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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019404
(43)【公開日】2024-02-09
(54)【発明の名称】クライオプローブ
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/02 20060101AFI20240202BHJP
【FI】
A61B18/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023199213
(22)【出願日】2023-11-24
(62)【分割の表示】P 2021512504の分割
【原出願日】2019-09-13
(31)【優先権主張番号】62/731,310
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516209360
【氏名又は名称】アトリキュア, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・スコリッチ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】トッド・フランゴリス
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ワイデンハウス
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ファーゴ
(57)【要約】
【課題】冷凍手術プローブ(クライオプローブ)などの冷凍手術デバイスが開示される。
【解決手段】いくつかの例示的な実施形態は、流体引込管および流体排出管を少なくとも部分的に収容または画定する細長いシャフトであって、閉鎖された遠位端の所で末端に至る遠位アブレーション部を含む細長いシャフト、細長いシャフトの近位端の少なくとも一部を少なくとも部分的に囲み、流体引込管の少なくとも一部および流体排出管の一部を受けるかまたは画定するハウジング、および/または流体排出管と流体連通する流れ制限要素であって、流体排出管の少なくとも一部を通る流体の流れを調整する流れ制限要素、を含んでもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温プローブであって、
流体引込管および流体排出管を少なくとも部分的に収容または画定する細長いチューブであって、閉鎖された遠位端の所で終端となる遠位アブレーション部を含み、導管の外部と、前記流体引込管および前記流体排出管の少なくとも一方と、の間に介在する少なくとも1つの滞留流体ポケットを含む細長いチューブと、
前記細長いチューブの近位端の少なくとも一部を少なくとも部分的に囲み、前記流体引込管の少なくとも一部および前記流体排出管の少なくとも一部を受けるかまたは画定するハウジングと、
を含む極低温プローブ。
【請求項2】
前記滞留流体ポケットは、スペーサらせんによって少なくとも部分的に画定される、請求項1に記載の極低温プローブ。
【請求項3】
前記スペーサらせんは複数のスペーサらせんを備える、請求項2に記載の極低温プローブ。
【請求項4】
前記複数のスペーサらせんは、前記導管の長さ方向に沿って長手方向に互いにずれている、請求項3に記載の極低温プローブ。
【請求項5】
前記スペーサらせんは絶縁材料を含む、請求項2に記載の極低温プローブ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの滞留流体ポケットは、前記流体引込管および前記流体排出管の少なくとも一方のための通路も形成するインサートによって少なくとも部分的に画定される、請求項1に記載の極低温プローブ。
【請求項7】
前記インサートは、三角形の断面を含み、かつ前記流体引込管および前記流体排出管用の別個の通路を含む、請求項6に記載の極低温プローブ。
【請求項8】
前記流体引込管および前記流体排出管用の前記別個の通路は、複数の流体引込管および複数の流体排出管のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の極低温プローブ。
【請求項9】
前記インサートは、幾何学的形状の断面を含み、かつ前記流体引込管および前記流体排出管用の別個の導管を含み、前記幾何学的形状の断面は、4つ以上の辺を有する、請求項6に記載の極低温プローブ。
【請求項10】
前記流体引込管および前記流体排出管用の前記別個の導管は、複数の流体引込管および複数の流体排出管のうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の極低温プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により組み込まれている、2018年9月14日に出願された米国仮出願第62/731,310号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、クライオプローブを対象とし、より詳細には、アブレーションチップとハンドル制御部とを相互接続する展性をもつシャフトを有するクライオプローブに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示では、クライオプローブのアブレーションチップの温度が寒剤の沸点(たとえば、蒸発温度)に関係することがあり、寒剤の沸点がアブレーションチップにおける寒剤圧力に関係することがあると考える。本開示では、たとえばアブレーションチップの所の寒剤圧力は実質的に変動することがあり、したがってクライオプローブ内のアブレーションチップの温度に影響を与え、クライオプローブ内では寒剤排気流における背圧が変動すると考える。本開示は、寒剤排気流背圧の調整を向上させる方法および装置を提供する。さらに、本開示では、アブレーションチップの所の寒剤圧力は、アブレーションチップに至る流路の特性の影響を受ける場合があると考える。本開示は、アブレーションチップへの寒剤の供給を向上させて所望の温度を実現する方法および装置を提供する。このようにして、本開示は、クライオプローブのアブレーションチップにおける温度の調整に関する従来技術に対する改良を実現する。
【0004】
本開示では、クライオプローブが極低温を利用して所望の位置において所望の効果を実現することがあるが、他の位置が極低温にさらされることによって望ましくない効果がもたらされる場合があると考える。本開示では、たとえばクライオプローブのアブレーションチップが極低温になり、一方、チップが配置されるシャフトが組織アブレーション温度よりも高い温度を維持することが望ましい場合があると考える。本開示は、アブレーションチップを所望の温度に冷却し、同時に、クライオプローブの他の外側部分をより高い温度に維持するクライオプローブの能力を改善する方法および装置を提供する。このようにして、本開示は、クライオプローブに関する従来技術に対する改良を実現する。
【0005】
本開示では、伝熱率および/またはアブレーションの範囲が、クライオプローブが目標組織に係合する状態に依存する場合があると考える。たとえば、本開示では、クライオプローブの構成が特定の組織への所望の程度の接近、係合、およびアブレーションの困難さに影響を与えることがあると考える。本開示では、肋間神経の冷凍無痛法など、所望の組織アブレーションを実現するように適合されたクライオプローブ構成を含む方法および装置を提供する。このようにして、本開示は、クライオプローブに関する従来技術の改良を実現し、クライオプローブは、たとえば冷凍無痛法に使用されてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、極低温プローブであって、流体引込管および流体排出管を少なくとも部分的に収容または画定する細長いシャフトであって、閉鎖された遠位端の所で末端に至る遠位アブレーション部を含む細長いシャフト、細長いシャフトの近位端の少なくとも一部を少なくとも部分的に囲み、流体引込管の少なくとも一部および流体排出管の一部を受けるかまたは画定するハウジング、および/または流体排出管と流体連通する流れ制限要素であって、流体排出管の少なくとも一部を通る流体の流れを調整する流れ制限要素、を備える極低温プローブを提供する。
【0007】
一実施形態では、流れ制限要素は、流体排出管と排出ラインとの間に流体的に介在する狭窄部を含んでもよい。狭窄部の流体流の断面積は、排出ラインの流体流の断面積の約70%未満であってもよい。狭窄部の流体流の断面積は、排出ラインの流体流の断面積の約50%未満であってもよい。狭窄部の流体流の断面積は、排出ラインの流体流の断面積の約30%未満であってもよい。狭窄部の流体流の断面積は、排出ラインの流体流の断面積の約15%未満であってもよい。狭窄部の流体流の断面積は、排出ラインの流体流の断面積の約10%未満であってもよい。
【0008】
一実施形態では、流れ制限要素は、流体引込管および流体排出管と流体連通する圧力弁を含んでもよく、圧力弁は、流体排出管の少なくとも一部を通る流体の流れを調整する。圧力弁は、弁座に係合し、圧力弁と弁座との間にシールを形成するように構成された弁体を含んでもよい。弁体は、弁座に係合するように付勢されてもよい。弁体は、弁座に係合するようにばねによって付勢されてもよく、ばねの少なくとも一部は、遠位アブレーション部内に位置してもよい。
【0009】
一実施形態では、遠位アブレーション部は、球状外面を含んでもよい。球状外面は、半球部を含んでもよい。遠位アブレーション部は、遠位アブレーション部の断面を変化させるために狭幅部を含んでもよい。流体引込管の少なくとも一部は、遠位アブレーション部内まで延びてもよい。遠位アブレーション部内まで延びる流体引込管の少なくとも一部は、遠位アブレーション部内のノズルに到達する前に流体流狭窄部を含んでもよい。遠位アブレーション部の近位態様は、接着剤および溶接の少なくとも一方を使用して細長いシャフトの遠位態様に流体密封されてもよい。
【0010】
一実施形態では、極低温プローブは、細長いシャフトの長手方向長さの少なくとも一部に沿って細長いシャフトを囲む可撓性の絶縁管を含んでもよい。可撓性の絶縁管は、細長いシャフトの長手方向長さの大部分に沿って細長いシャフトを囲んでもよい。可撓性の絶縁管は、可撓性の絶縁管の外側カバーと細長いシャフトの外部との間に介在するスペーサを含んでもよい。スペーサは、フォーム、らせん、および/以上のポリマーらせんを含んでもよい。ポリマーらせんは、可撓性の絶縁管に沿って長手方向に互いにずれていてもよく、および/またはポリマーらせんの各々は共通の軸方向寸法を有してもよい。スペーサは、可撓性の絶縁管の近位端および遠位端の少なくとも一方に到達する前に末端に至ってもよい。可撓性の絶縁管は、可撓性の絶縁管の近位端および遠位端の少なくとも一方におけるらせんの外径よりも小さい外側主要寸法を有するように狭幅化されてもよい。
【0011】
一実施形態では、細長いシャフトは破断せずに180度を超える角度にわ曲がってもよい。細長いシャフトの内部および流体引込ラインの外部は、流体排出ラインを画定してもよい。細長いシャフトの内部および流体排出ラインの外部は、流体引込ラインを画定してもよい。
【0012】
一実施形態では、球状外面は、遠位アブレーション部の露出された外面の長手方向長さの2分の1よりも長く長手方向に延びてもよい。球状外面は、遠位アブレーション部の露出された外面の長手方向長さの2分の1よりも短い長さだけ長手方向に延びてもよい。
【0013】
一実施形態では、遠位アブレーション部は、流体排出管を通る流体の流れを遮断することを含む加熱動作の間の圧力に耐えるように構成されてもよい。ハウジングは、流体引込管および流体排出管の同軸姿勢を平行姿勢に変更するように動作可能なアダプタを収容する内部キャビティを含んでもよい。
【0014】
本開示の第2の態様は、極低温プローブであって、流体引込管および流体排出管を少なくとも部分的に収容または画定する細長いチューブであって、閉鎖された遠位端の所で末端に至る遠位アブレーション部を含み、導管の外部と流体引込管および流体排出管の少なくとも一方との間に介在する少なくとも1つの滞留流体ポケットを含む細長いチューブ、および/または細長いチューブの近位端の少なくとも一部を少なくとも部分的に囲み、流体引込管の少なくとも一部および流体排出管の一部を受けるかまたは画定するハウジング、を含む極低温プローブを提供する。
【0015】
一実施形態では、滞留流体ポケットは、スペーサらせんによって少なくとも部分的に画定されてもよい。スペーサらせんは複数のスペーサらせんを含んでもよい。複数のスペーサらせんは、導管の長さに沿って長手方向に互いにずれてもよい。スペーサらせんは絶縁材料を含んでもよい。
【0016】
一実施形態では、少なくとも1つの滞留流体ポケットは、流体引込管および流体排出管の少なくとも一方用の通路も形成するインサートによって少なくとも部分的に画定されてもよい。インサートは、三角形の断面を含んでもよく、ならびに/または流体引込管および流体排出管用の別個の通路を含んでもよい。流体引込管用および流体排出管用の別個の通路は、複数の流体引込管および複数の流体排出管のうちの少なくとも1つを含んでもよい。インサートは、幾何学的形状の断面を含んでもよく、ならびに/または流体引込管および流体排出管用の別個の導管を含んでもよく、幾何学的形状の断面は、4つ以上の辺を有する。流体引込管および流体排出管用の別個の導管は、複数の流体引込管および複数の流体排出管のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0017】
本開示の第3の態様は、極低温プローブであって、流体引込管および流体排出管を少なくとも部分的に収容または画定する絶縁部を含む細長いチューブであって、閉鎖された遠位端の所で末端に至る遠位アブレーション部を含み、流体引込管が、閉鎖された遠位端に近接する位置でかつ遠位アブレーション部内で末端に至り、流体引込管が、末端の所に、末端から上流側の断面よりも実質的に小さい断面を有する細長いチューブ、および/または細長いチューブの近位端の少なくとも一部を少なくとも部分的に囲み、流体引込管の少なくとも一部および流体排出管の一部を受けるかまたは画定するハウジングを備える極低温プローブを提供する。
【0018】
一実施形態では、末端の所の流体引込管の断面は、流体流要素およびノズルの少なくとも一方によって画定されてもよく、流体流要素およびノズルの少なくとも一方は、末端から上流側の流体引込管の断面よりも実質的に小さい断面を有する。
【0019】
本開示の第4の態様は、冷凍無痛法を実施する方法であって、極低温プローブのアブレーションチップの球状遠位外面を目標神経に近接させて配置するステップであって、目標神経が、軸索および周囲の管状構造を備える、ステップ、目標神経の軸索を断裂させ、一方、極低温流体を極低温プローブに供給してアブレーションチップを冷却することによって周囲の管状構造の少なくとも一部を損傷せずに残すステップ、極低温プローブを加熱するステップ、および/または目標神経に近接する位置から球状遠位外面を取り外すステップ、を含む方法を提供する。
【0020】
一実施形態では、極低温プローブのアブレーションチップの球状遠位外面を目標神経に近接させて配置するステップは、アブレーションチップの球状遠位外面を目標神経に直接接触させて配置するステップを含んでもよい。極低温プローブのアブレーションチップの球状遠位外面を目標神経に近接させて配置するステップは、アブレーションチップの球状遠位外面を目標神経に近接させて配置するが、目標神経に直接接触させないステップを含んでもよい。極低温プローブを加熱するステップは、極低温プローブからの排出された極低温流体の流れを遮断し、一方、引き続き極低温プローブに極低温流体を供給するステップを含んでもよい。アブレーションチップは、実質的に一定の軸方向外形を有するアブレーションチップ近位外面を含んでもよく、アブレーションチップ近位外面の直径は、球状遠位外面の直径よりも小さい。球状外面は、直径が約3.0mmから約18.0mmの間の半球状面を含んでもよい。この方法は、配置動作、断裂動作、加熱動作、および取外し動作を第2の目標神経に対して繰り返すステップを含んでもよい。目標神経は肋間神経を含んでもよい。この方法は、極低温プローブのアブレーションチップの球状遠位外面を目標神経に近接させて配置する前に、極低温プローブを曲げるステップを含んでもよい。目標神経の軸索を断裂させ、一方、周囲の管状構造の少なくとも一部を損傷せずに残すステップは、神経内膜、神経周膜、線維束、および神経上膜のうちの少なくとも1つを損傷せずに残すステップを含んでもよい。目標神経の軸索を断裂させ、一方、周囲の管状構造の少なくとも一部を損傷せずに残すステップは、神経内膜および神経周膜を損傷せずに残すステップを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示による第1の例示的なクライオプローブの外形図である。
図2図1の第1の例示的なクライオプローブのハンドルハウジング内の内部構成要素を示すために取り外されたハンドルハウジングの一半部の外形図である。
図3図1の第1の例示的なクライオプローブのアダプタおよびハイポチューブの上面図である。
図4】主要寸法の長手方向長さに沿った図3の断面図である。
図5】例示的なアダプタおよび図2に示す関連する構成要素の断面図である。
図6】ハンドルハウジングの遠位開口部における図1の第1の例示的なクライオプローブの長手方向断面図である。
図7】絶縁チューブと絶縁管との間の遷移長に沿った図1の第1の例示的なクライオプローブの長手方向断面図である。
図8】本開示による第1の例示的な絶縁管の外形図である。
図9】絶縁管の長さの大部分に沿った第1の例示的な絶縁管の長手方向断面図である。
図10】第1の例示的な絶縁管の近位端における長手方向断面図である。
図11】本開示による第1の例示的なスペーサの外形図である。
図12】様々な曲げ位置におけるアブレーションチップおよび絶縁管が示された第1の例示的なクライオプローブの立面斜視図である。
図13】本開示による第2の例示的な絶縁管の立面斜視図である。
図14】展性をもつシャフトを囲む第2の例示的な絶縁管および引込管の軸方向断面図である。
図15図1の第1の例示的なクライオプローブの遠位端における長手方向断面図である。
図16】第1の例示的な取付け技法を使用してアブレーションチップに接合された展性をもつシャフトの長手方向断面図である。
図17】第2の例示的な取付け技法を使用してアブレーションチップに接合された展性をもつシャフトの長手方向断面図である。
図18】ドーム付き円筒形状を有する代替の例示的なアブレーションチップの外形図である。
図19】球状接触面を備える丸い円錐形状を有するさらなる代替の例示的なアブレーションチップの外形図である。
図20】アブレーションチップの所で背圧を発生させるために本開示によって使用されることがある流体流狭窄部を実現する代替アダプタの長手方向断面図である。
図21】第2の例示的なクライオプローブの遠位端における長手方向断面図である。
図22】第2の例示的なクライオプローブの一部であってもよい例示的なボイラーの立面斜視図である。
図23】仮想線で示されており、流体流路を画定するようにボイラー自体から延びる少なくとも1つのハイポチューブを有する図22のボイラーの立面斜視図である。
図24】別個の流体流路を含む三角形状を有する第1の例示的な長手方向インサートを含む展性をもつシャフトとその長手方向長さに沿った専用エアポケットの軸方向断面図である。
図25】別個の流体流路を含む六角形状を有する第1の例示的な長手方向インサートを含む展性をもつシャフトとその長手方向長さに沿った専用エアポケットの軸方向断面図である。
図26】本開示の例示的なクライオプローブのうちの1つ以上を利用するための例示的なプロセスを示すプロセス流れ図である。
図27】肋間領域用の冷凍無痛法手術の一部としてのクライオプローブの配置を示す胸郭および関連する組織の図である。
図28】本開示の少なくともいくつかの態様によるクライオプローブによる冷凍無痛法を受ける神経の切欠き斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の例示的な実施形態について以下に、例示的な極低温プローブ、極低温プローブを製造する方法、および極低温プローブを疼痛管理手順の一部として使用する方法について説明し例示する。もちろん、当業者には、後述の実施形態が事実上例示的なものであり、本発明の範囲および趣旨から逸脱せずに再構成されてもよいことが明らかになろう。しかし、説明を明確で厳密なものにするために、後述の例示的な実施形態は、当業者が本発明の範囲内の要件ではないと認識すべきである任意のステップ、方法、および特徴を含む場合がある。
【0023】
図1を参照するとわかるように、第1の例示的な極低温プローブ(クライオプローブ)100は、絶縁チューブ106を貫通してハンドルハウジング108内へ延びる可撓性または展性をもつ細長いシャフト104に接続されたアブレーションチップ102を含む遠位アブレーション部101を備えてもよい。一例として、アブレーションチップ102とハンドルハウジング108との間の距離は、対象とする用途に応じて異なってもよいが、例示的な形態では、約4インチから30インチの間である。例示的な形態では、絶縁チューブ106は、実質的な剛性を有し、ハンドルハウジング108に固定的に取り付けられ、展性をもつシャフト104の一部をその直接の周囲(哺乳類の体に挿入されるときに隣接する組織を含む)に接触しないように遮蔽してもよい。この例示的な実施形態では、ハンドルハウジング108は、ピストルグリップ110と、ハンドルハウジング108を貫通して延び、展性をもつシャフト104と接続バンドル112との間の接続部を収容する内部キャビティと、を含んでもよい。ピストルグリップ110に加えて、従来技術で公知の他の方法が使用されてもよい。
【0024】
接続バンドル112は、例示的な形態では、作動流体を流体源(図示略)からハンドルハウジング108内部へ送る引込ライン114、ならびに作動流体をハンドルハウジング内から、制限なしに流体循環タンクなどの回収位置(図示略)まで送る排出ライン116を囲む編組スリーブ113を備えてもよい。例示的な編組スリーブ113に加えて、他の厚さおよび構成の編組スリーブを使用して引込ライン114を覆ってもよい。本開示の一部として使用されてもよい例示的な編組スリーブは、制限なしに、ニュージャージー州スパルタのTechFlexから市販されているようなポリエチレンテレフタレート(PET)編組モノフィラメント糸を含む。さらに、本開示の一部として使用されてもよい例示的な引込ライン114および排出ライン116は、制限なしに、英国のHydrotechnikから市販されているようなマイクロボア高圧ホースを含む。引込ライン114および排出ライン116に加えて、編組スリーブ113はまた、例示的な形態では、アブレーションチップ102および展性をもつシャフト104の少なくとも一方内またはそれに隣接して配置された1つ以上の熱電対と電気的に連絡する1つ以上の熱電対リード線118を囲んでもよい。さらに、本開示の一部として使用されてもよい例示的な熱電対リード線118は、制限なしに、ニュージャージー州クリフトンのPhysitempから市販されている24AWG熱電対を含む。この例示的な実施形態では、引込ライン114および排出ライン116ならびに熱電対リード線118は、クライオプローブ100をモジュール式にするためにクイックコネクトアダプタ120を備えてもよい。このようにして、クライオプローブ100は使い捨てにされ、制限なしに、極低温流体タンク、極低温流体リサイクル機器、および温度読取り値を表示するように動作可能な医療機器などの多重使用または繰返し使用構成要素と相互接続するように構成されてもよい。
【0025】
図2図5を参照するとわかるように、接続バンドル112は、例示的な形態では、ハンドルハウジング108の近位開口部130内へ延び、そこで末端に至ってもよい。この例示的な実施形態では、ハンドルハウジング108は、接続されたときに、内部キャビティならびに対応する近位開口部130および遠位開口部138を画定する左右のハウジング部を備えてもよい。接続バンドル112の遠位末端において、バンド132が、接続バンドル端と、引込ライン114および排出ライン116ならびに熱電対リード線118と、を囲んでもよい。例示的な形態では、引込ライン114の遠位端が、アダプタ134を使用して引込ハイポチューブ136などの流体引込管に流体密シールを介して流体結合されてもよい。一例として、アダプタ134は、引込ライン114の遠位端内に受け入れられるリブ付き雄近位端を含んでもよく、一方、アダプタの雌遠位端は引込ハイポチューブ136を受ける。例示的な形態では、引込アダプタ134と引込ライン114との間の接続は、アダプタと引込ハイポチューブの両方を囲んでアダプタと引込ラインとの間に圧縮ばめを維持するクリンプリング138を使用して補助されてもよい。さらに、引込アダプタ134と引込ハイポチューブ136との間の接続は、流体密接続であってもよく、溶接またはロウ付けプロセスを使用してハイポチューブをアダプタ内に配置することによって実現されてもよい。この例示的な実施形態では、引込ライン114は、可撓性または展性を有してもよく、制限なしにアルミニウム、銅、ステンレス鋼、および熱可塑性プラスチック(押出し成形された熱可塑性プラスチックを含む)を含む様々な金属およびポリマーの単一構成または多層構成から製造されてもよい。さらなる例として、引込ラインは、化学的適合性のための内側層(たとえば、押出し成形されたポリマーチューブ)と、強度(たとえば、編組糸および編組ステンレス鋼)、屈曲摩擦強さ、および/または外観のための1つ以上の外側層と、を備えてもよい。ハイポチューブ136および引込アダプタ134は一般に、引込ライン114よりも高い剛性を有してもよく、ステンレス鋼から製造され、単一構成または多層構成を有してもよい。さらなる例として、ハイポチューブ136および引込アダプタ134は、制限なしにアルミニウム、銅、ステンレス鋼、および熱可塑性プラスチック(押出し成形された熱可塑性プラスチックを含む)を含む様々な金属およびポリマーの単一構成または多層構成から製造されてもよい。さらに、ハイポチューブ136および引込アダプタ134は、化学的適合性のための内側層(たとえば、押出し成形されたポリマーチューブ)と、強度(たとえば、アルミニウム、ステンレス鋼、編組糸)、屈曲摩擦強さ、および/または外観のための1つ以上の外側層と、を備えてもよい。
【0026】
例示的な形態では、ハイポチューブ136の外部と展性をもつシャフト104の内部との間の環状の空間は、流体排出管105を形成してもよく、流体排出管105は、排出流をアブレーションチップ102から排出ライン116まで送ってもよい。排出ライン116の遠位端は、流体密シールを介して排出アダプタ140に流体結合されてもよい。一般に、いくつかの例示的な実施形態では、排出アダプタ140は、流体排出管105および流体引込管136の配置を同軸姿勢から平行(非同軸)姿勢に変更するように動作可能であってもよい。一例として、排出アダプタ140は、排出ライン116の遠位端内に受け入れられるリブ付き雄近位端141を含んでもよく、一方、アダプタの雌遠位端143は、展性をもつシャフト104の近位端を受ける。図4は、入口端と出口端との間に排出流を流すための略一定の断面積を有する例示的なアダプタ140を示す。しかし、背圧を管理するための手段として、排出流を流すのに利用可能な断面積が、入口端と出口端の間で一定でなくてもよいことに留意されたい(図20参照)。例示的な形態では、排出アダプタ140と排出ライン116との間の接続が、アダプタと排出ラインとの間の圧縮ばめを維持するためにアダプタと排出ライン116の両方を囲むクリンプリング142を使用して補助されてもよい。さらに、アダプタ140と展性をもつシャフト104との間の接続は、流体密接続であってもよく、ロウ付けプロセスを使用して、展性をもつシャフトの近位端がアダプタの遠位ショルダ145に当接して、アダプタ140と展性をもつシャフト104との間にシールを形成するようにシャフトをアダプタ内に配置することによって実現されてもよい。展性をもつシャフト104とアダプタ140との間の流体密シールを継続するのを容易にするための助けとして、アダプタの遠位端は、円錐台状コンプレッションフィッティング146(たとえば、フェルール)を受ける円錐台状テーパ144を含む。コンプレッションフィッティング146は、アダプタ140の遠位端の外周に位置するらせんねじ150にねじ込み可能に係合するナット148を使用して近位に再配置される。このようにして、ナット148が締め付けられると、ナットがコンプレッションフィッティング146を押し、それによって、圧縮ばめ部の外周が縮小し、展性をもつシャフト104の外部をしっかりと把持する。引き続きナット148を締め付けると、コンプレッションフィッティング146と展性をもつシャフト104の外部との間でよりしっかりとした把持が行われ、コンプレッションフィッティング146と展性をもつシャフト104との間の相対的な運動が抑制される。ナット148のねじ山とアダプタ140のねじ山との間にねじロック剤(図示略)を加えてナットとアダプタとの間の相対的な運動を抑制し、したがって、集合的に作動してアダプタ140の遠位ショルダ145に対する流体密シールにおける展性をもつシャフト104の相対的な位置を維持してもよい。例示的な形態では、アダプタ140は、ハイポチューブ136の流量に対応する通路を含み、それによって、アダプタの遠位端はハイポチューブと展性をもつシャフト104を同心配置に揃える。この例示的な実施形態では、排出ライン116は、可撓性または展性を有してもよく、制限なしにアルミニウム、銅、ステンレス鋼、および熱可塑性プラスチック(押出し成形された熱可塑性プラスチックを含む)を含む様々な金属およびポリマーの単一構成または多層構成から製造されてもよい。さらなる例として、排出ラインは、化学的適合性のための内側層(たとえば、押出し成形されたポリマーチューブ)と、強度(たとえば、編組糸および編組ステンレス鋼)、屈曲摩擦強さ、および/または外観のための1つ以上の外側層と、を備えてもよい。展性をもつシャフト104およびアダプタ140は一般に、排出ライン116よりも剛性が高くてもよく、ステンレス鋼から製造され、単一構成または多層構成を有してもよい。さらなる例として、展性をもつシャフト104とアダプタ140は、制限なしにアルミニウム、銅、ステンレス鋼、および熱可塑性プラスチック(押出し成形された熱可塑性プラスチックを含む)を含む様々な金属およびポリマーの単一構成または多層構成から製造されてもよい。さらに、展性をもつシャフト104とアダプタ140は、化学的適合性のための内側層(たとえば、押出し成形されたポリマーチューブ)と、強度(たとえば、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、編組糸)、屈曲摩擦強さ、および/または外観のための1つ以上の外側層と、を備えてもよい。
【0027】
図6を参照するとわかるように、ハンドルハウジング108の遠位端は、遠位開口部138を画定し、遠位開口部138を貫通してハイポチューブ136、展性をもつシャフト104、熱電対リード線118、および絶縁チューブ106が延びてもよい。さらなる例として、ハイポチューブ136は展性をもつシャフト104内に同心円状に位置してもよく、一方、熱電対リード線118は展性をもつシャフト104の外部に沿って延びる。さらに、絶縁チューブ106は、展性をもつシャフト104および熱電対リード線118に対して圧縮ばめされてもよい。
【0028】
図7に示すように、長手方向断面は、絶縁チューブ106内および遠位において、絶縁チューブが末端に至る位置を越えた部分の構成を反映している。1つ以上の熱電対160は、温度測定を行うために展性をもつシャフト104の長さに沿ってかつ熱電対リード線118と電気的に連絡するように配置されてもよい。例示的な形態では、熱電対160は、展性をもつシャフト104の外側にはんだ付けされ、さらに絶縁チューブ106によって覆われてもよい。さらなる例として、この熱電対160は展性をもつシャフト104に部分的に埋め込まれ、展性をもつシャフト内を流れる(排出または引込)流体流に固有の温度測定を行うように動作可能であってもよい。さらに他の例として、熱電対160は、絶縁チューブの遠位端から約2分の1インチから3インチ(1.34インチを含む)の間だけずれてもよいが、他の熱電対が絶縁チューブの長さに沿って配置されてもよい。
【0029】
引き続き図7および図8図12を参照するとわかるように、一例として、展性をもつシャフト104はハイポチューブ136を囲んでもよく、展性をもつシャフト104およびハイポチューブ136の両方が絶縁チューブ106によって囲まれてもよい。絶縁チューブ106の遠位端の近くにおいて、絶縁チューブ106は、絶縁チューブと展性をもつシャフト104との間に周方向の隙間を形成するように内部が中空であってもよい。この例示的な実施形態では、この隙間は、より可撓性の高い絶縁管170を受けるサイズを有してもよく、隙間の長手方向長さは、約0.1インチから1.0インチを超える長さ(0.32インチを含む)まで、一定でなくてもよい。一例として、この絶縁管170は、可撓性をもつカバー176と展性をもつシャフト104との間に介在するスペーサ174を含んでもよく、スペーサ174は、可撓性をもつカバーと展性をもつシャフトとの間に断熱隙間(たとえば、エアギャップ)を維持してもよい。例示的な形態では、スペーサ174は、任意の所与の軸方向断面において、長手方向長さに沿って長手方向にずれた、1つ以上の(たとえば、4つの)らせん174a、174b、174c、174d(概ね一定の円形軸方向断面および/または共通の軸方向寸法を有する)を備えてもよく、それぞれのらせんはそれぞれ、12時、3時、6時、および9時の方向に向けられてもよい。各長手方向端部の所で、らせん174a、174b、174c、174dは、セグメント端部の位置を維持するために結合されるかまたは静的構造と相互接続してもよい。たとえば、各らせんは、制限なしに熱可塑性プラスチックなどのポリマーのような様々な非導電材料を含んでもよい。いくつかの例示的な実施形態では、個々のらせん174a、174b、174c、174dは、中空のチューブとして形成されてもよく、中空のチューブは、場合によっては絶縁材料を含んでもよい。絶縁管170の近位端175の所で、外径が小さくされるかまたは狭幅化(173)され、展性をもつシャフト104と絶縁チューブ106の遠位端との間の隙間に近位端を挿入するのを可能にしてもよい。たとえば、絶縁管170は、外部主要寸法がらせん174a、174b、174c、174dの外径よりも小さくするように狭幅化されてもよい。絶縁管170は、遠位に動くことによって、外径が大きくなってもよく、スペーサ174の近位端が接触して配置される近位ショルダ180を含んでもよい。たとえば、絶縁管は、制限なしにポリスチレンフォームなどの真空ギャップまたは流体ギャップ(たとえば、滞留流体ポケット)を形成するように任意の数の構成を有する任意の絶縁材料を含んでもよい。絶縁管170は、展性をもつシャフト104を外部環境から絶縁するように動作可能であってもよい。この例示的な実施形態では、展性をもつシャフト104、ハイポチューブ136、および絶縁管170は、180度を超える曲げを可能にしてアブレーションチップ102を開始位置と終了位置との間に再配置するのに十分な可撓性を有してもよい(図12参照)。
【0030】
図13および図14に移るとわかるように、例示的な代替実施形態では、前述の絶縁管170を代替の例示的な可撓性をもつ被覆材190と置き換えて展性をもつシャフト104およびハイポチューブ136を囲んでもよい。例示的な形態では、可撓性をもつ被覆材190は、周方向連続カバー194の内部から延びる複数の内部突起192を含んでもよく、突起は、長手方向長さに沿った交互の円形と軸のパターンにおいて配置されてもよい。突起の配置は、展性をもつシャフト104と連続カバー194との間にエアギャップ(たとえば、滞留流体ポケット)193を画定し、それによって、展性をもつシャフト104が直線姿勢を有するか、または曲げられていることを示す何らかの弧状を備えるかにかかわらず、断熱がもたらされる(図12参照)。突起192の配置を使用すると、前述の絶縁管170と比較してより体積の大きい空間が形成されることがある。さらに、突起192を円錐状、円錐台状、または半球状に形成することによって、伝導熱伝達のための突起と展性をもつシャフト104との間の接触表面積が小さくされてもよい。当業者には、断熱性能を向上させるために突起の形状およびパターンが変更されてもよいことが理解されよう。
【0031】
図15図17を参照するとわかるように、可撓性の絶縁管170の遠位端196は、(代わりに使用する場合には可撓性をもつ被覆材190のように)小さくされるかまたは狭幅化された(197)外径を呈してもよい。たとえば、絶縁管170は、外側主要寸法がらせん174a、174b、174c、174dの外径よりも小さくなるように狭幅化されてもよい。絶縁管170の一部の外径が小さくされるので、内部に遠位ショルダ184が形成され、遠位ショルダ184上にスペーサ174の遠位端が配置されてもよい。展性をもつシャフト104は、絶縁管170の遠位端196に対して近位に嵌め込まれ、末端において、流体密シールによってアブレーションチップ102に接合されてもよい。一例として、図16に示すように、流体密シールは、制限なしに周方向表面溶接部および周方向突合せ溶接部などの、アブレーションチップ102と展性をもつシャフト104との間の接合位置における溶接部198を介して実現されてもよい。代替として、図17に示すように、展性をもつシャフト104は、アブレーションチップ102内に形成されたキャビティ内へ延びてもよく、制限なしに周方向隅肉溶接部などの重ね継ぎの所の溶接部198によって流体密シールが実現されてもよい。当業者には、本明細書では、展性をもつシャフト104とアブレーションチップ102とを流体接合する他の形態が企図され、化学結合(たとえば、接着剤)、ロウ付け、溶接(たとえば、スピンおよび摩擦溶接)、かしめ、および機械的接続(たとえば、ねじ接続、摩擦ばめなど)を含むことが十分に理解されよう。
【0032】
図15に戻るとわかるように、例示的な形態では、アブレーションチップ102は、閉鎖された遠位端103が末端となり、展性をもつシャフト104を越えて延びるハイポチューブ136の末端202を受けるように構成された内部キャビティ200を有する固体金属ケーシングを備える。この例示的な実施形態では、アブレーションチップ102を形成する金属は、制限なしにアルミニウム、チタン、ステンレス鋼、銅、銀、金、および任意の他の熱伝導性金属または合金を含み、上記の金属のうちの1つ以上を含むコーティングを含む、手術環境で使用可能な任意の金属または合金を含んでもよい。一例として、キャビティ200は、円錐状に先細りして遠位点204に至る円筒形状を備えてもよい。この例示的な実施形態では、ハイポチューブ136の遠位末端はノズル206を備え、ノズル206を通して極低温流体が排出され、ハイポチューブによって占有されないキャビティ200の部分に流入してもよい。例示的な形態では、ノズル206は、直径が0.05インチから0.001インチの間のノズル開口部を有し、キャビティ200の遠位端から0.005インチから2.0インチ(0.100インチを含む)の任意の位置に配置されてもよい。必要ではないが、ハイポチューブ136は、極低温流体がノズル206を通って流れるのに利用可能な断面積を変えるために(たとえば、ハイポチューブ136とノズル206との間の)ノズル206の上流側などの流体流要素208を含んでもよい。一例として、ハイポチューブ136は、ノズル206のすぐ近くで極低温流体流に利用可能な断面積を小さくするように動作可能な流体流要素(たとえば、流体流狭窄部)208に結合されてもよく、流体流要素208は、ノズル206の所で、流体流要素の上流側を流れる極低温流体の圧力と比較して極低温流体の圧力を増大させるように動作する。一般に、ノズル206および/または流体流要素208は、流体引込管の末端から上流側の流体引込管(たとえば、ハイポチューブ136)の断面よりも実質的に小さい断面を有してもよい。ノズルは、流体流要素208の流体流用の断面よりも実質的に小さい流体流用の断面を有してもよい。
【0033】
この例示的な実施形態では、ノズル206から出た極低温流体がノズルから上流側でより高い圧力を受け、キャビティ200内のノズルの下流側で著しく低い圧力で膨張することが可能になり、それによってジュール-トムソン膨張がもたらされ、極低温流体およびアブレーションチップ102の温度が著しく低下することが構想される。一例として、極低温流体は、制限なしに亜酸化窒素、アルゴン、二酸化炭素、ならびに相転移流体などの任意の数の極低温流体を含んでもよい。さらなる例として、亜酸化窒素の場合、極低温流体は、ノズルの上流側において温度が26.7℃、圧力が800psiで液体として供給されてもよく、アブレーションチップキャビティ200内で約45psiおよび-68℃における気相または気体と液体の混合相を含んでもよい。より低い圧力の極低温流体が、キャビティ200を通りハイポチューブ136の周りを流れ、引き続き、ハイポチューブを囲む展性をもつシャフト104に流入してシャフトを通って流れることによって向流が確立されてもよく、それによって、アブレーションチップ102内のジュール-トムソン膨張が継続するにつれてハイポチューブを通って流れる極低温流体が事前に冷却される。必要ではないが、排出ライン116(図1参照)上で真空パージまたは低圧パージを行い、膨張した極低温流体の流れを急速に展性をもつシャフト104を通過させ、排出アダプタ140を通過させ、排出ラインに流入させてもよい。ジュール-トムソン膨張が引き続きアブレーションチップ102の所で生じるので、チップを焼灼すべき組織に接触させることによってチップ102の外部がアブレーション手順において使用するのに十分な程度に冷却される。一例として、利用される極低温流体に応じて、ノズル206を通過する極低温流体の例示的な流量は、毎分15立方センチメートルから100立方センチメートル超の間の範囲である。
【0034】
図15図19を参照するとわかるように、この例示的な実施形態では、アブレーションチップ102は、直径が約3.0ミリメートルから18.0ミリメートルの間の範囲である半球状表面などの球状遠位外面107を備えてもよい。一般に、本明細書で使用される「球状」は、(隣接する構造に対して)拡大された全体的に丸い外面を指してもよい。制限なしに、図18に示すようなドーム付き円筒面および図19に示すような丸い円錐面、または当業者に知られている他の様々な球状面のいずれかなど、他の外形および外面がアブレーションチップ102に利用されてもよい。球状以外の外面については、主要軸方向寸法は1.0ミリメートルから25ミリメートルの間であってもよい。さらなる一例として、アブレーションチップ102は任意の球状外面107を備えてもよい。当業者には、アブレーションチップ102の外面が、ある解剖学的特徴の特定のアブレーションを実行するように特定的に設計された任意の数の外形に適してもよいことが理解されよう。例示的な形態では、アブレーションチップ102は、略一定の軸方向外形を有し、直径が球状外部の直径よりも小さい近位外面を含むように狭幅化されてもよい。この狭幅化部は、軸方向直径が段階的に変化して末端に至り、アブレーションチップ102と展性をもつシャフト104との間の流体密シールを容易にしてもよい。さらに、アブレーションチップ102は、当技術分野で知られている方法によって展性をもつシャフト104に取り付けられ展性をもつシャフト104から取り外されてもよい。一般に、いくつかの例示的な実施形態では、遠位アブレーション部101の球状遠位外面107は、長手方向長さLにわたって延びてもよく、長手方向長さLは、遠位アブレーション部の露出された外面の長手方向長さLASの少なくとも2分の1であってもよい。他の例示的な実施形態では、遠位アブレーション部101の球状遠位外面107の長手方向長さLは、遠位アブレーション部の露出された外面の長手方向長さLASの2分の1未満の長さだけ延びてもよい。
【0035】
図20を参照するとわかるように、流れ制限要素を含む例示的な代替アダプタ240は、展性をもつシャフト104からの寒剤の排出流を絞り、それによって背圧を発生させるために前述の例示的なアダプタ140の代わりに使用されてもよい。例示的な形態では、アブレーションチップ102が実現できる温度は、寒剤背圧が高くなるにつれてアブレーションチップの所の温度が高くなるという点で極低温排出流の背圧に正比例してもよい。例示的な形態では、熱除去の大部分は、アブレーションチップ102内またはアブレーションチップ102近傍の寒剤の相転移(沸騰)の結果として生じ得る。アブレーションチップ102が実現できる温度は、寒剤の沸点(蒸発温度)に比例することができ、寒剤の沸点は寒剤圧力に比例する。たとえば、寒剤に対する背圧が高くなると、アブレーションチップが実現できる最低温度に対して温度も高くなる。寒剤排出流の流れを遅れさせるための何らかの流れ制限要素(たとえば、弁またはスロットル)がなければ、背圧は排出経路における流れ制限の矛盾する副作用になり得る。その理由として、このような流れ制限は流量に依存し得ることがある。図20は、展性をもつシャフト104から流れる排出寒剤流と、最終的に排出ライン116に流入する排出寒剤流と、の間に位置する狭窄部242の形をした例示的な流れ制限要素を示す。狭窄部242の寸法が弁なしで一定の寸法を有するとすれば、生成される背圧の量は流量の関数であり、流量が増すにつれて背圧が高くなる。本開示の少なくともいくつかの態様によるいくつかの例示的な実施形態では、アダプタ140は、狭窄部242の寒剤排出流用の断面積が排出ライン116の寒剤排出流用のわずかな断面積になるように構成されてもよい。例示的な実施形態では、狭窄部242の寒剤排出流用の断面積は、排出ライン116の寒剤排出流用の断面積の約70%未満であってもよい。別の例示的な実施形態では、狭窄部242の寒剤排出流用の断面積は、排出ライン116の寒剤排出流用の断面積の約50%未満であってもよい。さらに別の例示的な実施形態では、狭窄部242の寒剤排出流用の断面積は、排出ライン116の寒剤排出流用の断面積の約30%未満であってもよい。さらに別の例示的な実施形態では、狭窄部242の寒剤排出流用の断面積は、排出ライン116の寒剤排出流用の断面積の約15%未満であってもよい。別の例示的な実施形態では、狭窄部242の寒剤排出流用の断面積は、排出ライン116の寒剤排出流用の断面積の約10%であってもよい。
【0036】
図21を参照するとわかるように、第2の例示的な極低温プローブ(クライオプローブ)300は、ハンドルハウジング108、接続バンドル112、引込ライン114、排出ライン116、熱電対リード線118、および絶縁チューブ106を含む第1の例示的なクライオプローブ100と同じ構成要素のうちの多くを共有してもよい。しかし、第2の例示的なクライオプローブ300が異なる点は、展性をもつシャフトおよびアブレーションチップの構成である。この例示的な実施形態では、展性をもつシャフト304は、可撓性をもつ絶縁管170で覆われてもよくまたは覆われなくてもよい。可撓性をもつ絶縁管を利用するかどうかにかかわらず、展性をもつシャフト304は、流体排出管310を囲み、ハンドルハウジング108に送るべき使用済み寒剤用の経路を画定してもよい。排出管310の外周は、展性をもつシャフト304の内周と協働して極低温流体用の流体引込管312を画定する。例示的な形態では、引込管312に対する排出管310の断面積の比は、約30:1から1:1の間の範囲であってもよい。この例示的なクライオプローブ配管の顕著な違いは、引込管を通って流れる極低温流体の条件が必ずしも組織を焼灼できるほど低い温度(たとえば、約-10℃を上回る)ではないと仮定した場合に、展性をもつシャフト304に接触することがある組織の不慮のアブレーションを回避するための手段として、排出管310が引込管312に対して周方向に嵌め込まれた位置にあることである。例示的な形態では、引込管312は、引込管312内を流れる流体が高圧(たとえば、300~800psi)下にあり、したがって、極低温流体の沸点が組織アブレーション温度よりも高いので、組織を焼灼できるほど低い温度にならない。極低温流体を圧縮することに起因して発生する熱はまた、引込管312の外側を組織アブレーション温度よりも高い温度に維持するのを助ける。さらに、排出チューブから引込管312を通って流れる極低温流体へのあらゆる熱交換が、ボイラー320を通して排出流に導入される。展性をもつシャフト304の遠位端は、排出管310の遠位端よりもさらに遠位に延びる。遠位末端のこの違いによって、展性をもつシャフト304の軸方向断面と一致する軸方向断面を有するボイラー320を部分的に受け入れる鍔付きくぼみが形成され、この軸方向断面は、例示的な形態では円形であってもよい。
【0037】
図21および図22を参照するとわかるように、ボイラー320の近位端は、排出管310内で受けられ、ボイラー320を通って延びる中央ボア328と排出管310の内部との間に流体シールを形成するように構成されたニップル324を含んでもよい。さらなる例示的な形態では、ニップル324は、ニップル324と排出管310との間に摩擦ばめおよび流体シールを形成して排出管310に対するボイラー320の相対的な長手方向位置を維持するように構成された外部隆起周方向リング329を含んでもよい。ボイラー320が排出管310に過度に挿入されるのを妨げるために、ニップル324は、排出管310の遠位端が当接してもよい周方向リップ330を含む。例示的な形態では、ニップル324は、軸方向に延びて、展性をもつシャフト304の張り出し遠位端によって形成される内部ギャップを充填するように構成された近位フランジ332内で遠位に末端に至ってもよい。この内部ギャップを充填するにもかかわらず、ボイラー320は、引込管312と遠位アブレーション部302の内部との間の流体連通を実現する1つ以上の流路334を備えてもよく、遠位アブレーション部302はアブレーションチップ336を備えてもよく、アブレーションチップ336は、閉鎖された遠位端303および/またはボイラー320を含む。例示的な形態では、ボイラー320は、ポリマー材料から製造されてもよく、流路334を画定しそれを通って流体連通を可能にするようにハイポチューブ335などの1つ以上の既存のラインを介して射出成形されてもよい。一例として、流路334は、ボイラー320本体の遠位端を実質的に越えた位置まで延びなくてもよく、それによって、ボイラー320本体と実質的に同一平面を形成するノズルが形成される。代替として、ハイポチューブ335は、渦巻状構成またはその他の構成でボイラー320本体の遠位端を実質的に越えた位置まで延び、アブレーションチップ336内の寒剤流体が膨張するのを可能にし、寒剤流体をアブレーションチップの内部の流路から出る前に事前に冷却してもよい(図23参照)。
【0038】
一例として、アブレーションチップ336および引込管312をボイラー320の周りで流体密封するために、ボイラー320は、各々がそれぞれのOリング342を受ける2つ以上の外部周方向トレンチ340を含んでもよい。ボイラー320の外周上の各トレンチ340間に、対応する溝344を有する隆起リブ343が介在している。この例示的な実施形態では、隆起リブ343の高さは、展性をもつシャフト304およびアブレーションチップ336の少なくとも一方の材料厚さよりもわずかに小さくなるように選択されてもよく、それによって、ボイラー320と、展性をもつシャフト304と、アブレーションチップ336と、を接合したときに、接合された各構成要素の得られる外面に顕著な凹凸が生じないようになる。ボイラー320と、展性をもつシャフト304と、アブレーションチップ336と、を互いに接合するには、このうちの1つを展性をもつシャフト304の遠位端上にかしめてその端部を溝344のうちの近位の溝内に配置し、一方、アブレーションチップ336の近位端は、溝344の遠位端内に受け入れられるように同様にかしめられる。このかしめ処置が展性をもつシャフト304に対して施され、アブレーションチップ336も、Oリング342を介して流体密シールを完全に形成するように動作可能であることに留意されたい。
【0039】
流体密シールを形成すると、寒剤が引込管312からボイラー320の流路334を通ってアブレーションチップ336の内部まで流れることができる。極低温流体は、アブレーションチップ336に到達すると、アブレーションチップ336の内部において著しく低い圧力で膨張することが可能になり、それによって、ジュール-トムソン膨張が生じ、極低温流体およびアブレーションチップの温度が著しく低下する。一例として、極低温流体は、制限なしに亜酸化窒素、アルゴン、および二酸化炭素などの任意の数の極低温流体を含んでもよい。さらなる例として、極低温流体は、室温で(約15℃~25℃)圧力が2000psi未満のときに平衡状態(または飽和点)になる相転移流体であってもよい。さらなる例として、亜酸化窒素の場合、極低温流体は、ボイラー320の上流側において温度が約80°Fで圧力が約800psiである液体として供給され、約45psiで-68℃の気相または気体と液体の混合相として排出されてもよい。アブレーションチップ336内で引き続きジュール-トムソン膨張が生じるにつれて、アブレーションチップの外部が、アブレーション手順で使用できるほど低い温度に冷却され、それによって、アブレーションチップを焼灼される予定である組織に接触させてもよい。一例として、利用される極低温流体に応じて、流路334を通る極低温流体の例示的な流量は、毎分約15立方センチメートルから100立方センチメートルを超える範囲である。
【0040】
前述のように、アブレーションチップ336が実現できる温度は、寒剤排出流の背圧に正比例する。したがって、第2の例示的なクライオプローブ300は、排出管310を通して使用された寒剤の流れを調整することによってアブレーションチップ336内に所定の背圧を維持するアブレーションチップ336に近接する圧力弁(たとえば、安全弁)350の形態の流れ制限要素を含んでもよい(または含まなくてもよい)。例示的な形態では、安全弁350は、所定の張力(すなわち、ばね定数)を有するばね354に動作可能に結合された円錐台形プラグ352を含んでもよい。この例示的な実施形態では、ばね354は、近位において中央ボア328の遠位円錐台状端部358を越えることが妨げられる拡大部356を有するコイルばねを備えてもよい。この遠位円錐台状端部358は、アブレーションチップ336内部から出て中央ボア328内を移動する極低温流体に対する漏斗機能を実行するように動作可能であってもよい。ばね354の張力は、所定の圧力に達するまでプラグ352と中央ボア328の円錐台状近位端359(弁体の弁座として作用する)との間の係合を実質的に流体密シール状態に維持するように事前に加えられる(すなわち、ばねによって付勢される)。中央ボア328内の流体圧力が所定の圧力に達すると、寒剤の圧力がばね354の付勢作用に打ち勝つのに十分な力をプラグ352に加え、それによって、プラグ352と中央ボア328の円錐台状近位端359とを分離することが可能になる。さらなる例として、当業者には、ばね354としては、アブレーションチップ336の内部に維持される背圧を設定するよう選択または操作されてもよいことが理解されよう。さらなる例として、ばね354としては、アブレーションチップ336の内部に維持される背圧を15psiから100psiの間(30psiから50psiの間を含む)になるように設定するよう選択または操作されてもよい。例示的な形態では、直径が最も幅の狭い位置で0.125インチである中央ボア328では、0.6ポンドのばね力がアブレーションチップ336内に50psiの背圧を維持するように動作可能である。例示的な安全弁350についてボイラー320内およびアブレーションチップ336に近接する位置まで延びるように説明したが、当業者には、1つ以上の安全弁がボイラーに近接して配置されてもよくならびに/またはアブレーションチップ336に近接する位置には配置されなくてもよいことが理解されよう。
【0041】
安全弁350の有無にかかわらず、膨張した極低温流体が中央ボア328を通って流れ排出管310に流入し、アブレーションチップ336内のジュール-トムソン膨張が継続するにつれて引込管312および流路334を通って流れる極低温流体に事前冷却を施すことによって、向流が確立される。ボイラー320の遠位端における外部半径方向表面と、アブレーションチップ336の半径方向内面と、の間のギャップ321は、クライオプローブ100のノズル206と同様にノズルとして働いてもよい。同様に、流路334は、クライオプローブ100の流体流要素208と同様に流体流狭窄部として働いてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、ギャップ(ノズル)321の断面は、ボイラー320の上流側の引込管312の断面よりも実質的に小さくてもよい。同様に、いくつかの例示的な実施形態では、流路334の断面は、ボイラー320の上流側の引込管312の断面よりも実質的に小さくてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、ギャップ(ノズル)321の断面は、流路334の断面よりも小さくてもよい。必要ではないが、排出ライン116(図1参照)上で真空パージまたは低圧パージを行い、低圧極低温流体の流れを急速に排出管310を通過させ、排出ラインに流入させてもよい。
【0042】
この例示的な実施形態では、アブレーションチップ336は、直径が約3.0ミリメートルから18.0ミリメートルの間の範囲である球状外形を備えてもよい。しかし、アブレーションチップ336には、制限なしに、図18に示すようなドーム付き円筒形および図19に示すような丸い円錐形状などの他の外形が利用されてもよい。さらなる例として、アブレーションチップ336は、(たとえば、図15に示すような)任意の球状外形を備えてもよい。当業者には、アブレーションチップ336の外形が、ある解剖学的特徴の特定のアブレーションを実行するように特定的に設計された任意の数の外形に適してもよいことが理解されよう。
【0043】
図24および図25を参照するとわかるように、当業者には、展性をもつシャフト304内で様々な構成を利用して極低温流体をアブレーションチップ336に供給し、膨張/冷却した極低温流体をアブレーションチップ336から除去してもよいことが同様に理解されよう。一例として、特に図24を参照するとわかるように、展性をもつシャフト304は、絶縁エアポケット(たとえば、滞留流体ポケット)410、1つ以上の極低温引込管420、および1つ以上の極低温排出管430を画定するインサート400を収容してもよい。引込管420は、排出管430から分離されてもよい。例示的なインサート400は、制限なしにポリプロピレン、ポリビニリデンフルオリド、および低密度ポリエチレンなどの押出し成形されたポリマーを備えてもよい。インサート400は、三角形状(たとえば、断面)を備え、展性をもつシャフト304の内部に3つの接点を設け、インサートと展性をもつシャフトとの間のそれらの接点を減らし、それによって相対低温排出管430と展性をもつシャフト304の表面との間の伝導熱伝達を低減させてもよい。さらなる例として、三角形状としては、展性をもつシャフト304の直径内に嵌り、インサートとシャフトとの間に3つの接点を設け、正三角形が死空量を最低限に抑え、一方、直角三角形が死空量を最大にする場合があることが実現されるような三角形状が選択されてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、死空量は密封され排出されてもよく、それによって外面への熱伝達に対する障壁を強化してもよい。三角形状の代替として、追加の辺を有する形状(たとえば、4つ以上の辺を有する断面をもつ形状)が使用されてもよい。例示的な形態では、引込管420および排出管430は、インサート400内に形成された長手方向流路以外何も備えていなくてもよく、またはインサートが押出し成形される専用チューブ(ハイポチューブなど)を備えてもよい。導管420、430およびエアポケット410のうちの1つ以上内の温度および/または圧力に関するリアルタイム情報を提供するように熱電対リード線(図示略)またはセンサーリード線(図示略)を配線するための1つ以上の導管を含むことも、この例示的なインサート400の範囲内である。
【0044】
図25は、展性をもつシャフト304内に配置されてもよく、絶縁エアポケット(たとえば、滞留流体ポケット)460、1つ以上の極低温引込管470、および1つ以上の極低温排出管480を画定し得るさらなる例示的なインサート450を示す。例示的なインサート450は、制限なしにポリプロピレン、ポリビニリデンフルオリド、および低密度ポリエチレンなどの押出し成形されたポリマーを備えてもよい。インサート450は、六角形状を備え、展性をもつシャフト304の内部に6つの接点を設け、インサートと展性をもつシャフトとの間のそれらの接点を減らし、それによって、相対低温排出管480と展性をもつシャフトの表面との間の伝導熱伝達を低減させてもよい。さらなる例として、展性をもつシャフトとの尖った(低表面積接触の)接触部を有する物体を利用することによって、伝導熱伝達用の表面積が展性をもつシャフトの内部湾曲と一致する弧状面と比較して縮小される。例示的な形態では、引込管470および排出管480は、インサート450内に形成された長手方向流路以外何も備えていなくてもよく、またはインサートが押出し成形される専用チューブを備えてもよい。導管470、480およびエアポケット460のうちの1つ以上内の温度および/または圧力に関するリアルタイム情報を提供するように熱電対リード線(図示略)またはセンサーリード線(図示略)を配線するための1つ以上の導管を含むことも、この例示的なインサート450の範囲内である。
【0045】
本明細書で開示する構成要素のうちの1つ以上は、直接見通し線が妨害されることがある外科処置中に超音波視認性を実現するエコー源性コーティングを含んでもよい。当業者には、非見通し線外科処置に超音波を使用することが理解されよう。したがって、簡潔さを促進するために超音波についての詳細は省略されている。超音波の代替として、当技術分野で知られている他の視覚化方法が使用されてもよい。
【0046】
前述の極低温プローブ100、300は、アブレーションシーケンスが完了したことを示す電気的検知を含んでもよい。一例として、冷凍無痛法手術中に肋間空間などにおいてアブレーションの遠位の神経またはその他の組織にパルス信号を与え(すなわち、神経または組織を通して電気信号を送り)、アブレーションの近位の位置において電気信号の測定を試みてもよく、アブレーションは電気信号を消散させるはずであり、または電気信号が、アブレーションによって中断されることに起因して測定不能になるはずである。連続的または不連続なパルシングを利用してアブレーション処置がいつ完了したかを判定してもよい。
【0047】
図26に移るとわかるように、前述のクライオプローブ100、300のうちのいずれかを使用するための例示的なプロセス500について以下に説明する。まず、極低温流体の引込みを静的位置または携帯流体保持容器から確立する必要がある(502)。一例として、亜酸化窒素を極低温流体として使用する例示的な状況において、液化亜酸化窒素の携帯流体保持容器(たとえば、20ポンドタンク)を、それ自体がクライオプローブ100に流体接続されたAtriCure Cryo Module(ACM)に流体接続してもよい。
【0048】
例示的な形態では、ACMが心不整脈の冷凍手術治療において使用されるものとする。ACMは、非無菌再使用可能デバイスクライオアブレーションプローブおよび/または無菌使い捨てデバイスクライオアブレーションプローブを備えてもよい。ACMは、極低温流体がプローブを通って流れる間アクティブ領域に接触する組織を焼灼するように動作可能なプローブのアクティブ領域を冷却する条件の下でクライオアブレーションプローブに極低温流体(たとえば、亜酸化窒素(NO))を供給する(制御部、ディスプレイ、インジケータ、および関連するプログラムされた論理または回路を含み得る)電気機械極低温手術ユニットをさらに含んでもよく、プローブは、例示的な形態では、手術者が制限なしに心臓組織などの組織を通じてアブレーションのラインを形成するのを可能にする。ACMは、極低温流体保持容器、保持容器およびクライオアブレーションプローブと流体連通する(または選択的に流体連通する)極低温流体引込ライン、クライオアブレーションプローブと流体連通する極低温流体排出ライン、保持容器ヒータ、保持容器からクライオプローブへの極低温流体の供給を制御するのを可能にする手動スイッチ、ならびにクライオプローブ自体をさらに含んでもよい。例示的な形態では、ACMは、極低温流体のクライオプローブへの制御された供給を実現して、-40℃よりも低い温度で組織損傷形成を可能にし、典型的な動作範囲は-50℃から-70℃の範囲である。
【0049】
動作504において、寒剤条件が調整および/または検証されてもよい。例示的な形態では、携帯流体保持容器は、タンクを覆うヒータブランケットを有してもよく、これは、容器に熱を加えて内部圧力を制御するように動作可能である。内部圧力は、例示的な形態では、約700psi(約17℃)から850psi(約23℃)の間の範囲であってもよい。一例として、ACMは、容器の圧力および温度に関する視覚的フィードバックを提供してもよく、フィードバックはリアルタイムで更新される。適切な圧力に達するのに熱が必要とされる程度に、緑色の光がACMの一部として発光し、冷凍タンク圧力が所定の動作範囲内であることを示してもよい。
【0050】
動作506では、ユーザはACMを作動させて加圧された極低温流体を引込管を介してクライオプローブに供給する。一例として、ACMは、加圧された極低温流体を約725psiでクライオプローブの入口接続部に供給し、それによってアブレーションチップに到達する直前に、極低温流体の圧力は500psiから725psiの間になる。
【0051】
動作508において、クライオプローブ100、300に寒剤が供給されてもよい。最初に極低温流体がアブレーションチップに供給されると、極低温流体は膨張して概ね大気圧になる(14.7psi)。動作510において、使用された寒剤の背圧が監視されならびに/または調整されてもよい。例示的な形態において、より多くの極低温流体がアブレーションチップに進入し、使用された極低温流体が蓄積するにつれて、背圧が形成され始め、約52psiの定常背圧に達するよう調整されてもよく、定常背圧は、約-65℃のアブレーションチップ温度に相当する。しかし、アブレーションチップの温度が所定の値に達した後、アブレーションチップを使用して組織を焼灼することが開始されてもよいことに留意されたい。所定の値は、定常温度よりも高く、制限なしに-40℃を含んでもよい。
【0052】
動作512において、アブレーションサイクルが開始されてもよい。アブレーションチップが所定のアブレーション温度に達すると、ACMはアブレーションサイクルを実行してもよく、アブレーションサイクルでは、アブレーションチップが、制限なしに120秒などの所定の時間の間所定のアブレーション温度以下に維持される。
【0053】
動作514において、霜取り(たとえば、加熱)サイクルが開始されてもよい。例示的な形態では、アブレーションサイクルが完了すると、ACMは霜取りサイクルをアクティブ化してもよい。一例として、霜取りサイクルは、クライオプローブから排出された極低温流体を遮断し、一方、引き続き極低温流体をクライオプローブに供給することを含んでもよい。最終的に、プローブ内の極低温流体は、制限なしに約800psi(約10℃のアブレーションチップ温度に対応する)など、すべて同じ圧力および温度になる。特に、本開示の少なくともいくつかの態様による様々な例示的なクライオプローブは、霜取りサイクルの間に予期される圧力に耐えるように構成されてもよい。予期される圧力は、冷凍サイクルの間に予期される圧力よりも高い。ACMは、熱電対を使用してアブレーションチップの所の温度を監視し、所定の霜取り温度に達すると、クライオプローブへの極低温流体の入口流を中断し、一方、排出された極低温流体の排気を可能にし、最終的にクライオプローブの温度を上げて圧力を大気条件に低下させる。
【0054】
霜取りサイクルの終了後、ACMが再びアクティブ化され(動作506)冷凍および霜取りサイクルを再開してもよい。代替として、処置終了シーケンス(動作516)が開始されてもよく、この場合、クライオプローブとタンクの間の接続が切り離され、ACMが非アクティブ化される。
【0055】
図28を参照するとわかるように、例示的なクライオプローブ100、300は冷凍無痛法の適用において使用されてもよい。冷凍無痛法または神経の冷凍700は、極端な低温を使用して末梢神経を焼灼して感覚神経機能の一時的であるが完全に回復可能な損失を生じさせる。冷凍無痛法は軸索断裂、Seddonの分類によるある程度の神経障害を生じさせる。この場合、軸索702およびミエリンが断裂するが、神経内膜704、神経周膜706、線維束710、および/または神経上膜708などの周囲の管状構造のうちの少なくともいくつかは損傷を受けずに残る。これに続くワーラー変性、すなわち冷凍無痛法部位(冷凍損傷部)の遠位の神経セグメントの全長が取り除かれるプロセスは、約1週間かかる。神経の再生は近位セグメントから始まり、組織が再神経支配されるまで損傷を受けていない構造構成要素に従って1~3mm/日の平均速度で継続する。このプロセスは、組織上の冷凍損傷部がどの程度の損傷であるかに応じて数週間から数か月かかることがある。冷凍無痛法は、神経の構造を保存するので、神経腫瘍の発生とは関連しない。
【0056】
神経(たとえば、肋間神経)に対する局所無痛覚は、切開に起因する疼痛、任意の外科的筋断裂、外科機器(たとえば、リトラクタ)および外科リテーナ(たとえば、縫合)による神経障害からの不快感の管理を対象とし、チューブまたはトロカール部位によって形成される任意の開口を対象とする。例示的な形態では、例示的な一プロセスは、肋間神経の冷凍アブレーションを含む開胸後疼痛に対する冷凍無痛法を含む。十分に低くない温度、たとえば-20℃よりも高い温度で冷凍アブレーションを試みると、組織解凍時の感覚に戻る一過性神経伝導ブロックのみが生じ、一方、温度が低すぎ、たとえば-100℃よりも低いと、永久的な神経損傷が生じることがある。クライオプローブ100、300が胸膜、肋間神経などの組織に接触させて配置されると、クライオプローブ100、300のチップの周りにアイスボールが形成され、熱取り出しによって組織が数ミリメートル貫通され、冷凍損傷部が形成される。冷凍損傷部の程度は、プローブ温度に加えて、クライオプローブのサイズおよび材料、冷凍の持続時間、冷凍の速度、解凍速度、および冷凍-解凍サイクル数を含むいくつかの他の要因に依存することがある。以下に、疼痛管理に有効であり、動物の体内のいかなる神経に適用されてもよい冷凍無痛法を、開胸に応じて実施するための例示的な処置について説明する。
【0057】
図27を参照するとわかるように、開胸部を形成する前またはその直後など、手術におけるできるだけ早い時期に冷凍アブレーション処置を実施することが推奨されてもよい。肋間神経602などの目標神経は、切開肋間空間604内(たとえば、肋骨606、608の間)において、好ましくは最も内側の肋間筋610および内部肋間筋の膜性部612の縁に位置してもよい。位置としては、外側皮枝の近位であるが、神経節614から少なくとも2cmおよび脊柱から4cmの位置が選択されてもよい。
【0058】
クライオプローブ100、300の約2~3cm(アブレーションチップ102を含む)が露出されてもよく、細長いシャフトは、肋骨溝の曲線によって形作られてもよい。ホッケーのスティックまたはC字形が使用されてもよい。クライオプローブ100、300のアブレーションチップ102は、神経がアブレーションチップの真下に位置するようにわずかに角度を付けて神経602の真上に配置されてもよい。クライオプローブ100、300の絶縁チューブは、肋骨606、608上に配置し、クライオプローブが肋骨から落ちて肋骨溝に入るまで肋骨に沿って慎重に滑らせてもよい。
【0059】
アブレーションの前に、組織を圧縮して安定させ局所の灌流を低減させるのに十分な圧力でアブレーションチップ102を肋骨溝に押し込んでもよい。適切な圧力は、皮膚に加えられた場合にブランチングを生じさせるのに十分な圧力であってもよい。アブレーションチップ102を神経602に接触させるかまたは神経602に近接させて位置させた後、クライオプローブ100、300を通って流れる極低温流体がアブレーションチップを冷却し(約-65℃まで)、冷凍持続時間を開始または継続して神経を冷凍するように動作可能である。一例として、冷凍持続時間は、クライオプローブチップ102が神経602に近接して配置される場合には120秒であってもよく、一方、アブレーションチップが神経に直接接触する場合にはより短く(たとえば、90秒)てもよい。クライオプローブ100、300は、アブレーションチップと動物組織との間での取外しを可能にするように冷凍持続時間後に霜取りされてもよい。例示的な形態では、クライオプローブ100、300が霜取りされると、アブレーションチップ102が明るくなって光沢をもつ場合があり、抵抗なしに移動させ得る。組織または神経が損傷するのを防止するために、クライオプローブは、組織に付着している間強制的に移動させるべきではない。霜取り後、冷凍持続時間プロセスおよび霜取りシーケンスが同じ神経の別の位置(または異なる神経の異なる位置)で繰り返されてもよく、適切な疼痛管理結果を達成する必要に応じて繰り返されてもよい。一般に、上述のようないくつかの例示的な冷凍無痛法手術は、第3~第9の肋間空間の各々に位置する肋間神経に対して繰り返されてもよい。
【0060】
心臓空間において、当技術分野で知られている従来のクライオプローブのアブレーションチップを配置するのは困難である場合がある。例示的なアブレーションチップ102では、胸部空間内の神経のアブレーションは、神経に対してより良好な接触を施すことによって容易に実現されることがある。さらに、チップのサイズに起因して必要なアブレーション回数が少なくなることがある。
【0061】
上記の説明から、当業者には、本明細書で説明する方法および装置が本発明の例示的な実施形態を構成するが、本明細書で説明する発明は、どの厳密な実施形態にも限定されず、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱せずにそのような実施形態に変更を施してもよいことが明らかになろう。さらに、本発明が特許請求の範囲によって定義され、本明細書に記載された例示的な実施形態について説明するいかなる限定または要素も、そのような限定または要素が明示的に言及されない限り、任意の請求項要素の解釈に組み込まれるべきであることを理解されたい。同様に、特許請求の範囲内とするうえで、本明細書で開示する本発明の特定された利点または目的のうちのあらゆるまたはすべての認識された利点または目的を満たすことが必要とされないことを理解されたい。その理由は、本発明が特許請求の範囲によって定義され、かつ本発明の固有の利点および/または予期しない利点が、本明細書で明示的に説明されていない場合があるにもかかわらず存在することがあるからである。
【符号の説明】
【0062】
100 極低温プローブ、クライオプローブ
101 遠位アブレーション部
102 アブレーションチップ
104 細長いシャフト
105 流体排出管
106 絶縁チューブ
107 球状遠位外面
108 ハンドルハウジング
110 ピストルグリップ
112 接続バンドル
113 編組スリーブ
114 引込ライン
116 排出ライン
118 熱電対リード線
120 クイックコネクトアダプタ
130 近位開口部
132 バンド
134 アダプタ、引込アダプタ
136 引込ハイポチューブ、ハイポチューブ、流体引込管
138 クリンプリング、遠位開口部
140 排出アダプタ、アダプタ
141 リブ付き雄近位端
142 クリンプリング
143 雌遠位端
144 円錐台状テーパ
145 遠位ショルダ
146 円錐台状コンプレッションフィッティング
148 ナット
150 らせんねじ
160 熱電対
170 絶縁管
174 スペーサ
174a、174b、174c、174d らせん
175 近位端
176 可撓性をもつカバー
180 近位ショルダ
184 遠位ショルダ
190 可撓性をもつ被覆材
192 内部突起
193 エアギャップ
194 周方向連続カバー
196 遠位端
198 溶接部
200 内部キャビティ
202 末端
204 遠位点
206 ノズル
208 流体流要素
240 アダプタ
242 狭窄部
300 極低温プローブ、クライオプローブ
303 遠位端
304 展性をもつシャフト
310 流体排出管、排出管
312 流体引込管、引込管
320 ボイラー
321 ギャップ
324 ニップル
328 中央ボア
329 外部隆起周方向リング
330 周方向リップ
332 近位フランジ
334 流路
335 ハイポチューブ
336 アブレーションチップ
340 トレンチ
342 Oリング
343 隆起リブ
344 溝
350 圧力安全弁
352 円錐台状プラグ
354 ばね
356 拡大部
358 遠位円錐台状端部
359 円錐台状近位端
400 インサート
410 絶縁エアポケット
420 極低温引込管
430 極低温排出管
450 インサート
460 エアポケット
470 極低温引込管
480 相対低温排出管
602 肋間神経
604 切開肋間空間
606、608 肋骨
610 最も内側の肋間筋
612 膜性部
614 神経節
700 神経
702 軸索
704 神経内膜
706 神経周膜
708 神経上膜
710 線維束
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【外国語明細書】