(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019363
(43)【公開日】2024-02-09
(54)【発明の名称】顔用マスクと医療用衣類をマイクロ波エネルギーを用いて殺菌消毒する装置と方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/07 20060101AFI20240202BHJP
【FI】
A61L2/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163159
(22)【出願日】2021-10-02
(31)【優先権主張番号】20199952
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521432236
【氏名又は名称】アール. グッターマン リソーシズ アンド ホールディングス エルティディ
(74)【代理人】
【識別番号】100081053
【弁理士】
【氏名又は名称】三俣 弘文
(72)【発明者】
【氏名】ロン グッターマン
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA05
4C058AA12
4C058BB05
4C058EE26
(57)【要約】 (修正有)
【課題】医療用衣類をマイクロ波エネルギーを用いて殺菌消毒する方法と装置を提供する。
【解決手段】本発明のユニットは、ハウジングとして機能する布材殺菌ユニット2と、布材殺菌ユニット2内に配置されマイクロ波エネルギーに曝されると蒸気を生成する水槽と、水槽の上で布材殺菌ユニット2に配置されるノズル列搭載プレート4と、蒸気噴出流を被殺菌布材の方向に向ける蒸気噴出ノズル6の列と、被殺菌布材を蒸気噴出ノズル6の列に対し配置し保持する被殺菌布ホルダー8とを有する。蒸気噴出ノズル6は、傾斜した上部部分を有し、高温高圧の蒸気噴出流が、蒸気噴出ノズル6の下の水槽と蒸気噴出ノズル6の上の布材殺菌ユニット2の内部との間の圧力差により噴出した時に、水滴を含まないようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔用マスクと医療用衣類をマイクロ波エネルギーを用いて殺菌消毒する装置において、
(a)ハウジングとして機能する布材殺菌ユニット(2)と、
(b)前記布材殺菌ユニット(2)内に配置される水槽(14)と、
前記水槽(14)は、マイクロ波エネルギーに曝された時に、前記水槽(14)内の水から蒸気を生成し、
(c)前記水槽(14)の上で前記布材殺菌ユニット(2)内に配置されるノズル列搭載プレート(4)と、
前記ノズル列搭載プレート(4)は、前記蒸気の漏れを制限することにより、前記蒸気の圧力を上げ、
(d)自身が噴出する高温高圧の蒸気噴出流を被殺菌布材(18)の方向に向ける蒸気噴出ノズル(6)の列と、
前記蒸気噴出ノズル(6)は、傾斜した上部部分を有し、前記傾斜した上部部分は、高温高圧の蒸気噴出流が、前記ノズル列搭載プレート(4)の下の水槽(14)と前記ノズル列搭載プレート(4)の上の布材殺菌ユニット(2)の内部との間の圧力差により噴出した時に、水滴を含まないように機能し、
(e)前記被殺菌布材(18)を前記蒸気噴出ノズル(6)の列に対し、配置し保持する被殺菌布ホルダー(8)と
を有し、
その結果、高温高圧の蒸気噴出流が前記被殺菌布材(18)の表面に当たり、
(i)前記被殺菌布材(18)を殺菌消毒し、微生物の伝搬と繁殖をさせず、
(ii)前記被殺菌布材(18)を個人用保護材(PPE)として再利用可能にする
ことを特徴とする顔用マスクと医療用衣類をマイクロ波エネルギーを用いて殺菌消毒する装置。
【請求項2】
前記水槽(14)は、前記布材殺菌ユニット(2)との一体部品である
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記布材殺菌ユニット(2)と被殺菌布ホルダー(8)は、外科用マスクの構成部分としての前記被殺菌布材(18)を収納し保持する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記蒸気噴出ノズル(6)の傾斜した上部部分は、動作中に不要な蒸気の巡回流を阻止する
ことを特徴とする請求項1-3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記高温高圧の蒸気噴出流は、前記被殺菌布材(18)を殺菌するが、燃えたり、焦がしたり、濡らしたり、品質劣化させない
ことを特徴とする請求項1-4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
(f)前記布材殺菌ユニット(2)に一体として連結された凸型カバー(10)を更に有し、前記凸型カバー(10)は、動作中に前記布材殺菌ユニット(2)の内部圧力と内部温度を上げる
ことを特徴とする請求項1-5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記凸型カバー(10)は、換気用スロット(12)を有し、
(i)動作中に余分な蒸気を前記布材殺菌ユニット(2)から放出し、
(ii)前記凸型カバー(10)の内側表面への水分の凝縮を防止する
ことを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記凸型カバー(10)は、その内側形状に沿って形成された排水用リッジ(16)を有し、前記排水用リッジ(16)は、動作中に前記凸型カバー(10)上に凝縮した水滴を前記布材殺菌ユニット(2)の壁の方向に逃がして前記水槽(14)に戻し、凝縮した水滴が前記被殺菌布材(18)上に落ちるのを防止する
ことを特徴とする請求項6又は7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記凸型カバー(10)は、前記布材殺菌ユニット(2)の表面温度がマイクロ波エネルギーにより生成された蒸気の温度に比較して低くなることにより生じる余分な湿分を、気体として前記布材殺菌ユニット(2)の内部から逃す
ことを特徴とする請求項6-8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
顔用マスクと医療用衣類をマイクロ波エネルギーを用いて殺菌消毒する方法において、
(a)ハウジングとして機能する布材殺菌ユニット(2)と前記布材殺菌ユニット(2)内に配置される水槽(14)とを用意するステップと、
(b)前記布材殺菌ユニット(2)をマイクロ波エネルギーに曝すことにより、前記水槽(14)内の水から蒸気を生成するステップと、
(c)前記ノズル列搭載プレート(4)を水槽(14)の上で前記布材殺菌ユニット(2)内に配置することにより、前記蒸気の漏れを制限することにより、前記蒸気の圧力を上げるステップと、
(d)前記ノズル列搭載プレート(4)内の蒸気噴出ノズル(6)から噴出する高温高圧の蒸気噴出流を被殺菌布材(18)の方向に向けるステップと、
前記蒸気噴出ノズル(6)は、傾斜した上部部分を有し、前記傾斜した上部部分は、前記高温高圧の蒸気噴出流が、前記蒸気噴出ノズル(6)の下の水槽(14)と前記蒸気噴出ノズル(6)の上の布材殺菌ユニット(2)の内部との間の圧力差により噴出した時に、水滴を含まないようにし、
(e)前記高温高圧の蒸気噴出流が前記被殺菌布材(18)の表面に当たるように、被殺菌布ホルダー(8)を用いて前記蒸気噴出ノズル(6)の列に対し被殺菌布材(18)を個別に配置し保持するステップと、
(f)前記被殺菌布材(18)を殺菌消毒し微生物の伝搬と繁殖をさせないステップと、
(g)前記被殺菌布材(18)を個人用保護材(PPE)として再利用するステップと
を有する
ことを特徴とする顔用マスクと医療用衣類をマイクロ波エネルギーを用いて殺菌消毒する方法、
【請求項11】
前記水槽(14)は、前記布材殺菌ユニット(2)との一体部品である
ことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記布材殺菌ユニット(2)と被殺菌布ホルダー(8)は、外科用マスクの構成部分としての前記被殺菌布材(18)を収納し保持する
ことを特徴とする請求項10又は11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記蒸気噴出ノズル(6)の傾斜した上部部分は、動作中に不要な蒸気の巡回流を阻止する
ことを特徴とする請求項10-12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ステップ(f)は、前記被殺菌布材(18)が、燃えたり、焦がしたり、濡らしたり、品質劣化させないようにして、行われる
ことを特徴とする請求項10-13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
(h)前記布材殺菌ユニット(2)と凸型カバー(10)を一体として連結することにより、動作中に前記布材殺菌ユニット(2)の内部圧力と内部温度を上げるステップ
を更に有する
ことを特徴とする請求項10-14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記凸型カバー(10)は、換気用スロット(12)を有し、
(A)動作中に余分な蒸気を前記布材殺菌ユニット(2)から放出し、
(B)前記凸型カバー(10)の内側表面への凝縮を防止する
ことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記凸型カバー(10)は、その内側形状に沿って形成された排水用リッジ(16)を有し、前記排水用リッジ(16)は、動作中に前記凸型カバー(10)上に凝縮した水滴を前記布材殺菌ユニット(2)の壁の方向に逃がして前記水槽(14)に戻し、凝縮した水滴が前記被殺菌布材(18)上に落ちるのを防止する
ことを特徴とする請求項15又は16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記凸型カバー(10)は、前記布材殺菌ユニット(2)の表面温度がマイクロ波エネルギーにより生成された蒸気の温度に比較して低くなることにより生じる余分な湿分を、気体として前記布材殺菌ユニット(2)の内部から逃す
ことを特徴とする請求項15-17のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔用マスク(外科用マスクも含み、以下単に「マスク」と称する)と医療用衣類をマイクロ波エネルギーを用いて殺菌消毒(以下単に「殺菌」とも称する)する装置と方法 に関する。
尚、本願は、2020年10月2日に欧州特許庁に出願された出願番号第20199952.1号を優先権主張するものである。
【背景技術】
【0002】
2019年後半の新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的大流行の後、ソーシャル・ディスタンスと手洗いの励行と共に、マスク(スカーフと他の手段も含む)は、世界の至る所で、使用されるようになり、人類に対する災害を緩和する、望むらくは撲滅することを目標にしてきた。世界中の100を超える国の人々は、公共の場、作業場(或いは指定された場所)でのマスクの着用を指示されている。その機能と有効性については議論の余地があるが、マスクは、装着者の吐き出す空気を濾過する手段として機能し、ウイルス性粒子が周囲に拡散するのを阻止したり制限することができる。
【0003】
様々な種類のマスク、簡単な綿製のマスクから付加価値を有する特別な素材のマスクまで、入手可能である。大部分のマスク(プラスティック製フェース・シールドを含む)に共通の素材糸は、繊維、布材又はポリーマー材料を主成分にする組成である。機能性、人間工学、装着性、美的価値は、市販のマスクを差別化する属性であり、他の重要な属性は、マスクの価格と再利用可能性である。
【0004】
価格と再利用可能性は、互いに関連する。初期の製造コスト以外に、マスクが有効に再利用されると、マスクの長期に渡る原価は、使い捨てマスクと比較すると、割安になる。しかし、再利用可能性は、マスクの継続使用を可能にする完全性に影響を与えずに、使用済みマスク(即ち、細菌のいる環境に曝されてきたマスク)が効果的に洗浄されるか否かにかかっている。この点に関し、使用済みマスクの「洗浄(cleaning)」は、日常使用されるものより、遙かに厳しい基準になる。
【0005】
米国CDC(United Staets Center for Disease Control and Prevention)によれば、様々な用語は、大きく異なった意味で使用されている。
*洗浄(cleaning)とは、微生物、ゴミ、その他不純物を表面から除去することを意味するが、必ずしも殺す(殺菌する)必要はない。
*衛生化(sanitizing)とは、表面又は対象物から微生物の数を減少させることを意味する。これは、公衆衛生の標準又は基準に従って安全レベルまで微生物を殺す又は除去することにより行われる。
*消毒(disinfecting)とは、表面又は対象物上の微生物を殺すことを意味する。
しかし本明細書で使用される「殺菌消毒」は、「衛生化」、「消毒」、「滅菌/殺菌」の用語の定義を含む。
【0006】
殺菌と消毒は、両方とも除染(decontamination)の形態であり、しばしば相互に交換可能に使用されているが、COVID-19の文脈においては、以下のように意味は異なる。
*消毒(disinfecting)とは、植物性微生物(vegetative microorganism)を殺すが、胞子(spore)は殺さない。この一例は、微生物を殺菌性化学物質(disinfectnat chemicals)から保護する保護膜である。
*滅菌/殺菌(sterilization)とは、死にづらい胞子を含む全ての生命形態(life form)を殺すことを意味する。
*無菌状態(asepsis)とは、ほぼ無菌の環境(strile enviroment)下でも存在する菌(bacteria)、ウイルス(virus)、他の微生物(microorganism)が存在せず、微生物の伝搬と繁殖の可能性を阻止する状態である。その結果、挑戦的事項は、滅菌されたマスクの厳格な要件を、個人的保護装置(PPH:Personal Protective Equipment)の適宜の形態としての有効性を維持しながら、達成することである。
【0007】
人間の呼吸プロセスは、高レベルの湿分の呼気を伴う。これは、装着したマスクに湿分を含有する領域を作り出す。マスク装着者の呼吸のプロセスでは、におい、唾液、病原体をマスク内に閉じ込め、大気に放出しない。マスクは、出入りする空気のフィルターの役目をし、周囲の人からの病原体飛沫又はチリ等の汚染粒子の浸入を減らしたり阻止したりする。マスクへの病原体の進入性は、マスクの濾過能力を評価する基準である。
【0008】
COVID-19のパンデミックは、世界中の大部分の人が、日常的にマスクを付けることが要求され、そしてマスクの病原体を「洗浄」する有効かつ容易な方法を必要とする状況を作り出した。
【0009】
マイクロ波エネルギーは、様々な乾燥・加熱の応用で使用されている。その一例は、衣類の従来の乾燥を加速にすること、哺乳ビンの殺菌、ベッドやマットレスのクリーニングから、様々な化学剤が存在する環境下において、マイクロ波エネルギーによる包装体とパッケージの除染、ウイルスや細菌の非活性化にまで多岐に渡る。
【0010】
一般的な電子レンジは、急速な内部加熱に依存し若干の変更が加えられているが、従来の高圧釜に適宜置き換わっている。かくして、COVID-19の発生の初期において、多くの人が、マスクの洗浄に対し家庭用電子レンジを用いたアプローチ/試みを公開していた。基本的に布が構成要素では、このような試みは、マスクが焼けたり、燃えたりしている。水をオーブンに入れる試みは、マスクが濡れてしまい、再利用可能性に疑問を投げかけるものであった。この様な思いつきの方法で得られたマスクの「洗浄」のレベルは、明らかに確立できないものである。
【0011】
ウイルスを不活性化する為に、布製マスクと医療用衣類を殺菌消毒する為にマイクロ波エネルギーを用いる際の挑戦的事項は、以下を含む。
(1)素材が燃えたりこげたり品質劣化するのを防止すること。
(2)完全に無菌状態にさせるよう素材の温度を十分上げること。
(3)素材が濡れるのを防止し、材料又は発泡構造の完全性を劣化させないこと。
素材が濡れることにより、汚染点が素材中に拡散し、素材全部で達成された最高温度を制限してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
好ましいことは、マスク(外科用マスクを含む)と医療用衣類をマイクロ波エネルギーを用いて殺菌消毒する方法と装置を提供することである。この本発明の方法と装置は、上記した様々な限界を克服する。
【0013】
本発明の目的は、マスクと医療用衣類をマイクロ波エネルギーを用いて殺菌消毒する方法と装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施例は布材殺菌ユニットを提供する。この布材殺菌ユニットは、一体型の水槽と、方向付けられた蒸気噴出ノズルの列と、蒸気噴出ノズルに対し被殺菌布材(PPEとして使用する)を適切に配置し保持する被殺菌布ホルダーとを有する。ノズルから出るマイクロ波により生成された蒸気の方向付けられた流れは、高温高圧蒸気を生成するが、これには水滴は含まれず、被殺菌布材が燃えたり焦げたりすることなく、また濡らすこともなく、無菌化する。
【0015】
本発明の一実施例の布材殺菌ユニットは、凸型カバーを有する。この凸型カバーは、ユニット内の蒸気を凝縮させ、ユニット内の露出温度を上げる。凸型カバーは、換気用スロットを有し、ユニット内の余分な蒸気と湿分を開放し、被殺菌布材が濡れるのを防止する。凸型カバーは、その内部に沿って排水用リッジを有し、凸型カバー上に凝縮した水滴を逃がし、被殺菌布材に上にたれるのを回避する排水系として機能する。排水用リッジは、水滴をユニットの壁の方向に逃がし、液体を水槽に戻す。
【0016】
本発明の一実施例によれば、本発明のマスクと医療用衣類をマイクロ波エネルギーを用いて殺菌消毒する装置は、
(a)ハウジングとして機能する布材殺菌ユニットと、
(b)前記布材殺菌ユニット内に配置される水槽と、
前記水槽は、マイクロ波エネルギーに曝された時に前記水槽内の水から蒸気を生成し、
(c)前記水槽の上で前記布材殺菌ユニット内に配置されるノズル列搭載プレートと、
前記ノズル列搭載プレートは、前記蒸気の漏れを制限することにより、前記蒸気の圧力を上げ、
(d)蒸気噴出ノズルから噴出する高温高圧の蒸気噴出流を被殺菌布材の方向に向ける蒸気噴出ノズル(6)の列と、
前記蒸気噴出ノズルは、傾斜した上部部分を有し、高温高圧の蒸気噴出流が、前記ノズル列搭載プレートの下の水槽と前記ノズル列搭載プレートの上の布材殺菌ユニットの内部との間の圧力差により噴出した時に、水滴を含まないようになり、
(e)被殺菌布材を前記蒸気噴出ノズルの列に対し、配置し保持する被殺菌布ホルダーとを有する。
その結果、高温高圧の蒸気噴出流が前記被殺菌布材の表面に当たり、(i)前記被殺菌布材を殺菌消毒し、微生物の伝搬と繁殖をさせず、(ii)前記被殺菌布材を個人用保護材として再利用可能にする。
【0017】
別の構成として、前記水槽は前記布材殺菌ユニットの一体部品である。
別の構成として、前記布材殺菌ユニットと被殺菌布ホルダーは、前記被殺菌布材を外科用マスクの構成部分として収納し保持する。
別の構成として、前記蒸気噴出ノズルの傾斜した上部部分は、動作中に流れの中に形成される不要な蒸気の巡回流を阻止する。
別の構成として、前記高温高圧の蒸気噴出流は、前記被殺菌布材を殺菌するが、燃えたり、焦がしたり、濡らしたり、品質劣化させない。
【0018】
別の構成として、(f)前記布材殺菌ユニットに連結された凸型カバーを更に有し、前記凸型カバーは、動作中に前記布材殺菌ユニットの内部圧力と内部温度を上げる。
【0019】
別の構成として、前記凸型カバーは、換気用スロットを有し、
(i)動作中に余分な蒸気が前記布材殺菌ユニットから放出され、
(ii)前記凸型カバーの内側表面への凝縮を防止する。
【0020】
別の構成として、前記凸型カバーは、その内側形状に沿って形成された排水用リッジを有する。前記排水用リッジは、動作中に前記凸型カバーに凝縮した水滴を前記布材殺菌ユニットの方向に逃がして前記水槽に戻し、凝縮した水滴が前記被殺菌布材上に落ちるのを防止する。
【0021】
別の構成として、前記凸型カバーは、余分な湿分を、気体として前記布材殺菌ユニットの内部から逃す。余分な湿分は、前記布材殺菌ユニットの表面温度がマイクロ波エネルギーにより生成された蒸気の温度に比較して相対的に低くなることにより生じたものである。
【0022】
本発明の一実施例によれば、顔用マスクと医療用衣類をマイクロ波エネルギーを用いて殺菌消毒する方法は、以下のステップを含む。
(a)ハウジングとして機能する布材殺菌ユニットと前記布材殺菌ユニット内に配置される水槽とを用意するステップと、
(b)前記布材殺菌ユニットをマイクロ波エネルギーに曝すことにより、前記水槽内の水から蒸気を生成するステップと、
(c)前記ノズル列搭載プレートを水槽の上で前記布材殺菌ユニット内に配置することにより、前記蒸気の漏れを押さえることにより、前記蒸気の圧力を上げるステップと、
(d)前記ノズル列搭載プレート内の被殺菌布材から噴出する高温高圧の蒸気噴出流を被殺菌布材の方向に向けるステップと、
前記蒸気噴出ノズルは、傾斜した上部部分を有し、高温高圧の蒸気噴出流が、前記ノズル列搭載プレートの下の水槽と前記ノズル列搭載プレートの上の布材殺菌ユニットの内部との間の圧力差により噴出した時に、水滴を含まないようになり、
(e)前記高温高圧の蒸気噴出流が前記被殺菌布材の表面に当たるように、被殺菌布ホルダーを用いて、前記蒸気噴出ノズルの列に対し被殺菌布材を個別に配置し保持するステップと、
(f)前記被殺菌布材を殺菌消毒し、微生物の伝搬と繁殖をさせないステップと、
(g)前記被殺菌布材を個人用保護材(PPE)として再利用するステップ。
【0023】
別の構成として、前記水槽は前記布材殺菌ユニットの一体部品である。
別の構成として、前記布材殺菌ユニットと被殺菌布ホルダーは、前記被殺菌布材を外科用マスクの構成部分として収納し保持する。
別の構成として、前記蒸気噴出ノズルの傾斜した上部部分は、動作中に流れの中に形成される不要な蒸気の巡回流を阻止する。
【0024】
別の構成として、前記ステップ(f)は、前記被殺菌布材が、燃えたり、焦がしたり、濡らしたり、品質劣化させないようにして、行われる。
【0025】
別の構成として、更に以下のステップを有する。(h)前記布材殺菌ユニットと凸型カバーを連結することにより、動作中に前記布材殺菌ユニットの内部圧力と内部温度を上げるステップ。
【0026】
別の構成として、前記凸型カバーは換気用スロットを有し、
(A)動作中に余分な蒸気を前記布材殺菌ユニットから放出し、
(B)前記凸型カバーの内側表面への凝縮を防止する。
【0027】
別の構成として、前記凸型カバーは、その内側形状に沿って形成された排水用リッジを有する。前記排水用リッジは、動作中に前記凸型カバーに凝縮した水滴を前記布材殺菌ユニットの方向に逃がして前記水槽に戻し、凝縮した水滴が前記被殺菌布材上に落ちるのを防止する。
【0028】
別の構成として、前記凸型カバーは、余分な湿分を、気体として前記布材殺菌ユニットの内部から逃す。余分な湿分は、前記布材殺菌ユニットの表面温度がマイクロ波エネルギーにより生成された蒸気の温度に比較して相対的に低くなることにより生じたものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の一実施例を
図1-7に図示する。
【
図1】A:マイクロ波エネルギーを用いる布材殺菌ユニットの一部開放状態の斜視図。B:
図1Aの布材殺菌ユニットの完全密閉状態の側面図。C:
図1Aの布材殺菌ユニットの完全密閉状態の正面図。D:
図1Aの布材殺菌ユニットの完全密閉状態の上面図。
【
図2】A:
図1Aの布材殺菌ユニットのノズル列搭載プレート(被殺菌布ホルダー8は省いている)の斜視図。B:
図2Aの布材殺菌ユニットのノズル列搭載プレートの側面図。C:
図2Bの布材殺菌ユニットのノズル列搭載プレートの断面線A-Aに沿った拡大断面図。D:
図2Cの布材殺菌ユニットCの蒸気噴出ノズルの詳細
図B、C。
【
図3】A:
図1Aの布材殺菌ユニットのノズル列搭載プレート(被殺菌布ホルダー8を含む)の斜視図。B:
図3Aのノズル列搭載プレートの側面図。C:
図3Aのノズル列搭載プレートの拡大正面図。
【
図4】A:
図1Aの布材殺菌ユニット(被殺菌布ホルダー8は省いている)の完全開放状態の上面図。B:
図1Aの布材殺菌ユニット(被殺菌布ホルダー8を含む)の完全開放状態の上面図。
【
図5】A:
図1Aの布材殺菌ユニット(ノズル列搭載プレート4を含む)の完全開放状態の斜視図。B:
図1Aの布材殺菌ユニット(ノズル列搭載プレート3は省き水槽14を含む)の完全開放状態の斜視図。
【
図6】A:
図1Aの布材殺菌ユニットの完全閉鎖状態の側面図。B:
図6Aの布材殺菌ユニットの断面線B-Bに沿った拡大断面図。
【
図7】A:
図1Aの布材殺菌ユニット(1枚の被殺菌布材18を含む)の完全開放状態の斜視図。B:
図1Aの布材殺菌ユニット(1枚の被殺菌布材18を含む)の完全開放状態の別の斜視図。C:
図1Aの布材殺菌ユニット(複数枚の被殺菌布材18を含む)の完全開放状態の斜視図。
【
図8】本発明の一実施例による顔面用マスクと医療用衣類をマイクロ波エネルギーを用いて殺菌消毒する方法の主要ステップのフローチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、顔面用マスク(外科用マスクを含む)と医療用衣類をマイクロ波エネルギーを用いて殺菌消毒する装置と方法 に関する。本発明の一実施例による装置と方法を詳細に説明する。
【0031】
図1Aにおいて、布材殺菌ユニット2は、ノズル列搭載プレート4と、蒸気噴出ノズル6と、被殺菌布ホルダー8と、選択的事項としての凸型カバー10と、選択的事項としての換気用スロット12を有する。ノズル列搭載プレート4の下にある水槽14は、布材殺菌ユニット2の下部部分内にある。
図1Aには示されていないが、
図4-6に図示されている。
【0032】
動作するに際し、布材殺菌ユニット2はノズル列搭載プレート4の下の水で満たされている。衣類(例:マスク、外科用マスク、医療用衣類、スカーフ、手袋等PPEとして再利用される)は、蒸気噴出ノズル6の間に個々に配置され、被殺菌布ホルダー8により保持される。布材殺菌ユニット2は、マイクロ波エネルギーを生成する装置(例:電子レンジ)内に配置される。水槽内14の水が、相変換(水から蒸気)温度以上に加熱されると、蒸気よりノズル列搭載プレート4に圧力が生成される。
【0033】
マイクロ波エネルギーにより生成された蒸気(水滴を含まない)は、蒸気噴出ノズル6から放出される高温高圧蒸気を生成する。個別に配置された被殺菌布材18に向けられた蒸気流は、被殺菌布材18を、簡単に、急速に、効果的に殺菌するが、燃えたり、焦がしたり、濡らしたり、品質劣化させず、再利用可能にする。凸型カバー10は、内部温度と圧力を上げることにより、布材殺菌ユニット2の効率を上げる。選択的事項として凸型カバー10に形成された換気用スロット12は、動作中に発生した余分な蒸気を前記布材殺菌ユニット2から放出し、前記凸型カバー10の内側表面への水分の凝縮を防止する。
【0034】
布材殺菌ユニット2の製造に適した材料は、マイクロ波エネルギー、高温・高湿度の環境で動作可能な構造材料の適正の観点から技術的に選択される。
【0035】
図1において、蒸気噴出ノズル6は、換気用スロット12を通して見える。
【0036】
選択的事項として、
図2のCとDの詳細
図B、Cに示すように、蒸気噴出ノズル6は、被殺菌布ホルダー8の適用と構成に応じて、高温高圧蒸気を様々な角度に向けることができる。
【0037】
例えば、使用される被殺菌布材18のある種のものは、蒸気を様々な高さでかつ両側から、その表面に当てる必要がある。詳細
図Bの蒸気噴出ノズル6は、所定の角度方向の2つの出口を有する。詳細
図Cの蒸気噴出ノズル6は、所定の角度方向の1つの出口を有する。
【0038】
例えば、詳細
図Cの蒸気噴出ノズル6は、ノズル列搭載プレート4内で蒸気噴出ノズル6の列の端に配置されている。ただし、これは、被殺菌布材18が詳細
図Cの蒸気噴出ノズル6の反対側に無い場合である。或いは、詳細
図Cの蒸気噴出ノズル6は、以下の環境で使用される。即ち、被殺菌布材18一方の側のみが蒸気噴流に曝され、方向付けられた蒸気噴流の温度と圧力が更に高い場合である。
【0039】
選択的事項として、詳細
図B、Cの蒸気噴出ノズル6は、傾斜した「ルーフ(屋根)」を有してもよい、これにより、動作中に蒸気噴出ノズル6から蒸気が噴出する際に、特にフラットなルーフ形状により形成される不要な蒸気の巡回流を阻止できる。
【0040】
図3において、ノズル列搭載プレート4の上の蒸気噴出ノズル6に対し、被殺菌布ホルダー8をジグザグに配列することにより、方向付けられた蒸気噴出流と被殺菌布材18との接触を最大にできる。
【0041】
図4において、一体型の水槽14は、堀のように、布材殺菌ユニット2の内側周囲に隣接して配置されている。その結果、凝縮した湿分(即ち水)がノズル列搭載プレート4の下に集まるようになる。別の構成として、分離した水槽14を採用することもできる。水の補充が容易になるからである。
【0042】
選択的事項として、排水用リッジ16が凸型カバー10の内側形状に沿って形成されている。この排水用リッジ16により、凸型カバー10上に凝縮した水滴が、布材殺菌ユニット2の動作中に、カバーに沿って水槽14に排出され、衣類が濡れるのを回避できる。排水用リッジ16のサイズ、形状、個数は、布材殺菌ユニット2の応用に応じて決められる。
【0043】
図 5に、水槽14の拡大図を示す。
【0044】
図6において、水槽14はノズル列搭載プレート4の下にある。選択的事項として、排水用リッジ16は、凸型カバー10上に凝縮した水滴を、布材殺菌ユニット2の壁の方向に逃がすように配置され、水滴が衣類(図示せず)にたれるのを防止する。
【0045】
図7Aにおいては、1枚の被殺菌布材18が、完全開放状態の布材殺菌ユニット2内に示されているが、
図7Cにおいては、複数枚の被殺菌布材18が示されている。
【0046】
布材殺菌ユニット2は、複数の顔面用マスクと医療用衣類の殺菌と再利用を、その素材を品質劣化させること無く、可能とする。
【0047】
図8は、本発明のマスクと医療用衣類をマイクロ波エネルギーを用いて殺菌消毒する方法の主要ステップを示す。本発明のプロセスは、以下のステップを有する。
*ステップ20:ハウジングとして機能する布材殺菌ユニット2と前記布材殺菌ユニット2内に配置される水槽14とを用意する。
*ステップ22:前記布材殺菌ユニット2をマイクロ波エネルギーに曝すことにより、前記水槽14内の水から蒸気を生成する。
*ステップ24:前記ノズル列搭載プレート4を水槽14の上で前記布材殺菌ユニット2内に配置することにより、前記蒸気の漏れを制限し、前記蒸気の圧力を上げる。
*ステップ26:前記ノズル列搭載プレート4内の蒸気噴出流ノズル6から噴出する高温高圧の蒸気噴出流を被殺菌布材18の方向に向ける。
【0048】
*ステップ28:前記高温高圧の蒸気噴出流が前記被殺菌布材18の表面に当たるよう被殺菌布ホルダー8を用いて前記蒸気噴出ノズル6の列に対し被殺菌布材18を個別に配置し保持する。
*ステップ30:前記被殺菌布材18を殺菌消毒し、微生物の伝搬と繁殖をさせない。
*ステップ32:前記被殺菌布材18を個人用保護材として再利用する。
【0049】
選択的事項として、
*ステップ34:前記布材殺菌ユニット2と凸型カバー10を連結することにより、動作中に前記布材殺菌ユニット2の内部圧力と内部温度を上げる。
*ステップ36:換気用スロット12を前記凸型カバー10に形成することにより、動作中に余分な蒸気を前記布材殺菌ユニット2から放出し、前記凸型カバー10の内側表面に凝縮するのを防止する。
*ステップ38:排水用リッジ16を前記凸型カバー10の内側形状に沿って形成することにより、前記排水用リッジ16は、動作中に前記凸型カバー10上に凝縮した水滴を前記布材殺菌ユニット2の壁の方向に逃がし、前記水槽14に戻し、凝縮した水滴が前記被殺菌布材18上に落ちるのを防止する。
【0050】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、ユニット又は手段の数は、単数か複数かを問わない。
【符号の説明】
【0051】
2:布材殺菌ユニット
4:ノズル列搭載プレート
6:蒸気噴出ノズル
8:被殺菌布ホルダー
10:凸型カバー
12:換気用スロット
14:水槽
16:排水用リッジ
18:被殺菌布材