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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019215
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】発色紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 27/00 20060101AFI20240201BHJP
   C09D 11/02 20140101ALI20240201BHJP
【FI】
D21H27/00 Z
C09D11/02
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023199526
(22)【出願日】2023-11-27
(62)【分割の表示】P 2018234481の分割
【原出願日】2018-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】518446019
【氏名又は名称】合同会社イージーモード
(74)【代理人】
【識別番号】100137822
【弁理士】
【氏名又は名称】香坂 薫
(72)【発明者】
【氏名】浜飯 政美
【テーマコード(参考)】
4J039
4L055
【Fターム(参考)】
4J039AE11
4J039BE01
4J039CA06
4L055AH50
4L055BE08
4L055GA50
(57)【要約】
【課題】水で文字や絵を書くことができ、かつ、書いた文字や絵が消えない新たな技術を提供する。
【解決手段】紙と、紙の紙面上に散在して配置されたインク領域であって、水と反応して溶けるインクからなるインク領域と、インク領域以外の領域に配置され、水を含む筆具が通過することで発色する非インク領域と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙と、
紙の紙面上に散在して配置されたインク領域であって、水と反応して溶けるインクからなるインク領域と、
インク領域以外の領域に配置され、水を含む筆具が通過することで発色する非インク領域と、を備える発色紙。
【請求項2】
インク領域と非インク領域は、パターンを形成する請求項1に記載の発色紙。
【請求項3】
パターンは、輪郭が所定の形状を有する請求項2に記載の発色紙。
【請求項4】
パターンは、紙の位置によって異なる、請求項2又は3に記載の発色紙。
【請求項5】
インク領域のインクは、インクに色をつける着色剤、インクと水との反応を促進する添加剤を含む請求項1から4の何れか1項に記載の発色紙。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発色紙に関する。
【背景技術】
【0002】
紙面が加工されていて繰り返して毛筆習字等ができる特殊加工紙として、水筆紙が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、繰り返し使用でき、彩色に用いる筆記具による汚染がなく、利便性に優れた変色性塗り絵及びそれを用いた変色性塗り絵セットがある(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実登3149738号公報
【特許文献2】特開2005-326870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水筆紙によれば、墨を用いることなく水だけで文字を書くことができる。また、変色性塗り絵では、彩色に用いる塗布具は水を用いる。そのため汚染がなく、利便性と省資源化に優れている。しかしながら、水筆紙に書かれた文字や変色性塗り絵の彩色は、一定時間経過すると消えてしまう。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑み、水で文字や絵を書くことができ、かつ、書いた文字や絵が消えない新たな紙に関する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、水と反応して溶けるインクを紙面上に散在して配置することとした。
【0007】
詳細には、本発明は、紙と、紙の紙面上に散在して配置されたインク領域であって、水と反応して溶けるインクからなるインク領域と、インク領域以外の領域に配置され、水を含む筆具が通過することで発色する非インク領域と、を備える発色紙である。
【0008】
本発明に係る発色紙では、インク領域のインクが水と反応して溶けることで、水を含む筆具が通過した非インク領域が発色する。そのため、発色紙に対して、水で文字や絵を自由に書くことができる。また、インクが溶けることで発色するため、インクが消えることがない。また、例えば、墨や墨汁は、衣服等に付着した場合、落ちにくいが、本発明に係る発色紙のインクは、墨や墨汁と比較して容易に落とすことができる。
【0009】
紙には、水と反応して溶けるインクが配置される。紙は、インクを紙の紙面上に定着できればよい。紙の種類は、発色紙の用途に応じて変更することができる。インクには、水溶性のインクが例示される。インク領域の色、インク領域の形状、インク領域の大きさ、インク領域同士の間隔は、適宜変更することができる。非インク領域の大きさ、非インク領域同士の間隔は、インク領域に応じて適宜変更することができる。筆具は、発色紙に水で文字や絵を書けるものであればよい。筆具は、毛筆の他、水を内蔵するペン型の筆や、水を内蔵するペンのようなものでもよい。
【0010】
ここで、インク領域と非インク領域は、パターンを形成するようにしてもよい。パターンには、点状、格子状が例示されるが、これらに限定されない。パターンは、紙の種類や色、インク領域の色、インク領域の形状、インク領域の大きさ、インク領域同士の間隔、非インク領域の色、非インク領域の形状、非インク領域の多い際、非インク領域同士の間隔等を変更することで、発色紙の外観、例えば色合いを調整できる。また、発色する色の色合いや濃淡を調整できる。例えば、インク領域を小さくし(非インク領域を大きくし)、インク領域同士の間隔を広くする(非インク領域を大きくする)ことで、インク領域をより目立たなくすることができる。例えば、黒色のインクを用いた場合でも、発色紙は、薄い灰色の印象を与えることになる。一方、インク領域を大きくし(非インク領域を小さくし)、インク領域同士の間隔を狭くする(非インク領域を小さくする)ことで、インク領域が小さく、インク領域同士の間隔が広い場合と比較して、発色する色を濃くすることができる。
【0011】
また、パターンは、輪郭が所定の形状を有するようにしてもよい。本発明に係る発色紙は、水で自由に文字や絵を書くことができるが、パターンの輪郭を所定の形状に形成することで、輪郭をガイドとして文字や絵を書くことができる。例えば、輪郭を文字にすることで、本発明の発色紙は、習字や文字のお手本付きの紙(例えば、文字の練習用学習教材)として使用することができる。また、例えば、輪郭を絵にすることで、本発明は、塗り絵として使用することができる。
【0012】
また、パターンは、紙の位置によって異なるようにしてもよい。紙の位置によってパターンを異なるものとすることで、同じように水で書くだけで、発色する色あいや濃淡に変化をつけることができる。パターンは、例えば、インク領域の色、インク領域の形状、インク領域の大きさ、インク領域同士の間隔、非インク領域の色、非インク領域の形状、非インク領域の多い際、非インク領域同士の間隔等を紙の位置によって変えることで、異なるものとすることができる。
【0013】
また、インク領域のインクは、インクに色をつける着色剤、インクと水との反応を促進する添加剤を含むものでもよい。着色剤により、発色する色を調整できる。添加剤により、インクと水との反応が促進する、換言すると、インクが水に溶けやすくなる。また、添加剤により、発色におけるインクの滲みを抑制できる。
【0014】
また、インク領域のインクは、水と反応して呈色する呈色剤を更に含むものでもよい。呈色剤により、着色剤の色、換言すると発色する色を変色することができる。例えば、着色剤が白色の場合でも、呈色剤としてフェノールフタレインを含有することで、透明の水と反応して紫色に発色させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水で文字や絵を書くことができ、かつ、書いた文字や絵が消えない新たな紙に関する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1実施形態に係る発色紙(点状)の平面図を示す。
図2図2は、図1のAA断面の拡大図を示す。
図3図3は、第1実施形態に係る発色紙(格子状)の平面図を示す。
図4図4は、第1実施形態に係る発色紙が発色した状態を示す。
図5図5は、第2実施形態に係る発色紙の平面図を示す。
図6図6は、第3実施形態に係る発色紙の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明は例示であり、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
【0018】
<第1実施形態>
<発色紙の構成>
図1は、第1実施形態に係る発色紙(点状)の平面図を示す。図2は、図1のAA断面の拡大図を示す。第1実施形態に係る発色紙1は、紙2と、インク領域3と、非インク領域4とを備える。紙2は、長方形の上質紙によって構成されている。紙2の種類、色、形状、大きさ等は、用途に応じて変更することができる。紙2には、洋紙、板紙、和紙等が例示される。洋紙には、新聞巻取紙、上質紙を含む印刷・情報用紙、包装用紙、衛生用紙、書道用紙を含む雑種紙が含まれる。板紙には、段ボール原紙、紙容器板紙、雑板紙が含まれる。和紙には、日本古来の製法による種々の手すき紙や機械による機械すきの紙が含まれる。例えば、紙2に書道用紙や和紙を用いることで、第1実施形態に係る発色紙1は、書道用紙として用いることができる。
【0019】
インク領域3は、紙2の紙面上に散在して配置され、水と反応して溶けるインクからなる。非インク領域4は、インク領域3以外の領域に配置され、水を含む筆具6が通過することで発色する。インク領域3と非インク領域4は、パターンを形成する。第1実施形態に係る発色紙1では、インク領域3が複数の円形の点で構成され、非インク領域4が複数の円形の点以外で構成され、インク領域3と非インク領域4によって、点状のパターンが形成されている。なお、インク領域3の点の形状、大きさ、点同士の間隔を変更することで、発色紙1の外観、例えば色合いを調整できる。また、発色する色の色合いや濃淡を調整できる。例えば、点を小さくし(非インク領域4を大きくし)、点同士の間隔を広くする(非インク領域4を大きくする)ことで、インク領域3をより目立たなくすることができる。例えば、白色の紙1、黒色のインクを用いた場合、発色紙は、薄い灰色の印象を与えることになる。一方、点を大きくし(非インク領域4を小さくし)、点同士の間隔を狭くする(非インク領域4を小さくする)ことで、インク領域3が小さく、インク領域3同士の間隔が広い場合と比較して、発色する色を濃くすることができる。例えば、白色の紙2、黒色のインクを用いた場合、発色紙は、濃い灰色、又は、白地に複数の黒い点が散在する印象を与えることになる。
【0020】
なお、パターンは、点状に限定されない。インク領域3が紙2の紙面上に散在していればよい。パターンは、格子状のパターン、縦縞状、横縞状、斜線状等、他のパターンでもよい。ここで、図3は、第1実施形態に係る発色紙(格子状)の平面図を示す。パターンは、図3に示すように、格子状のパターンでもよい。格子状のパターンでは、インク領域3が交差する複数の直線で構成され、インク領域3と非インク領域4によって、格子状のパターンが形成されている。インク領域3の色、インク領域3の形状、インク領域3の大きさ、インク領域3同士の間隔等を変更することで、発色紙1の外観を調整できる。また、発色する色の色合いや濃淡を調整できる。パターンは、インク領域3を構成するインクを紙2の紙面上に定着することで行われる。インクの定着は、既存の印刷手法によって行うことができる。既存の印刷手法には、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷等が例示される。
【0021】
インク領域3を構成するインクは、インクに色をつける着色剤としての顔料、インクと水との反応を促進する添加剤としてのシリコーンオイルを含む水溶性のインクからなる。添加剤により、インクと水との反応が促進する、換言すると、インクが水に溶けやすくなる。また、添加剤により、発色におけるインクの滲みを抑制できる。インクには、例えば、ラウニー社製の水彩絵具(商品名:Artists、色:LampBlack(035))を用いることができる。また、インクには、例えば、サクラパレス社製の水彩絵具(商品名:さくらマット水性、色:くろ(49))を用いることができる。インクは、上記に限定されない。インクは、水に溶ける水溶性のインクであればよく、種類や色は、用途に応じて適宜変更することができる。着色剤として、染料を用いてもよい。染料を用いる場合、紙2には、コート紙を用いるとよい。シリコーンオイルは、疎水性、親水性何れでもよい。水溶性のインクとシリコーンオイルとを混合しやすくするため、疎水性のシリコーンオイルを用いる場合、インクは、顔料、シリコーンオイルに加えて、界面活性剤を更に含むようにしてもよい。水は、透明の水の他、着色された水でもよい。
【0022】
<発色紙の使用方法>
発色紙1には、水を含む筆具6で自由に文字や絵を書くことができる。ここで、図4は、第1実施形態に係る発色紙が発色した状態を示す。図4では、発色紙1に、文字「寿」が書かれている。発色紙1に水を含む筆具6が接触すると、インク領域3のインクが水と反応して溶け、溶けたインクの一部が、筆具6が通過した非インク領域4に広がり、非インク領域4がインク領域3を構成するインクの色で発色する。なお、第1実施形態では、筆具6に毛筆を用いたが、筆具6は、これに限定されない。筆具6は、発色紙1に水で文字や絵を書けるものであればよい。筆具6は、毛筆の他、水を内蔵するペン型の筆や、水を内蔵するペンのようなものでもよい。
【0023】
<効果>
第1実施形態に係る発色紙1によれば、インク領域3のインクが水と反応して溶けることで、水を含む筆具6が通過した非インク領域4が発色する。そのため、発色紙1に対して、水で文字や絵を自由に書くことができる。また、インクが溶けることで発色するため、インクが消えることがない。また、例えば、墨や墨汁は、衣服等に付着した場合、落ちにくいが、第1実施形態に係る発色紙1のインクは、水溶性のため、墨汁と比較して容易に落とすことができる。また、インクの着色剤を変えることで、発色する色を調整できる。また、添加剤により、インクと水との反応が促進する、換言すると、インクが水に溶けやすくなる。また、添加剤により、発色におけるインクの滲みを抑制できる。
【0024】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る発色紙の平面図を示す。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付し、説明を割愛する。第2実施形態に係る発色紙1は、点状のパターン5の輪郭が所定の形状として文字の形状(図5では、「寿」)で形成されている。点状のパターンの輪郭を文字に形成することで、輪郭をガイドとして文字を書くことができる。その結果、発色紙1は、習字のお手本付きの紙(例えば、文字の練習用学習教材)として使用することができる。
【0025】
なお、パターンは、格子状のパターン、縦縞状、横縞状、斜線状等、他のパターンでもよい。また、所定の形状は、文字、数字、記号、絵等、用途に応じて変更することができる。また、パターン5の輪郭は、インク領域3と非インク領域4との境界で形成できるが、インク領域3を構成するインクとは別に水に溶けないインクを用い、水に溶けないインクを紙2に定着させて形成するようにしてもよい。
【0026】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係る発色紙の平面図を示す。なお、第1実施形態、及び第2実施形態と同様の構成については、同一符号を付し、説明を割愛する。第3実施形態に係る発色紙1は、パターン5の輪郭が所定の形状として家を象って形成されている。また、パターン5の輪郭は、インク領域3を構成する水で溶けるインクとは別の水で溶けないインクが紙2に定着することで形成されている。また、紙2の位置によって異なるパターンが形成されている。より詳細には、パターン5は、複数のパターンで構成され、各パターンを構成するインク領域3のインクも夫々異なる色で構成されている。家の本体部分は、白色のインクからなる点状のパターン31、家の屋根部分は、赤色のインクからなる斜線状のパターン32、家の窓は、水色のインクからなる細かい点状のパターン33、樹木は、緑色のインクからなる格子状のパターン34で形成されている。なお、パターンやインクの色は、例示であり、上記に限定されない。
【0027】
パターン5の輪郭を家を象って形成することで、発色紙1は、塗り絵として使用することができる。また、紙2の位置によってパターンを異なるものとすることで、同じように水で書くだけで、発色する色あいや濃淡に変化をつけることができる。
【0028】
<その他の実施形態>
インク領域3を構成するインクは、水と反応して呈色する呈色剤を更に含むものでもよい。呈色剤には、フェノールフタレインが例示される。呈色剤により、着色剤の色、換言すると発色する色を変色することができる。例えば、着色剤が白色の場合でも、呈色剤としてフェノールフタレインを含有することで、透明の水と反応して紫色に発色させることができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明に係る発色紙は、これらに限られず、可能な限りこれらを組み合わせることができる。また、本発明に係る発色紙は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0030】
1・・・発色紙
2・・・紙
3・・・インク領域
4・・・非インク領域
5・・・パターン
6・・・筆具
図1
図2
図3
図4
図5
図6