(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000196
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ロッドハンドリング装置
(51)【国際特許分類】
E21B 19/18 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
E21B19/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098830
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000230788
【氏名又は名称】日本基礎技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新町 修一
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AA00
2D129BA05
2D129BA08
2D129CA02
2D129CA04
2D129CB12
2D129DC13
2D129DC33
2D129DC44
2D129EA21
2D129EC06
2D129EC32
(57)【要約】
【課題】特に、新しい掘削用ロッドを継ぎ足しする際、作業者の安全性を確保したうえで、その作業効率を改善することが可能なロッドハンドリング装置を提供する。
【解決手段】ロッドハンドリング装置1は、水平面上を旋回動作可能な装置本体7と、該装置本体7から延び、互いに回動自在に連結される第1~第3可動アーム8、9、10と、第3可動アーム10の先端に互いに回動自在に連結され、新しい掘削用ロッド4を把持する把持アーム11と、第1~第3可動アーム8、9、10及び把持アーム11の所定の回動到達位置を予めティーチングして、そのティーチングに基づいて、第1~第3可動アーム8、9、10及び把持アーム11の回動動作を制御する制御装置12と、を備えている。これにより、新しい掘削用ロッド4を継ぎ足しする際、作業者の安全性を確保したうえで、その作業効率を改善することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新しい掘削用ロッドを既設されている掘削用ロッドに順次継ぎ足す際に、当該新しい掘削用ロッドを把持して移動させるロッドハンドリング装置であって、
水平面上を旋回動作可能な装置本体と、
該装置本体から延び、互いに回動自在に連結される複数の可動アームと、
前記装置本体から最も離れた前記可動アームの先端に互いに回動自在に連結され、前記新しい掘削用ロッドを把持する把持アームと、
前記各可動アーム及び前記把持アームの所定の回動到達位置を予めティーチングして、そのティーチングに基づいて、前記各可動アーム及び前記把持アームの回動動作を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とするロッドハンドリング装置。
【請求項2】
前記把持アームは、
前記新しい掘削用ロッドを把持するロッド把持部と、
該ロッド把持部を、前記掘削用ロッドの軸方向及び径方向に沿って弾性支持するスプリング部材と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のロッドハンドリング装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記各可動アーム及び前記把持アームのそれぞれに設けた水平面に対する傾斜角度を検出する傾斜検出センサーからの検出信号に基づいて、前記各可動アーム及び前記把持アームの回動到達位置を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のロッドハンドリング装置。
【請求項4】
新しい掘削用ロッドを既設されている掘削用ロッドに順次継ぎ足す際に、当該新しい掘削用ロッドを把持する把持アームを備えたロッドハンドリング装置であって、
前記把持アームは、
前記新しい掘削用ロッドを把持するロッド把持部と、
該ロッド把持部を、前記掘削用ロッドの軸方向及び径方向に沿って弾性支持するスプリング部材と、
を備えることを特徴とするロッドハンドリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削機に対して、円筒状の掘削用ロッドを供給したり、取り外し回収する際に、掘削用ロッドを把持して移動させるロッドハンドリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、掘削機では、複数の掘削用ロッドを用い、順次継ぎ足しながら所定深さまで削孔する。この作業において、掘削用ロッドを掘削機に供給する際にロッドハンドリング装置が使用される。そこで、従来のロッドハンドリング装置では、掘削用ロッドを継ぎ足す際に、作業者が感覚により手動で複数のアーム動作を操作していたために、新しい掘削用ロッドを既設された掘削用ロッドの端部に位置決めする際の位置精度が悪く、最終的な位置決めの調整は、作業者が直接掘削用ロッドを把持して行う必要があった。
【0003】
しかも、掘削用ロッドは重く、作業者がそれを移動させるには大変な労力が必要であり、作業時間が長時間になり、作業効率が非常に悪化していた。また、最終的な位置決めの調整は、作業者が直接掘削用ロッドを把持して行っており、これも大変な労力が必要であり、しかも、作業者にとって、新しい掘削用ロッドと既設されている掘削用ロッドとの間に手や指などをはさむなどの危険性を回避するための作業手順等の配慮も必要であった。さらには、従来では、作業者がロッドハンドリング装置による作業エリア内に入る必要があるために、ロッドハンドリング装置の可動アームや、把持している掘削用ロッド等が作業者に接触するなど、その危険性を回避するための作業手順等の配慮も必要であった。
【0004】
また、新しい掘削用ロッドを継ぎ足しする際には、新しい掘削用ロッドを既設されている掘削用ロッドにねじ込む作業工程がある。このねじ込み作業においては、まず、従来のロッドハンドリング装置にて新しい掘削用ロッドを把持して、掘削機のドリルヘッドを、新しい掘削用ロッドの軸方向端部にねじ込む必要がある。しかしながら、新しい掘削用ロッドは、従来のロッドハンドリング装置により強固に把持されているために、掘削機のドリルヘッドを回転させて、新しい掘削用ロッドの軸方向端部にねじ込む際、新しい掘削用ロッドの軸方向に沿う移動が規制されていることから、掘削機のドリルヘッドの回転(ねじ込み)に対応して、掘削機のドリルヘッドを徐々に前進させる必要があり、その接続作業が大変難しく、作業効率が非常に悪化していた。しかも、掘削機のドリルヘッドを、新しい掘削用ロッドの軸方向端部にねじ込む際に、掘削機のドリルヘッドを徐々に前進させているが、ドリルヘッドの回転に伴う前進がスムーズにできず、両者のねじ部が大きく摩耗して損傷することもあり、改善する必要があった。
【0005】
なお、特許文献1には、ボーリングロッドの複数本を積み重ね状態で搭載したロッドコンテナが着脱可能に取り付けられる旋回動作可能及び自走動作可能な本体部と、該本体部に上下方向への伸縮可能に立設された伸縮マストと、該伸縮マストに対する傾斜角度が変更可能に伸縮マストに支持され、スライド動作することにより長さが変化可能となっているスライドアームと、上下方向へのチルト動作と、旋回動作と、軸回りのスイング動作が可能となって前記スライドアームの先端部に取り付けられ、前記ボーリングロッドの把持及び解放を行なうロッド把持部材と、を備えているロッドハンドリング装置が開示されている。
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載のロッドハンドリング装置では、上述した問題を解決することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そして、本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、特に、新しい掘削用ロッドを継ぎ足しする際、作業者の安全性を確保したうえで、その作業効率を改善することが可能なロッドハンドリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、請求項1のロッドハンドリング装置に係る発明は、新しい掘削用ロッドを既設されている掘削用ロッドに順次継ぎ足す際に、当該新しい掘削用ロッドを把持して移動させるロッドハンドリング装置であって、水平面上を旋回動作可能な装置本体と、該装置本体から延び、互いに回動自在に連結される複数の可動アームと、前記装置本体から最も離れた前記可動アームの先端に互いに回動自在に連結され、前記新しい掘削用ロッドを把持する把持アームと、前記各可動アーム及び前記把持アームの所定の回動到達位置を予めティーチングして、そのティーチングに基づいて、前記各可動アーム及び前記把持アームの回動動作を制御する制御装置と、を備えることを特徴とするものである。
請求項1の発明では、特に、制御装置は、各可動アーム及び把持アームの所定の回動到達位置を予めティーチングして、そのティーチングに基づいて、各可動アーム及び把持アームの回動動作を制御するので、従来のように、作業者が経験則(感覚)によって、各可動アーム及び把持アームの回転動作を操作するのに対して、作業効率が大幅に改善され、しかも、新しい掘削用ロッドの、既設されている掘削用ロッドに対する位置精度が良好になる。その結果、従来のように、最終的な位置精度を高めるために作業者が直接新しい掘削用ロッドを把持する必要はなく、作業者が手や指をはさむ危険性を回避するための作業手順等を配慮する必要も無くなる。しかも、従来のように、作業者がロッドハンドリング装置による作業エリアに入る必要もないので、ロッドハンドリング装置の可動アームや、把持している掘削用ロッドが作業者に接触するなどの危険性を回避するための作業手順等を配慮する必要が無くなり、掘削用ロッドの継ぎ足し作業に係る作業効率が向上し、またその安全性を確保することができる。
【0010】
請求項2のロッドハンドリング装置に係る発明は、請求項1の発明において、前記把持アームは、前記新しい掘削用ロッドを把持するロッド把持部と、該ロッド把持部を、前記掘削用ロッドの軸方向及び径方向に沿って弾性支持するスプリング部材と、を備えることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、把持アームのロッド把持部により、新しい掘削用ロッドを把持して、掘削機のドリルヘッドを回転させて、そのドリルヘッドを新しい掘削用ロッドにねじ込み際、スプリング部材により、ドリルヘッドの回転に伴う新しい掘削用ロッド(ロッド把持部)の軸方向に沿う移動を許容することができる。その結果、従来のように、掘削機のドリルヘッドをそのねじ込みに対応して前進させる必要はなく、ねじ込みによる接続作業が容易となり、作業効率が大幅に改善される。これにより、従来のように、両者のねじ部が大きく摩耗して、損傷することもなく、ねじ部のライフサイクルを伸ばすことができる。
【0011】
請求項3のロッドハンドリング装置に係る発明は、請求項1または2の発明において、前記制御装置は、前記各可動アーム及び前記把持アームのそれぞれに設けた水平面に対する傾斜角度を検出する傾斜検出センサーからの検出信号に基づいて、前記各可動アーム及び前記把持アームの回動到達位置を制御することを特徴とするものである。
請求項3の発明は、制御装置は、水平面に対する傾斜角度を検出する複数の傾斜検出センサーを用いて、各可動アーム及び把持アームの所定の回動到達位置をティーチングした後、各可動アーム及び把持アームの回動動作を制御する構成であるので、多種多様の検出センサーを用いることなく、構造及びその制御が簡素化され、製造コストを抑えることができる。
【0012】
請求項4のロッドハンドリング装置に係る発明は、新しい掘削用ロッドを既設されている掘削用ロッドに順次継ぎ足す際に、当該新しい掘削用ロッドを把持する把持アームを備えたロッドハンドリング装置であって、前記把持アームは、前記新しい掘削用ロッドを把持するロッド把持部と、該ロッド把持部を、前記掘削用ロッドの軸方向及び径方向に沿って弾性支持するスプリング部材と、を備えることを特徴とするものである。
請求項4の発明では、把持アームのロッド把持部により、新しい掘削用ロッドを把持して、掘削機のドリルヘッドを回転させて、そのドリルヘッドを新しい掘削用ロッドにねじ込み際、スプリング部材により、ドリルヘッドの回転に伴う新しい掘削用ロッドの軸方向に沿う移動を許容することができる。その結果、従来のように、掘削機のドリルヘッドをそのねじ込みに対応して前進させる必要はなく、ねじ込みによる接続作業が容易となり、作業効率が大幅に改善される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るロッドハンドリング装置では、特に、新しい掘削用ロッドを継ぎ足しする際、作業者の安全性を確保したうえで、その作業効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るロッドハンドリング装置全体の側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るロッドハンドリング装置に採用された把持アームの上面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るロッドハンドリング装置に採用された把持アームの側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係るロッドハンドリング装置に採用された把持アームの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を
図1~
図4に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るロッドハンドリング装置1は、図示しない掘削機に掘削用ロッド4を供給したり、取り外し回収する際に、掘削用ロッド4を把持して移動させるものである。掘削用ロッド4は、円筒状であって、単重鋼管、または二重鋼管が採用される。本実施形態に係るロッドハンドリング装置1は、二重鋼管で構成される掘削用ロッド4を把持して移動させるものである。
【0016】
図1を参照して、本実施形態に係るロッドハンドリング装置1は、水平面上を旋回動作可能な装置本体7と、該装置本体7から延び、互いに回動自在に連結される第1可動アーム8、第2可動アーム9及び第3可動アーム10と、装置本体7から最も離れた第3可動アーム10の先端に互いに回動自在に連結され、掘削用ロッド4を把持する把持アーム11と、第1可動アーム8、第2可動アーム9、第3可動アーム10及び把持アーム11の所定の回動到達位置を予めティーチングして、そのティーチングに基づいて、第1可動アーム8、第2可動アーム9、第3可動アーム10及び把持アーム11の回動動作を制御する制御装置12と、を備えている。
【0017】
装置本体7は、クローラ15の駆動により自走動作可能に構成される。装置本体7はクローラ15のベース体16上を水平面に沿って旋回動作可能に構成される。装置本体7内には、作業者の操作室18が備えられる。装置本体7の上面には、本体傾斜検出センサー20が装着される。該本体傾斜検出センサー20は、装置本体7の水平面に対する傾斜角度を検出するものである。詳しくは、本体傾斜検出センサー20は、装置本体7の、後述する第1可動アーム8、第2可動アーム9、第3可動アーム10及び把持アーム11が回動動作する同じ鉛直面に沿った、水平面に対する傾斜角度を検出するものである。そして、本体傾斜検出センサー20により検出された、装置本体7の水平面に対する傾斜角度が制御装置12に伝達される。
【0018】
装置本体7の操作室18の後側から第1可動アーム8が延びている。第1可動アーム8は、鉛直面に沿って回動自在に装置本体7に連結される。第1可動アーム8は、回動シリンダ(図示略)からの延びるピストンロッド28の伸縮動作によって、鉛直面に沿って回動自在に構成される。第1可動アーム8には、第1傾斜検出センサー21が装着される。第1傾斜検出センサー21は、第1可動アーム8の水平面に対する傾斜角度を検出するものである。そして、第1傾斜検出センサー21により検出された第1可動アーム8の水平面に対する傾斜角度が制御装置12に伝達される。
【0019】
図1において、第2可動アーム9は、第1可動アーム8の先端から前側斜め上方に向かって延びる。第2可動アーム9は、第1可動アーム8の回動に伴って鉛直面に沿って回動する。第2可動アーム9にも、第1可動アーム8と同様に、第2傾斜検出センサー22が装着される。第2傾斜検出センサー22は、第2可動アーム9の水平面に対する傾斜角度を検出するものである。そして、第2傾斜検出センサー22により検出された第2可動アーム9の水平面に対する傾斜角度が制御装置12に伝達される。
【0020】
第2可動アーム9の先端に第3可動アーム10が回動自在に連結される。第3可動アーム10は、第2可動アーム9に連結される回動シリンダ31からのピストンロッド32の伸縮動作によって、第2可動アーム9に対して鉛直面に沿って回動自在に構成される。第3可動アーム10には、第3傾斜検出センサー23が装着される。第3傾斜検出センサー23は、第3可動アーム10の水平面に対する傾斜角度を検出するものである。そして、第3傾斜検出センサー23により検出された第3可動アーム10の水平面に対する傾斜角度が制御装置12に伝達される。第3可動アーム10の先端に把持アーム11が回動自在に連結される。把持アーム11は、第3可動アーム10に連結される把持用シリンダ34からのピストンロッド35の伸縮動作によって、第3可動アーム10に対して鉛直面に沿って回動自在に構成される。
【0021】
図1及び
図3を参照して、把持アーム11は、第3可動アーム10の先端に回動自在に連結されるアーム部41と、アーム部41の先端に一体的に接続されるベース台42と、ベース台42上に配置され、掘削用ロッド4の二重鋼管をそれぞれ把持する一対のロッド把持部43、43と、一対のロッド把持部43、43を、ベース台42に対して掘削用ロッド4の軸方向及び径方向に沿って弾性支持するスプリング部材44と、を備えている。アーム部41は、第3可動アーム10の先端に回動自在に連結される。
図1及び
図2を参照して、アーム部41は、一対の固定部48、48及び一対のリンク機構49、49を介して、ピストンロッド35の先端及び第3可動アーム10の先端に回動自在に支持される。固定部48、48及びリンク機構49、49は、第3可動アーム10の幅方向に沿って間隔を置いて一対備えられる。
図1を参照して、固定部48は、その長手方向一端が第3可動アーム10の先端に回動自在に連結されると共に、その長手方向他端がリンク機構49の第2リンク部52に回動自在に連結される。
【0022】
リンク機構49は、第1リンク部51及び第2リンク部52を備えている。第1リンク部51は、第3可動アーム10の先端に回動自在に連結されると共に、ピストンロッド35の先端及び第2リンク部52に回動自在に連結される。第2リンク部52は、ピストンロッド35の先端及び第1リンク部51に回動自在に連結されると共に、固定部48の長手方向他端に回動自在に連結される。そして、把持アーム11のアーム部41は、一対の固定部48、48及び一対のリンク機構49、49により、第3可動アーム10に対して鉛直面に沿って回動自在に支持される。
図1を参照して、アーム部41には、把持傾斜検出センサー24が装着される。把持傾斜検出センサー24は、アーム部41の水平面に対する傾斜角度を検出するものである。そして、把持傾斜検出センサー24により検出されたアーム部41(把持アーム11)の水平面に対する傾斜角度が制御装置12に伝達される。そして、上述した、第1可動アーム8、第2可動アーム9、第3可動アーム10及び把持アーム11は、同じ鉛直面に沿って回動動作するようになる。
【0023】
図2及び
図3を参照して、把持アーム11のアーム部41の先端には、中間部材55を介してベース台42及び一対のロッド把持部43、43が連結される。アーム部41にはスイングシリンダ37が連結される。スイングシリンダ37からのピストンロッド38の先端が中間部材55に回動自在に連結される。そして、ベース台42及び一対のロッド把持部43、43は、一体的に、スイングシリンダ37からのピストンロッド38の伸縮動作により、アーム部41に対して点O1を中心に所定角度の範囲内でスイング自在に支持される。なお、本実施形態では、ベース台42及び一対のロッド把持部43、43は、片側30度の範囲でスイング自在になる。
【0024】
図2及び
図3を参照して、中間部材55とベース台42との間に旋回制御ユニット57が配置されている。そして、
図4を参照して、ベース台42及び一対のロッド把持部43、43は、一体的に、旋回制御ユニット57の駆動により、アーム部41(中間部材55)に対して点O2を中心に180度の範囲にて、90度ピッチで旋回可能に支持される。なお、アーム部41には、スイングシリンダ37、旋回制御ユニット57及び後述する一対のロッドクランプ63、63への油圧を制御するバルブユニットが内蔵される。
【0025】
図3及び
図4を参照して、ベース台42は、板材を正面視ロ字状に組み立ててなる台本体部59と、台本体部59上に一体的に接続される台側板状支持部60と、を備えている。ベース台42の台本体部59に、アーム部41の先端が中間部材55及び旋回制御ユニット57を介して連結される。台側板状支持部60には、
図4に示す正面視にて、台本体部59から掘削用ロッド4の径方向に沿ってその両側外方にそれぞれ突設される台側板状突設部60A、60Aが設けられる。各台側板状突設部60Aには、複数の支持ピン61が掘削用ロッド4の軸方向に沿って延びている。本実施形態では、支持ピン61は2箇所形成される。
図3及び
図4を参照して、ロッド把持部43、43は、掘削用ロッド4として二重鋼管にそれぞれ対応するように一対備えられる。要するに、ロッド把持部43、43は、掘削用ロッド4の軸方向に沿って間隔をおいて一対備えられる。そして、一方のロッド把持部43が掘削用ロッド4の外管を把持して、他方のロッド把持部43が掘削用ロッド4の内管を把持する。なお、掘削用ロッド4として単重鋼管が採用される場合には、ロッド把持部43は1箇所となる。
【0026】
図2及び
図3を参照して、ロッド把持部43は、掘削用ロッド4を挟み込む一対の把持爪部62、62を有する板状把持体64を備えている。板状把持体64、64は、掘削用ロッド4の軸方向に沿って間隔を置いて一対配置されている。一対の板状把持体64、64間に、掘削用ロッド4の外周面を挟み込むように強固にクランプする一対のロッドクランプ63、63が備えられる。一対のロッドクランプ63、63は、互いに近接及び離間自在に構成される。そして、ロッド把持部43の一対のロッドクランプ63、63により掘削用ロッド4を脱着することができる。
図3及び
図4を参照して、一対のロッド把持部43、43間には、把持側板状支持部65が一体的に接続される。把持側板状支持部65には、
図4に示す正面視にて、
図2も参照して、ロッド把持部43から掘削用ロッド4の径方向に沿ってその両側外方に向かってそれぞれ突設される把持側板状突設部65A、65Aが設けられる。
図3及び
図4を参照して、各把持側板状突設部65Aから掘削用ロッド4の軸方向に沿って複数の円筒状支持部66が延びている。本実施形態では、円筒状支持部66は2箇所形成される。
【0027】
そして、
図3及び
図4を参照して、ベース台42の各台側板状突設部60Aから延びる各支持ピン61が、ロッド把持部43側の各把持側板状突設部65Aから延びる各円筒状支持部66内にそれぞれ挿入され、ベース台42と一対のロッド把持部43、43とが一体化される。各支持ピン61の外周面と、各円筒状支持部66の内周面との間には、若干のクリアランスが設けれる。その結果、一対のロッド把持部43、43は、ベース台42に対して、掘削用ロッド4の軸方向に沿って移動自在であり、また、一対のロッド把持部43、43は、ベース台42に対して、掘削用ロッド4の径方向に沿って、各支持ピン61と各円筒状支持部66との間のクリアランス相当分、移動自在に支持される。
【0028】
また、ベース台42の各台側板状突設部60A、60Aと、ロッド把持部43側の各把持側板状突設部65A、65Aとの間には、それぞれスプリング部材44、44が配置される。スプリング部材44、44は、掘削用ロッド4の軸方向に沿って間隔を置いて一対配置される。そして、各スプリング部材44により、一対のロッド把持部43、43を、ベース台42に対して、掘削用ロッド4の軸方向及び径方向に沿って弾性支持することができる。なお、
図2を参照して、スプリング部材44は、ロッド把持部43側の各円筒状支持部66、66(ベース台42側の各支持ピン61、61)間に配置される。
【0029】
図1を参照して、制御装置12は、装置本体7内に配置される。制御装置12は、本体傾斜検出センサー20、第1傾斜検出センサー21、第2傾斜検出センサー22、第3傾斜検出センサー23及び把持傾斜検出センサー24と電気的に接続される。制御装置12は、本体傾斜検出センサー20、第1傾斜検出センサー21、第2傾斜検出センサー22、第3傾斜検出センサー23及び把持傾斜検出センサー24からの検出信号に基づいて、回動シリンダ(図示略)からのピストンロッド28、回動シリンダ31からのピストンロッド32及び把持用シリンダ34からのピストンロッド35の伸縮動作をそれぞれ制御するものである。
【0030】
詳しくは、制御装置12に、把持アーム11の一対のロッド把持部43、43により把持した新しい掘削用ロッド4を、既設されている掘削用ロッド(図示略)に継ぎ足す位置における、第1可動アーム8、第2可動アーム9、第3可動アーム10及び把持アーム11の所定の回動到達位置を予めティーチングしておく。すなわち、制御装置12に、第1可動アーム8、第2可動アーム9、第3可動アーム10及び把持アーム11の所定の回動到達位置に基づく、第1傾斜検出センサー21、第2傾斜検出センサー22、第3傾斜検出センサー23及び把持傾斜検出センサー24からの検出値を予め記憶させておく。このとき、装置本体7に装着された本体傾斜検出センサー20の検出値が略ゼロであること、すなわち、装置本体7が水平面に対して傾いていないことが前提となる。
【0031】
そして、作業者は、把持アーム11の一対のロッド把持部43、43により新しい掘削用ロッド4を把持した後、操作室18の操作用ボタン等を押すことで、制御装置12により、第1傾斜検出センサー21、第2傾斜検出センサー22、第3傾斜検出センサー23及び把持傾斜検出センサー24からの検出値に基づいて、第1可動アーム8、第2可動アーム9、第3可動アーム10及び把持アーム11の、任意位置から所定の回動到達位置までの回動動作が制御される。なお、
図1に示す斜線部の範囲が、制御装置12により、新しい掘削用ロッド4を任意位置から移動させて到達可能な位置となる。
【0032】
また、新しい掘削用ロッド4を把持アーム11の一対のロッド把持部43、43にて把持して、第1可動アーム8、第2可動アーム9、第3可動アーム10及び把持アーム11がそれぞれ回動して所定の回動到達位置に到達すると、作業者が操作室18内で各種操作レバー等を操作することで、スイングシリンダ37、旋回制御ユニット57等の動作や、装置本体7の旋回動作等を制御して、新しい掘削用ロッド4の軸方向一端部を、既設されている掘削用ロッドの軸方向端部に嵌合すると共に、新しい掘削用ロッド4の軸方向他端部を、掘削機のドリルヘッド(図示略)に嵌合する。
【0033】
その後、掘削機のドリルヘッドを、新しい掘削用ロッド4の軸方向他端部にねじ込む際に、当該ドリルヘッドを回転させる。すると、本実施形態に係るロッドハンドリング装置1の一対のロッド把持部43、43は、ベース台42に対して、各スプリング部材44により、新しい掘削用ロッド4の軸方向に沿って移動できる(弾性支持される)ために、新しい掘削用ロッド4の軸方向に沿う移動が許容され、掘削機のドリルヘッドが新しい掘削用ロッド4の軸方向他端部にスムーズにねじ込まれる。また、新しい掘削用ロッド4の軸方向他端部が、掘削機のドリルヘッドに対してその径方向に沿って若干ズレたとしても、一対のロッド把持部43、43は、ベース台42に対して、各スプリング部材44により、新しい掘削用ロッド4の径方向に沿っても若干移動できる(弾性支持される)ために、その位置ズレを吸収することができ、ねじ込み作業がさらに容易となる。そして、掘削機のドリルヘッドを、新しい掘削用ロッド4の軸方向他端部にねじ込んだ後、本実施形態に係るロッドハンドリング装置1の一対のロッド把持部43、43による新しい掘削用ロッド4のクランプが解除されて、掘削機のドリルヘッドを回転させることで、新しい掘削用ロッド4を既設されている掘削用ロッドにねじ込むことができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係るロッドハンドリング装置1では、特に、第1可動アーム8、第2可動アーム9、第3可動アーム10及び把持アーム11の所定の回動到達位置を予めティーチングして、そのティーチングに基づいて、第1可動アーム8、第2可動アーム9、第3可動アーム10及び把持アーム11の回動動作を制御する制御装置12を備えている。
これにより、複数の可動アーム及び把持アームの回動動作を作業者の経験則(感覚)に基づいて操作していた従来に比べて、作業効率が大幅に改善され、しかも、新しい掘削用ロッド4の、既設されている掘削用ロッドに対する位置精度が良好になる。その結果、従来のように、最終的な位置精度を高めるために作業者が直接新しい掘削用ロッド4を把持する必要がなく、作業者が手や指をはさむ危険性を回避するための作業手順等を配慮する必要も無くなる。さらに、従来のように、作業者がロッドハンドリング装置1による作業エリアに入る必要もないので、掘削用ロッド4の継ぎ足し作業に係る安全性を確保することができる。
【0035】
また、本実施形態に係るロッドハンドリング装置1の把持アーム11は、掘削用ロッド4を把持するロッド把持部43と、該ロッド把持部43を、掘削用ロッド4の軸方向及び径方向に沿って弾性支持するスプリング部材44と、を備えている。
これにより、掘削機のドリルヘッドを新しい掘削用ロッド4にねじ込む際、スプリング部材44により、掘削機のドリルヘッドの回転に伴う新しい掘削用ロッド4(一対のロッド把持部43、43)の軸方向に沿う移動を許容することができる。その結果、ねじ込み作業が容易となり、作業効率が大幅に改善され、しかも、従来のように、両者のねじ部が大きく摩耗して、損傷することもなく、ねじ部のライフサイクルを伸ばすことができる。
【0036】
また、新しい掘削用ロッド4が掘削機のドリルヘッドに対してその径方向に沿って若干ズレたとしても、スプリング部材44により、一対のロッド把持部43、43は、ベース台42に対して、掘削用ロッド4の径方向に沿っても弾性支持されているために、その位置ズレを吸収することができ、この点からもねじ込み作業が容易となり、その作業効率が大幅に改善される。
【0037】
さらに、本実施形態に係るロッドハンドリング装置1の制御装置12は、第1可動アーム8、第2可動アーム9、第3可動アーム10及び把持アーム11のそれぞれに設けた水平面に対する傾斜角度を検出する、第1傾斜検出センサー21、第2傾斜検出センサー22、第3傾斜検出センサー23及び把持傾斜検出センサー24からの検出信号に基づいて、第1可動アーム8、第2可動アーム9、第3可動アーム10及び把持アーム11の回動到達位置を制御するものである。このように、本実施形態に係るロッドハンドリング装置1では、上述した第1傾斜検出センサー21、第2傾斜検出センサー22、第3傾斜検出センサー23及び把持傾斜検出センサー24以外の多種多様の検出センサーを用いていないので、構造及びその制御が簡素化され、製造コストを抑えることができる。
【0038】
なお、本実施形態に係るロッドハンドリング装置1の制御装置12では、第1可動アーム8、第2可動アーム9、第3可動アーム10及び把持アーム11の所定の回動到達位置を予めティーチングして、そのティーチングに基づいて、第1可動アーム8、第2可動アーム9、第3可動アーム10及び把持アーム11の回動動作を制御しているが、第1可動アーム8、第2可動アーム9、第3可動アーム10及び把持アーム11の初期位置が予め確定していれば、制御装置12において、第1可動アーム8、第2可動アーム9、第3可動アーム10及び把持アーム11の所定の初期位置から所定の回動到達位置までの回動軌跡を予めティーチングして、そのティーチングに基づいて、第1可動アーム8、第2可動アーム9、第3可動アーム10及び把持アーム11の回動動作を制御してもよい。
【0039】
また、本実施形態に係るロッドハンドリング装置1に採用した、新しい掘削用ロッド4を把持するロッド把持部43を、掘削用ロッド4の軸方向及び径方向に沿って弾性支持するスプリング部材44を備えた把持アーム11を、独立して、本実施形態に係るロッドハンドリング装置1以外のロッドハンドリング装置に適用することができる。これにより、他のロッドハンドリング装置においても、掘削機のドリルヘッドを新しい掘削用ロッド4にねじ込む際、そのねじ込み作業が容易となり、作業効率が大幅に改善される。
【符号の説明】
【0040】
1 ロッドハンドリング装置,4 掘削用ロッド,7 装置本体,8 第1可動アーム,9 第2可動アーム,10 第3可動アーム,11 把持アーム,12 制御装置,21 第1傾斜検出センサー,22 第2傾斜検出センサー,23 第3傾斜検出センサー,24 把持傾斜検出センサー,43 ロッド把持部,44 スプリング部材