上であり、
ECLナノプローブのインキュベーション時間は、5分以上である、
請求項21に記載の検出方法。
【請求項29】
検出溶液のpHは、6.5~8.5であり、
捕捉核酸の濃度は、20nM~100nMであり、
捕捉核酸のインキュベーション時間は、10分以上であり、
標的核酸のインキュベーション時間は、10分以上であり、
抗核酸修飾抗体の濃度は、2μg/mL以上であり、
抗核酸修飾抗体のインキュベーション時間は、10分以上であり、
ECLナノプローブの濃度は、2μg/mL以上であり、
ECLナノプローブのインキュベーション時間は、10分以上である、
請求項21に記載の検出方法。
【請求項30】
電気触媒溶液と金属ナノ粒子で共修飾された界面を有するECLベース電極と、
前記ECLベース電極の表面に結合され、末端修飾された捕捉核酸と、
抗核酸修飾抗体と、
ECLナノプローブと、
検出溶液と
を含む、核酸特異的サイト修飾のECL検出方法に用いられる核酸修飾検出用キット。
【請求項31】
電気触媒と金属ナノ粒子で共修飾された、
ECLベース電極。
【請求項32】
グラフェンを含まない、
請求項31に記載のECLベース電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、ECLベース電極、ECLベース電極の製造方法、ECLセンサ、ECLセンサの製造方法、核酸特異的サイト修飾のECL検出方法、及び核酸特異的サイト修飾のECL検出方法に用いられる核酸修飾検出用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
核酸、例えばDNA及びRNAに大量の化学修飾が存在し、これらの化学修飾は核酸配列を変更しない前提で、調節メカニズムとして遺伝子の発現を動的に調節する。
【0003】
DNAメチル化(DNA methylation)はシトシンの5番目の炭素原子に発生し、安定的に遺伝できる見かけの修飾であり、動植物ゲノムに広く存在する。DNAメチル化は哺乳動物の成長発育過程において、遺伝子サイレンシング、ゲノムインプリンティング(genomic imprinting)、X染色体不活性化及び疾患の発生等を含む様々な生理学的過程に広く関与する。
【0004】
一部の腫瘍の発生は特定の遺伝子の高メチル化イベントに伴い、かつ遺伝子の局所的な高メチル化イベントは細胞の悪性増殖より早く発生するため、特定の遺伝子のメチル化レベルの検出は腫瘍早期予測及び診断の重要な根拠の一つとすることができる。例えば、早期の結腸癌(CRC:colorectal cancer)スクリーニング検出は見かけの遺伝的バイオマーカーに基づいて行われ、FDA(Food and Drug Administration)は既に特定遺伝子プロモーターCpGメチル化の増加を検出することによりCRCの早期スクリーニング及び補助診断を行うことを許可した(非特許文献1参照)。また、異なる腫瘍種類は、高メチル化を発生する癌抑制遺伝子が異なり、例えば卵巣癌において、癌抑制遺伝子であるRASSF1A、BRCA1、APC、CDKN2A等が高メチル化状態を呈し、乳癌において、癌抑制遺伝子であるPCDHB15、WBSCRF17、IGF1、GYPC等が高メチル化状態を呈する(非特許文献2参照)。これらの特定の腫瘍抑制遺伝子のメチル化レベルを検出することにより、特定の腫瘍のスクリーニング及び診断を強化することだけでなく、腫瘍に対する決定的治療の効果評価及び予後観察にも役立つ。
【0005】
現在、DNAメチル化検出の標準方法は亜硫酸水素塩処理(バイサルファイト処理)であり、具体的に、亜硫酸水素塩、例えば亜硫酸水素ナトリウムでDNAを処理することにより、DNA中のシトシン(C)をウラシル(U)に変換することができる。これに対し、メチル化された5-メチルシトシン(5-mC)は変化しないように保持され、これにより次のPCR又はシークエンシングにより5-mCとCを区別することができ、メチル化DNAの検出を実現できる。
【0006】
しかし、亜硫酸水素塩処理はストリンジェントな化学的及び温度条件下で核酸の前処理を行う必要があり、かつPCR又はシークエンシングの検出操作が複雑であり、専門技術者及び専門的な装置を必要とし、それにより該検出方法の効率が低く、時間がかかり、コストが高くなる。したがって、簡単で、迅速で、高感度のメチル化DNA検出方法を開発する必要がある。
【0007】
最近では、特異的抗体がメチル化部位を認識することによるメチル化DNA検出方法が注目されている。このような検出方法は核酸の前処理を必要とせず、かつ特異的抗体に異なるプローブを標識することにより、電気化学的に(例えば非特許文献3)、蛍光等の検出を行うことができる。
【0008】
近年開発されたECL(Electrochemiluminescence)技術は既に生物学的分析、例えば腫瘍タンパク質標識物質の検出に広く応用されている(例えば非特許文献4)。ECL技術は電気化学的原理を利用して電極表面で電気化学反応を行って励起状態を生成して特異的な発光を引き起こす方法である。ECLはエレクトロルミネセンスであるため、蛍光と比べて、励起光源を追加する必要がなく、かつ光退色及び光干渉等の影響がないため、装置が簡単であり、コストが低く、背景信号が低く、検出感度が高いなどの利点を有する。
【0009】
しかしながら、現在のECL検出方法の感度、特異性などの検出性能をさらに向上する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Yvette N Lamb et al.,Epi proColon 2.0 CE:A Blood-Based Screening Test for Colorectal Cancer,Mol Diagn Ther. 2017 Apr; 21(2): 225-232
【非特許文献2】Tingting Hong, Selective detections of epigenetic modification in DNA, Wuhan University, 2017, Ph.D dissertation
【非特許文献3】Eloy Povedano et al.,Amperometric Bioplatforms To Detect Regional DNA Methylation with Single-Base Sensitivity,Anal. Chem,2020,92,5604-12
【非特許文献4】Xiaoming Zhou et al.,Synthesis, labeling and bioanalytical applications of a tris(2,2`-bipyridyl)Ruthenium(II)-based electrochemiluminescence probe,Nat Protoc 2014 May;9(5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、ECLナノプローブを採用して、特異的抗体のメチル化サイトに対する識別反応を組み合わせて、核酸特異的サイト修飾に対する、簡単で、高感度で、迅速でかつ汎用の電気化学発光検出方法を提供することである。これに基づいて、発明者らは、さらにECL検出信号を増強し、検出感度及び特異性を向上させる等の面で鋭意研究を行った結果、電極表面をナノ機能化修飾することにより、界面増強効果を有するECLベース電極、センサを製造することができ、ECL検出の感度を向上させた。
【0012】
即ち、本実施形態は、界面増強及びナノプローブに基づくECL技術により、感度が高く、特異性が高く、検出限界が低い核酸特異的サイト修飾のECL検出方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態に係るECLベース電極の製造方法は、電気触媒溶液と金属ナノ粒子を混合した後、混合した粒子懸濁液を電極の表面に滴下して、電気触媒-金属ナノ粒子で共修飾されたベース電極を得る工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態のECLベース電極及びECLセンサの製造を示す模式図である。
図2図2は、本実施形態に用いられるECLナノプローブの製造を示す模式図である。
図3図3は、本実施形態のECLセンサを使用した核酸特異的サイト修飾のECL検出を示す模式図である。
図4図4は、本実施形態のECL界面増強のメカニズムを示す模式図である。
図5A図5Aは、実施例1で製造されたECLナノプローブの形態の特徴づけ結果を示す図である。
図5B図5Bは、実施例1で製造されたECLナノプローブの形態の特徴づけ結果を示す図である。
図5C図5Cは、実施例1で製造されたECLナノプローブの形態の特徴づけ結果を示す図である。
図5D図5Dは、実施例1で製造されたECLナノプローブの形態の特徴づけ結果を示す図である。
図6図6は、実施例1で製造されたECLナノプローブのECL性能の特徴づけ結果を示す図である。
図7A図7Aは、実施例1で製造されたECLナノプローブの保存安定性の測定結果を示す図である。
図7B図7Bは、実施例1で製造されたECLナノプローブの保存安定性の測定結果を示す図である。
図8A図8Aは、実施例1で製造されたECLナノプローブ上に結合されているルテニウム分子の個数及び二次抗体の個数の分析結果を示す図である。
図8B図8Bは、実施例1で製造されたECLナノプローブ上に結合されているルテニウム分子の個数及び二次抗体の個数の分析結果を示す図である。
図8C図8Cは、実施例1で製造されたECLナノプローブ上に結合されているルテニウム分子の個数及び二次抗体の個数の分析結果を示す図である。
図9A図9Aは、実施例3で製造されたECLセンサの界面におけるナノ材料の特徴づけ結果を示す図である。
図9B図9Bは、実施例3で製造されたECLセンサの界面におけるナノ材料の特徴づけ結果を示す図である。
図9C図9Cは、実施例3で製造されたECLセンサの界面におけるナノ材料の特徴づけ結果を示す図である。
図10A図10Aは、センサ界面の構築条件を最適化させた結果を示す図である。
図10B図10Bは、センサ界面の構築条件を最適化させた結果を示す図である。
図11A図11Aは、異なる修飾電極における電気化学サイクリックボルタンメトリー(CV)及びECL測定結果を示す図である。
図11B図11Bは、異なる修飾電極における電気化学サイクリックボルタンメトリー(CV)及びECL測定結果を示す図である。
図11C図11Cは、異なる修飾電極における電気化学サイクリックボルタンメトリー(CV)及びECL測定結果を示す図である。
図11D図11Dは、異なる修飾電極における電気化学サイクリックボルタンメトリー(CV)及びECL測定結果を示す図である。
図12図12は、本実施形態のECL検出方法の選択性についての評価結果を示す図である。
図13A図13Aは、実施例3で製造されたセンサの異なるECL検出条件でのECL応答状況を示す図である。
図13B図13Bは、実施例3で製造されたセンサの異なるECL検出条件でのECL応答状況を示す図である。
図13C図13Cは、実施例3で製造されたセンサの異なるECL検出条件でのECL応答状況を示す図である。
図13D図13Dは、実施例3で製造されたセンサの異なるECL検出条件でのECL応答状況を示す図である。
図13E図13Eは、実施例3で製造されたセンサの異なるECL検出条件でのECL応答状況を示す図である。
図13F図13Fは、実施例3で製造されたセンサの異なるECL検出条件でのECL応答状況を示す図である。
図13G図13Gは、実施例3で製造されたセンサの異なるECL検出条件でのECL応答状況を示す図である。
図13H図13Hは、実施例3で製造されたセンサの異なるECL検出条件でのECL応答状況を示す図である。
図14A図14Aは、最適条件で標的核酸をECL検出した結果を示す図である。
図14B図14Bは、最適条件で標的核酸をECL検出した結果を示す図である。
図15図15は、本実施形態のECL検出方法により異なる試料溶液をECL検出した結果を示す図である。
図16図16は、異なるバッチで製造されたセンサにより10 pMの標的核酸を繰り返し検出した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して具体的な実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明は本実施形態の発明構想を説明するためだけであり、本実施形態を限定するものではない。
【0016】
本実施形態は、界面増強及びナノプローブに基づく核酸特異的サイト修飾の電気化学発光(ECL)検出方法、ECL検出方法に用いられるベース電極、センサ及びそれらの製造方法、並びにキット等を提供する。
【0017】
本実施形態に係る核酸特異的サイト修飾の検出は、核酸のハイブリダイゼーション捕捉及び特異的抗体の修飾サイト、例えばメチル化サイトに対する識別・標識により実現されるため、従来の検出方法にある核酸の前処理及びPCR増幅過程を必要とせず、方法が簡単であり、検出効率が高い。また、本実施形態は電気触媒と金属ナノ粒子でベース電極を共修飾しECL増強界面を構築するため、ECL信号を有効に向上させた。また、本実施形態は界面増強とナノプローブとを組み合わせた二重増幅ポリシにより、ECL方法の検出感度を大幅に向上させ、核酸特異的サイト修飾に対する検出限界はfMレベルまでに達することができる。また、本実施形態は核酸特異的サイト修飾の検出に汎用性を有し、異なる捕捉核酸及び異なる特異的抗体を設計することにより、異なる標的核酸特異的サイト修飾を検出することができる。
【0018】
(ECLベース電極及びECLセンサ)
一つの実施態様は、電気触媒溶液と金属ナノ粒子を混合した後、混合した粒子懸濁液を電極の表面に滴下して、電気触媒-金属ナノ粒子で共修飾されたベース電極を得る工程を含む、ECLベース電極の製造方法に関する。
【0019】
本実施形態に用いられる電気触媒としては、特に限定されず、二次元ナノ材料を使用することができる。二次元ナノ材料は、良好な機械的、熱、電子性能及び高い触媒活性を有するため注目されている。二次元ナノ材料として、具体的に、遷移金属化合物であってもよく、例えば遷移金属二硫化物である。遷移金属二硫化物として、具体的には、二硫化モリブデン(MoS)、二硫化タングステン(WS)、二セレン化モリブデン(MoSe)、二セレン化タングステン(WSe)などが挙げられる。その中で、好ましくは二セレン化モリブデン(MoSe)を使用する。
【0020】
本実施形態に用いられる金属ナノ粒子としては、特に限定されず、例えば金(Au)ナノ粒子、銀(Ag)ナノ粒子、白金(Pt)ナノ粒子、銅(Cu)ナノ粒子、コバルト(Co)ナノ粒子、鉄(Fe)ナノ粒子、ニッケル(Ni)ナノ粒子及びそれらの多元合金ナノ粒子のうちの少なくとも一つである。その中で、好ましくは金(Au)ナノ粒子を使用する。
【0021】
なお、本実施形態で用いられる電気触媒と金属ナノ粒子は、ベース電極を製造する時に製造することができ、市販品をそのまま使用することもできる。
【0022】
本実施形態に用いられる電極としては、特に限定されず、ECL検出における一般的な電極、例えばガラス炭素電極(GCE)、ITO(Indium Tin Oxide)電極、及びスクリーン印刷電極(SPE)等のうちの一つを使用することができる。その中で、好ましくはガラス炭素電極(GCE)を使用し、より好ましくは白金ワイヤ電極、Ag/AgCl参照電極及びガラス炭素作用電極(GCE)が配置されている標準三電極システムを使用する。
【0023】
より高いECL信号強度を得る点から、好ましくはベース電極の界面の構築条件、例えば電気触媒の剥離時間、電気触媒と金属ナノ粒子との混合比率などを最適化する。
【0024】
電気触媒の剥離時間とは、合成された遷移金属二硫化物を二次元ナノシート状の構造までに超音波で分散する時間をいう。電気触媒の剥離時間について、特に限定されず、均一な遷移金属二硫化物の二次元ナノシートを得ることができればよく、特に限定されない。例えば5時間以上であってもよく、好ましくは5~25時間であり、より好ましくは10~20時間であり、特に好ましくは10時間である。
【0025】
電気触媒と金属ナノ粒子との混合比率について、本実施形態のECLベース電極を得ることができれば、特に限定されない。例えば3.5mg/mLのMoSeと0.5 mg/mLのAuNPsとの体積比で、1:1~1:9であってもよく、好ましくは1:5~1:7であり、より好ましくは1:6である。
【0026】
これにより、本実施形態はさらに上記製造方法により製造されたECLベース電極に関する。当該ECLベース電極は、電気触媒と金属ナノ粒子で共修飾されたものである。本実施形態において、電気触媒は、二次元ナノシート状の構造に分散することによりECL電極に直接に結合することができる。言い換えると、本実施形態において、電気触媒は、他の層状構造、例えばグラフェンを介することなくECL電極に直接に結合することができる。したがって、本実施形態は、ECL検出用ベース電極をより簡便かつ容易に得ることができる。
【0027】
一つの実施態様はさらに、上記製造方法によりECLベース電極を製造する工程と、修飾された捕捉核酸を前記ベース電極の表面に結合させる工程と、を含むECLセンサの製造方法に関する。言い換えると、ECLセンサの製造方法は、電気触媒溶液と金属ナノ粒子を混合した後、混合した粒子懸濁液を電極の表面に滴下して、電気触媒-金属ナノ粒子で共修飾されたベース電極を得る工程を含むECLベース電極の製造方法によりECLベース電極を製造する工程と、末端修飾された捕捉核酸を前記ベース電極の表面に結合させる工程とを含む。
【0028】
前記捕捉核酸は標的核酸に対して設計され、標的核酸と相補的な核酸配列を有し、両者が安定で特異的にハイブリダイゼーションすることができる。該捕捉核酸は本分野の一般的な方法により合成することができ、市販の市販品をそのまま使用することもできる。
【0029】
捕捉核酸を修飾するのは、捕捉核酸が修飾基を介して前記ベース電極に固定できるようにさせるためである。修飾方式としては、本分野の一般的な様々な修飾方式を採用することができ、特に限定されず、例えばメルカプト修飾、アミノ修飾、ビオチン化修飾などを採用することができる。その中で、メルカプト修飾は最も慣用であるため、好ましい。言い換えると、末端修飾された捕捉核酸は、メルカプト修飾された捕捉核酸、アミノ修飾された捕捉核酸、又はビオチン修飾された捕捉核酸である。
【0030】
本実施形態のECLセンサの製造方法は、前記捕捉核酸を結合した電極の表面をブロッキング剤でブロッキングする工程をさらに含んでいてもよい。具体的には、捕捉核酸を前記電極に結合させた後に、ブロッキング剤で電極の表面上の非特異的サイトをブロッキングする。前記ブロッキング剤として、本分野の一般的なブロッキング剤を採用することができ、特に限定されず、本分野の一般的なDNAセンサの表面及びタンパク質センサの表面を構築する方法との点から、好ましくは小分子ブロッキング剤及びタンパク質ブロッキング剤のうち少なくとも一つを使用する。小分子ブロッキング剤としては、例えば6-メルカプト-1-ヘキサノール(MCH)、メルカプトエチレングリコール(HS-(CH11-EG-OH、OEG)、メルカプトプロピオン酸(MPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)などを用いることができる。その中で、好ましくは6-メルカプト-1-ヘキサノール(MCH)を使用する。タンパク質ブロッキング剤として、例えばウシ血清アルブミン(BSA)、動物血清、脱脂乳粉、ヘパリン、サケ精子DNA等を使用することができる。その中で、好ましくはウシ血清アルブミン(BSA)を使用する。
【0031】
図1は、本実施形態のECLベース電極及びECLセンサの製造を示す模式図であり、二セレン化モリブデン(MoSe)を電気触媒として、金(Au)ナノ粒子(AuNPs)を金属ナノ粒子として使用する製造例である。
【0032】
図1に示すように、まず二セレン化モリブデン(MoSe)及び金(Au)ナノ粒子(Au NPs)を準備し、両者を混合した後に電極に滴下することにより、MoSe/AuNPsで共修飾されたベース電極を得る。
【0033】
さらに、MoSe/AuNPsで共修飾されたベース電極の表面に修飾された捕捉核酸を添加し、捕捉核酸を前記ベース電極の表面に結合させることにより、捕捉核酸が結合されているECLベース電極、すなわち本実施形態のECLセンサを得る。つまり、ECLセンサは、電気触媒溶液と金属ナノ粒子で共修飾された界面を有するECLベース電極と、前記ECLベース電極の表面に結合され、末端修飾された捕捉核酸とを有する。
【0034】
上記のように得られたECLセンサの表面をさらにブロッキング剤、例えば小分子ブロッキング剤であるMCH及び/又はタンパク質ブロッキング剤であるBSAでブロッキングしてもよい。好ましくは順次に両者を用いてブロッキングをする。
【0035】
本実施形態のECLベース電極及びECLセンサは検出する前に製造されてもよく、検出する時に製造されてもよい。
【0036】
本実施形態において、上記電気触媒と金属ナノ粒子との界面増強設計により、電気化学発光システムにおける電極表面の電子移動を効果的に促進し、ECL検出信号を増強することができる。本実施形態の後述する実施例に示すように、二セレン化モリブデンナノ材料(MoSe)/金ナノ粒子(Au NPs)は電子移動を効果的に促進することができ、トリス(ビピリジン)ルテニウム(II)錯体イオン-トリプロピルアミン(Ru(bpy) 2+-TPrA)システムにはECL増強効果を有し、それによりセンサの検出感度を向上させることができる。
【0037】
これにより、一つの実施態様は、上記製造方法により製造されるECLセンサに関する。
【0038】
(核酸特異的サイト修飾のECL検出方法)
一つの実施態様は、上記製造方法により製造されるECLセンサを使用し、且つ、前記ECLセンサの表面に被験試料を滴下し、捕捉核酸により標的核酸を前記センサの表面に捕捉する工程1と、抗核酸修飾抗体を滴下し、前記標的核酸上の核酸特異的サイトに結合させる工程2と、ECLナノプローブを添加し、前記標的核酸を検出信号標識する工程3と、工程3で得られたセンサを、共反応剤を含む検出溶液に入れてECL信号測定を行う工程4とを含む、核酸特異的サイト修飾のECL検出方法に関する。つまり、核酸特異的サイト修飾のECL検出方法は、電気触媒溶液と金属ナノ粒子で共修飾された界面を有するECLベース電極と、前記ECLベース電極の表面に結合され、末端修飾された捕捉核酸とを有するECLセンサの表面に被験試料を滴下し、捕捉核酸により標的核酸を前記ECLセンサの表面に捕捉する第1工程と、抗核酸修飾抗体を滴下し、前記標的核酸上の核酸特異的サイトに結合させる第2工程と、ECLナノプローブを添加し、前記標的核酸を検出信号標識する第3工程と、第3工程で得られたECLセンサを、共反応剤を含む検出溶液に浸してECL信号測定を行う第4工程とを含む。
【0039】
本実施形態は、電気化学発光法により核酸特異的サイト修飾を検出し、前記核酸は、例えばDNA又はRNAである。前記核酸特異的サイト修飾は特に限定されず、例えば核酸のメチル化修飾、メチロール化修飾、又はホルミル化修飾であってもよく、具体的に、例えば、DNAのメチル化修飾(例えば5-メチルシトシンのメチル化、以下、5mCとも記す)、メチロール化修飾(例えば5-メチルシトシンのメチロール化、以下5hmCとも記す)、ホルミル化修飾(例えば5-シトシンのホルミル化、以下5fmCとも記す)、RNAのメチル化修飾(例えばアデニンの6番目のNのメチル化、以下にm6Aとも記す)等である。
【0040】
電気化学発光システムは、発光試薬に応じて主に二種類に分ける:(1)金属錯体電気化学発光システム、(2)縮合環芳香族炭化水素類及びヒドラジド類を含む有機化合物電気化学発光システム。常用の電気化学発光金属錯体は、Ru、Os、Re、Ir、Cr、Pd、Al、Cd、Pt、Mo、Tb、Eu等の金属イオン錯体を含む。そのうち、Ru、Ir、Os、Reの金属錯体が良好な電気化学発光特性を有するため注目されている。
【0041】
Ruの金属錯体において、トリス(ビピリジン)ルテニウム(II)錯体イオン(Ru(bpy) 2+)は水溶性が高く、化学的性能が安定し、酸化還元が可逆的で、発光効率が高く、応用できるpH範囲が広く、電気化学的に再生でき、励起状態寿命が長いなどの特徴により広く応用されている。ここで、Ru(bpy) 2+は、共反応剤であるトリプロピルアミン(TPrA)との反応により低電位条件下でのECL検出が可能となり、Ru(bpy) 2+とトリプロピルアミンTPrAとの反応式は以下のとおりである。
【0042】
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【0043】
本実施形態の電気化学発光検出方法は、好ましくはルテニウム(II)錯体イオン系により行われるが、他の金属錯体イオン系、例えばイリジウム(III)錯体イオン体系などを用いて行うこともできる。
【0044】
前記抗核酸修飾抗体は、標的核酸の特異的サイト修飾に対する特異的抗体(以下一次抗体とも記す)であり、当該抗体は特異的サイト修飾に応じて本分野の抗体の一般的な調製方法により調製されてもよく、市販品を直接に使用してもよい。前記一次抗体は、例えば、DNAのメチル化シトシン(5mC)又はメチロールシトシン(5hmC)に対する抗体である。
【0045】
電気化学発光(ECL)ナノプローブとして、本分野で使用される様々なECLナノプローブを使用することができるが、好ましくは出願人がこの前に提出した中国特許出願202210592343.6に記載の電気化学発光ナノプローブ(以下、ECLナノプローブとも記す)、すなわち二次抗体で修飾された金属ドープ無機酸化物ナノ粒子を使用する。
【0046】
前記ECLナノプローブの調製方法は、金属錯体イオンを無機酸化物ナノ粒子に添加し、金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程と、二次抗体を前記金属添加無機酸化物ナノ粒子に結合させ、二次抗体修飾済の金属添加無機酸化物ナノ粒子を得て、前記二次抗体は前記抗核酸修飾抗体と親和結合するものである工程と、を含む。
【0047】
前記ECLナノプローブの調製には、ナノ材料がキャリアとして使用される。ナノ材料は、巨大な表面積又は多孔質構造を有するため、大量の発光体を搭載して超感度検出に用いられることができる。高安定性、低コスト、及び修飾しやすさという点から、本実施形態に用いられるナノ材料は無機酸化物ナノ粒子を使用することが好ましい。無機酸化物ナノ粒子として、具体的に、二酸化ケイ素ナノ粒子、二酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、酸化鉄ナノ粒子、又は表面に二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄等が被覆されているナノ粒子が挙げられる。そのうち、二酸化ケイ素ナノ粒子がより好ましいである。つまり、前記無機酸化物ナノ粒子は、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化亜鉛、又は酸化鉄が被覆されているナノ粒子、二酸化ケイ素ナノ粒子、二酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、又は酸化鉄ナノ粒子である。
【0048】
前記ECLナノプローブの調製方法は、金属錯体イオンを無機酸化物ナノ粒子に添加する工程を含む。添加方法としては、本分野の常用添加方法、例えば電気化学法、ゾルゲル法、イオン交換法、加水分解沈殿法などを用いることができるが、これに限定されず、金属錯体イオンを無機酸化物ナノ粒子に添加できる任意の方法を用いることができる。
【0049】
前記ECLナノプローブの調製方法は、二次抗体を金属添加無機酸化物ナノ粒子に結合させ、二次抗体修飾済の金属添加無機酸化物ナノ粒子を得る工程をさらに含む。ここで、二次抗体と金属添加無機酸化物ナノ粒子との結合方式は、好ましくは共有結合方式により行われるが、他の方式、例えば静電吸着等を使用することもできる。共有結合を形成する結合の方式としては、具体的に、カルボキシ-アミノ結合、アルデヒド基-アミノ結合等が挙げられる。共有結合を形成する反応について、特に限定されないが、好ましくは室温で反応でき、かつ反応が迅速で、結合効率が高い共有結合反応である。
【0050】
図2は、本実施形態に用いられるECLナノプローブの製造を示す模式図である。図2において、トリス(ビピリジン)ルテニウム(II)錯体イオン(Ru(bpy) 2+)を例とし、EDC/NHS系(1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩)/N-ヒドロキシスクシンイミド系)を用いて二次抗体(以下Abとも記す)を金属添加無機酸化物ナノ粒子に結合させる。具体的に、Ru(bpy) 2+を二酸化ケイ素ナノ粒子に添加し、ルテニウム添加二酸化ケイ素ナノ粒子(以下、Ru@SiOとも記す)を得る。次に、Ru@SiOをカルボキシル化させ、カルボキシル化ルテニウム添加二酸化ケイ素ナノ粒子(以下、COOH-Ru@SiOとも記す)を形成する。次に、EDC/NHS系を用いて二次抗体をCOOH-Ru@SiOに結合させ、二次抗体修飾されたルテニウム添加二酸化ケイ素ナノ粒子(以下、Ab-Ru@SiOとも記す)を形成する。
【0051】
前記ECLナノプローブでは、一つのナノビーズ当たりにいずれも大量の金属錯体イオンを結合させることができるため、電気化学信号を顕著に増幅することができ、それによりECL検出の感度を大幅に向上させることができる。
【0052】
また、前記ECLナノプローブにおいて、1つのナノビーズ当たりにいずれも複数の二次抗体分子を結合させることができ、それによりナノプローブと一次抗体との結合効率を向上させることができる。
【0053】
上記方法により調製されたECLナノプローブが、貯蔵安定性に優れ、例えば常温の保存条件下で10日間以上保存することができる。そのため、本実施形態に用いられるECLナノプローブは、調製後にそのまま使用することができるが、一定の時間を保存した後に必要な時に使用することもできる。
【0054】
前記二次抗体は、核酸特異的サイト修飾に対する一次抗体を識別する。当該二次抗体は、好ましくは一次抗体と核酸特異的サイト修飾との結合特異的部分に対して設計されるものではなく、一次抗体の汎用部分に対して設計されるものである。即ち、本実施形態に用いられる二次抗体は、好ましくは一次抗体の汎用部分を識別するタンパク質である。前記二次抗体は特に限定されず、本分野の一般的な抗体の調製方法により調製することができ、市販品を直接に使用することもできる。なお、汎用部分は、定常領域とも呼ばれる。
【0055】
これにより、本実施形態は界面増強とナノプローブとを組み合わせた二重増幅ポリシにより、ECL方法の検出感度を大幅に向上させ、核酸特異的サイト修飾の検出限界はfMレベルまでに低減することができる。
【0056】
図3は、本実施形態のECLセンサを使用した核酸特異的サイト修飾のECL検出を示す模式図である。
【0057】
図3に示すように、標的核酸を含有する可能性のある被験試料を本実施形態のECLセンサに滴下し、捕捉核酸が特異的ハイブリダイゼーションにより標的核酸を前記センサのベース電極の表面に捕捉する。次に、抗核酸修飾抗体を添加し、該抗体は前記標的核酸上の核酸特異的サイトと結合する。次に、センサ界面にECLナノプローブを添加し、ナノプローブにおける二次抗体の上記抗核酸修飾抗体への識別により、標的核酸を検出信号標識する。以上のようにして得られたセンサを、共反応剤を含む検出溶液に入れてECL信号測定を行う。
【0058】
高いECL信号を得る点から、好ましくはECL検出条件を最適化する。ECL検出条件としては、例えばECL検出溶液のpH、捕捉核酸の濃度、捕捉核酸のインキュベーション時間、標的核酸のインキュベーション時間、一次抗体の濃度、一次抗体のインキュベーション時間、ECLナノプローブの濃度、ECLナノプローブのインキュベーション時間などが挙げられる。
【0059】
ECL検出溶液のpHとして、6.0以上であってもよく、好ましくは6.5~8.5であり、より好ましくは7.5~8.0であり、具体的には例えば6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5等であってもよい。
【0060】
捕捉核酸の濃度として、1 nM~400 nMであってもよく、好ましくは20 nM~100 nMであり、より好ましくは30 nMであり、具体的には例えば1 nM、10 nM、30 nM、40 nM、50 nM、60 nM、70 nM、80 nM、90 nM、100 nM、200 nM、300 nM、400 nM等であってもよい。
【0061】
捕捉核酸インキュベーション時間としては、5分間以上であってもよく、好ましくは10分間以上であり、より好ましくは20分間以上であり、さらに好ましくは50分間であり、具体的には例えば10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間等であってもよい。
【0062】
標的核酸のインキュベーション時間としては、5分間以上であってもよく、好ましくは10分間以上であり、より好ましくは20分間以上であり、さらに好ましくは30分間であり、具体的には例えば10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間等であってもよい。
【0063】
一次抗体の濃度としては、1μg/mL以上であってもよく、好ましくは2μg/mL以上であり、より好ましくは3μg/mLであり、具体的には例えば1μg/mL、2μg/mL、3μg/mL、4μg/mL、5μg/mL、6μg/mL、7μg/mL、8μg/mL等であってもよい。
【0064】
一次抗体のインキュベーション時間としては、5分間以上であってもよく、好ましくは10分間以上であり、より好ましくは20分間以上であり、さらに好ましくは40分間であり、具体的には例えば5分間、10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間等であってもよい。
【0065】
ECLナノプローブの濃度として、1μg/mL以上であってもよく、好ましくは2μg/mL以上であり、より好ましくは6μg/mL~12μg/mLであり、さらに好ましくは8μg/mL~10μg/mLであり、最も好ましくは8μg/mLであり、具体的には例えば2μg/mL、3μg/mL、4μg/mL、5μg/mL、6μg/mL、7μg/mL、8μg/mL、9μg/mL、10μg/mL、11μg/mL、12μg/mL等であってもよい。
【0066】
ECLナノプローブのインキュベーション時間として、5分間以上であってもよく、好ましくは10分間以上であり、より好ましくは20分間以上であり、さらに好ましくは30分間以上であり、具体的には例えば10分間、20分間、30分間、40分間、50分間、60分間等であってもよい。
【0067】
本実施形態において、ECLナノプローブ及びECLセンサを利用することにより、ECLの検出信号を増強し、ECLの検出感度を大幅に向上させることができる。本実施形態の実施例に示すように、本実施形態の発明者らは本実施形態のECL界面増強のメカニズムを鋭意研究し、且つそのメカニズムを以下のように推測する。
【0068】
図4は、本実施形態のECL界面増強のメカニズムを示す模式図である。図4に示すように、センサ界面上のAuNPsはRu(bpy) 2+とベース電極の電子伝達を促進することにより、Ru(bpy) 3+の酸化生成を促進することができる。一方では、センサ界面上のMoSeはTPrAの酸化準位を低下させ、TPrAが電子を失うことを促進してラジカル(TPrA・)を生成する。したがって、Ru(bpy) 3+及びTPrA・はセンサ界面で効率的に生成され、Ru(bpy) 3+及びTPrA・はさらに反応して励起状態のRu(bpy) 2+を生成し、ECL信号を生成することができる。AuNPs/MoSe/GCEセンシング電極におけるRu(bpy) 3+及びTPrA・の効率的な生成に役立ち、Ru(bpy) 2+も効率的に生成することができ、最終的に増強されたECL信号を得る。
【0069】
また、一つの実施態様は、本実施形態のECLベース電極、又はECLセンサと、必要に応じて修飾された捕捉核酸と、抗核酸修飾抗体と、ECLナノプローブと、検出溶液を含む、本実施形態のECL検出方法に用いられる核酸修飾検出用キットに関する。
【0070】
キットには、上述のECLベース電極、ECLセンサ、抗核酸修飾抗体及びECLナノプローブに加え、使用目的に応じて必要な各種の試薬、例えばブロッキング剤及び取扱説明書等を含むことができる。つまり、核酸特異的サイト修飾のECL検出方法に用いられる核酸修飾検出用キットは、電気触媒溶液と金属ナノ粒子で共修飾された界面を有するECLベース電極と、前記ECLベース電極の表面に結合され、末端修飾された捕捉核酸と、抗核酸修飾抗体と、ECLナノプローブと、検出溶液とを含む。
【0071】
ECL信号の有無及び強度に基づいて検出される試料の核酸特異的サイト修飾に対して定性及び定量分析を行うことができ、例えば反応系においてECL信号が検出されない場合、検出される試料に核酸特異的サイト修飾が含まれなく、上記複合物が形成されずに電気化学発光信号を生成することができないと判断する。また、本実施形態の実施例において検証されているように、電気化学発光の強度とメチル化DNA濃度の対数が線形関係を呈するため、電気化学発光の強度に基づいてメチル化DNAを定量分析することができる。
【0072】
(実施例)
以下に実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、これらの実施例は例示に過ぎず、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0073】
本実施例で使用されている全ての試薬はいずれも分析純度レベルであり、その販売先及び略語は以下のとおりである。
【0074】
トリス(2,2’-ビピリジン)ジクロロルテニウム(II)六水和物(Ru(bpy) 2+)、Triton X-100、Tween-20、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)及び2-(N-モルホリン)エタノールスルホン酸(MES)はSigma(中国、上海)から購入される。
【0075】
カルボキシエチルシラントリオール塩(Carboxyethylsilanetriol Na salt、CTES)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及びトリ-n-プロピルアミン(TPrA)はJ&K Scientific(中国、上海)から購入される。
【0076】
シクロヘキサンはAladdin(中国、上海)から購入される。
【0077】
n-ヘキサノールはTCI chemicals(中国、上海)から購入される。
【0078】
アンモニア水はMacklin(中国、上海)から購入される。
【0079】
アセトンは国薬(中国、上海)から購入される。
【0080】
ウシ血清アルブミン(BSA)はKeyGEN BioTECH(中国、江蘇)から購入される。
【0081】
抗5-メチルシトシン抗体(製品番号:ab10805、Ab-5mC)、ウサギ抗マウスIgG抗体(製品番号:ab 6709、Ab)はAbcam(中国、上海)から購入される。
【0082】
Bradford法タンパク質定量検出キットはSangon Biotech(中国、上海)から購入される。
【0083】
超純水は、Millipore社の水浄化システム(抵抗率≧18 MΩ・cm)から得られる。
【0084】
(実施例1:ECLナノプローブ(Ab-Ru@SiO)の調製)
以下のステップに従い、Ru@SiO、COOH-Ru@SiO及びAb-Ru@SiOをそれぞれ調製する。
【0085】
まず、50 mL丸底フラスコを磁気撹拌器上に置き、高速磁気撹拌を行い、順に7.50 mLのシクロヘキサン、1.80 mLのn-ヘキサノール及び1.77 mLのTriton X-100を添加し、15分間混合・撹拌する。次に、上記混合物に340μLの40 mMの[Ru(byp)2+水溶液を添加し、30分間混合・撹拌する。その後、100μLのTEOSを入れて30分間撹拌した。次に、60μLのアンモニア水(28-30%wt)を該混合物に添加し、遮光条件下24 h撹拌し、Ru@SiOを得た。
【0086】
続いて、50μLのCTES(カルボキシル基修飾用)を添加し、遮光条件下7h反応させ、COOH-Ru@SiOを得た。その後、アセトンで沈殿(10000 rpm、10分間)を分離し、遠心分離して上清を捨て、沈殿物をそれぞれエタノールと超純水で二回洗浄し、超音波で分散し、遠心分離して上清を除去した。最後に、得られた沈殿物を超純水に分散させ、一部を取って乾燥し重量を秤量し、残りを4°C、遮光条件下で保存する。
【0087】
10μLの50 mg/mLのCOOH-Ru@SiO溶液を1.5 mLの遠心管に入れ、500μLのEDC/NHS溶液(EDC及びNHS溶液がいずれも50 mg/mLであり、25 mMのpH5.5のMES緩衝液に調製される)を添加し、室温で35分間振動した後、遠心分離して上清を除去し、次に10 mMのPH7.4のPBS(リン酸緩衝液:NaHPO及びNaHPOで調製される)で遠心し洗浄する(12000 rpm、5分間)。その後、カルボキシル化されたCOOH-Ru@SiOを1 mLの10 mMのPBSに分散させ、20μLの2 mg/mLのAbを添加し、揺動床(60 rpm)に置き、室温で4 h反応させる。その後に、順に25 mMのMES及び10 mMのPBSを用いて4℃で遠心し洗浄し(12000 rpm、5分間)、上清を捨て、Ab-Ru@SiOを得た。最後に、それを2%BSAと0.05%Tween-20を含有する10 mM PH7.4のPBSに分散させ、4℃遮光条件下保存する。
【0088】
(実施例2:実施例1で製造されたECLナノプローブの特徴づけ)
(1)ナノプローブの形態の特徴づけ
透過型電子顕微鏡、動的光散乱法、Zeta電位測定及び赤外線(FT-IR)分光法を用いて、実施例1で得られたRu@SiO、COOH-Ru@SiO及びAb-Ru@SiOナノプローブの形態をそれぞれ測定し、その結果を図5A~5Dに示す。図5A~5Dは、実施例1で製造されたECLナノプローブの形態の特徴づけ結果を示す図である。図5Aには、実施例1で得られたCOOH-Ru@SiOのTEM写真を示す。図5Bには、COOH-Ru@SiO及びAb-Ru@SiOのDLS粒径分布を示す。図5Cには、実施例1で製造されたRu@SiO、COOH-Ru@SiO及びAb-Ru@SiOのZeta電位の測定結果を示す。図5Dには、実施例1で製造された製造されたCOOH-Ru@SiO(a)及びAb-Ru@SiO(b)のFT-IRスペクトルの測定結果を示す。
【0089】
A:TEMによるCOOH-Ru@SiO形成の確認
実施例1で得られたCOOH-Ru@SiOナノ粒子をJEM-2100透過電子顕微鏡(日本、JEOL)で撮影した。得られた透過電子顕微鏡写真(TEM)を図5Aに示す。
【0090】
図5Aに示すように、得られたCOOH-Ru@SiOナノ粒子は、均一に分散し、大きさが均一で、直径が約30nmの球状粒子である。
【0091】
B:動的光散乱(DLS)法によるAb-Ru@SiO形成の確認
90 Plus/BI-MAS機器(米国、Brookhaven)を用いて動的光散乱(DLS)法を用いてそれぞれCOOH-Ru@SiO及びAb-Ru@SiOの水和粒径を測定した。粒径分布の結果を図5Bに示す。
【0092】
図5Bに示すように、COOH-Ru@SiO(a)の水和粒径は50nm程度で分布し、粒径分布が狭く、サイズが均一であり、かつ単分散性を有する。Ab-Ru@SiO(b)の水和粒径は約70nmであり、COOH-Ru@SiOより僅かに大きく、AbとRu@SiOとのカップリングが成功し、分散性が高く、凝集現象が発生しないことを示す。
【0093】
C:ゼータ電位測定によるAb-Ru@SiO形成の確認
90 Plus/BI-MAS機器(米国、Brookhaven)を用いて実施例1で製造されたRu@SiO、COOH-Ru@SiO及びAb-Ru@SiOナノプローブのZeta電位を測定し、その結果を図5Cに示す。
【0094】
Zeta電位の変化はRu@SiOがカルボキシル化及び抗体結合を発生したことを示す。図5Cに示すように、Ru@SiOのZeta電位値は-2.1 mVであり、カルボキシル官能基は負電荷を有するため、COOH-Ru@SiOの電位は-11.6 mVである。また、抗体は負電荷を有するため、Ab-Ru@SiOのZeta電位値は-25.5 mVまで増加し、Ab-Ru@SiOが成功に製造されたことを示す。
【0095】
D:赤外線スペクトルによるRu@SiOカルボキシル化修飾の確認
ThermoFisher Nicolet 6700フーリエ赤外線分光計(米国、Thermo)を用いて実施例1で製造されたRu@SiOとCOOH-Ru@SiOの赤外線(FT-IR)スペクトルを測定し、その結果を図5Dに示す。
【0096】
Ru@SiOとCOOH-Ru@SiOの赤外線スペクトルの変化はRu@SiOがカルボキシル化修飾されていることを示す。図5Dに示すように、Ru@SiOとCOOH-Ru@SiOは1090 cm-1付近にいずれも強いピークがあり、これがSi-O-Si引張振動の特徴ピークである。またCOOH-Ru@SiOは1560 cm-1に新たなカルボキシル基による吸収ピークがある。
【0097】
(2)ECLナノプローブのECL性能特徴づけ
電気化学サイクリックボルタンメトリー(CV)法を用いて、実施例1で製造されたCOOH-Ru@SiOおよびAb-Ru@SiOを以下のようにECL検出を行った。
【0098】
10μLのCOOH-Ru@SiO及びAb-Ru@SiOをそれぞれガラス炭素電極(GCE)に置き、乾燥させた後に三電極システムを用いてECL検出溶液(0.1M PH7.4 PBS、10 mM TPrAを含む)において、0 Vから+1.3 Vまでの間に電気化学サイクリックボルタンメトリー(CV)を行い、かつ光電子増倍管(PMT)からECL強度を取得し、その結果を図6に示す。なお、電気化学サイクリックボルタンメトリー(CV)の実験はCHI 630 D電気化学ワークステーション(中国、上海辰華)で行う。図6は、実施例1で製造されたECLナノプローブのECL性能の特徴づけ結果を示す図である。
【0099】
図6に示すように、ベアGCEではECLピークが現れないが、COOH-Ru@SiO/GCEでは+1.1 Vで強い陽極ECL信号を取得し、COOH-Ru@SiOがTPrAと反応してECL信号を生成することができることを示す。COOH-Ru@SiO/GCEに比べて、Ab-Ru@SiO/GCEのECL開始ピークの電位がわずかに正にシフトし、ECLピークの形状がほとんど変化せず、依然としてTPrAと反応して強いECL信号を生成することができる。この結果はAb-Ru@SiOが優れたECL性能を有し、ECLナノプローブとすることができることを示す。
【0100】
なお、実施例部分において、ECLはいずれもMPI-A多機能電気化学発光分析システム(中国、西安Remex)、標準三電極システムの電解セルで測定した。前記標準三電極システムに白金ワイヤ電極と、Ag/AgCl参照電極と、直径が5mMのガラス炭素作用電極(GCE)が配置されている。三電極システムを用いてECL検出電解液(0.1M PH7.4 PBS、10mM TPrAを含む)でECL応答を記録する。また、全てのECL測定はいずれも室温で行い、以下も同様である。
【0101】
(3)ECLナノプローブの保存安定性の特徴づけ
実施例1で調製されたCOOH-Ru@SiO、Ab-Ru@SiOの保存安定性を以下のように測定した。
【0102】
実施例1で得られたCOOH-Ru@SiOは水中での分散性が良く、チンダル効果(Tyndall effect)があり、水中で五週間以上安定に分散でき、且つ凝集・沈殿しにくい。
【0103】
COOH-Ru@SiOを水に分散させ、4℃遮光条件下保存し、7日間ごとにECL信号を一回測定し、Ab-Ru@SiOを1%BSA含有水中に4°C遮光条件下に置いて保存し、5日間ごとにECL信号を測定し、その結果を図7A~7Bに示す。図7A~7Bは、実施例1で製造されたECLナノプローブの保存安定性の測定結果を示す図である。図7AにはCOOH-Ru@SiOの測定結果を示す。図7BにはAb-Ru@SiOの測定結果を示す。
【0104】
図7Aに示すように、COOH-Ru@SiOのECL強度は28日以内にほとんど変化せず、ECL性質が安定することを示す。その良好な保存安定性は、正電荷を有する[Ru(byp)2+と負電荷を有するシリカナノ粒子との間の強い静電作用に起因すると推測される。また、図7BはAb-Ru@SiOのECL強度が20日間内にほとんど変化せず、それも良好な保存安定性を示す。
【0105】
(4)Ab-Ru@SiOに結合されているルテニウム分子の個数及び二次抗体の個数の確認
まず、TEM特徴付けの結果(直径が30nmである)から、単一のRu@SiOの平均体積(VRu@SiO2):VRu@SiO2=(4/3)π・r=(4/3)π・(15×10-9=1.41×10-23を得た。
【0106】
簡単にするために、SiOに孔隙がないと仮定し、シリカ密度(δ)=2.2 kg/dmであるため、単一のSiOの重量はmSiO2=VSiO2・δ=3.11×10-20kgである。
【0107】
単一のRu@SiOに結合されているルテニウム分子の個数を得るために、実施例1で得られたAb-Ru@SiOをNanodrop-2000C紫外可視分光光度計(米国、Thermo)を用いて紫外可視スペクトル(UV)による定量分析を行う。その結果を図8A~8Cに示す。図8A~8Cは、実施例1で製造されたECLナノプローブ上に結合されているルテニウム分子の個数及び二次抗体の個数の分析結果を示す図である。図8Aは、異なる濃度の[Ru(byp)]2+標準溶液とECLナノプローブの紫外可視スペクトルであり、aはRu@SiOの吸光度曲線を示し、bはAb-Ru@SiOの吸光度曲線を示し、その他の線は異なる濃度の[Ru(byp)]2+の吸光度曲線を示す。図8Bは[Ru(byp)]2+の457nmにおける濃度検量線を示す。図8CはBSA標準品の620nmにおける濃度検量線を示す。
【0108】
図8Aに示すように、100μg/mLのRu@SiOの457nmにおける吸光度Aは0.26であり、図8Bの[Ru(byp)2+の457nmにおける濃度検量線から、100μg/mLのRu@SiOにおける[Ru(byp)2+の濃度は12.36μg/mLであることを得た。これにより、1mLの100μg/mLのRu@SiOの個数NRu@SiO2=m総SiO2/mSiO2=3.22×1012、[Ru(byp)2+の個数N[Ru(byp)3]2+=NA・n=NA・mRu/MRu=9.93×1015(MRu=748.62)。
【0109】
したがって、単一のRu@SiOに含まれている[Ru(byp)2+分子の個数は約N[Ru(byp)3]2+/NRu@SiO2=3×10である。
【0110】
プレートリーダー用Bradford法タンパク質定量キットを用い、実施例1で得られたAb-Ru@SiOにおけるAbの620nmにおける吸光度を測定した結果、Ab-Ru@SiOにおけるAbの吸光度A620は0.63である。
【0111】
図8CのBSA標準品の620 nmにおける濃度検量線から、Ab-Ru@SiOにおけるAbの濃度が75.49μg/mLであることを得た。これにより、1 mLのAb-Ru@SiOにおけるAbの個数NAb2=NA・n=NA・mAb2/MAb2=3×1014(MAb2=150 KD=1.5×10g/mol)。
【0112】
調製されたAb-Ru@SiOを5倍希釈した後に紫外線定量を行い、457 nmでの吸光度AAb2-Ru@SiO2=0.53である。100μg/mL Ru@SiOの457 nm吸光度A=0.26、Ru@SiO個数NRu@SiO2=3×1012/mLであるため、1 mLの5倍希釈後のAb-Ru@SiOにおけるRu@SiOの個数がN=6×1012/mLである。
【0113】
1 mLの5倍希釈後のAb-Ru@SiOにおけるAbの個数N=6×1013であり、単一のRu@SiOに結合されている抗体の個数=N/N=6×1013/6×1012=10であると推定することができる。
【0114】
以上より、一つのRu@SiOでは約3×10個の[Ru(byp)2+分子を含むことができ、一つのRu@SiOでは約10個の抗体を結合することができる。したがって、単一のRu@SiOでは、上千個の[Ru(byp)2+分子を担持して信号を増幅させることができる。
【0115】
(実施例3:メチル化DNAのECL検出方法)
まず、以下のようにして本実施形態のECLセンサを製造し且つECL検出を行う。
【0116】
(1)電気触媒(MoSe)及び金属ナノ粒子(Au NPs)の調製
(AuNPsの調製)
三口フラスコに49 mLの脱イオン水を加え、加熱して沸騰させた後、1 mLのHAuCl(1 wt%)を添加した直後に2 mLのクエン酸(2 wt%)を添加し、15分間撹拌し、色がスイカ赤色になるまで加熱を停止させ、かつ室温まで自然冷却し、最後に4℃で貯蔵する。
【0117】
(MoSeの調製)
0.5 mmol(NHMoO及び1.0 mmol Se粉末を18 mLのオレイン酸/エタノール(1:1(V/V))混合液に添加し、混合し、かつポリテトラフルオロエチレンライナーの高圧釜に転移する。オートクレーブを封止し、オーブン内に置き、160~200℃で72 h加熱し、室温まで冷却する。その後に、生成物をエタノールで3回遠心洗浄し(10000 rpm、10分間)、60℃で12 h真空乾燥する。さらに、アルゴンガスを用いて500℃で1~2 hアニーリングし、表面における未反応のセレン粉末及び界面活性剤オレイン酸を除去する。最後に、3.5 mgのMoSeを称量して1 mLの脱イオン水に入れて、10 h超音波剥離(35HZ)を行い、再度遠心分離し(12000 rpm、10分間)、微量の不純物及び完全に剥離しないMoSeを除去し、上清を取り、MoSe水溶液(3.5 mg/mL)を得た。
【0118】
(2)センサの構築
まず、上記製造された3.5 mg/mLのMoSe溶液と0.50 mg/mLのAuNPsを体積比1:6で混合し、30分間超音波振動し、MoSe/AuNPs溶液を製造した。10μLの該MoSe/AuNPs溶液を研磨処理されたガラス炭素電極の表面に置き、真空下で乾燥させる。次に、10μLの30 nMのメルカプト修飾された捕捉核酸(以下SH-DNAとも記す)を、B&W緩衝液(0.01 MのTris-HClと、1 mMのEDTAと、2 MのNaClとを含有し、pHが7.5である))に溶解して電極の表面に滴下し、37℃で、550 rpmで、50分間インキュベートした。きれいに洗い流した後にさらに電極の表面に10μLの1 mMのMCHを滴下し、37℃で、500 rpmで、30分間インキュベートし、きれいに洗い流した後にさらに電極の表面に10μLの2%BSAを滴下し、30 minインキュベートし、洗浄した後にECLセンサを得た。
【0119】
(3)標的核酸の検出
本実施例においてメチル化されたPCDHGB7遺伝子を標的核酸配列とする。なお、本実施例で使用されているDNA配列はいずれも上海Sangon Biotechにより合成・精製された。使用する配列を具体的に表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】
表1において、C(M)は5-メチルシトシン(5-mC)を示し、SH-DNAは検出対象となる標的核酸PCDHGB7遺伝子(T)の3´末端配列と28個の相補的な塩基を有する。
【0122】
以下のように標的核酸の検出を行う。つまり、10μLの標的核酸溶液(10 mM PBS中に調製された)を上記製造されたECLセンサに滴下し、30分間インキュベートし(37℃、500 rpm)、洗浄した後に10μLの3μg/mLのAb-5mCを滴下し、40分間インキュベートし、次にセンシング電極の表面を洗い流しかつ10μLの8μg/mL Ab-Ru@SiOを滴下して、30分間インキュベートする。センシング電極は洗浄された後にAg/AgCl及びPtワイヤ電極と三電極システムを構成して検出溶液(0.1M PH7.4 PBS、10 mM TPrAを含む)でECL応答を記録した。サイクリックボルタンメトリーを用いて0から+1.2 Vまで走査し、走査速度が100 mV/sであり、光電子増倍管(PMT)の電圧が600 Vに設定される。
【0123】
(実施例4:実施例3で得られたECLセンサの特徴づけ)
(1)センサ界面の特徴づけ
A:MoSe/AuNPsの特徴づけ
実施例3で得られたMoSe及びMoSe/AuNPsを走査型電子顕微鏡(SEM)(JSM-7800F、JEOL Ltd.、Japan)を用いて電子走査し、得られたSEM画像をそれぞれ図9A及び図9Bに示す。図9A及び図9Bには、それぞれMoSe及びMoSe/AuNPsのSEM画像を示す。また、図9Cには、AuNPsのDLS粒径分布図を示す。図9A~9Cは、実施例3で製造されたECLセンサの界面におけるナノ材料の特徴づけ結果を示す図である。
【0124】
図9Aに示すように、MoSeは二次元積層構造を明らかに呈し、MoSeとAuNPsを混合した後、図9Bに示すように、AuNPsはMoSeナノシートの表面を均一に被覆することができる。
【0125】
90 Plus/BI-MAS機器(米国、Brookhaven)を用いて動的光散乱(DLS)法を用いてAuNPsの粒径分布を測定し、その結果を図9Cに示す。
図9Cに示すように、AuNPsの粒径は30 nm程度である。
【0126】
(実施例5:ECL強度に対するセンサ界面の構築条件の影響)
実施例3で得られたECLセンサを用いて、ECL強度に対する異なる構築条件の影響を研究し、その結果を図10A~10Bに示す。図10A~10Bは、センサ界面の構築条件を最適化させた結果を示す図である。図10AはECL強度に対する異なるMoSeの剥離時間の影響を示す。図10BはECL強度に対するMoSeとAuNPsの異なる混合比の影響を示す。
【0127】
(1)ECL強度に対する異なるMoSe剥離時間の影響
3.5 mgのMoSeを秤量して1 mLの脱イオン水に入れて異なる時間で超音波剥離(35HZ)を行い、これらの異なる超音波剥離の時間で得られたMoSe溶液をそれぞれGCEに滴下し、乾燥させた後にさらにRu@SiOを滴下し、乾燥させた後にさらに10 mMのTPrAのPBS pH7.4の検出溶液に置いてECL測定を行い、その測定結果を図10Aに示す。
【0128】
図10Aから分かるように、剥離時間が増加するにつれて、ECL強度が増加し、10時間の時に最大の安定値に達した。これは、MoSeが10時間剥離された後に安定した二次元シート層構造を得ることができることを示す。そのため、次にMoSe剥離時間を10時間とする。
【0129】
(2)ECL強度に対するMoSeとAuNPsとの異なる混合比率の影響
0.5 mg/mLのAuNPsと1 mLの3.5 mg/mLのMoSeを異なる体積で混合した後に電極を修飾し、乾燥した後にさらにRu@SiOを滴下し、ECL検出を行い、その検出結果を図10Bに示す。
【0130】
図10Bに示すように、6 mLのAuNPsは1 mLのMoSeと混合した後に修飾された電極では最も高いECL応答を示す。そのため、体積比で1:6のMoSe:AuNPsを選択してセンサ界面を製造する。
【0131】
(実施例6:ECL界面増強のメカニズムの予備研究)
本実施例において、本実施形態のECL界面増強のメカニズムを研究した。その結果を図11A~11Dに示す。図11A~11Dは、異なる修飾電極における電気化学サイクリックボルタンメトリー(CV)及びECL測定結果を示す図である。図11Aは0.1M PBSでの測定結果である。図11Aにおいて、aはRu@SiO/AuNPs/MoSe/GCEを示し、bはRu@SiO/AuNPs/GCEを示し、cはRu@SiO/MoSe/GCEを示し,dはRu@SiO/GCEを示し、eはGCEを示す。図11Bは10mM TPrAを含む0.1M PBSでの測定結果である。図11C及び図11Dはそれぞれ異なる修飾電極のRu@SiO/TPrA体系でのCV及びECL強度を示す。図11C及び図11Dにおいて、aはAuNPs/MoSe/GCEを示し、bはAuNPs/GCEを示し、cはMoSe/GCEを示し、dはGCEを示す。
【0132】
ベアGCE、Ru@SiOを滴下したGCE(Ru@SiO/GCE)、Ru@SiOを滴下したMoSe修飾GCE(Ru@SiO/MoSe/GCE)、Ru@SiOを滴下したAuNPs修飾GCE(Ru@SiO/AuNPs/GCE)、Ru@SiOを滴下したAuNPs/MoSe修飾GCE(Ru@SiO/AuNPs/MoSe/GCE)を0.1M pH7.4 PBSで、電気化学サイクリックボルタンメトリー(CV)実験を行い、その実験結果を図11Aに示す。
【0133】
図11Aに示すように、Ru@SiOを滴下した異なる電極は、電位1.1 VにいずれもRu(bpy) 3+の酸化ピークが現れ、MoSe又はAuNPs単独での修飾はいずれもRu(bpy) 3+の酸化ピークを増加させることができるが、MoSeとAuNPsとの共修飾はRu(bpy) 3+の酸化を相乗的に促進し、より高い酸化電流を示すことができる。
【0134】
また、上記ベアGCE、MoSe修飾GCE(MoSe/GCE)、AuNPs修飾GCE(Au NPs/GCE)、AuNPs/MoSe修飾GCE(Au NPs/MoSe/GCE)のTPrAに対する応答状況をさらに考察し、その結果を図11Bに示す。
【0135】
図11Bからも分かるように、MoSeとAuNPsの共修飾はTPrAの酸化を相乗的に促進することができる。したがって、Ru@SiO/TPrA系において、AuNPs/MoSe/GCEも同様に最も高い酸化電流(図11C)と最大のECL応答(図11D)を示す。
【0136】
以上の結果から分かるように、AuNPsとMoSeで界面を共修飾することはRu@SiO/TPrA系に対してECL信号増強作用を明らかに有する。言い換えると、ECLベース電極は、電気触媒溶液と金属ナノ粒子で共修飾された界面を有する。
【0137】
(実施例7:本実施形態のECL検出)
本実施例では、実施例3で得られたECLセンサを用いてECL検出の研究を行う。
【0138】
(1)電気化学的特徴づけ
ベアGCEから、GCEでの各ステップによる修飾及び反応に対して電気化学的インピーダンススペクトル(EIS)を測定し、その結果を図12に示す。図12は、異なる修飾電極の5mM [Fe(CN)3-/4-を含む0.1M KClにおけるEIS特徴づけ結果を示す図である。図12において、aはベアGCEを示し、bはAuNPs/MoSe/GCEを示し、cはMoSe/GCEを示し、dはSH-DNA/AuNPs/MoSe2/GCEを示し、eはMCH/SH-DNA/AuNPs/MoSe/GCEを示し、fはBSA/MCH/SH-DNA/AuNPs/MoSe/GCEを示し、gはT5mc/BSA/MCH/SH-DNA/AuNPs/MoSe/GCEを示し、hはAb-5mC/T5mc/BSA/MCH/SH-DNA/AuNPs/MoSe/GCEを示し、iはAb・Ru@SiO/Ab-5mC/T5mc/BSA/MCH/SH-DNA/AuNPs/MoSe/GCEを示す。ここで、電気化学インピーダンススペクトル(EIS)の試験はDH 7000(中国、江蘇東華)で行った。
【0139】
図12に示すように、GCEのAuNPs/MoSe、SH-DNA、MCH、BSA、T5mC、Ab-5mc、Ab-Ru@SiOによる修飾につれて、インピーダンスが徐々に増加し、電極表面の各ステップでの反応が成功したことを示す。
【0140】
(2)検出条件の最適化
最適なECL検出性能を得るために、異なる検出条件、例えばECL検出溶液のpH、捕捉核酸SH-DNAの濃度及びインキュベーション時間、標的核酸のインキュベーション時間、Ab-5mc及びAb-Ru@SiOの濃度及びインキュベーション時間でのECL応答状況を研究し、その結果を図13A~13Hに示す。図13A~13Hは、実施例3で製造されたセンサの異なるECL検出条件でのECL応答状況を示す図である。図13Aは異なるSH-DNA濃度とECL強度との関係を示す図である。図13Bは異なるSH-DNAのインキュベーション時間とECL強度との関係を示す図である。図13Cは異なるpHの検出溶液とECL強度との関係を示す図である。図13Dは、異なるT5mcのインキュベーション時間とECL強度との関係を示す図である。図13Eは異なるAb-5mc濃度とECL強度との関係を示す図である。図13Fは異なるAb-5mcのインキュベーション時間とECL強度との関係を示す図である。図13Gは異なるAb-Ru@SiO濃度とECL強度との関係を示す図である。図13Hは異なるAb-Ru@SiOのインキュベーション時間とECL強度との関係を示す図である。最適条件の選択原則は、ECL応答の最大値(又は最大値ランド期間)に対応する条件を最適条件とすることである。
【0141】
図13Aに示すように、SH-DNA濃度は1 nM~400 nMの間にある場合にいずれも良好なECL強度を得ることができ、最大ECLという選択原則に基づいて、SH-DNA濃度は好ましくは30 nMである。
【0142】
図13Bに示すように、SH-DNAのインキュベーション時間は10 min以上である場合にいずれも良好なECL強度を得ることができ、最大ECLという選択原則に基づいて、SH-DNAのインキュベーション時間は好ましくは50 minである。
【0143】
図13Cに示すように、ECL検出溶液のpHが6.0~8.5である場合にいずれも良好なECL強度を得ることができ、最大ECLという選択原則に基づいて、ECL検出溶液のpHが好ましくは7.5である。
【0144】
図13Dに示すように、T5mCのインキュベーション時間が10 min以上である場合にいずれも良好なECL強度を得ることができ、最大ECLという選択原則に基づいて、T5mCのインキュベーション時間は好ましくは30 minである。
【0145】
図13Eに示すように、Ab-5mcの濃度が1μg/mL以上である場合にいずれも良好なECL強度が得られ、最大ECLという選択原則に基づいて、Ab-5 mcの濃度は好ましくは3μg/mLである。
【0146】
図13Fに示すように、Ab-5mcのインキュベーション時間は10 min以上である場合にいずれも良好なECL強度を得ることができ、最大ECLという選択原則に基づいて、Ab-5mcのインキュベーション時間は好ましくは40 minである。
【0147】
図13Gに示すように、Ab-Ru@SiOの濃度が2μg/mL以上である場合にいずれも良好なECL強度が得られ、最大ECLという選択原則に基づいて、Ab-Ru@SiOの濃度は好ましくは8μg/mLである。
【0148】
図13Hに示すように、Ab-Ru@SiOのインキュベーション時間が10 min以上である場合にいずれも良好なECL強度を得ることができ、最大ECLという選択原則に基づいて、Ab-Ru@SiOのインキュベーション時間は好ましくは30 minである。
【0149】
(3)検出性能の検討
以下のように線形及び感度を検出する研究を行う。つまり、上記好ましい条件で、構築されたECLセンサを用いてメチル化DNA(メチル化されたPCDHGB7遺伝子、T5mc)を検出し、その結果を図14A~14Bに示す。図14A~14Bは、最適条件で標的核酸をECL検出した結果を示す図である。図14Aには異なる濃度T5mcに対するECL応答曲線を示す。図14Aにおいて、各線a~iの濃度はそれぞれ0、1 fM、10 fM、100 fM、1 pM、10 pM、100 pM、1 nM、10 nMである。図14BにはECL強度とlgCとの1 fM~10 nMの濃度範囲内の線形関係を示す。
【0150】
図14Aに示すように、異なる濃度のT5mcの条件下でECL検出を行う場合、ECLの強度(I)がT5mc濃度の増加につれて増加することが分かる。
【0151】
図14BにECL強度(I)とT5mc濃度の対数関係を示し、Iとlg CTが1 fM~10 nMの範囲内で良好な線形関係を呈し、相関係数が0.99に達することが分かる。
【0152】
(4)検出の選択性テスト
本実施形態のECL検出方法を採用して異なるサンプル溶液、純粋なバックグラウンド溶液(Blank)、メチル化無しのPCDHGB7配列(T)を含む溶液、メチル化RASSF1A配列(T)を含む溶液及びメチル化PCDHGB7配列(T5mC)を含む溶液をテストした。ここで、T、T及びT5mCの濃度がいずれも1 pMであり、その結果を図15に示す。図15は、本実施形態のECL検出方法により異なる試料溶液をECL検出した結果を示す図である。図15において、「Blank」は純粋なバックグラウンド溶液の結果を示し、「T」はメチル化無しのPCDHGB7配列を含む溶液の結果を示し、「T」はメチル化RASSF1A配列を含む溶液の結果を示し、「T5mC」はメチル化PCDHGB7配列を含む溶液の結果を示す。
【0153】
図15に示すように、T5mCを含有するサンプル溶液のみでは明らかなECL信号を有し、T及びTを含有する溶液では純粋なバックグラウンド溶液と類似するバックグラウンドECLを示す。これは、本検出方法がメチル化されたPCDHGB7配列に対する検出が良好な選択性を有することを示す。
【0154】
(5)検出の安定性テスト
本実施形態の検出方法の安定性を評価するために、10 pMの標的核酸に対して、異なるバッチで製造された複数本のセンサを利用して検出を行った。ここで、各バッチで4本のセンサ(n=4)を製造し、その検出結果を図16に示す。図16は、異なるバッチで製造されたセンサにより10pMの標的核酸を繰り返し検出した結果を示す図である。図16において、1~4はそれぞれ4個のバッチを示す。
【0155】
図16に示すように、ECL強度の標準偏差(RSD)が5%以内であるは、高い検出の安定性を有することを示す。
【0156】
以上、実施形態に基づいてECLベース電極、センサ及びそれらの製造方法、及び界面増強及びナノプローブに基づく核酸特異的サイト修飾の電気化学発光(ECL)検出方法等を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、実施の形態に当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も、本発明の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図13G
図13H
図14A
図14B
図15
図16
【配列表】
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