(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000192
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ロータおよびロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20231225BHJP
H02K 15/03 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K15/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098823
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】西川 敦准
(72)【発明者】
【氏名】小坂 弥
(72)【発明者】
【氏名】山本 晋也
(72)【発明者】
【氏名】原田 隆博
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA14
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP03
5H622PP20
(57)【要約】
【課題】回転電機を構成するロータのエンドプレートを軽量化しつつ磁石の飛散防止機能を確保する技術を提供する。
【解決手段】回転軸線を中心に回転するロータコア11と、ロータコア11に設けられた、回転軸方向に延在する複数の永久磁石90と、ロータコア11に設けられた、複数の永久磁石90をそれぞれ収容する複数の磁石収容部40と、を有するロータ10であって、ロータコア11の回転軸線方向の端部に設けられた第1の樹脂硬化物のエンドプレート50を有し、磁石収容部40は、永久磁石90が収容される第1の空孔部と、第1の空孔部と一体に回転軸方向に延在し、内部に第2の樹脂硬化物が充填された第2の空孔部と、を有し、第1の樹脂硬化物と第2の樹脂硬化物は同一の樹脂組成物が硬化して一体に設けられている、ロータ10が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線を中心に回転するロータコアと、
前記ロータコアに設けられた、回転軸方向に延在する複数の永久磁石と、
前記ロータコアに設けられた、複数の前記永久磁石をそれぞれ収容する複数の磁石収容部と、
を有するロータであって、
前記ロータコアの回転軸線方向の端部に設けられた第1の樹脂硬化物のエンドプレートを有し、
前記磁石収容部は、
前記永久磁石が収容される第1の空孔部と、
前記第1の空孔部と一体に回転軸方向に延在し、内部に第2の樹脂硬化物が充填された第2の空孔部と、
を有し、
前記第1の樹脂硬化物と前記第2の樹脂硬化物は同一の樹脂組成物が硬化して一体に設けられている、ロータ。
【請求項2】
前記エンドプレートは、前記ロータコアの端部側から視たときに回転対称性を有している、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記エンドプレートは、全ての前記磁石収容部の第2の樹脂硬化物に対して共通に一つ設けられている、請求項1または2に記載のロータ。
【請求項4】
前記エンドプレートは、複数のプレートに分かれており、
前記プレート毎に、前記第1の樹脂硬化物と前記第2の樹脂硬化物が一体に設けられている、請求項1または2に記載のロータ。
【請求項5】
前記永久磁石は、回転軸方向の端部側から視たときに、矩形形状であって、
複数の前記永久磁石は、一対の前記永久磁石からなる磁石セットを複数備え、
一対の前記永久磁石は、互いの矩形形状の長手方向を前記径方向の外側に向けて開くV字の姿勢で配置されている、
請求項1または2に記載のロータ。
【請求項6】
前記磁石収容部は、回転軸方向の端部側から視たときに、略矩形形状の開口部を有しており、
複数の前記磁石収容部は、一対の前記磁石収容部からなる収容部セットを複数備え、
一対の前記磁石収容部の前記開口部は、互いの矩形形状の長手方向を前記径方向の外側に向けて開くV字に設けられている、
請求項5に記載のロータ。
【請求項7】
前記第1の樹脂硬化物および前記第2の樹脂硬化物の前記樹脂組成物は、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂からなる群より選択される1種または2種の熱硬化性樹脂からなる、請求項1または2に記載のロータ。
【請求項8】
前記ロータコアの回転軸線方向の端部に、金属製プレートを更に有する、請求項1または2に記載のロータ。
【請求項9】
回転軸線を中心に回転するロータコアと、前記ロータコアに設けられた回転軸方向に延在する複数の永久磁石と、前記ロータコアに設けられた複数の前記永久磁石をそれぞれ収容する複数の磁石収容部と、を有するロータの製造方法であって、
前記ロータは、前記ロータコアの回転軸線方向の端部に設けられた第1の樹脂硬化物のエンドプレートを有し、
前記磁石収容部は、前記永久磁石が収容される第1の空孔部と、前記第1の空孔部と一体に回転軸方向に延在し、内部に第2の樹脂硬化物となる樹脂組成物が充填される第2の空孔部と、を有し、
前記エンドプレートが形成されるエンドプレート形成領域に対して、前記第1の樹脂硬化物となる樹脂組成物を充填する第1の工程と、
前記第1の空孔部に前記永久磁石が収容された状態で、前記第2の空孔部に前記第2の樹脂硬化物樹脂となる樹脂組成物を充填する第2の工程と、
を有し、
前記第2の工程において前記第2の空孔部に充填される樹脂は、前記第1の工程において前記エンドプレート形成領域から流れ出た樹脂組成物である、ロータの製造方法。
【請求項10】
前記エンドプレート形成領域を有する金型は、前記第2の空孔部ごとに対応して、前記樹脂組成物を充填するゲートを備える、請求項9に記載のロータの製造方法。
【請求項11】
前記ゲートは、前記磁石収容部よりも回転軸側に設けられている、請求項10に記載のロータの製造方法。
【請求項12】
前記樹脂組成物のスパイラルフローが50cm以上150cm以下である、請求項9または10に記載のロータの製造方法。
【請求項13】
前記樹脂組成物のゲルタイムが30秒以上90秒以下である、請求項9または10に記載のロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータおよびロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ等の回転電機において、ロータの磁石挿入孔に設けられた磁石の飛散防止のために、磁石挿入孔を塞ぐようにエンドプレートを設けた技術が知られている。
例えば、特許文献1(特開2000-316243号公報)では、積層された電磁鋼板を上部エンドプレートと下部エンドプレートとで挟んだ状態で、電磁鋼板の円周方向に複数個形成された磁石収納部にそれぞれ磁石を配置する。上部エンドプレートのそれぞれの磁石収納部に対応する位置には、接着剤を収納するポケットが形成されている。ポケット内に接着剤を供給し、ロータを加熱することで、接着剤を磁石収納部と磁石との間に浸透させる。次に、ロータを回転させ、磁石をそれぞれの磁石収納部の半径方向外側の側壁に当接した状態に保持し、ロータが回転している状態でその接着剤を硬化させる。これにより、ロータに固定された各々の磁石の半径方向における位置のバラツキを小さくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、モータ等の回転電機への需要が大きくなっており、そのなかで製品の軽量化の要請が非常に強く、上述のエンドプレートに対しても軽量化の要請がある。一方で、エンドプレートの軽量化は、磁石の飛散防止機能の低下の虞もあり、それらを両立させることができる技術が求められていた。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであって、回転電機を構成するロータのエンドプレートを軽量化しつつ磁石の飛散防止機能を確保する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の技術が提供される。
[1]
回転軸線を中心に回転するロータコアと、
前記ロータコアに設けられた、回転軸方向に延在する複数の永久磁石と、
前記ロータコアに設けられた、複数の前記永久磁石をそれぞれ収容する複数の磁石収容部と、
を有するロータであって、
前記ロータコアの回転軸線方向の端部に設けられた第1の樹脂硬化物のエンドプレートを有し、
前記磁石収容部は、
前記永久磁石が収容される第1の空孔部と、
前記第1の空孔部と一体に回転軸方向に延在し、内部に第2の樹脂硬化物が充填された第2の空孔部と、
を有し、
前記第1の樹脂硬化物と前記第2の樹脂硬化物は同一の樹脂組成物が硬化して一体に設けられている、ロータ。
[2]
前記エンドプレートは、前記ロータコアの端部側から視たときに回転対称性を有している、[1]に記載のロータ。
[3]
前記エンドプレートは、全ての前記磁石収容部の第2の樹脂硬化物に対して共通に一つ設けられている、[1]または[2]に記載のロータ。
[4]
前記エンドプレートは、複数のプレートに分かれており、
前記プレート毎に、前記第1の樹脂硬化物と前記第2の樹脂硬化物が一体に設けられている、[1]または[2]に記載のロータ。
[5]
前記永久磁石は、回転軸方向の端部側から視たときに、矩形形状であって、
複数の前記永久磁石は、一対の前記永久磁石からなる磁石セットを複数備え、
一対の前記永久磁石は、互いの矩形形状の長手方向を前記径方向の外側に向けて開くV字の姿勢で配置されている、[1]から[4]までのいずれか1に記載のロータ。
[6]
前記磁石収容部は、回転軸方向の端部側から視たときに、略矩形形状の開口部を有しており、
複数の前記磁石収容部は、一対の前記磁石収容部からなる収容部セットを複数備え、
一対の前記磁石収容部の前記開口部は、互いの矩形形状の長手方向を前記径方向の外側に向けて開くV字に設けられている、[5]に記載のロータ。
[7]
前記第1の樹脂硬化物および前記第2の樹脂硬化物の前記樹脂組成物は、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂からなる群より選択される1種または2種の熱硬化性樹脂からなる、[1]から[6]までのいずれか1に記載のロータ。
[8]
前記ロータコアの回転軸線方向の端部に、金属製プレートを更に有する、[1]から[7]までのいずれか1に記載のロータ。
[9]
回転軸線を中心に回転するロータコアと、前記ロータコアに設けられた回転軸方向に延在する複数の永久磁石と、前記ロータコアに設けられた複数の前記永久磁石をそれぞれ収容する複数の磁石収容部と、を有するロータの製造方法であって、
前記ロータは、前記ロータコアの回転軸線方向の端部に設けられた第1の樹脂硬化物のエンドプレートを有し、
前記磁石収容部は、前記永久磁石が収容される第1の空孔部と、前記第1の空孔部と一体に回転軸方向に延在し、内部に第2の樹脂硬化物となる樹脂組成物が充填される第2の空孔部と、を有し、
前記エンドプレートが形成されるエンドプレート形成領域に対して、前記第1の樹脂硬化物となる樹脂組成物を充填する第1の工程と、
前記第1の空孔部に前記永久磁石が収容された状態で、前記第2の空孔部に前記第2の樹脂硬化物樹脂となる樹脂組成物を充填する第2の工程と、
を有し、
前記第2の工程において前記第2の空孔部に充填される樹脂は、前記第1の工程において前記エンドプレート形成領域から流れ出た樹脂組成物である、ロータの製造方法。
[10]
前記エンドプレート形成領域を有する金型は、前記第2の空孔部ごとに対応して、前記樹脂組成物を充填するゲートを備える、[9]に記載のロータの製造方法。
[11]
前記ゲートは、前記磁石収容部よりも回転軸側に設けられている、[10]に記載のロータの製造方法。
[12]
前記樹脂組成物のスパイラルフローが50cm以上150cm以下である、[9]から[11]までのいずれか1に記載のロータの製造方法。
[13]
前記樹脂組成物のゲルタイムが30秒以上90秒以下である、[9]から[12]までのいずれか1に記載のロータの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回転電機を構成するロータのエンドプレートを軽量化しつつ磁石の飛散防止機能を確保する技術を提供することを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】実施形態に係る永久磁石を取り付けた状態のロータコアの平面図である。
【
図6】実施形態に係る
図4の領域A1の拡大図である。
【
図7】実施形態に係る
図5の領域A2の拡大図である。
【
図8】実施形態に係る樹脂製のエンドプレートを成形するためにロータコアを金型に配置した状態を模式的に示した図である。
【
図9】実施形態に係るエンドプレートの成形に用いる上型(ゲートプレート)の例を示す図である。
【
図10】実施形態に係るエンドプレートの成形に用いる上型(ランナープレート)の例を示す図である。
【
図11】実施形態に係るエンドプレートの成形手順を説明する図である。
【
図12】実施形態の変形例に係るエンドプレートを設けたロータの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
<モータ1>
本実施形態では、回転電機としてモータに適用した例を説明する。
図1はモータ1のシャフト2(回転軸)に沿って切断した断面図である。
図2はロータ10の平面図である。
図3はロータ10の斜視図である。
図4はロータ10からエンドプレート50を取り除いた状態の平面図である。
図5はロータコア11の平面図であり、
図4から永久磁石90を取り除いた状態とも言える。
【0010】
本実施形態では、回転電機としてモータ1を例示する。ロータ10として、永久磁石90がV字形状に配置されてロータコア11に埋め込まれるものを説明するが、磁石収容部40を用いて永久磁石90がロータコア11に埋め込まれるものであればよく、永久磁石90の配置はV字形状以外であっても構わない。また、永久磁石90の数は、モータ1のロータ10の仕様によって定めることができ、以下で図示される数以外であってもよい。
【0011】
本実施形態のモータ1は、ロータ10において永久磁石90の飛散防止のために設けられているエンドプレート50を樹脂製とすることで、ロータ10の軽量化を実現しつつ、製造安定性を実現する。以下、詳細に説明する。
【0012】
モータ1は、ハウジング3、シャフト2、ロータ10およびステータ6を備える。
ハウジング3は、ロータ10を収容するハウジング筒部3aと、ハウジング筒部3aの軸方向両端を閉塞するハウジング端部3bとを有する。ハウジング3の材料として、例えば、アルミニウム合金(鋳物鋳造品)や樹脂材料、それらを組み合わせたものを用いることができる。
シャフト2はベアリング4を介してハウジング端部3bにより回転可能に支持されている。ステータ6は、ハウジング3(ハウジング筒部3a)に固定されているステータコアとステータコアに組み付けられているコイルとを有している。
【0013】
ロータ10は、回転軸(すなわちシャフト2)を中心に回転するロータコア11と、ロータコア11に設けられた回転軸方向に延在する複数の永久磁石90と、ロータコア11に設けられた、複数の永久磁石90をそれぞれ収容する複数の磁石収容部40と、を有する。
【0014】
さらに、ロータ10は、ロータコア11の回転軸線方向の端部(端面12)に設けられた第1の樹脂硬化物のエンドプレート50を有する。エンドプレート50は、永久磁石90がロータコア11の磁石収容部40から飛び出してしまうことを防止する。
以下、ロータ10に着目してより具体的に説明する。
【0015】
<ロータ10>
図1に示すように、本実施形態のロータ10は、片方の端面12にエンドプレート50を有するロータコア11を2つシャフト2に並べて取り付けている。2つのロータコア11は同一構造を有し、左右対称にシャフト2に取り付けられる。この状態で、エンドプレート50が外側に配置される。すなわち、エンドプレート50が設けられていない端面12を付き合わせるようにして、2つのロータコア11がシャフト2に取り付けられている。
以下、片方のロータコア11及びエンドプレート50について説明する。
【0016】
<ロータコア11>
ロータコア11は、円盤状に形成された複数の電磁鋼板を積層した略円柱形状を呈する。
ロータコア11を構成する各電磁鋼板は、中心に設けられた中心開口と、外縁の近傍に設けられた複数の開口部とを有する。電磁鋼板を積層すると、外縁の近傍の開口部が軸方向に揃う貫通孔となる。この貫通孔が磁石収容部40になる。中心開口が軸方向に揃う貫通孔がシャフト用開口19になる。本実施形態では、例えばロータコア11の外径を130mm、長さを75mmとすることができる。なお、本実施形態では、ロータ10として2つのロータコア11を連結した構造のため、長さは150mmとすることができる。
【0017】
シャフト用開口19にシャフト2が挿通・固定される。なお、シャフト用開口19には、シャフト2と嵌合させるための嵌合凸部18が設けられており、嵌合凸部18がシャフト2の嵌合溝(図視せず)とが嵌合する。
【0018】
<永久磁石90>
永久磁石90は、直方体であって、磁石収容部40に収容される。永久磁石90は、ロータコア11に軸方向に延びて埋め込まれ、ロータ1の磁極を形成する。
【0019】
本実施形態では、永久磁石90は複数設けられており、一対の永久磁石90からなる磁石セットを複数備える。本実施形態では、ロータ10は、8極ロータである。一対の永久磁石90は、互いの矩形形状の長手方向を径方向の外側に向けて開くV字の姿勢で配置されている。V字形状に配置された2つ1組の永久磁石90(第1の永久磁石91、第2の永久磁石92)で1つの磁極(1つの磁石セット)を構成する。このため、合計16個の磁石収容部40が設けられる。
【0020】
<磁石収容部40>
ロータコア11は、一端から他端まで連通する磁石収容部40を複数(ここでは16個)の磁石収容部40を有する。磁石収容部40には直方体の永久磁石90が収容される。
【0021】
図6及び
図7を参照して、磁石収容部40についてより具体的に説明する。
図6に
図4の領域A1の拡大図であって、永久磁石90が収容された磁石収容部40の状態を示す。
図7に
図5の領域A2の拡大図、すなわち永久磁石90が収容されていない磁石収容部40の状態を示す。
【0022】
磁石収容部40は、永久磁石90の形状および配置に対応して設けられている。すなわち、一対の永久磁石90は、V字の姿勢で配置されていることから、一対の磁石収容部40がV字形状になるように設けられている。
磁石収容部40は、永久磁石90の断面形状(すなわち長方形)とは少し異なる開口形状を有する。その開口形状は、ロータ10の仕様に応じた磁路形状に対応するように設定される。
【0023】
磁石収容部40は、永久磁石90が収容される第1の空孔部41と、第1の空孔部41と一体に回転軸方向に延在する第2の空孔部42(42a、42b)とを有する。第2の空孔部42(42a、42b)には、エンドプレート50を構成する樹脂組成物の硬化物(第2の樹脂硬化物)が充填される。
【0024】
第1の空孔部41は、平面視で永久磁石90の断面形状と同様の長方形の領域である。
2つの第2の空孔部42(42a、42b)は、第1の空孔部41が呈する長方形の両短辺から突出するように略三角形の断面形状で設けられている。ここではV字状の外側に設けられる第2の空孔部(A)42aが、内側の第2の空孔部(B)42bよりも大きく形成されている。
【0025】
第2の空孔部42(42a、42b)の形状は、断面三角形状に限定する趣旨ではなく、各種の形状が採用できる。また、第2の空孔部42の回転軸方向において断面同一形状であるが、これに限定する趣旨では無く、一部が別形状であったり、大きく又は小さく形成されてもよい。永久磁石90を磁石収容部40(第1の空孔部41)に収容した状態で第2の樹脂硬化物により固定できれば、様々な形状を採用できる。ただし、ロータコア11に要求される磁気特性や磁石収容部40に充填される第2の樹脂硬化物の樹脂材料の特性(例えば充填時の流動性)に応じて形状は最適化されうる。
【0026】
<エンドプレート50>
エンドプレート50は、ロータコア部22の軸方向の端部すなわち端面12に設けられる樹脂製の板材であって、磁石収容部40に収容された永久磁石90を覆うことで、永久磁石90が外部に飛び出すことを防止する。
より具体的にはエンドプレート50は、樹脂組成物の硬化物(以下、第1の樹脂硬化物51)から形成される。エンドプレート50は、磁石収容部40に充填される樹脂組成物の硬化物(以下、第2の樹脂硬化物52という)と一体に構成されている。
【0027】
第1の樹脂硬化物51は、ロータコア11の端面12において永久磁石90を覆って設けられた環状のプレートであって、ロータコア11の端部側から視たときに回転対称性を有している。ここでは、エンドプレート50は、磁石収容部40(第1の空孔部41、第2の空孔部42)を完全に覆うように、かつ全ての磁石収容部40に対して共通に一つ設けられている。言い換えると、第1の樹脂硬化物51と全ての第2の樹脂硬化物52とは一体に構成されている。
【0028】
エンドプレート50の第1の樹脂硬化物51は、環状形状の径方向外縁が、磁石収容部40の外縁に沿うように設けられている。すなわち、第1の樹脂硬化物51の外縁は、永久磁石90のV字形状の配置に対応して、ちょうどV字の中央で径方向内側に凹状になっており、V字の端部では、ロータコア11の端面12の外縁の略同一の位置になっている。なお、エンドプレート50の外縁と永久磁石90の端面までに所定幅の樹脂が形成されており、本実施形態では距離L2が2mmでとすることができる。さらに、第1の樹脂硬化物51の径方向の幅Lは、略同一である。つまり、第1の樹脂硬化物51の内縁は、外縁の凹凸に追従するように、凹凸している。
【0029】
第1の樹脂硬化物51の厚みは、モータ1の仕様により適宜設定されるが、例えば、1mm以上10mm以下とすることができる。本実施形態では、例えば3mmとすることができる。
【0030】
<第2の樹脂硬化物52>
第2の樹脂硬化物52は、第1の樹脂硬化物51と一体に構成されており磁石収容部40の第2の空孔部42に充填されている。すなわち、磁石収容部40(第1の空孔部41)に収容された永久磁石90の周面を第2の樹脂硬化物52で覆うことで、永久磁石90を磁石収容部40に強固に接着させることができる。
【0031】
<第1および第2の樹脂硬化物51の材料>
エンドプレート50は、樹脂材料の硬化物(第1および第2の樹脂硬化物51、52)によって構成される。エンドプレート50に用いられる樹脂材料は、熱伝導性の良い樹脂材料であることが望ましく、1種類の樹脂または部材毎に複数種の樹脂の組み合わせとすることができる。例えば、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂からなる群より選択される1種または2種の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0032】
フェノール樹脂としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。
【0033】
エポキシ樹脂としては、一分子中にエポキシ基を2個以上有するものであれば特に分子量や構造は限定されるものではない。
エポキシ樹脂としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンのような芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂;アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂;ナフトール型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂;フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、またはビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ-アジペイド等の脂環式エポキシ等の脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用しても良い。
エポキシ樹脂を含む場合、芳香族環にグリシジルエーテル構造あるいはグリシジルアミン構造が結合した構造を含むものが、耐熱性、機械特性、および耐湿性の観点から好ましい。
【0034】
硬化剤は、熱硬化性樹脂に好ましい態様として含まれるエポキシ樹脂が選択される場合に、三次元架橋させるために用いられるものである。硬化剤としては、特に限定されないが、例えばフェノール樹脂を用いることができる。このようなフェノール樹脂系硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではない。
フェノール樹脂系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物、ナフテン酸コバルト等のナフテン酸金属塩等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0035】
無機充填剤としては、ケース材に用いられる樹脂組成物の技術分野で一般的に用いられる無機充填剤(フィラーや強化繊維)を使用することができる。無機充填剤としては、例えば溶融破砕シリカ及び溶融球状シリカ等の溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、カオリン、タルク、クレイ、マイカ、ロックウール、ウォラストナイト、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスファイバー、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミ、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、セルロース、アラミド、木材、フェノール樹脂成形材料やエポキシ樹脂成形材料の硬化物を粉砕した粉砕粉等が挙げられる。この中でも、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ等のシリカが好ましく、溶融球状シリカがより好ましい。また、この中でも、炭酸カルシウムがコストの面で好ましい。無機充填剤としては、一種で使用しても良いし、または二種以上を併用してもよい。
【0036】
<樹脂組成物の物性>
エンドプレート50を構成する樹脂材料の硬化物(第1および第2の樹脂硬化物)の物性は、例えば以下の通りスパイラルフローとゲルタイムにより評価することができる。
【0037】
(スパイラルフロー)
EMMI-1-66法に従い、金型温度130℃、注入圧力6.9MPa、保圧時間300秒の条件で測定されるスパイラルフロー(流動長)が50cm以上150cm以下である。スパイラルフローの下限は、好ましくは55cm以上、より好ましくは60cm以上である。上限値は、好ましくは100cm以下であり、より好ましくは80cm以下である。スパイラルフローが上記範囲にあることにより、低温成形における樹脂成形材料の充填性がより優れ、未充填部分の発生がより抑制される。
【0038】
樹脂組成物のゲルタイムは、充填性および硬化性のバランスを向上する観点から、30秒以上90秒以下である。下限は、好ましくは40秒以上であり、好ましくは50秒以上である。上限は、好ましくは80秒以下であり、より好ましくは70秒以下である。
樹脂組成物のゲルタイムは、具体的には、175℃の熱板上に樹脂組成物を載せ、スパチュラで約1回/秒のストロークで練り、樹脂組成物が熱により溶解してから硬化するまでに要した時間を測定することにより求めることができる。
【0039】
<エンドプレート50の製造方法>
図8から11を参照して、エンドプレート50をロータコア11に設ける製造方法について説明する。
図8は、樹脂製のエンドプレート50を成形するためにロータコア11を金型(上型(ゲートプレート100、ランナープレート200)、下型300)に配置した状態を模式的に示した図であり、ここでは断面図で示している。
図9はゲートプレート100の例を示す図であって、
図9(a)は平面図、
図9(b)はX2-X2断面図である。
図10はランナープレート200の例を示す平面図である。
図11は、エンドプレートの成形手順を説明する図であって、1つの磁石収容部40(
図7のX1-X1断面であって、
図8の領域A2の部分に相当する領域)に着目して示している。なお、金型の材料としては、例えばSUS304(非着磁対応)を用いることができる。
【0040】
図8に示すように、永久磁石90が磁石収容部40に収容されたロータコア11が下型300の上に配置される。次に、ロータコア11の上側の端面12に上型が取り付けられる。ここでは、まず、ゲートプレート100が取り付けられ、さらにゲートプレート100の上側にランナープレート200が取り付けられる。
【0041】
図9に示すように、ゲートプレート100は、一方の面101にエンドプレート50(第1の樹脂硬化物51)の形状に対応した成形空間であるキャビティ111が円環状の凹部として設けられている。また、中心には、シャフト用開口19に嵌まる凸部113が設けられている。キャビティ111と凸部113の平面112が、ロータコア11の端面12に当接する。
【0042】
キャビティ111において、磁石収容部40の第2の空孔部42ごとに対応して、ゲート120が設けられている。ゲート120は、磁石収容部40よりも回転軸側に設けられる。上述のように、一対の磁石収容部40が、一対の永久磁石90のV字状の配置に対応して、互いの矩形形状の長手方向を径方向の外側に向けて開くV字の姿勢で配置されている。V字状配置の一対の磁石収容部40に対してゲート120は、2つの外側ゲート121と1つの内側ゲート122の3箇所設けられている。具体的には、V字の開放端に当たる第2の空孔部(A)42aのそれぞれに対して1つ(合計2つ)の外側ゲート121が設けられ、V字の中央閉端近傍の第2の空孔部(B)42bに共通に1つの内側ゲート122が設けられている。本実施形態では、8組の磁石セットであることから、外側ゲート121と内側ゲート122を合計すると24箇所に設けられる。
【0043】
図10に示すように、ランナープレート200は、中央のスプルー211と、中央のスプルー211から放射状に伸びる8つのランナー220とを有する。ランナー220はスプルー211から直線状に径方向に延びるランナー本体220と、ランナー本体220の先端で3つに分岐する第1~第3分岐部222~224を有する。ここでは中央の第1分岐部222とその両側の第2、第3分岐部223、224とを有する。第1分岐部222がゲートプレート100の内側ゲート122の位置に繋がる。第2、第3分岐部223、224がゲートプレート100の外側ゲート121の位置に繋がる。
【0044】
図8および
図11を参照してエンドプレート50の形成手順を簡単に説明する。
図11(a)に示すように、永久磁石90が磁石収容部40に収容されていないロータコア11を準備し、磁石収容部40に永久磁石90を収容する。
つづいて、永久磁石90を収容したロータコア11を下型300に配置し、さらに、ロータコア11の端面12の上にゲートプレート100を配置する(
図11(b))。このとき、磁石収容部40(永久磁石90)の上に、エンドプレート50の成形空間であるキャビティ111が配置される。さらに、ゲートプレート100の上には
図8に示したようにランナープレート200が取り付けられる。
【0045】
下型300及び上型(ゲートプレート100、ランナープレート200)がロータコア11にセットされると、樹脂射出装置(図視せず)から溶融状態の樹脂組成物が射出され、ゲート120からエンドプレート形成領域であるキャビティ111内に流れる(第1の工程)。
【0046】
さらに、キャビティ111が第2の空孔部(A)42a、第2の空孔部(B)42bと繋がっていることから、樹脂組成物がキャビティ111(エンドプレート形成領域)から流れ出て第2の空孔部(A)42a、第2の空孔部(B)42bに流れ込む(第2の工程)。最終的に、樹脂組成物は、キャビティ111と第2の空孔部(A)42a、第2の空孔部(B)42bに充填される。キャビティ111で硬化した樹脂組成物が第1の樹脂硬化物51、第2の空孔部(A)42a、第2の空孔部(B)42bで硬化した樹脂組成物が第2の樹脂硬化物52となる。
以上により、エンドプレート50がロータコア11の端面12に形成される。
【0047】
以上、本実施形態によると、エンドプレート50を樹脂製とすることで、従来のように金属製のエンドプレートと比較して軽量化を実現しつつ、永久磁石90の飛散を適切に防止することができる。すなわち、永久磁石90が飛散しようとするときに、エンドプレート50が永久磁石90からの荷重を適切に受けることができる。
また、ロータ10の設計の自由度が向上する。金属製エンドプレートを用いた場合、一般に、金属製エンドプレートのロータコア11への固定箇所をなるべく径方向外側に設ける必要がある。これは、ロータ10の磁気特性が変化するおそれがあり、設計の自由度が無かった。言い換えると、設計変更が難しいという課題があった。しかしながら、本実施形態では、エンドプレート50が樹脂製であることから、ロータ10の磁力特性に影響を与えることがない。すなわち、ロータ10の設計変更の際にエンドプレート50により磁力特性への影響を考慮する必要が無い。
また、永久磁石90の磁石収容部40への固定をエンドプレート50の成形と同時に行うことができるため、製造プロセスを短縮することができる。
【0048】
<モータ1の特徴・機能のまとめ>
本実施形態のモータ1、特にロータコア11の特徴についてロータの構造に着目して纏めて説明する。
[1]
回転軸線を中心に回転するロータコア11と、
ロータコア11に設けられた、回転軸方向に延在する複数の永久磁石90と、
ロータコア11に設けられた、複数の前記永久磁石90をそれぞれ収容する複数の磁石収容部40と、
を有するロータ10であって、
ロータコア11の回転軸線方向の端部(コア端面11a)に設けられた第1の樹脂硬化物のエンドプレート50を有し、
磁石収容部40は、
永久磁石90が収容される第1の空孔部41と、
第1の空孔部41と一体に回転軸方向に延在し、内部に第2の樹脂硬化物が充填された第2の空孔部42(42a、42b)と、
を有し、
第1の樹脂硬化物と第2の樹脂硬化物は同一の樹脂組成物が硬化して一体に設けられている、ロータ10。
[2]
エンドプレート50は、ロータコア11の端部(コア端面11a)側から視たときに回転対称性を有している、[1]に記載のロータ10。
[3]
エンドプレート50は、全ての磁石収容部40の第2の樹脂硬化物に対して共通に一つ設けられている、[1]または[2]に記載のロータ10。
[4]
エンドプレート50は、複数のプレート(51、52、・・・)に分かれており、
プレート(51、52、・・・)毎に、第1の樹脂硬化物と前記第2の樹脂硬化物が一体に設けられている、[1]または[2]に記載のロータ10。
[5]
永久磁石90は、回転軸方向の端部側(すなわち磁石端面90a)から視たときに、矩形形状であって、
複数の永久磁石90は、一対の永久磁石(91、92)からなる磁石セットを複数備え、
一対の永久磁石(91、92)は、互いの矩形形状の長手方向を径方向の外側に向けて開くV字の姿勢で配置されている、[1]から[4]までのいずれか1に記載のロータ。
[6]
磁石収容部40は、回転軸方向の端部側(すなわちコア端面11a)から視たときに、略矩形形状の開口部45を有しており、
複数の磁石収容部40は、一対の磁石収容部40(41、42)からなる収容部セット140を複数備え、
一対の磁石収容部40の開口部45は、互いの矩形形状の長手方向を前記径方向の外側に向けて開くV字に設けられている、[5]に記載のロータ10。
[7]
第1の樹脂硬化物および第2の樹脂硬化物の前記樹脂組成物は、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂からなる群より選択される1種または2種の熱硬化性樹脂からなる、[1]から[6]までのいずれか1に記載のロータ10。
[8]
ロータコア11の回転軸線方向の端部(すなわちコア端面11a)に、金属製プレートを更に有する、[1]から[7]までのいずれか1に記載のロータ10。
[9]
回転軸線を中心に回転するロータコア11と、ロータコア11に設けられた回転軸方向に延在する複数の永久磁石90と、ロータコア11に設けられた複数の永久磁石90をそれぞれ収容する複数の磁石収容部40と、を有するロータ10の製造方法であって、
前記ロータ10は、前記ロータコア11の回転軸線方向の端部に設けられた第1の樹脂硬化物のエンドプレート50を有し、
前記磁石収容部40は、前記永久磁石90が収容される第1の空孔部41と、第1の空孔部41と一体に回転軸方向に延在し、内部に第2の樹脂硬化物となる樹脂組成物が充填される第2の空孔部42と、を有し、
エンドプレート50が形成されるエンドプレート形成領域に対して、第1の樹脂硬化物となる樹脂組成物を充填する第1の工程と、
第1の空孔部41に永久磁石が収容された状態で、第2の空孔部42に第2の樹脂硬化物樹脂となる樹脂組成物を充填する第2の工程と、
を有し、
第2の工程において第2の空孔部42に充填される樹脂は、第1の工程において前記エンドプレート形成領域から流れ出た樹脂組成物である、ロータ10の製造方法。
[10]
エンドプレート形成領域を有する金型は、第2の空孔部42ごとに対応して、樹脂組成物を充填するゲート120を備える、[9]に記載のロータ10の製造方法。
[11]
ゲート120は、磁石収容部40よりも回転軸側に設けられている、[10]に記載のロータ10の製造方法。
[12]
樹脂組成物のスパイラルフローが50cm以上150cm以下である、[9]から[11]までのいずれか1に記載のロータ10の製造方法。
[13]
樹脂組成物のゲルタイムが30秒以上90秒以下である、[9]から[12]までのいずれか1に記載のロータ10の製造方法。
【0049】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
例えば、エンドプレート50は1つの構成要素からなってもよいし、複数の構成要素からなってもよい。より具体的には、例えば、半月状に2分割された形状や、4分割した形状、永久磁石90毎にそれぞれ1つとした構成など各種の形状を採用することができる。
図12にエンドプレート50の変形例を示す。
図12(a)のロータ10Aは、一対の永久磁石90毎に合計8箇所に三角形状のエンドプレート50A(図中で墨塗りで表記)が設けられている。この場合であっても、エンドプレート50Aは、永久磁石90および磁石収容部40を完全に覆っている。
図12(b)は、上述の実施形態同様に、全ての磁石収容部40および永久磁石90に共通に1つの環状のエンドプレート50B(図中で墨塗りで表記)が設けられている。ただし、環状の形状が永久磁石90等の配置に沿ったものではなく、環状の外縁および内縁が円形(真円)としている。
【実施例0050】
以下、本実施形態を、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0051】
<樹脂材料の実施例>
エンドプレートに好適な樹脂組成物を評価するために実施例1~4の材料について評価した。
表1中の各成分の詳細は下記のとおりである。また、表1中に示す処方は、樹脂組成物全体に対する各成分の配合割合(質量部)を示している。
【0052】
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、製品名「EPICRON N-670」)
・エポキシ樹脂2:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、製品名「EPICRON N-685」)
・エポキシ樹脂3:トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、製品名「jER 1032H60」)
【0053】
(硬化剤)
・フェノール樹脂系硬化剤1:ノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製、製品名「スミライトレジンPR-51470」)
・フェノール樹脂系硬化剤2:トリスフェニルメタン型フェノールノボラック樹脂(明和化成株式会社製、製品名「MEH-7500」)
【0054】
(無機充填材)
・無機充填材1:溶融球状シリカ(デンカ株式会社製、製品名「FB-950」)
・無機充填材2:溶融球状シリカ(デンカ株式会社製、製品名「FB-105」)
・無機充填材3:溶融破壊シリカ(フミテック株式会社製、製品名「FMT-15C」)
・無機充填材4:ガラス繊維(日東紡績社製、製品名「CS3E479」)
【0055】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:テトラフェニルホスフォニウム2,3-ジヒドロキシナフタレート
・硬化促進剤2:テトラフェニルホスフォニウム4,4-スルフォニルジフェノラート
・硬化促進剤3:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成株式会社製)
【0056】
(ワックス)
・ワックス1:カルナバワックス(東亞合成社製、製品名「TOWAX-132」、融点:83℃)
・ワックス2:ステアリン酸(日油社製、製品名「SR-サクラ」、融点:60℃)
・ワックス3:ジエタノールアミン・ジモンタン酸エステル(伊藤製油社製、製品名「ITOHWAX TP NC-133」、融点:78℃)
【0057】
(添加剤)
・シランカップリング剤1:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製、製品名「CF-4083」)
・シランカップリング剤2:γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、製品名「KBM-403」)
・カーボンブラック:カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製、製品名「カーボン#5」)
・低応力剤1:シリコーンゴム(東レ・ダウコーニング株式会社製、製品名「CF-2152」)
・低応力剤2:シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製、製品名「FZ-3730」)
【0058】
【表1】
実施例1~4の材料のいずれにおいても、樹脂製のエンドプレートとして用いることができることが確認できた。
【0059】
<エンドプレートおよび永久磁石とロータコアの磁石収容部への樹脂充填の確認>
実施形態で示したロータコアにエンドプレートを実際に成形してエンドプレートと磁石収容部への樹脂充填の状態を確認した。
【0060】
成形条件は次の通りであった。
・モールド樹脂:EME-XMS201(120℃硬化材)。表2に組成および特性を示す。
・ロータコア:外形φ130mm 長さ75mm 鋼板は接着剤で積層接着した。
・ダミー磁石:永久磁石の代わりダミー磁石 S45C材(面取りC0.2)を用いた。
・プレス(トランスファー成形機):山城精機プレス(30t)
・成形:120℃10min
・樹脂注入条件:5MPa、15sec
・型締め圧:9.1MPa(実効値)
手順は次の通りであった。
まず、金型にロータコアをセットして、プレスにセットした。つづいて、コア表面温度が120℃付近になったら、成形を行った。
樹脂充填の状態を確認したところ、エンドプレートと磁石収容部への樹脂充填の状態が適正であることが確認できた。樹脂充填の状態を確認方法としては、超音波映像装置(日立建機ファインテック社製、Fine SAT FS300)を用いて、エンドプレートと磁石収容部の樹脂組成物におけるボイド(未充填部分)の有無を確認した。エンドプレートと磁石収容部の樹脂組成物中にはボイドが存在しておらず、成形時に未充填部分を発生させることなく、樹脂組成物を所望の領域に完全充填できたことが確認された。
【0061】
【0062】
<構造応力シミュレーション>
エンドプレートを樹脂製とした場合の構造応力シミュレーションを行った。具体的には、項目(1)「ロータエンドプレート樹脂化構造応力シミュレーション」、項目(2)「磁石固定樹脂によるロータブリッジ部への応力解析」および項目(3)「高速回転及び高温での応力解析」の3項目について評価を行った。
【0063】
(シミュレーションソフトウェア、解析条件および物性値)
シミュレーションには、ANSYS社製構造解析ソフトウェア「ANSYS Mechanical」を用いた。実施形態で示したエンドプレートを有するロータコアについて、ロータコア全体と樹脂部(実施形態の第1の樹脂硬化物51、第2の樹脂硬化物52に相当する部分)について、応力分布を算出した。
シミュレーションの解析条件は次の通りであった。
・回転数: 20000rpm、40000rpm
・温度: 常温(25℃)、120℃
・接着面: 全周封止、2面接着、なし
・樹脂種: 封止樹脂(EMEのみ)
接着面の「全周封止」とは、上述の実施形態で、永久磁石90と第1の空孔部41の壁面との間の空間と第2の空孔部42とを第2の樹脂硬化物52で充填し、磁石収容部40に収容された永久磁石90を封止した状態をいう。接着面の「2面接着」とは、上述の実施形態において、永久磁石90と第1の空孔部41の壁面との間の空間に第2の樹脂硬化物52を充填し、第2の空孔部42には第2の樹脂硬化物52を充填していない状態をいう。接着面の「なし」とは、上述の実施形態において第2の樹脂硬化物52が設けられていない状態をいう。
シミュレーションに用いた物性値は以下の通りであった。
・電磁鋼板
密度 8030[kg/m3]
ヤング率 119.7[GPa]
ポアソン比 0.34
・磁石
密度 7500[kg/m3]
ヤング率 116.7[GPa]
ポアソン比 0.3
・封止樹脂
密度 1860[kg/m3]
ヤング率 19.735[GPa]
ポアソン比 0.3
【0064】
シミュレーションにより次のような評価結果(項目(1)~(3))が得られた。
【0065】
項目(1)「ロータエンドプレート樹脂化構造応力シミュレーション」
樹脂部の最大応力は樹脂強度に対して十分に余裕があることが確認できた。
【0066】
項目(2)「磁石固定樹脂によるロータブリッジ部への応力解析」
ここでは、上述の第2の空孔部42とロータコア外周面との間の領域(ロータブリッジ部)に作用する応力分布を評価した。
全周封止することで所望の応力低減効果が実現できることが確認できた。
例えば、回転数20000rpm、常温、全周封止の条件の場合、ロータブリッジ部の応力は60MPa以下であった。2面封止の場合では90MPa程度、無しの場合では270MPa程度の応力となった。
【0067】
項目(3)「高速回転及び高温での応力解析」
ここでは、全周封止した場合における(a)「回転数20000rpm 常温」、(b)「回転数40000rpm 常温」、(c)「回転数20000rpm 120℃」の3条件について評価した。
いずれの場合であっても、応力低減効果が実現できることが確認できた。例えば、回転数20000rpmの場合であれば、常温(条件(a))および120℃(条件(c))のいずれの場合であっても、ブリッジ部の応力は60MPa以下であった。また、条件(b)「高速回転40000rpm 常温」の場合であっても、ブリッジ部の応力は120MPa以下であった。