(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019153
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】スチレン系樹脂組成物、及び成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 25/08 20060101AFI20240201BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20240201BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20240201BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C08L25/08
C08L33/14
C08K5/05
C08K5/17
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123875
(22)【出願日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2022122340
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】500199479
【氏名又は名称】PSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】小林 松太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩本 大和
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BC04W
4J002BG07X
4J002EE037
4J002EF097
4J002EH097
4J002EH127
4J002EU076
4J002EU187
4J002FD046
4J002FD057
4J002GG01
4J002GG02
4J002GL00
4J002GN00
4J002GP00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】本開示は、耐熱性及び透明性を低下させることなく、耐候性、機械的強度及び耐油性に優れた成形体に使用される、スチレン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示は、スチレン系単量体単位(1)及び不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)を有するスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)10質量%以上100質量%以下と、
不飽和カルボン酸系単量体単位(b1)を有する(メタ)アクリル系樹脂(B)0質量%以上90質量%以下と、を含有するスチレン系樹脂組成物であって、
前記スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対し、光安定剤(C)0~2.0質量%及び紫外線吸収剤(D)0.001~2.0質量%を含有する、スチレン系樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系単量体単位(1)及び不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)を有するスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)10質量%以上100質量%以下と、
不飽和カルボン酸系単量体単位(b1)を有する(メタ)アクリル系樹脂(B)0質量%以上90質量%以下と、を含有するスチレン系樹脂組成物であって、
前記スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対し、光安定剤(C)0~2.0質量%及び紫外線吸収剤(D)0.001~2.0質量%を含有する、スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
スチレン系単量体単位(1)及び不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)を有するスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)10質量%以上100質量%未満と、
不飽和カルボン酸系単量体単位(b1)を有する(メタ)アクリル系樹脂(B)0質量%超90質量%以下と、を含有するスチレン系樹脂組成物であって、
前記スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対し、光安定剤(C)0.001~2.0質量%及び紫外線吸収剤(D)0.001~2.0質量%を含有する、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記スチレン系樹脂の総量(100質量%)に対して、炭素原子数10以上の一価アルコール(E)0.001~1.0質量%をさらに含有する、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記光安定剤(C)がヒンダートアミン系化合物である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記紫外線吸収剤(D)が、一般式(d)及び一般式(d’):
【化1】
(上記一般式(d)中、M
diはそれぞれ独立して、一価以上の芳香族基を表し、L
diはそれぞれ独立して、二価~五価の基を表し、R
dは、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、R
1は炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数7~25のアラルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-又は-C(=O)-に置換されてもよく、前記アラルキル基中のベンゼン環の1以上の水素原子はフェノール性水酸基、炭素原子数1~15のアルキル基又は縮合環(複素環を含む。)に置換されてもよく、d1は0以上4以下の整数を表し、d2は1以上4以下の整数を表す。なお、上記一般式(d)中におけるM
diとL
diとを結ぶ波線は、単結合以上の化学結合を1以上有することを表す。)
【化2】
(上記一般式(d’)中、R
5~R
7はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、フェニル基、炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数1~15のアルケニル基又は炭素原子数7~25のアラルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-、又は-C(=O)-に置換されてもよく、前記アラルキル基中のベンゼン環の1以上の水素原子はフェノール性水酸基、炭素原子数1~15のアルキル基又は縮合環(複素環(例えばベンゾトリアゾール環)を含む。)に置換されてもよく、
R
8はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数1~15のアルケニル基又は炭素原子数7~25のアラルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-、又は-C(=O)-に置換されてもよく、前記アラルキル基中のベンゼン環の1以上の水素原子はフェノール性水酸基、炭素原子数1~15のアルキル基又は縮合環(複素環(例えばベンゾトリアゾール環)を含む。)に置換されてもよく、
d5は0以上4以下の整数を表し、d5が2以上である場合、R
8は互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。)
で表される化合物からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及びヒンダードフェノール骨格を有するリン系酸化防止剤からなる群から選択される1種又は2種以上の酸化防止剤をそれぞれ0.001~0.5質量%含有する、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項7】
前記スチレン系樹脂組成物の5kg荷重ビカット軟化温度(ISO306準拠)が105℃以上である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル系樹脂(B)は、メタアクリル酸エステル単量体単位とアクリル酸エステル単量体単位とを含有する共重合体である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項9】
前記スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)全体に対して前記不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)の含有量は、8.5質量%以上である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項10】
前記不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)が、(メタ)アクリル酸単量体単位(a1―1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1―2)からなる群から選択される1種又は2種以上であり、
前記スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)は、前記スチレン系単量体単位(1)と前記(メタ)アクリル酸単量体単位(a1―1)と前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1―2)とを有する共重合体(A1)である、請求項9に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項11】
前記スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の5kg荷重ビカット軟化温度(ISO306準拠)が120℃以上である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項12】
JIS K 5600-5-4に記載の引っかき硬度(鉛筆法)に準拠し、鉛筆の芯の先端荷重750g、鉛筆角度45度、引っかき速度0.5~1.0mm/秒で測定される表面引っ掻き硬度がH以上である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項13】
前記スチレン系樹脂の総量(100質量%)に対して、離型剤(F)0.001~2.0質量%をさらに含有する、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物を射出成形してなる、射出成型品。
【請求項15】
請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物を含む照明カバー。
【請求項16】
請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物を射出成形してなる、車載用射出成型品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スチレン系樹脂組成物、並びに該スチレン系樹脂組成物を用いて成形される射出成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン-メタクリル酸共重合樹脂等に代表されるスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂は、耐熱性、透明性、剛性、外観に優れ、且つ安価なことから、弁当、惣菜等の食品容器の包装材料、住宅の断熱材用の発泡ボード、照明器具等のハウジング材、拡散剤を入れた液晶テレビの拡散板又は導光板等に広く用いられている。中でも、液晶テレビのバックライトに使用される拡散板又は導光板としては、透明性に優れるアクリル樹脂が広く使用されている。しかし、アクリル樹脂自身の持つ高い吸湿性により寸法変化率が大きくなり、かつ耐熱性が低いため、特に車載用拡散板又は導光板に要求される特性を満たしていないのが現状である。
例えば、特許文献1には、スチレン-(メタ)アクリル酸系共重合樹脂と、エーテル化合物及び/又はC6以上のアルコールと、フェノール系酸化防止剤及び/又はリン系酸化防止剤とを含有する組成物により、色相及び透明性に優れ、長期間の光暴露によっても色相の変化が小さくなる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1の技術では、透明性及び黄色度変化については検討しているものの、機械強度、耐油性、耐傷性については不十分であった。特に長期間に渡って人が直接手で触れえる箇所における使用用途を加味すると、従来のスチレン-不飽和カルボン酸樹脂では人の手に着した油分によって当該樹脂が侵され、例えば、透明板の割れや白化を招くことから、油分に対する耐性が求められている。
そこで、本開示が解決する課題は、耐熱性及び透明性を低下させることなく、耐候性、機械的強度及び耐油性に優れた成形体に使用される、スチレン系樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記問題点に鑑みて鋭意研究を進めた結果、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)と光安定剤(C)と紫外線吸収剤(D)とをそれぞれ所定量含有することにより、耐熱性及び透明性を低下させることなく、耐候性、機械的強度及び耐油性に優れたスチレン系樹脂組成物及びそれを用いた車載向け成形品の実現に成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本開示は以下の通りである。
【0006】
[1]本開示は、スチレン系単量体単位(1)及び不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)を有するスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)10質量%以上100質量%以下と、
不飽和カルボン酸系単量体単位(b1)を有する(メタ)アクリル系樹脂(B)0質量%以上90質量%以下と、を含有するスチレン系樹脂組成物であって、
前記スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対し、光安定剤(C)0~2.0質量%及び紫外線吸収剤(D)0.001~2.0質量%を含有する、スチレン系樹脂組成物である。
【0007】
[2]スチレン系単量体単位(1)及び不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)を有するスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)10質量%以上100質量%未満と、
不飽和カルボン酸系単量体単位(b1)を有する(メタ)アクリル系樹脂(B)0質量%超90質量%以下と、を含有するスチレン系樹脂組成物であって、
前記スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対し、光安定剤(C)0.001~2.0質量%及び紫外線吸収剤(D)0.001~2.0質量%を含有する、[1]に記載のスチレン系樹脂組成物。
【0008】
[3]前記スチレン系樹脂組成物の総量に対して、炭素原子数10以上の一価アルコール(E)0.001~1.0質量%をさらに含有する、[1]又は[2]に記載のスチレン系樹脂組成物。
【0009】
[4]前記光安定剤(C)がヒンダートアミン系化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
【0010】
[5]前記紫外線吸収剤(D)が、一般式(d)及び一般式(d’):
【化1】
(上記一般式(d)中、M
diはそれぞれ独立して、一価以上の芳香族基を表し、R
dは水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、L
diはそれぞれ独立して、二価~五価の基を表し、R
1は炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数7~25のアラルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-又は-C(=O)-に置換されてもよく、前記アラルキル基中のベンゼン環の1以上の水素原子はフェノール性水酸基、炭素原子数1~15のアルキル基又は縮合環(複素環(例えば、ベンゾトリアゾール環)を含む。)に置換されてもよく、d1は0以上4以下の整数を表し、d2は1以上4以下の整数を表す。なお、上記一般式(d)中におけるM
diとL
diとを結ぶ波線は、単結合以上の化学結合を1以上有することを表す。)
【化2】
(上記一般式(d’)中、R
5~R
7はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、フェニル基、炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数1~15のアルケニル基又は炭素原子数7~25のアラルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-、又は-C(=O)-に置換されてもよく、前記アラルキル基中のベンゼン環の1以上の水素原子はフェノール性水酸基、炭素原子数1~15のアルキル基又は縮合環(複素環(例えばベンゾトリアゾール環)を含む。)に置換されてもよく、
R
8はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数1~15のアルケニル基又は炭素原子数7~25のアラルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-、又は-C(=O)-に置換されてもよく、前記アラルキル基中のベンゼン環の1以上の水素原子はフェノール性水酸基、炭素原子数1~15のアルキル基又は縮合環(複素環(例えばベンゾトリアゾール環)を含む。)に置換されてもよく、
d5は0以上4以下の整数を表し、d5が2以上である場合、R
8は互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。)
で表される化合物からなる群から選択される1種又は2種以上である、[1]~[4]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
【0011】
[6]フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及びヒンダードフェノール骨格を有するリン系酸化防止剤からなる群から選択される1種又は2種以上の酸化防止剤をそれぞれ0.001~0.5質量%含有する、[1]~[5]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
【0012】
[7]前記スチレン系樹脂組成物の5kg荷重ビカット軟化温度(ISO306準拠)が105℃以上である、[1]~[6]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
【0013】
[8]前記(メタ)アクリル系樹脂(B)は、メタアクリル酸エステル単量体単位とアクリル酸エステル単量体単位とを含有する共重合体である、[1]~[7]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
【0014】
[9]前記スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)全体に対して前記不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)の含有量は、8.5質量%以上である、[1]~[8]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
【0015】
[10]前記不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)が、(メタ)アクリル酸単量体単位(a1―1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1―2)からなる群から選択される1種又は2種以上であり、
前記スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)は、前記スチレン系単量体単位(1)と前記(メタ)アクリル酸単量体単位(a1―1)と前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1―2)とを有する共重合体(A1)である、[1]~[9]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
【0016】
[11]前記スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)のビカット軟化温度が120℃以上である、[1]~[10]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
【0017】
[12]JIS K 5600-5-4に記載の引っかき硬度(鉛筆法)に準拠し、鉛筆の芯の先端荷重750g、鉛筆角度45度、引っかき速度0.5~1.0mm/秒で測定される表面引っ掻き硬度がH以上である、[1]~[11]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
【0018】
[13]前記スチレン系樹脂組成物の総量に対して、離型剤(F)0.001~2.0質量%をさらに含有する、[1]~[12]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物。
【0019】
[14][1]~[13]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物を射出成形してなる、射出成型品。
【0020】
[15][1]~[14]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物を含む照明カバー。
【0021】
[16][1]~[15]のいずれかに記載のスチレン系樹脂組成物を射出成形してなる、車載用射出成型品。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、耐熱性及び透明性を低下させることなく、耐候性、機械的強度及び耐油性、に優れた成形体に使用される、スチレン系樹脂組成物を提供することができる。
本開示によれば、耐熱性及び透明性を低下させることなく、耐候性、機械的強度及び耐油性に優れた、車載向け成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0024】
[スチレン系樹脂組成物]
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ということもある。)は、スチレン系単量体単位(1)及び不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)を有するスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)と、不飽和カルボン酸系単量体単位(b1)を有する(メタ)アクリル系樹脂(B)と、含有し、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、前記スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の含有量が10質量%以上100質量%以下であり、前記(メタ)アクリル系樹脂(B)の含有量が0質量%以上90質量%であり、光安定剤(C)を0~2.0質量%、紫外線吸収剤(D)を0.001~2.0質量%含有する樹脂組成物である。
また、本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、必要により、炭素原子数10以上のアルコール(E)及び離型剤(F)からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
これにより、耐熱性及び透明性を低下させることなく、耐候性、機械強度及び耐油性に優れたスチレン系樹脂組成物を提供することができる。
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物において、ビカット軟化温度が110℃以上であることが好ましい。
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物において、表面引っ掻き硬度(鉛筆法)がH以上であることが好ましい。
【0025】
「スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)」
本実施形態におけるスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)は、スチレン系単量体単位(1)と不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)とを必須成分としてなる共重合樹脂(以下単に樹脂(A)ともいう)であり、スチレン系樹脂組成物全体の耐熱性向上に寄与する。また、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)は、必要により、スチレン系単量体単位(1)及び不飽和カルボン酸系単量単位(a1)の必須成分以外のその他単量体単位(a2)をさらに有してもよい。
【0026】
スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の含有量は10質量%以上100質量%以下であり、10質量%以上100質量%未満であり、10~98質量%であることが好ましい。スチレン系樹脂組成物におけるスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の含有量の下限値としては17質量%、27質量%、37質量%、47質量%、53質量%以上、56質量%以上、59質量%以上、62質量%以上、65質量%以上、68質量%以上、70質量%以上の順でより好ましく、上限値としては、97質量%以下、95質量%以下、92質量%以下、89質量%以下、86質量%以下、83質量%以下、80質量%以下、80質量%未満、79質量%以下、78質量%以下、77質量%以下、76質量%以下、75質量%以下、74質量%以下、71質量%以下の順でより好ましい。スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の含有量は前記上限値と下限値の任意の組み合わせとしてよい。
【0027】
特にスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の含有量を10質量%以上にすることで、スチレン系樹脂組成物へ流動性を付与し、成形サイクルに優れた樹脂組成物を得ることができ、50質量%以上とすることで、耐熱性に優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。98質量%以下にすることにより、後述の(メタ)アクリル酸系樹脂(B)による耐油性の向上効果を十分に得ることができる。
【0028】
<スチレン系単量体(1)>
本実施形態のスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)において、前記スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の総量に対して、スチレン系単量体単位(1)の含有量は60~98質量%であり、好ましくは70~97質量%、より好ましくは80~96質量%、より更に好ましくは82~95質量%、よりさらに好ましくは83~94質量%、より更に好ましくは83~91質量%、特に好ましくは85~91.5質量%である。スチレン系単量体単位(1)の含有量が60質量%より少ないと流動性の低下を招き、98質量%よりも多いと後述の不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)を所望量含有させにくくなり、不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)(特に、(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1))による耐熱性の向上効果が十分に得られない。
また、本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、スチレン系単量体単位(1)が、前記スチレン系樹脂組成物の総量に対して50~85質量%含有することが好ましく、好ましくは52~82質量%、より好ましくは54~79質量%、より更に好ましくは56~77質量%である。組成物全体におけるスチレン系単量体(1)の含有量が上記範囲であると、耐油性の向上効果を十分に得ることができる。
【0029】
本実施形態において、スチレン系単量体(1)としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、パラメチルスチレン、オルトメチルスチレン、メタメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。特に工業的観点からスチレン及びα-メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。スチレン系単量体(1)としては、これらを単独又は2種以上混合して使用できる。
なお、本明細書における「スチレン系単量体単位(1)」とは、スチレン系単量体(1)が重合された高分子を構成する繰返し単位を意味し、スチレン系単量体(1)の重合反応又は架橋反応により、当該スチレン系単量体(1)中の炭素-炭素二重結合が単結合(-C-C-)になった繰返し単位(又は構造単位)である。また、本明細書中のその他の「単量体単位」も同様の意味である。
【0030】
<不飽和カルボン酸系単量体(a1)>
本実施形態のスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)において、不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)は、耐油性、及び後述の(メタ)アクリル系樹脂(B)との相溶性を向上させる役割を果たす。前記スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の総量に対して、前記不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)の含有量は2~40質量%であり、好ましくは3~35質量%、より好ましくは5~30質量%、より更に好ましくは8~25質量%、より更に好ましくは8.5~20質量%、よりさらに好ましくは9.0~18質量%、特に好ましくは10~15質量%の範囲である。不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)の含有量が2質量%未満では耐熱性向上の効果が不十分である。また、不飽和カルボン酸単量体単位(a1)の含有量が40質量%を超える場合は、樹脂粘度の増加による加工性の低下、吸水率上昇による成形時の気泡発生、製造時に粘度が高くなりすぎるため好ましくない。特に不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)の含有量を8.5~20質量%とすることで(メタ)アクリル系樹脂(B)と良好な相溶性を得ることでき、透明性に優れた組成物を得ることができる。
また、本実施形態における不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)としては、不飽和カルボン酸及びそのエステル体を含み、具体的には、(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)が挙げられる。
【0031】
-(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)-
本実施形態において、(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)は耐油性及び耐熱性向上させる役割を果たす。(メタ)アクリル酸単量体(a1-1)としては、アクリル酸又はメタクリル酸が挙げられる。特に工業的観点から(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)としては、これらを単独又は2種以上混合して使用してもよい。(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)は、耐熱性向上効果の大きいメタクリル酸が特に好ましい。
本実施形態において、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の総量に対して、(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)の含有量の範囲は、2~40質量%であることが好ましく、より好ましくは3~20質量%、さらに好ましくは4~17質量%、より更に好ましくは8~14質量%、好ましくは10~13質量%、さらに好ましくは10.3~13質量%、さらに好ましくは10.3~12.5質量%、最も好ましくは10.5~12.5質量%である。(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)の含有量を2質量%以上とすることで耐熱性の向上効果を得ることができ、当該含有量を40質量%以下にすることで粘度が上昇しすぎることを抑えることができる。特に前記含有量を10~13質量%の範囲とすることで、高い耐熱性向上効果と透明シート用途に適用可能な水準にゲル発生を抑えることを両立したスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)を得ることができる。
【0032】
-(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1-2)-
本実施形態において、(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1-2)は耐油性と機械的強度とを向上させる役割を果たす。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1-2)としては、以下の一般式(1)
【化3】
(上記一般式(1)中、R
1は、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、R
2はエステル置換基を表し、具体的には、炭素原子数1~12のアルキル基を表す。)で表されることが好ましい。
本実施形態において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)のエステル置換基(上記一般式(1)中のR
2)の炭素原子数としては、10以下が好ましく、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下、より更に好ましくは4以下、最も好ましくは3以下である。である。10を上回ると耐熱性低下の効果が大きく、好ましくない。
【0033】
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1-2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸(n-ブチル)、(メタ)アクリル酸(t-ブチル)、(メタ)アクリル酸(イソブチル)、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シベンジル、(メタ)アクリル酸(n-オクチル)、(メタ)アクリル酸(2-エチルヘキシル)、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、等が挙げられる。これらは単独で又は混合して使用することができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体(a1-2)としては、工業的に入手し易い点から(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸(n-ブチル)、(メタ)アクリル酸(n-オクチル)、(メタ)アクリル酸(2-エチルヘキシル)が好ましく、耐熱性低下を抑えられる点からメタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0034】
本実施形態において、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の総量に対して、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)の含有量の範囲は、例えば、0~50質量%であることが好ましく、より好ましくは1~20質量%、さらに好ましくは2~17質量%、より更に好ましくは3~12質量%、更により好ましくは4~10質量%である。
【0035】
<スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の好ましい形態>
本実施形態のスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)を含有する多元重合体であってもよい。すなわち、本実施形態のスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)は、スチレン系単量体(1)及び(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)の二元共重合体の他に、スチレン系単量体(1)と(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)とが共重合された三元共重合体であってもよい。これにより、(メタ)アクリル樹脂(B)との相溶性、表面硬度の向上、又は機械強度の向上の効果がさらに得られる。
特に、耐熱性及び表面硬度の向上を重視する場合、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)を含有することが好ましい。また、特に、外観及び機械強度の向上を重視する場合、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)を含有することが好ましい。さらには、(メタ)アクリル系樹脂(B)との相溶性向上及びその樹脂(B)との混合物に対して高い透明性を重視する場合、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)は、スチレン系単量体(1)と(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)とが共重合された三元共重合体であることが好ましい。
また、ポリマー連鎖中で(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)等の不飽和カルボン酸エステル単量体単位が(メタ)アクリル酸単位(a1-1)等の不飽和カルボン酸単量体単位と隣り合わせに配置されると、不飽和カルボン酸同士の架橋反応を抑制するなどの効果が得られる。
また、さらにスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)は、スチレン系単量体(1)と(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)とが共重合された三元共重合体であることが好ましい。スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)は、スチレン系単量体(1)と(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)とが共重合された三元共重合体であれば、当該スチレン系樹脂組成物から成る部材と(メタ)アクリル樹脂から成る部材との接着強度を高くすることができる。また、耐熱性、耐光性、耐油性、表面硬度にも効果が得られる。
本実施形態におけるスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)が、スチレン系単量体単位(1)、(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)、及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)を有する場合、前記スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の総量に対して、(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)の含有量は2~30質量%であり、かつ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)の含有量は0~20質量%であることが好ましく、より好ましくは、(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)の含有量は3~20質量%であり、かつ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)の含有量は1~17質量%であり、更に好ましくは、(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)の含有量は3.4~25質量%であり、かつ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)の含有量は3~15質量%であり、より更に好ましくは、(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)の含有量は6~14質量%であり、かつ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)の含有量は4~10質量%であり、より更に好ましくは、(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)の含有量は9~12.5質量%であり、かつ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)の含有量は4.5~7.1質量%であり、最も好ましくは(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)の含有量は10.5~12.5質量%であり、かつ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)の含有量は4.5~7.1質量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)の含有量を20質量%以下に抑えることで、成形加工時の流動性に優れた樹脂組成物を得ることができ、特に(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量を9質量%以上、より好ましくは10.3質量%以上、さらにより好ましくは10.5質量%以上とすることで耐熱性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0036】
スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)が、スチレン系単量体(1)と(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)とが共重合された三元共重合体である場合、前記スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の総量に対して、(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)の含有量は10.5~12.5質量%であり、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)の含有量は4.5~7.1質量%であり、かつ(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)がメタクリル酸メチルである。これにより優れた成形性、耐熱性、耐光性、耐油性、表面硬度のバランスを有するスチレン系樹脂組成物を得ることかできる。
【0037】
<その他単量体(a2)>
本実施形態におけるスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)は、上述した、スチレン系単量体単位(1)及び不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)((メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)を含む。)以外のその他単量体単位(a2)をさらに有してもよい。
すなわち、本実施形態において、当該その他単量体単位(a2)は、スチレン系単量体(1)、不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)((メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)を含む。)と共重合可能であれば発明の効果を損なわない範囲で、特に制限されることなく、上記に示した2つの単量体以外の単量体と共重合してよい。
例えば上記に示した3つの単量体以外のその他単量体(a2)としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、マレイミド、及び核置換マレイミド等が挙げられる。
本実施形態において、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)がその他単量体(a2)を有する場合、前記スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の総量に対して、その他単量体(a2)の含有量は、12質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。
【0038】
<スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の特性>
本実施形態におけるスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)中の、スチレン系単量体単位(1)、不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)((メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)を含む。)及びその他単量体単位(a2)の含有量は、熱分解GC/MSを用いて各単量体単位が既知の樹脂により作成した検量線により定量することができる。
本実施形態におけるスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の200℃でのメルトフローレートは、好ましくは0.3~3.0、より好ましくは0.4~2.5、更に好ましくは0.5~2.0、より更に好ましくは0.5~1.8、より更に好ましくは0.5~1.1、より更に好ましくは0.5~1.0の範囲である。上記メルトフローレートが0.3以上である場合、流動性の観点で好ましく、3.0以下である場合、樹脂の機械的強度の観点で好ましい。本開示で、メルトフローレートは、ISO 1133に準拠して、200℃、荷重5kg(49N)にて測定される値である。
【0039】
本実施形態におけるスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、10万~40万であることが好ましく、より好ましくは12万~32万、更に好ましくは14万~28万、より更に好ましくは16万~24万、最も好ましくは17~21万の範囲である。重量平均分子量が10万~40万である場合、衝撃強度と流動性とのバランスの実用性に優れる樹脂が得られる。重量平均分子量及び数平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィーによりポリスチレン標準換算で測定できる。
【0040】
本実施形態のスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の数平均分子量(Mn)は、4万~15万であることが好ましく、更に好ましくは5万~12万、より更に好ましくは6万~10万である。
【0041】
本実施形態のスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)のZ平均分子量(Mz)は、20万~80万であることが好ましく、更に好ましくは25万~50万、より更に好ましくは30万~45万である。
【0042】
本実施形態におけるスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)のビカット軟化温度は、好ましくは105~140℃、より好ましくは107~135℃、更に好ましくは108~130℃、より更に好ましくは115℃~127℃、より更に好ましくは120℃~125℃、より更に好ましくは121~125℃である。スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)のビカット軟化温度を105℃以上にすることで、組成物の耐熱性向上効果を得ることができ、140℃以下にすることで(メタ)アクリル系樹脂(B)と混練しやすくなる。特に120℃以上とすることで耐熱性に優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。本明細書中におけるビカット軟化温度の測定方法はISO 306に準拠して、5kg荷重、昇温速度50℃/時間にて測定したものである。
【0043】
<スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の製造方法>
本実施形態のスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の製造法について以下説明する。
本実施形態のスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の製造法は、スチレン系単量体(1)と、不飽和カルボン酸系単量体(a1)((メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2))と、溶媒と、を混合して混合溶液を調製する工程と、前記混合溶液を重合して反応生成物を生成する重合工程と、前記反応生成物を回収する工程とを含むことが好ましい。
スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の重合方法としては、特に制限はないが、例えばラジカル重合法、その中でも、塊状重合法又は溶液重合法を好ましく採用できる。
具体的には、重合方法は、主に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応の単量体、重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程と、を備えるものが好ましい。
【0044】
本実施形態において、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、典型的には重合開始剤を含有させる。重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t-ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t-ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。分解速度と重合速度との観点から、なかでも、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
【0045】
本実施形態において、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の重合時には必要に応じて連鎖移動剤を使用することもできる。連鎖移動剤の例としては、例えば、αメチルスチレンリニアダイマー、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等を挙げることができる。
【0046】
上記スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の重合方法としては、重合溶媒を用いた溶液重合を採用できる。重合溶媒としては、トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等の芳香族溶媒が好ましく、必要に応じてアルコール類又はケトン類などの極性溶媒を組み合わせてスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の溶解性を調整した溶媒系を用いてもよい。
本実施形態において、重合溶媒は、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)を構成する全単量体100質量部に対して、3~35質量部の範囲で使用するのが好ましく、より好ましくは5~30質量部の範囲である。前記全単量体100質量部に対して重合溶媒35質量部を超えると、重合速度が低下し、且つ得られる樹脂分子量も低下するので、樹脂の機械的強度が低下する傾向がある。また、重合溶媒が3質量部未満では重合時に除熱の制御が難しくなる恐れがある。全単量体100質量部に対して3~35質量部の割合で添加しておくことが、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
また、本実施形態のスチレン系樹脂組成物の任意成分である炭素原子数10以上の1価アルコール(E)を重合系から添加する場合は、全重合溶媒100質量%に対して、(C)成分を0.5~10質量%の割合で添加することが好ましい。
【0047】
本実施形態におけるスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)を得るための重合工程で用いる装置は、特に制限はなく、一般的なスチレン系樹脂の重合方法に従って適宜選択すればよい。例えば、塊状重合による場合には、完全混合型反応器を1基、又は複数基連結した重合装置を用いることができる。また脱揮工程についても特に制限はなく、塊状重合で行う場合、最終的に未反応モノマーが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下になるまで重合を進め、かかる未反応モノマー等の揮発分を除去するために、既知の方法にて脱揮処理する。例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができるが、滞留部の少ない脱揮装置が好ましい。なお、脱揮処理の温度は、通常、190~280℃程度であり、分解抑制の観点から190~260℃がより好ましい。また脱揮処理の圧力は、通常0.13~4.0kPa程度であり、好ましくは0.13~3.0kPaであり、より好ましくは0.13~2.0kPaである。脱揮方法としては、例えば加熱下で減圧して揮発分を除去する方法、及び揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去する方法が望ましい。
【0048】
「(メタ)アクリル系樹脂(B)」
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、当該スチレン系樹脂組成物の総量に対して、(メタ)アクリル系樹脂(B)(単に樹脂(B)ともいう)を0質量%以上90質量%以下含有する。そして(メタ)アクリル系樹脂(B)は、不飽和カルボン酸系単量体単位(b1)を有する。(メタ)アクリル系樹脂(B)を所定量含有することにより、スチレン系樹脂組成物全体の耐油性と機械強度の向上に寄与する。
なお、本明細書における(メタ)アクリル系樹脂(B)とは、不飽和カルボン酸系単量体単位(b1)の含有量が(メタ)アクリル系樹脂(B)全体に対して50質量%以上である合成樹脂の総称である。
また、本発明において、(メタ)アクリル系樹脂(B)の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、は後述の実施例の欄に記載の通り、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を使用して、示差屈折率計で検出したデータを基に標準ポリスチレン換算で測定される値である。
【0049】
スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、(メタ)アクリル系樹脂(B)の含有量は、0質量%以上90質量%以下であり、(メタ)アクリル系樹脂(B)含有量の下限値としては、0質量%以上、0質量%超、2質量%以上、10質量%以上、11質量%以上、14質量%以上、17質量%以上、20質量%以上、20質量%超以上、21質量%以上、22質量%以上、23質量%以上、24質量%以上、25質量%以上、26質量%以上、29質量%以上の順で好ましく、上限値としては、83質量%以下、73質量%以下、53質量%以下、44質量%以下、41質量%以下、38質量%以下、34質量%以下、35質量%以下、30質量%以下の順で好ましい。(メタ)アクリル系樹脂(B)の含有量を0質量%超90質量%以下とすることにより、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)によって向上した耐熱性の低下を抑えることができる。特に(メタ)アクリル系樹脂(B)の含有量20質量%超53質量%以下にすることで耐熱性と耐油性のバランスに優れるスチレン系樹脂組成物を得ることができる。
また、特に樹脂の耐熱性、成形性、低吸水性を重視する場合、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、(メタ)アクリル系樹脂(B)の含有量は、0~30質量%であり、好ましくは0~20質量%、より好ましくは0~15質量%、さらにより好ましくは0~10質量%、さらにより好ましくは0~5質量%である。
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂(B)を構成する不飽和カルボン酸系単量体単位(b1)は、(メタ)アクリル酸単量体単位(b1-1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1-2)からなる群から選択される少なくとも1種の繰返し単位であることが好ましい。そのため、不飽和カルボン酸系単量体単位(b1)は、(メタ)アクリル酸単量体単位(b1-1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1-2)を包含する。
前記(メタ)アクリル系樹脂(B)は、メタアクリル酸エステル単量体単位とアクリル酸エステル単量体単位とを有する共重合体であることが特に好ましい。これにより耐油性、機械強度の向上効果を得るとともに、熱分解耐性を得ることができる。
【0050】
<(メタ)アクリル酸単量体(b1-1)>
本実施形態において、(メタ)アクリル酸単量体(b1-1)としては、アクリル酸、又はメタクリル酸が挙げられる。
【0051】
<(メタ)アクリル酸エステル単量体(b1-2)>
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂(B)を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1)は、メタクリル酸エステル単量体単位及びアクリル酸エステル単量体単位を包含する。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体(b1)としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸(n-ブチル)、アクリル酸(2-エチルヘキシル)、アクリル酸(n-オクチル)、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸(2-エチルヘキシル)、メタクリル酸(n-オクチル)、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ステアリル等が挙げられ、工業的に入手しやすく安価な点から、アクリル酸メチル、アクリル酸(n-ブチル)、メタクリル酸メチル、メタクリル酸(2-エチルヘキシル)、メタクリル酸(n-オクチル)が好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体(b1-2)は単独で又は混合して使用することができ、2種の(メタ)アクリル酸エステル単量体を組み合わせることが好ましい。
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂(B)を構成する単量体単位の組み合わせとしては耐熱性と熱分解性を両立する観点から、上記に挙げられている単量体単位のうち、メタクリル酸エステル種とアクリル酸エステル種を共重合したものが好ましく、メタクリル酸メチル-アクリル酸メチル共重合体がより好ましい。
【0052】
<(メタ)アクリル系樹脂(B)の好ましい形態>
本実施形態の好ましい(メタ)アクリル系樹脂(B)としては、2元又は3元共重合体であることが好ましく、メタクリル酸エステル種(メタクリル酸エステル単量体単位)とアクリル酸エステル種(アクリル酸エステル単量体単位)とを共重合したメタクリル酸エステル-アクリル酸エステル共重合体であり、かつ前記メタクリル酸エステル-アクリル酸エステル共重合体の総量に対してアクリル酸エステル単量体単位を0.1~25質量%含有する共重合体が好ましく、アクリル酸エステル単量体単位を0.5~17質量%含有する共重合体がより好ましく、アクリル酸エステル単量体単位を1.0~7.0質量%含有する共重合体が更に好ましく、アクリル酸エステル単量体単位を1.2~4.5質量%含有する共重合体がより更に好ましく、アクリル酸エステル単量体単位を1.5~3.0質量%含有する共重合体が最も好ましい。
【0053】
本実施形態の好ましい(メタ)アクリル系樹脂(B)は、メタクリル酸メチル-アクリル酸メチル共重合体で、かつ前記共重合体の総量に対してアクリル酸メチル単量体単位を0.5~17質量%含有する共重合体がさらに好ましく、アクリル酸メチル単量体単位を1.0~5.0質量%含有する共重合体がよりさらに好ましい。これにより、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)によって向上した耐熱性の低下をより効果的に抑制ができる。
【0054】
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂(B)において、前記(メタ)アクリル系樹脂(B)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1-2)の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(B)の総量に対して54質量%以上であることが好ましく、より好ましくは64質量%以上、さらに好ましくは71質量%以上、より更に好ましくは86質量%以上、最も好ましくは91質量%以上である。メタクリル酸エステル単量体(b1-2)の含有量を55.0~100質量%の範囲にすることにより、300℃以下での他樹脂との混練押出や成形加工に耐えられるようになる。そのため、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)とを混合した際の大幅な耐熱低下を抑えることができる。(メタ)アクリル酸エステル単量体(b1-2)の種類としては、耐熱性と工業的に入手し易く安価なことから、アクリル酸メチル又はメタクリル酸メチルが好ましい。
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂(B)において、前記(メタ)アクリル系樹脂(B)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1-2)の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(B)の総量に対して100質量%以下であることが好ましく、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは91質量%以下、より更に好ましくは86質量%以下、最も好ましくは81質量%以下である。
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂(B)において、前記(メタ)アクリル系樹脂(B)中の(メタ)アクリル酸単量体単位(b1-1)の含有量の上限は、(メタ)アクリル系樹脂(B)の総量に対して15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、最も好ましくは2質量%以下である。前記(メタ)アクリル系樹脂(B)中の(メタ)アクリル酸単量体単位(b1-1)の含有量の下限は、(メタ)アクリル系樹脂(B)の総量に対して0質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.7質量%以上、より更に好ましくは1.0質量%以上、最も好ましくは1.5質量%以上である。上記上限と下限とは任意に組み合わせることができる。
【0055】
<その他単量体(b2)>
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂(B)は、上述した不飽和カルボン酸系単量体単位(b1)(例えば、(メタ)アクリル酸単量体(b1-1)及び/又は(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1-2))以外のその他単量体単位(b2)をさらに有してもよい。すなわち、当該その他単量体単位(b2)は、不飽和カルボン酸系単量体単位(b1)()と共重合可能であれば発明の効果を損なわない範囲で、特に制限されることなく、上記に示した単量体以外の単量体と共重合してよい。例えば上記に示した単量体以外のその他単量体(b2)としては、スチレン、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、マレイミド、及び核置換マレイミド等が挙げられる。
本実施形態において、その他単量体単位(b2)の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂(B)の総量に対して、0~30質量%であることが好ましく、0~20質量%であることがより好ましく、0~15質量%であることがさらに好ましく、0~7質量%であることがより更に好ましい。
【0056】
(メタ)アクリル系樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)の上限値としては、後述のGPC法による標準ポリスチレン換算で、800万以下、600万以下、500万以下、300万以下、200万以下、100万以下、90万以下、50万以下、40万以下、30万以下、20万以下、15万以下、13万以下、12万以下、11万以下の順で好ましく、下限値としては4万以上、5万以上、6万以上、7万以上、8万以上、9万以上の順で好ましい。(メタ)アクリル系樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)の範囲としては上記上限値と下限値を任意に組み合わせることができるが、特に7万以上とすることにより、強度に優れた樹脂組成物を与えることができ、100万以下とすることで、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)との粘度差を抑えることができ、結果的にスチレン系樹脂組成物中に(メタ)アクリル系樹脂(B)が良好に分散することができ、かつ(メタ)アクリル系樹脂(B)に由来する未溶融物の発生を抑制し、該組成物を用いて外観に良好な成形体を得ることができ、また樹脂組成物の粘度を下げることができるので、射出成形サイクルが良好な樹脂組成物を得ることができる。
【0057】
(メタ)アクリル系樹脂(B)の重量平均分子量(Mn)の値としては、後述のGPC法による標準ポリスチレン換算で、好ましくは2万~150万、より好ましくは2.5万~30万、よりさらに好ましくは3万~12万の範囲である。
【0058】
(メタ)アクリル系樹脂(B)の重量平均分子量(Mz)の値としては、後述のGPC法による標準ポリスチレン換算で、好ましくは8万~1000万、より好ましくは9万~80万、よりさらに好ましくは10万~30万の範囲である。
【0059】
(メタ)アクリル系樹脂(B)の分散度(Mw/Mn)の値としては、後述のGPC法による標準ポリスチレン換算で、好ましくは1.1~6.0、より好ましくは1.3~4.0、よりさらに好ましくは1.5~3.7の範囲である。特に1.5~3.7の範囲とすることで、成形性と強度のバランスに優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0060】
なお、本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂(B)は、100万以上の高分子量成分を含有してもよい。前記100万以上の高分子量成分は、不飽和カルボン酸系単量体(b1)を有しており、かつスチレン系樹脂組成物中に含有される(メタ)アクリル系樹脂(B)のうち、100万以上の高分子量成分の(メタ)アクリル系樹脂(B)が占める割合は、スチレン系樹脂組成物の総量に対して1.0質量%以下であることが好ましい。
なお、(メタ)アクリル系樹脂(B)の100万以上の高分子量成分を1.0質量%以下に制御する方法としては、不飽和カルボン酸系単量体(b1)をラジカル重合する際に、不飽和カルボン酸系単量体(b1)の種類及びその配合量、連鎖移動剤の種類及びその配合量、反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及びその配合量、重合溶媒の種類及びその配合量などによって制御することができる。
また、上述したように、本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂(B)は、100万以上の高分子量成分を、スチレン系樹脂組成物の総量に対して0.0質量%以上1.0質量%以下含有し、かつ特に(メタ)アクリル系樹脂(B)全体としての重量平均分子量(Mw)が7~30万であることがより好ましい。
【0061】
<スチレン系樹脂組成物における(メタ)アクリル酸単量体又は(メタ)アクリル酸エステル単量体>
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物に含まれる全(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が、前記スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、1~20質量%含有することが好ましく、好ましくは2~15質量%、より好ましくは3~10質量%、より更に好ましくは4~8質量%の範囲である。樹脂組成物全体における(メタ)アクリル酸単量体の含有量が上記範囲であると、耐熱性向上効果を十分に得ることができる。また、特に耐熱性と成形性とのバランスを重要視する場合は、スチレン系樹脂組成物に含まれる全(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が、前記スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、7~20質量%であることが好ましく、好ましくは8~18質量%、さらに好ましくは10~15質量%、さらにより好ましくは10.3~12.5質量%である。
なお、上記全(メタ)アクリル酸単量体の含有量とは、スチレン系樹脂組成物中に存在する(メタ)アクリル酸単量体単位の合計量を示すため、樹脂(A)、樹脂(B)及び任意で添加する樹脂中の(メタ)アクリル酸単量体単位の各含有量も換算される。
【0062】
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物に含まれる全(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が、前記スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して6~55質量%含有することが好ましく、好ましくは10~50質量%、より好ましくは14~45質量%、更に好ましくは16~40質量%、より更に好ましくは20~37質量%
の範囲である。組成物全体における(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が上記範囲であると、耐油性及び強度の向上効果を十分に得ることができる。
また、特に樹脂の成形性や低吸水性を重視する場合は、スチレン系樹脂組成物に含まれる全(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が、前記スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して0~20質量%含有することが好ましく、好ましくは0~15質量%、より好ましくは0~10質量%、より好ましくは0~7質量%、より好ましくは0~6質量%である。
なお、上記全(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量とは、スチレン系樹脂組成物中に存在する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の合計量を示すため、樹脂(A)、樹脂(B)及び任意で添加する樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の各含有量も換算される。
【0063】
上記範囲にスチレン系樹脂組成物に含まれる全(メタ)アクリル酸単量体単位、及び全(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量を制御することで、前記(メタ)アクリル酸単量体単位による耐熱性の向上効果及び前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位による耐油性向上効果を同時に効率的に得ることができ、結果として耐熱性と耐油性に優れたスチレン系樹脂組成物及びそれを成型してなるシートを得ることができる。
【0064】
<(メタ)アクリル系樹脂(B)の製造方法>
本実施形態の(メタ)アクリル系樹脂(B)の製造方法は特に制限されるものではないが、(メタ)アクリル酸エステル単量体と必要に応じてその他単量体を重合する塊状重合、溶媒を加えた溶液重合、あるいは水中に懸濁剤により有機層を分散させた懸濁重合や、乳化重合などのプロセスにより製造することができる。
【0065】
「光安定剤(C)」
本実施形態の光安定剤(C)は、自身に紫外線吸収能はないが、スチレン系樹脂系組成物が紫外線を吸収することで発生した光ラジカルを捕捉し、無害化することで、ラジカルによるスチレン系樹脂組成物の劣化や着色を防ぐ機能を有しうる。当該光安定剤(C)としてはヒンダートアミン系化合物が好ましく、2級アミン型、3級アミン型、N-アルコキシ型などのヒンダートアミン系化合物が挙げられる。光安定剤(C)は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができ、後述の紫外線吸収剤(D)を併用することで、より高い耐光性効果、換言すると、スチレン系樹脂系組成物又はその成形品の長期間の屋外における使用による露光後の着色や強度低下を抑制することができる。光安定剤(C)は主に光ラジカル発生が多い樹脂表面で機能を発揮するため、より効果を発揮させようとしたら低分子タイプのものが好ましいが、過剰なブリードアウトによる金型汚染等を防ぐために適切な分子量に調整する必要がある。
当該光安定剤(C)としてはヒンダートアミン系化合物の中でも、添加時の耐候性、初期色調の観点から2級アミン型が好ましい。
【0066】
本実施形態の光安定剤(C)の含有量としては、スチレン系樹脂組成物の総量に対して、0質量%~2.0質量%であり、好ましくは0.001~2.0質量%であり、上限値としては1.8質量%以下、1.6質量%以下、1.4質量%以下、1.2質量%以下、1.0質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%以下の順で好ましく、下限値としては0.005質量%以上、0.010質量%以上、0.021質量%以上、0.051質量%以上、0.061質量%以上、0.071質量%以上、0.079質量%以上、0.089質量%以上の順で好ましい。光安定剤(C)の含有量としては、上記の上限値、下限値の任意の組み合わせで選ぶことができる。
【0067】
本実施形態の光安定剤(C)としては、ヒンダートアミン系化合物であることが好ましい。当該ヒンダートアミン系化合物としては、ビス(1,2,2,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-ウンデカンオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミン、ブチル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、N,N’-1,6-ヘキサンジイルビス(N-(2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-4-イル)ホルムアミドなどが挙げられ、具体的な製品名としては、ADEKA社製アデカスタブLA-52、アデカスタブLA-57、アデカスタブLA-63P、アデカスタブLA-68、アデカスタブLA-72、アデカスタブLA-77Y、アデカスタブLA-77G、アデカスタブLA-81、城北化学社製JF-90G、JF-95、BASFジャパン社製Chimassorb2020FDL、Chimassorb944FDL、Tinuvn622SF、BASFジャパン社製Uvinul4050FFなどが挙げられる。
【0068】
「紫外線吸収剤(D)」
本実施形態の紫外線吸収剤(D)は、スチレン系樹脂組成物が吸収する紫外線を、当該スチレン系樹脂組成物に代わって吸収し、熱や化学エネルギーに変換することで、スチレン系樹脂組成物の紫外線吸収による光ラジカル発生を抑制し、樹脂の劣化や着色を抑制する機能を有しうる。当該紫外線吸収剤(D)としては、不対電子を有する原子(酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子等)を含む連結基を介して結合された2以上の芳香環を有し、かつ1以上の芳香環がフェノール性水酸基を有する化合物であることが好ましい。当該化合物であると、光を吸収して励起状態になった後、化学エネルギーに変換する化学構造を備えうる。本実施形態の紫外線吸収剤(D)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物、シアノアクリレート系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、マロン酸エステル系化合物、ホルムアミジン系化合物、サリシレート系化合物などが挙げられる。これら紫外線吸収剤(D)は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができ、前記光安定剤(C)と紫外線吸収剤(D)とを併用することにより、より高い耐光性効果、換言すれば、スチレン系樹脂組成物の露光後の着色や強度低下を抑制することができる。また、スチレン系樹脂組成物に添加される樹脂が吸収しやすい紫外線波長(250~350nm)を代わって吸収することができる紫外線吸収剤(D)が好ましい。
本実施形態の好ましい紫外線吸収剤(D)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物、シアノアクリレート系化合物、マロン酸エステル系化合物及びシュウ酸アニリド系化合物からなる群から選択される1種又は2種以上であることがより好ましい。
【0069】
本実施形態の好ましい紫外線吸収剤(D)としては、具体的には、以下の一般式(d)及び(d’):
【化4】
(上記一般式(d)中、M
diはそれぞれ独立して、一価以上の芳香族基を表し、R
dは水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、L
diはそれぞれ独立して、二価~五価の基を表し、R
1は炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数7~25のアラルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-又は-C(=O)-に置換されてもよく、前記アラルキル基中のベンゼン環の1以上の水素原子はフェノール性水酸基、炭素原子数1~15のアルキル基又は縮合環(複素環(例えばベンゾトリアゾール環)を含む。)に置換されてもよく、d1は0以上4以下の整数を表し、d2は1以上4以下の整数を表す。なお、上記一般式(d)中におけるM
diとL
diとを結ぶ波線は、単結合以上の化学結合を1以上有することを表す。なお、d1が0の場合は無置換であることを表す。)
【化5】
(上記一般式(d’)中、R
5~R
7はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、フェニル基、炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数1~15のアルケニル基又は炭素原子数7~25のアラルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-、又は-C(=O)-に置換されてもよく、前記アラルキル基中のベンゼン環の1以上の水素原子はフェノール性水酸基、炭素原子数1~15のアルキル基又は縮合環(複素環(例えばベンゾトリアゾール環)を含む。)に置換されてもよく、
R
8はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数1~15のアルケニル基又は炭素原子数7~25のアラルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-、又は-C(=O)-に置換されてもよく、前記アラルキル基中のベンゼン環の1以上の水素原子はフェノール性水酸基、炭素原子数1~15のアルキル基又は縮合環(複素環(例えばベンゾトリアゾール環)を含む。)に置換されてもよく、
d5は0以上4以下の整数を表し、d5が2以上である場合、R
8は互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。)
で表される化合物からなる群から選択される1種又は2種以上である化合物が好ましい。
【0070】
上記一般式(d)中、M
diはそれぞれ独立して、無置換又は1以上の水素原子が置換基R
2により置換されうる一価以上の芳香族基を表し、無置換又は1以上の水素原子が置換基R
2により置換されうる一価以上四価以下の芳香環であることが好ましく、以下の式(I)又は(II):
【化6】
(上記式(I)又は(II)中、R
2はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基又は炭素原子数1~15のアルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-又は-C(=O)-に置換されてもよく、d3は0~5の整数を表し、d4は0~4の整数を表す。)で表される基がより好ましい。
前記置換基R
2は、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基又は炭素原子数1~15のアルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-又は-C(=O)-に置換されてもよい。
【0071】
上記一般式(d)中、L
diはそれぞれ独立して、二価~五価の基を表し、具体的には、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-N=、-NH-C(=O)-C(=O)-NH-あるいは以下の式(III)又は(IV)で表される連結基であることが好ましい。
【化7】
上記一般式(d)中のd1は、0以上4以下の整数であり、0、1、2又は3が好ましい。
上記一般式(d)中のd2は、L
diの結合手(=価数)に関係し、d2が1の場合は、L
diは2価の基である。同様に、d2が2の場合、L
diは三価の基であり、d2が3の場合、L
diは四価の基であり、d2が4の場合、L
diは五価の基である。そのため、L
diの結合手の数-1がd2になりうる。
上記一般式(d)中、R
1は炭素原子数1~15のアルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-又は-C(=O)-に置換されてもよく、好ましくは、直鎖状又は分岐状の炭素原子数1~13のアルキル基、炭素原子数1~13のアルコキシ基又はエステル結合を有する炭素原子数1~13のアルコキシ基である。また、d1が2以上の整数の場合、複数存在するR
1は互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。
【0072】
本実施形態の好ましい紫外線吸収剤(D)の一態様としては、具体的には、以下の一般式(d)で表される化合物が好ましい。
上記一般式(d)で表される化合物としては、以下の一般式(d-1)、一般式(d-2)、一般式(d-3)及び一般式(d-4)からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物がより好ましい。
【化8】
(上記一般式(d-1)中、M
1は上記式(II)で表される基である。)
(上記一般式(d-2)中、M
2及びM
3は上記式(I)で表される基であり、L
1は、-N=、あるいは上記式(III)で表される基である。)
(上記一般式(d-3)中、M
4は上記式(I)で表される基であり、L
2は、-C(=O)-、-C(=O)-O-又は-O-C(=O)-である。)
(上記一般式(d-4)中、M
5は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数1~15のアルケニル基、炭素原子数7~25のアラルキル基を表し、好ましくは上記式(I)で表される基であり、R
d4は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、L
3は、-NH-C(=O)-C(=O)-NH-である。)
なお、上記一般式(d-1)~一般式(d-4)における「R
1及びd1」は、上記一般式(d)中の「R
1及びd1」と同義である。
【0073】
上記一般式(d-1)で表される化合物としては、以下の一般式(d-1.1)又は(d-1.2):
【化9】
【化10】
(上記一般式(d-1.1)中、R
3は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基又は炭素原子数1~15のアルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-又は-C(=O)-に置換されてもよく、R
1及びd1は、上記一般式(d)中の「R
1及びd1」と同義である。また、上記一般式(d-1.2)中、R
3は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基又は炭素原子数1~15のアルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-又は-C(=O)-に置換されてもよく、R
4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1~15のアルキル基又はアルコキシ基を表し、mは1以上5以下の整数を表す。)で表される化合物が好ましい。
【0074】
上記一般式(d-2)で表される化合物としては、以下の一般式(d-2.1):
【化11】
(上記一般式(d-2.1)中、M
2及びM
3は上記式(I)で表される基であり、R
1及びd1は、上記一般式(d)中の「R
1及びd1」と同義である。)で表される化合物が好ましい。
【0075】
上記一般式(d-3)で表される化合物としては、以下の一般式(d-3.1):
【化12】
(上記一般式(d-3.1)中、M
4は上記式(I)で表される基であり、R
1及びd1は、上記一般式(d)中の「R
1及びd1」と同義である。)で表される化合物が好ましい。
【0076】
本実施形態の好ましい紫外線吸収剤(D)としては、具体的には、以下の一般式(d-4.1)で表される化合物も好適に使用される。
【化13】
(上記一般式(d-4.1)中、R
10はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数1~15のアルケニル基、炭素原子数7~25のアラルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-又は-C(=O)-に置換されても良い。)
上記一般式(d-4.1)で表される化合物において、特にスチレン系樹脂との相溶性、安定性の観点からR
10は、炭素原子数7~25のアラルキル基が好ましく、より好ましくは炭素原子数7~20のアラルキル基、より好ましくは炭素原子数7~18のアラルキル基である。
【0077】
本実施形態の他の好ましい紫外線吸収剤(D)としては、具体的には、以下の一般式(d’)で表される化合物も好適に使用される。
【化14】
(上記一般式(d’)中、R
5~R
7はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、フェニル基、炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数1~15のアルケニル基又は炭素原子数7~25のアラルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-、又は-C(=O)-に置換されてもよく、前記アラルキル基中のベンゼン環の1以上の水素原子はフェノール性水酸基、炭素原子数1~15のアルキル基又は縮合環(複素環(例えばベンゾトリアゾール環)を含む。)に置換されてもよく、
R
8はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数1~15のアルケニル基又は炭素原子数7~25のアラルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-、又は-C(=O)-に置換されてもよく、前記アラルキル基中のベンゼン環の1以上の水素原子はフェノール性水酸基、炭素原子数1~15のアルキル基又は縮合環(複素環(例えばベンゾトリアゾール環)を含む。)に置換されてもよく、
d5は0以上4以下の整数を表し、d5が2以上である場合、R
8は互いに同一であっても、あるいは異なっていてもよい。)
【0078】
上記一般式(d’)中のR
5はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、フェニル基、炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数1~15のアルケニル基、炭素原子数7~25のアラルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-又は-C(=O)-に置換されてもよい。R
5は、安定性の観点から特に、フェニル基又は水素原子が好ましい。
上記一般式(d’)中、R
6及びR
7好ましい形態は、下記一般式(V)で表される基、又はシアノ基(-CN)が挙げられる。
【化15】
(上記一般式(V)中、R
9は水素原子、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数1~15のアルケニル基、炭素原子数7~25のアラルキル基を表し、但し、前記アルキル基中の-CH
2-は、-O-又は-C(=O)に置換されてもよい。また、前記アルキル基中の―CH
3は、-CNに置換されても良い。)
特にスチレン系樹脂との相溶性、安定性の観点から、上記一般式(V)中、R
9は炭素原子数1~15のアルキル基が好ましく、より好ましくは炭素原子数1~10のアルキル基、さらに好ましくは炭素原子数1~5のアルキル基、さらにより好ましくは1~3のアルキル基、特に好ましくは炭素原子数1~2のアルキル基である。
【0079】
上記一般式(d’)中のR8の好ましい形態は、上記一般式(V)で表される基、又は炭素原子数1~15のアルキル基が挙げられる。但し、前記アルキル基中の-CH2-は、-O-又は-C(=O)-に置換されても良い。
上記一般式(d’)中のR8の位置は、一般式(d’)中のベンゼン環におけるパラ位が好ましい。
上記一般式(d’)中、安定性の観点からd5は、0又は1がより好ましい。
【0080】
本実施形態の紫外線吸収剤(D)の含有量としては、スチレン系樹脂組成物の総量に対して、0.001~2.0質量%であり、上限値としては1.8質量%以下、1.6質量%以下、1.4質量%以下、1.2質量%以下、1.0質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%以下、0.05質量%以下の順で好ましく、下限値としては0.002質量%以上、0.004質量%以上、0.006質量%以上、0.010質量%以上、0.021質量%以上の順で好ましい。紫外線吸収剤(D)の含有量としては、上記の上限値、下限値の任意の組み合わせで選ぶことができる。
【0081】
前記ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6’-tert-ブチル-4’-メチル-2,2’-メチレンビスフェノール]2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールなどが挙げられ、具体的な製品名としては、ADEKA社製アデカスタブLA-32、アデカスタブLA-36、アデカスタブLA-36RG、城北化学社製JF-77、JF-79、JF-80、JF-83、JF-832、JAST-500、BASTジャパン社製TinuvinP、Tinuvin234、Tinuvin234FF、Tinuvin326、Tinuvin329、Tinuvin360などが挙げられる。
【0082】
前記トリアジン系化合物としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、N,N’,N’’-トリ(m-トリル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、2,4,6-トリス(4-ブトキシ-2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、エチルヘキシルトリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2,4-ジヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、ベモトジノール、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジンなどが挙げられ、具体的な製品名としてはADEKA社製アデカスタブLA-46、アデカスタブLA-F70、BASTジャパン社製Tinuvin1577ED、Tinuvin1600などが挙げられる。
【0083】
前記ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられ、具体的な製品名としては、ADEKA社製アデカスタブ1413、BASTジャパン社製Chimassorb81、Chimassorb81FLなどが挙げられる。
【0084】
前記シアノアクリレート系化合物としては、例えば2,2-ビス{[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル}プロパン-1,3-ジイル=ビス(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリラート、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル、2-エチルヘキシル(2Z)-3-シアノ-2,3-ジフェニルプロパ-2-エノアートなどが挙げられ、具体的な製品名としては、BASFジャパン社製Uvinul3030、Uvinul3035、Uvinul3039などが挙げられる。
【0085】
前記マロン酸エステル系化合物としては、例えば(4-メトキシベンジリデン)マロン酸エステル、テトラエチル=2,2’-(1,4-フェニレンジメタ二リリデン)ジマロナートなどが挙げられ、具体的にはクラリアント社製HOSTAVIN PR-25 GR、HOSTAVIN B-CAPが挙げられる。
【0086】
前記シュウ酸アニリド系化合物としては、例えば(N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシフェニル)シュウ酸ジアミドなどが挙げられ、具体的にはクラリアント社製HOSTAVIN VSU Pなどが挙げられる。
【0087】
本実施形態において、紫外線吸収剤(D)としては2種以上を混合して用いても良く、好ましい形態としてはスチレン系樹脂の芳香族に由来する紫外線吸収ピークが光劣化に伴い、紫外線吸収が増感する領域(波長250~300nm)を効率的に吸収できる紫外線吸収剤(D)と、地表に最も降り注ぐ紫外線領域(波長300~400nm)を効率的に吸収できる紫外線吸収剤(D)とを併用するものである。本実施形態において、好ましい紫外線吸収剤(D)の態様としては、上記一般式(d-2.1)で表される化合物と、上記一般式(d-1.1)で表される化合物又は上記一般式(d-3.1)で表される化合物とを含有することが特に好ましい。具体的には、波長250~300nmを効率的に吸収できる紫外線吸収剤(D)として、トリアジン系紫外線吸収剤に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はベンゾフェノン系紫外線吸収剤を組み合わせた併用系の紫外線吸収剤が好ましい。
また、特に初期色調を重視する場合は可視光域(波長380nm以上)に吸収が少なく、紫外線領域(250~350nm付近)にのみ吸収を持つ紫外線吸収剤であるマロン酸エステル系又はシュウ酸アニリド系紫外線吸収剤と、波長250~300nmを効率的に吸収できる紫外線吸収剤であるトリアジン系紫外線吸収剤を少量併用することが好ましい。また、マロン酸エステル系又はシュウ酸アニリド系紫外線吸収剤と、可視光域に吸収が少なく、添加時の変色が少ないベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物とを併用することで、初期色調に優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0088】
本実施形態において紫外線吸収剤(D)としては、初期色調を重視する場合、可視光域(波長380nm以上)に吸収が少なく、紫外線領域(250~350nm付近)に吸収を持つ紫外線吸収剤が好ましい。好適な紫外線吸収剤(D)としては、具体的には250nm~350nm付近にのみ吸収をもつマロン酸エステル系化合物、シュウ酸アニリド系化合物が特に好ましい。また、別の好適な紫外線吸収剤(D)としては、可視光域に吸収が少なく、添加時の変色が少ないベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物も好適に使用できる。
【0089】
本実施形態において、紫外線吸収剤(D)としてはスチレン系樹脂の芳香族に由来する紫外線吸収ピークが光劣化に伴い、紫外線吸収が増感する領域(波長250~300nm)を効率的に吸収できる紫外線吸収剤(D)が効果的であり、具体的には、波長250~300nmを効率的に吸収できる紫外線吸収剤(D)として、トリアジン系化合物が挙げられる。当該紫外線吸収剤(D)としてトリアジン系化合物を使用する場合、添加量を少なくしても十分な効果を得ることができ、添加時の樹脂の変色を少なくすることが可能である。
【0090】
「炭素原子数10以上の1価アルコール(E)」
本実施形態における炭素原子数10以上の1価アルコール(E)(以下単にアルコール(E)ともいう。)は、スチレン系樹脂組成物の任意成分であり、成形時のスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)のゲル化を抑制し、良好な外観のスチレン系樹脂組成物及びスチレン系樹脂組成物からなる成形体の外観向上に寄与するとともに、射出成形の際には離型効果も付与する。炭素原子数10以上の1価アルコール(E)の含有量は、前記スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、0.01~1.0質量%であり、好ましくは0.03~0.8質量%、より好ましくは0.05~0.6質量%、より更に好ましくは0.07~0.5質量%である。炭素原子数10以上の1価アルコール(E)の含有量を0.01質量%以上にすることで、成形加工時におけるスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)のゲル化を抑制することができ、1.0質量%以下にすることで耐熱性低下と臭気の発生を抑えることができる。炭素原子数10以上の1価アルコール(E)の含有量を0.07~0.5質量%にすることで特に耐熱性を低下させることなく、十分なゲル抑制効果と離型効果を得られる。
また、特に成形品が複雑な形状で、優れた離型性が求められる場合、炭素原子数10以上の1価アルコール(E)の含有量は、スチレン系樹脂組成物の総量に対して、0.1~0.5質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.1~0.4質量%、さらに好ましくは0.1~0.3質量%である。炭素原子数10以上の1価アルコール(E)の含有量が0.1~0.5質量%であることで耐熱性を低下させることなく、特に離型効果が高いスチレン系樹脂組成物を得ることができる。炭素原子数10以上のアルコールの添加量が0.1質量%未満であると、特に複雑な形状を有する成形品において、離型性が低下しやすく0.5質量%を超えると、耐熱性の低下や金型汚れの悪化等が懸念される。
【0091】
炭素原子数10以上の1価アルコール(E)としては、水酸基を1つ含む炭素原子数10以上のアルコール類であり、アルコール(E)を構成する炭素鎖中に酸素又は窒素などのヘテロ原子を含んでもよく、当該炭素鎖中に2重結合、3重結合、エステル結合、アミド結合など、単結合以外の結合を含んでもよい。炭素原子数としては16以上が好ましく、より好ましくは17以上、より更に好ましくは18以上50以下である。上記炭素原子数10以上の1価アルコール(E)は、スチレン系樹脂組成物又はスチレン系樹脂組成物からなる成形体に含有されていればよい。したがって、スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)又は(メタ)アクリル系樹脂(B)を重合する際に使用する重合溶液中に炭素原子数10以上の1価アルコール(E)を存在(又は添加)させることにより、最終生成物である樹脂組成物中
に1価アルコール(E)を残留させてもよく、あるいはスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)と(メタ)アクリル系樹脂(B)を混錬する際に添加し押出機中で混合させることで含有させてもよい。
【0092】
炭素原子数10以上の1価アルコール(E)としては、分子結合の安定性の観点から、1価アルコール(E)を構成する炭素鎖はヘテロ原子を含まず、アルキル基のみから構成されることが好ましい。炭素鎖がアルキル基のみから構成される1価アルコールでは、熱安定性、スチレン系樹脂との相溶性に優れるため、成形時に金型汚れを抑制する効果がある。また、アルコールの炭素原子数としては15以上が好ましく、より好ましくは16以上、より更に好ましくは17以上50以下であり、特に好ましくは18以上30以下である。
【0093】
本実施形態において、炭素原子数10以上の一価アルコール(E)の沸点は、260℃以上が好ましく、更に好ましくは270℃以上、よりさらに好ましくは290℃以上である。アルコール類の沸点が260℃未満であると、揮発性が高くなり、成形時等に異臭が発生する傾向がある。
【0094】
上記炭素原子数10以上の1価アルコール(E)としては、特に限定されないが、例えば、1-ヘキサデカノール、イソヘキサデカノール、1-オクタデカノール、5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-1-オクタノール、イソオクタデカノール、1-イソイソエイコサノール、ステアリルアルコール、8-メチル-2-(4-メチルヘキシル)-1-デカノール、2-ヘプチル-1-ウンデカノール、2-ヘプチル-4-メチル-1-デカノール、2-(1,5-ジメチルヘキシル)-(5,9-ジメチル)-1-デカノール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類等が挙げられる。
【0095】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル類は以下の一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【化16】
(上記一般式(2)中、Rは炭素原子数12~20のアルキル基であり、Xはエチレンオキサイドの平均付加数を表し、1~15の整数である。)
【0096】
好ましいアルコール(E)の具体的な製品名としては日産化学社製「ファインオキソコール180」、花王社製「カルコール8098」、花王社製「エマルゲン109P」等が挙げられる。
【0097】
「離型剤(F)」
本実施形態の好ましい様態として、スチレン系樹脂組成物は離型剤(F)を有することが好ましい。離型剤(F)の含有方法としては、スチレン系樹脂組成物を調整する際に、混練する内部滑剤(F1)の形態をとっても、スチレン系樹脂組成物を造粒後にドライブレンドする外部滑剤(F2)の形態をとっても、その二つの形態を組み合わせてもよい。
本実施形態の離型剤(F)の含有量は、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、0.001~2.0質量%であることが好ましく、上限値としては、1.8質量%以下、1.7質量%以下、1.6質量%以下、1.5質量%以下、1.4質量%以下、1.3質量%以下、1.2質量%以下、1.1質量%以下、1.0質量%以下、0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下の順でより好ましく、下限値としては、0.003質量%以上、0.005質量%以上、0.007質量%以上、0.009質量%以上、0.012質量%以上、0.031質量%以上、0.066質量%以上、0.090質量%以上、0.11質量%以上、0.16質量%以上、0.21質量%以上、0.26質量%以上、0.31質量%以上の順で好ましい。0.001~2.0質量%の範囲とすることで離型性に優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができ、特に0.01~0.8質量%の範囲とすることで、離型性と耐熱性のバランスに優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。
また、特に成形品が複雑な形状であり、優れた離型性が求められる場合、離型剤(F)として炭素原子数10以上の1価アルコール(E)が使用され、炭素原子数10以上の1価アルコール(E)の含有量は、スチレン系樹脂組成物の総量に対して、0.1~0.5質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.1~0.4質量%、さらに好ましくは0.1~0.3質量%である。炭素原子数10以上の1価アルコール(E)の含有量が0.1~0.5質量%であることで耐熱性を低下させることなく、特に離型効果が高いスチレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0098】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物が、内部滑剤(F1)として離型剤(F)を含有する場合、当該内部滑剤(F1)の含有量としては、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対し、0.05~2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.10~1.5質量%、より好ましくは0.10~1.0質量%、より好ましくは0.13~1.0質量%、更に好ましくは0.17~0.8質量%の範囲である。特に0.13~1.0質量%の範囲とすることで、過度のブリードアウトを抑え、離型性に優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0099】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物が、外部滑剤(F2)として離型剤(F)を含有する場合、当該外部滑剤(F2)としての離型剤の含有量としては、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対し、好ましくは0.005~0.5質量%、より好ましくは0.007~0.2質量%、更に好ましくは0.008~0.1質量%の範囲である。特に0.008~0.1質量%の範囲とすることで、金型汚染を抑えて、離型性に優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0100】
本実施形態の離型剤(F)としては例えば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、グリセリン、モノステアリン酸グリセロール、ジステアリン酸グリセロール、エチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、硬化ヒマシ油等が挙げられる。スチレン樹脂への離型性付与能の観点から、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムが好ましい。
【0101】
本実施形態の離型剤(F)として、モノステアリン酸グリセロール及び/又はジステアリン酸グリセロールを使用する場合、離型性及び樹脂の初期色調に優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。好ましい離型剤(F)の具体的な製品名としては、花王社製「エキセルS-95」、「エキセルVS-95」、「エキセルO-95R」、「エキセルP-40」、「エキセルP-40P」、「エキセル122V」、「エキセル200」、「エキセルO-95N」、「エキセルO-95F」、「ステップSS」、理研ビタミン社製「リケマールS-100」、「リケマールS-100P」、「リケマールH-100」などが挙げられる。離型剤(F)として使用する、モノステアリン酸グリセロール、ジステアリン酸グリセロールの含有量は、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対し、0.01~0.5質量%、より好ましくは0.03~0.45質量%、よりさらに好ましくは0.05~0.4質量%、よりさらに好ましくは0.05~0.35質量%、よりさらに好ましくは0.08~0.30質量%、さらにより好ましくは0.10~0.30質量%、さらにより好ましくは0.10~0.25質量%である。
モノステアリン酸グリセロール又はジステアリン酸グリセロールがスチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対し0.03~0.45質量%含有されると、特に優れた離型性及び樹脂の初期色調を有するスチレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0102】
「その他の成分(添加剤)」
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、上記成分以外に、スチレン系樹脂において使用が一般的な各種の添加剤を、公知の作用効果を達成するために添加し、スチレン系樹脂組成物とすることもできる。当該添加剤は、例えば、安定剤、高級脂肪酸系界面活性剤、酸化防止剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、又は鉱油等があげられる。また、スチレン-無水マレイン酸共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチルブロック共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸(2-エチルヘキシル)ブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体などの熱可塑性エラストマーや、コアシェル型のMBS樹脂粒子等の補強材といった架橋体(G)についても物性を損なわない範囲で添加してもよい。上記架橋体(G)あるいは添加剤の配合の方法については特に規定はないが、例えば、重合時に添加して重合する方法、又は重合後溶融混練する前に、ブレンダーであらかじめ添加剤を混合し、その後、押出機又はバンバリーミキサー等にて溶融混錬する方法等が挙げられる。
本実施形態において、架橋体(G)を使用する場合、架橋体(G)の含有量は、スチレン系樹脂組成物の総量に対して、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、さらにより好ましくは0.5質量%以下、よりさらに好ましくは0.1質量%以下、さらによりさらに好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは0.01質量%以下、より特に好ましくは0.001質量%以下である。当該架橋体(G)の添加量を少なくすると、透明性が向上する
前記架橋体(G)としては、上記補強材以外、(メタ)アクリル酸エステル単量体、スチレン系単量体及びブタジエンからなる群から選択される1種又は2種以上の単量体を重合してなる共重合体からなる架橋樹脂粒子などが挙げられる。
【0103】
特に加工時の安定性の観点と熱劣化防止の観点から酸化防止剤として、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)、2,2’-ジメチル-2,2’-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイル)ジプロパン-1,1’-ジイル=ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパノアート]、2-{1-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(2-メチルブタン-2-イル)フェニル]エチル}-4,6-ビス(2-メチルブタン-2-イル)フェニル プロパ-2-エノアート、アクリル酸2-tert-ブチル-6-[(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェニル(製品名としては例えば、BASFジャパン社製Irganox1076、Irganоx245、住友化学社製スミライザーGA―80、スミライザーGS、スミライザーGM))などのヒンダートフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4-ジ-ターシャリーブチルフェニル)フォスファイト、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリフェニルホスファイト、トリイソデシル=ホスフィット、3,9-ジオクタデカン-1-イル-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(製品名としては例えば、BASFジャパン社製Irgafos168、株式会社ADEKA製アデカスタブ PEP-36、アデカスタブ TPP、アデカスタブ 3010、アデカスタブ PEP-8)などのリン系酸化防止剤を挙げることができる。また、6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン(製品名としては例えば住友化学社製スミライザーGP)などヒンダートフェノール骨格を有するリン系酸化防止剤を用いることができる。
これらの安定剤をそれぞれ単独、あるいは2種以上を組み合わせて適宜用いてもよい。添加時期については、特に制限はなく、重合工程又は脱揮工程のいずれでもよい。また、押出機やミキサー等機械的装置で製品に安定剤を混合することもできる。
【0104】
本実施形態の酸化防止剤の(合計)含有量は、スチレン系樹脂組成物の総量に対して、0.001~1.0質量%である。添加量の好ましい範囲の下限値は0.001質量%以上であり、より好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.008質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.08質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.21質量%以上である。添加量の好ましい範囲の上限値は、1.0質量%以下であり、より好ましくは0.9質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、より好ましくは0.6質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下である。スチレン系樹脂組成物中の酸化防止剤の含有量が多くなると樹脂の加工時の劣化、及び熱劣化は起きにくくなるが、樹脂の変色は起こりやすくなる。また、酸化防止剤の含有量が少なくなると加工時の劣化、及び熱劣化は起こりやすくなるが、樹脂の変色は起こりにくくなる。
【0105】
本実施形態のフェノール系酸化防止剤の(合計)含有量は、スチレン系樹脂組成物の総量に対して、0.001~1.0質量%である。フェノール系酸化防止剤の添加量の好ましい範囲の下限値は0.001質量%以上であり、より好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.008質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.08質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.21質量%以上である。添加量の好ましい範囲の上限値は、1.0質量%以下であり、より好ましくは0.9質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、より好ましくは0.6質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下である。スチレン系樹脂組成物中のフェノール系酸化防止剤の含有量が多くなると樹脂の加工時の劣化、及び熱劣化は起きにくくなるが、樹脂の変色は起こりやすくなる。また、酸化防止剤の含有量が少なくなると加工時の劣化、及び熱劣化は起こりやすくなるが、樹脂の変色は起こりにくくなる。
【0106】
本実施形態のリン系酸化防止剤の(合計)含有量は、スチレン系樹脂組成物の総量に対して、0.001~1.0質量%である。リン系酸化防止剤の添加量の好ましい範囲の下限値は0.001質量%以上であり、より好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.008質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.08質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.21質量%以上である。添加量の好ましい範囲の上限値は、1.0質量%以下であり、より好ましくは0.9質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、より好ましくは0.6質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下である。スチレン系樹脂組成物中のリン系酸化防止剤の含有量が多くなると樹脂の加工時の劣化、及び熱劣化は起きにくくなるが、樹脂の変色は起こりやすくなる。また、酸化防止剤の含有量が少なくなると加工時の劣化、及び熱劣化は起こりやすくなるが、樹脂の変色は起こりにくくなる。
【0107】
本実施形態において、フェノール酸化防止剤とリン系酸化防止剤とを併用する場合、フェノール酸化防止剤とリン系酸化防止剤の物質量比は、フェノール酸化防止剤:リン系酸化防止剤=5:1~1:5であり、より好ましくは4:1~1:4、さらにより好ましくは3:1~1:3、さらにより好ましくは2:1~1:3、さらにより好ましくは1:1~1:3、さらにより好ましくは1:1~1:2.8である。上記の酸化防止剤の配合割合では、樹脂の変色を防ぐ上で特に効果を発揮しうる。
【0108】
本実施形態において、フェノール系酸化防止剤の中でも光や熱劣化により生じるアルキルラジカルを捕捉し、無害化できるスミライザーGS(化合物名:2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニル=アクリラート)又はスミライザーGM(化合物名:アクリル酸2-tert-ブチル-6-[(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェニルと、リン系酸化防止剤を併用させると、特に加工時の熱安定性が向上し、熱劣化等による樹脂の変色を抑えることが可能となる。
【0109】
本実施形態において、リン系酸化防止剤の中でも、Irgafos168(化合物名:トリス(2,4-ジ-ターシャリーブチルフェニル)フォスファイト)は特に耐加水分解性に優れる効果があり、吸水性を有する樹脂や高湿度条件下においても好適に使用できる。
また、リン系酸化防止剤の中でも、アデカスタブ PEP-36(化合物名:3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン)、アデカスタブ TPP(化合物名:トリフェニルホスファイト)、アデカスタブ 3010(化合物名:トリイソデシル=ホスフィット、アデカスタブ PEP-8(化合物名:3,9-ジオクタデカン-1-イル-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン)は、加工時の熱安定性付与効果が高く、変色しにくい特徴がある。
【0110】
本実施形態においては、硫黄系酸化防止剤も使用することができ、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル-3,3’-チオジプロピオネート、及び2-メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0111】
本実施形態において、酸化防止剤の使用する際の好ましい形態は、ヒンダートフェノール骨格を有するフェノール系酸化防止剤と亜リンエステル構造を有するリン系酸化防止剤とを併用し、酸化防止剤の合計含有量は0.1~0.5質量%であり、フェノール酸化防止剤とリン系酸化防止剤の物質量比は、フェノール酸化防止剤:リン系酸化防止剤=1:1~1:3である。上記の場合、初期色調及び熱安定性に優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0112】
本実施形態において、光安定剤(C)はスチレン系樹脂系組成物が紫外線を吸収することで発生した光ラジカルを捕捉し、無害化することで、ラジカルによるスチレン系樹脂組成物の劣化や着色を防ぐ機能を持つヒンダートアミン骨格を有する化合物であることが好ましい。一方、酸化防止剤は、ヒンダートフェノール骨格を有するフェノール系酸化防止剤と亜リン酸エステル構造を有するリン系酸化防止剤とに分類される。酸化防止剤と光安定剤(C)とを厳密に分類することは難しいため、本明細書において、光安定剤(C)及び/又は酸化防止剤の含有量を算出する際、例えば、ヒンダートフェノール骨格と亜リン酸エステル構造の両方を有する酸化防止剤の場合、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤どちらにもカウントして添加量を算出する。またヒンダートアミン骨格とヒンダートフェノール骨格の両方を有する場合も、同様に光安定剤とフェノール酸化防止剤のどちらにもカウントして含有量を算出する。
【0113】
[スチレン系樹脂組成物の物性]
以下に本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物の物性について述べる。
<ビカット軟化温度>
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は105℃以上であることが好ましく、より好ましくは110℃以上、より更に好ましくは115℃以上、よりさらに好ましくは118℃以上、よりさらに好ましくは121℃以上である。当該ビカット軟化温度を105℃以上とすることにより、日中の車内でも熱寸法変形しにくい成形品が得られ、110℃以上にすることで夏場日中の車内でも熱寸法変形しにくい成形品が得られる。後述通り当該ビカット軟化温度は、ISO306に準拠して、5kg荷重、昇温速度50℃/hの条件で測定することができる。
【0114】
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物の表面引っ掻き硬度がH以上であることが好ましい。当該表面引っ掻き硬度は、JIS K 5600-5-4に記載の引っかき硬度(鉛筆法)に準拠し、鉛筆の芯の先端荷重750g、鉛筆角度45度、引っかき速度0.5~1.0mm/秒で測定される。
スチレン系樹脂組成物の表面引っ掻き硬度がH以上であると、当該スチレン系樹脂組成物の成形品を車載用の透明板(例えば、速度メータの透明カバー板あるいは照明器具のカバー)に使用した場合、人の手などによる割れ、ひっかき傷あるいは油汚れに起因する白
化等を抑制できる。
【0115】
<メルトマスフローレート>
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物の200℃、5kg荷重でのメルトフローレートは0.1~2.0g/10分の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.2~1.5g/10分であり、さらに好ましくは0.4~1.0g/10分、さらにより好ましくは0.5~1.0g/10分である。メルトフローレートを0.3g/10分以上にすることにより、良好な成形性が得られ、2.0g/10分以下にすることにより、強度に優れた樹脂を得ることができる。メルトマスフローレートの値が0.5~1.0g/10分であれば、特に成形性と強度のバランスに優れた樹脂を得ることができる。
【0116】
<共役ジエン単量体単位の含有量>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、必要に応じてハイインパクトポリスチレン、MBS樹脂、ABS樹脂、スチレン系エラストマー又はコアシェル型ブタジエンゴム粒子などの共役ジエン単量体単位を含むゴム状重合体を含有してもよい。そして、本実施形態において、必要に応じて添加されるハイインパクトポリスチレン、MBS樹脂、ABS樹脂、スチレン系エラストマー、コアシェル型ブタジエンゴム粒子等に由来する共役ジエン単量体単位の含有量は、スチレン系樹脂組成物全体に対し、0~25質量%であることが好ましく、より好ましくは0~10質量%、より好ましくは0.05~7質量%、より更に好ましくは0.10~5質量%、より更に好ましくは0.20~3質量%である。共役ジエン単量体単位の含有量を上記の範囲とすることにより、透明性と強度のバランスに優れた組成物を得ることができる。
【0117】
<スチレン系樹脂組成物中のスチレン成分量と不飽和カルボン酸系成分量>
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、スチレン成分及び不飽和カルボン酸系成分を含有する。ここでいうスチレン成分とは、スチレン系単量体単位(1)及びその他単量体(b2)に含まれるスチレン系単量体単位の総称をいう。
一方、不飽和カルボン酸系成分とは、不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)及び不飽和カルボン酸系単量体単位(b2)の総称をいい、換言すると、(メタ)アクリル酸単量体単位(a1-1)、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a1-2)、(メタ)アクリル酸単量体単位(b1-1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(b1-2)として含まれうる不飽和カルボン酸系単量体単位の総称をいう。
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、スチレン成分の含有量は50~85質量%であることが好ましく、より好ましくは55~83質量%、更に好ましくは58~80質量%である。50~85の範囲であると成形性、耐熱性のバランスに優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、不飽和カルボン酸系成分の含有量は10~80量%であることが好ましく、より好ましくは20~72質量%、更に好ましくは34~51質量%あることがより好ましい。上記不飽和カルボン酸系成分の含有量が17~50質量%の範囲であると、耐熱性、耐油性、強度のバランスに優れたスチレン系樹脂組成物を得ることができる。特に25質量%以上とすることで90℃を超える油に対する耐性を得ることができる。
【0118】
<スチレン系樹脂組成物中の(メタ)アクリル酸単量体組成>
本実施形態における不飽和カルボン酸単量体単位は、(メタ)アクリル酸単量体単位であることが好ましく、スチレン系樹脂組成物中の(メタ)アクリル酸単量体単位は、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、2~40質量%であることが好ましく、より好ましくは3~20質量%、さらに好ましくは4~17質量%、より更に好ましくは8~14質量%、好ましくは10~13質量%、さらに好ましくは10.3~13質量%、さらに好ましくは10.3~12.5質量%、最も好ましくは10.5~12.5質量%である。スチレン系樹脂組成物中の(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量を2質量%以上とすることで耐熱性の向上効果を得ることができ、当該含有量を40質量%以下にすることで粘度が上昇しすぎることを抑えることができる。特に前記含有量を10~13質量%の範囲とすることで、高い耐熱性向上効果と透明シート用途に適用可能な水準にゲル発生を抑えることを両立したスチレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0119】
<スチレン系樹脂組成物中の(メタ)アクリル酸エステル単量体組成>
本実施形態における不飽和カルボン酸エステル単量体単位は、(メタ)アクリル酸メチル単量体単位であることが好ましく、スチレン系樹脂組成物中の(メタ)アクリル酸単量体単位は、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、6~55質量%含有することが好ましく、好ましくは10~50質量%、より好ましくは14~45質量%、更に好ましくは16~40質量%、より更に好ましくは20~37質量%の範囲である。組成物全体における(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が上記範囲であると、耐油性及び強度の向上効果を十分に得ることができる。
また、特に樹脂の成形性や低吸水性を重視する場合は、スチレン系樹脂組成物に含まれる全(メタ)アクリル酸メチル単量体単位の含有量が、前記スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して0~20質量%含有することが好ましく、好ましくは0~15質量%、より好ましくは0~10質量%、より好ましくは0~7質量%、より好ましくは0~6質量%である。
なお、上記全(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量とは、スチレン系樹脂組成物中に存在する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の合計量を示すため、樹脂(A)、樹脂(B)及び任意で添加する樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の各含有量も換算される。
【0120】
<2mmプレートヘイズ>
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物から形成される試験片である2mmプレートにおけるヘイズ(曇り度)は、15%以下が好ましく、より好ましくは7%、より更に好ましくは3%以下、最も好ましくは1.5%以下である。特に3%以下とすることで、成形した際に透明性に非常に優れた成形物を得ることができる。
本実施形態において、2mmプレートの作製方法は、後述の実施例でも記載の通り、以下の条件下でスチレン系樹脂組成物を射出成形にて2mmプレートに成形している。
成形機:東芝機械社製 EC60N
シリンダー温度:220-240-220-200℃
計量:45mm
保圧切換:10mm
射出時間:10秒
冷却時間:15秒
射出速度:23mm/秒
保圧速度:23mm/秒
保圧時間:10秒
金型温度:45℃
【0121】
「スチレン系樹脂組成物の組成」
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)と光安定剤(C)と紫外線吸収剤(D)とを含有し、かつ樹脂(A)及び樹脂(B)の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、65~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは75~95質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)と光安定剤(C)と紫外線吸収剤(D)と添加剤とを含有し、かつ樹脂(A)と樹脂(B)と光安定剤(C)と紫外線吸収剤(D)と添加剤との合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、70~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは80~95質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)と樹脂(C)とを有し、かつ樹脂(A)、樹脂(B)及び樹脂(C)の合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、70~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは80~90質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)と光安定剤(C)と紫外線吸収剤(D)と一価アルコール(E)とを含有し、かつ樹脂(A)と樹脂(B)と光安定剤(C)と紫外線吸収剤(D)と一価アルコール(E)との合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、85~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは90~95質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)と光安定剤(C)と紫外線吸収剤(D)と一価アルコール(E)と離型剤(F)とを含有し、かつ樹脂(A)と樹脂(B)と光安定剤(C)と紫外線吸収剤(D)と一価アルコール(E)と離型剤(F)との合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、70~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは80~90質量%でありうる。
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、樹脂(A)と樹脂(B)と光安定剤(C)と紫外線吸収剤(D)と一価アルコール(E)と離型剤(F)と添加剤とを有し、かつ樹脂(A)と樹脂(B)と光安定剤(C)と紫外線吸収剤(D)と一価アルコール(E)と離型剤(F)と添加剤との合計含有量が、スチレン系樹脂組成物全体に対して、85~100質量%占めることが好ましく、より好ましくは90~95質量%でありうる。
「スチレン系樹脂組成物の特に好ましい形態」
本実施形態の特に好ましい形態は、スチレン系単量体単位(1)及び不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)を有するスチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)59質量%以上89質量%以下と、
不飽和カルボン酸系単量体単位(b1)を有する(メタ)アクリル系樹脂(B)14質量%以上41質量%以下と、を含有するスチレン系樹脂組成物であって、
前記スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対し、光安定剤(C)0.001~2.0質量%及び紫外線吸収剤(D)0.001~2.0質量%を含有し、
前記スチレン系樹脂組成物中の全スチレン系単量体単位の含有量が58.8~71.6質量%であり、
前記(メタ)アクリル系樹脂(B)は、メタクリル酸メチル単量体単位とアクリル酸メチル単量体単位とを含む共重合体であり、
前記スチレン系樹脂組成物中の全メタクリル酸メチル単量体単位と全アクリル酸メチル単量体単位との合計含有量が、前記スチレン系樹脂組成物全体に対して、16~40質量%である、スチレン系樹脂組成物である。
これにより、アクリル系樹脂との相溶性に優れ、かつ耐熱性及び透明性を低下させることなく、耐候性、機械的強度及び耐油性、に優れた成形体に使用される、スチレン系樹脂組成物を提供することができる。
【0122】
[スチレン系樹脂組成物の製造方法]
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物の製造方法は、各原料成分を配合、溶融、混練、造粒する方法は特に限定されず、スチレン系樹脂組成物の製造で常用されている方法を用いることができる。例えば、ドラムタンブラー、ヘンシェルミキサー等で配合(混合)した上記各成分をバンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー等を用いて溶融、混練し、ロータリーカッター、ファンカッター等で造粒することによって樹脂組成物を得ることができる。溶融、混練における樹脂温度は180~270℃が好ましい。目標とする樹脂温度にするためには、押出機等のシリンダー温度は樹脂温度よりも10~20℃低い温度に設定することが好ましい。樹脂温度が180℃未満では混合が不十分となり好ましくない。一方、樹脂温度が270℃を超えると樹脂の熱分解が起こり好ましくない。
【0123】
[成形品]
本実施形態のスチレン系樹脂組成物を用いて成形品を製造する方法は、以下の通りである。スチレン系樹脂組成物を上記の溶融混練成形機により、あるいは、得られたスチレン系樹脂組成物のペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法、及び発泡成形法等により、成形品を製造することができる。中でも、射出成形法が好ましい。
<射出成形品>
本開示の別の態様は、上記で説明したスチレン系樹脂組成物を射出成形により製造される成形品であり、耐熱性、透明性、耐候性、機械強度、表面硬度に優れるため、車載用途に好適に用いることができる。
具体的には、スチレン系樹脂組成物を含む照明カバー、あるいは車載用射出成型品が挙げられる。
【実施例0124】
次に本発明を実施例及び比較例により詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における樹脂及び成形品の分析、評価方法は、下記の通りである。
【0125】
[各樹脂及び樹脂組成物の特性評価]
(1)重量平均分子量の測定
実施例及び比較例で製造した各樹脂及び樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)を、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定した。
測定機器:東ソー製HLC―8220
分別カラム:東ソー製TSK gel Super HZM-H(内径4.6mm)を直列に2本接続
ガードカラム:東ソー製TSK guard column Super HZ-H
測定溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
試料濃度:測定試料5mgを10mLの溶媒に溶解し、0.45μmのフィルターでろ過を行った。
注入量:10μL
測定温度:40℃
流速:0.35mL/分
検出器:示差屈折率計
検量線の作成には東ソー製のTSK標準ポリスチレン11種類(F-850、F-450、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000)を用いた。1次直線の近似式を用いて検量線を作成した。
【0126】
(2)メルトマスフローレート(MFR)の測定
実施例及び比較例で製造した各樹脂及び樹脂組成物のメルトマスフローレート(g/10分)を、ISO1133に準拠して、200℃、49Nの荷重条件にて測定した。
【0127】
(3)ビカット軟化温度の測定
実施例及び比較例で製造した各樹脂及び樹脂組成物のビカット軟化温度をISO306に準拠して測定した。荷重は50N、昇温速度は50℃/hとした。ビカット軟化温度が105℃を超えるものが、100℃以上の高温下でも熱変形を起こしにくい射出成形品を得ることができた。
【0128】
(4)スチレン系樹脂組成物中における炭素原子数10以上の1価アルコール(E)の含有量及びその他不純物の測定
スチレン系樹脂組成物全体に対する炭素原子数10以上の1価アルコール(E)の含有量を、ガスクロマトグラフィーを用いて以下の条件で測定した。
試料調製:樹脂1.0gをメチルエチルケトン5mLに溶解後、更に標準物質としてp-ジエチルベンゼンを200μg/gになるように調整したヘキサン5mLを加えポリマー成分を再沈させ、上澄み液を採取し、測定液とした。
測定機器:Agilent社製 6850 シリーズ GCシステム
検出器:FID
カラム:DB-WAX
長さ:60m
膜厚:0.50μm
径:0.320mmφ
注入量:1μL
スプリット比:50:1
カラム温度:100℃で5分保持→10℃/分で130℃まで昇温→10℃/分で180℃まで昇温→180℃で10分保持→20℃/分で220℃まで昇温→220℃で10分保持
注入口温度:230℃
検出器温度:300℃
キャリアガス:ヘリウム
なお、炭素原子数10以上の1価アルコール(E)のピークの検出に際し、他ピークの重なりや、ピーク強度の飽和を避けるため、適宜サンプルの希釈率等の前処理や、使用するカラムや、検出条件を適宜調整してもよい。
【0129】
(5)各単量体単位の含有量の測定
以下の条件にて熱分解GC/MSにて実施例及び比較例で調製した樹脂組成物中に含まれる各単量体単位の含有量の測定を行なった。
<測定条件>
熱分解ユニット
機器 :フロンティアラボ製 PY-3030D
加熱炉温度 :600℃
境界温度 :300℃
GC/MS
機器 :島津製作所製 GCMS-GP2020NX
カラム :Ultra Alloy-5
(長さ30m、膜厚0.25μm、径0.250mmφ)
カラム温度 :50℃に5分間保持、10℃/分で昇温、
100℃からは7℃/分で昇温、300℃で10分間保持。
注入口温度 :300℃
検出器温度 :300℃
スプリット比 :1/300
キャリアガス :ヘリウム
検出方法 :質量分析計(MSD)
サンプル量 :50μg
検出モード :スキャンモード又はSIMモード
なお、各単量体ピークの検出に際し、ピークの重なりや、ピーク強度の飽和を避けるため、適宜サンプルの希釈率等の前処理や、使用するカラムや、検出条件を適宜調整してもよい。
【0130】
(6)2mmプレートの全光線透過率、ヘイズ、YI(黄色度)測定
実施例及び比較例で製造した各樹脂組成物を射出成形にて2mmプレートに成形し、23℃、湿度50%の恒温室にて48時間以上状態調節後、日本電色工業社製色差濁度測定計(COH-300A)を用いてヘイズ及びYIを測定、n3平均を値とした。
(8)300mm長光路試験片のYI(黄色度)測定
実施例及び比較例で製造した各樹脂組成物を射出成形にて300mm長光路試験片を成形し、23℃、湿度50%の恒温室にて48時間以上状態調節後、日本電色長光路分光透過色計ASA-1)を用いてYIを測定し、n3平均を値とした。特に、初期色調を重視する場合は、長光路でのYI値を重視する場合がある。
【0131】
(9)耐油性の評価
実施例及び比較例で製造した各樹脂組成物を射出成形にて2.5mmプレートに成型し、該スチレン系樹脂組成物プレートを100℃のヤシ油(和光純薬製)に15分間浸漬後、日本電色工業社製曇り度計(NDH-2000)を用いてヘイズを測定し、浸漬前後におけるヘイズの変化(Δヘイズ)を、以下の式により算出し、以下の評価基準で耐熱油性を評価した。
Δヘイズ=試験後ヘイズ(%)-試験前ヘイズ(%)
<評価基準>
◎・・Δヘイズが1%未満
〇・・Δヘイズが1%以上3%以下
△・・Δヘイズが3%より大きく5%以下
×・・Δヘイズが5%より大きい
【0132】
(10)表面硬度の測定
実施例及び比較例で製造した各樹脂組成物を射出成形にて2mmプレートに成形し、JIS K 5600-5-4に記載の引っかき硬度(鉛筆法)に準拠し、鉛筆新の先端荷重750g、鉛筆角度45度、に調整できる台車を用いて、引っかき速度0.5~1.0mm/秒にて試験を行い、表面が傷つかない最大の鉛筆硬度スケールを求めた。
【0133】
(11)面衝撃強度(kg・cm)の測定
実施例及び比較例で製造した各樹脂組成物を80℃で2時間以上換気機能のある乾燥機にて乾燥後、温度設定250℃の圧縮成型機にて0.7mm厚のシート状に成形し、東洋精機製フィルムインパクトテスター(No.195)を用いて面衝撃強度を測定し、n8平均を値とした。
【0134】
(12)耐候試験
実施例及び比較例で製造した各樹脂組成物を射出成形にて2mmプレートに成形し、アトラス社製キセノンウェザーメーターCi4000を用いて耐候試験を行った。条件設定は、雨あり、ブラックパネル温度62℃、340nmにおける放射照度を0.4W/m2とし、1000時間経過後の色差(ΔE)を、日本電色工業社製色差濁度測定計(COH-300A)を用いて測定し、n3平均値を値とした。
【0135】
[板状成形品の特性評価]
実施例及び比較例で製造した各樹脂組成物を、シリンダー最高温度250℃、3点ゲートからなる金型を用いた射出成形にて縦150mm×横300mm×3.5mm厚みの板状成形品を作製し、以下の評価に供した。
【0136】
(13)射出成形品の耐候性
上記射出成形品を屋外の海抜40mの地点に設置し、2000時間経過後のYI差(ΔYI)を、日本電色工業社製色差濁度測定計(COH-300A)を用いて測定し、n3平均値を測定し、以下の基準で評価した。
〇:ΔYIが1.0未満
△:ΔYIが1.0以上2.0未満
×:ΔYIが2.0以上
【0137】
(14)成形サイクル性
上記板状射出成形品を300点成形し、主に離型性が原因で発生する外観不良品の発生個数を記録し、以下の基準で評価した。
◎:外観不良品発生が1個以下
〇:外観不良品発生が2個または3個
△:外観不良品発生が3個超12個未満
×:外観不良品の発生が12個以上
(15)成形性(流動性)
(15―1)成形性(流動性)―1
実施例及び比較例の成形性(流動性)の評価では、射出成形機東芝機械株式会社製、EC60Nを用いてシリンダー温度210℃、金型温度45℃、射出圧力60MPaで、2mm厚のプレートを成形した際、以下の基準をもって評価した。
〇:問題なく成形可能
ショート:ショートショットとなる
(15-2)成形性(流動性)-2
実施例及び比較例の成形性(流動性)の評価では、射出成形機東芝機械株式会社製、EC60Nを用いてシリンダー温度220℃、金型温度45℃で2mm厚のプレートを成形した際、ショートショットにならず、成形可能になる最低射出圧力を評価した。この評価において、成形可能である射出圧力が低いほど、複雑な形状の成形品や薄肉部を有する成形品でも、比較的低いシリンダー温度でショートショットにならずに成形することができる。低いシリンダー温度で成形できることで、冷却時間が短くなり、成形サイクルの短縮や揮発成分が少なくなり、金型汚れが発生しにくくなる効果がある。
(16)成形性(吸水性)
実施例及び比較例の成形性(流動性)の評価では気温23℃、湿度50%でペレットを24時間放置し、その後、射出成形機東芝機械株式会社製、EC60Nを用いてシリンダー温度240℃、金型温度45℃、射出圧力60MPaで2mm厚のプレートを20枚成形した際、プレートに樹脂中の水分由来のシルバーストリーク(銀条)が見られたプレートの個数を以下の基準をもって評価した。
◎:0~1個
〇:1~4個
△:5~9個
×:10個以上
【0138】
(17)射出成形時の金型汚れ
スチレン系樹脂組成物を220℃でJIS K 7152に従って射出成形片を作製した際、連続成形後に金型に付着物が確認されるまでのショット数を指標として金型汚れの評価を行った。金型付着物が確認されるまでのショット数を以下の基準で評価した。
〇:100回以上
△:50~100回
×:50回未満
【0139】
(18)射出成形品の表面外観
上記射出成形品を10点成形し、成形品の両表面について異物の有無を目視で観察し、以下の基準で評価した。
〇:異物の数が5個以下
△:異物の数が5個以上10個未満
×:異物の数が10個以上
【0140】
(19)射出成形品の透明性
上記射出成形品を超音波カッターにて縦50×横100mmに切り出し、日本電色工業社製曇り度計(NDH-2000)を用いて成形品のヘイズを測定、n3平均を値で測定し、以下の基準にて評価した。
〇:ヘイズが3.0%以下
△:ヘイズが3.0%を超え~5.0%以下
×:ヘイズが5.0%を超える
【0141】
(20)射出成形品の耐熱性
上記射出成形品を115℃に設定した恒温槽に導入し、30分経過後取り出し、室温に冷却後、横方向の熱寸法変化率を測定し、以下の基準で評価した。
◎:寸法変化率が0.5%未満
〇:寸法変化率が0.5%以上1%未満
△:寸法変化率が1%以上7%未満
×:寸法変化率が7%以上
【0142】
(21)射出成形品の耐傷性
上記射出成形品の中央部を無作為に20回爪で引掻いた後、引掻いた部分をメタノールで洗浄後、目視で爪痕を観察し、以下の基準で評価した。
〇:爪痕が認められない
△:1~2カ所爪痕が認められる
×:3か所以上爪痕が認められる
【0143】
(22)射出成形品の強度
上記射出成形品を超音波カッターにて縦80×横80mmに切り出し、東洋精機製フィルムインパクトテスター(No.195)を用いてフィルムインパクトを測定。10点サンプルを測定し、以下の観点で評価した。
〇:破壊したサンプルが2点以下
△:破壊したサンプルが3点以上5点以下
×:破壊したサンプルが6点以上
【0144】
[各樹脂の調製及びスチレン系樹脂組成物の製造例]
以下各樹脂の調整とスチレン系樹脂組成物の具体的な製造方法について述べる。
<スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の製造例>
-樹脂a-1の調製-
スチレン(重合禁止剤としてt-ブチルカテコールを20μg/g含む)65.5質量部、メタクリル酸メチル3.3質量部、メタクリル酸(重合禁止剤として4-メトキシフェノールを50μg/g含む)5.8質量部、エチルベンゼン22.9質量部、2-エチル-1-ヘキサノール2.5質量部及び1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.027質量部からなる重合原料組成液を、0.8リットル/時の速度で、容量が3.6リットルの完全混合型反応器に供給し、次に未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置へと連続的に供給した。完全混合反応器の重合温度は130℃とした。単軸押出機の温度を210~230℃、圧力を10torrに設定して、未反応モノマー及び重合溶媒等の揮発成分を脱揮した。脱揮された揮発成分を-5℃の冷媒を通した凝縮器で凝縮し、未反応液として回収し、スチレン系樹脂は樹脂ペレットとして回収した。上述の分析法によって得られた樹脂a-1の物性を以下の表1に示す。
【0145】
-樹脂a-2、a-3、a―5~a―13の調製-
各単量体のフィード量、重合条件を調整し、上記樹脂a-1と同様の手順で樹脂a-2、a-3及びa―5~a―13を調製した。得られた樹脂a-1~樹脂a-3及びa―5~a―13の組成及び物性を表1に示す。
【0146】
-樹脂a-4の調製-
単量体としてスチレンのみを用いて、上記と同様の手順にてスチレン単独重合体として樹脂a-4を表1に示す組成、物性にて得た。
【0147】
【0148】
なお、得られた樹脂a-1~a-13中には、残留スチレンモノマーを100~500μg/g程度、エチルベンゼンを10~200μg/g程度、2-エチル-1-ヘキサノールを30~120μg/g程度、スチレン2量体及び3量体を1000~5000μg/g程度、上記重合原料組成物の残渣由来の不純物を含有していた。これらの定量については前述のガスクロマトグラフィーにて炭素原子数10以上の1価アルコール(E)の定量と同様の手法にて行った。
【0149】
<(メタ)アクリル系樹脂(B)の製造例>
-樹脂b-1の調製-
攪拌機を有する5L容器に水2kg、第三リン酸カルシウム65g、炭酸カルシウム39g、ラウリル硫酸ナトリウム0.39gを投入し、それらを混合・撹拌することで懸濁剤を調製した。次に60Lの反応器に水26kgを投入して80℃に昇温し、懸濁重合の準備を行った。80℃に達して恒温状態になったことを確認した後、重合原料としてメタクリル酸メチル1.56kg、アクリル酸メチル0.03kg、ラウロイロパーオキサイド0.99g、n-オクチルメルカプタン4.33g、及び上記懸濁剤を投入した。その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、92℃で60分間温度を保持した。続いて50℃まで冷却した後、20質量%硫酸を投入して懸濁剤を溶解させた。次いでその重合反応溶液を60L反応器から取り出し、篩目開き1.7mmの篩にかけて巨大凝集物を除去した後、ブフナー漏斗にて水層と固形物とを分離し、ビーズ状ポリマーを得た。そのビーズ状ポリマーをブフナー漏斗上で、5回、約20Lの蒸留水で洗浄、脱水を繰り返した後、乾燥させ、単軸押出機を用いてペレタイズし、ペレット状樹脂として樹脂b-1を得た。
【0150】
-樹脂b-2~b-8の調製-
各単量体のフィード量、重合条件を調整し、上記樹脂b-1と同様の手順で樹脂b-2~b-6を調製した。得られた樹脂b-1~樹脂b-8の組成及び物性を表2に示す。
【0151】
【0152】
<<実施例で使用した炭素原子数10以上の1価アルコール(E)>>
本明細書の実施例において炭素原子数10以上の1価アルコール(E)として以下アルコール種を使用した。
1価アルコール(E-1)として、日産化学社製のファインオキソコール180(化合物名:5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-1-オクタノール)を使用した。
1価アルコール(E―2)として、カルコール8098(化合物名:ステアリルアルコール)を使用した。
1価アルコール(E-3)として、花王社製のエマルゲン109P(ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテルモノアルコール)を使用した。
【0153】
光安定剤(C)として以下の表3及び化学構造に示す化合物又は製品を用いた。
【0154】
【0155】
光安定剤c-1:
【化17】
CAS番号:52829-07-9
光安定剤c-2:
【化18】
CAS番号:705257-84-7
光安定剤c-3:
【化19】
CAS番号:64022-61-3
光安定剤c-4:
【化20】
CAS番号:41556-26-7
光安定剤c-5:
【化21】
CAS番号:101357-37-3及び85631-01-2混合物
【0156】
紫外線吸収剤(D)として以下の表4及び化学構造に示す化合物又は製品を用いた。
【0157】
【0158】
紫外線吸収剤(d.1):
【化22】
CAS番号:22440-22-4
紫外線吸収剤(d.2):
【化23】
CAS番号:3147-75-9
紫外線吸収剤(d.3):
【化24】
CAS番号:371146-04-2
紫外線吸収剤(d.4):
【化25】
CAS番号:222529-65-9
紫外線吸収剤(d.5):
【化26】
CAS番号:1843-05-6
紫外線吸収剤(d.6):
【化27】
CAS番号:147315-50-2
紫外線吸収剤(d.7):
【化28】
CAS番号:178671-58-4
紫外線吸収剤(d.8):
【化29】
CAS番号:7443-25-6
紫外線吸収剤(d.9):
【化30】
CAS番号:6337-43-5
紫外線吸収剤(d.10):
【化31】
CAS番号:23949-66-8
【0159】
以下の離型剤(F)として以下の表5に示す化合物又は製品を用いた。
【0160】
【0161】
<架橋体(G)の製造例>
-架橋体g-1の調製-
未溶融化合物であるMMA-nBA共重合架橋ビーズ(C)の製造
攪拌機付きオートクレーブにメタクリル酸メチル30質量部、n-ブチルアクリレート70質量部、架橋剤としてジビニルベンゼン5質量部、重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド0.2質量部、懸濁安定剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.001質量部及び第三リン酸カルシウム0.5質量部、純水200質量部を仕込み、温度95℃にて6時間、さらに温度125℃にて3時間重合した。反応終了後、洗浄、脱水、乾燥を行い、架橋体(g-1)を得た。架橋体(g-1)の平均粒子径は4μm、屈折率は、1.470であった。
-架橋体g-2の調製-
攪拌機付きオートクレーブにスチレン50質量部、メタクリル酸メチル50質量部、架橋剤としてジビニルベンゼン5質量部、重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド0.2質量部、懸濁安定剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.001質量部及び第三リン酸カルシウム0.5質量部、純水200質量部を仕込み、温度95℃にて6時間、さらに温度125℃にて3時間重合した。反応終了後、洗浄、脱水、乾燥を行い、架橋体(g-2)を得た。架橋体(g-2)の平均粒子径は8μm、屈折率は、1.545であった。
-架橋体g-3の調製-
攪拌機付きオートクレーブにメタクリル酸メチル100質量部、架橋剤としてジビニルベンゼン5質量部、重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド0.2質量部、懸濁安定剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.001質量部及び第三リン酸カルシウム0.5質量部、純水200質量部を仕込み、温度95℃にて6時間、さらに温度125℃にて3時間重合した。反応終了後、洗浄、脱水、乾燥を行い、架橋体(g-3)を得た。前記架橋体(g-3)の平均粒子径は8μm、屈折率は、1.494であった。
-架橋体g-4の調製-
撹拌機付耐圧容器に純水200質量部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム塩ウム塩0.008質量部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム0.002質量部、硫酸第一鉄0.0012質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリ0.03質量部、を仕込み、脱酸した後に、ブタジエン100質量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.05質量部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.2質量部を添加し、それから6時間かけてポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウムを1.4質量部滴下した後、反応溶液中のpH6.5~7.5において50℃で124時間保持し、転化率98重量%で、平均粒子径0.2μmのジエン系ゴムラテックスを得た。
続いて上記で得られたゴムラテックス(固形分約71部)を60℃に保持しながら、単量体としてのメタクリル酸メチル55質量部、アクリル酸(n-ブチル)5質量部を1時間にわたって添加した。また上記単量体の添加と同時に、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.09質量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1質量部、の添加を開始し、それから反応溶液中のpHを6.5~7.5、温度を約60℃に保ちながら2時間かけて全量を添加した。さらに反応溶液を、約60℃で1時間保持して、平均粒子径200nmのグラフト共重合体ラテックスを調製し、酸化防止剤としてイルガノックス1076を1質量部添加した後、塩化カルシウム水溶液で凝析処理し、水洗、脱水乾燥を経ることで粉体としてゴム状重合体の架橋体(g-4)を得た。
また、上記に示す架橋体のほかに以下の製品を架橋体として実施例・比較例にて使用した。
架橋体(g-5):三菱ケミカル社製メタブレン W-450A(製品名)
架橋体(g-6):積水化成品工業社製テクポリマーMBX-5(製品名)
【0162】
<<実施例で使用した酸化防止剤(H)>>
本明細書の実施例において酸化防止剤として、以下の2種の酸化防止剤を使用した。
・フェノール系酸化防止剤h-1:BASFジャパン社製Irganox1076
化合物名:オクタデシル-3-(3,5-ターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート
・フェノール系酸化防止剤h-2:住友化学株式会社製スミライザーGA-80
化合物名:2,2’-ジメチル-2,2’-(2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイル)ジプロパン-1,1’-ジイル=ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパノアート]
・フェノール系酸化防止剤h-3:住友化学株式会社製スミライザーGS
化合物名:2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニ ル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニル=アクリラート
・リン系酸化防止剤h-4:BASFジャパン社製Irgafos168
化合物名:トリス(2,4-ジ-ターシャリーブチルフェニル)フォスファイト
・リン系酸化防止剤h-5:株式会社ADEKA製アデカスタブ PEP-36
化合物名:3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン
・リン系酸化防止剤h-6:株式会社ADEKA製アデカスタブ TPP化合物名:トリフェニルホスファイト
・リン系酸化防止剤h-7:株式会社ADEKA製アデカスタブ 3010
化合物名:トリイソデシル=ホスフィット
・リン系酸化防止剤h-8:株式会社ADEKA製アデカスタブ PEP-8
化合物名:3,9-ジオクタデカン-1-イル-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン
・ヒンダートフェノール骨格を有するリン系酸化防止剤h-9:住友化学社製スミライザーGP
化合物名:6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン
【0163】
【0164】
<スチレン系樹脂組成物の製造例>
以下にスチレン系樹脂組成物の詳細な製造方法について示す。
-実施例1-
スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)として表1記載の樹脂a-1を70.0質量部、(メタ)アクリル系樹脂(B)として表2記載の樹脂b-1を30.0質量部、及び光安定剤(C)として表3記載の光安定剤c-1、すなわちビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートを0.12質量部、紫外線吸収剤(D)として表4記載の紫外線吸収剤d-1、すなわち2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール0.08質量部、炭素原子数10以上の1価アルコール(E)として1価アルコール(E-1)、すなわちファインオキソコール180(化合物名:5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-1-オクタノール)を0.11質量部、及び1価アルコール(E-2)、すなわちカルコール8098(化合物名:ステアリルアルコール)0.13質量部ドライブレンドし、芝浦機械社製二軸押出機TEM26SSを用いて混練押出、ペレタイズ後、外部滑剤(F2)としてエチレンビスステアリン酸アミド0.01質量部をドライブレンドし、ペレット状樹脂としてスチレン系樹脂組成物(1)を得た。スクリュー回転数150rpm、シリンダー温度は180~230℃、フィード量10kg/hとした。樹脂温度は250~260℃であった。得られたスチレン系樹脂組成物(1)及びその成形品の評価結果を表7-1に示す。
【0165】
-実施例2~45-
配合を下記表7-1~表7-3のように変更した以外は実施例1と同様にしてスチレン系樹脂組成物(2)~(45)及びその成形品を得た。各組成物及び成形品の評価結果を表7-1~表7-3に示す。
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
-比較例1~6-
配合を下記表8のように変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1~6の樹脂組成物及びその成形品を得た。各組成物及び成形品の評価結果を表8に示す。
【0170】
【0171】
-実施例46~135-
配合を下記表9-1~表10-3のように変更した以外は実施例1と同様にして、実施例46~135のスチレン系樹脂組成物(46)~(135)及びその成形品を得た。各組成物及び成形品の評価結果を表9-1~表10-3に示す。
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
本開示のスチレン系樹脂組成物は、耐熱性及び透明性を低下させることなく、耐候性、機械的強度及び耐油性に優れた成形体に使用される。本開示の成形品は、車載用材料、食品容器の包装材料、住宅の断熱材、照明器具等のハウジング材、モニター若しくはディスプレイ用材料、又は導光板若しくは光拡散板等の用途に幅広く展開され得る。
前記スチレン系樹脂の総量(100質量%)に対して、炭素原子数10以上の一価アルコール(E)0.001~1.0質量%をさらに含有する、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及びヒンダードフェノール骨格を有するリン系酸化防止剤からなる群から選択される1種又は2種以上の酸化防止剤をそれぞれ0.001~0.5質量%含有する、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
前記(メタ)アクリル系樹脂(B)は、メタアクリル酸エステル単量体単位とアクリル酸エステル単量体単位とを含有する共重合体である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
前記スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)全体に対して前記不飽和カルボン酸系単量体単位(a1)の含有量は、8.5質量%以上である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
前記スチレン-不飽和カルボン酸系樹脂(A)の5kg荷重ビカット軟化温度(ISO306準拠)が120℃以上である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
JIS K 5600-5-4に記載の引っかき硬度(鉛筆法)に準拠し、鉛筆の芯の先端荷重750g、鉛筆角度45度、引っかき速度0.5~1.0mm/秒で測定される表面引っ掻き硬度がH以上である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。