(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019623
(43)【公開日】2024-02-09
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/08 20060101AFI20240202BHJP
E03D 11/13 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
E03D11/08
E03D11/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214134
(22)【出願日】2023-12-19
(62)【分割の表示】P 2022029684の分割
【原出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【弁理士】
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】小林 祥子
(72)【発明者】
【氏名】戸次 允
(72)【発明者】
【氏名】岡部 大輝
(57)【要約】
【課題】微粒汚物の排出能力を向上させることができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明による水洗大便器1は、汚物を受けるボウル部6であって、ボウル形状の汚物受け面16と、リム部に形成され、洗浄水を吐水する吐水口部と、汚物受け面の下方に形成され、溜水を貯留する溜水部20であって、溜水部は前後方向に二分したうちの前方側の前側領域と後方側の後方領域とを有する溜水部と、を備えたボウル部を備え、洗浄水が溜水部に流入する洗浄期間のうち洗浄前半時期E1における、ボウル部の上記汚物受け面上で旋回される洗浄水の溜水部への流入流量のうちの、溜水部の前側領域への流入流量の割合よりも、洗浄後半時期E3における洗浄水の溜水部への流入流量のうちの、溜水部の前側領域への流入流量の割合が大きくなることを特徴としている。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水源から供給される洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部であって、
ボウル形状の汚物受け面と、
この汚物受け面の上方に形成されたリム部と、
上記リム部に形成され、洗浄水を吐水する吐水口部と、
上記汚物受け面の下方に形成される溜水部であって、上記溜水部は前後方向に二分したうちの前方側の前側領域と後方側の後側領域とを有する上記溜水部と、を備えた上記ボウル部を備え、
上記汚物受け面を洗浄する洗浄水が上記溜水部に流入する洗浄期間のうち洗浄前半時期における、上記ボウル部の上記汚物受け面上で旋回される洗浄水の上記溜水部への流入流量のうちの、上記溜水部の上記前側領域への流入流量の割合よりも、洗浄後半時期における洗浄水の上記溜水部への流入流量のうちの、上記溜水部の上記前側領域への流入流量の割合が大きくなることを特徴としている水洗大便器。
【請求項2】
上記溜水部は上記溜水部を前後方向に上記前側領域と上記後側領域とに二分する前後方向中心線と、左右方向に右側領域と左側領域とに二分する左右方向中心線とにより、4つの領域に区分され、
上記洗浄前半時期において上記汚物受け面上に形成される洗浄水の主流が、上記右側領域と上記左側領域とのうち上記汚物受け面の前部から見て洗浄水の旋回方向の下流側に位置するいずれか一方の領域において、このいずれか一方の領域のうちの上記前側領域及び/又は上記後側領域に流入される、請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記ボウル部の上記汚物受け面は、平面視で、上記汚物受け面の前部から後方側に向けて広がる逆扇状に形成された凹部を備えている、請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記溜水部は上記溜水部を前後方向に上記前側領域と上記後側領域とに二分する前後方向中心線と、左右方向に右側領域と左側領域とに二分する左右方向中心線とにより、4つの領域に区分され、
上記洗浄後半時期における洗浄水の上記溜水部への流入流量のうちの、上記右側領域と上記左側領域とのうちいずれか一方の領域における上記前側領域への流入流量の割合が、他の3つの領域への流入流量のそれぞれの割合よりも大きい、請求項1乃至3の何れか1項に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係わり、特に、洗浄水源から供給される洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に記載されているように、第1リム吐水口から吐水された洗浄水をボウル部の右側前方に位置する第4分割領域に行き届かせやすくする水洗大便器が知られている。
【0003】
また、例えば、特許文献2に記載されているように、第1吐水口から吐水される洗浄水による旋回半径が大きい第1旋回流を第1領域に流入させ、汚物を排出させやすくすると共に、第2吐水口から吐水される第2洗浄水を第2領域に流入させる水洗大便器が知られている。
【0004】
また、例えば、特許文献3に記載されているように、リムの第1吐水部から吐水された洗浄水が汚物受け面の前部で第1分流を生じさせ、この第1分流が汚物受け面から溜水部側に向けて流れ落ちる主流を形成する。また、第2吐水部から吐水された洗浄水が溜水部の右側立壁面から溜水部内に流下し、溜水部内で縦旋回流を形成する。この2つの流れが合流した誘導流が便器排水路に汚物を押し込むようになっている水洗大便器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-179958号公報
【特許文献2】特開2021-55437号公報
【特許文献3】特開2019-190217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1乃至3の水洗大便器においては、洗浄後半にボウル面を旋回する洗浄水が少なくなると、汚物を溜水内に沈める流れも弱くなり、結果、浮遊系汚物が排出されにくくなり浮遊系汚物が壺部に残ってしまうという問題が生じた。
【0007】
これに対し、本発明者等は、鋭意研究することにより、洗浄後半時期における溜水部の前側領域への流入流量を比較的多くすることにより、浮遊系汚物の排出能力を向上させ、浮遊系汚物が排出されずに残ることを抑制できるという知見を見出した。
【0008】
しかしながら、吐水口から吐水された洗浄水によりボウル面上に旋回流を形成しこの旋回流が溜水部に流入する場合には、洗浄水の流量の変化と共に洗浄水が溜水部に流れ込む領域が変わり、洗浄後半にボウル部の前側領域への流入流量が小さくなるという新たな課題が生じた。
【0009】
そこで、本発明は、従来技術の問題や新たに生じた課題を解決するためになされたものであり、洗浄後半時期における溜水部の前側領域への流入流量の割合を比較的多くさせ、洗浄後半時期における微粒汚物の排出能力を向上させることができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明は、洗浄水源から供給される洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、汚物を受けるボウル部であって、ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の上方に形成されたリム部と、上記リム部に形成され、洗浄水を吐水する吐水口部と、上記汚物受け面の下方に形成される溜水部であって、上記溜水部は前後方向に二分したうちの前方側の前側領域と後方側の後側領域とを有する上記溜水部と、を備えた上記ボウル部を備え、上記汚物受け面を洗浄する洗浄水が上記溜水部に流入する洗浄期間のうち洗浄前半時期における、上記ボウル部の上記汚物受け面上で旋回される洗浄水の上記溜水部への流入流量のうちの、上記溜水部の前側領域への流入流量の割合よりも、洗浄後半時期における洗浄水の上記溜水部への流入流量のうちの、上記溜水部の前側領域への流入流量の割合が大きくなることを特徴としている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記汚物受け面を洗浄する洗浄水が上記溜水部に流入する洗浄期間のうち洗浄前半時期における、ボウル部の上記汚物受け面上で旋回される洗浄水の溜水部への流入流量のうちの、溜水部の前側領域への流入流量の割合よりも、洗浄後半時期における洗浄水の溜水部への流入流量のうちの、溜水部の上記前側領域への流入流量の割合が多くなるように、汚物受け面上における洗浄水の流れが形成される。これにより、洗浄後半時期における溜水部の上記前側領域への流入流量の割合を比較的多くさせ、洗浄後半時期における微粒汚物の排出能力を向上させることができ、洗浄後半時期に微粒汚物が溜水部に残ってしまうことを抑制できる。よって、洗浄後半時期における汚物の排出能力を向上できる。
【0011】
本発明において、好ましくは、上記溜水部は上記溜水部を前後方向に上記前側領域と上記後側領域とに二分する前後方向中心線と、左右方向に上記右側領域と上記左側領域とに二分する左右方向中心線とにより、4つの領域に区分され、上記洗浄前半時期において上記汚物受け面上に形成される洗浄水の主流が、上記右側領域と上記左側領域とのうち上記汚物受け面の前部から見て洗浄水の旋回方向の下流側に位置するいずれか一方の領域において、このいずれか一方の領域のうちの上記前側領域及び/又は上記後側領域に流入される。
このように構成された本発明の一実施形態においては、洗浄前半時期において汚物受け面上に形成される洗浄水の主流が、右側領域と左側領域とのうち汚物受け面上における洗浄水の旋回方向に沿って下流側に位置するいずれか一方の領域において、このいずれか一方の領域のうちの上記前側領域及び/又は上記後側領域に流入される。これにより、洗浄後半時期において、洗浄水の旋回が弱まり、洗浄水の主流の溜水部への流入領域が旋回方向の上流側にシフトするように変化したとき、洗浄水の主流が上記溜水部の前側領域に流入されやすくできる。
【0012】
本発明において、好ましくは、上記ボウル部の上記汚物受け面は、平面視で、上記汚物受け面の前部から後方側に向けて広がる逆扇状に形成された凹部を備えている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、ボウル部の汚物受け面は、平面視で、上記汚物受け面の前部から後方側に向けて広がる逆扇状に形成された凹部を備えている。これにより、洗浄前半時期等の洗浄水の旋回流の勢いが比較的強く旋回流が汚物受け面の凹部の比較的前方側を流れるときには洗浄水を凹部により集めることを抑制でき、洗浄後半時期等の洗浄水の旋回流の勢いが比較的弱くなり旋回流が汚物受け面の凹部の比較的後方側を流れるときには洗浄水を凹部により集めやすくでき、汚物受け面の前方側の凹部から溜水部に向けて流下する汚物の押し込み流れを形成しやすくできる。
【0013】
本発明において、好ましくは、上記溜水部は上記溜水部を前後方向に上記前側領域と上記後側領域とに二分する前後方向中心線と、左右方向に上記右側領域と上記左側領域とに二分する左右方向中心線とにより、4つの領域に区分され、上記洗浄後半時期における洗浄水の上記溜水部への流入流量のうちの、上記右側領域と上記左側領域とのうちいずれか一方の領域における上記前側領域への流入流量の割合が、他の3つの領域への流入流量のそれぞれの割合よりも大きい。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記洗浄後半時期における洗浄水の上記溜水部への流入流量のうちの、上記右側領域と上記左側領域とのうちいずれか一方の領域における上記前側領域への流入流量の割合が、他の3つの領域への流入流量のそれぞれの割合よりも大きい。これにより、洗浄後半時期において、洗浄水の溜水部への流れを、4つの領域のうち、右側領域と上記左側領域とのうちいずれか一方の領域のうちの前側領域において、比較的強く形成でき、洗浄後半時期における微粒汚物の排出能力をより向上させることができ、洗浄後半時期における汚物の排出能力をより向上できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水洗大便器によれば、微粒汚物の排出能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による水洗大便器を示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿って見た断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿って見た断面図である。
【
図4】
図2のIV-IV線に沿って見た断面図である。
【
図6】
図3のVI-VI線に沿って見た断面図である。
【
図7】
図3のVII-VII線に沿って見た断面図である。
【
図8】
図3のVIII-VIII線に沿って見た断面図である。
【
図9】
図3のIX-IX線に沿って見た断面図である。
【
図10】
図3のX-X線に沿って見た断面図である。
【
図11】
図3のXI-XI線に沿って見た断面図である。
【
図12】
図3のXII-XII線に沿って見た断面図である。
【
図13】
図3のXIII-XIII線に沿って見た断面図である。
【
図14】
図4の断面図において壺部の溜水部及び洗浄前半時期における洗浄水の流れを説明する図である。
【
図15】本発明の一実施形態による水洗大便器において洗浄期間における各領域に流入する洗浄水の運動エネルギーのシミュレーション結果を示す図である。
【
図16】本発明の一実施形態による水洗大便器において洗浄期間における微粒汚物の排出残数をシミュレーションした結果を示す図である。
【
図17】
図4の断面図において洗浄後半時期における洗浄水の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器について説明する。
図1は本発明の一実施形態による水洗大便器を示す斜視図であり、
図2は
図1のII-II線に沿って見た断面図であり、
図3は
図1のIII-III線に沿って見た断面図であり、
図4は
図2のIV-IV線に沿って見た断面図である。
【0017】
図1~
図3に示すように、水洗大便器1は、洗浄水源から供給される洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器である。水洗大便器1は、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す洗い落し式便器である。水洗大便器1は、便器本体2と、この便器本体2を洗浄する洗浄水を貯水する貯水タンク4とを備えている。便器本体2は、陶器製である。便器本体2は、前方側に汚物を受けるボウル部6を備えている。また、ボウル部6の後方上部には、その上流端が貯水タンク4に連通する共通通水路8が形成され、さらに、ボウル部6の後方下部に汚物を排出するための排水管路10が形成されている。なお、水洗大便器1は、サイホン作用を利用してボウル部6内の汚物を吸い込んで排水トラップ管路から一気に外部に排出する、いわゆる、サイホン式の水洗大便器であってもよい。また、以下、本発明の一実施形態における説明において、水洗大便器1を使用する使用者側(水洗大便器1を使用するために水洗大便器1の前に立っている使用者側)から見て手前側を前方側とし、使用者から見て奥側を後方側とし、水洗大便器1を前方から見て右側を右側とし、前方から見て左側を左側として説明している。
【0018】
ボウル部6の下方には、排水トラップ管路12が接続される。排水トラップ管路12は、ボウル部6の後述する壺部の底部に接続された入口管路12aと、入口管路12aから斜め後方上方に延びる上昇管路12bと、上昇管路12bから下降する下降管路12cとを備えている。ボウル部6及び排水トラップ管路12は陶器製であり、便器本体2と一体成形される。ボウル部6は、上面視で前後方向の縦幅が32cm~40cmであり横が22cm~30cmの大きさの卵型を形成している。
【0019】
上述した貯水タンク4は、洗浄水源であり、この貯水タンク4内には、排水弁14が設けられており、操作レバー(図示せず)により開閉するようになっている。なお、水洗大便器1は、貯水タンク4によらずポンプ等により洗浄水が供給されてもよい。
【0020】
ボウル部6は、ボウル形状の汚物受け面16と、汚物受け面16の上方に形成されたリム部18と、汚物受け面16の下方に形成され、溜水を貯留する壺部20と、汚物受け面16の下方に形成される溜水面21とを備えている。ここで、リム部18の内周面18aは、後述する
図12等に示すように、内側に向かってオーバハングした形状となっており、後述する旋回する洗浄水が外部へ飛び出ないようになっている。壺部20は、略三角形の溜水面W0よりも卵型(前側が先細の楕円形状)に近い略三角形を形成し、上面視で前後方向の縦幅が20cm~24cmであり、左右方向の横幅が15cm~19cmの大きさに形成されている。ここで、壺部20の溜水面21は、略三角形であり、上面視で前後方向の縦幅が160mm~180mm、左右方向の横幅が125mm~145mmであり、従来の洗い落とし式水洗大便器の溜水面よりも大きく(拡大されて)形成されている。
【0021】
ボウル部6のリム部18の内周面の前方から見て左側の前後方向に二等分した中央部より前方側に、洗浄水を吐水する吐水口部である第1吐水口22が形成され、リム部18にはさらに、前方から見て右側の中央部より後方側に、第2吐水口24が形成されている。これらの第1吐水口22及び第2吐水口24は、同一方向(
図1では反時計回りの方向)に旋回する旋回流を形成するようになっている。上述した水洗大便器1の後方上部に形成された共通通水路8は、便器前方に向かった後、左右に分岐され、第1吐水口22又は第2吐水口24に洗浄水を供給するようになっている。なお、洗浄水を吐水する吐水口は1つ又は3つ以上であってもよい。また、第1吐水口22及び第2吐水口24等の吐水口の吐水向きを反対に向けることにより、ボウル部内に時計回りの旋回方向の旋回流を形成するようになっていてもよい。
【0022】
次に、
図1~
図13等に示すように、汚物受け面16について説明する。
汚物受け面16は、汚物受け面16の前部から壺部20の側方部分まで下方に凹まされた凹部26を備えている。
図4に示すように、凹部26は、平面視で、汚物受け面16の前部から後方側に向けて広がる逆扇状に形成される。凹部26は、汚物受け面16の凹部26の周囲の面に対してさらに深くなるように凹んだ部分(例えば曲面を周囲の形状に合わせて形成していれば本来凸状に突出している曲面の一部をあえて平らにしている部分や、比較的平らな面を下方に凹ませている部分)を形成している。凹部26は、後端部26aから汚物受け面の前部まで周囲の汚物受け面よりやや低い洗浄水の誘導部を形成する。また、凹部26の後端部26aは、周囲の汚物受け面16と、比較的滑らかに連結されている。後端部26aは、壺部20の左右の側壁30間の左右方向の幅が最大となるような側壁30の部分よりも前方側に位置している。また、後端部26aは、上面視で壺部20の前壁32よりも後方側に位置し、後述する中部領域A2に位置している。
【0023】
凹部26は、曲面の変曲部分が図面上で表されにくいため、
図4において凹部26の領域を一点鎖線の内側の領域として仮想的に示している。
図5に示すような断面においては、凹部26は、汚物受け面16において、領域B1に形成される。凹部26の外端部26b(領域B1の両端部)は、周囲の汚物受け面16に対して面が下方向きに変化する変曲点を形成している。領域B1における凹部26の底部26cは比較的浅く形成されている。
【0024】
図6に示すような断面においては、凹部26は、汚物受け面16において、領域B2に形成される。凹部26の外端部26b(領域B2の両端部)は、周囲の汚物受け面16に対して面が下方向きに変化する変曲点を形成している。領域B2における外端部26bの間の幅は、領域B1における外端部26bの間の幅に比べて大きくなっている。領域B2における凹部26の底部26cは比較的深く形成されている。領域B2における外端部26bと底部26cとの高さ(深さ)は、領域B1における外端部26bと底部26cとの高さ(深さ)に比べて大きく(深く)なっている。
図6に示す底部26cの曲率半径は、
図5に示す底部26cの曲率半径よりも大きくなっている。
【0025】
図7に示すような断面においては、凹部26は、汚物受け面16において、領域B3に形成される。凹部26の外端部26b(領域B3の両端部)は、周囲の汚物受け面16に対して面が下方向きに変化する変曲点を形成している。領域B3における外端部26bの間の幅は、領域B2における外端部26bの間の幅に比べて大きくなっている。領域B3における外端部26bと底部26cとの高さ(深さ)は、領域B2における外端部26bと底部26cとの高さ(深さ)に比べて大きく(深く)なっている。
図7に示す底部26cの曲率半径は、
図6に示す底部26cの曲率半径よりも大きくなっている。
【0026】
図8に示すような断面においては、凹部26は、汚物受け面16において、領域B4に形成される。凹部26の外端部26b(領域B4の両端部)は、周囲の汚物受け面16に対して面が下方向きに変化する変曲点を形成している。領域B3における外端部26bの間の幅は、領域B3における外端部26bの間の幅に比べて大きくなっている。領域B4における外端部26bと底部26cとの高さ(深さ)は、領域B3における外端部26bと底部26cとの高さ(深さ)に比べて大きく(深く)なっている。
図8に示す底部26cの曲率半径は、
図7に示す底部26cの曲率半径よりも大きくなっている。
【0027】
図9に示すような断面においては、凹部26は、汚物受け面16において、領域B5に形成される。凹部26の外端部26b(領域B5の両端部)は、周囲の汚物受け面16に対して面が下方向きに変化する変曲点を形成している。領域B5における外端部26bの間の幅は、領域B4における外端部26bの間の幅に比べて大きくなっている。領域B5における外端部26bと底部26cとの高さ(深さ)は、領域B4における外端部26bと底部26cとの高さ(深さ)に比べて大きく(深く)なっている。
図9に示すような断面の位置において、底部26cは、凹部26の最も低い位置にある最下部26eとなっている。凹部26の最下部26eは、後述するような壺部20の傾斜部38の最上部38aよりも下方に配置されている。
図9に示す底部26cの曲率半径は、
図8に示す底部26cの曲率半径よりも大きくなっている。
【0028】
図10に示すような断面においては、凹部26は、汚物受け面16において、領域B6に形成される。この断面の位置においては、凹部26の内側に側壁30の上縁部36の傾斜部38が形成されている。凹部26は、凸状に突出している曲面(汚物受け面16と傾斜部38とを結ぶような曲面)の一部を平らにするように凹まされている。凹部26の外側の外端部26b(領域B6の両端部)は、周囲の汚物受け面16に対して面が下方向きに変化する変曲点を形成している。凹部26の内側の内端部26d(領域B6の内側の端部)は、凹部26から傾斜部38に向けて面がさらに下方向きに変化する変曲点を形成している。凹部26の外側の左右の外端部26bの間の横幅は、
図9に示すような領域B5における左右の外端部26bの間の横幅に比べて大きくなっている。
【0029】
図11に示すような断面においては、凹部26は、汚物受け面16において、領域B7に形成される。凹部26の内側に傾斜部38が形成されている。凹部26は、凸状に突出している曲面の一部を平らにするように凹まされている。凹部26の外側の外端部26b(領域B7の両端部)は、周囲の汚物受け面16に対して面が下方向きに変化する変曲点を形成している。凹部26の内側の内端部26d(領域B7の内側の端部)は、凹部26から傾斜部38に向けて面がさらに下方向きに変化する変曲点を形成している。領域B7のそれぞれにおける外端部26bと内端部26dとの間の幅は、領域B6のそれぞれにおける外端部26bと内端部26dとの間の幅に比べて小さくなっている。凹部26の外側の左右の外端部26bの間の横幅は、
図10に示すような右側の領域B6の外端部26bから左側の領域B6の外端部26bまでの横幅に比べて大きくなっている。
【0030】
図12に示すような断面においては、凹部26は、汚物受け面16において、領域B8に形成される。凹部26の内側に傾斜部38が形成されている。凹部26は、凸状に突出している曲面の一部を平らにするように凹まされている。凹部26の外側の外端部26b(領域B8の両端部)は、周囲の汚物受け面16に対して面が下方向きに変化する変曲点を形成している。凹部26の内側の内端部26d(領域B8の内側の端部)は、凹部26から傾斜部38に向けて面がさらに下方向きに変化する変曲点を形成している。領域B8のそれぞれにおける外端部26bと内端部26dとの間の幅は、領域B7のそれぞれにおける外端部26bと内端部26dとの間の幅に比べて小さくなっている。凹部26の外側の左右の外端部26bの間の横幅は、
図11に示すような右側の領域B7の外端部26bから左側の領域B7の外端部26bまでの横幅に比べて大きくなっている。領域B8の両側の外端部26bの間の横幅が凹部26の最大の横幅W1として規定される。
図4に示すように、凹部26の最大の横幅W1は、平面視で、壺部20の最大の横幅W2よりも小さい。壺部20の最大の横幅W2を形成している部分においては上縁部36には誘導部40が形成されており、凹部26が形成されていない。従って、後方側から前方側に旋回する旋回流は、壺部20の最大の横幅を形成している部分においては、誘導部40から傾斜部38側に導かれやすくなっている。
【0031】
図13に示すような断面においては、凹部26は、形成されておらず、汚物受け面16において、上縁部36の誘導部40が形成されている。
【0032】
次に、
図1~
図4により、壺部20の構造について詳細に説明する。
壺部20は、側方側において縦方向に立ち上がる側壁30と、前方側において縦方向に立ち上がる前壁32と、後方側において縦方向に立ち上がる後壁34と、側壁30の上縁部36の高さが前方に向けて低くなるように側壁30の上縁部36を傾斜させる傾斜部38と、凹部26の後端部26aよりも後方において側壁30の上縁部36の高さが一定となっている誘導部40と、を備えている。
【0033】
前壁32は、壺部20の底部33から立ち上がるように形成されている。なお、前壁32と底部33との間の前側底コーナー部41の角度は、後壁34と底部33との間の後側底コーナー部42の角度よりも小さい。これにより、傾斜部38から流下した洗浄水が一旦溜水面から水中に流れ込んだ後、前壁32に沿って縦旋回をより形成しやすくできる。また、このときの縦旋回の流れは底部33から前側底コーナー部41に沿って前壁32に上昇する流れであり、前壁32の上部までの比較的コンパクトな縦旋回の流れとなる。また、前側底コーナー部41の角度が比較的小さく、前方側に向かう流れが底部から前側底コーナー部41に当たると、前壁32に沿って上昇する縦旋回を形成しやすくなっている。前方側に向かう流れが底部に当たらずとも縦旋回流は形成可能であるが、底部にあたってから前側底コーナー部41に沿って上昇することにより、より効率的に縦旋回流が形成できる。
【0034】
図2に示すように、傾斜部38は、凹部26の後端部26a近傍且つその内側から前方に向けて延びる。傾斜部38も、曲面の変曲部分が図面上で表されにくいため、
図2乃至
図4において。傾斜部38の領域を破線の内側の領域として仮想的に示している。傾斜部38は、壺部20を前後方向において3分割した領域(前部領域A1、中部領域A2、後部領域A3)のうちの中部領域A2の側方側の領域から前方に向けて延びる。なお、凹部26の後端部26aも中部領域A2の側方側の領域に位置している。また、傾斜部38は、
図11及び
図12等に示すように、縦断面において湾曲したコーナー部を形成し、その上部側に棚状の流路を形成している。傾斜部38の最上部38aは、壺部20の後方側の後壁34よりも前方側において形成されている。傾斜部38の最上部38aは、誘導部40から下方に折れ曲がる変曲点として、洗浄水が内側下方に流下を開始するきっかけを形成しやすくなっている。傾斜部38は、誘導部40に対して2度乃至35度の範囲の下方向きの傾斜角度を形成している。傾斜部38は、誘導部40よりも下方に傾斜された面を形成している。傾斜部38の下端は、前壁32の頂部よりもわずかに下方に接続されている。いったん、傾斜部38に流入した洗浄水は、外側の凹部26に向けて流れることが抑制され、凹部26上を流れる洗浄水と干渉しにくくなっている。従って、傾斜部38から壺部20の内側に流れる洗浄水と、凹部26上を汚物受け面16の前方側まで流れる洗浄水とが互いに干渉しにくく、2つの流れがより効率的且つ強力に形成できる。
【0035】
誘導部40は、傾斜部38の後端から後方側に向けて後壁34までほぼ水平に延びている。誘導部40も、曲面の変曲部分が図面上で表されにくいため、
図2及び
図3において。誘導部40の領域を破線の内側の領域として仮想的に示している。
【0036】
このような傾斜部38及び凹部26等の構成によれば、矢印F0に示すような、汚物受け面16上において壺部20の周囲を旋回するような旋回流のうち、矢印F1に示すような、壺部20の側方の比較的内側の領域をボウル部の後方から前方側に向けて流れる流れが誘導部40に沿って先ず前方側に向けてほぼ水平な直線的な流れとして流れ、続いて、傾斜部38により壺部20の内側に向けて下降する流れを形成しやすくなる。このような壺部20の前壁32に向かう前方向きの流れの主流は、矢印F2に示すように(
図2参照)、溜水面21から水中へ流入し、壺部20の底部33から前壁32に当たることにより前壁に沿って上昇する縦旋回の流れを形成する。
【0037】
また、矢印F3に示すように(
図2及び
図4参照)壺部20の側方のやや外側の領域をボウル部の後方から前方側に向けて流れる流れが傾斜部38の外側から前方に向けて導かれやすくなり、凹部26に沿って前方側に導かれる流れを形成する。このとき、いったん、凹部26に流入した洗浄水の流れは凹部26に沿って前方側に導かれ、側方の傾斜部38や壺部20内に流下して傾斜部38における前方向きの流れや後述する凹部26から壺部20に向かう後方向きの流れと衝突してこれらの流れを乱すことを抑制できる。
【0038】
矢印F4に示すように(
図2及び
図4参照)凹部26に沿って前方側に導かれた洗浄水の一部は汚物受け面16の前部の凹部26から壺部20に向けて後方向きに流れる流れを形成する。凹部26は汚物受け面16よりも凹んだ部分を形成しているので、凹部26から壺部20に向けて後方向きに流れる流れを形成しやすくなっている。
【0039】
矢印F5に示すように(
図2及び
図4参照)前壁32に沿って上昇する縦旋回の流れ(矢印F2の流れ)と、凹部26から壺部20に向かう後方向きの流れ(矢印F4の流れ)とが合流され、壺部20の前方から底部側に向かう押し込み流れをより強力に形成できる。よって、合流された流れにより、壺部20の前方から底部側に向かう押し込み流れを強化し、汚物排出性能をより向上させることができる。なお、壺部20の底部33ではなく、壺部20の前壁32に当たることにより、前壁に沿って上昇する縦旋回の流れを形成することもできる。また、このような押し込み流れは、微粒汚物の排出能力を向上させる又は微粒汚物の排出能力を比較的高く維持させることができる。洗浄水と共に水中に押し込まれた汚物は、排水トラップ管路12から下流側に排出される。このような矢印F5に示すような押し込みの流れは洗浄期間を通して形成されやすくなっているが、後述するように、洗浄後半時期E3において壺部20の前側領域(第3領域D3及び第4領域D4)への流入流量の割合が大きくされやすくなっているので、上述のような矢印F5に示すような押し込みの流れがより形成されやすくなっている。
【0040】
さらに、洗浄水の周回方向の旋回流の勢いが比較的強く旋回流が汚物受け面16の凹部26の比較的前方側を流れるとき(例えば洗浄前半時期E1)には通過する位置の凹部26の深さが比較的浅いため、洗浄水を凹部26により集めることを抑制でき、洗浄水の旋回流の勢いが比較的弱くなり旋回流が汚物受け面16の凹部26の比較的後方側を流れるとき(例えば洗浄後半時期E3)には通過する位置の比較的深い凹部26により、洗浄水を凹部26により集めやすくできる。よって、汚物受け面16の前方側の凹部26から溜水部に向けて流下する汚物の押し込み流れをさらに形成しやすくできる。
【0041】
次に、
図14により、溜水部について詳細に説明する。
壺部20は溜水部として溜水面21(
図3においては一点鎖線で示される溜水面W0)を形成する。溜水面21は、溜水面21を前後方向に前側領域と後側領域とに二分する前後方向中心線C1と、左右方向に右側領域と左側領域とに二分する左右方向中心線C2とにより、4つの領域に区分される。溜水面21は、溜水面21を前後方向に二分したうちの前方側の前側領域と後方側の後方領域とを有している。溜水面21の前側領域においては、後方領域よりも溜水面から底部までの深さが浅くなっており、縦旋回流を利用した上方からの流れによる浮遊系汚物の押し込みが効果的に機能しやすくなっている。前後方向中心線C1は、溜水面21における前壁32と後壁34との中間の位置において左右方向に延びる線である。左右方向中心線C2は、溜水面21の右側の側壁30と左側の側壁30との中間の位置において前後方向に延びる線である。溜水面21において、前後方向中心線C1と左右方向中心線C2とにより区分される4つの領域は、第1領域D1、第2領域D2、第3領域D3、第4領域D4である。本実施形態において溜水部は、溜水面により規定されているが、溜水部は壺部20により規定されてもよい。この場合、壺部20が、壺部20を前後方向に前側領域と後側領域とに二分する前後方向中心線C1と、左右方向に右側領域と左側領域とに二分する左右方向中心線C2とにより、4つの領域に区分されると規定することができる。
【0042】
次に、
図14乃至
図16を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器における洗浄水の流れを説明する。
図15においては、本実施形態の水洗大便器において、洗浄期間において各領域(第1領域D1、第2領域D2、第3領域D3及び第4領域D4)に流入する洗浄水の運動エネルギー、すなわち流入流量をシミュレーション結果により示している。
図15においては、縦軸において洗浄水の運動エネルギー[J]の変化を示し、横軸において時間経過を示している。横軸において操作レバーの操作開始を時刻0[S]のスタートとしている。汚物受け面を洗浄する洗浄水が溜水部に流入する洗浄期間は、時刻T0[S]から時刻T1[S]までの期間であり、時刻T0において洗浄水の溜水面21への流入が開始され、時刻T1において洗浄に寄与する洗浄水の溜水面21への流入が実質的に終了されている。洗浄水の溜水面21への流入流量が洗浄に実質的に寄与しない程度まで低下する場合に洗浄に寄与する洗浄水の溜水面21への流入が終了される(時刻T1)とする。なお、洗浄期間を3等分して、洗浄前半時期E1、洗浄中間時期E2、洗浄後半時期E3を規定している。なお、洗浄水の溜水面21への流入開始時刻は、吐水口部からの吐水が開始される時刻とほぼ同じタイミングとなることから、洗浄期間は、洗浄水が吐水されている期間として、吐水口部からの吐水が開始される時刻T0[S]から吐水口部からの吐水が終了される時刻T1[S]までの期間として設定されてもよい。
【0043】
まず、使用者が貯水タンク4の操作レバー(図示せず)を操作すると、排水弁14が開き、洗浄水が貯水タンク4から共通通水路8に供給される。第1吐水口22及び第2吐水口24から洗浄水が吐水され、矢印F10に示すように、汚物受け面16上において壺部20の周囲を旋回するような旋回流が形成される。洗浄水は旋回流を形成しながら徐々に壺部20内の溜水面21に流入する。このとき壺部20の側方の領域においては壺部の前方や後方の領域と比べて洗浄水は流れの向きが前方向きに比較的そろいやすい。
【0044】
洗浄開始後、洗浄前半時期E1においては、ボウル部6の汚物受け面16上で旋回される洗浄水の溜水面21への全体の流入流量のうちの、矢印F11に示すような、溜水面21の後方領域(第1領域D1及び第2領域D2)への流入流量の割合が、洗浄水の溜水面21への全体の流入流量のうちの、矢印F12に示すような、溜水面21の前側領域(第3領域D3及び第4領域D4)への流入流量の割合よりも大きくなっている。
【0045】
図17に示すように、洗浄後半時期E3においては、ボウル部6の汚物受け面16上で旋回される洗浄水の溜水面21への全体の流入流量のうちの、矢印F13に示すような、溜水面21の前側領域(第3領域D3及び第4領域D4)への流入流量の割合が、洗浄水の溜水面21への全体の流入流量のうちの、矢印F14に示すような、溜水面21の後方領域(第1領域D1及び第2領域D2)への流入流量の割合よりも大きくなっている。また、本実施形態のボウル部6等の構造によれば、洗浄前半時期E1におけるボウル部6の汚物受け面16上で旋回される洗浄水の溜水面21への流入流量のうちの、矢印F12に示すような、溜水面21の前側領域(第3領域D3及び第4領域D4)への流入流量の割合よりも、洗浄後半時期E3における洗浄水の溜水面21への流入流量のうちの、矢印F13に示すような、溜水面21の前側領域(第3領域D3及び第4領域D4)への流入流量の割合が大きくなる。このように洗浄後半時期E3における溜水面21の前側領域への流入流量の割合を多くさせ、洗浄後半時期E3における微粒汚物の排出能力を向上させる又は洗浄後半時期E3においても微粒汚物の排出能力を比較的高く維持させることができる。
【0046】
洗浄前半時期E1において、洗浄水の溜水面21への流入流量のうちの溜水面21の前側領域(第3領域D3及び第4領域D4)への流入流量の割合は比較的低い割合となっている。そして、洗浄後半時期E3における洗浄水の溜水面21への流入流量のうちの、溜水面21の前側領域(第3領域D3及び第4領域D4)への流入流量の割合は比較的大きくなっている。そして、洗浄前半時期E1における、洗浄水の溜水面21への流入流量のうちの、溜水面21の前側領域(第3領域D3及び第4領域D4)への流入流量の割合よりも、洗浄後半時期における洗浄水の溜水面21への流入流量のうちの、溜水面21の前側領域(第3領域D3及び第4領域D4)への流入流量の割合が大きくなっていることが確認できる。
【0047】
図16においては、本実施形態の水洗大便器において、洗浄期間における微粒汚物の排出残数をシミュレーションした結果を示している。
図16においては、縦軸において微粒汚物の排出残数[個]を示し、横軸において時間[S]を示している。本シミュレーションにおいては、微粒汚物は微小な粒子として規定され、洗浄開始直後には、微粒汚物の排出残数[個]は2500[個]であるとして形成されている。洗浄水が吐水されている洗浄期間は、時刻T0[S]から時刻T1[S]までの期間であり、
図15と同様に、洗浄期間を3等分して、洗浄前半時期E1、洗浄中期時期E2、洗浄後半時期E3を規定している。
上述のように洗浄後半時期E3における溜水面21の前側領域への流入流量の割合が比較的大きくなることにより、洗浄後半時期E3における微粒汚物の排出能力が向上され又は洗浄後半時期E3においても微粒汚物の排出能力が比較的高く維持され、洗浄の後半時期において、微粒汚物が減少されてほぼなくなるまで排出できることが分かる。また、微粒汚物に限られず、洗浄後半時期における汚物の排出能力を向上できる。
【0048】
また、本実施形態の水洗大便器において、洗浄前半時期E1(又は洗浄中間時期E2)において汚物受け面16上に形成される洗浄水の主流が、矢印F15に示すように、右側領域(第2領域D2及び第3領域D3)と左側領域(第1領域D1及び第4領域D4)とのうち汚物受け面16の前部から見て洗浄水の旋回方向の下流側に位置するいずれか一方の領域(前記右側領域又は前記左側領域)、例えば本実施形態においては右側領域(第2領域D2及び第3領域D3)において、このいずれか一方の領域のうちの前側領域(本実施形態においては第3領域D3)及び/又は後側領域(本実施形態においては第2領域D2)とに流入される。
これにより、
図17に示すように、洗浄後半時期E3において、洗浄水の旋回が弱まり、洗浄水の主流の溜水面21への流入領域が旋回方向(矢印F10に示すような旋回方向)の上流側にシフトするように変化したとき、矢印F16に示すように、洗浄水の主流が溜水面21の前側領域(第3領域D3及び第4領域D4)に流入されやすくできる。よって、洗浄後半時期E3における微粒汚物の排出能力が向上され又は洗浄後半時期E3においても微粒汚物の排出能力が比較的高く維持され、洗浄の後半時期において、残っている微粒汚物が減少されて排出できることが分かる。また、微粒汚物に限られず、洗浄後半時期における汚物の排出能力を向上できる。
【0049】
洗浄後半時期E3における洗浄水の溜水面21への流入流量のうちの、右側領域(第2領域D2及び第3領域D3)と左側領域(第1領域D1及び第4領域D4)とのうちいずれか一方の領域(前記右側領域又は前記左側領域)における前側領域(第4領域D4又は第3領域D3)への流入流量の割合が、他の3つの領域への流入流量のそれぞれの割合よりも大きい。例えば、
図15及び
図17においては、洗浄後半時期E3における洗浄水の溜水面21への流入流量のうちの、右側領域(第2領域D2及び第3領域D3)と左側領域(第1領域D1及び第4領域D4)とのうちいずれか一方の領域(例えば前記左側領域)における前側領域(第4領域D4)への流入流量の割合(矢印F17に示すような流入流量の割合)が、他の3つの領域(第1領域D1、第2領域D2及び第3領域D3)への流入流量のそれぞれの割合(それぞれ矢印F18、F19、F20に示すような流入流量の割合)よりも大きい。例えば、洗浄水の流入流量は、洗浄後半時期E3において平均した値として算定される。洗浄水と共に水中に押し込まれた微粒汚物及び汚物は、排水トラップ管路12から下流側に排出され、洗浄は終了される。
【0050】
上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、汚物受け面16を洗浄する洗浄水が溜水面21に流入する洗浄期間のうち洗浄前半時期E1における、ボウル部6の汚物受け面16上で旋回される洗浄水の溜水面21への流入流量のうちの、溜水面21の前側領域への流入流量の割合よりも、洗浄後半時期E3における洗浄水の溜水面21への流入流量のうちの、溜水面21の前側領域への流入流量の割合が多くなるように、汚物受け面16上において洗浄水の流れが形成される。これにより、洗浄後半時期E3における溜水面21の前側領域への流入流量の割合を比較的多くさせ、洗浄後半時期E3における微粒汚物の排出能力を向上させることができ、洗浄後半時期E3に微粒汚物が溜水面21に残ってしまうことを抑制できる。よって、洗浄後半時期E3における汚物の排出能力を向上できる。
【0051】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、洗浄前半時期E1において汚物受け面16上に形成される洗浄水の主流が、右側領域と左側領域とのうち汚物受け面16上における洗浄水の旋回方向に沿って下流側に位置するいずれか一方の領域において、このいずれか一方の領域のうちの前側領域と後側領域とに流入される。これにより、洗浄後半時期E3において、洗浄水の旋回が弱まり、洗浄水の主流の溜水面21への流入領域が旋回方向の上流側にシフトするように変化したとき、洗浄水の主流が上記溜水面21の前側領域に流入されやすくできる。
【0052】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、ボウル部6の汚物受け面16は、平面視で、汚物受け面16の前部から後方側に向けて広がる逆扇状に形成された凹部26を備えている。これにより、洗浄水の旋回流の勢いが比較的強く旋回流が汚物受け面16の凹部26の比較的前方側を流れるときには洗浄水を凹部26により集めることを抑制でき、洗浄水の旋回流の勢いが比較的弱くなり旋回流が汚物受け面16の凹部26の比較的後方側を流れるときには洗浄水を凹部26により集めやすくでき、汚物受け面16の前方側の凹部26から溜水面21に向けて流下する汚物の押し込み流れを形成しやすくできる。
【0053】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、洗浄後半時期E3における洗浄水の溜水面21への流入流量のうちの、右側領域と左側領域とのうちいずれか一方の領域における前側領域への流入流量の割合が、他の3つの領域への流入流量のそれぞれの割合よりも大きい。これにより、洗浄後半時期E3において、洗浄水の溜水面21への流れを、4つの領域のうち、右側領域と左側領域とのうちいずれか一方の領域のうちの前側領域において、比較的強く形成でき、洗浄後半時期E3における微粒汚物の排出能力をより向上させることができ、洗浄後半時期E3における汚物の排出能力をより向上できる。
【符号の説明】
【0054】
1 :水洗大便器
6 :ボウル部
16 :汚物受け面
18 :リム部
26 :凹部