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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001943
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】釣竿
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/00 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A01K87/00 620Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100826
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】原田 健二
(72)【発明者】
【氏名】村田 千智
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AA10
2B019AC00
(57)【要約】
【課題】大径竿杆と小径竿杆の継合が容易に行なえると共に嵌合力の向上が図れ、鳴きが生じ難く、固着し難い継合構造を備えた釣竿を提供する。
【解決手段】本発明の釣竿は、大径部3Aの内周面に小径部5Aの外周面を挿入して両者を継合させる継合構造10を有する。継合構造10は、大径部の内周面の円周方向の一部に形成され、軸方向に延出し頂部が平坦面3bとなったボス部3cと、小径部の外周面の円周方向の一部に軸方向に延出するように形成され、ボス部3cの平坦面3bと対向する対向面5bとを備える。そして、ボス部の平坦面3bと対向面5bを一致させた状態で大径部3Aの内周面に小径部5Aの外周面を挿入し、大径部と小径部を相対回転することで大径部と小径部が継合状態にされることを特徴とする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径部の内周面に小径部の外周面を挿入して両者を継合させる継合構造を有する釣竿において、
前記継合構造は、
前記大径部の内周面の円周方向の一部に形成され、軸方向に延出し頂部が平坦面となったボス部と、前記小径部の外周面の円周方向の一部に軸方向に延出するように形成され、前記ボス部の平坦面と対向する対向面と、
を備え、
前記ボス部の平坦面と前記対向面を一致させた状態で前記大径部の内周面に小径部の外周面を挿入し、前記大径部と小径部を相対回転することで前記大径部と小径部が継合状態にされる、
ことを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記ボス部の軸方向長さは、前記大径部の内周面と小径部の外周面との軸方向の合わせ長さ以上に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記小径部の外周面は、先端に移行するに従い小径化するテーパを備え、
前記テーパの外周面の一部に、前記ボス部の平坦面と対向する前記対向面がフライス加工されている、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項4】
前記テーパに形成される対向面の軸方向長さは、前記大径部の内周面と小径部の外周面との軸方向の合わせ長さ以上に形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の釣竿。
【請求項5】
前記大径部に形成されるボス部と、前記ボス部の平坦面と対向する前記小径部の対向面は、周方向に沿って等間隔で複数個所形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項6】
前記継合構造を備えた隣接する竿杆の表面には、前記平坦面と対向面を一致させて挿入させるための目印が付されていることを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項7】
前記竿杆の表面には、釣糸を挿通させる釣糸ガイドが設けられており、
前記隣接する竿杆の表面に形成される目印は、前記隣接する竿杆同士で、釣糸ガイドの釣糸挿通方向がずれるように形成されており、
前記隣接する竿杆を相対回転することで、前記釣糸ガイドの釣糸挿通方向が一致することを特徴とする請求項6に記載の釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する大径竿杆と小径竿杆との間の継合構造(合わせ構造)に特徴を有する釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、複数本の竿杆を備えた釣竿は、隣接する竿杆同士を継合構造によって継合されるようになっている。継合構造としては、並継式、逆並継式、インロー式、振出式が知られており、継合状態にすることで釣竿の全長を長くすることができ、継合状態を解除することで釣竿の仕舞寸法を短くすることができる。
通常、継合構造は、例えば、特許文献1及び2に開示されているように、大径竿杆と小径竿杆の継合部分にテーパ部を形成しておき、竿杆同士を互いに軸方向へ挿入した際に、テーパ部の継合で竿杆同士が嵌合するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-290648号
【特許文献2】特開2005-229953号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に開示された継合構造は、小径竿杆の外周面にテーパ部を形成すると共に、大径竿杆の内周面にストレート部及びテーパ部を形成し、ストレート部及びテーパ部の合わせで両者を嵌合している。このような継合構造は、継合位置の間に隙間を形成していることから、鳴きが発生し易いという問題がある。また、小径竿杆と大径竿杆のテーパ合わせ(摺動)が長いため、固着現象によって抜き差しがし難くなる、という問題が生じる。
【0005】
上記した特許文献2に開示された継合構造は、大径竿杆の内周面に、周方向に沿ってストレート部とテーパ部を交互に形成し、このような内周面に対して、外周面に逆テーパ部を形成した小径竿杆を嵌合させるようにしている。このような嵌合構造においても、ストレート部及びテーパ部の合わせで両者を嵌合しているため、小径竿杆と大径竿杆のテーパ合わせが長く、固着現象によって抜き差しがし難くなる、という問題が生じる。
【0006】
さらに、上記したような継合構造は、嵌合状態において軸方向の緩みが生じると、嵌合力が弱くなってしまい、簡単に抜けるという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、大径竿杆と小径竿杆の継合が容易に行なえると共に嵌合力の向上が図れ、鳴きが生じ難く、固着し難い継合構造を備えた釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る釣竿は、大径部の内周面に小径部の外周面を挿入して両者を継合させる継合構造を有しており、前記継合構造は、前記大径部の内周面の円周方向の一部に形成され、軸方向に延出し頂部が平坦面となったボス部と、前記小径部の外周面の円周方向の一部に軸方向に延出するように形成され、前記ボス部の平坦面と対向する対向面と、を備え、前記ボス部の平坦面と前記対向面を一致させた状態で前記大径部の内周面に小径部の外周面を挿入し、前記大径部と小径部を相対回転することで前記大径部と小径部が継合状態にされる、ことを特徴とする。
【0009】
上記した構成の釣竿によれば、隣接する竿杆同士を継合するに際し、前記大径部の内周面の円周方向の一部に形成されたボス部と、前記小径部の外周面の円周方向の一部に形成された対向面を一致させて、大径竿杆に小径竿杆を挿入する。そして、両者がある程度挿入された状態(例えば、小径部の外面にテーパ部を形成して、小径部の挿入が規制された状態になったとき)で、前記大径部と小径部を相対回転すると、ボス部の平坦面と、小径部の対向面が周方向にずれ、ボス部の平坦面は、小径部の円周面が当て付いて拡径作用を受け継合状態となる。この場合、ボス部の平坦面と小径部の対向面を位置合わせして抜き差しを行なうため、隣接する竿杆の継合操作が容易に行なえ、また、両者を相対回転することで、ボス部の軸方向に亘って継合状態となるため、嵌合力が向上すると共に緩みや鳴きが生じ難くなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、大径竿杆と小径竿杆の継合が容易に行なえると共に嵌合力の向上が図れ、鳴きが生じ難く、固着し難い継合構造を備えた釣竿が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る釣竿の第1の実施形態の主要部を示す図。
図2図1に示した釣竿の継合部分を模式的に示した断面図。
図3図2に示した継合部分の小径部(小径竿杆)側を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は軸方向から見た端面図。
図4図2に示した継合部分の大径部(大径竿杆)側を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は軸方向から見た端面図。
図5】継合部分における継合方法を順に説明する図であり、(a)は大径竿杆と小径竿杆の挿入前の位置合わせ状態を示す図、(b)は大径竿杆に小径竿杆を挿入した状態を示す図、(c)は大径竿杆と小径竿杆を相対的に回転した状態を示す図。
図6】本発明に係る釣竿の第2の実施形態を示す図であり、(a)は大径竿杆と小径竿杆の挿入前の状態を軸方向から見た図、(b)は大径竿杆に小径竿杆を位置合わせして挿入した状態を軸方向から見た図、(c)は大径竿杆と小径竿杆を相対的に回転した状態を軸方向から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明に係る釣竿の一実施形態の主要部を示す図である。
本実施形態に係る釣竿1は、複数の竿杆を並継式で継合する構造となっており、元竿杆3、中竿杆5、及び穂先竿杆7の各竿杆同士は、その端部領域Pにおいて、継合構造10で継合される。この場合、中竿杆の本数(全体の継本数)については限定されることはなく、元竿杆3に直接、穂先竿杆7を継合する2本継ぎの構成であっても良い。
【0013】
前記元竿杆3及び中竿杆5は、繊維強化樹脂製の管状体で形成されており、例えば、強化繊維(主に炭素繊維やガラス繊維等)に、エポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂プリプレグ(プリプレグシート)を芯金に巻回し加熱工程を経た後、脱芯する等、定法に従って成形されている。また、穂先竿杆7は、元竿杆3及び中竿杆5と同様、管状体として形成されていても良いし、中実体、或いは、管状体と中実体で形成されていても良い。
【0014】
次に、上記した釣竿1の継合構造10について、図2から図4を参照して説明する。
図2は、隣接する元竿杆3と中竿杆5との継合構造10を模式的に示した図である。この場合、元竿杆と中竿杆は、隣接して継合され、先細構造となることから、元竿杆3については大径竿杆、中竿杆5については小径竿杆とも称する。
上記したように、本実施形態では、継合構造10として並継式を用いている。このため、小径竿杆5の端部(小径部とも称する)がオス側となって、大径竿杆3の端部(大径部とも称する)であるメス側に挿入、嵌合される。
【0015】
なお、本発明に係る釣竿の継合構造10は、上記した並継式以外にも、逆並継式、インロー式、振出式にも適用することが可能である。
このため、逆並継式の継合領域では、小径竿杆5の端部が大径部(メス側)となり、大径竿杆3の端部が小径部(オス側)となる。
また、インロー式の継合領域では、大径竿杆3の端部にインロー(芯材)が圧入、固定された構成では、小径竿杆5の端部が大径部(メス側)、露出するインローが小径部(オス側)となり、小径竿杆3の端部にインロー(芯材)が圧入、固定された構成では、大径竿杆3の端部が大径部(メス側)となり、露出するインローが小径部(オス側)となる。
また、振出式では、小径竿杆5の端部が小径部(オス側)となり、大径竿杆3の端部が大径部(メス側)となる。
【0016】
本実施形態の継合構造10は、並継式を採用しているため、小径竿杆5の端部(小径部5A)がオス側、大径竿杆3の端部(大径部3A)がメス側となり、大径部3Aの内周面に小径部5Aの外周面を挿入して両者を継合させる構造となっている(図2において、軸方向における合わせ長さを符号Lで示す)。
【0017】
隣接して継合される前記元竿杆3及び中竿杆5は、プリプレグシートを巻回することで形成されており、少なくとも前記合わせ長さLの部分には、補強用のプリプレグシートが巻回されていることが好ましい。なお、各竿杆を構成するプリプレグシートは、強化繊維が軸方向に指向されたもの、周方向に指向されたもの、傾斜方向に指向されたもの、織布状に編成されたものが用いられ、これらが適宜、組み合わせて使用される。
【0018】
図3及び図4は、それぞれ小径竿杆5及び大径竿杆3の構成を示す図であり、図3(a)は斜視図、図3(b)は軸方向から見た端面図、図4(a)は斜視図、図4(b)は軸方向から見た端面図である。
【0019】
継合構造10は、大径部3Aの内周面3aの円周方向の一部に形成され、軸方向に延出し頂部が平坦面3bとなったボス部3cと、小径部5Aの外周面5aの円周方向の一部に軸方向に延出するように形成され、前記ボス部3cの平坦面3bと対向する対向面5bとを備えている。
これらの平坦面3b及び対向面5bは、小径竿杆を大径竿杆に挿入する際、僅かに離間していても良いし、多少、接触した状態にあっても良い(接触していても、大きな摺動抵抗が作用しない程度であれば好ましい)。また、厳密な水平面でなく、多少、湾曲が形成された状態になっていても良い。
【0020】
前記ボス部3cは、大径部3Aの開口端3dから、軸方向に沿って所定の長さL1に亘って形成されており、大径部3Aの肉厚T1が厚く形成された部分である。この場合、ボス部3cの最大の高さHは、継合構造10を構成する大径竿杆3の肉厚T1にもよるが、0.02~0.2mm程度に形成されていれば良い。また、ボス部3cの軸心Oに対する形成角度θについては、大きすぎると相対回転し難くなり、小さすぎると嵌合力が向上しないため、3°~46°(計算により導き出した値)で形成することが好ましい。このようなボス部3cについては、例えば、大径竿杆3を成形する際、上記した芯金に、端部から所定の長さに亘って長溝を形成しておくことで作成することが可能である。
【0021】
前記ボス部3cの軸方向長さL1については、抜き差しがし易く、ある程度の継合力(嵌合力)が確保できれば良く、本実施形態のような構成では、例えば、5mm~7mmの範囲で形成される。後述するように、本実施形態の小径部5Aの外周面5aには、テーパ5fを形成しており、大径部3Aの先端部の内径部が、テーパ5fに当て付けられてから挿入されることで拡径し、最終的に軸方向位置が固定されるようになっている。このように、大径部と小径部の挿入時において、大径部がテーパ5fに当て付いて、拡径して固定する位置までの軸方向長さを圧入長さLaとすると、前記ボス部3cの軸方向長さL1については、嵌合時の圧入長さLa以上あれば嵌合することが可能であり、少なくとも5mm~7mmの範囲で形成されていれば良い。
【0022】
ただし、圧入長さLaとボス部3cの軸方向長さL1が近いと、挿入したオス側の小径部が十分にボス部3cの表面に保持されず、嵌合力や鳴きの問題が生じる可能性がある。このため、ボス部3cの軸方向長さL1は、大径部3Aの内周面3aと小径部5Aの外周面5aとの軸方向の合わせ長さL以上(L≦L1)に形成されていることが好ましい。
【0023】
このように、ボス部3cの軸方向長さL1を、合わせ長さL以上に形成しておくことで、継合状態では、図2に示すように、小径竿杆5の開口端5dが確実にボス部3cに当て付いた状態となる。すなわち、小径竿杆5の開口端5dと大径竿杆3の内周面3aとの間に隙間が生じることが抑制され、竿杆が撓んでも、小径竿杆5の開口端5dは、ボス部3cに当て付いた状態となり、鳴きの発生を防止することができる。なお、ボス部3cの軸方向長さL1については、継合時の圧入長さLaよりも短くなると、回転操作時に十分な継合力が得られない可能性が生じることから、上記したように、La≦L1にすることが好ましい。
【0024】
前記小径部5Aの外周面5aには、円周方向の一部に、軸方向に延出し、前記ボス部3cの平坦面3bと対向するように対向面5bが形成されている。前記ボス部3cの平坦面3bと対向面5bは、夫々、平面視で同一の形状(本実施形態では略矩形状)に形成されていることが好ましい。このように両面を形成することで、後述するように、各竿杆を相対回転させた状態で、合わせ長さLの範囲で安定した継合力を生じさせることが可能となる。
【0025】
前記対向面5bについては、小径部5Aの外周面5aをフライス加工することで形成することが可能である。この場合、対向面5bのフライス深さT2については、前記ボス部3cの高さHに対して、+0.1mm~0.2mm程度確保(平坦面と対向面との間に僅かな隙間が確保される程度)できていれば良い。
【0026】
本実施形態の小径部5Aの外周面5aには、先端(開口端)に移行するに従い小径化するテーパ5fが形成されており、このテーパ5fの領域に前記対向面5bがフライス加工によって形成されている。この場合、テーパ5fに形成される対向面5bの軸方向長さL2については、前記大径部3の内周面3Aと小径部5の外周面5Aとの軸方向の合わせ長さL以上(L≦L2)に形成しておくことが好ましい。
【0027】
このように、対向面5bの軸方向長さL2を合わせ長さL以上に形成することで、小径部5Aを大径部3Aに挿入して、テーパ5fによって挿入位置が固定された際、ボス部3cの平坦面3bと、対向面5bが対向した状態で隙間が生じないことから、鳴きを防止することが可能となる。
【0028】
次に、上記した継合構造10において、大径竿杆3と小径竿杆5を継合する際の操作方法について図5を参照して説明する。
最初に、大径竿杆3(大径部3A)と小径竿杆5(小径部5A)を軸方向で位置合わせする。この位置合わせは、前記大径部3Aのボス部3cの平坦面3bと、小径部5Aの対向面5bを周方向で一致させるものであり、位置合わせが容易に行えるように、隣接する各竿杆3,5の表面には、平坦面3bと対向面5bを一致させて挿入させるための目印13,15を付しておくことが好ましい(図5(a)参照)。
【0029】
そして、大径部3Aのボス部3cの平坦面3bと、小径部5Aの対向面5bが位置合わせされた状態で、大径部3Aの内周面3aに小径部5Aの外周面5aを挿入する(図5(b)参照)。この挿入操作では、平坦面3bと対向面5b同士が摺動することで、スムーズな組み込みが行なえるようになる。
小径部5Aを大径部3Aに挿入して行くと、小径部5Aの外周面5aには、上記したように、先端(開口端)に移行するに従い小径化するテーパ5fが形成されているため、大径部3Aの開口端3dがテーパ5fに当て付き、これにより、挿入の合わせの位置が決まる(図5(b),図2参照)。
【0030】
次に、この合わせ位置が決まった状態で大径部3Aと小径部5Aを、図5(c)の矢印で示すように相対回転させる。両竿杆を相対回転することで、対向状態にあった平坦面3bと対向面5bが回転方向にずれ、小径部5Aの外周面5aによって、ボス部3cの平坦面3bが拡径作用を受けるようになる。これにより、前記大径部3Aと小径部5Aが、軸方向に沿って継合状態となり、嵌合力が向上して両竿杆は抜け難くなる。この場合、平坦面3bに対する拡径作用は、両竿杆の合わせ長さLに亘って受けることから、嵌合力の向上が図れると共に、鳴き(ガタ付き)の発生を抑えることが可能となる。
【0031】
なお、上記したボス部3cの平坦面3bの拡径作用は、平坦面3bと対向面5bの対向関係が無くなるまで行えば良く、図4に示したボス部3cの軸心Oに対する形成角度θにもよるが、90°以下の回転操作で十分である。また、90°以下で回転操作角度を大きくすることで、平坦面3bに対する拡径作用の領域が増え、両竿杆は、継合状態で、より回り難く、かつ、外れ難くすることが可能である。
【0032】
上記した継合構造10によれば、隣接する竿杆同士を位置合わせして挿入操作を行なって軸方向で停止する等、合わせ位置が定まった状態で、両竿杆を相対回転するだけで継合状態とすることができる。このため、従来のテーパ同士の継合構造のように、軸方向に圧力を加えて、強制的に停止する位置で固定するのではなく、合わせ位置で竿杆同士を相対回転操作するだけで良いため、継合操作が容易に行えると共に、回り難く抜け難い継合構造となる。また、従来のように、嵌合力がばらつき易くなることもない。
【0033】
また、平坦面3bと対向面5bの軸方向長さ(合わせ長さL)に亘って継合が成されることから隙間が生じ難く、鳴きやガタ付きが生じ難くなる。特に、ボス部3cの軸方向長さL1を合わせ長さL以上に形成することで、小径竿杆5の開口端5dが確実にボス部3cに当て付いた状態となり(図2参照)、鳴きの発生を確実に防止することができる。さらに、竿杆同士の回転操作によって継合状態が解消できるので、軸方向の抜き操作よりも継合状態の解消操作が容易に行えるようになる。
【0034】
本発明は、リールが装着されるタイプの釣竿(竿杆に釣糸ガイドが装着された釣竿)にも適用することが可能である。
図6は、釣糸ガイド付きの釣竿に適用した第2の実施形態を示す図であり、継合構造部分を示す図である。これらの図において、図6(a)は大径竿杆と小径竿杆の挿入前の状態を軸方向から見た図、図6(b)は大径竿杆に小径竿杆を位置合わせして挿入した状態を軸方向から見た図、図6(c)は大径竿杆と小径竿杆を相対的に回転した状態を軸方向から見た図である。
以下、第2の実施形態について説明する(第1の実施形態と同様な構成部材については、同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する)。
【0035】
図6(a)に示すように、隣接する竿杆である大径竿杆3(大径部3A)と小径竿杆5(小径部5A)の表面には、糸止め等、公知の取り付け方法によって釣糸を挿通させる釣糸ガイド23,25が設けられている。また、図5に示した構成と同様、各竿杆3,5の表面に形成される目印13,15は、隣接する竿杆同士で、釣糸ガイド23,25の釣糸挿通方向がずれる(釣糸ガイド23の位置と釣糸ガイド25の位置が周方向にずれる)ように形成されている(図6(a)(b)参照)。すなわち、目印13,15を合わせた状態で、小径竿杆を大径竿杆に挿入して合わせ位置に固定すると、図6(b)に示すように、釣糸ガイド23,25の釣糸挿通方向が周方向にずれた状態となる。
【0036】
この状態で、隣接する竿杆3,5を相対回転して、図6(c)に示すように、釣糸ガイド23,25の釣糸挿通方向を一致させることで、両竿杆を継合状態にすることが可能である。
このように、本発明は、釣糸ガイドが装着される釣竿に対しても適用することが可能である。この場合、竿杆同士を挿入した際の隣接する釣糸ガイド23,25が周方向にずれる角度α(図6(b)参照)については、45°~90°となるようにガイド装着位置、ボス部3cの大きさ、対向面5bを形成することが好ましく、これにより、継合状態の強度を向上させることが可能となる。
【0037】
上述した実施形態の構成では、大径部3Aに形成されるボス部3cと、ボス部3cの平坦面3bと対向する小径部5Aの対向面5cは、周方向で1個所に形成したが、周方向に沿って等間隔で複数個所形成しても良い。このように、複数個所(好ましくは、2~4箇所)形成することで、竿杆同士の継合強度の向上が図れると共に、鳴きやガタ付きをより効果的に抑制することが可能となる。
【0038】
なお、上記した実施形態のように、周方向で1箇所形成する場合、ボス部3cと対向面5bは、図2に示すように、釣竿としての撓み方向を考慮して形成することが好ましい。すなわち、釣竿に負荷が作用した際の撓み方向が矢印Dで示す方向であれば、ボス部3cと対向面5bを継合状態の軸心Oに対して引張側に設けておけば、釣竿が撓んでも、小径部の開口端5dは、ボス部3cに当て付いた状態となっているので、鳴きやガタ付きを確実に抑制することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることは無く、種々変形することが可能である。
本発明に係る継合構造10は、大径部の内周面にボス部3cを形成し、ボス部の平坦面3cに対して、小径部の外周面に対向面5bを形成し、これらを合わせて、挿入操作及び回転操作で嵌合力を高め、抜けの防止と回り防止をすることに特徴がある。上記した実施形態において、継合構造10を構成するプリプレグシートは、釣竿の種類、大径竿杆と小径竿杆の径、継合構造の設置位置などに応じて、その巻回数、強化繊維の種類、樹脂含浸量、肉厚等は適宜変形することが可能である。また、合わせ長さL、ボス部3cの長さL1、対向面の長さL2、ボス部の形成角度θなどについても適宜、変形することが可能である。
【0040】
さらに、大径部3Aの内周面3aについては、ストレート状に形成された構成であっても良いし、テーパが形成された構成であっても良い。また、小径部5Aの外周面5aについても、ストレート状に形成された構成であっても良い。この場合、ストレート形状同士の継合では、外周面5aに段部や目印を形成する等、挿入の合わせの位置が決まるように構成すれば良い。
【符号の説明】
【0041】
1 釣竿
3 元竿杆(大径竿杆)
3A 大径部
3b 平坦面
3c ボス部
5 中竿杆(小径竿杆)
5b 対向面
5A 小径部
7 穂先竿杆
10 継合構造
13,15 目印
23,25 釣糸ガイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6