IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 田村 慎太朗の特許一覧

<>
  • 特開-地中熱ヒートポンプシステム 図1
  • 特開-地中熱ヒートポンプシステム 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019366
(43)【公開日】2024-02-09
(54)【発明の名称】地中熱ヒートポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   F24T 10/20 20180101AFI20240202BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
F24T10/20
F24F5/00 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122363
(22)【出願日】2022-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】521235752
【氏名又は名称】田村 慎太朗
(74)【代理人】
【識別番号】240000693
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人滝田三良法律事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 文雄
(72)【発明者】
【氏名】前原 正治
(72)【発明者】
【氏名】荒井 公明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 晃
(72)【発明者】
【氏名】田村 慎太朗
【テーマコード(参考)】
3L054
【Fターム(参考)】
3L054BF10
(57)【要約】
【課題】省電力化を実現することができる地中熱ヒートポンプシステムを提供する。
【解決手段】汲み上げポンプ22を作動させてタンク3に所定量の地下水が溜まるまで地下水を汲み上げ、循環ポンプ18を作動させてタンク3の地下水を採熱循環路14により循環させ、温度検出手段17の検出温度が所定温度となったとき、排出手段19,20を介してタンク3の地下水を排水して、タンク3の地下水の入れ替えを行うように制御する制御装置5を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下水の熱源を利用した地中熱ヒートポンプシステムであって、
汲み上げポンプにより汲み上げた地下水を貯留するタンクと、前記タンクの地下水を上流端から導出し、下流端から前記タンクに戻す採熱循環路と、前記タンク及び前記採熱循環路を循環する地下水の温度を検出する温度検出手段と、前記採熱循環路との熱交換を一次側で行うヒートポンプ装置と、前記採熱循環路の地下水を循環させる循環ポンプと、前記採熱循環路を介して前記タンクの地下水を排水可能とする排水手段と、制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記汲み上げポンプを作動させて前記タンクに所定量の地下水が溜まるまで地下水を汲み上げ、前記循環ポンプを作動させて前記タンクの地下水を前記採熱循環路により循環させ、前記温度検出手段の検出温度が所定温度となったとき、前記排出手段を介して前記タンクの地下水を排水して、前記タンクの地下水の入れ替えを行うことを特徴とする地中熱ヒートポンプシステム。
【請求項2】
前記排水手段は、切換え弁装置と、前記切換え弁装置を介して前記採熱循環路に接続された排水路とを備え、
前記制御装置は、前記切換え弁装置を作動させることにより前記採熱循環路における地下水の循環と前記排水路からの排水とを切換えることを特徴とする請求項1記載の地中熱ヒートポンプシステム。
【請求項3】
前記排水路と異なる位置に、前記タンクの地下水を二次利用すべく前記タンクから導出する導出路を設けたことを特徴とする請求項2記載の地中熱ヒートポンプシステム。
【請求項4】
前記採熱循環路は、前記ヒートポンプ装置が備える熱媒体循環路の一次側に熱交換器を接続し、前記熱交換器を介して地下水から採熱することを特徴とする請求項1~3の何れか1項記載の地中熱ヒートポンプシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水の熱源を利用した地中熱ヒートポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
地中熱を熱源として利用するヒートポンプシステムとして、年間を通じて安定した温度の地下水を熱源として利用するものが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
この種の地中熱ヒートポンプシステムによれば、外気温度の上昇・低下により効率が悪化する一般の電気ファンによる空気熱ヒートポンプシステムに比して、安定して効率のよい採熱及び放熱が行え、省電力化を実現することができるという利点がある。
【0004】
地中熱ヒートポンプシステムが熱源として利用する地中熱は、井戸水等の地下水によって得ることができる。即ち、井戸水(地下水)を汲み上げて熱交換器を介してヒートポンプ装置の一次側に熱供給する。従って、地中熱ヒートポンプシステムは、地下水の豊富な地域であれば、容易且つ安価に地中熱を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-115016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のような井戸水等の地下水を利用した地中熱ヒートポンプシステムでは、ヒートポンプ装置の運転中には、常に井戸水(地下水)を汲み上げて熱交換器に供給しなければならず、井戸水(地下水)を汲み上げるためのポンプの消費電力が大きくなるという不都合がある。
【0007】
かかる不都合を解消して、本発明は、地下水を利用して安価に地中熱を得ることができるだけでなく、地下水の汲み上げポンプの作動を効率よく行うことにより消費電力を抑えて、省電力化を実現することができる地中熱ヒートポンプシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、地下水の熱源を利用した地中熱ヒートポンプシステムであって、汲み上げポンプにより汲み上げた地下水を貯留するタンクと、前記タンクの地下水を上流端から導出し、下流端から前記タンクに戻す採熱循環路と、前記タンク及び前記採熱循環路を循環する地下水の温度を検出する温度検出手段と、前記採熱循環路との熱交換を一次側で行うヒートポンプ装置と、前記採熱循環路の地下水を循環させる循環ポンプと、前記採熱循環路を介して前記タンクの地下水を排水可能とする排水手段と、制御装置とを備え、前記制御装置は、前記汲み上げポンプを作動させて前記タンクに所定量の地下水が溜まるまで地下水を汲み上げ、前記循環ポンプを作動させて前記タンクの地下水を前記採熱循環路により循環させ、前記温度検出手段の検出温度が所定温度となったとき、前記排出手段を介して前記タンクの地下水を排水して、前記タンクの地下水の入れ替えを行うことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、タンクに貯留した地下水を循環させてヒートポンプ装置の一次側で熱交換を行うように構成されているため、汲み上げポンプの作動は、タンクに所定量の地下水が溜まるまででよい。従って、比較的消費電力が大きな汲み上げポンプが用いられていても、汲み上げポンプの作動時間を短縮することができるので、汲み上げポンプによる電力消費を低減させることができる。
【0010】
そして、タンクと採熱循環路を循環する地下水の温度が所定温度となったとき、タンクの地下水を排水し、汲み上げポンプによる地下水の汲み上げを行うので、地下水を効率よく用いることができる。
【0011】
以上により、省電力化を実現することができる地中熱ヒートポンプシステムを提供することができる。
【0012】
また、本発明において、前記排水手段は、切換え弁装置と、前記切換え弁装置を介して前記採熱循環路に接続された排水路とを備え、前記制御装置は、前記切換え弁装置を作動させることにより前記採熱循環路の地下水の循環と前記排水路からの排水とを切換えることを特徴とする。
【0013】
これによれば、採熱循環路に設けた切換え弁装置の切り換え動作により、採熱循環路に接続された排水路から排水するので、タンクの地下水を迅速に入れ換えることができる。
【0014】
更に、前記排水路と異なる位置に、前記タンクの地下水を二次利用すべく前記タンクから導出する導出路を設けたことを特徴とする。これによれば、タンクの地下水を捨てることなく二次利用することができ、地下水を無駄なく使用することができる。
【0015】
また、本発明の他の態様として、前記採熱循環路は、前記ヒートポンプ装置が備える熱媒体循環路の一次側に熱交換器を接続し、前記熱交換器を介して地下水から採熱することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態の地中熱ヒートポンプシステムの構成を模式的に示す図。
図2】本発明の他の実施形態の地中熱ヒートポンプシステムの構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態を図1に基づいて説明する。本実施形態の地中熱ヒートポンプシステム1は、地下水から採熱するヒートポンプ装置2と、地下水を貯留するタンク3と、冷暖房負荷である放熱器4と、地中熱ヒートポンプシステムの運転を制御する制御装置5とを備えている。
【0018】
ヒートポンプ装置2は、冷媒ガスが循環する冷媒循環路6を備えている。冷媒循環路6には、採熱側熱交換器7と、負荷側熱交換器8とが設けられている。
【0019】
冷媒循環路6は、採熱側熱交換器7と負荷側熱交換器8とを接続する切替側通路9と膨張側通路10とによって構成されている。これにより、採熱側熱交換器7と負荷側熱交換器8との間を冷媒が循環する。
【0020】
切替側通路9には、四方弁11及び圧縮機12が設けられている。四方弁11は、切替側通路9に対して圧縮機12の吸入側と吐出側との接続を切り替える。暖房運転と冷房運転とを切り替えるとき、四方弁11の切り替える。
【0021】
膨張側通路10には、膨張弁13が設けられている。膨張弁13は、膨張側通路10に配設され、上流側の冷媒を断熱膨張させて下流側へ送り出す。
【0022】
採熱側熱交換器7は、ヒートポンプ装置2の一次側に設けられ、採熱用の熱媒体である地下水が循環する採熱循環路14に接続されている。採熱側熱交換器7に地下水を供給することにより、採熱側熱交換器7は、地下水から採熱して冷媒循環路6の冷媒との熱交換を行う。
【0023】
採熱循環路14は、上流端がタンク3に接続されて採熱側熱交換器7へ地下水を送る地下水送り通路15と、下流端がタンク3に接続されて採熱側熱交換器7から地下水をタンク3へ戻す地下水戻り通路16とを備えている。
【0024】
地下水送り通路15には、採熱側熱交換器7を通過する地下水の温度を検出する水温センサ17(温度検出手段)が設けられており、地下水戻り通路16には、採熱循環路14の地下水を強制的に循環流動させる採熱側循環ポンプ18と、三方弁19(切換え弁装置)とが設けられている。
【0025】
なお、水温センサ17は、地下水戻り通路16に設けてもよく、また、地下水送り通路15と地下水戻り通路16との両方に設けてもよい。
【0026】
三方弁19は、排水路20に接続されており、地下水戻り通路16の地下水の流動を、タンク3と排水路20とで切り換える。三方弁19及び排水路20は本発明の排水手段に相当する。
【0027】
タンク3は、地中の地下水(本実施帝においては井戸水)を汲み上げる地下水汲み上げ路21を備えている。地下水汲み上げ路21には、汲み上げポンプ22が設けられている。なお、図示しないが、タンク3には、水位センサと、万一溢れた地下水を排出(オーバーフロー)するための排出路がタンク3の上部に設けられている。
【0028】
また、タンク3の底部には、タンク3の地下水を導出する第1導出路25と第2導出路26とが接続されている。第1導出路25と第2導出路26とは、採熱循環路14と異なる経路でタンク3の地下水を導出させることができるようになっている。
【0029】
第1導出路25には導出ポンプ27が設けられており、第1導出路25の下流端には図外の水栓等が設けられている。第2導出路26には、ポンプ等は接続されておらず、下流端に水栓29が設けられている。
【0030】
タンク3の地下水は、第1導出路25から導出して、必要に応じて生活雑用水(例えば、洗車、菜園の灌水)として二次利用することができる。また、停電等が生じた災害時には、第2導出路26を介してタンク3の地下水を導出して使用することができる。
【0031】
なお、図示しないが、タンク3がドレン排出を備える場合にも、第1導出路25と第2導出路26とは、ドレン排出路とは別に設けられる。また、第1導出路25と第2導出路26とは、両方設けることが好ましいが、何れか一方のみ設けてもよい。
【0032】
負荷側熱交換器8は、ヒートポンプ装置2の二次側に設けられ、不凍液を熱媒体とする熱媒体循環路30に接続されている。熱媒体循環路30には、負荷側循環ポンプ31と放熱器4とが接続されている。
【0033】
次に、以上の構成による地中熱ヒートポンプシステム1において、本発明の要旨に係る作動を説明する。
【0034】
先ず、制御装置5は、汲み上げポンプ22を作動させてタンク3への地下水の貯留を開始する。次に、タンク3に予め定められた最低水量の地下水が溜まったところで、制御装置5は、採熱側循環ポンプ18を作動させ、更に、ヒートポンプ装置2の運転を開始する。
【0035】
ヒートポンプ装置2が運転を開始すると、制御装置5は、負荷側循環ポンプ31を作動させ、放熱器4による冷暖房運転が行われる。
【0036】
この間、タンク3の水位センサが、タンク3の地下水が最大水量(満タン)になったことを検知すると、制御装置5は、汲み上げポンプ22を停止させる。これにより、汲み上げポンプ22を、冷暖房運転中に常時作動せる必要がなく、電力消費を低減させることができる。
【0037】
放熱器4による冷暖房運転が行われているときに、水温センサ17の検出温度が、所定温度(例えば、暖房運転のときに9℃)まで低下すると、制御装置5は、三方弁19を動作させて、三方弁19より下流側の採熱循環路14を遮断し、排水路20を開放して排水動作を行う。
【0038】
これにより、採熱効率の低下したタンク3の地下水が採熱循環路14を介して排水路20から排出される。この間も、採熱側熱交換器7による熱交換が継続される。なお、排水動作を行う場合の採熱循環路14の地下水の温度は、上記温度に限るものではなく、採熱が困難となる温度が適宜設定される。
【0039】
タンク3からの地下水の排出が進み、タンク3の地下水が前記最定水位となったとき、制御装置5は、三方弁19を動作させて、排水路20を閉弁し、採熱循環路14の遮断を解除して排水動作を終了させる。
【0040】
続いて、タンク3の地下水が最大水量(満タン)になるまで、汲み上げポンプ22を作動させる。この間も、ヒートポンプ装置2は作動を継続することができるので、放熱器4による冷暖房運転が中断されることがなく、効率の良い冷暖房運転を行うことができる。
【0041】
そして更に、本実施形態においては、タンク3の底部に第1導出路25と第2導出路26とを接続したことにより、タンク3に溜めた地下水を、生活雑用水(洗車、灌水等)や、防災用水として導出させることができ、タンク3の地下水を無駄なく使用することができる。
【0042】
なお、本実施形態においては、ヒートポンプ装置2の一次側にタンク3を接続して採熱側熱交換器7にタンク3に貯留された地下水(井戸水)を供給する構成を示したが、これに限るものではない。
【0043】
例えば、他の実施形態として図2に示すように、タンク3と採熱側熱交換器7との間に他の熱交換器32を接続し、当該熱交換器32と前記採熱側熱交換器7とを、不凍液等の流体を熱媒体とする熱媒体循環路33によって接続することができる。熱媒体循環路33には他の循環ポンプ34が設けられている。
【0044】
なお、前述した実施形態と同一の構成については、図1と同一の符号を付して説明を省略する。図2に示す他の実施形態の構成を採用しても、図1に示した実施形態の構成と同様の効果を得ることができる。
【0045】
また、本実施形態においては、ヒートポンプ装置2の二次側に、冷暖房装置の放熱器4を接続した例を挙げたが、これ以外に、ヒートポンプ装置2の二次側には、融雪装置等の他の放熱器を接続してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…地中熱ヒートポンプシステム、2…ヒートポンプ装置、3…タンク、5…制御装置、14…採熱循環路、17…水温センサ(温度検出手段)、18…採熱側循環ポンプ(循環ポンプ)、19…三方弁(切換え弁装置)、20…排水路、22…汲み上げポンプ、25…第1導出路(導出路)、26…第2導出路(導出路)、32…他の熱交換器(熱交換器)。

図1
図2