IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学東セロ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-包装体 図1
  • 特開-包装体 図2
  • 特開-包装体 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019621
(43)【公開日】2024-02-09
(54)【発明の名称】包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20240202BHJP
【FI】
B65D65/40 D BRH
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214109
(22)【出願日】2023-12-19
(62)【分割の表示】P 2021546925の分割
【原出願日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2019171374
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 正之
(72)【発明者】
【氏名】窪田 勉
(72)【発明者】
【氏名】若木 裕之
(72)【発明者】
【氏名】外山 達也
(57)【要約】
【課題】最外層の熱融着が抑制された包装体を提供する。
【解決手段】包装フィルムにより構成された包装体10であって、最外層がポリエチレン系樹脂層であり、ポリエチレン系樹脂層が一軸または二軸延伸されている包装体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装フィルムにより構成された包装体であって、
最外層がポリエチレン系樹脂層であり、
前記ポリエチレン系樹脂層が一軸または二軸延伸されている包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、食品;トイレタリー;医薬品;車両用オイル、ウォッシャー液、冷却水等のカー用品;工業用潤滑油;油、水等の熱媒体等の包材として用いられるパウチ等に代表される包装袋は、例えば、ヒートシール層および基材層からなる包装材で構成されている。
【0003】
ヒートシール層および基材層からなる包装袋に関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2018-154133号公報)に記載のものが挙げられる。
【0004】
特許文献1には、ポリエチレン系樹脂組成物からなる単層構成のフィルムまたは該ポリエチレン系樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層構成のシーラントフィルムと、基材フィルムと、を積層させた積層フィルムを用いてなる包装袋が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-154133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の環境意識の高まりから、包装フィルムにはリサイクルのし易さが求められている。
包装フィルムをリサイクルし易いようにする観点からは、例えば、包装フィルムをできるだけ単一素材(モノマテリアル)で構成することが考えられる。
本発明者らの検討によれば、モノマテリアル化を目指す観点から、ポリエチレン系樹脂層を基材層にした包装フィルムからなる包装体について、以下の課題があることが明らかになった。
まず、図2および図3に示すように、ポリエチレン系樹脂層4を基材層にした包装フィルムを用いて包装体1を作製する際に、ヒートシール層2同士を熱融着させる工程がある。このとき、例えば、包装体1の底部3では、最外層であるポリエチレン系樹脂層4同士が接触する。そして、本発明者らの検討によれば、ヒートシール層2同士を熱融着させる工程において、最外層であるポリエチレン系樹脂層4同士が熱融着してしまうことが明らかになった。また、ヒートシールするために加温するヒートシールバーへポリエチレン系樹脂層の融着が発生することも明らかになった。
このように、本発明者らは、最外層がポリエチレン系樹脂層である包装体は、その製造過程において、最外層の熱融着が起きてしまう場合があることを知見した。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、最外層の熱融着が抑制された包装体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた。その結果、最外層がポリエチレン系樹脂層である包装体において、上記ポリエチレン系樹脂層を一軸または二軸延伸することにより、最外層の熱融着が抑制された包装体を実現できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下に示す包装体が提供される。
【0010】
[1]
包装フィルムにより構成された包装体であって、
最外層がポリエチレン系樹脂層であり、
上記ポリエチレン系樹脂層が一軸または二軸延伸されている包装体。
[2]
上記[1]に記載の包装体において、
上記ポリエチレン系樹脂層を構成する上記ポリエチレン系樹脂層の融点が100℃以上150℃以下である包装体。
[3]
上記[1]または[2]に記載の包装体において、
上記包装体の最内層にヒートシール層を有する包装体。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の包装体において、
上記ヒートシール層がポリエチレン系樹脂を含む包装体。
[5]
上記[4]に記載の包装体において、
上記ヒートシール層を構成する上記ポリエチレン系樹脂の融点が90℃以上140℃以下である包装体。
[6]
上記[5]に記載の包装体において、
上記包装体の全体を100質量%としたとき、上記包装体の90質量%以上がポリエチレン系樹脂である包装体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、最外層の熱融着が抑制された包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る実施形態の包装体の構造の一例を模式的に示した斜視図である。
図2】従来の包装体の構造の一例を模式的に示した正面図である。
図3図2に示す包装体のX-X’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。また、数値範囲の「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
【0014】
<包装体>
図1は、本発明に係る実施形態の包装体10の構造の一例を模式的に示した斜視図である。
本実施形態に包装体10は、包装フィルムにより構成された包装体であって、最外層がポリエチレン系樹脂層であり、このポリエチレン系樹脂層が一軸または二軸延伸されている。
これにより、最外層が一軸または二軸延伸されたポリエチレン系樹脂層である包装体において、ヒートシール層同士を熱融着させる工程において、最外層であるポリエチレン系樹脂層同士の熱融着を抑制することができる。また、ヒートシール工程において、最外層であるポリエチレン系樹脂層がヒートシールバーに融着することを抑制することができる。
【0015】
本実施形態において、包装体とは、例えば、食品;医薬品;ヘルスケア用品;日用品;工業用品;車両用オイル、ウォッシャー液、冷却水等のカー用品;工業用潤滑油;油、水等の熱媒体等の物品を収容することを目的として使用される包装袋自体または当該袋に物品を収容したものである。また、本実施形態に係る包装体の包装形態は、例えば、周縁の全部又は一部に、熱融着により形成されたヒートシール部を有する三方袋や四方袋、ピロー袋、合掌袋、スティック袋、ガゼット袋、パウチ等が挙げられる。また、包装体の内部には物品の他に、脱酸素剤等を入れてもよい。
【0016】
本実施形態に係る包装体10は、通常は、包装体の最内層(包装体の内部側の最外層)にヒートシール層を有する。これにより、包装フィルムのヒートシール層同士を熱融着させることによって、本実施形態に包装体10を作製することができる。
【0017】
本実施形態に係る包装体10は、リサイクル性を向上させる観点から、包装体の全体を100質量%としたとき、包装体の90質量%以上がポリエチレン系樹脂であることが好ましく、包装体の95質量%以上がポリエチレン系樹脂であることがより好ましく、包装体の98質量%以上がポリエチレン系樹脂であることがさらに好ましく、包装体の99質量%以上がポリエチレン系樹脂であることがさらにより好ましい。
これにより、包装体がほぼ単一素材(モノマテリアル)で構成されるため、包装体10を構成する素材を分離する作業が減り、包装体10のリサイクル性を向上させることができる。
【0018】
<包装フィルム>
本実施形態に係る包装フィルムとしては、例えば、ポリエチレン系樹脂を含むポリエチレン系樹脂層と、ポリエチレン系樹脂層の少なくとも一方の面に設けられたヒートシール層と、を備えるフィルムを用いることができる。ここで、ポリエチレン系樹脂層は一層であってもよいし、二層以上であってもよい。
【0019】
本実施形態に係る包装フィルムの厚みは水蒸気バリア性、コスト、機械的強度、透明性、リサイクル性、外観、成形性、軽量性等の所望の目的に応じて任意に設定することができ、特に限定されない。厚みは、通常は10μm以上220μm以下であり、好ましくは15μm以上190μm以下であり、より好ましく20μm以上175μm以下である。
本実施形態に係る包装フィルムの厚みが上記範囲内であると、機械的特性、取扱い性、外観、成形性、軽量性等のバランスがより優れる。
【0020】
以下、本実施形態に係る包装フィルムを構成する各層について説明する。
【0021】
[ポリエチレン系樹脂層]
本実施形態に係るポリエチレン系樹脂層(基材層とも呼ぶ。)は、例えば、ポリエチレン系樹脂を含む樹脂組成物により構成されたフィルムを一軸延伸または二軸延伸することにより形成されたものである。
【0022】
本実施形態に係るポリエチレン系樹脂層の厚みは、水蒸気バリア性、コスト、機械的強度、透明性、リサイクル性、外観、成形性、軽量性等の所望の目的に応じて任意に設定することができるため特に限定されないが、通常は0.5μm以上100μm以下であり、好ましくは1.0μm以上75μm以下であり、より好ましく1.5μm以上50μm以下である。
ポリエチレン系樹脂層の厚みが上記範囲内であると、機械的特性、取扱い性、外観、成形性、軽量性等のバランスがより優れる。
【0023】
本実施形態に係るポリエチレン系樹脂層は少なくとも一軸延伸または二軸延伸された最外層を含めばよく、最外層のみからなる単層であってもよいし、ポリエチレン系樹脂を含む樹脂組成物により構成された層が複数積層された構成でもよい。
ポリエチレン系樹脂を含む樹脂組成物により構成された層が複数積層された構成である場合、包装体の外表面に位置する層(最外層とも呼ぶ。)以外の層としては、例えば、コア層、ラミネート層等が挙げられる。フィルムの成形性や巻き取り時のウェブハンドリングの観点から、コア層やラミネート層を設けることが好ましい。コア層は、ポリエチレン系樹脂層において、最外層と、ラミネート層との間に位置する層であり、ラミネート層は、ポリエチレン系樹脂層において、最外層とは反対側の表面に位置する層である。ポリエチレン系樹脂層は最外層とラミネート層のみによって構成されていてもよい。また、ポリエチレン系樹脂層において、少なくとも最外層は一軸延伸または二軸延伸されており、コア層およびラミネート層は延伸処理されていてもよいし延伸処理されていなくてもよい。
最外層の厚みは例えば0.05μm以上10μm以下、具体的には1.0μm以上6μm以下である。コア層の厚みは例えば0.4μm以上49.9μm以下、具体的には1μm以上48μm以下である。ラミネート層の厚みは例えば0.05μm以上10μm以下、具体的には1.0μm以上6μm以下である。
さらに、ポリエチレン系樹脂を含む樹脂組成物により構成された層を複数積層する方法としては、例えば、ドライラミネーション法;押出ラミネーション法;樹脂を押出し、表層に押出た樹脂を積層させる方法等の熱融着法;ドライラミネーション法、押出ラミネーション法や熱融着法を併用する方法等が挙げられる。
【0024】
(ポリエチレン系樹脂組成物)
本実施形態に係るポリエチレン系樹脂組成物はポリエチレン系樹脂を含む。
本実施形態に係るポリエチレン系樹脂組成物(すなわちポリエチレン系樹脂層)に含まれるポリエチレン系樹脂の含有量は、ポリエチレン系樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは90質量%以上100質量%以下、より好ましくは95質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは98質量%以上100質量%以下、特に好ましくは99質量%以上100質量%以下である。これにより、水蒸気バリア性、コスト、機械的強度、透明性、リサイクル性、外観、成形性、軽量性等のバランスをより良好にすることができる。
【0025】
(ポリエチレン系樹脂)
本実施形態に係るポリエチレン系樹脂層を構成するポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等の1種以上のポリエチレン系樹脂が挙げられる。これらの中でも高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンおよび直鎖状ポリエチレンの1種以上が好ましく、直鎖状ポリエチレン単体、または直鎖状ポリエチレンを20質量%以上含み、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンの少なくとも1種以上を含むことがさらに好ましい。
白化を抑制して包装体の透明性を高める観点で、2種以上のポリエチレン系樹脂を組み合わせることが好ましい。白化はポリエチレンの結晶化に起因する。2種以上のポリエチレン樹脂を組み合わせて用いることで、ポリエチレン系樹脂層はアモルファス的になりやすいため、結晶化が抑えられて白化が抑制される場合がある。2種以上のポリエチレン系樹脂の組み合わせの観点としては、MFR、密度、融点などが挙げられる。具体的には、2種以上のポリエチレン系樹脂を組み合わせる場合、以下(i)~(iii)の少なくともいずれかに該当することが好ましい(MFRおよび密度の測定法は後述する)。
(i)MFRが0.5g/10分以上異なるポリエチレン系樹脂2種を併用する。この際、2種の樹脂の比率は質量比で同じとするか、または、MFRが小さいほうを多くすることが好ましい。
(ii)密度が10kg/m以上異なるポリエチレン系樹脂を組み合わせる。この際、2種の樹脂の比率は質量比で同じとするか、密度が小さいほうを多くすることが好ましい。
(iii)融点が1℃以上異なるポリエチレン系樹脂を組み合わせる。この際、2種の樹脂の比率は質量比で同じとするか、または、融点が低いほうを多くすることが好ましい。
ポリエチレン樹脂層が、前述のように多層構成である場合(例えば、最外層、コア層およびラミネート層の3層構成である場合)、1のみの層が2種以上のポリエチレン系樹脂を含んでもよいし、2以上の層がそれぞれ2種以上のポリエステル樹脂を含んでもよい。もちろん、ポリエチレン樹脂層中の各層は、それぞれ、1のみのポリエチレン系樹脂から構成されていてもよい。
【0026】
上記ポリエチレン系樹脂の融点は、耐熱性、透明性、機械的特性、剛性、流動性および成形性等のバランスをより一層良好にする観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、そして好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは135℃以下の範囲である。
ポリエチレン系樹脂の融点が上記下限値以上であると、包装体10において最外層であるポリエチレン系樹脂層同士の熱融着をより一層抑制することができる。また、ポリエチレン系樹脂の融点が上記上限値以下であると、層間強度、流動性および成形性を向上させることができる。
【0027】
上記ポリエチレン系樹脂の密度は、耐熱性、透明性、機械的特性、剛性、流動性および成形性等のバランスをより一層良好にする観点から、好ましくは920kg/m以上、より好ましくは923kg/m以上、さらに好ましくは925kg/m以上、そして好ましくは970kg/m以下、より好ましくは965kg/m以下、さらに好ましくは960kg/m以下、特に好ましくは950kg/m以下である。ここで、本実施形態において、ポリエチレン系樹脂の密度はJIS K 7112(1999)に準じて測定することができる。
上記ポリエチレン系樹脂の密度が上記下限値以上であると、包装体10において最外層であるポリエチレン系樹脂層同士の熱融着をより一層抑制することができる。また、上記ポリエチレン系樹脂の密度が上記上限値以下であると、層間強度、流動性および成形性を向上させることができる。
【0028】
ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定される上記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、流動性および成形性の観点から、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは2g/10分以上であり、成形性をより安定化させる観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下である。
【0029】
上記ポリエチレン系樹脂の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。また、ポリエチレンとしては市販されているものを用いてもよい。
【0030】
(その他の成分)
本実施形態に係るポリエチレン系樹脂組成物には、必要に応じて、粘着付与剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の各種添加剤を本実施形態の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0031】
(ポリエチレン系樹脂組成物の調製方法)
本実施形態に係るポリエチレン系樹脂組成物は、例えば、各成分を、ドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、熱ロール等の方法/装置により混合または溶融・混練することにより調製することができる。
【0032】
[ヒートシール層]
本実施形態に係る包装フィルムは、ヒートシール性を付与するために、ポリエチレン系樹脂層の一方の面の少なくとも一部にヒートシール層を備えることが好ましい。ヒートシール層は、本実施形態に係る包装フィルムの熱融着予定部位にのみに設けてもよいし、ポリエチレン系樹脂層の一方の面の全体に設けてもよい。
【0033】
本実施形態に係る包装フィルムにおいて、ヒートシール層の厚みは好ましくは0.1μm以上200μm以下、より好ましくは0.2μm以上170μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上150μm以下、特に好ましくは1μm以上120μm以下である。
ヒートシール層の厚みが上記下限値以上であることにより、包装フィルムのヒートシール性を良好にすることができる。
また、ヒートシール層の厚みが上記上限値以下であることにより、ヒートシール時の最外層の融着を特に抑制することができる。一般的に、ヒートシール層が厚いほど、高い温度でシールする必要が生じる。
【0034】
本実施形態に係る包装フィルムにおいて、一方の面に設けられるヒートシール層は、単層であることが好ましい。これにより、包装フィルムの製造工程すなわち本実施形態に係る包装体10の製造工程を簡略化することができる。
【0035】
また、ヒートシール層は、ポリエチレン系樹脂層の延伸前の状態にあるフィルムと同時に延伸されて形成されてもよい。これにより、共押出し成形法等の成形方法、すなわち一度の成形で作製した積層フィルムを用いて包装フィルムを作製することができる。よって、包装フィルムの製造工程、すなわち本実施形態に係る包装体10の製造工程を簡略化することができる。したがって、ヒートシール層は一軸または二軸延伸されていてもよい。
【0036】
(ポリオレフィン)
本実施形態に係るヒートシール層は、例えば、ポリオレフィンを含むポリオレフィン系樹脂組成物により構成される。ヒートシール層を構成するポリオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-ペンテン-1、オクテン-1等のα-オレフィンの単独重合体または共重合体;高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂;ポリプロピレン;プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA);アイオノマー樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ヒートシール層を構成するポリオレフィンとしては、リサイクル性を向上させる観点や、ポリエチレン系樹脂層との接着性およびヒートシール性等のバランスが優れる点から、ポリエチレン系樹脂が好ましい。これにより、包装体がほぼ単一素材(モノマテリアル)で構成されるため、包装体10を構成する素材を分離しやすくなり、包装体10のリサイクル性を向上させることができる。
【0037】
(ポリエチレン系樹脂)
本実施形態に係るヒートシール層を構成するポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン等が挙げられる。これらの中でも低密度ポリエチレンおよび直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。ポリエチレンは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
上記ポリエチレン系樹脂の融点は、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上、そして好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下の範囲である。
ポリエチレン系樹脂の融点が上記下限値以上であると、ヒートシール層の表面のベタツキを抑制することができ、包装フィルムの耐ブロッキング性を向上させることができる。
また、ポリエチレン系樹脂の融点が上記上限値以下であると、包装フィルムのヒートシール性をより良好にすることができる。
【0039】
ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定される上記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、流動性および成形性の観点から、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1g/10分以上、さらに好ましくは2g/10分以上であり、成形性をより安定化させる観点から、好ましくは30g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、さらに好ましくは10g/10分以下である。
【0040】
上記ポリエチレン系樹脂の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。また、ポリエチレンとしては市販されているものを用いてもよい。
【0041】
本実施形態に係るポリオレフィン系樹脂組成物中の(すなわちヒートシール層中の)ポリオレフィン系樹脂の含有量は、ポリオレフィン系樹脂組成物の全体を100質量%としたとき、好ましくは90質量%以上100質量%以下、より好ましくは95質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは98質量%以上100質量%以下、特に好ましくは99質量%以上100質量%以下である。これにより、リサイクル性、ポリエチレン系樹脂層との接着性、ヒートシール性等のバランスをより良好にすることができる。
【0042】
(その他の成分)
本実施形態に係るヒートシール層を構成するポリオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機または有機の充填剤等の各種添加剤を本実施形態の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
一方、モノマテリアル化の観点からは、ポリオレフィン系樹脂組成物は、これら各種添加剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0043】
(ポリオレフィン系樹脂組成物の調製方法)
本実施形態に係るポリオレフィン系樹脂組成物は、各成分をドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、熱ロール等により混合または溶融・混練することにより調製することができる。
【0044】
<包装フィルムの製造方法>
本実施形態に係る包装フィルムは、例えば、ポリエチレン系樹脂層を形成するための上記ポリエチレン系樹脂組成物と、ヒートシール層を形成するための上記ポリオレフィン系樹脂組成物と、をフィルム状に共押出成形して得た積層フィルムを、公知の延伸フィルム製造方法を用いて一軸延伸または二軸延伸することにより得ることができる。
成形装置および成形条件としては特に限定されず、従来公知の成形装置および成形条件を採用することができる。成形装置としては、多層T-ダイ押出機あるいは多層インフレーション成形機等を用いることができる。二軸延伸の条件は、例えば、公知の延伸フィルムの製造条件を採用することができる。
延伸フィルムの製造条件としては特に限定はされないが、例えば、以下の条件が挙げられる。
押出設定温度:190~250℃、加工速度:20~60m/min
縦延伸温度:100~130℃
縦延伸倍率:3.5~7.5倍
横延伸温度:100~150℃
横延伸倍率:4~12倍
また、本実施形態に係る包装フィルムは、一軸延伸または二軸延伸した最外層のみまたは当該最外層を含むポリエチレン系樹脂層と、ヒートシール層とをそれぞれ別々に成形し、これらを接着剤等でラミネートするドライラミネーションによっても得ることができる。さらに、本実施形態に係る包装フィルムは、一軸延伸または二軸延伸したポリエチレン系樹脂層上にヒートシール層の樹脂を押出し積層成形等により成形することによっても得ることができる。
【0045】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0046】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0047】
1.原料
実施例および比較例で用いた原料について以下に示す。
(1)ポリエチレン系樹脂
PE1:ポリエチレン(MFR:0.8g/10分、密度:926kg/m、融点:124℃)
PE2:ポリエチレン(MFR:2.8g/10分、密度:942kg/m、融点:129℃)
PE3:ポリエチレン(MFR:1.8g/10分、密度:927kg/m、融点:127℃)
PE4:ポリエチレン(MFR:3.8g/10分、密度:918kg/m、融点:116℃)
PE5:ポリエチレン(MFR:1.1g/10分、密度:950kg/m、融点:132℃)
【0048】
2.測定および評価方法
(1)ポリエチレン系樹脂のMFR
ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重の条件で測定した。
【0049】
(2)ポリエチレン系樹脂の融点
DSC(示差走査熱量計)を用いて得られた、ポリエチレン系樹脂のDSC曲線の最大融解ピークの温度を融点とした。具体的には、以下の1st runと2nd runを行ったときの、2nd runのDSC曲線の最大融解ピークの温度を融点とした。
1st run:10℃/分で200℃まで昇温し、10分保持し、10℃/分で-50℃まで冷却
2nd run:1st run終了後に続けて、10℃/分で200℃まで昇温
【0050】
(3)ポリエチレン系樹脂の密度
ポリエチレン系樹脂の密度はJIS K 7112(1999)に準じて測定した。
【0051】
(4)熱融着性の評価
15mm幅に切断した2枚の包装フィルムの最外層同士を130℃、圧力2.0kgf、シール時間1秒という条件で熱融着することにより積層フィルムを得た。次いで、15mm幅、180度剥離、剥離速度300mm/分の条件で、2枚の包装フィルムを剥離し、そのときの剥離強度をヒートシール強度とした。
次いで、以下の基準により包装フィルムの熱融着性を評価した。
◎(Very Good):ヒートシール強度が2.0N/15mm未満
〇(Good):ヒートシール強度が2.0N/15mm以上5.0N/15mm未満
△(Bad):ヒートシール強度が5.0N/15mm以上10.0N/15mm未満
×(Very Bad):ヒートシール強度が10.0N/15mm以上
【0052】
(5)白化の有無(透明性)
包装フィルムを目視で観察した。そして、以下の基準で判断した。
〇(Good):十分に透明で、包装フィルムとして包装物の視認性に問題なし
×(Bad):マット調で、包装フィルムとして包装物の視認性に問題あり
【0053】
[実施例1~13]
表1に示す層構成で各層を共押出成形し、次いで、延伸処理することで、包装フィルムをそれぞれ作製した。そして、熱融着性を評価した。使用した成形機は以下のとおりである。
多層押出成形機:260mm幅多層T-ダイ押出成形機(L/D=27、スクリュー精機社製)
また、延伸倍率については以下の通りとした。
実施例1、2、4~:縦4.0~7.5倍、横7.5~14倍の二軸延伸
実施例3:横8~14倍の一軸延伸
【0054】
[比較例1]
表1に示す層構成で各層を共押出成形して、包装フィルムを作製した(比較例1では延伸処理を行わなかった)。そして熱融着性を評価した。使用した成形機は以下のとおりである。
多層押出成形機:多層T-ダイ押出成形機(L/D=30)
【0055】
【表1】
【0056】
この出願は、2019年9月20日に出願された日本出願特願2019-171374号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0057】
1 包装体
2 ヒートシール層
3 底部
4 ポリエチレン系樹脂層
10 包装体
図1
図2
図3