(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019280
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】接着組成物、並びにこれを含むカバーレイフィルム及びプリント回路基板
(51)【国際特許分類】
C09J 109/02 20060101AFI20240201BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20240201BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240201BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240201BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20240201BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240201BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C09J109/02
C09J163/00
C09J11/08
C09J11/04
C09J7/35
H05K1/03 610L
H05K1/03 610R
H05K3/28 F
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023204135
(22)【出願日】2023-12-01
(62)【分割の表示】P 2021576755の分割
【原出願日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0075971
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】504408236
【氏名又は名称】ドゥーサン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン ムン
(72)【発明者】
【氏名】パク、クァン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、イン キ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ス ビョン
(57)【要約】
【課題】本発明は、接着性が低下することなく、流れ性、充填性(埋め込み性)、耐マイグレーションなどに優れた接着層を形成することができる、接着組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の接着組成物は、エポキシ樹脂;1種以上のゴムを含有するバインダー樹脂;及び、無機フィラー;を含み、粘度が8,000cps以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂;1種以上のゴムを含有するバインダー樹脂;及び、無機フィラー;を含み、粘度が8,000cps以下である、接着組成物。
【請求項2】
上記バインダー樹脂は、ニトリル-ブタジエンゴム及びアクリルゴムを含有するものである、請求項1に記載の接着組成物。
【請求項3】
上記ニトリル-ブタジエンゴム及びアクリルゴムは、1:1.5~7の重量比率で含まれる、請求項2に記載の接着組成物。
【請求項4】
上記ニトリル-ブタジエンゴムの含有量は、当該接着組成物合計100重量部に対して、10~25重量部の範囲である、請求項2に記載の接着組成物。
【請求項5】
上記エポキシ樹脂は、100~500g/eq範囲のエポキシ当量(EEW)を有するものである、請求項1に記載の接着組成物。
【請求項6】
当該接着組成物は、硬化温度が130℃以上である、請求項1に記載の接着組成物。
【請求項7】
当該接着組成物合計100重量部に対して、
5~50重量部のエポキシ樹脂、
30~60重量部のバインダー樹脂、及び、
15~35重量部の無機フィラー、
を含む、請求項1に記載の接着組成物。
【請求項8】
ベース基材;
上記ベース基材の一面上に配置され、請求項1~7のうちのいずれか1項に記載の接着組成物から形成された接着層;及び、
上記接着層上に配置された離型基材;
を含む、カバーレイフィルム。
【請求項9】
上記接着層は、140~160℃の温度で粘度が500~8,000cpsの範囲である、請求項8に記載のカバーレイフィルム。
【請求項10】
上記接着層は、硬化度が40~80%の範囲である、請求項8に記載のカバーレイフィルム。
【請求項11】
上記ベース基材の他面上に配置された表面保護基材をさらに含む、請求項8に記載のカバーレイフィルム。
【請求項12】
基板本体;及び、
上記基板の少なくとも一面上に配置された、請求項8~11のうちのいずれか1項に記載のカバーレイフィルム;
を含む、プリント回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着組成物、並びにこれを含むカバーレイフィルム及びプリント回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カバーレイフィルム(coverlay film)は、プリント回路基板の製造工程及び使用中において回路パターンを保護するために回路パターンの形成面に貼り付けられる。このようなカバーレイフィルムは、基材及び接着層を含む。
【0003】
従来、カバーレイフィルムの接着層は、エポキシ樹脂とポリエステルとの配合物や、エポキシ樹脂とアクリル樹脂との配合物などのような接着剤で形成される。しかし、従来、カバーレイフィルムの接着層は、流れ性及び充填性(埋め込み性)が低い。従って、従来のカバーレイフィルムは、屈曲のあるプリント回路基板に適用する際、プリント回路基板との間にあるボイド(void)の除去に長時間をかかるため、製造工程時間が増加していた。しかも、従来、カバーレイフィルムの接着層は、耐マイグレーション性(anti-migration)が低いため、プリント回路基板の回路パターン間で短絡(ショート)が発生し、プリント回路基板の信頼性を低下させた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、接着性が低下することなく、流れ性、充填性(埋め込み性)、耐マイグレーションなどに優れた接着層を形成することができる、接着組成物を提供することにある。
【0005】
また、本発明の他の目的は、上述のような接着組成物を用いて、プリント回路基板のホットプレス工程にかかる時間の短縮及び信頼性を向上させることができる、カバーレイフィルム及びこれを含むプリント回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述のような技術的課題を達成するため、本発明は、エポキシ樹脂;1種以上のゴムを含有するバインダー樹脂;及び、無機フィラー;を含み、粘度が8,000cps以下である、接着組成物を提供する。
【0007】
また、本発明は、ベース基材;上記ベース基材の一面上に配置され、上記接着組成物で形成された接着層;及び、上記接着層上に配置された離型基材;を含む、カバーレイフィルムを提供する。
【0008】
さらに、本発明は、基板本体;及び、上記基板の少なくとも一面上に配置された上記カバーレイフィルム;を含む、プリント回路基板を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る接着組成物は、エポキシ樹脂、バインダー樹脂、及び無機フィラーを含むが、上記バインダー樹脂が1種以上のゴムを含むことにより、接着性、流れ性、充填性(埋め込み性)、耐マイグレーション性、耐変色性、耐熱性、耐湿性、耐化学薬品性などに優れた接着層を形成することができる。
【0010】
また、本発明のカバーレイフィルムは、上記接着組成物で形成された接着層を含むことにより、プリント回路基板の製造時に、ホットプレス工程の効率を向上させ、かつプリント回路基板の不良率を低減させることができ、さらには、プリント回路基板の信頼性を向上させことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るカバーレイフィルムを概略的に示す断面図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係るカバーレイフィルムを概略的に示す断面図である。
【
図3】実施例1、6及び比較例1で製造された接着組成物の温度ごとの粘度変化をレオメーター(Rheometer)で測定して示すグラフである。
【
図4】(a)は、実施例1のカバーレイフィルムを適用したプリント回路基板の写真、(b)は、比較例1のカバーレイフィルムを適用したプリント回路基板の写真であって、同一条件下での充填性を比較した写真である。
【
図5】(a)は、実施例1のカバーレイフィルムを適用したプリント回路基板の表面を示す写真、(b)は、対照群であるカバーレイフィルム(DC-200、(株)斗山電子製)を適用したプリント回路基板の表面を示す写真であって、同一条件下での充填性を比較した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について説明する。
<接着組成物>
本発明に係る接着組成物は、エポキシ樹脂;1種以上のゴムを含有するバインダー樹脂;及び、無機フィラー;を含み、必要に応じて、硬化剤、硬化促進剤、有機溶媒、及び添加剤をさらに含むことができる。
【0013】
以下、本発明に係る接着組成物の各成分について説明する。
a)エポキシ樹脂
本発明の接着組成物において、エポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂であって、硬化後、三次元網状構造を形成することで、プリント回路基板に対するカバーレイフィルムの接着力を向上させると共に、耐熱性、耐水性、耐湿性に優れているため、カバーレイフィルムの耐熱信頼性を向上させることができる。また、エポキシ樹脂は、機械的強度、電気絶縁性、耐化学薬品性、寸法安定性、成型性に優れているだけでなく、他の樹脂との相溶性にも優れている。
【0014】
本発明において使用可能なエポキシ樹脂は、分子内に少なくとも1以上のエポキシ基(epoxide group)を含有する高分子であり、分子内に臭素などのハロゲン原子を含まないエポキシ樹脂であることが好ましい。また、エポキシ樹脂は、分子内にシリコン、ウレタン、ポリアミド、ポリアミドなどを含み、かつ分子内にリン原子、硫黄原子、窒素原子などを含むことができる。
【0015】
このようなエポキシ樹脂の種類としては、特に制限されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、又はこれらに水素を添加したもの、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル系エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどのグリシジルアミン系エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油などの線状脂肪族エポキシ樹脂などが挙げられ、好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0016】
一例では、エポキシ樹脂は、多官能性エポキシ樹脂であり得る。ここで、多官能性エポキシ樹脂は、1分子当たり2個以上、具体的に2~5個のエポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂であって、樹脂は、接着層に電気絶縁性、耐熱性、化学的安定性、強度(toughness)及び成型性を付与することができる。
【0017】
多官能性エポキシ樹脂としては、例えば、フェノール又はアルキルフェノール類とヒドロキシベンズアルデヒドとの縮合物をエポキシ化することで得られるエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールシA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、Xylok型エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA/ビスフェノールF/ビスフェノールADのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA/ビスフェノールF/ビスフェノールADのグリシジルエーテルエポキシ樹脂、ビスヒドロキシビフェニル系エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン系エポキシ樹脂,ナフタレン系エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
このようなエポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されないが、約100~500g/eqの範囲である場合、組成物の耐熱性及び成型性を向上させると共に、接着組成物の半硬化物(例えば、カバーレイフィルムの接着層)の流れ性を向上させることができる。特に、上述した範囲のエポキシ当量を有するエポキシ樹脂は、バインダー樹脂の一種であるアクリルゴムと混合されることで、接着層の流れ性が極めて向上され、カバーレイフィルムの接着層が、プリント回路基板の回路間の段差を短時間で埋め込むことができる。
【0019】
本発明の接着組成物において、エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、当該接着組成物合計100重量部に対して、約5~50重量部、具体的に約10~40重量部であり得る。この場合、接着組成物の流れ性に優れ、接着層の充填特性が極めて向上されると共に耐熱性も向上される。
【0020】
b)バインダー樹脂
本発明の接着組成物は、バインダー樹脂を含む。バインダー樹脂は、1種以上のゴムを含有するものであって、互いに結合力を付与して組成物のフィルム化を誘導するだけでなく、硬化後、硬化物(例えば、接着層)の屈曲性、耐クラック性を向上させることができる。
【0021】
一例では、バインダー樹脂は、ニトリル-ブタジエンゴム及びアクリルゴムが含有する。この時、ニトリル-ブタジエンゴム及びアクリルゴムの使用割合(混合割合)は、特に限定されず、例えば、1:1.5~7の重量比率であり得る。但し、ニトリル-ブタジエンゴム及びアクリルゴムの使用割合(混合割合)が上述の範囲内である場合、接着層は、約140~160℃(具体的に約150℃)の温度において粘度が約500~8,000cpsの範囲(具体的に約1,000~8,000cps、より具体的に約1,000~3,000cps、さらに具体的に約1,000~1,500cps)内に制御されることで、接着層の流れ性が極めて向上され、カバーレイフィルムのホットプレス(Hot press)時に接着層の充填特性を向上することができる。特に、本発明の接着組成物は、従来の接着組成物に比べ、ホットプレス工程の時間を約5~6倍以上短縮させ、工程効率を向上させることができる。さらに、本発明の接着組成物からなる接着層は、接着性、耐熱性、電気絶縁性に優れ、かつ耐マイグレーション(anti-migration)特性、高温・高湿での耐変色性に優れているため、カバーレイフィルムの信頼性を向上させることができる。
【0022】
本発明のバインダー樹脂において、ニトリル-ブタジエンゴム(nitrile-butadiene rubber、NBR)は、アクリロニトリル(Acrylonitrile)とブタジエン(Butadiene)との共重合体である合成ゴムである。このようなニトリル-ブタジエンゴムは、カバーレイフィルムをプリント回路基板に仮止めした後、約150~190℃の温度、約10~100kgf/cm2の面圧及び約2~20kNの線圧条件下でホットプレス(Hot press)を行う時、ニトリル-ブタジエンゴム成分間の化学的結合反応により接着層の流れ性が制御されることで、接着層の耐マイグレーション性、耐変色性を向上させ、かつ接着層に接着性、耐熱性、電気絶縁性を与えることができる。
【0023】
ニトリル-ブタジエンゴム中のアクリロニトリルの含有量は、特に限定されず、例えば、約25~45重量%の範囲であり得る。但し、ニトリル-ブタジエンゴム中のアクリロニトリルの含有量が上述の範囲内である場合、エポキシ樹脂と反応して優れた耐熱特性を実現することができ、また、反応速度の調節が容易であるため、接着層の充填性及び工程性を確保することができる。
【0024】
一例では、ニトリル-ブタジエンゴムは、末端及び/又は側鎖にカルボキシル基を含有するアクリロニトリル-ブタジエンゴム(以下、「カルボキシル基含有NBR」)であり得る。上記カルボキシル基含有NBRは、カルボキシル基を含有するため、接着組成物の安定性が向上し、他の成分との混和性を向上させると共に、接着組成物の加工性を向上させることができる。また、カルボキシル基含有NBRは、接着組成物の極性を増加させ、接着力性は勿論、耐湿性、耐熱性などの物性を向上させることができる。
【0025】
このようなカルボキシル基含有NBR中のカルボキシ基の含有率は、特に限定されず、例えば、約0.5~2重量%であり得る。なお、カルボキシル基含有NBR中のアクリロニトリルの含有率は、約25~45重量%であり得る。
【0026】
本発明のバインダー樹脂において、ニトリル-ブタジエンゴムの含有量は、特に限定されない。但し、ニトリル-ブタジエンゴムの含有量が少なすぎると、優れた耐熱性及び接着性を実現し難く、一方、ニトリル-ブタジエンゴムの含有量が多すぎると、充填コントロールが難しくなるおそれがある。従って、ニトリル-ブタジエンゴムの含有量は、当該接着組成物合計100重量部に対して、約5~25重量部、具体的に5~18重量部の範囲であることが好適である。この場合、接着層の耐マイグレーション性、耐変色性、接着性、耐熱性、電気絶縁性を向上させることができる。
【0027】
本発明のバインダー樹脂において、アクリルゴム(Acrylic rubber)は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を含む合成ゴムである。このようなアクリルゴムは、カバーレイフィルムをプリント回路基板に仮止めした後、約150~190℃の温度、約10~100kgf/cm2の面圧及び約2~20kNの線圧条件下でホットプレス(Hot press)を行う時、接着層中に未架橋状態又は半架橋状態にあり、接着層の流れ性がエポキシ樹脂と共に極めて向上し、接着層の熱硬化後、架橋され、接着層の接着性、剪断性、及び弾性が向上することができる。
【0028】
本発明において使用可能なアクリルゴムとしては、当業界で周知のものであれば、特に制限はない。例えば、(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位を含む単独重合体;(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位とアクリロニトリルに由来する繰り返し単位とを含有する共重合体;(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位と塩素原子含有モノマーに由来する繰り返し単位とを含有する共重合体などが挙げられる。また、上記共重合体は、上述した繰り返し単位の他、アクリル酸、メタアクリル酸、グリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレートなどのモノマーに由来する繰り返し単位をさらに含むことができる。ここで、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを意味する。
【0029】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチル(メタ)ヘキシルアクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレートなどのようなC1~C20のアルキル基を含有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ブタジエンなどのように炭素数4~6個の炭素原子からなる共役ジエンモノマー類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなどのようなビニルエーテル;などが挙げられるが、これらは、1種単独で使用、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
本発明のバインダー樹脂は、上述したニトリル-ブタジエンゴム(NBR)及びアクリルゴムの他、天然ゴム;スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリレート-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴムなどのような合成ゴムを1種以上さらに含有することができる。このような1種以上のゴム(但し、NBRとアクリルゴムを除く)は、バインダー樹脂の総量に対して、約20重量%以下、具体的に約0.01~15重量%で使用することができる。
【0031】
本発明の接着組成物において、バインダー樹脂の含有量は、特に限定されないが、当該接着組成物合計100重量部に対して、約30~60重量部、具体的に約40~50重量部であり得る。この場合、接着組成物の流れ性に優れ、接着層の充填特性が極めて向上されると共に、耐熱性も向上される。
【0032】
(c)無機フィラー
本発明に係る接着組成物は、無機フィラーを含む。無機フィラーは、絶縁性、耐熱性、強度などの機械的物性、低応力性を向上させると共に、溶融粘度を調節することもできる。
【0033】
本発明において使用可能な無機フィラーとして、例えば、天然シリカ(natural silica)、溶融シリカ(fused silica )、非結晶質シリカ(amorphous silica)、結晶シリカ(crystalline silica)などのようなシリカ;水酸化アルミニウム(aluminum hydroxide、ATH)、ベーマイト(boehmite)、アルミナ、タルク(talc)、ガラス(例えば、球状ガラス)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マグネシア、クレー、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム(MgO)、酸化チタン、酸化アンチモン、ガラス繊維、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスムス、チタニア(例えば、TiO2)、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、滑石(talc)、雲母(mica)などが挙げられるが、これらに制限されない。このような無機フィラーは、単独で又は2つ以上を混用して使用することができる。その中で、シリカ、アルミナ及びチタニアが低誘電定数を有するため、樹脂層と金属層との間の熱膨張係数の差を小さくすると共に、樹脂層の誘電率及び誘電正接を低くすることができる。一例では、無機フィラーは、水酸化アルミニウム(ATH)、酸化マグネシウム(MgO)及び二酸化ケイ素(SiO2)が含むことができる。この場合、水酸化アルミニウム(ATH)、酸化マグネシウム(MgO)及び二酸化ケイ素(SiO2)の混合割合(ATH:MgO:SiO2)は、40~60:30~20:30~20重量比率であり得る。
【0034】
このような無機フィラーの大きさ(例えば、平均粒径)、形状及び含有量は、接着層の特性に影響を及ぼす重要なパラメーター(parameter)である。
【0035】
具体的に、無機フィラーは、平均粒径(D50)が約1~10μm、具体的に約1~5μmの範囲であり得る。これは、無機フィラーの分散性において有利である。
【0036】
また、無機フィラーの形状は、特に限定されず、例えば、球状、フレーク状、樹枝状(dendrite)、円錐形、ピラミッド形、無定形などが挙げられる。
【0037】
本発明では、形状及び平均粒径が同一である1種の無機フィラーを単独で使用、又は、形状及び/又は平均粒径が異なる2種以上の無機フィラーを混合して使用することができる。
【0038】
本発明の接着組成物において、無機フィラーの含有量は、特に限定されず、絶縁性、耐熱性、強度などの機械的物性、低応力性などを考慮して適切に調節することができる。但し、無機フィラーの含有量が過剰であれば、接着層の接着性が低下し、しかも、接着層の流れ性及び充填性が低下することがあり得る。例えば、無機フィラーの含有量は、当該接着組成物合計100重量部に対して、約15~35重量部であり得る。
【0039】
(d)硬化剤
本発明の接着組成物は、硬化剤をさらに含むことができる。硬化剤は、エポキシ樹脂、ニトリル-ブタジエンゴム、及びアクリルゴムを硬化させる成分である。
【0040】
本発明において使用可能な硬化剤としては、当該技術分野で周知の硬化剤成分、例えば、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤などが挙げられる。
【0041】
具体的に、硬化剤としては、例えば、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、トリアルキルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、マレイン酸無水物、ピロメリット酸無水物などの酸無水物系硬化剤;メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミン系硬化剤;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族アミン系硬化剤;フェノールアラルキル型フェノール樹脂、フェノールノボラック型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、ナフトール型フェノール樹脂、テルペン型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、ビスフェノールAとレゾールから合成されたノボラック型フェノール樹脂などのようなフェノール系硬化剤;ジシアンジアミド(dicyandiamide)などの潜在性硬化剤などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、1種単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0042】
このような硬化剤の含有量は、当該接着組成物合計100重量部に対して、約1~10重量部、具体的に約1~6重量部であり得る。
【0043】
(e)硬化促進剤
本発明の接着組成物は、必要に応じて硬化促進剤をさらに含むことができる。硬化促進剤は、接着組成物中の成分が完全に硬化され得るように硬化時間を短縮させる触媒であって、当該技術分野で周知のものであれば、特に制限されない。例えば、イミダゾール系硬化促進剤、ホスホニウム系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤などが挙げられるが、これらは、1種単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0044】
本発明において使用可能なイミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-デシルイミダゾール、2-ヘキシルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタンデシルイミダゾール、2-メチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシル-イミダゾールトリメリテート、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾールトリメリテート、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾール-(1’)-エチル-s-トリアジン、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ベンジル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、4,4’-メチレン-ビス-(2-エチル-5-メチルイミダゾール)、2-アミノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジ(シアノエトキシメチル)イミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリニウムクロライド、イミダゾール含有ポリアミドなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0045】
上記ホスホニウム系硬化促進剤としては、例えば、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、ブチルトリフェニルホスホニウムクロライド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムヨーダイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムクロライド、又はテトラフェニルホスホニウムヨーダイドなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0046】
上記アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチル-1,3-ブタンジアミン、エチルモルフォリン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネンなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0047】
上記金属系硬化促進剤としては、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズなどの有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。上記有機金属錯体としては、例えば、コバルト(II)アセチルアセトネート、コバルト(III)アセチルアセトネートなどの有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトネートなどの有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトネートなどの有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトネートなどの有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトネートなどの有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトネートなどの有機マンガン錯体などが挙げられるが、これらに限定されない。上記有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸スズ、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
このような硬化促進剤の含有量は、当該接着組成物合計100重量部に対して、約0.001~10重量部、具体的に約0.001~5重量部、より具体的に約0.01~1重量部であり得る。
【0049】
(f)溶媒
本発明の接着組成物は、必要に応じて溶媒をさらに含むことができる。
本発明において使用可能な溶媒は、反応に参加せず他の物質を容易に溶解できるものであれば、特に制限はなく、また、乾燥ステップで容易に蒸発できるものが好ましい。例えば、当業界で周知のケトン(Ketone)類、エステル(Ester)類、アルコール(Alcohol)類、エーテル(Ether)類の溶媒などが挙げられる。より具体的に溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ベンゼン、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアルデヒド、シクロヘキサノン、メタノール、エタノールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0050】
このような溶媒は、液体状態の接着組成物が約8,000cps以下、具体的に約500~5,000cps、より具体的に約2,000~3,500cpsの粘度を有するように固形分の含有量を調節することができ、例えば、固形分の含有量を約28~36重量%の範囲に調節することが好適である。これにより、カバーレイフィルムの基材に対する接着組成物の塗布性が向上し、かつ作業効率が向上し、また、基材の表面に均一な接着層を形成することができる。
【0051】
(g)添加剤
本発明に係る接着組成物は、必要に応じて上述した成分の他に、当該技術分野で周知の添加剤を、当該組成物の使用目的及び使用環境に応じて選択的にさらに含むことができる。例えば、ゴム架橋剤、シランカップリング剤、レベリング剤(leveling agent)、帯電防止剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
このような添加剤の含有量は、特に限定されず、当該技術分野で周知の範囲で使用可能である。例えば、当該接着組成物合計100重量部に対して、約0.001~10重量部、具体的に約0.01~5重量部、より具体的に約0.01~3重量部であり得る。
【0053】
本発明において使用可能なゴム架橋剤としては、当業者で周知のものであれば、特に制限されず、例えば、加硫剤、有機過酸化物(organic peroxide)などが挙げられる。具体的には、硫黄、Di-(2,4-dichlorobenzoyl)-peroxide、Dibenzoyl peroxide、1,1-Di-(tert-butylperoxy)-3,3,5-trimethylcyclohexane、Butyl-4,4-di-(tert-butylperoxy)valerate、Dicumyl peroxide、Di-(2-tert-butyl-peroxyisopropyl)-benzene、2,5-Dimethyl-2,5-di(tert-butylperoxy)hexyne-3、2,5-Dimethyl-2,5-di-(tert-butylperoxy)-hexane、tert-Butyl peroxybenzoate、Di-tert-butylperoxideなどが挙げられる。
【0054】
このようなゴム架橋剤の含有量は、当該接着組成物合計100重量部に対して、約0.1~20重量部、具体的に約0.1~10重量部、より具体的に約1~5重量部の範囲であり得る。
【0055】
また、本発明において使用可能なシランカップリング剤としては、当該技術分野で周知のものであれば、特に限定されず、例えば、エポキシ系、メタクリルオキシ系、アミノ系、ビニル系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などのシランカップリング剤が挙げられ、1種単独で使用、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。このようなシランカップリング剤は、接着組成物の硬化時に、無機フィラーと他の成分との間の接着性を向上させることができる。
【0056】
上記シランカップリング剤の含有量は、無機フィラー100重量部に対して、約1~20重量部であり得るが、これに限定されない。
【0057】
また、本発明において使用可能なレベリング剤は、当業界で周知のものであれば、特に制限はなく、主にフッ素系レベリング剤などが使用される。
【0058】
このようなレベリング剤の含有量は、全固形分100重量部に対して、約0.01~1重量部の範囲であり得る。
【0059】
本発明に係る接着組成物の硬化温度は、約130℃以上であり、具体的に約130~200℃の範囲であり得る。
【0060】
本発明に係る接着組成物の粘度は、常温条件(具体的に約25~30℃の温度)で約8,000cps以下、具体的に約500~5,000cps、より具体的に約2,000~3,500cpsであり得る。この場合、接着組成物の塗布性が向上するため、作業効率を向上させることができ、また、基材の表面に均一な厚さの接着層を形成することができる。
【0061】
本発明の接着組成物は、当該技術分野における常法で製造することができる。例えば、エポキシ樹脂;アクリロニトリル-ブタジエンゴム、及びアクリルゴムを含むバインダー樹脂;及び、無機フィラー;と、選択的に硬化剤、硬化促進剤、溶媒及び添加剤(例えば、ゴム架橋剤など)とをボールミル、ビーズミル、3ロールミル(3 roll mill)、バスケットミル(basket mill)、ダイノミル(dyno mill)、プラネタリー(planetary)などの混合装備を用いて室温ないし適切に昇温された温度において混合及び撹拌して接着組成物を製造することができる。
【0062】
上述のような本発明の接着組成物は、接着性は勿論、流れ性、充填性(埋め込み性)、絶縁性、耐熱性、耐マイグレーション性、耐変色性、耐湿性、耐化学薬品性、寸法安定性、成型性などに優れている。
【0063】
<カバーレイフィルム>
本発明は、上述のような接着組成物を用いたカバーレイフィルムを提供する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るカバーレイフィルムを概略的に示す断面図であり、
図2は、本発明の第2の実施形態に係るカバーレイフィルムを概略的に示す断面図である。
【0064】
本発明に係るカバーレイフィルム10A、10Bは、プリント回路基板、特にプリント回路基板の回路を保護するために使用されるカバーレイフィルムであって、ベース基材11;上記基材の一面上に配置され、上記接着組成物で形成された接着層12;及び、上記接着層の上に配置された離型基材13;を含む。また、必要に応じて、本発明は、上記ベース基材11の他面上に配置される表面保護基材14をさらに含むことができる。
【0065】
以下、
図1を参照して本発明の第1の実施形態に係るカバーレイフィルム10Aについて説明する。
【0066】
図1に示されるように、本発明の第1の実施形態に係るカバーレイフィルム10Aは、ベース基材11、接着層12、及び離型基材13が順次積層された構造を有する。
【0067】
1)ベース基材
本発明に係るカバーレイフィルム10Aにおいて、ベース基材11は、プリント回路基板に接着層12により貼り付けられ、プリント回路基板の回路を保護する。
【0068】
一例では、ベース基材11は、絶縁性基材であり得る。この場合、カバーレイフィルムの低誘電特性を確保することができる。
【0069】
このようなベース基材11としては、当業界で周知のプラスチックフィルムであれば、特に制限なく使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルムなどが挙げられる。このようなプラスチックフィルムは、透明或いは半透明であり、又は、着色或いは無着色のものであり得る。一例として、ベース基材11は、ポリエチレンテレフタレート(PET)であり得る。別の一例として、ベース基材11は、ポリイミド(PI)であり得る。
【0070】
ベース基材の厚さ(T1)は、特に限定されず、例えば、約5~50μmであり得る。
【0071】
2)接着層
本発明に係るカバーレイフィルム10Aにおいて、接着層12は、ベース基材11の一面上に配置され、カバーレイフィルム10Aをプリント回路基板の表面に接着させる。
【0072】
本発明の接着層12は、半硬化状態であり、上記接着組成物で形成された硬化物を含む。なお、接着層12の硬化度(ゲル化度)は、約40~80%、具体的に約40~70%のゲル化の範囲であり得る。
【0073】
但し、本発明では、接着組成物が、エポキシ樹脂、バインダー樹脂及び無機フィラーを含むが、上記バインダー樹脂が、ニトリル-ブタジエンゴム及びアクリルゴムを特定の割合で含む。従って、本発明の接着層は、約140~160℃の温度で、粘度が約500~8,000cpsの範囲(具体的に約1,000~8,000cps、より具体的に約1,000~3,000cps、さらに具体的に約1,000~1,500cps)に制御され、優れた流れ性及び充填性(埋め込み性)を有する。
【0074】
上述のように、本発明の接着層12は、流れ性に優れているため、従来のカバーレイフィルムに比べて、ホットプレス工程の時間を約5~6倍以上短縮させ、工程効率を向上させることができる。また、本発明の接着層12は、約55~65秒以内の優れた充填性(埋め込み性)を有するため、カバーレイフィルムとプリント回路基板との間のボイド(void)による不良を抑制することができる。さらに、本発明の接着層12は、接着性を勿論、耐マイグレーション性及び耐変色性に優れているため、カバーレイフィルムがプリント回路基板を保護しながら、接着層によるプリント回路基板の短絡発生を極力抑制することができる。また、接着層は、耐熱性、耐湿性、耐化学薬品性などに優れ、プリント回路基板の信頼性を向上させることができる。
【0075】
接着層の厚さは、特に限定されず、例えば、約10~50μmであり得る。但し、接着層が上述した範囲内の厚さを有する場合、フィルムの製膜性、厚さ均一性などが向上される。
【0076】
3)離型基材
本発明に係るカバーレイフィルム10Aにおいて、離型基材13は、カバーレイフィルムのプリント回路基板への適用前まで接着層12上に設けられて接着層12の外部環境からの異物による汚染を防止するものであって、カバーレイフィルムがプリント回路基板の一面又は両面上に適用される前に剥離して除去される。
【0077】
このような離型基材13としては、当業界に周知のもので接着層12を損傷することなく剥離可能なものであれば、特に限定されず、例えば、フッ素系離型基材(Fluorine release film)、具体的に、白金触媒自体を含むフッ素シリコン離型剤、フッ素型硬化剤と接着性添加剤とが混合されたフッ素離型剤などが挙げられる。
【0078】
本発明において、離型基材の離型力は、特に限定されず、例えば、ASTMD3330により測定された接着層に対する離型基材の離型力は、約20~90gf/inchであり得る。
【0079】
また、異形基材の厚さは、特に限定されない。例えば、接着層の厚さ(T2)に対する離型基材の厚さ(T3)の割合(T3/T2)は、約3~5であり得る。
【0080】
以下、
図2に示される本発明の第2の実施形態に係るカバーレイフィルム10Bについて説明する。
【0081】
図2に示されるように、第2の実施形態に係るカバーレイフィルム10Bは、ベース基材11;上記ベース基材の一面に配置された、上記接着組成物で形成された接着層12;上記接着層12上に配置された離型基材13;及び、上記ベース基材11の他面上に配置された表面保護基材14;を含む。
【0082】
第2の実施形態に係るカバーレイフィルム10Bにおいて、ベース基材11、接着層12及び離型基材13については、第1の実施形態に記載された通りであるため、その説明を省略する。
【0083】
第2の実施形態に係るカバーレイフィルム10Bにおいて、表面保護基材14は、ベース基材11の他面(具体的に、外部表面)上に設けられるものであって、ベース基材11が外部からの異物により汚染されるのを防止し、カバーレイフィルムがホットプレス工程によりプリント回路基板に貼り付けられる時に、フィルムの表面、特に基材の表面を保護する。このような表面保護基材14は、カバーレイフィルムのプリント回路基板への適用時に、必要に応じて剥離除去され得る。
【0084】
本発明において使用可能な表面保護基材としては、当分野で周知の保護フィルムであれば、特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
また、表面保護基材14は、少なくとも一面、具体的にベース基材11と接触する表面がマット(matt)な表面であり得る。この場合、表面保護基材14のマット面は、基材に対して約30~100gf/inch範囲の剥離力を有することができる。このような表面保護基材14は、表面シールドフィルムがフレキシブルプリント回路基板に貼り付けられた後、カバーレイフィルムから容易に剥離除去され得る。
【0086】
また、表面保護基材の厚さは、特に限定されず、例えば、約20~80μm、具体的には、約40~60μmであり得る。
【0087】
本発明のカバーレイフィルム10A、10Bは、上記接着組成物を用いて接着層を形成する以外は、当該分野における常法で製造することができる。
【0088】
一例として、本発明に係るカバーレイフィルムの製造方法は、ベース基材の一面上に上記接着組成物をコーティング及び熱硬化して接着層を形成した後、上記接着層上に離型基材を配置した後、ラミネーションを行い、必要に応じて上記ベース基材の他面に表面保護基材をラミネーションして製造することができる。
【0089】
上記接着組成物の塗布方法としては、当該分野に周知の塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、コンマコート法、スロットコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法、インクジェット法などが挙げられる。
【0090】
上記熱硬化工程は、当該分野に周知の通常の条件下で適切に実施することができる。一例として、熱硬化は、約130℃以上(具体的に約130~200℃、より具体的に約130~150℃)で約5~10分間行うことができる。このような熱硬化により形成された接着層は、半硬化状態で、硬化度が約40~80%である。
【0091】
上述のように、本発明のカバーレイフィルムは、接着性、流れ性、充填性(埋め込み性)、耐マイグレーション性、耐変色性、耐熱性、耐湿性、耐化学薬品性などに優れた接着層を含むため、プリント回路基板の製造時にホットプレス工程の効率を向上させると共に、プリント回路基板の不良率を低減させることができ、さらには、プリント回路基板の信頼性を向上させることができる。
【0092】
<プリント回路基板>
本発明は、上記カバーレイフィルムを含むプリント回路基板を提供する。
一例では、本発明のプリント回路基板は、基板本体;及び、上記本体の少なくとも一面上に配置された上記カバーレイフィルム10A、10B;を含む。この場合、上記カバーレイフィルム10A、10Bの接着層12は、流れ性及び充填性に優れている。従って、60倍顕微鏡による外観検査時に、カバーレイフィルム10A、10Bと基板本体との間にボイド(void)が約0%である。また、本発明のプリント回路基板は、上記カバーレイフィルム10A、10Bが、耐熱性、吸湿耐熱性、耐変色性に優れているため、高い信頼性を有することになる。
【実施例0093】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は、これらによって限定されるものではない。
【0094】
[実施例1]
1-1.接着組成物の製造
下記表1に記載の組成に従って各成分を混合して接着組成物(粘度:約2,500cps)を製造した。下記表1中、エポキシ樹脂、NBR、アクリル樹脂、無機フィラー、硬化剤、及び硬化促進剤の含有量の単位は、重量部であり、エポキシ樹脂とバインダー樹脂との合計100重量部を基準としたものである。
【0095】
1-2.カバーレイフィルムの製造
ベース基材であるポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:約25μm)の一面上に、実施例1-1で製造された接着組成物を塗布した後、約150℃で約5分間熱硬化させ、接着層(硬化度:約40%、厚さ:約35μm)を形成した。その後、上記接着層の上にフッ素系離型基材(厚さ:約120μm)を積層させ、カバーレイフィルムを製造した。
【0096】
[実施例2及び比較例1~5]
下記表1に記載の組成に従って各成分を混合した以外は、実施例1と同様にして実施例2及び比較例1~5の接着組成物及びカバーレイフィルムをそれぞれ製造した。
【0097】
【0098】
[実験例1]-物性評価
実施例1~6及び比較例1でそれぞれ製造されたカバーレイフィルムの物性評価を以下のように実施し、その結果を表2及び
図3~4に示す。
【0099】
1.粘度(Viscosity)
レオメーター(Rhometer)を用いて、カバーレイフィルム中の接着層の粘度について測定し、その結果を表2及び
図3に示す。
【0100】
2.充填性
カバーレイフィルム(離型基材を除く)をプリント回路基板(回路パターンの厚さ:35μm、幅:100μm、パターン間の離間距離:100μm)に、180℃の温度及び5,400LBの圧力条件下で、45秒間、ホットプレスを行った。この時、時間に従ってプレスしながら、プリント回路基板のパターンの間にカバーレイフィルムの接着層が充填される時点を確認した。その結果を表2及び
図4に示す。
【0101】
3)Solder Floating(S/F)
カバーレイフィルム(離型基材を除く)をプリント回路基板(回路パターンの厚さ:35μm、幅:100μm、パターン間の離間距離:100μm)に、180℃の温度及び5,400LBの圧力条件下で、45秒間、ホットプレスを行って実験製品を用意した。その後、300℃の鉛槽に実験製品を10秒間フローティング(Floating)させた後、実験製品の外観にブラスター(Blaster)又は層間剥離(Delamination)が発生したがどうかを確認した。この時、実験製品の外観にブラスター/層間剥離が発生した場合は、Failとした。
【0102】
4)変色性
カバーレイフィルム(離型基材を除く)をプリント回路基板(回路パターンの厚さ:35μm、幅:100μm、パターン間の離間距離:100μm)に、180℃の温度及び5,400LBの圧力条件下で、45秒間、ホットプレスを行って実験製品を用意した。その後、85℃及び85%RHの条件下で、実験製品を24時間放置した後、実験製品の初期に対して色相変化が発生したかどうかを確認した。この時、実験製品の色相変化が生じた場合は、Failとした。
【0103】
5)CAF Test
カバーレイフィルム(離型基材を除く)をプリント回路基板(回路パターンの厚さ:35μm、幅:100μm、パターン間の離間距離:100μm)に、180℃の温度及び5,400LBの圧力条件下で、45秒間、ホットプレスを行って実験製品を用意した。その後、85℃及び85%RHの条件下で、実験製品に168時間、5Vの電圧を印加した後、実験製品の抵抗変化を確認した。この時、実験製品の抵抗が106Ω以下となる場合は、Failとした。
【0104】
なお、比較例1では、充填性評価の際に、充填時点が100秒を超過しているため、CAF Testを実施しなかった。
【0105】
【0106】
[実験例2]-カバーレイフィルムの充填性テスト
実施例1で製造されたカバーレイフィルムの充填性について以下のようにテストを実施し、その結果を
図5に示す。
【0107】
カバーレイフィルム(離型基材を除く)をプリント回路基板(回路パターンの厚さ:35μm、幅:100μm、パターン間の離間距離:100μm)に、180℃の温度及び5,400LBの圧力条件下で、45秒間、ホットプレスを行った後、プリント回路基板のパターンにおけるカバーレイフィルムの充填外観を確認した。この時、対照群として(株)斗山電子製のDC-200を使用した。
【0108】
実施例1のカバーレイフィルムを適用したプリント回路基板では、パターン間が接着層で十分に充填されている(
図5(a)参照)。これに対し、対照群であるDC-200を適用したプリント回路基板では、パターンの間に接着層で充填されていない個所(黄色部分(★部分))があった(
図5(b)参照)。