(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019460
(43)【公開日】2024-02-09
(54)【発明の名称】C型肝炎ウイルスに対するヌクレオシド修飾mRNA-脂質ナノ粒子系統ワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/29 20060101AFI20240202BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240202BHJP
A61K 31/7115 20060101ALI20240202BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20240202BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240202BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240202BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240202BHJP
C12N 15/51 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
A61K39/29
A61K39/39
A61K31/7115
A61K47/69
A61K48/00
A61P31/14
A61P37/04
C12N15/51 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023207892
(22)【出願日】2023-12-08
(62)【分割の表示】P 2019558722の分割
【原出願日】2018-04-27
(31)【優先権主張番号】62/490,828
(32)【優先日】2017-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(71)【出願人】
【識別番号】398076227
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】501019778
【氏名又は名称】バンダービルト ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ドリュー ワイスマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ エム.ショウ
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン アール.ベイリー
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート シー.レイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ クロウ,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー フライヤク
(57)【要約】
【課題】本発明は、対象におけるC型肝炎ウイルス(HCV)に対する適応免疫応答を誘導するための組成物及び方法に関する。
【解決手段】いくつかの実施形態では、本発明は、HCV抗原、アジュバント、又はそれらの組み合わせをコードするヌクレオシド修飾核酸分子を含む組成物を提供する。例えば、幾つかの実施形態では、本組成物は、HCV抗原、アジュバント、又はそれらの組み合わせをコードするヌクレオシド修飾核酸分子を含むワクチンを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのHCV抗原をコードする少なくとも1つの単離ヌクレオシド修飾RNAを含む、対象におけるC型肝炎ウイルス(HCV)に対する免疫応答を誘導するための組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの単離ヌクレオシド修飾RNAはプソイドウリジンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの単離ヌクレオシド修飾RNAは、1-メチル-プソイドウリジンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの単離ヌクレオシド修飾RNAは、精製ヌクレオシド修飾RNAである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのHCV抗原は、エンベロープタンパク質E1(E1)、エンベロープタンパク質E2(E2)、及びコアタンパク質(C)からなる群より選択される少なくとも1つのHCV抗原を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのHCV抗原は、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つのヌクレオシド修飾RNAは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号37、配列番号38、及び配列番号39からなる群より選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むDNA配列よりコードされるヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、アジュバントを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのヌクレオシド修飾RNAは、少なくとも1つのアジュバントを更にコードする、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
脂質ナノ粒子(LNP)を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つのヌクレオシド修飾RNAは、前記LNP内にカプセル化されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物はワクチンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
対象に、少なくとも1つのHCV抗原をコードする少なくとも1つのヌクレオシド修飾RNAを含む有効量の組成物を投与することを含む、対象におけるC型肝炎ウイルス(HCV)に対する適応免疫応答を誘導するための方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの単離ヌクレオシド修飾RNAはプソイドウリジンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの単離ヌクレオシド修飾RNAは、1-メチル-プソイドウリジンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの単離ヌクレオシド修飾RNAは、精製ヌクレオシド修飾RNAである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのHCV抗原は、エンベロープタンパク質E1(E1)、エンベロープタンパク質E2(E2)、及びコアタンパク質(C)からなる群より選択される少なくとも1つのHCV抗原を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのHCV抗原は、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのヌクレオシド修飾RNAは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号37、配列番号38、及び配列番号39からなる群より選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むDNA配列よりコードされるヌクレオチド配列を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、前記対象に有効量のアジュバントを投与することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つのヌクレオシド修飾RNAは、少なくとも1つのアジュバントを更にコードする、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つのヌクレオシド修飾RNAは、前記LNP内にカプセル化されている、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物はワクチンである、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物は、皮内、皮下、吸入、鼻腔内、及び筋肉内からなる群より選択される送達経路により投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項26】
前記方法は、前記組成物の単回投与を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項27】
前記方法は、前記組成物の複数回投与を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項28】
前記方法は、前記対象におけるHCV関連の感染、疾患、又は障害を治療又は予防する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に援用される2017年4月27日に出願された米国仮出願第62/490,828号の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究又は開発に関する声明
本発明は、国立衛生研究所によって授与されたNIH U19 AI088791、K08 AI102761、P30 AI094189、RO1-A1050484、及びRO1-A1084860の下で政府の支援を受けて行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
C型肝炎ウイルス(HCV)感染は、米国だけでも多大な臨床的負担を負い、世界中で1億6千万人以上、460万人のアメリカ人に影響を及ぼしており、北米における肝移植の主な原因である。未治療の慢性HCV感染は、肝硬変、門脈圧亢進症、肝細胞癌を引き起こす可能性がある。インターフェロンベースの治療を含めた従来の治療法は、成功率が低く、重大な副作用があった。新世代の経口抗ウイルス療法の出現により、有効性と忍容性が大幅に改善されるものの、疾患の負担を管理するために疾患の予防は依然として重要な戦略である。これらの理由から、予防的HCVワクチンを開発すること、及び、治療的ワクチンが慢性感染患者の治療に役立つかどうかを判断することが急務である。
【0004】
現在の標準的な治療法には、直接作用型抗ウイルス剤(DAA)、ウイルスNS3/4Aプロテアーゼ、NS5A又はNS5Bポリメラーゼの薬理学的阻害剤の組み合わせによる治療が含まれ、この全体的な治療効果は90%超である。このような進歩があるものの、これらの治療に対するウイルス耐性が臨床的に観察されており、治療の失敗に関連している。世界中にいる感染者のほとんどは自身の感染状態を認知しておらず、他者に感染し続ける可能性があり、また、治療しても治癒後に再感染することは予防されない。これらの新しい治療法の費用が高額であり、HCV感染者は多数いることは、先進国でさえ医療システムで全ての患者を治療する余裕がないことを意味する。このような制限事項は、発展途上国ではさらに顕著である。したがって、急性又は慢性のHCV感染を防ぐためのワクチンの開発が不可欠である。
【0005】
したがって、当技術分野では、改善されたC型肝炎ウイルス(HCV)ワクチンが必要である。本発明はこの必要性に対処するものである。
【0006】
本発明の実施形態の詳細は、添付の図面と併せて読むとよりよく理解されるであろう。本発明は、図面に示される実施形態の正確な配置及び手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】
図1Aは、実施例の結果を示す。
図1Aは、感染から経時的なHCV E1E2の変異系統を分析する実験の結果と、HEPC3と変異抗体を結合するこれらのタンパク質の能力を示す。mAbsの連続希釈液の自己E1E2タンパク質への結合の曲線下面積(AUC)が示されている。
【
図1B】
図1Bは、実施例の結果を示す。
図1Bは、mAbsの各E1E2クローンへの結合の階層によって決定される、E1E2クローン間の表現型の関係を示す樹状図を示す。すべてのmAbの各E1E2クローンに対する結合のランキングは、スピアマン相関(r)によってペアワイズ方式で比較され、これらのr値をクラスター関連E1E2クローンに使用した。赤の数字は、クラスターの強度を示すほぼバイアスなし(Approximately Unbiased:AU)の値であり、95を超える値が高度に有意と見なさる。青色のクローンは、各表現型クラスターを表す。
【0008】
【
図2A】
図2Aは、追加実験の結果を示す。
図2Aは、感染から経時的なHCV E1E2の変異系統を分析する追加実験の結果と、HEPC3と変異抗体を結合するこれらのタンパク質の能力を示す。mAbsの連続希釈液の自己E1E2タンパク質への結合の曲線下面積(AUC)が示されている。
【
図2B】
図2Bは、追加実験の結果を示す。
図2Bは、mAbsの各E1E2クローンへの結合の階層によって決定される、E1E2クローン間の表現型の関係を示す樹状図を示す。すべてのmAbの各E1E2クローンに対する結合のランキングは、スピアマン相関(r)によってペアワイズ方式で比較され、これらのr値をクラスター関連E1E2クローンに使用した。赤の数字は、クラスターの強度を示すほぼバイアスなし(Approximately Unbiased:AU)の値であり、95を超える値が高度に有意と見なさる。青色のクローンは、各表現型クラスターを表す。
【0009】
【
図3A】
図3Aは、患者117由来のE1E2クローンの系統樹を示す。
【0010】
【
図4】
図4は、Lucコントロールとともに、HCVA及びB mRNAを用いた293T細胞のトランスフェクション後にすべてのタンパク質が存在することを実証する例示的な実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、対象におけるC型肝炎ウイルス(HCV)に対する免疫応答を誘導するための組成物及び方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、HCV抗原をコードする少なくとも1つのヌクレオシド修飾RNAを含む組成物を提供する。例えば、一実施形態では、少なくとも1つのHCV抗原をコードする少なくとも1つのヌクレオシド修飾RNAを含むワクチンを含み、ここで、ワクチンは、対象における少なくとも1つのHCV抗原に対する免疫応答を誘導し、それにより対象におけるC型肝炎ウイルス又はC型肝炎ウイルスに関連の病理に対する免疫応答を誘導する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのヌクレオシド修飾RNAは、HCVのコアタンパク質、HCVのエンベロープE1タンパク質、HCVのエンベロープE2タンパク質、又はそれらの組み合わせをコードする。一実施形態では、ヌクレオシド修飾RNAは、コアとエンベロープ1及び2タンパク質(C-E1-E2)を含む単一タンパク質としてmRNAにおいてコードされるエンベロープタンパク質の配列系統(sequential lineage)をコードする。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのヌクレオシド修飾RNAは、脂質ナノ粒子(LNP)内にカプセル化されている。
【0012】
定義
別に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0013】
本書で使用されているように、以下の各用語は、このセクションにおいて関連する意味を有する。
【0014】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、文法上の冠詞の対象物の1つ又は複数(つまり、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」とは、1つの要素又は複数の要素を意味する。
【0015】
本明細書で使用される「約」とは、量、期間などの測定可能な値を指す場合、その範囲内で開示された方法を実行するのに適しているため、記載値から±20%、±10%、±5%、±1%、又は±0.1の変動を包含することを意味する。
【0016】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然源又は組換え源に由来する無傷の免疫グロブリンであってもよく、無傷の免疫グロブリンの免疫反応性部分であってもよい。抗体は通常、免疫グロブリン分子の四量体である。本発明の抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、Fab及びF(ab)2、ならびに単鎖抗体及びヒト化抗体を含むさまざまな形態で存在してもよい(Harlow et al., 1999, In: Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY; Harlow et al., 1989, In: Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York; Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。
【0017】
「抗体断片」という用語は、無傷の抗体の一部を指し、無傷の抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFv断片、線状抗体、scFv抗体、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書で使用する「抗体重鎖」とは、天然に存在する立体構造の全抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖のうちの大きい方を指す。
【0019】
本明細書で使用する「抗体軽鎖」とは、天然に存在する立体構造の全抗体分子に存在する2種類のポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。κ及びλ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0020】
本明細書で使用される「合成抗体」という用語は、組換えDNA技術を使用して生成される抗体を意味する。また、この用語は、抗体をコードするDNA分子の合成によって生成され、そのDNA分子が抗体を特定する抗体タンパク質又はアミノ酸配列を発現する抗体であって、ここで、DNA又はアミノ酸配列が当技術分野で利用可能かつ周知の合成DNA又はアミノ酸配列技術を使用して得られるものを意味すると解釈されるべきである。さらに、この用語は、抗体をコードするRNA分子の合成によって生成された抗体を意味すると解釈されるべきである。RNA分子は、抗体タンパク質、又は抗体を特定するアミノ酸配列を発現し、ここでRNAは、(合成又はクローン化)DNAの転写、RNAの合成、又は当技術分野で利用可能でよく知られている他の技術によって取得される。
【0021】
本明細書で使用される「抗原」又は「Ag」という用語は、適応免疫応答を引き起こす分子として定義される。この免疫応答には、抗体産生又は特定の免疫原性細胞の活性化のいずれか、あるいははその両方が含まれてもよい。当業者は、実質的にすべてのタンパク質又はペプチドを含むマクロ分子が抗原として機能しうることを理解するであろう。さらに、抗原は、組換え又はゲノムDNA又はRNAに由来しうる。当業者は、適応免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列又は部分的ヌクレオチド配列を含むDNA又はRNAは、本明細書で使用される用語が定義する「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者は、抗原は必ずしも遺伝子の全長ヌクレオチド配列のみによってコードされる必要がないことを理解するであろう。本発明は、複数の遺伝子の部分的ヌクレオチド配列の使用を含むが、これらに限定されず、これらのヌクレオチド配列は、所望の免疫応答を誘発するために様々な組み合わせで配置されることは容易に明らかである。さらに、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要は全くないことを理解するであろう。抗原は、合成して生成できること、又は生物学的試料から誘導できることは容易に明らかである。このような生物学的試料として、組織試料、腫瘍試料、細胞、又は体液が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書で使用される「アジュバント」という用語は、抗原特異的適応免疫応答を増強する分子として定義される。
【0023】
「疾患」とは、動物がホメオスタシスを維持できないという動物の健康状態であり、その疾患が改善されない場合、その動物の健康は悪化し続けるものを指す。対照的に、動物の「障害」とは、動物がホメオスタシスを維持できる健康状態であるが、その動物の健康状態は障害がない場合よりも良好ではないものを指す。障害を放置しても、必ずしも動物の健康状態がさらに低下するわけではない。
【0024】
本明細書で使用される「有効量」は、治療的又は予防的利益を提供する量を意味する。
【0025】
「コードする(encoding)」とは、遺伝子、cDNA、mRNAなどのポリヌクレオチドにおける、規定されたヌクレオチドの配列(つまり、rRNA、tRNA及びmRNA)又は規定されたアミノ酸の配列のいずれかをもって生物学的プロセス及びそれから生じる生物学的特性におけるポリマー及び高分子の合成のための鋳型として機能するヌクレオチドの特定の配列に固有の特性を指す。したがって、ある遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が細胞又は他の生物学的システムでタンパク質を生成する場合、その遺伝子はタンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常配列リストに記載されているコーディング鎖、及び遺伝子又はcDNAの転写の鋳型として使用される非コーディング鎖のいずれも、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又はその他の産物をコードすると言える。
【0026】
「発現ベクター」とは、発現されるべきヌクレオチド配列に作動可能に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現に十分なシス作用エレメント、及び発現のための他のエレメントを含む発現ベクターは、宿主細胞により又はin vitro発現系において供給できる。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドを組み込むコスミド、プラスミド(例えば、裸又はリポソームに含まれる)、RNA、及びウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)など、当技術分野で知られているものすべてのものが含まれる。
【0027】
「相同」とは、2つのポリペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性又は配列同一性を指す。比較対象の2つの配列の両方における位置に同じ塩基又はアミノ酸モノマーサブユニットがある場合、例えば、2つのDNA分子のそれぞれの位置にアデニンがある場合、これら分子はその位置において相同である。2つの配列間の相同性の割合は、2つの配列が一致又は相同する位置の数を、比較対象の全体の位置の数で除算し、100を掛けた値である。例えば、2つの配列の10個のうち6個の位置が一致又は騒動する場合、2つの配列は60%相同である。例として、DNA配列ATTGCCとTATGGCは50%の相同性を有する。一般的に、2つの配列を並べて最大の相同性が得られるように比較を行う。
【0028】
「免疫原」とは、体内に導入され免疫応答を生成する任意の物質を指す。その物質は、タンパク質などの物理的分子でありえる、又はDNA、mRNA、ウイルスなどのベクターによってコードされうる。
【0029】
本明細書で使用される「免疫応答」という用語は、非限定的な例として、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及び/又は抗原提示細胞(APC)におけるエフェクター機能の活性化及び/又は誘導を伴うプロセスを意味する。したがって、当業者に理解されるように、免疫応答には、ヘルパーT細胞又は細胞傷害性T細胞の活性又は応答、抗体の産生、抗原提示細胞の活性又は浸潤、マクロファージの活性又は浸潤、好中球の活性又は浸潤などの検出可能な任意の抗原特異的活性化及び/又は誘導が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
「単離」とは、自然状態から変更又は取り出さされることを意味する。例えば、生きている動物に自然に存在する核酸又はペプチドは「単離」されていないが、その自然状態の共存する物質から部分的又は完全に分離された同じ核酸又はペプチドは「単離」されている。単離核酸又はタンパク質は、実質的に精製された形態で存在するか、又は、例えば、宿主細胞などの非自然環境に存在しうる。
【0031】
本発明の文脈において、一般的に存在するヌクレオシド(N-グリコシド結合を介してリボース又はデオキシリボース糖に結合した核酸塩基)には以下の略語が使用される:「A」はアデノシンを指し、「C」はシチジンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、「U」はウリジンを指す。
【0032】
特に指定しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、同じアミノ酸配列をコードする互いの変性バージョン(degenerate versions)すべてのヌクレオチド配列が含まれる。また、タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列という用語には、そのタンパク質をコードするヌクレオチド配列がいくつかのバージョンでイントロンを含むことができる程度にイントロンが含まれてもよい。
【0033】
本明細書で使用される「調節する(modulating)」という用語は、対象における応答のレベルが、治療又は化合物の非存在下での対象の応答のレベルと比較して、及び/又は他の点では同一であるが未治療の対象の応答レベルと比較して、検出可能に増加又は減少させることを意味する。この用語は、本来のシグナル又は応答を乱す及び/又は影響を与えることにより、ヒトなどの対象において有益な治療的応答をもたらすことを包含する。
【0034】
特に指定しない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、同じアミノ酸配列をコードする互いの変性バージョン(degenerate versions)すべてのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列には、イントロンが含まれてもよい。さらに、ヌクレオチド配列には、細胞内の翻訳機構によって翻訳可能な修飾ヌクレオシドが含まれてもよい。例示的な修飾ヌクレオシドは、本明細書の各所に記載されている。例えば、ウリジンの一部又はすべてがプソイドウリジン、1-メチルプソイドウリジン、又は他の修飾ヌクレオシド(本明細書の各所に記載されているものなど)で置換されたmRNAが挙げられる。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列には、一部又はすべてのシトジン(cytodines)がメチル化シチジン又は他の修飾ヌクレオシド(本明細書の各所に記載されているものなど)で置換された配列が含まれてもよい。
【0035】
「作動可能に連結された」という用語は、調節配列と異種核酸配列との間が機能的に連結すること指し、これにより後者の発現がもたらされる。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係にあるとき、第1の核酸配列は作動可能に第2の核酸配列と連結されている。例えば、プロモーターがコーディング配列の転写又は発現に影響を与える場合、そのプロモーターはコーディング配列に作動可能に連結されている。一般的に、作動可能性に連結されたDNA又はRNA配列は隣接(contiguous)しており、必要に応じて同じリーディングフレーム内で2つのタンパク質コーディング領域を結合する。
【0036】
「患者」、「対象」、「個体」などの用語は、本明細書で互換可能に使用され、本明細書に記載の方法に適した任意の動物、又はin vitro又はin situのその細胞を指す。いくつかの非限定的な実施形態では、患者、対象又は個体はヒトである。
【0037】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチド鎖として定義される。さらに、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書で使用される核酸及びポリヌクレオチドは互換可能である。当業者は、核酸がポリヌクレオチドであり、モノマー「ヌクレオチド」に加水分解できるという一般的な知識を有している。モノマーヌクレオチドは加水分解されてヌクレオシドになりうる。本明細書で使用されるポリヌクレオチドには、組換え手段、すなわち、通常のクローニング技術及びPCR(商標)などや合成手段を使用した組換えライブラリー又は細胞ゲノムからの核酸配列のクローニングを含むがこれらに限定されない、当技術分野で利用可能な任意の手段によって得られるすべての核酸配列が含まれるがこれらに限定されない。
【0038】
いくつかの例では、本発明のポリヌクレオチド又は核酸は「ヌクレオシド修飾核酸」であり、これは、少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを含む核酸を指す。「修飾ヌクレオシド」とは、修飾されたヌクレオシドを指す。例えば、RNAでは100種類を超えるころなるヌクレオシド修飾が確認されている(Rozenski, et al., 1999, The RNA Modification Database: 1999 update. Nucl Acids Res 27: 196-197)。
【0039】
いくつかの実施形態では、「プソイドウリジン」は、m1acp3Ψ(1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン)を指す。別の一実施形態では、この用語はm1Ψ(1-メチルプソイドウリジン)を指す。別の一実施形態では、この用語はΨm(2'-O-メチルプソイドウリジンを指す。別の一実施形態では、この用語はm5D(5-メチルジヒドロウリジン)を指す。別の一実施形態では、この用語はm3Ψ(3-メチルプソイドウリジン)を指す。別の一実施形態では、この用語はそれ以上修飾されていないプソイドウリジン部分を指す。別の一実施形態では、この用語は、上記のプソイドウリジンのいずれかのモノホスフェート、ジホスフェート、又はトリホスフェートを指す。別の一実施形態では、この用語は、当技術分野で知られている他のプソイドウリジンを指す。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0040】
本明細書で使用される「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は互換可能に使用され、ペプチド結合により共有結合したアミノ酸残基からなる化合物を指す。タンパク質又はペプチドには、少なくとも2つのアミノ酸が含まれている必要があり、タンパク質又はペプチドの配列を構成できるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドには、ペプチド結合によって互いに結合された2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質が含まれる。本明細書で使用するこの用語は、当技術分野で一般にペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとも称される短鎖、及び当技術分野で一般にタンパク質と称される長鎖の両方を指し、多くのタイプが存在する。「ポリペプチド」には、例えば、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、修飾ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質などが含まれる。ポリペプチドには、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0041】
本明細書で使用される「プロモーター」という用語は、ポリヌクレオチド配列の特定の転写を開始するために必要な細胞の合成機構又は導入された合成機構によって認識されるDNA配列として定義される。1つの非限定的な例として、バクテリオファージRNAポリメラーゼにより認識され、インビトロ転写によりmRNAを生成するために使用されるプロモーターが挙げられる。
【0042】
抗体に関して本明細書で使用される「特異的に結合する」という用語は、試料における特定の抗原を認識するが、他の分子を実質的に認識又は結合しない抗体を意味する。例えば、ある1つの種の抗原に特異的に結合する抗体は、他の1又は複数種の抗原にも結合する場合がある。しかし、このような異種間反応性それ自体が抗体の特異性の分類を変えることはない。別の例では、ある抗原に特異的に結合する抗体は、その抗原の異なる対立遺伝子型にも結合し得る。ただし、このような交差反応性それ自体が、抗体の特異性の分類を変えることはない。いくつかの例では、「特異的結合」又は「特異的な結合」という用語は、抗体、タンパク質、又はペプチドと第2の化学種との相互作用について、その相互作用が化学種の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在によるものであることを意味するよう、使用されることがある。例えば、抗体は一般的にタンパク質ではなく特定のタンパク質構造を認識して結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識された「A」と抗体を含む反応においてエピトープA(又は遊離の標識されていないA)を含む分子の存在により、抗体に結合する標識Aの量が減少する。
【0043】
本明細書で使用される「治療的(therapeutic)」という用語は、治療(treatment)及び/又は予防を意味する。治療的効果は、疾患又は障害の少なくとも1つの兆候又は症状の抑制、縮小、寛解、予防、又は根絶によって得られる。
【0044】
「治療的有効量」という用語は、研究者、獣医、医師その他の臨床医が求めている組織、システム、又は対象の生物学的又は医学的反応を引き起こす対象化合物の量を指す。「治療的有効量」という用語には、投与されたときに、治療される障害又は疾患の1つ又は複数の徴候又は症状の発症を予防するか、ある程度緩和するのに十分な化合物の量が含まれる。治療的有効量は、化合物、治療対象の疾患及びその重症度、年齢、体重などによって異なる。
【0045】
本明細書で使用される用語で疾患を「治療する」とは、対象が経験する疾患又は障害の少なくとも1つの兆候又は症状の頻度又は重症度を軽減することを意味する。
【0046】
本明細書で使用される「トランスフェクトされた(transfected)」又は「形質転換された(transformed)」又は「形質導入された(transduced)」という用語は、外因性の核酸が宿主細胞に移入又は導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」又は「形質転換された」又は「形質導入された」細胞は、外因性の核酸がトランスフェクト、形質転換、又は形質導入された細胞である。細胞には、初代の対象細胞とその子孫が含まれる。
【0047】
本明細書で使用される「転写制御下」又は「作動可能に連結された」という用語は、プロモーターがポリヌクレオチドに対してRNAポリメラーゼによる転写の開始及びポリヌクレオチドの発現を制御するのに正しい位置及び方向にあることを意味する。
【0048】
「ベクター」は、単離核酸を含み、その単離核酸を細胞の内部に送達するために使用できる物質の複合体である。線状ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性化合物に結合するポリヌクレオチド、プラスミド、及びウイルスを含むが、これらに限定されない多数のベクターが当技術分野で知られている。したがって、「ベクター」という用語には、自律的に複製するプラスミド又はウイルスが含まれる。また、この用語は、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなどのような、細胞への核酸の移動を促進する非プラスミド及び非ウイルス化合物も含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例には、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが含まれる、これらに限定されない。
【0049】
範囲:本明細書の開示事項では、本発明の様々な態様を範囲による形式で表現することがある。範囲による形式での説明は単に便宜上及び簡便に表現するためのものであり、本発明の範囲に対し柔軟性なしに制限するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲についての記載事項は、その範囲内で可能なすべての部分的な範囲及びその範囲内にある個々の数値を具体的に開示したとみなされるべきである。例えば、1~6といった範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分的な範囲、並びに例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6等のその範囲内にある個々の数値を具体的に開示していると見なされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく当てはまる。
【0050】
説明
本発明は、対象におけるHCVに対する免疫応答を誘導するための組成物及び方法に関する。いくつかの実施形態では、本発明は、対象における予防的又は治療的免疫応答を誘導するための免疫原として使用できるHCVの配列系統抗原に関する。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載の1つ又は複数のHCV抗原を含むタンパク質又はペプチドを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載の1つ又は複数のHCV抗原を発現する、例えば不活化ウイルス又は弱毒化ウイルスを含めたウイルスを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載の1つ又は複数のHCV抗原をコードする、例えばDNA、cDNA、RNAなどを含めた核酸分子を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、本発明は、HCV抗原をコードする核酸分子を含む組成物を提供し、ここで、HCV抗原は、対象におけるHCVに対する免疫応答を誘導する。いくつかの実施形態では、誘導される免疫応答は適応免疫応答である。例えば、幾つかの実施形態では、組成物は、HCV抗原をコードする核酸分子を含むワクチンを含む。いくつかの実施形態では、HCV抗原は、予防的抗体の発現を誘導する。いくつかの実施形態では、HCV抗原は、アジュバント機能を提供する。
【0052】
一実施形態では、本発明の組成物は、インビトロ転写(in vitro transcribed: IVT)RNAを含む。例えば、幾つかの実施形態では、本発明の組成物は、HCV抗原をコードするIVT RNAを含み、ここで、HCV抗原は、適応免疫応答を誘導する。いくつかの実施形態では、HCV抗原は、エンベロープ(E1及び/又はE2)タンパク質又はHCVコアタンパク質(C)、あるいはそれらの断片又はバリアントの少なくとも1つである。
【0053】
いくつかの実施形態では、HCV抗原は、急速に変異するHCVウイルスに対する免疫応答を開始及び成熟させることができる系統免疫原に基づく。いくつかの実施形態では、HCV抗原は、HCVゲノムが免疫監視を回避するように変異しても、HCVのゲノム内に維持されるように選択されたものである。
【0054】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物の抗原をコードする核酸は、ヌクレオシド修飾RNAである。本発明は、部分的に、HCV抗原をコードするヌクレオシド修飾RNAがHCVに対するロバストで恒久的な免疫応答を誘導できるという発見に基づく。さらに、HCV抗原をコードするヌクレオシド修飾RNAは、抗原特異的抗体産生を誘導する。さらに、HCV抗原をコードするヌクレオシド修飾RNAは、予防的T細胞応答を誘導する。ヌクレオシド修飾RNAは、現在のHCVワクチン戦略に匹敵するかそれより優れた適応免疫応答を誘導できる。
【0055】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物の抗原をコードする核酸は、精製ヌクレオシド修飾RNAである。例えば、幾つかの実施形態では、組成物は二本鎖コンタミ物質を含まないように精製されている。
【0056】
いくつかの実施形態では、組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)を含む。例えば、一実施形態では、組成物は、LNP内にカプセル化されたHCV抗原をコードする核酸分子を含む。いくつかの場合では、LNPは核酸分子の細胞への取り込みを促進する。
【0057】
いくつかの実施形態では、組成物はアジュバントを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、アジュバントをコードする核酸分子を含む。例えば、一実施形態では、組成物は、アジュバントをコードするヌクレオシド修飾RNAを含む。一実施形態では、組成物は、HCV抗原及びアジュバントをコードするヌクレオシド修飾RNAを含む。一実施形態では、組成物は、HCV抗原をコードする第1のヌクレオシド修飾RNA、及びアジュバントをコードする第2のヌクレオシド修飾RNAを含む。一実施形態では、組成物は、アジュバント及びLNPをコードするヌクレオシド修飾RNAを含み、ここでLNPはアジュバント活性を有する。
【0058】
一実施形態では、本発明は、対象におけるHCVに対する免疫応答を誘導するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、対象に、HCV抗原、アジュバント、又はそれらの組み合わせをコードする1つ又は複数のヌクレオシド修飾RNAを含む組成物を投与することを含む。
【0059】
一実施形態では、方法は、対象に、皮内投与又は筋肉内投与といった組成物の投与を含む。いくつかの実施形態では、方法は、対象への複数回用量の投与を含む。別の一実施形態では、方法は、対象への組成物の単回用量の投与を含み、ここで、単回用量は適応免疫応答を誘導するのに有効である。一実施形態では、方法は、持続的又は長期の免疫応答を提供する。
【0060】
ワクチン
一実施形態では、本発明は、対象におけるHCVに対する免疫応答を誘導するための免疫原性組成物を提供する。例えば、一実施形態では、免疫原性組成物は、ワクチンである。組成物がワクチンとして有用であるためには、組成物は、細胞、組織、又は哺乳動物(例えば、ヒト)のHCV抗原に対する免疫応答を誘導する必要がある。本明細書で使用される「免疫原性組成物」は、抗原(例えば、ペプチド又はポリペプチド)、抗原をコードする核酸、抗原又は細胞成分を発現又は提示する細胞、抗原又は細胞成分を発現又は提示するウイルス、あるいはそれらの組み合わせを含んでもよい。特定の実施形態では、組成物は、本明細書に記載の任意のペプチド抗原、又はその免疫原性の機能的な等価物、の全部又は一部を含む又はコードする。別の実施形態では、組成物は、追加的な免疫刺激物質又はそのような物質をコードする核酸を含む混合物の形態である。免疫刺激物質としては、追加的な抗原、免疫調節剤、抗原提示細胞、脂質ナノ粒子、又はアジュバントが挙げられるが、それらに限定されない。別の実施形態では、かかる追加的な物質の1つ又は複数は、抗原又は免疫刺激物質に、任意の組み合わせで共有結合している。
【0061】
本発明の文脈において、用語「ワクチン」は、動物へ接種すると免疫応答を誘導する組成物を指す。いくつかの実施形態では、誘導された免疫応答は、予防的免疫を提供する。
【0062】
本発明のワクチンは、核酸及び/又は細胞成分の組成が異なる場合がある。非限定的な例では、HCV抗原をコードする核酸は、アジュバントとともに製剤化されてもよい。もちろん、本明細書に記載される様々な組成物は、追加の構成要素をさらに含んでもよいことが理解されよう。例えば、1つ又は複数のワクチン成分は、脂質、リポソーム、又は脂質ナノ粒子内に含まれてもよい。別の非限定的な例では、ワクチン1つ又は複数のアジュバントを含んでもよい。本発明のワクチン及びその各種成分は、本明細書に記載の方法により、又は本明細書に照らして当業者に知られている任意の方法により、調製及び/又は投与してもよい。
【0063】
様々な実施形態では、HCV抗原の発現による免疫の誘導は、HCV抗原に対する宿主における免疫系の全部又は一部の応答をインビボ又はインビトロで観察することで検出できる。
【0064】
例えば、細胞傷害性Tリンパ球の誘導を検出する方法はよく知られている。生体に入る異物は、抗原提示細胞(APC)の作用によりT細胞及びB細胞に提示される。抗原特異的な方法でAPCにより提示された抗原に応答するT細胞の一部は、抗原による刺激により細胞傷害性T細胞(細胞傷害性Tリンパ球又はCTLとも呼ばれる)に分化する。抗原により刺激されたこれらの細胞が増殖する。本明細書では、このプロセスをT細胞の「活性化」と呼ぶ。したがって、ポリペプチド又はペプチド又はそれらの組み合わせのエピトープによるCTL誘導は、APCによりポリペプチド又はペプチド又はそれらの組み合わせのエピトープをT細胞に提示し、CTLの誘導を検出することにより評価できる。さらに、APCにはB細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、マクロファージ、好酸球、NK細胞を活性化する効果がある。
【0065】
APCとして樹状細胞(DC)を使用してCTLの誘導作用を評価する方法は、当技術分野で周知である。DCは、種々のAPCの中でもロバストなCTL誘導作用を有する代表的なAPCである。本発明の方法では、ポリペプチド又はペプチド又はそれらの組み合わせのエピトープがまずDCによって発現され、次にこのDCがT細胞と接触する。DCとの接触後、目的の細胞に対して細胞毒性効果を有するT細胞が検出されることは、ポリペプチド又はペプチド又はそれらの組み合わせのエピトープが細胞毒性T細胞を誘導する作用を有するということを示す。さらに、誘導された免疫応答は、ELISPOTアッセイのような、抗IFN-γ抗体を使用して視覚化することにより、固定化されたペプチド又はペプチドの組み合わせを担持する抗原提示細胞の存在下でCTLによって生成及び放出されるIFN-γを測定することで検査することもできる。
【0066】
DCとは別に、末梢血単核細胞(PBMC)をAPCとして使用してもよい。CTLの誘導は、GM-CSF及びIL-4の存在下でPBMCを培養することにより強化されると報告されている。同様に、CTLは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)及びIL-7の存在下でPBMCを培養することにより誘導されることが示されている。
【0067】
これらの方法によりCTL誘導作用を有することが確認された抗原は、DC活性化効果及びその後のCTL誘導作用を有する抗原である。さらに、APCによる抗原の提示により細胞毒性を獲得したCTLは、抗原関連障害に対するワクチンとしても使用できる。
【0068】
HCV抗原の発現による免疫の誘導は、HCV抗原に対する抗体産生の誘導を観察することでさらに確認できる。例えば、抗原に対する抗体が、抗原をコードする組成物で免疫化された実験動物で誘導され、抗原関連病理がそれらの抗体によって抑制されると、その組成物は免疫を誘導すると決定される。
【0069】
動物において誘導される抗体応答の特異性には、送達された抗原の数多くの領域へ結合すること、並びに感染を予防するか疾患の重症度を軽減する中和可能な抗体を誘導することが含まれうる。
【0070】
HCV抗原の発現による免疫の誘導は、CD4+T細胞の誘導を観察することでさらに確認できる。CD4+T細胞は標的細胞を溶解することもできるが、主に、CTLや抗体生成を含む、他の種類の免疫応答の誘導に寄与する。CD4+T細胞ヘルプの種類は、Th1、Th2、Th9、Th17、T調節(Treg)、又はT濾胞性ヘルパー(Tfh)細胞として特徴付けることができる。CD4+T細胞の各サブタイプは、特定の種類の免疫応答に寄与する。一実施形態では、組成物は、T濾胞性ヘルパー細胞を選択的に誘導し、強力な抗体反応を促進する。
【0071】
本発明の治療的化合物又は組成物は、疾患又は障害を発症している又はそのリスクがある(もしくは発症しやすい)対象に、予防的(つまり、疾患又は障害を予防するため)又は治療的(つまり、疾患又は障害を治療するため)にに投与してよい。このような対象は、標準的な臨床方法を使用して特定できる。本発明の文脈において、疾患又は障害を予防するか又はその進行を遅延させるような予防的投与は、疾患の明白な臨床症状が現れる前である。医学の分野では、「予防する」という用語には、疾患による死亡率や罹患率の負荷を軽減するあらゆる活動が含まれる。予防は、一次的、二次的、三次的な予防レベルで行うことができる。一次的予防では疾患の発症を回避するが、予防の二次的及び三次的レベルでは、疾患の進行及び症状の発生を予防すること、並びに、機能を回復すること及び疾患関連の合併症を軽減することによって既に罹患した疾患による悪影響を減らすことを目的とした活動を包含する。
【0072】
抗原
本発明は、対象における免疫応答を誘導する組成物を提供する。一実施形態では、組成物は、HCV抗原を含む。一実施形態では、組成物は、HCV抗原、又はその断片もしくはバリアントをコードする核酸配列を含む。例えば、幾つかの実施形態では、組成物は、HCV抗原、又はその断片もしくはバリアントをコードするヌクレオシド修飾RNAを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、HCV抗原、又はその断片もしくはバリアントをコードする精製ヌクレオシド修飾RNAを含む。抗原には、対象における免疫応答を誘導するポリペプチド、ペプチド、タンパク質、ウイルス、又は細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
一実施形態では、抗原が、その抗原したがってHCVに対する免疫応答を誘導するようなHCV関連のポリペプチド又はペプチドを含む。一実施形態では、抗原が、HCVに対する免疫応答を誘導するようなHCV関連のポリペプチド又はペプチドの断片を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、HCV抗原は、HCVエンベロープE1タンパク質、HCVエンベロープE2タンパク質、HCVコア(C)タンパク質又はそれらの断片の少なくとも1つである。
【0075】
いくつかの態様では、コアは、E1及びE2を含む分泌サブウイルス粒子の形成させるために使用される。いくつかの例では、これらの分泌粒子は、B細胞に提示するための良好な形態である。
【0076】
一実施形態では、抗原は、MHCクラスIIからのシグナルペプチド(SP)を含むタンパク質を含む。使用可能な他のシグナルペプチドとしては、IL-2、tPA、マウス及びヒトIgGに由来するシグナル配列、並びに合成最適化シグナル配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
一実施形態では、組成物は、E1-E2をコードする核酸配列を含むヌクレオシド修飾RNAを含み、該核酸配列は、配列番号1~9又は37~39の少なくとも1つを含むDNA配列又はその断片もしくはバリアントによってコードされ、前記核酸配列は、少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを含む。
【0078】
一実施形態では、組成物は、配列番号10~18の少なくとも1つを含むアミノ酸配列、又はその断片もしくはバリアントを含むE1-E2をコードする核酸配列を含むヌクレオシド修飾RNAを含み、前記核酸配列は、少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、組成物はHCVコアタンパク質をコードする核酸配列を含む。HCVコアタンパク質は、任意のHCV単離物のものであってよい。
【0080】
一実施形態では、組成物は、C-E1-E2をコードする核酸配列を含むヌクレオシド修飾RNAを含み、該核酸配列は、配列番号19~27の少なくとも1つ、又はその断片もしくはバリアントを含むDNA配列によってコードされ、前記核酸配列は、少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを含む。
【0081】
一実施形態では、組成物は、配列番号28~36の少なくとも1つ、又はその断片もしくはバリアントを含むアミノ酸配列を含むC-E1-E2をコードする核酸配列を含むヌクレオシド修飾RNAを含み、前記核酸配列は、少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを含む。
【0082】
一実施形態では、組成物は、E1-E2をコードする核酸配列を含むヌクレオシド修飾RNAを含み、該核酸配列は、実施例2、実施例3、又は実施例4において提供されたDNA配列又はその断片もしくはバリアントによってコードされる。
【0083】
一実施形態では、組成物は、E1-E2をコードする核酸配列を含むヌクレオシド修飾RNAを含み、E1-E2のアミノ酸配列は、実施例2、実施例3、又は実施例4において提供されたDNA配列又はその断片もしくはバリアントによってコードされる。
【0084】
HCV抗原は、HCVの任意の種又は株であってもよい。例えば、一実施形態では、HCV抗原は、限定されないものの、1a、1b、1c、1e、1g、1h、1l、2a、2b、2c、2d、2e、2i、2j、2k、2m、2q、2r、3a、3b、3g、3h、3i、3k、4a、4b、4c、4d、4f、4g、4k、4l、4m、4n、4o、4p、4q、4r、4t、4v、4w、5a、6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h、6i、6j、6k、6l、6m、6n、6o、6p、6q、6r、6s、6t、6u、6v、6w、6xa、及び7aを含むHCV株、又はその断片もしくはバリアントのタンパク質又はその断片である。
【0085】
いくつかの実施形態では、HCV抗原は、本明細書に記載のHCV抗原のアミノ酸配列と実質的に相同なアミノ酸配列を含み、元のアミノ酸配列の免疫原性機能を維持する。例えば、幾つかの実施形態では、HCV抗原のアミノ酸配列は、元のアミノ酸配列に対し少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも99.5%の同一性を有する。
【0086】
一実施形態では、HCV抗原は、核酸分子の核酸配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、核酸配列は、DNA、RNA、cDNA、ウイルスDNA、そのバリアント、その断片、又はそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、核酸配列は、修飾核酸配列を含む。例えば、一実施形態では、HCV抗原をコードする核酸配列は、本明細書の各箇所で詳細に説明されているように、ヌクレオシド修飾RNAを含む。いくつかの例では、核酸配列は、ペプチド結合によって抗原に結合されているリンカー配列又はタグ配列をコードする追加の配列を含む。
【0087】
系統免疫原
特定の変異ウイルスに対するBnAbsの単離には、計算的に派生したクローン系統の使用を近年提案されており、ワクチン設計への代替アプローチを提供している。系統に基づくアプローチの3つの一般的な手順が考えられる。1つ目は、モノクローナル抗体を、単一細胞技術を用いて、クローンに関連し抗原特異的な記憶B細胞のセットから取得することである。これは、元来(native)の免疫グロブリン重(VDJ)及び軽(VJ)遺伝子ペアの識別に役立つ。2つ目は、計算的な方法を使用して、変異していない先祖BCR(すなわち、抗原に結合し、広く中和する抗体応答を開始する元来(naive)のB細胞の推定受容体)を推測することである。加えて、クローン系統の開発のための重要な分岐点である可能性のある中間抗体が特定される。最後に、免疫原を、まず非変異BCRに結合して拡大させ、その後に祖先BCRが広く中和する応答を引き起こすように中間抗原を設計することである(Nat Biotechnol. 2012 May 7; 30(5): 423-433. doi: 10.1038/nbt.2197にレビューされている)。
【0088】
アジュバント
一実施形態では、組成物はアジュバントを含む。一実施形態では、組成物は、アジュバントをコードする核酸分子を含む。一実施形態では、アジュバントをコードする核酸分子はIVT RNAである。一実施形態では、アジュバントをコードする核酸分子はヌクレオシド修飾RNAである。
【0089】
例示的なアジュバントとして、それらに限定されないものの、以下が挙げられる:アルファインターフェロン、ガンマインターフェロン、血小板由来成長因子(PDGF)、TNFα、TNFβ、GM-CSF、表皮成長因子(EGF)、皮膚T細胞誘引ケモカイン(CTACK)、上皮胸腺発現ケモカイン(TECK)、粘膜関連上皮ケモカイン(MEC)、IL-12、IL-15、MHC、CD80、CD86。有用なアジュバントとなりうる他の遺伝子として、以下をコードするものが挙げられる:MCP-I、MIP-Ia、MIP-Ip、IL-8、RANTES、L-セレクチン、P-セレクチン、E-セレクチン、CD34、GlyCAM-1、MadCAM-1、LFA-I、VLA-I、Mac-1、pl50.95、PECAM、ICAM-I、ICAM-2、ICAM-3、CD2、LFA-3、M-CSF、G-CSF、IL-4、IL-18の変異型、CD40、CD40L、血管成長因子、線維芽細胞成長因子、IL-7、神経成長因子、血管内皮成長因子、Fas、TNF受容体、Fit、Apo-1、p55、WSL-I、DR3、TRAMP、Apo-3、AIR、LARD、NGRF、DR4、DR5、KILLER、TRAIL-R2、TRICK2、DR6、カスパーゼICE、Fos、c-jun、Sp-I、Ap-I、Ap-2、p38、p65Rel、MyD88、IRAK、TRAF6、IkB、不活性NIK、SAP K、SAP-I、JNK、インターフェロン応答遺伝子、NFkB、Bax、TRAIL、TRAILrec、TRAILrecDRC5、TRAIL-R3、TRAIL-R4、RANK、RANK LIGAND、Ox40、Ox40 LIGAND、NKG2D、MICA、MICB、NKG2A、NKG2B、NKG2C、NKG2E、NKG2F、TAP1、TAP2、抗CTLA4-sc、抗LAG3-Ig、抗TIM3-Ig、及びその機能的断片。
【0090】
いくつかの実施形態では、組成物は脂質ナノ粒子を含み、ここで該脂質ナノ粒子はアジュバントとして機能する。
【0091】
核酸
一実施形態では、本発明はHCV抗原をコードする核酸分子を包含する。一実施形態では、本発明は、ヌクレオシド修飾核酸分子を包含する。一実施形態では、ヌクレオシド修飾核酸分子はHCV抗原をコードする。一実施形態では、ヌクレオシド修飾核酸分子は、1つ又は複数のHCV抗原を含む複数の抗原をコードする。いくつかの実施形態では、ヌクレオシド修飾核酸分子は、HCV抗原に対する適応免疫応答を誘導するHCV抗原をコードする。一実施形態では、本発明はアジュバントをコードするヌクレオシド修飾核酸分子を包含する。
【0092】
核酸分子は、これらに限定されないが、インビトロ転写、化学合成等を含む当技術分野における任意の方法を使用して作製することができる。
【0093】
本明細書に記載のHCV抗原又はアジュバントをコードするヌクレオチド配列は、生じるポリヌクレオチドが本発明によるポリペプチドをコードするなら、代替的に、元のヌクレオチド配列に対し、例えば、1つ又は複数のヌクレオチドのヌクレオチド配列、例えば、置換、挿入及び/又は削除といった配列の変異を含んでもよい。したがって、本発明の範囲には、本明細書に列挙されるヌクレオチド配列と実質的に相同であり、対象のHCV抗原又はアジュバントをコードするヌクレオチド配列が含まれる。
【0094】
本明細書で使用される場合、ヌクレオチド配列が元のヌクレオチド配列に対し少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも99.5%の同一性を有するとき、そのヌクレオチド配列は、本明細書に記載されるヌクレオチド配列と「実質的に相同」である。抗原をコードするヌクレオチド配列と実質的に相同のヌクレオチド配列は、通常、例えば保存的又は非保存的置換を導入することにより、ヌクレオチド配列に含まれる情報に基づいて、抗原を生産する生物から単離することができる。他の可能な修飾の例として、配列への1つ又は複数のヌクレオチドの挿入、配列末端のいずれかへの1つ又は複数のヌクレオチドの追加、あるいは配列に末端又は内部における1つ又は複数のヌクレオチドの削除が挙げられる。2つのポリヌクレオチド間の同一性は、当業者に広く知られているコンピューターのアルゴリズムと方法を使用して決定される。
【0095】
更に、本発明の範囲は、本明細書に列挙されるアミノ酸配列と実質的に相同であり、元のアミノ酸配列の免疫原性機能を維持するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を包含する。
【0096】
本明細書で使用される場合、アミノ酸配列が元のアミノ酸配列に対し少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも99.5%の同一性を有するとき、そのアミノ酸配列は、本明細書に記載されるアミノ酸配列と「実質的に相同」である。2つのアミノ酸配列間の同一性は、BLASTNアルゴリズム(BLAST Manual, Altschul, S., et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894, Altschul, S., et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990))を使用して決定できる。
【0097】
一実施形態では、本発明は、HCV抗原をコードするヌクレオチド配列を含む構築物に関する。一実施形態では、構築物は、複数のHCV抗原をコードする複数のヌクレオチド配列を含む。例えば、幾つかの実施形態では、構築物は、1又はそれ以上、2又はそれ以上、3又はそれ以上、又は全てのHCV抗原をコードする。一実施形態では、本発明は、アジュバントをコードするヌクレオチド配列を含む構築物に関する。一実施形態では、構築物は、HCV抗原をコードする第1のヌクレオチド配列と、アジュバントをコードする第2のヌクレオチド配列を含む。
【0098】
一実施形態では、組成物は複数の構築物を含み、各構築物は1つ又は複数のHCV抗原をコードする。いくつかの実施形態では、組成物は、1又はそれ以上、2又はそれ以上、3又はそれ以上、4又はそれ以上、5又はそれ以上、6又はそれ以上、7又はそれ以上、8又はそれ以上、9又はそれ以上、10又はそれ以上、15又はそれ以上、又は20又はそれ以上の構築物を含む。一実施形態では、組成物は、約5~11の構築物を含む。一実施形態では、組成物は、HCV抗原をコードするヌクレオチド配列を含む第1の構築物と、アジュバントをコードするヌクレオチド配列を含む第2の構築物を含む。
【0099】
別の特定の実施形態では、構築物は、翻訳制御エレメントに動作可能に結合される。構築物は、本発明のヌクレオチド配列の発現のために動作可能に結合した調節配列を組み込むことにより発現カセットを形成できる。
【0100】
ベクター
HCV抗原又はアジュバントをコードする核酸配列は、例えば、標準的な技術を使用して、遺伝子を発現する細胞からライブラリーをスクリーニングする、それを含むことが知られているベクターから遺伝子を導出する、又は、それを含む細胞及び組織から直接単離することなどの、当技術分野で知られている組換え方法を使用して取得できる。あるいは、目的の遺伝子を合成的に生産することもできる。
【0101】
核酸は多くのタイプのベクターにクローン化できる。例えば、核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、PCRで生成された線形DNA配列、及びコスミドを含むがこれらに限定されないベクターにクローン化できる。特に目的とするベクターとして、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、配列ベクター、及びインビトロー転写に最適化されたベクターが挙げられる。
【0102】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する化学的手段としては、例えば、マクロ分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズなどのコロイド分散システム、並びに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、炭水化物、ペプチド、カチオン性ポリマー、及びリポソームを含む脂質ベースのシステムが挙げられる。送達ビヒクルとしてインビトロ及びインビボで使用するための例示的なコロイドシステムは、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0103】
非ウイルス送達システムを利用する場合、例示的な送達ビヒクルとしてリポソームがある。脂質製剤の使用は、核酸を宿主細胞に(in vitro、ex vivo又はin vivoで)導入するために検討される。別の態様では、核酸は脂質と結合してもよい。脂質に結合した核酸は、リポソームの水性内部にカプセル化されても、リポソームの脂質二重層内に散在しても、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方に結合したリンク分子を介してリポソームに結合しても、リポソーム内に閉じ込めて(entrapped)も、リポソームと複合体を形成しても、脂質を含む溶液に分散しても、脂質と混合しても、脂質と組み合わせても、脂質の懸濁液として含めても、ミセル内に含む又はミセルと複合体を形成しても、あるいはその他の方法で脂質と結合してもよい。組成物に関連の脂質/RNA又は脂質/発現ベクターは、溶液内の特定の構造に限定されない。例えば、ミセルのような二重層構造で存在しても、「崩壊した(collapsed)」構造で存在してもよい。また、単純に溶液内に散在し、サイズ又は形状が均一ではない凝集体を形成してもよい。脂質は、天然脂質でも合成脂質でもよい脂肪質の物質である。例えば、脂質として、細胞質に自然に存在する脂肪滴、並びに、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、アルデヒドなどの長鎖脂肪族炭化水素及びそれらの誘導体を含む化合物のクラスが挙げられる。
【0104】
使用に適した脂質は、業者から入手できる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma, St. Louis, MOから入手でき;リン酸ジセチル(「DCP」)は、K & K Laboratories(Plainview, NY)から入手でき;コレステロール(「Choi」)はCalbiochem-Behringから入手でき;ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及びその他の脂質はAvanti Polar Lipids, Inc.(Birmingham, AL)から入手できる。クロロホルム又はクロロホルム/メタノールに含まれる脂質のストック溶液は、約-20℃で保存できる。クロロホルムはメタノールよりも蒸発しやすいため使用される。「リポソーム」は、閉じた脂質二重層又は凝集体の生成によって形成される様々な単膜及び多重膜脂質のビヒクルを包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜と内部水性媒体を備えた小胞構造を有するものとして特徴付けられる。多重膜リポソームは、水性媒体によって隔てられる複数の脂質層を有する。リン脂質が過剰な水溶液内で懸濁されると、リポソームは自然に形成される。脂質成分は、まず自己再編(self-rearrangement)を行い、その後閉じた構造を形成し、脂質二重層間に水と溶質を閉じ込める(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5: 505-10)。しかし、溶液中の構造が通常の小胞構造と異なる組成物も包含される。例えば、脂質は、ミセル構造を想定しても、又は単に脂質分子の不均一な集合体として存在してもよい。また、リポフェクタミン-核酸複合体も考えられる。
【0105】
外因性核酸を宿主細胞に導入する、あるいは細胞を本発明の組成物に曝露する方法に関係なく、宿主細胞内のmRNA配列の存在を確認するために、様々なアッセイを実施することができる。そのようなアッセイとして、例えば、ノーザンブロット法及びRT-PCRといった当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ;例えば、免疫原的な手段(ELISA及びウェスタンブロット)又は本発明の範囲内にある薬剤を識別するための本明細書に記載のアッセイにより特定のペプチドの存在又は不在を検出するといった「生化学的」アッセイが挙げられる。
【0106】
インビトロ転写RNA
一実施形態では、本発明の組成物は、HCV抗原をコードするインビトロ転写(IVT)RNAを含む。一実施形態では、本発明の組成物は、複数のHCV抗原をコードするIVT RNAを含む。一実施形態では、本発明の組成物は、アジュバントをコードするIVT RNAを含む。一実施形態では、本発明の組成物は、1つ又は複数のHCV抗原及び1つ又は複数のアジュバントをコードするIVT RNAを含む。
【0107】
一実施形態では、IVT RNAは、一過性のトランスフェクションの形態で細胞に導入できる。RNAは合成で生成されたプラスミドDNA鋳型を使用してインビトロ転写により生成される。任意の供給源(source)に由来する目的のDNAは、適切なプライマーとRNAポリメラーゼを使用してPCRによってインビトロmRNA合成の鋳型に直接変換できる。DNAの供給源は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列又はその他の適切なDNAの供給源でありうる。一実施形態では、インビトロ転写に望ましい鋳型は、適応免疫応答を誘導可能なHCV抗原である。一実施形態では、インビトロ転写に望ましい鋳型は、適応免疫応答を強化可能なアジュバントである。
【0108】
一実施形態では、PCRに使用されるDNAはオープンリーディングフレーム含みうる。DNAは、生物のゲノムから自然発生したDNA配列に由来しうる。一実施形態では、DNAは、遺伝子の一部の目的の全長遺伝子である。遺伝子は、5'及び/又は3'非翻訳領域(UTR)の一部又は全部を含みうる。遺伝子は、エクソンとイントロンを含みうる。一実施形態では、PCRに使用されるDNAはヒトの遺伝子である。別の一実施形態では、PCRに使用されるDNAは、5'及び3'UTRを含むヒト遺伝子である。別の一実施形態では、PCRに使用されるDNAは、細菌、ウイルス、寄生虫、真菌などの病原性又は共生生物の遺伝子である。別の一実施形態では、PCRに使用されるDNAは、5'及び3'UTRを含む、細菌、ウイルス、寄生虫、及び真菌を含む病原性又は共生生物に由来する。あるいは、DNAは、天然に存在する生物では通常発現されない人工DNA配列であり得る。例示的な人工DNA配列は、遺伝子の一部を含む配列であり、これらの遺伝子は互いに連結されて、融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを形成する。一緒に連結されるDNAの部分は、単一の生物又は複数の生物由来でありうる。
【0109】
PCRのDNA源として使用できる遺伝子として、生物における適応免疫応答を誘導又は増強するポリペプチドをコードする遺伝子が挙げられる。いくつかの例では、遺伝子は短期的な治療に有用である。いくつかの例では、遺伝子は、発現遺伝子の量に関し安全性の事項が限定される。
【0110】
様々な実施形態では、プラスミドが、トランスフェクションに使用されるmRNAのインビトロ転写用の鋳型を生成するために使用される。
【0111】
安定性及び/又は翻訳効率を促進する能力を有する化学構造を使用してもよい。いくつかの実施形態では、RNAは5'及び3'UTRを有する。一実施形態では、5'UTRは、0~3000ヌクレオチドの長さである。コード領域に追加される5'及び3'UTR配列の長さは、限定されないものの、UTRの様々な領域にアニーリングするPCRのプライマーの設計を含む、様々な方法で変更できる。このアプローチを使用して、当業者は、転写されたRNAのトランスフェクション後に最適な翻訳効率を達成するために必要な5'及び3'UTR長を変更することができる。
【0112】
5'及び3'UTRは、目的の遺伝子について天然の内因性5'及び3'UTRでありうる。あるいは、目的の遺伝子について内因性ではないUTR配列を、フォワード及びリバースプライマーに組み込むことにより、又は鋳型を別の方法で修飾することにより、追加することもできる。目的の遺伝子について内因性ではないUTR配列の使用は、RNAの安定性及び/又は翻訳効率を変更するのに役立つ。例えば、3'UTR配列のAUリッチエレメントがmRNAの安定性を低下させうることが知られている。したがって、当技術分野でよく知られているUTRの特性に基づいて、転写されたRNAの安定性を高めるように3'UTRを選択又は設計することができる。
【0113】
一実施形態では、5'UTRには、内在性遺伝子のコザック配列を含めることができる。あるいは、上記のように目的の遺伝子に内因性ではない5'UTRがPCRによって追加される場合、コンセンサスコザック配列は5'UTR配列を追加することによって再設計できる。コザック配列は、一部のRNA転写産物の翻訳の効率を高めることができるが、効率的な翻訳を可能にするためにすべてのRNAに必要なわけではない。多くのmRNAのコザック配列の要件は、当技術分野で知られている。他の実施形態では、5'UTRは、RNAゲノムが細胞内で安定しているRNAウイルスに由来し得る。他の実施形態では、mRNAのエキソヌクレアーゼ分解を妨げるために、様々なヌクレオチド類似体を3'又は5'UTRで使用できる。
【0114】
DNA鋳型からのRNA合成を可能にするには、転写プロモーターを、DNA鋳型に転写される配列の上流で結合する必要がある。RNAポリメラーゼのプロモーターとして機能する配列がフォワードプライマーの5'末端に付加されると、RNAポリメラーゼプロモーターは転写されるオープンリーディングフレームの上流のPCR産物に組み込まれる。一実施形態では、本明細書の他の箇所にも記載されているように、プロモーターはT7RNAポリメラーゼプロモーターである。他の有用なプロモーターとしては、T3及びSP6RNAポリメラーゼプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。T7、T3及びSP6プロモーターのコンセンサスヌクレオチド配列は、当技術分野で知られている。
【0115】
一実施形態では、mRNAは5'末端及び3'ポリ(A)テールの両方にキャップを有し、これにより細胞内のリボソーム結合、翻訳の開始、mRNAの安定性が決定される。例えばプラスミドDNAといった環状DNA鋳型では、RNAポリメラーゼは真核生物細胞での発現に適さない長いコンカテマー生成物を生成する。3'UTRの末端で線形化されたプラスミドDNAを転写すると、正常サイズのmRNAになり、転写後にポリアデニル化される際の真核生物のトランスフェクションに効果的である。
【0116】
線形DNA鋳型では、ファージT7RNAポリメラーゼは、鋳型の最後の塩基を超えて転写産物の3'末端を伸長できる(Schenborn and Mierendorf, Nuc Acids Res., 13:6223-36 (1985); Nacheva and Berzal-Herranz, Eur. J. Biochem., 270:1485-65 (2003))。
【0117】
ポリA/TストレッチをDNA鋳型に組み込む従来の方法は、分子クローニングである。しかし、プラスミドDNAに組み込まれたポリA/T配列は、プラスミドの不安定性を引き起こす可能性があり、これは、プラスミド増殖に組換え能力のない細菌細胞を使用することで軽減できる。
【0118】
RNAのポリ(A)テールは、大腸菌ポリAポリメラーゼ(E-PAP)又は酵母ポリAポリメラーゼなどのポリ(A)ポリメラーゼを使用してインビトロ転写後にさらに伸長できる。一実施形態では、ポリ(A)テールの長さを100ヌクレオチドから300~400ヌクレオチドに増やすと、RNAの翻訳効率が約2倍になる。さらに、3'末端に異なる化学基が結合することで、mRNAの安定性を向上できる。そのような結合には、修飾/人工ヌクレオチド、アプタマー、及びその他の化合物が挙げられる。例えば、ポリ(A)ポリメラーゼを使用して、ATP類似体をポリ(A)テールに組み込むことができる。ATP類似体は、RNAの安定性をさらに高めることができる。
【0119】
5'キャップはmRNA分子の安定性ももたらす。一実施形態では、当該方法によって生成されたRNAは5'キャップ1構造を含む。このようなキャップ1構造は、Vacciniaキャッピング酵素と2’-O-メチルトランスフェラーゼ酵素を使用して生成できる(CellScript, Madison, WI)。あるいは、5'キャップは、当技術分野で既知で本明細書に記載の技術を使用して提供される(Cougot, et al., Trends in Biochem. Sci., 29:436-444 (2001); Stepinski, et al., RNA, 7:1468-95 (2001); Elango, et al., Biochim. Biophys. Res. Commun., 330:958-966 (2005))。
【0120】
RNAは、例えばエレクトロポレーション、(Amaxa Nucleofector-II4(Amaxa Biosystems, Cologne, Germany))、(ECM 830 (BTX) (Harvard Instruments, Boston, Mass.)又はthe Gene Pulser II(BioRad, Denver, Colo.)、Multiporator(Eppendort, Hamburg Germany)、リポフェクションを使用するカチオン性リポソーム媒介トランスフェクション、ポリマーカプセル化、ペプチド媒介トランスフェクション、又はバイオ粒子送達システム、例えば、「gene guns」(例えば、Nishikawa, et al. Hum Gene Ther., 12(8):861-70 (2001)参照)等が挙げられるがこれらに限定されない市販の方法など、多くの様々な方法のいずれかを使用して標的細胞に導入することができる。いくつかの実施形態では、本発明のRNAは、TransIT(登録商標)-mRNAトランスフェクションキット(Mirus, Madison WI)の使用を含む方法で細胞に導入され、これはいくつかの例では、高効率、低毒性のトランスフェクションをもたらす。
【0121】
ヌクレオシド修飾RNA
一実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に記載のHCV抗原をコードするヌクレオシド修飾核酸を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、1つ又は複数のHCV抗原を含む複数の抗原をコードするヌクレオシド修飾核酸を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、本明細書に記載のアジュバントをコードするヌクレオシド修飾核酸を含む。一実施形態では、本発明の組成物は、1つ又は複数のHCV抗原及び1つ又は複数のアジュバントをコードするヌクレオシド修飾核酸を含む。
【0122】
一実施形態では、本発明の組成物は、系統スキーム(linage scheme)に従うために後に続く注入ごとに変化する1つ又は複数のHCV抗原をコードする一連のヌクレオシド修飾核酸を含む。
【0123】
例えば、一実施形態では、組成物はヌクレオシド修飾RNAを含む。一実施形態では、組成物はヌクレオシド修飾mRNAを含む。ヌクレオシド修飾mRNAは、非修飾mRNAに比べて、特に、例えば、安定性の向上、自然免疫原性の低減又は除去、翻訳の増強といった利点がある。本発明において有用なヌクレオシド修飾mRNAは、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,278,036号、第8,691,966号、及び第8,835,108号にさらに記載されている。
【0124】
いくつかの実施形態では、ヌクレオシド修飾mRNAは、いかなる病理的経路を活性化せず、非常に効率的かつ送達後ほぼ即時に翻訳し、数日から数週間続くin vivoでの連続的なタンパク質産生の鋳型として機能する(Kariko et al., 2008, Mol Ther 16:1833-1840; Kariko et al., 2012, Mol Ther 20:948-953)。生理学的効果を発揮するのに必要なmRNAの量は少なく、ヒトの治療に適用可能である。例えば、本明細書に記載されるように、HCV抗原をコードするヌクレオシド修飾mRNAは、抗原特異的抗体産生を誘導する能力を実証した。例えば、いくつかの例では、ヌクレオシド修飾mRNAによってコードされた抗原は、非修飾mRNAによってコードされた抗原と比較して、より多い抗原特異的抗体の産生を誘導する。
【0125】
いくつかの例では、コードmRNAを送達してタンパク質を発現させることは、タンパク質、プラスミドDNA又はウイルスベクターを使用する方法よりも多くの利点がある。mRNAトランスフェクション中、目的のタンパク質のコーディング配列が細胞に送達される唯一の物質であるため、プラスミド骨格、ウイルス遺伝子、及びウイルスタンパク質に関連するすべての副作用が回避される。さらに重要なことに、DNAやウイルスベースのベクターとは異なり、mRNAはゲノムに組み込まれるリスクを負わず、mRNA送達の直後にタンパク質産生を開始する。例えば、高レベルの循環タンパク質が、コーディングmRNAのin vivo注入から15~30分以内に測定された。いくつかの実施形態では、タンパク質ではなくmRNAを使用することに多くの利点がある。mRNAは循環又は組織におけるタンパク質の半減期が短いことが多いため、タンパク質を用いた治療では頻繁に投与する必要があるが、mRNAは数日から数週間連続してタンパク質を産生するための鋳型を提供する。タンパク質の精製には問題があり、凝集体や悪影響を引き起こすその他の不純物を含むおそれがある(Kromminga and Schellekens, 2005, Ann NY Acad Sci 1050:257-265)。
【0126】
いくつかの実施形態では、ヌクレオシド修飾RNAは、天然に存在する修飾ヌクレオシドプソイドウリジンを含む。いくつかの実施形態では、プソイドウリジンを含めると、mRNAがより安定し、非免疫原性となり、翻訳性が高くなる(Kariko et al., 2008, Mol Ther 16:1833-1840; Anderson et al., 2010, Nucleic Acids Res 38:5884-5892; Anderson et al., 2011, Nucleic Acids Research 39:9329-9338; Kariko et al., 2011, Nucleic Acids Research 39:e142; Kariko et al., 2012, Mol Ther 20:948-953; Kariko et al., 2005, Immunity 23:165-175)。
【0127】
RNA内にプソイドウリジンを含む修飾ヌクレオシドが存在すると、それらの自然免疫原性を抑制することが実証されている(Kariko et al., 2005, Immunity 23:165-175)。さらに、プソイドウリジンを含む、タンパク質をコードするインビトロ転写RNAは、全く又は他の修飾ヌクレオシドを含まないRNAよりも効率的に翻訳できる(Kariko et al., 2008, Mol Ther 16:1833-1840)。その後、プソイドウリジンが存在するとRNAの安定性を改善すること(Anderson et al., 2011, Nucleic Acids Research 39:9329-9338)、及びPKRの活性化と翻訳の阻害の両方を軽減すること(Anderson et al., 2010, Nucleic Acids Res 38:5884-5892)が示されている。
【0128】
プソイドウリジンについて説明したのと同様の効果は、1-メチル-プソイドウリジンを含むRNAでも観察されている。
【0129】
いくつかの実施形態では、ヌクレオシド修飾核酸分子は、精製ヌクレオシド修飾核酸分子である。例えば、幾つかの実施形態では、組成物は、二本鎖汚染物質を除去するために精製される。いくつかの例では、優れた翻訳能力を有し、自然免疫原性のないプソイドウリジン含有RNAを取得するために、分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)精製手順を使用する(Kariko et al., 2011, Nucleic Acids Research 39:e142)。エリスロポエチンをコードする、HPLC精製プソイドウリジン含有RNAをマウスとマカクに投与すると、血清EPOレベルが大幅に増加し(Kariko et al., 2012, Mol Ther 20:948-953)、したがって、プソイドウリジンを含むmRNAがin vivoタンパク質療法に適していることが確認された。いくつかの実施形態では、ヌクレオシド修飾核酸分子は、HPLCではない方法を使用して精製される。いくつかの例では、ヌクレオシド修飾核酸分子は、HPLC及び高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)を含むがこれらに限定されないクロマトグラフィー手法を使用して精製される。例示的なFPLCベースの精製手順は、Weissman et al., 2013, Methods Mol Biol, 969: 43-54に記載されている。例示的な精製手順は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2016/0032316号にも記載されている。
【0130】
本発明は、プソイドウリジン又は修飾ヌクレオシドを含むRNA、オリゴリボヌクレオチド、及びポリリボヌクレオチド分子を包含する。いくつかの実施形態では、組成物は、抗原をコードする単離核酸を含み、ここで、該核酸はプソイドウリジン又は修飾ヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、抗原、アジュバント、又はその組み合わせをコードする単離核酸を含むベクターを含み、ここで、該核酸はプソイドウリジン又は修飾ヌクレオシドを含む。
【0131】
一実施形態では、本明細書の各所に記載されているように、本発明のヌクレオシド修飾RNAはIVT RNAである。例えば、幾つかの実施形態では、ヌクレオシド修飾RNAは、T7ファージRNAポリメラーゼによって合成される。別の一実施形態では、ヌクレオシド修飾mRNAはSP6ファージRNAポリメラーゼによって合成される。別の一実施形態では、ヌクレオシド修飾RNAはT3ファージRNAポリメラーゼによって合成される。
【0132】
一実施形態では、修飾ヌクレオシドはm1acp3Ψ(1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジンである。別の一実施形態では、修飾ヌクレオシドはm1Ψ(1-メチルプソイドウリジン)である。別の一実施形態では、修飾ヌクレオシドはΨm(2'-O-メチルプソイドウリジン)である。別の一実施形態では、修飾ヌクレオシドはm5D(5-メチルジヒドロウリジン)である。別の一実施形態では、修飾ヌクレオシドはm3Ψ(3-メチルプソイドウリジン)である。別の一実施形態では、修飾ヌクレオシドは更なる修飾が施されていないプソイドウリジン部分である。別の一実施形態では、修飾ヌクレオシドは上記プソイドウリジンのいずれかのモノホスフェート、ジホスフェート、又はトリホスフェートである。別の一実施形態では、修飾ヌクレオシドは当該分野で公知の他の任意のプソイドウリジン様ヌクレオシドである。
【0133】
別の一実施形態では、本発明のヌクレオシド修飾RNAにおいて修飾が施されているヌクレオシドは、ウリジン(U)である。別の一実施形態では、修飾ヌクレオシドはシチジン(C)である。別の一実施形態では、修飾ヌクレオシドはアデノシン(A)である。別の一実施形態では、修飾ヌクレオシドはグアノシン(G)である。
【0134】
別の一実施形態では、本発明の修飾ヌクレオシドはm5C(5-メチルシチジン)である。別の一実施形態では、修飾ヌクレオシドはm5U(5-メチルウリジン)である。別の一実施形態では、修飾ヌクレオシドはm6A(N6-メチルアデノシン)である。別の一実施形態では、修飾ヌクレオシドはs2U(2-チオウリジン)である。別の一実施形態では、修飾ヌクレオシドはΨ(プソイドウリジン)である。別の一実施形態では、修飾ヌクレオシドはUm(2'-O-メチルウリジン)である。
【0135】
別の実施形態では、修飾ヌクレオシドはm1A(1-メチルアデノシン);m2A(2-メチルアデノシン);Am(2'-O-メチルアデノシン);ms2m6A(2-メチルチオ-N6-メチルアデノシン);i6A(N6-イソペンテニルアデノシン);ms2i6A(2-メチルチオ-N6イソペンテニルアデノシン);io6A(N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン);ms2io6A(2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン);g6A(N6-グリシニルカルバモイルアデノシン);t6A(N6-トレオニルカルバモイルアデノシン);ms2t6A(2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン);m6t6A(N6-メチル-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン);hn6A(N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン);ms2hn6A(2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン);Ar(p)(2'-O-リボシルアデノシン(phosphate));I(イノシン);m1I(1-メチルイノシン);m1Im(1,2'-O-ジメチルイノシン);m3C(3-メチルシチジン);Cm(2'-O-メチルシチジン);s2C(2-チオシチジン);ac4C(N4-アセチルシチジン);f5C(5-ホルミルシチジン);m5Cm(5,2'-O-ジメチルシチジン);ac4Cm(N4-アセチル-2'-O-メチルシチジン);k2C(lysidine);m1G(1-メチルグアノシン);m2G(N2-メチルグアノシン);m7G(7-メチルグアノシン);Gm(2'-O-メチルグアノシン);m2
2G(N2,N2-ジメチルグアノシン);m2Gm(N2,2'-O-ジメチルグアノシン);m2
2Gm(N2,N2,2'-O-トリメチルグアノシン);Gr(p)(2'-O-リボシルグアノシン(phosphate));yW(ウイブトシン);o2yW(peroxyウイブトシン);OHyW(ヒドロキシウイブトシン);OHyW*(不完全修飾型(undermodified)ヒドロキシウイブトシン);imG(ワイオシン);mimG(メチルワイオシン);Q(クエオシン);oQ(エポキシクエオシン);galQ(ガラクトシル-クエオシン);manQ(マンノシル-クエオシン);preQ0(7-cyano-7-デアザグアノシン);preQ1(7-アミノメチル-7-デアザグアノシン);G+(アルケオシン);D(ジヒドロウリジン);m5Um(5,2'-O-ジメチルウリジン);s4U(4-チオウリジン);m5s2U(5-メチル-2-チオウリジン);s2Um(2-チオ-2'-O-メチルウリジン);acp3U(3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン);ho5U(5-ヒドロキシウリジン);mo5U(5-メトキシウリジン);cmo5U(ウリジン5-オキシ酢酸);mcmo5U(ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル);chm5U(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン));mchm5U(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジンメチルエステル);mcm5U(5-メトキシカルボニルメチルウリジン);mcm5Um(5-メトキシカルボニルメチル-2'-O-メチルウリジン);mcm5s2U(5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン);nm5s2U(5-アミノメチル-2-チオウリジン);mnm5U(5-メチルアミノメチルウリジン);mnm5s2U(5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン);mnm5se2U(5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン);ncm5U(5-カルバモイルメチルウリジン);ncm5Um(5-カルバモイルメチル-2'-O-メチルウリジン);cmnm5U(5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン);cmnm5Um(5-カルボキシメチルアミノメチル-2'-O-メチルウリジン);cmnm5s2U(5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン);m6
2A(N6,N6-ジメチルアデノシン);Im(2'-O-メチルイノシン);m4C(N4-メチルシチジン);m4Cm(N4,2'-O-ジメチルシチジン);hm5C(5-ヒドロキシメチルシチジン);m3U(3-メチルウリジン);cm5U(5-カルボキシメチルウリジン);m6Am(N6,2'-O-ジメチルアデノシン);m6
2Am(N6,N6,O-2'-トリメチルアデノシン);m2,7G(N2,7-ジメチルグアノシン);m2,2,7G(N2,N2,7-トリメチルグアノシン);m3Um(3,2'-O-ジメチルウリジン);m5D(5-メチルジヒドロウリジン);f5Cm (5-ホルミル-2'-O-メチルシチジン);m1Gm(1,2'-O-ジメチルグアノシン);m1Am(1,2'-O-ジメチルアデノシン);τm5U(5-タウリノメチルウリジン);τm5s2U(5-タウリノメチル-2-チオウリジン));imG-14(4-deメチルワイオシン);imG2(isoワイオシン);又はac6A(N6-アセチルアデノシン)である。
【0136】
別の一実施形態では、本発明のヌクレオシド修飾RNAは、2又はそれ以上の上記修飾の組み合わせを含む。別の一実施形態では、ヌクレオシド修飾RNAは、3又はそれ以上の上記修飾の組み合わせを含む。別の一実施形態では、ヌクレオシド修飾RNAは、3を超える上記修飾の組み合わせを含む。
【0137】
様々な実施形態では、本発明のヌクレオシド修飾RNAにおける0.1%~100%の残基が修飾されている(例えば、プソイドウリジン、1-メチル-プソイドウリジン、又は他の修飾ヌクレオシド塩基のいずれかの存在により)。一実施形態では、修飾残基の割合は0.1%である。別の一実施形態では、修飾残基の割合は0.2%である。別の一実施形態では、割合は、0.3%である。別の一実施形態では、割合は、0.4%である。別の一実施形態では、割合は、0.5%である。別の一実施形態では、割合は、0.6%である。別の一実施形態では、割合は、0.7%である。別の一実施形態では、割合は、0.8%である。別の一実施形態では、割合は、0.9%である。別の一実施形態では、割合は、1%である。別の一実施形態では、割合は、1.5%である。別の一実施形態では、割合は、2%である。別の一実施形態では、割合は、2.5%である。別の一実施形態では、割合は、3%である。別の一実施形態では、割合は、4%である。別の一実施形態では、割合は、5%である。別の一実施形態では、割合は、6%である。別の一実施形態では、割合は、7%である。別の一実施形態では、割合は、8%である。別の一実施形態では、割合は、9%である。別の一実施形態では、割合は、10%である。別の一実施形態では、割合は、12%である。別の一実施形態では、割合は、14%である。別の一実施形態では、割合は、16%である。別の一実施形態では、割合は、18%である。別の一実施形態では、割合は、20%である。別の一実施形態では、割合は、25%である。別の一実施形態では、割合は、30%である。別の一実施形態では、割合は、35%である。別の一実施形態では、割合は、40%である。別の一実施形態では、割合は、45%である。別の一実施形態では、割合は、50%である。別の一実施形態では、割合は、55%である。別の一実施形態では、割合は、60%である。別の一実施形態では、割合は、65%である。別の一実施形態では、割合は、70%である。別の一実施形態では、割合は、75%である。別の一実施形態では、割合は、80%である。別の一実施形態では、割合は、85%である。別の一実施形態では、割合は、90%である。別の一実施形態では、割合は、91%である。別の一実施形態では、割合は、92%である。別の一実施形態では、割合は、93%である。別の一実施形態では、割合は、94%である。別の一実施形態では、割合は、95%である。別の一実施形態では、割合は、96%である。別の一実施形態では、割合は、97%である。別の一実施形態では、割合は、98%である。別の一実施形態では、割合は、99%である。別の一実施形態では、割合は、100%である。
【0138】
別の一実施形態では、割合は、5%未満である。別の一実施形態では、割合は、3%未満である。別の一実施形態では、割合は、1%未満である。別の一実施形態では、割合は、2%未満である。別の一実施形態では、割合は、4%未満である。別の一実施形態では、割合は、6%未満である。別の一実施形態では、割合は、8%未満である。別の一実施形態では、割合は、10%未満である。別の一実施形態では、割合は、12%未満である。別の一実施形態では、割合は、15%未満である。別の一実施形態では、割合は、20%未満である。別の一実施形態では、割合は、30%未満である。別の一実施形態では、割合は、40%未満である。別の一実施形態では、割合は、50%未満である。別の一実施形態では、割合は、60%未満である。別の一実施形態では、割合は、70%未満である。
【0139】
別の一実施形態では、所与のヌクレオシド(つまり、ウリジン、シチジン、グアノシン、又はアデノシン)の残基の0.1%が修飾されている。別の一実施形態では、修飾残基の割合は0.2%である。別の一実施形態では、割合は、0.3%である。別の一実施形態では、割合は、0.4%である。別の一実施形態では、割合は、0.5%である。別の一実施形態では、割合は、0.6%である。別の一実施形態では、割合は、0.7%である。別の一実施形態では、割合は、0.8%である。別の一実施形態では、割合は、0.9%である。別の一実施形態では、割合は、1%である。別の一実施形態では、割合は、1.5%である。別の一実施形態では、割合は、2%である。別の一実施形態では、割合は、2.5%である。別の一実施形態では、割合は、3%である。別の一実施形態では、割合は、4%である。別の一実施形態では、割合は、5%である。別の一実施形態では、割合は、6%である。別の一実施形態では、割合は、7%である。別の一実施形態では、割合は、8%である。別の一実施形態では、割合は、9%である。別の一実施形態では、割合は、10%である。別の一実施形態では、割合は、12%である。別の一実施形態では、割合は、14%である。別の一実施形態では、割合は、16%である。別の一実施形態では、割合は、18%である。別の一実施形態では、割合は、20%である。別の一実施形態では、割合は、25%である。別の一実施形態では、割合は、30%である。別の一実施形態では、割合は、35%である。別の一実施形態では、割合は、40%である。別の一実施形態では、割合は、45%である。別の一実施形態では、割合は、50%である。別の一実施形態では、割合は、55%である。別の一実施形態では、割合は、60%である。別の一実施形態では、割合は、65%である。別の一実施形態では、割合は、70%である。別の一実施形態では、割合は、75%である。別の一実施形態では、割合は、80%である。別の一実施形態では、割合は、85%である。別の一実施形態では、割合は、90%である。別の一実施形態では、割合は、91%である。別の一実施形態では、割合は、92%である。別の一実施形態では、割合は、93%である。別の一実施形態では、割合は、94%である。別の一実施形態では、割合は、95%である。別の一実施形態では、割合は、96%である。別の一実施形態では、割合は、97%である。別の一実施形態では、割合は、98%である。別の一実施形態では、割合は、99%である。別の一実施形態では、割合は、100%である。別の一実施形態では、修飾されている所与のヌクレオチドの割合は8%未満である。別の一実施形態では、割合は、10%未満である。別の一実施形態では、割合は、5%未満である。別の一実施形態では、割合は、3%未満である。別の一実施形態では、割合は、1%未満である。別の一実施形態では、割合は、2%未満である。別の一実施形態では、割合は、4%未満である。別の一実施形態では、割合は、6%未満である。別の一実施形態では、割合は、12%未満である。別の一実施形態では、割合は、15%未満である。別の一実施形態では、割合は、20%未満である。別の一実施形態では、割合は、30%未満である。別の一実施形態では、割合は、40%未満である。別の一実施形態では、割合は、50%未満である。別の一実施形態では、割合は、60%未満である。別の一実施形態では、割合は、70%未満である。
【0140】
いくつかの実施形態では、組成物は、一本鎖ヌクレオシド修飾RNAの精製調製物を含む。例えば、幾つかの実施形態では、一本鎖ヌクレオシド修飾RNAの精製調製物は、二本鎖RNA(dsRNA)を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、精製調製物は、他の全ての核酸分子(DNA、dsRNA等)に対し、少なくとも90%、又は少なくとも91%、又は少なくとも92%、又は少なくとも93%又は少なくとも94%、又は少なくとも95%、又は少なくとも96%、又は少なくとも97%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は少なくとも99.5%、又は少なくとも99.9%が一本鎖ヌクレオシド修飾RNAである。
【0141】
別の一実施形態では、本発明のヌクレオシド修飾RNAは、同一の配列を有する未修飾RNA分子に比べ細胞内でより効率的に翻訳される。別の一実施形態では、ヌクレオシド修飾RNAは、標的細胞によって翻訳される能力が強化される。別の一実施形態では、翻訳は未修飾の対応物に比べて2倍(a factor of 2-fold)に強化される。別の一実施形態では、翻訳は3倍に強化される。別の一実施形態では、翻訳は4倍に強化される。別の一実施形態では、翻訳は5倍に強化される。別の一実施形態では、翻訳は6倍に強化される。別の一実施形態では、翻訳は7倍に強化される。別の一実施形態では翻訳は8倍に強化される。別の一実施形態では、翻訳は9倍に強化される。別の一実施形態では、翻訳は10倍に強化される。別の一実施形態では、翻訳は15倍に強化される。別の一実施形態では、翻訳は20倍に強化される。別の一実施形態では、翻訳は50倍に強化される。別の一実施形態では、翻訳は100倍に強化される。別の一実施形態では、翻訳は200倍に強化される。別の一実施形態では、翻訳は500倍に強化される。別の一実施形態では、翻訳は1000倍に強化される。別の一実施形態では、翻訳は2000倍に強化される。別の一実施形態では、強化率(factor)は10~1000倍である。別の一実施形態では、強化率は10~100倍である。別の一実施形態では、強化率は10~200倍である。別の一実施形態では、強化率は10~300倍である。別の一実施形態では、強化率は10~500倍である。別の一実施形態では、強化率は20~1000倍である。別の一実施形態では、強化率は30~1000倍である。別の一実施形態では、強化率は50~1000倍である。別の一実施形態では、強化率は100~1000倍である。別の一実施形態では、強化率は200~1000倍である。別の一実施形態では、翻訳は、他の値又は値の範囲の指標により顕著に強化される。
【0142】
別の一実施形態では、本発明のヌクレオシド修飾抗原をコードするRNAは、同一の配列を有する未修飾のインビトロ合成RNA分子に比べよりロバストな適応免疫応答を誘導する。別の一実施形態では、修飾RNA分子は、未修飾の対応物に比べて2倍(2-fold)適応免疫応答を誘導する。別の一実施形態では、適応免疫応答は3倍に増大する。別の一実施形態では、適応免疫応答は4倍に増大する。別の一実施形態では、適応免疫応答は5倍に増大する。別の一実施形態では、適応免疫応答は6倍に増大する。別の一実施形態では、適応免疫応答は7倍に増大する。別の一実施形態では、適応免疫応答は8倍に増大する。別の一実施形態では、適応免疫応答は9倍に増大する。別の一実施形態では、適応免疫応答は10倍に増大する。別の一実施形態では、適応免疫応答は15倍に増大する。別の一実施形態では、適応免疫応答は20倍に増大する。別の一実施形態では、適応免疫応答は50倍に増大する。別の一実施形態では、適応免疫応答は100倍に増大する。別の一実施形態では、適応免疫応答は200倍に増大する。別の一実施形態では、適応免疫応答は500倍に増大する。別の一実施形態では、適応免疫応答は1000倍に増大する。別の一実施形態では、適応免疫応答は2000倍に増大する。別の一実施形態では、適応免疫応答は他の指標により増大する。
【0143】
別の一実施形態では、「よりロバストな適応免疫応答を誘導する」とは、適応免疫応答の検出可能な増大を指す。別の一実施形態では、この用語は、適応免疫応答の倍増(例えば、上に記載した「倍」の増大のうちの1つ)を指す。別の一実施形態では、この用語は、ヌクレオシド修飾RNAが未修飾RNA分子に比べてより低い用量又は頻度で投与しても、同じくらい効果的な適応免疫応答を誘導できるような増大を指す。別の一実施形態では、増大は、ヌクレオシド修飾RNAを単回投与で誘導しても効果的な適応免疫応答を誘導できるような増大である。
【0144】
別の一実施形態では、本発明の本発明のヌクレオシド修飾RNAは、同一の配列を有する未修飾のインビトロ合成RNA分子に比べより顕著に低い自然免疫原性を示す。別の一実施形態では、修飾RNA分子は未修飾の対応物に比べて2分の1(2-fold less)の自然免疫応答を示す。別の一実施形態では、自然免疫原性は3分の1に低減する。別の一実施形態では、自然免疫原性は4分の1に低減する。別の一実施形態では、自然免疫原性は5分の1に低減する。別の一実施形態では、自然免疫原性は6分の1に低減する。別の一実施形態では、自然免疫原性は7分の1に低減する。別の一実施形態では、自然免疫原性は8分の1に低減する。別の一実施形態では、自然免疫原性は9分の1に低減する。別の一実施形態では、自然免疫原性は10分の1に低減する。別の一実施形態では、自然免疫原性は15分の1に低減する。別の一実施形態では、自然免疫原性は20分の1に低減する。別の一実施形態では、自然免疫原性は50分の1に低減する。別の一実施形態では、自然免疫原性は100分の1に低減する。別の一実施形態では、自然免疫原性は200分の1に低減する。別の一実施形態では、自然免疫原性は500分の1に低減する。別の一実施形態では、自然免疫原性は1000分の1に低減する。別の一実施形態では、自然免疫原性は2000分の1に低減する。別の一実施形態では、自然免疫原性は他の指標により低減する。
【0145】
別の一実施形態では、「より顕著に低い自然免疫原性を示す」とは、自然免疫原性の検出可能な低減を指す。別の一実施形態では、この用語は、自然免疫原性の低減(例えば、上に記載した「分の一」という低減のうちの1つ)を指す。別の一実施形態では、この用語は、有効量のヌクレオシド修飾RNAを投与しても検出可能自然免疫応答を誘発しないような低減を指す。別の一実施形態では、この用語は、修飾RNAによってコードされるタンパク質の検出可能な産生を減少させるのに十分な自然免疫応答を誘発することなく、ヌクレオシド修飾RNAを繰り返し投与できるような低減を指す。別の一実施形態では、低減は、修飾RNAによってコードされるタンパク質の検出可能な産生を排除するのに十分な自然免疫応答を誘発することなく、ヌクレオシド修飾RNAを繰り返し投与できるものである。
【0146】
脂質ナノ粒子
一実施形態では、ヌクレオシド修飾RNAの送達は、本明細書に記載の例示的なRNAトランスフェクション方法を含めた任意の好適な送達方法を含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオシド修飾RNAの対象への送達は、接触ステップの前に、ヌクレオシド修飾RNAをトランスフェクション試薬と混合することを含む。別の一実施形態では、本発明の方法は、ヌクレオシド修飾RNAをトランスフェクション試薬とともに投与することをさらに含む。別の一実施形態では、トランスフェクション試薬はカチオン性脂質試薬である。別の一実施形態では、トランスフェクション試薬はカチオン性ポリマー試薬である。
【0147】
別の一実施形態では、トランスフェクション試薬は、脂質ベースのトランスフェクション試薬である。別の一実施形態では、トランスフェクション試薬は、タンパク質ベースのトランスフェクション試薬である。別の一実施形態では、トランスフェクション試薬は、水化物ベースのトランスフェクション試薬である。別の一実施形態では、トランスフェクション試薬は、カチオン性脂質ベースのトランスフェクション試薬である。別の一実施形態では、トランスフェクション試薬は、カチオン性ポリマーベースのトランスフェクション試薬である。別の一実施形態では、トランスフェクション試薬は、ポリエチレンイミンベースのトランスフェクション試薬である。別の一実施形態では、トランスフェクション試薬は、リン酸カルシウムである。別の一実施形態では、トランスフェクション試薬は、Lipofectin(登録商標)、Lipofectamine(登録商標)、又はTransIT(登録商標)である。別の一実施形態では、トランスフェクション試薬は、当該分野で公知の任意の他のトランスフェクション試薬である。
【0148】
別の一実施形態では、トランスフェクション試薬は、リポソームを形成する。リポソームは、別の実施形態では、細胞内安定性を高め、取り込み効率を高め、生物活性を改善する。別の一実施形態では、リポソームは、細胞膜を構成する脂質と同様の方法で配置された脂質で構成される中空の球状小胞である。それらは、別の実施形態において、水溶性化合物を捕捉するための内部水性空間を有し、サイズが直径0.05から数ミクロンの範囲である。別の一実施形態では、リポソームは、生物学的に活性な形態でRNAを細胞に送達できる。
【0149】
一実施形態では、組成物は、本明細書に記載の脂質ナノ粒子(LNP)及び1つ又は複数の核酸分子を含む。例えば、一実施形態では、組成物は、LNP及び1つ又は複数の抗原、アジュバント、又はそれらの組み合わせをコードする1つ又は複数のヌクレオシド修飾RNA分子を含む。
【0150】
「脂質ナノ粒子」という用語は、ナノメートル(例えば、1~1,000nm)程度の少なくとも1つの寸法を有する粒子を指し、1つ又は複数の脂質、例えば、式(I)、(II)又は(III)の脂質を含む。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、本明細書に記載のヌクレオシド修飾RNAを含む製剤に含まれるいくつかの実施形態では、このような脂質ナノ粒子は、カチオン性脂質(例えば、式(I)、(II)又は(III)の脂質)並びに中性脂質、荷電脂質、ステロイド、及びポリマー結合脂質(例えば、化合物Ivaのような構造(IV)のペグ化脂質などのペグ化脂質)から選択される1つ又は複数の賦形剤を含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオシド修飾RNAは、脂質ナノ粒子の脂質部分又は脂質ナノ粒子の脂質部分の一部又は全部によって包まれた水性空間内にカプセル化されており、それにより酵素分解あるいは宿主生物又は細胞のメカニズムにより誘発される、例えば、有害な免疫応答といったその他の望ましくない影響から保護される。
【0151】
様々な実施形態では、脂質ナノ粒子は、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、約90nm~約100nm、約70~約90nm、約80nm~約90nm、約70nm~約80nm、又は約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、又は150nmの平均直径を有しそして実質的に無毒である。いくつかの実施形態では、ヌクレオシド修飾RNAは、脂質ナノ粒子に存在する場合、水溶液中でヌクレアーゼによる分解に耐性がある。
【0152】
LNPは、1つ又は複数の核酸分子が付着した粒子を形成することが可能な、又はその中に1つ又は複数の核酸分子がカプセル化された任意の脂質を含んでもよい。「脂質」という用語は、脂肪酸の誘導体(例えば、エステル)である有機化合物のグループを指し、一般に水に不溶性であるが多くの有機溶媒に可溶性であることを特徴とする。脂質は通常、少なくとも以下のような3つのクラスに分けられる:(1)脂肪、油、ワックスを含む「単純脂質」;(2)リン脂質及び糖脂質を含む「複合脂質」;並びに(3)ステロイドなどの「誘導体脂質」。
【0153】
一実施形態では、LNPは1つ又は複数のカチオン性脂質と1つ又は複数の安定化脂質を含む。安定化脂質として、中性脂質とペグ化脂質が挙げられる。
【0154】
一実施形態では、LNPはカチオン性脂質を含む。本明細書で使用する「カチオン性脂質」という用語は、pHが当該脂質のイオン化可能基のpKより低くなるとカチオン性又はカチオン性になる(プロトン化する)脂質を指すが、より高いpH値では徐々により中性に近くなる。pK未満のpH値では、脂質は負に帯電した核酸と結合できる。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、pH低下時に正電荷を帯びる両性イオン脂質を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、生理学的pHなどの選択的なpHにおいて全体として正電荷を帯びる多くの脂質種の任意のものを含む。このような脂質として、限定されないものの、以下のものが挙げられる:N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB);N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP);3-(N-(N′,N′-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレオイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、及びN-(1,2-ジミリスチルオキシプロップ-3-yl)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)。さらに、本発明で使用できるカチオン性脂質の多くの市販製剤が入手可能である。例えば、以下のものが挙げられる:LIPOFECTIN(登録商標)(DOTMA及び1,2-ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む市販のカチオン性リポソーム、GIBCO/BRL, Grand Island, N.Y.);LIPOFECTAMINE(登録商標)(N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-(2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)及び(DOPE)を含む市販のカチオン性リポソーム, GIBCO/BRL);及びTRANSFECTAM(登録商標)(ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(DOGS)をエタノール中に含む市販のカチオン性脂質、Promega Corp., Madison, Wis.)。次の脂質はカチオン性であり、生理的pH未満で正電荷を有する: DODAP、DODMA、DMDMA、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)。
【0156】
一実施形態では、カチオン性脂質はアミノ脂質である。本発明において有用な好適なアミノ脂質として、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2012/016184に記載されているものが挙げられる。代表的なアミノ脂質として、限定されないものの、以下のものが挙げられる:1,2-ジリノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.Cl)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、及び2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)。
【0157】
好適なアミノ脂質として、次の式を有するものが挙げられる:
【化1】
式中、R
1及びR
2は同じ又は異なっておりそして独立して、場合により置換されたC
10-C
24アルキル、場合により置換されたC
10-C
24アルケニル、場合により置換されたC
10-C
24アルキニル、又は場合により置換されたC
10-C
24アシルであり;
R
3及びR
4は同じ又は異なっておりそして独立して、場合により置換されたC
1-C
6アルキル、場合により置換されたC
2-C
6アルケニル、又は場合により置換されたC
2-C
6アルキニルであるか、又はR
3及びR
4は、接合して4~6個の炭素原子及び窒素及び酸素から選択される1又は2ヘテロ原子を有し、場合により置換された複素環を形成してもよく;
R
5は、不存在又は存在し、存在する場合水素又はC
1-C
6アルキルであり;
m、n、及びpは同じ又は異なっておりそして独立して、0又は1であり、ただしm、n、及びpが同時に0ではない;
qは、0、1、2、3、又は4であり;かつ、
Y及びZは同じ又は異なっておりそして独立して、O、S、又はNHである。
【0158】
一実施形態では、R1及びR2は各々リノレイルであり、アミノ脂質はジリノレイルアミノ脂質である。一実施形態では、アミノ脂質はジリノレイルアミノ脂質である。
【0159】
代表的な有用なジリノレイルアミノ脂質は、以下の式を有する:
【化2】
(式中、nは0、1、2、3、又は4である)。
【0160】
一実施形態では、カチオン性脂質はDLin-K-DMAである。一実施形態では、カチオン性脂質はDLin-KC2-DMAである(上述のDLin-K-DMAの式中、nは2である)。
【0161】
一実施形態では、LNPのカチオン性脂質部分は、式(I)の構造:
【化3】
又はその医薬的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ又は立体異性体を有する
(式中、
L
1及びL
2は、各々独立して、-O(C=O)-、-(C=O)O-又は炭素-炭素二重結合であり;
R
1a及びR
1bは、各々に関し、独立して、以下の(a)又は(b)のいずれかである:(a)H又はC1-C12アルキルのいずれかである、又は(b)R
1aはH又はC
1-C
12アルキルであり、そして、R
1bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を結合する;
R
2a及びR
2bは、各々に関し、独立して、以下の(a)又は(b)のいずれかである:(a)H又はC1-C12アルキルのいずれかである、又は(b)R
2aは又はC
1-C
12アルキルであり、そして、R
2bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を結合する;
R
3a及びR
3bは、各々に関し、独立して、以下の(a)又は(b)のいずれかである:(a)H又はC1-C12アルキルのいずれかである、又は(b)R
3aは又はC
1-C
12アルキルであり、そして、R
3bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を結合する;
R
4a及びR
4bは、各々に関し、独立して、以下の(a)又は(b)のいずれかである:(a)H又はC1-C12アルキルのいずれかである、又は(b)R
4aは又はC
1-C
12アルキルであり、そして、R
4bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を結合する;
R
5及びR
6は、各々独立して、メチル又はシクロアルキルであり;
R
7は各出現毎に、独立してH又はC
1-C
12アルキルであり;
R
8及びR
9は、各々独立して、C
1-C
12アルキルであるか、又はR
8及びR
9は、それらが結合している窒素原子と一緒に、1個の窒素原子を含む5、6又は7員複素環を形成し;
a及びdは、各々独立して、0~24の整数であり;
b及びcは、各々独立して、1~24の整数であり;かつ、
eは1又は2である)。
【0162】
式(I)のいくつかの実施形態では、R1a、R2a、R3a又はR4aの少なくとも1つはC1-C12アルキルであるか、又はL1又はL2の少なくとも1つは-O(C=O)-又は-(C=O)O-である。別の実施形態では、R1a及びR1bは、aが6であるときイソプロピルではなく、aが8であるときn-ブチルである。
【0163】
式(I)の更なる実施形態では、R1a、R2a、R3a又はR4a の少なくとも1つはC1-C12アルキルであるか、又はL1又はL2の少なくとも1つは-O(C=O)-又は-(C=O)O-であり;かつ、R1a及びR1bは、aが6であるときイソプロピルではなく、aが8であるときn-ブチルである。
【0164】
式(I)の別の実施形態では、R8及びR9は、各々独立して、非置換C1-C12アルキルであるか;又はR8及びR9は、それらが結合している窒素原子と一緒に、1個の窒素原子を含む5、6又は7員複素環を形成する。
【0165】
式(I)のいくつかの実施形態では、L1又はL2のいずれか一方は、-O(C=O)-又は炭素-炭素二重結合であってもよい。L1及びL2は、各々-O(C=O)-であってもよく、又は各々炭素-炭素二重結合であってもよい。
【0166】
式(I)のいくつかの実施形態では、L1又はL2の一方が-O(C=O)-である。別の実施形態では、L1及びL2のいずれも-O(C=O)-である。
【0167】
式(I)のいくつかの実施形態では、L1又はL2の一方は-(C=O)O-である。別の実施形態では、L1及びL2のいずれも-(C=O)O-である。
【0168】
式(I)の別のいくつかの実施形態では、L1又はL2の一方が炭素-炭素二重結合である。別の実施形態では、L1及びL2のいずれも炭素-炭素二重結合である。
【0169】
式(I)のさらに別の実施形態では、L1又はL2の一方は-O(C=O)-であり、L1又はL2の他方は-(C=O)O-である。更なる実施形態では、L1又はL2の一方は-O(C=O)-であり、L1又はL2の他方は炭素-炭素二重結合である。より更なる実施形態では、L1又はL2の一方は-(C=O)O-であり、L1又はL2の他方は炭素-炭素二重結合である。
【0170】
本明細書全体で使用される「炭素-炭素」二重結合は、以下の構造:
【化4】
のいずれかを指すと理解される
(式中、R
a及びR
bは、各々に関し、独立して、H又は置換基である。例えば、幾つかの実施形態ではR
a及びR
bは、各々に関し、独立して、H、C
1-C
12アルキル又はシクロアルキル、例えばH又はC
1-C
12アルキルである)。
【0171】
別の実施形態では、式(I)の脂質化合物は、以下の構造(Ia):
【化5】
を有する。
【0172】
別の実施形態では、式(I)の脂質化合物は、以下の構造(Ib):
【化6】
を有する。
【0173】
更なる別の実施形態では、式(I)の脂質化合物は、以下の構造(Ic):
【化7】
を有する。
【0174】
式(I)の脂質化合物のいくつかの実施形態では、a、b、c及びdは、各々独立して、2~12の整数又は4~12の整数である。別の実施形態では、a、b、c及びdは、各々独立して、8~12又は5~9の整数である。いくつかの実施形態では、aは0である。いくつかの実施形態では、aは1である。別の実施形態では、aは2である。更なる実施形態では、aは3である。更なる別の実施形態では、aは4である。いくつかの実施形態では、aは5である。別の実施形態では、aは6である。更なる実施形態では、aは7である。更なる別の実施形態では、aは8である。いくつかの実施形態では、aは9である。別の実施形態では、aは10である。更なる実施形態では、aは11である。更なる別の実施形態では、aは12である。いくつかの実施形態では、aは13である。別の実施形態では、aは14である。更なる実施形態では、aは15である。更なる別の実施形態では、aは16である。
【0175】
式(I)の別のいくつかの実施形態では、bは1である。別の実施形態では、bは2である。更なる実施形態では、bは3である。更なる別の実施形態では、bは4である。いくつかの実施形態では、bは5である。別の実施形態では、bは6である。更なる実施形態では、bは7である。更なる別の実施形態では、bは8である。いくつかの実施形態では、bは9である。別の実施形態では、bは10である。更なる実施形態では、bは11である。更なる別の実施形態では、bは12である。いくつかの実施形態では、bは13である。別の実施形態では、bは14である。更なる実施形態では、bは15である。更なる別の実施形態では、bは16である。
【0176】
式(I)の更なるいくつかの実施形態では、cは1である。別の実施形態では、cは2である。更なる実施形態では、cは3である。更なる別の実施形態では、cは4である。いくつかの実施形態では、cは5である。別の実施形態では、cは6である。更なる実施形態では、cは7である。更なる別の実施形態では、cは8である。いくつかの実施形態では、cは9である。別の実施形態では、cは10である。更なる実施形態では、cは11である。更なる別の実施形態では、cは12である。いくつかの実施形態では、cは13である。別の実施形態では、cは14である。更なる実施形態では、cは15である。更なる別の実施形態では、cは16である。
【0177】
式(I)の別のいくつかの実施形態では、dは0である。いくつかの実施形態では、dは1である。別の実施形態では、dは2である。更なる実施形態では、dは3である。更なる別の実施形態では、dは4である。いくつかの実施形態では、dは5である。別の実施形態では、dは6である。更なる実施形態では、dは7である。更なる別の実施形態では、dは8である。いくつかの実施形態では、dは9である。別の実施形態では、dは10である。更なる実施形態では、dは11である。更なる別の実施形態では、dは12である。いくつかの実施形態では、dは13である。別の実施形態では、dは14である。更なる実施形態では、dは15である。更なる別の実施形態では、dは16である。
【0178】
式(I)の別のいくつかの様々な実施形態では、aとdは同一である。いくつかの別の実施形態では、b及びcは同一である。いくつかの他の特定の実施形態ではa及びdは同一であり、かつb及びcは同一である。
【0179】
式(I)においてaとbの合計及びcとdの合計は、所望の特性を有する式(I)の脂質を得るために変化させることができる因子である。一実施形態では、aとbは、合計が14~24の範囲の整数であるように選択される。別の実施形態では、cとdは、合計が14~24の範囲の整数であるように選択される。さらに別の実施形態では、aとbの合計と、cとdの合計は同一である。例えば、幾つかの実施形態ではaとbの合計と、cとdの合計は、いずれも14~24の範囲の同じ整数である。さらなる実施形態では、a、b、c、及びdは、aとbの合計、及びcとdの合計が12以上になるように選択される。
【0180】
式(I)のいくつかの実施形態では、eは1である。別の実施形態では、eは2である。
【0181】
式(I)のR1a、R2a、R3a及びR4aの置換基は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、R1a、R2a、R3a及びR4aは各出現においてHである。いくつかの別の実施形態では、少なくとも1つのof R1a、R2a、R3a及びR4aはC1-C12アルキルである。いくつかの別の実施形態では、少なくとも1つのof R1a、R2a、R3a及びR4aはC1-C8アルキルである。いくつかの別の実施形態では、少なくとも1つのof R1a、R2a、R3a及びR4aはC1-C6アルキルである。前述の実施形態のいくつかでは、C1-C8アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル又はn-オクチルである。
【0182】
式(I)のいくつかの実施形態では、R1a、R1b、R4a及びR4bは、各出現においてC1-C12アルキルである。
【0183】
式(I)の更なる実施形態では、R1b、R2b、R3b及びR4bの少なくとも1つはHであるか、あるいはR1b、R2b、R3b及びR4bは各出現においてHである。
【0184】
式(I)のいくつかの実施形態では、R1bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する。前述の他の実施形態では、R4bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する。
【0185】
式(I)のR5及びR6にある置換基は、上記実施形態では、特に限定されない。いくつかの実施形態では、R5又はR6の一方又は両方はメチルである。いくつかの別の実施形態では、R5又はR6の一方又は両方はシクロアルキル例えばシクロヘキシルである。これらの実施形態では、シクロアルキルは、置換されていてもされていなくてもよい。いくつかの別の実施形態では、シクロアルキルは、C1-C12アルキル、例えばtert-ブチルで置換されている。
【0186】
R7における置換基は式(I)の前述の実施形態では特に限定されない。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのR7はHである。いくつかの別の実施形態では、R7は各出現においてHである。いくつかの別の実施形態では、R7はC1-C12アルキルである。
【0187】
式(I)の前述の実施形態の別のいくつかでは、R8又はR9の一方はメチルである。別の実施形態では、R8及びR9の両方がメチルである。
【0188】
式(I)のいくつかの異なる実施形態では、R8及びR9は、それらが結合している窒素原子と一緒に、5、6又は7員複素環を形成する。前述のいくつかの実施形態では、R8及びR9は、それらが結合している窒素原子と一緒に、5員複素環、例えばピロリジニル環を形成する。
【0189】
様々な異なる実施形態では、式(I)の脂質は、以下の表1に示す構造の1つを有する。
【0190】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【0191】
いくつかの実施形態では、LNPは、式(I)の脂質、ヌクレオシド修飾RNA、及び中性脂質、ステロイド、ペグ化脂質から選択される1つ又は複数の賦形剤を含む。いくつかの実施形態では、式(I)の脂質は化合物I-5である。いくつかの実施形態では、式(I)の脂質は化合物I-6である。
【0192】
いくつかの別の実施形態では、LNPのカチオン性脂質成分は、式(II)の構造:
【化8】
又はその医薬的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ又は立体異性体を有する
(式中、
L
1及びL
2は、各々独立して、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)
x-、-S-S-、-C(=O)S-、-SC(=O)-、-NR
aC(=O)-、-C(=O)NR
a-、-NR
aC(=O)NR
a、-OC(=O)NR
a-、-NR
aC(=O)O-、又は直接結合であり;
G
1はC
1-C
2アルキレン、-(C=O)-、-O(C=O)-、-SC(=O)-、-NR
aC(=O)-又は直接結合であり;
G
2は-C(=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)S-、-C(=O)NR
a又は直接結合であり;
G
3はC
1-C
6アルキレンであり;
R
aは又はC
1-C
12アルキルであり;
R
1a及びR
1bは、各々に関し、独立して、以下の(a)又は(b)のいずれかである:(a)H又はC
1-C
12アルキルである;又は(b)R
1aは又はC
1-C
12アルキルであり、そして、R
1bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する;
R
2a及びR
2bは、各々に関し、独立して、以下の(a)又は(b)のいずれかである:(a)H又はC
1-C
12アルキルである;又は(b)R
2aは又はC
1-C
12アルキルであり、そして、R
2bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する;
R
3a及びR
3bは、各々に関し、独立して、以下の(a)又は(b)のいずれかである:(a)H又はC
1-C
12アルキルである;又は(b)R
3aは又はC
1-C
12アルキルであり、そして、R
3bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する;
R
4a及びR
4bは、各々に関し、独立して、以下の(a)又は(b)のいずれかである:(a)H又はC
1-C
12アルキルである;又は(b)R
4aは又はC
1-C
12アルキルであり、そして、R
4bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する;
R
5及びR
6は、各々独立して、H又はメチルであり;
R
7はC
4-C
20アルキルであり;
R
8及びR
9は、各々独立して、C
1-C
12アルキルであるが、又はR
8及びR
9は、それらが結合している窒素原子と一緒に、5、6又は7員複素環を形成し;
a、b、c及びdは、各々独立して、1~24の整数であり;かつ、
xは0、1又は2である)。
【0193】
式(II)のいくつかの実施形態では、L1及びL2は、各々独立して、-O(C=O)-、-(C=O)O-又は直接結合である。別の実施形態では、G1及びG2は、各々独立して、-(C=O)-又は直接結合である。いくつかの異なる実施形態では、L1及びL2は、各々独立して、-O(C=O)-、-(C=O)O-又は直接結合であり;かつ、G1及びG2は、各々独立して、-(C=O)-又は直接結合である。
【0194】
式(II)のいくつかの異なる実施形態では、L1及びL2は、各々独立して、-C(=O)-、-O-、-S(O)x-、-S-S-、-C(=O)S-、-SC(=O)-、-NRa-、-NRaC(=O)-、-C(=O)NRa-、-NRaC(=O)NRa、-OC(=O)NRa-、-NRaC(=O)O-、-NRaS(O)xNRa-、-NRaS(O)x-又は-S(O)xNRa-である。
【0195】
式(II)の前述の実施形態の別の例では、脂質化合物は、以下の構造(IIA)又は(IIB):
【化9】
のいずれかを有する。
【0196】
式(II)のいくつかの実施形態では、脂質化合物は構造(IIA)を有する。別の実施形態では、脂質化合物は構造(IIB)を有する。
【0197】
式(II)の前述の実施形態のいずれかでは、L1又はL2の一方は-O(C=O)-である。例えば、幾つかの実施形態では、L1及びL2の各々は-O(C=O)-である。
【0198】
式(II)のいくつかの異なる実施形態では、L1又はL2の一方は-(C=O)O-である。例えば、幾つかの実施形態では、L1及びL2の各々は-(C=O)O-である。
【0199】
式(II)の別の実施形態では、L1又はL2の一方は直接結合である。本明細書で使用する場合、「直接結合」は、基(例えば、L1又はL2)が不在であることを意味する。例えば、幾つかの実施形態では、L1及びL2の各々は直接結合である。
【0200】
式(II)の更に別の実施形態では、R1aとR1bの少なくとも1つの出現では、R1aはH又はC1-C12アルキルであり、そしてR1bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する。
【0201】
式(II)のまた更に別の実施形態では、R4aとR4bの少なくとも1つの出現では、R4aはH又はC1-C12アルキルであり、そしてR4bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する。
【0202】
式(II)の更なる実施形態では、R2aとR2bの少なくとも1つの出現では、R2aはH又はC1-C12アルキルであり、そしてR2bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する。
【0203】
式(II)の更に別の実施形態では、R3aとR3bの少なくとも1つの出現では、R3aはH又はC1-C12アルキルであり、そしてR3bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する。
【0204】
式(II)の別の様々な実施形態では、脂質化合物は、以下の構造(IIC)又は(IID):
【化10】
のいずれかを有する
(式中、e、f、g及びhは、各々独立して、1~12の整数である)。
【0205】
式(II)のいくつかの実施形態では、脂質化合物は構造(IIC)を有する。別の実施形態では、脂質化合物は構造(IID)を有する。
【0206】
構造(IIC)又は(IID)の様々な実施形態では、e、f、g及びhは、各々独立して、4~10の整数である。
【0207】
式(II)のいくつかの実施形態では、a、b、c及びdは、各々独立して、2~12の整数又は4~12の整数である。別の実施形態では、a、b、c及びdは、各々独立して、8~12又は5~9の整数である。いくつかの実施形態では、aは0である。いくつかの実施形態では、aは1である。別の実施形態では、aは2である。更なる実施形態では、aは3である。更なる別の実施形態では、aは4である。いくつかの実施形態では、aは5である。別の実施形態では、aは6である。更なる実施形態では、aは7である。更なる別の実施形態では、aは8である。いくつかの実施形態では、aは9である。別の実施形態では、aは10である。更なる実施形態では、aは11である。更なる別の実施形態では、aは12である。いくつかの実施形態では、aは13である。別の実施形態では、aは14である。更なる実施形態では、aは15である。更なる別の実施形態では、aは16である。
【0208】
式(II)のいくつかの実施形態では、bは1である。別の実施形態では、bは2である。更なる実施形態では、bは3である。更なる別の実施形態では、bは4である。いくつかの実施形態では、bは5である。別の実施形態では、bは6である。更なる実施形態では、bは7である。更なる別の実施形態では、bは8である。いくつかの実施形態では、bは9である。別の実施形態では、bは10である。更なる実施形態では、bは11である。更なる別の実施形態では、bは12である。いくつかの実施形態では、bは13である。別の実施形態では、bは14である。更なる実施形態では、bは15である。更なる別の実施形態では、bは16である。
【0209】
式(II)のいくつかの実施形態では、cは1である。別の実施形態では、cは2である。更なる実施形態では、cは3である。更なる別の実施形態では、cは4である。いくつかの実施形態では、cは5である。別の実施形態では、cは6である。更なる実施形態では、cは7である。更なる別の実施形態では、cは8である。いくつかの実施形態では、cは9である。別の実施形態では、cは10である。更なる実施形態では、cは11である。更なる別の実施形態では、cは12である。いくつかの実施形態では、cは13である。別の実施形態では、cは14である。更なる実施形態では、cは15である。更なる別の実施形態では、cは16である。
【0210】
式(II)のいくつかの実施形態では、dは0である。いくつかの実施形態では、dは1である。別の実施形態では、dは2である。更なる実施形態では、dは3である。更なる別の実施形態では、dは4である。いくつかの実施形態では、dは5である。別の実施形態では、dは6である。更なる実施形態では、dは7である。更なる別の実施形態では、dは8である。いくつかの実施形態では、dは9である。別の実施形態では、dは10である。更なる実施形態では、dは11である。更なる別の実施形態では、dは12である。いくつかの実施形態では、dは13である。別の実施形態では、dは14である。更なる実施形態では、dは15である。更なる別の実施形態では、dは16である。
【0211】
式(II)のいくつかの実施形態では、eは1である。別の実施形態では、eは2である。更なる実施形態では、eは3である。更なる別の実施形態では、eは4である。いくつかの実施形態では、eは5である。別の実施形態では、eは6である。更なる実施形態では、eは7である。更なる別の実施形態では、eは8である。いくつかの実施形態では、eは9である。別の実施形態では、eは10である。更なる実施形態では、eは11である。更なる別の実施形態では、eは12である。
【0212】
式(II)のいくつかの実施形態では、fは1である。別の実施形態では、fは2である。更なる実施形態では、fは3である。更なる別の実施形態では、fは4である。いくつかの実施形態では、fは5である。別の実施形態では、fは6である。更なる実施形態では、fは7である。更なる別の実施形態では、fは8である。いくつかの実施形態では、fは9である。別の実施形態では、fは10である。更なる実施形態では、fは11である。更なる別の実施形態では、fは12である。
【0213】
式(II)のいくつかの実施形態では、gは1である。別の実施形態では、gは2である。更なる実施形態では、gは3である。更なる別の実施形態では、gは4である。いくつかの実施形態では、gは5である。別の実施形態では、gは6である。更なる実施形態では、gは7である。更なる別の実施形態では、gは8である。いくつかの実施形態では、gは9である。別の実施形態では、gは10である。更なる実施形態では、gは11である。更なる別の実施形態では、gは12である。
【0214】
式(II)のいくつかの実施形態では、hは1である。別の実施形態では、eは2である。更なる実施形態では、hは3である。更なる別の実施形態では、hは4である。いくつかの実施形態では、eは5である。別の実施形態では、hは6である。更なる実施形態では、hは7である。更なる別の実施形態では、hは8である。いくつかの実施形態では、hは9である。別の実施形態では、hは10である。更なる実施形態では、hは11である。更なる別の実施形態では、hは12である。
【0215】
式(II)の他のいくつかの様々な実施形態では、a及びdは同一である。いくつかの別の実施形態では、b及びcは同一である。いくつかの他の特定の実施形態では、a及びdは同一であり、かつb及びcは同一である。
【0216】
式(II)においてaとbの合計及びcとdの合計は、所望の特性を有するの脂質を得るために変化させることができる因子である。一実施形態では、aとbは、合計が14~24の範囲の整数であるように選択される。別の実施形態では、cとdは、合計が14~24の範囲の整数であるように選択される。さらに別の実施形態では、aとbの合計と、cとdの合計は同一である。例えば、幾つかの実施形態ではaとbの合計と、cとdの合計は、いずれも14~24の範囲の同じ整数である。さらなる実施形態では、a、b、c、及びdは、aとbの合計、及びcとdの合計が12以上になるように選択される。
【0217】
式(II)のR1a、R2a、R3a及びR4aにおける置換基は、特に限定されない。いくつかの実施形態では、R1a、R2a、R3a及びR4aの少なくとも1つはHである。いくつかの実施形態では、R1a、R2a、R3a及びR4aは各出現においてHである。いくつかの別の実施形態では、R1a、R2a、R3a及びR4aの少なくとも1つはC1-C12アルキルである。いくつかの別の実施形態では、R1a、R2a、R3a及びR4aの少なくとも1つはC1-C8アルキルである。いくつかの別の実施形態では、R1a、R2a、R3a及びR4aの少なくとも1つはC1-C6アルキルである。前述の実施形態のいくつかでは、C1-C8アルキルはメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル又はn-オクチルである。
【0218】
式(II)のいくつかの実施形態では、R1a、R1b、R4a及びR4bは各出現においてC1-C12アルキルである。
【0219】
式(II)の更なる実施形態では、R1b、R2b、R3b及びR4bの少なくとも1つはHであるか、又はR1b、R2b、R3b及びR4bは各出現においてHである。
【0220】
式(II)のいくつかの実施形態では、R1bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する。前述の他の実施形態では、R4bは隣接する炭素原子と一緒に炭素-炭素二重結合を形成する。
【0221】
式(II)のR5及びR6における置換基は、上記実施形態では、特に限定されない。いくつかの実施形態では、R5又はR6の一方はメチルである。他の実施形態では、R5又はR6の各々はメチルである。
【0222】
式(II)のR7における置換基は、上記実施形態では、特に限定されない。いくつかの実施形態では、R7はC6-C16アルキルである。いくつかの別の実施形態では、R7はC6-C9アルキルである。これらの実施形態のいくつかでは、R7は-(C=O)ORb、-O(C=O)Rb、-C(=O)Rb、-ORb、-S(O)xRb、-S-SRb、-C(=O)SRb、-SC(=O)Rb、-NRaRb、-NRaC(=O)Rb、-C(=O)NRaRb、-NRaC(=O)NRaRb、-OC(=O)NRaRb、-NRaC(=O)ORb、-NRaS(O)xNRaRb、-NRaS(O)xRb又は-S(O)xNRaRbで置換され、式中、RaはH又はC1-C12アルキルであり;RbはC1-C15アルキルであり;かつ、xは0、1又は2である。例えば、幾つかの実施形態ではR7は-(C=O)ORb又は-O(C=O)Rbで置換される。
【0223】
式(II)の前述のさまざまな実施形態では、R
bは分岐C
1-C
15アルキルである。例えば、幾つかの実施形態ではR
bは、以下の構造:
【化11】
のいずれかを有する。
【0224】
式(II)の前述の実施形態の他のいくつかでは、R8又はR9の一方がメチルである。別の実施形態では、R8及びR9の両方がメチルである。
【0225】
式(II)のいくつかの異なる実施形態では、R8及びR9は、それらが結合している窒素原子と一緒に、5、6又は7員複素環を形成する。前述のいくつかの実施形態では、R8及びR9は、それらが結合している窒素原子と一緒に、5員複素環、例えばピロリジニル環を形成する。前述のいくつかの別の実施形態では、R8及びR9は、それらが結合している窒素原子と一緒に、6員複素環、例えばピペラジニル環を形成する。
【0226】
式(II)の前述の脂質のさらに他の実施形態では、G3はC2-C4アルキレン、例えばC3アルキレンである。
【0227】
様々な異なる実施形態では、脂質化合物は、以下の表2に示す構造のいずれかを有する:
【0228】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【0229】
いくつかの実施形態では、LNPは、式(II)の脂質、ヌクレオシド修飾RNA、及び中性脂質、ステロイド、及びペグ化脂質から選択される1つ又は複数の賦形剤を含む。いくつかの実施形態では、式(II)の脂質は化合物II-9である。いくつかの実施形態では、式(II)の脂質は化合物II-10である。いくつかの実施形態では、式(II)の脂質は化合物II-11である。いくつかの実施形態では、式(II)の脂質は化合物II-12である。いくつかの実施形態では、式(II)の脂質は化合物II-32である。
【0230】
いくつかの別の実施形態では、LNPのカチオン性脂質成分は式(III)の構造:
【化12】
又はその医薬的に許容される塩、互変異性体、プロドラッグ又は立体異性体を有する
(式中、
L
1又はL
2の一方は、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)
x-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NR
aC(=O)-、-C(=O)NR
a-、NR
aC(=O)NR
a-、-OC(=O)NR
a-又は-NR
aC(=O)O-であり、L
1又はL
2の他方は-O(C=O)-、-(C=O)O-、-C(=O)-、-O-、-S(O)
x-、-S-S-、-C(=O)S-、SC(=O)-、-NR
aC(=O)-、-C(=O)NR
a-、NR
aC(=O)NR
a-、-OC(=O)NR
a-又は-NR
aC(=O)O-又は直接結合であり;
G
1及びG
2は、各々独立して、非置換C
1-C
12アルキレン又はC
1-C
12アルケニレンであり;
G
3は、C
1-C
24アルキレン、C
1-C
24アルケニレン、C
3-C
8シクロアルキレン、C
3-C
8シクロアルケニレンであり;
R
aは、H又はC
1-C
12アルキルであり;
R
1及びR
2は、各々独立して、C
6-C
24アルキル又はC
6-C
24アルケニルであり;
R
3は、H、OR
5、CN、-C(=O)OR
4、-OC(=O)R
4又は-NR
5C(=O)R
4であり;
R
4は、C
1-C
12アルキルであり;
R
5は、H又はC
1-C
6アルキルであり;かつ、
xは0、1又は2である)。
【0231】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、脂質は、以下の構造(IIIA)又は(IIIB):
【化13】
の一つを有する
(式中、
Aは、3~8員環のシクロアルキル又はシクロアルキレン環であり;
R
6各出現毎に、独立してH、OH又はC
1-C
24アルキルであり;
nは1~15の範囲の整数である)。
【0232】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、脂質は構造(IIIA)を有し、他の実施形態では、脂質は構造(IIIB)を有する。
【0233】
式(III)の他の実施形態では、脂質は、以下の構造(IIIC)又は(IIID):
【化14】
の一つを有する
(式中、y及びzは、各々独立して、1~12の範囲の整数である)。
【0234】
式(III)の前述の実施形態のいずれかでは、L1又はL2の一方は-O(C=O)-である。例えば、幾つかの実施形態では、L1及びL2の各々は-O(C=O)-である。前述のいずれかのいくつかの異なる実施形態では、L1及びL2は、各々独立して、-(C=O)O-又は-O(C=O)-である。例えば、幾つかの実施形態では、L1及びL2の各々は-(C=O)O-である。
【0235】
式(III)のいくつかの異なる実施形態では、脂質は、以下の構造(IIIE)又は(IIIF):
【化15】
の一つを有する。
【0236】
式(III)のいくつかの異なる実施形態では、脂質は、以下の構造(IIIG)、(IIIH)、(IIII)、又は(IIIJ):
【化16】
の一つを有する。
【0237】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、nは、2~12、例えば2~8又は2~4の範囲の整数である。例えば、幾つかの実施形態では、nは3、4、5又は6である。いくつかの実施形態では、nは3である。いくつかの実施形態では、nは4である。いくつかの実施形態では、nは5である。いくつかの実施形態では、nは6である。
【0238】
式(III)のいくつかの他の前述の実施形態では、y及びzは、各々独立して、2~10の範囲の整数である。例えば、幾つかの実施形態では、y及びzは、各々独立して、4~9又は4~6の範囲の整数である。
【0239】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、R6はHである。前述の他の実施形態では、R6はC1-C24アルキルである。別の実施形態では、R6はOHである。
【0240】
式(III)のいくつかの実施形態では、G3は非置換である。別の実施形態では、G3は置換されている。様々な異なる実施形態では、G3は直鎖C1-C24アルキレン又は直鎖C1-C24アルケニレンである。
【0241】
式(III)のいくつかの他の前述の実施形態では、R
1又はR
2の一方、又はいすれもがC
6-C
24アルケニルである。例えば、幾つかの実施形態では、R
1及びR
2は、それぞれ、独立して以下の構造:
【化17】
を有する
(式中、
R
7a及びR
7bは、各々に関し、独立して、H又はC
1-C
12アルキルであり;かつ、
aは2~12の整数であり、
ここで、R
7a、R
7b及びaは、各々R
1及びR
2が各々独立して6~20個の炭素原子を含むように選択される。例えば、幾つかの実施形態ではaは5~9又は8~12の範囲の整数である)。
【0242】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、R7aは少なくとも1つの出現ではHである。例えば、幾つかの実施形態では、R7aは各出現においてHである。前述の他の異なる実施形態では、R7bは少なくとも1つの出現ではC1-C8アルキルである。例えば、幾つかの実施形態では、C1-C8アルキルはメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ヘキシル又はn-オクチルである。
【0243】
式の別の実施形態では、R
1又はR
2の一方、又はいずれもが、以下の構造(III):
【化18】
のいずれかを有する。
【0244】
式(III)の前述の実施形態のいくつかでは、R3はOH、CN、-C(=O)OR4、-OC(=O)R4又は-NHC(=O)R4である。いくつかの実施形態では、R4はメチル又はエチルである。
【0245】
様々な異なる実施形態では、式(III)のカチオン性脂質は、以下の表3に示す構造のいずれかを有する:
【0246】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0247】
いくつかの実施形態では、LNPは、式(III)の脂質、ヌクレオシド修飾RNA、並びに任意の、中性脂質、ステロイド及びペグ化脂質から選択される1つ又は複数の賦形剤を含む。いくつかの実施形態では、式(III)の脂質は化合物III-3である。いくつかの実施形態では、式(III)の脂質は化合物III-7である。
【0248】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、約30~約95モルパーセントの量でLNPに存在する。一実施形態では、カチオン性脂質は、約30~約70モルパーセントの量でLNPに存在する。一実施形態では、カチオン性脂質は、約40~約60モルパーセントの量でLNPに存在する。一実施形態では、カチオン性脂質は、約50モルパーセントの量でLNPに存在する。一実施形態では、LNPは、カチオン性脂質のみで構成される。
【0249】
いくつかの実施形態では、LNPは、粒子の形成中にその形成を安定させる1つ又は複数の追加の脂質を含む。
【0250】
好適な安定化脂質として、中性脂質とアニオン性脂質が挙げられる。
【0251】
「中性脂質」という用語は、生理学的pHで非荷電又は中性の両性イオンの形で存在する多くの脂質種の任意のものを指す。代表的な中性脂質として、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、及びセレブロシドが挙げられる。
【0252】
例示的な中性脂質として以下のものが挙げられる:例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)及びジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-trans PE、1-ステアリオイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、及び1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(transDOPE)。一実施形態では、中性脂質は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)である。
【0253】
いくつかの実施形態では、LNPは、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPE、及びSMから選択される中性脂質を含む。様々な実施形態では、カチオン性脂質(例えば、式(I)の脂質)と中性脂質のモル比は、約2:1~約8:1の範囲である。
【0254】
様々な実施形態では、LNPはさらに、ステロイド又はステロイド類似体を含む。「ステロイド」は、次の炭素骨格を含む化合物である。
【化19】
【0255】
いくつかの実施形態では、ステロイド又はステロイド類似体はコレステロールである。これらの実施形態いくつかでは、カチオン性脂質(例えば、式(I)の脂質)とコレステロールのモル比は、約2:1~約1:1の範囲である。
【0256】
「アニオン性脂質」という用語は、生理学的pHで負に帯電した脂質を指す。このような脂質として、以下のものが挙げられる:ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、及び他のアニオン性修飾基が結合した中性脂質。
【0257】
いくつかの実施形態では、LNPは糖脂質(例えば、モノシアロガングリオシドGM1)を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、コレステロールなどのステロールを含む。
【0258】
いくつかの実施形態では、LNPは脂質が結合したポリマーを含む。「脂質結合ポリマー」という用語は、脂質部分とポリマー部分の両方を含む分子を指す。脂質が結合したポリマーの一例は、ペグ化脂質である。「ペグ化脂質」という用語は、脂質部分とポリエチレングリコール部分の両方を含む分子を指す。ペグ化脂質は当技術分野で知られており、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)などが挙げられる。
【0259】
いくつかの実施形態では、LNPは、ポリエチレングリコール-脂質(ペグ化脂質)である追加の安定化脂質を含む。好適なポリエチレングリコール-脂質として、以下のものが挙げられる:PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、PEG修飾セラミド(例えば、PEG-CerC14又はPEG-CerC20)、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ジアルキルグリセロール。代表的なポリエチレングリコール-脂質として、PEG-c-DOMG、PEG-c-DMA、及びPEG-s-DMGが挙げられる。一実施形態では、ポリエチレングリコール-脂質はN-[(メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバミル]-1,2-ジミリスタチルプロピル-3-アミン(PEG-c-DMA)である。一実施形態では、ポリエチレングリコール-脂質はPEG-c-DOMG)である。別の実施形態では、LNPは、以下が挙げられる:ペグ化ジアシルグリセロール(PEG-DAG)、例えば、1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG)、ペグ化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、PEGスクシネートジアシルグリセロール(PEG-S-DAG)、例えば、4-O-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-O-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタンジオエート(PEG-S-DMG)、ペグ化セラミド(PEG-cer)、又はPEGジアルコキシプロピルカルバメート、例えば、ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル-N-(2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル)カルバメート又は2,3-ジ(テトラデカノキシ)プロピル-N-(ω-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)カルバメート。様々な実施形態では、カチオン性脂質とペグ化脂質のモル比は、約100:1~約25:1の範囲である。
【0260】
いくつかの実施形態では、LNPは、次の構造(IV):
【化20】
を有するペグ化脂質又はその医薬的に許容される塩、互変異性体又は立体異性体を含む
(式中、
R
10及びR
11は、各々独立して、10~30個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖であり、式中、該アルキル鎖は、場合により1つ又は複数のエステル結合が介在する;かつ
zの平均値は30~60である)。
【0261】
ペグ化脂質(IV)の前述の実施形態のいくつかでは、zが42であるときR10及びR11はいずれもn-オクタデシルではない。いくつかの別の実施形態では、R10及びR11は、各々独立して、10~18個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖である。いくつかの実施形態では、R10及びR11は、各々独立して、12~16個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖である。いくつかの実施形態では、R10及びR11は、各々独立して、12個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖である。いくつかの実施形態では、R10及びR11は、各々独立して、14個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖である。別の実施形態では、R10及びR11は、各々独立して、16個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖である。更なる実施形態では、R10及びR11は、各々独立して、18個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖である。更なる別の実施形態では、R10は12個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖であり、かつR11は14個の炭素原子を含む、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和アルキル鎖である。
【0262】
様々な実施形態では、zは、(II)のPEG部分の平均分子量が約400~約6000g/molになるように選択される範囲にある。いくつかの実施形態では、zの平均は約45である。
【0263】
別の実施形態では、ペグ化脂質は、以下の構造:
【化21】
のいずれかを有する
(式中、nはペグ化脂質の平均分子量が約2500g/molになるように選択される整数である)。
【0264】
いくつかの実施形態では、追加の脂質は、約1~約10モルパーセントの量でLNPに存在する。一実施形態では、追加の脂質は、約1~約5モルパーセントの量でLNPに存在する。一実施形態では、追加の脂質は、約1モルパーセント又は約1.5モルパーセントの量でLNPに存在する。
【0265】
いくつかの実施形態では、LNPは、式(I)の脂質、ヌクレオシド修飾RNA、中性脂質、ステロイド及びペグ化脂質を含む。いくつかの実施形態では、式(I)の脂質は化合物I-6である。異なる実施形態では、中性脂質はDSPCである。別の実施形態では、ステロイドはコレステロールである。更に異なる実施形態では、ペグ化脂質は化合物IVaである。
【0266】
いくつかの実施形態では、LNPは、該LNPを細胞又は細胞集団に標的化することが可能な1つ又は複数の標的部分を含む。例えば、一実施形態では、標的部分は、LNPを細胞表面にある受容体に誘導するリガンドである。
【0267】
いくつかの実施形態では、LNPは、1つ又は複数の内在化ドメインを含む。例えば、一実施形態では、LNPは、細胞に結合してLNPの内在化を誘導する1つ又は複数のドメインを含む。例えば、一実施形態では、1つ又は複数の内在化ドメインは、細胞表面にある受容体に結合して、受容体を介したLNPの取り込みを誘導する。いくつかの実施形態では、LNPは生体内で生体分子を結合することが可能であり、ここで、LNP結合生体分子は内在化を誘導するの細胞表面受容体によって認識されることができる。例えば、一実施形態では、LNPは全身のApoEに結合し、LNP及び結合物質の取り込みをもたらす。
【0268】
他の例示的なLNP及びそれらの製造は、当技術分野で説明されており、例えばこれらはそれぞれ参照により全体が組み込まれている以下の文献に記載されている:U.S. Patent Application Publication 番号 US20120276209、Semple et al.、2010, Nat Biotechnol., 28(2):172-176;Akinc et al., 2010, Mol Ther., 18(7): 1357-1364;Basha et al., 2011, Mol Ther, 19(12): 2186-2200;Leung et al., 2012, J Phys Chem C Nanomater Interfaces, 116(34): 18440-18450;Lee et al., 2012, Int J Cancer., 131(5): E781-90;Belliveau et al., 2012, Mol Ther nucleic Acids, 1: e37;Jayaraman et al., 2012, Angew Chem Int Ed Engl., 51(34): 8529-8533;Mui et al., 2013, Mol Ther Nucleic Acids. 2, e139;Maier et al., 2013, Mol Ther., 21(8): 1570-1578;and Tam et al., 2013, Nanomedicine, 9(5): 665-74。
【0269】
次の反応スキームは、式(I)、(II)又は(III)の脂質を製造する方法を説明する。
【0270】
【化22】
式(I)の脂質(例えば、化合物A-5)の実施形態は、一般的な反応スキーム1(「方法A」)に従って調製でき、式中Rは飽和又は不飽和C
1-C
24アルキル又は飽和又は不飽和シクロアルキルであり、mは0又は1であり、かつnは1~24の整数である。一般的な反応スキーム1に関し、構造A-1の化合物は、市場の供給元から購入でき、あるいは当業者によく知られている方法に従って調製することもできる。A-1、A-2、及びDMAPの混合物をDCCで処理して、ブロミドA-3を生成する。ブロミドA-3、塩基(例えば、N、N-ジイソプロピルエチルアミン)及びN、N-ジメチルジアミンA-4の混合物を十分な温度と時間で加熱し、任意の必要な後処理及び/又は精製ステップの後A-5を生成する。
【0271】
【化23】
式(I)の化合物の別の実施形態(例えば、化合物B-5)は、一般的な反応スキーム2(「方法B」)に従って調製でき、式中Rは飽和又は不飽和C
1-C
24アルキル又は飽和又は不飽和シクロアルキルであり、mは0又は1であり、かつnは1~24の整数である。一般的な反応スキーム2に示すように、構造B-1の化合物は、市場の供給元から購入でき、あるいは当業者によく知られている方法に従って調製することもできる。B-1(1当量)の溶液を酸塩化物B-2(1当量)と塩基(例えば、トリエチルアミン)で処理する。粗生成物を酸化剤(例えば、クロロクロム酸ピリジニウム)で処理し、中間生成物B-3を回収する。次に、粗B-3、酸(例えば、酢酸)、及びN、N-ジメチルアミノアミンB-4の溶液を還元剤(例えば、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド)で処理し、任意の必要な後処理及び/又は精製の後B-5を得る。
【0272】
出発物質A-1及びB-1は飽和メチレン炭素のみを含むものとして上に示されているが、炭素-炭素二重結合を含む出発物質も炭素-炭素二重結合を含む化合物の調製に使用できることに留意すべきである。
【0273】
【化24】
式(I)の脂質の異なる実施形態(例えば、化合物C-7又はC9)は、一般的な反応スキーム3(「方法C」)に従って調製でき、式中Rは飽和又は不飽和C
1-C
24アルキル又は飽和又は不飽和シクロアルキルであり、mは0又は1であり、かつnは1~24の整数である。一般的な反応スキーム3に関し、構造C-1の化合物は、市場の供給元から購入でき、あるいは当業者によく知られている方法に従って調製することもできる。
【0274】
【化25】
式(II)の化合物の実施形態(例えば、化合物D-5及びD-7)は、一般的な反応スキーム4(「方法D」)に従って調製でき、式中R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b、R
4a、R
4b、R
5、R
6、R
8、R
9、L
1、L
2、G
1、G
2、G
3、a、b、c及びdは本明細書で定義されているとおりであり、R
7’はR
7又はC
3-C
19アルキルを表す。一般的な反応スキーム1に関し、構造D-1及びD-2の化合物は、市場の供給元から購入でき、あるいは当業者によく知られている方法に従って調製することもできる。D-1とD-2の溶液を還元剤(例えば、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド)で処理し、必要な後処理の後D-3を得る。D-3と塩基(例えば、トリメチルアミン、DMAP)の溶液を塩化アシルD-4(又はカルボン酸とDCC)で処理し、任意の必要な後処理及び/又は精製の後、D-5を得る。D-5はLiAlH4 D-6で還元し、任意の必要な後処理及び/又は精製の後、D-7とすることができる。
【0275】
【化26】
式(II)の脂質の実施形態(例えば、化合物E-5)は、一般的な反応スキーム5(「方法E」)に従って調製でき、式中R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b、R
4a、R
4b、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、L
1、L
2、G
3、a、b、c及びdは本明細書に記載の通りである。一般的な反応スキーム2に関し、構造E-1及びE-2の化合物は、市場の供給元から購入でき、あるいは当業者によく知られている方法に従って調製することもできる。E-1(過剰)、E-2及び塩基(例えば、炭酸カリウム)の混合物を加熱して、必要な後処理の後、E-3を得る。E-3と塩基(例えば、トリメチルアミン、DMAP)の溶液を塩化アシルE-4(又はカルボン酸とDCC)で処理し、任意の必要な後処理及び/又は精製の後、E-5を得る。
【0276】
【化27】
一般的な反応スキーム6は、式(III)の脂質の調製のための例示的な方法(方法F)を提供する。一般的な反応スキーム6におけるG
1、G
3、R
1及びR
3は式(III)について本明細書に記載した通りであり、G
1'は、G
1の1炭素の短いホモログを指す。構造F-1の化合物は、購入されるか又は当該技術分野で既知の方法に従って調製される。適切な縮合条件下(例、DCC)でF-1とジオールF-2を反応させると、エステル/アルコールF-3が生成され、これをアルデヒドF-4に酸化(例、PCC)できる。還元的アミノ化条件下でF-4とアミンF-5を反応させると、式(III)の脂質が得られる。
【0277】
式(III)の脂質の調製のための様々な代替戦略が当業者に利用可能であることに留意すべきである。例えば、L1及びL2がエステル以外の式(III)の他の脂質が、適切な出発原料を使用して、類似の方法に従って調製できる。さらに、一般的な反応スキーム6は、G1とG2が同一である式(III)の脂質の調製を示すが、しかしながら、これは本発明の必須の態様ではなく、G1とG2が異なる化合物を生成するために上記反応スキームの変更が可能である。
【0278】
本明細書に記載のプロセスにおいて、中間体化合物の官能基は、好適な保護基によって保護される必要があるかもしれないことが、当業者によって理解されるであろう。そのような官能基には、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、及びカルボン酸が挙げられる。好適な保護基には、以下のものが挙げられる:トリアルキルシリル又はジアリールアルキルシリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリル又はトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、ベンジル、等。アミノ、アミジノ及びグアニジノに好適な保護基には、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル等が挙げられる。メルカプトに好適な保護基には、-C(O)-R″(式中、R″はアルキル、アリール又はアリールアルキルである)、p-メトキシベンジル、トリチル等が挙げられる。カルボン酸に好適な保護基には、アルキル、アリール又はアリールアルキルエステルが挙げられる。保護基は、当業者に知られており、本明細書に記載されている標準的な技術に従って追加又は除去することができる。保護基の使用については、Green, T.W. and P.G.M.Wutz, Protective Groups in Organic Synthesis(1999), 3rd Ed., Wileyに詳述されている当業者が理解するように、保護基は、Wang樹脂、Rink樹脂又は2-クロロトリチルクロリド樹脂のようなポリマー樹脂であってもよい。
【0279】
医薬組成物
本明細書に記載の医薬組成物の製剤は、薬理学の分野で既知又は今後開発される任意の方法により調製することができる。一般に、そのような調製方法は、有効成分を担体又は1つ又は複数のその他の副成分と結合させ、その後、必要に応じて、又は所望の場合、製品を所望の単一又は複数の用量単位に成形又は包装するステップを含む。
【0280】
本明細書で提供される医薬組成物の説明は、主にヒトへの倫理的投与に適した医薬組成物についてのものであるが、そのような組成物は一般にあらゆる種の動物への投与も適していることを当業者は理解するであろう。ヒトへの投与に適した医薬組成物を様々な動物への投与に適した組成物とするための変更は十分に理解されており、通常の熟練した獣医薬理学者は、必要に応じ通常の実験を伴い、そのような変更事項を設計し、実行することができる。本発明の医薬組成物の投与が企図される対象として、ヒト及び他の霊長類、非ヒト霊長類、ウシ、ブタ、ウマ、羊、猫、犬などの商業的な哺乳動物を含めた各種哺乳動物が含まれるが、これらに限定されない。
【0281】
本発明の方法に有用な医薬組成物は、眼内、経口、経腸、経膣、非経口、局所、肺、鼻腔内、頬内、静脈内、脳室内、皮内、筋肉内、又は別の投与経路に好適な製剤として調製、包装、又は販売できる。他の考えられる製剤には、投影ナノ粒子、リポソーム製剤、有効成分を含む再封された赤血球、及び免疫原ベースの製剤が挙げられる。
【0282】
本発明の医薬組成物は、1つの単一単位用量として、又は複数の単一単位用量として、バルクで調製、包装、又は販売できる。本明細書で使用される場合、「単位用量」は所定量の有効成分を含む医薬組成物の個別の量である。有効成分の量は、一般的に、対象に投与される有効成分の投与量に等しいか、あるいは、例えば、そのような投与量の2分の1又は3分の1などといった利便性の高い分割量である。
【0283】
本発明の医薬組成物中の有効成分、医薬的に許容される担体、及び任意の追加成分の相対量は、治療する対象の属性、サイズ、及び状態、さらには組成物の投与経路より異なる。例として、組成物は、0.1%~100%(w/w)の有効成分を含んでもよい。
【0284】
有効成分に加えて、本発明の医薬組成物は、1つ又は複数の追加の医薬活性剤をさらに含んでもよい。
【0285】
本発明の医薬組成物の制御放出又は持続放出製剤は、従来の技術を使用して作製することができる。
【0286】
本明細書で使用される医薬組成物の「非経口投与」には、対象の組織の物理的破壊及び組織の破壊による医薬組成物の投与を特徴とする任意の投与経路が含まれる。したがって、非経口投与には、組成物の注射、外科的切開による組成物の適用、組織貫通非外科的創傷による組成物の適用、等による、医薬組成物の投与が含まれるが、これらに限定されない。特に、非経口投与には、眼内、硝子体内、皮下、腹腔内、筋肉内、皮内、胸骨内注射、腫瘍内、静脈内、脳室内、及び腎臓透析注入技術が含まれることが意図されるが、これらに限定されない。
【0287】
非経口投与に適した医薬組成物の製剤は、有効成分を滅菌水又は滅菌等張食塩水などの医薬的に許容される担体と組み合わせて含む。そのような製剤は、ボーラス投与又は連続投与に適した形態で調製、包装、販売されてもよい。注射用製剤は、アンプルなどの単位剤形又は防腐剤の入った複数回投与用容器などに調製、包装、販売してもよい。非経口投与用の製剤には、懸濁液、溶液、油性又は水性ビヒクル中エマルジョン、ペースト、及び移植可能な持続的放出又は生分解性製剤が挙げられるが、これらに限定されない。そのような製剤は、懸濁剤、安定剤、又は分散剤が挙げられるがこれらに限定されない1つ又は複数の追加成分をさらに含んでもよい。非経口投与用製剤の一実施形態では、有効成分は、再構成組成物を非経口投与する前に、好適なビヒクル(例えば、滅菌パイロジェンフリー水)で再構成するための乾燥(すなわち、粉末又は顆粒)形態で提供される。
【0288】
医薬組成物は、無菌の注射可能な水性又は油性懸濁液又は溶液の形態で調製、包装、販売してもよい。この懸濁液又は溶液は、既知の技術に従って製剤化することができ、有効成分に加えて、本明細書に記載の分散剤、湿潤剤、又は懸濁剤などの追加成分を含んでもよい。このような滅菌注射製剤は、例えば、水又は1,3ブタンジオールなどの非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒を使用して調製できる。その他の許容される希釈剤及び溶媒には、リンガー液、等張性塩化ナトリウム溶液、及び合成モノ又はジグリセリドなどの固定油が挙げられるが、これらに限定されない。有用な他の非経口投与可能な製剤には、有効成分を微結晶の形態で、リポソーム製剤内に、又は生分解性ポリマー系の成分として、含むものが挙げられる。持続放出又は埋め込み用組成物は、エマルジョン、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、難溶性塩などの医薬的に許容されるポリマー性又は疎水性材料を含んでもよい。
【0289】
本発明の医薬組成物は、口腔を介した肺投与に好適な製剤として調製、包装、販売してもよい。そのような製剤は、約0.5~約7ナノメートルの範囲の直径を有し、有効成分を含む乾燥粒子を含んでもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、約1~約6ナノメートルの範囲の直径を有し、有効成分を含む乾燥粒子を含んでもよい。そのような組成物は、噴射剤の流れを粉末を分散させるように向けることができる乾燥粉末リザーバーを含むデバイス、又は自己推進溶媒/粉末分配容器を使用するデバイス、例えば、有効成分が密閉容器内の低沸点噴射剤に溶解又は懸濁されているデバイスなどを使用する投与用に乾燥粉末の形態が便利である。いくつかの実施形態では、かかる粉末は、粒子の重量で少なくとも98%の直径が0.5ナノメートルより大きく、かつ粒子の数で少なくとも95%の直径が7ナノメートル未満である粒子を含む。いくつかの実施形態では、粒子の重量で少なくとも95%の直径が1ナノメートルより大きく、かつ粒子の数で少なくとも90%の直径が6ナノメートル未満である。いくつかの実施形態では、乾燥粉末組成物は、砂糖などの固体微粉末希釈剤を含み、単位用量形態で利便性高く提供される。
【0290】
低沸点噴射剤には、一般に、大気圧で沸点が65°F未満の液体噴射剤が挙げられる。一般に、推進剤は組成物の50~99.9%(w/w)を構成し、有効成分は組成物の0.1~20%(w/w)を構成しうる。噴射剤は、液体非イオン性又は固体陰イオン界面活性剤又は固体希釈剤(場合によっては、有効成分を含む粒子と同じオーダーの粒子サイズを有する)などの追加成分をさらに含んでもよい。
【0291】
非経口投与に好適な医薬組成物の製剤は、有効成分を滅菌水又は滅菌等張食塩水などの医薬的に許容される担体と組み合わせて含む。そのような製剤は、ボーラス投与又は連続投与に適した形態で調製、包装、販売されてもよい。注射用製剤は、アンプルなどの単位剤形又は防腐剤の入った複数回投与用容器などに調製、包装、販売してもよい。非経口投与用の製剤には、懸濁液、溶液、油性又は水性ビヒクル中エマルジョン、ペースト、及び移植可能な持続的放出又は生分解性製剤が挙げられるが、これらに限定されない。そのような製剤は、懸濁剤、安定剤、又は分散剤が挙げられるがこれらに限定されない1つ又は複数の追加成分をさらに含んでもよい。非経口投与用製剤の一実施形態では、有効成分は、再構成組成物を非経口投与する前に、好適なビヒクル(例えば、滅菌パイロジェンフリー水)で再構成するための乾燥(すなわち、粉末又は顆粒)形態で提供される。
【0292】
医薬組成物は、無菌の注射可能な水性又は油性懸濁液又は溶液の形態で調製、包装、販売してもよい。この懸濁液又は溶液は、既知の技術に従って製剤化することができ、有効成分に加えて、本明細書に記載の分散剤、湿潤剤、又は懸濁剤などの追加成分を含んでもよい。このような滅菌注射製剤は、例えば、水又は1,3ブタンジオールなどの非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒を使用して調製できる。その他の許容される希釈剤及び溶媒には、リンガー液、等張性塩化ナトリウム溶液、及び合成モノ又はジグリセリドなどの固定油が挙げられるが、これらに限定されない。有用な他の非経口投与可能な製剤には、有効成分を微結晶の形態で、リポソーム製剤内に、又は生分解性ポリマー系の成分として、含むものが挙げられる。持続放出又は埋め込み用組成物は、エマルジョン、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、難溶性塩などの医薬的に許容されるポリマー性又は疎水性材料を含んでもよい。
【0293】
本明細書で使用される「追加成分」には、これらに限定されないものの、以下の1つ又は複数が挙げられる:賦形剤;界面活性剤;分散剤;不活性希釈剤;造粒及び崩壊剤;結合剤;潤滑剤;甘味料;香料;着色剤;防腐剤;ゼラチンなどの生理学的に分解可能な組成物;水性ビヒクル及び溶媒;油性ビヒクル及び溶剤;懸濁剤;分散又は湿潤剤;乳化剤、粘滑薬;バッファ;塩;増粘剤;フィラー;乳化剤;抗酸化剤;抗生物質;抗真菌剤;安定剤;及び医薬的に許容されるポリマー性又は疎水性材料。本発明の医薬組成物に含まれ得る他の「追加成分」は、当技術分野で知られており、例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington's Pharmaceutical Sciences(1985, Genaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA)に記載されている。
【0294】
治療方法
本発明は、1つ又は複数のHCV抗原をコードする1つ又は複数の単離核酸の有効量を組成物を投与することを含む、対象におけるHCVに対する適応免疫応答を誘導する方法を提供する。
【0295】
一実施形態では、方法は、対象におけるHCV、HCV感染、又はHCV関連の疾患又は障害に対する免疫を提供する。したがって、本発明は、HCV関連の感染、疾患、又は障害を治療又は予防する方法を提供する。
【0296】
一実施形態では、組成物は、HCV関連の感染、疾患、又は障害を有する対象に投与される。一実施形態では、組成物は、HCV関連の感染、疾患、又は障害を発症するリスクのある対象に投与される。例えば、組成物は、HCVと接触するリスクがある対象に投与してもよい。一実施形態では、組成物は、HCVが流行している地理的地域に住んでいる、旅行した、又は旅行することが予想される対象に投与される。一実施形態では、組成物は、HCVが流行している地理的地域に住んでいる、旅行した、又は旅行することが予想される他者と接触した又は接触することが予想される対象に投与される。一実施形態では、組成物は、職業上、性的理由により、又はその他の接触を通じてHCVに暴露したことが分かっている対象に投与される。
【0297】
一実施形態では、方法は、1つ又は複数のHCV抗原をコードする1つ又は複数のヌクレオシド修飾核酸分子を含む組成物を投与することを含む。一実施形態では、方法は、1つ又は複数のHCV抗原をコードする第1のヌクレオシド修飾核酸分子と、1つ又は複数のHCV抗原をコードする第2のヌクレオシド修飾核酸分子とを含む組成物を投与することを含む。一実施形態では、方法は、本明細書に記載の複数の系統HCV抗原をコードする1つ又は複数のヌクレオシド修飾核酸分子を含む組成物を投与することを含む。
【0298】
一実施形態では、方法は、1つ又は複数のHCV抗原をコードする1つ又は複数のヌクレオシド修飾核酸分子をそれぞれ含む1つ又は複数の組成物を投与することを含む。一実施形態では、方法は、1つ又は複数のHCV抗原をコードする1つ又は複数のヌクレオシド修飾核酸分子を含む第1の組成物を投与することと、1つ又は複数のHCV抗原をコードする1つ又は複数のヌクレオシド修飾核酸分子を含む第2の組成物を投与することとを含む。一実施形態では、方法は、本明細書に記載の1つ又は複数の系統HCV抗原をコードする1つ又は複数のヌクレオシド修飾核酸分子をそれぞれ含む複数の組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、複数の組成物を時間をずらして投与することを含む。
【0299】
いくつかの実施形態では、複数のHCV抗原、アジュバント、又はそれらの組み合わせをコードする複数のヌクレオシド修飾核酸分子を対象に投与することとを含む。
【0300】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、投与後少なくとも数日間にわたって、本明細書に記載のHCV抗原又はアジュバントの持続的な発現を可能にする。本発明の方法は、投与後少なくとも2週間にわたって、本明細書に記載のHCV抗原又はアジュバントの持続的な発現を可能にする。本発明の方法は、投与後少なくとも1月にわたって、本明細書に記載のHCV抗原又はアジュバントの持続的な発現を可能にする。ただし、いくつかの実施形態では、核酸は対象ゲノムに組み込まれていないため、本方法は、幾つかの実施形態では、一過性の発現も提供する。
【0301】
いくつかの実施形態では、本方法は、本明細書に記載のHCV抗原又はアジュバントの安定した発現を提供するヌクレオシド修飾RNAを投与することを含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオシド修飾RNAの投与は、自然免疫応答をほとんど又はまったくもたらさず、効果的な適応免疫応答を誘導する。
【0302】
いくつかの実施形態では、本方法は、HCVに対する持続的な保護を提供する。例えば、幾つかの実施形態では、本方法は、2週間超の間HCVに対する持続的な保護を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、1月以上の間HCVに対する持続的な保護を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、2月以上の間HCVに対する持続的な保護を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、3月以上の間HCVに対する持続的な保護を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、4月以上の間HCVに対する持続的な保護を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、5月以上の間HCVに対する持続的な保護を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、6月以上の間HCVに対する持続的な保護を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、1年以上の間HCVに対する持続的な保護を提供する。
【0303】
一実施形態では、本組成物の単回接種は、1月以上、2月以上、3月以上、4月以上、5月以上、6月以上、又は1年又はそれ以上の間HCVに対する持続的保護を誘導する。
【0304】
治療方法において、本発明の組成物は、当技術分野で公知の方法を使用して、多くの様々な方法で投与することができる。一実施形態では、本発明の方法は、例えば、経腸又は非経口投与といった対象の全身投与を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、組成物の皮内送達を含む。別の一実施形態では、本方法は、組成物の静脈内送達を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、組成物の筋肉内送達を含む。一実施形態では、本方法は、組成物の皮下送達を含む。一実施形態では、本方法は組成物の吸入を含む。一実施形態では、本方法は、組成物の鼻腔内送達を含む。
【0305】
本発明の組成物は、単独で、又は別の薬剤と組み合わせて対象に投与できることが理解されるであろう。
【0306】
したがって、本発明の治療的及び予防的方法は、本発明の方法を実施するために本明細書に記載されるHCV抗原、アジュバント、又はそれらの組み合わせをコードする医薬組成物の使用を包含する。本発明を実施するのに有用な医薬組成物は、1ng/kg/日~100mg/kg/日の用量を送達するために投与してもよい。一実施形態では、本発明は、哺乳動物における本発明の化合物の濃度が10nM~10μMとなる用量の投与を想定している。
【0307】
典型的には、本発明の方法でヒトなどの哺乳動物に投与できる用量は、哺乳動物の体重1キログラムあたり0.01μg~約50mgの量の範囲であるが、投与する正確な用量は、限定されないものの、哺乳動物の種類、治療する疾患の状態や種類、哺乳動物の年齢、投与経路など、さまざまな要因により異なる。いくつかの実施形態では、化合物の用量は、哺乳動物の体重1キログラムあたり約0.1μg~約10mgの範囲で異なる。いくつかの実施形態では、用量は、哺乳動物の体重1キログラムあたり約1μg~約1mgの範囲で異なる。
【0308】
組成物は、毎日数回の頻度で哺乳動物に投与してもよく、あるいはより低頻度、例えば、1日1回、1週間に1回、2週間に1回、1か月に1回など、あるいはさらに低頻度、例えば、数ヶ月ごと、数年ごと、あるいはさらにより低頻度、例えば、10~20年ごと、15~30年ごと、あるいはさらにより低頻度、例えば、50~100年ごとなど、で投与してもよい。投与の頻度は、当業者には容易に明らかであり、限定されないものの、治療する疾患の種類及び重症度、哺乳動物の種類及び年齢など任意の数の要因に依存するだろう。
【0309】
いくつかの実施形態では、本発明の免疫原性組成物又はワクチンの投与は、単回投与により実施してもよく又は複数回投与によりブーストしてもよい。
【0310】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の1つ又は複数のHCV抗原又はアジュバントをコードする1つ又は複数の組成物を投与することを含む方法を包含する。いくつかの実施形態では、本方法は、組み合わせを投与した場合の全体的な効果は、各HCV抗原又はアジュバントを投与する効果の合計にほぼ等しくなる相加効果を有する。別の実施形態では、本方法は、組み合わせを投与した場合の全体的な効果は、各HCV抗原又はアジュバントを投与した場合の効果の合計よりも大きくなる相乗効果を有する。
【0311】
本発明は、以下の実験例を参照することによりさらに詳細に説明される。これらの例は、説明のみを目的として提供されており、特に指定がない限り、限定することを意図したものではない。したがって、本発明は、決して以下の実施例に限定されると解釈されるべきではなく、本明細書で提供される教示の結果として明らかになるありとあらゆるバリエーションを包含すると解釈されるべきである。
【0312】
さらに説明することなく、当業者は、前述の説明及び以下の例示的な実施例を使用して、本発明を作成及び利用し、請求項の方法を実施できると考えられる。したがって、以下の実施例は、本開示を何らかの形で限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例0313】
実施例1:ヌクレオシド修飾mRNA接種によるC型肝炎ウイルス(HCV)の保護
ヌクレオシド修飾mRNAを利用する新しいワクチンプラットフォームを開発した。このプラットフォームは、具体的には、強力なT濾胞性ヘルパー(Tfh)細胞応答を誘導する。Tfh細胞は、B細胞の増殖、親和性成熟、クラススイッチング、高レベルの抗体産生、及び長期記憶を誘導する。このプラットフォームは、新しいウイルスエンベロープ系統設計アプローチを用いるC型肝炎ウイルス(HCV)のワクチンを開発するために使用された。HCVワクチンは、自己集合し、非感染性のウイルス様粒子としてトランスフェクトされた細胞から発芽する、コアとエンベロープ1及び2タンパク質(C-E1-E2)を含む単一のタンパク質/mRNAとして発現するエンベロープタンパク質の系統をコードする。いくつかの態様では、ワクチンプラットフォームでは、脂質ナノ粒子(LNP)を使用して修飾RNAをカプセル化する。LNPカプセル化は、in vivoでmRNAの効率的な送達と発現を可能にし、ウリジンの代わりに1-メチルプソイドウリジンヌクレオシドを用いる修飾は、Tfh細胞の誘導を通じてmRNAプラットフォームによって誘導される抗体応答の効力に重要であるが、他のさまざまなヌクレオシド修飾又は非修飾mRNAと、他の脂質、炭水化物、タンパク質、ポリマー、及びその他の送達システムを使用して、同様のワクチンを作成することもできる。
【0314】
HCV E1及びE2抗原の未修飾配列は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるBailey et al.(2017, Broadly neutralizing antibodies with few somatic mutations and hepatitis C virus clearance, Journal of Clinical Investigation Insight, Volume 2)に記載のように、抗HCV抗体のセロコンバージョン前の急性感染から始まり血漿ウイルス血症の解消及び治癒を通じた治療ナイーブ対象において12か月の期間にわたる完全なE1E2エンベロープ遺伝子のHCV配列の進化を分析することにより同定される。
【0315】
この対象は、自身の自己ウイルスを中和する広範な中和抗体(bNAb)、並びに多数及び多くの割合の異種ウイルスを発現した。シングルゲノムシーケンシング(SGS)手法を使用して、この対象における生産的な臨床感染の原因である3つの明確なtransmitted/founder (T/F)ウイルスゲノムが特定された。同じSGS方法を使用して、HCV E1E2配列の進化について、対象がウイルス血症を自然解消した後、1年間にわたって特徴付けをした。この12か月間の7つの時点で得られた連続的なウイルスE1E2配列の分析により、一連のストリンジェントなウイルス集団のボトルネックが明らかになった。これは、進化して最終的に中和幅(neutralizing breadth:bNAb)を獲得した自己、株特異的中和抗体(NAb)の開発によるものである。進化中のウイルスの異常発生の中で、最終的にNAbの幅と効力がウイルス感染を消去するのに十分になるまで、NAbの進化を継続させることにより、ウイルス血症を保持するE1E2バリアントを回避する一連のウイルスNAbを同定した。これにより、この対象における持続的なウイルス制御と感染の臨床的治癒がもたらされた。中和幅につながるウイルス抗体の共進化(coevolution)は、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)感染では確立された概念であるが、HCV感染については以前に報告されていない。ここで、HCV感染を消去し、異種HCVウイルスの幅広いパネルを中和するのに十分なNAb幅と効力を誘発した一連の進化するHCV E1E2配列について記載する。これらのHCV E1E2配列は、この新規RNA発現プラットフォーム又はウイルス、プラスミド、タンパク質、及びペプチドを含む他のワクチン送達システムによってワクチン接種されたヒトのbNAbを誘発するのに十分であり、ヒトをHCV感染から保護するのに十分であると予測される。この新規HCVワクチンで使用されるHCV E1E2配列には、本明細書に開示されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0316】
図1A及び2Aに示すように、以下の実施例2で提供されるA-Lで示されるものを含むHCV E1E2抗原はmAbに結合可能である。
図1B及び2Bは、異なるHCV E1E2抗原間の表現型の関係を示す樹状図を示す。
図3A及び
図3Bは、HCV E1E2抗原の系統樹とハイライトしたプロットを示す。
図4は、HCVAとHCVBでトランスフェクトされた293T細胞のウエスタンブロットを示し、すべてのタンパク質が存在することを示す。
【0317】
実施例2:配列
以下に示す免疫原には、
図1、
図2、及び
図3の樹状図に基づいてA-Iというラベルを付す。いくつかの態様では、免疫原は上記で同定されたようなE1及びE2を含む。いくつかの態様では、免疫原はコアタンパク質をさらに含む。コアタンパク質は、任意のHCV単離物に由来であってよい。E1E2のアミノ酸配列とA-Iのコア-E1E2免疫原のアミノ酸及びヌクレオチド配列を提供する。
【0318】
E1E2 DNA 配列
配列A:E1E2 DNA(A-CE1E2-11108_20040817_FB08_A-DNA)(配列番号1)
配列B:E1E2 DNA(B-CE1E2-inferred-11108-DNA)(配列番号2)
配列C:E1E2 DNA(C-CE1E2-11108_20050210_FD13_C-DNA)(配列番号3)
配列D:E1E2 DNA(D-CE1E2-11108_20050512_FB05_D-DNA)(配列番号4)
配列E:E1E2 DNA(E-CE1E2-11108_20050823_5A12_E-DNA)(配列番号5)
配列F:E1E2 DNA(F-CE1E2-11108_20040817_FA01_F-DNA(配列番号6)
配列G:E1E2 DNA(G-CE1E2-11108_20050210_FB02_G-DNA)(配列番号7)
配列H:E1E2 DNA(H-CE1E2-11108_20050512_FA22_H-DNA)(配列番号8)
配列I:E1E2 DNA(I-CE1E2-11108_20050720_FE05_I-DNA)(配列番号9)
【0319】
E1E2タンパク質配列
配列A:E1E2タンパク質(A-CE1E2-11108_20040817_FB08_A)(配列番号10)
配列B:E1E2タンパク質(B-CE1E2-inferred-11108)(配列番号11)
配列C:E1E2タンパク質(C-CE1E2-11108_20050210_FD13_C)(配列番号12)
配列D:E1E2タンパク質(D-CE1E2-11108_20050512_FB05_D)(配列番号13)
配列E:E1E2タンパク質(E-CE1E2-11108_20050823_5A12_E)(配列番号14)
配列F:E1E2タンパク質(F-CE1E2-11108_20040817_FA01_F)(配列番号15)
配列G:E1E2タンパク質(G-CE1E2-11108_20050210_FB02_G)(配列番号16)
配列H:E1E2タンパク質(H-CE1E2-11108_20050512_FA22_H)(配列番号17)
配列I:E1E2タンパク質(I-CE1E2-11108_20050720_FE05_I)(配列番号18)
【0320】
コア-E1E2 DNA 配列
配列A:C1E1E2 DNA(A-CE1E2-11108_20040817_FB08_A-DNA)(配列番号19)
配列B:C1E1E2 DNA(B-CE1E2-inferred-11108-DNA)(配列番号20)
配列C:C1E1E2 DNA(C-CE1E2-11108_20050210_FD13_C-DNA)(配列番号21)
配列D:C1E1E2 DNA(D-CE1E2-11108_20050512_FB05_D-DNA)(配列番号22)
配列E:C1E1E2 DNA(E-CE1E2-11108_20050823_5A12_E-DNA)(配列番号23)
配列F:C1E1E2 DNA(F-CE1E2-11108_20040817_FA01_F-DNA)(配列番号24)
配列G:C1E1E2 DNA(G-CE1E2-11108_20050210_FB02_G-DNA)(配列番号25)
配列H:C1E1E2 DNA(H-CE1E2-11108_20050512_FA22_H-DNA)(配列番号26)
配列I:C1E1E2 DNA(I-CE1E2-11108_20050720_FE05_I-DNA)(配列番号27)
【0321】
コア-E1E2タンパク質配列
配列A:C1E1E2タンパク質(A-CE1E2-11108_20040817_FB08_A)(配列番号28)
配列B:C1E1E2タンパク質(B-CE1E2-inferred-11108)(配列番号29)
配列C:C1E1E2タンパク質(C-CE1E2-11108_20050210_FD13_C)(配列番号30)
配列D:C1E1E2タンパク質(D-CE1E2-11108_20050512_FB05_D)(配列番号31)
配列E:C1E1E2タンパク質(E-CE1E2-11108_20050823_5A12_E)(配列番号32)
配列F:C1E1E2タンパク質(F-CE1E2-11108_20040817_FA01_F)(配列番号33)
配列G:C1E1E2タンパク質(G-CE1E2-11108_20050210_FB02_G)(配列番号34)
配列H:C1E1E2タンパク質(H-CE1E2-11108_20050512_FA22_H)(配列番号35)
配列I:C1E1E2タンパク質(I-CE1E2-11108_20050720_FE05_I)(配列番号36)
【0322】
実施例3:追加配列(J、K、L)
図2の系統樹に基づいて、J-Lとラベル付けした免疫原のE1E2 DNA配列を提供する。
配列J:s117_20041118_FB05(配列番号37)
配列K:s117_20050210_FB05(配列番号38)
配列L:s117_20050210_1a051(配列番号39)
【0323】
実施例4:全ての配列
図3にリストされている各HCV単離株のヌクレオチド配列を提供する。
【0324】
>s117.D110.1a049_U01(配列番号40)
>s117.D110.A02(配列番号41)
>s117.D110.A03(配列番号42)
>s117.D110.A04(配列番号43)
>s117.D110.A06(配列番号44)
>s117.D110.A07(配列番号45)
>s117.D110.A10(配列番号46)
>s117.D110.A11(配列番号47)
>s117.D110.A16(配列番号48)
>s117.D110.A21(配列番号49)
>s117.D110.A23(配列番号50)
>s117.D110.A24(配列番号51)
>s117.D110.A25(配列番号52)
>s117.D110.A27(配列番号53)
>s117.D110.A28(配列番号54)
>s117.D110.A30(配列番号55)
>s117.D110.A31(配列番号56)
>s117.D110.A32(配列番号57)
>s117.D110.B01(配列番号58)
>s117.D110.B02(配列番号59)
>s117.D110.B03(配列番号60)
>s117.D110.B04(配列番号61)
>s117.D110.B05(配列番号62)
>s117.D110.B06(配列番号63)
>s117.D110.B07(配列番号64)
>s117.D110.B08(配列番号65)
>s117.D110.B09(配列番号66)
>s117.D110.B10(配列番号67)
>s117.D110.B12(配列番号68)
>s117.D110.B14(配列番号69)
>s117.D110.B15(配列番号70)
>s117.D110.B16(配列番号71)
>s117.D110.FA01(配列番号72)
>s117.D110.FA02(配列番号73)
>s117.D110.FA04(配列番号74)
>s117.D110.FA07(配列番号75)
>s117.D110.FA08(配列番号76)
>s117.D110.FB03(配列番号77)
>s117.D110.FB04(配列番号78)
>s117.D110.FB05(配列番号79)
>s117.D110.FB11(配列番号80)
>s117.D110.FB13(配列番号81)
>s117.D110.FB14(配列番号82)
>s117.D110.FT01(配列番号83)
>s117.D110.FT03(配列番号84)
>s117.D110.T03(配列番号85)
>s117.D110.T06(配列番号86)
>s117.D110.T07(配列番号87)
>s117.D17.1a053_v02(配列番号88)
>s117.D17.FA01(配列番号89)
>s117.D17.FA10(配列番号90)
>s117.D17.FA12(配列番号91)
>s117.D17.FB01(配列番号92)
>s117.D17.FB03(配列番号93)
>s117.D17.FB06(配列番号94)
>s117.D17.FB08(配列番号95)
>s117.D17.FB12(配列番号96)
>s117.D17.FB18(配列番号97)
>s117.D17.FB19(配列番号98)
>s117.D17.FB23(配列番号99)
>s117.D17.FB24(配列番号100)
>s117.D17.FC01(配列番号101)
>s117.D17.FC10(配列番号102)
>s117.D17.FD02(配列番号103)
>s117.D17.FD06(配列番号104)
>s117.D17.FD09(配列番号105)
>s117.D17.FT02(配列番号106)
>s117.D194.1a050_U02(配列番号107)
>s117.D194.1a051_U02(配列番号108)
>s117.D194.A02(配列番号109)
>s117.D194.A05(配列番号110)
>s117.D194.A06(配列番号111)
>s117.D194.A07(配列番号112)
>s117.D194.A08(配列番号113)
>s117.D194.A10(配列番号114)
>s117.D194.A12(配列番号115)
>s117.D194.A13(配列番号116)
>s117.D194.A14(配列番号117)
>s117.D194.A17(配列番号118)
>s117.D194.A18(配列番号119)
>s117.D194.A19(配列番号120)
>s117.D194.B01(配列番号121)
>s117.D194.B02(配列番号122)
>s117.D194.B03(配列番号123)
>s117.D194.B04(配列番号124)
>s117.D194.B05(配列番号125)
>s117.D194.B06(配列番号126)
>s117.D194.B07(配列番号127)
>s117.D194.B08(配列番号128)
>s117.D194.B09(配列番号129)
>s117.D194.B10(配列番号130)
>s117.D194.FA01(配列番号131)
>s117.D194.FA14(配列番号132)
>s117.D194.FB01(配列番号133)
>s117.D194.FB02(配列番号134)
>s117.D194.FB04(配列番号135)
>s117.D194.FB05(配列番号136)
>s117.D194.FB07(配列番号137)
>s117.D194.FB09(配列番号138)
>s117.D194.FB12(配列番号139)
>s117.D194.FB13(配列番号140)
>s117.D194.FB14(配列番号141)
>s117.D194.FC03(配列番号142)
>s117.D194.FD02(配列番号143)
>s117.D194.FD04(配列番号144)
>s117.D194.FD06(配列番号145)
>s117.D194.FD07(配列番号146)
>s117.D194.FD10(配列番号147)
>s117.D194.FD11(配列番号148)
>s117.D194.FD13(配列番号149)
>s117.D194.FD14(配列番号150)
>s117.D194.FD16(配列番号151)
>s117.D194.FD18(配列番号152)
>s117.D194.FD19(配列番号153)
>s117.D194.FD20(配列番号154)
>s117.D285.1a052_U03(配列番号155)
>s117.D285.A01(配列番号156)
>s117.D285.A04(配列番号157)
>s117.D285.A05(配列番号158)
>s117.D285.A07(配列番号159)
>s117.D285.A08(配列番号160)
>s117.D285.A09(配列番号161)
>s117.D285.A10(配列番号162)
>s117.D285.A11(配列番号163)
>s117.D285.A12(配列番号164)
>s117.D285.A16(配列番号165)
>s117.D285.A19(配列番号166)
>s117.D285.A20(配列番号167)
>s117.D285.B05(配列番号168)
>s117.D285.B11(配列番号169)
>s117.D285.B13(配列番号170)
>s117.D285.B16(配列番号171)
>s117.D285.B19(配列番号172)
>s117.D285.FA03(配列番号173)
>s117.D285.FA04(配列番号174)
>s117.D285.FA06(配列番号175)
>s117.D285.FA12(配列番号176)
>s117.D285.FA15(配列番号177)
>s117.D285.FA17(配列番号178)
>s117.D285.FA18(配列番号179)
>s117.D285.FA22(配列番号180)
>s117.D285.FA23(配列番号181)
>s117.D285.FA24(配列番号182)
>s117.D285.FB04(配列番号183)
>s117.D285.FB05(配列番号184)
>s117.D285.FB08(配列番号185)
>s117.D285.FB09(配列番号186)
>s117.D285.FB10(配列番号187)
>s117.D285.FB12(配列番号188)
>s117.D285.FB14(配列番号189)
>s117.D285.FB15(配列番号190)
>s117.D285.FB17(配列番号191)
>s117.D285.FB22(配列番号192)
>s117.D285.FB23(配列番号193)
>s117.D285.FT06(配列番号194)
>s117.D285.FT07(配列番号195)
>s117.D354.FA04(配列番号196)
>s117.D354.FB01(配列番号197)
>s117.D354.FB04(配列番号198)
>s117.D354.FB05(配列番号199)
>s117.D354.FB09(配列番号200)
>s117.D354.FBO6(配列番号201)
>s117.D354.FC06(配列番号202)
>s117.D354.FC07(配列番号203)
>s117.D354.FC12(配列番号204)
>s117.D354.FC13(配列番号205)
>s117.D354.FC17(配列番号206)
>s117.D354.FC22(配列番号207)
>s117.D354.FD06(配列番号208)
>s117.D354.FD08(配列番号209)
>s117.D354.FD11(配列番号210)
>s117.D354.FD14(配列番号211)
>s117.D354.FD15(配列番号212)
>s117.D354.FD16(配列番号213)
>s117.D354.FD17(配列番号214)
>s117.D354.FD20(配列番号215)
>s117.D354.FD24(配列番号216)
>s117.D354.FD27(配列番号217)
>s117.D354.FE01(配列番号218)
>s117.D354.FE05(配列番号219)
>s117.D354.FE10(配列番号220)
>s117.D354.FE11(配列番号221)
>s117.D354.FE14(配列番号222)
>s117.D354.FF01(配列番号223)
>s117.D388.5A03(配列番号224)
>s117.D388.5A04(配列番号225)
>s117.D388.5A05(配列番号226)
>s117.D388.5A11(配列番号227)
>s117.D388.5A12(配列番号228)
>s117.D388.5A13(配列番号229)
>s117.D388.5T01(配列番号230)
>s117.D388.5T03(配列番号231)
>s117.D46.A02(配列番号232)
>s117.D46.A08(配列番号233)
>s117.D46.A10(配列番号234)
>s117.D46.A12(配列番号235)
>s117.D46.A14(配列番号236)
>s117.D46.A17(配列番号237)
>s117.D46.A18(配列番号238)
>s117.D46.A20(配列番号239)
>s117.D46.A22(配列番号240)
>s117.D46.A25(配列番号241)
>s117.D46.A27(配列番号242)
>s117.D46.A35(配列番号243)
>s117.D46.B02(配列番号244)
>s117.D46.B10(配列番号245)
>s117.D46.B13(配列番号246)
>s117.D46.B26(配列番号247)
>s117.D46.B30(配列番号248)
>s117.D46.B35(配列番号249)
>s117.D46.C01(配列番号250)
>s117.D46.FA01(配列番号251)
>s117.D46.FA02(配列番号252)
>s117.D46.FA03(配列番号253)
>s117.D46.FA07(配列番号254)
>s117.D46.FA08(配列番号255)
>s117.D46.FA13(配列番号256)
>s117.D46.FA17(配列番号257)
>s117.D46.FA22(配列番号258)
>s117.D46.FB03(配列番号259)
>s117.D46.FB04(配列番号260)
>s117.D46.FB07(配列番号261)
>s117.D46.FB09(配列番号262)
>s117.D46.FB10(配列番号263)
>s117.D46.FB12(配列番号264)
>s117.D46.FB14(配列番号265)
>s117.D46.FB16(配列番号266)
>s117.D46.FB20(配列番号267)
>s117.D46.FT02(配列番号268)
【0325】
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本発明を特定の実施形態を参照して開示したが、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく本発明の他の実施形態及び変形が他の当業者により可能であることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、そのようなすべての実施形態及び同等の変形を含むと解釈される意図である。
少なくとも1つのHCV抗原をコードする少なくとも1つの単離ヌクレオシド修飾RNAを含む、対象におけるC型肝炎ウイルス(HCV)に対する免疫応答を誘導するための組成物。