(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019677
(43)【公開日】2024-02-09
(54)【発明の名称】癌及び免疫学的障害を治療するためのBCMA抗生物質及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20240202BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20240202BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240202BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240202BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240202BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240202BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240202BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240202BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240202BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240202BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240202BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20240202BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240202BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240202BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240202BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240202BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240202BHJP
A61K 31/5517 20060101ALI20240202BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240202BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240202BHJP
【FI】
C07K16/46
C07K16/30
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61P1/16
A61P3/10
A61P11/06
A61P11/00
A61P7/00
A61P17/06
A61P17/00
A61P29/00 101
A61P31/06
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/06
A61P37/08
A61K47/68
A61K31/5517
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023216464
(22)【出願日】2023-12-22
(62)【分割の表示】P 2022030779の分割
【原出願日】2017-02-16
(31)【優先権主張番号】62/296,594
(32)【優先日】2016-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/396,084
(32)【優先日】2016-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505314468
【氏名又は名称】シージェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャンゴ サスマン
(72)【発明者】
【氏名】マウリーン ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ローリ ウェステンドルフ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル フェルドハウス
(57)【要約】
【課題】BCMAに特異的に結合するヒト化抗体を提供すること。
【解決手段】本抗体は、種々の癌及び免疫障害の治療及び診断、ならびにBCMAの検出に有用である。本発明は、ATCC PTC-6937として寄託される抗体のヒト化形態またはキメラ形態である、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはベニヤ抗体を提供する。任意選択で、本抗体は、hSG16.17 VH3(配列番号13)と少なくとも90%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域と、hSG16.17 VK2(配列番号19)と少なくとも90%の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年2月17日出願の米国仮出願第US62/296,594号、及び2016年9月16日出願の米国仮出願第62/396,084号の利益を主張し、これらの両方は、あらゆる目的でその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
本出願に開示される配列は、本明細書と共に出願された配列表に含まれる。
【背景技術】
【0003】
B細胞成熟抗原(BCMA、CD269)は、TNF受容体スーパーファミリーのメンバーである。BCMAの発現は、それが主に胚中心の濾胞間領域で、ならびに分化した形質細胞及び形質芽細胞上に発現されるB細胞系列に限られる。BCMAは、増殖誘導リガンド(APRIL)及びB細胞活性化因子(BAFF;BlyS、TALL-1、及びTHANKとしても知られる)の2つの異なるリガンドに結合する。BCMAのリガンドは、膜貫通活性化因子及びカルシウム修飾因子及びシクロフィリンリガンド相互作用物質(TACI)、ならびにBAFF受容体(BAFF-R;BR3とも呼ばれる)の2つのさらなるTNF受容体に結合する。TACIは、APRIL及びBAFFに結合し、一方でBAFF-Rは、BAFFに対して制限されてはいるが高い親和性結合を示す。まとめると、BCMA、TACI、BAFF-R、及びそれらの対応するリガンドは、液性免疫、B細胞発達、及び恒常性の異なる側面を調節する。
【0004】
BCMAは、ナイーブ細胞及びメモリーB細胞上では実質的に不在である(Novak
et al.,Blood 103,689-94(2004))が、それが正常な形質細胞及び形質芽細胞の生存を促進することによって液性免疫を支持し得る血漿細胞分化中に選択的に誘導される(O’Conner et al.,J.Exp Med.199, 91-98(2004))。BCMAは、原発性多発性骨髄腫(MM)試料において発現されると報告された。BCMAは、ホジキン病の患者からのリード-ステルンベルグ細胞(CD30+)上でも検出された。ノックダウン実験に基づいて、そのBCMAがホジキン病細胞系の増殖及び生存の両方に寄与したと報告された(Chiu et al.,Blood 109,729-39(2007))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Novak et al.,Blood 103,689-94(2004)
【非特許文献2】O’Conner et al.,J.Exp Med.199, 91-98(2004)
【非特許文献3】Chiu et al.,Blood 109,729-39(2007)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ATCC PTC-6937として寄託される抗体のヒト化形態またはキメラ形態である、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはベニヤ抗体を提供する。任意選択で、本抗体は、hSG16.17 VH3(配列番号13)と少なくとも90%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域と、hSG16.17 VK2(配列番号19)と少なくとも90%の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域とを含む。任意選択で、本抗体は、hSG16.17 VH3(配列番号13)と少なくとも95%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域と、hSG16.17 VK2(配列番号19)と少なくとも95%の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域とを含む。任意選択で、本抗体は、hSG16.17 VH3(配列番号13)の3つのKabat CDR(配列番号60~62)と、hSG16.17 VK2(配列番号19)の3つのKabat CDR(配列番号90~92)とを含むが、但し、位置H58が、NまたはKにより占められ得、位置H60が、AまたはNにより占められ得、位置H61が、QまたはEにより占められ得、位置H62が、KまたはNにより占められ得、位置H64が、QまたはKにより占められ得、位置H65が、GまたはTにより占められ得、位置L24が、RまたはLにより占められ得、位置L53が、SまたはRにより占められ得ることを条件とする。任意選択で、本抗体は、hSG16.17 VH3(配列番号13)の3つのKabat CDR(配列番号60~62)と、hSG16.17 VK2(配列番号19)の3つのKabat CDR(配列番号90~92)とを含む。任意選択で、位置H58、H60、H61、H62、H64、及びH65は、それぞれ、N、A、Q、K、Q、及びGにより占められ、L24及びL53は、それぞれ、R及びSにより占められる。任意選択で、位置H20、H48、H69、H71、H73、H76、H80、H88、H91、及びH93は、それぞれ、L、I、M、A、K、N、V、A、F、及びTにより占められ、位置L46、L48、及びL87は、それぞれ、V、V、及びFにより占められる。任意選択で、成熟重鎖可変は、hSG16.17 VH3(配列番号13)の配列を有し、成熟軽鎖可変領域は、hSG16.17 VK2(配列番号19)の配列を有する。
【0007】
本発明は、VH(配列番号23)配列及びVK(配列番号33)配列を有するラットSG16.45抗体のヒト化形態、キメラ形態、またはベニヤ形態である、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはベニヤ抗体をさらに提供する。任意選択で、本抗体は、hSG16.45 VH5(配列番号31)と少なくとも90%の配列同一性を有する重鎖成熟可変領域と、hSG16.45 VK2(配列番号36)と少なくとも90%の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域とを含む。任意選択で、本抗体は、hSG16.45 VH5(配列番号31)と少なくとも95%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域と、hSG16.45 VK2(配列番号36)と少なくとも95%の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域とを含む。任意選択で、本は、hSG16.45 VH5(配列番号31)の3つのKabat CDR(配列番号152~154)と、hSG16.45 VK2(配列番号36)の3つのKabat CDR(配列番号179~181)とを含むが、但し、位置H50が、AまたはSにより占められ得、位置L24が、RまたはLにより占められ得、位置L26が、SまたはTにより占められ得ることを条件とする。任意選択で、本抗体は、hSG16.45 VH5(配列番号31)の3つのKabat CDR(配列番号152~154)と、hSG16.45 VK2(配列番号36)の3つのKabat CDR(配列番号179~181)とを含む。任意選択で、位置H30、H93、及びH94は、それぞれ、N、T、及びSにより占められる。任意選択で、成熟重鎖可変領域が、hSG16.45 VH5(配列番号31)の配列を有し、成熟軽鎖可変領域が、hSG16.45 VK2(配列番号36)の配列を有するか、または成熟重鎖可変領域が、hSG16.45 VH1(配列番号27)の配列を有し、成熟軽鎖可変領域が、hSG16.45 VK1(配列番号35)の配列を有するか、または成熟重鎖可変領域が、hSG16.45 VH1(配列番号27)の配列を有し、成熟軽鎖可変領域が、hSG16.45 VK3(配列番号37)の配列を有する。
【0008】
上記の抗体のいずれかにおいて、成熟重鎖可変領域は重鎖定常領域に融合し得、成熟軽鎖可変領域は軽鎖定常領域に融合し得る。任意選択で、重鎖定常領域は、天然のヒト定常領域の突然変異形態であり、この突然変異形態のFcγ受容体への結合は、天然のヒト定常領域と比較して減少している。任意選択で、重鎖定常領域は、IgG1アイソタイプの重鎖定常領域である。任意選択で、重鎖定常領域は、配列番号5を含むアミノ酸配列を有し、軽鎖定常領域は、配列番号3を含むアミノ酸配列を有する。任意選択で、重鎖定常領域は、配列番号7(S239C)を含むアミノ酸配列を有し、軽鎖定常領域は、配列番号3を含むアミノ酸配列を有する。任意選択で、本抗体は、裸抗体である。任意選択で、本抗体は、細胞傷害性薬または細胞増殖抑制薬と複合体化される。任意選択で、本抗体は、細胞傷害性薬と複合体化される。任意選択で、細胞傷害性薬は、酵素で切断可能なリンカーを介してと複合体化される。任意選択で、細胞傷害性薬は、DNA小溝結合剤であり、例えば、細胞傷害性薬は、下式
【化1】
を有する。
任意選択で、細胞傷害性薬は、MMAEまたはMMAFである。
【0009】
本発明は、上述の抗体のいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物をさらに提供する。
【0010】
一実施形態では、本発明は、hSG16.17 VH3(配列番号13)の3つのKabat CDR(配列番号60~62)と、前記hSG16.17 VK2(配列番号19)の3つのKabat CDR(配列番号90~92)とを含む抗体を提供する。さらなる実施形態では、本発明は、hSG16.17 VH3(配列番号13)の配列を有する成熟重鎖可変と、hSG16.17 VK2(配列番号19)の配列を有する成熟軽鎖可変領域とを有する抗体を提供する。別の実施形態では、成熟重鎖可変領域は重鎖定常領域に融合し、成熟軽鎖可変領域は軽鎖定常領域に融合している。本抗体は、例えば、IgG1抗体であり得る。別の実施形態では、本抗体は、フコースまたはフコース類似体によるコアフコシル化を欠く。本抗体は、例えば薬学的に許容される担体を添加して、薬学的組成物に製剤化され得る。
【0011】
さらなる実施形態では、薬学的組成物は、hSG16.17 VH3(配列番号13)の配列を有する成熟重鎖可変と、hSG16.17 VK2(配列番号19)の配列を有する成熟軽鎖可変領域とを有する複数の抗体を有する。これらの抗体の可変領域は、好ましくは、適切な重鎖及び軽鎖定常領域に融合している。別の実施形態では、本抗体は、IgG1抗体である。さらなる実施形態では、複数の抗体は、フコースまたはフコース類似体によるコアフコシル化を有する約5%未満の抗体を有する。さらなる実施形態では、複数の抗体は、フコースまたはフコース類似体によるコアフコシル化を有する約10%未満の抗体を有する。さらなる実施形態では、複数の抗体は、フコースまたはフコース類似体によるコアフコシル化を有する約2%の抗体を含む。さらなる実施形態では、複数の抗体は、フコースまたはフコース類似体によるコアフコシル化を有する2%の抗体を含む。
【0012】
本発明は、上述の抗体の有効なレジメンを患者に施すことを含む、BCMAを発現する癌を有するか、またはそれを有するリスクにある患者の治療方法をさらに提供する。任意選択で、癌は血液癌である。任意選択で、血液癌は、骨髄腫、白血病、またはリンパ腫である。任意選択で、血液癌は、多発性骨髄腫である。任意選択で、血液癌は、非ホジキンリンパ腫(NHL)またはホジキンリンパ腫である。任意選択で、血液癌は、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖症候群(MPS)、ワンデンストレームマクログロブリン血症、またはバーキットリンパ腫である。
【0013】
本発明は、上述の抗体のいずれかの有効なレジメンを患者に施すことを含む、BCMAを発現する免疫細胞によって媒介される免疫障害を有するか、またはそれを有するリスクにある患者の治療方法をさらに提供する。任意選択で、障害は、B細胞媒介障害である。任意選択で、免疫障害は、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、血小板減少性紫斑病、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、グレーブス病、原発性胆汁性肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、結核、及び移植片対宿主病である。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ATCC PTC-6937として寄託される抗体のヒト化形態、キメラ形態、またはベニヤ形態である、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはベニヤ抗体。
(項目2)
hSG16.17 VH3(配列番号13)と少なくとも90%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域と、hSG16.17 VK2(配列番号19)と少なくとも90%の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域と、を含む、項目1に記載の抗体。
(項目3)
hSG16.17 VH3(配列番号13)と少なくとも95%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域と、hSG16.17 VK2(配列番号19)と少なくとも95%の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域と、を含む、項目2に記載の抗体。
(項目4)
hSG16.17 VH3(配列番号13)の3つのKabat CDR(配列番号60~62)と、hSG16.17 VK2(配列番号19)の3つのKabat CDR(配列番号90~92)と、を含むが、但し、位置H58が、NまたはKにより占められ得、位置H60が、AまたはNにより占められ得、位置H61が、QまたはEにより占められ得、位置H62が、KまたはNにより占められ得、位置H64が、QまたはKにより占められ得、位置H65が、GまたはTにより占められ得、位置L24が、RまたはLにより占められ得、位置L53が、SまたはRにより占められ得ることを条件とする、項目1~3のいずれかに記載の抗体。
(項目5)
hSG16.17 VH3(配列番号13)の3つのKabat CDR(配列番号60~62)と、hSG16.17 VK2(配列番号19)の3つのKabat CDR(配列番号90~92)と、を含む、項目1~4のいずれかに記載の抗体。
(項目6)
位置H20、H48、H69、H71、H73、H76、H80、H88、H91、及びH93が、それぞれ、L、I、M、A、K、N、V、A、F、及びTにより占められ、位置L46、L48、及びL87が、それぞれ、V、V、及びFにより占められる、項目1~5のいずれかに記載の抗体。
(項目7)
前記成熟重鎖可変が、前記hSG16.17 VH3(配列番号13)の配列を有し、前記成熟軽鎖可変領域が、前記hSG16.17 VK2(配列番号19)の配列を有する、項目1に記載の抗体。
(項目8)
前記成熟重鎖可変領域が重鎖定常領域に融合し、前記成熟軽鎖可変領域が軽鎖定常領域に融合している、項目1~7のいずれかに記載の抗体。
(項目9)
前記重鎖定常領域が、天然のヒト定常領域の突然変異形態であり、前記突然変異形態のFcγ受容体への結合が、前記天然のヒト定常領域と比較して減少している、項目6に記載の抗体。
(項目10)
前記重鎖定常領域が、IgG1アイソタイプの重鎖定常領域である、項目8または9に記載の抗体。
(項目11)
前記重鎖定常領域が、配列番号5を含むアミノ酸配列を有し、前記軽鎖定常領域が、配列番号3を含むアミノ酸配列を有する、項目8に記載の抗体。
(項目12)
前記重鎖定常領域が、配列番号7(S239C)を含むアミノ酸配列を有し、前記軽鎖定常領域が、配列番号3を含むアミノ酸配列を有する、項目8に記載の抗体。
(項目13)
裸抗体である、項目1~12のいずれかに記載の抗体。
(項目14)
前記抗体が、細胞傷害性薬または細胞増殖抑制薬と複合体化される、項目1~12のいずれかに記載の抗体。
(項目15)
前記抗体が、細胞傷害性薬と複合体化される、項目14に記載の抗体。
(項目16)
前記細胞傷害性薬が、酵素で切断可能なリンカーを介して前記抗体と複合体化される、項目15に記載の抗体。
(項目17)
前記細胞傷害性薬が、DNA小溝結合剤である、項目15または16に記載の抗体。
(項目18)
前記細胞傷害性薬が、下式
【化1】
を有する、項目17に記載の抗体。
(項目19)
前記細胞傷害性薬が、MMAEまたはMMAFである、項目15または16に記載の抗体。
(項目20)
項目1~19のいずれかに記載の抗体と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
(項目21)
BCMAを発現する癌を有するか、またはそれを有するリスクにある患者の治療方法であって、項目1~20のいずれかに記載の抗体の有効なレジメンを前記患者に施すことを含む、方法。
(項目22)
前記癌が血液癌である、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記血液癌が、骨髄腫、白血病、またはリンパ腫である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記血液癌が、多発性骨髄腫である、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記血液癌が、非ホジキンリンパ腫(NHL)またはホジキンリンパ腫である、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記血液癌が、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖症候群(MPS)、ワンデンストレームマクログロブリン血症、またはバーキットリンパ腫である、項目22に記載の方法。
(項目27)
BCMAを発現する免疫細胞によって媒介される免疫障害を有するか、またはそれを有するリスクにある患者の治療方法であって、項目1~26のいずれかに記載のヒト化抗体の有効なレジメンを前記患者に施すことを含む、方法。
(項目28)
B細胞媒介障害である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記免疫障害が、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、血小板減少性紫斑病、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、グレーブス病、原発性胆汁性肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、結核、及び移植片対宿主病である、項目27に記載の方法。
(項目30)
配列番号23の成熟重鎖可変領域及び配列番号33の成熟軽鎖可変領域を有するラットSG16.45抗体のヒト化形態、キメラ形態、またはベニヤ形態である、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはベニヤ抗体。
(項目31)
hSG16.45 VH5(配列番号31)と少なくとも90%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域と、hSG16.45 VK2(配列番号36)と少なくとも90%の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域と、を含む、項目30に記載の抗体。
(項目32)
hSG16.45 VH5(配列番号31)と少なくとも95%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域と、hSG16.45 VK2(配列番号36)と少なくとも95%の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域と、を含む、項目31に記載の抗体。
(項目33)
hSG16.45 VH5(配列番号31)の3つのKabat CDR(配列番号152~154)と、hSG16.45 VK2(配列番号36)の3つのKabat CDR(配列番号179~181)と、を含むが、但し、位置H50が、AまたはSにより占められ得、位置L24が、RまたはLにより占められ得、位置L26が、SまたはTにより占められ得ることを条件とする、項目30~32のいずれかに記載の抗体。
(項目34)
hSG16.45 VH5(配列番号31)の3つのKabat CDR(配列番号152~154)と、hSG16.45 VK2(配列番号36)の3つのKabat CDR(配列番号179~181)と、を含む、項目30~33のいずれかに記載の抗体。(項目35)
位置H30、H93、及びH94が、それぞれ、N、T、及びSにより占められる、項目30~34のいずれか1項に記載の抗体。
(項目36)
前記成熟重鎖可変領域が、hSG16.45 VH5(配列番号31)の配列を有し、前記成熟軽鎖可変領域が、hSG16.45 VK2(配列番号36)の配列を有するか、または前記成熟重鎖可変領域が、hSG16.45 VH1(配列番号27)の配列を有し、前記成熟軽鎖可変領域が、hSG16.45 VK1(配列番号35)の配列を有するか、または前記成熟重鎖可変領域が、hSG16.45 VH1(配列番号27)の配列を有し、前記成熟軽鎖可変領域が、hSG16.45 VK3(配列番号37)の配列を有する、項目30に記載の抗体。
(項目37)
前記成熟重鎖可変領域が重鎖定常領域に融合し、前記成熟軽鎖可変領域が軽鎖定常領域に融合している、項目30~36のいずれか1項に記載の抗体。
(項目38)
前記重鎖定常領域が、天然のヒト定常領域の突然変異形態であり、前記突然変異形態のFcγ受容体への結合が、前記天然のヒト定常領域と比較して減少している、項目37に記載の抗体。
(項目39)
前記重鎖定常領域が、IgG1アイソタイプの重鎖定常領域である、項目37または38に記載の抗体。
(項目40)
前記重鎖定常領域が、配列番号5を含むアミノ酸配列を有し、前記軽鎖定常領域が、配列番号3を含むアミノ酸配列を有する、項目37に記載の抗体。
(項目41)
前記重鎖定常領域が、配列番号7(S239C)を含むアミノ酸配列を有し、前記軽鎖定常領域が、配列番号3を含むアミノ酸配列を有する、項目37に記載の抗体。
(項目42)
裸抗体である、項目30~41のいずれか1項に記載の抗体。
(項目43)
前記抗体が、細胞傷害性薬または細胞増殖抑制薬と複合体化される、項目30~41のいずれか1項に記載の抗体。
(項目44)
前記抗体が、細胞傷害性薬と複合体化される、項目43に記載の抗体。
(項目45)
前記細胞傷害性薬が、酵素で切断可能なリンカーを介して前記抗体と複合体化される、項目44に記載の抗体。
(項目46)
前記細胞傷害性薬が、DNA小溝結合剤である、項目43または44に記載の抗体。
(項目47)
前記細胞傷害性薬が、下式
【化2】
を有する、項目46に記載の抗体。
(項目48)
前記細胞傷害性薬が、MMAEまたはMMAFである、項目44または45に記載の抗体。
(項目49)
重鎖定常領域のEU位置297のasn残基のN-グルコシド連結糖鎖の5%未満が、フコースまたはその類似体を含み、これらの中で前記抗体を発現する細胞が前記抗体のフコシル化を低減するように培養される、項目1~48のいずれかに記載の抗体。
(項目50)
項目30~48のいずれか1項に記載の抗体と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
(項目51)
BCMAを発現する癌を有するか、またはそれを有するリスクにある患者の治療方法であって、項目30~49のいずれか1項に記載のヒト化抗体の有効なレジメンを前記患者に施すことを含む、方法。
(項目52)
前記癌が血液癌である、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記血液癌が、骨髄腫、白血病、またはリンパ腫である、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記血液癌が、多発性骨髄腫である、項目52に記載の方法。
(項目55)
前記血液癌が、非ホジキンリンパ腫(NHL)またはホジキンリンパ腫である、項目52に記載の方法。
(項目56)
前記血液癌が、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖症候群(MPS)、ワンデンストレームマクログロブリン血症、またはバーキットリンパ腫である、項目52に記載の方法。
(項目57)
BCMAを発現する免疫細胞によって媒介される免疫障害を有するか、またはそれを有するリスクにある患者の治療方法であって、項目1~56のいずれかに記載の抗体の有効なレジメンを前記患者に施すことを含む、方法。
(項目58)
B細胞媒介障害である、項目56に記載の方法。
(項目59)
前記免疫障害が、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、血小板減少性紫斑病、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、グレーブス病、原発性胆汁性肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、結核、及び移植片対宿主病である、項目56に記載の方法。
(項目60)
ヒトBCMAタンパク質に特異的に結合するヒト化抗体であって、hSG16.17 VH3(配列番号13)と少なくとも90%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域と、hSG16.17 VK2(配列番号19)と少なくとも90%の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域と、を含む、ヒト化抗体。
(項目61)
hSG16.17 VH3(配列番号13)と少なくとも95%の配列同一性を有する成熟重鎖可変領域と、hSG16.17 VK2(配列番号19)と少なくとも95%の配列同一性を有する成熟軽鎖可変領域と、を含む、項目60に記載の抗体。
(項目62)
hSG16.17 VH3(配列番号13)の3つのKabat CDR(配列番号60~62)と、hSG16.17 VK2(配列番号19)の3つのKabat CDR(配列番号90~92)と、を含むが、但し、位置H58が、NまたはKにより占められ得、位置H60が、AまたはNにより占められ得、位置H61が、QまたはEにより占められ得、位置H62が、KまたはNにより占められ得、位置H64が、QまたはKにより占められ得、位置H65が、GまたはTにより占められ得、位置L24が、RまたはLにより占められ得、位置L53が、SまたはRにより占められ得ることを条件とする、項目60に記載の抗体。
(項目63)
hSG16.17 VH3(配列番号13)の3つのKabat CDR(配列番号60~62)と、hSG16.17 VK2(配列番号19)の3つのKabat CDR(配列番号90~92)と、を含む、項目60に記載の抗体。
(項目64)
位置H20、H48、H69、H71、H73、H76、H80、H88、H91、及びH93が、それぞれ、L、I、M、A、K、N、V、A、F、及びTにより占められ、位置L46、L48、及びL87が、それぞれ、V、V、及びFにより占められる、項目60に記載の抗体。
(項目65)
前記成熟重鎖可変が、hSG16.17 VH3(配列番号13)の配列を有し、前記成熟軽鎖可変領域が、hSG16.17 VK2(配列番号19)の配列を有する、項目60に記載の抗体。
(項目66)
前記成熟重鎖可変領域が重鎖定常領域に融合し、前記成熟軽鎖可変領域が軽鎖定常領域に融合している、項目60に記載の抗体。
(項目67)
前記成熟重鎖可変領域が重鎖定常領域に融合し、前記成熟軽鎖可変領域が軽鎖定常領域に融合している、項目65に記載の抗体。
(項目68)
項目67に記載の抗体と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
(項目69)
前記抗体の約10%未満が、フコースまたはフコース類似体によるコアフコシル化を有する、項目68の薬学的組成物。
(項目70)
前記抗体の約5%未満が、フコースまたはフコース類似体によるコアフコシル化を有する、項目68の薬学的組成物。
(項目71)
前記抗体の約2%が、フコースまたはフコース類似体によるコアフコシル化を有する、項目69の薬学的組成物。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1B】BCMAの細胞外ドメインのBAFFとの構造的相互作用を示す。
【
図3】クローニングされていないハイブリドーマウェルの細胞結合データ及びリガンド遮断活性を示す。
【
図4】抗BCMA抗体の遮断活性/阻害パーセントを示す。
【
図5】抗BCMA抗体で滴定されたAPRIL遮断の阻害を示す。
【
図6】抗BCMA抗体を使用したBAFF遮断の滴定を示す。
【
図7】ヒトVHアクセプター配列HV1~2/HJ3を有するhSG16.17重鎖変異型の整合を示す。これは、Kabat CDR(配列番号39~41)及びIMGT CDR(配列番号42及び43)を有するラットSG16.17 vH(配列番号8)、Kabat CDR(配列番号44及び45)及びIMGT CDR(配列番号46及び「AR」)を有するHu HV1~2/HJ3(配列番号9)、Kabat CDR(配列番号50~52)及びIMGT CDR(配列番号53及び54)を有するhSG16.17 vH1(配列番号11)、Kabat CDR(配列番号55~57)及びIMGT CDR(配列番号58及び59)を有するhSG16.17 vH2(配列番号12)、Kabat CDR(配列番号60~62)及びIMGT CDR(配列番号63及び64)を有するhSG16.17 vH3(配列番号13)、ならびにKabat CDR(配列番号65~67)及びIMGT CDR(配列番号68及び69)を有するhSG16.17 vH4(配列番号14)を示す。
【
図8】ヒトVHアクセプター配列HV1~46/HJ3を有するhSG16.17重鎖変異型の整合を示す。これは、Kabat CDR(配列番号39~41)及びIMGT CDR(配列番号42及び43)を有するラットSG16.17 vH(配列番号8)、Kabat CDR(配列番号47及び48)及びIMGT CDR(配列番号49及び「AR」)を有するHu HV1~46/HJ3(配列番号10)、Kabat CDR(配列番号70~72)及びIMGT CDR(配列番号73及び74)を有するhSG16.17 vH5(配列番号15)、ならびにKabat CDR(配列番号75~77)及びIMGT CDR(配列番号78及び79)を有するhSG16.17 vH6(配列番号16)の配列を示す。
【
図9】hSG16.17重鎖変異型の整合を示す。これは、SG16.17 vH1~6(配列番号11~16)の配列を示す。
【
図10】ヒトVKアクセプター配列KV1~12/KJ5を有するhSG16.17軽鎖変異型の整合を示す。これは、Kabat CDR(配列番号80~82)及びIMGT CDR(それぞれ、配列番号83、「TTS」及び配列番号84)を有するラットSG16.17 vK(配列番号17)、Kabat CDR(配列番号85~87)及びIMGT CDR(それぞれ、配列番号88、「AAS」、及び配列番号89)を有するHu KV1-12/KJ5(配列番号18)、Kabat CDR(配列番号90~92)及びIMGT CDR(それぞれ、配列番号93、「TTS」及び配列番号94)を有するhSG16.17 vK2(配列番号19)、Kabat CDR(配列番号95~97)及びIMGT CDR(それぞれ、配列番号98、「TTS」、及び配列番号99)を有するhSG16.17 vK3(配列番号20)、Kabat CDR(配列番号100~102)及びIMGT CDR(それぞれ、配列番号103、「TTS」、及び配列番号104)を有するhSG16.17 vK4(配列番号21)、ならびにKabat CDR(配列番号105~107)及びIMGT CDR(それぞれ、配列番号108、「TTS」、及び配列番号109)を有するhSG16.17 vK5(配列番号22)の配列を示す。
【
図11】hSG16.17軽鎖変異型の整合を示す。これは、hSG16.17 vK2、vK3、vK4、vK5(配列番号19~22)の配列を示す。
【
図12】キメラSG16.17のヒトFcRIIIaへの結合を示す競合結合アッセイを示す。
【
図13】キメラSG16.17がFcγRIIIAを通してシグナル伝達を誘導することを示す。
【
図14】ヒトHVアクセプター配列HV3~23/HJ3を有するhSG16.45重鎖変異型の整合を示す。これは、Kabat CDR(配列番号110~112)及びIMGT CDR(配列番号113~115)を有するラットSG16.45 vH(配列番号23)、Kabat CDR(配列番号116及び117)及びIMGT CDR(それぞれ、配列番号118及び119、ならびに「AK」)を有するHu HV3-23/HJ3(配列番号24)、Kabat CDR(配列番号128~130)及びIMGT CDR(配列番号131~133)を有するhSG16.45 vH1(配列番号27)、Kabat CDR(配列番号134~136)及びIMGT CDR(配列番号137~139)を有するhSG16.45 vH2(配列番号28)、Kabat CDR(配列番号140~142)及びIMGT CDR(配列番号143~145)を有するhSG16.45 vH3(配列番号29)、ならびにKabat CDR(配列番号146~148)及びIMGT CDR(配列番号149~151)を有するhSG16.45 vH4(配列番号30)の配列を示す。
【
図15】ヒトHVアクセプター配列HV3~74/HJ3を有するhSG16.45重鎖変異型の整合を示す。これは、Kabat CDR(配列番号110~112)及びIMGT CDR(配列番号113~115)を有するラットSG16.45 vH(配列番号23)、Kabat CDR(配列番号120及び121)及びIMGT CDR(それぞれ、配列番号122及び123、ならびに「AR」)を有するHu HV3~74/HJ3(配列番号25)、Kabat CDR(配列番号152~154)及びIMGT CDR(配列番号155~157)を有するhSG16.45 vH5(配列番号31)の配列を示す。
【
図16】ヒトHVアクセプター配列HV3~9/HJ3を有するhSG16.45重鎖変異型の整合を示す。これは、Kabat CDR(配列番号110~112)及びIMGT CDR(配列番号113~115)を有するラットSG16.45 vH(配列番号23)、Kabat CDR(配列番号124及び125)及びIMGT CDR(それぞれ、配列番号126及び127、ならびに「AR」)を有するHu HV3~9/HJ3(配列番号26)、Kabat CDR(配列番号158~160)及びIMGT CDR(配列番号161~163)を有するhSG16.45 vH6(配列番号32)の配列を示す。
【
図17】hSG16.45重鎖変異型の整合を示す。これは、hSG16.45 vH1~6(配列番号27~32)の配列を示す。
【
図18】ヒトKVアクセプター配列KV3~20/KJ2を有するhSG16.45軽鎖変異型の整合を示す。これは、Kabat CDR(配列番号164~166)及びIMGT CDR(それぞれ、配列番号167、「STS」、及び配列番号168)を有するラットSG16.45 vK(配列番号33)、Kabat CDR(配列番号169~171)及びIMGT CDR(それぞれ、配列番号172、「STS」、及び配列番号173)を有するHu KV3~20/KJ2(配列番号34)、Kabat CDR(配列番号174~176)及びIMGT CDR(それぞれ、配列番号177、「STS」、及び配列番号178)を有するhSG16.45 vK1(配列番号35)、Kabat CDR(配列番号179~181)及びIMGT CDR(それぞれ、配列番号182、「STS」、及び配列番号183)を有するhSG16.45 vK2(配列番号36)、Kabat CDR(配列番号184~186)及びIMGT CDR(それぞれ、配列番号187、「STS」、及び配列番号188)を有するhSG16.45 vK3(配列番号37)、ならびにKabat CDR(配列番号189~191)及びIMGT CDR(それぞれ、配列番号192、「STS」、及び配列番号193)を有するhSG16.45 vK5(配列番号38)の配列を示す。
【
図19】hSG16.45軽鎖変異型の整合を示す。これは、hSG16.45 vK1、vK2、vK3、vK5(配列番号35~38)の配列を示す。
【
図20】SCIDマウスのMM1S播種性腫瘍モデルにおける複数回投与されたhSG16.17-SEAのインビボ活性を示す。
【
図21】NSGマウスのEJM播種性腫瘍モデルにおける単回投与されたhSG16.17-SEAのインビボ活性を示す。
【
図22】NSGマウスのNCI-H929-ルシフェラーゼ播種性腫瘍モデルにおける複数回投与されたhSG16.17-SEAのインビボ活性を示す。
【
図23】NSGマウスのNCI-H929-ルシフェラーゼ播種性腫瘍モデルにおける単回投与されたhSG16.17-SEAのインビボ活性を示す。
【
図24】SCIDマウスのMOLP-8-ルシフェラーゼ播種性腫瘍モデルにおける単回投与されたhSG16.17-SEAのインビボ活性を提供する。
【
図25】MM1R標的細胞上のSG16.17 SEA抗体のADCC活性を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
「単離された」抗体は、特定され、その天然環境の構成成分から分離及び/もしくは回収された抗体、ならにび/または組換え産生される抗体を指す。「精製された抗体」は、典型的には、その産生または精製から生じる妨害タンパク質及び他の汚染物の少なくとも50%w/w純粋である抗体であるが、そのモノクローナル抗体がその使用を容易にすることを意図した過剰の薬学的に許容される担体(複数可)または他のビヒクルと組み合わされる可能性を除外しない。妨害タンパク質及び他の汚染物は、例えば、抗体が単離されるか、または組換え産生される細胞の細胞構成成分を含み得る。モノクローナル抗体は、産生または精製からの妨害タンパク質及び汚染物から少なくとも60%、70%、80%、90%、95、または99%w/w純粋である場合がある。ラット抗体、キメラ抗体、ベニヤ抗体、及びヒト化抗体を含む本明細書に記載される抗体は、単離された形態及び/または精製された形態で提供され得る。
【0016】
「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体、即ち、集団を含む個々の抗体が微量で存在し得る可能な天然に生じる突然変異を除き同一である集団から得られた抗体を指す。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体の集団から得られたときの抗体の性質を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されないものとする。例えば、本発明に従い使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler et al.(1975)Nature 256:495により記載されたハイブリドーマ法により作製され得るか、または組換えDNA法により(例えば、米国特許第4816567号を参照されたい)作製され得る。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson
et al.(1991)Nature,352:624-628及びMarks et al.(1991)J.Mol.Biol.,222:581-597に記載される技法を使用して、ファージ抗体ライブラリからも単離され得るか、または他の方法により作製され得る。本明細書に記載される抗体は、モノクローナル抗体である。
【0017】
モノクローナル抗体の、その標的抗原への特異的結合は、少なくとも106、107、108、109、または1010 M-1の親和性を意味する。特異的結合は、検出可能に規模が高く、少なくとも1つの無関係の標的に生じる非特異的結合から区別可能である。特異的結合は、特定の官能基間の結合の形成または特定の空間的適合(例えば、ロック・アンド・キータイプ)の結果であり得るが、非特異的結合は通常、ファンデルワールス力の結果である。
【0018】
基本的な抗体構造単位は、サブユニットの四量体である。各四量体は、2つの同一のポリペプチド鎖の対を含み、各対は、1つの「軽」鎖(約25kDa)及び1つの「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識に関与する約100~110個以上のアミノ酸の可変領域を含む。切断可能なシグナルペプチドに連結されたこの可変領域が最初に発現される。シグナルペプチドを有しない可変領域は、時折、成熟可変領域と称される。よって、例えば、軽鎖成熟可変領域は、軽鎖シグナルペプチドを有しない軽鎖可領域を意味する。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を画定する。
【0019】
軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかに分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはエプシロンに分類され、それぞれ、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEとして抗体のアイソタイプを定義する。軽鎖及び重鎖内で、可変及び定常領域は、約12個以上のアミノ酸の「J」領域により結合され、重鎖も約10個以上のアミノ酸の「D」領域を含む。(一般的に、Fundamental Immunology(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.,1989,Ch.7を参照されたい、全ての目的に関してその全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0020】
各軽鎖/重鎖対の成熟可変領域は、抗体結合部位を形成する。よって、無傷抗体は2つの結合部位を有する。二重機能性または二重特異性抗体の場合を除き、2つの結合部位は同じである。鎖は全て、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域により結合された、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を呈する。各対の2本の鎖からのCDRは、フレームワーク領域により整合され、特定のエピトープへの結合を可能にする。N末端からC末端まで、軽鎖及び重鎖の両方は、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat,Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health,Bethesda,MD,1987 and 1991)もしくはChothia&Lesk,J.Mol.Biol.342:878-883(1987);Chothia et al.,Nature 342:878-883(1989)の定義、Kabat and 及びChothiaの混合、またはIMGT、AbM、もしくはContact、または他のCDRの従来の定義に従う。Kabatは、異なる重鎖間または異なる軽鎖間の対応する残基が同じ番号を割り当てられる、広く使用されている番付規則(Kabat番付)も提供する。別途文脈から明らかでない限り、Kabat番付は、可変領域のアミノ酸の位置を指定するために使用される。別途文脈から明らかでない限り、EU番付は、定常領域のアミノ酸の位置を指定するために使用される。
【0021】
「抗体」という用語は、無傷抗体及びその抗原結合断片を含む。典型的には、抗体断片は、それらが別個の重鎖、軽鎖 Fab、Fab’、F(ab’)2、F(ab)c、ダイアボディ、Dabs、ナノボディ、及びFvを含む標的への特異的結合について得られた無傷抗体と競合する。断片は、組換えDNA技術により、または無傷免疫グロブリンの酵素もしくは化学分離により産生され得る。「抗体」という用語は、二重特異性抗体または同様のものであるダイアボディ(ホモ二量体Fv断片)またはミニボディ(VL-VH-CH3)も含む。二重特異性または二重機能性抗体は、2つの異なる重/軽鎖対、及び2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である(例えば、Songsivilai and Lachmann,Clin.Exp.Immunol.,79:315-321(1990)、Kostelny et al.,J.Immunol.,148:1547-53(1992)を参照されたい)。
【0022】
「抗体」という用語は、単独の抗体(「裸抗体」)または細胞傷害性薬もしくは細胞増殖抑制薬と複合体化された抗体を含む。
【0023】
キメラ抗体は、非ヒト抗体(例えば、マウス)の軽鎖及び重鎖の成熟可変領域がヒト軽鎖及び重鎖定常領域と組み合わされる抗体である。かかる抗体は、実質的にまたは完全にマウス抗体の結合特異性を保持し、約3分の2がヒト配列である。
【0024】
ベニヤ抗体は、一部の及び通常全てのCDR、ならびに非ヒト抗体の一部の非ヒト可変領域フレームワーク残基を保持するが、B細胞またはT細胞エピトープに寄与し得る他の可変領域フレームワーク残基、例えば、曝露された残基(Padlan,Mol.Immunol.28:489,1991)をヒト抗体配列の対応する位置からの残基で代置するヒト化抗体の種類である。結果は、CDRが完全にまたは実質的に非ヒト抗体からであり、非ヒト抗体の可変領域フレームワークが置換によってよりヒトのようになる抗体である。
【0025】
「エピトープ」という用語は、抗体が結合する抗原上の部位を指す。エピトープは、隣接するアミノ酸、または1つ以上のタンパク質の3次折り畳みが並置される隣接しないアミノ酸から形成され得る。隣接するアミノ酸から形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒への曝露で保持され、一方で3次折り畳みによって形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒による処理で失われる。エピトープは、典型的には、少なくとも3個、さらに通常は少なくとも5個または8~10個のアミノ酸を、固有の空間的構造で含む。エピトープの空間的構造を決定するための方法としては、例えば、X線結晶学及び2次元核磁気共鳴が挙げられる。例えば、Epitope Mapping Protocols,in Methods in Molecular Biology,Vol.66,Glenn E.Morris,Ed.(1996)を参照されたい。
【0026】
同じであるかまたは重複しているエピトープを認識する抗体は、一方の抗体が標的抗原への他方の抗体の結合と競合する能力を示す単純な免疫アッセイにおいて特定することができる。抗体のエピトープも、接触残基を特定するためのその抗原に結合した抗体のX線結晶学によって定義することができる。代替的に、2つの抗体は、一方の抗体の結合を低減または排除する抗原における全てのアミノ酸突然変異が他方の結合を低減または排除する場合に、同じエピトープを有する。2つの抗体は、一方の抗体の結合を低減または排除するいくつかのアミノ酸突然変異が他方の結合を低減かまたは排除する場合に、重複しているエピトープを有する。
【0027】
抗体間の競合は、試験されている抗体が参照抗体の共通抗原への特異的結合を阻害するアッセイによって決定される(例えば、Junghans et al.,Cancer
Res.50:1495,1990を参照されたい)。試験抗体は、競合結合アッセイにおいて測定されるとき、過剰な試験抗体(例えば、少なくとも2×、5×、10×、20×、または100×)が参照抗体の結合を少なくとも50%、しかし好ましくは75%、90%、または99%阻害する場合に、参照抗体と競合する。競合アッセイによって特定された抗体(競合抗体)は、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、及び立体障害が生じるように参照抗体によって結合されるエピトープに十分近位にある隣接するエピトープに結合する抗体を含む。ヒトBCMAタンパク質への結合に関してh2H12抗体と競合する抗体は、本開示に含まれる。
【0028】
「患者」という用語は、予防的または治療的処置のいずれかを受けるヒト及び他の哺乳類対象を含む。
【0029】
アミノ酸置換を保存または非保存に分類する目的に関して、アミノ酸は、以下のようにグループ分けされる:グループI(疎水性側鎖):met、ala、val、leu、ile;グループII(中性親水性側鎖):cys、ser、thr;グループIII(酸性側鎖):asp、glu;グループIV(塩基性側鎖):asn、gln、his、lys、arg;グループV(鎖配向に影響を及ぼす残基):gly、pro;及びグループVI(芳香族側鎖):trp、tyr、phe。保存的置換は、同じクラスのアミノ酸間の置換を伴う。非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のメンバーと交換することに相当する。
【0030】
配列同一性パーセントは、Kabat番付規則により最大限に整合された抗体配列により決定される。整合後、対象抗体領域(例えば、重鎖または軽鎖の成熟可変領域全体)が参照抗体の同じ領域と比較される場合、対象と参照抗体領域との間の配列同一性パーセントは、対象及び参照抗体領域の両方において同じアミノ酸により占められる位置の数を、2つの領域の整合された位置の総数で除し(ギャップは数えられない)、100を乗じてパーセントに変換する。
【0031】
1つ以上の列記される要素を「含む」組成物または方法は、具体的に列記されない他の要素を含み得る。例えば、抗体を含む組成物は、抗体のみを含むか、または他の成分との組み合わせであり得る。
【0032】
値の範囲の表示は、範囲内または範囲を定義する全ての整数を含む。
【0033】
抗体エフェクター機能は、IgのFcドメイン(複数可)が寄与する機能を指す。かかる機能は、例えば、抗体依存性細胞傷害性、抗体依存性細胞食作用、または補体依存性細胞傷害性であり得る。かかる機能は、例えば、食作用もしくは溶解活性を有する免疫細胞上でのFcエフェクタードメイン(複数可)のFc受容体への結合によって、またはFcエフェクタードメイン(複数可)の補体系の構成成分への結合によって引き起こされ得る。典型的には、Fc結合細胞または補体構成成分が媒介する作用(複数可)により、BCMA標的細胞の阻害及び/または欠乏がもたらされる。抗体のFc領域は、Fc受容体(FcR)発現細胞を動員し、それらを抗体でコーティングされた標的細胞と並置し得る。FcγRIII(CD16)、FcγRII(CD32)、及びFcγRIII(CD64)を含む、IgGに対する表面FcRを発現している細胞は、IgGでコーティングされた細胞を破壊するためのエフェクター細胞として作用し得る。かかるエフェクター細胞としては、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及び好酸球が挙げられる。IgGによってFcγRが会合することで、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)または抗体依存性細胞食作用(ADCP)が活性化される。ADCCは、膜孔形成タンパク質及びプロテアーゼの分泌を通してCD16+エフェクター細胞によって媒介され、一方で食作用は、CD32+及びCD64+エフェクター細胞によって媒介される(Fundamental Immunology,4th ed.,Paul ed.,Lippincott-Raven,N.Y.,1997,Chapters 3,17
and 30、Uchida et al.,J.Exp.Med.199:1659-69、Akewanlop et al.,2001,Cancer Res.61:4061-65、Watanabe et al.,1999,Breast Cancer Res.Treat. 53:199-207を参照されたい)。ADCC及びADCPに加えて、細胞に結合した抗体のFc領域も、補体古典的経路を活性化して、補体依存性細胞傷害性(CDC)を誘発することができる。補体系のC1qは抗体のFc領域に結合し、この結合は、それらが抗原と複合体化されるときに生じる。C1qが細胞に結合した抗体に結合することで、C4及びC2のタンパク質分解活性化に関与する事象のカスケードが始動し、C3転換酵素を生成し得る。C3転換酵素によってC3がC3bに切断されることにより、C5b、C6、C7、C8、及びC9を含む末端補体構成成分の活性化が可能となる。まとめて、これらのタンパク質は、抗体でコーティングされた細胞上に膜攻撃複合体孔を形成する。これらの孔が、細胞膜の統合性を分断して、標的細胞を殺滅する(Immunobiology,6th ed.,Janeway et al.,Garland Science,N.Y.,2005,Chapter 2を参照されたい)。
【0034】
「抗体依存性細胞傷害性」またはADCCという用語は、抗体でコーティングされた標的細胞と溶解活性を保有する免疫細胞(エフェクター細胞とも称される)との相互作用に依存する細胞死を誘導するための機序である。かかるエフェクター細胞としては、ナチュラルキラー細胞、単球/マクロファージ、及び好中球が挙げられる。エフェクター細胞は、標的細胞に結合したIgのFcエフェクタードメイン(複数可)に、それらの抗原結合部位を介して結合する。抗体でコーティングされた標的細胞の死滅は、エフェクター細胞活性の結果として生じる。
【0035】
「抗体依存性細胞食作用」またはADCPという用語は、抗体でコーティングされた細胞が、IgのFcエフェクタードメイン(複数可)に結合する食作用免疫細胞(例えば、マクロファージ、好中球、及び樹状細胞)によって全てまたは部分的のいずれかで内在化されるプロセスを指す。
【0036】
「補体依存性細胞傷害性」またはCDCという用語は、標的に結合した抗体のFcエフェクタードメイン(複数可)が一連の酵素反応を活性化して標的細胞膜における孔の形成をもたらす、細胞死を誘導するための機序を指す。典型的には、抗原-抗体複合体、例えば、抗体でコーティングされた標的細胞上のものが、補体構成成分C1qに結合してそれを活性化し、今度はこのC1qが標的細胞死につながる補体カスケードを活性化する。補体の活性化により、白血球上の補体受容体(例えば、CR3)の結合によってADCCを促進する、標的細胞表面上の補体構成成分の堆積も生じ得る。
【0037】
「細胞傷害性作用」は、標的細胞の枯渇、排除、及び/または殺滅を指す。「細胞傷害性薬」は、細胞に対して細胞傷害作用を有する薬剤を指す。
【0038】
細胞傷害性薬は、抗体と複合体化されるか、または抗体と組み合わせて投与され得る。
【0039】
「細胞増殖抑制作用」は、細胞増殖の阻害を指す。「細胞増殖抑制薬」は、細胞に対して細胞増殖抑制作用を有することで、細胞の特定のサブセットの成長及び/または拡大を阻害する薬剤を指す。細胞増殖抑制薬は、抗体と複合体化されるか、または抗体と組み合わせて投与され得る。
【0040】
「薬学的に許容される」という用語は、米国の連邦もしくは州政府の規制機関により承認されたもしくは承認可能である、または動物、より具体的にはヒトにおいて使用するための米国薬局方もしくは他の一般的に認識されている薬局方に列記されていることを意味する。「薬学的に相溶性の成分」という用語は、抗BCMA抗体と共に対象に投与される薬学的に許容される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。
【0041】
「薬学的に許容される塩」という語句は、抗BCMA-1抗体もしくはその複合体、または抗BCMA-1抗体と投与される薬剤の薬学的に許容される有機塩もしくは無機塩を指す。例示的な塩には、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩(saccharate)、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、pトルエンスルホン酸塩、及びパモ酸塩(即ち、1,1’メチレンビス-(2ヒドロキシ3ナフトエート))が含まれる。薬学的に許容される塩は、酢酸イオン、コハク酸イオンまたは他の対イオンなどの別の分子の包含を伴ってもよい。対イオンは、親化合物上の電荷を安定させる任意の有機または無機の部分であり得る。さらに、薬学的に許容される塩は、その構造内に2つ以上の荷電原子を有し得る。複数の荷電原子が薬学的に許容される塩の一部である場合は、複数の対イオンを有し得る。したがって、薬学的に許容される塩は、1つ以上の荷電原子及び/または1つ以上の対イオンを有し得る。
【0042】
別途文脈から明らかでない限り、「約」という用語は、機能特性に対して顕著な作用を有しないごくわずかな変動(例えば、誤差または実験的測定の限度内)を包含する。
詳細な説明
【0043】
I.概要
本発明は、BCMAに特異的に結合するモノクローナル抗体を提供する。本抗体は、種々の癌及び免疫学的障害の治療及び診断、ならびにBCMAの検出に有用である。
【0044】
II.標的分子
別途記載のない限り、BCMAはヒトBCMAを意味する。例示的なヒト核酸及びアミノ酸配列は、配列番号1及び2により提供される。別途文脈から明らかでない限り、BMCAに対する参照は、タンパク質の少なくとも細胞外ドメイン(配列番号2のおよそ1~54の残基)、そして場合により、完全タンパク質を意味する。同様に、別途文脈から明らかでない限り、BAFF及びAPRIL、ならびにBCMA以外のそれらの受容体に対する参照は、例えば、Swiss Protデータベースに提供される、野生型ヒト配列を指す。
【0045】
III.本発明の抗体
結合特異性及び機能特性
SG16.17抗体は、実施例に記載されるように、ヒトBCMAに特異的に結合するラットモノクローナル抗体である。ATCC寄託は、ブダペスト条約により2005年8月15日になされた。ATCCは、10801 University Boulevard,Manassas,Va.20110-2209,USAに位置する。ATCC寄託は、受入番号PTA-6937が割り当てられた。SG16.17抗体は、BCMAのそのリガンドであるAPRIL及びBAFFの両方への結合を阻害する。SG16.17抗体は、ヒトIgG1に連結されるときにADCCを誘発し、Fcγ受容体に結合し、それを通してシグナル伝達を誘発する。SG16.17抗体は、抗体薬物複合体に組み込まれ、BCMAを発現する細胞の内部に連結された薬物を送達することもできる。SG16.45抗体は、ヒトBCMAに特異的に結合し、そのリガンドへのその結合を阻害し、BCMAを発現する細胞の内部に連結された薬物を送達することができる別のラットモノクローナル抗体である。
【0046】
本発明は、SG16.17抗体(hSG16.17、cSG16.17、またはvSG16.17と表示される)及びSG16.45(類似して表示される)のヒト化形態、キメラ形態、及びベニヤ形態を提供する。かかる抗体は、典型的には、上述のSG16.17またはSG16.45の一部または全ての特性を保持する。任意の所与の特性に関して、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはベニヤ抗体は、実験誤差内と同程度のまたは少なからずラットSG16.17またはSG16.45の特性を呈し得る。ラットSG16.17抗体のヒト化形態、キメラ形態、及びベニヤ形態の親和性(即ち、Ka)は、ラットSG16.17抗体の親和性よりも大きいか、またはヒトBCMAのラットSG16.17抗体の親和性の5倍もしくは2倍以内(即ち、それより大きい、またはそれより小さい)であり得る。好ましいヒト化、キメラ、またはベニヤSG16.17抗体は、同じエピトープに結合し、かつ/またはヒトBCMAへの結合に関してラットSG16.17抗体と競合する。ラットSG16.45抗体のヒト化形態、キメラ形態、及びベニヤ形態の親和性(即ち、Ka)は、ラットSG16.45抗体の親和性よりも大きいか、またはヒトBCMAのラットSG16.45抗体の親和性の5倍もしくは2倍以内(即ち、それより大きい、またはそれより小さい)であり得る。好ましいヒト化、キメラ、またはベニヤSG16.45抗体は、同じエピトープに結合し、かつ/またはヒトBCMAへの結合に関してラットSG16.45抗体と競合する。
【0047】
好ましいヒト化抗体、キメラ抗体、及びベニヤ抗体は、動物モデルまたは臨床試験においてインビトロで示されるように、癌(例えば、細胞の成長、転移、及び/または生物に対する致死性)またはB細胞媒介免疫障害を阻害する。
【0048】
B.抗体
ヒト化抗体は、非ヒト「ドナー」抗体からのCDRがヒト「アクセプター」抗体配列にグラフトされる遺伝子操作された抗体である(例えば、Queen,US5,530,101及び5,585,089、Winter,US5,225,539、Carter,US6,407,213、Adair,US5,859,205、ならびにFoote,US6,881,557を参照されたい)。アクセプター抗体配列は、例えば、成熟ヒト抗体配列、かかる配列の複合体、ヒト抗体配列のコンセンサス配列、または生殖系列領域配列であり得る。SG16.17のヒト化に関して、重鎖の好ましいアクセプター配列は、生殖系列VHエクソンVH1~2であり、Jエクソン(JH)に関しては、エクソンJH-3である。軽鎖に関して、好ましいアクセプター配列は、エクソンVL1~12及びJエクソンJK5である。SG16.45のヒト化に関して、好ましい重鎖アクセプター配列はHV3~23/HJ3(配列番号24)であり、好ましい軽鎖アクセプター配列はKV3~20/KJ2(配列番号34)である。
【0049】
よって、ヒト化抗体は、完全にまたは実質的に非ヒトドナー抗体ならびに可変領域フレームワーク配列及び定常領域から、存在する場合、完全にまたは実質的にヒト抗体配列からの少なくとも4つのCDRを有する抗体である。同様に、ヒト化重鎖は、完全にまたは実質的にドナー抗体重鎖ならびに重鎖可変領域フレームワーク配列及び重鎖定常領域から、存在する場合、実質的にヒト重鎖可変領域フレームワーク及び定常領域配列からの少なくとも2つ、及び通常3つ全てのCDRを有する。同様に、ヒト化軽鎖は、完全にまたは実質的にドナー抗体軽鎖ならびに軽鎖可変領域フレームワーク配列及び軽鎖定常領域から、存在する場合、実質的にヒト軽鎖可変領域フレームワーク及び定常領域配列からの少なくとも2つ、及び通常3つ全てのCDRを有する。ナノボディ及びdAb以外、ヒト化抗体は、ヒト化重鎖及びヒト化軽鎖を含む。ヒト化抗体またはヒト抗体におけるCDRは、対応する残基(Kabatにより定義されるように)の少なくとも60%、85%、90%、95%、または100%がそれぞれのCDR間で同一であるとき、実質的に非ヒト抗体において対応するCDRからであるか、またはそれに実質的に同一である。抗体鎖の可変領域フレームワーク配列または抗体鎖の定常領域は、Kabatにより定義される対応する残基の少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、または100%が同一であるとき、それぞれ、実質的にヒト可変領域フレームワーク配列またはヒト定常領域からである。
【0050】
ヒト化抗体は、マウス抗体からの6つ全てのCDR(好ましくはKabatにより定義されるが、代替的に、IMGT、Chothia、Kabat-Chothia複合、AbMもしくはContact、または他の従来の定義により定義されるように)を組み込むことが多いが、それらは、マウス抗体からの全てより少ないCDR(例えば、少なくとも4つまたは5つ)とでも作製され得る(例えば、Pascalis et al.,J.Immunol.169:3076,2002、Vajdos et al.,Journal of Molecular Biology,320:415-428,2002、Iwahashi et al.,Mol.Immunol.36:1079-1091,1999、Tamura et al,Journal of Immunology,164:1432-1441,2000)。
【0051】
ヒト可変領域フレームワーク残基からのある特定のアミノ酸は、CDR構造及び/または抗原への結合に対するそれらの可能な影響に基づく置換に関して選択され得る。かかる可能な影響の研究は、モデル化、特定の位置でのアミノ酸の特徴の検査、または特定のアミノ酸の置換もしくは突然変異誘発の作用の経験的観察によるものである。
【0052】
例えば、アミノ酸がマウス可変領域フレームワーク残基と選択されたヒト可変領域フレームワーク残基との間で異なるとき、ヒトフレームワークアミノ酸は、マウス抗体からの同等のフレームワークアミノ酸によって置換され得るが、これは、アミノ酸が、
(1)直接的に抗原に非共有結合する、
(2)CDR領域に隣接する、
(3)さもなければCDR領域と相互作用する(例えば、CDR領域の約6Å以内である)、または
(4)重鎖と軽鎖との間の相互作用を媒介するときに合理的に判断される。
【0053】
本発明は、6つの例示されるヒト化重鎖成熟可変領域(hSG16.17 VH1~6)(配列番号11~16)及び4つの例示されるヒト化軽鎖成熟可変領域(hSG16.17 VK2-5)(配列19~22)を含むラットSG16.17抗体のヒト化形態を提供する。重鎖及び軽鎖は、任意の順列で組み合わされてもよく、hSG16.17 VH1、VH3、またはVH5のいずれかを含む順列が好ましい。結合親和性、ヒト生殖系列に対する配列同一性パーセント、発現、及び単量体含量のパーセントの最良の組み合わせを有する順列は、hSG16.17 VH3 VK2であった。この抗体は、実験誤差内のラットSG16.17と類似する親和性、重鎖及び軽鎖可変領域の両方においてヒト生殖系列と85%超の配列同一性(よって、新しいINNガイドラインの「ヒト化」表示を満たす)、CHO細胞において高発現、及び高単量体比率を示す。大半の他のヒト化抗体と比較して、hSG16.17 VH3 VK2は、ヒトアクセプター残基が対応するラット残基(13)に交換される多数の可変領域フレームワーク突然変異を有するが、全体的に抗体がINNガイドラインのヒト化として分類されるのにヒト生殖系列配列に対して十分な配列同一性を有するように、Kabat CDRにおけるラット残基がヒトアクセプター配列において対応する残基に交換される多数の「順方向」CDR突然変異も有するという点で珍しい。大半の以前のヒト化抗体は、完全にドナー抗体からのKabat CDRを有した。
【0054】
本発明は、重鎖可変領域がhSG16.17 VH3(配列番号13)と少なくとも90%の同一性を示し、軽鎖可変領域がhSG16.17 VK2(配列番号19)と少なくとも90%の同一性を示す抗体を提供する。一部の抗体は、HV3と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性、及びVK2と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を示す。一部のかかる抗体は、hSG16.17 VH3(配列番号13)の3つのKabat CDR(配列番号60~62)と、hSG16.17 VK2(配列番号19)の3つのKabat CDR(配列番号90~92)とを含む。一部のかかる抗体は、hSG16.17 VH3(配列番号13)の3つのKabat CDR(配列番号60~62)と、hSG16.17 VK2(配列番号19)の3つのKabat CDR(配列番号90~92)とを含むが、但し、位置H58が、NまたはKにより占められ得、位置H60が、AまたはNにより占められ得、位置H61が、QまたはEにより占められ得、位置H62が、KまたはNにより占められ得、位置H64が、QまたはKにより占められ得、位置H65が、GまたはTにより占められ得、位置L24が、RまたはLにより占められ得、位置L53が、SまたはRにより占められ得ることを条件とする。好ましくは、位置H58、H60、H61、H62、H64、及びH65は、それぞれ、N、A、Q、K、Q、及びGにより占められ、L24及びL53は、それぞれ、R及びSにより占められる。 これらの列記される残基は、Kabat CDR内の位置を占めるヒトアクセプター配列からのアミノ酸を表す。一部の抗体は、ヒトKabat CDRにおいて、ヒトアクセプター配列からの対応する残基で代置された、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、または8つのラット残基を有する。一部の抗体において、位置H58、H60、H61、H62、H64、及びH65は、それぞれ、N、A、Q、K、Q、及びGにより占められ、L24及びL53は、それぞれ、R及びSにより占められる。一部の抗体は、可変領域ヒトアクセプター配列残基の対応するラット残基での代置を表す、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14の復帰突然変異を含む。
【0055】
一部の抗体において、位置H20、H48、H69、H71、H73、H76、H80、H88、H91、及びH93のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11が、それぞれ、L、I、M、A、K、N、V、A、F、及びTにより占められる。一部の抗体において、位置L46、L48、及びL87のうちの少なくとも1、2、または3つが、それぞれ、V、V、及びFにより占められる。一部の抗体において、位置H20、H48、H69、H71、H73、H76、H80、H88、H91、及びH93の各々は、それぞれ、L、I、M、A、K、N、V、A、F、及びTにより占められ、L46、L48、及びL87の各々は、それぞれ、V、V、及びFにより占められる。
【0056】
ヒト化抗体は例示されるhSG16.17 VH3 VK2ヒト化抗体からの任意の変形を示す限りにおいて、かかる追加の変形に関する1つの可能性は、可変領域フレームワークにおける追加の復帰突然変異である。他の例示されるヒト化重鎖または軽鎖成熟可変領域における復帰突然変異された位置のいずれかまたは全ては、Rにより示されるH8、Aにより占められるH67、及びAにより占められるH78、Sにより占められるL40、Mにより占められるL78、Dにより占められるL85(即ち、1、2、3、4、5、または6つ全て)から、または重鎖における、Nにより占められるH38、Rにより占められるH40、Kにより占められるH73、Sにより占められるH82A、及びTにより占められるH83の5つ全て、ならびに軽鎖における、Kにより占められるL3及びIにより占められるL20のうちの1つもしくは両方からも作製することができる。しかしながら、かかる追加の復帰突然変異は、それらが一般的に親和性を改善せず、より多くのマウス残基を導入することによって免疫原性のリスクが増加し得ることから、好ましくない。
【0057】
可能性のある別の変形は、マウス抗体のCDRにおけるより多くのまたはより少ない残基を、ヒトCDR配列からの、典型的には、例示されるヒト化抗体の設計に使用されるヒトアクセプター配列のCDRからの対応する残基で置換することである。一部の抗体においては、CDRの一部のみ、つまり、SDRと呼ばれる、結合に必要なCDR残基のサブセットが、ヒト化抗体における結合を保持するために必要とされる。抗原と接触しておらず、SDR中にないCDR残基は、Chothia超可変ループ(Chothia,J.Mol.Biol.196:901,1987)などの他の定義に従うCDRの外にあるKabat CDRの領域に基づき、分子モデリングにより、及び/もしくは経験的に、またはGonzales et al.,Mol.Immunol.41: 863(2004)に記載されるように特定することができる。1つ以上のドナーCDR残基が存在しない、またはドナーCDR全体が省かれる位置にあるかかるヒト化抗体では、その位置を占めているアミノ酸は、アクセプター抗体配列中の対応する位置(Kabat番付による)を占めているアミノ酸であり得る。CDRにおけるドナーアミノ酸に対するアクセプターのかかる置換をいくつ含めるかは、競合する検討事項のバランスを反映する。かかる置換は、ヒト化抗体中のマウスアミノ酸の数を減少させること、ひいては可能性のある免疫原性を減少させることに有利である可能性がある。しかしながら、置換により親和性の変化も生じ得、著しい親和性の低減は回避することが好ましい。CDR内での置換のための位置及び置換するアミノ酸も経験的に選択することができる。
【0058】
好ましくはないが、他のアミノ酸置換を、例えば、CDRと接触していないフレームワーク残基、またはさらには一部のCDRに接触している可能性のあるCDR内の残基アミノ酸中で行うことができる。変異型ヒト化配列中で行われた代置は、代置されたhSG16.17 VH3 VK2アミノに関して保存的であることが多い。好ましくは、hSG16.17 VH3 VK2に対する代置(保存的であるか否かにかかわらない)は、ヒト化mAbの結合親和性または効力、つまり、ヒトBCMAに結合し、癌細胞の成長を阻害するその能力に実質的な作用がない。
【0059】
変異型は、典型的には、hSG16.17 VH3 VK2の重鎖及び軽鎖成熟可変領域配列とは、少数(例えば、典型的には、軽鎖または重鎖成熟可変領域のいずれか、またはこれらの両方において、1、2、3、5、または10以下)の代置、欠失、または挿入で異なる。
【0060】
ヒト化重鎖及び軽鎖の他の好ましい組み合わせは、hSG16.17 VH1 VK2、VH1 VK3、VH1 VK4、VH1 VK4、VH3 VK2、VH3 VK3、VH3 VK4、及びVH3 VK5、ならびにVH5 VK2、VH5 VK3、VH5 VK4、VH5 VK5のいずれか、ならびに重鎖及び軽鎖可変領域がこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域と少なくとも90、95、96、97、98、または99%の同一性を示すヒト化抗体を含む。
【0061】
本発明は、6つの例示されるヒト化重鎖成熟可変領域(hSG16.45 VH1~6)(配列番号27~32)及び4つの例示されるヒト化軽鎖成熟可変領域(hSG16.45 VK1、2、3、及び5)(配列35~38)を含むラットSG16.45抗体のヒト化形態を提供する。重鎖及び軽鎖は、任意の順列で組み合わされてもよく、hSG16.45 VH5 VK2、VH1 VK1、及びVH1 VK5の順列が好ましい。hSG16.45 HV5 VK2は、重鎖及び軽鎖可変領域の両方においてヒト生殖系列と85%超の配列同一性(よって、新しいINNガイドラインの「ヒト化」表示を満たす)、CHO細胞において高発現、高単量体比率、ならびにラットまたはキメラSG16.45よりもわずかに少ないにもかかわらず適切な結合を示す。hSG16.45 VH5
VK2は、全体的に抗体がINNガイドラインのヒト化として分類されるのにヒト生殖系列配列に対して十分な配列同一性を有するように、Kabat CDRにおけるラット残基が、ヒトアクセプター配列において対応する残基に交換される、3つの可変領域復帰突然変異(全て重鎖において)及び3つのKabat CDR順方向突然変異を有する。
【0062】
本発明は、重鎖可変領域がhSG16.45 VH5(配列番号31)と少なくとも90%の同一性を示し、軽鎖可変領域がhSG16.45 VK2と少なくとも90%の同一性を示す抗体を提供する。一部の抗体は、hSG16.45 VH5と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性、及びVK2と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を示す。一部のかかる抗体は、hSG16.45 VH5(配列番号31)の3つのKabat CDR(配列番号152~154)と、hSG16.45 VK2(配列番号36)の3つのKabat CDR(配列番号179~181)とを含む。一部のかかる抗体は、hSG16.45 VH5(配列番号31)の3つのKabat CDR(配列番号152~154)と、hSG16.45 VK2(配列番号36)の3つのKabat CDR(配列番号179~181)とを含むが、但し、位置H50が、AまたはSにより占められ得、位置L24が、RまたはLにより占められ得、位置L26が、SまたはTにより占められ得ることを条件とする。好ましくは、位置H50はAにより占められ、位置L24及びL26はR及びSにより占められる。これらの列記される残基は、Kabat CDR内の位置を占めるヒトアクセプター配列からのアミノ酸を表す。一部の抗体は、ヒトKabat CDRにおいて、ヒトアクセプター配列からの対応する残基で代置された、少なくとも1、2、または3つのラット残基を有する。一部の抗体において、位置H50、L24、及びL26は、それぞれ、A、R、及びSにより占められる。一部の抗体は、可変領域ヒトアクセプター配列残基の対応するラット残基での代置を表す、少なくとも1、2、または3つの復帰突然変異を含む。
【0063】
一部の抗体において、位置H30、H93、及びH94のうちの少なくとも1、2、または3つが、それぞれ、N、T、及びSにより占められる。一部の抗体において、位置H30、H93、及びH94の各々は、それぞれ、N、T、及びSにより占められる。
【0064】
ヒト化抗体は例示されるhSG16.45 VH5 VK2ヒト化抗体からの任意の変形を示す限りにおいて、かかる追加の変形に関する1つの可能性は、可変領域フレームワークにおける追加の復帰突然変異である。他の例示されるヒト化重鎖または軽鎖成熟可変領域における復帰突然変異された位置のいずれかまたは全ては、それぞれ、I、I、N、及びVにより占められるH37、H48、H76、H107(即ち、1、2、3、または4つ)から、ならびに/またはそれぞれ、A、V、I、H、V、Y、及びMにより占められるL14、L19、L21、L38、L58、L71、及びL78のうちの1、2、3、4、5、6、または7つからも作製することができる。しかしながら、かかる追加の復帰突然変異は、それらが一般的に親和性を改善せず、より多くのマウス残基を導入することによって免疫原性のリスクが増加し得ることから、好ましくない。
【0065】
可能性のある別の変形は、マウス抗体のCDRにおけるより多くのまたはより少ない残基を、ヒトCDR配列からの、典型的には、例示されるヒト化抗体の設計に使用されるヒトアクセプター配列のCDRからの対応する残基で置換することである。一部の抗体においては、CDRの一部のみ、つまり、SDRと呼ばれる、結合に必要なCDR残基のサブセットが、ヒト化抗体における結合を保持するために必要とされる。抗原と接触しておらず、SDR中にないCDR残基は、Chothia超可変ループ(Chothia,J.Mol.Biol.196:901,1987)などの他の定義に従うCDRの外にあるKabat CDRの領域に基づき、分子モデリングにより、及び/もしくは経験的に、またはGonzales et al.,Mol.Immunol.41: 863(2004)に記載されるように特定することができる。1つ以上のドナーCDR残基が存在しない、またはドナーCDR全体が省かれる位置にあるかかるヒト化抗体では、その位置を占めているアミノ酸は、アクセプター抗体配列中の対応する位置(Kabat番付による)を占めているアミノ酸であり得る。CDRにおけるドナーアミノ酸に対するアクセプターのかかる置換をいくつ含めるかは、競合する検討事項のバランスを反映する。かかる置換は、ヒト化抗体中のマウスアミノ酸の数を減少させること、ひいては可能性のある免疫原性を減少させることに有利である可能性がある。しかしながら、置換により親和性の変化も生じ得、著しい親和性の低減は回避することが好ましい。CDR内での置換のための位置及び置換するアミノ酸も経験的に選択することができる。
【0066】
好ましくはないが、他のアミノ酸置換を、例えば、CDRと接触していないフレームワーク残基、またはさらには一部のCDRに接触している可能性のあるCDR内の残基アミノ酸中で行うことができる。変異型ヒト化配列中で行われた代置は、代置されたhSG16.45 VH3 VK2に関して保存的であることが多い。好ましくは、hSG16.45 VH5 VK2に対する代置(保存的であるか否かにかかわらない)は、ヒト化mAbの結合親和性または効力、つまり、ヒトBCMAに結合し、癌細胞の成長を阻害するその能力に実質的な作用がない。
【0067】
変異型は、典型的には、SG16.45 VH5 VK2の重鎖及び軽鎖成熟可変領域配列とは、少数(例えば、典型的には、軽鎖または重鎖成熟可変領域のいずれか、またはこれらの両方において、1、2、3、5、または10以下)の代置、欠失、または挿入で異なる。
【0068】
ヒト化重鎖及び軽鎖の他の好ましい組み合わせは、hSG16.45 VH1 VK4及びVH1 VK5のいずれか、ならびに重鎖及び軽鎖可変領域がこれらの抗体のいずれかの重鎖及び軽鎖可変領域と少なくとも90、95、96、97、98、または99%の同一性を示すヒト化抗体を含む。
【0069】
C.定常領域の選択
ヒト化抗体の重鎖及び軽鎖可変領域は、ヒト定常領域の少なくとも一部に連結され得る。定常領域の選択は、一部、抗体依存性細胞媒介細胞傷害性、抗体依存性細胞食作用、及び/または補体依存性細胞傷害性が所望されるかどうかに依存する。例えば、ヒトアイソタイプIgG1及びIgG3は強い補体依存性細胞傷害性を有し、ヒトアイソタイプIgG2は弱い補体依存性細胞傷害性を有し、ヒトIgG4は補体依存性細胞傷害性を欠く。ヒトIgG1及びIgG3は、ヒトIgG2及びIgG4よりも強い細胞媒介エフェクター機能も誘導する。軽鎖定常領域は、ラムダまたはカッパであり得る。抗体は、2つの軽鎖及び2つの重鎖を含む四量体として、別個の重鎖、軽鎖として、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvとして、または重鎖及び軽鎖可変ドメインがスペーサーを通して連結される単鎖抗体として発現され得る。
【0070】
ヒト定常領域は、異なる個体間でアロタイプ多様性及びイソアロタイプ多様性を示す、つまり、定常領域は1つ以上の多型位置で異なる個体において異なり得る。イソアロタイプは、イソアロタイプを認識する血清が1つ以上の他のアイソタイプの非多型領域に結合するという点でアロタイプとは異なる。例示される野生型ヒトカッパ及びIgG1定常領域配列(後者はC末端リジンを伴うか、または伴わない)は、配列番号3~5に提供される。
【0071】
重鎖のC末端リジンなどの軽鎖及び/もしくは重鎖のアミノまたはカルボキシ末端の1個またはいくつかのアミノ酸は、ある比率で、もしくは分子の全てを欠損するか、または誘導体化され得る。置換は、補体媒介細胞傷害性もしくはADCCなどのエフェクター機能を低減または増加させるために(例えば、Winterら、米国特許第5,624,821号;Tsoら、米国特許第5,834,597号;及びLazar et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:4005,2006を参照されたい)、あるいはヒトにおける半減期を延長するために(例えば、Hinton et
al.,J.Biol.Chem.279:6213,2004を参照されたい)定常領域において行われ得る。
【0072】
例示的な置換としては、アミノ酸位置234、235、237、239、267、298、299、326、330、または332で導入される天然のアミノ酸のシステイン残基へのアミノ酸置換、好ましくは、ヒトIgG1アイソタイプにおけるS239C突然変異が挙げられる(番付はEUインデックス(Kabat,Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health,Bethesda,MD,1987 and 1991)に従う、参照により本明細書に組み込まれるUS2010/0158909を参照されたい)。C末端リジンを伴う、または伴わない、S239Cを有する重鎖定常領域の配列は、配列番号6及び7により提供される。追加のシステイン残基の存在により、鎖間ジスルフィド結合形成が可能となる。かかる鎖間ジスルフィド結合形成により立体障害が生じることで、Fc領域-FcγR結合相互作用の親和性が低減し得る。IgG定常領域のFc領域で導入されるかまたはそれに近接するシステイン残基(複数可)も、治療薬との複合体化(即ち、薬物のマレイミド誘導体などのチオール特異的試薬を使用した細胞傷害性薬物の結合)のための部位として機能し得る。治療薬の存在により立体障害が生じることで、Fc領域-FcγR結合相互作用の親和性がさらに低減し得る。位置234、235、236、及び/または237のうちのいずれかにおける他の置換により、Fcγ受容体、特にFcγRI受容体に対する親和性が低減する(例えば、US6,624,821、US5,624,821を参照されたい)。突然変異の好ましい組み合わせは、S239D、A330L、及びI332Eであり、これは、FcγRIIIAのFcドメインの親和性を増加させ、したがって、ADCCを増加させる。
【0073】
抗体のインビボ半減期も、そのエフェクター機能に影響し得る。抗体の半減期を増加または減少させて、その治療活性を修飾することができる。FcRnは、β2-ミクログロブリンと非共有的に会合するMHCクラスI抗原と構造的に類似している受容体である。FcRnは、IgGの異化及び組織を横断するそれらのトランスサイトーシスを調節する(Ghetie and Ward,2000,Annu.Rev.Immunol.18:739-766、Ghetie and Ward,2002,Immunol.Res.25:97-113)。IgG-FcRn相互作用は、pH6.0(細胞内ベシクルのpH)で起きるが、pH7.4(血液のpH)では起きない。この相互作用により、IgGを循環に戻して再利用することが可能となる(Ghetie and Ward,2000,Ann.Rev.Immunol.18:739-766、Ghetie and Ward,2002,Immunol.Res.25:97-113)。 FcRn結合に関与するヒトIgG1上の領域はマッピングされている(Shields
et al.,J.Biol.Chem.276:6591-604)。ヒトIgG1の位置Pro238、Thr256、Thr307、Gln311、Asp312、Glu380、Glu382、またはAsn434におけるアラニン置換により、FcRn結合が強化される(Shields et al.,2001,J.Biol.Chem.276:6591-604)。 これらの置換を含むIgG1分子はより長い血清半減期を有する。したがって、これらの修飾されたIgG1分子は、それらのエフェクター機能を実行することができるため、未修飾のIgG1と比較してより長期間にわたってそれらの治療効果を発揮し得る。FcRnへの結合を増加させるための他の例示的な置換には、位置250のGln及び/または位置428のLeuが挙げられる。EU番付を定常領域中の全ての位置に使用する。
【0074】
保存されたAsn297に共有結合されたオリゴ糖は、IgGのFc領域がFcγRに結合する能力に関与する(Lund et al.,1996,J.Immunol.157:4963-69、Wright and Morrison,1997,Trends Biotechnol.15:26-31)。IgG上のこの糖型を操作することで、IgG媒介性ADCCを顕著に改善することができる。この糖型にN-アセチルグルコサミンの二分修飾を加えること(Umana et al.,1999,Nat.Biotechnol.17:176-180、Davies et al.,2001,Biotech.Bioeng.74:288-94)、またはこの糖型からフコースを除去すること(Shields et al.,2002,J.Biol.Chem.277:26733-40、Shinkawa et al.,2003,J.Biol.Chem.278:6591-604、Niwa et al.,2004,Cancer
Res.64:2127-33) が、IgG FcとFcγRとの間の結合を改善することでIg媒介性ADCC活性を強化する、IgG Fc操作の2つの例である。
【0075】
ヒトIgG1 Fc領域の溶媒曝露アミノ酸の全身置換により、FcγR結合親和性が改変されたIgG変異型が生成された(Shields et al.,2001,J.Biol.Chem.276:6591-604)。親IgG1と比較すると、Thr256/Ser298、Ser298/Glu333、Ser298/Lys334、またはSer298/Glu333/Lys334におけるAlaへの置換に関与するこれらの変異型のサブセットは、FcγRへの結合親和性とADCC活性との両方の増加を示す(Shields et al.,2001,J.Biol.Chem.276:6591-604;Okazaki et al.,2004,J.Mol.Biol.336:1239-49)。
【0076】
抗体の補体結合活性(C1q結合とCDC活性との両方)は、Lys326及びGlu333における置換によって改善することができる(Idusogie et al.,2001,J.Immunol.166:2571-2575)。ヒトIgG2骨格における同じ置換は、C1qに不良に結合し補体活性化活性が大幅に不足している抗体アイソタイプを、C1qへの結合とCDCの媒介との両方を行うことができるものへと変換し得る(Idusogie et al.,2001,J.Immunol.166:2571-75)。いくつかの他の方法も、抗体の補体結合活性を改善するために適用されている。例えば、IgMの18アミノ酸カルボキシル末端尾片をIgGのカルボキシル末端にグラフトすることで、それらのCDC活性が非常に強化される。これは、通常はCDC活性が検出可能でないIgG4であっても観察される(Smith et al.,1995,J.Immunol.154:2226-36)。また、IgG1重鎖のカルボキシ末端の近くに位置するSer444をCysで置換することにより、CDC活性が単量体IgG1の200倍の増加したIgG1の尾-尾二量体化が誘導された(Shopes et al.,1992,J.Immunol.148:2918-22)。加えて、C1qへの特異性を有する二重特異性ダイアボディの構築によってもCDC活性が付与される(Kontermann et al.,1997,Nat.Biotech.15:629-31)。
【0077】
補体活性は、重鎖のアミノ酸残基318、320、及び322のうちの少なくとも1つをAlaなどの異なる側鎖を有する残基に突然変異させることによって低減させることができる。3つの残基のうちのいずれか1つの代わりに、Gly、Ile、Leu、もしくはValなどの他のアルキル置換非イオン性残基、またはPhe、Tyr、Trp、及びProなどの芳香族非極性残基も、C1q結合を低減または無効にする。Ser、Thr、Cys、及びMetを残基318ではなく残基320及び322で使用して、C1q結合活性を低減または無効にすることができる。318(Glu)残基を極性残基によって代置することで、C1q結合活性を無効にせずに修飾し得る。残基297(Asn)をAlaで代置することにより、溶解活性が除去されるが、C1qに対する親和性はわずかに低減される(約3倍弱化する)だけである。この改変により、グリコシル化部位が破壊され、補体活性化に必要とされる炭水化物の存在が破壊される。この部位における任意の他の置換でも、グリコシル化は破壊される。以下の突然変異及びそれらの任意の組み合わせもC1q結合を低減する:D270A、K322A、P329A、及びP311S(WO06/036291を参照されたい)。
【0078】
ヒト定常領域への言及は、天然アロタイプにおける多型位置を占めている残基の任意の天然アロタイプまたは任意の順列を有する定常領域を含む。また、上記のものなどの突然変異が天然ヒト定常領域に対して最大1、2、5、または10個存在して、Fcγ受容体結合を低減させるか、またはFcRnへの結合を増加させてもよい。
【0079】
D.組換え抗体の発現
ヒト化抗体、キメラ抗体、またはベニヤ抗体は、典型的には、組換え発現により産生される。組換えポリヌクレオチド構築物は典型的には、自然に会合した、または異種プロモーター領域を含む、抗体鎖のコード配列に動作可能に連結された発現制御配列を含む。好ましくは、発現制御配列は、真核宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトすることが可能なベクターにおける真核プロモーター系である。ベクターが適切な宿主内に組み込まれたら、宿主は高レベルのヌクレオチド配列の発現、ならびに交差反応抗体の回収及び精製に適した条件下で維持される。
【0080】
哺乳類細胞は、免疫グロブリンまたはその断片をコードするヌクレオチドセグメントを発現するための好ましい宿主である。Winnacker,From Genes to
Clones,(VCH Publishers,NY,1987)を参照されたい。無傷異種タンパク質をスクリーニングすることが可能ないくつかの好適な宿主細胞系が当該技術分野において開発されており、CHO細胞系(例えば、DG44)、種々のCOS細胞系、HeLa細胞、HEK293細胞、L細胞、及び非抗体産生骨髄腫(Sp2/0及びNS0を含む)を含む。好ましくは、細胞は非ヒトである。これらの細胞の発現ベクターは、複製起点、プロモーター、エンハンサー(Queen et al.,Immunol.Rev.89:49,(1986))などの発現制御配列、及びリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位などの必要なプロセシング情報部位、ならびに転写終結配列を含み得る。好ましい発現制御配列は、内因性遺伝子、サイトメガロウイルス、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルスなどに由来するプロモーターである。Co et al.,J.Immunol.148:1149(1992)を参照されたい。
【0081】
発現されたら、抗体は、HPLC精製、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む、当該技術分野の標準的な手順に従い精製され得る(一般的に、Scopes,Protein Purification(Springer-Verlag,NY,1982)を参照されたい)。
【0082】
E.グルコシル化変異型
抗体は、 それらの定常領域の保存位置でグリコシル化され得る(Jefferis and Lund,(1997)Chem.Immunol.65:111-128、Wright and Morrison,(1997)TibTECH 15:26-32)。免疫グロブリンのオリゴ糖側鎖は、タンパク質の機能(Boyd et al.,(1996)Mol.Immunol. 32:1311-1318、Wittwe and Howard,(1990)Biochem.29:4175-4180)、ならびに糖タンパク質の構造及び提示される3次元表面に影響を及ぼし得る糖タンパク質の部分間の分子内相互作用(上記のHefferis and Lund、Wyss and
Wagner,(1996)Current Opin.Biotech.7:409-416)に影響を及ぼす。オリゴ糖は、特定の認識構造に基づいてある特定の分子に対する所与の糖タンパク質を標的とするようにも機能し得る。例えば、非ガラクトシル化(agalactosylated)IgGにおいて、オリゴ糖部分がCH2間の空間外に反転し、末端N-アセチルグルコサミン残基が利用可能になり、マンノース結合タンパク質に結合することが報告された。(Malhotra et al.,(1995)Nature Med.1:237-243)。グリコペプチダーゼによりチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において産生されたCAMPATH-1H(ヒトリンパ球のCDw52抗原を認識する組換えヒト化マウスモノクローナルIgG1抗体)からオリゴ糖を除去することにより、補体媒介溶解(CMCL)において完全な低減がもたらされた(Boyd et al.,(1996)Mol.Immunol.32:1311-1318)が、ノイラミニダーゼを使用するシアル酸残基の選択的除去は、DMCLの喪失をもたらさなかった。抗体のグリコシル化も抗体依存性細胞傷害性(ADCC)に影響を及ぼすことが報告された。特に、二分GlcNAcの形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼである、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)のテトラサイクリン調節された発現を伴うCHO細胞が、改善されたADCC活性を有することが報告された(Umana et al.(1999)Mature Biotech.17:176-180)。
【0083】
抗体のグリコシル化は、典型的には、N連結またはO連結のいずれかである。N連結は、炭水化物部分のアスパラギン残基の側鎖への結合を指す。トリペプチド配列のアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-スレオニン(式中、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素結合のための認識配列である。よって、ポリペプチドにおけるこれらのトリペプチド配列のうちのいずれかの存在は、可能なグリコシル化部位を創出する。O連結グリコシル化は、糖N-アセイルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの結合を指すが、5-ヒドロキシプリンまたは5-ヒドロキシリジンも使用することができる。
【0084】
抗体のグリコシル化変異型は、抗体のグリコシル化パターンが改変される変異型である。改変とは、抗体に見出される1つ以上の炭水化物部分を削除し、1つ以上の炭水化物部分を抗体に付加し、グリコシル化の組成(グリコシル化パターン)、グリコシル化の程度などを変更することを意味する。
【0085】
抗体へのグリコシル化部位の付加は、(N連結グリコシル化部位のための)上述のトリペプチド配列のうちの1つ以上を含有するようにアミノ酸配列を改変することにより達成することができる。改変は、(O連結グリコシル化部位のための)1つ以上のセリンまたはスレオニン残基の元の抗体の配列への付加によって、またはそれによる置換によっても行うことができる。同様に、グリコシル化部位の除去は、抗体の天然のグリコシル化部位内でのアミノ酸改変により達成することができる。
【0086】
アミノ酸配列は、通常、基底の核酸配列を改変することにより改変される。これらの方法は、天然源からの単離(天然に生じるアミノ酸配列変異型の場合)、またはオリゴヌクレオチド媒介(または部位特異的)突然変異誘発、PCR突然変異誘発、及び抗体の前に調製された変異型または非変異型形態のカセット突然変異誘発による調製を含む。
【0087】
抗体のグリコシル化(グリコシル化パターンを含む)も、アミノ酸配列または基底のヌクレオチド配列を改変することなく改変することができる。グリコシル化は、抗体を発現させるために使用する宿主細胞に大きく依存する。可能な治療薬としての組換え糖タンパク質、例えば、抗体の発現に使用される細胞型が天然の細胞であることは稀であり、抗体のグリコシル化パターンの顕著な変動が予想され得る。例えば、Hse et al.,(1997)J.Biol.Chem.272:9062-9070を参照のこと。宿主細胞の選択に加えて、抗体の組換え産生中のグリコシル化に影響を及ぼす要因としては、成長モード、培地配合物、培養密度、酸素負荷、pH、精製スキームなどが挙げられる。オリゴ糖の産生に関与するある特定の酵素の導入または過剰発現を含む、特定の宿主生物において達成されるグリコシル化パターンを改変するための種々の方法が提案されている(米国特許第5047335号、同第5510261号、同第5278299号)。グリコシル化、またはある特定の種類のグリコシル化は、例えば、エンドグリコシダーゼH(Endo H)を使用して、糖タンパク質から酵素的に除去され得る。加えて、組換え宿主細胞は遺伝子操作されてもよく、例えば、ある特定の種類の多糖をプロセシングする際に欠損させることができる。これら及び類似する技法が当該技術分野で周知である。
【0088】
抗体のグリコシル化構造は、炭水化物分析の従来の技法によって容易に分析することができ、これらの技法としては、レクチンクロマトグラフィー、NMR、質量分析、HPLC、GPC、単糖組成分析、連続酵素消化、及び高pHアニオン交換クロマトグラフィーを使用して、荷電に基づいてオリゴ糖を分離するHPAEC-PADが挙げられる。分析を目的としたオリゴ糖の放出方法も既知であり、限定されないが、酵素処理(一般にペプチド-N-グリコシダーゼF/エンド-β-ガラクトシダーゼを使用して行われる)、厳しいアルカリ性環境を使用して、主にO連結構造を放出する排除、及び無水ヒドラジンを使用して、N連結オリゴ糖とO連結オリゴ糖との両方を放出する化学的方法が含まれる。
【0089】
抗体のグリコシル化の修飾の好ましい形態は、低減されたコアフコシル化である。「コアフコシル化」は、N連結グリカンの還元末端におけるフコース(「フコシル化」)のN-アセチルグルコサミン(「GlcNAc」)への付加を指す。
【0090】
「N-グリコシド連結複合型糖鎖」は、典型的には、アスパラギン297(Kabatの番号に従う)に結合される。本明細書で使用される場合、N-グリコシド連結複合型糖鎖は、主に以下の構造:
【化2】
を有する二分岐複合型糖鎖を有し、式中、±は、糖分子が存在するか、または不在であってもよいことを示し、数字は、糖分子間の連結の位置を示す。上記の構造において、アスパラギンに結合する糖鎖末端は、還元末端(右記)と呼ばれ、反対側は、非還元末端と呼ばれる。フコースは通常、典型的にはα1,6結合(GlcNAcの6位がフコースの1位に連結される)により還元末端のN-アセチルグルコサミン(「GlcNAc」)に結合される。「Gal」はガラクトースを指し、「Man」はマンノースを指す。
【0091】
「N-グリコシド連結複合型糖鎖」は、1)コア構造の非還元末端側がガラクトースN-アセチルグルコサミン(「gal-GlcNAc」とも称される)の1つ以上の分岐を有し、gal-GlcNAcの非還元末端側が任意選択で、シアル酸、二分N-アセチルグルコサミンなどを有する複合型、または2)コア構造の非還元末端側が高マンノースN-グリコシド連結糖鎖及びN-グリコシド連結複合型糖鎖の両分岐を有するハイブリッド型を含む。
【0092】
一部の実施形態では、「N-グリコシド連結複合型糖鎖」は、コア構造の非還元末端側がガラクトースN-アセチルグルコサミン(「gal-GlcNAc」とも称される)の0、1つ以上の分岐を有し、Gal-GlcNAcの非還元末端側が任意選択で、シアル酸、二分N-アセチルグルコサミンなどの構造をさらにを有する複合型を含む。
【0093】
本方法によると、典型的には、少量のフコースのみがヒト化、キメラ、もしくはベニヤSG16.17またはSG16.45抗体のN-グリコシド連結複合型糖鎖(複数可)に組み込まれる。例えば、種々の実施形態では、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約3%未満の抗体の分子が、フコースによるコアフコシル化を有する。一部の実施形態では、約2%の抗体の分子がフコースによるコアフコシル化を有する。
【0094】
ある特定の実施形態では、少量のフコース類似体のみ(またはフコース類似体の代謝物または産物)が、N-グリコシド連結複合型糖鎖(複数可)に組み込まれる。例えば、種々の実施形態では、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または約3%未満のヒト化、キメラ、もしくはベニヤSG16.17またはSG16.45抗体が、フコース類似体、またはフコース類似体の代謝物もしくは産物によるコアフコシル化を有する。一部の実施形態では、約2%のヒト化、キメラ、またはベニヤSG16.17抗体が、フコース類似体、またはフコース類似体の代謝物もしくは産物によるコアフコシル化を有する。
【0095】
抗体産生細胞をフコース類似体と共にインキュベートすることによる非フコシル化抗体の作製方法は、例えば、WO2009/135181に記載される。簡潔に、ヒト化、キメラ、またはベニヤSG16.17抗体を発現するように操作された細胞が、フコース類似体、またはフコース類似体の細胞内代謝物もしくは産物の存在下でインキュベートされる。細胞内代謝物は、例えば、GDP修飾された類似体、または完全にもしくは部分的に脱エステル化された類似体であり得る。産物は、例えば、完全にもしくは部分的に脱エステル化された類似体であり得る。一部の実施形態では、フコース類似体は、フコースサルベージ経路において酵素(複数可)を阻害し得る。例えば、フコース類似体(またはフコース類似体の細胞内代謝物もしくは産物)は、フコキナーゼまたはGDP-フコース-ピロホスホリラーゼの活性を阻害し得る。一部の実施形態では、フコース類似体(またはフコース類似体の細胞内代謝物もしくは産物)は、フコシルトランスフェラーゼ(好ましくは、1,6-フコシルトランスフェラーゼ、例えば、FUT8タンパク質)を阻害する。一部の実施形態では、フコース類似体(またはフコース類似体の細胞内代謝物もしくは産物)は、フコースの新規合成経路において酵素の活性を阻害する。例えば、フコース類似体(またはフコース類似体の細胞内代謝物もしくは産物)は、GDP-マンノース4,6-デヒドラターゼまたは/またはGDP-フコースシンセターゼの活性を阻害し得る。一部の実施形態では、フコース類似体(またはフコース類似体の細胞内代謝物もしくは産物)は、フコース輸送体(例えば、GDP-フコース輸送体)を阻害し得る。
【0096】
一実施形態では、フコース類似体は、2-フルロフコースである。成長培地中でのフコース類似体、及び他のフコース類似体の使用方法は、例えば、WO/2009/135181(参照により本明細書に組み込まれる)に開示される。
【0097】
細胞系を操作してコアフコシル化を低減させる多の方法は、遺伝子ノックアウト、遺伝子ノックイン、及びRNA干渉(RNAi)を含んだ。遺伝子ノックアウトにおいて、FUT8をコードする遺伝子(アルファ1,6-フコシルトランスフェラーゼ酵素)が不活性化される。FUT8は、GDP-フコースからのフコシル残基を、N-グリカンのAsn連結(N連結)GlcNacの位置6への移動を触媒する。FUT8は、Asn297でのフコースのN-連結二分岐炭水化物への付加に関与する唯一の酵素であると報告される。遺伝子ノックインは、GNTIIIまたはゴルジアルファマンノシダーゼIIなどの酵素をコードする遺伝子を付加する。細胞におけるかかる酵素のレベルの増加は、フコシル化経路からモノクローナル抗体を転用し(コアフコシル化の減少につながる)、二分N-アセチルグルコサミンの量を増加させる。RNAiも、典型的には、FUT8遺伝子発現を標的とし、mRNA転写レベルの減少をもたらすか、または遺伝子発現を完全にノックアウトする。これらの方法のいずれも、非フコシル化抗体、例えば、ヒト化、キメラ、またはベニヤSG16.17抗体を産生することができるであろう細胞系を生成するために使用され得る。
【0098】
抗体上のフコシル化の量を決定するための多くの方法が利用可能である。方法は、例えば、PLRP-Sクロマトグラフィーを介するLC-MS及びエレクトロスプレーイオン化四重極TOF MSを含む。
【0099】
IV.核酸
本発明は、上述のヒト化重鎖及び軽鎖のうちのいずれかをコードする核酸をさらに提供する。典型的には、核酸は、成熟重鎖及び軽鎖に融合したシグナルペプチドもコードする。核酸上のコード配列は、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、転写終結シグナルなど、コード配列の発現を確実にするために、調節配列と動作可能な連結にあり得る。重鎖及び軽鎖をコードする核酸は単離された形態で生じるか、または1つ以上のベクターにクローニングされ得る。核酸は、例えば、固体状態の合成または重複オリゴヌクレオチドのPCRにより合成され得る。重鎖及び軽鎖をコードする核酸は、例えば発現ベクター内で1つの隣接する核酸として結合され得るか、または例えば、各々がそれ自体の発現ベクター内にクローニングされる、別個であり得る。
【0100】
V.抗体-薬物複合体
抗MCMA抗体は、細胞傷害部分と複合体化されて、抗体薬物複合体(ADC)を形成し得る。抗体との複合体化に特に好適な部分は、細胞傷害性薬(例えば、化学療法薬)、プロドラッグ変換酵素、放射性同位体もしくは化合物、または毒素(治療薬または薬物と総称されるこれらの部分)である。例えば、抗BCMA抗体は、化学療法薬などの細胞傷害性薬、または毒素(例えば、細胞増殖抑制もしくは殺細胞薬、例えば、アブリン、リシンA、pseudomonas外毒素、またはジフテリア毒素)と複合体化され得る。細胞傷害性薬の有用なクラスの例は、例えば、DNA小溝結合、DNAアルキル化剤、及びチューブリン阻害剤を含む。例示的な細胞傷害性薬としては、例えば、アウリスタチン、カンプトテシン、デュオカルマイシン、エトポシド、マイタンシン及びマイタンシノイド(例えば、DM1及びDM4)、タキサン、ベンゾジアゼピン(例えば、ピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン(PBD)、インドリノベンゾジアゼピン、及びオキサゾリジノベンゾジアゼピン)、及びビンカアルカロイドが挙げられる。治療薬をタンパク質、及び特に抗体と複合体化するための技法は周知である。(例えば、Alley et al.,Current Opinion in Chemical Biology 2010 14:1-9、Senter,Cancer J.,2008,14(3):154-169を参照されたい。)
【0101】
治療薬(例えば細胞傷害性薬)は、抗体から切り離されない限り(例えば、加水分解により、抗体分解により、または切断試薬により)、その活性を低減する様式で抗体と複合体化され得る。かかる治療薬は、リンカーを介して抗体に結合され得る。リンカーと複合体化された治療薬も本明細書において薬物リンカーと称される。リンカーの性質は大きく異なり得る。リンカーを構成する構成成分は、一部、複合体が送達される部位の状態により決定され得る、それらの特徴に基づいて選択される。
【0102】
治療薬は、複合体が、抗BCMA発現癌細胞によって内在化されるときに抗体から切断されるように(例えば、エンドソーム環境において、または例えば、pH感受性もしくはプロテアーゼ感受性により、リソソーム環境において、またはカベオラ(caveolear)環境において)、抗BCMA発現癌細胞の細胞内環境における切断に感受性であるが、細胞外環境に実質的に感受性ではない切断可能なリンカーによって抗体に結合され得る。治療薬はまた、切断不可能なリンカーによって抗体に結合され得る。
【0103】
示されるように、リンカーは、切断可能な単位を含み得る。一部のかかる実施形態では、切断可能な単位の構造及び/または配列は、標的部位(例えば、標的細胞)に存在する酵素の作用により切断されるように選択される。他の実施形態では、pH(例えば、酸不安定または塩基不安定)、温度の変化により、または照射(例えば、感光性)時に切断可能である切断可能な単位も使用することができる。
【0104】
一部の実施形態では、切断可能な単位は、1個のアミノ酸またはアミノ酸の隣接する配列を含み得る。アミノ酸配列は、酵素の標的基質であり得る。
【0105】
一部の態様では、切断可能な単位は、ペプチジル単位であり、少なくとも2個のアミノ酸の長さである。切断試薬は、カテプシンB及びD、ならびにプラスミンを含み得る(例えば、Dubowchik and Walker,1999,Pharm.Therapeutics 83:67-123を参照されたい)。抗BCMA発現細胞に存在する酵素により切断可能である切断可能なリンカー、即ち、酵素で切断可能なリンカーが最も典型的である。したがって、リンカーは、リソソームまたはエンドソームプロテアーゼを含む、細胞内ペプチダーゼまたはプロテアーゼ酵素により切断され得る。例えば、癌性組織において高度に発現されるチオール依存性プロテアーゼカテプシンBにより切断可能であるリンカー(例えば、Phe-LeuもしくはVal-CitペプチドまたはVal-Alaペプチドを含むリンカー)を使用することができる。
【0106】
一部の実施形態では、リンカーは、切断可能な単位(例えば、ペプチジル単位)を含み、切断可能な単位は、治療薬と直接複合体化される。他の実施形態では、切断可能な単位は、追加の機能性単位、例えば、自己犠牲スペーサー単位または非自己犠牲スペーサー単位を介して治療薬と複合体化される。非自己犠牲スペーサー単位は、スペーサー単位の一部または全てが抗体薬物複合体からの切断可能な単位(例えば、アミノ酸)の切断後に薬物単位に結合されたままであるものである。薬物を解放するために、非依存性加水分解反応が標的細胞内で生じて、薬物からスペーサー単位を切断する。
【0107】
自己犠牲スペーサー単位によって、別個の加水分解ステップのための薬物を必要とせずに、薬物を放出する。一実施形態では、リンカーは切断可能な単位及び自己犠牲基を含み、切断可能な単位は酵素の作用により切断可能であり、切断可能な単位の切断後、自己犠牲基(複数可)は治療薬を放出する。一部の実施形態では、リンカーの切断可能な単位は、一端で治療薬と直接または間接的に複合体化され、もう一端で抗体と直接または間接的に複合体化される。一部のかかる実施形態では、切断可能な単位は、一端で治療薬と直接または間接的に(自己犠牲または非自己犠牲スペーサー単位を介して)複合体化され、もう一端でストレッチャー単位を介して抗体と複合体化される。ストレッチャー単位は、抗体を薬物及び/または薬物リンカーの残部に連結する。一実施形態では、抗体と薬物もしくは薬物リンカーの残部との間の結合は、マレイミド基を介して、例えば、マレイミドカプロイルリンカーを介してである。一部の実施形態では、抗体は、ジスルフィドを介して薬物に連結され、例えば、ジスルフィド連結されたマイタンシノイドはSPDB-DM4及びSPP-DM1と複合体化する。
【0108】
抗体とリンカーとの間の結合は、いくつかの異なる経路を介して、例えば、チオエーテル結合を通して、ジスルフィド結合を通して、アミド結合を通して、またはエステル結合を通してでもよい。一実施形態では、抗BCMA抗体とリンカーとの間の結合は、抗体のシステイン残基のチオール基とリンカーのマレイミド基との間に形成される。一部の実施形態では、抗体の鎖間結合は、リンカーの官能基との反応前に遊離チオール基に変換される。一部の実施形態では、システイン残基は、抗体の重鎖または軽鎖内に導入され、リンカーと反応させられる。抗体の重鎖または軽鎖における置換によるシステイン挿入の位置としては、公開米国出願第2007-0092940号及び国際特許公開第WO2008070593号(これらの各々は、その全体が参照により、及び全ての目的に関して、本明細書に組み込まれる)に記載されるものが挙げられる。
【0109】
一部の実施形態では、抗体-薬物複合体は、次式I:
L-(LU-D)p (I)
を有し、式中、Lは抗BCMA抗体であり、LUはリンカー単位であり、Dは薬物単位(即ち、治療薬)である。添字pは1~20の範囲である。かかる複合体は、リンカーを介して少なくとも1つの薬物に共有結合された抗BCMA抗体を含む。リンカー単位は、一端で抗体に結合され、もう一端で薬物に結合される。
【0110】
薬物負荷は、抗体当たりの薬物分子の数であるpにより表される。薬物負荷は、抗体当たり1~20の薬物単位(D)の範囲であり得る。一部の態様では、添字pは、1~20の範囲(即ち、1~20の整数及び非整数値の両方)である。一部の態様では、添字pは、1~20の整数であり、単一抗体上の薬物-リンカーの数を表す。他の態様では、pは、抗体当たりの薬物-リンカー分子の平均数、例えば、反応混合物または組成物(例えば、薬学的組成物)中の抗体当たりの薬物-リンカーの平均数を表し、整数または非整数値であり得る。したがって、一部の態様では、組成物(例えば、薬学的組成物)に関して、pは、組成物中の抗体-薬物複合体の平均薬物負荷を表し、pは1~20の範囲である。
【0111】
一部の実施形態では、pは、抗体当たり約1~約8の薬物である。一部の実施形態では、pは1である。一部の実施形態では、pは2である。一部の実施形態では、pは、抗体当たり約2~約8の薬物である。一部の実施形態では、pは、抗体当たり約2~約6、2~約5、または2~約4の薬物である。一部の実施形態では、pは、抗体当たり約2、約4、約6、または約8の薬物である。
【0112】
複合体化反応からの調製物における抗体単位当たりの薬物の平均数は、質量分析、ELISAアッセイ、HIC、及びHPLCなどの従来の手段によって特徴付けされ得る。pに関する複合体の量的分布も決定され得る。
【0113】
例示的な抗体-薬物複合体は、アウリスタチン系抗体-薬物複合体、即ち、薬物構成成分がアウリスタチン薬物である複合体を含む。アウリスタチンは、チューブリンに結合し、微小管の動態ならびに核及び細胞分裂に干渉することが示されており、抗癌活性を有する。典型的には、アウリスタチン系抗体-薬物複合体は、アウリスタチン薬物と抗BCMA抗体との間にリンカーを含む。アウリスタチンは、リンカーへの複合体化に好適な任意の位置で、抗BCMA抗体に連結され得る。リンカーは、例えば、切断可能なリンカー(例えば、ペプチジルリンカー)または切断不可能なリンカー(例えば、抗体の分解により放出されるリンカー)であり得る。アウリスタチンは、アウリスタチンEまたはその誘導体であり得る。アウリスタチンは、例えば、アウリスタチンEとケト酸との間で形成されたエステルであり得る。例えば、アウリスタチンEをパラアセチル安息香酸またはベンゾイル吉草酸と反応させて、それぞれ、AEB及びAEVBを産生することができる。他の典型的なアウリスタチンとしては、MMAF(モノメチルアウリスタチンF)及びMMAE(モノメチルアウリスタチンE)が挙げられる。例示的なアウリスタチンの合成及び構造は、米国公開第7,659,241号、第7,498,298号、第2009-0111756号、第2009-0018086号、及び第7,968,687号に記載されており、それらの各々は、その全体が参照により、及び全ての目的に関して、本明細書に組み込まれる。
【0114】
例示的なアウリスタチン系抗体-薬物複合体には、以下に示されるvcMMAE、vcMMAF、及びmcMMAF抗体-薬物複合体が含まれ、式中、Abは、本明細書に記載される抗体であり、val-citは、バリン-シトルリンジペプチド:
【化3】
、またはその薬学的に許容される塩を表す。薬物負荷は、抗体当たりの薬物-リンカー分子の数であるpにより表される。文脈により、pは、抗体当たりの薬物-リンカー分子の平均数を表し、平均薬物負荷とも称され得る。変数pは、1~20の範囲であり、好ましくは1~8である。一部の好ましい実施形態では、pが平均薬物負荷を表す場合、pは約2~約5の範囲である。一部の実施形態では、pは、約2、約3、約4、または約5である。一部の態様では、抗体は、システイン残基の硫黄原子を介してリンカーと複合体化される。一部の態様では、システイン残基は、抗体内に操作されるシステイン残基である。他の態様では、システイン残基は、鎖間ジスルフィドシステイン残基である。
【0115】
例示的な抗体-薬物複合体は、PBD系抗体-薬物複合体、即ち、薬物構成成分がPBD薬物である抗体-薬物複合体を含む。
【0116】
【0117】
それらは、置換基の数、種類、及び位置、それらの芳香族A環及びピロロC環の両方、ならびにC環の飽和度が異なる。B環において、アルキル化DNAに関与する求電子中心であるN10-C11位置にイミン(N=C)、カルビノールアミン(NH-CH(OH))、またはカルビノールアミンメチルエーテル(NH-CH(OMe))のいずれかが存在する。全ての既知の天然産物は、キラルC11a位置に(S)立体配置を有し、これは、C環からA環方向に見たときに右撚りの天然産物を提供する。これは、それらにB形態DNAの小溝を有する等螺旋性に適切な3次元形状を与え、結合部位でのぴったりとした適合をもたらす。PBDが小溝で付加体を形成する能力は、それらがDNAプロセシングと干渉し、それ故に、抗腫瘍薬としてのそれらの使用を可能にする。
【0118】
これらの分子の生物学的活性は、可動性アルキレンリンカーを介してそれらのC8/C’-ヒドロキシル官能基を通して一緒に2つのPBD単位を結合することによって増強され得る。PBD二量体は、それらの生物学的活性に主に関与すると考えられる回文構造の5’-Pu-GATC-Py-3’鎖間架橋結合などの配列選択的DNA損傷を形成すると考えられる。
【0119】
一部の実施形態では、PBD系抗体-薬物複合体は、抗BCMA抗体に連結されたPBD二量体を含む。PBD二量体を形成する単量体は、同じまたは異なる、即ち、対称または非対称であり得る。PBD二量体は、リンカーとの複合体化に好適な任意の位置で、抗BCMA抗体に連結され得る。例えば、一部の実施形態では、PBD二量体は、化合物を抗BCMA抗体に連結するためのアンカーを提供するC2位置に置換基を有する。代替えの実施形態では、PBD二量体のN10位置は、化合物を抗BCMA抗体に連結するためのアンカーを提供する。
【0120】
典型的には、PBD系抗体-薬物複合体は、PBD薬物と抗BCMA抗体との間にリンカーを含む。リンカーは、切断可能な単位(例えば、酵素の標的基質であるアミノ酸またはアミノ酸の隣接する配列)、または切断不可能なリンカー(例えば、抗体の分解により放出されたリンカー)をさらに含み得る。リンカーは、抗体への連結のためのマレイミド基、例えば、マレイミドカプロイルをさらに含み得る。一部の実施形態では、リンカーは、例えば、p-アミノベンジルアルコール(PAB)単位など、自己犠牲基をさらに含む。
【0121】
複合体として使用するための例示的なPBDは、国際出願第WO2011/130613号に記載され、以下の通り(波線はリンカーへの結合の部位を示す):
【化5】
であるか、またはその薬学的に許容される塩である。例示的なリンカーは以下の通りであり、波線は薬物への結合の部位を示し、抗体はマレイミド基を介して連結される。
【化6】
。
【0122】
例示的なPBD系抗体-薬物複合体は、下に示される通り(式中、Abは、本明細書に記載される抗体である):
【化7】
であるか、またはその薬学的に許容される塩である。薬物負荷は、抗体当たりの薬物-リンカー分子の数であるpにより表される。文脈により、pは、抗体当たりの薬物-リンカー分子の平均数を表し、平均薬物負荷とも称され得る。変数pは、1~20の範囲であり、好ましくは1~8である。一部の好ましい実施形態では、pが平均薬物負荷を表す場合、pは約2~約5の範囲である。一部の実施形態では、pは、約2、約3、約4、または約5である。一部の態様では、抗体は、抗体内に操作されるシステイン残基の硫黄原子を介して薬物リンカーと複合体化される。一部の態様では、システイン残基は、EUインデックス(Kabat,Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of
Health,Bethesda,MD,1987 and 1991)により決定されるように、位置239(IgG1)で抗体内に操作される。
【0123】
VI.免疫学的障害またはBCMA発現癌の動物モデル
抗BCMA抗体または誘導体は、免疫学的障害またはBCMA発現癌の動物モデルにおいて試験されるか、または検証され得る。糖尿病、狼瘡、全身性硬化症、シェーグレン症候群、実験的自己免疫性脳脊髄炎(多発性硬化症)、甲状腺炎、重症筋無力症、関節炎、ブドウ膜炎、炎症性腸疾患を含む全身及び臓器特異的自己免疫疾患の動物モデルの例が、Bigazzi“Animal Models of Autoimmunity:Spontaneous and Induced,”in The Autoimmune
Diseases(Rose and Mackay eds.,Academic Press,1998)、及び“Animal Models for Autoimmune and Inflammatory Disease,” in Current Protocols in Immunology(Coligan et al.eds.,Wiley and Sons,1997)により記載されている。
【0124】
アレルギー状態、例えば、喘息及び皮膚炎もゲッ歯類においてモデル化され得る。気道過敏性は、卵白アルブミン(Tomkinson et al.,2001,J.Immunol.166:5792-800)またはSchistosoma mansoni卵抗原(Tesciuba et al.,2001,J.Immunol.167:1996-2003)により、マウスにおいて誘導することができる。マウスのNc/Nga株は、血清IgEにおいて顕著な増加を示し、自発的にアトピー性皮膚炎のような病変を発達させる(Vestergaard et al.,2000,Mol.Med.Today 6:209-10、Watanabe et al.,1997,Int.Immunol. 9:461-66、Saskawa et al.,2001,Int.Arch.Allergy Immunol.126:239-47)。
【0125】
免疫応答性ドナーリンパ球の致死的な放射線照射された組織不適合宿主への注射は、マウスにおいてGVHDを誘導するための古典的なアプローチである。代替的に、親B6D2F1マウスモデルは、急性及び慢性GVHDの両方を誘導するための系を提供する。このモデルにおいて、B6D2F1マウスは、C57BL/6及びDBA/2マウスの親株間での交差からのF1子孫である。DBA/2リンパ球様細胞の放射線照射されていないB6D2F1マウスへの移入は慢性GVHDを引き起こし、一方でC57BL/6、C57BL/10、またはB10.D2リンパ球様細胞の移入は急性GVHDを引き起こす(Slayback et al.,2000,Bone Marrow Transpl.26:931-938、Kataoka et al.,2001,Immunology 103:310-318)。
【0126】
加えて、ヒト造血幹細胞及び成熟末梢血リンパ球様細胞の両方がSCIDマウスにグラフトされ得、これらのヒトリンパ-造血細胞は、SCIDマウスにおいて機能的なままである(McCune et al., 1988, Science 241:1632-1639、Kamel-Reid and Dick,1988,Science 242:1706-1709、Mosier et al.,1988,Nature 335:256-259)。これは、ヒトリンパ球様細胞に対する可能な治療薬の直接的な試験のための小動物モデル系を提供した。(例えば、Tournoy et al.,2001,J.Immunol.166:6982-6991を参照されたい)。
【0127】
さらに、BCMA発現ヒト腫瘍細胞を適切な免疫不全ゲッ歯類株、例えば、無胸腺ヌードマウスまたはSCIDマウスに移植することにより、抗BCMA抗体または誘導体のインビボ効果を検査する小動物モデルが創出され得る。BCMA発現ヒトリンパ腫細胞系の例としては、例えば、Daudi(Ghetie et al.,1994,Blood
83:1329-36、Ghetie et al.,1990,Int.J.Cancer 15:481-85、de Mont et al.,2001,Cancer
Res.61:7654-59)、Ramos(Ma et al.,2002,Leukemia 16:60-6、Press et al.,2001,Blood 98:2535-43)、HS-Sultan(Cattan and Maung,1996,Cancer Chemother.Pharmacol.38:548-52、Cattan and Douglas,1994,Leuk.Res.18:513-22)、Raji(Ochakovskaya et al.,2001,Clin.Cancer Res.7:1505-10、Breisto et al.,1999,Cancer Res.59:2944-49)、及びCA46(Kreitman et al.,1999,Int.J.Cancer 81:148-55)が挙げられる。BCMA発現ホジキンリンパ腫系の非限定的な例としては、L540cy(Barth
et al.,2000,Blood 95:3909-14、Wahl et al.,2002,Cancer Res.62:3736-42)である。BCMA発現ヒト腎細胞癌腫細胞系の非限定的な例としては、786-O(Ananth et al.,1999,Cancer Res.59:2210-16、Datta et al.,2001,Cancer Res.61:1768-75)、ACHN(Hara et al.,2001,J.Urol.166:2491-94、Miyake et al.,2002,J.Urol.167:2203-08)、Caki-1(Prewett et al.,1998,Clin.Cancer Res.4:2957-66、Shi and Siemann,2002,Br.J.Cancer 87:119-26)、及びCaki-2(Zellweger et al.,2001,Neoplasia 3:360-67)が挙げられる。BCMA発現鼻咽頭癌腫細胞系の非限定的な例としては、C15及びC17(Busson et al.,1988,Int.J.Cancer 42:599-606、Bernheim et al.,1993,Cancer Genet.Cytogenet.66:11-5)が挙げられる。BCMA発現神経膠腫細胞系の非限定的な例としては、U373(Palma et al.,2000,Br.J.Cancer 82:480-7)及びU87MG(Johns et al.,2002,Int.J.Cancer 98:398-408)が挙げられる。。これらの腫瘍細胞系は、皮下注射による固形腫瘍として、または静脈内注射による播種性腫瘍としてのいずれかで免疫不全ゲッ歯類宿主において確立することができる。宿主内で確立されたら、これらの腫瘍モデルは、インビボ腫瘍成長の調節に対する、本明細書に記載される抗BCMA抗体または誘導体の治療効果を評価するために適用され得る。
【0128】
VII.治療の適用
本発明の抗BCMA抗体は、癌を治療するために使用され得る。いくつかのかかる癌は、タンパク質レベル(例えば、例示される抗体のうちの1つを使用する免疫アッセイによって)またはmRNAレベルのいずれかで測定された検出可能なレベルのBCMAを示す。一部のかかる癌は、同じ種類、好ましくは同じ患者からの非癌性組織と比較して上昇したレベルのBCMAを示す。治療に適した癌細胞上のBCMAの例示的なレベルは、細胞当たり5000~150000個のBCMA分子であるが、より高いレベルまたはより低いレベルも治療され得る。任意選択で、癌におけるBCMAのレベルは、治療を行う前に測定される。
【0129】
本発明の抗体で治療可能な癌は、固形腫瘍及び血液癌、例えば、白血病及びリンパ腫を含む。抗体は、B細胞の癌に特に適している。抗体で治療可能な癌の例としては、成人及び小児急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄腫白血病(CML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、及び二次性白血病;非ホジキンリンパ腫(NHL)及びホジキン病;骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖症候群(MPS)
多発性骨髄腫、ワンデンストレームマクログロブリン血症、またはバーキットリンパ腫、悪性形質細胞新生物、BCMA+高悪性度リンパ腫、ケーラー病、及び骨髄腫症;形質細胞性白血病;形質細胞腫;B細胞前リンパ球性白血病;有毛細胞白血病;濾胞性リンパ腫(濾胞性非ホジキンリンパ腫型を含む);バーキットリンパ腫(流行性バーキットリンパ腫;孤発性バーキットリンパ腫):辺縁帯リンパ腫(粘膜関連リンパ組織:MALT 1 MALToma;単球様B細胞リンパ腫;絨毛リンパ球を有する脾リンパ腫);マントル細胞リンパ腫;大細胞型リンパ腫(びまん性大細胞型リンパ腫;びまん性混合細胞型リンパ腫;免疫芽球性リンパ腫;原発性縦隔B細胞リンパ腫;血管中心性リンパ腫肺B細胞):小リンパ球性リンパ腫(SLL);前駆Bリンパ芽球性リンパ腫;骨髄性白血病(顆粒球性、骨髄性、急性骨髄白血病;慢性骨髄白血病;亜急性骨髄白血病;骨髄肉腫;緑色腫;顆粒球性肉腫;急性前骨髄球性白血病;急性骨髄単球性白血病);ワンデンストレームマクログロブリン血症、または他のB細胞白血病もしくはリンパ腫が挙げられる。
【0130】
本発明の抗体は、BCMAを発現する免疫細胞により媒介される免疫障害、特にB細胞媒介障害にも有用である。かかる疾患の例としては、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、I型糖尿病、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、血小板減少性紫斑病、多発性硬化症、乾癬、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、グレーブス病、原発性胆汁性肝硬変、ウェゲナー肉芽腫症、結核、及び移植片対宿主病 免疫媒介血小板減少症、溶血性貧血、水疱性類天疱瘡、重症筋無力症、グレーブス病、アジソン病、落葉状天疱瘡、乾癬、乾癬性関節炎、及び強直性脊椎炎が挙げられる。
【0131】
抗BCMA抗体は、単独でまたはその薬物複合体として、有効なレジメン、つまり、癌の少なくとも1つの徴候または症状の発症を遅延する、その重症度を低減する、そのさらなる悪化を阻害する、及び/またはそれを寛解する投薬量、投与経路、及び投与頻度で投与される。患者が既に癌に罹患している場合、レジメンは、治療上有効なレジメンと称され得る。患者が一般集団と比較して癌のリスクが高いが、症状がまだ見られない場合、レジメンは、予防状有効なレジメンと称され得る。場合によっては、治療または予防効果は、個々の患者において、同じ患者の歴史的対照または過去の経験と比較して観察され得る。他の場合では、治療または予防効果は、治療を受けた患者集団の前臨床または臨床試験において、治療を受けていない患者の対照集団と比較して示され得る。
【0132】
モノクローナル抗体の例示的な投薬量は、患者の体重の0.1mg/kg~50mg/kg、より典型的には、1mg/kg~30mg/kg、1mg/kg~20mg/kg、1mg/kg~15mg/kg、1mg/kg~12mg/kg、もしくは1mg/kg~10mg/kg1、または2mg/kg~30mg/kg、2mg/kg~20mg/kg、2mg/kg~15mg/kg、2mg/kg~12mg/kg、もしくは2mg/kg~10mg/kg、または3mg/kg~30mg/kg、3mg/kg~20mg/kg、3mg/kg~15mg/kg、3mg/kg~12mg/kg、もしくは3mg/kg~10mg/kgである。その活性モノクローナル抗体薬物複合体、例えば、アウリスタチンの例示的な投薬量は、対象の体重の1mg/kg~7.5mg/kg、もしくは2mg/kg~7.5mg/kg、もしくは3mg/kg~7.5mg/kg、または0.1~20、もしくは0.5~5mg/kg体重(例えば、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10mg/kg)、または規定用量として10~1500もしくは200~1500mgである。その高度に活性なモノクローナル抗体薬物複合体、例えば、PBDの例示的な投薬量は、対象の体重の1.0μg/kg~1.0mg/kg、または1.0μg/kg~500.0μg/kgである。一部の方法において、患者は、その後、隔週、3週間ごと、または4週間ごとに抗体またはADCを投与される。投薬量は、他の要因の中でも、投与頻度、患者の状態、及びもしあれば、前治療に対する応答、治療が予防的もしくは治療的であるか、ならびに障害が急性もしくは慢性であるかによる。
【0133】
投与は、非経口、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、くも膜下、腹腔内、局所、鼻腔内、または筋肉内であり得る。投与は、腫瘍に直接局所化させることもできる。静脈内投与または皮下投与による体循環への投与が好ましい。静脈内投与は、例えば、30~90分などの期間にわたる注入により、または単一ボーラス注射によるものであり得る。
【0134】
投与頻度は、要因の中でも、循環中の抗体または抗体-薬物複合体の半減期、患者の状態、及び投与経路による。頻度は、患者の状態または治療される癌の進行の変化に応じて、毎日、毎週、毎月、3ヶ月ごと、または不規則な間隔であり得る。静脈内投与の例示的な頻度は、継続的な治療過程にわたって週に2回~3ヶ月ごとであるが、より頻繁な、またはより少ない頻度の投薬も可能である。静脈内投与の他の例示的な頻度は、継続的な治療過程にわたって毎週もしくは毎月の間であるが、より頻繁な、またはより少ない頻度の投薬も可能である。皮下投与に関して、例示的な投薬頻度は、毎日~毎月であるが、より頻繁な、またはより少ない頻度の投薬も可能である。
【0135】
投与される投薬回数は、癌または自己免疫疾患の性質(例えば、急性症状を示しているか慢性症状を示しているか)及び障害の治療に対する応答による。急性障害、または慢性障害の増悪には、1~10回の投薬が十分である場合が多い。任意選択で分割形態での単回ボーラス投薬が、急性障害、または慢性障害の急性増悪に十分である場合もある。治療は、急性障害または急性増悪の再発に対して繰り返され得る。慢性障害に関して、抗体は、少なくとも1、5、もしくは10年間、または患者の生涯にわたって、一定間隔で、例えば、毎週、隔週、毎月、3ヶ月ごと、6ヶ月ごとに投与され得る。
【0136】
非経口投与用の薬学的組成物は、好ましくは、無菌かつ実質的に等張性であり、GMP状態下で製造される。薬学的組成物は、単位剤形で(即ち、単一投与用の投薬量)提供され得る。薬学的組成物は、1つ以上の生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、または助剤を使用して製剤化され得る。製剤は、選択される投与経路による。注射に関して、抗体は、水性溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液、もしくは生理食塩水などの生理学的に適合性の緩衝液、または酢酸緩衝液(注射部位の不快感を低減するため)に製剤化され得る。溶液は、懸濁剤、安定剤、及び/または分散剤などの製剤用作用物質を含有し得る。代替的に、本抗体は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、減菌発熱物質不含水で構築するために、凍結乾燥形態であり得る。液体製剤中の抗体の濃度は、例えば、1.0mg/mlなど.01~10mg/mlであり得る。
【0137】
本発明の抗体を用いた治療は、化学療法、放射線、幹細胞治療、外科手術 治療される障害に対して有効な他の治療と組み合わせることができる。BCMAに対する抗体と共に投与することができる他の薬剤の有用なクラスとしては、例えば、癌性細胞上で発現される他の受容体に対する抗体、抗チューブリン薬(例えば、アウリスタチン)、DNA小溝結合剤(例えば、PBD)、DNA複製阻害剤、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、モノ(白金)、ビス(白金)、ならびに三核白金錯体及びカルボプラチンなどの白金錯体)、アントラサイクリン、抗生物質、抗葉酸剤、代謝拮抗薬、化学療法増感剤、デュオカルマイシン、エトポシド、フッ化ピリミジン、イオノフォア、レキシトロプシン、ニトロソウレア、プラチノール、予備形成化合物、プリン代謝拮抗薬、ピューロマイシン、放射線増感剤、ステロイド、タキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイドなどが挙げられる。癌に関して前述の同じ追加治療が免疫媒介障害にも使用され得る。免疫媒介障害の追加の薬剤としては、マスト細胞の脱顆粒阻害剤、抗ヒスタミン、コルチコステロイド、NSAID、アザチオプリン、シクロホスファミド、ロイケラン、及びシクロスポリンなどの免疫抑制剤、ならびにTysabri(登録商標)またはHumira(登録商標)などの抗炎症薬が挙げられる。
【0138】
上述の他の薬剤もしくはレジメンのうちのいずれかを単独でまたは抗体薬物複合体として任意選択で組み合わせた、抗BCMA抗体を用いた治療により、癌に罹患する患者の無増悪生存期間中央値または全生存期間は、特に再発性または難治性である場合に、同じ治療(例えば、化学療法)であるが抗BCMA抗体を含まないものと比較して、少なくとも30%または40%だが、好ましくは50%、60%~70%、またはさらには100%以上増加し得る。加えてまたは代替的に、抗BCMA抗体を単独で、または抗体-薬物複合体として含む治療(例えば、標準的な化学療法)により、腫瘍を有する患者の完全奏効率、部分奏効率、または客観的奏効率(完全+部分)は、同じ治療(例えば、化学療法)であるが抗BCMA抗体を含まないものと比較して、少なくとも30%または40%だが、好ましくは50%、60%~70%、またはさらには100%増加し得る。
【0139】
典型的には、臨床試験(例えば、第II相、第II/III相、または第III相試験)では、標準的療法に加えて抗BCMA抗体を用いて治療した患者の無増悪生存率及び/または奏効率中央値を、標準的な療法のみ(またはそれにプラセボを加えたもの)を受けた患者の対照群と比較した場合の前述した増加は、統計的に有意であり、例えば、p=0.05もしくは0.01、またはさらには0.001レベルであった。完全奏効率及び部分奏効率は、癌臨床試験で一般に使用される客観的基準、例えば、国立がん研究所及び/または食品医薬品局が記載しているかまたは認めているものによって決定される。
【0140】
VIII.他の用途
本明細書に開示される抗BCMA抗体は、臨床診断もしくは治療または研究との関連において、BCMAの検出に使用され得る。癌におけるBCMAの発現は、その癌が本発明の抗体による治療に適していることを示す。本抗体は、BCMAを保有する細胞及び種々の刺激に対するそれらの応答の検出に関する実験研究のための研究用試薬としても販売され得る。かかる使用においては、モノクローナル抗体は、蛍光分子、スピン標識分子、酵素、またはラジオアイソタイプによって標識され得、BCMAのアッセイを行うために必要な試薬全てを含むキットの形態で提供され得る。本抗体を使用して、BCMAタンパク質を、例えば親和性クロマトグラフィーによって精製することもできる。
【0141】
本発明の任意の特徴、ステップ、要素、実施形態、または態様は、具体的に別途記載のない限り、任意のその他と組み合わせて使用され得る。本発明は、明確性及び理解の目的に関して、図示及び例によりある程度詳細に記載されてきたが、ある特定の変更及び修正が付属の特許請求の範囲の範囲内で実践され得ることは明らかであろう。
【実施例0142】
実施例1:抗体の開発
組換えBCMA細胞外ドメイン(BCMA ECD)の調製
ヒト(アミノ酸1~51)及びマウスBCMA(アミノ酸1~46)の細胞外ドメイン(ECD)をクローニングし、GST融合タンパク質(pGEX4T1;Amersham Biosciences)として発現させた。BCMA融合タンパク質をグルタチオン-セファロースで捕捉し、トロンビンによるプロテアーゼ消化によりBCMA ECDを放出することにより、精製したBCMA ECD を得た。その後、ベンズアミジンセファロースによりトロンビンを除去した。
【0143】
悪性B細胞系上のBCMA発現の特定
BCMA用の市販の抗体であるVicky-1(Alexis Biotechnology)を使用して、多発性骨髄腫細胞系に対して定量的フローサイトメトリーを行った。結果は、BCMAが試験した骨髄腫系の中で広く見られることを示す。NCI H929は、BCMAに関して陽性細胞表面染色を示したが、BR3またはTACIのいずれかの発現を欠いた。NCI H929はBCMAを発現したが、BR3またはTACIを発現しなかったため、BCMAハイブリドーマの細胞に基づくスクリーニングに使用された。
【0144】
トランスフェクトされたBCMA細胞系の開発
HEK 293細胞を完全長BCMAクローンまたは空のベクターのいずれかでトランスフェクトすることにより、安定した細胞系を開発した。フローサイトメトリーにより、トランスフェクトされたBCMA(293: BCMA)の表面上でのBCMAの陽性発現を確認したが、ベクター空対照プラスミド(293:ベクター)では確認されなかった。その後、これらの細胞系をツールとして使用して、クローニングしたBCMA抗体の特異性を確認した。
【0145】
実施例2:クローニングされていないハイブリドーマウェルの免疫化及びスクリーニング抗血清の免疫化及びスクリーニング
我々の免疫化戦略は、リガンド結合ドメインの内部及び外部のエピトープが抗体(
図1A及び1B)の標的にされ得るように、BCMA ECDのアミノ酸1~50を使用した
KLH複合体化BCMA ECDは、市販の供給源(Alexis Biochemicals)から生成された。最大免疫応答がELISAによって検出されるまで、Titermaxアジュバントを使用してKLH複合体化BCMA でラットを免疫化した。免疫化したラットの血清も、プレートに基づくアッセイにおいてAPRIL結合の遮断能力に関してスクリーニングされた。抗血清が顕著なヒトBCMA抗体の力価を有し、強固な遮断活性を示したため、ラット2~3が融合のために選択された。
【0146】
記載されるように、ラット2~3からの脾臓細胞を採取し、X-63.Ag8.653.3.12.11マウス骨髄腫細胞に融合し、(Goding,1989)選択した。得られたハイブリドーマからの培養上清を、精製したhBCMA-GSTを使用してELISAによりスクリーニングした(
図2のフローチャートを参照されたい)。80の陽性ウェルが特定され、拡大のために選択された。80の陽性ウェルのうち60が、拡大後、ELISAによりOD>0.5を示し続けた。次いで、これらの60のクローニングされていないハイブリドーマウェルは、細胞に基づく結合、リガンド遮断活性、及びマウスBCMAに対する交差反応性に関する二次アッセイにおいてスクリーニングされた。これにより、12の有力なBCMAハイブリドーマウェルの特定に至った。これらの12の有力なウェルからの細胞結合データ及びリガンド遮断活性を
図3に要約する。ハイブリドーマウェル17は、市販のモノクローナルVicky-1(Alexis Biochemicals)に優先する細胞結合及びリガンド遮断活性を示した。8つのウェル(
図3において赤色の星印で示される)は、BCMA陽性細胞を結合するか、またはリガンド結合を遮断するそれらの能力に基づいてクローニングに使用された。
【0147】
実施例3:クローンハイブリドーマの特徴付け
細胞結合及びリガンド遮断活性。
ハイブリドーマウェル11、17、20、29、40、45、及び70は、2回の限定希釈クローニングを受けた。これ以降、抗体は、表1に示される形式上のクローンIDにより表示される。293:ベクター対照細胞ではなく、抗体の293:BCMA対照細胞への抗体の特異的結合は、抗体がBCMAに結合することを確認する。
【表1】
【0148】
新しいBCMA抗体のリガンド遮断活性を、クローニングされていないマスターウェルからの上清、クローニングされたウェルからの上清、及びクローニングされたウェルからの精製した抗体を使用して比較した(
図4)。市販の抗体を陽性対照として使用した。SG-16.17は、クローニングされたハイブリドーマウェルからの培養上清を使用して、APRIL結合の顕著な遮断をもたらした。APRIL結合のSG16.17遮断の滴定は、精製したSG16.17及び市販の抗体を使用して、別個の実験において行われた(
図5)。精製したSG16.17は、市販の抗体と比較したとき、類似する濃度にわたって改善された遮断活性を示した。SG-16.45は、April結合の用量依存性阻害を示したが、SG-16.17ほど強くなかった。残りのBCMA抗体(SG-16.11、SG16.20、SG16.29、SG16.40、及びSG16.70)のリガンド遮断活性は、より軽度であった。ある特定の遮断BCMA抗体は、SG-16.17で観察されたように、APRIL結合の>75%阻害を示す。SG-16.11、SG-16.20、SG-16.29、SG-16.40、及びSG-16.70を含むより「軽度」な遮断抗体は、APRIL結合に関して約30%の阻害を示した(
図4)。
【0149】
BAFFが固定化されたBCMAを結合する能力も、精製したBCMA抗体の存在下、または不在下で分析された。BCMA抗体SG16.17、SG16.40、SG16.20、及びSG17.70による前処理は全て、BCMAへのBAFF結合の滴定可能な阻害をもたらした。相対的な阻害は、抗体処理の不在下で、BAFFの固定化されたBCMAへの結合により決定された(
図6、星印)。まとめると、
図5及び6のデータは、BCMA抗体がAPRIL及びBAFFのBCMAへのリガンド結合を遮断し、それにより、B細胞生存シグナルと干渉することができることを示す。
【0150】
実施例4:ADCC及びADCとしての細胞傷害性に関するSG16.17及びSG16.45抗体の試験
ラットVH及びVLドメインをそれぞれ野生型ヒトIgG1重鎖及びκ軽鎖定常ドメインに融合することにより、SG16.17抗体をラット-ヒトキメラIgGに変換した。cSG16.17野生型と表示されるキメラ抗体は、親抗体SG16.17と比較したとき、類似する抗原結合特性を示した。次に、我々は、ADCCを強化することが知られるFc突然変異S239D:A330L:I332Eを導入してcSG16.17突然変異形態を生成した。cSG16.17野生型と同様に、Fc三重突然変異形態の生成により、cSG16.17突然変異形態の抗原結合特性は改変されなかった。精製した天然のキラー細胞を用いたADCCアッセイにおけるcSG16.17野生型及びcSG16.17突然変異形態の評価は、JJN3細胞及びU266細胞の用量依存性溶解をもたらし、一方で顕著な溶解は、非結合ヒトIgG対照では観察されなかった。cSG16.17野生型抗体は、JJN3細胞上で限定されたADCC活性を示し、これは、cSG16.17突然変異形態により、効力が約100倍、そして効果が>2倍(最大溶解)増加した。同様に、U266細胞に関して、cSG16.17突然変異形態のADCC活性は、親キメラ抗体と比較して、効力が約100倍、そして効果が2倍強化された。JJN3細胞及びU266細胞の両方の最大溶解に必要とされるcSG16.17突然変異形態の濃度は、約100pmol/Lであった。対照的に、JJN3細胞及びU266細胞上でのcSG16.17の解離定数(KD)は、それぞれ、15及び10nmol/Lと推定された。よって、cSG16.17突然変異形態による最大溶解は、飽和結合に達するのに必要とされる濃度よりも非常に低い濃度で達成された。
【0151】
我々は、抗体当たり8つの薬物の化学量論によりvcMMAFを使用して、SG16.17及びSG16.45がADCとして細胞傷害性を誘導する能力を評価した。SG16.17またはSG16.45-vcMMAF8は、H929細胞に対して強く細胞傷害性であった。非結合対照ADCまたは非複合体化抗体を使用した細胞生存率の低下は観察されなかった。我々は、JJN3細胞系及びU266細胞系を含む他のMM細胞系にわたるSG16.17 ADCの効力も検査した。SG16.17-vcMMAF8は、3つ全てのMM細胞系にわたって一定かつ高い効力(IC50値≦130pmol/L)を示し、一方でSG16.45-vcMMAF8は、より大きい変動性及びより小さい全体的な効力を示した。
【0152】
実施例5:FcγRIIIaへの結合及びFcγRIIIaを通したシグナル伝達に関するSG16.17抗体の試験
結合アッセイに関して、CHO細胞をFcγRIIIa(hCD16)でトランスフェクトし、標識されたh00抗体の結合を、野生型 IgG1及びIgG1 S239D、A330L、I332E遺伝子型を有するキメラSG16.17、ならびに種々のIgG1対照抗体との競合で測定した。
図12は、キメラSG16.17が2つの対照抗体のリツキシマブ及びcOKT9よりも強く競合したことを示す。SG16.17の突然変異形態は、野生型IgG1形態よりも強く競合した。シグナル伝達アッセイは、BCMAを発現するU266標的細胞、FcγRIIIaを発現し、NFAT応答要素からルシフェラーゼレポーターを発現するように操作されたJurkatエフェクター細胞、及びBio-Gloインジケーターを使用する。cSG16.17 G1 WT及びS239D、A330L、I332Eの両方は、FcγRIIIaシグナル伝達を誘発し、S239D、A330L、I332E形態からのシグナル伝達がより強かった(
図13)。
実施例6:SG16.17のヒト化
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0153】
SG16.17を発現するラットハイブリドーマのラット重鎖及び軽鎖可変領域を配列決定した。HV1~2/HJ3(配列番号9)またはHV1~46/HJ3(配列番号10)を重鎖のヒトアクセプター配列として使用し、KV1-12/KJ5(配列番号18)を軽鎖のヒトアクセプター配列として使用した。
【0154】
ラットドナー配列とヒトアクセプター配列との間で異なる位置は、H8、H20、H48、H67、H69、H71、H76、H78、H80、H88、H91、H93、L40、L46、L48、L78、L85、及びL87を含んだ。これらの残基の異なる順列は、異なるヒト化重鎖及び軽鎖配列の復帰突然変異として含まれた。Kabat CDRにおけるいくつかのラット残基もヒトアクセプター配列の対応する残基との代置に関して試験された。これらの残基位置は、H34、H50、H58、H60、H61、H62、H64、及びH65、ならびにL24及びL53であった。6つのヒト化重鎖変異型及び4つのヒト化軽鎖変異型を設計し、発現させた。表2及び3は、各ヒト化変異型鎖におけるヒトアクセプター配列、復帰突然変異(ドナーフレームワーク残基)、及びCDR置換(アクセプターCDR残基)を示す。表4及び5は、ヒト化変異型鎖の各々における復帰突然変異と考えられる位置の各々を占めるアミノ酸を示す。これらの表は、最も近いヒト生殖系列配列と同一の残基のパーセントも示す。最近のINNガイドラインによると、重鎖及び軽鎖の両方においてヒト生殖系列配列と少なくとも85%の同一性を有する抗体のみがヒト化と称され得る。
図7~9は、ラット可変領域及びヒトアクセプター配列を有するヒト化重鎖可変領域の整合を示す。
図10及び11は、ラット可変領域及びヒトアクセプター配列を有するヒト化軽鎖可変領域の整合を示す。可変軽鎖のC末端アルギニン(R)は、代替的に、軽鎖定常領域のN末端アルギニンと見なされ得る。
【0155】
6つのヒト化重鎖及び4つのヒト化軽鎖は、細胞当たり50,000個のBCMAの分子を発現するNCI-H929細胞上に発現されるBCMAへの結合に関して、24全ての可能な順列において試験された。結果を下の表6に示す。簡潔に、全てのヒト化軽鎖は、良好な結合を示した。ヒト化重鎖のうち、変異型VH1、VH3、及びVH5の全ては、キメラまたはラットのいずれかのSG16.17抗体と比較して、改善された結合を示した。
【表6】
【0156】
NCI-H929アッセイで最良に機能するヒト化抗体(即ち、VH1、VH3、またはVH5重鎖を含有するものは、濃度点の全範囲でのU266細胞への結合に関してさらに試験された。このアッセイにおいて、VH1重鎖を含有するヒト化抗体(どのヒト化軽鎖変異型が含まれたかにかかわらない)は、ラットまたはキメラSG16.17と比較して強化された結合を示した。VH3またはVH5重鎖を含有するヒト化抗体(どのヒト化軽鎖変異型が含まれたかにかかわらない)は、ラットまたはキメラSG16.17結合と実験誤差内の同じ結合を示した。VH2またはVH6可変領域を含有するヒト化抗体は、どのヒト化軽鎖変異型が含まれたかにかかわらず、ラットまたはキメラSG16.17と比較して低減した結合を示した。
【0157】
NCI-H929アッセイで最良に機能するヒト化抗体は、下の表7に示されるように、タンパク質発現レベル、単量体レベル、及びヒト生殖系との配列同一性パーセントに関しても比較された。
【表7】
【0158】
VH3 VK2ヒト化抗体は、それがヒトBCMAに関してラット及びマウスSG16.17抗体と同じ結合親和性(実験誤差内)、重鎖及び軽鎖両方の可変領域におけるヒト生殖系列配列と85%超、良好な発現、及び高単量体パーセントを有することに基づいて有力なヒト化抗体として選択された。
実施例7:SG16.45のヒト化
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【0159】
SG16.45を発現するラットハイブリドーマのラット重鎖及び軽鎖可変領域を配列決定した。HV3~23/HJ3(配列番号24)を重鎖のヒトアクセプター配列として使用し、KV3~20/KJ2(配列番号34)を軽鎖のヒトアクセプター配列として使用した。
【0160】
ラットドナーとヒトアクセプター配列との間で異なる可変領域フレームワーク位置には、H30、H37、H48、H67、H93、H94、及びH107、ならびに位置L14、L19、L21、L38、L58、L71、及びL78が含まれた。これらの残基の異なる順列は、異なるヒト化重鎖及び軽鎖配列の復帰突然変異として含まれた。Kabat CDRにおけるいくつかのラット残基もヒトアクセプター配列の対応する残基との代置に関して試験された。これらの残基の位置は、H50、H60、L24、及びL26であった。6つのヒト化重鎖変異型及び4つのヒト化軽鎖変異型を設計し、発現させた。表8及び9は、各ヒト化変異型鎖におけるヒトアクセプター配列、復帰突然変異(ドナーフレームワーク残基)、及びCDR置換(アクセプターCDR残基)を示す。表10及び11は、ヒト化変異型鎖の各々における復帰突然変異と考えられる位置の各々を占めるアミノ酸を示す。これらの表は、最も近いヒト生殖系列配列と同一の残基のパーセントも示す。最近のINNガイドラインによると、重鎖及び軽鎖の両方においてヒト生殖系列配列と少なくとも85%同一の抗体のみがヒト化と称され得る。
図14~17は、ラット可変領域及びヒトアクセプター配列を有するヒト化重鎖可変領域の整合を示す。
図18及び19は、軽鎖可変領域の整合を示す。可変軽鎖のC末端アルギニン(R)は、代替的に、軽鎖定常領域のN末端アルギニンと見なされ得る。
【0161】
6つのヒト化重鎖及び4つのヒト化軽鎖は、細胞当たり50,000個のBCMAの分子を発現するNCI-H929細胞上に発現されるBCMAへの結合に関して、24全ての可能な順列において試験された。結果を下の表12に示す。
【表12】
【0162】
NCI-H929アッセイで最良に機能するヒト化抗体は、濃度点の全範囲でのU266細胞への結合、ならびに発現及び単量体含量、ならびにヒト生殖系列に対する配列同一性に関してさらに比較された(表13)。
【表13】
【0163】
VH5 VK2、VH1 VK1、及びVH1 VK3は、ヒトに対する結合親和性、重鎖及び軽鎖両方の可変領域におけるヒト生殖系列配列に対する配列同一性、良好な発現、及び高パーセントの単量体VH1 VK1に基づいて全体的に最良の抗体であり、VH1 VK3は、多少高い結合(実験誤差内のラットまたはキメラと同じ)を有するが、ヒト生殖系列に対する配列同一性は低い。
【0164】
実施例8:フコシル化が低減されたhSG16.17またはhSG16.45抗体の合成
hSG16.17 VH3 VK2またはhSG16.45 VH5 VK2抗体は、CHO細胞において発現された。フコシル化阻害剤である2-フルオロフコースは、非フコシル化抗体をもたらした抗体の産生中の細胞培養培地に含まれた。例えば、Okeley et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.110:5404-55409(2013)を参照されたい。細胞成長のための基礎培地は、フコース不含であり、2-フルオロフコースが培地に添加されて、タンパク質のフコシル化を阻害した。同上。フコースの抗体への組み込みは、PLRP-Sクロマトグラフィーを介したLC-MS及びエレクトロスプレーイオン化四重極TOF MSにより測定された。同上。
【0165】
実施例9:SCIDまたはNSGマウスにおけるhSG16.17-SEAのインビボ活性
図20A~Cは、SCIDマウスのMM1S播種性腫瘍モデルにおける複数回投与されたhSG16.17-SEAのインビボ活性を示した。動物にMM1S細胞をIVで移植し、投薬は移植9日後に開始された。動物の生存は、経時的に追跡された。1群当たりN=8匹の動物。BCMAコピー#=7,000、CD38コピー#=14,000。A)ipで毎週1mg/kgを5週間、B)ipで毎週3mg/kgを5週間、C)ipで毎週10mg/kgを5週間。SCID動物は、ADCC及びADCPを媒介するために、エフェクター細胞を有した。この図のデータは、hSG16.17 SEAがダラツムバム(CD38標的Abと比較して生存を改善することを示す。非結合h00対照は活性を示さなかった。
【0166】
図21A~Cは、NSGマウスのEJM播種性腫瘍モデルにおける単回投与されたhSG16.17-SEAのインビボ活性を示した。NSG動物は、NK細胞を有せず、最小限の活性マクロファージ動物にIVでEJM細胞を移植し、移植5日後にipで単一用量の抗体が与えられた。動物の生存は、経時的に追跡された。1群当たりN=8匹の動物。BCMAコピー#=45,000。CD38コピー#=47,000。CS1コピー#=14,000。A)1mg/kg用量、B)3mg/kg用量、C)10mg/kg用量。この図のデータは、hSG16.17 SEAがダラツムバム(CD38標的Ab)及びエロツズマブ(CS1標的Ab)と等しい、またはそれより大きい程度で生存を増加させることを示す。WT SG16.17も生存の増加を誘導することができる。非結合h00対照は最大用量で活性を示さなかった。これらの動物においてエフェクター細胞は最小限しかないため、WT及びSEA hSG16.17抗体の活性は、APRIL及びBAFF増殖シグナルの遮断による可能性が高い。
【0167】
図22は、NSGマウスのNCI-H929-ルシフェラーゼ播種性腫瘍モデルにおける複数回投与されたhSG16.17-SEAのインビボ活性を示した。NSG動物にNCI-H929ルシフェラーゼ細胞を移植した。抗体の投薬は、生物発光が骨髄で観察された、移植21日後に開始された。合計5用量を、ipで毎週投薬した。1群当たりN=5匹の動物。BCMAコピー#=25,000。CD38コピー#=45,000。CS1コピー#=3,000。平均発光は、未処置及びナイーブ動物と比較して、経時的にプロットされる。hSG16.17 SEAは、ダラツムバム(CD38標的Ab)及びエロツズマブ(CS1標的Ab)と比較して非常に良好な活性を示した。hSG16.17-SEA 10mg/kg 群で観察された発光の増加が1匹の動物によりもたらされた。
【0168】
図23A及び23Bは、NSGマウスのNCI-H929-ルシフェラーゼ播種性腫瘍モデルにおける単回投与されたhSG16.17-SEAのインビボ活性を示した。NSG動物にNCI-H929ルシフェラーゼ細胞を移植した。抗体の投薬は、生物発光が骨髄で観察された、注射21日後に開始された。IPで1回投薬。1群当たりN=5匹の動物。A)3mg/kg WT対SEA抗体。B)hSG16.17 SEAの投薬範囲。この図のデータは、hSG16.17 SEAが0.3mg/kgの単一用量で活性であり得、hSG16.17SEAがそのWT(フコシル化)対応物よりも活性であり得ることを示す。
【0169】
図23A及び23Bは、NSGマウスのNCI-H929-ルシフェラーゼ播種性腫瘍モデルにおける単回投与されたhSG16.17-SEAのインビボ活性を示した。NSG動物にNCI-H929ルシフェラーゼ細胞を移植した。抗体の投薬は、生物発光が骨髄で観察された、注射21日後に開始された。IPで1回投薬。1群当たりN=5匹の動物。A)3mg/kg WT対SEA抗体。B)hSG16.17 SEAの投薬範囲。この図のデータは、hSG16.17 SEAが0.3mg/kgの単一用量で活性であり得、hSG16.17SEAがそのWT(フコシル化)対応物よりも活性であり得ることを示す。発光に対する作用は、動物生存の延長(データ示さず)を意味する。
【0170】
図24 SCIDマウスのMOLP-8-ルシフェラーゼ播種性腫瘍モデルにおける単回投与されたhSG16.17-SEAのインビボ活性。SCID動物にMOLP-8ルシフェラーゼ細胞をIVにより移植した。抗体の投薬は、生物発光が骨髄で観察された、注射13日後に開始された。IPで1回投薬。1群当たりN=5匹の動物。BCMAコピー#=2,000。発光は、経時的にプロットされる。これらのデータは、2000のBCMAコピーのみでも、hSG16.17-SEAが顕著な抗腫瘍活性を示すことを示す。FcγRIIまたはFcγRIIIに結合しない脱グリコシル化SEA BCMA抗体は、h00 SEA非結合対照と類似する活性を示さなかった。これは、このモデルにおけるFc媒介活性の重要性を明らかにする。
【0171】
図25 SG16.17 SEA抗体は、インビトロでのWT抗体と比較して、MM1R標的細胞上の改善されたADCC活性を示す。NK細胞を、EasySepヒトNK細胞濃縮キットを使用して、負選択を介してPBMCから単離し、得られたCD16+細胞を定量化した。多発性骨髄腫MM1R ADCC標的細胞をクロム-51で1時間標識した。アッセイプレートに抗体の希釈系列、続いて標的細胞(T)及びNKエフェクター細胞(E)を13:1のE:T比で添加した。溶解は、37℃で4時間後の合計及び自発的放出対照に基づいて計算された。これらのデータは、WT抗体ならびに臨床抗体のダラツムバム及びエロツズマブに対して、非フコシル化SEA SG16.17抗体のADCC活性における顕著な改善を示す。
【0172】
本発明は、理解の明確性の目的に関して詳細に記載されてきたが、ある特定の修正が付属の特許請求の範囲の範囲内で実践され得る。本明細書に引用される受入番号、ウェブサイトなどを含む全ての刊行物及び特許文献は、各々が個々に示される場合と同じ程度に、全ての目的において、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。異なるバージョンの配列、ウェブサイト、または他の参照文献が異なる時点で存在し得る範囲で、有効出願日の参照文献に関連するバージョンを意味する。有効出願日とは、問題の受入番号が開示される最も早い優先日を意味する。別途文脈から明らかでない限り、本発明の任意の要素、実施形態、ステップ、特徴、または態様は、任意のその他と組み合わせて行うことができる。