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  • 特開-免疫賦活剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019367
(43)【公開日】2024-02-09
(54)【発明の名称】免疫賦活剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7032 20060101AFI20240202BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240202BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240202BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240202BHJP
   A23G 3/34 20060101ALN20240202BHJP
   A23G 4/12 20060101ALN20240202BHJP
   A23C 9/13 20060101ALN20240202BHJP
   C12N 5/0787 20100101ALN20240202BHJP
【FI】
A61K31/7032
A61P37/04
A23L2/52
A23L2/00 F
A23L33/105
A23G3/34 101
A23G4/12
A23C9/13
C12N5/0787
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122365
(22)【出願日】2022-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】594045089
【氏名又は名称】オリザ油化株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 賢知
(72)【発明者】
【氏名】米田 朱里
(72)【発明者】
【氏名】竹田 翔伍
(72)【発明者】
【氏名】下田 博司
(72)【発明者】
【氏名】森川 敏生
(72)【発明者】
【氏名】村井 弘道
【テーマコード(参考)】
4B001
4B014
4B018
4B065
4B117
4C086
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC03
4B001AC06
4B001BC01
4B001BC14
4B001EC05
4B014GB09
4B014GB17
4B014GG07
4B014GG12
4B014GG14
4B014GG18
4B014GK03
4B014GK08
4B014GK12
4B014GL07
4B014GP02
4B018LB01
4B018LE01
4B018LE02
4B018MD10
4B018MD27
4B018MD49
4B018MF01
4B065AA94X
4B065AC14
4B065BA22
4B065BB08
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4B065BB26
4B065BD29
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4B117LG12
4B117LK09
4B117LK11
4B117LK12
4B117LL02
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA05
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB09
(57)【要約】
【課題】 新規な免疫賦活剤を提供する。
【解決手段】 上記課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
1.モノアシルジガラクトシルグリセロールを有効成分とする好中球遊走能強化剤。
2.モノアシルジガラクトシルグリセロールを有効成分とする好中球におけるインターロイキン-8(IL-8)の遺伝子発現促進剤。
3.モノアシルジガラクトシルグリセロールは、1-O-palmitoyl-3-O-[α-D-galactopyranosyl(16)-β-D-galactopyranosyl]-sn-glycerolであることを特徴とする上記1.又は上記2.の剤。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノアシルジガラクトシルグリセロールを有効成分とする好中球遊走能強化剤。
【請求項2】
モノアシルジガラクトシルグリセロールを有効成分とする好中球におけるインターロイキン-8(IL-8)の遺伝子発現促進剤。
【請求項3】
モノアシルジガラクトシルグリセロールは、1-O-palmitoyl-3-O-[α-D-galactopyranosyl(16)-β-D-galactopyranosyl]-sn-glycerolであることを特徴とする請求項1又は請求項2の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫賦活剤に関する。本発明は、医薬品、健康食品、食品等に広く利用される。
【背景技術】
【0002】
病原体や細菌が切り傷や粘膜を介して生体内に侵入すると、あらゆる場所に分布している樹状細胞が抗原を認識・貪食し、白血球やリンパ球などに抗原提示が行われる。その後、好中球、マクロファージおよびナチュラルキラー細胞が生体内に侵入した病原体を貪食・殺傷する(自然免疫)。免疫賦活作用を評価する際には、これらの細胞を対象に試験されている。
【0003】
外来異物に対する防御反応として、自然免疫及び獲得免疫がある。
自然免疫反応では、例えば、好中球、樹状細胞やマクロファージといった免疫細胞が、細菌やウイルスに由来する自然免疫活性化物質に応答してサイトカインを産生し、その後の免疫反応が起こることが知られている。自然免疫機構は、生物が共通に有する感染防御機構であり、一般には非特異的であるために、反応が素早く、また多くの感染源に対して有効に機能することが特徴である。
【0004】
好中球は白血球の約5割を占め、主に生体内に侵入してきた細菌や真菌などの病原菌や異物を貪食(飲み込む)して分解し、殺菌を行うことで感染を防ぐ役割をしている。また、数も多く,抗原への遊走が最も早いことが特徴として挙げられる。
また、インターロイキン-8(IL-8)は、血管内皮細胞、気道平滑筋細胞および好中球などで産生される炎症性サイトカインであり、好中球の走化因子として知られ、免疫応答において重要な役割を持つ。
【0005】
マクロファージは、好中球と比較して強い貪食能をもつ。貪食することで抗原提示能および炎症性サイトカインを放出し、他の細胞に作用し、免疫応答を強化する。その炎症性サイトカインは様々あるが、LPS刺激によってIL-6(インターロイキン6)、TNF-αが放出され、これにより、樹状細胞を活性化させることが知られている。
【0006】
さらに、病原体が生体内に侵入した場合、好中球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞が病原体を殺傷・貪食する。
NK細胞はマクロファージを活性化させる作用を持つインターフェロンγ(IFN-γ)を放出することが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような背景の下、本発明者は、モノアシルジガラクトシルグリセロールが好中球の遊走能を向上させ、細胞遊走能好中球におけるIL-8遺伝子発現促進作用を有し、これにより自然免疫を高める作用を有することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は自然免疫を活性化させる新規な免疫賦活剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
1.モノアシルジガラクトシルグリセロールを有効成分とする好中球遊走能強化剤。
2.モノアシルジガラクトシルグリセロールを有効成分とする好中球におけるインターロイキン-8(IL-8)の遺伝子発現促進剤。
3.モノアシルジガラクトシルグリセロールは、1-O-palmitoyl-3-O-[α-D-galactopyranosyl(16)-β-D-galactopyranosyl]-sn-glycerolであることを特徴とする上記1.又は上記2.の剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、モノアシルジガラクトシルグリセロールは好中球の遊走能を向上させ、好中球におけるインターロイキン-8(IL-8)の遺伝子発現機能を高めるため、好中球の走化因子と機能を高めることができ、生体内に侵入してきた細菌や真菌などの病原菌や異物を貪食(飲み込む)して分解し、殺菌を行う機能を向上させることができる。これにより自然免疫力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】HL-60細胞(好中球)におけるIL-8遺伝子発現量に与える影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の免疫賦活剤はモノアシルジガラクトシルグリセロールを有効成分とすることを特徴とする。
ここで、本実施形態における「モノアシルジガラクトシルグリセロール」とは、下記化学式(1)にて示される化合物のことをいう。
【0012】
【化1】
【0013】
上記「モノアシルジガラクトシルグリセロールは、特に限定されず、例えば、下記化学式(2)に示されるもの、即ち、1-O-palmitoyl-3-O-[α-D-galactopyranosyl(16)-β-D-galactopyranosyl]-sn-glycerolであることが好ましい。
【化2】
【0014】
上記モノアシルジガラクトシルグリセロールの製造方法は特に限定されないが、米糠を極性溶媒で抽出して米糠抽出物を得て、その後、上記抽出物からモノアシルジガラクトシルグリセロールを単離することによって得ることができる。
【0015】
上記「米糠抽出物」は、米糠油を製造する工程で生成されるものであれば特に限定されない。
例えば、米糠抽出物は、米糠を有機溶媒で抽出し、その後、その抽出物を沈殿させることにより得ることができるが、この方法に限定されない。また、上記米糠抽出物は、米糠油から製造工程で生成される副産物から抽出したものを使用してもよい。
【0016】
ここで、上記米糠抽出物からモノアシルジガラクトシルグリセロールを単離する方法は特に限定されないが、例えば、活性白土や活性炭、シリカゲル、アルミナ、珪藻土、合成吸着剤、イオン交換樹脂などを用いたクロマトグラフィーや遊離セラミド以外の成分を吸着、分解、沈殿、濾過、溶解、蒸留などにより取り除く方法により単離することができる。
具体的には、例えば、本明細書の実施例の方法にて得ることができるが、この方法に限定されない。
【0017】
本発明の免疫賦活剤は、各種飲食品の素材として使用することができる。飲食品としては、例えば、菓子類(ガム、キャンディー、キャラメル、チョコレート、クッキー、スナック、ゼリー、グミ、錠菓等)、麺類(そば、うどん、ラーメン等)、乳製品(ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト等)、調味料(味噌、醤油等)、スープ類、飲料(ジュース、コーヒー、紅茶、茶、炭酸飲料、スポーツ飲料等)をはじめとする一般食品や、健康食品(錠剤、カプセル等)、栄養補助食品(栄養ドリンク等)が挙げられる。これらの飲食品に本発明の剤を適宜配合するとよい。
【0018】
これら飲食品には、その種類に応じて種々の成分を配合することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤の食品素材を使用することができる。
【0019】
具体的な製法としては、本発明の剤を粉末セルロースとともにスプレードライまたは凍結乾燥し、これを粉末、顆粒、打錠または溶液にすることで容易に飲食品(インスタント食品等)に含有させることができる。また、前記本発明の剤を、例えば、油脂、エタノール、グリセリンあるいはこれらの混合物に溶解して液状にし、飲料に添加するか、固形食品に添加することが可能である。必要に応じてアラビアガム、デキストリン等のバインダーと混合して粉末状あるいは顆粒状にし、飲料に添加するか固形食品に添加することも可能である。
【0020】
本発明の剤を飲食品に適用する場合の添加量としては、病気予防や健康維持が主な目的であるので、飲食品に対して有効成分の含量が合計1~20wt%以下であるのが好ましい。
【0021】
本発明の免疫賦活剤は、薬品(医薬品および医薬部外品を含む。)の素材として用いてもよい。薬品製剤用の原料に、本発明の剤を適宜配合して製造することができる。本発明の剤に配合しうる製剤原料としては、例えば、賦形剤(ブドウ糖、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等)、結合剤(蒸留水、生理食塩水、エタノール水、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(アルギン酸ナトリウム、カンテン、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖、アラビアゴム末、ゼラチン、エタノール等)、崩壊抑制剤(白糖、ステアリン、カカオ脂、水素添加油等)、吸収促進剤(第四級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等)、吸着剤(グリセリン、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、硅酸等)、滑沢剤(精製タルク、ステアリン酸塩、ポリエチレングリコール等)などが挙げられる。
【0022】
本発明の免疫賦活剤の投与方法は、一般的には、錠剤、丸剤、軟・硬カプセル剤、細粒剤、散剤、顆粒剤、液剤等の形態で経口投与することができるが、非経口投与であってもよい。非経口剤として投与する場合は、溶液の状態、または分散剤、懸濁剤、安定剤などを添加した状態で、局所組織内投与、皮内、皮下、筋肉内および静脈内注射などによることができる。また、坐剤などの形態としてもよい。更に、点眼薬として投与することができる。
【0023】
投与量は、投与方法、病状、患者の年齢等によって変化し得るが、大人では、通常、1日当たり有効成分として0.5~5000mg、子供では通常0.5~3000mg程度投与することができる。
免疫賦活剤の配合比は、剤型によって適宜変更することが可能であるが、通常、経口または粘膜吸収により投与される場合は約0.3~15.0wt%、非経口投与による場合は、0.01~10wt%程度にするとよい。なお、投与量は種々の条件で異なるので、前記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
【実施例0024】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明によって得られる本発明の剤の各種作用・効果等の確認のために説明するもので、本発明の範囲は、これらの製品および製法に限定されるものではない。
【0025】
実施例:モノアシルジガラクトシルグリセロールの調製
オリザセラミド(オリザ油化株式会社製)を中圧分取液体クロマトグラフィーによる粗分画を行った。分画条件は山善株式会社のユニバーサルシリカゲルカラム Premiumを用いて、クロロホルム:メタノール(9:1→8:2→7:3→5:5)→メタノールの条件で順次溶出した。次に、クロロホルム:メタノール(5:5)分画を、逆相HPLC(CAPCELLPAK C18 SG-120, メタノール)に供することにより、MADG Fraction 1、MADG Fraction 2、MADG Fraction 3の3種類のモノアシルジガラクトシルグリセロール(MADG)を精製した。
精製したMADG Fraction 1、MADG Fraction 2、MADG Fraction 3のうち、MADG Fraction 3はNMRおよびMSスペクトルを下記の文献1と比較して上記化学式(2)で示される化合物である1-O-palmitoyl-3-O-[α-D-galactopyranosyl(16)-β-D-galactopyranosyl]-sn-glycerolと同定した。MADG Fraction 1およびMADG Fraction 2はNMRスペクトルよりMADGであることは明らかになったが構成脂肪酸の種類の判別には至っていない。
文献1. Arthur Millius, Orion D. Weiner, Chemotaxis in Neutrophil-Like HL-60 Cells, Methods Mol Biol, 571, 167-77 (2009).
【0026】
試験例1:モノアシルジガラクトシルグリセロール(MADG)における分化HL-60細胞(好中球)の細胞遊走能に与える影響の評価
(1)ヒト前骨髄性白血病由来細胞(HL-60細胞)の培養方法
JCRB細胞バンクより購入したヒト前骨髄性白血病由来のHL-60(JCRB 0085)細胞を培養して実験に供した。培地は、Roswell Park Memorial Institute 1640(RPMI 1640)に10 (v/v) % FBS(Fetal bovine serum)及び100 units/mL penicillin G、100 μg/mL streptomycinを添加して使用した。細胞の培養は、25 cm2 培養フラスコ中で行い、5%CO2存在下37℃にて行った。継代操作は、浮遊細胞であるため培養した細胞を遠心処理(100 g,5 min)し、実験に使用した。
【0027】
(2)分化HL-60細胞(好中球)の細胞遊走能に与える影響の評価方法
白血病細胞株であるHL-60細胞をMilliusらの方法(下記文献1参照)に準じて、25 cm2フラスコ中に細胞を播種し(1.5×106 cells/flask),1.3%(v/v)DMSO含有RPMI1640培地にて1週間培養することで好中球に分化させた。尚、分化の確認はメイグリンワルド染色にて確認した。
分化HL-60の細胞懸濁液を用いて、CytoselectTM 96-well Cell Migration Assay kit記載の方法に準じて、被験物質が細胞遊走能に与える影響を測定した。細胞播種密度は、1.0×105 cells/well/100 μLで被験物質を溶解したDMSO終濃度は0.5%(v/v)とした。さらに、培地はFBS不含有のRPMI1640を使用した。その結果を下記表1に示す。尚、表1において、MADG Fraction 1、MADG Fraction 2は、モノアシルジガラクトシルグリセロール(MADG)であり、化合物1は、上記化学式(2)で示される化合物である1-O-palmitoyl-3-O-[α-D-galactopyranosyl(16)-β-D-galactopyranosyl]-sn-glycerolである。
(文献1) Arthur Millius, Orion D. Weiner, Chemotaxis in Neutrophil-Like HL-60 Cells, Methods Mol Biol, 571, 167-77 (2009).
【0028】
【表1】
【0029】
(3)結果及び試験例1における実施例の効果
表1に示されるように、MADG Fraction 1、MADG Fraction 2、化合物1については、いずれも有意な活性が認められ、特に化合物1について強い活性が得られた。
以上により、MADG Fraction 1、MADG Fraction 2、化合物1、特に化合物1は、好中球遊走能強化剤として有用であり、これにより、生体内に侵入してきた細菌や真菌などの病原菌や異物を貪食(飲み込む)して分解し、殺菌を行う機能を向上させることができ、これによって自然免疫力を向上させることができることが確認された。
【0030】
試験例2:HL-60細胞におけるIL-8(インターロイキン8)遺伝子発現量に与える影響の評価
(1)試験方法
HL-60細胞を12 well plateに播種し(1.0×105 cells/well/500 μL)および被験物質を含む培地(500 μL/well)を添加した。24時間培養後,細胞からRNAを抽出し、リアルタイムRT-PCR法に準じて遺伝子発現量を測定した。その結果を図1に示す。尚、図1において、MADG Fraction 1、MADG Fraction 2は、モノアシルジガラクトシルグリセロール(MADG)であり、化合物1は、上記化学式(2)で示される化合物で化合物1は、上記化学式(2)で示される化合物である1-O-palmitoyl-3-O-[α-D-galactopyranosyl(16)-β-D-galactopyranosyl]-sn-glycerolである。
【0031】
(2)結果及び試験例2における実施例の効果
MADG Fraction 1、MADG Fraction 2、化合物1(1-O-palmitoyl-3-O-[α-D-galactopyranosyl(16)-β-D-galactopyranosyl]-sn-glycerol)を添加した結果、MADG Fraction 1には増加傾向がみられ、MADG Fraction 2、化合物1には有意なIL-8遺伝子発現量の増加作用が確認された。これにより、MADG Fraction 1、MADG Fraction 2、化合物1(1-O-palmitoyl-3-O-[α-D-galactopyranosyl(16)-β-D-galactopyranosyl]-sn-glycerol)、特に、MADG Fraction 2、化合物1は、遺伝子発現促進剤として有用である。これにより、好中球の走化因子と機能を高めることができ、生体内に侵入してきた細菌や真菌などの病原菌や異物を貪食(飲み込む)して分解し、殺菌を行う機能を向上させることができ、これによって自然免疫力を向上させることができることが確認された。
【0032】
本発明による剤(モノアシルジガラクトシルグリセロール)の配合例を示す。尚、以下の配合例は本発明を限定するものではない。
配合例1:チューインガム
砂糖 53.45wt%
ガムベース 20.0
グルコース 10.0
水飴 16.0
香料 0.5
モノアシルジガラクトシルグリセロール 0.05
100.0wt%
【0033】
配合例2:グミ
還元水飴 40.9wt%
グラニュー糖 20.0
ブトウ糖 20.0
ゼラチン 4.7
水 9.68
ユズ果汁 4.0
ユズフレーバー 0.6
色素 0.02
モノアシルジガラクトシルグリセロール 0.1
100.0wt%
【0034】
配合例3:キャンディー
砂糖 50.36wt%
水飴 33.0
水 14.4
有機酸 2.0
香料 0.2
モノアシルジガラクトシルグリセロール 0.04
100.0wt%
【0035】
配合例4:ヨーグルト(ハード・ソフト)
牛乳 41.5wt%
脱脂粉乳 5.8
砂糖 8.0
寒天 0.15
ゼラチン 0.1
乳酸菌 0.005
モノアシルジガラクトシルグリセロール 0.04
香料 微量
水 残余
100.0wt%
【0036】
配合例5:清涼飲料
果糖ブドウ糖液糖 30.0wt%
乳化剤 0.5
モノアシルジガラクトシルグリセロール 0.03
香料 適量
精製水 残余
100.0wt%
【0037】
配合例6:錠菓
砂糖 76.4wt%
グルコース 19.0
ショ糖脂肪酸エステル 0.2
モノアシルジガラクトシルグリセロール 0.05
精製水 3.9
100.0wt%
【0038】
配合例7:ソフトカプセル
玄米胚芽油 47.9wt%
ユズ種子油 40.0
乳化剤 12.0
モノアシルジガラクトシルグリセロール 0.1
100.0wt%
【0039】
配合例8:錠剤
乳糖 54.9wt%
結晶セルロース 30.0
澱粉分解物 10.0
グリセリン脂肪酸エステル 5.0
モノアシルジガラクトシルグリセロール 0.1
100.0wt%
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上により、本発明は、新規な成分を有効成分とする免疫賦活剤を提供することができる。
図1