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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019362
(43)【公開日】2024-02-09
(54)【発明の名称】医療器具および医療器具セット
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/178 20060101AFI20240202BHJP
   A61M 39/22 20060101ALI20240202BHJP
   A61M 39/04 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
A61M5/178
A61M39/22
A61M39/04 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020213910
(22)【出願日】2020-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】有馬 大貴
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD07
4C066FF05
4C066KK08
4C066NN04
(57)【要約】
【課題】抗がん剤等の薬剤が注入針の針先から零れることを防止することができる医療器具および医療器具セットを提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る補助具200は、薬剤が流通可能な注入針140の先端部を包囲可能な内部空間を備える筒部210を有し、筒部には内部空間を外部と連通する第1開口部211と第2開口部212とが設けられ、筒部は第1開口部に設けられ、内部空間を負圧にする器具との接続が可能な接続部240と、内部空間において第2開口部に隣接して設けられ、注入針が挿通可能であって、注入針を挿通させた状態において内部空間における第2開口部の側から薬剤の漏出を防止する弁部材230と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が流通可能な中空の注入針の先端部を包囲可能な内部空間を備える筒部を有し、
前記筒部には、前記内部空間を外部と連通する第1開口部と第2開口部とが設けられ、
前記筒部は、前記第1開口部に設けられ、前記内部空間を負圧にする器具との接続が可能な第1接続部と、
前記内部空間において前記第2開口部に隣接して設けられ、前記注入針が挿通可能であって、前記注入針を挿通させた状態において前記内部空間における前記第2開口部の側から前記薬剤の漏出を防止する弁部材と、を備える医療器具。
【請求項2】
前記弁部材は、前記注入針を挿通させる切り込みを備える請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
前記第1接続部は、前記第1開口部が前記内部空間における前記注入針の挿入方向と交差する方向を向いて開口するように設けられている請求項1または2に記載の医療器具。
【請求項4】
前記筒部は、前記内部空間に設けられ、前記注入針の外表面に付着した前記薬剤を吸収可能な吸収部材をさらに備える請求項1~3のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項5】
前記筒部は、前記内部空間における前記第1接続部と前記弁部材の間に設けられ、前記注入針の先端部を保護する保護部材をさらに備える請求項1~4のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項6】
前記筒部は、前記第1開口部に設けられ、前記内部空間と前記外部の間で気体を流通させ、かつ、液体の流通を阻害する膜状部材をさらに備える請求項1~5のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項7】
筒部は、
前記外部と前記内部空間とを連通可能に設けられ、前記内部空間に流体を流入させる器具と接続可能な第2接続部と、
前記外部と前記内部空間とを連通可能に設けられ、前記内部空間から流体を流出させる器具と接続可能な第3接続部と、をさらに備える請求項1~6のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項8】
前記筒部は、前記注入針および前記注入針以外の針管のいずれか一方を保持可能な保持部材をさらに備える請求項1~7のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項9】
前記筒部は、前記内部空間の一部を構成し、前記第1接続部および前記弁部材を設けた第1筒部と、前記第1筒部とともに前記内部空間の一部を構成し、前記保持部材を備える第2筒部と、を備え、
前記第2筒部は、前記第1筒部との境界部分において前記注入針を挿通可能であるとともに前記注入針を抜き取った状態で前記注入針の挿通箇所を閉じることが可能なキャップ部材を備える請求項8に記載の医療器具。
【請求項10】
前記筒部は、前記内部空間に設けられ、前記注入針を挿通させ、前記注入針以外の針管の挿通を妨げる挿通壁をさらに備え、
前記挿通壁は、前記注入針の前記内部空間への挿入方向において前記挿通壁の前記挿入方向に交差する断面の面積が縮小する縮小部を備える請求項1~9のいずれか1項に記載の医療器具。
【請求項11】
前記針管は、前記注入針の挿入方向と交差する外形寸法が前記注入針より大きく、前記注入針を出し入れ可能な外筒針を備え、
前記挿通壁は、前記外筒針の先端部を突き当て可能な突き当て部を備える請求項10に記載の医療器具。
【請求項12】
薬剤が流通可能な中空の注入針を含む医療デバイスと、
前記注入針の先端部を包囲可能な内部空間を備える筒部を有し、前記筒部には前記内部空間を外部と連通する第1開口部と第2開口部とが設けられ、前記筒部は、前記第1開口部に設けられ、前記内部空間を負圧にする器具との接続が可能な第1接続部と、前記内部空間において前記第2開口部に隣接して設けられ、前記注入針が挿通可能であって、前記注入針を挿通させた状態において前記内部空間における前記第2開口部の側から前記薬剤の漏出を防止する弁部材と、を備える医療器具と、
前記第1接続部に接続した状態において前記内部空間を負圧にする前記器具と、を含む医療器具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具および医療器具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓に形成された腫瘍を処置する場合、局所的に治療を施してがん細胞を壊死させる経皮的エタノール注入療法(例えば、特許文献1を参照)を行う場合がある。術者は、腹部や胸部を切開し、肝臓に針カニューレを穿刺して、針先を肝臓がんの患部へ到達させる。そして、針先からエタノールを注入することによって、がん細胞を壊死させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4588977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した針カニューレ等による治療では投与される薬剤に抗がん剤等の比較的人体に副作用等を及ぼす可能性があるものが使用され得る。そのような薬剤は、手術前の準備の過程や手術中等に医療デバイスの針先から零れて暴露されると医療従事者や患者等に影響を及ぼす可能性がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、抗がん剤等の薬剤が注入針の針先から零れることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の一態様に係る医療器具は、薬剤が流通可能な中空の注入針の先端部を包囲可能な内部空間を備える筒部を有する。筒部には、内部空間を外部と連通する第1開口部と第2開口部とが設けられる。筒部は、第1接続部と弁部材とを備える。第1接続部は第1開口部に設けられ、内部空間を負圧にする器具との接続を可能に構成している。弁部材は、内部空間において第2開口部に隣接して設けられ、注入針が挿通可能であって、注入針を挿通させた状態において内部空間における第2開口部の側から薬剤の漏出を防止する。
【0007】
上記目的を達成する本発明の一態様は、医療デバイスと、医療器具と、器具と、を含む医療器具セットである。医療デバイスは薬剤が流通可能な中空の注入針を含む。医療器具は、注入針の先端部を包囲可能な内部空間を備える筒部を有する。筒部には内部空間を外部と連通する第1開口部と第2開口部とが設けられる。筒部は、第1接続部と、弁部材と、を備える。第1接続部は第1開口部に設けられ、内部空間を負圧にする器具との接続を可能に構成している。弁部材は、内部空間において第2開口部に隣接して設けられ、注入針が挿通可能であって、注入針を挿通させた状態において内部空間における第2開口部の側から薬剤の漏出を防止する。上記器具は、第1接続部に接続した状態において内部空間を負圧にする。
【発明の効果】
【0008】
上記医療器具および医療器具セットによれば、抗がん剤等の薬剤が注入針の針先から零れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る医療器具セットを示す概略図である。
図2図1の医療器具セットを構成する補助具の中心軸に沿う断面図である。
図3図2の補助具において弁部材に注入針を挿通させた状態を示す図である。
図4図2の変形例であって医療器具セットを構成する補助具の変形例1を示す断面図である。
図5図3の変形例であって医療器具セットを構成する補助具の変形例1を示す断面図である。
図6図3の変形例であって医療器具セットを構成する補助具の変形例2を示す断面図である。
図7図3の変形例であって医療器具セットを構成する補助具の変形例3を示す断面図である。
図8図2の変形例であって医療器具セットを構成する補助具の変形例4を示す断面図である。
図9図3の変形例であって医療器具セットを構成する補助具の変形例4を示す断面図である。
図10図2の変形例であって医療器具セットを構成する補助具の変形例5を示す断面図である。
図11図3の変形例であって医療器具セットを構成する補助具の変形例5を示す断面図である。
図12】本発明の第2実施形態に係る医療器具セットを構成する補助具の中心軸に沿う断面図である。
図13図12の補助具において弁部材に注入針を挿通させた状態を示す図である。
図14】本発明の第3実施形態に係る医療器具セットを構成する補助具の中心軸に沿う断面図である。
図15図14の補助具において筒部の内部空間に注入針を配置した状態を示す図である。
図16】本発明の第4実施形態に係る医療器具セットを構成する補助具の中心軸に沿う断面図である。
図17図16の補助具において筒部の内部空間に注入針を配置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0011】
さらに、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0012】
また、以下の説明において、「第1」、「第2」のような序数詞を付して説明するが、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。
【0013】
以下、図1図3を参照して本実施形態に係る医療器具セット1について説明する。図1は第1実施形態に係る医療器具セット1を示す概略図である。図2は、図1の医療器具セット1を構成する補助具200の中心軸に沿う断面図である。図3図2の補助具200において弁部材230に注入針140を挿通させた状態を示す断面図である。
【0014】
本実施形態に係る医療器具セット1は、抗がん剤等の薬剤を患者に投与する際に利用することができる。
【0015】
本実施形態に係る医療器具セット1は、図1を参照して概説すれば、医療デバイス100と、補助具200(医療器具に相当)と、器具300と、を有する。以下、各構成について詳述する。
【0016】
(医療デバイス)
医療デバイス100は、抗がん剤等の薬剤を投与可能に構成している。医療デバイス100は、図1に示すように筒部110と、押圧部材120と、シール部材130と、注入針140と、を備える。
【0017】
筒部110は、抗がん剤等の薬剤を収容する半閉空間を設けている。筒部110は、円筒等の筒形状に構成しており、筒形状の軸方向における両端に開口部を設けている。一方の開口部(基端側開口部とも呼ぶ)には押圧部材120を移動可能に配置することができる。他方の開口部(先端側開口部とも呼ぶ)には、注入針140を取り付けることができる。
【0018】
押圧部材120は、先端側を筒部110の半閉空間に収容し、基端側を筒部110の外部に配置するように構成している。押圧部材120は、筒部110の軸方向において筒部110に対して相対的に移動することによって薬剤が収容される半閉空間の大きさを変えるように構成している。押圧部材120によって半閉空間の大きさが減少することによって、半閉空間に収容されていた薬剤は減少した分、注入針140の内腔に流通し、患者に投与され得る。
【0019】
シール部材130は、押圧部材120の軸方向における先端部に取り付けるように構成している。シール部材130は、筒部110の内壁と摺動可能に篏合することによって筒部110の半閉空間に収容された薬剤が注入針140以外から流通することを防止する。
【0020】
注入針140は、筒部110の先端側における開口部に取り付けられる。注入針140は、内部に薬剤を流通できるように中空に構成している。注入針140は、筒部110の先端部に取り付けられ、注入針140の内腔は筒部110の半閉空間と連通するように構成している。
【0021】
医療デバイス100の筒部110、押圧部材120、シール部材130、および注入針140は、注入針140を通じて患者に薬剤を投与できれば、各々の具体的な材料は特に限定されない。一例として、各々の材料は筒部110および押圧部材120をポリプロピレンやポリエチレン等のプラスチックによって構成し、シール部材130はブチルゴム、シリコンゴムまたはエラストマー等によって構成できる。注入針140はステンレス鋼等によって構成することができる。
【0022】
(補助具)
補助具200は、注入針140の内腔に薬剤を流通させるプライミングの際に注入針140の先端から薬剤が漏出することで薬剤が医療従事者や患者に飛散すること等を防止する。補助具200は、図2等に示すように筒部210を備える。筒部210は、ストッパー220(挿通壁に相当)と、弁部材230と、接続部240(第1接続部に相当)と、を備える。
【0023】
筒部210は、薬剤が流通可能な中空の注入針140の先端部を包囲できるように内部空間を構成する第1半閉空間213と第2半閉空間214とを設けている。筒部210は、第1半閉空間213および第2半閉空間214を設けた円筒等の筒形状に構成している。ただし、筒部210は、プライミング時に薬剤が外部に漏出することを防止できれば、具体的な形状は円筒に限定されず、円筒以外の他の角筒(多角柱)等によって構成してもよい。筒部210は、本実施形態において一部材で構成している。
【0024】
筒部210は、筒形状の軸方向において先端側と基端側の両方に第1半閉空間213または第2半閉空間214を外部と連通させる開口部を設けている。本明細書では第1半閉空間213を外部と連通させる先端側の開口部を第1開口部211、第2半閉空間214を外部と連通させる基端側の開口部を第2開口部212と呼ぶ。第1半閉空間213の図2における注入針140の挿入方向の寸法(縦方向の寸法d1)は注入針140が挿入時に注入針140と対向する壁部215に接触しない、または到達しにくい程度に構成できる。
【0025】
ストッパー220は、本実施形態において筒部210の内部空間である第2半閉空間214に設けられる。ストッパー220には医療デバイス100の注入針140を挿通させ、注入針140以外の針管の挿通を妨げる第3開口部221(縮小部に相当)を設けるように構成している。
【0026】
第3開口部221は、筒部210の第1半閉空間213に進入する方向から軸方向に進むにつれて軸方向に交差する断面の面積が小さくなるように構成している。そのように構成することによって、注入針140を第3開口部221に挿入しやすくすることができる。第3開口部221は、本実施形態において径方向の寸法が段階的に変化する段付き形状を備えるように構成している。ただし、第3開口部は段付き形状に代えて、または段付き形状に加えてテーパー形状を備えるように構成してもよい。
【0027】
弁部材230は、筒部210の内部空間の軸方向において第2開口部212に隣接して設けている。筒部210の内部空間は、弁部材230によって第1開口部211側の第1半閉空間213と第2開口部212側の第2半閉空間214とに分割できる。
【0028】
弁部材230は、医療デバイス100のシール部材130を構成する弾性変形可能な弾性部材と同様の部材によって構成できる。弁部材230は、筒部210の軸方向に交差する断面形状と同様に断面形状を略円形状に構成している。弁部材230は、本実施形態においてストッパー220に隣接して設けている。
【0029】
弁部材230は、本実施形態において図2等に示すように略中央部において切り込み231を設けるように構成している。これにより、注入針140の先端部は、図3に示すように筒部210の第2開口部212から弁部材230を弾性変形させることによって、切り込み231から弁部材230を挿通して筒部210の第1半閉空間213に進入させる(挿入する)ことができる。
【0030】
弁部材230は、注入針140の先端部を第1半閉空間213に挿入した状態において注入針140を保持する。弁部材230は、注入針140を挿通させた状態において内部空間における第2開口部212の側から薬剤の漏出を防止する。
【0031】
弁部材230の切り込み231は、本実施形態において十字に形成している。ただし、注入針140が弁部材を挿通でき、挿通した状態で挿通箇所から薬剤が流出しなければ、切り込みの具体的な形状は十字に限定されない。また、注入針140を弁部材と密着した状態で注入針140の先端部を第1半閉空間213に挿入できれば、弁部材には切り込みを設けなくてもよい。
【0032】
接続部240は、筒部210の軸方向において第1開口部211の側に設けている。接続部240は、後述するように筒部210の第1半閉空間213(内部空間)を負圧にする器具300との接続を可能に構成している。
【0033】
接続部240は、第1開口部211を設け、第1開口部211は筒部210の第1半閉空間213と連通するように構成している。これにより、接続部240に器具300の接続部材340等を取り付けた状態で器具300を操作することによって、筒部210の第1半閉空間213を負圧にすることができる。
【0034】
接続部240は、本実施形態において筒部210と同様に軸線が注入針140の挿入方向と平行な中空の円筒形状に構成している。ただし、器具300と接続した状態で器具300を操作することによって筒部の第1半閉空間を負圧にできれば、接続部の具体的な形状は上記に限定されず、筒部と同様に多角柱等の他の筒形状によって構成してもよい。
【0035】
(器具)
器具300は、補助具200と接続した状態で使用者の操作により筒部210の第1半閉空間213を負圧にするように構成している。器具300は、図1に示すように筒部310と、押圧部材320と、シール部材330と、接続部材340と、を備える。
【0036】
筒部310は、医療デバイス100の筒部110と同様であり、押圧部材320は押圧部材120と同様であり、シール部材330はシール部材130と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0037】
接続部材340は、気体等の流体を流通可能なチューブ等の中空部材を備えるように構成している。術者は接続部材340の一方を筒部310に取り付け、他方を補助具200の接続部240に取り付けた状態で筒部310の半閉空間が増加するように押圧部材320を移動させる操作を行う。これにより、補助具200における筒部210の第1半閉空間213を負圧にすることができる。
【0038】
なお、器具300は本実施形態において医療デバイス100と同様の部材を備えるように構成しているが、補助具200の第1半閉空間213を負圧にできれば、具体的な構成は医療デバイス100と同様の構成に限定されない。
【0039】
(使用例)
次に本実施形態に係る医療器具セット1の使用例について説明する。
【0040】
まず、医師等の術者は医療デバイス100の注入針140を補助具200の弁部材230の切り込み231に差し込み、注入針140の先端部を筒部210の第1半閉空間213に配置(挿入)する。
【0041】
次に、術者は器具300の接続部材340を補助具200の接続部240に接続する。そして、術者は器具300の筒部310の内部空間が広がるように押圧部材320を筒部310に対して軸方向に相対的に移動させる操作を行う。これにより、補助具200の第1半閉空間213が負圧になる。
【0042】
その結果、医療デバイス100の筒部110の内部空間に収容された薬剤の少なくとも一部が筒部110の内部空間から注入針140の内腔に移動する。術者は、注入針140の先端部が筒部210の第1半閉空間213に配置された状態で筒部110内に配置された薬剤を注入針140の内腔に移動させる操作により、薬剤が注入針140の先端部から第1半閉空間213に出たことを目視にて確認できる。
【0043】
次に、術者は、注入針140を筒部210の第1半閉空間213から抜去する。注入針140の外表面に薬剤が付着した場合、注入針140が筒部210の第1半閉空間213から出る際に弁部材230を通過することで、薬剤を弁部材230に付着させて筒部210の第1半閉空間213に留めることができる。
【0044】
次に、術者は患者の腹部の周辺に小切開部を形成する。そして、術者は、エコー下で注入針140を経皮的に穿刺し、腫瘍手前あるいは腫瘍内部までアクセスする。そして、術者は筒部110の内部空間が減少するように押圧部材120を筒部110に対して軸方向に相対的に移動させて薬剤を患者に投与する。
【0045】
以上、説明したように本実施形態に係る医療器具セット1は、医療デバイス100と、補助具200と、器具300と、を備える。医療デバイス100は、薬剤が流通可能な中空の注入針140を含む。補助具200は、注入針140の先端部を包囲可能な内部空間を備える筒部210を有し、筒部210には内部空間を外部と連通する第1開口部211と第2開口部212とが設けられる。
【0046】
筒部210は、接続部240と、弁部材230と、を備える。接続部240は、第1開口部211に設けられ、内部空間である第1半閉空間213を負圧にする器具300との接続を可能に構成している。
【0047】
弁部材230は、内部空間において第2開口部212に隣接して設けられ、注入針140が挿通可能であって、注入針140を挿通させた状態において内部空間における第2開口部212の側から薬剤の漏出を防止する。器具300は、接続部240に接続した状態において内部空間である第1半閉空間213を負圧にするように構成している。
【0048】
このように構成することによって、軸方向における第1開口部211では器具300と接続することで薬剤の外部への漏出を防止でき、第2開口部212の側では弁部材230によって薬剤の外部への漏出を防止することができる。これにより、医療従事者や患者等への薬剤の飛散および医療デバイス100の周辺の床や医療機器が薬剤によって汚染されることを防止できる。また、プライミング後に注入針140を弁部材230から抜き去ることによって、注入針140の外表面に薬剤が付着することを防止できる。
【0049】
また、弁部材230は、注入針140を挿通させる切り込み231を備えるように構成している。このように構成することによって、注入針140の先端部を筒部210の内部空間である第1半閉空間213に挿入し易くすることができる。
【0050】
また、筒部210は、内部空間に設けられ、注入針140を挿通させ、注入針140以外の挿通を妨げるストッパー220を備える。ストッパー220は、注入針140の内部空間への挿入方向においてストッパー220の挿入方向に交差する断面の面積が縮小する第3開口部221を備えるように構成している。このように構成することによって、注入針140を筒部210の内部空間である第1半閉空間213に挿入し易くすることができる。
【0051】
(第1実施形態の変形例1)
図4は第1実施形態の変形例1に係る医療器具セットを構成する補助具200aの中心軸に沿う断面図、図5は補助具200aの筒部210の内部空間に注入針140の先端部を配置した状態を示す断面図である。
【0052】
第1実施形態において注入針140の先端部は弁部材230の切り込み231を通過することによって筒部210の内部空間を構成する第1半閉空間213に進入する(挿入される)と説明したが、筒部の内部空間には以下の部材を設けてもよい。
【0053】
変形例1に係る医療器具セットは、医療デバイス100と、補助具200aと、器具300と、を有する。医療デバイス100と器具300は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0054】
補助具200aの筒部210aは、図4図5に示すようにストッパー220と、弁部材230と、接続部240と、吸収部材250と、を備える。ストッパー220、弁部材230、および接続部240は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
吸収部材250は、筒部210aの内部空間に設けられ、注入針140の外表面に付着した薬剤を吸収可能に構成している。吸収部材250は、注入針140の外表面に付着した薬剤を吸収し易ければ材料は特に限定されないが、吸水性樹脂や吸水性繊維等を含むように構成できる。
【0056】
また、吸収部材250は、図4図5において弁部材230に対して下方(第2開口部212側)に配置しているが、注入針140に付着した薬剤を吸収できれば、弁部材の上方(第1開口部211側)に配置してもよい。
【0057】
次に本変形例に係る医療器具セットの使用例について説明する。まず、術者は医療デバイス100の注入針140を補助具200aの弁部材230の切り込み231に差し込む。注入針140は、切り込み231を挿通する際に吸収部材250を挿通する。
【0058】
接続部材340の接続部240への接続、押圧部材320の操作によるプライミングは第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
次に、術者は注入針140を筒部210aの第1半閉空間213から抜去する。注入針140を抜去する際に注入針140は外表面が吸収部材250を摺動するように通過する。これにより、プライミングの際に注入針140の外表面に付着した薬剤や汚れ等を除去することができる。以降の手技は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
以上説明したように本変形例1では筒部210aの内部空間に注入針140の外表面に付着した薬剤を吸収可能な吸収部材250を設けるように構成している。このように構成することによって、プライミングの際に注入針140の外表面に付着した薬剤等を注入針140から除去することができる。
【0061】
(第1実施形態の変形例2)
図6は、図3の変形例であって、筒部210bの内部空間に保護部材260を配置した状態を示す図である。
【0062】
第1実施形態において医療デバイス100の注入針140の先端部は、プライミングの際に筒部210の内部空間である第1半閉空間213に配置するが、筒部210の内部空間には保護部材260を設けることができる。なお、本変形例に係る医療器具セットは医療デバイス100と、補助具200bと、器具300と、を備える。医療デバイス100と器具300は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0063】
補助具200bの筒部210bは、図6に示すようにストッパー220と、弁部材230と、接続部240と、保護部材260と、を備える。ストッパー220、弁部材230、および接続部240は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0064】
保護部材260は、注入針140の先端部を保護する。保護部材260は、筒部210bの内部空間である第1半閉空間213において弁部材230と接続部240との間に設けている。保護部材260は、本実施形態において穴部261を設けている。穴部261には注入針140の先端部を嵌合等により挿通させることができる。
【0065】
保護部材260は、注入針140の先端部を保護できれば具体的な材料は限定されないが、一例としてシール部材130と同様の材料を挙げることができる。
【0066】
本変形例に係る医療器具セットの使用例は、術者が注入針140を弁部材230に差し込む際に注入針140の先端部を保護部材260の穴部261に挿入する。これにより、注入針140の先端部の軸方向における位置が固定されるか、動き難くなる。その他は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0067】
以上説明したように本変形例2では、筒部210の内部空間における弁部材230と接続部240の間に注入針140の先端部を保護する保護部材260を設けるように構成している。このように構成することによって、注入針140の先端部がプライミングの際に筒部210の壁部215に衝突して変形し、穿刺力が落ちたり、薬剤の投与が上手くいかなくなったりすること等を防止できる。
【0068】
(第1実施形態の変形例3)
図7図3の変形例に係る医療器具セットを構成する補助具200cを示す図である。変形例2では注入針140の先端部を挿通可能な穴部261を設けた保護部材260を筒部210bの内部空間に配置すると説明した。
【0069】
ただし、保護部材260cは、注入針140の先端部を保護できれば図6に限定されず、図7に示すように筒部210cの内部空間において接続部240の近傍に配置し、穴部261を設けなくてもよい。このように構成することによっても注入針140の先端部を弁部材230に挿通させた際に注入針140の先端部が筒部210cの壁部215に衝突して注入針140の先端部が変形等することを防止できる。
【0070】
なお、本変形例において保護部材260c以外の構成は第1実施形態と同様であり、使用例は第1実施形態と同様である。そのため、説明を省略する。
【0071】
(第1実施形態の変形例4)
図8は第1実施形態の変形例4を示す医療器具セットの補助具200dの中心軸に沿う断面図、図9は筒部210dの第1半閉空間213に注入針140の先端部を配置した状態を示す図である。第1実施形態では筒部210の第1開口部211に接続部240を設けると説明したが、第1開口部211には薬剤の流通を阻害する部材を設けることができる。
【0072】
本変形例に係る医療器具セットは、医療デバイス100と、補助具200dと、器具300と、を有する。医療デバイス100と器具300は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0073】
補助具200dの筒部210dは、図8図9に示すようにストッパー220と、弁部材230と、接続部240と、膜状部材270と、を備える。ストッパー220、弁部材230、および接続部240は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0074】
膜状部材270は、第1開口部211に設けられ、筒部210dの内部空間である第1半閉空間213と外部との間で気体を流通させ、かつ、液体の流通を阻害する。膜状部材270は、一例として第1開口部211に設置されるPTFE(Polytetrafluoroethylene)多孔質膜等を含むことができる。
【0075】
本変形例に係る医療器具セットの使用例は第1実施形態の医療器具セット1と同様であるため、説明を省略する。
【0076】
以上、説明したように本変形例では筒部210dの第1開口部211に筒部210dの内部空間と外部との間で気体を流通させ、液体の流通を阻害する膜状部材270を設けるように構成している。そのため、筒部210dの内部空間である第1半閉空間213において注入針140の先端部から漏れ出た薬剤が器具300に流通することを防止することができる。
【0077】
(第1実施形態の変形例5)
図10は第1実施形態の変形例5に係る医療器具セットを構成する補助具200eの中心軸に沿う断面図、図11は補助具200eの筒部210eの第1半閉空間213eに注入針140の先端部を配置した状態を示す図である。
【0078】
第1実施形態では接続部240の第1開口部211の軸線が注入針140の挿入方向に沿うように構成したが、以下のように構成することができる。本変形例において医療器具セットは、医療デバイス100と、補助具200eと、器具300と、を有する。医療デバイス100と器具300は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0079】
補助具200eの筒部210eは、図10図11に示すようにストッパー220と、弁部材230と、接続部240eと、を備える。ストッパー220と弁部材230は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0080】
接続部240eは、図10図11に示すように第1開口部211eの延在する軸方向が注入針140を第1半閉空間213eに挿入する方向(図10図11の縦方向)と交差する方向(図10図11における横方向)となるように構成している。
【0081】
本変形例に係る医療器具セットの使用例は、器具300の接続部材340の補助具200eに対する取り付け方向が異なる程度であり、その他は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0082】
以上説明したように本変形例では接続部240eにおいて第1開口部211eが筒部210eの第1半閉空間213eに対して注入針140が挿入する方向と交差する方向を向くように構成している。このように構成することによって、注入針140の先端部を筒部210eの内部空間に配置してプライミングを行った際に薬剤が第1開口部211eから接続部材340を流通して器具300に流通することを低減させることができる。
【0083】
また、接続部材340が接続される接続部240の軸線を本変形例のように注入針140の挿通方向と交差するようにし、かつ、接続部240eに変形例4に係る膜状部材を設ければ、注入針140が膜状部材270を突き破らないようにすることができる。また、接続部240eの軸線が注入針140の挿入方向と同軸上にないことによって、接続部材340が注入針140によって突き破られる可能性を低減することができる。
【0084】
(第2実施形態)
図12は第2実施形態に係る医療器具セットを構成する補助具200fの中心軸に沿う断面図、図13図12の断面図において弁部材230に注入針140を挿通させた状態を示す図である。
【0085】
第1実施形態では医療デバイス100が注入針140を備えると説明したが、医療デバイスは注入針以外の針管を備えるように構成することもできる。
【0086】
本実施形態に係る医療器具セットは、医療デバイス100fと、補助具200fと、器具300と、を備える。なお、器具300は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。医療デバイス100fは、筒部110と、押圧部材120と、シール部材130と、針部140f(針管に相当)と、を備える。筒部110、押圧部材120、およびシール部材130は第1実施形態と同様であり、針部140fが第1実施形態と異なるため、同様である構成の説明を省略する。
【0087】
針部140fは、図13に示すように注入針141fと、外筒針142fと、を備える。
【0088】
外筒針142fは、注入針141fの挿入方向と交差する外形寸法を注入針141fより大きく構成している。外筒針142fは、注入針141fを出し入れできるように中空に構成している。注入針141fは、第1実施形態の注入針140と同様に薬剤を流通可能な内腔を設けるように構成している。外筒針142fは、先端の角部を注入針141fに比べて鋭利でないように構成できる。
【0089】
外筒針142fは、注入針141fとの軸方向における相対的な位置を変化可能に構成している。
【0090】
補助具200fの筒部210fは、図12図13に示すようにストッパー220と、弁部材230と、接続部240と、保持部材280と、を有する。ストッパー220、弁部材230、接続部240は第1実施形態と同様であるため、詳細な説明を省略する。本実施形態においてストッパー220の段付き形状は外筒針142fの先端部を突き当てる突き当て部として利用可能に構成している。
【0091】
保持部材280は、図13に示すように注入針141f以外の針管である外筒針142fを保持するように構成している。保持部材280は、弁部材230と同様の材料によって構成でき、切り込みを備える。
【0092】
針部140fの挿入方向における第2半閉空間214の寸法d2(図13における第2半閉空間214の縦方向の寸法)は、保持部材280が外筒針142fを保持した状態に変形できる程度に構成できる。
【0093】
次に第2実施形態に係る医療器具セットの使用例について説明する。まず、術者は医療デバイス100fの注入針141fを外筒針142fに収納した状態で針部140fを保持部材280の切り込みに差し込み、外筒針142fをストッパー220の段付き形状に当接させる。そして、術者は注入針141fの先端部を外筒針142fから突出させて、注入針141fの先端部を筒部210fの第1半閉空間213に配置する。
【0094】
この際に、外筒針142fの先端部をストッパー220の段付き形状に突き当てるように操作することによって、注入針141fの先端部を筒部210の第1半閉空間213に配置しやすくできる。このとき、弁部材230は注入針141fを保持し、保持部材280は外筒針142fを保持する。
【0095】
次に、術者は器具300の接続部材340を補助具200fの接続部240に接続する。そして、器具300の筒部310に対して押圧部材320を軸方向に移動させ、補助具200fの第1半閉空間213を負圧にする。これにより、筒部110の薬剤が注入針141fの内腔に充填される(プライミング)。
【0096】
次に、術者は針部140fを筒部210fの第1半閉空間213から抜去する。次に、術者は患者の腹部周辺に小切開部を形成する。そして、術者は、注入針141fの先端部を外筒針142fの内部に収容した状態で外筒針142fを経皮的に穿刺を行い、腫瘍手前までアクセスする。
【0097】
注入針141fを外筒針142fの内部に収容した状態で針部140fを生体管腔で移動させることにより、注入針141fが意図せず、生体管腔を傷つけることを防止できる。
【0098】
外筒針142fの先端が腫瘍付近まで到達したら、術者は注入針141fを外筒針142fから先端側に突出させる。そして、押圧部材120を筒部110に対して相対的に移動させて薬剤を注入針141fから送出し、患者に投与する。
【0099】
以上説明したように本実施形態に係る医療器具セットの補助具200fは、注入針141f以外の外筒針142fを保持可能な保持部材280を備えるように構成している。このように構成することによって、外筒針142fのように薬剤の送出を行う注入針以外の用途の針を備えた様々な種類の医療デバイスのプライミングを補助具によって行うことができる。
【0100】
また、針部140fは注入針141fの挿入方向と交差する外形寸法を注入針141fより大きく、注入針141fを出し入れ可能な外筒針142fを備える。ストッパー220の段付き形状は外筒針142fの先端部を突き当て可能な突き当て部として機能できるように構成している。このように構成することによって注入針141fを第1半閉空間213に挿入しやすくすることができる。
【0101】
(第3実施形態)
図14は第3実施形態に係る医療器具セットを構成する補助具200gの中心軸に沿う断面図、図15は補助具200gの第2半閉空間214gに注入針140の先端部を配置した状態を示す図である。
【0102】
第1実施形態において注入針140はプライミングの際に筒部210の第1半閉空間213において注入針140の先端から薬剤が出たことを目視にて確認すると説明した。ただし、注入針140はプライミング後等に洗浄するように構成してもよい。
【0103】
本実施形態に係る医療器具セットは、医療デバイス100と、補助具200gと、器具300と、を有する。医療デバイス100と器具300は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0104】
補助具200gの筒部210gは、図14に示すようにストッパー220と、弁部材230、232と、接続部240と、接続部245(第2接続部に相当)と、接続部246(第3接続部に相当)と、を備える。ストッパー220、弁部材230、および接続部240は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0105】
筒部210gは、第2開口部212に隣接する第2半閉空間214gにおいて生理食塩水等の流体を流通可能に構成している。
【0106】
筒部210gは、接続部240に加えて接続部245、246を設けるように構成している。接続部245、246は、筒部210gの内部空間である第2半閉空間214gと外部とを連通可能に設けられ、筒部210gの第2半閉空間214gに流体を流入または流出可能に構成している。接続部245、246は、一例として接続部245において第2半閉空間214gへ流体を流入させる器具との接続を可能にし、接続部246において第2半閉空間214gからの流体を流出させる器具との接続を可能に構成できる。
【0107】
接続部245、246には接続部材340と同様に流体を流通可能なシリンジやチューブ等の中空部材を取り付けることができる。なお、流入部と流出部の数は例示であって、第2半閉空間214gに流体を流入および流出できれば、流入部と流出部の具体的な数や形状は図14図15に限定されない。
【0108】
弁部材232は、注入針140を保持するとともに第2半閉空間214gに流体を流通させた際に第2開口部212から流体が漏れ出ることを防止する。弁部材232は、筒部210gにおいて弁部材230よりも第2開口部212に接近して設けている。
【0109】
弁部材232は、弁部材230と同様の材料によって構成することができ、略中央部には切り込み231と同様の切り込み233を設けることができる。ただし、注入針140の先端部を筒部210gの第2半閉空間214gに挿入できれば、弁部材230と同様に弁部材232には切り込み233を設けなくてもよい。
【0110】
(使用例)
次に本実施形態に係る医療器具セットの使用例について説明する。
【0111】
まず、術者は医療デバイス100の注入針140を弁部材230、232の切り込み231、233に差し込み、注入針140の先端部を筒部210gの第1半閉空間213gに配置する。
【0112】
接続部材340の接続部240への接続、および押圧部材320による筒部210gの第1半閉空間213gを負圧にしてプライミングを行う操作は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0113】
次に、術者は注入針140の先端部を第1半閉空間213gから隣接する第2半閉空間214gに移動させる。そして、術者は接続部245および接続部246に中空部材を接続した状態において生理食塩水等の流体を第2半閉空間214gに流通させる。生理食塩水が接続部245から第2半閉空間214gを通過して接続部246に流れる際に注入針140の先端部の外表面等に付着した薬剤やその他の汚れ等を除去することができる。
【0114】
洗浄を行った注入針140の先端部は外表面を清潔に拭き取る等する。以降の手技は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0115】
以上のように本実施形態では筒部210gが接続部240に加えて接続部245、246を備える。接続部245、246は外部と内部空間である第2半閉空間214gとを連通可能に設けられ、接続部245は第2半閉空間214gに流体を流入可能な器具との接続を可能に構成している。接続部246は、第2半閉空間214gから流体を流出させる器具との接続を可能に構成している。
【0116】
このように構成することによって、プライミング後等に注入針140の先端部に付着した薬剤や他の汚れ等を除去することができる。なお、本実施形態において接続部245、246は第2半閉空間214gに連通し、プライミングを行う空間と洗浄を行う空間が別になるように構成した。ただし、接続部245、246はプライミングを行う第1半閉空間に連通し、プライミングと洗浄を同じ空間で行うように構成してもよい。
【0117】
(第4実施形態)
図16は第4実施形態に係る医療器具セットを構成する補助具200hの中心軸に沿う断面図、図17は筒部210hの内部空間である第2半閉空間214hに注入針140の先端部を配置した状態を示す図である。
【0118】
補助具200を構成する筒部210は、第1実施形態において一部材で構成すると説明したが、筒部は複数の部材を含むように構成してもよい。なお、医療器具セットを構成する医療デバイス100および器具300は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0119】
補助具200hの筒部210hは、図16に示すようにストッパー220と、壁部222と、弁部材230と、接続部240と、保持部材280hと、キャップ部材290と、を備える。ストッパー220、弁部材230、および接続部240は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0120】
また、筒部210hは、図16等に示すように第1筒部215hと、第2筒部216hと、を備える。第1筒部215hは、筒部210hの内部空間の一部でプライミングが可能な第1半閉空間213hを構成し、接続部240を設けるとともに第1半閉空間213hに弁部材230を配置している。
【0121】
第1筒部215hは、軸方向における第2筒部216hとの境界に第1半閉空間213hの断面が周囲より小さくなるように構成した壁部222を設けている。壁部222には注入針140の先端部を挿通可能な穴部を設けている。
【0122】
第2筒部216hは、筒部210hの内部空間の一部である第2半閉空間214hを構成するとともに、ストッパー220、保持部材280h、キャップ部材290を設置するように構成している。第2筒部216hは、本実施形態において注入針140の挿入方向からみて保持部材280h、ストッパー220、およびキャップ部材290の順に配置するように構成している。
【0123】
第1筒部215hと第2筒部216hの接続および分離の態様は特に限定されないが、第1筒部215hおよび第2筒部216hの一方の外表面にめねじ形状を設け、他方にめねじ形状と螺合可能なおねじ形状を設けること等によって構成できる。また、第1筒部215hと第2筒部216hとは、篏合により両者を接続するように構成してもよい。
【0124】
保持部材280hは、本実施形態において弁部材230およびキャップ部材290よりも基端側において注入針140を保持するように構成している。保持部材280hは、弁部材230と同様の材料によって構成できるとともに切り込み231と同様の切り込みを設けるように構成している。
【0125】
キャップ部材290は、第2筒部216hに設けられ、第1筒部215hとの境界部分付近において注入針140を挿通可能に構成している。キャップ部材290は、弁部材230と同様に注入針140を挿通しやすいように切り込み231と同様の切り込みを設けることができる。
【0126】
キャップ部材290は、注入針140の先端部をキャップ部材290から抜き取り、注入針140の先端部を第2半閉空間214hに配置した状態において注入針140の挿通箇所を閉じて保持部材280hとともに注入針140の先端部を包囲することができる。
【0127】
このように、保持部材280hとキャップ部材290を設けた第2筒部216hは、第2筒部216hを第1筒部215hから分離させた際に注入針140の先端部を包囲するキャップとして機能させることができる。キャップ部材290は弁部材230と同様の弾性部材を含むことができる。
【0128】
次に本実施形態に係る医療器具セットの使用例について説明する。
【0129】
術者は、第1筒部215hと第2筒部216hを一体にした状態で医療デバイス100の注入針140の先端部を補助具200hの保持部材280h、キャップ部材290および弁部材230に挿通させて注入針140の先端部を第1半閉空間213hに配置する。
【0130】
接続部材340の接続部240への接続、押圧部材320による第1半閉空間213hを負圧にして筒部110の薬剤を注入針140の内腔に移動させる操作、および患者の該当部位への薬剤の投与は第1実施形態と同様である。そのため、説明を省略する。
【0131】
患者の該当部位へ薬剤を投与したら、術者は注入針140を生体管腔から抜去する。次に、術者は第2筒部216hを第1筒部215hから分離させる。次に、術者は、薬剤の投与を終えた注入針140の先端部を第2筒部216hの保持部材280hに挿通させて第2半閉空間214hに位置させる。これにより、注入針140の先端部が第2筒部216hによって包囲される。なお、第2筒部216hによる注入針140の先端部の包囲、すなわち第2筒部216hのキャップとしての使用は、薬剤を投与する前に実施してもよい。このように使用することによって、プライミング後の移送などの際に注入針140からの薬剤の漏れを防止することができる。
【0132】
以上説明したように本実施形態の医療器具セットを構成する補助具200hの筒部210hは第1筒部215hと第2筒部216hとを備える。第1筒部215hと第2筒部216hは筒部210hの内部空間の一部を構成する。第1筒部215hは、接続部240および弁部材230を設けるように構成している。第2筒部216は、保持部材280hを備える。
【0133】
第2筒部216hは、第1筒部215hとの境界部分において注入針140を挿通可能であるとともに注入針140を抜き取った状態で注入針140の挿通箇所を閉じることが可能なキャップ部材290を備えるように構成している。
【0134】
このように構成することによって、注入針140を用いて患者に薬剤を投与する前後に注入針140に付着した薬剤が意図せず周囲に付着すること等をより一層防止することができる。
【0135】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0136】
1 医療器具セット、
100 医療デバイス、
140、141f 注入針、
140f 針部(針管)、
142f 外筒針、
200、200a、200b、200c、200d、200e、200f、200g、200h 補助具(医療器具)、
210、210a、210b、210c、210d、210e、210f、210g、210h 筒部、
211 第1開口部、
212 第2開口部、
213 第1半閉空間、
214 第2半閉空間、
215h 第1筒部、
216h 第2筒部、
220 ストッパー(挿通壁、突き当て部)、
221 第3開口部(縮小部)、
230 弁部材、
231 切り込み、
240 接続部(第1接続部)、
245 接続部(第2接続部)、
246 接続部(第3接続部)、
250 吸収部材、
260 保護部材、
270 膜状部材、
280 保持部材、
290 キャップ部材。
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