(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019140
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】2-シアノアクリレート系接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 4/04 20060101AFI20240201BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C09J4/04
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123198
(22)【出願日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2022121581
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 文哉
(72)【発明者】
【氏名】石黒 美幸
(72)【発明者】
【氏名】宮下 稜平
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040FA121
4J040HB22
4J040JB04
4J040NA16
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】
耐湿熱性が改善された、アルコキシアルキル2-シアノアクリレートを主成分として含む2-シアノアクリレート系接着剤組成物の提供。
【解決手段】
下記(A)及び(B)を含有し、且つ(B)の含有量が(A)100重量部に対し0.05~5重量部である接着剤組成物。
(A)アルコキシアルキル2-シアノアクリレート。
(B)下記一般式(1)~(3)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸無水物基を有する化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)及び(B)を含有し、且つ(B)の含有量が(A)100重量部に対し0.05~5重量部である接着剤組成物。
(A)アルコキシアルキル2-シアノアクリレート。
(B)下記一般式(1):
【化1】
(X
1は分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキリデン基、分岐を有してもよい炭素数5~14のシクロアルキリデン基、1-フェニルエタン-1,1-ジイル基、1,1-ジフェニルメタン-1,1-ジイル基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基またはフルオレニリデン基を示す。)
で表される化合物、下記一般式(2):
【化2】
(X
2は分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキリデン基、分岐を有してもよい炭素数5~14のシクロアルキリデン基、1-フェニルエタン-1,1-ジイル基、1,1-ジフェニルメタン-1,1-ジイル基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基またはフルオレニリデン基を示す。R
1及びR
2はそれぞれ独立して分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を示す。n
1及びn
2はそれぞれ独立して0~4の整数を示す。)
で表される化合物及び下記一般式(3):
【化3】
(R
3は分岐を有してもよい炭素数4~20のアルケニル基を示す。)
で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸無水物基を有する化合物。
【請求項2】
更に増粘剤を、(A)アルコキシアルキル2-シアノアクリレート100重量部に対し0.5~25重量部含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は瞬間接着剤として知られている2-シアノアクリレート系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2-シアノアクリレート系接着剤組成物は、主成分である2-シアノアクリレートのもつ特異なアニオン重合性により、被着材料表面に付着するわずかな水分等によって重合を開始し、硬化することで各種材料を短時間で強固に接着することができるものである。そのため、いわゆる瞬間接着剤として工業用、医療用、家庭用等の分野において広く用いられている。
【0003】
しかしながら、一般的な2-シアノアクリレート系接着剤組成物は優れた接着速度(硬化速度)を有する反面、特有の臭気や刺激性を示す場合や、被着体周辺への汚染が生じる(白化現象)場合があり、これらの改善が求められている。前記した課題(臭気、刺激性及び白化現象)は、2-シアノアクリレート系接着剤組成物で通常使用されるエチル2-シアノアクリレートが有する高い反応性と高い蒸気圧が一因とされ、該課題を解決し得る方法の一つとして、アルコキシアルキル2-シアノアクリレート等の分子量が大きく、蒸気圧の低い2-シアノアクリレートモノマーを2-シアノアクリレート系接着剤組成物の主成分とする方法が知られている。(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、2-シアノアクリレート系接着剤組成物使用時の臭気や刺激性、白化現象の改善を目的としてアルコキシアルキル2-シアノアクリレートを主成分として含む接着剤組成物に着眼すると共に、該接着剤組成物の耐湿熱性を評価すべく、該接着剤組成物を用いて接着した被着体を高温高湿条件下に暴露したところ、2-シアノアクリレート系接着剤組成物として汎用されているエチル2-シアノアクリレートを主成分として含む接着剤組成物を使用したものに比べて接着強度が著しく低下し、場合によっては完全に剥離してしまうことが判明した。
【0006】
本発明は、耐湿熱性が改善された、アルコキシアルキル2-シアノアクリレートを主成分として含む接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記する特定の酸無水物基を有する化合物を、アルコキシアルキル2-シアノアクリレートに対し特定の割合で含む接着剤組成物とすることにより、上記課題が解決可能であることを見出した。具体的には、本発明は以下の発明を含む。
【0008】
〔1〕
下記(A)及び(B)を含有し、且つ(B)の含有量が(A)100重量部に対し0.05~5重量部である接着剤組成物。
(A)アルコキシアルキル2-シアノアクリレート。
(B)下記一般式(1):
【0009】
【化1】
(X
1は分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキリデン基、分岐を有してもよい炭素数5~14のシクロアルキリデン基、1-フェニルエタン-1,1-ジイル基、1,1-ジフェニルメタン-1,1-ジイル基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基またはフルオレニリデン基を示す。)
で表される化合物、下記一般式(2):
【0010】
【化2】
(X
2は分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキリデン基、分岐を有してもよい炭素数5~14のシクロアルキリデン基、1-フェニルエタン-1,1-ジイル基、1,1-ジフェニルメタン-1,1-ジイル基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基またはフルオレニリデン基を示す。R
1及びR
2はそれぞれ独立して分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を示す。n
1及びn
2はそれぞれ独立して0~4の整数を示す。)
で表される化合物及び下記一般式(3):
【0011】
【化3】
(R
3は分岐を有してもよい炭素数4~20のアルケニル基を示す。)
で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸無水物基を有する化合物。
【0012】
〔2〕
更に増粘剤を、(A)アルコキシアルキル2-シアノアクリレート100重量部に対し0.5~25重量部含む、〔1〕に記載の接着剤組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐湿熱性が改善されたアルコキシアルキル2-シアノアクリレートを主成分として含む接着剤組成物が提供可能となる。本発明の接着剤組成物は、特に接着強度の低下を起こしやすい鋼板を含む被着体の接着時の耐湿熱性に優れ、また、2-シアノアクリレート系接着剤組成物として汎用されているエチル2-シアノアクリレートを主成分として含む接着剤組成物に比べて低白化性にも優れることから、家電や自動車向け電材部品の接着や、意匠性の高い製品に好適に用いることができる。また、本発明の接着剤組成物は、白濁がなく透明性に優れた硬化物を与えることから、特に透明性が求められる分野においても好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<成分(A)>
成分(A)は、アルコキシアルキル2-シアノアクリレートである。本発明の接着剤組成物に含まれるアルコキシアルキル2-シアノアクリレートとしては、例えば、2-シアノアクリル酸のメトキシエチル、メトキシプロピル、メトキシイソプロピル、メトキシブチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、エトキシイソブチル、プロポキシメチル、プロポキシエチル、プロポキシプロピル、ブトキシメチル、ブトキシエチル、ブトキシプロピル、ブトキシイソプロピル、ブトキシブチル等のエステル類が挙げられる。これらアルコキシアルキル2-シアノアクリレートの中でも、接着剤組成物の臭気や刺激性の低減効果が大きく、接着特性を向上させやすいことからエトキシエチル2-シアノアクリレート、メトキシエチル2-シアノアクリレートが好ましい。これらアルコキシアルキル2-シアノアクリレートは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
これらアルコキシアルキル2-シアノアクリレートは、常法(例えば、アルコキシアルキル2-シアノアセテートとホルムアルデヒドのクネーフェナーゲル縮合と、続く熱解重合により製造する方法)によって製造される他、市販品も入手可能である。
【0016】
本発明の接着剤組成物全量に占めるアルコキシアルキル2-シアノアクリレートの重量割合は、例えば、50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80%以上である。
【0017】
<成分(B)>
成分(B)は、上記一般式(1)で表される化合物、上記一般式(2)で表される化合物および上記一般式(3)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸無水物基を有する化合物である。
【0018】
上記一般式(1)においてX1は、分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキリデン基、分岐を有してもよい炭素数5~14のシクロアルキリデン基、1-フェニルエタン-1,1-ジイル基、1,1-ジフェニルメタン-1,1-ジイル基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基またはフルオレニリデン基を示す。分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキリデン基としては、例えば、イソプロピリデン基、メチレン基、エチリデン基、ブタン-2,2-ジイル基等が挙げられる。分岐を有してもよい炭素数5~14のシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロヘキシリデン基、3,5,5-トリメチルシクロヘキシリデン基、シクロドデシリデン基等が挙げられる。
【0019】
上記一般式(1)で表される化合物として具体的には、例えば、4,4’-(イソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(メチレン)ジフタル酸無水物、4,4’-(エチリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフタル酸無水物、4,4’-(シクロヘキシリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(3,5,5-トリメチルシクロヘキシリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(シクロドデシリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(1-フェニルエタン-1,1-ジイル)ジフタル酸無水物、4,4’-(1,1-ジフェニルメタン-1,1-ジイル)ジフタル酸無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物等が挙げられる。これら上記一般式(1)で表される化合物の中でも、4,4’-(イソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-(シクロドデシリデン)ジフタル酸無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物が好ましく、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物がより好ましい。これら上記一般式(1)で表される化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
上記一般式(2)においてX2は、分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキリデン基、分岐を有してもよい炭素数5~14のシクロアルキリデン基、1-フェニルエタン-1,1-ジイル基、1,1-ジフェニルメタン-1,1-ジイル基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基またはフルオレニリデン基を示す。分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキリデン基としては、例えば、イソプロピリデン基、メチレン基、エチリデン基、ブタン-2,2-ジイル基等が挙げられる。
分岐を有してもよい炭素数5~14のシクロアルキリデン基としては、上記一般式(1)におけるX1と同じものが挙げられる。
【0021】
上記一般式(2)においてR1及びR2は、それぞれ独立して分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を示す。
分岐を有してもよい炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0022】
上記一般式(2)においてn1及びn2はそれぞれ独立して0~4の整数を示し、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0である。
【0023】
上記一般式(2)で表される化合物として具体的には、例えば、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-メチレンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-メチレンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-エチリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-[4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノキシ]ジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-シクロヘキシリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-[4,4’-(3,5,5-トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノキシ]ジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-シクロドデシリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-[4,4’-(1-フェニルエタン-1,1-ジイル)ジフェノキシ]ジフタル酸無水物、4,4’-[4,4’-(1,1-ジフェニルメタン-1,1-ジイル)ジフェノキシ]ジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-フルオレニリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物等が挙げられる。これら上記一般式(2)で表される化合物の中でも、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-メチレンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-フルオレニリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物が好ましく、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物がより好ましい。これら上記一般式(2)で表される化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記一般式(3)において、R3は分岐を有してもよい炭素数4~20のアルケニル基を示し、好ましくは炭素数6~18のアルケニル基、より好ましくは炭素数8~15のアルケニル基である。分岐を有してもよい炭素数4~20のアルケニル基としては、例えば、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
【0025】
上記一般式(3)で表される化合物として具体的には、例えば、(2-メチルプロペン-2-イル)コハク酸無水物、(2-ブテン-1-イル)コハク酸無水物、(2-ヘキセン-1-イル)コハク酸無水物、2-オクテニルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、イソノネニルコハク酸無水物、テトラプロペニルコハク酸無水物、デセニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、イソドデセニルコハク酸無水物、(2-ドデセン-1-イル)コハク酸無水物、テトラデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、イソオクタデセニルコハク酸無水物等が挙げられる。これら上記一般式(3)で表される化合物の中でも、2-オクテニルコハク酸無水物、ノネニルコハク酸無水物、テトラプロペニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、(2-ドデセン-1-イル)コハク酸無水物が好ましく、ノネニルコハク酸無水物、テトラプロペニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物がより好ましい。これら上記一般式(3)で表される化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
また、これら成分(B)の中でも、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物および上記一般式(3)で表される化合物が好ましく、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸二無水物、ノネニルコハク酸無水物、テトラプロペニルコハク酸無水物、およびドデセニルコハク酸無水物がより好ましい。
【0027】
本発明の接着剤組成物において、成分(B)の含有量は、アルコキシアルキル2-シアノアクリレート100重量部に対し、通常0.05~5重量部、好ましくは0.08~4重量部である。含有量を0.05~5重量部の範囲とすることにより、接着層への湿気の侵入が抑えられ、耐湿熱性を向上させることができ、また、保存安定性に優れる接着剤組成物とすることができる。
【0028】
本発明の接着剤組成物には、上記成分(A)及び(B)の他、必要に応じ、2-シアノアクリレート系接着剤組成物において一般的に用いられる各種添加剤等が含まれていてもよい。以下、含まれていてもよい添加剤について詳述する。
【0029】
<増粘剤>
増粘剤としては、アルコキシアルキル2-シアノアクリレートに溶解し、増粘効果を発現するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、メタクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステルの重合体であるアクリル樹脂、アクリルゴム、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、セルロースエステル、ポリアルキル-2-シアノアクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。前記メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシプロピル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸エトキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸テトラヒドロフリフリル等が挙げられる。前記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシプロピル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸エトキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルアクリル酸アリル、アクリル酸テトラヒドロフリフリル等が挙げられる。アクリル樹脂の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル等の前記モノマーの単独重合体や、2種以上からなるコポリマー、ターポリマー、テトラマー等の共重合体が挙げられる。これら増粘剤の中でも、アクリル樹脂が好ましく、メタクリル酸エステルの重合体がより好ましく、メタクリル酸メチルの重合体がさらに好ましい。これら増粘剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
本発明の接着剤組成物の粘度はその用途に応じ適宜決定することができる。増粘剤を含む場合、その含有量は、例えば、アルコキシアルキル2-シアノアクリレート100重量部に対し0.5~25重量部、好ましくは1.0~15重量部である。0.5~25重量部の範囲であれば、充分な増粘効果により、塗布時のハンドリング性の向上や、貯蔵安定性の悪化の抑制が可能となる。
【0031】
<その他の添加剤>
本発明の接着剤組成物には、上述した添加剤の他、安定剤(例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルカテコール、カテコール、ピロガロール等のラジカル重合禁止剤、二酸化硫黄、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体等の三弗化ホウ素錯体、ホウ弗化水素酸、トリアルキルボレート等のアニオン重合禁止剤)、密着性向上剤(例えば、芳香族カルボン酸およびそのエステル、芳香族多価ヒドロキシ化合物等)、硬化促進剤(例えば、ポリアルキレンオキサイド誘導体、カリックスアレン化合物等)、可塑剤(例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソデシル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル等)、着色剤(染料、顔料、蛍光剤)、香料、溶剤、等の2-シアノアクリレート系接着剤組成物にて一般的に用いられる各種添加剤が含まれていてもよい。上記した添加剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【実施例0032】
以下、実施例等を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、各実施例・比較例・参考例において、各接着剤組成物の粘度が100~1200mPa・s(20℃におけるE形粘度計(コーンプレート)の測定値)の範囲となるように、適宜増粘剤の添加量を調整した。
【0033】
<試験方法>
(1)均一性
JIS K6861-4に準拠した方法により、目視により硬化前の接着剤組成物中の各種添加剤の溶け残りによる濁りを確認した。
〇:溶け残りなし、透明
×:溶け残りあり、不透明、固体分散
【0034】
(2)硬化物の透明性
接着剤組成物を60℃95%RHの温湿度に制御されたオーブン内に1日静置して硬化させ、厚み約7mmの硬化物を作製した。作製した硬化物を通して紙面に印刷した文字を視認することで、硬化物の透明性を目視により評価した。
〇:硬化物が透明であり、紙面に印刷した文字が視認できる。
×:硬化物が白濁、濁りがあり、紙面に印刷した文字が視認できない、あるいは困難である。
【0035】
(3)低汚染性
接着剤組成物1滴を黒色EPDM試験片上に載せ、40℃80%RHの温湿度に制御されたオーブン内に1時間静置して硬化させた後、硬化物周辺の黒色EPDM試験片の白化具合を目視により評価した。
〇:白化なし
×:白化あり
【0036】
(4)耐湿熱性
表面を研磨した軟鋼板(JISG3141 SPCC-SB:1.6×25×100mm)を、接着剤組成物を用いて22℃、60%RH環境下で貼り合わせ、圧着したまま22℃、60%RH環境下で24時間静置して養生することで試験片を作製した。
作製した試験片に対し、以下に記載の条件にて湿熱促進試験を行った後、試験片を室温に戻し、25℃にてJIS K6861-6に準じて鋼-鋼引張せん断接着強さ(N/mm2)を測定した。得られた鋼-鋼引張せん断接着強さの測定結果から、以下の評価基準に従って耐湿熱性を評価した。
湿熱促進条件:70℃95%RHで120時間促進試験
〇:湿熱促進後の接着強度が3.0N/mm2以上
×:湿熱促進後に接着剥離、または接着強度が3.0N/mm2未満
【0037】
(実施例1)
エトキシエチル2-シアノアクリレート100重量部に対し、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物1.0重量部、硬化促進剤としてメトキシポリエチレングリコールメタクリレート0.4重量部、増粘剤としてPMMA(ポリメタクリル酸メチル、分子量45万g/mol)4.5重量部、密着性向上剤としてガーリック酸一水和物0.01重量部、アニオン重合禁止剤としてHBF410ppm、ラジカル重合禁止剤としてハイドロキノン1000ppmを添加し、窒素雰囲気下40~60℃の温度で24時間撹拌して接着剤組成物を調製した。調製後、得られた接着剤組成物について、上述した各試験を実施した。結果を表1に示す。
【0038】
(実施例2~9、比較例1~10)
実施例1において、カルボン酸無水物とその添加量及び増粘剤(PMMA)の添加量を表1及び表2に示す通り変更した以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を調製し、上述した各試験を実施した。結果を表1及び表2に示す。
【0039】
(参考例1)
実施例1において、エトキシエチル2-シアノアクリレートに替えてエチル-2-シアノアクリレートを使用し、カルボン酸無水物とその添加量及び増粘剤(PMMA)の添加量を表2に示す通り変更した以外は実施例1と同様にして接着剤組成物を調製し、上述した各試験を実施した。結果を表2に示す。
【0040】
なお、表1及び表2における各略号は、下記の化合物を意味する。
【0041】
A-1:4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物
A-2:9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物
A-3:4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
A-4:テトラプロペニルコハク酸無水物
A-5:ドデセニルコハク酸無水物
A-6:ノネニルコハク酸無水物
A-7:イソオクタデセニルコハク酸無水物
A-8:(2-ブテン-1-イル)コハク酸無水物
A-9:ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン
A-10:ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物
A-11:3-(カルボキシメチル)-1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸1,4:2,3-二無水物
A-12:ジフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物
A-13:4,4’-(エチン-1,2-ジイル)ジフタル酸無水物
A-14:コハク酸無水物
A-15:シトラコン酸無水物
A-16:イタコン酸無水物
【0042】
【0043】