(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001958
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】バネ体を内蔵する回転型差動変圧器を有するトルクセンサ
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
G01L3/10 303A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100846
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】濱島 徹
(57)【要約】
【課題】従来のトーションバーを用いることなく、角度情報とトルクを検出することである。
【解決手段】バネ体を内蔵する回転型差動変圧器を有するトルクセンサは、ハウジング2に回転自在に設けられた主軸1と、ハウジング2内に設けられ主軸1の外周1Bに位置するねじりバネ8からなるバネ体8Aと、主軸1の端部4に設けられた回転型差動変圧器5と、を備え、バネ体8Aの第1端部及び第2端部に位置する第1スプリングフック10及び第2スプリングフック11は、互いに逆方向に引張りを受けることができるようにし、主軸1の回転角度及びバネ体8Aのねじり角度を角度情報として検出する構造である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)に回転自在に設けられた主軸(1)と、前記ハウジング(2)内に設けられ前記主軸(1)の外周(1B)に位置するねじりバネ(8)からなるバネ体(8A)と、前記主軸(1)の端部(4)に設けられた回転型差動変圧器(5)と、を備え、
前記バネ体(8A)の第1端部及び第2端部に位置する第1スプリングフック(10)及び第2スプリングフック(11)は、互いに逆方向に引張りを受けることができるようにし、前記主軸(1)の回転角度及びバネ体(8A)のねじり角度を角度情報として検出することを特徴とするバネ体を内蔵する回転型差動変圧器を有するトルクセンサ。
【請求項2】
前記バネ体(8A)はスプリングよりなり、前記第1、第2スプリングフック(10,11)は、前記スプリングの各端部をU字型に曲折して形成されていることを特徴とする請求項1記載のバネ体を内蔵する回転型差動変圧器を有するトルクセンサ。
【請求項3】
前記ハウジング(2)内には、ストッパ(13,14)が設けられ、前記主軸(1)の過剰な回転を防止する構造としたことを特徴とする請求項1又は2記載のバネ体を内蔵する回転型差動変圧器を有するトルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バネ体を内蔵する回転型差動変圧器を有するトルクセンサに関し、特に、主軸が一定以上回転すると、一方のスプリングフックがハウジング内部のストッパに接触するため、過剰な回転を防止し、周知のRVDT(回転型差動変圧器)の原理とねじりバネ機構とを組み合わせたトルクセンサとしての機能が得られるようにした新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のトルクセンサとしては、図示しない特許文献1の
図2及び
図3で示されているように、車輌操舵時の操舵トルクを検出するための操舵トルクセンサが開示されており、この操舵トルクセンサは、ステアリングシャフトの中間部に設けられたトーションバーと、前記トーションバーの一端側に軸線方向にのみ変位可能にガイドされた移動コアと、前記トーションバーの一端側に対する他端側の捩れ変位を前記移動コアの前記軸線方向変位に変換する伝達機構と、前記移動コアの変位に応じた電気信号を出力するべく前記移動コアに絶縁材を介して摺接するように車体側に保持された差動変圧器コイルとを有し、前記移動コアがクロム及びアルミニウムのうち少なくとも何れか一方と、0.3重量%以下の炭素とを含むと共に、前記移動コアの前記絶縁材との前記移動コアの摺接面が軟窒化処理された構成となっていて、ステアリングシャフトに操舵トルクが発生するとトーションバーが捩れ、スリーブに設けられたピンがスリーブに対して周方向に相対的に移動することから、これらピン及び該ピンに係合する螺旋状の長孔を伝達機構として、トーションバーの捩れ変位を移動コアの軸線方向変位に変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のトルクセンサは、一例として、以上のように構成されていたため、その構造部品として、現状ではあまり用いられていない光学部品や電子部品及び機械加工部品を、例えば、自動車等の電動ステアリング等に利用した場合、劣悪な環境の中においては、耐久性に問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、主軸が一定以上回転すると、一方のスプリングフックがハウジング内部のストッパに接触するため、過剰な回転を防止し、周知のRVDTとねじりバネ機構とを組み合わせたバネ体を内蔵する回転型差動変圧器を有するトルクセンサを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるバネ体を内蔵する回転型差動変圧器を有するトルクセンサは、ハウジングに回転自在に設けられた主軸と、前記ハウジング内に設けられ前記主軸の外周に位置するねじりバネからなるバネ体と、前記主軸の端部に設けられた回転型差動変圧器と、を備え、前記バネ体の第1端部及び第2端部に位置する第1スプリングフック及び第2スプリングフックは、互いに逆方向に引張りを受けることができるようにし、前記主軸の回転角度の回転速度及びバネ体のねじり角度を角度情報として検出することを特徴とするバネ体を内蔵する回転型差動変圧器を有する構造であり、また、前記バネ体はスプリングよりなり、前記第1、第2スプリングフックは、前記スプリングの各端部をU字型に曲折して形成されている構造であり、また、前記ハウジング内には、ストッパが設けられ、前記主軸の過剰な回転を防止する構造である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によるバネ体を内蔵する回転型差動変圧器を有するトルクセンサは、以上のような構成を有しているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、トーションバーを使用しないため、製造が容易となる。
また、回転型差動変圧器からの電圧出力を汎用的な測定器を使用することで、角度情報を得ることが可能となる。
また、回転型差動変圧器は、2相の出力電圧から演算した和電圧をモニターすることで、断線検出も可能となるため、故障検出も可能となる。
さらに、ねじりバネをハウジング内部に取付けることで、ストッパ強度を向上し、よりねじりトルクの大きなバネも使用が可能となり、トルク検出範囲を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態によるバネ体を内蔵する回転型差動変圧器を有するトルクセンサを示す断面図である。
【
図2】
図1のスプリングフックを示す拡大平面図である。
【
図3】
図3の主軸の初期位置(0°)の平面図である。
【
図4】
図3の主軸を100°に回転させた状態の平面図である。
【
図5】
図3の主軸を125°に回転させた状態でストッパに接触して停止した状態を示す平面図である。
【
図6】主軸回転等のスプリングフックの位置変化を示す平面図である。
【
図10】一対のスプリングフックが回転及び停止状態であることを示す平面図である。
【
図11】本発明の実施の形態に用いられるRVDTの出力を示す特性図である。
【
図12】本発明の実施の形態に用いられるねじりバネの出力図である。
【
図13】本発明の実施の形態におけるねじりバネの斜視図である。
【
図14】本発明の実施の形態におけるRVDTのトルクを示す出力図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、主軸が一定以上回転すると、一方のスプリングフックがハウジング内部のストッパに接触するため、過剰な回転を防止し、周知のRVDTとねじりバネ機構とを組み合わせたバネ体を内蔵する回転型差動変圧器を有するトルクセンサを得ることである。
【実施例0010】
以下、図面と共に本発明によるバネ体を内蔵する回転型差動変圧器を有するトルクセンサの好適な実施の形態について説明する。
図1において、符号1で示されるものは、時計回り(CW)及び反時計回り(CCW)の二方向に回転自在な主軸であり、この主軸1は軸受2Aを介してハウジング2内に回転自在に設けられている。
前記ハウジング2外でかつ前記主軸1の端部4には、前記ハウジング2に取付けられた周知のRVDT(周知の回転型差動変圧器)5の回転軸6が前記主軸1に接続されている。
前記主軸1の外周に設けられた一対で、かつ、互いに別体として形成された第1、第2スプリングフック10、11間には、ねじりバネ8からなるバネ体8Aが挟み込まれている。
【0011】
図2に示すように、前記各スプリングフック10、11に設けられたアーム11Aは前記主軸1に取付けられており、前記主軸1の回転によって前記アーム11Aが前記各スプリングフック10、11を次々と押すことになり、結果としてねじりバネ8がねじられる。
前記主軸1の回転方向とは逆方向の第1スプリングフック10は、第1、第2ストッパ13、14の何れかに接触しており、当該スプリングフック10は回転することなく停止状態に保持されている。
【0012】
図3~
図5に示されるものは、主軸1に設けられ、前記ハウジング2に対して、前記主軸1の軸端から見てCCW回転の場合、
図3は、主軸1が初期位置(0°)である場合、すなわち、主軸1が停止状態を示している。
図4は、前記主軸1が
図3の状態から100°回転した状態を示し、前記第1スプリングフック10も同時回転してねじられ、所定のトルクが生じる。
図5は、前記主軸1が一定以上回転すると、第1スプリングフック10がハウジング2内の第1、第2ストッパ13、14のうちの第2ストッパ14に乗り上げるような状態(125°回転)で、これ以上、前記主軸1のスプリングフック10がストッパ14に押されると、スプリングフック10が破損する恐れがあるため、前記第1スプリングフック10のスプリングを保護している。
【0013】
次に、
図6から
図9までは、前述の
図1で示したトルクセンサ1Aを、
図6のA-A線、B-B線及びC-C線による断面として示し、互いに別体構成の第1、第2スプリングフック10、11のねじりによってトルク出力を得ることができることが示されている。
図7は、
図6のA-A断面を示し、
図8は、
図6のB-B断面を示し、
図9は
図6のC-C断面を示している。
すなわち、前記各スプリングフック10、11が各ストッパ13、14に接触すると、
図10で示されるように、前記ねじりバネ8は2個の前記スプリングフック10、11によって、挟み込まれている。
【0014】
前記アーム11Aは、前記主軸1に取付けられており、前記主軸1がCW又はCCW方向の何れかに回転することにより、前記アーム11Aが第2スプリングフック11を押し、その結果として前記ねじりバネ8がねじられる。
また、前記主軸1の回転方向が前述とは逆方向の前記第1スプリングフック10は、前記第2ストッパ14に接触しており、回転しない状態である。
【0015】
前記バネ体8Aの第1、第2端部に位置する第1、第2スプリングフック10、11は、互いに逆方向に引っ張りを受けることができるようにされ、前記主軸1の回転角度及びバネ体8Aのねじり角度情報として検出することができる。
前記バネ体8Aは、周知のスプリングよりなり、
図13に示すように、前記第1、第2スプリングフック10、11は前記スプリングの各端部をU字型(U字型部8M、8Nとなるよう)に曲折している。
さらに、前記ハウジング2内の第1、第2ストッパ13、14は、前記主軸1のCW及びCCW方向の過剰な回転を防止することができる構造である。
【0016】
尚、前述のRVDT5については、周知の装置であるため、
図11に出力電圧の内容、
図12にねじりバネ8の出力(トルク)の状態を示している。
【0017】
図13のねじりバネ8と
図14のRVDT5のトルク出力は、以下の通りである。
・RVDTの出力は傾き(感度)k1で、角度θに比例し変化する。
・ねじりバネのバネ定数は、その材料、巻き数等により一意に決定される。
計測方法の概略について説明すると、
1.RVDTの出力電圧より、角度θ1を測定。E=k1×θ1
2.バネ定数k2とθ1より、トルクを換算する。T=k2×θ1
RVDTの出力Va-Vbは、マイナス方向へ回転した場合、マイナスの電圧となる。これにより回転方向も確認できる(
図14のθ2の場合を参照)。トルクは絶対値として換算すればよい(回転方向に依らず、起点からのねじれ角にのみ依存するため)。
本発明によるバネ体を内蔵する回転型変圧器を有するトルクセンサは、バネ体を主軸に設け、主軸の左右回転時にバネ体に発生するねじり角度情報をトルクとして検出し、各ストッパにより各スプリングフックの安全を確保できる。