(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019456
(43)【公開日】2024-02-09
(54)【発明の名称】胆管ステント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/04 20130101AFI20240202BHJP
【FI】
A61F2/04
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023207729
(22)【出願日】2023-12-08
(62)【分割の表示】P 2021168282の分割
【原出願日】2015-06-18
(31)【優先権主張番号】62/013,908
(32)【優先日】2014-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ビンメラー、ケネス エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ズオン、シェウ ティ.
(72)【発明者】
【氏名】ズオン、ハン エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】グエン、タオ
(57)【要約】
【課題】長尺状のチューブ状構成および展開された構成を有する本体を備える組織管腔ステントが提供される。
【解決手段】組織管腔ステントは、長尺状のチューブ状構成および展開された構成を有する本体を含む。展開されたとき、本体の第1の端部及び反対側の第2の端部のそれぞれが、第1及び第2のフランジ構造へと拡張し、それらの間にほぼ円筒形の鞍状領域を残す。第1及び第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方は、フランジ構造の第1及び第2のセグメントを画定する少なくとも第1及び第2の変曲点を有し、第1のセグメントと円筒形の鞍状領域とによって画定される第1の変曲点の角度は、第1のセグメントと第2のセグメントとによって画定される第2の変曲点の角度と少なくとも同じ大きさである。第1のセグメントは、直径が増加する部分を含み、第2のセグメントは、直径が減少する部分を含む。
【選択図】
図10B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のチューブ状構成および展開された構成を有する本体を含む、組織管腔ステントであって、
前記展開された構成で組織内に展開されたとき、前記本体の第1の端部および反対側の第2の端部のそれぞれが、第1のフランジ構造および第2のフランジ構造へと半径方向に拡張し、それらの間にほぼ円筒形の鞍状領域を残し、
第1のフランジ構造および第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方は、フランジ構造の第1のセグメントおよび第2のセグメントを画定する少なくとも第1の変曲点および第2の変曲点を有し、前記円筒形の鞍状領域の中心面に面し、前記第1のセグメントと前記円筒形の鞍状領域とによって画定される第1の変曲点の角度は、前記中心面とは反対向きの、前記第1のセグメントと前記第2のセグメントとによって画定される第2の変曲点の角度と少なくとも同じ大きさであり、
前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方の第1のセグメントは、直径が増加する部分を含み、前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方の第2のセグメントは、直径が減少する部分を含む、組織管腔ステント。
【請求項2】
前記本体が前記展開された構成で組織内に展開されたとき、前記円筒形の鞍状領域は、前記第1のフランジ構造が前記本体と接合する部分と前記第2のフランジ構造が前記本体と接合する部分との間の本体の長さ、および前記第1のフランジ構造に沿った任意の点と前記第2のフランジ構造に沿った任意の点との間の距離が最も短い前記本体の長さのうちの短い方として測定される、請求項1に記載の組織管腔ステント。
【請求項3】
前記円筒形の鞍状領域、前記第1のフランジ構造、前記第2のフランジ構造、またはそれらの任意の組合せを覆うカバー又は膜をさらに含む、請求項1又は2に記載の組織管腔ステント。
【請求項4】
前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方は前記第1のフランジ構造を含み、前記第1のフランジ構造は、第2のフランジ構造の最大直径よりも大きい最大直径を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組織管腔ステント。
【請求項5】
前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方は前記第1のフランジ構造を含み、前記第1のフランジ構造の第1のセグメントの前記直径が増加する部分は、前記円筒形の鞍状領域の最大直径の少なくとも半分の長さを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組織管腔ステント。
【請求項6】
前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方は前記第1のフランジ構造を含み、前記第1のフランジ構造は、前記円筒形の鞍状領域の最大直径よりも大きい直径を有する最も先端の開口部を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組織管腔ステント。
【請求項7】
前記展開された構成において10mm~60mmの全体長さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組織管腔ステント。
【請求項8】
前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方は前記第1のフランジ構造を含み、前記展開された構成において、前記円筒形の鞍状領域の最大直径は5mm~20mmであり、前記第1のフランジ構造の最大直径は20mm~40mmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の組織管腔ステント。
【請求項9】
前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方は前記第1のフランジ構造を含み、前記第2のフランジ構造は、前記円筒形の鞍状領域から外側にフレアを形成する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組織管腔ステント。
【請求項10】
長尺状のチューブ状構成および展開された構成を有する本体を含む、組織管腔ステントであって、
前記展開された構成で組織内に展開されたとき、前記本体の第1の端部および反対側の第2の端部のそれぞれが、第1のフランジ構造および第2のフランジ構造へと半径方向に拡張し、それらの間にほぼ円筒形の鞍状領域を残し、
第1のフランジ構造および第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方は、フランジ構造の第1のセグメントおよび第2のセグメントを画定する少なくとも第1の変曲点および第2の変曲点を有し、前記円筒形の鞍状領域の中心面に面し、前記第1のセグメントと前記円筒形の鞍状領域とによって画定される第1の変曲点の角度は、前記中心面とは反対向きの、前記第1のセグメントと前記第2のセグメントとによって画定される第2の変曲点の角度と少なくとも同じ大きさであり、
前記展開された構成において、前記円筒形の鞍状領域の最大直径は5mm~20mmであり、前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方の最大直径は20mm~40mmである、組織管腔ステント。
【請求項11】
前記本体が前記展開された構成で組織内に展開されたとき、前記円筒形の鞍状領域は、前記第1のフランジ構造が前記本体と接合する部分と前記第2のフランジ構造が前記本体と接合する部分との間の本体の長さ、および前記第1のフランジ構造に沿った任意の点と前記第2のフランジ構造に沿った任意の点との間の距離が最も短い前記本体の長さのうちの短い方として測定される、請求項10に記載の組織管腔ステント。
【請求項12】
前記展開された構成において10mm~60mmの全体長さを有する、請求項10または11に記載の組織管腔ステント。
【請求項13】
前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方は前記第1のフランジ構造を含み、前記第1のフランジ構造は、第2のフランジ構造の最大直径よりも大きい最大直径を有する、請求項10~12のいずれか一項に記載の組織管腔ステント。
【請求項14】
組織内に展開されたとき、前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方の第1のセグメントは、直径が増加する部分を含み、前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方の第2のセグメントは、直径が減少する部分を含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の組織管腔ステント。
【請求項15】
前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方の第1のセグメントの前記直径が増加する部分は、前記円筒形の鞍状領域の最大直径の少なくとも半分の長さを有する、請求項14に記載の組織管腔ステント。
【請求項16】
前記円筒形の鞍状領域、前記第1のフランジ構造、前記第2のフランジ構造、またはそれらの任意の組合せを覆うカバー又は膜をさらに含む、請求項10~15のいずれか一項に記載の組織管腔ステント。
【請求項17】
前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方は前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造を含み、前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造の前記第1のセグメントの前記直径が増加する部分は、互いの方へ戻るように曲げられる、請求項14~16のいずれか一項に記載の組織管腔ステント。
【請求項18】
前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造は、組織壁を並列に保持するように構成されており、前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造の前記第2の変曲点の一部は、組織壁への外傷を低減するように曲げられている、請求項17に記載の組織管腔ステント。
【請求項19】
長尺状のチューブ状構成および展開された構成を有する本体を含む、組織管腔ステントであって、
前記展開された構成で組織内に展開されたとき、前記本体の第1の端部および反対側の第2の端部のそれぞれが、第1のフランジ構造および第2のフランジ構造へと半径方向に拡張し、それらの間にほぼ円筒形の鞍状領域を残し、
第1のフランジ構造および第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方は、フランジ構造の第1のセグメントおよび第2のセグメントを画定する少なくとも第1の変曲点および第2の変曲点を有し、前記円筒形の鞍状領域の中心面に面し、前記第1のセグメントと前記円筒形の鞍状領域とによって画定される第1の変曲点の角度は、前記中心面とは反対向きの、前記第1のセグメントと前記第2のセグメントとによって画定される第2の変曲点の角度と少なくとも同じ大きさであり、
前記長尺状のチューブ状構成において、前記本体は0.8mm~4.5mmの最大直径を有し、前記展開された構成において、前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方は5mm~40mmの最大直径を有する、組織管腔ステント。
【請求項20】
前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方は前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造を含み、前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造の前記第1のセグメントの一部は、互いの方へ戻るように曲げられる、請求項19に記載の組織管腔ステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概して、医学的方法および医療装置に関する。より具体的には、本開示は、管腔ステント(lumen stent)、および医療処置によって管腔の開存性を維持するためのそれらの使用方法に関する。
【発明の概要】
【0002】
本開示の様々な態様は、概して、管腔ステント、および医療処置による管腔の開存性を維持するためのそれらの使用方法に関する。一態様では、本開示は、上流端部と、下流端部と、それらの間の領域とを備える本体を有する組織管腔ステントであって、長尺状のチューブ状構成と、上流端部および下流端部がフランジ付き構造へと半径方向に拡張する一方で、それらの端部間の領域はほぼ円筒形である短縮構成とを有する組織管腔ステントに関する。場合によっては、ステントが短縮構成にあるとき、上流フランジ構造は、下流フランジ構造のものよりも大きい最大横寸法、軸方向幅および/または軸方向半径を有し、かつ本体が短縮構成にあるときの鞍状領域の最大直径と少なくとも同じ長さの軸方向長さを有する傾斜部分を含み得る。他方では、いくつかの実施形態は、上流フランジ構造のものよりも大きい最大横寸法、軸方向幅および/または軸方向半径を有する下流フランジ構造によって特徴付けられる。それに代えて、またはそれに加えて、上流フランジ構造は、本体が短縮構成にあるときの鞍状領域の最大内径よりも大きい直径を有する最も先端の開口部を含み得る。いくつかの実施形態では、本体は、被覆されたメッシュを含み、かつ場合によっては被覆されたメッシュおよび被覆されていないメッシュの両方を含んでもよいが、いくつかの実施形態は、ステントの少なくとも円筒形鞍部分と、任意選択で上流および下流フランジ構造の一方または両方とを覆うカバーまたは膜を含む。
【0003】
別の態様では、本開示は、長尺状のチューブ状構成と、本体の下流端部が下流フランジ構造へと半径方向に拡張し、かつ本体の上流端部が先端方向におよび半径方向に外向きに傾斜した構造へと拡張する短縮構成とを有する本体を含む、組織管腔ステントに関する。下流フランジ構造の上流にあるステントの本体は、任意選択で、上流端部に向かって連続的に直径が大きくなる(すなわちテーパが付けられる)。上流および下流フランジ構造は、任意選択で非対称であり、上述の通り、上流フランジ構造は下流フランジ構造よりも大きい最大横寸法、軸方向幅および/または軸方向半径を有し、かつ本体が短縮構成にあるときの鞍状領域の最大直径と少なくとも同じ長さの軸方向長さを有する傾斜部分を含み得る。場合によっては、上流および下流フランジ構造は、伸長構成において実質的に対称である。ステントは、任意選択で、円筒形鞍状部分を覆うカバーまたは膜を含み、カバーまたは膜は、上流および下流フランジの一方または両方にわたって延伸し得る。場合によっては、上流および/または下流フランジ構造は、約2.49Nを上回る引き抜き力を有する。
【0004】
さらに別の態様では、本開示は、上述のような組織管腔ステントを使用して患者を治療する方法に関する。方法は概して、(a)内視鏡によって患者の胆管系にアクセスするステップと、(b)患者の胆管系内で、組織管腔ステントを、非対称の上流および下流フランジ構造とそれらの間に円筒状部分とを画定する短縮構成に展開するステップとを含む。方法は、任意選択で、総胆管、膵管、および肝管などの管腔に接触させるステップを含む。
【0005】
本発明の新規な特徴は、特に、添付の特許請求の範囲に記載される。本発明の特徴および利点は、以下の、本発明の原理を利用した例示的な実施形態を記載した詳細な説明、および添付図面(必ずしも縮尺通りではない)を参照することにより、よりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2A】本開示の態様に従って構成されかつ総胆管CBD(common bile duct)に植込まれた例示的なステントを示す。
【
図2B】総胆管CBDに植込まれた、
図2Aに示す例示的なステントの拡大図である。
【
図5A】さらなる例示的なステントの拡大側面図である。
【
図5B】さらなる例示的なステントの拡大側面図である。
【
図6A】さらなる例示的なステントの拡大側面図である。
【
図6B】さらなる例示的なステントの拡大側面図である。
【
図7A】さらなる例示的なステントの拡大側面図である。
【
図7B】さらなる例示的なステントの拡大側面図である。
【
図8A】さらなる例示的なステントの拡大側面図である。
【
図8B】さらなる例示的なステントの拡大側面図である。
【
図9A】さらなる例示的なステントの拡大側面図である。
【
図9B】さらなる例示的なステントの拡大側面図である。
【
図10A】さらなる例示的なステントの拡大側面図である。
【
図10B】さらなる例示的なステントの拡大側面図である。
【
図11】肝臓、胃、十二指腸、膵臓、および関連する解剖学的構造の一部分を示す。
【
図12】肝臓、胃、十二指腸、膵臓、および関連する解剖学的構造の一部分を示す。
【
図13A】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図13B】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図13C】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図13D】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図13E】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図13F】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図13G】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図14A】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図14B】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図14C】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図14D】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図14E】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図14F】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図14G】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図14H】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図14I】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図14J】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図15A】いくつかの実施形態によるステントを示す。
【
図15B】いくつかの実施形態によるステントを示す。
【
図15C】いくつかの実施形態によるステントを示す。
【
図16A】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図16B】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図16C】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【
図16D】いくつかの実施形態によるステントの断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、順行、逆行、下流、上流、基端、先端、下方、上方、下位および上位という用語を使用して、様々な方向を指す。文脈上明白に他の意味を示す場合を除いて、順行、下流、基端、下方、および下位という用語は、概して同意語として使用されて、流体の流れと一致しかつ装置および機器に沿って外科医の方へ向かう方向を示す。反対に、逆行、上流、先端、上方および上位という用語は、概して同意語として使用され、流体の流れとは反対の、装置および機器に沿って外科医から離れる方向を示す。しかしながら、この命名法は、ここでは、本発明の範囲を限定するものではなく、以下の説明を明確にするのを助けるために定義されていることに留意すべきである。本明細書で開示する例示的な実施形態は、逆行方向に入れて配置することに重点を置いており、開示の方法、システムおよび装置は、状況次第で、順行方向に配置されてもよい。そのような状況では、「上流」および「下流」の指定は逆になり得る。
【0008】
図1を参照すると、典型的な患者の胆管系(biliary system)が示されている。食物の消化に必要とされる胆汁が、肝臓によって通路へと排液され、これらの通路は、胆汁を、左肝管LHDおよび右肝管RHDへと運ぶ。これらの2つの肝管は結合して、図示のような総肝管CHDを形成する。総肝管CHDは、肝臓から出て、および胆汁を蓄える胆嚢GBからの胆嚢管CDに接合し、総胆管CBDを形成する。次に、総胆管は、膵臓からの膵管PDと接合して、胆汁、膵液およびインスリンを、ファーター膨大部AVを通って十二指腸DDの下行部へと供給する。オッディ括約筋(図示せず)として公知の括約筋が、十二指腸DDへのファーター膨大部AVの開口部に位置しており、十二指腸内の物質が、総胆管CBDまで上方へ逆行方向に移動しないようにしている。本発明は、下部総胆管CBDに配置されかつ下行十二指腸DDに延伸するステントを特に参照して説明されるが、原理は、様々な他の管腔構造にも当てはまる。
【0009】
上述の胆管樹(biliary duct tree)内またはその周りでの腫瘍増殖、過形成、膵炎、または他の狭窄は、肝臓、胆嚢および/または膵臓から十二指腸への流体の流れを妨害または遮断し得る。狭窄の影響を軽減するために、胆管系の一部分にステントを配置することが必要となり得る。ステントは、内視鏡下で配置され得る。ステントを配置するための1つの手法は、内視鏡的逆行性胆道膵管撮影法(ERCP:endoscopic retrograde cholangiopancreatography)である。ERCPは、胆管系または膵管系のいくつかの問題を診断および処置するために、内視鏡検査およびX線透視検査の使用を組み合わせた技術である。この手法は、内視鏡を、食道を下へ、胃を通って、十二指腸内へと配置させてから、様々な付属品を、内視鏡機器用チャンネルを通してファーター膨大部を上へ、胆管系または膵管系へと通過させることを含む。あるいは、経口的胆道鏡(peroral cholangioscope)と呼ばれることもある特別に細い直径の内視鏡が、胆管または膵管内へと直接通過されてもよい。ERCPによって現在配置されるステントは、拡張状態においてほぼ一定の直径を有する直管であり、下記に説明するように、本開示によって克服されるいくつもの欠点を示す。本明細書で開示するステントは、ERCP処置において使用される直管のいくつもの限界を克服する。
【0010】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明するステントは、超音波誘導を有する内視鏡によって展開される。現在の超音波内視鏡は、器具を通すための1つの開放ルーメンを有する。これらの超音波内視鏡は、追加的な器具を用いるための追加的なルーメンを有しない。超音波の能力を備えるこれらの内視鏡は、内視鏡の外側の体内管腔の、または内視鏡を有する体内管腔の標的領域を位置決定するように使用され得る超音波誘導を有する。超音波誘導を使用する手法は、EUS(内視鏡超音波検査)処置と呼ばれ得る。
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示するステントは、カテーテルまたは他の送達装置を使用して展開される。本明細書で開示する装置を送達するために使用され得るカテーテル装置の例は、米国特許出願公開第2013/0310833号として開示された2013年4月26日出願の米国特許出願第13/871,978号、および2014年2月21日出願の米国特許出願第14/186,994号に開示されている装置を含み、それぞれその全体が参照により援用される。
【0012】
【0013】
図2Aを参照すると、総胆管CBDの下方端部に植込まれた、本開示の態様に従って構成された例示的な胆管ステント100が示されている。そのような構成では、ステント100は、膨大部(ampullary)狭窄症を治療するために使用され得る。他の実施形態では、ステントは、より高い上流にある胆管狭窄を橋渡しするために、より長くてもよい。ステント100は、十二指腸DD内へと突出する下流端部102と、総胆管CBD内へと上方に延伸する上流端部104とを含む。概して半径方向に拡張されかつ軸方向に短縮された状態にあるステント100が示されており、総胆管CBDの壁と、その長さに沿って連続的にまたは少なくともいくつかの箇所で接触している。ステント100は、2012年1月31日出願の同時係属中の米国特許出願第13/363,297号に説明されているものと同様の機器によってなど、内視鏡下で送達され得る。送達中、ステント100は、送達シース内で長尺状のチューブ状構成として配置され得る。ステント100が所望の管腔の位置に適切に位置決めされたと判断されると、シースが引き戻されてステント100を露出させ、長尺状のチューブ状構成から、半径方向に拡張された構成へと拡張できるようにする。
【0014】
図2Bを参照すると、総胆管CBD内の狭窄部105を横切る胆管ステント100の拡大図が示されている。
図3を参照すると、胆管ステント100が、その半径方向に拡張された構成で示されている。二重壁の下流フランジ106が、図示の通り下流端部102に形成され得る。下流フランジ106は、十二指腸DDの壁に当接することなどによって(
図2に示すように)、ステント100の上流への移動を防止するように構成される。フレア状の上流部分またはフランジ108が、図示の通りステント100の上流端部に形成され得る。下流フランジ106と上流フランジ108との間には、中央鞍状領域110が設けられる。この実施形態では、鞍状領域はほぼ一定の、下流フランジ106および上流フランジ108の両方の最大直径よりも小さい直径を有する。上流フランジ108は、ステント100の下流への移動を防止または阻止するように構成される。総胆管CBDに沿ってファーター膨大部AVから上流に向かうと、総胆管CBDの直径は大きくなる傾向を有する。さらに、ステント100が横切ることを目的とした管内の狭窄部または他の変形部は、管の隣接部分と比較して小径を有する傾向を有する。いくつかの実施形態では、上流の半径方向外側に延伸する上流フランジ108の構成は、管の狭小部分と係合して、ステント100の下流への移動を防止または阻止する。
【0015】
ほぼ一定の直径の従来の直線状ステントは、半径方向に拡張されるとき、上述の抗移動特徴を有しない。移動の問題に対処するために、従来のステントは、望ましくない特徴を組み込んでいることが多い。例えば、ステントは、横切ることを目的とする狭窄部よりも遥かに長く設計され得る。なぜなら、移動が生じる可能性があるために、ステントがどこで終端することになるか分からないからである。ステントは、一般に、半径方向に拡張すると短縮するため、その最終的な長さは、狭窄部内でステントが拡張する程度に依存する。この不確実性を補償するために余長を加えることは、下流端部が十二指腸DDの中に突き出るなどの望ましくない影響を引き起こし得る。この構成では、十二指腸を通って移動する食物は、ステントに引っ掛かり、それにより、ステントを曲げ、詰まらせ、および/またはさらに動かし得る。ステントの下流端部は、総胆管CBDの開口部とは反対側の十二指腸壁に接触することさえあり、これもまた、ステントを通る流体の流れを阻止または防止し得、かつ/または組織の損傷または穿孔の原因となり得る。総胆管CBD内で上流に余計に延伸および/または移動する従来のステントは、胆嚢管CD、左肝管LHD、および/または右肝管RHDなどの1つ以上の管枝(duct branches)を遮断し得る。本開示に従って構成されたステントは、3cm以下の短さとしてもよく、管枝を通る流体の流れを遮断しないように、より正確に配置され得る。いくつかの実施形態では、ステント100の長さは、約3cm~約6cmであり得る。
【0016】
従来のステントはまた、被覆されていない場合があり、または組織の内部増殖(ingrowth)を可能にして、ステントが移動しないようにする特徴を含む場合がある。この配置構成は、ステントを通して組織の内部増殖の望ましくない影響をもたらすことが多く、ステントを通る流れを制限または完全に遮断する遮断の原因となる。チューブ状ステントはまた、上流端部および下流端部を有し、これら端部は、ワイヤの終端であるため鋭く、この状況は、刺激の原因、および上流端部を遮断して胆汁の流れを制限し得る望ましくない増殖性組織の増殖の原因となり得る。さらに、やはり過度の組織の増殖に起因して、ステントの除去は、困難となるか、過度の外傷の原因となるか、または管に対して容認できない外傷を生じずには不可能となり得る。これらの悪影響は、本明細書で説明するステントの構成によって回避され得る。
【0017】
図3に示すフレア状上流フランジ108の緩やかなカーブは、胆管壁に過度の刺激または外傷を引き起こすことなく、ステント100を適所に保持するように設計される。より鋭い特徴、例えば小さい半径(tight radii)、急峻な開口部または急峻なステント端部は、管腔壁の正常組織を刺激し得ると考えられている。そのような刺激は、過形成(刺激に対抗するための、管腔壁内での異常な組織の迅速な増殖)を引き起こし得る。ステントの周りでのこの組織の増殖は、ステントが内側に押しつぶされる原因となり、それにより、流体の流れが制限または遮断され得る。過形成がステントの端部付近で起こる場合、組織は、ステントの端部の前でおよび/またはその内部で増殖して新しい狭窄部を生じ、これも流体の流れを制限または遮断し得る。本出願人らは、半径の大きい上流フランジ108を構成することによって、および図示の通りステント100の上流開口部に少なくともわずかに内向きのカール112または小径の他の特徴を配置して、チューブの上流端部が隣接する組織に接触してそれをすり減らさないようにすることによって、望ましくない過形成が回避され得ることを見出した。腫瘍性組織は過形成を示す傾向がないため、ステントの長さを狭窄部の長さとおよそ同じ長さに短くすることは好都合であり得る。本開示のいくつかの態様によれば、ステントは、狭窄部の長さに適応するように構成され得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、上流開口部および下流開口部の内径ならびに鞍状領域の内径は約5mm~約12mmである一方、上流フランジの最大外径は(展開した、半径方向に拡張された構成では)約20mm~約30mmである。いくつかの実施形態では、上流フランジ108の軸方向長さは、鞍状領域110の軸方向長さと少なくとも同じ長さである。いくつかの実施形態では、上流フランジ108の軸方向長さは、鞍状領域110の軸方向長さの少なくとも1/4の長さである。
【0019】
ここで
図4を参照すると、別の例示的な実施形態が示されている。ステント114は、
図3に示すステント100の特徴と同様の特徴を備えて構成される。球状の上流フランジ116は、組織の外傷およびステント114の下流への移動を防止または阻止するために設けられる。いくつかの実施形態では、上流フランジ116は、ステント114が、図示のような、短縮され、展開された構成にあるとき、横半径120の少なくとも2倍の軸方向半径118を含む。先の実施形態と同様に、上流の管内フランジは、組織の外傷を最小限にしながら、狭窄部の上側の管腔内に固定されるように設計される。ノブのような「肩付き」の構成116が、より大きい丸みを帯びた表面領域に沿って圧力を分散させる。ステントの端部は鋭くなく、組織壁に食い込まない。上流フランジ116は、短く保たれて、正常な上流の胆管との接触を最小限にし、かつ例えば胆嚢管および肝管の分岐などの供給支管(feeding tributary duct)の排液を妨害するリスクを最小限にし得る。いくつかの実施形態では、上流フランジは、管内で十分に拡張せず、代わりに、管に加わる半径方向外向きの力を維持して、移動を減少させる。
【0020】
本開示に従って構成されたステントは、胆管系および膵臓系内の事実上いずれの箇所においても狭窄部を横切るために使用され得る。いくつかの実施形態では、ステントの下流端部フランジは常に十二指腸に配置され、ステント長は狭窄部の位置に合わせられる。例えば、ファーター膨大部またはその近くにある狭窄部を横切るために、比較的短いステントが使用され得る。左肝管と右肝管との間の分岐と胆嚢管との間にある狭窄部を横切るために、より長いステントが使用されてもよい。さらに別の実施形態では、ステントは、
図4の上流フランジ116と同様に構成された上流端部および下流端部を有し、ステント全体を管内に配置し、十二指腸内に延伸することなく、狭窄部を橋渡しできるようにする。本開示の態様によれば、ステントは取り出し可能であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書で説明するステントは、ステントのいずれかの端部または両端部にループを含み得る。ループは、スネアまたは他の回収技術を使用して、ステントの回収を容易にし得る。例えば、十二指腸にある下流フランジをスネアで捕らえるためにワイヤまたはフィラメントループが使用され得、それにより、ステント全体が管から引き出され、十二指腸を通して取り出され得る。別の例では、胆管内または胃内で上流フランジ上にループが使用されて、上流フランジが管の内部から引き出され、体から取り出され得る。
【0021】
本開示に従って構成されたステントはまた、さらに下流が遮断された場合に管から流体を排液させるために、肝管または肝臓内の実質と胃を、または膵管と胃を、または総胆管と胃または十二指腸を接続するなど、他の管腔を接続するために使用され得る。
【0022】
本明細書で開示されるステントはまた、胃腸管において使用される従来の硬質なリベットタイプの吻合装置を上回る利益をもたらす。なぜなら、ステントは、確実にかつ傷付けずに組織壁に係合し、かつ壊死組織を形成しないためである。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるステントは、植込み後に、回収可能および取り出し可能であるように構成され得る。いくつかの実施形態では、ステントは、長期または永久植込み用に設計され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、
図3のステント100および
図4のステント114は、織られたフィラメント編組体から形成された本体を含む。フィラメントは、一般に、金属ワイヤ、より典型的には、ニッケル-チタンまたは他の超弾性または形状記憶金属ワイヤである。あるいは、弾性が重要ではない場合、フィラメントは、高分子材料、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、PTFEなどから形成され得る。場合によっては、生体吸収性または生分解性材料、一般に生分解性ポリマー、例えばポリ-L-乳酸(PLLA)が使用され得る。
【0024】
本体は、長尺状のチューブ状構成(ステントの送達用)および短縮構成(展開時)の両方を有し得、短縮構成では、本体の下流端部および上流端部が半径方向に拡張する(同時に本体が短縮する)。端部の一方または両方が、二重壁のフランジ構造へと拡張し得る。そのような「二重壁のフランジ構造」は、本体の一部分として形成され得る。典型的には最も端の部分であるが、任意選択で、端部から内側に離間したある程度の部分が、内側に(中央に向かって)動き、その部分にある一対の隣接する本体セグメントが、それらの正中線または波頂線が曲がりかつ半径方向に拡張するように、ベースにおいて一緒に引かれて、隣接する円環リングの対を形成し、これが、二重壁のフランジ構造を画定する。例えば、
図3および
図4の下流フランジ106を参照されたい。そのような二重壁のフランジ構造の短縮および展開後、本体は、さらに、フランジ構造間に円筒形鞍状領域を有し得る。
【0025】
ニチノールまたはエリジロイ(eligiloy)などの形状記憶金属ワイヤから形成されると、ワイヤは、一般に0.0254mm(0.001インチ)~0.508mm(0.02インチ)、通常0.0508mm(0.002インチ)~0.254mm(0.01インチ)の範囲の比較的小さい直径を有し、編組体は、わずか10本から200本ものワイヤ、より一般的には、20本から100本のワイヤを含み得る。例示的な場合には、ワイヤは、合計24~60本で、0.0762mm(0.003インチ)~0.1778mm(0.007インチ)の範囲の直径を有し、丸みを付けられる。ワイヤは、従来の技術によってチューブ状の幾何学的形状に編まれてもよく、チューブ状の幾何学的形状は、熱処理されて、所望の形状記憶が与えられ得る。通常、編まれたチューブは、各端部にフランジを備える所望の最終的な(展開)構成に形成される。その後、そのようなフランジ付きの構成を編組体にヒートセットし得るか、または形成し得るため、半径方向に拘束する力または軸方向に長尺状にする力がないと、ステントは、各端部にフランジを備える短縮構成を取る。そのような短縮記憶構成は、拘束された構成(半径方向または軸方向に長尺状にされた)でステントを送達できるようにし、その後、拘束から解放され、それにより、本体が標的部位においてフランジ付きの構成を取る。
【0026】
しかしながら、代替的な実施形態では、織られたフィラメント編組体は長尺状のチューブ状構成にヒートセットされ、軸方向圧縮力を加えることによって、短縮されたフランジ付きの構成にシフトされ得る。そのような軸方向の圧縮は、フランジを短縮させかつ半径方向に拡張し、および制御式かつ調整可能な短縮を可能にして、ステントを所望の長さに調整できるようにする。この実施形態によれば、織られたフィラメント編組体は、拡張構成にヒートセットされ、かつステントを、その通常の十分な拡張構成を超えて機械的に短縮させる手段を含むことができ、ステントを、狭窄部の長さに自動的にまたは手動で調整できるようにする。短縮およびフランジは、スリーブ、チューブ、ロッド、フィラメント、テザー、バネ、弾性部材などを提供することによって形成されてもよく、これらは、チューブに自然発生力または適合された力を加えて、短縮およびフランジ形成を生じる。任意選択でまたは追加で、本体は、軸方向の短縮を生じさせるために力が加えられるときに所望のフランジの幾何学的形状が形成されるように、弱くした領域、強化した領域を有してもよく、または他の方法で変更されてもよい。
【0027】
ステントは、通常、1mm~8mm、通常2mm~5mmの範囲の小直径を有する送達装置によって、一般的には内視鏡的送達カテーテルによって送達されるように適合され得る。それゆえ、ステント本体の長尺状のチューブ状構成は、通常、カテーテル直径を下回る、通常0.8mm~7.5mm、より一般的には0.8mm~4.5mmの直径を有し、ここでフランジ構造は著しく拡張され、通常、3mm~70mmの範囲、より一般的には5mm~40mmの範囲にある。異なる個所の狭窄部に使用するために、例えばキット形態で、異なる長さの様々なステントが提供され得る。いくつかの実施形態では、ステントの全長は、それらの十分な拡張/展開状態において、7、9および11cmである。他の実施形態では、長さは6、8および10cmである。さらに他の実施形態では、ステントの長さは1~6cmである。ステントの円筒形鞍状領域の直径は、展開中、大きくならないことが多いが、任意選択で直径2mm~50mm、より一般的には、5mm~12mmまで大きくなる。展開されたステントのルーメンまたは通路は、存在するとき、様々な直径、一般にわずか0.2mmから40mmもの、より一般的には1mm~20mmの範囲を有し、典型的には、円筒形鞍状領域の拡張した外径よりもわずかに小さい直径を有する。本体の長さはまた、著しく変化し得る。一般に、長尺状のチューブ状構成にあるとき、本体の長さは、7mm~100mm、通常12mm~70mmの範囲にある。展開時、本体は、一般に少なくとも20%だけ、より典型的には少なくとも40%だけ、およびしばしば70%だけ、またはそれよりも多く短縮され得る。それゆえ、短縮された長さは、一般に、2mm~80mmの範囲、通常30mm~60mmの範囲にある。
【0028】
ステントの本体は、他のカバーまたは層のない織られたフィラメント編組体からなる。しかしながら、他の場合には、ステントは、さらに、本体の少なくとも一部分を覆って形成された膜または他のカバーを含み得る。しばしば、膜は、組織の内部増殖を防止または阻止して、装置を、数週間、数カ月、またはそれよりも長い間植込まれた後に取り除くことができるようにするものである。好適な膜材料には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、伸展PTFE(ePTFE)、シリコーン、ポリプロピレン、ウレタンポリエーテルブロックアミド(PEBA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、C-フレックス(C-Flex(登録商標))熱可塑性エラストマー、クレータ(Krator)(商標)SEBSおよびSBSポリマーなどが挙げられる。
【0029】
そのような膜は、ステント本体の全体部分またはその一部分のみを覆って形成されてもよく、本体の外面または内面を覆って形成されてもよく、かつ一般にエラストマーであるため、膜は、長尺状構成および短縮構成の両方で本体の形状に適合する。任意選択で、膜は、中央鞍状領域のみを覆って形成されてもよく、その場合、中央鞍状領域が半径方向に拡張しないときには、エラストマーである必要はない。
【0030】
カバーまたは膜は、ワイヤメッシュの間隙内での組織の内部増殖を阻止し、かつステントの植込み時の流体の漏れを最小限にする。組織の内部増殖を減少させることによって、ステントの取り除き易さを改善する。一般に動かされたりまたは回収されたりするようには設計されていない脈管用ステントとは対照的に、本明細書で示すステントは、折り畳み式であり、かつ取り除くことが可能および回収可能であるように設計されている。このステントはまた、一般に、ステントを周囲組織に永久的に固定するために、いくつかの他のタイプのステントで使用されている、球または他の鋭い突起を含まない。
【0031】
特定の適用例に依存して、ステントの異なる部分が被覆されてもまたは被覆されなくてもよい。いくつかの実施形態では、ステントの一方の端部は、被覆されていない部分を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるステントのいずれかは、ステントの端部の一方にカバーを含み得る。カバーは、ステントのフランジ付き端部またはフランジのないステントの端部に設けられ得る。例えば、ステントの一方の端部を肝臓に、および他方の端部を胃に展開する場合、肝臓内にあるステントの端部は、被覆されておらず、円筒形鞍状領域および胃に接合している端部が、被覆され得る。一方の端部をファーター膨大部および十二指腸に隣接させ、他方の端部を胆管に展開させる場合、胆管の端部が被覆される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるステントのいずれかは、ステントの両端部にカバーを含み得る。いくつかの実施形態では、中央部分または上流フランジと下流フランジとの間の部分が、被覆されなくてもよい。被覆されていない中央部分は、ステントの端部が十二指腸および胆管に配置されるとき、膵管から流体を排液するために使用され得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、円筒形鞍状領域は被覆されて、ステントの円筒形鞍状領域の外部に流体が漏れないようにする。本明細書で開示されるステントは体内に展開されて、それにより、本明細書で説明するように、円筒状領域が、腹膜内の体内管腔間に流体導管を形成し得る。被覆された円筒形鞍状領域は、腹膜への漏れを防止し得る。腹膜への生体物質の漏れは、深刻な合併症の原因となることがあり、その結果、ステントは、ステントの円筒形鞍状領域の外部への流体または物質の漏れを防止するためのカバーを有し得る。カバーはまた、胃または十二指腸に接続するように構成されるステントの端部に使用され得る。
【0033】
本明細書で開示されるステントを生産するために使用され得る製造技術の例は、レーザ切断、ウィービング、溶接、エッチング、およびワイヤフォーミングを使用することを含む。シリコンなどの膜材料が、ワイヤステントフレームに適用されて、流体がステント壁を通過しないようにする。膜またはカバー材料は、塗布、ブラッシング、噴霧、浸漬、または成形によって適用され得る。
【0034】
1つまたは複数の二重壁のフランジ付き構造の強度は、チューブ状のステント本体を形成するために使用される個々のワイヤの数、サイズ、剛性、および1つまたは複数の織りパターンに依存する。例えば、多数の、例えば48本のニチノールワイヤを用いるが、比較的小さいワイヤ直径、例えば0.1524mm(0.006インチ)を備える設計は、柔軟性を保った鞍状領域、および比較的硬い1つまたは複数の二重壁のフランジを備える編組体構造を形成する。より少数の、例えば16本のワイヤを使用しかつより大きいワイヤ直径、例えば0.4064mm(0.016インチ)を使用することにより、比較的剛性の鞍状領域、および比較的堅固な非柔軟性の1つまたは複数のフランジを備える編組体構造が形成される。剛性および柔軟性の設計のいずれもが、用途に応じて望ましいものとなる。特に、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の二重壁のフランジ構造は、1g/mm~100g/mmの範囲、または4g/mm~40g/mmの範囲の予め選択された曲げ剛性を有する。同様に、いくつかの実施形態では、中央鞍状領域は、1g/mm~100g/mm、または10g/mm~100g/mmの範囲の予め選択された曲げ剛性を有する。
【0035】
フランジの曲げ剛性は、以下の試験によって決定され得る。先端フランジが固定具に固定される。フランジの外径が、シャチヨン(Chatillon)フォースゲージに取り付けられたフックを使用して、ステントの軸に平行な方向に引かれる。ステントの鞍状部は、固定具内の孔に保持され、力(グラム)および撓み(mm)が測定され、記録される。フランジの曲げ剛性は、以下の試験によって決定され得る。先端フランジが固定具に固定される。フランジの外径が、シャチヨン(Chatillon)フォースゲージに取り付けられたフックを使用して、ステントの軸に垂直な方向に引かれる。ステントの鞍状部は、固定具内の孔に保持され、力(グラム)および撓み(mm)が測定され、記録される。
【0036】
ステントの形状および設計は、所望の適用例に基づいて選択され得る。例えば、本明細書で開示されるステントおよび方法の実施形態は、一般に接続されない体内管腔間(例えば胃と胆嚢など)に直接的な流体導管を形成することを含む。これらの実施形態では、ステントの端部またはフランジは、組織平面を保持するための十分な強度および柔軟性をもたらすように選択され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるステントおよび方法は、体内の自然な経路の流れを改善するために使用され得る。これらの実施形態では、ステントの形状および設計は、これらの適用例に対する所望の特性に基づいて選択され得る。
【0037】
ステント設計はまた、従来のステントよりも横強度および引き抜き力が改善されている。引き抜き力は、2つの異なる試験、ステント引き抜き力試験およびインプラントアンカー引き抜き試験を使用して決定され得る。
【0038】
引き抜き力試験では、ステントは、十分な拡張構成において試験される。ステントは、ステントの円筒形鞍状領域の拡張した直径に適合するようなサイズにされた材料内の孔を通して、展開される。例えば、材料内の孔は、ステントサイズに依存して、約10mmまたは15mmであり得る。ステント引き抜き試験は、十分に拡張したステントの先端フランジを変形させて開口部を通してステントの拡張した先端フランジを引くために必要な力を測定する。ステントは、フォースゲージに取り付けられた締結具を使用して、基端方向に引かれる。先端フランジが材料から取り外されるまで基端方向の力が加えられ、グラムで測定された取外し力が、「引き抜き力」として測定かつ記録され、mmで測定された撓みが測定かつ記録される。いくつかの実施形態では、ステント引き抜き力は、約260グラム(約2.55N)超である。いくつかの実施形態では、ステント引き抜き力は、約300グラム(約2.94N)超である。いくつかの実施形態では、ステント引き抜き力は、約400グラム(約3.92N)超である。いくつかの実施形態では、ステント引き抜き力は、約500グラム(約4.9N)超である。いくつかの実施形態では、ステント引き抜き力は、約550グラム(約5.39N)超である。いくつかの実施形態では、ステント引き抜き力は、約600グラム(約5.88N)超である。いくつかの実施形態では、ステント引き抜き力は、約700グラム(約6.86N)超である。いくつかの実施形態では、ステント引き抜き力は、約800グラム(約7.84N)超である。いくつかの実施形態では、ステント引き抜き力は、約900グラム(約8.82N)超である。いくつかの実施形態では、ステント引き抜き力は、約1000グラム(約9.8N)超である。
【0039】
インプラント固着試験では、ステントの基端フランジがカテーテル装置によって拘束された位置に保持されている時の先端フランジの強度が試験される。先端フランジは、カテーテルのシャフトに適合するようなサイズにされた孔を有する硬質材料の他方の側に展開される。カテーテルは、先端フランジを変形させかつ硬質材料にある孔を通して先端フランジを引くのに必要とされる、測定された力によって引かれ得る。いくつかの実施形態では、ステントのインプラント固着試験強度は、約1N超である。いくつかの実施形態では、ステントのインプラント固着試験強度は、約2N超である。いくつかの実施形態では、ステントのインプラント固着試験強度は、約3N超である。いくつかの実施形態では、ステントのインプラント固着試験強度は、約4N超である。いくつかの実施形態では、ステントのインプラント固着試験強度は、約5N超である。いくつかの実施形態では、ステントのインプラント固着試験強度は、約6N超である。いくつかの実施形態では、ステントのインプラント固着試験強度は、約7N超である。いくつかの実施形態では、ステントのインプラント固着試験強度は、約8N超である。いくつかの実施形態では、ステントのインプラント固着試験強度は、約9N超である。いくつかの実施形態では、ステントのインプラント固着試験強度は、約10N超である。いくつかの実施形態では、ステントのインプラント固着試験強度は、約15N超である。
【0040】
ステント形状は様々であり得る。
図2A、
図2B、
図3、
図4、
図5A~5B、
図6A~6B、
図7A~7B、
図8A~8B、
図9A~9B、
図10A~10B、
図13A~13G、
図14A~14J、
図15A~15C、および
図16A~16Dは、様々なステント形状および断面を示す。例えば、端部またはフランジ形状は、ステントの強度を改善しかつ各組織平面に対抗する十分な量の直線力をもたらすために、最適にされ得る一方で、複合構造の内側開口部を通る円滑な流体および物質の流れを可能にする。いくつかの実施形態では、端部形状は、複数の構造的な折り目からなり、複数の変曲点を有するなど、「ベル状」と説明され得る。変曲点は、湾曲の方向に変化が生じる曲線の点と考えることができる。追加的な端部は、巻かれ得るかまたは組織平面に逆行して突出し得る。代替的な設計は、装置の内径よりも幅広の口からなってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、ステントの両端部は対称である。いくつかの実施形態では、ステントの両端部は、異なる端部形状を有し得る。ステント端部形状は、ステントが展開される体内管腔および箇所、ならびに所望の物理的な特性に基づいて選択され得る。ステントは、流体および物質の一方向の流れを容易にするように設計され得る。一方向の流れはまた、物質の流れに最初に接触する先頭ステントフランジ(例えば上流フランジ)に、追加的な強度を発揮させるかまたは必要とし得る。上流フランジは、下流フランジよりも強い引き抜き力を有する断面を備えるように設計され得る。上流フランジにある開口部の直径は、下流フランジよりも幅広の設計を有し、流体または物質がフランジ内で動けなくなる可能性を最小限にし得る。上流フランジの端部はまた、流体または物質がフランジで動けなくなる可能性をさらに減少させるように設計され得る。例えば、ステントは上流フランジに、その幅広のフランジ端部を備える
図14Aに示す断面を、および
図14Jに示すような下流フランジに、
図14Iのようなフランジ設計を有し得る。
【0042】
本明細書で開示されるステントのいずれかは、吹き流しタイプの構造を含み得る。吹き流し構造は、ステントの内部から吹き流しを通る一方向の流体の流れを促し得る一方で、吹き流しを通ってステントの内部に至る物質の流れを防止または最小限にする。吹き流しは、ステントの下流端部に結合され得る。吹き流しは、特定の適用例に好適な長さ、および所望の流体流れ経路を有し得る。例えば、吹き流しは、十二指腸の領域から空腸まで延びるようなサイズにされた長さを有し得る。いくつかの実施形態では、ステントは、上流端部が、胆管または膵管に展開するようなサイズにされ、下流端部が、吹き流しが下流端部に結合されかつ十二指腸から空腸まで延びる状態で、ファーター膨大部に隣接する十二指腸内にあるように構成される。この実施形態では、消化液は、膵管または胆管にあるステントの上流端部から、ステントおよび吹き流しを通って空腸まで、それにより十二指腸を通過することによって流れる。吹き流しはまた、胃の領域から空腸まで延びるようなサイズにされた長さを有し得る。いくつかの実施形態では、ステントは、上流端部が、胆管、膵管、または肝臓に展開するようなサイズにされ、および下流端部が、吹き流しが下流端部に結合されかつ胃から空腸まで延びる状態で胃内にあるように構成される。この実施形態では、消化液は、膵管、胆管、または肝臓にあるステントの上流端部から、ステントおよび吹き流しを通って空腸まで、それにより胃および十二指腸を通過することによって流れる。これらの例示的な適用例は、胃バイパス処置において使用される侵襲手術を必要とせずに、胃バイパス処置(ルーワイ(Roux-en-Y)法)に関連する利益をもたらし得る。
【0043】
ステントの寸法は、流体の流れ用の所望の導管と共に、組織壁での所望の保持をもたらすように設計され得る。例えば、フランジの幅および直径は、所望の特性をもたらすように、最適にされ得る。フランジの先端に追加的な強度をもたらすために、カフまたはリップを設けてもよい。カフの直径および長さはまた、ステントの特性を変更するために、最適にされ得る。カフの直径は、円筒状の中空部分の直径よりも大きくてもよい。これは、その後のステントへのアクセスを容易にし、かつ物質がフランジ内で動けなくなる可能性を低減させ得る。カフまたは外側リップはまた、流体または物質がフランジ容積内で動けなくなる可能性を最小限にする形状にされ得る。例えば、外側カフまたはリップは、ステントの内部容積から離れるように突出するかまたは丸まる壁を含み得る。円筒状部分の直径および長さは、組織壁の厚さおよび所望のステントの箇所に基づいて、最適にされ得る。ステントの全長はまた、特定の適用例に基づいて最適にされ得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるフランジの断面のいずれかは、本明細書で開示される他のステントフランジまたは断面のいずれかと一緒に使用され得る。例えば、
図8A~8Bに示されるフランジ106は、
図13A~153、
図14A~14J、
図15A~15C、および
図16A~16D示されるフランジのいずれかと置き換えられて、それにより、ステントが、
図13A~13G、
図14A~14J、
図15A~15C、および
図16A~16Dのフランジ、および他方の端部では円筒状部分156を有し得る。別の例では、
図10A~10Bのフランジ164、164Aは、
図13A~13G、
図14A~14J、
図15A~15C、および
図16A~16Dに示すフランジのいずれかによって置き換えることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、自己拡張型ステント本体は、形状記憶合金から形成されるが、他の設計は、本体の端部同士を結合させる弾性のテザーを用いることができる。それゆえ、本体は、低弾性を有することができ、ここでは、端部を軸方向に圧縮する力は、弾性のテザーからもたらされる。そのような設計は、ポリマー材料または他のより弾性の劣る材料がステントの本体に使用されているとき、特に好適であり得る。
【0046】
さらに他の実施形態では、ステントは、本体を短縮構成に維持するロックを含み得る。例えば、ロックは、本体が短縮されると本体の両端部に係合するロッドまたはシリンダーを、本体内に含み得る。あるいは、ロックは、本体が短縮されるとステント本体のルーメンをクランプする、1つ、2つ、またはそれより多い軸方向部材を含み得る。
【0047】
さらに別の選択肢として、ステントは、円筒形鞍状領域の一部分を覆って形成されたスリーブを含み得る。スリーブは、中央鞍状領域の直径を維持し、かつフランジが内向きに延伸するのを制限し、ステント本体が軸方向に短縮されるときにフランジを形成するのを補助する。
【0048】
図5A~
図10Bを参照すると、上述したものと同様の特徴を用いる、追加的なステントの実施形態が示されている。
図5Aは、形状がほぼ円筒形であり、上流フランジ132の基端部および先端部に丸みを帯びた部分を有する、上流フランジ132を有する別の例示的なステント130を示す。
【0049】
本明細書で開示されるステントは、被覆された部分および被覆されていない部分を含み得る。
図5Bは、
図5Aと同様であるが、鞍状領域110’の一部分は被覆されていないステント130’を示す。ステントの一部分のみを被覆されないままにすることによって、制限された量の組織の内部増殖によりステントの移動を防止できるものの、少なくとも限られた期間内にステントを取り除くことが可能となる。別の同様の実施形態では、ステントの上流端部および/または下流端部は被覆されず、管系の側枝、例えば胆嚢管および膵管からの流体の流れが妨害されないようにできる。
【0050】
いくつかの実施形態では、ステントの被覆された部分は、ステントのわずか約20%であり得る。例えば、一方の端部が胃と係合するように構成され、かつ第2の端部が別の体内管腔と係合するように構成されたステントでは、ステントのわずか約20%が被覆され得る。被覆された部分は、胃と係合するように構成されたステントの部分、例えばステントの胃端部であり得る。
【0051】
ステントの被覆されていない部分は、流体が、ステントの内部領域に流れ、かつそれを通ってステントの他方の端部まで通過できるようにする。例えば、ステントの被覆されていない端部は、肝臓内に配置され得る。肝臓の胆汁からの圧力によって、胆汁は、ステントの被覆されていない部分を通り、ステントのルーメンを通って、ステントの他方の端部が固定される胃または十二指腸などの別の体内管腔まで流れる。胃または十二指腸と係合するステントの部分は、組織の内部増殖を最小限にし、かつ胃への流体の流れおよび送達を改善するために、被覆され得る。
図6Aは、別の例示的なステント136を示す。下流フランジ106の上流にあるステントの本体138は、次第に直径が大きくなる。
図6Bは、
図5Bに示すステントと同様に被覆されていない本体138’の部分140を有する同様のステント136’を示す。
【0052】
図7Aは、別の例示的なステント142を示す。ステント142は、二重壁の下流フランジ144および二重壁の上流フランジ146を含む。上流フランジ146の内向きの壁は、外向きの壁よりも平坦であるように構成されている。
図7Bは、その鞍状領域110’に被覆されていない部分148を有する同様のステント142’を示す。
【0053】
図8Aは、別の例示的なステント150を示す。ステント150は、円筒状部分156につながる斜面部分154を有する上流フランジ152を含む。
図8Bは、被覆されていない斜面部分154’を有する同様のステント150’を示す。いくつかの実施形態では、ステント150’は、肝臓の一部分または関連する管系を排液するために使用され得る。被覆されていない斜面部分154’および円筒状部分156’は、肝臓内に植込まれまたは展開され得る。被覆されていない斜面部分154’は、胆汁が、管系および肝臓の他の領域から流れることができるようにし、胆汁は、胃または十二指腸などの体内管腔に展開されるステントの他方の端部に流れ得る。
図8bに示すステント150’は、被覆されていない部分(被覆されていない斜面部分154’として示す)を有し、これは、排液を容易にするために使用され得る。ステント150’は、下流フランジ106が十二指腸に展開されかつ円筒状部分156’が胆管に展開される状態で、胆管と十二指腸との間に展開され得る。被覆されていない斜面部分154’は、物質が、膵管からステントの内部を通り、下流フランジ106に隣接する出口を出て、十二指腸に至るように流れることを可能にする。
【0054】
図9Aは、別の例示的なステント158を示す。ステント158は、二重壁の下流フランジ144および同一の二重壁の上流フランジ144を含む。
図9Bは、被覆されていない下流フランジ144’および上流フランジ144’を有する同様のステント158’を示す。
【0055】
図10Aは、別の例示的なステント160を示す。ステント160は、小直径の二重壁の下流フランジ162、およびより大きい直径の二重壁の上流フランジ164を含む。
図10Bは、被覆されていない上流フランジ164’を有する同様のステント160’を示す。
【0056】
図13Aは、円筒形鞍状領域151と、フランジ154の方へ戻るように曲げられるように構成された端部153を備えるフランジ152と、フランジ152の方へ戻るように曲げられるように構成された端部155を備えるフランジ154とを備えるステント150の実施形態の断面を示す。フランジ152、154および端部153、155は、組織壁T1、T2を並列に保持するように構成される。フランジ152、154の先端部分は、組織壁への外傷を低減させるように、曲げられている。
図13Bおよび
図13Cは、
図13Aと同様の構成を有するが、ステントの端部153、155がさらに丸められている。
図13Bは、およそ半円形に丸められた端部153、155を示し、および
図13Cは、およそ全円を形成する端部153、155を有する。
図13B~Cのステントの端部153、155は、組織に傷付けずに係合し、ステント構造の先端部をさらに丸めることから強度を増し得る。
【0057】
図13D~13Gは、ステント構造の追加的な断面図を示す。
図13Dは、円筒形鞍状領域151から離れるように突出するフランジ構造152、154を備えるステント150を示す。円筒形鞍状領域151は直径D1を有し、および外側フランジ構造152、154は、それよりも大きい直径D2を有する。
図13Eは、外向きに、かつ円筒形鞍状領域151の内部容積から離れるように丸まるフランジ構造152、154を備えるステント150を示す。
図13Fは、円筒形鞍状領域151から離れるように突出しかつ丸められた端部153、155を有するフランジ構造152、154を示す。丸まった端部は、ステントに追加的な横強度をもたらし得る。
図13Gは、円筒形鞍状領域151の内部容積から離れるように突出しかつさらに二重壁のフランジ構造を含んでステント150の強度を増し、およびさらに植込み時に傷付けずに組織壁に係合するフランジ構造152、154を示す。
【0058】
図14A~14Jは、ステントフランジ構成の様々な部分的な断面を示す。いくつかのフランジ構造は、各フランジ内に、ステントを通過する流体または他の物質を捕捉し得る容積を有し得る。フランジは、流体または他の物質がステントの内部容積またはステントフランジ内に捕捉される可能性を最小限にするように設計され得る。
図14A~14Iに示すステントは、流体および物質がフランジ容積内に捕捉されるかまたは動けなくなるのを最小限にするように設計されるフランジ構造を有する。
【0059】
図14Aは、フランジ構造162が複数の変曲点を有するステント160の部分的な断面を示す。変曲点は、三次元のステント構造に半径方向の曲げを形成する。フランジ162の壁は、円筒形鞍状領域161から離れるように突出し(第1の変曲点)、その後、ステント160の縦方向の経路164の中心の方に戻るように曲がり(2つのさらなる変曲点)、それに続いて、再びステント160の縦方向の経路164の中心から離れるように戻るように曲がり(2つのさらなる変曲点)、かつステント端部163でさらに曲がる(1つのさらなる変曲点)。曲がりのそれぞれが、変曲点であるとみなされ得る。
図16Aに示すステント160は、6個の変曲点を有する。変曲点は、ステントフランジに追加的な強度を加え得る。ステントは、円筒形鞍状領域161の直径よりも大きい直径の開放端部を有し、物質がステント内で動けなくなる可能性を低減させ、かつステント本体を通る流体の流れを促し得る。追加的な変曲点は、拡張したステントの横強度および引き抜き力を増す。
【0060】
図14Bは、フランジ構造162が7個の変曲点を有するステント160を示す。構造は、
図14Aに示すステントと同様であるが、外側ステント壁は、端部163において縦方向の経路164の中心の方に戻るように角度が付けられている。
【0061】
図14Cは、フランジ構造162が、丸められたステント端部163を有するステント160を示す。丸められた端部は、円筒形鞍状領域161の方に戻るように丸められており、円形断面を形成する。ステントフランジの端部163は、それ自体の方に戻るように曲がっているため、流体の流れは、ステントの端部に直接流れない。このステント構成は、さらに、流体がフランジ162の内部容積内で動けなくなる可能性を低減させる。
【0062】
図14Dは、フランジ162が鞍状領域161の縦方向の経路164から離れるように突出し、および端部163が、フランジ162の外側の点を越えて外向きに丸まっている、ステント160を示す。
【0063】
図14Eは、フランジ162が5個の変曲点を有するステント160を示す。フランジ162は、鞍状領域161の中心から離れるように外向きに突出してから、中央経路164の方に戻るように曲がり、それに続いて、再度、端部163が、円筒形鞍状領域161の縦方向中心164から離れるように突出するように曲がる。
【0064】
図14Fは、フランジ162が、円筒形鞍状領域161から離れるように突出し、かつフランジ162の方に戻るように丸められた端部163によって、丸められた円形断面を形成する、ステント160を示す。
【0065】
図14Gは、
図14Fと同様であるが、円形端部163が、ステントの端部163において全円よりも大きく丸まっている。
図14Hは、円筒形の中央領域161から離れるように丸まる、丸められた端部163と共に、直角に似た複数の曲りを有するステントフランジ162を示す。直角は、ステントの横強度および引き抜き力を増し得る。
【0066】
図14Iは、丸まった端部が、円筒形鞍状領域から離れるように丸まっている、正弦曲線状の外側形状を有するフランジを示す。波形の正弦曲線状の外側形状は、ステントの横強度および引き抜き力を増し得る。
【0067】
図14Jは、1つのフランジが
図14Aに示す構造を有し、かつ
図14Iに示すフランジを有するステントの断面を示す。
図14Aに示すフランジは、幅広く開放しており、かつ流体の流れの方向に面するように展開され得る。
図14Iに示すフランジは、狭小な外側端部を有する対向端部として使用され得、ここで物質がステントの内部容積から出る。
【0068】
図15A~15Bは、いくつかの実施形態によるステント170の断面図および外観をそれぞれ示す。フランジ構造171は、初めに、ステント本体から離れるように外向きに突出し、その後、円筒形鞍状領域172の内部容積の方へ戻るように丸まって、半円形のフランジ構成を形成する。フランジは、追加的な横強度を提供し、かつ引き抜き力を高める一方で、物質または流体がフランジの内部容積内で動けなくなる可能性を最小限にする。
図15Cは、半円形のフランジ構造171が円筒形鞍状領域172の方に戻るように丸まる、代替的な構成である。
【0069】
図16A~16Dに示すステント構造は、二重壁のフランジ構造と称し得る。
図16Aは、円筒形鞍状領域182、および比較的大きく開いた円筒状領域を備えるフランジ181を備え、およびフランジ構造181上に幅広のカフまたはリップ183を備えるステント180を示す。
図16Bは、
図16Aよりも小さい内径を備えるが、傷付けずに組織に係合する、より大きい二重壁のフランジ181を備えるステント180を示す。
図16Cは、内側円筒形鞍状領域の直径よりも大きい直径の外側カフまたはリップ183を備えるステント180を示す。
【0070】
図16Dは、
図16Cと同様であるが、流体または物質がフランジ容積内で詰まらないようにするために、別個のプラグ184をフランジ181に備えるステント180の実施形態を示す。プラグは、ステントを取り除いた後、消化管を流れるまたは通過するのに好適な材料で作製され得る。いくつかの実施形態では、フランジは、生分解性または生体吸収性材料から作製され得る。フランジプラグ構造は、本明細書で開示されるステント構造のいずれかと一緒に使用され得る。
【0071】
例示的なEUS処置では、超音波機能を備える内視鏡は、口から入って、食道を通って胃まで前進する。超音波標的は、任意選択で、標的体内管腔内に配置され得る。超音波標的を生じる多くの方法があり、例えば注入カテーテルが、食塩水を大量注入するために使用され、これは、超音波によって識別され得る。超音波誘導は、針を、内視鏡のワーキングチャネルから、最初に胃壁および標的体内管腔の壁を穿刺するように前進させ、それに続いて、ガイドワイヤを標的体内管腔内へと前進させるために使用される。ステントを運ぶカテーテル装置は、標的体内管腔へのアクセスを得るために、ガイドワイヤに従い得る。この実施形態では、針でのアクセスが好ましい。しかしながら、いくつかの実施形態では、カテーテルは、針およびガイドワイヤを使用することなく、直接、作動状態にされた先端チップを使用して胃壁および標的体内管腔に最初に貫入を行うために使用され得る(そのようなカテーテル装置は、米国特許出願公開第2013/0310833号として公開された2013年4月26日出願の米国特許出願第13/871,978号、および米国特許出願第14/186,994号に開示されている)。標的体内管腔へのアクセスを得た後、カテーテル装置は、ステントを拘束するシースを引き抜くかまたは引き戻すことによって、標的体内管腔内のステントに上流端部を展開し得る。その後、ステントの下流端部は、ステントを拘束するシースを引き続き引き戻すことによって、胃の中に展開され得る。ステントの展開後、経路が、ステントの内部を通って、胃と標的体内管腔との間に形成される。送達カテーテルが取り除かれ、ステントが、任意選択で拡張され得る。ステントの展開後、内視鏡が取り除かれる。ステントは、後にスネアまたは他の公知の技術を使用して内視鏡下で取り除かれる。同様の技術が、十二指腸に位置決めされた内視鏡によって、ERCP処置と共に使用され得る。
【0072】
上述の通り、本明細書で開示されるステントのいずれかは、ERCPプロセスにおいて使用され得る。ERCP処置は、内視鏡を、口および胃を通って腸へと前進させることを含み得る。内視鏡は、ファーター膨大部に隣接する腸の領域まで前進させられ得る。ガイドワイヤは、内視鏡のワーキングチャネルから、ファーター膨大部へ、および総胆管または膵管へと前進させられ得る。自己拡張型ステントを運ぶカテーテルは、総胆管または膵管へのアクセスを得るために、ガイドワイヤ上で前進させられ得る。カテーテルは、シースを引き戻して、自己拡張型ステントが拡張できるようにする。シースは部分的に引き戻されて、総胆管または膵管内でステントの第1の端部または上流端部が拡張するようにし得る。上流端部が展開した後、シースはさらに引き戻されて、ステントの第2のまたは下流端部を展開し得る。ステントの下流端部は、ファーター膨大部、腸、または総胆管の他の領域、または膵管において展開され得る。ステントの円筒形鞍状領域は、総胆管または膵管と、ファーター膨大部、腸、または総胆管の他の領域、または膵管との間に流体導管または経路を形成する。
【0073】
図11および
図12は、本明細書で開示されるステントによって接続され得る体内管腔の追加的な例を示す。
図11および
図12の矢印は、ステントが、総胆管を十二指腸に(例えば
図11、#3)または胃を胆樹(biliary tree)内の様々な位置に接続するように延在する、腹腔の領域を示す。
図11および
図12は、ステントが胃と十二指腸および胆樹の他の領域との間に延在する、腹腔内の領域を示す。
【0074】
図11は、ステントが腹腔内に配置され得る、様々な符号を付した箇所1~6を示す。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるステントのいずれかは、
図11および
図12に示す箇所のいずれかに配置され得る。例えば、
図11および
図12に示す手法のいずれかは、ERCP処置の代わりに使用され得る。場合によっては、ERCP処置は、失敗し得るかまたは不可能であり得るが、これらの場合、ステントは
図11および
図12に示される経路のいずれかを通って配置されることが可能である。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるステントは、総胆管を十二指腸に接続する、
図11、#3に示すような総胆管十二指腸吻合に使用され得る。総胆管十二指腸吻合では、内視鏡は、口および胃を通って十二指腸へと前進させられ得る。総胆管の標的箇所は、超音波誘導または他の誘導方法を使用して特定され得る。針またはカテーテル装置は、内視鏡から前進させられ、十二指腸の壁および総胆管を穿刺し得る。総胆管にアクセスするために針が使用される場合、ガイドワイヤは、ガイドワイヤ上を前進させることによって、総胆管にアクセスするカテーテルと共に配置され得る。カテーテルは、上流端部またはフランジを総胆管内にし、下流端部またはフランジを十二指腸内に展開して、ステントを展開でき、それにより総胆管と十二指腸との間に流体導管を形成する。
【0076】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるステントは、肝管を胃に接続する肝胃吻合に使用され得る。
図11(#1)および
図12の矢印は、ステントが肝管を胃に接続するようにかかる腹腔内の領域を示す。内視鏡は、口を通って胃へと前進させられ得る。肝臓内の標的箇所は、超音波誘導または他の誘導方法を使用して特定され得る。針またはカテーテル装置は、胃および肝臓を穿刺するように前進させられ得る。ガイドワイヤは、肝臓内に配置され(針のアクセス後)、それに続いて、ステントを運ぶカテーテルをガイドワイヤ上で前進させ得る。ステントの上流端部は、カテーテルを使用して肝臓および肝管に配置され得る。ステントの下流端部は、胃内に展開される。ステントは、ステントの端部に、肝臓および肝管の内部で解放される、被覆されていない部分を有し得る。例えば、肝臓内で展開される上流端部は、約3~4cmの被覆されていない部分を有し得る。ステントの端部上の被覆されていない部分は、胆汁が肝臓から流出し、かつステントの内部容積を通って胃まで排液されるのを促し得る。肝臓内の圧力が、肝臓からステントを通って胃に至る胆汁の排液を支援し得る。胃に展開されるステントの下流端部は、胆汁と胃の壁との接触を減少させるように、被覆され得る。
【0077】
図11の経路#2は、総胆管にアクセスし、その後、総胆管内に管腔内ステント(intraluminal stent)を配置するための代替的なアクセス経路を示す。場合によっては、ERCPは約1%の確率で失敗することがある。ERCP処置に失敗した場合、総胆管への代替的なアクセスが必要となる。
図11の#2に示すように、肝管は、針を、胃および肝臓壁を通って前進させ、肝管を穿刺することによって、アクセスされ得る。ガイドワイヤが、次に肝管および総胆管を通過させられ得る。胆汁の流れは、総胆管を通ってファーター膨大部および十二指腸へのガイドワイヤの前進を支援し得る。鉗子または他の手術用器具が、ガイドワイヤの端部を十二指腸内で把持するために使用され得る。その後、鉗子または他の手術用器具は、ガイドワイヤの端部を、患者の口から引き抜き得る。ガイドワイヤの端部が患者の体から出ると、カテーテルが、ガイドワイヤ上を前進させられ得る。カテーテルは、胃、十二指腸、ファーター膨大部を通って胆管へと前進させられ得る。カテーテルが総胆管へアクセスした後、ERCPのステップ、例えばファーター膨大部の切断、結石の引き抜き、狭窄部への対処などが、遂行され得る。このタイプの手法は、ランデブー(rendezvous)法と呼ばれ得る。カテーテルはまた、所望通りに、本明細書で開示されるステントのいずれかの配置などの追加的な医療処置に使用され得る。
【0078】
経路#4は、別のタイプのランデブー処置を示す。針は、十二指腸まで前進させられ得る。胆管は、針によって配置されかつ標的にされ得る。その後、針は、十二指腸の壁を通って胆管へと前進させられ得る。その後、ガイドワイヤが、針から胆管へと通過させられ得る。ガイドワイヤは、胆管を通ってファーター膨大部へ、そして十二指腸へと前進させられ得る。ガイドワイヤは、十二指腸において、鉗子または他の手術用器具を使用して掴まれて、口から引き抜かれ得る。ガイドワイヤの端部が患者の体から出ると、カテーテルが、ガイドワイヤ上で前進させられ得る。カテーテルは、胃および十二指腸を通って胆管へと前進させられ得る。その後、カテーテルは、所望通りに、本明細書で開示されるステントのいずれかを配置するなどの追加的な医療処置に使用され得る。
【0079】
経路#5は、ランデブー処置用の、膵管を通る経路を示す。針は、胃へと前進させられ得る。膵管は、針によって配置されかつ標的にされ得る。その後、針は、胃の壁を通って膵管へと前進させられる。その後、ガイドワイヤが、針から膵管へと通過させられ得る。ガイドワイヤは、膵管を通ってファーター膨大部および十二指腸へと前進させられ得る。ガイドワイヤは、十二指腸において、鉗子または他の手術用器具を使用して掴まれ、口から引き抜かれ得る。ガイドワイヤの端部が患者の体から出ると、カテーテルは、ガイドワイヤ上で前進させられ得る。カテーテルは、胃および十二指腸を通って膵管へと前進させられ得る。その後、カテーテルは、所望通りに、本明細書で開示されるステントのいずれかを配置するなどの追加的な医療処置に使用され得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるステントは、膵管を胃に接続する膵胃吻合に使用され得る。
図11(#6)および
図12の矢印は、ステントが膵管を胃に接続するために延在する腹腔内の領域を示す。膵胃吻合では、内視鏡は、口を通って胃へと前進させられ得る。膵管内の標的箇所が、超音波誘導または他の誘導方法を使用して特定され得る。針またはカテーテル装置が、内視鏡から前進させられて、胃の壁および膵管を穿刺し得る。ガイドワイヤが、膵管内に配置され(針のアクセス後)、それに続いて、ステントを担持したカテーテルをガイドワイヤ上で前進させる。ステントの上流端部は、カテーテルを使用して膵管内に配置され得る。ステントの下流端部は、胃内に展開され、それにより、膵管と胃との間に流体導管を形成する。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるステントは、ステントを順行で留置するために使用され得る。順行性ステント留置は、胆管および膵管において行われ得る。順行性ステント留置は、操作者が、胆管(または膵管)の上流部から入れる場合である。胆管の上流部は、経皮的(例えば経肝臓的(transhepatic))に、またはEUS誘導下でアクセスされ得る(例えば肝胆管内または外を経腸的に(transenteric)標的にする -
図11の#2経路を参照されたい)。胆管の上流部へのアクセスを獲得した後、ガイドワイヤが挿入されて、下流に前進され、狭窄部および膨大部を横断し、十二指腸へと前進される。その後、ステントは、ワイヤ上で順行的に前進されて、ステントの下流端部が十二指腸内になるまで、狭窄部および膨大部を横断する。シースは、ステントに対して引き戻されて、下流フランジまたは二重壁のフランジを解放する。その後、シースおよびステントは、フランジがファーター膨大部に当接するまで単一ユニットとして引き戻されてもよく、この当接は、引き戻すことによって直面する抵抗によって知らされる。その後、シースは、ステントに対して引き戻されて、胆管内に上流フランジを展開する。同様の手法は、膵管への上流のアクセスを獲得した後、ステントを膵管に順行で留置するために使用され得る(
図11#5経路を参照されたい)。
【0082】
本開示の追加的な態様によれば、本明細書で上述したものより短くてもよい2フランジ付きERCPステントが、総胆管の下方端部に一時的に挿入されて、内視鏡を胆管へと簡単に通過できるようにする。そのような配置構成は、胆道鏡検査法または膵管鏡検査法(「管鏡検査法(ductoscopy)」)のために、胆道鏡を胆管または膵管へ簡単に挿入できるようにする。管に入ることは、一般に、十二指腸に対して管が鋭い角度をなしている、すなわち管の軸が十二指腸の軸に対して90度であることに起因して、非常に困難である。一時的なステントは、スコープを管の開口部に直接嵌合させるのではなく、ステントの開口部に嵌合させて、スコープが管の中へ前進するのを安定化させる。
【0083】
上述の管鏡検査法では、橋渡しする狭窄部がなく、膨大部/オッディ括約筋があるにすぎないため、短いステントが使用され得る。ステントの直径は、超小型の胃鏡(例えば、直径6mm)の挿入を可能にするために、8mmであり得る。ステントの挿入後、十二指腸鏡が取り除かれて、「経鼻的」胃鏡と交換され得る。このスコープは、標準的な胃鏡よりも長いが、経口的に挿入される。この手法は、「経口的直接胆道鏡検査法(direct per oral cholangioscopy)」と呼ばれ得る。管鏡検査法が実施された直後に、ステントは取り除かれ得る。
【0084】
短いERCPステントはまた、「オッディ括約筋運動異常」の治療に好適であり得る。これは、括約筋において痙攣が繰り返され、胆管の圧力を増加させ、その結果疼痛を引き起こす状態である。括約筋切開後でも、膨大部開口部は、瘢痕を残し、かつ胆汁の流れを妨害し、疼痛の原因となり続ける。
【0085】
上記は、本開示の例示的な実施形態の完全な説明であるが、様々な代替形態、変更形態、および等価物を使用し得る。それゆえ、上述の説明は、本開示の範囲を限定するものであるとみなされるべきではなく、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲で定義され、および後に続くいずれかの出願の特許請求の範囲も、この優先権を主張する。
【0086】
本明細書の特徴または要素が、別の特徴または要素「上に」あると言及されるとき、他の特徴または要素上に直接存在することができるか、または介在する特徴および/または要素が存在してもよい。対照的に、特徴または要素が、別の特徴または要素の「直接上に」あると言及されるとき、介在する特徴または要素は存在しない。特徴または要素が、別の特徴または要素に「接続される」、「取り付けられる」または「結合される」と言及されるとき、他の特徴または要素に直接接続できる、取り付けることができる、または結合できるか、または介在する特徴または要素が存在し得ることも理解されたい。対照的に、特徴または要素が、別の特徴または要素に「直接接続される」、「直接取り付けられる」または「直接結合される」と言及されるとき、介在する特徴または要素は存在しない。一実施形態に関して説明または図示したが、そのように説明または図示した特徴および要素は、他の実施形態にも適用できる。当業者には、「隣接する」別の特徴に配置される構造または特徴への言及は、隣接する特徴の上または下に重なる部分を有し得ることも認識されたい。
【0087】
本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態を説明するためだけのものにすぎず、本発明を限定するものではない。例えば、本明細書では、単数形「1つの」および「その」は、文脈上明白に他の意味を示す場合を除いて、複数形も含むものとする。本明細書で使用されるとき、用語「含む」は、記載された特徴、ステップ、動作、要素、および/または構成要素が存在することを特定するが、1つ以上の他の特徴、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を除外しないことをさらに理解されたい。本明細書では、用語「および/または」は、関連のリストした項目の1つ以上のあらゆる組み合わせを含み、かつ「/」と省略され得る。
【0088】
空間的に相対的な用語、例えば「下側」、「下」、「下方」、「上」、「上方」などは、本明細書では、1つの要素または特徴の、図面に示すような別の1つまたは複数の要素または1つまたは複数の特徴との関係性を説明するために、説明を容易にするために使用され得る。空間的に相対的な用語は、図面に示される向きに加えて、使用または動作中の装置の異なる向きを含むものとすることが理解される。例えば、図面の装置が逆にされる場合、他の要素または特徴の「下側」または「真下」にあると説明される要素は、他の要素または特徴の「上」にある向きにされる。それゆえ、例示的な用語「下側」は、上および下の両方の向きを含み得る。装置は、他の向きにされてもよく(90度または他の向きに回転される)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述語は、それに従って解釈される。同様に、用語「上方に」、「下方に」、「垂直」、「水平」などは、本明細書では、特に他の意味を示す場合を除いて、説明のためのものにすぎない。
【0089】
用語「第1」および「第2」は、本明細書では、様々な特徴/要素を説明するために使用され得るが、これらの特徴/要素は、文脈上他の意味を示す場合を除いて、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、1つの特徴/要素を別の特徴/要素から区別するために使用され得る。それゆえ、本発明の教示から逸脱することなく、下記で説明する第1の特徴/要素は、第2の特徴/要素と称されることができ、同様に、下記で説明する第2の特徴/要素は、第1の特徴/要素と称されることができる。
【0090】
本明細書では、例において使用されるときを含み、本明細書および特許請求の範囲において、および明白に他の規定がなければ、全ての数字は、語「約」または「およそ」が、それらの用語が明白に出現しない場合でも、前に付くかのように読まれ得る。語句「約」または「およそ」は、説明した値および/または位置が、値および/または位置の合理的な予想範囲内にあることを示すために、大きさおよび/または位置を説明するときに使用され得る。例えば、数値は、述べた値(または値の範囲)の±0.1%、述べた値(または値の範囲)の±1%、述べた値(または値の範囲)の±2%、述べた値(または値の範囲)の±5%、述べた値(または値の範囲)の±10%などの値を有し得る。本明細書で引用するいずれの数の範囲も、本明細書に含まれる全ての部分範囲を含むものとする。
【0091】
上記では、様々な説明に役立つ実施形態が説明されたが、特許請求の範囲で説明されるような本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態に対する多くの変更形態のいずれをもなし得る。例えば、様々な説明の方法ステップが実施される順序は、代替的な実施形態では変更されることが多く、他の代替的な実施形態では、1つ以上の方法ステップが完全に省略され得る。様々な装置およびシステムの実施形態の任意選択的な特徴は、いくつかの実施形態に含まれ得るが、他の実施形態には含まれないことがあり得る。それゆえ、上記の説明は、主に、例示のために提供され、特許請求の範囲に説明されるような本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0092】
本明細書に含まれる例および説明図は、限定ではなく説明のために、主題が実施され得る具体的な実施形態を示す。上述の通り、他の実施形態が用いられおよびそれから生じてもよく、本開示の範囲から逸脱せずに、構造的なおよび論理的な置換や変更がなされ得る。発明の主題のそのような実施形態は、本明細書では、単に便宜上、個別にまたはまとめて、用語「発明」と言及され、これは本出願の範囲を、2つ以上が実際に開示される場合、いずれかの単一の発明または発明概念に自発的に限定することを意図しない。それゆえ、具体的な実施形態を図示しかつ本明細書で説明したが、同じ目的を達成するために計算された任意の配置構成を、示されている具体的な実施形態の代わりにしてもよい。本開示は、様々な実施形態のあらゆる適合形態または変形形態を網羅するものである。上述の実施形態の組み合わせ、および具体的には本明細書で説明されない他の実施形態は、上記の説明を検討することにより、当業者に明らかとなる。