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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019167
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】細胞カプセル化デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/02 20060101AFI20240201BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20240201BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20240201BHJP
   A61L 27/38 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61F2/02 ZBP
A61M37/00 560
A61L27/40
A61L27/50
A61L27/38
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023189945
(22)【出願日】2023-11-07
(62)【分割の表示】P 2022521502の分割
【原出願日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】62/913,549
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーン エム.スコッティ
(72)【発明者】
【氏名】エドワード エイチ.カリー
(57)【要約】
【課題】治療デバイスを提供すること。
【解決手段】治療デバイスは、管状本体であって、それを通って延在している管腔を含む、管状本体を含み、前記管状本体の壁は、第一の複合層、第二の複合層、及び、前記第一の複合層と前記第二の複合層との間のリザーバを含み、前記リザーバは、生物学的部分を受け取り、含むように構成されている。別の実施形態において、治療デバイスは、中に第一の開口部及び中空内部を有するトロイダル治療デバイスを含み、前記トロイダル治療デバイスは、第一の透過性複合層、第二の透過性複合層、及び、前記第一の複合膜と前記第二の複合膜との間のリザーバを含む壁を有し、前記リザーバは、生物学的部分を受け取り、含むように構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に管状の部材であって、それを通って延在している管腔を含む、実質的に管状の部材、
を含む、治療デバイスであって、
前記実質的に管状の部材の壁は、
第一の複合層、
第二の複合層、及び、
前記第一の複合層と前記第二の複合層との間のリザーバ、
を含み、前記リザーバは、生物学的部分を受け取り、その中に含むように構成されている、治療デバイス。
【請求項2】
前記第一の複合層は、第一の細胞透過性層及び第一の細胞不透過性層を含み、前記第二の複合層は、第二の細胞透過性層及び第二の細胞不透過性層を含む、請求項1記載の治療デバイス。
【請求項3】
前記実質的に管状の部材は、第一の端部及び第二の端部を有し、
前記第一の端部及び前記第二の端部のそれぞれは、前記管腔に対して開いており、その結果、血管新生は、前記第一の複合層の第一の細胞透過性層及び前記第二の複合層の第二の細胞透過性層から起こる、請求項1又は2記載の治療デバイス。
【請求項4】
前記リザーバは50ミクロン~200ミクロンの厚さを有する、請求項1~3のいずれか1項記載の治療デバイス。
【請求項5】
前記生物学的部分は複数の細胞である、請求項1~4のいずれか1項記載の治療デバイス。
【請求項6】
前記複数の細胞は、原核細胞、真核細胞、哺乳動物細胞、非哺乳動物細胞、幹細胞及びそれらの組み合わせから選ばれる、請求項5記載の治療デバイス。
【請求項7】
前記リザーバと流体連通しているポートをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項記載の治療デバイス。
【請求項8】
接続部材によって接続されている複数の実質的に管状の部材、
を含む、治療デバイスであって、各管状の部材は、それを通って延在している管腔を含み、
前記複数の実質的に管状の部材のそれぞれは、第一の端部及び第二の端部を有し、
前記第一の端部及び前記第二の端部のそれぞれは、前記管腔に対して開いており、そして、
前記複数の実質的に管状の部材のそれぞれは、
第一の複合層、
第二の複合層、及び、
前記第一の複合層と前記第二の複合層との間のリザーバ、
を含む、それぞれの壁を有し、
前記リザーバは、生物学的部分を受け取り、含むように構成されている、治療デバイス。
【請求項9】
前記複数の実質的に管状の部材は、前記複数の実質的に管状の部材の第一の端部又は第二の端部で接続部材によって相互接続されている、請求項8記載の治療デバイス。
【請求項10】
前記複数の実質的に管状の部材は互いに独立して移動可能である、請求項8又は9記載の治療デバイス。
【請求項11】
前記複数の実質的に管状の部材は、前記複数の実質的に管状の部材のそれぞれの長さに沿って接続部材によって流体的に相互接続されている、請求項8~10のいずれか1項記載の治療デバイス。
【請求項12】
前記リザーバは50ミクロン~200ミクロンの厚さを有する、請求項8~11のいずれか1項記載の治療デバイス。
【請求項13】
中に第一の開口部及び中空内部を有するトロイダル部材、
を含む、治療デバイスであって、
前記トロイダル部材は、
第一の透過性複合層、
第二の透過性複合層、及び、
前記第一の複合層と前記第二の複合層との間のリザーバ、
を含む壁を有し、
前記リザーバは、生物学的部分を受け取り、含むように構成されている、治療デバイス。
【請求項14】
前記トロイダル治療デバイスは、前記第一の開口部と反対側にそしてそれと実質的に位置合わせして第二の開口部を有する、請求項13記載の治療デバイス。
【請求項15】
前記第二の開口部に隣接して配置された第三の開口部を中に有する第二のトロイダル部材をさらに含む、請求項13又は14記載の治療デバイス。
【請求項16】
前記第一のトロイダル部材及び前記第二のトロイダル部材は、前記第二の開口部及び前記第三の開口部によって流体的に相互接続されている、請求項15記載の治療デバイス。
【請求項17】
前記生物学的部分は複数の細胞である、請求項13~16のいずれか1項記載の治療デバイス。
【請求項18】
前記複数の細胞は、原核細胞、真核細胞、哺乳動物細胞、非哺乳動物細胞、幹細胞及びそれらの組み合わせから選ばれる、請求項17記載の治療デバイス。
【請求項19】
前記第一の複合層及び前記第二の複合層はそれぞれ、細胞透過性層及び細胞不透過性層を含む、請求項13~18のいずれか1項記載の治療デバイス。
【請求項20】
前記リザーバと流体連通しているポートを含む、請求項13~19のいずれか1項記載の治療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、メディカルデバイスの分野、特に、細胞をカプセル化して患者にインプラント処置するための治療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的療法は、末梢動脈疾患、動脈瘤、心臓病、アルツハイマー病及びパーキンソン病、自閉症、失明、糖尿病及びその他の病状を治療するための益々実行可能な方法である。一般的な生物学的療法に関して、細胞、ウイルス、ウイルスベクター、細菌、タンパク質、抗体及び他の生物活性部分は、生物活性部分を患者の組織床に配置する外科的又は介入的方法によって患者に導入されうる。従来から、生物活性部分は、最初にデバイス中に配置され、次にそれが患者に挿入される。あるいは、デバイスを最初に患者に挿入し、後で生物活性部分を添加することもできる。
【0003】
しばしば、デバイスにはコア(シリコーンなど)を有し、それにより、血管新生はデバイスの外周からのみ発生することができる。これらのデバイスに導入される生物活性部分と酸素供給及び栄養源との間の距離は細胞カプセル化の問題を提示する。というのは、比較的に短い期間内に適切な酸素及び栄養素の供給がないと細胞が死に始めるからである。したがって、細胞の生存及び成長を確保しながら、細胞及び/又は他の生物学的部分をカプセル化するデバイスが必要である。
【発明の概要】
【0004】
この要旨は、本発明の様々な態様の高レベルの概要であり、以下の詳細な説明のセクションでさらに詳細に説明されている概念の幾つかを紹介している。この要旨は、特許請求された主題の重要な又は本質的な特徴を特定することを意図しておらず、また、特許請求された主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図されていない。主題は、明細書全体、一部又はすべての図面及び各特許請求の範囲の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。
【0005】
本開示の実施形態は、管状部材(例えば、管状本体)及びそれを通って延在している管腔を含む治療デバイスに関する。治療デバイスの壁は、第一の透過性複合層、第二の透過性複合層、及び、前記第一の複合層と前記第二の複合層との間のリザーバを含む。前記リザーバは、生物学的部分を受け取り、含むように構成されている。
【0006】
幾つかの実施形態において、前記第一の複合層は、第一の細胞透過性層及び第一の細胞不透過性層を含み、前記第二の複合層は、第二の細胞透過性層及び第二の細胞不透過性層を含む。
【0007】
幾つかの実施形態において、前記治療デバイスは、第一の端部及び第二の端部を有する。前記第一の端部及び前記第二の端部のそれぞれは、前記管腔に対して開いており、その結果、血管新生は、前記第一の複合層の第一の細胞透過性層及び前記第二の複合層の第二の細胞透過性層から起こる。
【0008】
幾つかの実施形態において、前記リザーバは、50ミクロン~200ミクロンの厚さを有する。
【0009】
幾つかの実施形態において、生物学的部分は複数の細胞である。
【0010】
幾つかの実施形態において、前記複数の細胞は、原核細胞、真核細胞、哺乳動物細胞、非哺乳動物細胞、幹細胞及びそれらの組み合わせから選ばれる。
【0011】
幾つかの実施形態において、前記デバイスは、前記リザーバと流体連通しているポートをさらに含む。
【0012】
本開示の実施形態はまた、それぞれが管状部材(例えば、管状本体)を含む複数の治療デバイスを含む物品に関する。前記治療デバイスは、接続部材によって接続されている。各治療デバイスは、それを通って延在している管腔を含む。各治療デバイスは、第一の端部及び第二の端部を有する。前記第一の端部及び前記第二の端部のそれぞれは、前記管腔に対して開いている。各治療デバイスは、第一の透過性複合層、第二の透過性複合層、及び前記第一の複合層と前記第二の複合層との間のリザーバを含む壁を有する。前記リザーバは、生物学的部分を受け取り、含むように構成されている。
【0013】
幾つかの実施形態において、前記治療デバイスは、前記治療デバイスの第一の端部又は第二の端部で接続部材によって相互接続されている。
【0014】
幾つかの実施形態において、前記治療デバイスは互いに独立して移動可能である。
【0015】
幾つかの実施形態において、前記治療デバイスは、接続部材によって流体的に相互接続されている。
【0016】
幾つかの実施形態において、前記リザーバは、50ミクロン~200ミクロンの厚さを有する。
【0017】
本開示の実施形態はまた、中に第一の開口部及び中空内部を有するトロイダル治療デバイスを含むデバイスに関する。前記トロイダル治療デバイスは、第一の透過性複合層、第二の透過性複合層、及び前記第一の複合層と前記第二の複合層との間のリザーバを含む壁を有する。前記リザーバは、生物学的部分を受け取り、含むように構成されている。
【0018】
幾つかの実施形態において、前記トロイダル治療デバイスは、前記第一の開口部と反対側にそしてそれと実質的に位置合わせして第二の開口部を有する。
【0019】
幾つかの実施形態において、前記デバイスは、前記第二の開口部に隣接して配置された第三の開口部を中に有する第二のトロイダル治療デバイスをさらに含む。
【0020】
幾つかの実施形態において、前記第一のトロイダル治療デバイス及び前記第二のトロイダル治療デバイスは、前記第二の開口部及び前記第三の開口部によって流体的に相互接続されている。
【0021】
幾つかの実施形態において、生物学的部分は複数の細胞である。
【0022】
幾つかの実施形態において、前記複数の細胞は、原核細胞、真核細胞、哺乳動物細胞、非哺乳動物細胞、幹細胞及びそれらの組み合わせから選ばれる。
【0023】
幾つかの実施形態において、前記第一の複合層及び前記第二の複合層はそれぞれ、細胞透過性層及び細胞不透過性層を含む。
【0024】
幾つかの実施形態において、前記デバイスは、前記リザーバと流体連通しているポートをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成し、実施形態を示し、記載とともに本開示の原理を説明する。
【0026】
図1図1は、本明細書に記載の実施形態による治療デバイスの断面図を示している。
【0027】
図2図2は、本明細書に記載の実施形態による、図1の治療デバイスの第一の複合層、第二の複合層及びリザーバの断面図を示している。
【0028】
図3図3は、本明細書に記載の実施形態による、図1の治療デバイスの部分拡大図を示している。
【0029】
図4図4は、本明細書に記載の実施形態による、図1の治療デバイスの管腔及び層の端面図を示している。
【0030】
図5図5は、本明細書に記載の実施形態による治療デバイスの断面図を示している。
【0031】
図6図6は、本明細書に記載の実施形態による、図6の治療デバイスの第一の複合層、第二の複合層及びリザーバの断面図を示している。
【0032】
図7図7は、本明細書に記載の実施形態による、接続部材によって接続された複数の治療デバイスを含む物品の斜視図を示している。
【0033】
図8図8は、本明細書に記載の実施形態による、充填ポート及びフラッシュポートを備えた図7の物品の斜視図を示している。
【0034】
図9図9は、本明細書に記載の実施形態によるトロイダル治療デバイスの斜視図を示している。
【0035】
図10図10は、本明細書に記載の実施形態による、血管新生された図9の治療デバイスの斜視図を示している。
【0036】
図11図11は、本明細書に記載の実施形態による、図9の2つの治療デバイスが互いの上にスタックされたものの斜視図を示している。
【0037】
図12図12は、本明細書に記載の実施形態による、図9の治療デバイスの第一の複合層、第二の複合層及びリザーバの断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0038】
当業者は、本開示の様々な態様が、意図された機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって実現できることを容易に理解するであろう。本明細書で参照される添付の図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではなく、本開示の様々な態様を説明するために誇張されていることがあり、その点で、図面は限定として解釈されるべきではないことにも留意されたい。「治療デバイス」及び「デバイス」という用語は、本明細書で交換可能に使用されうる。「透過性複合層」、「多孔質複合層」及び「複合層」という用語は、本明細書で交換可能に使用されうる。さらに、「管状部材」及び「管状本体」という用語は、本開示内で交換可能であることができる。
【0039】
本明細書に記載されているのは、生物学的部分をカプセル化するための治療デバイスであり、ここで、生物学的部分を含む治療デバイスは、生物学的治療を提供するために、組織床など、患者内にインプラント処置される。本明細書には、また、治療デバイスを形成するための方法及び生物学的部分をデバイスに導入するための方法も記載されている。幾つかの実施形態において、治療デバイスは、管状又は実質的に管状の形状であり、これは、治療デバイスの外部からだけでなく、管腔内からの血管新生を可能にする。幾つかの実施形態において、治療デバイスは、複合層から形成された管状部材(例えば、管状本体)を含み、各複合層は、細胞不透過性層及び細胞透過性層を有し、それは血管新生及び細胞内部成長を可能にする。幾つかの実施形態において、複合層は、生物学的部分を保持するためのリザーバ空間を画定するために互いに間隔を置いて配置されている。
【0040】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載のデバイスを使用するカプセル化及びインプラント処置に適した生物学的部分としては、細胞、ウイルス、ウイルスベクター、遺伝子治療、細菌、タンパク質、多糖類、抗体及び他の生物活性部分が挙げられる。簡単にするために、本明細書では生物学的部分を細胞と呼ぶが、この記載は、生物学的部分を細胞又は任意の特定のタイプの細胞に限定するものはなく、以下の説明は、細胞ではない生物学的部分にも適用される。幾つかの実施形態において、様々なタイプの原核細胞、真核細胞、哺乳動物細胞、非哺乳動物細胞及び/又は幹細胞は、本発明の細胞カプセル化デバイスとともに使用されうる。幾つかの実施形態において、細胞は、限定するわけではないが、ヒドロゲル材料を含む天然又は合成起源の生体材料内にマイクロカプセル化される。
【0041】
幾つかの実施形態において、細胞は治療上有用な物質を分泌する。幾つかの実施形態において、そのような物質としては、ホルモン、成長因子、栄養因子、神経伝達物質、リンホカイン、抗体、又はデバイスレシピエントに治療上の利益を提供する他の細胞産物が挙げられる。そのような治療用細胞製品の例としては、限定するわけではないが、インスリン、成長因子、インターロイキン、副甲状腺ホルモン、エリスロポエチン、トランスフェリ及び第VIII因子が挙げられる。適切な成長因子の非限定的な例としては、血管内皮成長因子、血小板由来成長因子、血小板活性化因子、形質転換成長因子、骨形態形成タンパク質、アクチビン、インヒビン、線維芽細胞成長因子、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、グリア細胞株由来神経栄養因子、成長分化因子-9、上皮成長因子及びそれらの組み合わせが挙げられる。本開示を通して、「細胞(cell)」又は「細胞(cells)」という用語は、それぞれ「生物学的部分(biological moiety)」又は「生物学的部分(biological moieties)」に置き換えることができることを理解されたい。
【0042】
I.血管新生された管腔を備えた治療デバイス
細胞をカプセル化するための治療デバイスの1つの実施形態は、図1~5に示されている。1つの実施形態によれば、治療デバイス100は、開いた第一の端部130から開いた第二の端部132を有する管状本体102(例えば、管状部材)を含む。本体102は、第一の透過性複合層104及び第二の透過性複合層106によって画定されており、その周囲110の少なくとも一部に沿ってシールされている。細胞を受容するためのリザーバ108は、第一の透過性複合層及び第二の透過性複合層104、106の間に形成される。少なくとも1つのポート107は、リザーバ108と流体連通しており、リザーバを充填し、フラッシングし又は排出させるためにリザーバ108にアクセスするための経路を提供する。ポート107は、治療デバイス100の外部からリザーバ108への経路を提供する限り、本体102上のどこにでも配置することができる。管腔112は、管状本体102を通って延在し、治療デバイス100の内径IDを画定し、一方、第一の複合層104の外面は、治療デバイス100の外径ODを画定し、図1に示すとおりである。内径は、約100ミクロン~約5mm、約150ミクロン~約4.5mm、約200ミクロン~約4mm、又は約250ミクロン~約3.5mmの範囲であることができる。幾つかの実施形態において、管腔112は、管状本体102の全体を通って延在している。幾つかの実施形態において、管腔112は、管状本体102内に実質的に中央に配置されている。第一の複合層104、第二の複合層106、及びそれらの間にあるリザーバ108は管状本体102の壁を画定する。以下でさらに詳細に記載するように、治療デバイス100の管腔112はリザーバに含まれる細胞と血管組織(すなわち、栄養源)との距離は細胞の増殖及び成長を維持するのに十分であるようにして、内径IDからの血管組織の内部成長を可能にする。
【0043】
図2に示されるように、第一の複合層104は、細胞透過性層116及び該細胞透過性層116に隣接して配置された細胞不透過性層118を含む。第二の複合層106は、細胞透過性層120及び細胞不透過性層122を含む。それぞれ、第一の複合層及び第二の複合層104、106の細胞透過性層116、120は、同じ又は異なる材料から形成されうる。
【0044】
幾つかの実施形態において、細胞透過性層116、120は、図2に示されるように、毛細管ネットワーク137の内部成長を可能にするのに十分に大きい細孔サイズを有する。本明細書において、血管内部成長を可能にするのに十分な大きさの開口部を有する層は、「細胞内部成長」層と呼ばれることがある。幾つかの実施形態において、細胞透過性層116、120の細孔サイズは、ポロメトリーによって測定して、約5.0ミクロンよりも大きい。細胞透過性層116、120の両方を介した(例えば、管腔112に面する細胞透過性層120を介しかつ本体102を取り巻く外部環境に面する細胞透過性層116を介した)血管組織の内部成長は、栄養素及び生体分子が、患者から細胞透過性層116を通して移行することを促進するが、細胞不透過性層118までで、細胞不透過性層118を横切らない。
【0045】
様々な細胞タイプは、本明細書に記載されるとおりの治療デバイス100の細胞内部成長層(すなわち、細胞透過性層116、120)内に成長することができる。多孔質材料内に成長する主な細胞タイプは、主にインプラント処置部位、材料の組成及び透過性、ならびに材料に組み込まれ又は多孔質材料を通して導入される可能性のあるサイトカイン及び/又は細胞接着分子などの生物学的要因に依存する。幾つかの実施形態において、血管内皮は、細胞カプセル化デバイスで使用するための多孔質材料内に成長する主要な細胞タイプである。図3~4に示されるように、毛細血管ネットワーク137の形態の血管内皮細胞の十分に確立された集団による細胞透過性層116、120の血管新生は、患者の組織から細胞透過性層116、120の厚さ内及びその厚さを横切る血管新生の結果として生じることが促進される。図4は、図3の治療デバイスの一部の血管新生の拡大図を示している。
【0046】
細胞不透過性層118、122は、血管新生及び細胞内部成長に対して不透過性であり、したがって、細胞保持層である。例えば、幾つかの実施形態において、両方の細胞不透過性層118、122は、血管の内部成長を防ぐために十分に小さい細孔サイズを有する。しかしながら、細胞不透過性層118、122は、患者からの栄養素及び細胞によって生成された産生物がそこを通過することを可能にするのに十分に大きい細孔サイズを有する。幾つかの実施形態において、細胞不透過性層118、122の細孔サイズは、ポロメトリーによって測定して、約5ミクロン未満、約1ミクロン未満又は約0.5ミクロン未満である。
【0047】
幾つかの実施形態において、外側細胞透過性層116、120及び/又は内側細胞不透過性層118、122は、単独又は組み合わせのいずれかで、アルギネート、酢酸セルロース、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコールなどのパンビニルポリマー、キトサン、ポリヒドロキシエチルメタクリレートなどのポリアクリレート、アガロース、加水分解ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリルコポリマー、ポリエチレン-コ-アクリル酸などのポリビニルアクリレート、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、多孔質修飾ポリテトラフルオロエチレンポリマー、多孔質テトラフルオロエチレン(TFE)コポリマー、多孔質ポリプロピレン及び多孔質ポリエチレンなどの多孔質ポリアルキレン、多孔質ポリフッ化ビニリデン、多孔質ポリエステルスルホン(PES)、多孔質ポリウレタン、多孔質ポリエステル、多孔質PPX(ePPX)、多孔質超高分子量ポリエチレン(eUHMWPE)、多孔質エチレンテトラフルオロエチレン(eETFE)、多孔質フッ化ビニリデン(eVDF)、多孔質ポリ乳酸(ePLLA)、及び、それらのコポリマー及び組み合わせ、ならびに繊維又はヤーン又は繊維マトリックスの織布又は不織布のコレクションから形成されうる。幾つかの実施形態において、細胞透過性層116、120は、多孔質延伸ポリテトラフルオロエチレン膜(例えば、ePTFE膜)である。
【0048】
治療デバイス100が細胞保持層(例えば、細胞不透過性層)のみを含み、細胞内部成長層(例えば、細胞透過性層)を含まない実施形態において、治療デバイス100は、場合により、患者にインプラント処置される又はされることができ、そして血管組織の内部成長を可能にする血管新生性材料から作られているハウジングとともに使用することができる。幾つかの実施形態において、治療デバイス100をハウジング内に挿入する前に、血管新生を可能にするのに十分な期間、ハウジングを患者内にインプラント処置することができる。他の実施形態において、治療デバイス100及びハウジングは、一緒に患者内に挿入されうる。
【0049】
上記のように、リザーバ108は、治療デバイス100の第一の複合層104と第二の複合層106との間に形成される。本明細書で使用されるときに、「リザーバ」という用語は、細胞不透過性層118と細胞不透過性層122との間の治療デバイス100内の総面積及び細胞及び他の生物学的部分の配置が行われる(及び細胞又は他の生物学的部分が存在する)治療デバイス100の範囲内を規定することを意味する。幾つかの実施形態において、リザーバ108は、細胞を配置するための複数のリザーバサブセクション(図示せず)を含むことができる。幾つかの実施形態において、リザーバ108は、リザーバサブセクションへ及び/又はリザーバサブセクションを通る細胞の流れを可能にするように相互接続された2つ以上のリザーバサブセクションを含む。リザーバ108は、限定するわけではないが、幾何学的形状(例えば、矩形、円、正方形、半円、半楕円形、管などの一般的な形態)などの多数の構成をとることができる。
【0050】
本明細書で使用されるときに、リザーバ108の「幅」は、細胞が存在する治療デバイス100の長さにわたって、図2に示されるとおりの第一の複合層104の細胞不透過性層118と第二の複合層106の細胞不透過性層122との間の距離を記載することを意味する。幾つかの実施形態において、リザーバ108は、少なくとも50ミクロンの厚さを有する。幾つかの実施形態において、幅は、少なくとも約50ミクロン(例えば、50ミクロン~100ミクロン)、少なくとも100ミクロン(例えば、100~150ミクロン)、又は少なくとも150ミクロン(例えば、150ミクロン~200ミクロン)である。本明細書に記載されるすべての範囲は、本質的に例示的なものであり、その間の任意のすべての値を含むことに留意されたい。
【0051】
リザーバ108は、例えば、図3に示されるように、治療デバイス100内に細胞136を保持するように構成されている。幾つかの実施形態において、細胞136を中に含む治療デバイス100は、細胞136が患者に生物学的治療を提供することを可能にするために、患者の組織床に配置されるように構成されている。
【0052】
幾つかの実施形態において、細胞136は、図1に示されるような1つ以上のポート107を介して治療デバイス100のリザーバ108中に導入される。ポート107は、ポート107が第一の複合層104を通ってリザーバ108まで延在して細胞136をリザーバ108内に導入することを可能にする限り、治療デバイス100の本体102に沿った様々な領域に配置することができる。幾つかの実施形態において、細胞136は、培地中の懸濁液又はスラリーの形態で導入される。細胞136は、個々の細胞、細胞集合体又は細胞クラスターであることができる。幾つかの実施形態において、培地は、細胞培養又は細胞増殖培地であることができ、場合により、所望の栄養素及び/又は他の生体分子を含むことができる。幾つかの実施形態において、ポート107を介した細胞136の挿入は、注射器によって達成されうる。
【0053】
細胞136は、治療デバイス100を患者に挿入する前又は後に、リザーバ108に導入することができる。例えば、治療デバイス100は患者内に挿入され、血管組織がデバイス100の細胞透過性層118、122内に成長するように血管新生を可能にすることができる。次に、治療デバイス100がインビボにある間に細胞136を加えることができる。別の実施形態において、細胞136は、治療デバイス100を患者の組織床内に挿入する前に、治療デバイス100のリザーバ108に添加することができる。
【0054】
上記のように、管腔112は、細胞透過性層120によって取り囲まれ、これは、管腔112からの治療デバイス100の血管新生を促進する。さらに、細胞透過性層116は、治療デバイス100の外部からの治療デバイス100の血管新生を促進する。したがって、血管新生は、図2に示されるように、管腔内及び治療デバイス100の外部の両方から生じる。治療デバイス100の管腔112及び治療デバイス100の外部の両方からの血管新生は、細胞が治療デバイス100の両側から栄養素を取得しているため、幾つかの実施形態において、リザーバ108に含まれる細胞の体積を増加させることができる。幾つかの実施形態において、リザーバ108の厚さは、約0.01ミクロンから約400ミクロンの量で拡張することができる。他の実施形態において、リザーバ108の厚さは、約0.01ミクロンから約200ミクロンに拡張することができる。他の実施形態において、リザーバの厚さは、約0.01ミクロンから約300ミクロンまで増大することができる。他の実施形態において、リザーバの厚さは、約0.01ミクロンから約350ミクロンまで増大することができる。
【0055】
幾つかの実施形態において、治療デバイス100は、以下に記載されるように作製される。以下の記載は単なる例示であり、したがって、治療デバイス100を形成する方法は、この記載に限定されない。幾つかの実施形態において、第二の複合層106は、マンドレル(例えば、4mmのステンレス鋼マンドレル)の周りに多孔質ePTFE膜の少なくとも1つの層(例えば、1層、2層、3層、4層など)を最初に巻き付け、第二の複合層106の細胞透過性層120を形成することによって形成される。多孔質膜は、Brancaらの米国特許第5,814,405号明細書に記載されているタイプのものであることができる。細胞透過性層120が管の形をとるように、例えば、はんだごてなどの局所的な熱源を使用して、多孔質ePTFE膜の対向する縁部を互いに固定する。次に、細胞保持性多孔質膜の少なくとも1つの層(例えば、1層、2層、3層、4層など)が、細胞透過性層120上でマンドレル上に巻き付けられて、第二の複合層106の細胞不透過性層122を形成する。細胞保持性多孔質膜は、Bacinoの米国特許第5,476,589号明細書に記載されているタイプのものであることができる。続いて、局所熱源を使用して、細胞不透過性層122が管の形態をとるように細胞保持性多孔質膜の対向する縁部を互いに固定する。
【0056】
次に、マンドレルを熱処理し(例えば、空気対流オーブンに入れる)、その後、オーブンから取り出し、周囲温度(例えば、約20℃)まで冷却する。この熱処理により、第二の複合層を形成する膜(すなわち、細胞透過性層120を形成する膜及び細胞不透過性層122を形成する膜)が互いに接着する。マンドレルとの密接な接触により、膜の微細構造の歪みを最小限に抑える。
【0057】
第二の複合層106の形成に続いて、リザーバ108を形成する。幾つかの実施形態において、リザーバ108を形成するために、スペーサは、第二の複合層106の細胞不透過性層122の表面に適用されうる。そのような実施形態において、スペーサの高さは、リザーバ108の深さを決定する。幾つかの実施形態において、リザーバ108の深さは、そこに収容される細胞のタイプに応じて選ばれる。
【0058】
次に、第一の複合層104は、上記のプロセスと同様の方法で、より大きなマンドレル(例えば、5mmのステンレス鋼マンドレル)の周りに細胞保持性多孔質膜の少なくとも1つの層(例えば、1層、2層、3層)を巻き付けて細胞不透過性層118を形成することによって同様に形成される。次に、多孔質膜の少なくとも1つの層(例えば、1層、2層、3層、4層など)は、第一の複合層104の細胞透過性層116を形成するために、細胞不透過性層118上で、同一の、より大きなマンドレルの上に巻き付けられる。細胞不透過性層118及び細胞透過性層116のそれぞれの対向する縁部は互いに固定され、そして第一の複合層104は上記のように熱処理される。
【0059】
冷却されると、第一の複合層104をマンドレルから取り外し、そしてマンドレル上にまだ配置されている第二の複合層106の上に配置され、それによって管状本体102の壁を形成する。この時点で、ポート107は、所望ならば、それらがリザーバ108と流体連通するように配置されうる。次に、熱源を使用して、第一の複合層及び第二の複合層の端部を溶融し、第一の複合層及び第二の複合層104、106の端部を接着させそして一緒にシールさせる。幾つかの実施形態において、第一の複合層104はまた、熱源によって第二の複合層106上に配置されたスペーサに接着され、治療デバイスの管状本体を形成する。この時点で、治療デバイス100は、各端部でトリミングされうる。
【0060】
1つの実施形態において、治療デバイス100は、ポート107に圧力を加えることによって、第一の複合層及び第二の複合層104、106の間の治療デバイス100の端部でシールを確認するために圧力試験される。試験が完了すると、治療デバイス100はマンドレルから剥離される。得られた治療デバイス100は、組織の侵入及び内部成長のための管腔、迅速な血管新生を可能にするための開いた細孔を備えた内面及び外面、ならびに中に細胞を保持するための密な細孔を備えた細胞リザーバを有する。
【0061】
II.血管新生された管腔を有する複数の治療デバイスを含む物品
図5~8は、治療デバイス200、及び、複数の治療デバイス200を含む物品400を示している。図7を参照すると、複数の治療デバイス200は、幾つかの実施形態において、物品300の長さに沿って互いに実質的に平行になるように相互接続されている。図5を見ると、幾つかの実施形態において、各治療デバイス200は、第一の開放端230及び第二の開放端232を含む。幾つかの実施形態において、治療デバイス200は、第一の端部230で接続部材260を含む。管状本体205が両端230、232で開いているように、第一の端部230から第二の端部232までの治療デバイス202の管状本体205(例えば、管状部材)を通して管腔212が延在している。
【0062】
図5に示される1つの実施形態において、治療デバイス200は、本体205、第一の開放端230及び第二の開放端232を含む。管腔212は、第一の開放端230から第二の開放端232まで延在している。幾つかの実施形態において、治療デバイス200は、第一の複合層204及び第二の複合層206を含み、それらの周囲210の少なくとも一部に沿ってシールされている。ここで、図6を参照すると、リザーバ208は、第一の複合層及び第二の複合層204、206の間に形成される。第一の複合層及び第二の複合層204、206、及び、それらの間にあるリザーバ208は、治療デバイス200の壁を画定する。治療デバイス200の断面は、例えば、円形、卵形又は楕円形であることができる。幾つかの実施形態において、管腔212は、治療デバイス200の本体205全体を通って延在している。幾つかの実施形態において、治療デバイス200の内径IDは、管腔212の断面直径によって規定される。幾つかの実施形態において、第一の複合層204の外面は、治療デバイス200の外径ODを規定する(図5を参照されたい)。治療デバイス100に関して上記したように、治療デバイス200の管腔212は、管腔212内から第二の複合層206の細胞透過性層220への血管組織又は毛細血管ネットワーク237の内部成長を可能にする。さらに、第一の複合層204の細胞透過性層216は、治療デバイス200の外部からの治療デバイス200の血管新生を促進する。毛細血管ネットワーク237が細胞不透過性層216、220に形成されるので、リザーバ208内に含まれる細胞と栄養源(すなわち、血管組織又は毛細血管ネットワーク)との間の距離が最小化され、リザーバ208内の細胞が増加した速度で成長することを可能にする。
【0063】
図6に示されるように、幾つかの実施形態において、第一の複合層204は、第一の複合層104と実質的に同様の複合層であり、細胞透過性層216及び該細胞透過性層216に隣接して配置された細胞不透過性層218を含む。同様に、幾つかの実施形態において、第二の複合層206は、第二の複合層106と実質的に同様の複合層であり、細胞透過性層220及び細胞不透過性層222を含む。
【0064】
幾つかの実施形態において、細胞透過性層216、220は、それらが細胞内部成長層(例えば、細胞透過性層)であり、少なくとも細胞透過性層116、120に関して上記した特徴を有するという点で、細胞透過性層116、120と実質的に類似している。細胞不透過性層218、222は、それらが細胞内部成長層(例えば、細胞不透過性層)であり、少なくとも細胞透過性層118、122に関して上記した特徴を有するという点で、細胞不透過性層118、122と実質的に類似している。
【0065】
幾つかの実施形態において、細胞透過性層216、220及び細胞不透過性層218、222は、細胞透過性層116、120及び細胞不透過性層118、122に関して上記にリストされた材料のいずれかを含むことができる。リザーバ208は、実質的に同じ方法で形成することができ、少なくともリザーバ108に関して上記した特徴を有することができる。具体的には、リザーバ208は、治療デバイス200の細胞不透過性層218、222の間に形成される。リザーバ208は、細胞が患者に生物学的治療を提供することを可能にするために、患者の組織床に配置される物品400の治療デバイス200内に細胞236を保持するように構成されている。幾つかの実施形態において、細胞236は、図7に示されている第一のアクセスポート及び第二のアクセスポート215、225を介して治療デバイス200のリザーバ208に導入される。
【0066】
幾つかの実施形態において、治療デバイス202は、治療デバイス200が様々な形状及びサイズの細胞の生存及び機能を確保しながら、これらの細胞を収容するために使用することができるように、それらを容易に構成できるという点で拡張可能である(例えば、物品400内の治療デバイス200の直径、長さ、断面形状、量などの範囲全体にわたって)。幾つかの実施形態において、治療デバイス200は、最適な性能に必要な所望の量の表面積を達成するために、直径及び長さを変えることができる。管状構成は、宿主の解剖学的構造内で可能な限り小さい面積を使用するが、物品400内の治療デバイス200の性能のための適切な表面積を提供するように設計されている。
【0067】
さらに、治療デバイス200を通って延在している管腔212は、リザーバ208内の細胞とそれらの栄養源、すなわち血管組織との間の距離を減少させる。治療デバイス100の管腔112と同様に、管腔212は、細胞透過性層220によって周方向に取り囲まれ、これは、管腔212からの治療デバイス200の血管新生を促進する。さらに、細胞透過性層216は、治療デバイス200の外部からの治療デバイス200の血管新生を促進する。したがって、血管新生は、図6に示されるように、管腔212の内部及び治療デバイス200の外部の両方から生じる。治療デバイス200の管腔212及び治療デバイス200の外部の両方からのこの血管新生、又は毛細血管ネットワーク237の形成は、細胞が治療デバイス200の内部及び外部から栄養素を取得しているため、リザーバ208内に含まれる細胞の体積を、幾つかの実施形態において、二倍以上にすることができる。
【0068】
本明細書に開示される実施形態において、治療デバイス200は、約100ミクロン~約5mm、約150ミクロン~約4.5mm、約200ミクロン~約4mm又は約250ミクロン~約3.5mmの範囲の内径を有することができる。複数の治療デバイス200が使用される幾つかの実施形態において、治療デバイス200は、それぞれから約0.1ミクロン~約3mm、約5ミクロン~約2.5mm、約10ミクロン~約2mm、約25ミクロン~約1.5mm又は約50ミクロン~約1mmの距離で分離されている。
【0069】
幾つかの実施形態、例えば、図7に示される実施形態において、治療デバイス200は、互いに対して独立して移動可能であり、したがって、物品400を柔軟にし、及び/又は組織及び/又は組織の動きに適合させる。幾つかの実施形態において、治療デバイス200のリザーバ208は、接続部材260(図7及び8に示される)などによって流体的に接続され、したがって、1つの治療デバイス200に挿入された細胞は、別の分離された治療デバイス200に流れ込むことができる。物品400は、この実施形態において、治療デバイス200の第一の端部で治療デバイス200と流体連通している少なくとも1つの充填ポート275を含む。充填ポート275は、治療デバイス200のリザーバ208への細胞の挿入を可能にする。物品400はまた、図8に示されるように、異なる治療デバイス200の第二の端部で治療デバイス200と流体連通する少なくとも1つのフラッシュポート255を含むことができる。充填ポート275及びフラッシュポート255は、それらがリザーバ208と流体連通している限り、治療デバイス200の長さに沿ってどこにでも配置することができる。幾つかの実施形態において、治療デバイスは単一のポート(図示せず)を含み、これは充填及びフラッシングの両方に使用できる。充填されると、治療デバイス200は、以下で論じられるように、シールされる。
【0070】
充填ポート275及びフラッシュポート255は、シール250を使用して繰り返し開閉できる。シール250は、限定するわけではないが、キャップ、プラグ、クランプ、圧縮リング又はバルブを含む。シール250は、摩擦、クランプ、又はねじ山と溝とを含むねじを使用して、充填ポート275又はフラッシュポート255に取り付けることができる。物品400の使用目的に応じて、充填ポート275及び/又はフラッシュポート255は、気密シール又は他の液密シールを作成するようにシールされる。物品400は、患者への恒久的又は長期(例えば、少なくとも3週間)のインプラント処置を目的としている。
【0071】
III.「C」字型構成を備えた治療デバイス
図11~12は、本体302を含む治療デバイス300の実施形態を示す。治療デバイス300は、管状構成を有する代わりに、図9~10で判るように、治療デバイス300が実質的にC字形であることを除いて、治療デバイス100と実質的に類似している。具体的には、本体302は、中央空間331の周りで実質的にトロイダル又はリング形状であることができ、開口部333は、本体302の側面を通って延在している。本体302は、第一の複合層304及び第二の複合層306によって画定され、それらの周囲310の少なくとも一部に沿ってシールされている。リザーバ308は、第一の複合層及び第二の複合層304、306の間に形成される。第一の複合層及び第二の複合層304、306ならびにリザーバ308は、本体302の壁を形成する。ポート307は、リザーバ308と流体連通しており、リザーバ308を充填し、フラッシングし又は排出するためにリザーバ308にアクセスするための経路を提供する。ポート307は、治療デバイス300の本体302の外部からリザーバ308への経路を提供する限り、本体302上のどこに配置してもよい。開口部333は、治療デバイス300の本体302の外部からそして中央空間331の内部から(例えば、リザーバ308の両側から)血管新生を可能にし、以下でさらに詳細に記載するように、治療デバイス300のリザーバ308内に含まれる細胞と血管組織によって提供される栄養素との間の距離を減少させる。
【0072】
それぞれ第一の複合層及び第二の複合層104、106及び204、206に関して上記されるように、第一の複合層304及び第二の複合層306の両方は、細胞透過性層の細孔への患者からの血管組織の成長を可能にするのに十分な多孔質である。
【0073】
図12に示されるように、幾つかの実施形態において、治療デバイス100の第一の複合層104に類似する第一の複合層304は、細胞透過性層316及び該細胞透過性層316に隣接して配置された細胞不透過性層318を含む。第一の治療デバイス100の第二の複合層106と類似する第二の複合層306は、細胞透過性層320及び該細胞透過性層に隣接して配置された細胞不透過性層322を含む。
【0074】
細胞透過性層316、320は、それらが細胞内部成長層であり、細胞透過性層116、120に関して少なくとも上記した特徴を有するという点で、細胞透過性層116、120と実質的に類似している。細胞不透過性層318、322は、それらが細胞内部成長層であり、少なくとも細胞不透過性層118、122に関して上記した特徴を有するという点で、細胞不透過性層118、122と実質的に類似している。
【0075】
幾つかの実施形態において、細胞不透過性層318、322及び細胞透過性層316、320は、同じ材料を含む。例えば、幾つかの実施形態において、細胞不透過性層及び細胞透過性層318、322及び316、320は、それぞれ、細胞不透過性層及び細胞透過性層118、122及び116、120についてそれぞれ上記にリストされたいずれかの材料を含む。
【0076】
リザーバ308は、リザーバ108と同じ方法で、治療デバイス300の本体302の第一の複合層304と第二の複合層306との間に形成される。リザーバ308は、細胞336を治療デバイス300内に保持するように構成されており、該治療デバイス300は、図12に示されるように、患者の組織床に配置されており、細胞336が患者に生物学的療法を提供することを可能にする。幾つかの実施形態において、細胞336は、1つ以上のポート307を介して治療デバイス300のリザーバ308に導入される。幾つかの実施形態において、ポート307は、細胞336をリザーバ308に導入することができるように、治療デバイス300の本体302の第一の複合層304を通して延在している。
【0077】
上述のように、治療デバイス300は、幾つかの実施形態において、実質的にトロイダルである。本体302は、中央空間331及び開口部333を含み、血管新生が、治療デバイス300の外面上の第一の複合層304に沿って、かつ中央空間331内の第二の複合層306に沿って起こることを可能にする。このように、治療デバイス300のトロイダル設計は、リザーバ308内の細胞336とそれらの栄養源、すなわち血管組織又は毛細血管ネットワーク337との間の距離を減少させる。さらに、治療デバイス300の中央空間331内の第二の複合層306及び治療デバイス300の外面上の第一の複合層304の両方からの血管新生は、細胞336が治療デバイス300の両側(すなわち、内側及び外側)から栄養素を得ることができるので、幾つかの実施形態において、リザーバ308に含まれる細胞336の体積を2倍以上増加させることが可能になる。
【0078】
幾つかの実施形態において、治療デバイス300は、図11に示されるように、スタック可能である。示されるように、治療デバイス300のそれぞれは、外面378の第一の部分380及び外面378の対向する第二の部分382を含む。これらの実施形態において、少なくとも2つの治療デバイス300は、治療デバイス300の第一の端部及び第二の端部330、332が実質的に位置合わせされるように、第一の治療デバイス300の外面378の第一の部分380が第二の治療デバイス300の外面378の第二の対向部分382に隣接する平行構成で配置されている。幾つかの実施形態において、外面の第一の部分380は開口部333を含み、一方、第二の部分382は開口部を含まない。他の実施形態において、それぞれ第一の部分380は開口部333を含み、第二の部分は開口部337を含む。他の実施形態において、開口部333、337は互いに実質的に位置合わせされており、その結果、血管新生は、治療デバイス300の外部から治療デバイス300の中央空間331を通して延在し、血管新生された治療デバイス300の結合を形成する。別の実施形態において、1つの治療デバイス300は開口部333を含み、一方、第二の治療デバイス300は、2つの開口部333、337を有することができる。
【0079】
IV.生体吸収性材料
幾つかの実施形態において、治療デバイス100、200、300の一方又は両方の複合層は、生体吸収性材料であるか、又はそれを含む。生体吸収性材料は、固体(成形品、押出品又は結晶)、自己凝集ウェブ、隆起したウェビング又はスクリーンとして形成することができる。幾つかの実施形態において、生体吸収性材料の1つ以上の層は、巨視的多孔性を有する非生体吸収性材料に取り付けられて、細胞透過(例えば、細胞透過性層)が複合材を形成することを可能にする。他の実施形態において、細胞透過性を減少又は防止するための微視的多孔性を有する非生体吸収性材料は、多孔質自己凝集ウェブに解放可能に取り付けられて、インプラント処置の後の数日で患者から治療デバイス100、200、300の非外傷性除去を可能にする。患者への再吸収は、好ましいタイプ1コラーゲン沈着、血管新生及び感染の減少を促進することができる。幾つかの実施形態において、捕捉細胞が増殖し始めるとデバイスの「ピローイング」を防ぐために、スクリーンが治療デバイス100、200、300に組み込まれる。他の例において、生体吸収性材料を粉末として細胞カプセル化デバイスに組み込むことができる。適切な生体吸収性材料の非限定的な例としては、限定するわけではないが、ポリグリコリド:トリメチレンカーボネート(PGA:TMC)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カーボネート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート-コ-バレレート)及びそれらのコポリマー及びブレンドが挙げられる。
【0080】
幾つかの実施形態において、生体吸収性成分を治療デバイス100、200、300に組み込むことは、インプラント処置を容易にするのに役立つ。例えば、生体吸収性材料は、幾つかの実施形態において、温度感受性であることができる。特に、生体吸収性材料は、生体吸収性材料がインプラント処置後に、より順応性及び適応性になるように、より低温ではるかに硬く、より高温(例えば、インプラント処置された後の患者の体温)で軟化する。結果として、生体吸収性材料から形成された長手方向の強度により、臨床医は、治療デバイス100、200、300を、より少ない労力及び宿主へのより少ない外傷で患者に配置することができ、インプラント処置時に、生体吸収性材料は、より順応性かつ適応性になる。
【0081】
V.多孔性層の選択的透過性
幾つかの実施形態において、多孔質材料は、多孔質膜の分子量カットオフ又はふるい分け特性が表面で始まるように、その厚さの一部を通してのみ多孔質である。結果として、特定の溶質及び/又は細胞は、材料の多孔性空間に入って、一方の側からもう一方の側に通過することがない。例えば、多孔質材料の選択的透過性は、多孔質材料の厚さを横切る溶質の双方向フラックスを可能にしながら、細胞が多孔質材料の空間内に移行又は成長することを排除する。次に、血管内皮細胞が結合して、その上に毛細血管を形成することができる。多孔質材料のそのような毛細血管形成又は血管新生は、患者の組織と治療デバイス100、200、300の内容物との間の流体及び溶質の流れを増強することができる。
【0082】
幾つかの実施形態において、多孔質材料の透過性は、本明細書に記載の治療デバイス100、200、300の多孔質材料の厚さを横切って連続的に変化させることができる。例えば、多孔質材料の選択的透過性は、材料の厚さを横切って連続的に変化することができる。幾つかの実施形態において、多孔質材料の透過性は、材料のある断面領域から別の断面領域で変化して、層状構造を形成する。
【0083】
幾つかの実施形態において、多孔質材料の透過性は、多孔質材料の追加の層によってその厚さ全体にわたって変化する。例えば、本明細書に記載の幾つかの治療デバイスにおいて、多孔質材料の選択的透過性は、多孔質材料の1つ以上の追加の層を備えた多孔質材料の厚さを横切って変化する。多孔質材料の追加の層は、多孔質材料の最初の層と同じ組成及び透過性を有することができるか、又は1つ以上の追加の層は異なる組成及び/又は透過性を有することができる。
【0084】
別の実施形態において、多孔質材料の選択的透過性は、多孔質材料のボイド空間にヒドロゲル材料を含浸させることによって変化される。ヒドロゲル材料は、多孔質材料のすべて又は実質的にすべてのボイド空間(例えば、多孔質膜の細孔)又はボイド空間の一部のみに含浸させることができる。例えば、多孔質材料の内面に隣接して及び/又はそれに沿って多孔質材料内の連続バンドで多孔質材料にヒドロゲル材料を含浸させることにより、多孔質材料の選択的透過性は、多孔質材料の外側断面領域から多孔質材料の内側断面領域まで変化される。
【0085】
第一の複合層及び第二の複合層の多孔質材料に含浸されるヒドロゲル材料の組成は、装置の構築に使用される特定の多孔質材料、所与の用途に要求される透過度、及びヒドロゲル材料の生体適合性に大きく依存する。治療デバイス100、200、300で使用するための有用なヒドロゲル材料の非限定的な例としては、限定するわけではないが、単独又は組み合わせのいずれかでの、加水分解されたポリアクリロニトリル、アルギネート、アガロース、カラギーナン、コラーゲン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、フィブリン-トロンビンゲル又はゲランガム及びそれらのコポリマーが挙げられる。特定の態様において、多孔質材料(例えば、PTFE)/ヒドロゲル複合材料の総厚は、30μm~1000μmの範囲であることができる。
【0086】
さらに他の実施形態において、多孔質材料の透過性は、多孔質材料の追加の層及びヒドロゲル材料のさらなる層を用いて、多孔質材料の厚さを横切って変化させることができる。これらの実施形態の1つの利点は、この構成が強力な細胞及び体液性免疫隔離障壁を提供することである。
【0087】
幾つかの実施形態において、生体吸収性材料は、患者の体内の異なるレベルで活性酸素種(ROS)を再生する能力を有することができる。ROSは、限定するわけではないが、細胞増殖、分化、遊走、アポトーシス及び血管新生の阻害又は促進を含む、患者の体内の様々な細胞応答を促進することが示されている。
【0088】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるように、治療デバイス100、200、300を構築するために使用される材料は本質的に放射線不透過性である。本質的に放射線不透過性ではない材料は、例えば、材料にバリウムを含浸させることによって放射線不透過性になるように変性することができる。材料を放射線不透過性にするための他の有用な方法は当業者に知られている。本明細書に記載の治療デバイス100、200、300を構築するために使用される材料の放射線不透過性は、主に、治療デバイス100、200、300の外科的配置を容易にするため、又は、インプラント処置後の患者内における治療デバイス100、200、300の位置確認をするために使用される。
【実施例0089】

内径4mmの長さ50mmの治療デバイスが本明細書に記載されている。第二の複合層は、最初に、開いた多孔質ePTFE膜の3つの層を4mmのステンレス鋼マンドレルの周りに巻き付けて、第二の複合層の細胞透過性層を形成することによって形成される。開いた多孔質膜は、Brancaらの米国特許第5,814,405号明細書に記載されているタイプのものであることができる。例えば、ウェラーはんだごてなどの局所的な熱源を使用して、開いた多孔質膜の対向する縁部を互いに粘着させて、細胞透過性層が管の形をとるようにする。1つの実施形態において、膜は、約10~30ミクロンのインターモーダル距離を有する開いた細孔構造を有する。次に、細胞保持性多孔質膜の2つの層は、細胞透過性層の上で鋼マンドレル上に巻き付けられて、第二の複合層の内側多孔性層を形成する。細胞保持性多孔質膜は、Bacinoの米国特許第5,476,589号明細書に記載されているタイプのものであることができる。続いて、局所熱源を使用して、細胞保持多孔質膜の対向する縁部を互いに粘着させて、内側多孔性層が管の形をとるようにする。この実施形態において、細胞保持膜は、0.05~0.4マイクロメートルの範囲の細孔サイズを有する。
【0090】
次に、マンドレルを365℃に設定された空気対流式オーブンに約15分間入れ、その後、オーブンから取り出して周囲温度(例えば、20℃)まで冷却させる。この熱処理により、第二の複合層を形成する膜が互いに接着する。マンドレルとの密接な接触により、微細構造の歪みが最小限に抑えられる。次に、リザーバを形成するために、スペーサを第二の複合層の表面に適用する。スペーサは、幾つかの実施形態において、細胞保持性層の表面上に配置された、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)の接着性ドットである。スペーサの高さは、リザーバの深さを決定し、これは、収容する細胞のタイプによって変化する。スペーサの高さは約500ミクロンである。FEPの連続バンドもまた、第一の複合層及び第二の複合層を後で接着するために、内側の多孔性層の各端部に配置される。幾つかの実施形態において、FEPのバンドは、約50mm離れて配置される。
【0091】
次に、第一の複合層は、上記のように、細胞保持性多孔質膜の2つの層を5mmのステンレス鋼マンドレルの周りに巻き付けて、内側多孔性層を形成することによって同様に形成される。次に、開いた多孔質膜の3つの層は、内側多孔性層上に同一の5mmマンドレル上に巻き付けられて、第一の複合層の細胞透過性層を形成する。内側多孔性層と細胞透過性層のそれぞれの対向する縁部は互いに粘着され、第一の複合層は上記のように熱処理される。
【0092】
室温まで冷却した後に、第一の複合層を5mmのマンドレルから取り外し、なおも4mmマンドレル上に配置されている第二の複合層上に引張って、管状本体の壁を形成する。この時点で、リザーバ空間と流体連通するようにポートを配置する。次に、局所的な熱源を使用して、第二の複合層の端部にあるFEPバンドを溶融させる。溶融したFEPは、第一の複合層及び第二の複合層の細孔に流れ込み、第一の複合層及び第二の複合層の端部を互いに接着させそしてシールさせる。第一の複合層はまた、局所的な熱源によって、第二の複合層上に配置されたFEPスペーサに接着され、治療デバイスの管状本体を形成する。この時点で、治療デバイスを両端でトリミングすることができる。
【0093】
治療デバイスは、ポートに圧力を加えることによってシールが実行可能であることを確認するために圧力試験される。試験が完了すると、治療デバイスはマンドレルから剥離される。得られた治療デバイスは、組織の侵入及び内部成長のための4mmの管腔、迅速な血管新生を可能にするための開いた細孔を備えた内面及び外面、ならびに、中に細胞を保持するための密な細孔を備えた細胞リザーバを有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0093
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0093】
治療デバイスは、ポートに圧力を加えることによってシールが実行可能であることを確認するために圧力試験される。試験が完了すると、治療デバイスはマンドレルから剥離される。得られた治療デバイスは、組織の侵入及び内部成長のための4mmの管腔、迅速な血管新生を可能にするための開いた細孔を備えた内面及び外面、ならびに、中に細胞を保持するための密な細孔を備えた細胞リザーバを有する。以下、本発明の態様を列挙する。
(態様1)
実質的に管状の部材であって、それを通って延在している管腔を含む、実質的に管状の部材、
を含む、治療デバイスであって、
前記実質的に管状の部材の壁は、
第一の複合層、
第二の複合層、及び、
前記第一の複合層と前記第二の複合層との間のリザーバ、
を含み、前記リザーバは、生物学的部分を受け取り、その中に含むように構成されている、治療デバイス。
(態様2)
前記第一の複合層は、第一の細胞透過性層及び第一の細胞不透過性層を含み、前記第二の複合層は、第二の細胞透過性層及び第二の細胞不透過性層を含む、態様1記載の治療デバイス。
(態様3)
前記実質的に管状の部材は、第一の端部及び第二の端部を有し、
前記第一の端部及び前記第二の端部のそれぞれは、前記管腔に対して開いており、その結果、血管新生は、前記第一の複合層の第一の細胞透過性層及び前記第二の複合層の第二の細胞透過性層から起こる、態様1又は2記載の治療デバイス。
(態様4)
前記リザーバは50ミクロン~200ミクロンの厚さを有する、態様1~3のいずれか1項記載の治療デバイス。
(態様5)
前記生物学的部分は複数の細胞である、態様1~4のいずれか1項記載の治療デバイス。
(態様6)
前記複数の細胞は、原核細胞、真核細胞、哺乳動物細胞、非哺乳動物細胞、幹細胞及びそれらの組み合わせから選ばれる、態様5記載の治療デバイス。
(態様7)
前記リザーバと流体連通しているポートをさらに含む、態様1~6のいずれか1項記載の治療デバイス。
(態様8)
接続部材によって接続されている複数の実質的に管状の部材、
を含む、治療デバイスであって、各管状の部材は、それを通って延在している管腔を含み、
前記複数の実質的に管状の部材のそれぞれは、第一の端部及び第二の端部を有し、
前記第一の端部及び前記第二の端部のそれぞれは、前記管腔に対して開いており、そして、
前記複数の実質的に管状の部材のそれぞれは、
第一の複合層、
第二の複合層、及び、
前記第一の複合層と前記第二の複合層との間のリザーバ、
を含む、それぞれの壁を有し、
前記リザーバは、生物学的部分を受け取り、含むように構成されている、治療デバイス。
(態様9)
前記複数の実質的に管状の部材は、前記複数の実質的に管状の部材の第一の端部又は第二の端部で接続部材によって相互接続されている、態様8記載の治療デバイス。
(態様10)
前記複数の実質的に管状の部材は互いに独立して移動可能である、態様8又は9記載の治療デバイス。
(態様11)
前記複数の実質的に管状の部材は、前記複数の実質的に管状の部材のそれぞれの長さに沿って接続部材によって流体的に相互接続されている、態様8~10のいずれか1項記載の治療デバイス。
(態様12)
前記リザーバは50ミクロン~200ミクロンの厚さを有する、態様8~11のいずれか1項記載の治療デバイス。
(態様13)
中に第一の開口部及び中空内部を有するトロイダル部材、
を含む、治療デバイスであって、
前記トロイダル部材は、
第一の透過性複合層、
第二の透過性複合層、及び、
前記第一の複合層と前記第二の複合層との間のリザーバ、
を含む壁を有し、
前記リザーバは、生物学的部分を受け取り、含むように構成されている、治療デバイス。
(態様14)
前記トロイダル治療デバイスは、前記第一の開口部と反対側にそしてそれと実質的に位置合わせして第二の開口部を有する、態様13記載の治療デバイス。
(態様15)
前記第二の開口部に隣接して配置された第三の開口部を中に有する第二のトロイダル部材をさらに含む、態様13又は14記載の治療デバイス。
(態様16)
前記第一のトロイダル部材及び前記第二のトロイダル部材は、前記第二の開口部及び前記第三の開口部によって流体的に相互接続されている、態様15記載の治療デバイス。
(態様17)
前記生物学的部分は複数の細胞である、態様13~16のいずれか1項記載の治療デバイス。
(態様18)
前記複数の細胞は、原核細胞、真核細胞、哺乳動物細胞、非哺乳動物細胞、幹細胞及びそれらの組み合わせから選ばれる、態様17記載の治療デバイス。
(態様19)
前記第一の複合層及び前記第二の複合層はそれぞれ、細胞透過性層及び細胞不透過性層を含む、態様13~18のいずれか1項記載の治療デバイス。
(態様20)
前記リザーバと流体連通しているポートを含む、態様13~19のいずれか1項記載の治療デバイス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のトロイダル形状と、中に第一の開口部と、第一の中央空間とを有する第一の本体を含んでなる治療デバイスであって、
前記第一の本体は、
第一の透過性複合層、
第二の透過性複合層、及び、
前記第一の透過性複合層と前記第二の透過性複合層との間に配置されたリザーバ、
を含
前記リザーバは、その内部に生物学的部分を受け取り含むように構成されており、そして
前記第一の開口部は、前記第一の本体の外部から、かつ、前記第一の中央空間の内部からの血管新生を可能にする、治療デバイス。
【請求項2】
前記トロイダル治療デバイスは、前記第一の開口部と反対側にそしてそれと実質的に位置合わせして第二の開口部を有する、請求項1記載の治療デバイス。
【請求項3】
前記第二の開口部に隣接して配置された第三の開口部を中に有する第二のトロイダル部材をさらに含む、請求項1又は2記載の治療デバイス。
【請求項4】
前記第一のトロイダル部材及び前記第二のトロイダル部材は、前記第二の開口部及び前記第三の開口部によって流体的に相互接続されている、請求項3記載の治療デバイス。
【請求項5】
前記生物学的部分は複数の細胞である、請求項1~4のいずれか1項記載の治療デバイス。
【請求項6】
前記複数の細胞は、原核細胞、真核細胞、哺乳動物細胞、非哺乳動物細胞、幹細胞及びそれらの組み合わせから選ばれる、請求項5記載の治療デバイス。
【請求項7】
前記第一の複合層及び前記第二の複合層はそれぞれ、細胞透過性層及び細胞不透過性層を含む、請求項1~6のいずれか1項記載の治療デバイス。
【請求項8】
前記リザーバと流体連通しているポートを含む、請求項1~7のいずれか1項記載の治療デバイス。
【請求項9】
前記第一の本体は、前記第一の開口部と対向する第二の開口部を有する、請求項1記載の治療デバイス。
【請求項10】
第二のトロイダル形状と、中に第三の開口部と、第二の中央空間とを有する第二の本体を含み、
前記第二の開口部と前記第三の開口部とが整列されて流体接続されるように前記第三の開口部が前記第一の本体の第二の開口部と整列されており、かつ
前記第一の本体と前記第二の本体とが隣接する並列構成をなす、請求項9記載の治療デバイス。
【外国語明細書】