(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019206
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】熱利用システム
(51)【国際特許分類】
F22B 1/16 20060101AFI20240201BHJP
F01K 27/02 20060101ALI20240201BHJP
F23G 5/46 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
F22B1/16 Z
F01K27/02 D
F23G5/46 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023198396
(22)【出願日】2023-11-22
(62)【分割の表示】P 2019213183の分割
【原出願日】2019-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 修史
(72)【発明者】
【氏名】尾家 俊康
(72)【発明者】
【氏名】迫田 健吾
(57)【要約】
【課題】熱源流体が有する熱エネルギーが少ない場合でも熱利用設備を起動させることが可能な熱利用システムを提供する。
【解決手段】熱利用システムは、熱源流路と、熱源流路から流入する熱源流体から熱媒体へ放熱させる熱交換器と、熱交換器で熱媒体が回収した熱を利用する熱利用設備と、前記熱交換器と前記熱利用設備とを接続する循環流路と、循環流路を通じて前記熱交換器と前記熱利用設備との間で熱媒体を循環させる循環ポンプと、循環流路を流通する前記熱媒体を加熱する加熱機構と、循環流路に接続された膨張タンクと、熱利用設備の起動中に、加熱機構を制御して循環流路を通じて熱交換器と熱利用設備との間を循環する前記熱媒体を加熱する制御部とを備え、加熱機構は、前記循環流路における前記熱交換器の熱媒体の出口側の流路部分に配置又は接続され、前記膨張タンクは、前記循環流路における前記加熱機構よりも下流側の部位に接続されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源流体が流通する熱源流路と、
前記熱源流路から流入する前記熱源流体から熱媒体へ放熱させる第1熱交換器と、
前記第1熱交換器で前記熱媒体が前記熱源流体から回収した熱を利用する熱利用設備と、
前記熱媒体が流通する流路であって、前記第1熱交換器と前記熱利用設備とを接続する循環流路と、
前記循環流路を通じて前記第1熱交換器と前記熱利用設備との間で前記熱媒体を循環させる循環ポンプと、
前記循環流路を流通する前記熱媒体を加熱する加熱機構と、
前記循環流路に接続された膨張タンクと、
前記加熱機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記熱利用設備の起動中に、前記循環ポンプを起動して前記熱媒体を前記循環流路に流通させ、且つ前記加熱機構を制御して前記循環流路を通じて前記第1熱交換器と前記熱利用設備との間を循環する前記熱媒体を加熱するように構成され、
前記加熱機構は、前記循環流路における前記第1熱交換器の熱媒体の出口側の流路部分に配置又は接続され、
前記膨張タンクは、前記循環流路における前記加熱機構よりも下流側の部位に接続されている、熱利用システム。
【請求項2】
熱源流体が流通する熱源流路と、
前記熱源流路から流入する前記熱源流体から熱媒体へ放熱させる第1熱交換器と、
前記第1熱交換器で前記熱媒体が前記熱源流体から回収した熱を利用する熱利用設備と、
前記熱媒体が流通する流路であって、前記第1熱交換器と前記熱利用設備とを接続する循環流路と、
前記循環流路を通じて前記第1熱交換器と前記熱利用設備との間で前記熱媒体を循環させる循環ポンプと、
前記循環流路を流通する前記熱媒体を加熱する加熱機構と、
前記循環流路に接続された膨張タンクと、
前記加熱機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記熱利用設備の起動中に、前記循環ポンプを起動して前記熱媒体を前記循環流路に流通させ、且つ前記加熱機構を制御して前記循環流路を通じて前記第1熱交換器と前記熱利用設備との間を循環する前記熱媒体を加熱するように構成され、
前記加熱機構は、前記循環流路における前記第1熱交換器の熱媒体の入口側の流路部分に接続された両端を有するタンク用流路と、該タンク用流路に配置され、前記熱源流体により加熱された熱媒体を貯留するバッファタンクとを有していて、該バッファタンク内に貯留された熱媒体を前記循環流路に供給することで当該循環流路内を流通する熱媒体を加熱するように構成され、
前記膨張タンクは、前記循環流路における前記第1熱交換器の熱媒体の出口側の流路部分に接続されている、熱利用システム。
【請求項3】
前記加熱機構は、前記循環流路における前記第1熱交換器の熱媒体の出口側の前記流路部分に配置された電気ヒータにより構成されている、請求項1記載の熱利用システム。
【請求項4】
前記加熱機構は、前記循環流路における前記第1熱交換器の熱媒体の出口側の前記流路部分に接続された両端を有する加熱用流路と、前記加熱用流路に配置され、該加熱用流路を流通する熱媒体と該熱媒体よりも高温の加熱媒体との間で熱交換を行う第2熱交換器とを含んで構成されている、請求項1記載の熱利用システム。
【請求項5】
前記膨張タンクは密閉型の膨張タンクである、請求項1から4のいずれか1つに記載の熱利用システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記熱利用設備の起動完了後は、前記加熱機構を停止状態とするように構成されている、請求項1から5のいずれか1つに記載の熱利用システム。
【請求項7】
前記熱源流路から前記第1熱交換器への前記熱源流体の流入及びその停止を切り替える熱源流体切替部をさらに備え、
前記制御部は、前記熱利用設備の起動中に、前記熱源流体切替部を制御して前記熱源流路から前記第1熱交換器へ前記熱源流体を流入させる、請求項6に記載の熱利用システム。
【請求項8】
前記熱利用設備を迂回するように前記循環流路に接続されたバイパス流路と、
前記循環流路から前記バイパス流路への前記熱媒体の流入及びその停止を切り替える熱媒体切替部と、
前記循環流路を流通する前記熱媒体の温度を検知する温度検知部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記熱利用設備の起動中に、
前記熱源流体切替部を制御して前記熱源流路から前記第1熱交換器へ前記熱源流体を流入させると共に、前記循環ポンプを起動して前記循環流路及び前記バイパス流路に前記熱媒体を流通させる第1運転と、
前記第1運転において前記温度検知部による検知温度が第1設定温度以上になった時に、前記熱媒体切替部を制御して前記熱利用設備への前記熱媒体の流入を許容し、前記循環流路を通じて前記第1熱交換器と前記熱利用設備との間で前記熱媒体を循環させる第2運転と、
前記第2運転において前記温度検知部による検知温度が前記第1設定温度よりも低い第2設定温度未満になった時に、前記加熱機構を作動させる第3運転と、を実行するように構成されている、請求項7に記載の熱利用システム。
【請求項9】
前記循環流路には、当該循環流路を流通する熱媒体が保有する熱を前記熱利用設備に向けて伝達する熱伝達器が設けられ、
前記加熱機構及び前記膨張タンクは、前記循環流路における前記第1熱交換器よりも下流側で且つ前記熱伝達器よりも上流側に配置されている、請求項1、3又は4記載の熱利用システム。
【請求項10】
前記循環流路には、当該循環流路を流通する熱媒体が保有する熱を前記熱利用設備に向けて伝達する熱伝達器が設けられ、
前記加熱機構は、前記循環流路における前記熱伝達器よりも下流側で且つ前記第1熱交換器よりも上流側に配置され、
前記膨張タンクは、前記循環流路における前記第1熱交換器よりも下流側で且つ前記熱伝達器よりも上流側に配置されている、請求項2記載の熱利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、下水汚泥等を焼却する焼却炉より排出される高温の排ガスから熱を回収して利用する熱利用システムが知られている。このような熱利用システムは、排ガスが有する熱エネルギーの有効利用の観点から望ましく、近年注目を集めている技術である。
【0003】
特許文献1に記載された熱利用システムは、焼却炉から排出された排ガスの熱により白煙防止空気を加熱する白煙防止器と、加熱された白煙防止空気を煙突まで導く流路上に配置された熱回収用ボイラと、熱回収用ボイラの前後に配置された一対のダンパと、熱回収用ボイラを迂回するバイパスラインと、を備えている。この熱利用システムによれば、熱回収用ボイラにおいて、白煙防止空気を熱源として蒸気を発生させることができる。そして、発生した蒸気は、所定の利用先に送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された熱利用システムでは、その起動時において、蒸気の利用先の設備(熱利用設備)の起動に必要な熱エネルギーが、当該熱利用設備の定常運転に必要な熱エネルギーよりも大きい場合がある。このため、焼却炉の規模が小さい廃棄物処理設備等、熱源流体が有する熱エネルギーが限られている場合には、熱エネルギーが不足し、熱利用設備を起動させることができない状況に陥る。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱源流体が有する熱エネルギーが少ない場合であっても、熱利用設備を起動させることが可能な熱利用システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る熱利用システムは、熱源流体が流通する熱源流路と、前記熱源流路から流入する前記熱源流体から熱媒体へ放熱させる第1熱交換器と、前記第1熱交換器で前記熱媒体が前記熱源流体から回収した熱を利用する熱利用設備と、前記熱媒体が流通する流路であって、前記第1熱交換器と前記熱利用設備とを接続する循環流路と、前記循環流路を通じて前記第1熱交換器と前記熱利用設備との間で前記熱媒体を循環させる循環ポンプと、前記循環流路を流通する前記熱媒体を加熱する加熱機構と、前記循環流路に接続された膨張タンクと、前記加熱機構を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記熱利用設備の起動中に、前記循環ポンプを起動して前記熱媒体を前記循環流路に流通させ、且つ前記加熱機構を制御して前記循環流路を通じて前記第1熱交換器と前記熱利用設備との間を循環する前記熱媒体を加熱するように構成され、前記加熱機構は、前記循環流路における前記第1熱交換器の熱媒体の出口側の流路部分に配置又は接続され、前記膨張タンクは、前記循環流路における前記加熱機構よりも下流側の部位に接続されている。
【0008】
第2の発明に係る熱利用システムは、熱源流体が流通する熱源流路と、前記熱源流路から流入する前記熱源流体から熱媒体へ放熱させる第1熱交換器と、前記第1熱交換器で前記熱媒体が前記熱源流体から回収した熱を利用する熱利用設備と、前記熱媒体が流通する流路であって、前記第1熱交換器と前記熱利用設備とを接続する循環流路と、前記循環流路を通じて前記第1熱交換器と前記熱利用設備との間で前記熱媒体を循環させる循環ポンプと、前記循環流路を流通する前記熱媒体を加熱する加熱機構と、前記循環流路に接続された膨張タンクと、前記加熱機構を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記熱利用設備の起動中に、前記循環ポンプを起動して前記熱媒体を前記循環流路に流通させ、且つ前記加熱機構を制御して前記循環流路を通じて前記第1熱交換器と前記熱利用設備との間を循環する前記熱媒体を加熱するように構成され、前記加熱機構は、前記循環流路における前記第1熱交換器の熱媒体の入口側の流路部分に接続された両端を有するタンク用流路と、該タンク用流路に配置され、前記熱源流体により加熱された熱媒体を貯留するバッファタンクとを有していて、該バッファタンク内に貯留された熱媒体を前記循環流路に供給することで当該循環流路内を流通する熱媒体を加熱するように構成され、前記膨張タンクは、前記循環流路における前記第1熱交換器の熱媒体の出口側の流路部分に接続されている。
【0009】
これらの熱利用システムによれば、熱利用設備の起動中に、熱源流体により熱媒体を加熱すると共に、さらに、加熱機構により熱媒体を加熱することができる。このため、当該起動中に循環流路を通じて第1熱交換器と熱利用設備との間を循環する熱媒体が熱源流体から回収する熱エネルギーが少なく、熱利用設備の起動に必要なエネルギーに及ばない場合であっても、その不足分の熱エネルギーを加熱機構により補うことができる。したがって、本発明の熱利用システムによれば、熱源流体が有する熱エネルギーが少ない場合であっても、熱利用設備を起動させることが可能になる。
【0010】
第3の発明では、第1の発明において、前記加熱機構は、前記循環流路における前記第1熱交換器の熱媒体の出口側の前記流路部分に配置された電気ヒータにより構成されていてもよい。
【0011】
第4の発明では、第1の発明において、前記加熱機構は、前記循環流路における前記第1熱交換器の熱媒体の出口側の前記流路部分に接続された両端を有する加熱用流路と、前記加熱用流路に配置され、該加熱用流路を流通する熱媒体と該熱媒体よりも高温の加熱媒体との間で熱交換を行う第2熱交換器とを含んで構成されていてもよい。
【0012】
第5の発明では、第1~第4のいずれか1つの発明において、前記膨張タンクは密閉型の膨張タンクであってもよい。
【0013】
第6の発明では、第1から第5のいずれか1つの発明において、前記制御部は、前記熱利用設備の起動完了後は、前記加熱機構を停止状態とするように構成されていてもよい。
【0014】
第7の発明では、第6の発明において、前記熱源流路から前記第1熱交換器への前記熱源流体の流入及びその停止を切り替える熱源流体切替部をさらに備えていてもよい。前記制御部は、前記熱利用設備の起動中に、前記熱源流体切替部を制御して前記熱源流路から前記第1熱交換器へ前記熱源流体を流入させてもよい。
【0015】
この構成によれば、熱利用設備の停止中に第1熱交換器への熱源流体の流入を停止することができるため、当該停止中に熱媒体が熱源流体によって加熱されて循環流路から噴き出すのを抑制することができる。
【0016】
第8の発明では、第7の発明において、前記熱利用設備を迂回するように前記循環流路に接続されたバイパス流路と、前記循環流路から前記バイパス流路への前記熱媒体の流入及びその停止を切り替える熱媒体切替部と、前記循環流路を流通する前記熱媒体の温度を検知する温度検知部と、をさらに備えていてもよい。前記制御部は、前記熱利用設備の起動中に、前記熱源流体切替部を制御して前記熱源流路から前記第1熱交換器へ前記熱源流体を流入させると共に、前記循環ポンプを起動して前記循環流路及び前記バイパス流路に前記熱媒体を流通させる第1運転と、前記第1運転において前記温度検知部による検知温度が第1設定温度以上になった時に、前記熱媒体切替部を制御して前記熱利用設備への前記熱媒体の流入を許容し、前記循環流路を通じて前記第1熱交換器と前記熱利用設備との間で前記熱媒体を循環させる第2運転と、前記第2運転において前記温度検知部による検知温度が前記第1設定温度よりも低い第2設定温度未満になった時に、前記加熱機構を作動させる第3運転と、を実行するように構成されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、熱利用設備の起動中に加熱機構を常時作動させる場合に比べて、加熱機構への負荷を軽減することができる。
【0018】
第9の発明では、第1、第3、又は第4の発明において、前記循環流路には、当該循環流路を流通する熱媒体が保有する熱を前記熱利用設備に向けて伝達する熱伝達器が設けられ、前記加熱機構及び前記膨張タンクは、前記循環流路における前記第1熱交換器よりも下流側で且つ前記熱伝達器よりも上流側に配置されていてもよい。
【0019】
第10の発明では、第2の発明において、前記循環流路には、当該循環流路を流通する熱媒体が保有する熱を前記熱利用設備に向けて伝達する熱伝達器が設けられ、前記加熱機構は、前記循環流路における前記熱伝達器よりも下流側で且つ前記第1熱交換器よりも上流側に配置され、前記膨張タンクは、前記循環流路における前記第1熱交換器よりも下流側で且つ前記熱伝達器よりも上流側に配置されていてもよい。
【0020】
なお、上記熱利用システムにおいて、前記加熱機構は、ヒータにより構成されていてもよい。前記加熱機構は、前記循環流路のうち前記第1熱交換器から前記熱利用設備へ向かって前記熱媒体が流通する部位に配置されていてもよい。
【0021】
この構成によれば、ヒータを用いることにより簡便な構成で熱媒体を加熱可能になると共に、加熱機構が循環流路のうち熱利用設備から第1熱交換器へ向かって熱媒体が流通する部位に配置される場合に比べて、多量の熱エネルギーを熱利用設備へ供給可能となる。
【0022】
なお、上記熱利用システムの起動方法として以下の起動方法が提案される。この熱利用システムは、熱源流体が流通する熱源流路と、前記熱源流路から流入する前記熱源流体から熱媒体へ放熱させる第1熱交換器と、前記第1熱交換器で前記熱媒体が前記熱源流体から回収した熱を利用する熱利用設備と、前記熱媒体が流通する流路であって、前記第1熱交換器と前記熱利用設備とを接続する循環流路と、前記循環流路を通じて前記第1熱交換器と前記熱利用設備との間で前記熱媒体を循環させる循環ポンプと、前記循環流路を流通する前記熱媒体を加熱する加熱機構と、を備えている。前記熱利用システムの起動方法では、前記熱利用設備の起動中に、前記熱源流路から前記第1熱交換器へ前記熱源流体を流入させると共に前記循環ポンプにより前記熱媒体を前記循環流路に流通させ、且つ前記循環流路を通じて前記第1熱交換器と前記熱利用設備との間を循環する前記熱媒体を前記加熱機構により加熱し、前記熱利用設備の起動完了後は、前記加熱機構を停止状態とする。
【0023】
この方法によれば、熱利用設備の起動中に、熱源流体により熱媒体を加熱すると共に、さらに、加熱機構により熱媒体を加熱することができる。このため、当該起動中に循環流路を通じて第1熱交換器と熱利用設備との間を循環する熱媒体が熱源流体から回収する熱エネルギーが少なく、熱利用設備の起動に必要なエネルギーに及ばない場合であっても、その不足分の熱エネルギーを加熱機構により補うことができる。したがって、本発明の熱利用システムの起動方法によれば、熱源流体が有する熱エネルギーが少ない場合であっても、熱利用設備を起動させることが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、熱源流体が有する熱エネルギーが少ない場合であっても、熱利用設備を起動させることが可能な熱利用システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態1における廃棄物処理設備の構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る熱利用システムの構成を模式的に示す図である。
【
図3】上記熱利用システムにおける制御部の各機能を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る熱利用システムの起動方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態2に係る熱利用システムの構成を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係る熱利用システムの起動方法を説明するためのフローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態3に係る熱利用システムの構成を模式的に示す図である。
【
図8】本発明の実施形態3に係る熱利用システムの起動方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る熱利用システム及びその起動方法を詳細に説明する。
【0027】
(実施形態1)
<廃棄物処理設備>
まず、本発明の実施形態1に係る熱利用システム1が適用される廃棄物処理設備100の構成を、
図1に基づいて説明する。
図1は、廃棄物処理設備100の全体構成を模式的に示している。廃棄物処理設備100は、例えば下水汚泥等の廃棄物を焼却処理する設備であり、焼却炉2と、空気予熱器3と、白煙防止予熱器4と、ガス冷却器5と、バグフィルタ6と、排煙処理塔7と、煙突8と、熱利用システム1と、を主に備えている。
【0028】
図1に示すように、廃棄物処理設備100では、焼却炉2から排出される排ガスG1を煙突8まで導くための排ガス流路9が設けられている。当該排ガス流路9上において、空気予熱器3、白煙防止予熱器4、ガス冷却器5、バグフィルタ6及び排煙処理塔7が、排ガスG1の流れ方向の上流から下流に向かって順に配置されている。
【0029】
焼却炉2は、下水汚泥等の廃棄物を焼却処理するものであり、例えば流動床式焼却炉である。
図1に示すように、焼却炉2の底部には空気流路82の下流端が接続されており、当該空気流路82を通じて燃焼用空気A1が焼却炉2内に供給される。焼却炉2で廃棄物の焼却時に発生し、炉外へ排出された排ガスG1は、排ガス流路9を通じて空気予熱器3へ向かって流れる。
【0030】
空気予熱器3は、排ガスG1と燃焼用空気A1との間で熱交換を行う熱交換器である。具体的には、ブロワ81により圧送された燃焼用空気A1が空気予熱器3内へ導入され、当該空気予熱器3において高温の排ガスG1により加熱される。そして、加熱された燃焼用空気A1は、上述の通り空気流路82を通じて焼却炉2内へ導かれる。一方、燃焼用空気A1との熱交換により温度が下がった排ガスG1は、空気予熱器3から排出された後、排ガス流路9を通じて白煙防止予熱器4へ向かって流れる。
【0031】
白煙防止予熱器4は、白煙防止空気A2を排ガスG1の熱により加熱するための熱交換器である。具体的には、白煙防止ファン83により圧送された白煙防止空気A2は、白煙防止予熱器4において排ガスG1と熱交換することにより加熱される。白煙防止予熱器4で加熱された後の白煙防止空気A2の温度は、例えば400℃程度である。
【0032】
加熱された白煙防止空気A2は、白煙防止予熱器4から排出された後、熱利用システム1を通過して煙突8まで導かれる。後に詳述する通り、熱利用システム1では、排ガスG1により加熱された白煙防止空気A2の熱を回収して有効に利用することができる。一方、白煙防止空気A2との熱交換により温度がさらに下がった排ガスG1は、白煙防止予熱器4から排出された後、排ガス流路9を通じてガス冷却器5に導入される。
【0033】
排ガスG1は、ガス冷却器5で冷却された後、バグフィルタ6を通過することによりダスト等が除去される。その後、排ガスG1は、排煙処理塔7でSOx等が除去された後、煙突8から大気中に放出される。
図1に示すように、白煙防止予熱器4で加熱された白煙防止空気A2は、熱利用システム1を通過した後、煙突8において排ガスG1に合流する。これにより、白煙防止空気A2の熱で排ガスG1が加温され、排ガスG1に含まれる水蒸気の凝縮を抑制することにより、白煙の発生が防止される。
【0034】
<熱利用システム>
次に、本実施形態に係る熱利用システム1の構成を、
図1~
図3に基づいて説明する。熱利用システム1は、白煙防止予熱器4(
図1)で排ガスG1により加熱された白煙防止空気A2から熱回収して利用するシステムである。
図2に示すように、熱利用システム1は、熱源流路10と、熱交換器20(第1熱交換器に相当)と、熱源流体切替部30と、熱媒体循環流路40と、循環ポンプ43と、加熱機構50と、温度検知部51と、熱利用設備60と、を主に備えている。以下、これらの構成要素をそれぞれ説明する。本実施形態では、白煙防止予熱器4で排ガスG1により加熱された後、当該白煙防止予熱器4から流出した白煙防止空気A2を「熱源流体」の一例として説明する。但し、熱源流体はこれに限定されない。
【0035】
熱源流路10は、熱源流体が流通する配管からなり、上流端が白煙防止予熱器4の出口に接続されていると共に、下流端が煙突8に接続されている(
図1)。より具体的には、熱源流路10は、白煙防止予熱器4から流出した白煙防止空気A2を熱交換器20の入口まで導く上流側熱源流路11と、熱交換器20の出口から流出した白煙防止空気A2を煙突8まで導く下流側熱源流路12と、を有している。これにより、白煙防止予熱器4から排出された白煙防止空気A2が、熱交換器20を通過した後に煙突8まで導かれる。
【0036】
熱交換器20は、熱源流路10(上流側熱源流路11)から流入する熱源流体から熱媒体H1へ放熱させるものである。
図2に示すように、熱交換器20は、熱源流体が流通する高温側流路22と、熱媒体H1が流通する低温側流路21とを有し、各流路を流れる熱源流体と熱媒体H1との間で熱交換を行う。これにより、熱媒体H1が熱源流体から熱回収し、加熱される。熱媒体H1は、例えば水や有機溶媒等の液状媒体である。
【0037】
熱源流体切替部30は、熱源流路10(上流側熱源流路11)から熱交換器20(高温側流路22)への熱源流体の流入及びその停止を切り替えるものである。
図2に示すように、本実施形態における熱源流体切替部30は、熱源流体バイパス流路31と、上流弁32と、下流弁33と、バイパス弁34と、を有している。
【0038】
熱源流体バイパス流路31は、熱交換器20を迂回するように熱源流路10に接続されている。具体的には、熱源流体バイパス流路31の上流端は上流側熱源流路11に接続されており、熱源流体バイパス流路31の下流端は下流側熱源流路12に接続されている。バイパス弁34は熱源流体バイパス流路31に配置されており、当該バイパス弁34の開閉を切り替えることにより、上流側熱源流路11から熱源流体バイパス流路31への熱源流体の流入及びその停止が切り替わる。
【0039】
上流弁32は、熱源流体の流通及びその停止を切り替える弁であり、
図2に示すように、上流側熱源流路11のうち熱源流体バイパス流路31の上流端が接続される部位よりも熱交換器20側に配置されている。下流弁33は、上流弁32と同様に熱源流体の流通及びその停止を切り替える弁であり、下流側熱源流路12のうち熱源流体バイパス流路31の下流端が接続される部位よりも熱交換器20側に配置されている。つまり、上流弁32及び下流弁33は、熱源流路10において熱交換器20の前後にそれぞれ配置されている。
【0040】
本実施形態における上流弁32、下流弁33及びバイパス弁34は、それぞれバタフライ弁である。熱源流体切替部30によれば、上流弁32及び下流弁33を開くと共にバイパス弁34を閉じることにより熱交換器20への熱源流体の流入を許容し、一方で上流弁32及び下流弁33を閉じると共にバイパス弁34を開くことにより、熱交換器20への熱源流体の流入を停止すると共に熱源流体バイパス流路31へ熱源流体を流入させることができる。
【0041】
熱媒体循環流路40は、熱媒体H1が流通する流路であり、熱交換器20(低温側流路21)と熱利用設備60とを接続している。
図2に示すように、熱媒体循環流路40は、熱交換器20における低温側流路21の出口21Aと熱利用設備60における熱媒体H1の入口60Aとを接続する第1循環流路41と、熱利用設備60における熱媒体H1の出口60Bと熱交換器20における低温側流路21の入口21Bとを接続する第2循環流路42と、を有している。熱媒体H1は、第1循環流路41を介して熱交換器20から熱利用設備60へ向かって流れ、且つ第2循環流路42を介して熱利用設備60から熱交換器20へ向かって流れることにより、熱交換器20と熱利用設備60との間で循環する。本実施形態では、熱交換器20で100℃以上の温度まで加熱された水(熱媒体H1)を液状態のまま循環させるため、熱媒体循環流路40内を加圧する加圧機構(図示しない)が別途設けられている。
【0042】
図2に示すように、第1循環流路41には、加熱機構50、膨張タンク44及び温度検知部51が、熱媒体H1の流れ方向の上流から下流に向かって順に配置されている。また第2循環流路42には、循環ポンプ43が配置されている。当該循環ポンプ43を作動させることにより、熱媒体H1が熱媒体循環流路40を通じて熱交換器20と熱利用設備60との間で循環する。
【0043】
加熱機構50は、熱媒体循環流路40を流通する熱媒体H1を加熱するものである。本実施形態における加熱機構50は、電気ヒータにより構成されており、熱媒体循環流路40のうち熱交換器20から蒸発器61(熱伝達器に相当)へ向かって熱媒体H1が流通する部位に配置されている。より具体的には、加熱機構50は、第1循環流路41のうち熱交換器20の出口21Aと膨張タンク44との間に設けられている。温度検知部51は、熱媒体循環流路40を流通する熱媒体H1の温度を検知するセンサであり、検知温度に応じた信号を出力する。
【0044】
熱利用システム1は、熱利用設備60を迂回するように熱媒体循環流路40に接続された熱媒体バイパス流路53と、熱媒体循環流路40(第1循環流路41)から熱媒体バイパス流路53への熱媒体H1の流入及びその停止を切り替える熱媒体切替部52と、をさらに備えている。本実施形態における熱媒体切替部52は、三方弁により構成されており、第1循環流路41のうち温度検知部51よりも下流側(熱利用設備60側)に配置されている。より具体的には、熱媒体切替部52は、1つの入口ポート52Aと、2つの出口ポート52B,52Cとを有し、入口ポート52A及び一方の出口ポート52Cが第1循環流路41に接続されていると共に、他方の出口ポート52Bが熱媒体バイパス流路53に接続されている。熱媒体切替部52は、入口ポート52Aと一方の出口ポート52Cとが連通する状態(熱媒体H1が熱媒体バイパス流路53へ流入せずに熱利用設備60へ流入する状態)と、入口ポート52Aと他方の出口ポート52Bとが連通する状態(熱媒体H1が熱利用設備60へ流入せずに熱媒体バイパス流路53へ流入する状態)とを切り替える。
図2に示すように、熱媒体バイパス流路53は、一端(上流端)が上記三方弁における他方の出口ポート52Bに接続されていると共に、他端(下流端)が第2循環流路42のうち循環ポンプ43よりも上流側(熱利用設備60側)の部位に接続されている。
【0045】
熱利用設備60は、熱交換器20で熱媒体H1が熱源流体から回収した熱を利用する設備であり、本実施形態ではバイナリー発電装置である。すなわち、熱利用設備60は、熱媒体H1が熱源流体から回収した熱エネルギーを利用して電気エネルギーを生成する設備であり、低沸点の冷媒である作動媒体W1が循環する作動媒体循環流路62と、当該作動媒体循環流路62上に配置された作動媒体ポンプ66、蒸発器61、膨張機63、発電機64及び凝縮器65と、を有している。作動媒体ポンプ66、蒸発器61、膨張機63及び凝縮器65は、作動媒体W1の流れ方向においてこの順に配置されている。
【0046】
作動媒体W1は、作動媒体ポンプ66により加圧され、蒸発器61に向かって送り出される。蒸発器61は、熱媒体H1が流通する高温側流路61Aと、作動媒体W1が流通する低温側流路61Bとを有する熱交換器である。
図2に示すように、高温側流路61Aの入口60Aに第1循環流路41の下流端が接続されており、高温側流路61Aの出口60Bに第2循環流路42の上流端が接続されている。また低温側流路61Bの出入口には、作動媒体循環流路62が接続されている。
【0047】
蒸発器61では、熱源流体から熱回収した後の熱媒体H1が高温側流路61Aへ流入し、低温側流路61Bへ流入した液状の作動媒体W1が当該熱媒体H1の熱により蒸発する。そして、蒸発した作動媒体W1により膨張機63のタービンが回転し、その回転力により発電機64において発電が行われる。このようにして、熱媒体H1が熱源流体から回収した熱をバイナリー発電に利用することができる。
【0048】
熱利用システム1は、当該熱利用システム1の各動作を制御するコントローラである制御部90(
図3)をさらに備えている。
図3は、制御部90の機能ブロック図である。
図3に示すように、制御部90は、受付部91と、判定部92と、弁制御部93と、ポンプ制御部94と、加熱制御部95と、記憶部96と、を含む。
【0049】
受付部91は、温度検知部51から送られる検知信号を受信する。判定部92は、受付部91に入力された検知信号のデータと記憶部96に格納された設定温度のデータとを比較し、その大小関係を判定する。弁制御部93は、上流弁32、下流弁33及びバイパス弁34の開閉を切り替え、また三方弁(熱媒体切替部52)を開く向きを切り替える。ポンプ制御部94は、循環ポンプ43の起動及びその停止を切り替える。加熱制御部95は、電気ヒータ(加熱機構50)への通電及びその停止を切り替える。受付部91、判定部92、弁制御部93、ポンプ制御部94及び加熱制御部95は、制御部90を構成するコンピュータの中央演算処理装置(CPU;Central Processing Unit)により実行される各機能であり、記憶部96はメモリにより構成されている。
【0050】
制御部90は、熱利用設備60(バイナリー発電装置)の起動中に、熱源流体切替部30を制御して熱源流路10から熱交換器20へ熱源流体を流入させると共に循環ポンプ43を起動して熱媒体H1を熱媒体循環流路40に流通させ、且つ加熱機構50を制御して熱媒体循環流路40を通じて熱交換器20と熱利用設備60(蒸発器61)との間を循環する熱媒体H1を加熱する。「熱利用設備60の起動中」とは、蒸発器61への投入熱量(熱媒体H1が白煙防止空気A2から取得する熱量と熱媒体H1が加熱機構50において取得する熱量の合計)の全てを発電に利用することができていない状態を意味する。
【0051】
そして、制御部90は、熱利用設備60の起動完了後は、加熱機構50を停止状態とする。「熱利用設備60の起動完了」とは、蒸発器61への投入熱量(熱媒体H1が白煙防止空気A2から取得する熱量と熱媒体H1が加熱機構50において取得する熱量の合計)の全てを発電に利用することができる状態を意味する。以下、この制御を、本実施形態に係る熱利用システムの起動方法として、
図4のフローチャートに従って説明する。
【0052】
<熱利用システムの起動方法>
はじめに、本起動方法が実施される前の初期状態では、循環ポンプ43及び加熱機構50が停止し、上流弁32及び下流弁33が閉状態であり、バイパス弁34が開状態であり、三方弁(熱媒体切替部52)が蒸発器61側に閉じている(入口ポート52Aと一方の出口ポート52Cとが連通せず、入口ポート52Aと他方の出口ポート52Bとが連通している)。この状態で、まず、ポンプ制御部94が循環ポンプ43を起動させ(ステップS10)、続いて弁制御部93が上流弁32及び下流弁33を開き(ステップS11)、その後バイパス弁34を閉じる(ステップS12)。
【0053】
これにより、上流側熱源流路11から熱交換器20(高温側流路22)へ熱源流体が流入すると共に、循環ポンプ43により熱媒体H1が熱媒体循環流路40及び熱媒体バイパス流路53を流通する(第1運転)。具体的には、熱媒体H1が熱交換器20において熱源流体から熱回収し、当該熱媒体H1が第1循環流路41を流通した後熱媒体切替部52を介して熱媒体バイパス流路53へ流入し、その後当該熱媒体H1が第2循環流路42を流れて熱交換器20へ戻る。
【0054】
ここで、上流弁32及び下流弁33を開く前にバイパス弁34を先に閉じると、白煙防止ファン83等の輸送設備の故障が起こり易くなるのに対し(いわゆる閉め切り運転)、上述の通り、先に上流弁32及び下流弁33を開くことによりこれを防ぐことができる。
【0055】
上記第1運転において熱媒体H1が循環する間に、熱源流体の熱により熱媒体H1の温度が次第に上昇する。この間、熱媒体H1の温度は、温度検知部51により常時又は所定の時間間隔で検知される。そして、温度検知部51による検知温度が第1設定温度T1(例えば120~140℃)以上になった時に(ステップS13のYES)、弁制御部93が上記三方弁を蒸発器61側へ開くように切り替える(ステップS14)。つまり、上記三方弁は、入口ポート52Aと他方の出口ポート52Bとが連通する状態から、入口ポート52Aと一方の出口ポート52Cとが連通する状態へ切り替わる。この時、作動媒体ポンプ66も起動させる。なお、作動媒体ポンプ66を、三方弁の上記切替と同時に起動させる場合に限定されず、上記切替時よりも前に予め起動させてもよい。
【0056】
これにより、第1循環流路41から蒸発器61(高温側流路61A)への熱媒体H1の流入が許容され、熱媒体H1が熱媒体循環流路40を通じて熱交換器20と蒸発器61との間で循環する(第2運転)。具体的には、熱交換器20において熱源流体から熱回収した熱媒体H1が第1循環流路41を通じて蒸発器61へ流入し、当該蒸発器61において作動媒体W1へ放熱した後、第2循環流路42を通じて熱交換器20へ戻る。
【0057】
上記第2運転では、作動媒体W1への放熱により熱媒体H1の温度が下がる。そして、上記第2運転において温度検知部51による検知温度が第1設定温度T1よりも低い第2設定温度T2(例えば120~140℃)未満になった時に(ステップS15のYES)、加熱制御部95が電気ヒータへの通電を開始し、加熱機構50を起動させる(ステップS16、第3運転)。これにより、熱媒体循環流路40を通じて熱交換器20と蒸発器61との間を循環する熱媒体H1が、加熱機構50により加熱される。
【0058】
第3運転では、熱媒体H1の温度が第3設定温度T3になるように、電気ヒータの出力が制御される。第3設定温度T3は、第2設定温度T2と同じ温度であってもよいし、第2設定温度T2よりも高く且つ第1設定温度T1よりも低い温度であってもよい。
【0059】
そして、熱利用設備60の起動が完了した後(ステップS17のYES)、すなわちバイナリー発電装置の暖気運転が完了した後、電気ヒータへの通電を停止し、加熱機構50を停止状態とする(ステップS18)。以上のようにして、本実施形態に係る熱利用システムの起動方法が実施され、その後、熱利用システム1の定常運転が開始される。
【0060】
本実施形態に係る熱利用システム1によれば、バイナリー発電装置(熱利用設備60)の起動中に、白煙防止空気A2(熱源流体)により熱媒体H1を加熱すると共に、さらに電気ヒータ(加熱機構50)により熱媒体H1を加熱することができる。このため、焼却炉2の規模が小さくて白煙防止空気A2の熱エネルギーが少なく、バイナリー発電装置の起動に必要なエネルギーに及ばない場合であっても、その不足分の熱エネルギーを加熱機構50により補うことができる。したがって、本実施形態に係る熱利用システム1によれば、熱源流体が有する熱エネルギーが少ない場合であっても、熱利用設備60を確実に起動させることができる。
【0061】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る熱利用システム及びその起動方法を、
図5及び
図6に基づいて説明する。実施形態2に係る熱利用システム及びその起動方法は、基本的に上記実施形態1と同様であるが、加熱機構の構成において異なっている。以下、上記実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0062】
<熱利用システム>
図5は、実施形態2に係る熱利用システム1Aの構成を模式的に示している。熱利用システム1Aは、加熱機構70を備えており、当該加熱機構70は、加熱用熱交換器71(第2熱交換器に相当)と、加熱用流路72と、入口弁74と、出口弁75と、を有している。
【0063】
加熱用流路72は、両端が第1循環流路41のうち膨張タンク44よりも熱交換器20側の部位に接続されている。加熱用熱交換器71は、加熱用流路72に配置されており、高温側流路71Bと、低温側流路71Aとを有する。
図5に示すように、高温側流路71Bには、熱媒体H1よりも高温の加熱媒体H2が流通する加熱媒体流路73が接続されており、低温側流路71Aには、加熱用流路72が接続されている。
【0064】
入口弁74及び出口弁75は、加熱用流路72のうち加熱用熱交換器71の入口側及び出口側にそれぞれ配置されている。本実施形態では、入口弁74がON-OFF弁であると共に、出口弁75が調整弁である。しかしこれに限定されず、入口弁74が調整弁であると共に出口弁75がON-OFF弁であってもよいし、入口弁74及び出口弁75の両方がON-OFF弁であってもよいし、入口弁74及び出口弁75の両方が調整弁であってもよい。実施形態2における加熱機構70によれば、入口弁74及び出口弁75をそれぞれ制御し、第1循環流路41から加熱用流路72を通じて加熱用熱交換器71(低温側流路71A)へ熱媒体H1を流入させることにより、加熱媒体H2との熱交換によって熱媒体H1を加熱することができる。
【0065】
<熱利用システムの起動方法>
次に、実施形態2に係る熱利用システムの起動方法を、
図6のフローチャートに従って説明する。本起動方法が実施される前の初期状態では、循環ポンプ43が停止し、上流弁32、下流弁33、入口弁74及び出口弁75が閉状態であり、バイパス弁34が開状態であり、三方弁(熱媒体切替部52)が蒸発器61側に閉じている(入口ポート52Aと一方の出口ポート52Cとが連通せず、入口ポート52Aと他方の出口ポート52Bとが連通している)。この状態で、まず、ポンプ制御部94が循環ポンプ43を起動させ(ステップS20)、続いて弁制御部93が上流弁32及び下流弁33を開き(ステップS21)、入口弁74及び出口弁75を開き(ステップS22)、その後バイパス弁34を閉じる(ステップS23)。ここで、バイパス弁34を閉じる操作を最後に行うのは、上記実施形態1で説明した通り、システムの閉め切り運転を避けるためである。
【0066】
これにより、上流側熱源流路11から熱交換器20(高温側流路22)へ熱源流体が流入すると共に、循環ポンプ43により熱媒体H1が熱媒体循環流路40、加熱用流路72及び熱媒体バイパス流路53を流通する(第1運転)。具体的には、熱源流体から熱回収した熱媒体H1が加熱用流路72を通じて加熱用熱交換器71(低温側流路71A)へ流入し、加熱媒体H2によりさらに加熱される。そして、加熱媒体H2により加熱された熱媒体H1が膨張タンク44よりも熱交換器20側において第1循環流路41に合流し、上記三方弁を経由して熱媒体バイパス流路53へ流入した後、第2循環流路42を通じて熱交換器20へ戻る。
【0067】
上記第1運転の間、熱源流体及び加熱媒体H2の熱により熱媒体H1の温度が次第に上昇する。そして、温度検知部51による検知温度が第1設定温度T1(例えば120~140℃)以上になった時に(ステップS24のYES)、弁制御部93が上記三方弁を蒸発器61側へ開くように切り替える(ステップS25)。この時、作動媒体ポンプ66も起動させる。なお、上記実施形態1と同様に、作動媒体ポンプ66を、三方弁の上記切替時よりも前に予め起動させてもよい。
【0068】
これにより、熱媒体H1が、熱媒体循環流路40及び加熱用流路72を通じて熱交換器20と蒸発器61との間で循環する(第2運転)。具体的には、熱源流体から熱回収した熱媒体H1が第1循環流路41及び加熱用流路72を通じて蒸発器61へ流入し、当該蒸発器61において作動媒体W1へ放熱した後、第2循環流路42を通じて熱交換器20へ戻る。
【0069】
そして、熱利用設備60の起動が完了した後(ステップS26のYES)、すなわちバイナリー発電装置の暖気運転が完了した後、入口弁74及び出口弁75を閉じ、加熱機構70を停止状態とする(ステップS27)。以上のようにして、実施形態2に係る熱利用システムの起動方法が実施され、その後、熱利用システム1Aの定常運転が開始される。実施形態2に係る熱利用システム1Aによれば、上記実施形態1と異なり電気ヒータが不要であり、適当な熱源を加熱媒体H2として有効利用することにより、熱利用システム1Aの起動時における熱媒体H1の加熱において省電力化を図ることができる。
【0070】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係る熱利用システム及びその起動方法を、
図7及び
図8に基づいて説明する。実施形態3に係る熱利用システム及びその起動方法は、基本的に上記実施形態1,2と同様であるが、加熱機構の構成において異なっている。以下、上記実施形態1,2と異なる点についてのみ説明する。
【0071】
<熱利用システム>
図7は、実施形態3に係る熱利用システム1Bの構成を模式的に示している。熱利用システム1Bは、加熱機構80を備えており、当該加熱機構80は、バッファタンク86と、タンク用流路87と、タンク入口弁84と、タンク出口弁85と、を有している。
【0072】
タンク用流路87は、両端が第1循環流路41のうち膨張タンク44よりも上流側の部位に接続されている。バッファタンク86は、タンク用流路87に配置されており、当該タンク用流路87から流入する熱媒体H1を貯留する。
【0073】
図7に示すように、タンク入口弁84及びタンク出口弁85は、タンク用流路87のうちバッファタンク86の入口側及び出口側にそれぞれ配置されている。本実施形態では、タンク入口弁84がON-OFF弁であると共に、タンク出口弁85が調整弁である。しかしこれに限定されず、タンク入口弁84が調整弁であると共に、タンク出口弁85がON-OFF弁であってもよい。
【0074】
加熱機構80によれば、以下のようにして、熱媒体循環流路40を流通する熱媒体H1を加熱することができる。すなわち、まず、タンク入口弁84及びタンク出口弁85を開き、熱源流体から熱回収した高温の熱媒体H1をバッファタンク86に貯留し、その後両弁を閉じる。そして、熱媒体H1が熱交換器20と蒸発器61との間で循環している間に、タンク入口弁84及びタンク出口弁85を開くことにより、バッファタンク86に貯留された高温の熱媒体H1を熱媒体循環流路40へ供給することができる。これにより、熱媒体循環流路40を流通する熱媒体H1が加熱される。
【0075】
<熱利用システムの起動方法>
次に、実施形態3に係る熱利用システムの起動方法を、
図8のフローチャートに従って説明する。本起動方法が実施される前の初期状態では、循環ポンプ43が停止し、上流弁32及び下流弁33が閉状態であり、バイパス弁34、タンク入口弁84及びタンク出口弁85が開状態であり、三方弁(熱媒体切替部52)が蒸発器61側に閉じている(入口ポート52Aと一方の出口ポート52Cとが連通せず、入口ポート52Aと他方の出口ポート52Bとが連通している)。この状態で、まず、ポンプ制御部94が循環ポンプ43を起動させ(ステップS30)、続いて弁制御部93が上流弁32及び下流弁33を開き(ステップS31)、その後バイパス弁34を閉じる(ステップS32)。ここで、上流弁32及び下流弁33を先に開くのは、上記実施形態1で説明した通り、システムの閉め切り運転を避けるためである。
【0076】
これにより、上流側熱源流路11から熱交換器20(高温側流路22)へ熱源流体が流入すると共に、熱媒体H1が熱媒体循環流路40、タンク用流路87及び熱媒体バイパス流路53を流通する(第1運転)。具体的には、熱源流体から熱回収した熱媒体H1の一部がタンク用流路87を通じてバッファタンク86へ流入し、当該バッファタンク86に貯留される。また当該熱媒体H1の残部が、第1循環流路41、熱媒体バイパス流路53及び第2循環流路42を順に流通して熱交換器20へ戻る。
【0077】
上記第1運転の間、熱源流体の熱により熱媒体H1の温度が次第に上昇する。そして、温度検知部51による検知温度が第1設定温度T1(例えば120~140℃)以上になった時に(ステップS33のYES)、弁制御部93がタンク入口弁84及びタンク出口弁85を閉じると共に(ステップS34)、三方弁を蒸発器61側へ開くように切り替える(ステップS35)。この時、作動媒体ポンプ66も起動させる。なお、上記実施形態1と同様に、作動媒体ポンプ66を、三方弁の上記切替時よりも前に予め起動させてもよい。
【0078】
これにより、熱媒体H1が、熱媒体循環流路40を通じて熱交換器20と蒸発器61との間で循環する(第2運転)。具体的には、熱源流体から熱回収した熱媒体H1が第1循環流路41を通じて蒸発器61へ流入し、当該蒸発器61において作動媒体W1へ放熱した後、第2循環流路42を通じて熱交換器20へ戻る。
【0079】
上記第2運転では、作動媒体W1への放熱により熱媒体H1の温度が下がる。そして、上記第2運転において温度検知部51による検知温度が第1設定温度T1よりも低い第2設定温度T2(例えば120~140℃)未満になった時に(ステップS36のYES)、弁制御部93がタンク入口弁84を開き(ステップS37)、且つタンク出口弁85の開度を調整する(ステップS38)。これにより、高温の熱媒体H1がバッファタンク86から第1循環流路41へ供給され、熱媒体循環流路40を流通する熱媒体H1が加熱される(第3運転)。この時、温度検知部51による検知温度が上記第2設定温度T2になるように、タンク出口弁85の開度を制御する。
【0080】
そして、熱利用設備60の起動が完了した後(ステップS39のYES)、すなわちバイナリー発電装置の暖気運転が完了した後、タンク入口弁84及びタンク出口弁85をそれぞれ閉じ、加熱機構80を停止状態とする(ステップS40)。以上のようにして本実施形態に係る熱利用システムの起動方法が実施され、その後、熱利用システム1Bの定常運転が開始される。
【0081】
(その他実施形態)
ここで、本発明のその他実施形態を説明する。
【0082】
上記実施形態1では、加熱機構50(電気ヒータ)が第1循環流路41のうち膨張タンク44よりも熱交換器20側に配置される場合を説明したが、これに限定されない。電気ヒータは、第1循環流路41のうち膨張タンク44よりも熱利用設備60側に配置されてもよいし、第2循環流路42のうち循環ポンプ43よりも熱利用設備60側に配置されてもよいし、第2循環流路42のうち循環ポンプ43よりも熱交換器20側に配置されてもよい。
【0083】
上記実施形態2では、加熱用流路72の両端が第1循環流路41のうち膨張タンク44よりも熱交換器20側の部位に接続される場合を説明したが、これに限定されない。加熱用流路72の両端は、第1循環流路41のうち膨張タンク44と温度検知部51との間の部位に接続されていてもよいし、第2循環流路42のうち循環ポンプ43よりも熱利用設備60側の部位に接続されていてもよいし、第2循環流路42のうち循環ポンプ43よりも熱交換器20側の部位に接続されていてもよい。
【0084】
上記実施形態3では、タンク用流路87の両端が第1循環流路41のうち膨張タンク44よりも熱交換器20側の部位に接続される場合を説明したが、これに限定されない。タンク用流路87の両端は、第1循環流路41のうち膨張タンク44と温度検知部51との間の部位に接続されていてもよいし、第2循環流路42のうち循環ポンプ43よりも熱利用設備60側の部位に接続されていてもよいし、第2循環流路42のうち循環ポンプ43よりも熱交換器20側の部位に接続されていてもよい。
【0085】
上記実施形態1~3に係る熱利用システムの起動方法では、制御部90により弁の開閉やポンプ及び加熱機構の動作が自動制御される場合を説明したが、これらが手動で制御されてもよい。
【0086】
上記実施形態1~3では、熱利用設備の一例としてバイナリー発電装置を説明したがこれに限定されず、他の設備も適用可能である。
【0087】
上記実施形態1~3では、熱媒体切替部の一例として三方弁を説明したが、これに限定されない。例えば、熱媒体切替部は、熱媒体バイパス流路53に配置された1つの二方弁と、第1循環流路41のうち熱媒体バイパス流路53の接続部よりも熱利用設備60側に配置されたもう1つの二方弁とにより構成されていてもよい。
【0088】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
1,1A,1B 熱利用システム
10 熱源流路
20 熱交換器(第1熱交換器)
30 熱源流体切替部
40 熱媒体循環流路(循環流路)
43 循環ポンプ
50,70,80 加熱機構
51 温度検知部
52 熱媒体切替部
53 熱媒体バイパス流路(バイパス流路)
60 熱利用設備
61 蒸発器(熱伝達器)
70 熱交換器(第2熱交換器)
90 制御部
A2 白煙防止空気(熱源流体)
H1 熱媒体