(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019173
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】電気特性の検査冶具の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01R 1/067 20060101AFI20240201BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20240201BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20240201BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G01R1/067 G
G01R1/073 D
G01R31/26 J
H01L21/66 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191398
(22)【出願日】2023-11-09
(62)【分割の表示】P 2019124819の分割
【原出願日】2019-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 博之
(57)【要約】
【課題】ファインピッチに形成されたパッドやバンプの電気特性の検査に対し、優れた耐久性を有する電気特性の検査冶具の製造方法を提供する。
【解決手段】第1面と第2面とを貫通する貫通孔を有するフレキシブルシートに対し、第1面に陥没した凹部を有するように、貫通孔に貫通電極をハーフ形成する工程と、凹部に、160℃以上200℃以下の融点を有するポリアミド粒子と、導電粒子とを含む導電性バインダーを充填する充填工程と、ポリアミド粒子を溶融させ、導電粒子をフレキシブルシートの厚み方向に連結させる加熱工程とを有する。これにより、ファインピッチに形成されたパッドやバンプの電気特性の検査に対し、優れた耐久性を有する電気特性の検査冶具を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と第2面とを貫通する貫通孔を有するフレキシブルシートに対し、前記第1面に陥没した凹部を有するように、前記貫通孔に貫通電極をハーフ形成する工程と、
前記凹部に、160℃以上200℃以下の融点を有するポリアミド粒子と、導電粒子とを含む導電性バインダーを充填する充填工程と、
前記ポリアミド粒子を溶融させ、前記導電粒子を前記フレキシブルシートの厚み方向に連結させる加熱工程と
を有する検査冶具の製造方法。
【請求項2】
前記導電性バインダーの25℃における粘度が、35Pa・s以上60Pa・s以下である請求項1記載の検査冶具の製造方法。
【請求項3】
前記ポリアミド粒子の平均粒径が、1μm以上10μm以下である請求項1又は2記載の検査冶具の製造方法。
【請求項4】
前記充填工程では、前記導電性バインダーを印刷により充填する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の検査冶具の製造方法。
【請求項5】
第1面と第2面とを貫通する貫通孔に貫通電極がハーフ形成され、前記第1面に陥没した凹部を有するフレキシブルシートと、
前記凹部に配置され、160℃以上200℃以下の融点を有するポリアミドと、導電粒子とを含み、前記導電粒子が前記フレキシブルシートの厚み方向に連結した導電性バンプと
を備える電気特性の検査冶具。
【請求項6】
検査対象物の電極面に、第1面と第2面とを貫通する貫通孔に貫通電極がハーフ形成され、前記第1面に陥没した凹部を有するフレキシブルシートと、前記凹部に配置され、160℃以上200℃以下の融点を有するポリアミドと、導電粒子とを含み、前記導電粒子が前記フレキシブルシートの厚み方向に連結した導電性バンプとを備える検査プローブシートを貼り付け、前記導電性バンプと前記検査対象物の電極と接触させる貼付工程と、
前記検査プローブシートの他方の面から貫通電極にプローブを押し当て、電気特性を検査する検査工程と
を有する電気特性の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ウェハ、チップ、パッケージ等の電子部品の電気特性の検査冶具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ウェハレベルでの半導体装置の電気特性評価は、プローブカードを用いて、ウェハの表面や裏面に形成された導電パッドやバンプに、直接プローブを接触させて実施している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この方法によれば、パッケージ前や三次元実装前の検査が可能となる。
【0004】
しかしながら、ウェハのパッド表面の酸化膜を除去するために、表面に傷を付けてプローブ検査を実施するため、検査合格品を実装した後になって、検査に起因する損傷により不合格品を発生させる場合がある。またパッドサイズが小さくなるにつれて、バンプ形成や実装時の不具合の原因となる検査時の傷の影響が大きくなる。特に近年では、半導体チップのファインピッチ化がますます進行していることから、検査時の傷はますます大きな問題となる。
【0005】
ベアチップやパッケージについては、ラバーコネクターを用いたハンドラーテストが行われている。検査プローブシートとなるラバーコネクターとしては、例えば、磁場配向させた導電粒子を、エラストマーシートの厚み方向に貫通するよう配置した異方導電性シートが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
特許文献2に記載された検査プローブシートは、ゴム弾性エラストマー樹脂中に導電粒子を磁場配向させる際に面内方向に導電粒子が連結してしまうため、ファインピッチへの対応が困難である。また、耐久性を向上させる目的で周囲を取り囲むようにフレームが付いているものの、フレーム内側のエラストマー樹脂は熱膨張により伸縮しやすい物質であるため、耐久性の低下の問題や、接点ズレに(位置ズレ)よる検査不具合の原因となる。特に、ヒートサイクル試験などにおける位置ズレは致命的であり、今後のさらなるファインピッチ化においては、対応が困難となる。
【0007】
また、一般にエラストマー樹脂中に導電性物質を配置するラバーコネクターは、ファインピッチとなるコネクターの製造は困難であり、例えば、200μmP以下レベルの検査用コネクターは製造困難な状況にある。このため、組立て後のパッケージに対して検査を実施しているのが実情であり、結果として歩留まりが極端に悪化し、価格を低減できない要因ともなっている。
【0008】
これらを解決する方法として、特許文献3には、
図4に示すようにフレキシブルシート110の第1面111aに凹部112を有し、第2面111bに凸部113を有する貫通電極114を複数有し、凹部112に導電性エラストマー120を配置した検査プローブシート100を用いることにより、ファインピッチに形成されたパッドやバンプに酸化膜が形成されている場合でも、電気特性が検査可能であることが記載されている。
【0009】
しかしながら、特許文献3に記載の方法では、フィインピッチに形成された電極の検査は可能であるが、導電性エラストマー部に直接電極が接触するため、検査が繰り返されるにつれ導電性エラストマー部が徐々に劣化し、導電粒子やバインダーの脱落や破損が起こり、抵抗値が上昇することがあった。また、通常、これらの検査では、最低1万回の繰り返し使用が要求される所、特許文献3に記載の方法では、1千回未満しか持たないのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009-042008号公報
【特許文献2】特開2006-024580号公報
【特許文献3】特開2018-141652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本技術は、前述した課題を解決するものであり、ファインピッチに形成されたパッドやバンプの電気特性の検査に対し、優れた耐久性を有する電気特性の検査冶具の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本技術の発明者らは、鋭意検討を行った結果、所定の融点を有するポリアミド粒子と、導電粒子とを含む導電性バインダーを用いて導電性バンプを形成することにより、ファインピッチに形成されたパッドやバンプの電気特性の検査に対し、優れた耐久性が得られることを見出した。
【0013】
本技術に係る検査冶具の製造方法は、第1面と第2面とを貫通する貫通孔を有するフレキシブルシートに対し、前記第1面に陥没した凹部を有するように、前記貫通孔に貫通電極をハーフ形成する工程と、前記凹部に、160℃以上200℃以下の融点を有するポリアミド粒子と、導電粒子とを含む導電性バインダーを充填する充填工程と、前記ポリアミド粒子を溶融させ、前記導電粒子を前記フレキシブルシートの厚み方向に連結させる加熱工程とを有する。
【0014】
本技術に係る電気特性の検査冶具は、第1面と第2面とを貫通する貫通孔に貫通電極がハーフ形成され、前記第1面に陥没した凹部を有するフレキシブルシートと、前記凹部に配置され、160℃以上200℃以下の融点を有するポリアミドと、導電粒子とを含み、前記導電粒子が前記フレキシブルシートの厚み方向に連結した導電性バンプとを備える。
【0015】
本技術に係る電気特性の検査方法は、検査対象物の電極面に、第1面と第2面とを貫通する貫通孔に貫通電極がハーフ形成され、前記第1面に陥没した凹部を有するフレキシブルシートと、前記凹部に配置され、160℃以上200℃以下の融点を有するポリアミドと、導電粒子とを含み、前記導電粒子が前記フレキシブルシートの厚み方向に連結した導電性バンプとを備える検査プローブシートを貼り付け、前記導電性バンプと前記検査対象物の電極と接触させる貼付工程と、前記検査プローブシートの他方の面から貫通電極にプローブを押し当て、電気特性を検査する検査工程とを有する。
【発明の効果】
【0016】
本技術によれば、ファインピッチに形成されたパッドやバンプの電気特性の検査に対し、優れた耐久性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施の形態に係る検査プローブシートの一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、凹部を有する貫通電極を複数有するフレキシブルシートの一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本技術に係る検査プローブシートを用いて、電気特性を検査する検査工程を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、従来の検査プローブシートの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本技術の実施の形態について、下記順序にて詳細に説明する。
1.電気特性の検査冶具
2.検査冶具の製造方法
3.電気特性の検査方法
【0019】
<1.電気特性の検査冶具>
本技術に係る電気特性の検査冶具は、第1面と第2面とを貫通する貫通孔に貫通電極がハーフ形成され、第1面に陥没した凹部を有するフレキシブルシートと、凹部に配置され、1300MPa以上2600MPa以下の曲げ弾性率を有する熱可塑性樹脂と、導電粒子とを含み、導電粒子がフレキシブルシートの厚み方向に連結した導電性バンプとを備える、いわゆる検査プローブシートである。
【0020】
曲げ弾性率が、上記下限値よりも小さい場合、導電性バンプの耐久性を十分に高められない場合があり、曲げ弾性率が上記上限値より大きい場合、衝撃が加えられた際に、導電性バンプが割れる場合がある。なお、本明細書において、熱可塑性樹脂の曲げ弾性率は、JIS K 7071に準拠して測定された曲げ弾性率をいう。
【0021】
本技術に係る検査プローブシートによれば、導電性バンプにパッドやバンプを接触させ、貫通電極にワイヤープローブを接触させることにより、ファインピッチに形成されたパッドやバンプの電気特性の検査に対し、優れた耐久性を得ることができる。
【0022】
図1は、本実施の形態に係る検査プローブシートの一例を示す断面図であり、
図2は、凹部を有する貫通電極を複数有するフレキシブルシートの一例を示す断面図である。本実施の形態に係る検査プローブシート1は、第1面11aに凹部12を有し、第2面11bに凸部13を有するように形成された貫通電極14を複数有するフレキシブルシート10と、凹部12に配置され、1300MPa以上2600MPa以下の曲げ弾性率を有する熱可塑性樹脂と、導電粒子とを含み、導電粒子がフレキシブルシートの厚み方向に連結した導電性バンプ20とを備える。
【0023】
フレキシブルシート10は、可撓性及び絶縁性を有し、熱膨張係数が低く、耐熱性が高い材料であることが好ましい。フレキシブルシート10の材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、二軸配向型ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマーなどが挙げられる。これらの材料は、弾性エラストマー比べ、寸法安定性が良く、特に熱サイクル試験において位置ズレによる導通不良が起き難く、耐久性にも優れるため好ましい。中でも、優れた耐熱性を有するポリイミドを用いることが好ましい。
【0024】
フレキシブルシート10の厚みは、薄過ぎると耐久性が劣るため、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。フレキシブルシート11の厚みは、厚過ぎると貫通電極の形成が困難となるため、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0025】
貫通電極14は、個々が独立して存在しており、隣の貫通電極と絶縁されており、予め検査対象物のパッドやバンプの位置に合わせて形成されていてもよく、所定の間隔で形成されていてもよい。
【0026】
貫通電極14は、フレキシブルシート10の厚み方向に形成され、フレキシブルシー卜10の第1面11aに陥没した凹部12を有する。凹部12の深さの下限は、好ましくはフレキシブルシート10の厚みの20%以上、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは60%以上である。凹部12の深さの上限は、好ましくはフレキシブルシート10の厚みの90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは70%以下である。これにより、導電性バンプ20の厚みを増大させることができるため、検査プローブシート1を押し下げたときの移動量を増大させることができ、パッドやバンプの高さのばらつきに対して追従させることができる。
【0027】
また、貫通電極14の凹部12の表面は、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキなどでメッキ処理され、金属メッキ膜で被覆されていることが好ましい。これにより、凹部12によるアンカー効果などにより導電性バンプ20との密着性を向上させ、耐久性を向上させることができるとともに、導電性バンプ20との導電性を向上させることができる。
【0028】
また、貫通電極14は、フレキシブルシート10の第2面11bに突出した凸部13を有する。凸部13の高さの下限は、好ましくはフレキシブルシート10の厚みの10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。凸部13の高さの上限は、好ましくはフレキシブルシート10の厚みの60%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下である。また、貫通電極14の凸部13の表面は、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキなどでメッキ処理され、金属メッキ膜で被覆されていることが好ましい。これにより、ワイヤープローブ先端、検査対象物のパッドやバンプに対して優れた耐久性を得ることができる。
【0029】
貫通電極14は、導電性を有する金属又は合金で構成され、中でも、銅、ニッケルなどの金属又は合金で構成されることが好ましい。また、貫通電極14は、フレキシブルシート10の第1面11aから第2面11bに向かって直径が増加する、いわゆる「テーパ形状」を有することが好ましい。これにより、ワイヤープローブ先端の直径を検査対象物のパッドやバンプのサイズより大きくすることが可能となる。
【0030】
導電性バンプ20は、フレキシブルシート10の第1面11aから突出している。導電性バンプ20の突出高さは、低すぎると検査プローブシート1を押し下げたときの移動量が小さくなり、パッドやバンプの高さのばらつきに対して追従させることが困難となる。このため、導電性バンプ20の突出高さは、好ましくは導電粒子の平均粒子径の50%以上、より好ましくは100%以上、さらに好ましくは150%以上である。また、導電性バンプ20の突出高さは、高すぎると突出部が折れてしまうため、好ましくは導電粒子の平均粒子径の400%以下、より好ましくは300%以上、さらに好ましくは250%以下である。
【0031】
導電性バンプ20は、熱可塑性樹脂と導電粒子とを含有する導電性バインダーから形成される。熱可塑性樹脂は、1300MPa以上2600MPa以下の曲げ弾性率を有し、好ましくは1300MPa以上1600MPa以下の曲げ弾性率を有する。曲げ弾性率が、上記下限値よりも小さい場合、導電性バンプの耐久性を十分に高められない場合があり、曲げ弾性率が上記上限値より大きい場合、衝撃が加えられた際に、導電性バンプが割れる場合がある。また、熱可塑性樹脂の融点の下限は、好ましくは150℃以上、より好ましくは160℃以上であり、熱可塑性樹脂の融点の上限は、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下である。これにより、熱可塑性樹脂が高温で軟化し、成形性に優れるため、導電性バンプをファインピッチに形成することができる。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド6など)、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、PMMAなどが挙げられる。
【0032】
導電性バンプ20中の熱可塑性樹脂及び導電粒子の合計含有量は、好ましくは85wt%以上、より好ましくは90wt%以上、さらに好ましくは95wt%以上である。これにより、導電性バンプ20は、熱可塑性樹脂の優れた耐久性を持つことができる。
【0033】
導電粒子は、貫通電極14の凹部12から連鎖し、最端部が熱可塑性樹脂の最表面から露出した状態となっており、導電性バンプ20の最端部と貫通電極14の凸部13とが電気的に接続されている。
【0034】
導電粒子は、導電性を有すればよく、ニッケル、コバルト、鉄などの磁性金属粒子、樹脂コアや無機コア粒子に磁性金属がメッキされた粒子を用いることが好ましい。また、導電粒子は、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキなどでメッキ処理され、金属メッキ膜で被覆されていてもよい。導電粒子が磁性金属を含有する場合、導電性バインダーを貫通電極14の凹部12に充填する際に磁場を印加することにより、容易に導電粒子同士が連鎖して貫通電極14から樹脂表層にある導電粒子まで連結し、導通をとることができる。
【0035】
導電粒子の平均粒子径は、小さいほど微小なパッドやバンプに対応することができるため、導電粒子の平均粒子径の上限は、好ましくは15μm以下、より好ましくは8μm以下、さらに好ましくは4μm以下でり、導電粒子の平均粒子径の下限は、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、さらに好ましくは3μm以上である。
【0036】
導電粒子の形状は、球形であってもよく、多角形、スパイク状であってもよい。導電粒子の形状が、多角形やスパイク状である場合、より容易に検査対象物のパッドやバンプの酸化膜を突き破ることが可能となる。
【0037】
なお、上述した検査プローブシートでは、貫通電極14が、フレキシブルシート10の第2面11bに突出した凸部13を有することとしたが、これに限られず、フレキシブルシート10の第2面11bに陥没した凹部を有するものとしてもよい。貫通電極14が、フレキシブルシート10の第2面11bに凹部を有するものとすることにより、ワイヤープローブの先端が凹部に収まり、ワイヤープローブの貫通電極からの脱落を防止することができる。
【0038】
<2.検査治具の製造方法>
本技術に係る検査冶具の製造方法は、第1面と第2面とを貫通する貫通孔を有するフレキシブルシートに対し、前記第1面に陥没した凹部を有するように、前記貫通孔に貫通電極をハーフ形成する工程と、凹部に、1300MPa以上2600MPa以下の曲げ弾性率を有する熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂粒子と、導電粒子とを含む導電性バインダーを充填する充填工程と、熱可塑性樹脂粒子を溶融させ、導電粒子をフレキシブルシートの厚み方向に連結させる加熱工程とを有する。これにより、ファインピッチに形成されたパッドやバンプの電気特性の検査に対し、優れた耐久性を有する検査プローブシートを得ることできる。
【0039】
続いて、より具体的な検査プローブシートの製造方法について、
図1及び
図2を参照して説明する。先ず、フレキシブルシートに、レーザー加工にて貫通穴を形成し、電解メッキにて貫通穴に貫通電極をハーフ形成し、凹部を形成する。また、貫通電極及び凹部側面をNi/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキなどでメッキ処理し、金属メッキ膜で被覆することが好ましい。
【0040】
次に、スクリーン印刷機を用いて、凹部12に、熱可塑性樹脂粒子及び導電粒子が分散された導電性バインダーを均等に印刷する。また、微量ディスペンサーを用いて凹部12に、導電性バインダーを均等に塗布してもよい。
【0041】
熱可塑性樹脂粒子の平均粒径の下限は、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、平均粒径の上限は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。これにより、凹部12への優れた充填性を得ることができる。
【0042】
導電性バインダーは、溶剤により粘度を調整することが好ましい。溶剤の粘度は1000mPa・s~10000mPa・sであることが好ましい。溶剤の粘度が低すぎても高すぎても、印刷か困難となることがある。
【0043】
導電性バインダーの25℃における粘度の下限は、好ましくは35Pa・s以上、より好ましくは40・s以上であり、導電性バインダーの25℃における粘度の上限は、好ましくは60Pa・s以下、より好ましくは50Pa・s以下である。これにより、導電性バインダーをフレキシブルシート10の第1面11aから突出させて印刷することができる。
【0044】
次に、フレキシブルシートの貫通電極14の凸部13側から磁場を印加する。これにより、導電粒子が磁性金属を含有する場合、容易に導電粒子同士が連鎖して貫通電極から夏可塑樹脂表層にある導電粒子まで連結し、導通をとることができる。
【0045】
次に、磁場を印加して導電粒子を固定した状態で温度100~200℃のオーブン中で0.5~3時間加熱し、さらに温度150~250℃で1~4時間加熱する。これにより、導電性バインダーが貫通電極14の凹部12に充填された導電バンプ20が形成された検査用プローブシートを得ることができる。
【0046】
<3.電気特性の検査方法>
本技術を適用した電気特性の検査方法は、検査対象物の電極面に、第1面と第2面とを貫通する貫通孔に貫通電極がハーフ形成され、第1面に陥没した凹部を有するフレキシブルシートと、凹部に配置され、1300MPa以上2600MPa以下の曲げ弾性率を有する熱可塑性樹脂と、導電粒子とを含み、導電粒子がフレキシブルシートの厚み方向に連結した導電性バンプとを備える検査プローブシートを貼り付け、導電性バンプと検査対象物の電極と接触させる貼付工程(A)と、検査プローブシートの他方の面から貫通電極にプローブを押し当て、電気特性を検査する検査工程(B)とを有する。これにより、ファインピッチに形成されたパッドやバンプの電気特性の検査に対し、優れた耐久性を示すことができる。
【0047】
検査対象物の一例としては、半導体装置が挙げられる。半導体装置は、ウェハ上に形成されたウェハレベル、個片化されたチップレベル、パッケージ後のパッケージレベルのいずれのものでもよい。以下では、半導体装置のチップレベルでの電気特性の検査方法について、貼付工程(A)、検査工程(B)及び、検査工程後に半導体装置から検査プローブシートを剥離する剥離工程(C)を説明する。なお、検査プローブシートは、前述した検査プローブシートと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0048】
[貼付工程(A)]
貼付工程(A)では、半導体装置の電極面に、検査プローブシートを貼り付け、導電性バンプと半導体装置のバンプとを接触させる。また、貼付工程(A)では、検査プローブシートを押圧することが好ましい。これにより、半導体装置のバンプに酸化膜が形成されている場合でも導電性バンプ中の導電粒子が酸化膜を突き破るため、電気特性を検査することができる。
【0049】
[検査工程(B)]
図3は、本技術に係る検査プローブシートを用いて、電気特性を検査する検査工程を模式的に示す断面図である。
【0050】
図3に示すように、検査工程(B)では、フレキシブルシート10の貫通電極14の凸部13にワイヤープローブ40を押し当て、貫通電極14の凹部12に配置された導電性バンプ20に半導体装置30のバンプ31を接触させ、電気特性を検査する。ワイヤープローブ40を押し当てた際、導電性バンプ30の導電粒子が半導体装置30のバンプ31の酸化膜を突き破るものと考えられる。
【0051】
ワイヤープローブ40は、電気特性を検査するための探針であり、
図3に示すように貫通電極の電極面に対し垂直に立てることが好ましい。ワイヤープローブ40は、複数のピンが配列されていてもよい。ワイヤープローブ40の先端形状は、特に限定されず、球面、平面、凹面、鋸歯面などであってもよい。ワイヤープローブ40の先端径は、貫通電極が突出していない場合、電極の幅より小さいことが好ましいが、貫通電極の電極が突出している場合は、隣接電極にショートしない範囲で電極の幅より大きくても構わない。
【0052】
電気特性の検査は、例えばトランジスタ、抵抗(電気抵抗)、コンデンサなどの特性を測定することにより行われる。
【0053】
[剥離工程(C)]
剥離工程(C)では、半導体装置から検査プローブシートを剥離する。また、検査プローブシートの剥離後に半導体装置を洗浄してもよい。また、剥離した検査プローブシートは、複数回使用することが可能である。
<3.実施例>
【実施例0054】
以下、本技術に係る実施例について説明する。本実施例では、電気特性の検査冶具を作製し、これを用いてベアチップの導通検査を行った。そして、導通検査後のパッド傷の有無、及び耐久性について評価した。なお、本技術は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
[導電性バインダーの粘度の測定]
レオメーター(HAAKE社製)にて25℃の導電性バインダーの初期粘度を測定した。
【0056】
[パッド傷の有無の評価]
導通検査後の半田バンプの傷の有無について、目視により確認した。
【0057】
[耐久性の評価]
耐久性試験として、導通検査を1万回繰り返し、初期の検査抵抗値と、耐久性試験後の検査抵抗値とを測定した。
<実施例1>
【0058】
[貫通電極を有するフレキシブルシートの作製]
ポリイミドシートの両面に銅が積層されたシート(商品名:エスパーフレックス、銅厚8μm、ポリイミド厚25μm、住友金属鉱山社製)に、レーザー加工にて直径30μmの貫通穴を60μmPの格子状間隔で形成し、電解メッキにて貫通穴に銅メッキによる貫通電極を形成した。貫通電極は、シート表面から厚み方向に15μmの溝の凹部が形成されるハーフ形成とした。次に、ニッケルと金によるメッキ加工を行った後に、表裏の銅層をエッチングで除去することで、フレキシブルシートを作成した。なお、ニッケル金メッキは、凹部側面のポリイミド表面にも形成した。
【0059】
[導電性バインダーの調製]
平均粒子径3μmのNi/Agメッキ樹脂コア粒子(積水化学工業社製)の表面に、無電解による置換メッキによって金メッキ層を施すことにより、導電粒子を作製した。また、熱可塑性樹脂粒子として平均粒径5μmのナイロン12微粒子(SP-500、東レ社製、曲げ弾性率1.4GPa程度、融点165℃)を準備した。そして、熱可塑性樹脂粒子100質量部に対して導電粒子を200質量部の割合で混合し、更に溶剤としてジエチルペンタンジオール(沸点264℃、粘度1000mPa・s)を加えて遊星撹枠ミキサーにて均一に混合し、導電性バインダーを調製した。導電性バインダーの粘度は、43Pa・sであった。また、導電性バインダーは、溶剤中にナイロン微粒子と導電粒子とが分散した状態であった。
【0060】
[検査プローブシートの作製]
スクリーン印刷機(ニューロング精密工業社製)を用いて、フレキシブルシートの貫通電極の凹部に、導電性エラストマーがシート表面から10μm突き出るように導電性エラストマー分散液を均等に印刷した。次に、永久磁石上にフレキシブルシートを置き、温度200℃のオープン中で1時間放置し、溶剤を乾燥させ、検査用プローブシートを作製した。導電性エラストマー分散液から形成された導電性バンプは、ナイロン12微粒子が溶融し、導電粒子同士が接合して一体化した状態であった。
【0061】
[導通検査]
評価用ベアチップとして、高さ20μm、30μmφの半田キャップ付銅ピラーバンプ(以下、半田バンプ)が6OμmPで配列された6mm角のベアチップ(デクセリアルズ評価基材)を用い、30μmφワイヤープローブ(テスプロ社製)を用いて、導通抵抗検査を行った。より具体的には、
図3に示すように、評価用ペアチップの回路面と、検査プローブシートの一方の電極面を位置合わせした状態で押圧し、検査プローブシートの反対の電極面にワイヤープローブを荷重5g/pinで接触させ、導通検査を行った。表1に、導通検査後の半田バンプの傷の有無、及び耐久性試験前後の導通抵抗値を示す。
【0062】
<実施例2>
溶剤を「日香MHDJ(ジヒドロターピネオール系、沸点220℃、粘度3000mPa・s、日香香料薬品社製)に変えた以外は、実施例1と同様の方法にて導電性バインダーを調製した。導電性バインダーの粘度は、49Pa・sであった。また、導電性バインダーは、溶剤中にナイロン微粒子と導電粒子とが分散した状態であった。
【0063】
また、実施例1と同様の方法にてプローブシートを作製した。導電性バインダーから形成された導電性バンプは、ナイロン12微粒子が溶融し、導電粒子同士が接合して一体化した状態であった。そして、実施例1と同様の方法にて導通検査を行った。表1に、導通検査後の半田バンプの傷の有無、及び耐久性試験前後の導通抵抗値を示す。
【0064】
<比較例1>
溶剤を「YS200」(炭化水素系、沸点232℃、粘度50mPa・s、山一化学工業社製)に変えた以外は、実施例1と同様の方法にて導電性バインダーを調製した。導電性バインダーの粘度は、30Pa・sであった。また、導電性バインダーは、溶剤中にナイロン微粒子と導電粒子とが分散した状態であった。また、実施例1と同様の方法にてプローブシートの作製を試みたが、スクリーン印刷でのFPC上への導電性バンプの形成ができず、プローブシートの作製ができなかった。
【0065】
<比較例2>
バインダーとしてSEBSポリマー(タフテックM1913、旭化成社製)を準備し、溶剤として「YS200」を準備し、SEBSを溶剤に溶解してから、導電粒子を添加した以外は、実施例1と同様の方法にて導電性バインダーを調製した。導電性バインダーは、ポリマーが溶解した溶剤中に導電粒子が分散した状態であった。また、実施例1と同様の方法にてプローブシートを作製した。導電性バインダーの粘度は、30Pa・sであった。また、導電性バインダーから形成された導電性バンプは、SEBSポリマー中に導電粒子が部分的に接触しながら分散した状態であった。
【0066】
そして、実施例1と同様の方法にて導通検査を行った。表1に、導通検査後の半田バンプの傷の有無、及び耐久性試験前後の導通抵抗値を示す。
【0067】
<比較例3>
エラストマーとして、2液型液状シリコーン(TSE3032A/B、モメンティブ社製)のA剤とB剤を10:1の割合で配合し、このシリコーン樹脂100質量部に対して導電粒子を200質量部の割合で混合して、導電性バインダーを調製した。導電性バインダーの粘度は、40Pa・sであった。また、導電性バインダーは、液状シリコーンゴム中に導電粒子が分散した状態であった。
【0068】
この導電性バインダーを用いて、実施例1と同様の方法にてプローブシートを作製した。導電性バインダーから形成された導電性バンプは、シリコーンゴム中に導電粒子が部分的に接触しながら分散した状態であった。そして、実施例1と同様の方法にて導通検査を行った。表1に、導通検査後の半田バンプの傷の有無、及び耐久性試験前後の導通抵抗値を示す。
【0069】
【0070】
比較例1では、スクリーン印刷によるFPC上への導電性バンプ形成ができなかった。これは、分散液の液成分として低粘度溶剤しか含まれていないため、FPCへの転写ができなかったためと思われる。
【0071】
比較例2、3では、バインダー成分が均一な液状となり適宜な粘度となるため、スクリーン印刷によるFPCへの導電性バンプ形成が可能となった。ただし、この方法で形成する導電性バンプは、バインダー成分がSEBS等のエラストマーやシリコーンゴム等の比較的強度の弱いものであるため、耐久性試験にてNGとなった。
【0072】
実施例1、2では、導電性バインダーの溶剤として高粘度タイプ(粘度1000mPa・s以上)を使用したため、バインダー成分として微粒子状態のナイロンを使用した場合でもスクリーン印刷によりFPCへのバンプ形成が可能であった。形成された導電性バンプを使用した検査でも良好な結果となった。また、バインダー成分として強度の高いナイロンを使用しているため、耐久性試験後も良好な抵抗値となった。
1 検査プローブシート、10 フレキシブルシート、11a 第1面、11b 第2面、12 凹部、13 凸部、14、貫通電極、20 導電性バンプ、30 半導体装置、31 バンプ、40 ワイヤープローブ