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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001930
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】無線装置および制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/34 20060101AFI20231228BHJP
   B61L 3/12 20060101ALI20231228BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20231228BHJP
   H04W 4/46 20180101ALI20231228BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20231228BHJP
【FI】
B61L23/34
B61L3/12 Z
B60L3/00 A
H04W4/46
H04W64/00 171
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100805
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】599161890
【氏名又は名称】NECネットワーク・センサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 陽介
【テーマコード(参考)】
5H125
5H161
5K067
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125CA00
5H125CC03
5H125EE55
5H161AA01
5H161BB02
5H161CC13
5H161DD23
5H161EE04
5H161FF07
5H161GG04
5H161GG11
5H161GG21
5K067BB05
5K067DD20
5K067EE02
5K067EE25
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】発報範囲を適切な範囲に留めることができる無線装置および制御方法を提供する。
【解決手段】無線装置は、車両に搭載され、受信手段と、位置情報取得手段と、判定手段とを備える。受信手段は、他車両から送信された他車両の位置情報を含む所定の無線信号を受信する。位置情報取得手段は、自車両の位置情報を取得する。判定手段は、他車両の位置情報と自車両の位置情報とを比較し、その比較結果に基づいて、所定の無線信号を受信した場合に設定された所定の動作を実行するか否かを判定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、
他車両から送信された前記他車両の位置情報を含む所定の無線信号を受信する受信手段と、
自車両の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記他車両の位置情報と前記自車両の位置情報とを比較し、その比較結果に基づいて、前記所定の無線信号を受信した場合に設定された所定の動作を実行するか否かを判定する判定手段と
を備える無線装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記他車両の位置情報と前記自車両の位置情報とを比較した結果、前記他車両と前記自車両との距離が所定の閾値以内である場合に、前記所定の動作を実行すると判定する
請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記閾値は、前記車両の複数の走行エリア毎に設定される
請求項2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記他車両の位置情報と前記自車両の位置情報とを比較した結果、前記他車両と前記自車両との距離が所定の閾値以内である場合、さらに、前記他車両から受信した前記無線信号のレベルが所定の第1レベル以下であるか否かを判定し、
前記判定手段によって前記他車両から受信した前記無線信号のレベルが前記第1レベル以下であると判定された場合に、前記他車両の位置情報を含む前記所定の無線信号を送信する送信手段をさらに備える
請求項3に記載の無線装置。
【請求項5】
前記判定手段は、さらに、前記他車両の位置情報と前記自車両の位置情報とが比較できるか否かを判定し、比較できない場合、前記他車両から受信した前記無線信号のレベルが所定の第2レベル以上であるか否かを判定し、前記第2レベル以上であるとき、前記所定の動作を実行すると判定する
請求項4に記載の無線装置。
【請求項6】
前記所定の無線信号は、列車防護を目的とする信号であり、
前記所定の動作は、警報を発する動作である
請求項1から5のいずれか1項に記載の無線装置。
【請求項7】
車両に搭載された無線装置の制御方法であって、
他車両から送信された前記他車両の位置情報を含む所定の無線信号を受信するステップと、
自車両の位置情報を取得するステップと、
前記他車両の位置情報と前記自車両の位置情報とを比較し、その比較結果に基づいて、前記所定の無線信号を受信した場合に設定された所定の動作を実行するか否かを判定するステップと
を含む制御方法。
【請求項8】
車両に搭載された無線装置のコンピュータを、
他車両から送信された前記他車両の位置情報を含む所定の無線信号を受信する受信手段、
自車両の位置情報を取得する位置情報取得手段、
前記他車両の位置情報と前記自車両の位置情報とを比較し、その比較結果に基づいて、前記所定の無線信号を受信した場合に設定された所定の動作を実行するか否かを判定する判定手段、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線装置および制御方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には次のような列車防護無線中継システムが記載されている。特許文献1に記載の列車防護無線中継システムでは、他の列車の防護無線機から防護発報信号を受信した防護無線機が、さらに他の列車に対して防護中継発報を行う。この構成によれば、他列車を通じてさらに他の列車へ防護中継発報を行うことができるので、防護発報の発報範囲を一定距離範囲以上に拡大することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-278046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている列車防護無線中継システムでは、状況によっては、防護中継発報が複数回連続的に発生し、発報範囲を適切な範囲に留めることができない場合が生じうるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決する無線装置および制御方法、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、車両に搭載され、受信手段と、位置情報取得手段と、判定手段とを備える無線装置である。受信手段は、他車両から送信された他車両の位置情報を含む所定の無線信号を受信する。位置情報取得手段は、自車両の位置情報を取得する。判定手段は、他車両の位置情報と自車両の位置情報とを比較し、その比較結果に基づいて、所定の無線信号を受信した場合に設定された所定の動作を実行するか否かを判定する。
【0007】
また、本発明の一態様は、車両に搭載された無線装置の制御方法である。本制御方法は、他車両から送信された他車両の位置情報を含む所定の無線信号を受信するステップを含む。また、本制御方法は、自車両の位置情報を取得するステップを含む。また、本制御方法は、他車両の位置情報と自車両の位置情報とを比較し、その比較結果に基づいて、所定の無線信号を受信した場合に設定された所定の動作を実行するか否かを判定するステップを含む。
【0008】
また、本発明の一態様は、車両に搭載された無線装置のコンピュータに実行させるプログラムである。プログラムは、他車両から送信された前記他車両の位置情報を含む所定の無線信号を受信する受信手段、自車両の位置情報を取得する位置情報取得手段、前記他車両の位置情報と前記自車両の位置情報とを比較し、その比較結果に基づいて、前記所定の無線信号を受信した場合に設定された所定の動作を実行するか否かを判定する判定手段、としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の各態様によれば、発報範囲を適切な範囲に留めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る列車無線システムの構成例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る車上局無線機の構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る車上局無線機の動作例を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る列車無線システムの動作例を説明するための模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る無線装置の最小構成を示すブロック図である。
図6】本発明の実施形態に係る無線装置の制御方法の最小構成を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態に係るコンピュータの基本的構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0012】
(列車無線システム)
図1は本発明の実施形態に係る列車無線システムの構成例を示す図である。図1に示す列車無線システム200は、車上局無線機1-a、1-b、1-cおよび1-d、指令卓3、中央装置4、ならびに、基地局5-xおよび5-yを備えている。図1に示す例では、車上局無線機1-aと車上局無線機1-bは、ある路線の下りまたは上り線を走行する列車100-1の先頭または後部の車両10に搭載されている。また、車上局無線機1-cと車上局無線機1-dは、その路線の上りまたは下り線を走行する列車100-2の先頭または後部の車両10に搭載されている。また、車上局無線機1-a、1-b、1-cおよび1-dは、車上アンテナ2-a、2-b、2-cおよび2-dにそれぞれ接続されている。指令卓3および中央装置4は、列車運行を管理する指令所に設置されている。基地局5-xおよび5-yは路線の沿線に設置されている。なお、以下では、車上局無線機1-a~1-dを総称する場合、車上局無線機1という。また、列車100-1~100-2を総称する場合、列車100という。また、基地局5-xおよび5-yを総称する場合、基地局5という。なお、車上局無線機1は、本発明に係る無線装置の一構成例である。
【0013】
車上局無線機1は、列車防護無線装置としての機能と、列車100の乗務員と指令卓3を操作する指令員との間で無線通話を行うための機能とを備えている。列車防護無線装置は、事故や障害の発生等の非常時に周囲の列車を防護することを目的とする無線信号を送受信する装置である。無線通話を行うための機能については既存のシステムと同一とすることができる。車上局無線機1は、基地局5および中央装置4を介して指令卓3と通信する。基地局5は、車上局無線機1と無線通信する機能と、中央装置4と有線通信する機能を備え、車上局無線機1と中央装置4間の通信を中継する。中央装置4は、指令卓3と複数の基地局5との間の通信を制御する。
【0014】
なお、本実施形態では、車上局無線機1が列車防護無線装置として送受信する信号を防護信号という。また、車上局無線機1が防護信号を送信する動作を防護発報という。また、車上局無線機1が防護信号を受信した場合に警報を発する動作を防護受報動作という。また、車上局無線機1と基地局5との間で送受信される信号を列車無線信号という。なお、本実施形態の防護信号には、以下で説明するように、最初に防護発報した車上局無線機1の位置情報を含ませている。
【0015】
(車上局無線機の構成)
図2は、車上局無線機1の構成例を示すブロック図である。車上局無線機1は、例えば1または複数のコンピュータと、無線装置、操作子、送受話器、スピーカ、マイク、表示灯、衛星測位システムの受信装置等の周辺装置とを用いて構成することができる。また、車上局無線機1は、コンピュータ、周辺装置等のハードウェアと、コンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアの組み合わせ等から構成される機能的構成として図2に示す各部を備える。すなわち、図2に示す車上局無線機1は、機能的構成として、位置情報取得部11、受信部12、送信部13、判定部14、指令通信部15、および入出力部16を備える。
【0016】
位置情報取得部11は、例えばGPS(Global Positioning System)等の衛星測位信号の受信装置とアンテナとを含み、衛星測位システムを利用して車上局無線機1の現在位置の位置情報(経度および緯度)の測定結果を取得する。なお、位置情報取得部11は、衛星測位システムを利用して位置情報を取得するものに限定されず、例えば、線路付近から細かい位置情報を車上局無線機1に伝達することのできる装置を取り付けることで位置情報を取得するもの等としてもよい。
【0017】
受信部12は、他の車上局無線機1が送信した防護信号を受信する。受信部12は、防護信号を受信した場合、受信している期間、受信中である旨の信号を継続的に判定部14等に対して出力する。また、受信部12は、受信した防護信号から、当該防護信号が含む位置情報を復調し、復調した位置情報を送信部13、判定部14等に対して出力する。また、受信部12は、受信した防護信号のレベルを示す信号を判定部14等に対して出力する。
【0018】
送信部13は、入出力部16からの指示に従い、発報が指示された場合、発報の指示が解除されるまで、所定の防護信号を送信する。その際、送信部13は、位置情報取得部11が取得した位置情報で防護信号を変調し、防護信号に自車両10の位置情報を含ませて、自車両10の位置情報を含む防護信号を送信する。
【0019】
また、送信部13は、判定部14からの指示に従い、発報が指示された場合、発報の指示が解除されるまで、所定の防護信号を送信する。その際、送信部13は、受信部12が他の車上局無線機1から送信された防護信号から復調した他車両10の位置情報で防護信号を変調し、防護信号に他車両10の位置情報を含ませて、他車両10の位置情報を含む防護信号を送信する。
【0020】
すなわち、送信部13は、最初に防護信号を送信する場合には、防護信号に自車両10の位置情報を含ませて送信する。また、送信部13は、他の車上局無線機1から送信された防護信号を受信し、中継して送信する場合には、受信した防護信号に含まれていた他車両10の位置情報を送信する防護信号にそのまま含ませて送信する。
【0021】
判定部14は、まず、受信部12が他の車上局無線機1が送信した防護信号を受信したか否かを判定する。判定部14は、受信部12が他の車上局無線機1が送信した防護信号を受信した場合、他車両10の位置情報と自車両10の位置情報とを比較し、その比較結果に基づいて、防護受報動作を実行するか否かを判定する。防護受報動作は、防護信号を受信した場合に設定された動作であり、例えば入出力部16から所定の形式で警報を発する動作である。判定部14は、例えば、他車両10の位置情報と自車両10の位置情報とを比較した結果、他車両10と自車両10との距離が所定の閾値以内である場合に、防護受報動作を実行すると判定する。判定部14は、防護受報動作を実行すると判定した場合、防護受報動作の実行を、入出力部16に対して指示する。なお、判定部14による判定結果を示す信号は、入出力部16、送信部13等へ出力される。
【0022】
なお、判定部14は、他車両10の位置情報と自車両10の位置情報とを比較した結果、他車両10と自車両10との距離が所定の閾値以内である場合、さらに、他車両10から受信した無線信号のレベルが所定の第1レベル以下であるか否かを判定する。判定部14は、他車両10から受信した防護信号のレベルが第1レベル以下であると判定した場合、送信部13に対して他車両10の位置情報を含む防護信号を送信するよう、発報の指示を出力する。この場合、送信部13は、他車両10の位置が自車両10と近いが、例えば周囲の環境により受信レベルが低いときに、受信した防護信号の位置情報をそのまま含ませた防護信号を送信することになる。これにより周囲の環境で防護信号が届き辛い場合でも中継装置を用いずに、車上局無線機1のみで防護受報動作を実行することができる。
【0023】
また、判定部14は、さらに、他車両10の位置情報と自車両10の位置情報とが比較できるか否かを判定し、比較できない場合、他車両10から受信した防護信号のレベルが所定の第2レベル以上であるか否かを判定する。位置情報を比較できない場合とは、例えば、受信した位置情報が不正値であったり、自身の位置情報が取得不可であったりして、位置情報を比較できないという場合である。判定部14は、位置情報を比較できない場合に、他車両10から受信した防護信号のレベルが第2レベル以上であるとき、防護受報動作を実行すると判定する。判定部14は、防護受報動作を実行すると判定した場合、防護受報動作の実行を、入出力部16に対して指示する。
【0024】
なお、判定部14は、受信部12が他の車上局無線機1が送信した防護信号を受信しなかった場合、防護受報動作を解除すると判定する。また、判定部14は、他車両10と自車両10との距離が所定の閾値以内でなかった場合、防護受報動作を解除すると判定する。また、判定部14は、他車両10から防護信号のレベルが第1レベル以下ではない場合、および、位置情報を比較できない場合に、他車両10の位置情報を含む防護信号の送信を停止すると判定する。また、判定部14は、位置情報を比較できない場合に、他車両10から受信した防護信号のレベルが第2レベル以上でないとき、防護受報動作を解除すると判定する。判定部14は、各判定の結果に基づき、防護受報動作の解除や他車両10の位置情報を含む防護信号の送信の停止を指示する信号を、送信部12や入出力部16等に対して出力する。
【0025】
指令通信部15は、基地局5との間で列車無線信号を送受信する。指令通信部15は、入出力部16が入力した通話信号で変調した列車無線信号を送信し、受信した列車無線信号を復調して入出力部16から通話信号を出力する。
【0026】
入出力部16は、例えば、発報スイッチ、警報音停止スイッチ等の操作子、送受話器、スピーカ、ブザー、マイク、発報LED(発光ダイオード)等の表示灯を含む。入出力部16は、例えば発報スイッチが押下されると、送信部13に対して防護信号を発報するように所定の指示を出力する。この発報スイッチを押下する操作を防護発報操作という。また、入出力部16は、例えば発報スイッチが再度、押下されると、送信部13に対して防護信号の発報を解除するように所定の指示を出力する。また、入出力部16は、防護受報動作の実行を指示する信号を判定部14から受けた場合、発報LEDを点灯させるとともに、スピーカ等から警報音を出力する。また、入出力部16は、防護受報動作の解除を指示する信号を判定部14から受けた場合、発報LEDを消灯させるとともに、スピーカ等からの警報音の出力を停止する。また、入出力部16は、警報音停止スイッチが押下されると、警報音の出力を停止する。また、入出力部16は、送受話器等を用いて、指令通信部15との間で音声信号を入出力する。
【0027】
(車上局無線機の動作)
図3を参照して、図1および図2を参照して説明した車上局無線機1の動作例について説明する。図3は、本発明の実施形態に係る車上局無線機1の動作例を示すフローチャートである。図3に示す処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
【0028】
図3に示す処理が開始されると、判定部14は、受信部12が、他の車上局無線機1が送信した防護信号を受信したか否かを判定する(S101)。受信部12が防護信号を受信していなかった場合(S101:No)、判定部14は、入出力部16に対して防護受報動作の解除を指示するとともに、送信部13に対して防護信号の送信の停止を指示し(S112)、図3に示す処理を終了する。なお、ステップS112で防護受報動作の解除を指示された場合、入出力部16は、防護受報動作を実行しているときは防護受報動作を停止し、防護受報動作を実行していないきはなにもしない。また、ステップS112で防護信号の送信の停止を指示された場合、送信部13は、防護信号を送信しているときは送信を停止し、防護信号を送信していないときはなにもしない。以下、解除や停止の指示に対する入出力部16や送信部13の応答については同様であり、説明を省略する。
【0029】
受信部12が防護信号を受信していた場合(S101:Yes)、判定部14は、位置情報を比較可能であるか否かを判定する(S102)。ステップ102において判定部14は、受信した防護信号の中に位置情報のデータがあり、かつ、自身の位置情報と比較できるか否かを判定する。受信した位置情報が不正値であったり、自身の位置情報を取得不可であったりして位置情報を比較できない場合(S102:No)、判定部14は、防護信号の受信レベルが高いか否かを判定する(S104)。ステップS104において判定部14は、受信した防護信号のレベルが第2レベル以上であるか否かを判定する。
【0030】
受信レベルが低い場合(受信した防護信号のレベルが第2レベル未満である場合)(S104:No)、判定部14は、防護受報動作や防護信号送信動作を行っていたときは解除とし(S108)、再度防護信号の受信を確認する(S101)。受信レベルが高い場合(受信した防護信号のレベルが第2レベル以上である場合)(S104:Yes)、判定部14は、防護信号送信動作を行っていた場合は解除とするが防護受報動作とし(S107)、再度防護信号の受信を確認する(S101)。
【0031】
位置情報を比較できる場合(S102:Yes)、受信した防護信号の中の位置情報と自身の位置情報が近いかどうかを判定する(S103)。ステップS103において判定部14は、他車両10の位置情報と自車両10の位置情報とを比較した結果、他車両10と自車両10との距離が所定の閾値以内である場合に近いと判定する。近いかどうかの判定基準となる閾値は、例えば、1km以内をデフォルト値として、後から設定できるようにする。判定部14は、位置情報が遠い場合(距離が所定の閾値より大きい場合)(S103:No)、防護受報動作や防護信号送信動作を行っていた場合は解除とし(S106)、再度防護信号の受信を確認する(S101)。
【0032】
位置情報が近い場合(距離が所定の閾値以内の場合)(S103:Yes)、判定部14は、防護受報動作とし(S105)、さらに防護信号の受信レベルの判定を行う(S109)。ステップS109において判定部14は、受信した防護信号のレベルが所定の第1レベル以下であるか否かを判定する。受信レベルが低い場合(レベルが第1レベル以下である場合)(S109:Yes)、判定部14は、受信した防護信号と同じ位置情報のデータで防護信号を送信部13に送信させ(S110)、再度防護信号の受信を確認する(S101)。ステップS110では、防護信号に載せる位置情報が自身の位置情報ではなく、受信した位置情報となるので、別の車上局無線機1は元々防護発報を行っている車上局無線機1との位置情報を比較できる。受信レベルが低くない場合(レベルが第1レベルより大きい場合)(S109:No)、判定部14は、防護信号送信動作を行っていた場合は停止し(S111)、再度防護信号の受信を確認する(S101)。
【0033】
ここで、図4を参照して、車上局無線機1が防護信号を中継する例について説明する。図4は、本発明の実施形態に係る列車無線システム200の動作例を説明するための模式図である。図4に示す例では、ある路線の上り線または下り線を走行する列車100-1および100-2と、他の路線の上り線または下り線を走行する列車100-3および100-4に、車上局無線機1-a~1-hが各列車に2台ずつ搭載されている。図4は、車上局無線機1-aが最初に防護発報し、車上局無線機1-eが位置情報を引き継いで中継する例を示す。
【0034】
図4に示す例では、車上局無線機1-aが送信した防護信号SG1が、車上局無線機1-b、1-c、1-dおよび1-eで受信される。また、車上局無線機1-b、1-c、および1-dでの防護信号SG1の受信レベルは第1レベルより大きく(受信レベルが高く)、車上局無線機1-eでの防護信号SG1の受信レベルは第1レベル以下である(受信レベルが低い)。また、防護信号SG1が含む位置情報と車上局無線機1-eが取得した位置情報とが比較可能であり、車上局無線機1-aと車上局無線機1-eとの距離は所定の閾値以下であるとする。この場合、車上局無線機1-eは、防護受報動作を実行するとともに、防護信号SG2を送信する。防護信号SG2は、防護信号SG1が含む位置情報を含む。図4に示す例では、防護信号SG2は、車上局無線機1-f~1-hで受信される。
【0035】
以上のように本実施形態によれば、車上局無線機1は防護信号に位置情報を載せて発報する。防護信号を受信した別の車上局無線機1は自身の位置情報と受信した位置情報を比較して防護受報動作するか判定する。さらにその際に防護信号の受信レベルが小さいと判定された場合は、防護信号が送信されて周りの車上局無線機1へ伝達される。
【0036】
(作用・効果)
本実施形態によれば、位置情報により防護受報動作するか否かが決定されるため、防護受報動作が実際に実行される場合の発報範囲を適切な範囲に留めることができる。また、車上局無線機1同士で防護信号を中継する条件を、距離が所定の閾値以内かつ受信レベルが所定の第1レベル以下とすることで、中継のための防護信号を送信する車上局無線機1をこれらの条件を設定しない場合と比較して限定することができる。また、連続的に中継されることを防ぐことができるので、中継による防護信号の発報範囲を適切な範囲に留めることができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、車上局無線機1同士で防護信号を中継することにより、専用装置による防護中継を減らすことができコストダウンを図ることができる。また例えば見通しのよい場所では防護発報が行われた際に防護信号の受信レベルが想定より大きくなり、想定の範囲を超えて防護受報動作する可能性があったが、位置情報での判断により防護誤受報を減らすことができる。
【0038】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態においては、走行エリアを複数に区分して設定し、走行エリア毎に位置情報の判断基準を異ならせるようにすることができる。この構成によれば、現地の防護信号の到達具合を反映させてより運用しやすい動作にすることができる。
【0039】
(本実施形態の最小構成)
図5は、本発明の実施形態に係る無線装置の最小構成を示すブロック図である。図6は、本発明の実施形態に係る無線装置の制御方法の最小構成を示すフローチャートである。
【0040】
図5に示すように、本実施形態に係る無線装置1000は、車両10に搭載され、少なくとも受信手段1001と、位置情報取得手段1002と、判定手段1003とを備えればよい。受信手段1001は、他車両10から送信された他車両10の位置情報を含む所定の無線信号を受信する。位置情報取得手段1002は、自車両10の位置情報を取得する。判定手段1003は、他車両10の位置情報と自車両10の位置情報とを比較し、その比較結果に基づいて、所定の無線信号を受信した場合に設定された所定の動作を実行するか否かを判定する。
【0041】
また、図6に示すように、本実施形態に係る制御方法は、車両に搭載された無線装置の制御方法であって、ステップS1~S3を含む。ステップS1では、他車両から送信された他車両の位置情報を含む所定の無線信号を受信する。ステップS2では、自車両の位置情報を取得する。ステップS3では、他車両の位置情報と自車両の位置情報とを比較し、その比較結果に基づいて、所定の無線信号を受信した場合に設定された所定の動作を実行するか否かを判定する。
【0042】
(コンピュータの構成)
図7は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。コンピュータ700は、CPU(Central Processing Unit)710、主記憶装置720、補助記憶装置730、およびインタフェース740を備える。インタフェース740には例えば不揮発性記憶媒体750が接続される。上述の無線装置1000の少なくとも一部は、コンピュータ700に実装されてよい。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置730に記憶されてよい。CPU710は、プログラムを補助記憶装置730から読み出して主記憶装置720に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU710は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置720に確保する。
【0043】
プログラムは、コンピュータ700に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、補助記憶装置730に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、CPU710によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0044】
補助記憶装置730の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。補助記憶装置730は、コンピュータ700のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース740または通信回線を介してコンピュータ700に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ700に配信される場合、配信を受けたコンピュータ700が当該プログラムを主記憶装置720に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置730は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0045】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上記実施形態でコンピュータが実行するプログラムの一部または全部は、コンピュータ読取可能な記録媒体や通信回線を介して頒布することができる。
【0046】
上記実施形態の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
【0047】
(付記1)車両に搭載され、他車両から送信された前記他車両の位置情報を含む所定の無線信号を受信する受信手段と、自車両の位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記他車両の位置情報と前記自車両の位置情報とを比較し、その比較結果に基づいて、前記所定の無線信号を受信した場合に設定された所定の動作を実行するか否かを判定する判定手段とを備える無線装置。
【0048】
(付記2)前記判定手段は、前記他車両の位置情報と前記自車両の位置情報とを比較した結果、前記他車両と前記自車両との距離が所定の閾値以内である場合に、前記所定の動作を実行すると判定する(付記1)に記載の無線装置。
【0049】
(付記3)前記閾値は、前記車両の複数の走行エリア毎に設定される(付記2)に記載の無線装置。
【0050】
(付記4)前記判定手段は、前記他車両の位置情報と前記自車両の位置情報とを比較した結果、前記他車両と前記自車両との距離が所定の閾値以内である場合、さらに、前記他車両から受信した前記無線信号のレベルが所定の第1レベル以下であるか否かを判定し、前記判定手段によって前記他車両から受信した前記無線信号のレベルが前記第1レベル以下であると判定された場合に、前記他車両の位置情報を含む前記所定の無線信号を送信する送信手段をさらに備える(付記2)または(付記3)に記載の無線装置。
【0051】
(付記5)前記判定手段は、さらに、前記他車両の位置情報と前記自車両の位置情報とが比較できるか否かを判定し、比較できない場合、前記他車両から受信した前記無線信号のレベルが所定の第2レベル以上であるか否かを判定し、前記第2レベル以上であるとき、前記所定の動作を実行すると判定する(付記1)~(付記4)のいずれかに記載の無線装置。
【0052】
(付記6)前記所定の無線信号は、列車防護を目的とする信号であり、前記所定の動作は、警報を発する動作である(付記1)~(付記5)のいずれかに記載の無線装置。
【符号の説明】
【0053】
1、1-a~1-h…車上局無線機、10…車両、11…位置情報取得部、12…受信部、13…送信部、14…判定部、15…指令通信部、16…入出力部、100、100-1~100-4…列車、1000…無線装置、1001…受信手段、1002…位置情報取得手段、1003…判定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7