(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019533
(43)【公開日】2024-02-09
(54)【発明の名称】膜結合型IL-10を発現する遺伝子的にリプログラミングされたTreg
(51)【国際特許分類】
C12N 15/24 20060101AFI20240202BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240202BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240202BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240202BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240202BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240202BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240202BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240202BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240202BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20240202BHJP
【FI】
C12N15/24 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
A61K38/20
A61K35/17
A61P37/06
A61P43/00 105
A61P37/08
A61P11/06
C12N5/0783
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210111
(22)【出願日】2023-12-13
(62)【分割の表示】P 2021500374の分割
【原出願日】2019-03-22
(31)【優先権主張番号】62/647,084
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519112058
【氏名又は名称】ガビッシュ-ガリラヤ バイオ アプリケーションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】グロス、ギデオン
(72)【発明者】
【氏名】ウェインスタイン-マロム、ハダス
(72)【発明者】
【氏名】クローナー、アミット
(57)【要約】
【課題】膜結合型IL10を発現する遺伝子的にリプログラミングされた調節性T細胞、ならびに全身免疫抑制の増強における、及び免疫系の過剰な活性として現れる疾患の治療におけるそれらの使用を提供する。
【解決手段】膜貫通-細胞内ストレッチに、任意選択でフレキシブルヒンジを介して連結されたホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子が、その核酸分子を含み、発現する哺乳類の調節性T細胞(Treg)及びその使用と共に提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、膜結合型IL10を発現する遺伝子的にリプログラミングされた調節性T細胞、ならびに全身免疫抑制の増強における、及び免疫系の過剰な活性として現れる疾患の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
局所炎症を抑制し、免疫バランスを回復するためにCD4調節性T細胞(Treg)を利用することは、自己免疫疾患、炎症性腸疾患、アレルギー、アテローム性動脈硬化、移植拒絶、移植片対宿主病など、様々な病状の治療において非常に期待されるところである。しかしTregは、天然のもの(nTreg)であれ誘導型(iTreg)であれ、ヒトCD4T細胞集団全体でわずかな割合しか形成しない。したがって、自己の又は同種異系のTregを十分な数でリクルートし、誘導し、又は操作するためのTregベースの治療法の開発、及び治療の臨床的有効性と安全性にとって重要な安定した表現型が差し迫って必要である。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本発明は、膜貫通-細胞内ストレッチに任意選択でフレキシブルヒンジを介して連結された、本願でmem-IL10と呼ぶホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を提供する。
【0004】
異なる態様では、本発明は、本明細書で定義される膜貫通-細胞内ストレッチに連結されたホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む組成物を提供する。
【0005】
さらなる態様では、本発明は、上記で定義する膜貫通-細胞内ストレッチに連結されたホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子のいずれか1つを含むウイルスベクターを提供する。
【0006】
別の態様では、本発明は、上記で定義するウイルスベクターを含む組成物を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、上記で定義する核酸分子のいずれか1つ、又は上記で定義するウイルスベクターを含む哺乳類調節性T細胞(Treg)を提供する。
【0007】
さらに追加の態様では、本発明は、安定なTr1表現型を有する同種異系又は自己Tregを調製する方法を提供し、この方法は、CD4T細胞を、上記で定義するホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子、又はそれを含むウイルスベクターと接触させることにより前記CD4T細胞に安定なTr1表現型を付与することで、安定なTr1を有するTregを調製することを含む。
【0008】
さらに追加の態様では、本発明は、上記で定義するホモ二量体膜結合型IL-10をその表面で発現する哺乳類Tregを対象に投与することを含む、必要とする対象において免疫抑制を高める方法を提供する。
【0009】
特定の実施形態では、本発明は、上記で定義するホモ二量体IL-10をその表面に発現する哺乳類Tregを対象に投与することを含む、対象における疾患、障害又は状態を治療又は予防する方法を提供し、前記疾患、障害又は状態は、自己免疫疾患、アレルギー、喘息、ならびに臓器及び骨髄移植などの免疫系の過剰な又は他の望ましくない活性として現れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】膜アンカー型ホモ二量体IL-10の模式図を示す。
【
図2A】T細胞におけるmemIL-10発現の分析、及びCD49bに対するその効果を示す。ヒトジャーカット(Jurkat)細胞に、ヒトmemIL-10をコードする10μgのin vitro転写mRNAをエレクトロポレーションした。トランスフェクションの24時間後にフローサイトメトリーで細胞を分析した。ヒトmemIL-10及びヒトCD49bを、それぞれのヒトタンパク質に特異的なモノクローナル抗体によってそれぞれ分析した。
【
図2B】T細胞におけるmemIL-10発現の分析、及びIL-10受容体(IL-10R)に対するその効果を示す。ヒト初代末梢血リンパ球由来CD4T細胞に、ヒトmemIL-10をコードする10μgのin vitro転写mRNAをエレクトロポレーションした。トランスフェクションの24時間後にフローサイトメトリーで細胞を分析した。ヒトmemIL-10及びIL-10Rを、それぞれのヒトタンパク質に特異的なモノクローナル抗体によってそれぞれ分析した。
【
図2C】T細胞におけるmemIL-10発現の分析を示す。マウスB3Z細胞に、マウスmemIL-10をコードする10μgのin vitro転写mRNAをエレクトロポレーションした。トランスフェクションの24時間後にフローサイトメトリーで細胞を分析した。マウスmemIL-10を、それぞれのマウスタンパク質に特異的なモノクローナル抗体によってそれぞれ分析した。
【
図2D】T細胞におけるmemIL-10発現の分析、及びIL-10受容体(IL-10R)に対するその効果を示す。マウスNOD脾臓CD4T細胞に、マウスmemIL-10をコードする10μgのin vitro転写mRNAをエレクトロポレーションした。トランスフェクションの48時間後(左及び右)にフローサイトメトリーで細胞を分析した。マウスmemIL-10及びIL-10Rを、それぞれのマウスタンパク質に特異的なモノクローナル抗体によってそれぞれ分析した。
【
図3A】その細胞表面受容体に結合した天然IL-10ホモ二量体の模式図を示す。
【
図3B】膜アンカー型IL-10(mem-IL10)の誘導体であって、短いリンカーを有するmem-IL10の模式図を示す。
【
図3C】膜アンカー型IL-10(mem-IL10)の誘導体であって、長いリンカーを有するmem-IL10の模式図を示す。
【
図3D】膜アンカー型IL-10(mem-IL10)の誘導体であって、IL-10Rβに連結されたmem-IL10(IL-10Rβ融合)の模式図を示す。
【
図4】mRNAエレクトロポレーションの24時間後のジャーカット細胞における3つのmemIL-10誘導体の細胞表面発現を示す。ヒトジャーカットCD4T細胞に、10μgの指示されたmRNAをそれぞれエレクトロポレーションした(sL及びlLは、それぞれ短いリンカー及び長いリンカーを表す)。24時間の細胞を、IL-10の表面発現についてフローサイトメトリーにより分析した。
【
図5A】CD4T細胞におけるmemIL-10発現がSTAT3の自発的リン酸化を誘導することを示す。マウスCD4T細胞に、無関係なmRNA(Irr.mRNA)、短いリンカーmemIL-10(sLmemIL-10)、長いリンカーmemIL-10(lLmemIL-10)、又はIL-10Rβ鎖に連結されたIL-10(memIL-10Rβ)をコードするmRNAをエレクトロポレーションするか、又は20ng/mlの可溶性組換えIL-10(sIL-10)で処理した。24時間後、細胞を表面IL-10についてフローサイトメトリー分析した。
【
図5B】CD4T細胞におけるmemIL-10発現がSTAT3の自発的リン酸化を誘導することを示す。マウスCD4T細胞に、無関係なmRNA(Irr.mRNA)、短いリンカーmemIL-10(sLmemIL-10)、長いリンカーmemIL-10(lLmemIL-10)、又はIL-10Rβ鎖に連結されたIL-10(memIL-10Rβ)をコードするmRNAをエレクトロポレーションするか、又は20ng/mlの可溶性組換えIL-10(sIL-10)で処理した。24時間後、細胞を表面IL-10Rα鎖についてフローサイトメトリー分析した。
【
図5C】CD4T細胞におけるmemIL-10発現がSTAT3の自発的リン酸化を誘導することを示す。マウスCD4T細胞に、無関係なmRNA(Irr.mRNA)、短いリンカーmemIL-10(sLmemIL-10)、長いリンカーmemIL-10(lLmemIL-10)、又はIL-10Rβ鎖に連結されたIL-10(memIL-10Rβ)をコードするmRNAをエレクトロポレーションするか、又は20ng/mlの可溶性組換えIL-10(sIL-10)で処理した。24時間後、細胞を細胞内リン酸化STAT3(pSTAT3)についてフローサイトメトリー分析した。
【
図6A】memIL-10を発現するレトロウイルス形質導入マウスCD4T細胞の分析を示す。形質導入後48時間の、短いリンカーmemIL-10形質導入マウスCD4T細胞(v-memlL-10)の表現型分析。分析は、同じ細胞培養で増殖しているmemIL-10(+)及びmemlL-10(-)細胞で並行して行い、LAG-3、CD49b、及びPD-1を染色した。陽性対照として、形質導入していない細胞を可溶性IL-10(sIL-10)で処理した。Mockは、レトロウイルス形質導入細胞と同じプロトコルで処理しているが、ウイルス粒子に曝露していない細胞である。
【
図6B】memIL-10を発現するレトロウイルス形質導入マウスCD4T細胞の分析を示す。形質導入後6日の、短いリンカーmemIL-10形質導入マウスCD4T細胞(v-memlL-10)の表現型分析。分析は、同じ細胞培養で増殖しているmemIL-10(+)及びmemlL-10(-)細胞で並行して行い、LAG-3、CD49b、及びPD-1を染色した。陽性対照として、形質導入していない細胞を可溶性IL-10(sIL-10)で処理した。Mockは、レトロウイルス形質導入細胞と同じプロトコルで処理しているが、ウイルス粒子に曝露していない細胞である。
【
図7】活性化されたmemIL-10形質導入マウスCD4T細胞によるIL-10の分泌を示す。
図6と同じ実験からの細胞を抗TCR-CD3mAh(2C11)で刺激し、その増殖培地をIL-10ELISAにかけた。Mock及びGFP形質導入T細胞を陰性対照とする。
【
図8A】memIL-10形質導入ヒトCD4T細胞の表現型の特徴解析を示す。CD4T細胞を、健康なドナーの血液サンプルから用意した末梢血単核細胞から磁気ビーズによって分離した。細胞を抗CD3及び抗CD28抗体及びIL-2の存在下で目的の数まで増殖させ、memIL-10又は無関係の遺伝子(Irr.)をコードする組換えレトロウイルスで形質導入するか、又は可溶性IL-10(sIL-10)で処理した。細胞をIL-2の存在下で増殖させ、1日目に、示された細胞表面マーカーのフローサイトメトリー分析のためにサンプルを採取した。memIL-10(陽性、実線枠)を発現する細胞を、IL-10を発現しない同じ培養からの細胞(陰性、点線枠)と並べて分析した。
【
図8B】memIL-10形質導入ヒトCD4T細胞の表現型の特徴解析を示す。CD4T細胞を、健康なドナーの血液サンプルから用意した末梢血単核細胞から磁気ビーズによって分離した。細胞を抗CD3及び抗CD28抗体及びIL-2の存在下で目的の数まで増殖させ、memIL-10又は無関係の遺伝子(Irr.)をコードする組換えレトロウイルスで形質導入するか、又は可溶性IL-10(sIL-10)で処理した。細胞をIL-2の存在下で増殖させ、5日目に、示された細胞表面マーカーのフローサイトメトリー分析のためにサンプルを採取した。memIL-10(陽性、実線枠)を発現する細胞を、IL-10を発現しない同じ培養からの細胞(陰性、点線枠)と並べて分析した。
【
図8C】memIL-10形質導入ヒトCD4T細胞の表現型の特徴解析を示す。CD4T細胞を、健康なドナーの血液サンプルから用意した末梢血単核細胞から磁気ビーズによって分離した。細胞を抗CD3及び抗CD28抗体及びIL-2の存在下で目的の数まで増殖させ、memIL-10又は無関係の遺伝子(Irr.)をコードする組換えレトロウイルスで形質導入するか、又は可溶性IL-10(sIL-10)で処理した。細胞をIL-2の存在下で増殖させ、18日目に、示された細胞表面マーカーのフローサイトメトリー分析のためにサンプルを採取した。18日目に、非形質導入Tregを分析に加えて、細胞表面マーカーを比較した。memIL-10(陽性、実線枠)を発現する細胞を、IL-10を発現しない同じ培養からの細胞(陰性、点線枠)と並べて分析した。
【
図9】memIL-10形質導入ヒトCD4T細胞の表現型を調べた第2の実験を示す。細胞を準備し、memIL-10で形質導入し、4日後、示されたマーカーについて
図8の説明文に記載されているように分析した。非形質導入(ナイーブ)及び偽形質導入(Mock)CD4細胞を陰性対照とした。MemIL-10陽性細胞を、同じ培養からのmemIL-10陰性細胞と、ならびに50、100又は300ng/mlのsIL-10の存在下で増殖させたナイーブCD4T細胞と比較した。各サンプルにおける陽性染色細胞の%が示されている。Double posは、LAG-3及びCD49bで陽性に染色された細胞の%である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明に従って、膜結合型IL-10を恒常的に発現するようにT細胞を遺伝子的にリプログラミングすることで、T細胞に安定なTr1表現型が付与されることが見出された。
【0012】
選択するTreg細胞の種類は、臨床導入を成功させるために非常に重要である。Tr1細胞はCD4(+)FoxP3(+/-)Tregのサブセットであり、IL-10の存在下で樹状細胞上の抗原に慢性的に曝露させると、TCR及び抗原特異的な態様で末梢に誘導される(1、2)。これらの細胞は、非増殖性(アネルギー)状態、IL-10及びTGF-βの生産は高いが、IL-2の生産はごくわずかで、IL-4又はIL-17の生産はないこと、及び細胞間接触に依存しない態様でエフェクターT細胞(Teff)を抑制する能力によって特徴づけられる。Andolfiらは、レンチウイルス形質導入により達成された、ヒトCD4T細胞におけるIL-10の強制発現は、これらの細胞にオートクリン様式で安定なTr1表現型を与えるのに十分であることを示した(3)。この研究はまた、これらの細胞をIL-2に曝露すると、これらのIL-10誘導性Tr1細胞のアネルギー状態を一時的に逆転させることができることも示した。重要なことに、2つの細胞表面マーカーCD49b及びLAG-3が同定されており、これらは、ヒト(及びマウス)Tr1細胞上に安定かつ選択的に共発現し、それらの単離と細胞集団の純度についてのフローサイトメトリー分析を可能にする(4)。
【0013】
本発明は、IL-10の膜アンカー型誘導体(mem-IL10)をコードする遺伝子を提供する。天然のIL-10はホモ二量体であり(5、6)、本願において、その膜アンカー型形態に機能的なホモ二量体構成を付与すると、IL-10に駆動される安全なロックが提供され、抗原刺激がないときのIL-10の分泌を回避しつつ、Tr1表現型の永続的な保存を確実にできることが見出された。安全性に関しては、IL-10はT細胞の増殖をシグナル伝達しないため、IL-10シグナル伝達経路の自律的な活性化は、無制御な細胞増殖のリスクを伴わない。
【0014】
本発明では、膜IL-10を発現するようにTregを改変することにより、免疫抑制を与えるための抗炎症効果を初めて達成した。さらに、IL-10はT細胞の増殖を誘発しないため、自律的な細胞増殖や細胞の形質転換を誘発するリスクがなく、安定なウイルス形質導入を通じて恒常的に発現させることができる。
【0015】
一態様では、本発明は、本願でmem-IL10と呼ぶ、任意選択でフレキシブルヒンジを介して膜貫通-細胞内ストレッチに連結されたホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を提供する。
【0016】
特定の実施形態において、単離された核酸分子は、mem-IL-10を除いて、さらなる異なるタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含まないが、プロモーター及びターミネーターなどのさらなる制御エレメントを含み得る。
【0017】
特定の実施形態では、ホモ二量体IL-10は、第1のIL-10モノマーのC末端が第1のフレキシブルリンカーを介して第2のIL-10モノマーのN末端に連結されるように単鎖構成で連結された第1及び第2のIL-10モノマーを含む。
【0018】
フレキシブルペプチドリンカーは、当技術分野で周知である。研究者によって設計された経験的リンカーは一般に、その構造に応じて、例えば(7~9)に定義されているように、フレキシブルリンカー、リジッドリンカー、及びin vivo切断可能リンカーの3つのカテゴリーに分類される。これらの文献はそれぞれ、参照によりそのすべてが本明細書に組み込まれる。
【0019】
上記のように、第1のリンカーはフレキシブルリンカーであり、その構造は(7~9)に開示されているリンカーのいずれかから選択される。原則として、フレキシビリティを提供するために、リンカーは概して小さく、非極性の(例えばGly)又は極性の(例えばSer又はThr)アミノ酸、例えば、Gly及びSer残基が交互に並ぶような基本的な配列で構成される。リンカー及び関連するホモ二量体IL-10の溶解性は、帯電した残基、例えば2つの正に帯電した残基(Lys)と1つの負に帯電した残基(Glu)を含めることによって強化できる。リンカーは2から31アミノ酸まで変化させることができ、各条件に最適化されているため、リンカーは連結されるパートナーの長さにおけるコンフォメーション又は相互作用に制約(例えば12~18残基など)を課さない。
【0020】
特定の実施形態では、第1のフレキシブルリンカーは、アミノ酸配列GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号1)を有する。特定の実施形態では、第1のフレキシブルリンカーは、ヌクレオチド配列によって、例えば、配列番号2に記載されるようにコードされる。
【0021】
特定の実施形態では、フレキシブルヒンジは、以下のポリペプチド又はそのバリアントから選択されるポリペプチドを含む:
・CD8αのヒンジ領域(例えば、配列番号3に示されている;例えば配列番号4に示されているヌクレオチド配列によってコードされている)
・IgGの重鎖のヒンジ領域(例えば、配列番号5に示されている;例えば配列番号6に示されているヌクレオチド配列によってコードされている)
・IgDの重鎖のヒンジ領域(例えば、配列番号7に示されている;例えば配列番号8に示されているヌクレオチド配列によってコードされている)
・IL-10Rβ鎖の細胞外ストレッチ(配列番号9に示されている;例えば配列番号10に示されているヌクレオチド配列によってコードされている);及び
・少なくとも1つのGly4Ser(Gly3Ser)2配列を含む、例えば、1つのGly4Ser(Gly3Ser)配列(配列番号11;例えば、配列番号12に示されているヌクレオチド配列によってコードされている)、又は1つ又は2つのSer残基が間に挿入された2つのGly4Ser(Gly3Ser)配列を含む、最大28アミノ酸のアミノ酸配列を含む第2のフレキシブルリンカー。
【0022】
特定の実施形態では、第2のフレキシブルリンカーは、アミノ酸配列Gly4Ser(Gly3Ser)2(本願では「短いリンカー」と呼ばれ;配列番号13;例えば、配列番号14に示されるヌクレオチド配列によりコードされている)を含む21アミノ酸配列を含む。
【0023】
特定の実施形態では、第2のフレキシブルリンカーは、アミノ酸配列Gly4Ser(Gly3Ser)2Ser2(Gly3Ser)3(本願では「長いリンカー」と呼ばれ;配列番号15;例えば、配列番号22に示されるヌクレオチド配列によってコードされている)及び配列番号16の連結ペプチドを含む28アミノ酸スペーサーからなる。
【0024】
特定の実施形態では、上記の実施形態のいずれか1つの第2のフレキシブルリンカーは、HLA-A2の連結ペプチドの膜近位部分に由来する配列SSQPTIPI(本願では「連結ペプチド」と呼ばれ;配列番号17;例えば、配列番号18のヌクレオチド配列によってコードされている)の8アミノ酸ブリッジをさらに含む。
【0025】
特定の実施形態では、mem-IL10の膜貫通-細胞内ストレッチは、HLA-A、HLA-B又はHLA-C分子、好ましくはHLA-A2(例えば、配列番号19に示される;例えば、配列番号20に示されるヌクレオチド配列によりコードされる);ヒトCD28(配列番号21に示される;例えば、配列番号22に示されるヌクレオチド配列によりコードされる);又はヒトIL-10Rβ鎖(配列番号23に示される;例えば配列番号24に示されるヌクレオチド配列によりコードされる)から選択されるヒトMHCクラスI分子の重鎖に由来する。
【0026】
特定の実施形態では、完全なmem-IL10のアミノ酸配列は、配列番号25に示される;例えば配列番号26に示されるヌクレオチド配列によってコードされる、短い第2のフレキシブルリンカー及び連結ペプチドを介してHLA-A2の膜貫通-細胞内ストレッチに連結されたホモ二量体IL-10を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0027】
特定の実施形態では、完全なmem-IL10のアミノ酸配列は、配列番号27に示される;例えば配列番号28に示されるヌクレオチド配列によってコードされる、長い第2のフレキシブルリンカー及び連結ペプチドを介してHLA-A2の膜貫通-細胞内ストレッチに連結されたホモ二量体IL-10を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0028】
特定の実施形態では、mem-IL-10は、第2のフレキシブルリンカーを介して(例えば、配列番号9に示されるように)IL-10Rβ細胞外ドメインに融合され、任意選択でさらに(例えば、配列番号23に示されるように)IL-10Rβ膜貫通及び細胞質ドメインに融合される。
【0029】
特定の実施形態では、mem-IL-10は、(配列番号29に示されるように;例えば、配列番号23に示されるヌクレオチド配列によりコードされるように)短いリンカーを介して本質的に完全なIL-10Rβ鎖のN末端に融合される。
【0030】
本発明の核酸分子によってコードされる本発明のmem-IL10を構成するポリペプチドは、特定のアミノ酸配列によって本明細書で定義されるものに限定されず、これらのオリゴペプチドのバリアントであってもよいし、上記に開示されたものと実質的に同一のアミノ酸配列を有してもよい。本願で使用する「実質的に同一」のアミノ酸配列は、1つ又は複数の保存的又は非保存的アミノ酸置換、欠失、又は挿入によって参照配列と異なり、特にそのような置換が分子の活性部位ではない部位で起こり、ポリペプチドがその機能的特性を本質的に保持している場合の配列を指す。保存的アミノ酸置換は、例えば、あるアミノ酸を同じクラスの別のアミノ酸で置換する。例えば、ある疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸で置換し、極性アミノ酸を別の極性アミノ酸で置換し、塩基性アミノ酸を別の塩基性アミノ酸で置換し、酸性アミノ酸と別の酸性アミノ酸で置換する。1つ又は複数のアミノ酸をペプチドから削除することができ、したがって、その生物学的活性を著しく変化させることなく、そのフラグメントを得ることができる。
【0031】
特定の実施形態において、完全な膜結合型IL-10のアミノ酸配列、又は上記に開示されるような膜結合型IL-10の様々なサブ領域の各々、すなわち、第1及び第2のIL-10モノマーが第1のフレキシブルリンカーを介して単鎖構成で連結されているホモ二量体IL-10;第1のフレキシブルリンカー自体、フレキシブルヒンジ;及び膜貫通-細胞内ストレッチは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、又は29と少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、又は少なくとも98%同一である。
【0032】
特定の実施形態において、完全な膜結合型IL-10のアミノ酸配列、又は上記に開示されるような膜結合型IL-10の様々なサブ領域の各々、すなわち、第1及び第2のIL-10モノマーが第1のフレキシブルリンカーを介して単鎖構成で連結されているホモ二量体IL-10;第1のフレキシブルリンカー自体、フレキシブルヒンジ;及び膜貫通-細胞内ストレッチ、ならびに全体の構築体は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、又は29と70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98、又は99%同一である。
【0033】
特定の実施形態では、単離された核酸分子は、完全な膜結合型IL-10、又は上記に開示された膜結合型IL-10の様々なサブ領域の各々をコードするポリヌクレオチド配列、すなわち、第1及び第2のIL-10モノマーが第1のフレキシブルリンカーを介して単鎖構成で連結されているホモ二量体IL-10;第1のフレキシブルリンカー自体、フレキシブルヒンジ;及び、膜貫通-細胞内ストレッチ、ならびに、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、又は30のいずれかと、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、又は少なくとも98%同一である全体の構築体を含む。
【0034】
特定の実施形態では、単離された核酸分子は、完全な膜結合型IL-10、又は上記に開示された膜結合型IL-10の様々なサブ領域の各々をコードするポリヌクレオチド配列、すなわち、第1及び第2のIL-10モノマーが第1のフレキシブルリンカーを介して単鎖構成で連結されているホモ二量体IL-10;最初のフレキシブルリンカー自体、フレキシブルヒンジ;及び膜貫通-細胞内ストレッチ、ならびに、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28又は30の1つと70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98、又は99%同一である全体の構築体を含む。
【0035】
特定の実施形態では、単離された核酸分子は、完全な膜結合型IL-10、又は上記に開示された膜結合型IL-10の様々なサブ領域の各々をコードするポリヌクレオチド配列、すなわち、第1及び第2のIL-10モノマーが第1のフレキシブルリンカーを介して単鎖構成で連結されているホモ二量体IL-10;フレキシブルリンカー自体、フレキシブルヒンジ;及び膜貫通-細胞内ストレッチ、ならびに配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28又は30の1つに記載されている全体の構築体を含む。
【0036】
異なる態様では、本発明は、上記の実施形態のいずれかで定義される膜貫通-細胞内ストレッチに連結されたホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む組成物を提供する。
【0037】
特定の実施形態では、核酸分子は、組成物中の唯一の核酸分子である。すなわち、組成物は、追加の異なるタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む追加の核酸分子を含まない。
【0038】
本発明の核酸分子は、当技術分野で周知の方法を使用して安定なTr1表現型を実現する目的でT細胞に送達される。例えば、MatuskovaとDurinikova(10)は、細胞への導入遺伝子の送達にはウイルス性及び非ウイルス性の2つのシステムがあることを教示している。非ウイルス性のアプローチは、DNAをコーティングした微粒子の、ポリマーナノ粒子、脂質、リン酸カルシウム、エレクトロポレーション/ヌクレオフェクション、又はバイオリスティック送達に代表される。
【0039】
DNAが宿主細胞のクロマチンに組み込まれるか否かに応じて、本発明に従って使用することができる2つの主要なタイプのベクターがある。ガンマレトロウイルスやレンチウイルスに由来するものなどのレトロウイルスベクターは、統合されたプロウイルスとして核内に存続し、細胞分裂とともに増殖する。他のタイプのベクター(例えば、ヘルペスウイルスやアデノウイルスに由来するもの)は、細胞内にエピソームの形で残る。
【0040】
したがって、さらなる態様では、本発明は、上記で定義する膜貫通-細胞内ストレッチに連結されたホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子のいずれかを含むウイルスベクターを提供する。
【0041】
特定の実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、ガンマウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックスウイルス、アルファウイルス、及びヘルペスウイルスからなる群から選択されるウイルスに由来する改変ウイルスから選択される。
【0042】
特定の実施形態では、ベクターはレトロウイルス、例えば、改変ガンマウイルス、レンチウイルス、マウス幹細胞ウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、及びスプマウイルスである。実際、(11)にリストされている固形腫瘍のCAR-T細胞を評価する52の臨床試験のうち、24の試験はレトロウイルスベクターを使用し、9の試験はレンチウイルスベクターを使用している。また、B細胞性悪性腫瘍の治療用にFDAが承認した2つのCAR製品は、Kymriah(商標)(レンチウイルスベクター)及びYescarta(商標)(ガンマレトロウイルスベクター)である。したがって、本発明のウイルスベクターの優れた候補は、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター及びガンマレトロウイルスベクターであり得る。例えば、レトロウイルスは、モロニーマウス白血病ウイルス又はマウス幹細胞ウイルス配列(ガンマレトロウイルスベクター)に由来し得る。
【0043】
特定の実施形態において、核酸分子は、ヌクレオチド配列によってコードされる唯一のポリペプチドである。すなわち、ウイルスベクターの核酸分子は、さらなる異なるタンパク質をコードしないが、プロモーター及びターミネーターなどのさらなる制御エレメントを含み得る。
【0044】
別の態様では、本発明は、上記で定義するウイルスベクターを含む組成物を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、上記で定義する核酸分子、又は上記で定義するウイルスベクターのいずれか1つを含む哺乳類の調節性T細胞(Treg)を提供する。
【0045】
特定の実施形態では、哺乳類Tregは、その表面上で膜貫通-細胞内ストレッチに、任意選択でフレキシブルヒンジを介して連結されているホモ二量体IL-10を発現する。
【0046】
特定の実施形態では、哺乳類TregはヒトTregである。
特定の実施形態では、哺乳類Tregは、安定なTr1表現型を有する(すなわち、細胞表面マーカーCD49b及びLAG-3を提示するそれらの調節活性を失わない(12)。
【0047】
さらに追加の態様では、本発明は、安定なTr1表現型を有する同種異系又は自己Tregを調製する方法を提供し、この方法は、CD4T細胞を、上記で定義するホモ二量体IL-10をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子、又はそれを含むウイルスベクターと接触させることにより、前記CD4T細胞に安定なTr1表現型を付与し、それにより安定なTr1を有するTregを調製することを含む。
【0048】
CD4T細胞を調製するための方法は、当技術分野で周知であり、例えば、以下の実施例の欄で開示される方法によって実施することができる。
組換えレトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクターを作成し、それらをT細胞の形質導入に使用する方法も当技術分野で周知であり、通常、パッケージング細胞、プラスミド、及びトランスフェクション試薬を含む市販のキットを使用して行われ、Invitrogen、Sigma、Clontech、Cell Biolabs、SBI、Genecopoeia、その他多数の多くの企業が提供している。したがって、方法は、市販のキットに付属するガイドラインに従って実行される。
【0049】
要するに、Addgeneのウェブサイトのγ-レトロウイルスガイドに教示される非限定的な例によれば、以下の要素が必要である:(a)目的の導入遺伝子をコードするγ-レトロウイルストランスファープラスミド:導入遺伝子配列は長鎖末端反復(LTR)配列によってフランキングされ、これは、トランスファープラスミド配列の宿主ゲノムへの組み込みを容易にする。典型的には、ウイルス形質導入時に宿主ゲノムに組み込まれるのは、LTRの間の、かつLTRを含む配列である;(b)パッケージング遺伝子(ウイルスGag-Pol):Gagは構造前駆体タンパク質であり、Polはポリメラーゼである;及び(c)エンベロープ遺伝子(感染性を変えるために偽型化されてもよい)。
【0050】
非限定的な例として、上記の3つの要素(エンベロープ、パッケージング、及びトランスファー)は、293Tパッケージング細胞株にコトランスフェクションされる3種類のプラスミドによって提供される。このシステムは、トロピズムを変更するために様々なエンベロープを使用して、偽型γ-レトロウイルスに最大のフレキシビリティを提供する。簡潔に述べると、様々なエンベローププラスミドは様々なトロピズムを持つウイルスの生成をもたらすことができる。組換えレトロウイルス株の調製方法及びヒトCD4T細胞のレトロウイルス形質導入のための方法の詳細な非限定的な例は、以下の実施例の欄に述べる。
【0051】
さらに追加の態様では、本発明は、上記で定義するホモ二量体膜結合型IL-10をその表面に発現する哺乳類Tregを対象に投与することを含む、必要とされる対象において免疫抑制を高める方法を提供する。
【0052】
特定の実施形態では、対象は、免疫系の過剰な又は他の望ましくない活性として現れる疾患、障害又は状態によって引き起こされる症状のために、免疫抑制を高める必要がある。
【0053】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、上記で定義するホモ二量体IL-10を表面に発現する哺乳類Tregを対象に投与することを含む、対象の疾患、障害又は状態を治療又は予防する方法を提供する。ここで、上記疾患、障害又は状態は、自己免疫疾患、アレルギー、喘息、ならびに臓器及び骨髄移植などの免疫系の過剰な又は他の望ましくない活性として現れる。
【0054】
さらに別の態様では、本発明は、それを必要とする対象における免疫抑制の増強に使用するための、上記で定義するホモ二量体IL-10をその表面に発現する哺乳類Tregに関する。
【0055】
特定の実施形態では、上記で定義するホモ二量体IL-10をその表面に発現する哺乳類Tregは、免疫系の過剰な又は他の望ましくない活性として現れる疾患、障害又は状態の治療又は予防に使用するためのものである。
【0056】
特定の実施形態では、哺乳類Tregはヒト対象を治療するためのものであり、哺乳類TregはヒトTregである。
自己免疫疾患として定義される特定の疾患は、当技術分野でよく知られている。例えば、自己免疫疾患の百科事典(The Encyclopedia of Autoimmune Diseases)、Dana K.Cassell、Noel R.Rose、Infobase Publishing、2014年5月14日に開示されており、参照によりその全体が本明細書に完全に開示されるかのように組み込まれる。
【0057】
特定の実施形態では、自己免疫疾患は、1型糖尿病;関節リウマチ;乾癬;乾癬性関節炎;多発性硬化症;全身性エリテマトーデス;クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患;アジソン病;グレーブス病;シェーグレン症候群;橋本甲状腺炎;重症筋無力症;血管炎;悪性貧血;セリアック病;及びアテローム性動脈硬化から選択される。
【0058】
いくつかの実施形態では、対象はヒトであり、前記哺乳類Tregはヒトである。
いくつかの実施形態では、Tregは同種異系Tregである。
精製されたCD4+CD25+Tregの養子移入が、自己免疫疾患の一連のモデルにおいて疾患を阻害又は予防することができることを実証した前臨床研究から明らかなように、本発明の安定なTr1細胞は、免疫抑制を高め、免疫系の過剰な又は他の望ましくない活性として現れる疾患、障害又は状態を、さらなる遺伝子操作をすることなく治療するために使用することができる。これらには、限定するものではないが、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、自己免疫性脳脊髄炎、1型糖尿病、自己免疫性肝炎及びコラーゲン誘発関節炎が含まれる。さらに、これらの細胞の養子移入は、同種造血幹細胞移植によって誘発される同種移植拒絶反応及び移植片対宿主病から保護することができる(13)。さらに、移植片対宿主病(GvHD)、同種移植拒絶反応及び1型糖尿病を含む多くの状態及び疾患の免疫療法におけるex-vivoで拡張された非抗原特異的Tregの養子移入の安全性と有効性を評価する臨床試験が増えており(検討のため(13)を参照されたい)、このアプローチの可能性を示している。
【0059】
これらの研究で観察された有益な臨床反応は、Tregの抗原との関わりが内因性TCRを介して免疫抑制を高めると主張する累積的な証拠に照らして改善され得る(14~16)。
【0060】
本発明の発明者らは、Tr1細胞を操作して組織標的化タンパク質を発現させるアプローチを想定している。例えば、レチノイン酸(RA)は、T細胞で腸管ホーミングレセプター インテグリンα4β7及びケモカイン受容体CCR9の発現を誘導し、生体外でのプレインキュベーション後にこの機能を生体内で発揮することができる(17、18)。RAは、TregによるTGF-βを介した抑制の重要な調節因子でもあり、Tregの分化を促進する(19)。RAはまた、ナイーブCD4Teff細胞の誘導Tregへの変換を増強し(20、21)、炎症性環境においてIL-6の存在下でTregの安定性及び機能を維持すること(18)も示されている。全トランス型RAとのプレインキュベーションは、リプログラミングされたTr1細胞に腸管ホーミング能力を与えるための実行可能で簡単な手順として浮上している。したがって、上記で定義する疾患の治療方法で使用されるTregは、リプログラミングされたTr1細胞に腸管ホーミング能力を与え、炎症性環境においてIL-6の存在下でTregの安定性及び機能を維持させるために、対象への投与前にレチノイン酸と接触させることができる。
【0061】
魅力的な代替の解決手段は、キメラ抗原受容体、すなわちCARを使用して、選択した細胞表面抗原に対して多数のT細胞を遺伝子的にリダイレクトする確立された能力を利用するものである(22)。
【0062】
原則として、CARはTregのリプログラミングにも使用できる。実際、いくつかの研究所は最近、様々な実験設定での機能的なマウス及びヒトCAR-Tregの生成について報告している((23~29)及び検討のため(13、16、30、31)を参照されたい)。外因性TCR遺伝子の導入によるTregのリダイレクトも報告されている(32~34)。
【0063】
この分野での最近の研究(28)では、HLA-A2+エフェクターT細胞に起因する免疫不全マウスの異種GvHDを防ぐ手段として、HLA-A2特異的ヒトCAR-Tregを生成するためにレンチウイルス形質導入を採用している。実際、生体内では、これらのCAR-TregはGvHDの抑制における無関係な特異性の同じ数のCAR-Tregよりも顕著に優れていた。レシピエントマウスの血液で検出できたHLA-A2CAR-Tregの数は、投与後1週間でピークに達し、さらに1週間安定を維持した後、3週目の終わりにほぼゼロまで減少した。
【0064】
CAR-Tregの臨床用途の別の例が最近報告され、このうち、レトロウイルスで形質導入されたヒトTregが、血友病Aの補充療法における抗体反応を抑制するために凝固第VIII因子(FVIII)にリダイレクトされた(29)。異種免疫応答性マウスモデルを使用した場合、抗体応答の強い抑制が免疫後8週間ではっきりと現れたが、導入されたCAR-Tregは導入後2週間で既に検出不可能であった。
【0065】
したがって、本明細書で定義される膜結合型ホモ二量体IL-10を表面に発現し、安定なTr1表現型を有する哺乳類Tregは、免疫抑制を高め、免疫系の過剰な又は他の望ましくない活性として現れる疾患、障害又は状態を治療するための効率的な作用剤であり、有効性を高めるために当技術分野で周知の技術を使用して容易に操作できる作用剤である。さらに、ex-vivoで拡張された非抗原特異的ならびにリダイレクトされた抗原特異的Tregの養子移入を採用する方法は、免疫療法の分野でよく知られている。
【0066】
定義
「Tr1細胞」という用語は、本願において「iTreg」又は「1型細胞」という用語と互換的に使用され、2つの細胞表面マーカー、CD49b及びLAG-3の発現、FoxP3の低発現又は無発現、非増殖性(アネルギー)状態、IL-10及びTGF-βの生産は高いが、IL-2の生産はごくわずかで、IL-4又はIL-17の生産はないこと、及び細胞間接触に依存しない態様でエフェクターT細胞(Teff)を抑制する能力を特徴とするCD4T細胞を指す。
【0067】
本願で使用する「治療する」という用語は、所望の生理学的効果を得る手段を指す。効果は、疾患及び/又は疾患に起因する症状を部分的に又は完全に治癒するという観点で治療的であり得る。この用語は、疾患を抑制すること、すなわちその発症を阻止すること、又は疾患を改善すること、すなわち疾患の退行を引き起こすことを指す。
【0068】
本願で使用する場合、「対象」又は「個体」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳類」という用語は、診断、予後診断、又は治療が望まれる任意の対象、特に哺乳類の対象を指し、例えばヒトである。
【0069】
本発明に従って使用するための医薬組成物は、1つ又は複数の生理学的に許容される担体又は賦形剤を使用して従来の方法で製剤化することができる。担体は、組成物の他の成分と適合し、そのレシピエントに有害でないという意味で「許容される」ものでなければならない。
【0070】
担体、投与方法、剤形などの以下の例示は既知の可能性として列挙されており、この中から本発明で使用するための担体、投与方法、剤形などを選択することができる。しかしながら当業者は、まずは選択された任意の所与の製剤及び投与方法を試験して、それが所望の結果を達成するか判断すべきであることを理解するであろう。
【0071】
投与方法には、限定するものではないが、非経口、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経粘膜(例えば、経口、鼻腔内、口腔、膣、直腸、眼内)、くも膜下腔内、局所及び皮内経路が含まれる。投与は全身的又は局所的であり得る。特定の実施形態では、医薬組成物は経口投与に適合している。
【0072】
「担体」という用語は、活性剤と共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。
本願で使用する「バリアント」という用語は、塩基対、コドン、イントロン、エクソン、又はアミノ酸残基がそれぞれ1つ以上改変されているが、それでも天然配列のポリペプチドの生物活性を保持するポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。
【0073】
特に断りのない限り、同一性又は類似性あるいは他のパラメータを表すすべての数値は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるものとする。したがって、反対の指示がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に示される数値パラメータは、本発明が得ようとする所望の特性に応じて最大±10%変動し得る近似値である。
【0074】
ここで、本発明を以下の非限定的な実施例によって説明する。
実施例
材料及び方法
ヒトCD4T細胞の分離
末梢血単核細胞(PBMC)を、標準的なフィコールパック(Ficoll-Paque)(Sigma)分離手順を使用して、全血試料又はフェレーシス産物から調製した。分離後(又は細胞解凍後)24時間のPBMCを、可溶性抗CD28及び組換えヒトIL-2の存在下で、プレート結合抗CD3 Ab(OKT3)によって72時間活性化させた。次に、磁気ビーズ(BD IMag(商標))によるポジティブセレクションを使用してCD4T細胞を分離し、実験に使用する前に完全培地中で24時間静置した。
【0075】
組換えレトロウイルス株の調製
memIL-10遺伝子を、BamHI-EcoRI制限部位を介して、一般的に使用されるMSGV1レトロウイルスベクターにクローニングした。得られたプラスミドを、gag/polを保持するプラスミド及びenvを保持するプラスミドと共に、10cmポリ-D-リジン被覆プレートに配置した抗生物質を含まないOptiMEM(商標)培地(イーグル最小必須培地の改変型であって、HEPES及び重炭酸ナトリウムで緩衝し、ヒポキサンチン、チミジン、ピルビン酸ナトリウム、L-グルタミン、微量元素、及び成長因子を添加したもの)中の3×106HEK293T細胞に、Lipofectamine(商標)(Thermo Fisher Scientific)又はFugene HD(商標)(Promega)などのトランスフェクション試薬を、製造元の指示に従ってを使用してコトランスフェクションした。翌日、細胞を抗生物質を含む完全培地に移し、その翌日、上清を回収し、アリコートに分けて凍結するか、レトロウイルス形質導入に直接使用した。
【0076】
ヒトCD4T細胞のレトロウイルス形質導入
形質導入は、コーティングされていない6ウェル組織培養プレートで行った。ウェルを遺伝子導入エンハンサー(RetroNectin(商標);Takara)で一晩コーティングした。RetroNectin(商標)は、レンチウイルス及びレトロウイルスが媒介する遺伝子導入の効率を高める組換えヒトフィブロネクチンフラグメント(rFN-CH-296とも呼ばれる)の63kDのフラグメントである。RetroNectin(商標)を除去し、ウェルを洗浄し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の2.5%滅菌ウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングし、再度洗浄した。ウイルス上清を、ポリブレン(Merck)などのトランスフェクション試薬を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で希釈し、RetroNectin(商標)をコーティングしたウェルに4ml/ウェルで移した。プレートを32℃、2000×gで2時間遠心分離し、上清を吸引し、50/50のAIM-V/RPMI培地+300IU/ml組換えIL-2中5×105細胞/mlのCD4T細胞を各ウェルに4ml添加した。プレートを1000×gで15分間遠心分離し、37℃で一晩インキュベートした。次に、CD4T細胞を新しいコーティングされた6ウェル組織培養プレートに移し、1mlの新しい50/50培地+300IU/ml rIL-2を各ウェルに添加した。翌日、培地を交換し、細胞を必要に応じて分割した。
【0077】
実施例1.フレキシブルリンカーによって直列に連結され、かつ短いヒンジ領域を介して膜貫通-細胞内ストレッチに連結された2つのIL-10モノマー。
ここで使用されている特定の構築体では、配列GSTSGSGKPGSGEGSTKGのフレキシブルリンカーによって2つのIL-10モノマーが直列に連結されてホモ二量体を作成し、これをHLA-A2重鎖に由来する膜貫通-細胞内ストレッチに、Gly
4Ser(Gly
3Ser)
2及びHLA-A2の連結ペプチドの膜近位部分に由来する配列SSQPTIPIの追加の8アミノ酸のブリッジフレキシブルリンカーを含む21アミノ酸のスペーサーを有するフレキシブルヒンジ領域によって連結させた(
図1)。次に、ヒト及びマウスCD4T細胞におけるmemIL-10及びIL-10Rの表面発現を確認した(
図2)。
【0078】
CD49bインテグリンの上昇は(A)に見ることができ、IL-10受容体(IL-10R)の上方制御は組換えIL-10(rIL-10、(B))によって誘導されたものと同様であった。マウスmemIL-10は、トランスフェクションの48時間後に明確に発現され(D、左)、予想通り、memlL-10は、使用した抗マウスIL-10R mAbの結合をブロックした。これは、シス結合を示唆している(35)。
【0079】
実施例2.フレキシブルリンカーによって直列に連結され、かつ長いヒンジ領域又はIL-10Rβ鎖を介して膜貫通-細胞内ストレッチに連結された2つのIL-10モノマー。
【0080】
我々の元のmemIL-10構築体は、ヒト及びマウスの両方とも、(8アミノ酸長の剛性スペーサーに加えて)21アミノ酸のフレキシブルリンカーを含むヒンジを組み込んでいた(ここではSmemIL-10(Sは短いリンカー、下記参照)。
【0081】
memIL-10を最適化するために、この膜サイトカインの2つの新しいバージョンを設計しクローニングした。最初にクローニングした1つ目では、IL-10Rとの最適な結合を促進するため、memIL-10に長いリンカーペプチド(30アミノ酸であり、長いことからLmemIL-10と呼ぶ)を提供した。(
図3、左下)。別の誘導体を作成するために、IL-10Rα鎖にあるIL-10結合部位に直接アクセスできるように設計された新しい足場として、IL-10Rβ鎖のN末端に二量体IL-10を融合させ、これをmemIL-l0RB(
図3、右下)と呼ぶ。実際、
図4から、ヒトジャーカット細胞における3つの産物の表面発現が確認される。注目すべきことに、memIL-10RB融合タンパク質の表面発現のレベルはIL-10Rα鎖の利用可能性に依存すると予想される。3つの異なるmemIL-10構成の発現及び機能を評価するために、マウスCD4T細胞に3つの構築体をコードするmRNAをトランスフェクションし、表面発現(
図5A)、表面IL-10Rの下方制御(
図5B)及びSTAT3の自発的リン酸化(
図5C)についてアッセイした。実際、ジャーカット細胞で得られた結果と一致して、短いリンカー及び長いリンカーを持つ構築体は、memILL-10Rβよりもはるかに高いレベルで発現され、優れた機能を発揮する。これは、表面IL-10Rの大幅な減少及びpSTAT3のより強い誘導から明白である。短いリンカー構築体(sLmemIL-10)は、長いリンカー構築体(lLmemIL-10)よりも、pSTAT3を誘導する能力が繰り返し実験(図示略)においても優れていたため、さらなる実験用に選択した。
【0082】
実施例4.レトロウイルス形質導入マウスCD4T細胞におけるmemIL-10の発現及び特徴解析。
レトロウイルス形質導入T細胞におけるmemIL-10の発現及び機能を試験するために、C57BL/6(B6)マウスから磁気ビーズで精製された脾臓CD4T細胞を最初に使用した。memIL-10形質導入細胞に対する陰性対照として、偽形質導入細胞(Mock)を使用した。これらの実験では、可溶性IL-10(sIL-10)を陽性対照として使用した。
図6は、3つのTr1関連マーカーLAG-3、CD49b、及びPD-1の発現について、同じ培養で増殖させた形質導入細胞及び非形質導入細胞と偽形質導入細胞を、トランスフェクション後48時間及び6日にフローサイトメトリー分析した結果を示す。3つのマーカーの明確な上昇は、実際に2日目で既に観察され、6日目も持続し、予想された表現型を示している。形質導入されたT細胞がTCRを介した活性化によりIL-10を分泌する能力により、Tr1のような機能的特性の獲得が確認された(
図7)。
【0083】
実施例5.Tエフェクター細胞に対する形質導入細胞の阻害効果の評価。
形質導入細胞がその阻害効果を隣接するTeff細胞に対して発揮する能力を調べるために、1つのT細胞集団のみを選択的に活性化し、他のT細胞集団を活性化できないようにする共培養設定を設計する(明らかに、抗TCR/CD3抗体は共培養中のすべてのT細胞を活性化する)。この目的のため、キメラH-2Kb-CD3ζ(Kb-CD3ζ)及びH-2Kd-CD3ζ(Kd-CD3ζ)MHC-I重鎖をコードする、我々が作成した2つの遺伝子を利用する。我々は既に、両遺伝子が、TCRクロスリンクに匹敵する規模のAbを介したクロスリンク後にT細胞を選択的に活性化することを示している。次の一連の機能実験では、これらのツールを使用して、mRNAをトランスフェクションしたTr1細胞とTeff細胞を様々な比率で3~4日間混合し、CFSE希釈及び細胞内IFN-γ染色を使用して、(非活性化又はRFP+非Tr1細胞に対する)活性化Tr1細胞の、活性化Teffの増殖及びエフェクター機能の両方を抑制する能力を評価する。
【0084】
実施例6.IL-10形質導入細胞のin vivo持続性及びヒト疾患のマウスモデルにおける抑制機能の評価。
シンジェニック野生型マウスにおけるIL-10形質導入NOD又はB6 CD4T細胞のin vivo持続性及びその表現型の維持を評価するために、T1D実験系において我々が最近確立したプロトコル(36)を使用する。簡潔に述べると、10×106個の細胞を尾静脈に注射する。注射の1、7、及び14日後に脾臓及び末梢リンパ節を採取し、CD4+IL-10+LAG-3+CD49b+T細胞をフローサイトメトリーで識別する(注射していないマウスのバックグラウンド染色レベルと比較する)。
【0085】
次に、T1DやIBDなどのヒト疾患のマウスモデルを使用して、生体内の生理学的条件下でのmemIL-10形質導入T細胞の実際の抑制機能を試験する。
実施例7.レトロウイルス形質導入ヒトCD4T細胞におけるmemIL-10の発現及び特徴解析。
【0086】
ヒトCD4T細胞のレトロウイルス形質導入の表現型及び機能の結果を評価するために、イスラエルのマーゲン・ダビド公社の血液サービスセンターを通じて健康なドナーから得た血液試料からCD4T細胞を単離した。2つの独立したex-vivo実験の1回目が
図8に示されている。この実験では、細胞を形質導入後18日間培養し、形質導入後1、5、及び18日目に、マーカーLAG-3、CD49b、PD-1、4-1BB、CD25及びIL-10Rαの表現型分析をフローサイトメトリーで行った。我々の結果から、予想されるTr1表現型に関連するこれらすべての細胞表面マーカーが、実験の全期間にわたって同じ培養皿で増殖させたmemIL-10陰性細胞と比較して、memIL-10発現細胞で有意に増加したことが確認される。
【0087】
2回目の実験は別の血液試料に対して行われ、LAG-3、CD49b、及びPD-1(
図9)について行われたフローサイトメトリーは、1回目の実験で得られた結果と一致している。これらの2つの実験から、レトロウイルス形質導入を介したヒトCD4T細胞におけるmemIL-10の長期発現は、これらの細胞にTR-1のような表現型を与えると結論付けることができる。
【0088】
参考文献
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【配列表】