(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001959
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】車両用電子キーの登録システムおよび登録方法、車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60R 25/24 20130101AFI20231228BHJP
E05B 83/00 20140101ALI20231228BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B60R25/24
E05B83/00 A
E05B83/00 H
E05B49/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100847
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】田中 将士
(72)【発明者】
【氏名】榎本 豊
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250BB08
2E250BB28
2E250DD02
2E250FF27
2E250FF36
2E250HH07
2E250JJ03
2E250LL18
(57)【要約】
【課題】登録済の電子キーが複製されるのを防止して、セキュリティ性を向上させる。
【解決手段】車両制御装置10は、登録モードにおいて、車両50の表示部にPINコード(第1識別情報)を表示させる。ユーザは、携帯機30においてPINコードを入力し、続いてFOB20(第1電子キー)のバーコード29(第2識別情報)を携帯機30で読み取る。携帯機30は、PINコードとバーコードとを用いて、携帯機30と車両制御装置10に共通の暗号キーY(第2暗号情報)を生成し、この暗号キーYに基づき所定の演算を実行して、その演算結果を車両制御装置10へ送信する。車両制御装置10は、携帯機30から受信した演算結果の正否を判定し、演算結果が正常であれば、暗号キーYを保存することにより、携帯機30を第2電子キーとして登録する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のユーザが所有する第1電子キーおよび第2電子キーと、
前記車両に搭載され、前記第1電子キーおよび前記第2電子キーと無線通信を行うことにより、車両の動作を制御する車両制御装置と、を備え、
前記第1電子キーと前記車両制御装置に共通の第1暗号情報が、あらかじめ前記車両制御装置に登録されており、
前記ユーザが所有する携帯機を、前記第2電子キーとして前記車両制御装置に登録する、車両用電子キーの登録システムにおいて、
前記車両制御装置は、
前記第1電子キーと通信している状態で、前記携帯機における所定の操作に基づいて、第1識別情報を前記車両の表示部に表示させ、
前記携帯機において前記ユーザにより入力された、前記第1識別情報を前記携帯機から受信すると、当該第1識別情報の正否を判定し、
前記第1識別情報が正常であれば、前記携帯機に対して、前記第1暗号情報が所定の態様で表された第2識別情報の読み取りを要求し、
前記携帯機は、
前記第2識別情報を読み取ると、前記第1識別情報と前記第2識別情報とを用いて、当該携帯機と前記車両制御装置に共通の第2暗号情報を生成し、
前記生成した第2暗号情報に基づき所定の演算を実行して、当該演算結果を前記車両制御装置へ送信し、
前記車両制御装置は、
前記携帯機から受信した前記演算結果の正否を判定し、
前記演算結果が正常であれば、前記第2暗号情報を保存することにより、前記携帯機を前記第2電子キーとして登録する、ことを特徴とする車両用電子キーの登録システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用電子キーの登録システムにおいて、
前記携帯機は、
前記第2暗号情報と、当該携帯機のIDと、乱数とに基づき前記所定の演算を実行して、当該演算結果を前記IDおよび前記乱数と共に前記車両制御装置へ送信し、
前記車両制御装置は、
前記第1識別情報の判定結果が正常であれば、前記第1暗号情報と前記第1識別情報とを用いて、前記第2暗号情報を生成し、
前記携帯機から受信した前記IDおよび前記乱数と、生成した前記第2暗号情報とに基づいて所定の演算を実行し、
当該演算結果が、前記携帯機から受信した前記演算結果と一致した場合に、前記第2暗号情報を保存する、ことを特徴とする車両用電子キーの登録システム。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用電子キーの登録システムにおいて、
前記第1識別情報は、ランダムに生成されたPIN(Personal Identification Number)コードであり、
前記第2識別情報は、前記第1電子キーに付設されたタグに表示されているバーコードである、ことを特徴とする車両用電子キーの登録システム。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用電子キーの登録システムにおいて、
前記PINコードは、前記車両に備わるメータの走行距離表示部に表示される、ことを特徴とする車両用電子キーの登録システム。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用電子キーの登録システムにおいて、
前記車両制御装置は、前記車両に備わる操作部の操作に基づき登録モードへ遷移して、前記メータに登録モードアイコンを表示させる、ことを特徴とする車両用電子キーの登録システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の車両用電子キーの登録システムにおいて、
前記第1電子キーは、キーFOBであり、
前記第2電子キーは、スマートフォン、タブレット端末、またはウェアラブル端末である、ことを特徴とする車両用電子キーの登録システム。
【請求項7】
車両のユーザが所有する第1電子キーおよび第2電子キーと、
前記車両に搭載され、前記第1電子キーおよび前記第2電子キーと無線通信を行うことにより、車両の動作を制御する車両制御装置と、を備え、
前記第1電子キーと前記車両制御装置に共通の第1暗号情報が、あらかじめ前記車両制御装置に登録されており、
前記ユーザが所有する携帯機を、前記第2電子キーとして前記車両制御装置に登録するシステムにおける、車両用電子キーの登録方法であって、
前記車両制御装置が、前記第1電子キーと通信している状態で、前記携帯機における所定の操作に基づいて、第1識別情報を前記車両の表示部に表示させる手順と、
前記車両制御装置が、前記携帯機において前記ユーザにより入力された、前記第1識別情報を前記携帯機から受信し、当該第1識別情報の正否を判定する手順と、
前記第1識別情報が正常であれば、前記車両制御装置が、前記携帯機に対して、前記第1暗号情報が所定の態様で表された第2識別情報の読み取りを要求する手順と、
前記携帯機が、前記第2識別情報を読み取り、前記第1識別情報と読み取った前記第2識別情報とを用いて、当該携帯機と前記車両制御装置に共通の第2暗号情報を生成する手順と、
前記携帯機が、前記生成した第2暗号情報に基づき所定の演算を実行して、当該演算結果を前記車両制御装置へ送信する手順と、
前記車両制御装置が、前記携帯機から受信した前記演算結果の正否を判定し、当該演算結果が正常であれば、前記第2暗号情報を保存することにより、前記携帯機を前記第2電子キーとして登録する手順と、を含むことを特徴とする車両用電子キーの登録方法。
【請求項8】
車両に搭載され、前記車両のユーザが所有する第1電子キーおよび第2電子キーと無線通信を行うことにより、車両の動作を制御する車両制御装置であって、
前記第1電子キーと当該車両制御装置に共通の第1暗号情報が、あらかじめ登録されており、
前記第1電子キーと通信している状態で、前記ユーザが所有する携帯機における所定の操作に基づいて、第1識別情報を前記車両の表示部に表示させ、
前記携帯機において前記ユーザにより入力された、前記第1識別情報を前記携帯機から受信すると、当該第1識別情報の正否を判定し、
前記第1識別情報が正常であれば、前記携帯機に対して、前記第1暗号情報が所定の態様で表された第2識別情報の読み取りを要求し、
前記携帯機において読み取られた前記第2識別情報と前記第1識別情報とを用いて生成された、当該携帯機と前記車両制御装置に共通の第2暗号情報に基づく所定の演算結果を、前記携帯機から受信すると、当該演算結果の正否を判定し、
前記演算結果が正常であれば、前記第2暗号情報を保存することにより、前記携帯機を前記第2電子キーとして登録する、ことを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車などの車両の電子キーを登録するシステムに関し、特に、スマートフォンのような携帯機を電子キーとして利用する場合の登録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車には、ユーザが所持する電子キーと、車両に搭載された車両制御装置との間で双方向の無線通信を行って、ID照合による電子キーの認証を行い、認証結果が正常であればハンドルの解錠やエンジンの始動などを許可するようにしたものがある。
【0003】
車両用の電子キーとしては、従来からリモコン型のキーFOB(以下、単に「FOB」と表記)が広く用いられているが、近年にあってはFOBとは別に、車両のユーザが所持するスマートフォンなどの携帯機を電子キーとして利用することが可能な車両も登場している。このような携帯機を電子キーとして利用するにあたっては、FOBの場合と同様に、当該携帯機が当該車両のみで使用できるように、携帯機と車両に共通の暗号キーを、携帯機の識別情報などと共に、あらかじめ車両側に登録する必要がある。
【0004】
特許文献1~3には、スマートフォンなどの携帯機を車両の電子キーとして用いる場合の、キー登録システムが示されている。特許文献4には、ブレスレット型のウェアラブル機器を車両の電子キーとして用いる場合の、キー登録システムが示されている。特許文献5には、電子キーとスマートフォンの双方を用いて、必要なサービスの提供を受けるシステムが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-76242号公報
【特許文献2】特開2021-25313号公報
【特許文献3】特開2020-147926号公報
【特許文献4】特開2017-172145号公報
【特許文献5】特開2020-13363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スマートフォンなどの携帯機を車両用の電子キーとして登録するために必要な情報が、悪意の第三者によって盗用されると、当該第三者は登録済の携帯機の複製物を容易に作製することができる。このため、その複製された携帯機を用いて車両が盗難されるリスクが発生し、セキュリティが脅かされる。
【0007】
本発明の課題は、登録済の電子キーが複製されるのを防止して、セキュリティ性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電子キー登録システムは、車両のユーザが所有する第1電子キーおよび第2電子キーと、車両に搭載され、第1電子キーおよび第2電子キーと無線通信を行うことにより、車両の動作を制御する車両制御装置とを備えている。車両制御装置には、第1電子キーと車両制御装置に共通の第1暗号情報があらかじめ登録されており、車両制御装置は、ユーザが所有する携帯機を第2電子キーとして登録する。
【0009】
車両制御装置は、第1電子キーと通信している状態で、携帯機における所定の操作に基づいて、第1識別情報を車両の表示部に表示させる。そして、車両制御装置は、携帯機においてユーザにより入力された第1識別情報を携帯機から受信すると、当該第1識別情報の正否を判定し、第1識別情報が正常であれば、携帯機に対して、第1暗号情報が所定の態様で表された第2識別情報の読み取りを要求する。
【0010】
携帯機は、第2識別情報を読み取ると、第1識別情報と第2識別情報とを用いて、当該携帯機と車両制御装置に共通の第2暗号情報を生成し、この第2暗号情報に基づき所定の演算を実行して、当該演算結果を車両制御装置へ送信する。車両制御装置は、携帯機から受信した演算結果の正否を判定し、演算結果が正常であれば、第2暗号情報を保存することにより、携帯機を第2電子キーとして登録する。
【0011】
このようなシステムによると、携帯機の登録にあたって、車両の表示部に表示される第1識別情報を携帯機で入力する必要があり、入力した第1識別情報と読み取った第2識別情報の双方を用いて、第2暗号情報が生成される。このため、第三者がユーザの携帯機からスキミングによって、第2暗号情報の生成に必要なデータを窃取したとしても、第2識別情報を読み取るだけでは、第2暗号情報は生成されないので、当該第三者が電子キーとしての携帯機を複製することは不可能となる。その結果、車両の盗難を未然に防止して、セキュリティを向上させることができる。
【0012】
本発明において、携帯機は、第2暗号情報と、携帯機のIDと、乱数とに基づき所定の演算を実行し、その演算結果をIDおよび乱数と共に車両制御装置へ送信してもよい。この場合、車両制御装置は、第1識別情報の判定結果が正常であれば、第1暗号情報と第1識別情報とを用いて、第2暗号情報を生成し、携帯機から受信したIDおよび乱数と、生成した第2暗号情報とに基づいて所定の演算を実行する。そして、車両制御装置は、当該演算結果が携帯機から受信した演算結果と一致した場合に、第2暗号情報を保存する。
【0013】
本発明において、第1識別情報は、ランダムに生成されたPINコードであり、第2識別情報は、第1電子キーに付設されたタグに表示されているバーコードであってもよい。
【0014】
本発明において、PINコードを車両に備わるメータの走行距離表示部に表示してもよい。また、車両に備わる操作部の操作に基づき登録モードへ遷移したときに、メータに登録モードアイコンを表示してもよい。
【0015】
本発明において、第1電子キーはキーFOBであり、第2電子キーはスマートフォン、タブレット端末、またはウェアラブル端末であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、登録済の電子キーが複製されるのを防止して、セキュリティ性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による電子キー登録システムの全体図である。
【
図2】車両とFOBと携帯機の具体的構成を示したブロック図である。
【
図3】電子キー登録の基本的な手順を示したフローチャートである。
【
図4】メータに登録モードアイコンが表示された状態を示した図である。
【
図5】メータにPINコードが表示された状態を示した図である。
【
図7】携帯機の暗号キーの登録を説明する図である。
【
図8】FOBの暗号キーの登録を説明する図である。
【
図9】電子キー登録の手順をさらに詳細に示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図を通して、同一の部分または対応する部分には、同一の符号を付してある。
【0019】
図1は、本発明による電子キー登録システムの一例を示している。電子キー登録システム100は、ECU(Electronic Control Unit)から構成される車両制御装置10と、リモコン型の電子キーであるFOB20と、電子キーとして登録される携帯機30とから構成される。車両制御装置10は車両50に搭載されており、FOB20と携帯機30は車両50のユーザにより所持される。本実施形態では、車両50はオートバイやスクータなどの自動二輪車である。FOB20は本発明における「第1電子キー」の一例であり、携帯機30は本発明における「第2電子キー」の一例である。
【0020】
車両制御装置10は、FOB20および携帯機30と双方向の無線通信を行う。この通信方式として、本実施形態では、簡便さと省電力の観点から、近距離無線通信規格であるBLE(Bluetooth Low Energy;Bluetoothは登録商標)が用いられる。車両制御装置10とFOB20との間のBLE通信には、両者に共通の暗号キーXが用いられる。暗号キーXは、車両制御装置10にあらかじめ登録されている。また、車両制御装置10と携帯機30との間のBLE通信には、両者に共通の暗号キーYが用いられる。暗号キーYは、携帯機30が電子キーとして登録された場合に、車両制御装置10に新たに保存される(詳細は後述)。暗号キーXは、本発明における「第1暗号情報」に相当し、暗号キーYは、本発明における「第2暗号情報」に相当する。
【0021】
FOB20は、従来から用いられている電子キーであり、本体に設けられた操作部25と、本体に付設されたタグ28とを備えている。操作部25には、電源スイッチであるオンオフスイッチ25aと、ランプ点滅やブザー鳴動により車両位置を知らせるためのアンサーバックスイッチ25bとが設けられている。タグ28には、バーコード29が表示されている。このバーコード29は、前述の暗号キーXの情報を可視化して表したものであって、本発明における「第2識別情報」の一例である。
【0022】
携帯機30は、本実施形態では市販のスマートフォンであり、そのままでは車両50の電子キーとして使えないが、後述する手順に従って表示部36の画面で所定の操作を行い、車両制御装置10に登録することで、FOB20と同様に、車両50の電子キーとして使用が可能となる。以下では、携帯機30をスマートフォン30と表記することとする。
【0023】
図2は、車両制御装置10、FOB20、およびスマートフォン30の具体的構成の一例を示したブロック図である。ここでは、本発明に関係するブロックのみを図示してある。
【0024】
車両制御装置10は、制御部11、送受信部12、アンテナ13、およびメモリ14を備えている。制御部11はCPUなどからなり、車両制御装置10の動作を制御する。送受信部12は、アンテナ13を介してFOB20およびスマートフォン30と双方向のBLE通信を行い、両者へ信号を送信し、また両者から信号を受信する。メモリ14には、制御部11の制御に必要なデータや、FOB20およびスマートフォン30の登録データなどが記憶されている。
【0025】
車両制御装置10には、車両50に備わる操作部51およびメータ52が接続されている。操作部51には、ハンドルの施錠・解錠やエンジンの始動・停止などを行うためのメインスイッチ51aが含まれる。メータ52には、車両50の走行距離を表示する走行距離表示部52aが含まれる。
【0026】
FOB20は、制御部21、送受信部22、アンテナ23、メモリ24、および操作部25を備えている。制御部21はCPUなどからなり、FOB20の動作を制御する。送受信部22はアンテナ23を介して車両制御装置10と双方向の通信を行い、車両制御装置10へ信号を送信し、また車両制御装置10から信号を受信する。メモリ24には、制御部21の制御に必要なデータのほか、前述した暗号キーXやFOB20のIDなどを記憶する領域が設けられている。操作部25には、
図1で示したスイッチ25a、25bが設けられている。
【0027】
スマートフォン30は、制御部31、送受信部32、アンテナ33、メモリ34、操作部35、表示部36、および読取部37を備えている。制御部31はCPUなどからなり、スマートフォン30の動作を制御する。送受信部32はアンテナ33を介して車両制御装置10と双方向の通信を行い、車両制御装置10へ信号を送信し、また車両制御装置10から信号を受信する。メモリ34には、制御部31の制御に必要なデータのほか、前述した暗号キーYやスマートフォン30のIDなどを記憶する領域が設けられている。操作部35には、スマートフォン30の本体に設けられた各種の操作ボタンが含まれる。表示部36はタッチパネルから構成され、読取部37はカメラから構成される。
【0028】
図3は、上述した電子キー登録システム100において、スマートフォン30を電子キーとして登録する場合の基本的な手順を示している。以下、
図3のA~Mの各手順について説明する。
【0029】
<手順A>
車両制御装置10が登録済のFOB20と通信している状態で、車両50の操作部51(
図2)において、たとえばメインスイッチ51aを長押しするなどの所定の操作が行われると、車両制御装置10は通常モードから登録モードへ遷移する。これにより、
図4に示すように、車両50に備わるメータ52に、登録モードであることを示す登録モードアイコン17が、たとえば点滅状態で表示される。
【0030】
<手順B>
登録モードアイコン17の表示により、ユーザは、登録モードへ遷移したことを知り、スマートフォン30を操作して、電子キー登録用のアプリケーションを起動する。すると、スマートフォン30の表示部36の画面に、たとえば
図6(a)に示すような接続開始ボタン36aが表示される。ユーザは、この接続開始ボタン36aをタップ操作によりONする。
【0031】
<手順C>
車両制御装置10は、接続開始ボタン36aが操作されると、ランダムに生成したPIN(Personal Identification Number)コードを、車両50のメータ52に表示する。詳しくは、たとえば
図5に示すように、メータ52に設けられている走行距離表示部52aに、PINコード18が表示される。ここでは、PINコード18は6桁の数字からなる。
【0032】
<手順D>
ユーザは、この表示されたPINコード18を、所定時間内にスマートフォン30で入力する。詳しくは、たとえば
図6(b)に示すように、スマートフォン30の表示部36の画面に、6桁のPINコードの入力を促すメッセージ36bと、PINコード入力欄36cと、入力完了ボタン36dとが表示される。ユーザは、PINコード入力欄36cにPINコードを入力した後、入力完了ボタン36dをタップ操作によりONする。
【0033】
<手順E>
車両制御装置10は、ユーザにより入力されたPINコードが、メータ52に表示されたPINコード18と一致すれば、入力PINコードが正しいと判断し、スマートフォン30との接続を確立するとともに、スマートフォン30に対して、バーコード29の読み取りを要求する。
【0034】
<手順F>
その後、車両制御装置10は、あらかじめ登録されているFOB20の暗号キーXと、PINコード18とを用いて、スマートフォン30の暗号キーYを生成する。前述したように、暗号キーXは、車両制御装置10とFOB20の共通キーであり、暗号キーYは、車両制御装置10とスマートフォン30の共通キーである。
【0035】
<手順G>
一方、スマートフォン30においては、たとえば
図6(c)に示すように、表示部36の画面に、FOB20のタグ28に表示されているバーコード29をカメラで読み取ることを促すメッセージ36eと、カメラ起動ボタン36fとが表示される。ユーザは、カメラ起動ボタン36fを操作してカメラを起動し、タグ28のバーコード29を読み取る。前述したように、このバーコード29は、暗号キーXに対応した情報である。
【0036】
<手順H>
続いて、スマートフォン30では、先のPINコード18と、読み取ったバーコード29とを用いて、車両制御装置10とスマートフォン30の共通キーである暗号キーYを生成する。この暗号キーYの生成について、以下に簡単な例で説明する。
PINコード:654321(6桁)
バーコード :1234567890(10桁)
とした場合、暗号キーYは、PINコードの数列とバーコードの数列の組み合わせとして生成される。すなわち、
暗号キーY :6543211234567890(16桁)
となる。
【0037】
<手順I>
次に、スマートフォン30では、生成した暗号キーYと、スマートフォン30に固有の携帯機IDと、乱数とに基づいて、所定の演算を実行する。具体的には、たとえば、暗号キーYを携帯機IDでビット演算し、その結果を、乱数を用いて当該乱数の分だけシフトさせる演算処理を行う。ビット演算としては、XOR(排他的論理和)演算などを用いることができる。
【0038】
<手順J>
続いて、スマートフォン30では、携帯機IDおよび乱数と共に、手順Iで得られた演算結果を、車両制御装置10へ送信する。
【0039】
<手順K>
車両制御装置10では、スマートフォン30から受信した携帯機IDおよび乱数と、手順Fで生成済の暗号キーYとに基づき、所定の演算を実行する。具体的には、たとえば手順Iと同様に、暗号キーYを携帯機IDでビット演算し、その結果を乱数の分だけシフトさせる演算処理を行う。
【0040】
<手順L>
次に、車両制御装置10では、手順Kの演算結果と、スマートフォン30から受信した演算結果とを比較し、両者が一致すれば(すなわち演算結果が正常であれば)、スマートフォン30の暗号キーYをメモリ14に保存する。これにより、スマートフォン30が電子キー(第2電子キー)として、車両制御装置10に登録される。
【0041】
<手順M>
車両制御装置10でスマートフォン30の登録が完了すると、そのことがスマートフォン30へ通知され、スマートフォン30では、表示部36の画面に、
図6(d)に示すような登録完了メッセージ36gが表示されるとともに、暗号キーYがメモリ34に保存されて、一連の処理が完了する。
【0042】
図7は、暗号キーYの登録処理におけるデータの流れを示している。スマートフォン30では、
図7(a)に示すように、バーコード29とPINコード18から、暗号キーYが生成され、この暗号キーYと、携帯機IDと、乱数とに基づいて所定の演算が行われ、演算結果P1が得られる。一方、車両制御装置10では、
図7(b)に示すように、FOB20の暗号キーXとPINコード18から、暗号キーYが生成され、この暗号キーYと、スマートフォン30から受信した携帯機IDおよび乱数とに基づいて所定の演算が行われ、演算結果P2が得られる。そして、この演算結果P2と、スマートフォン30から受信した演算結果P1とが比較され、両者が一致すると、暗号キーYの登録が完了する。
【0043】
暗号キーYより先に登録済の暗号キーXの登録処理については、本発明と直接関係しないが、参考までに
図8に示している。FOB20では、
図8(a)に示すように、メモリ24(
図2)に記憶されている暗号キーXと、FOB20のIDと、乱数とに基づいて所定の演算が行われ、演算結果Q1が得られる。一方、車両制御装置10では、
図8(b)に示すように、メモリ14(
図2)に記憶されている暗号キーXと、FOB20から受信したIDおよび乱数とに基づいて所定の演算が行われ、演算結果Q2が得られる。そして、この演算結果Q2と、FOB20から受信した演算結果Q1とが比較され、両者が一致すると、暗号キーXの登録が完了する。
【0044】
図9は、電子キー登録の手順をさらに詳細に示したフローチャートである。
図9では、
図3との対応関係を明確にするために、
図3における手順A~Lに相当する部分を、破線A~Lで囲んである。
【0045】
最初に、車両50の操作部51において、登録モードへ移行するためのメインスイッチ51aの操作が行われると(S1)、この操作が車両制御装置10の制御部11へ通知され、制御部11は、メインスイッチ51aで登録操作が行われたと判定する(S2)。続いて、制御部11は、メータ52に対してアイコンの表示要求を行い、これを受けて、メータ52に
図4の登録モードアイコン17が表示される(S3)。また、制御部11は、スマートフォン30との接続を要求する接続要求信号を、送受信部12を介してスマートフォン30へ送信する(S4)。この接続要求信号は、一定時間間隔で周期的に送信される。
【0046】
一方、スマートフォン30では、アプリケーションの起動により、表示部36の画面に
図6(a)の接続開始ボタン36aが表示される(S5)。そして、この接続開始ボタン36aが操作されると(S6)、そのことが制御部31に通知され、制御部31および送受信部32において、接続処理が行われる(S7)。なお、この場合の接続とは、車両制御装置10とスマートフォン30との間で通信を可能にするための接続であって、いわば仮接続である。接続処理が完了すると、スマートフォン30から車両制御装置10へ応答信号が送信される(S8)。
【0047】
車両制御装置10の制御部11は、上記の応答信号を受信すると、ランダムなPINコード18を生成する(S9)。そして、制御部11からのPINコード表示要求を受けて、メータ52に
図5のPINコード18が表示される(S10)。また、制御部11は、送受信部12を介してスマートフォン30へ、PINコードの入力を要求するPIN入力要求信号を送信する(S11)。スマートフォン30では、このPIN入力要求信号を受信すると、表示部36の画面に
図6(b)のPINコード入力欄36cが表示される(S12)。そして、ユーザによりPINコード入力欄36cにPINコードが入力されると(S13)、当該PINコードが、制御部31から送受信部32を介して、車両制御装置10へ送信される(S14)。
【0048】
車両制御装置10の制御部11は、スマートフォン30から受信したPINコードが、生成したPINコード(S9)と一致するか否かを判定し(S15)、一致した場合は、スマートフォン30との接続を確立し、そのことを通知する接続確立通知信号を、送受信部12を介してスマートフォン30へ送信する(S16)。この場合の接続は、スマートフォン30を電子キーとして登録するための接続であって、いわば本接続である。また、接続確立通知信号は、バーコード29の読み取りを要求する信号でもある。
【0049】
スマートフォン30では、接続確立通知信号を受信すると、制御部31からの表示要求に基づいて、表示部36の画面に、
図6(c)のカメラ起動ボタン36fが表示される(S17)。そして、このボタンの操作によりカメラが起動し、FOB20のタグ28に表示されたバーコード29(
図1)が、カメラで読み取られる(S18)。読み取られたバーコード29のデータは、制御部31へ送られる(S19)。
【0050】
制御部31は、バーコード29とPINコード18とを用いて、スマートフォン30の暗号キーYを生成し(S20)、この暗号キーYと、携帯機IDと、乱数とに基づいて、登録用データを算出するための演算を実行する(S21)。この演算結果は、携帯機IDおよび乱数と共に、送受信部32を介して車両制御装置10へ送信される(S22)。
【0051】
一方、車両制御装置10では、スマートフォン30側のS17~S22の処理と並行して、制御部11がメモリ14から登録済の暗号キーXを読み出し、この暗号キーXと、S9で生成したPINコードとに基づいて、暗号キーYを生成する(S23)。そして、制御部11は、この暗号キーYと、S22でスマートフォン30から受信した携帯機IDおよび乱数とに基づいてS21と同様の演算を行い、その演算結果と、S22でスマートフォン30から受信した演算結果とが一致するか否かを判定する(S24)。
【0052】
上記判定の結果、両者の演算結果が一致すれば、制御部11からメモリ14に、登録用の暗号キーYと携帯機情報(携帯機IDなど)とを含む保存データが送られ、これがメモリ14に保存される(S25)。これにより、スマートフォン30の電子キー登録が完了する。また、制御部11から送受信部12を介して、登録通知信号がスマートフォン30へ送られる(S26)。登録通知信号を受信したスマートフォン30では、表示部36の画面に、
図6(d)の登録完了メッセージ36gが表示されるとともに(S27)、暗号キーYがメモリ34に保存されて(S28)、一連の動作が終了する。
【0053】
上述した本発明の電子キー登録システム100によれば、電子キーとして登録されたスマートフォン30の複製物を、第三者が作製することが事実上不可能となる。その理由は以下のとおりである。
【0054】
仮に、スマートフォン30の暗号キーYを、登録済のFOB20のタグ28から読み取ったバーコード29だけに基づいて生成するとし、第三者が、車両制御装置10と通信中のスマートフォン30の電波から、スキミングによってデータを窃取したとする。この場合、暗号キーYそのものは、メモリ34のHSM(Hardware Security Module)に格納されているため窃取はできないが、他のデータは窃取が可能である。このため、暗号キーYの生成に必要な携帯機ID、乱数、演算結果などのデータが第三者により窃取されると、当該第三者は、FOB20のタグ28(もしくはそのコピー)からバーコード29を読み取ることで、当該バーコード29に基づき生成された暗号キーYを有するスマートフォンを複製することが可能となる。
【0055】
しかるに、本発明の電子キー登録システム100においては、スマートフォン30の登録にあたって、車両50のメータ52に表示されるPINコード18をスマートフォン30で入力する必要があり、入力したPINコードと読み取ったバーコード29の双方を用いて、暗号キーYが生成される。このため、ユーザのスマートフォン30からスキミングによって、暗号キーYの生成に用いるデータを窃取したとしても、バーコード29を読み取るだけでは、暗号キーYは生成されない。
【0056】
また、PINコード18の表示は、スマートフォン30と車両50との間の近距離無線通信(BLE)に基づいて行われるので、メータ52にPINコード18が表示されている状態では、車両50の近傍に必ずユーザが居ることとなる。このため、第三者が車両50に接近し、メータ52に表示されたPINコード18を視認により窃取するのはきわめて困難である。
【0057】
こうしたことから、第三者が電子キーとしてのスマートフォン30を複製することは、事実上不可能となる。その結果、複製されたスマートフォンを用いた車両50の盗難を未然に防止して、セキュリティを向上させることができる。
【0058】
本発明では、上述した実施形態以外にも、以下のような種々の実施形態を採用することができる。
【0059】
上述した実施形態においては、車両50のメータ52の走行距離表示部52aに、PINコード18を表示した例を挙げたが、PINコード18は車両50の他の表示部に表示してもよい。
【0060】
上述した実施形態においては、車両50のメータ52に登録モードアイコン17が表示される例を挙げたが、アイコンに代えて、文字表示により登録モードへ遷移したことを報知してもよい。また、車両50に備わるランプを点滅させることで、登録モードへ遷移したことを報知してもよい。
【0061】
上述した実施形態においては、FOB20のタグ28にバーコード29が表示されている例を挙げたが、タグ28に表示する情報は、バーコードに限らず、QRコード(登録商標)であってもよい。また、これら以外の数字列や文字列などであってもよい。
【0062】
上述した実施形態においては、携帯機30としてスマートフォンを例に挙げたが、携帯機30は、スマートフォンに限らず、小型のタブレット端末や、身体に装着するウェアラブル端末などであってもよい。
【0063】
上述した実施形態においては、車両制御装置10とFOB20および携帯機30との間の近距離無線通信方式として、BLEを用いた例を挙げたが、BLEに代えて、NFC(Near Field Communication)、Wi-Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)のような、他の近距離無線通信方式を採用してもよい。
【0064】
上述した実施形態においては、車両50として自動二輪車を例に挙げたが、本発明は、自動二輪車に限らず、自動三輪車や自動四輪車などの車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 車両制御装置
17 登録モードアイコン
18 PINコード(第1識別情報)
20 FOB(第1電子キー)
28 タグ
29 バーコード(第2識別情報)
30 携帯機(第2電子キー)
36 表示部
37 読取部
50 車両
51 操作部
51a メインスイッチ
52 メータ
52a 走行距離表示部
100 電子キー登録システム
X 暗号キー(第1暗号情報)
Y 暗号キー(第2暗号情報)