(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019263
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】無溶剤型接着剤及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20240201BHJP
C09J 175/06 20060101ALI20240201BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J175/06
C09J11/08
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023203098
(22)【出願日】2023-11-30
(62)【分割の表示】P 2019232018の分割
【原出願日】2019-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】夏海 樹明
(72)【発明者】
【氏名】宇佐 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】内山 祐清
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義浩
(57)【要約】
【課題】
ポリオール成分とポリイソシアネート成分を配合した後の粘度上昇を抑えて長いポット
ライフを有し、包材とした際に、酸性が強い内容物とした場合でも優れたヒートシール強
度とラミネート強度を示す無溶剤接着剤及び該接着剤を用いてなる積層体の提供。
【解決手段】
前記課題は、ポリオール成分、数平均分子量1,000~3,200のポリアルキレン
グリコールを含むポリアルキレングリコールと芳香族ジイソシアネートとの反応生成物を
含むポリイソシアネート成分、及び酸無水物基を有する化合物を含む、無溶剤型接着剤に
よって解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分、数平均分子量1,000~3,200のポリアルキレングリコールを
含むポリアルキレングリコールと芳香族ジイソシアネートとの反応生成物を含むポリイソ
シアネート成分、及び酸無水物基を有する化合物を含む、無溶剤型接着剤。
【請求項2】
酸無水物基を有する化合物が、(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重
合させてなる樹脂である、請求項1に記載の無溶剤型接着剤。
【請求項3】
前記ポリオール成分が、末端に2級水酸基を有するポリエステルポリオールを含む、請
求項1又は2に記載の無溶剤型接着剤。
【請求項4】
前記数平均分子量1,000~3,200のポリアルキレングリコールの含有量が、ポ
リアルキレングリコールの合計に対して、50~95質量%である、請求項1~3いずれ
か1項に記載の無溶剤型接着剤。
【請求項5】
前記数平均分子量1,000~3,200のポリアルキレングリコールの含有量が、ポ
リイソシアネート成分に対して、20~70質量%である、請求項1~4いずれか1項に
記載の無溶剤型接着剤。
【請求項6】
前記芳香族ジイソシアネートが、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及び2
,4-ジフェニルメタンジイソシアネートを含むものである、請求項1~5いずれか1項
に記載の無溶剤型接着剤。
【請求項7】
請求項1~6いずれか1項に記載の無溶剤型接着剤からなる接着剤層が、少なくとも2
つのシート状基材の間に積層された積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無溶剤型接着剤、及び積層体に関し、詳細には、食品、医療品、化粧品など
の包装用積層体を製造する際に好適に用いられる無溶剤型接着剤に関する。さらに、本発
明は、食品、医療品、化粧品などの包装に用いられる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医療品、化粧品などの包装材料の分野において、アルミニウム箔などの金属箔あ
るいは金属蒸着フィルムとポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエステル、
ナイロン、紙などの材料を多層ラミネートして複合化したものが用いられる。これらの包
装材料を張り合わせる接着剤として、ポリオール主剤とポリイソシアネート硬化剤とを調
整して得られる二液硬化型ラミネート接着剤が広く知られている。二液硬化型ラミネート
接着剤は、有機溶剤を含む溶剤型接着剤と、有機溶剤を含まない無溶剤型接着剤とに分類
され、無溶剤型接着剤は溶剤型接着剤と比べて、有機溶剤の乾燥工程が不要であるため、
環境負荷の低減や作業環境の改善の観点から有望である。
無溶剤型接着剤として、例えば特許文献1には、ジフェニルメタンジイソシアネートと
、ポリエーテルポリオールとの反応生成物であるポリイソシアネート成分を含む無溶剤型
接着剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開公報第2014/115521号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の無溶剤型接着剤組成物は、良好なポットライフを有
しているが、接着性能が不十分であり、特に酸性内容物を充填した包材の接着力が低下す
るという課題がある。
したがって本発明の目的は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を配合した後の
粘度上昇を抑えて長いポットライフを有し、包材とした際に、酸性が強い内容物とした場
合でも優れたヒートシール強度とラミネート強度を示す無溶剤接着剤及び該接着剤を用い
てなる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す実施形態により、上記課題を
解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の実施形態は、ポリオール成分、数平均分子量1,000~3,200のポリア
ルキレングリコールを含むポリアルキレングリコールと芳香族ジイソシアネートとの反応
生成物を含むポリイソシアネート成分、及び酸無水物基を有する化合物を含む、無溶剤型
接着剤に関する。
【0007】
本発明の他の実施形態は、酸無水物基を有する化合物が、(メタ)アクリル酸エステル
と無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂である、上記無溶剤型接着剤に関する。
【0008】
本発明の他の実施形態は、前記ポリオール成分が、末端に2級水酸基を有するポリエス
テルポリオールを含む、上記無溶剤型接着剤に関する。
【0009】
本発明の他の実施形態は、前記数平均分子量1,000~3,200のポリアルキレン
グリコールの含有量が、ポリアルキレングリコールの合計に対して、50~95質量%で
ある、上記無溶剤型接着剤に関する。
【0010】
本発明の他の実施形態は、前記数平均分子量1,000~3,200のポリアルキレン
グリコールの含有量が、ポリイソシアネート成分に対して、20~70質量%である、上
記無溶剤型接着剤に関する。
【0011】
本発明の他の実施形態は、前記芳香族ジイソシアネートが、4,4’-ジフェニルメタ
ンジイソシアネート及び2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを含むものである
、上記無溶剤型接着剤に関する。
【0012】
本発明の他の実施形態は、上記無溶剤型接着剤からなる接着剤層が、少なくとも2つの
シート状基材の間に積層された積層体に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を配合した後の粘度上昇を抑
えて長いポットライフを有し、包材とした際に、酸性が強い内容物とした場合でも優れた
ヒートシール強度とラミネート強度を示す無溶剤接着剤及び該接着剤を用いてなる積層体
を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<無溶剤型接着剤>
本発明の無溶剤型接着剤は、ポリオール成分、数平均分子量1,000~3,200の
ポリアルキレングリコールを含むポリアルキレングリコールと芳香族ジイソシアネートと
の反応生成物を含むポリイソシアネート成分、及び酸性基含有化合物を含むものであり、
配合した後の粘度上昇が抑制されて優れたポットライフを発揮する。より詳細には、ポリ
イソシアネート成分とポリオール成分とを混合し30分経過した後の、40℃の環境にて
測定した粘度は5000mPa・s以下である。また、当該無溶剤型接着剤を用いた積層
体から形成された包装材は、優れた酸性内容物耐性を発揮し、詳細には、食酢、ケチャッ
プ、チリソース等の酸性が強い内容物とした場合においても、長期保管前後で接着強度に
変化が小さい。
以下、本発明の無溶剤型接着剤を構成する各成分について説明する。
【0015】
<ポリオール成分>
本発明の無溶剤型接着剤に用いるポリオール成分は制限されず、例えば、ポリエステル
ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエステルアミドポ
リオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリ
オール、ポリバレロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリヒドロキシア
ルカン、ひまし油又はそれらの混合物のほか、エチレングリコール、プロピレングリコー
ル、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、
3-メチル-5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコー
ル、メチルペンタングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、
ジプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジ
オール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール等のグリコール
;数平均分子量200~3,200のポリアルキレングリコール;グリセリン、トリメチ
ロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能又は4官能の脂肪族アルコール;上記
3官能又は4官能の脂肪族アルコールに、上記グリコール若しくはポリオールが付加した
ポリオールを用いることができる。これらは単独で使用、又は2種類以上を併用してもよ
い。
【0016】
ポリオール成分は、接着性能と耐内容物適性であることから、好ましくはポリエステル
ポリオール又はポリエーテルポリオールを含むものであり、より好ましくはポリエステル
ポリオールを含むものである。
【0017】
ポリエステルポリオールとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボ
ン酸、無水フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、
無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン
酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物(以下、カルボ
キシル基成分ともいう)と、
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレング
リコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジ
ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,6-ヘキサンジオ
ール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1
,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、
ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレン
エーテルグリコール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレ
フィンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール等のジオール類若しく
はそれらの混合物(以下、水酸基成分ともいう)と、
をエステル化反応させて得られるポリエステルポリオール;或いは、ポリカプロラクト
ン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開
環重合して得られるポリエステルポリオール;が挙げられる。
上記カルボキシル基成分及び水酸基成分は、2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記ポリエステルポリオールは、さらにジイソシアネートを反応させたポリエステルポ
リウレタンポリオールであってもよいし、さらに酸無水物を反応させたものであってもよ
い。
ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-ト
リレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネ
ート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチ
レンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、無水トリメリット酸
、トリメリット酸エステル無水物が挙げられる。トリメリット酸エステル無水物としては
、例えば、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビ
スアンヒドロトリメリテートが挙げられる。
【0019】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレン
オキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、エチレングリコール、プロピレ
ングリコール等の2官能低分子量ポリオールを開始剤として重合して得られたものが挙げ
られる。上記ポリエーテルポリオールは、さらにジイソシアネートを反応させたポリエー
テルポリウレタンポリオールであってもよい。
【0020】
ポリオール成分は、ポットライフの点において、末端に2級水酸基を有するものが好ま
しい。より好ましくは末端に2級水酸基を有するポリエステルポリオールである。末端に
2級水酸基を有するポリエステルポリオールは、上述のエステル化反応における水酸基成
分として、少なくとも1つが2級の末端水酸基を有する多価アルコールを用いることで、
得ることができる。
少なくとも1つが2級の末端水酸基を有する多価アルコールとしては、例えば、プロピ
レングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,2,4-トリメチルー1,3-ペン
ダンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,2,6-ヘ
キサントリオール等のグリコール類若しくはそれらの混合物を反応させて得られるポリエ
ステルポリオール、あるいはポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチ
ル-Υ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオー
ルが挙げられる。
このような少なくとも1つが2級の末端水酸基を有する多価アルコールを用いると、反
応速度が速い1級の水酸基が、カルボキシル基成分と優先的に反応し、1級と比べて反応
速度が遅い2級の水酸基が残存しやすくなり、その結果、2級の末端水酸基が、1級の末
端水酸基よりも優先的に残存する。
【0021】
末端に2級水酸基を有するポリエステルポリオールは、ポットライフ向上の観点から、
全ポリオール成分に対して、50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0022】
ポリオール成分の数平均分子量は、好ましくは1,000~100,000であり、よ
り好ましくは1,000~10,000であり、特に好ましくは1,000~6,000
である。数平均分子量が1,000以上であると、凝集力が十分であり、100,000
以下であると、合成上、末端に多塩基酸若しくはその無水物を容易に反応させることがで
き、増粘やゲル化を抑制することができる。
なお本発明において数平均分子量(Mn)は、下記条件のゲルパーミエーションクロマ
トグラフィー(GPC)を用いて測定した標準ポリスチレン換算値である。
試料溶液: 測定試料40mgをテトラヒドロフラン4mlに溶解した溶液
機種:TOSOH HLC-8220GPC
カラム:TSKGEL SUPERHM-M
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
溶液流出速度:0.6ml/min
温度:40℃
検出器:示差屈折計
分子量標準:ポリスチレン
【0023】
ポリオール成分の酸価は、好ましくは0~10mgKOH/gであり、ポリオール成分
の水酸基価は、好ましくは10~150mgKOH/gである。
【0024】
<ポリイソシアネート成分>
本発明におけるポリイソシアネート成分は、数平均分子量1,000~3,200のポ
リアルキレングリコールを含むポリアルキレングリコールと芳香族ジイソシアネートとの
反応生成物を含む。
【0025】
<数平均分子量1,000~3,200のポリアルキレングリコール>
数平均分子量(Mn)1,000~3,200のポリアルキレングリコールとしては、
例えば、エチレンオキサイドの重合物であるポリエチレングリコール、プロピレンオキシ
ドの重合物であるポリプロピレングリコール、ブチレンオキサイドの重合物であるポリブ
チレングリコール、又はポリプロピレングリコールやポリブチレングリコール末端のエチ
レンオキサイド付加物が挙げられる。これらのポリアルキレングリコールは、水又はアル
コールを開始剤として各アルキレングリコールを重合させることによって製造することが
できる。
【0026】
前記ポリアルキレングリコールは、数平均分子量が1,000~3,200の範囲であ
ることを特徴としている。数平均分子量が1,000以上であると、硬化剤の反応速度を
抑制することができ、接着剤とした際にポットライフに優れたものとなる。数平均分子量
が3,200以下であると、接着剤とした際に凝集力が得られ、接着性能と耐内容物性能
に優れたものとなる。また接着剤の粘度が過度に高くなることを防止でき、無溶剤型接着
剤として加工性に優れたものとなる。中でも、上記観点から、数平均分子量は1,500
~2,500の範囲であることが好ましい。
【0027】
ポリアルキレングリコールは、前記数平均分子量1,000~3,200のポリアルキ
レングリコールを含んでいればよく、数平均分子量1,000未満若しくは数平均分子量
3,200を超えるポリアルキレングリコール、又はその他のポリアルキレングリコール
を含有してもよい。
数平均分子量1,000~3,200のポリアルキレングリコールの含有量は、ポリア
ルキレングリコールの合計に対して、好ましく50~95質量%であり、より好ましくは
60~95質量%であり、さらに好ましくは70~85質量%である。
また数平均分子量1,000~3,200のポリアルキレングリコールの含有量は、ポ
リイソシアネート成分に対して、好ましく20~70質量%であり、より好ましくは25
~60質量%であり、さらに好ましくは35~45質量%である。この範囲とすることで
、ポットライフ、接着性能及び酸性内容物耐性がさらに優れる無溶剤型接着剤を得ること
ができる。
【0028】
<芳香族ジイソシアネート>
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメ
タンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、又
は上記ジイソシアネートの誘導体、若しくはその複合体等のポリイソシアネートが挙げら
れる。中でも、ジフェニルメタンジイソシアネート又はその誘導体が好ましく用いられ、
例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイ
ソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフ
ェニルメタンジイソシアネート、ポリメリック(クルード)ジフェニルメタンジイソシア
ネートが挙げられ、より好ましくは4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,
4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリック(クルード)ジフェニルメタンジ
イソシアネートであり、さらに好ましくは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネー
ト及び2,4-ジフェニルメタンジイソシアネートを含むものである。
【0029】
<ポリアルキレングリコールと芳香族ジイソシアネートとの反応>
ポリアルキレングリコールと芳香族ジイソシアネートとの反応生成物の製造方法は制限
されず、例えば、下記の方法により得ることができる。
芳香族ジイソシアネートとポリアルキレングリコールとの反応温度は、80℃以上10
0℃以下の範囲が好ましい。反応温度を上記範囲とすることで、過剰の発熱と反応の暴走
を防ぐことができる。反応の際には、無溶媒でもよく、イソシアネート基に不活性な任意
の溶媒を用いてもよい。必要であればイソシアネート基と水酸基のウレタン化反応促進の
ための触媒を用いてもよい。
【0030】
反応に際しては、芳香族ジイソシアネートのイソシアネート基とポリアルキレングリコ
ールの水酸基とのモル比(イソシアネート基のモル数/水酸基のモル数)が1.01以上
2.0以下であることが好ましい。モル比を上記範囲にすることで、ゲル化を防ぐことが
できる。
ポリイソシアネート成分のイソシアネート基含有率は、配合後の粘度やポットライフで
あることから、好ましくは10~20質量%、より好ましくは10~15質量%である。
また、ポリイソシアネート硬化剤の数平均分子量は、初期の粘度が高くなり過ぎないこと
から、好ましくは1,000~5,000である。また、ポリイソシアネート硬化剤の2
5℃における粘度は、好ましくは10,000mPa・s以下、より好ましくは8,00
0mPa・s以下である。
【0031】
<酸無水物基を有する化合物>
本発明の無溶剤型接着剤は、酸無水物基を有する化合物を含む。酸無水物基を有する化
合物としては特に制限されず、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、トリメリッ
ト酸エステル無水物のような化合物や、(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸と
を共重合させてなる樹脂が挙げられ、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステルと無水
マレイン酸とを共重合させてなる樹脂である。
【0032】
[(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂]
(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂は、公知の(
メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸との共重合体であれば特に限定されず、単独
又は2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エ
チル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸-i-プロピル、メタクリル酸ブチル、メタ
クリル酸-i-ブチル、メタクリル酸-t-ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル
酸デシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル酸シクロヘキシル、メタクリル
酸フェニルが挙げられる。中でも無水マレイン酸との共重合性の観点からメタクリル酸メ
チルが好ましい。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂の合成方法と
して好ましくはラジカル共重合法であり、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁
重合から適宜選択することができる。共重合に用いる全モノマー量に対して、無水マレイ
ン酸の使用量は、好ましくは5~50質量%であり、より好ましくは30~50質量%で
ある。無水マレイン酸の使用量が5質量%以上であると、長期保管時の接着力が劣化せず
好ましい。50質量%以下であると、(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸の共
重合物の合成が容易であるため好ましい。
【0035】
(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂の酸価は、好
ましくは250mgKOH/g以上であり500mgKOH/g以下であり、より好まし
くは300mgKOH/g以上であり、特に好ましくは350mgKOH/g以上である
。酸価が250mgKOH/g以上であると、長期保管時の接着力の低下がなく好ましい
。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂の数平均分子
量(Mn)は、好ましくは1,000~50,000、より好ましくは10,000~1
2,000である。数平均分子量が1,000以上であると、長期保管時の接着力の劣化
がなく、50,000以下であると、接着剤の相溶性が良好であり接着剤の塗工外観が優
れるため好ましい。
【0037】
[その他の成分]
本発明の無溶剤型接着剤は、ポットライフ性を損なわない範囲でさらにその他の成分を
含んでもよい。その他の成分は、ポリオール成分又はポリイソシアネート成分のいずれに
配合してもよいし、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを配合する際に添加して
もよく、1種を単独又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0038】
(シランカップリング剤)
本発明の無溶剤型接着剤は、基材への密着性を高めるために、さらに、シランカップリ
ング剤を含有することができる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメ
トキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルを有するトリアルコキシシラン;3
-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-グリシドキシプロ
ピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシ
シラン、3-グリキシドキシプロピルトリエキトシシラン等のグリシジル基を有するトリ
アルコキシシラン;3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネー
トプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するトリアルコキシシラン;3
-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシ
ラン、オルガノシラン等のメルカプト基を有するアルコキシシラン;が挙げられる。シラ
ンカップリング剤は、1種又は2種を併用してもよい。
シランカップリング剤の含有量は、ポリオール成分の固形分に対して、好ましくは0.
1~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%であり、特に好ましくは0.5~5質
量%である。
【0039】
(リン酸エポキシ、リンの酸素酸又はその誘導体)
本発明の無溶剤型接着剤は、耐酸性を高めるために、さらに、リン酸エポキシ、リンの
酸素酸又はその誘導体を含有することができる。リン酸エポキシとしては、DSM Re
sins レジン社製URAD-DD79等が挙げられる。リン酸エポキシの含有量は、
接着剤の固形分に対して、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~1
質量%である。
リンの酸素酸又はその誘導体の内、リンの酸素酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも
1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リ
ン酸等のリン酸類、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリ
ン酸等の縮合リン酸類が挙げられる。
リンの酸素酸の誘導体としては、上記のリンの酸素酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個
残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。これらのア
ルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪
族アルコール;フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシ
ノール等の芳香族アルコール;等が挙げられる。リンの酸素酸又はその誘導体は、2種以
上を組み合わせて用いてもよい。リンの酸素酸又はその誘導体の含有量は、接着剤の固形
分に対して、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~5質量%、さ
らに好ましくは0.1~1質量%である。
【0040】
(レベリング剤又は消泡剤)
本発明の無溶剤型接着剤は、積層体の外観を向上させるため、さらにレベリング剤又は
消泡剤を含有することができる。レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリ
ジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメ
チルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエ
ーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリ
ル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエ
ステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンが挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテル
とアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物が挙げられ
る。
【0041】
(反応促進剤)
本発明の無溶剤型接着剤は、ウレタン化反応を促進するため、さらに反応促進剤を含有
することができる。反応促進剤としては、例えば、ジブチルチンジアセテート、ジブチル
チンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等の金属系触
媒;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ
(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0
)ウンデセン-7等の3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミン;が
挙げられる。
【0042】
本発明の無溶剤型接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を含有し
てもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウム
フレーク、ガラスフレークなどの無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(酸化防止剤、熱
安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑
剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、硬化反応を調整するための触媒
等が例示できる。
【0043】
本発明の無溶剤型接着剤の粘度は、常温~150℃、さらに常温~100℃において、
好ましくは100~10,000mPa・s、より好ましくは100~5,000mPa
・sである。上記範囲内であると、接着剤の粘度が過度に高くなることを防止でき、無溶
剤型接着剤として加工性に優れたものとなる。
【0044】
本発明の無溶剤型接着剤の配合直後の酸価は、好ましくは1~20mgKOH/g、よ
り好ましくは2~10mgKOH/gである。上記範囲内であると、ポットライフと耐内
容物適性の両立できるものとなる。
【0045】
ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを配合する際は、ポリオール中の水酸基に
対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCOのモル数/OHのモル数
)が、0.3~5.0になるよう配合する。より好ましくは1.0~2.0であり、特に
好ましくは、1.5~2.0である。
【0046】
<積層体>
本発明の積層体は、上述の無溶剤型接着剤からなる接着剤層が、少なくとも2つのシー
ト状基材の間に積層されたものであり、例えば、無溶剤接着剤を第1のシート状基材に塗
布して接着剤層を形成し、前記接着剤層に第2のシート状基材を重ね合わせ、両シート状
基材の間に位置する前記接着剤層を硬化した構成が挙げられる。但し、これらの構成に制
限されず、さらに接着剤層等を介して別の層が積層されていてもよい。積層体の厚みは、
包装材としての強度や耐久性の観点から、好ましくは10μm以上である。
【0047】
[接着剤層]
接着剤層は、一般的にラミネーターを用いて無溶剤型接着剤を第1のシート状基材の片
面に塗布して未硬化の接着剤層を形成した後、塗布面と第2のシート状基材と貼り合わせ
、常温又は加温下に硬化させることで形成することができる。無溶剤型接着剤の塗布量は
、好ましくは1~4g/m2程度である。
【0048】
[シート状基材]
シート状基材は特に制限されず、例えば、従来公知のプラスチックフィルム、紙、金属
箔が挙げられ、2つのシート状基材は同種のものでも異種のものでもよい。
プラスチックフィルムとしては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のフィルムを用いるこ
とができ、好ましくは熱可塑性樹脂のフィルムである。熱可塑性樹脂としては、例えば、
ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニ
ル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、繊維素系
プラスチックが挙げられる。シート状基材は、蒸着層等のバリア膜を備えていてもよく、
該蒸着層としては、アルミニウム(AL)、シリカ、アルミナ等の蒸着層が挙げられる。
【0049】
第1のシート状基材は、好ましくはプラスチックフィルムである。プラスチックフィル
ムとしては、包装材に一般的に使用されるものが挙げられ、ポリエチレンテレフタレート
(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)のようなポリエ
ステル樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)のようなポリオレ
フィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンア
ジパミド(MXD6ナイロン)のようなポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂
フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層
体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコ
ール共重合体/ナイロン6)や混合体等が挙げられる。中でも、機械的強度や寸法安定性
を有するものが好ましい。
プラスチックフィルムは、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは10μ
m以上30μm以下の厚さを有するものである。
【0050】
第2のシート状基材が積層体の最外層となる場合は、第2のシート状基材はシーラント
基材であることが好ましい。
シーラント基材としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポ
リエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性
ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン(CPP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプ
ロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステ
ル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーが挙げられる。
シーラント基材の厚みは特に制限されず、包装材への加工性やヒートシール性等を考慮
すると、好ましくは10~150μmであり、より好ましくは20~70μmである。ま
た、シーラント基材に数μm程度の高低差を有する凸凹を設けることで、滑り性や包装材
の引き裂き性を付与することができる。
第2のシート状基材が、積層体の中間層となる場合は、第2のシート状基材としては前
述のプラスチックフィルム、紙、金属箔等を好適に用いることができる。
【0051】
シート状基材は、基材上に印刷層を有していてもよい。
印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者などの表示、その他
などの表示や美感の付与のために、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様などの所望の任
意の印刷模様を形成する層であり、ベタ印刷層も含む。印刷層は、従来公知の顔料や染料
を用いて形成することができ、印刷層の形成方法は特に限定されない。
一般的には、印刷層は、顔料や染料等の着色剤を含む印刷インキを用いて形成される。
印刷インキの塗工方法は特に限定されず、グラビアコート法、フレキソコート法、ロール
コート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スピンコート法、インクジ
ェット法等の方法により塗布することができる。これを放置するか、必要により送風、加
熱、減圧乾燥、紫外線照射等を行うことにより印刷層を形成することができる。
印刷層は、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上5μm
以下、さらに好ましくは1μm以上3μm以下の厚さを有するものである。
【0052】
本発明の積層体の構成の一例を以下に挙げるが、これらに限定されるものではない。
2軸延伸ポリプロピレン(以下、OPP)/印刷層/接着剤層/無延伸ポリプロピレン(
以下、CPP)、
OPP/印刷層/接着剤層/AL蒸着CPP、
OPP/印刷層/接着剤層/PE、
印刷層/OPP/接着剤層/CPP、
NY/印刷層/接着剤層/PE、
印刷層/NY/接着剤層/CPP
NY/印刷層/接着剤層/CPP、
PET/印刷層/接着剤層/CPP、
印刷層/PET/接着剤層/CPP
PET/印刷層/接着剤層/NY/接着剤層/CPP、
透明蒸着PET/印刷層/接着剤層/NY/接着剤層/CPP、
PET/印刷層/接着剤層/AL蒸着PET/接着剤層/PE、
PET/印刷層/接着剤層/AL/接着剤層/CPP、
PET/印刷層/接着剤層/AL/接着剤層/PE、
PET/印刷層/接着剤層/NY/接着剤層/AL/接着剤層/CPP、
PET/印刷層/接着剤層/AL/接着剤層/NY/接着剤層/CPP
【実施例0053】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。特に指定がない場合、実
施例及び比較例中の部及び%は、質量部及び質量%を意味する。
【0054】
<数平均分子量(Mn)の測定方法>
数平均分子量の測定は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ
ー)「ShodexGPCSystem-21」を用いて行った。GPCは溶媒に溶解し
た物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒
としてテトロヒドロフランを用い、分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0055】
<酸価の測定方法>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:
トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。これに、フェノー
ルフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続した。その後、溶液が淡紅色を呈す
るまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。
酸価は次の(式1)により求めた。(単位:mgKOH/g)。
(式1)酸価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.25}/S]
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0056】
<水酸基価の測定方法>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:
トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。更にアセチル化剤
(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え
、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間
持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液
で滴定した。
水酸基価は次の(式2)により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位
:mgKOH/g)。
(式2)水酸基価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.25}/S]/(
不揮発分濃度/100)+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0057】
<NCO含有率(質量%)の測定方法>
200mLの三角フラスコに試料約1gを量り採り、これに0.5Nジ-n-ブチルア
ミンのトルエン溶液10mL、及びトルエン10mLを加えて溶解した。次に、フェノー
ルフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した後、溶液が淡紅色を呈するまで
0.25N塩酸溶液で滴定した。NCO含有率(質量%)は以下の(式3)により求めた
。
(式3):NCO(質量%)={(b-a)×4.202×F×0.25}/S
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
F:0.25N塩酸溶液の力価
【0058】
<ポリイソシアネート硬化剤の合成>
[合成例1](硬化剤1の合成)
数平均分子量約400のポリプロピレングリコール5部、数平均分子量約1,000の
ポリプロピレングリコール40部、グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数
平均分子量約400のトリオール5部、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート25
部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート25部を反応容器に仕込み、窒素ガス
気流下で攪拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、イソシア
ネート基含有率が15.0%の、ポリイソシアネート硬化剤(硬化剤1)を得た。
【0059】
[合成例2~6、比較合成例1~3](硬化剤2~9の合成)
表1に示す原料及び配合量に変更した以外は、硬化剤1と同様の所作を行い、ポリイソ
シアネート硬化剤(硬化剤2~9)を得た。
【0060】
得られた硬化剤について、東機産業社製のB型粘度計BLII(ローター:#3 回転
数:12)を用いて、JIS K5600 -2-3(2014年)のコーン・プレート粘
度計法に準拠して、25℃の粘度を測定した。測定値を表1に示す。
【0061】
【0062】
表1中の略称を以下に示す。
2,4-MDI:2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(WANHUA製、商品名
:MDI-50)
4,4-MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(WANHUA製、商品
名:MDI-100)
PPG-400:数平均分子量約400のポリプロピレングリコール(株式会社ADEK
A製、商品名:アデカポリエーテルP-400)
PPG-700:数平均分子量約700のポリプロピレングリコール(旭硝子社製、商品
名:エクセノール720)
PPG-1000:数平均分子量約1,000のポリプロピレングリコール(株式会社A
DEKA製、商品名:アデカポリエーテルP-1000)
PPG-2000:数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコール(株式会社A
DEKA製、商品名:アデカポリエーテルP-2000)
PPG-3000:数平均分子量約3,000のポリプロピレングリコール(三洋化成工
業製、商品名:サンニックスPP-3000)
PPG-4000:数平均分子量約4,000のポリプロピレングリコール(三洋化成工
業製、商品名:サンニックスPP-4000)
PPG-400 3官能:グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子
量約400のトリオール(株式会社ADEKA製、商品名:アデカポリエーテルT-40
0)
【0063】
<ポリオール成分の製造>
(ポリオール1の合成)
テレフタル酸110部、アジピン酸250部、ジエチレングリコール200部、ネオペ
ンチルグリコール75部、プロピレングリコール200部を反応容器に仕込み、窒素ガス
気流下で攪拌しながら150℃~240℃に加熱してエステル化反応を行った。酸価が1
0mgKOH/g以下になったところで反応温度を200℃にし、反応容器内部を徐々に
減圧し、1.3kPa以下で反応させ、酸価0.4mgKOH/g、水酸基価120mg
KOH/g、数平均分子量約5,800の、末端に2級水酸基を有するポリエステルポリ
オール(ポリオール1)を得た。
【0064】
(ポリオール2の合成)
数平均分子量約400のポリプロピレングリコールを300部、数平均分子量約200
0のポリプロピレングリコールを200部、グリセリンにポリプロピレングリコールを付
加した数平均分子量約400のトリオールを300部、4,4’-ジフェニルメタンジイ
ソシアネート150部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃~90
℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、IRにてイソシアネート基の消失を確認して
、末端に2級水酸基を有するポリエーテルポリウレタンポリオール(ポリオール2)を得
た。
【0065】
(ポリオール3の合成)
イソフタル酸120部、アジピン酸300部、エチレングリコール60部、ネオペンチ
ルグリコール400部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら260℃まで昇温した。酸価
が5mgKOH/g以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行い、1mmHgで
反応を継続し、余剰のアルコールを除去して、水酸基価が57mgKOH/g、数平均分
子量約2,000の、末端に1級水酸基を有し2級水酸基を有しないポリエステルポリオ
ール(ポリオール3)を得た。
【0066】
<酸無水物基含有化合物の製造>
(アクリルマレイン酸樹脂1の合成)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、トルエ
ン200部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら110℃まで昇温した。次に
滴下槽1にメタクリル酸メチル80部、アクリル酸ブチル50部、無水マレイン酸100
部、トルエン50部を仕込み、滴下槽2に過酸化ベンゾイル9部をトルエン50部に溶解
したものを仕込み、それぞれ同時に2時間かけて、反応容器内の温度を110℃に保ちな
がら、撹拌下に滴下した。反応終了後、室温まで冷却し、大量のメタノールによりポリマ
ーを沈殿、ろ過し、120℃で6時間乾燥し、数平均分子量10,000、酸価460m
gKOH/gの(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸との共重合体であるアクリ
ルマレイン酸樹脂1を得た。
【0067】
(アクリルマレイン酸樹脂2の合成)
撹拌機、温度系、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、トルエ
ン200部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、撹拌しながら110℃まで昇温した。次に
滴下槽1にメタクリル酸メチル90部、アクリル酸ブチル50部、無水マレイン酸80部
、トルエン50部を仕込み、滴下槽2に過酸化ベンゾイル9部をトルエン50部に溶解し
たものを仕込み、それぞれ同時に2時間かけて、反応容器内の温度を110℃に保ちなが
ら、撹拌下に滴下した。反応終了後、室温まで冷却し、大量のメタノールによりポリマー
を沈殿、ろ過し、120℃で6時間乾燥し、数平均分子量5,000、酸価340mgK
OH/gの(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸との共重合であるアクリルマレ
イン酸樹脂2を得た。
【0068】
<無溶剤型接着剤の調整>
[実施例1](接着剤1の調整)
硬化剤1を100部、ポリオール1を70部、アクリルマレイン酸樹脂1部、3-グリ
シドキシプロピルトリメトキシシラン1部、リン酸0.05部を混合して、無溶剤型接着
剤1を得た。
【0069】
[実施例2~13、比較例1~4](接着剤2~17の調整)
表2に記載の材料及び配合量を用いた以外は、接着剤1と同様の所作を行い、無溶剤接
着剤2~17を得た。
【0070】
<無溶剤型接着剤の評価>
得られた無溶剤型接着剤について以下の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0071】
[ポットライフ]
無溶剤型接着剤について、配合直後及び配合後40℃30分間保管後の粘度を各々、東
亜工業株式会社製のコーンプレート粘度計CV-1を用いて、測定温度40℃の条件で測
定した。保管前後の粘度変化から下記基準で評価を行った。
A: 保管後の粘度が、配合直後の粘度の2倍未満である(良好)
B: 保管後の粘度が、配合直後の粘度の2倍以上3倍未満である(使用可能)
C: 保管後の粘度が、配合直後の粘度の3倍以上4倍未満である(使用不可)
D: 保管後の粘度が、配合直後の粘度の4倍以上である(不良)
【0072】
[接着性能]
(積層体の作製)
無溶剤テストコーターを用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PET
)(商品名:E5102、厚み:12μm、東洋紡社製)と、アルミ(以下、AL)箔(
厚み:7μm、東洋アルミ社製)とを、無溶剤型接着剤で貼り合わせ積層体を得た。接着
剤の乾燥後塗布量は2.0g/m2であった。
次いで、得られた積層体のAL箔面と、表面コロナ放電処理をした直鎖状低密度ポリエ
チレンフィルム(以下、LLDPE)(商品名:TUX-FCD、厚み:100μm、三
井化学東セロ社製)とを、先程と同様にして無溶剤型接着剤で貼り合わせた後、40℃で
3日間養成して、PET/接着剤層/AL箔/接着剤層/LLDPEの構成である積層体
を得た。
【0073】
(ラミネート強度)
得られた積層体について、AL箔とLLDPEの間の接着強度(N/15mm)を、2
0℃の環境下、インストロン型引張試験機を用いて、試験片幅15mm、引張速度300
mm/分、T型剥離試験(JIS K 6854)に準拠して測定した。測定は5回行い
、その平均値を用いて、下記基準で評価を行った。
S: 接着強度が、10N/15mm以上である(非常に良好)
A: 接着強度が、5N/15mm以上、10N/15mm未満である(良好)
B: 接着強度が、3N/15m以上、5N/15mm未満である(使用可能)
C: 接着強度が、1N/15m以上、3N/15mm未満である(使用不可)
D: 接着強度が、1N/15mm未満である(不良)
【0074】
(ヒートシール強度)
得られた積層体から、幅15mm長さ300mmの試験片を切り出し、2枚の試験片の
LLDPE同士を重ね合わせ、190℃、2kg、1秒の条件でヒートシールを行い、測
定用の試験片とした。ラミネート強度と同様の条件で、LLDPE/LLDPE間の接着
強度(N/15mm)を測定した。測定は5回行い、その平均値を用いて、下記基準で評
価を行った。
A: 接着強度が、50N/15mm以上である(良好)
B: 接着強度が、30N/15mm以上、50N/15mm未満である(使用可能
)
C: 接着強度が、10N/15mm以上、30N/15mm未満である(使用不可
)
D: 接着強度が、10N/15mm以上未満である(不良)
【0075】
[耐内容物試験]
(パウチの作製)
得られた積層体を用いて9cm×12cmサイズのパウチを作製し、HEINZ社製ケ
チャップ30mlを充填し、190℃、2kg、1秒の条件でヒートシールを行った後、
50℃60%RHの環境下に4週間保管した。
【0076】
(ラミネート強度)
保管後のパウチから、幅15mm長さ300mmを切り取り試験片とした。AL箔/L
LDPE間の接着強度(N/15mm)を、インストロン型引張試験機を用いて、温度2
0℃、相対湿度65%、引張速度300mm/分、T型剥離試験(JIS K 6854
)に準拠して測定した。測定は5回行い、その平均値を用いて、下記基準で評価を行った
。
S: 保管後の接着強度が、5N/15mm以上である(非常に良好)
A: 保管後の接着強度が、3N/15mm以上である(良好)
B: 保管後の接着強度が、1N/15mm以上、3N/15mm未満である(使用
可能)
C: 保管後の接着強度が、0.1N/15mm以上、1N/15mm未満である(
使用不可)
D: 保管後の接着強度が、0.1N/15mm未満である(不良)
【0077】
(ヒートシール強度)
保管後のパウチから、幅15mm長さ300mmを切り取り試験片とした。ラミネート
強度と同様の条件で、LLDPE/LLDPE間の接着強度(N/15mm)を測定した
。測定は5回行い、その平均値を用いて、下記基準で評価を行った。
A: 保管後の接着強度が、50N/15mm以上である(良好)
B: 保管後の接着強度が、30N/15mm以上、50N/15mm未満である(
使用可能)
C: 保管後の接着強度が、10N/15mm以上、30N/15mm未満である(
使用不可)
D: 保管後の接着強度が、10N/15mm未満である(不良)
【0078】
【0079】
表2中の略称を以下に示す。
SC剤:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0080】
表2の結果から、本発明の無溶剤型接着剤は、優れたポットライフ、接着性能及び耐内
容物適性を示した。特に、数平均分子量が2,000のポリアルキレングリコールをポリ
アルキレングリコール合計に対して80%有するポリイソシアネート成分と、(メタ)ア
クリル酸エステルと無水マレイン酸との共重合体とを含有する実施例2、7、8、11は
、ポットライフ、接着性能及び耐内容物適性において非常によい性能を示した。
一方比較例1及び2は、ポリアルキレングリコールの数平均分子量が1,000未満で
あり、ポットライフが低下した。比較例3は、ポリアルキレングリコールの数平均分子量
が3,200を超えており、接着性能及び耐内容物適性が低下した。比較例4は、酸無水
物基を有する化合物を含まず、ポットライフに優れるが接着性能及び耐内容物適性が低下
した。
ポリオール成分、数平均分子量1,000~3,200のポリアルキレングリコールを含むポリアルキレングリコールと芳香族ジイソシアネートとの反応生成物を含むポリイソシアネート成分、及び酸無水物基を有する化合物を含み、
前記ポリオール成分が、末端に2級水酸基を有するポリエステルポリオール(但し、共重合成分としてジオール成分を含み、該ジオール成分が、5~20モル%の、第二級水酸基を有する少なくとも1種のグリコール化合物を含む、ポリエステル共重合体を除く)を含み、
前記数平均分子量1,000~3,200のポリアルキレングリコールの含有量が、ポリアルキレングリコールの合計に対して、50~95質量%である、無溶剤型接着剤。