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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019437
(43)【公開日】2024-02-09
(54)【発明の名称】光学マーキングデバイス
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/36 20140101AFI20240202BHJP
   B42D 25/328 20140101ALI20240202BHJP
   B42D 25/391 20140101ALI20240202BHJP
   B42D 25/23 20140101ALI20240202BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
B42D25/36
B42D25/328 100
B42D25/391
B42D25/23
G09F3/02 W
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023206983
(22)【出願日】2023-12-07
(62)【分割の表示】P 2020557244の分割
【原出願日】2019-04-19
(31)【優先権主張番号】1853464
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】518241953
【氏名又は名称】クライム・サイエンス・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】コジモ・プレーテ
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・マランジュ
(72)【発明者】
【氏名】ゴーチエ・アロイ
(57)【要約】
【課題】高いレベルのセキュリティを確保しながら、実装が簡単で安定しており、製品又は文書の信頼性をすばやくチェックすることができる新たなセキュリティ手段を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも部分的に互いに向かい合って配置された第1の層及び第2の層を少なくとも含む光学マーキングデバイスに関する。この第1の層と第2の層の少なくとも1つは、第1の色と第2の色との間での色の変化を示す光学的可変要素(4、5)を含み、第1の色と第2の色とは、他の層の色との関係で以下のようにコントラストを示す:光学的可変要素(4、5)が第1の色を示す場合は、第1の層が視認可能であり、光学的可変要素(4、5)が第2の色を示す場合は、第2の層が視認可能である、あるいは、光学的可変要素(4、5)が第1の色を示す場合は、第2の層が視認可能であり、光学的可変要素(4、5)が第2の色を示す場合は、第1の層が視認可能である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に互いに向かい合って配置された少なくとも1つの第1の層(2)及び第2の層(3)を含む光学マーキングデバイスであって、
第1の層及び第2の層の少なくとも1つは、第1の色と第2の色との間での色の変化を示す光学的可変要素(4、5)を含み、
第1の色と第2の色とは、他の層の色との関係で以下のようにコントラストを示す:
- 光学的可変要素(4、5)が第1の色を示す場合は、第1の層(2)が視認可能であり、光学的可変要素(4、5)が第2の色を示す場合は、第2の層(3)が視認可能であるか、あるいは、
- 光学的可変要素(4、5)が第1の色を示す場合は、第2の層(3)が視認可能であり、光学的可変要素(4、5)が第2の色を示す場合は、第1の層(2)が視認可能である、
光学マーキングデバイス。
【請求項2】
2つの層(2、3)のうちの少なくとも1つが、前記光学的可変要素(4、5)によってもたらされる図柄(design)(9、10)を含む、請求項1に記載の光学マーキングデバイス。
【請求項3】
第1の層及び第2の層の少なくとも1つを有する基材(11)を含む、請求項1又は2に記載の光学マーキングデバイス。
【請求項4】
2つの層(2、3)が、互いに接している、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学マーキングデバイス。
【請求項5】
2つの層(2、3)のうちの少なくとも1つが、可視光スペクトルにおいて少なくとも部分的に反射性である、かつ/あるいは灰色の色調を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学マーキングデバイス。
【請求項6】
2つの層(2、3)のうちの少なくとも1つが、可視光スペクトルにおいて少なくとも部分的に散乱性である、請求項1~5のいずれか一項に記載の光学マーキングデバイス。
【請求項7】
光学的可変要素(4、5)が、1つ又は複数の蛍光化合物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学マーキングデバイス。
【請求項8】
光学的可変要素(4、5)が、4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンのクラスの1つ又は複数の化合物を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の光学マーキングデバイス。
【請求項9】
4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンのクラスの1つ又は複数の化合物が、式I:
【化1】
[式中、
R1は、C1~C6アルキル、C5~C6シクロアルキル、C5~C6ヘテロアルキル、フェニルであり、前記フェニル基は、C1~C2アルキル、ヒドロキシ、R5COO-及びハロゲンから選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよく;
R2及びR2’は、水素及びC1~C2アルキルから独立して選択され;
R3及びR3’は、水素、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルから独立して選択され、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルは、C1~C4アルキル、アリール、ヒドロキシ及びフェロセンから選択される1つ又は複数の基〔前記アリール基は、アリール(このアリールは、C1~C2アルキル基で置換されていてもよい)、C1~C2アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、ジメチルアミノ、及びニトロから選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよい〕で置換されていてもよく;
R4及びR4’は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル及びアルケニルから独立して選択され、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル及びアルケニルは、C1~C3アルキル、アリール、ヒドロキル及びフェロセンから選択される1つ又は複数の基〔前記アリール基は、アリール(このアリールは、C1~C2アルキル基で置換されていてもよい)、C1~C2アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、ジメチルアミノ及びニトロから選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよい〕で置換されていてもよく;
R5はC1~C4アルキル又はC2~C4アルケニルであり;
R6及びR6’は、ハロゲン、C1~C4アルコキシ、C2~C4アルケニルオキシ、C1~C4アルキル、C2~C4アルケニル又はアリールから独立して選択され、前記アリールは、C1~C2アルキル、ヒドロキシ、R5COO-及びハロゲンから選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよい。]
の化合物から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の光学マーキングデバイス。
【請求項10】
光学的可変要素(4、5)が、ジフルオロボロンβ-ジケトネートのクラス(BFbdks)の1つ又は複数の化合物を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の光学マーキングデバイス。
【請求項11】
ジフルオロボロンβ-ジケトネートのクラス(BFbdks)の1つ又は複数の化合物が、式III:
【化2】
[式中、
L1は、不飽和脂肪族鎖であるか、存在せず;
L2は、不飽和脂肪族鎖であるか、存在せず;
R1は、置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換のヘテロアリール基であり;
R2は、置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換のヘテロアリール基であり;
R3は、水素、置換又は非置換のアリール基、及び置換又は非置換のヘテロアリール基から選択される。]
の化合物から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の光学マーキングデバイス。
【請求項12】
ポリマーを含み、前記ポリマーに光学的可変要素(4、5)が組み込まれている、請求項1~11のいずれか一項に記載の光学マーキングデバイス。
【請求項13】
前記ポリマーが、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアラミド、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、シアノアクリレート、ロジン樹脂、パイン樹脂、光硬化性樹脂、又はこれらの混合物から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の光学マーキングデバイス。
【請求項14】
光学的可変要素を含む前記層の第1の色及び第2の色のうちの1つが、他の層の色の補色である、請求項1~13のいずれか一項に記載の光学マーキングデバイス。
【請求項15】
2つの層(2、3)が、色の変化を示す光学的可変要素(4、5)を含み、ここで、2つの光学的可変要素(4、5)が、第1の刺激がデバイス(1)に適用されたときに第1の層(2)だけが視認可能となるように、かつ、第2の刺激がデバイス(1)に適用されたときに第2の層(3)だけが視認可能となるように、少なくとも部分的に重ね合わされて構成されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の光学マーキングデバイス。
【請求項16】
前記光学マーキングデバイス(1)を通過する光を偏光するように構成された要素を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の光学マーキングデバイス。
【請求項17】
第1の層及び第2の層(2、3)の少なくとも1つが、第1の色と第2の色との間での色の変化を示す光学的可変要素(4、5)と、染料との混合物を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の光学マーキングデバイス。
【請求項18】
染料が蛍光色素分子(fluorophore)である、請求項1~17のいずれか一項に記載の光学マーキングデバイス。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の光学マーキングデバイスを少なくとも1つ含む、身分証明書、受託者証明書、若しくは管理文書、又はラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品、特に文書のセキュリティ及び認証の分野に関する。
【0002】
特に、身分証明書(ID)、受託者証明書、管理文書、又はブランドラベルのセキュリティ及び認証に関連する。
【背景技術】
【0003】
偽造品や模倣品の生産は、今や、高級品、自動車及び航空部品、又は包装、特に医薬品の包装、例えばブリスターパック等の付加価値の高い多くの分野で大幅に増加している。
【0004】
個人情報の盗難の進展、及び特に特定の国でのポイントベースの運転免許証の認証に伴って、個人情報及び管理文書はますます改ざんの対象になっている。したがって、このタイプの製品及び文書のセキュリティ及び認証は、非常に重要であり、国内的及び国際的なセキュリティの問題を伴う。
【0005】
したがって、改ざん、特に元の記録文書の改ざん、又は偽造(模倣品の製造)に効果的に対抗するための、新たな手段を継続的に提供する必要がある。
【0006】
以下、本明細書において、文書という用語は、基材及び情報によって形成されたアセンブリを指す。基材は、様々な種類のものであり得、様々な態様をとることができ、ポリマー又はポリマーの混合物を含み得る。前記基材は、例えば、全体的又は部分的にポリマー材料からなり得る。
【0007】
文書の例として、とりわけ、身分証明書、例えばパスポート、身分証明カード、運転免許証、健康カード等のみならず、受託者証明書、例えば紙幣及び小切手等、又は管理文書、例えば登録証明書等も挙げられる。
【0008】
したがって、これらの文書は紙、本、又はカードの態様である可能性があり、情報は、紙又はカードの場合は表面に、あるいは本の場合はその頁に、印刷及び/又はマーク付けされ得る。
【0009】
含まれる情報に関連する重要な価値を考慮して、文書のセキュリティが高められるべきである。
【0010】
現在、文書はセキュリティ要素によってセキュリティが高められている。要素は、検出に使用される手段の関数として、3つのレベルのセキュリティに分類できる。レベル1のセキュリティ要素は、五感の少なくとも1つによって、あるいはコントラストがある背景(contrasting background)によって検出できる要素である。このレベルには、特に、ギロシェ、光学的変動性のあるデバイス(device)、例えば虹色の印刷等、ホログラム、光学的可変インク、マーカー、変更可能なレーザー画像、又は複数のレーザー画像が含まれる。
【0011】
レベル2のセキュリティ要素は、単純な器材、例えば紫外線ランプ、凸レンズ、又は携帯電話からの光のフラッシュ等を使用して検出可能な要素である。このレベルには、マイクロプリント、蛍光インク、蛍光繊維又はプレートなどの検出可能な要素が含まれる。
【0012】
最後に、レベル3のセキュリティ要素は、高度な機器、例えば分光蛍光光度計又は電子顕微鏡等を使用して検出可能な要素である。このカテゴリーには、特に、ナノプリント顔料、生体認証チップ、及び肉眼では検出できない蛍光マーカー(タガント)が含まれる。
【0013】
一般に、文書には、さまざまなレベルのいくつかのセキュリティ要素が組み込まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
既存のセキュリティソリューションは有利であることが証明されているが、実装や検閲が難しい場合がある。したがって、高いレベルのセキュリティを確保しながら、実装が簡単で安定しており、製品又は文書の信頼性をすばやくチェックすることができる新たなセキュリティ手段が実際に必要とされている。これらの手段は、互いに排他的である必要はない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、本発明は、少なくとも部分的に互いに向かい合って配置された少なくとも1つの第1の層及び第2の層を含む光学マーキングデバイス(optical marking device)であって、
第1の層と第2の層の少なくとも1つは、第1の色と第2の色との間での色の変化を示す光学的可変要素を含み、
第1の色と第2の色とは、他の層の色との関係で以下のようにコントラストを示す:
- 光学的可変要素が第1の色を示す場合は、第1の層が視認可能であり、光学的可変要素が第2の色を示す場合は、第2の層が視認可能であるか、あるいは、
- 光学的可変要素が第1の色を示す場合は、第2の層が視認可能であり、光学的可変要素が第2の色を示す場合は、第1の層が視認可能である、
光学マーキングデバイスに関する。
【0016】
したがって、本発明によるデバイスは、文書、特に身分証明書、受託者証明書、又は管理文書等の製品の真正性をチェックすることを可能にするが、医薬品の包装(特にブリスター)又は高級品の包装(ブランド識別)等も可能にする。
【0017】
本発明の別の特徴によれば、デバイスは、前記光学的可変要素を有する図柄(design)を含む。
【0018】
本発明の別の特徴によれば、デバイスは、第1の層及び第2の層の少なくとも1つを有する基材を含む。
【0019】
本発明の別の特徴によれば、前記2つの層は、互いに接している。
【0020】
本発明の別の特徴によれば、前記2つの層のうちの少なくとも1つが、可視光スペクトルにおいて少なくとも部分的に反射性である、かつ/あるいは灰色の色調(shade)を有する。
【0021】
本発明の別の特徴によれば、前記2つの層(2、3)のうちの少なくとも1つが、可視光スペクトルにおいて少なくとも部分的に散乱性(diffusing)である。
【0022】
本発明の別の特徴によれば、光学的可変要素は、1つ又は複数の蛍光化合物を含む。
【0023】
本発明の別の特徴によれば、光学的可変要素は、4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンのクラスの1つ又は複数の化合物を含む。
【0024】
本発明の別の特徴によれば、本発明で使用する前記4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンのクラスの化合物は、式I:
【化1】
[式中、
R1は、C1~C6アルキル、C5~C6シクロアルキル、C5~C6ヘテロアルキル、フェニルであり、前記フェニル基は、C1~C2アルキル、ヒドロキシ、R5COO-及びハロゲンから選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよく;
R2及びR2’は、水素及びC1~C2アルキルから独立して選択され;
R3及びR3’は、水素、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルから独立して選択され、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルは、C1~C4アルキル、アリール、ヒドロキシ及びフェロセンから選択される1つ又は複数の基〔前記アリール基は、アリール(このアリールは、C1~C2アルキル基で置換されていてもよい)、C1~C2アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、ジメチルアミノ、ニトロから選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよい〕で置換されていてもよく;
R4及びR4’は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル及びアルケニルから独立して選択され、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル及びアルケニルは、C1~C3アルキル、アリール、ヒドロキル及びフェロセンから選択される1つ又は複数の基〔前記アリール基は、アリール(このアリールは、C1~C2アルキル基で置換されていてもよい)、C1~C2アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、ジメチルアミノ及びニトロから選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよい〕で置換されていてもよく;
R5はC1~C4アルキル又はC2~C4アルケニルであり;
R6及びR6’は、ハロゲン、C1~C4アルコキシ、C2~C4アルケニルオキシ、C1~C4アルキル、C2~C4アルケニル又はアリールから独立して選択され、前記アリールは、C1~C2アルキル、ヒドロキシ、R5COO-及びハロゲンから選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよい。]
の化合物から選択され得る。
【0025】
本発明の別の特徴によれば、本発明で使用する前記4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンのクラスの化合物は、式II:
【化2】
[式中、
R1は、C1~C6アルキル、C5~C6シクロアルキル、C5~C6ヘテロアルキル、又はフェニルであり、前記フェニル基は、C1~C2アルキル、ヒドロキシ、R5COO-及びハロゲンから選択される1つ又は複数の基で任意に置換されていてよく;
R2及びR2’は、水素及びC1~C2アルキルから独立して選択され;
R3及びR3’は、水素及びC1~C3アルキルから独立して選択され;
R4及びR4’は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、及びアルケニルから独立して選択され、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、及びアルケニルは、C1~C3アルキル、アリール、ヒドロキシ、及びフェロセンから選択される1つ又は複数の基〔前記アリール基は、アリール(このアリールは、C1~C2アルキル基で置換されていてよい)、C1~C2アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、ジメチルアミノ、及びニトロから選択される1つ又は複数の基で置換されていてよい〕で置換されていてよく;
R5は、C1~C4アルキル又はC2~C4アルケニルである。]
の化合物から選択される。
【0026】
本発明の別の特徴によれば、光学的可変要素は、ジフルオロボロンβ-ジケトネートのクラス(BFbdks)の1つ又は複数の化合物を含む。
【0027】
本発明の別の特徴によれば、ジフルオロボロンβ-ジケトネートのクラス(BFbdks)の化合物は、式III:
【化3】
[式中、
L1は不飽和脂肪族鎖であるか、存在せず;
L2は不飽和脂肪族鎖であるか、存在せず;
R1は、置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換のヘテロアリール基であり;
R2は、置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換のヘテロアリール基であり;
R3は、水素、置換又は非置換のアリール基、及び置換又は非置換のヘテロアリール基から選択される。]
の化合物から選択される。
【0028】
本発明の別の特徴によれば、デバイスは、ポリマーを含み、このポリマーに光学的可変要素が組み込まれている。
【0029】
本発明の別の特徴によれば、ポリマーは、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアラミド、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、シアノアクリレート、ロジン樹脂、パイン樹脂、光硬化性樹脂、又はこれらの混合物から選択される。
【0030】
本発明の別の特徴によれば、光学的可変要素を含む層の第1の色及び第2の色のうちの1つが、他の層の色の補色である。
【0031】
本発明の別の特徴によれば、これらの2つの層は、色の変化を示す光学的可変要素を含み、その2つの光学的可変要素は、第1の刺激がデバイスに適用されたときに第1の層だけが視認可能となるように、かつ、第2の刺激がデバイスに適用されたときに第2の層だけが視認可能となるように、少なくとも部分的に重ね合わされて構成されている。
【0032】
本発明の別の特徴によれば、光学マーキングデバイスは、このデバイスを通過する光を偏光するように構成された要素を含む。
【0033】
本発明の別の特徴によれば、これらの第1の層及び第2の層の少なくとも1つは、第1の色と第2の色との間で色の変化を示す光学的可変要素の混合物を含む。
【0034】
本発明の別の特徴によれば、染料は蛍光色素分子(fluorophore)である。
【0035】
本発明は、上述した光学マーキングデバイスを少なくとも1つ含む、身分証明書、受託者証明書、若しくは管理文書、又はラベルにも関する。
【0036】
本発明の特徴及び利点は、以下の記述によりさらに明確となるであろう。しかし、以下の記述は例示を目的としており、添付の図面と併せて読まれるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明による光学マーキングデバイスの概略断面図を示す。
図2】本発明の第1の変態様様による、第1の層、第2の層、及びデバイスのそれぞれの上面図を示す。
図3】本発明の第1の変態様様による、第1の層、第2の層、及びデバイスのそれぞれの上面図を示す。
図4】本発明の第1の変態様様による、第1の層、第2の層、及びデバイスのそれぞれの上面図を示す。
図5】本発明の第2の変態様様による、第1の層、第2の層、及びデバイスのそれぞれの上面図を示す。
図6】本発明の第2の変態様様による、第1の層、第2の層、及びデバイスのそれぞれの上面図を示す。
図7】本発明の第2の変態様様による、第1の層、第2の層、及びデバイスのそれぞれの上面図を示す。
図8】本発明の第3の変態様様による、第1の層、第2の層、及びデバイスのそれぞれの上面図を示す。
図9】本発明の第3の変態様様による、第1の層、第2の層、及びデバイスのそれぞれの上面図を示す。
図10】本発明の第3の変態様様による、第1の層、第2の層、及びデバイスのそれぞれの上面図を示す。
図11】本発明の第3の変態様様による、第1の層、第2の層、及びデバイスのそれぞれの上面図を示す。
図12】本発明の第4の変形例による、デバイスの層のうちの1つの上の図柄の上面図を示す。
図13】本発明の第4の変形例による、デバイスの層のうちの1つの上の図柄の上面図を示す。
図14】本発明の第4の変形例による、デバイスの層のうちの1つの上の図柄の上面図を示す。
図15】本発明の第4の変形例による、デバイスの層のうちの1つの上の図柄の上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
[光学マーキングデバイス]
本発明は、文書などの製品の光学的マーキングデバイスに関する。光学マーキングデバイスは、図の1を参照している。
【0039】
本説明の残りの部分では、文書という用語は、基材及び情報によって形成されたアセンブリを指す。基材は、様々な種類のものであり得、様々な態様をとることができ、ポリマー又はポリマーの混合物を含み得る。この基材は、例えば、ポリマー材料から全体的又は部分的になっていてよい。
【0040】
文書の例として、身分証明書、例えばパスポート、身分証明カード、運転免許証、健康カード等だけでなく、基準文書、例えば紙幣及び小切手等、又は管理文書、例えば登録証明書等も挙げられる。
【0041】
したがって、文書は、紙、本、又はカードの形であり得、情報は、紙又はカードの場合はその中及び/又は表面上に印刷され、あるいは本の場合はその頁に印刷され得る。
【0042】
デバイス1は、少なくとも、光学マーキング層と呼ばれる第1の層及び第2の層を含む。
【0043】
図では、デバイス1は、2及び3の参照が付された2つの光学マーキング層を含む。
【0044】
もちろん、本発明はこの構成に限定されず、2つ以上の層を有する多層構成を有していいてよい。
【0045】
図示した実施態様では、層2及び3は、互いに直接接触して、互いに正確に重ね合わされており、この態様は特に有利である。
【0046】
しかし、層2及び3が互いに部分的にのみ被覆し、かつ/あるいは、層2及び3が直接接触しておらず、代わりに、例えばデバイス1の他の層によって間隔を置いて配置されている態様であってもよい。
【0047】
2つの層2、3のうちの少なくとも1つは、光学的可変要素を含む。
【0048】
図2図4に示される第1の変形実施態様では、2つの層2、3のそれぞれは、それぞれ4、5の参照が付された光学的可変要素を含む。
【0049】
図5図7に示される第2の変形実施態様では、層2のみが、4の参照が付された光学的可変要素を含む。
【0050】
図8~11に示される第3の変形実施態様では、2つの層2、3のそれぞれは、それぞれ4、5の参照が付された光学的可変要素を含む。
【0051】
各光学的可変要素は、後で説明するように、第1の色と第2の色との間で色の変化を示す。
【0052】
光学マーキングデバイス1は、本発明の各変形実施態様に関連して以下に詳細に説明するように、光学的可変要素が第1の色を示すときには第1の層が視認可能となり、光学的可変要素が前記第2の色を示すときには第2の層が視認可能となるように、あるいは、光学的可変要素が第1の色を示すときには第2の層が視認可能となり、光学的可変要素が第2の色を示すときには第1の層が視認可能となるように、構成される。
【0053】
有利には、2つの層のうちの少なくとも1つは、光学的可変要素を用いて少なくとも部分的に重ね合わされた図柄を含む。
【0054】
図柄は、好ましくはデバイス1を有する製品を識別するのを助ける記号、図面、写真、又は固定又は可変の記述(statement)であり得る。
【0055】
後で詳細に説明するように、図柄は、例えば、以下に詳細に説明するように、インク又はワニスで印刷されているか、あるいはレーザーによってエッチングされていることができる。
【0056】
図1では、デバイス1は、光学マーキング層2、3を有する基材11を含む。
【0057】
基材11は、例えば、透明ポリマーの層である。
【0058】
有利には、基材11は、ポリプロピレン、ポリカーボネート、又はポリエチレンの層であり、制御された厚さ(例えば、ポリカーボネートの場合には10μm~800μm、好ましくは50μm~600μm、ポリプロピレンの場合には10μm~600μm、好ましくは30~150μm、透明PETの場合には5μm~50μm、好ましくは10μm)を有する。
【0059】
[光学的可変要素]
「光学的可変要素」とは、物理化学的刺激の関数として、第1の色と第2の色との間で色の変化を表示する任意の物理化学的要素を意味する。
【0060】
刺激とも呼ばれる物理化学的刺激は、光束照射、温度変化又は圧力変化、又は観察条件(要素の観察の入射角など)の変化であり得る。
【0061】
以下に詳細に説明する実施態様では、光学的可変要素は、1つ又は複数の蛍光化合物、特に、以下に詳述する、4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンのクラス(BDPYのクラス)又はジフルオロボロンβ-ジケトネートのクラス(BFbdks)の化合物を含む活性物質を、所与の濃度で含む。
【0062】
しかし、本発明は、このタイプの光学的可変要素に限定されない。
【0063】
一例として、光学的可変要素は、サーモクロム、液晶インク、又は「OVI」(SICPA社の登録商標)という名称で知られているタイプの光学的可変インクであってもよい。
【0064】
好ましくは、光学的可変要素を含む層2又は3は、1つ又は複数の化合物がポリマーに組み込まれているポリマー、及び特に問題の文書又は製品を構成するポリマーマトリックスも含む。
【0065】
本説明の残りの部分では、用語「4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン化合物」、「ジフルオロボロンβ-ジケトネート(BFbdks)」、及び「蛍光染料」を、区別なく使用する。
【0066】
活性物質は、1つ又は複数の種類のインクと混合され得ることに留意されたい。
【0067】
4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン化合物は、蛍光色素であり、その最初の合成は、1968年に発表された(A. Treibsら、Justus Liebigs Ann. Chem. 1968, 718, 208)。それ以来、いくつかの他の合成が公開されている(例:Chem. Eur. J., 2009, 15, 5823; J. Phys. Chem. C, 2009, 113, 11844; Chem. Eur. J., 2011, 17, 3069; J. Phys. Chem. C, 2013, 117, 5373)。加えて、非常に多くの4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン化合物類が、例えばThermoFisher Scientific(米国マサチューセッツ州Waltham)から市販されている。
【0068】
これらは、優れた吸収及び発光特性を有し、特に、比較的狭い励起帯及び0.5~1の高い量子収率φを有する蛍光発光を有し、非常に蛍光性である。
【0069】
さらに、これらの化合物は、優れた光安定性及び高い熱安定性を有している。実際に、本発明による蛍光色素は、一般に、最高で300℃まで安定である。
【0070】
この高い熱安定性により、これらの蛍光色素は、溶融状態のポリマーマトリックスに容易に組み入れることができ、いかなる予想にも反して、蛍光の吸収及び放射のレベルでの性能が、ポリマーマトリックスへの組み入れによって変更されない。
【0071】
この良好な安定性により、この1つ又は複数の化合物を関連するインクに組み入れることができ、従来技術の技術とは対照的に、光退色に関して優れた安定性が保証される。
【0072】
すべての4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン化合物類は、可視光に吸収帯を持ち、肉眼で知覚される色は、吸収された色の補色に対応する。たとえば、緑/青の色に対応する480~490nm付近で吸収する化合物は、肉眼ではオレンジ/赤の色調で表示される。
【0073】
したがって、この特性は、レベル1のセキュリティ要素を得ることを可能にする。
【0074】
蛍光特性に関して、本発明による4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンのクラスのすべての化合物は、紫外線(UV)における励起帯及び可視域における発光帯を有する。したがって、それらは特に100nm~400nmで発光するUVランプによって励起され得、肉眼で検出することができるため、レベル2のセキュリティ要素を得ることができる。
【0075】
最後に、発光波長は、分光蛍光光度計又は単一ネットワークの低解像度蛍光光度計(光ダイオード又は光電子増倍管による検出)を使用して決定することができ、これは、本発明によるセキュリティ要素にレベル3のセキュリティを与える。
【0076】
本発明で使用する4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン化合物は、以下の式I:
【化4】
[式中、
R1は、C1~C6アルキル、C5~C6シクロアルキル、C5~C6ヘテロアルキル、フェニルであり、前記フェニル基は、C1~C2アルキル、ヒドロキシ、R5COO-及びハロゲンから選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよく;
R2及びR2’は、水素及びC1~C2アルキルから独立して選択され;
R3及びR3’は、水素、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルから独立して選択され、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、アルケニル及びアルキニルは、C1~C4アルキル、アリール、ヒドロキシ及びフェロセンから選択される1つ又は複数の基〔前記アリール基は、アリール(このアリールは、C1~C2アルキル基で置換されていてもよい)、C1~C2アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、ジメチルアミノ、及びニトロから選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよい〕で置換されていてもよく;
R4及びR4’は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル及びアルケニルから独立して選択され、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル及びアルケニルは、C1~C3アルキル、アリール、ヒドロキ及びフェロセンから選択される1つ又は複数の基〔前記アリール基は、アリール(このアリールは、C1~C2アルキル基で置換されていてもよい)、C1~C2アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、ジメチルアミノ及びニトロから選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよい〕で置換されていてもよく;
R5はC1~C4アルキル又はC2~C4アルケニルであり;
R6及びR6’は、ハロゲン、C1~C4アルコキシ、C2~C4アルケニルオキシ、C1~C4アルキル、C2~C4アルケニル又はアリールから独立して選択され、前記アリールは、C1~C2アルキル、ヒドロキシ、R5COO-及びハロゲンから選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよい。]
の化合物から選択され得る。
【0077】
式Iの好ましい化合物は、R1、R2、R2’、R3、R3’、R4、R4’、R5、R6、及びR6’の1つ又は複数が、以下に定義される化合物である:
R1は、メチル、フルオロ、ヒドロキシ、アセチル、及びメタクリレートから、好ましくはメチル、フルオロ、ヒドロキシ、及びアセチルから、より好ましくはメチル又はフルオロから選択される、1つ又は複数の基で置換されたフェニルであり;
R2及びR2’は、水素及びメチルから独立して選択され;
R3及びR3’は、水素、C1~C3アルキル、ビニル、アリール、ヘテロアリール、アダマンチルから独立して選択され、前記ビニル及びアリールは、フェニル、C1~C2アルキルから選択される1つ又は複数の基で任意に置換されていてよく、前記フェニルは、C1~C2アルキル、ヒドロキシ、ブロモ、ニトロ、ジメチルアミンから選択される1つ又は複数の基で任意に置換されていてよく、
好ましくは、水素、メチル、エチル、n-プロピル、ビニル、アリール、ヘテロアリール、アダマンチルから独立して選択され、前記ビニル及びアリールは、フェニル、C1~C2アルキルから選択される1つ又は複数の基で任意に置換されていてよく、前記フェニルは、C1~C2アルキル、ヒドロキシ、ブロモ、ニトロ、ジメチルアミンから選択される1つ又は複数の基で置換されていてよく、
より好ましくは、R3及びR3’は、エチル、n-プロピル、メチル、ビニル、フェニル、フェナントリル、ナフチル、ピレニル、チオフェニル、ベンゾフラニルから独立して選択され、前記ビニル、アリール、及びナフチルは、メチル、ヒドロキシ、ブロモ、ニトロ、及びジメチルアミノの1つ又は複数によって置換されていてよく;
R4及びR4’は、メチル、ビニル、アリール、ヘテロアリール、アダマンチルから独立して選択され、前記ビニル及びアリールは、フェニル、C1~C2アルキルから選択される1つ又は複数の基で任意に置換されており、前記フェニルは、C1~C2アルキル、ヒドロキシ、ブロモ、ニトロ、ジメチルアミンから選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよく、
好ましくは、R4及びR4’は、メチル、ビニル、フェニル、フェナントリル、ナフチル、ピレニル、チオフェニル、ベンゾフラニルから独立して選択され、前記ビニル、アリール、及びナフチルは、メチル、ヒドロキシ、ブロモ、ニトロ、及びジメチルアミノの1つ又は複数で置換されていてもよく;
R5は、メチル又はエテニルであり;
R6及びR6’は、フルオロ、C1~C4アルコキシ、C2~C4アルケニルオキシ、C1~C4アルキル、C2~C4アルケニル、又はアリールから独立して選択され、前記アリールは、C1~C2アルキル、ヒドロキシ、R5COO-及びハロゲンから選択される1つ又は複数の基で置換されていてもよく、好ましくは、R6及びR6’はフルオロである。
【0078】
特定の実施態様によれば、本発明において使用する4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン化合物は、下記の式II:
【化5】
[式中、
R1は、C1~C6アルキル、C5~C6シクロアルキル、C5~C6ヘテロアルキル、フェニルであり、前記フェニル基は、C1~C2アルキル、ヒドロキシ、R5COO-及びハロゲンから選択される1つ又は複数の基で置換されていてよく;
R2及びR2’は、水素及びC1~C2アルキルから独立して選択され;
R3及びR3’は、水素及びC1~C3アルキルから独立して選択され;
R4及びR4’は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、及びアルケニルから独立して選択され、前記アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルキル、及びアルケニルは、C1~C3アルキル、アリール、ヒドロキシ、及びフェロセンから選択される1つ又は複数の基で置換されていてよく、前記アリール基は、アリール(このアリールは、C1~C2アルキル基で置換されていてよい)、C1~C2アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、ジメチルアミノ、ニトロから選択される1つ又は複数の基で置換されていてよく;
R5は、C1~C4アルキル又はC2~C4アルケニルである。]
の化合物から選択することができる。
【0079】
式IIの好ましい化合物は、R1、R2、R2’、R3、R3’、R4、R4’、及びR5の1つ又は複数が、以下に定義される化合物である:
R1は、メチル、フルオロ、ヒドロキシ、アセチル、及びメタクリレートから、好ましくはメチル、フルオロ、ヒドロキシ、及びアセチルから、より好ましくはメチル又はフルオロから選択される、1つ又は複数の基で置換されたフェニルであり;
R2及びR2’は、水素及びメチルから独立して選択され;
R3及びR3’は、水素、メチル、エチル、n-プロピルから独立して選択され、好ましくはエチルであり;
R4及びR4’は、メチル、ビニル、アリール、ヘテロアリール、アダマンチルから独立して選択され、前記ビニル及びアリールは、フェニル、C1~C2アルキルから選択される1つ又は複数の基で置換されていてよく、前記フェニルは、 C1~C2アルキル、ヒドロキシ、ブロモ、ニトロ、ジメチルアミンから選択される1つ又は複数の基で置換されていてよく、
好ましくは、R4及びR4’は、独立して、メチル、ビニル、フェニル、フェナントリル、ナフタレニル、ピレニル、チオフェニル、ベンゾフラニルから選択され、前記ビニル、アリール、及びナフタレニルは、メチル、ヒドロキシ、ブロモ、ニトロ、及びジメチルアミノの1つ又は複数で置換されていてもよい;
R5は、メチル又はエテニルである。
【0080】
式IIの特に好ましい化合物は、下記の表に記載の化合物である:
【0081】
【表1A】
【0082】
【表1B】
【0083】
【表1C】
【0084】
【表1D】
【0085】
【表1E】
【0086】
【表1F】
【0087】
【表1G】
【0088】
本発明で使用する化合物の説明のために、用いる用語及び表現は、特記のない限り、以下の定義に従って理解される。
【0089】
用語「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを示す。好ましいハロゲン基は、フルオロ及びブロモであり、フルオロが特に好ましい。
【0090】
用語「アルキル」は、式:CnH2n+1の、直鎖状又は分枝状の炭化水素基を示し、式中、nは1以上の整数である。好ましいアルキル基は、直鎖状又は分枝状のC1~C6アルキル基である。
【0091】
用語「アルケニル」は、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合を含む直鎖又は分枝鎖の不飽和アルキル基を示す。適切なアルケニル基は、2~6個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子、さらにより好ましくは2又は3個の炭素原子を含む。アルケニル基の非限定的な例は、エテニル(ビニル)、2-プロペニル(アリル)、2-ブテニル及び3-ブテニルであり、エテニル及び2-プロペニルが好ましい。
【0092】
用語「シクロアルキル」は、単独で、又は別の基の一部として、3~12個の炭素原子、特に5~10個の炭素原子、より特には6~10個の炭素原子を有する、飽和モノ-、ジ-、又はトリ-環状炭化水素基を示す。適切なシクロアルキル基には、これらだけに制限されないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチル、特にシクロヘキシル及びアダマンチルが含まれる。好ましいシクロアルキル基には、シクロヘキシル、アダマント-1-イル及びアダマント-2-イルが含まれる。
【0093】
用語「アリール」は、芳香族単環式多価不飽和炭化水素基(例えば、フェニル)、又は芳香族多環式多価不飽和炭化水素基(例えば、ナフチル、アントラセニル、フェナントラセニル、ピレニル)を示す。好ましいアリール基には、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントラセニル、ピレニルが含まれる。
【0094】
用語「ヘテロアリール」は、5~12個の炭素原子を有する芳香族環を示し、その少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素、若しくは硫黄原子、又は-NHで置換されており、前記窒素原子及び硫黄原子は、酸化されていてもよく、前記窒素原子は、四級化されていてもよく、あるいは、それぞれが典型的に5又は6個の原子を有する2~3個の縮合環を含む環式系を示し、その少なくとも1つの環が芳香族であり、その少なくとも1つの芳香族環の少なくとも1つの炭素原子が、酸素原子、窒素原子、若しくは硫黄原子、又は-NHで置換されており、前記窒素原子及び硫黄原子は、酸化されていてもよく、前記窒素原子は、四級化されていてもよい。ヘテロアリール基の例には、フラニル、チオフェニル、ピロリル、ピリジニル、及びベンゾフラニルが含まれる。
【0095】
本発明で使用するこれらの化合物は、当業者に公知の方法に従って合成することができる。特にA. Loudetらの刊行物(Chem. Rev. 2007, 107, 4891-4932)を参照することができる。
【0096】
別の実施態様によれば、光学的可変要素は、下記式III:
【化6】
[式中、
L1は、不飽和脂肪族鎖であるか、存在せず;
L2は、不飽和脂肪族鎖であるか、存在せず;
R1は、置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換のヘテロアリール基であり;
R2は、置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換のヘテロアリール基であり;
R3は、水素、置換又は非置換のアリール基、及び置換又は非置換のヘテロアリール基から選択される。]
の化合物から選択されるジフルオロボロンβ-ジケトネートのクラス(BFbdks)の化合物が組み込まれたポリマーマトリックスを含む蛍光組成物を含む。
【0097】
好ましい式IIIのジフルオロボロンβ-ジケトネートのクラスの化合物は、L1、L2、R1、R2、及びR3の1つ又は複数が、以下に定義される化合物である:
L 1は、不飽和脂肪族鎖、好ましくはC2~C8の不飽和脂肪族鎖であるか、存在せず;
L 2は、不飽和脂肪族鎖、好ましくはC2~C8の不飽和脂肪族鎖であるか、存在せず;
R1は、置換又は非置換のアリール基、好ましくは、少なくとも1つの電子供与性又は電子受容性基を有する置換又は非置換のアリール基であり;
R2は、置換又は非置換のアリール基、好ましくは、少なくとも1つの電子供与性又は電子受容性基を有する置換又は非置換のアリール基であり;
R3は、水素、及び置換又は非置換のアリール基から選択される。
【0098】
好ましい式IIIのジフルオロボロンβ-ジケトネートのクラスの化合物は、L1、L2、R1、R2、及びR3の1つ又は複数が、以下に定義される化合物である:
L 1は、C2~C4の不飽和脂肪族鎖であるか、存在せず;
L 2は、C2~C4の不飽和脂肪族鎖であるか、存在せず;
R1は、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、アリール、ジアルキルアミノ、チオアルコキシ、ハロゲンから選択される少なくとも1つの基を有する置換又は非置換のアリール基であり;
R2は、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、アリール、ジアルキルアミノ、チオアルコキシ、ハロゲンから選択される少なくとも1つの基を有する置換又は非置換のアリール基であり;
R3は、水素、及び非置換アリール基から選択される。
【0099】
好ましい式IIIのジフルオロボロンβ-ジケトネートのクラスの化合物は、L1、L2、R1、R2、及びR3の1つ又は複数が、以下に定義される化合物である:
L 1は、C2~C4の不飽和脂肪族鎖であるか、存在せず;
L 2は、C2~C4の不飽和脂肪族鎖であるか、存在せず;
R1は、ヒドロキシ、C1~C4アルコキシ、C1~C8アルキル、アリール、C1~C4ジアルキルアミノ、C1~C4チオアルコキシ、ハロゲン、好ましくはフッ素から選択される少なくとも1つの基を有する置換又は非置換のアリール基であり;
R2は、ヒドロキシ、C1~C4アルコキシ、C1~C8アルキル、アリール、C1~C4ジアルキルアミノ、C1~C4チオアルコキシ、ハロゲン、好ましくはフッ素から選択される少なくとも1つの基を有する置換又は非置換のアリール基であり;
R3は、水素原子である。
【0100】
好ましい式IIIのジフルオロボロンβ-ジケトネートのクラスの化合物は、L1、L2、R1、R2、及びR3の1つ又は複数が、以下に定義される化合物である:
L 1は、C2の不飽和脂肪族鎖であるか、存在せず;
L 2は、C2の不飽和脂肪族鎖であるか、存在せず;
R1は、アリール基、好ましくは、ヒドロキシ、C1~C4アルコキシ、好ましくはメトキシ、C1~C8アルキル、好ましくはtert-ブチル、アリール、C1~C4ジアルキルアミノ、好ましくはジメチルアミノから選択される少なくとも1つの基を有する置換又は非置換の、フェニル、ビフェニル、又はナフチルであり;
R2は、アリール基、好ましくは、ヒドロキシ、C1~C4アルコキシ、好ましくはメトキシ、C1~C8アルキル、好ましくはtert-ブチル、アリール、C1~C4ジアルキルアミノ、好ましくはジメチルアミノから選択される少なくとも1つの基を有する置換又は非置換の、フェニル、ビフェニル、又はナフチルであり;
R3は、水素原子である。
【0101】
好ましいジフルオロボロンβ-ジケトネートのクラスの化合物は、以下の式III
【化7】
(式中、R1、R2、及びR3は、式IIIにおいて定義されたとおりである)
の化合物である。
【0102】
好ましいジフルオロボロンβ-ジケトネートのクラスの化合物は、以下の式III
【化8】
(式中、L1、R1、R2、及びR3は、式IIIにおいて定義されたとおりである)
の化合物である。
【0103】
好ましいジフルオロボロンβ-ジケトネートのクラスの化合物は、以下の式III
【化9】
(式中、L1、R1、R2、及びR3は、式IIIにおいて定義されたとおりである)
の化合物である。
【0104】
特に好ましい式IIIのジフルオロボロンβ-ジケトネートのクラスの化合物は、以下に示す化合物である:
【0105】
【化10A】
【0106】
【化10B】
【0107】
用語「アルキル」は、式:CnH2n+1の、直鎖状又は分枝状の炭化水素基を示し、式中、nは1以上の整数である。好ましいアルキル基は、直鎖状又は分枝状のC1~C6アルキル基である。
【0108】
用語「アルケニル」は、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合を含む直鎖又は分枝鎖の不飽和アルキル基を示す。適切なアルケニル基は、2~6個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子、さらにより好ましくは2又は3個の炭素原子を含む。アルケニル基の非限定的な例は、エテニル(ビニル)、2-プロペニル(アリル)、2-ブテニル及び3-ブテニルであり、エテニル及び2-プロペニルが好ましい。
【0109】
用語「シクロアルキル」は、単独で、又は別の基の一部として、3~12個の炭素原子、特に5~10個の炭素原子、より特には6~10個の炭素原子を有する、飽和モノ-、ジ-、又はトリ-環状炭化水素基を示す。適切なシクロアルキル基には、これらだけに制限されないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチル、特にシクロヘキシル及びアダマンチルが含まれる。好ましいシクロアルキル基には、シクロヘキシル、アダマント-1-イル及びアダマント-2-イルが含まれる。
【0110】
用語「アリール」は、芳香族単環式多価不飽和炭化水素基(例えば、フェニル)、又は芳香族多環式多価不飽和炭化水素基(例えば、ナフチル、アントラセニル、フェナントラセニル)を示す。好ましいアリール基には、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントラセニル、ピレニルが含まれる。
【0111】
用語「ヘテロアリール」は、5~12個の炭素原子を有する芳香族環を示し、その少なくとも1つの炭素原子は、酸素、窒素、若しくは硫黄原子、又は-NHで置換されており、前記窒素原子及び硫黄原子は、酸化されていてもよく、前記窒素原子は、四級化されていてもよく、あるいは、それぞれが典型的に5又は6個の原子を有する2~3個の縮合環を含む環式系を示し、その少なくとも1つの環が芳香族であり、その少なくとも1つの芳香族環の少なくとも1つの炭素原子が、酸素原子、窒素原子、若しくは硫黄原子、又は-NHで置換されており、前記窒素原子及び硫黄原子は、酸化されていてもよく、前記窒素原子は、四級化されていてもよい。ヘテロアリール基の例には、フラニル、チオフェニル、ピロリル、ピリジニル、及びベンゾフラニルが含まれる。
【0112】
用語「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを示す。好ましいハロゲン基は、フルオロ及びブロモであり、フルオロが特に好ましい。
【0113】
用語「アルコキシ」は、酸素原子に結合したアルキル基を指す。
【0114】
用語「アルケニルオキシ」は、酸素原子に結合したアルケニル基を指す。
【0115】
光学的可変要素を含む層2、3が明るい背景上に置かれると、固有の色(intrinsic color)(すなわち、蛍光化合物によって吸収される色の補色)が観察される。
【0116】
反対に、暗い背景上に置かれると、蛍光化合物による蛍光色が観察される。
【0117】
物理化学的刺激は、デバイス1を明るい背景上に置き、次いで暗い背景上に置くか、あるいは、デバイス1を暗い背景上に置き、次いで明るい背景上に置くことがら構成される。
【0118】
全てのタイプのポリマーへの組み入れを成し遂げることができる。ポリマーは、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアラミド、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、シアノアクリレート、ロジン樹脂、パイン樹脂、光硬化性樹脂、又はこれらの混合物等である。好ましくは、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン、及び光硬化性樹脂、好ましくはポリカーボネート及び熱可塑性ポリウレタンから選択されるポリマーへの組み入れを成し遂げることができる。より好ましくは、ポリマーは、ポリカーボネートである。
【0119】
組み込まれることとなる蛍光染料の量は、吸収及び蛍光の特性を検出するために必要な量である。本発明による蛍光染料は、それらがポリマーに非常に少量組み込まれている場合でさえ、これらの特性の検出を可能にするという利点を有している。
【0120】
実際、ポリマーの総質量に対して0.0001~5質量%の量、好ましくはポリマーの総質量に対して0.001~2質量%の量、さらにより好ましくはポリマーの総質量に対して0.01~1質量%の量の蛍光色素が検出に十分である。
【0121】
蛍光色素の量は、ポリマーの形成及び必要とされる視覚効果の関数として当業者によって適合されるであろう。
【0122】
光学的可変要素を含む各層は、例えば、圧延、押出し、カレンダリング、又は押出カレンダリング等の当業者に知られている技術によって有利に調製される。これらの技術は、使用するポリマーの関数として選択されるであろう。一例として、ポリマーがポリカーボネート又は熱可塑性ポリウレタンである場合、押出カレンダリングの原理が好ましいであろう。本発明の意味での層の集合体は、例えば、1つ以上の蛍光染料を組み込んだポリマーの2つ以上の層を圧延することによって得ることができる。
【0123】
有利には、層2、3は、特に、ポリカーボネートの場合には、10μm~800μmの厚さ、好ましくは50μm~600μmの厚さ、ポリプロピレンの場合には、10μm~600μm、好ましくは30μm~150μmの厚さ、及び、PETの場合には、5μm~500μm、好ましくは10μmの厚さを有し、これらの厚さには、0.1μm~200μm、好ましくは1μm~100μmのインクの厚さが加えられる。
【0124】
層の厚さが0.100mm未満の場合、フィルムとも呼ばれ、平らな製品、特に文書、より具体的には身分証明書、受託者証明書、又は管理文書の場合に非常に適した用途があり、製品の面の1つの少なくとも一部に適用することができる。
【実施例0125】
[第1の変形態様]
図2図4に見られるように、光学マーキングデバイス1は、第1の光学マーキング層2及び第2の光学マーキング層3を有する。
【0126】
図4では、レイヤー3がレイヤー2上に重ねられている。
層2、3のそれぞれは、光学的可変要素4、5を含む。
第1の層2は、ディスクの形態の図柄9を含む。
ディスク9は、層2の光学的可変要素4を組み込んでいる。
それは、例えば、活性物質を組み込んだインク又はワニスである。
第2の層3は、三角形の形態の図柄10を含む。
三角形10は、層2の光学的可変要素5を組み込んでいる。
それは、例えば、活性物質を組み込んだインク又はワニスである。
図柄10は図柄9を被覆している。
図柄9、10は、それぞれのレイヤー2、3の中心にある。
【0127】
もちろん、本発明はこの構成に限定されず、図柄は中心から外れている場合がある。
【0128】
光学的可変要素4、5のそれぞれは、好ましくはポリマーに組み込まれた、上述した1つ又は複数の蛍光化合物を含む。
【0129】
図2では、ディスク9の第1の半分9-1を含む、第1の層2の第1の半分2-1が、明るい背景に対して示されている。
ディスク9の第2の半分9-2を含む、第1の層2の第2の半分2-2は、暗い背景に対して示されている。
【0130】
図3では、三角形10の第1の半分10-1を含む、第2の層3の第1の半分3-1が、明るい背景に対して示されている。
三角形10の第2の半分10-2を含む、第2の層3の第2の半分3-2は、暗い背景に対して示されている。
【0131】
層2、3の固有の色、及び有利にはそれらの光度は、明るい背景に対しては、目に見えるのは第2の層3の図柄10であり、暗い背景に対しては、目に見えるのは第1の層の図柄9であるように、選択される。
【0132】
たとえば、第1の半分9-1はピンク色(点線で表されている)であり、すでに述べたように、これは層2の固有の色に相当する。
第2の半分9-2は緑色(ハッチングで表される)であり、すでに述べたように、これは層2の蛍光色に相当する。
【0133】
第1の半分10-1は青色(平行な点線で表される)であり、すでに述べたように、これは層3の固有の色に相当する。
第2の半分10-2は赤色(10-1の半分とは異なる方向に平行な点線で表されている)であり、すでに述べたように、これは層3の蛍光色に相当する。
【0134】
図4では、デバイス1の第1の半分1-1が明るい背景に配置され、デバイス1の第2の半分1-2が暗い背景に配置される。
【0135】
明るい背景に対して、目に見えるのは第2の層3であり、青い三角形10-2が観察される。
暗い背景に対して、目に見えるのは第1の層2であり、緑色の円9-1が観察される。
【0136】
得られる光学効果は、明るい背景に対する視認性を最小限に抑えるように選択された、図柄の作成に使用するインク又はワニスの活性物質の第2の層3中の濃度、及び第1の層2の図柄中の活性物質の選択によって可能になることに注意されたい。第1の層2の図柄において、その蛍光色は、層3の蛍光色に対してコントラストを有し、有利には、第2の層3の蛍光色の補色(減算合成において)である。
【0137】
したがって、オペレータがマーキングデバイス1を有する製品を明るい背景、次に黒い背景の上に通過させると、彼は青い三角形、次に緑の円を観察する。
【0138】
この場合、白い背景又は暗い背景を通過させることは、マーキングデバイス1の色の変化を可能にする物理的刺激である。
【0139】
有利には、第1の層2及び第2の層3の固有の色が、それぞれ、層2が白い背景上でのみ目に見えるように選択されることを付け加えるべきである。
【0140】
さらに、蛍光色は、層3のみが表示されるように選択される(暗い背景)。たとえば、すでに述べたように、第1の層の蛍光色は第2の層の蛍光色を補完する。実際、層3は、その色より短い放射波長のすべてをフィルタリングする。
【0141】
白い背景から黒い背景への移行は特定の場合であるが、もちろん他の背景色を使用することもできる。
【0142】
次の表は、デバイス1のさまざまな色をまとめたものである。
【表2】
【0143】
[第2の変形態様]
図5図7に見られるように、光学マーキングデバイス1は、第1の光学マーキング層2及び第2の光学マーキング層3を有する。
【0144】
図7では、層3が層2上に重ねられている。
第1の層2のみが、光学的可変要素4を含む。
【0145】
図5に見られるように、第1の層2は、第1の変形実施態様に関して詳述された第1の層2と同一である。
第2の層3は、光学的可変要素を有さない。
第2の層3は、当業者に知られているすべての技術(例えば、バルク染色、ワニス)によって得られる色を有する。
色は例えば赤である。
明るい背景に対しては、色は明るい赤で表示され、黒い背景に対しては、色は暗い赤で表示される。
【0146】
図7に見られるように、デバイス1の第1の半分1-1は明るい背景に配置され、デバイス1の第2の半分1~2は暗い背景に配置されている。
明るい背景に対して、目に見えるのは第2の層3、赤だけである。
暗い背景に対して、第1の層2が表示され、暗い赤の背景に対して緑の半円9-2が観察される。
【0147】
この場合、白い背景から暗い背景への通過は、マーキングデバイス1の色の変化を可能にする物理的刺激である。
【0148】
得られる光学効果は、明るい背景に対する視認性を最小限に抑えるように選択された、第1の層2の図柄9の作成に使用されるインク又はワニスの活性物質の濃度、及び、第2の層3の色の選択によって可能になることに注意されたい。第2の層3の色は、蛍光色に対してコントラストを有し、かつ、好ましくは、第1の層2で使用する蛍光の補色に対応する色に対してコントラストを有する。
【0149】
[第3の変形態様]
この第3の変形態様によれば、マーキングデバイス1は、第1の層2及び第2の層3を含む。
第2の層3は、第1の変形実施態様に関して詳述した第2の層3と同一である。
第1の層2は、第1の変形実施態様と同様に、光学的可変要素を含む図柄9を含む。
第1の層2又は第2の層3は、可視光スペクトルにおいて少なくとも部分的に反射性である。
【0150】
この目的のために、層2は、金属化ポリマー層(ポリカーボネート、ポリプロピレン、PET)、又は、直接、金属層であり得る。層2は、マイクロミラーを含んでいてもよい。
【0151】
図示していない他の変形態様によれば、デバイス1は、金属化された基材11も含んでいるか、さもなければ、層2は、金属反射能を有するインクの層でコーティングされている。
【0152】
この第3の変形態様によれば、刺激は、蛍光環境(luminous environment)の関数(すなわち、明るい環境又は暗い環境)としての、デバイス1の観察角度の切り替えである。
【0153】
観察角度に応じて、光の取り込みが最小化又は逆に最大化され、デバイス1の色が反転する。
【0154】
図8に見られるように、観察方向Dが第1の方向、例えばデバイス1の平面Pに垂直な方向Nに延びる場合、第2の層3は固有の色を示す。
【0155】
図9に見られるように、観察方向Dが平面Pと非ゼロの角度をなす場合、第2の層3は蛍光色を示す。
【0156】
図10に見られるように、観察方向Dが方向Nに延びる場合、第2の層3の青い三角形10が見える。
【0157】
図11に見られるように、方向Dが方向Nと非ゼロの角度をなす場合、第1の層2の緑色のディスク9が見える。
【0158】
図示していない変形態様によれば、第1の層2は、灰色の色合いを含む。
【0159】
得られる光学効果は、通常観察されたときの視認性を最小限に抑えるような、第2の層3の図柄を作成するための活性物質の濃度によって;第2の層3の活性物質の蛍光色の補色に対してコントラストを有する第1の層2の色、及び好ましくはその補色の選択によって;さらには、反射面のグレースケールに応じた反転角度〔表面の反射率がより高い(グレーレベルが低い)ほど、反転角度は小さくなり、その逆も同様である〕の選択によって、可能となることに注意されたい。
【0160】
図示していない別の変形態様によれば、色反転の光学的効果は、層2、3の少なくとも1つが光散乱の特性を有する場合に得られ得る。
【0161】
好ましくは、散乱特性を有する層2、3は、例えば艶消し(matt)である。
【0162】
この場合、観察角度によっては散乱が蛍光を妨げ、固有の色だけが見える。
【0163】
[別の変形態様]
有利には、光学マーキングデバイス1は、偏光フィルム(図示せず)を含む。
【0164】
偏光膜は、例えば、層2又は基材11から構成され得る。
この場合、基板11は、上述した変形態様とは対照的に、必ずしも透明である必要はない。
光の偏光により、一方の層2を表示し、次にもう一方の層3を表示することができる。
【0165】
[染料との混合]
別の変形態様によれば、光学的可変要素を組み込んだ各層、又は光学的可変要素を組み込んだ層の少なくとも1つは、光学的可変要素と混合された染料を含み得る。
【0166】
それは、例えば、活性物質を組み込んだ着色インクである。
【0167】
染料の性質及びその濃度に応じて、固有の色及び/又は蛍光色及び/又はデバイス1のUV下の色を変更することが可能である。
【0168】
「染料」とは、その大きさ、その調製、及び分子が着色する能力を獲得する条件に関係なく、着色することが可能な任意の分子を意味することに留意されたい。
【0169】
特に、染料は溶解又は分散され得る(例えば、顔料など)。
【0170】
特に、染料は、ゴニオクロミック、フォトクロミック、サーモクロミック、又はピエゾクロミックであってよい。
【0171】
図12~15は、すでに説明した最初の3つの変形態様のうちの1つによる、層2の円形図柄9を示している。
【0172】
円形図柄9は、BDPYのクラスの「4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン化合物」に基づく活性物質と、染料との混合物を含む。
【0173】
染料の透明度は最小限である。
【0174】
最初の可能性によれば、染料は蛍光特性を持たず、蛍光色を変更せずに(明るい背景に対する)固有の色を変更する効果がある。
【0175】
この効果は、染料の色と、活性物質の固有の色とを加えることによって得られる。
【0176】
したがって、例えば、活性物質を含み、染料を含まない図柄9が青色の固有色及び赤色の蛍光色を有する場合、黄色の染料と活性物質との混合物を含む図柄9は、緑色の固有の色を有し、蛍光色は赤のままである。
【0177】
図12は、明るい背景に対して、活性物質を含み、染料を含まない図柄9を示している。表示されるのは青色である(ハッチング)。
【0178】
図13は、暗い背景に対して、活性物質を含み、染料を含まない図柄9を示している。表示されるのは赤色である(ハッチングの逆)。
【0179】
図14は、明るい背景に対して、活性物質と黄色の染料との混合物を含む図柄9を示している。表示されるのは緑色である(ドット)。
【0180】
図15は、暗い背景に対して活性物質と黄色の染料との混合物を含む図柄9を示している。表示されるのは赤色である(図13と同じハッチング)。
【0181】
別の可能性によれば、(明るい背景に対して)固有の色の色及び染料の色を加えると、固有の色が完全に不明瞭になる可能性がある。
【0182】
したがって、例えば、活性物質を含み、染料を含まない図柄9がピンクの固有色及び赤色の蛍光色を有する場合、青色の染料と活性物質との混合物を含む図柄9は、青色の固有色を有し、蛍光色は赤のままである。
【0183】
これは、添加された非蛍光染料の色が、少なくとも肉眼では、活性物質の固有の色を覆う場合に起こる。
【0184】
別の可能性によれば、色素は、BDPYのクラスに属さず、活性物質の励起及び蛍光発光帯とは異なる励起及び蛍光発光帯を有する蛍光色素分子(fluorophore)である。その結果、活性物質と蛍光染料の混合物を含む図柄により、紫外線下で放射される色を変えることが可能である。
【0185】
追加された色素の蛍光の追加はUV下でのみ見ることができるため、暗い背景に対する色は変更されないことに注意されたい。UV照射下では、活性物質BDPYの蛍光色と添加した蛍光色素分子染料の色が混ざり合う現象が存在する。
【0186】
例えば、固有色の緑色及び蛍光色の黄色を有する活性物質を、青色の蛍光色素と混合することによって、UV光下で白色の蛍光を得ることが可能である。
【0187】
別の可能性によれば、蛍光色素分子染料は、蛍光色だけでなく固有の色も変えることを可能にする。これは、BDPYのクラスの化合物を複数混合する場合に可能である。
【0188】
[用途]
本発明は、少なくとも1つの光学的マーキングデバイス1を含む、身元証明書、受託者証明書、又は管理文書又はラベルにも関する。
【0189】
例えば、文書は、身分証明書、パスポート、許可証、証明書、卒業証書、小切手帳、登録簿、切手、印鑑、ビザ、銀行カード、紙幣であってよい。
【0190】
図柄は、国のシンボル、企業又は国のシンボル、ブランドに関連付けられたロゴ、又は固定又は可変の記述、又は額面価格の場合があります。
【0191】
マーキングデバイス1は、文書の全部又は一部を占める。
【0192】
[利点]
前述の説明から明らかなように、本発明によるマーキングデバイスは、物理化学的刺激、特に明るい背景を通過してから暗い背景を通過すること、又は観察角度を変更すること等によって、文書に効果的なセキュリティの利点をもたらす。
【0193】
高価な機器を用意する必要がなく、簡単な移動で検証できるため、いかなる調査官でも文書の簡単で迅速な検証を行うことができます。
【0194】
4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンのクラスの化合物及び/又はジフルオロボロンβ-ジケトネートのクラス(BFbdks)の蛍光化合物は、マーキングデバイス1を簡単に製造する方法を保証する。これは、これらの蛍光化合物が、ポリマーに容易に組み込まれ、良好な熱安定性を示し、1つ又は複数のマーキングデバイス1が組み込まれる文書の製造に必要なすべての工程を可能にするからである。
【0195】
説明された実施態様は、それらが互換性がないことを条件として、組み合わせることができることを付け加えるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【外国語明細書】