(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019145
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】銅-鉄系ナノワイヤー
(51)【国際特許分類】
B22F 1/054 20220101AFI20240201BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240201BHJP
B22F 1/17 20220101ALI20240201BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20240201BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20240201BHJP
B82Y 35/00 20110101ALI20240201BHJP
B22F 9/24 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
B22F1/054
B22F1/00 S
B22F1/17
B22F9/00 B
B82Y40/00
B82Y35/00
B22F9/24 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123497
(22)【出願日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2022120961
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹田 裕孝
(72)【発明者】
【氏名】三代 真澄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 菜保
(72)【発明者】
【氏名】浅井 文雄
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA06
4K017AA08
4K017BA06
4K017CA02
4K017CA08
4K017DA07
4K017EJ01
4K017FB01
4K017FB03
4K017FB08
4K018BA13
4K018BB02
4K018BC22
4K018BD04
(57)【要約】
【課題】酸化劣化の進行を抑制した銅-鉄系ナノワイヤーを提供する。
【解決手段】
鉄系ナノワイヤーの表面に、鉄と銅を配した、1本の銅-鉄系ナノワイヤーであって、ICP-AES法により測定した前記ナノワイヤー中の鉄の質量比率が10~95質量%であり、前記ナノワイヤー中の銅の質量比率が10~90質量%である銅-鉄系ナノワイヤー、および、前記ナノワイヤーは、主成分が銅である表面層を有する前記ナノワイヤー、および、前記ナノワイヤーは、前記表面層に覆われた内部をさらに有し、前記表面層において銅の質量比率は50質量%超であり、前記内部において鉄の質量比率は90質量%以上である前記銅-鉄系ナノワイヤー。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄系ナノワイヤーの表面に、鉄と銅を配した、1本の銅-鉄系ナノワイヤーであって、
ICP-AES法により測定した前記ナノワイヤー中の鉄の質量比率が10~95質量%であり、前記ナノワイヤー中の銅の質量比率が10~90質量%である銅-鉄系ナノワイヤー。
【請求項2】
前記ナノワイヤーは、主成分が銅である表面層を有する、請求項1に記載のナノワイヤー。
【請求項3】
前記ナノワイヤーは、前記表面層に覆われた内部をさらに有し、
前記表面層において銅の質量比率は50質量%超であり、
前記内部において鉄の質量比率は90質量%以上である、請求項2に記載の銅-鉄系ナノワイヤー。
【請求項4】
平均長が5μm以上の請求項1に記載の銅-鉄系ナノワイヤー。
【請求項5】
前記ナノワイヤーは、粒子連結状を有し、前記ナノワイヤー1本における直径の最大値をA(nm)、最小値をB(nm)とした場合に、1.1以上のA/B値を有する、請求項1に記載の銅-鉄系ナノワイヤー。
【請求項6】
鉄系ナノワイヤーの表面に鉄と銅を配した、複数の銅-鉄系ナノワイヤーであって、
ICP-AES法により測定した前記ナノワイヤー中の鉄の質量比率が10~95質量%であり、前記ナノワイヤー中の銅の質量比率が5~90質量%である、複数の銅-鉄系ナノワイヤー。
【請求項7】
前記ナノワイヤーは、主成分が銅である表面層を有する、請求項6に記載の複数の銅-鉄系ナノワイヤー。
【請求項8】
前記ナノワイヤーは、前記表面層に覆われた内部をさらに有し、
前記表面層において銅の質量比率は50質量%超であり、
前記内部において鉄の質量比率は90質量%以上である、請求項7に記載の複数の銅-鉄系ナノワイヤー。
【請求項9】
前記ナノワイヤーは5μm以上の平均長を有する、請求項6に記載の複数の銅-鉄系ナノワイヤー。
【請求項10】
前記ナノワイヤーは、粒子連結状を有し、前記ナノワイヤー1本における直径の最大値をA(nm)、最小値をB(nm)とした場合に、1.1以上のA/B平均値を有する、請求項6に記載の複数の銅-鉄系ナノワイヤー。
【請求項11】
請求項6~10のいずれかに記載の複数の銅-鉄系ナノワイヤーを含むインク。
【請求項12】
請求項6~10のいずれかに記載の複数の銅-鉄系ナノワイヤーの製造方法であって、
鉄系ナノワイヤーを作製したのち、該鉄ナノワイヤーの一部の鉄を銅で置換する、複数の銅-鉄系ナノワイヤーの製造方法。
【請求項13】
前記鉄系ナノワイヤーを、銅イオンを含む水溶液と混合することより、前記鉄系ナノワイヤー表面の鉄を銅で置換する、請求項12に記載の複数の銅-鉄系ナノワイヤーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅-鉄系ナノワイヤー(特に、鉄ナノワイヤーの一部が銅で置換されている銅-鉄系ナノワイヤー)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノワイヤーは、粒子と異なり、パーコレーション閾値が低いため、少ない添加量で各種特性を発現する。特に、鉄は高い磁性(飽和磁化、透磁率)を有するため、鉄系ナノワイヤーは特許文献1のように電波吸収材として好適に用いることができる。
【0003】
飽和磁化、透磁率は、鉄の含有比率が高いほど高くなる。しかしながら、鉄の含有比率を高くするとナノワイヤーは酸化劣化しやすく、長期的な耐久性に問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2021/107136号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄の酸化劣化は水と酸素により起こる。一般的に鉄のような卑金属は表面に不働態層を形成し安定化するが、鉄系ナノワイヤーの場合、不働態層が化学的かつ物理的に弱いため、特定の溶媒下やナノワイヤーどうしの摩擦等で不働態層が剥がれやすく、酸化劣化が進行しやすい。
【0006】
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、酸化劣化の進行を抑制した銅-鉄系ナノワイヤーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鉄系ナノワイヤーの一部を銅で置換することにより、表面に鉄と銅からなる不働態層を形成され、上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)鉄系ナノワイヤーの表面に、鉄と銅を配した、1本の銅-鉄系ナノワイヤーであって、ICP-AES法により測定した前記ナノワイヤー中の鉄の質量比率が10~95質量%であり、前記ナノワイヤー中の銅の質量比率が10~90質量%である銅-鉄系ナノワイヤー。
(2)前記ナノワイヤーは、主成分が銅である表面層を有する、(1)に記載のナノワイヤー。
(3)前記ナノワイヤーは、前記表面層に覆われた内部をさらに有し、前記表面層において銅の質量比率は50質量%超であり、前記内部において鉄の質量比率は90質量%以上である、(2)に記載の銅-鉄系ナノワイヤー。
(4)平均長が5μm以上の(1)に記載の銅-鉄系ナノワイヤー。
(5)前記ナノワイヤーは、粒子連結状を有し、前記ナノワイヤー1本における直径の最大値をA(nm)、最小値をB(nm)とした場合に、1.1以上のA/B値を有する、(1)に記載の銅-鉄系ナノワイヤー。
(6)鉄系ナノワイヤーの表面に鉄と銅を配した、複数の銅-鉄系ナノワイヤーであって、ICP-AES法により測定した前記ナノワイヤー中の鉄の質量比率が10~95質量%であり、前記ナノワイヤー中の銅の質量比率が5~90質量%である、複数の銅-鉄系ナノワイヤー。
(7)前記ナノワイヤーは、主成分が銅である表面層を有する、(6)に記載の複数の銅-鉄系ナノワイヤー。
(8)前記ナノワイヤーは、前記表面層に覆われた内部をさらに有し、前記表面層において銅の質量比率は50質量%超であり、前記内部において鉄の質量比率は90質量%以上である、(7)に記載の複数の銅-鉄系ナノワイヤー。
(9)前記ナノワイヤーは5μm以上の平均長を有する、(6)に記載の複数の銅-鉄系ナノワイヤー。
(10)前記ナノワイヤーは、粒子連結状を有し、前記ナノワイヤー1本における直径の最大値をA(nm)、最小値をB(nm)とした場合に、1.1以上のA/B平均値を有する、(6)に記載の複数の銅-鉄系ナノワイヤー。
(11)(6)~(10)のいずれかに記載の複数の銅-鉄系ナノワイヤーを含むインク。
(12)(6)~(10)のいずれかに記載の複数の銅-鉄系ナノワイヤーの製造方法であって、鉄系ナノワイヤーを作製したのち、該鉄ナノワイヤーの一部の鉄を銅で置換する、複数の銅-鉄系ナノワイヤーの製造方法。
(13)前記鉄系ナノワイヤーを、銅イオンを含む水溶液と混合することより、前記鉄系ナノワイヤー表面の鉄を銅で置換する、(12)に記載の複数の銅-鉄系ナノワイヤーの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酸化劣化の進行を抑制した鉄系ナノワイヤーを提供することができる。
本発明の銅-鉄系ナノワイヤーは、酸化劣化の進行が抑制されているため、電波吸収材等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る銅-鉄系ナノワイヤーの一例の模式的断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[ナノワイヤー]
本発明はナノワイヤーを提供する。本発明のナノワイヤーは1本のナノワイヤーであってもよいし、または複数のナノワイヤーであってもよい。以下、本発明のナノワイヤーが1本のナノワイヤーである場合について説明するが、特記しない限り、1本のナノワイヤーについての説明は複数のナノワイヤーの説明に準用・適用できるものとする。
【0012】
本発明のナノワイヤーは鉄と銅から構成されるナノワイヤーである。本発明は、詳しくは、鉄ナノワイヤーの一部の鉄(原子)を銅(原子)で置換した、ナノワイヤーを提供するものであり、結果として、銅-鉄系ナノワイヤーを提供する。本発明は、より詳しくは、鉄ナノワイヤーの表面に鉄(原子)と銅(原子)を配した、ナノワイヤーを提供するものであり、結果として、銅-鉄系ナノワイヤーを提供する。
【0013】
本発明のナノワイヤーにおいて、ICP-AES法により測定したナノワイヤー中の鉄の質量比率は、10~95質量%とすることが必要であり、酸化劣化の進行の抑制の観点から、好ましくは20~90質量%であり、より好ましくは30~90質量%、さらに好ましくは50~90質量%、十分に好ましくは60~90質量%、より十分に好ましくは70~85質量%である。一方、ICP-AES法により測定したナノワイヤー中の銅の質量比率は、5~90質量%とすることが必要であり、酸化劣化の進行の抑制の観点から、好ましくは10~80質量%であり、より好ましくは10~70質量%、さらに好ましくは10~50質量%、十分に好ましくは10~40質量%、より十分に好ましくは15~30質量%である。鉄の前記質量比率が85質量%を超える場合および銅の前記質量比率が30質量%未満の場合、鉄の酸化劣化の進行を抑制することができないので好ましくなく、鉄の前記質量比率が15質量%未満の場合および銅の前記質量比率が70質量%を超える場合、銅の酸化劣化が進行するので好ましくない。
【0014】
本発明のナノワイヤーには、50質量%未満の範囲で、ニッケルやコバルト等の金属を含有してもよい。
【0015】
ナノワイヤーの酸化劣化が進行する場合、インクにおいて、金属イオンが流出するので、ナノワイヤーの酸化劣化の進行のしにくさは、後述する上澄み液中の金属イオン量を測定することで評価することができる。前記金属イオン量は、小さい方が好ましく、具体的には、0.300ppm以下であることが好ましく、0.100ppm以下であることがより好ましく、0.050ppm以下であることがさらに好ましい。前記金属イオン量が0.300ppm以下であれば、酸化劣化の進行が抑制できている。
【0016】
ナノワイヤー中の銅の質量比率および鉄の質量比率はナノワイヤー全体に対する比率である。詳しくは、ナノワイヤー中の銅および鉄の質量比率はそれぞれ、ナノワイヤーを構成する原子全量に対する銅および鉄の含有比率のことである。ナノワイヤー中の鉄および銅の質量比率の合計は通常、50質量%以上、特に70質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、十分に好ましくは98質量%以上、より十分に好ましくは100質量%である。
【0017】
ナノワイヤー中の銅および鉄の質量比率は、複数のナノワイヤーを希塩酸希硝酸混合溶液に溶解し、ICP-AES法により、Cu、Fe、Ni標準液を用いて検量線法により、測定された値を用いている。
【0018】
本発明のナノワイヤーは、鉄ナノワイヤー表面の鉄(原子)を銅(原子)で置換してなるので、結果として、コアに鉄を配し、かつ、表面(または表面層)に鉄と銅(またはそれらの混合物)を配してなっている。コアとは、表面層に覆われた部分のことであり、「内部」とも称され得る。コアに鉄を配し、かつ、表面(または表面層)に鉄と銅(またはそれらの混合物)を配することにより、酸化劣化の進行を抑制することができる。鉄と銅を含む表面層は、コア(または当該コアの鉄)の表面を完全に被覆してもよいし、または部分的に被覆してもよい。
【0019】
本発明において、表面層は、酸化劣化の進行の抑制の観点から、断面視において、コア(内部)をほぼ完全に被覆していることが好ましい。このとき、断面視は、ナノワイヤーの長手方向に対して垂直または平行な断面視等のような、あらゆる方向の断面視であってもよい。詳しくは、表面層は、いずれか1つの任意方向の断面視(例えばナノワイヤーの長手方向に対して垂直な断面視)において、コア(内部)を完全(ほぼ完全)に被覆していることが好ましい。なお、表面層がコア(内部)の表面を「部分的」に被覆するとは、コア表面における表面層の被覆状態について、例えば、ナノワイヤーの長手方向に対して垂直な断面視において、表面層がコア外周の50%以上を被覆している状態であってもよい。
【0020】
本発明のナノワイヤーにおける鉄(原子)と銅(原子)の状態または配置は、SEMやTEMのEDSによるマッピングを行うことにより把握できる。マッピングすることにより、表面層と内部とが明確に区別され得ることを明らかにすることができる。
【0021】
本発明のナノワイヤーは、例えば
図1に示すように、後で詳述する粒子連結形状を有しつつ、銅を含む表面層11および当該表面層11に覆われ、かつ鉄を含む内部(すなわち上記コア)12を有する。本発明のナノワイヤー1においては通常、内部(コア)12自体が、
図1に示すように、後述の粒子連結形状を有している。
図1は、本発明に係る銅-鉄系ナノワイヤーの一例の長手方向に対して平行な断面模式図を示す。
【0022】
本発明のナノワイヤーは、内部に鉄を配し、かつ、表面に銅を主成分とした鉄と銅(またはそれらの混合物)を配することが好ましい。コアに鉄を配し、かつ、表面(または表面層)に銅を主成分とした鉄と銅(またはそれらの混合物)を配することにより、酸化劣化の進行の抑制することができる。鉄と銅を含む表面層は、コアまたは当該コアの鉄の表面を完全に被覆してもよいし、または部分的に被覆してもよい。
【0023】
表面層は、酸化劣化の進行の抑制の観点から、上記ように、主成分が銅であることが好ましい。主成分が銅であるとは、表面層における銅の質量比率が50質量%超、特に60質量%以上であることをいう。表面層における銅の質量比率は、酸化劣化の進行の抑制の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。表面層における銅の質量比率の上限値は特に限定されず、表面層における銅の質量比率は通常、100質量%以下、特に95質量%以下である。
【0024】
表面層における鉄の質量比率は通常、50質量%未満、特に40質量%以下であり、酸化劣化の進行の抑制の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。表面層における鉄の質量比率の下限値は特に限定されず、表面層における鉄の質量比率は通常、0質量%以上、特に5質量%以上である。
【0025】
表面層において、銅の質量比率から鉄の質量比率を減じた値は、酸化劣化の進行の抑制の観点から、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上であり、十分に好ましくは70質量%以上であり、より十分に好ましくは80質量%以上である。
【0026】
表面層における銅の質量比率および鉄の質量比率は、ナノワイヤー断面において表面から3nmの距離にある任意の5点のSEM-EDSによる元素分析により得られた値の平均値を用いている。ナノワイヤー断面は、ナノワイヤーの長手方向に対して垂直または平行な断面等のあらゆる方向の断面であってもよい。本発明のナノワイヤーが複数のナノワイヤーである場合、表面層における銅の質量比率および鉄の質量比率は、任意の100本のナノワイヤーについての平均値である。
【0027】
表面層における銅の質量比率および鉄の質量比率は測定点における原子全量に対する比率である。詳しくは、表面層における銅および鉄の質量比率はそれぞれ、測定点(または測定領域)に含まれる原子全量に対する銅および鉄の含有比率のことである。表面層における鉄および銅の質量比率の合計は通常、50質量%以上、特に70質量%以上であり、酸化劣化の進行の抑制の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、十分に好ましくは98質量%以上、より十分に好ましくは100質量%である。本発明のナノワイヤーが複数のナノワイヤーである場合、表面層における鉄および銅の質量比率の合計は、任意の100本のナノワイヤーについての平均値である。
【0028】
表面層は通常、5~20nm、特に6~15nmの厚みを有している。表面層の厚みは、SEM画像における任意の5点での平均値を用いている。本発明のナノワイヤーが複数のナノワイヤーである場合、表面層の厚みは、任意の100本のナノワイヤーについての平均値である。
【0029】
内部における鉄の質量比率は、酸化劣化の進行の抑制の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であり、十分に好ましくは95質量%以上であり、より十分に好ましくは98質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。内部における鉄の質量比率の上限値は特に限定されず、内部における鉄の質量比率は通常、100質量%以下である。
【0030】
内部における銅の質量比率は酸化劣化の進行の抑制の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下であり、十分に好ましくは5質量%以下であり、より十分に好ましくは2質量%以下であり、最も好ましくは0質量%以下である。内部における銅の質量比率の下限値は特に限定されず、内部における銅の質量比率は通常、0質量%以上である。
【0031】
内部における銅の質量比率および鉄の質量比率は、ナノワイヤー断面において中心から3nmの距離にある領域(中心部)の任意の5点のSEM-EDSによる元素分析により得られた値の平均値を用いている。なお、中心とは、等質の材料(例えば、紙)を当該断面領域の形状に基づく輪郭で切り取り、均衡をとって点で支えたときの点(すなわち重心)のことである。ナノワイヤー断面は、ナノワイヤーの長手方向に対して垂直または平行な断面等のあらゆる方向の断面であってもよい。本発明のナノワイヤーが複数のナノワイヤーである場合、内部における銅の質量比率および鉄の質量比率は、任意の100本のナノワイヤーについての平均値である。
【0032】
内部における銅の質量比率および鉄の質量比率は測定点における原子全量に対する比率である。詳しくは、内部における銅および鉄の質量比率はそれぞれ、測定点(または測定領域)に含まれる原子全量に対する銅および鉄の含有比率のことである。内部における鉄および銅の質量比率の合計は通常、50質量%以上、特に70質量%以上であり、酸化劣化の進行の抑制の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、十分に好ましくは98質量%以上、より十分に好ましくは100質量%である。本発明のナノワイヤーが複数のナノワイヤーである場合、内部における鉄および銅の質量比率の合計は、任意の100本のナノワイヤーについての平均値である。
【0033】
本発明のナノワイヤーの形状は、棒状であっても、または粒子連結状であってもよい。本発明のナノワイヤーは、酸化劣化の進行の抑制の観点から、粒子連結形状を有することが好ましい。ナノワイヤーの形状が粒子連結状の場合、特に、可視光を含む電磁波の全反射を抑制することができるので、透明導電膜の用途においてはギラツキ等を防止することができ、電波吸収材の用途においては反射ノイズを抑制することができる。
【0034】
粒子連結形状とは、換言すると、例えば
図1に示すように複数の粒子が直列かつ連続的に連結されてなる、全体として線状の形状のことである。両端の粒子はそれぞれ隣接する1つ以上の粒子と連結され、その他の各粒子は隣接する2つ以上の粒子と連結されている。このような粒子連結形状においては通常、連結部分(粒子の境界部分)で凹部を形成し、粒子部分で凸部を形成し、粒子の連結方向(ナノワイヤーの長手方向)において凹部と凸部とが連続的に繰り返されている。本発明のナノワイヤーが粒子連結形状を有する場合、本発明のナノワイヤーは、厳密かつ明確に上記のような粒子連結形状を有さなければならないというわけではなく、ナノワイヤーの長手方向において凹部と凸部とが連続的に繰り返されて、後述のような特定の凹凸の関係を有していればよい。
【0035】
本発明のナノワイヤーが粒子連結形状を有する場合、本発明のナノワイヤーを構成する各粒子は略球形状を有する。略球形状とは円形断面を有する球形状だけでなく、三角形以上の多角形、楕円形またはそれらの複合形状の断面を有する立体形状を包含して意味するものとする。
【0036】
本発明のナノワイヤーが粒子連結形状を有する場合、本発明のナノワイヤーは特定の凹凸の関係を有する。詳しくは、本発明のナノワイヤーは、
図1に示すように、ナノワイヤー1本における直径の最大値をA(nm)、最小値をB(nm)とした場合に、A/B値は、酸化劣化の進行の抑制の観点から、1.1以上であることが好ましく、より好ましくは1.3以上であり、さらに好ましくは1.5以上であり、十分に好ましくは1.6以上である。A/B値の上限値は特に限定されず、A/B値は通常、10以下であり、酸化劣化の進行の抑制の観点から、好ましくは8以下であり、より好ましくは6以下であり、さらに好ましくは4以下であり、十分に好ましくは3以下であり、より十分に好ましくは2以下である。本発明のナノワイヤーが複数のナノワイヤーである場合、A/B値は、任意の100本のナノワイヤーについてのA/B値の平均値である。
【0037】
本発明のナノワイヤーにおいて、直径の最大値Aは通常、50~500nm、特に50~400nmであり、酸化劣化の進行の抑制の観点から、好ましくは50~300nm、より好ましくは60~200nm、さらに好ましくは80~200nm、最も好ましくは100~150nmである。本発明のナノワイヤーが複数のナノワイヤーである場合、最大値Aは、任意の100本のナノワイヤーについての平均値である。
【0038】
本発明のナノワイヤーにおいて、直径の最小値Bは通常、10~200nm、特に20~200nmであり、酸化劣化の進行の抑制の観点から、好ましくは30~150nm、より好ましくは30~90nm、さらに好ましくは40~90nmである。本発明のナノワイヤーが複数のナノワイヤーである場合、最小値Bは、任意の100本のナノワイヤーについての平均値である。
【0039】
本発明において直径は、ナノワイヤーの長手方向に対する垂直断面における直径を意味し、直径の最大値および最小値はナノワイヤーのTEM画像において読み取ることができる。本発明のナノワイヤーは、1本のナノワイヤーにおいて端部ではないところで直径の最大値Aを提供する。端部とはナノワイヤーの端から100nm以内のところである。
【0040】
本発明のナノワイヤーの平均径は、製法上50nm以上となる。前記平均径は、300nm以下とすることが好ましく、インクが作製しやすいため、75~200nmとすることがより好ましい。
【0041】
平均径は、本発明のナノワイヤーが複数のナノワイヤーである場合において、SEM写真において任意の10視野の各々における任意の10点(合計100点)での直径の平均値である。
【0042】
本発明のナノワイヤーの長さは、5μm以上とすることが好ましく、10μm以上とすることがより好ましく、15μm以上とすることがさらに好ましく、20μm以上とすることが十分に好ましくい。一方、本発明のナノワイヤーの長さは、50μm以下とすることが好ましく、分散時の切断等を抑制するため、30μm以下とすることがより好ましい。本発明のナノワイヤーが複数のナノワイヤーである場合、長さは、SEM写真において任意の10視野の各々における任意の10点(合計100点)での長さの平均値(平均長)である。
【0043】
本発明のナノワイヤーのアスペクト比(長さ/直径)は、50以上とすることが好ましく、100以上とすることがより好ましい。特に透明導電膜のような透明性を求める用途に用いる場合、アスペクト比は大きい方が好ましい。アスペクト比の上限値は特に限定されず、アスペクト比は通常、1000以下、特に500以下であってもよい。アスペクト比を算出する際の直径は最大値Aと最小値Bの平均値を用いている。本発明のナノワイヤーが複数のナノワイヤーである場合、アスペクト比は、平均長/平均径で算出される値である。
【0044】
[ナノワイヤーの製造方法]
本発明のナノワイヤーの製造方法は特に限定されるものではないが、工業的に利用しやすいことから、鉄ナノワイヤーを作製したのち、一部の鉄を銅で置換する方法が好ましい。本発明のナノワイヤーの製造方法は複数のナノワイヤーの製造方法を提供する。
【0045】
鉄ナノワイヤーは、磁場中で鉄イオンを還元させて作製することができる。具体的には、鉄塩を溶媒に溶解した後、磁場中で還元剤を用いて鉄イオンを還元することにより作製することができる。
【0046】
鉄塩としては、例えば、塩化鉄、硫酸鉄が挙げられる。鉄塩は、水和物であってもよい。
【0047】
溶媒中の鉄塩は、10~100mmol/kgの濃度で還元することが好ましい。前記濃度が10mmol/kg未満の場合、生成効率が悪くなる場合があり、前記濃度が100mmol/kgを超える場合、得られるナノワイヤーが凝集し分散性が不良となる場合がある。上記鉄塩の濃度は磁場を印加して撹拌するときの反応溶液での濃度である。
【0048】
溶媒は、沸点が80℃以上で極性の高い溶媒が好ましく、エチレングリコールやプロピレングリコール等のポリオール、水がより好ましい。
【0049】
還元剤は、還元電位の観点から、水素化ホウ素ナトリウムを用いることが好ましい。還元剤は、原料塩に対して1.1モル比以上添加することが好ましい。還元剤の濃度としては、50~500mmol/kgとすることが好ましい。還元剤の濃度が50mmol/kg未満の場合、鉄イオンが還元せず、収率が著しく低下する場合がある。一方、還元剤の濃度が500mmol/kgを超える場合、還元効率が飽和する。上記還元剤の濃度は磁場を印加して撹拌するときの反応溶液での濃度である。
【0050】
鉄イオンを還元する際、鉄塩と還元剤以外に、水酸化ナトリウムとアンモニアを添加することが必要である。水酸化ナトリウムを添加することにより、反応溶液をアルカリ性とし、還元反応を促進させることができる。一方、水酸化ナトリウムは一部の鉄イオンと反応し水酸化鉄を形成し、収率および精製の効率を低下させる。本発明においては、収率および精製効率の低下を抑制するため、アンモニアを用いることが必要である。アンモニアを用いることによりアンミン錯体が形成され水酸化鉄を溶解することができる。水酸化ナトリウムは、反応溶液のpHが11~13になるように添加することが好ましく、アンモニアは、反応溶液中で0.5~5質量%になるように添加することが好ましい。
【0051】
水酸化ナトリウムを添加して反応溶液のpHを11~13とすることで、ナノワイヤー形成後、すぐに表面に不働態層が形成させることができる。
【0052】
ナノワイヤーを作製する際、錯形成剤として、クエン酸三ナトリウムを、鉄塩に対して5~20モル比添加することが好ましい。
【0053】
還元反応は、85~95℃(特に90~95℃)でおこなうことが好ましい。還元反応の温度が85℃よりも低い場合、反応に時間がかかり、前記温度が95℃よりも高い場合、ナノワイヤーが生成されない場合がある。還元反応を85~95℃でおこなうことにより、ナノワイヤーは5~15分で得ることができる。
【0054】
還元反応中、磁場を印加する。磁場の印加は磁気回路等でおこなうことができ、50~150mT(特に100~150mT)程度の磁場をかければよい。
【0055】
得られた鉄ナノワイヤーは精製し、鉄の純度を90質量%以上とすることが好ましい。精製後のナノワイヤーの鉄の純度が90質量%未満である場合、使用時にナノワイヤーに含まれる不純物の溶出などが起こる場合がある。
【0056】
精製した鉄系ナノワイヤーを0.5質量%程度の濃度で、硝酸銅等の銅イオンを含む水溶液と混合することより、ナノワイヤー表面の鉄を置換しながら銅を析出させることができる。鉄は銅よりも還元電位が小さいため、通常、ナノワイヤーのような細いものはすぐに置換され、鉄ナノワイヤーは銅ナノワイヤーとなる。しかしながら、本発明では、鉄ナノワイヤーの形成時に水酸化ナトリウムとアンモニア水を用いることで鉄系ナノワイヤーの表面に、鉄と銅からなる不働態層を緻密に形成させることができ、鉄から銅への置換速度や置換率を制御することができる。そのため、本発明においては、コアに鉄、表面に鉄と銅の混合物からなる不働態層を配したナノワイヤーを作製することができる
【0057】
銅イオンを含む水溶液は、銅含有化合物を水に溶解させることにより得ることができる。銅含有化合物は、水への溶解により銅イオンを提供できる化合物であれば特に限定されず、例えば、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅、酢酸銅等が挙げられる。反応溶液中の銅含有化合物の溶解量は、特に限定されず、例えば、0.1~5.0質量%、特に0.1~2.0質量%であってもよい。
【0058】
鉄ナノワイヤーと銅イオンを含む水溶液との混合後は通常、1~60分間(特に3~40分間撹拌する。
【0059】
本発明のナノワイヤー中の銅の量は、例えば、反応溶液中の銅含有化合物の溶解量、ならびに鉄ナノワイヤーと銅イオンを含む水溶液との撹拌時間を調整することにより制御できる。例えば、当該溶解量が多いほど、または当該撹拌時間が長いほど、ナノワイヤー中の銅の量は増加する。また例えば、当該溶解量が少ないほど、または当該撹拌時間が短いほど、ナノワイヤー中の銅の量は低減する。
【0060】
鉄ナノワイヤーの一部の鉄を銅に置換したあと、ナノワイヤーはフィルター等で精製することが好ましい。
【0061】
精製後、バインダー、増粘剤、レベリング剤、溶剤等の各種材料と混合することによりインクとすることができる。
【0062】
本発明のナノワイヤーは、電波吸収材、センサーとして好適に用いることができる。
【実施例0063】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0064】
A.各種評価
(1)ナノワイヤーの金属比率
乾燥したナノワイヤー50mgを希塩酸希硝酸混合溶液に溶解し、ICP-AES法により、Ag、Ni、Cu標準液を用いて検量線法により、Ni、Ag、Cuの含有量を定量した。
【0065】
(2)ナノワイヤーの平均長、平均径、アスペクト比
乾燥したナノワイヤー1gを、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察しやすい倍率で撮影した。任意の10視野について、各視野中における任意の10点において、ナノワイヤーの長さ、径を測定し、アスペクト比を算出し(合計100点)、長さ、径、アスペクト比それぞれの平均値を算出した。
【0066】
(3)ナノワイヤーの形状
乾燥したナノワイヤー1gを、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察しやすい倍率で撮影し、棒状か粒子連結状かを判断した。
ナノワイヤー1本における径の最大値と最小値を任意の100本について測定し、最大値/最小値を求め、平均値を算出した。
【0067】
(4)ナノワイヤーの断面の元素分析
乾燥したナノワイヤー1gをエポキシ接着剤と混合し、硬化後切削したナノワイヤーの断面をSEM-EDSで元素分布をマッピングした。詳しくは、任意の100本のナノワイヤーの各々について、以下の測定を行った。)マッピング図の各元素の濃淡から表面層から3nmに光線をあてると内部(中心部に光線をあてる)の主金属元素を決定した。また、表面層および内部の各々において任意の5点の元素分析により銅の質量比(平均値)および鉄の質量比(平均値)を算出した。それらの結果より、任意の100本のナノワイヤーについての平均値を求めた。
【0068】
(5)上澄み液中の金属イオン量
イソプロパノール中において、ナノワイヤーの濃度を0.5質量%に調整したインクを作製し、3日間保管した。その後、上澄み液を回収し、フィルターを用いてナノワイヤーを除去し、上澄み液中のナノワイヤーから溶出した金属イオン量をICP-AES法にて定量した。
【0069】
実施例1
塩化鉄(II)四水和物8.55質量部(43モル部)を水300質量部に溶解し、中心磁場が130mTの磁気回路に入れ、水素化ホウ素ナトリウム7.00質量部(185モル部)を水175質量部に溶解した水溶液を15分かけて滴下した。
その後、磁場の印加を停止し、反応液を200質量部の水酸化ナトリウム水溶液に注いで希釈し、pHを約12に調整した。室温で、1時間反応させた後、生じた黒色のナノワイヤーをT100A090CのPTFE製フィルターを用いてろ過回収後、水、メタノールでそれぞれ3回ずつ洗浄し、室温で24時間真空乾燥して鉄系ナノワイヤーを得た。
得られた鉄系ナノワイヤーを0.5質量%になるように0.3質量%硝酸銅三水和物水溶液に混ぜ、5分間撹拌した。その後、再度フィルターで回収し、水で3回洗浄した後、一部が銅で置換されている鉄系ナノワイヤーを得た。
【0070】
実施例2
塩化鉄(II)四水和物26.0質量部(131モル部)、塩化ニッケル六水和物7.78質量部(32.7モル部)を水1556.22質量部に溶解し、中心磁場が130mTの磁気回路に入れ(塩化鉄(II):塩化ニッケルのモル比率は80:20)、水素化ホウ素ナトリウム12.4質量部(327モル部)を水310質量部に溶解した水溶液を15分かけて滴下した。
磁場の印加を停止し、反応液を200質量部の水酸化ナトリウム水溶液に注いで希釈し、pHを約12に調整した。室温で、1時間反応させた後、生じた黒色の固体をT100A090CのPTFE製フィルターを用いてろ過回収後、水、メタノールでそれぞれ3回ずつ洗浄し、室温で24時間真空乾燥して鉄系ナノワイヤーを得た。
得られたナノワイヤーを0.5質量%になるように0.3質量%硝酸銅三水和物水溶液に混ぜ、5分間撹拌した。その後、再度フィルターで回収し、水で3回洗浄した後、一部が銅で置換されている鉄系ナノワイヤーを得た。
【0071】
比較例1
塩化鉄(II)四水和物8.55質量部(43モル部)を水300質量部に溶解し、中心磁場が130mTの磁気回路に入れ、水素化ホウ素ナトリウム7.00質量部(185モル部)を水175質量部に溶解した水溶液を15分かけて滴下した。
その後、磁場の印加を停止し、反応液を200質量部の水酸化ナトリウム水溶液に注いで希釈し、pHを約12に調整した。室温で、1時間反応させた後、生じた黒色のナノワイヤーをT100A090CのPTFE製フィルターを用いてろ過回収後、水、メタノールでそれぞれ3回ずつ洗浄し、室温で24時間真空乾燥して鉄系ナノワイヤーを得た。
【0072】
比較例2
塩化鉄(II)四水和物8.55質量部(43モル部)を水300質量部に溶解し、中心磁場が130mTの磁気回路に入れ、水素化ホウ素ナトリウム7.00質量部(185モル部)を水175質量部に溶解した水溶液を15分かけて滴下した。
その後、磁場の印加を停止し、反応液を200質量部の水酸化ナトリウム水溶液に注いで希釈し、pHを約12に調整した。室温で、1時間反応させた後、生じた黒色のナノワイヤーをT100A090CのPTFE製フィルターを用いてろ過回収後、水、メタノールでそれぞれ3回ずつ洗浄し、室温で24時間真空乾燥して鉄系ナノワイヤーを得た。
得られたナノワイヤーを0.5質量%になるように0.3質量%硝酸銅三水和物水溶液に混ぜ、5時間撹拌した。その後、再度、T100A090CのPTFE製フィルターを用いてろ過回収後、水で3回洗浄した後、室温で24時間真空乾燥して、一部が銅で置換されている鉄系ナノワイヤーを得た。
【0073】
得られたナノワイヤーの特性値およびその評価を表1に示す。
【0074】
【0075】
実施例1、2の一部が銅で置換されている鉄系ナノワイヤーは、インクを3日間保管後にナノワイヤー除去した後の上澄み液の金属イオン量が少なく酸化劣化の進行されにくいものであった。
【0076】
比較例1、2の鉄系ナノワイヤーおよび鉄/ニッケルナノワイヤーは、インクを3日間保管後にナノワイヤー除去した後の上澄み液の金属イオン量が多かった。