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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019698
(43)【公開日】2024-02-09
(54)【発明の名称】ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20240202BHJP
【FI】
A61M25/09 516
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023218719
(22)【出願日】2023-12-26
(62)【分割の表示】P 2021566723の分割
【原出願日】2019-12-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)集会名:一般社団法人日本心血管インターベンション治療学会 第28回CVIT2019学術集会、開催日:令和1年9月19日 (2)配布場所:名古屋国際会議場、配布日:令和1年9月19日 (3)販売場所:医療法人徳洲会 札幌東徳洲会病院、販売日:令和1年9月3日 他39件 (4)販売場所:名古屋ハートセンター、販売日:令和1年10月24日 他82件
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛田 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】岩田 尚純
(57)【要約】
【課題】シェイピングにおいて容易にガイドワイヤの先端部を特定面方向に曲げることができるガイドワイヤを提供する。
【解決手段】
ガイドワイヤは、コアシャフトを備える。コアシャフトの軸方向に直交する断面において長さが最大である径を最大径とし、断面において最大径の方向に直交する方向の径を直交径とし、最大径と直交径との差を最大径で除した値を偏平率としたとき、コアシャフトは、コアシャフトの先端側に位置し、偏平率が7%以上かつ35%以下である第1の特定部分を有する。コアシャフトの軸方向における第1の特定部分は、5mm以上である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシャフトを備えるガイドワイヤであって、
前記コアシャフトの軸方向に直交する断面において長さが最大である径を最大径とし、前記断面において前記最大径の方向に直交する方向の径を直交径とし、前記最大径と前記直交径との差を前記最大径で除した値を偏平率としたとき、
前記コアシャフトは、前記コアシャフトの先端側に位置し、前記偏平率が7%以上かつ35%以下である第1の特定部分を有し、
前記軸方向における前記第1の特定部分は、5mm以上である、
ガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、医療用のガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
血管等における狭窄部や閉塞部(以下、「病変部」という。)を治療または検査する方法として、カテーテルを用いた方法が広く行われている。一般に、カテーテルを血管等における病変部に案内するために、ガイドワイヤが用いられる。ガイドワイヤは、例えば金属材料により形成されるコアシャフトを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来のガイドワイヤの多くは、ガイドワイヤの先端部の横断面(コアシャフトの軸方向に直交する断面)が円形である。
【0004】
ガイドワイヤを用いる方法では、ガイドワイヤの血管選択性を向上させるために、医師等の手技者がガイドワイヤを血管等に挿入する前に予めガイドワイヤの先端部を所定の角度に曲げておく「シェイピング」と呼ばれる処置が行われることがある。従来においては、横断面が円形であるガイドワイヤの先端部をシェイピングにより曲げることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-91070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シェイピングにおいて、シェイピング後のガイドワイヤの先端部の曲がり方向が予め定められた方向(厳密には、ガイドワイヤの軸方向に沿うある面に沿う方向。以下、「特定面方向」という。)に限定されること(「2次元シェイピング」と呼ばれることがある。)が要求されることがある。例えば、ガイドワイヤの先端を含む第1の部分と、第1の部分よりもガイドワイヤの基端側に位置する第2の部分とのそれぞれを曲げるシェイピングを行う際に、第1の部分の曲がり方向と第2の部分の曲がり方向との両方が同一の特定面方向に限定されることが要求される。
【0007】
ガイドワイヤの先端部の横断面(コアシャフトの軸方向に直交する断面)が円形である構成では、ガイドワイヤの先端部の変形のしやすさは、変形方向毎に差が無い。そのため、この構成においては、コアシャフトの先端部(ひいては、ガイドワイヤの先端部)が特定面方向とは異なる方向に変形すること(「3次元シェイピング」と呼ばれることがある。)がある。そのため、この構成においては、シェイピングにおいてガイドワイヤの先端部を特定面方向(または、特定面方向に近い方向)に曲げることが容易ではない。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示されるガイドワイヤは、コアシャフトを備えるガイドワイヤであって、前記コアシャフトの軸方向に直交する断面において長さが最大である径を最大径とし、前記断面において前記最大径の方向に直交する方向の径を直交径とし、前記最大径と前記直交径との差を前記最大径で除した値を偏平率としたとき、前記コアシャフトは、前記コアシャフトの先端側に位置し、前記偏平率が7%以上かつ35%以下である第1の特定部分を有し、前記軸方向における前記第1の特定部分は、5mm以上である。
【0011】
本ガイドワイヤでは、上述したように、前記第1の特定部分における偏平率は、7%以上である。前記軸方向における前記第1の特定部分の長さは、5mm以上である。そのため、本ガイドワイヤによれば、シェイピングにおいて、容易に前記第1の特定部分を特定面方向(具体的には、前記軸方向および前記直交径の方向に沿った面)または特定面方向に近い方向に曲げることができる。
【0012】
また、本ガイドワイヤでは、上述したように前記第1の特定部分の偏平率は、35%以下である。そのため、本ガイドワイヤによれば、上述したようにシェイピングにおいて容易に前記第1の特定部分を特定面方向に曲げることができる構成でありながら、前記ガイドワイヤの回転性能を確保することができる。
【0013】
(2)上記ガイドワイヤにおいて、前記第1の特定部分は、ステンレス鋼を含む材料によって形成されている構成としてもよい。本ガイドワイヤでは、前記第1の特定部分が塑性変形しやすいステンレス鋼を含む材料によって形成されていることにより、シェイピングによる変形が元に戻らずに残りやすいため、容易にシェイピングを行うことができる。
【0014】
(3)上記ガイドワイヤにおいて、前記コアシャフトは、前記第1の特定部分よりも前記コアシャフトの先端側に位置し、偏平率が40%以上である第2の特定部分を有する構成としてもよい。本ガイドワイヤは、前記第2の特定部分を比較的小さく曲げ、前記第2の特定部分よりも先端側に位置する前記第1の特定部分を比較的大きく曲げた状態として前記ガイドワイヤを用いる場合に特に好適である。
【0015】
(4)上記ガイドワイヤにおいて、前記第1の特定部分の前記最大径の方向と、前記第2の特定部分の前記最大径の方向とは、互いに平行である構成としてもよい。本ガイドワイヤは、前記第1の特定部分を比較的小さく曲げ、前記第1の特定部分よりも先端側に位置する前記第2の特定部分を比較的大きく曲げた状態として前記ガイドワイヤを用いる場合に特に好適である。
【0016】
(5)上記ガイドワイヤにおいて、前記第2の特定部分は、ステンレス鋼を含む材料によって形成されている構成としてもよい。本ガイドワイヤでは、前記第1の特定部分が塑性変形しやすいステンレス鋼を含む材料によって形成されていることにより、シェイピングによる変形が元に戻らずに残りやすいため、容易にシェイピングを行うことができる。
【0017】
(6)上記ガイドワイヤにおいて、前記コアシャフトは、前記第1の特定部分よりも前記ガイドワイヤの基端側に位置し、超弾性合金を含む材料によって形成された超弾性部分を有する構成としてもよい。本ガイドワイヤによれば、上述したようにシェイピングにおいて容易に前記第1の特定部分を特定面方向に曲げることができる構成でありながら、前記ガイドワイヤの操作性や血管選択性を確保することができる。
【0018】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えばガイドワイヤやその製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態におけるガイドワイヤの全体構成を概略的に示す側面図
図2】第1実施形態におけるコアシャフトの一部を拡大して示す側面図
図3図2のIII-IIIの位置におけるコアシャフトの横断面構成を示す断面図
図4図2のIV-IVの位置におけるコアシャフトの横断面構成を示す断面図
図5図2のV-Vの位置におけるコアシャフトの横断面構成を示す断面図
図6】本実施形態におけるシェイピングの方向性に関する評価結果を示す説明図
図7】本実施形態におけるシェイピングの方向性に関する評価結果を示す説明図
図8】シェイピングの方向性を測定する方法を説明するための説明図
図9】本実施形態における回転性能に関する評価結果を示す説明図
図10】本実施形態における回転性能に関する評価結果を示す説明図
図11】本実施形態におけるシェイピングの方向性に関する測定結果の例を示す説明図
図12】回転性能を測定する方法を説明するための説明図
図13】第2実施形態におけるガイドワイヤの全体構成を概略的に示す側面図
図14】第2実施形態におけるコアシャフトの一部を拡大して示す側面図
図15図14のXV-XVの位置におけるコアシャフトの横断面構成を示す断面図
図16】第3実施形態におけるガイドワイヤの全体構成を概略的に示す側面図
図17図16のXVII-XVIIの位置におけるコアシャフトの横断面構成を示す断面図
図18図16のXVIII-XVIIIの位置におけるコアシャフトの横断面構成を示す断面図
図19】第4実施形態におけるガイドワイヤの全体構成を概略的に示す側面図
図20図19のXX-XXの位置におけるコアシャフトの横断面構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.第1実施形態:
A-1.ガイドワイヤ100の構成:
図1は、第1実施形態におけるガイドワイヤ100の全体構成を概略的に示す側面図である。図1には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されており、X軸正方向視におけるガイドワイヤ100の全体構成が示されている。図1において、Z軸正方向側が、体内に挿入される先端側(遠位側)であり、Z軸負方向側が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)である。これらの点は、図2以降の図についても同様である。図1では、後述するコイル体20および先端側接合部30については、断面(具体的には、YZ断面)構成が示されている。図1では、ガイドワイヤ100が全体としてZ軸方向に略平行な直線状となった状態を示しているが、ガイドワイヤ100は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。なお、以下において、ガイドワイヤ100及びガイドワイヤ100の各構成部材について、先端を含み先端から基端側に向かって中途まで延びる部分を「先端部」という。同様に、ガイドワイヤ100及びガイドワイヤ100の各構成部材について、基端を含み基端から先端側に向かって中途まで延びる部分を「基端部」という。
【0021】
ガイドワイヤ100は、例えば血管等における病変部(狭窄部や閉塞部)にカテーテル(図示しない)を案内するために、血管等に挿入される医療用デバイスである。図1に示すように、ガイドワイヤ100は、コアシャフト10と、コイル体20と、先端側接合部30と、基端側接合部40とを備えている。
【0022】
コアシャフト10は、先端側が細径であり、基端側が太径である棒状の部材である。コアシャフト10は、コアシャフト10の先端を含む第1のコアシャフト部11と、第1のコアシャフト部11に対してコアシャフト10Aの基端側に位置する第2のコアシャフト部12とを備えている。第1のコアシャフト部11の詳細については、後述する。
【0023】
第2のコアシャフト部12は、細径部120と、太径部121と、テーパ部122とを有している。なお、図1では、第2のコアシャフト部12の太径部121の一部の図示が省略されている。第2のコアシャフト部12は、特許請求の範囲の超弾性部分の一例である。
【0024】
第2のコアシャフト部12の細径部120は、第2のコアシャフト部12の先端を含む部分である。細径部120は、横断面が円形である棒状をなしている。横断面とは、コアシャフト10の軸方向(本実施形態では、Z軸方向)に直交する断面(本実施形態では、XY断面)である(第2実施形態以降においても同様)。なお、本実施形態では、コアシャフト10の軸方向は、ガイドワイヤ100の軸方向と一致している。
【0025】
第2のコアシャフト部12の太径部121は、細径部120に対してコアシャフト10Aの基端側に位置し、横断面が細径部120より外径が大きい円形である棒状をなしている。
【0026】
第2のコアシャフト部12のテーパ部122は、細径部120と太径部121との間に位置している。テーパ部122は、細径部120との境界位置から太径部121との境界位置に向けて外径が徐々に大きくなっている。
【0027】
なお、第2のコアシャフト部12の各部の横断面の形状は、特に限定されるものではなく、例えば三角形や四角形などの多角形であってもよい。
【0028】
第2のコアシャフト部12を形成する材料としては、例えば、金属材料、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金、タングステン等が挙げられるが、本実施形態では、Ni-Ti合金等の超弾性合金を含む材料により形成されている。本実施形態においては、超弾性合金を含む材料により形成された第2のコアシャフト部12を備える構成であることにより、ガイドワイヤ100が屈曲した血管等を進行した際にも、変形した第2のコアシャフト部12の形状が元の形状に戻る性能(「復元性」と呼ばれることがある。)を発揮することができ、これにより、ガイドワイヤ100の操作性や血管選択性を確保することができる。
【0029】
コイル体20は、1本の素線を螺旋状に巻回することにより中空円筒状に形成したコイル状の部材である。コイル体20は、コアシャフト10の先端部(具体的には、第1のコアシャフト部11と、第2のコアシャフト部12の細径部120とテーパ部122と太径部121の一部)の外周を取り囲むように配置されている。
【0030】
コイル体20は、例えば、金属材料、より具体的には、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、またはコバルト合金といった放射線透過性合金や、金、白金、タングステン、またはこれらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)といった放射線不透過性合金により構成される。コイル体20の少なくとも一部が放射線不透過性の材料で形成されている場合には、手技者は、放射線透視画像下でコイル体20の位置を把握することができる。
【0031】
先端側接合部30は、コアシャフト10の先端とコイル体20の先端とを接合している。先端側接合部30の内部に、コアシャフト10の先端とコイル体20の先端とが埋め込まれるようにして固着されている。先端側接合部30の先端側の外周面は、滑らかな面(例えば、略半球面)となっている。先端側接合部30は、例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだやエポキシ系接着剤などの接着剤により構成される。コアシャフト10に対して先端側に先端側接合部30が配置されていることによって、コアシャフト10が血管壁などに当接することが防止され、ひいてはコアシャフト10が損傷等することが抑制される。
【0032】
基端側接合部40は、コアシャフト10の基端側とコイル体20の基端側とを接合する部材である。基端側接合部40は、上述した先端側接合部30と同様の材料により構成される。なお、基端側接合部40は、コイル体20の基端側に限定されず、コイル体20のどの位置に配置されていても良い。
【0033】
A-2.第1のコアシャフト部11の詳細構成:
図2は、第1実施形態におけるコアシャフト10の一部を拡大して示す側面図である。図2には、X軸正方向視におけるコアシャフト10の一部(図1のX1の部分)の構成が示されている。図3は、図2のIII-IIIの位置におけるコアシャフト10の横断面構成を示す図であり、図4は、図2のIV-IVの位置におけるコアシャフト10の横断面構成を示す図であり、図5は、図2のV-Vの位置におけるコアシャフト10の横断面構成を示す図である。図3から図5までの図には、Z軸負方向視におけるコアシャフト10の横断面構成が示されている。
【0034】
第1のコアシャフト部11は、棒状の部材である。本実施形態では、第1のコアシャフト部11は、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)を含む材料によって形成されている。第1のコアシャフト部11は、「リボン」または「シェイピングリボン」と呼ばれることがある。第1のコアシャフト部11は、第2のコアシャフト部12(の細径部120)の先端に接続(例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだやエポキシ系接着剤などの接着剤により接合)されている。
【0035】
図2に示すように、第1のコアシャフト部11は、高偏平部110と、低偏平部112と、テーパ部111とを有している。なお、第1のコアシャフト部11の高偏平部110は、特許請求の範囲における第2の特定部分の一例であり、第1のコアシャフト部11の低偏平部112は、特許請求の範囲における第1の特定部分の一例である。
【0036】
以下において、横断面(コアシャフト10の軸方向(本実施形態では、Z軸方向)に直交する断面(本実施形態では、XY断面))において長さが最大である径を「最大径」といい、横断面において最大径の方向に直交する方向の長さが最大である径を「直交径」といい、最大径と直交径との差を最大径で除した値(%)を「偏平率」という。
【0037】
第1のコアシャフト部11の高偏平部110は、第1のコアシャフト部11の先端を含む部分である。
【0038】
図3に示すように、高偏平部110の横断面は、X軸方向の径を長径とし、Y軸方向の径を短径とする偏平形状(略矩形または略楕円形)をなしている。高偏平部110の横断面においては、当該長径が最大径D11に相当し、当該短径が直交径D12に相当する。
【0039】
第1のコアシャフト部11の高偏平部110の横断面における偏平率は、40%以上である。具体例としては、素線径(後述するプレス加工等の偏平化加工を施す前の棒状部材の径。以下、同様)が40μmである場合に、高偏平部110において、最大径D11は、57μmであり、直交径D12は、24μmであり、偏平率は、57.9%である。第1のコアシャフト部11の高偏平部110の横断面における偏平率は、40%以上である他の値であってもよい(下記の第3実施形態においても同様)。
【0040】
図2に示すように、第1のコアシャフト部11の低偏平部112は、第1のコアシャフト部11の基端を含む部分である。低偏平部112は、低偏平部112の基端側において、第2のコアシャフト部12(の細径部120)の先端部との接続部分を有している。
【0041】
図4に示すように、低偏平部112の横断面は、X軸方向の径を長径とし、Y軸方向の径を短径とする偏平形状(略矩形または略楕円形)をなしている。低偏平部112の横断面においては、当該長径が最大径D21に相当し、当該短径が直交径D22に相当する。
【0042】
第1のコアシャフト部11の低偏平部112における偏平率は、7%以上かつ35%以下である。具体例としては、素線径が40μmの場合、偏平率が30.0%であれば、低偏平部112において、最大径D21は、46μmであり、直交径D22は、32μmである。また偏平率が7.3%であれば、最大径D21は41μmであり、直交径D22は38μmである。素線径が75μmの場合、偏平率が31.0%であれば、最大径D21は87μmであり、直交径D22は60μm、偏平率が7.8%であれば、最大径D21は77μmであり、直交径D22は71μmとなる。
【0043】
図2に示すように、第1のコアシャフト部11のテーパ部111は、高偏平部110と低偏平部112との間に位置している。テーパ部111は、高偏平部110との境界位置から低偏平部112との境界位置に向けて偏平率が段階的に変化又は徐変している。
【0044】
なお、上述した偏平形状(略矩形または略楕円形)をなす横断面を有する第1のコアシャフト部11は、例えば、ステンレス鋼を含む材料によって形成され、横断面が円形である棒状部材に、プレス加工等の偏平化加工を施すことにより製造することができる。
【0045】
A-3.第1実施形態の効果:
以上説明したように、第1実施形態のガイドワイヤ100は、コアシャフト10を備える。コアシャフト10は、コアシャフト10の先端側に位置し、偏平率が7%以上かつ35%以下である(第1のコアシャフト部11の)低偏平部112を有する。コアシャフト10の軸方向(本実施形態では、Z軸方向)における第1のコアシャフト部11の低偏平部112の長さは、5mm以上である。
【0046】
仮にガイドワイヤ100の先端部の横断面が円形である構成では、ガイドワイヤ100の先端部の変形のしやすさは、変形方向毎に差が無い。そのため、この構成においては、コアシャフト10の先端部(ひいては、ガイドワイヤ100の先端部)が特定面方向とは異なる方向に変形すること(「3次元シェイピング」と呼ばれることがある。)がある。そのため、この構成においては、シェイピングにおいてガイドワイヤ100の先端部を特定面方向(または、特定面方向に近い方向)に曲げることが容易ではない。
【0047】
これに対し、第1実施形態のガイドワイヤ100では、上述したように、第1のコアシャフト部11の低偏平部112における偏平率は、7%以上である。コアシャフト10の軸方向における第1のコアシャフト部11の低偏平部112の長さは、5mm以上である。そのため、第1実施形態のガイドワイヤ100においては、第1のコアシャフト部11の低偏平部112の横断面が円形である(言い換えると、上記偏平率が0%である)構成と比べて、シェイピングにおいて低偏平部112の曲がり方向が特定面方向(具体的には、コアシャフト10の軸方向および直交径D22の方向に沿った面(本実施形態では、YZ面)に沿う方向)に限定される傾向となる。そのため、第1実施形態のガイドワイヤ100によれば、シェイピングにおいて、容易に第1のコアシャフト部11の低偏平部112を特定面方向(または、特定面方向に近い方向)に曲げることができる。
【0048】
また、仮に第1のコアシャフト部11の低偏平部112における偏平率が40%以上である構成においては、偏平率が高い(言い換えると、最大径D21と直交径D22との差が大きい)ことにより、血管等に挿入されたガイドワイヤ100を回転させた際に、ガイドワイヤ100の先端部(第1のコアシャフト部11の低偏平部112の周辺)が血管壁等に接触しながら鞭を打つように跳ねて右往左往する「ウィップ」と呼ばれる挙動をすることがあり、これによりガイドワイヤ100の回転性能(操作性)が低下することがある。
【0049】
これに対し、第1実施形態のガイドワイヤ100では、上述したように第1のコアシャフト部11の低偏平部112の偏平率は、35%以下である。そのため、第1実施形態のガイドワイヤ100においては、血管等に挿入されたガイドワイヤ100を回転させた際にウィップが生じることが抑制され、ひいてはウィップの発生に起因するガイドワイヤ100の回転性能の低下が抑制される。そのため、第1実施形態のガイドワイヤ100によれば、上述したようにシェイピングにおいて容易に第1のコアシャフト部11の低偏平部112を特定面方向に曲げることができる構成でありながら、ガイドワイヤ100の回転性能を確保することができる。
【0050】
なお、コアシャフト10の軸方向における第1のコアシャフト部11の低偏平部112の長さが5mm未満である構成においては、先端部の形状付けが行い難く、本実施形態では、コアシャフト10の軸方向における第1のコアシャフト部11の低偏平部112の長さが5mm以上であることにより、先端部の形状付けが行い易くなる。また、コアシャフト10の軸方向における第1のコアシャフト部11の低偏平部112の長さが過度に長いと、ウィップが発生し易くなる恐れがあるため、コアシャフト10の軸方向における第1のコアシャフト部11の低偏平部112の長さは、例えば、15mm以下であることが好ましい。
【0051】
また、第1実施形態のガイドワイヤ100では、第1のコアシャフト部11の低偏平部112の素線径は、40μm以上である。仮に素線径が40μm未満である構成においては、偏平率に関わらず、シェイピングの方向性が特定面方向に限定される傾向となりにくい。そのため、第1のコアシャフト部11の低偏平部112の素線径が40μm以上である本実施形態においては、素線径が40μm未満である構成と比べて、シェイピングの方向性が特定面方向に限定される傾向となる。従って、本実施形態によれば、ガイドワイヤ100の回転性能をより確実に確保することができる。
【0052】
また、第1実施形態のガイドワイヤ100では、第1のコアシャフト部11の低偏平部112は、ステンレス鋼を含む材料によって形成されている。そのため、第1実施形態のガイドワイヤ100では、第1のコアシャフト部11の低偏平部112が塑性変形しやすいステンレス鋼を含む材料によって形成されていることにより、シェイピングによる変形が元に戻らずに残りやすいため、容易にシェイピングを行うことができる。
【0053】
また、第1実施形態のガイドワイヤ100では、コアシャフト10は、第1のコアシャフト部11の低偏平部112よりもコアシャフト10の先端側に位置し、偏平率が40%以上である第1のコアシャフト部11の高偏平部110を有する。そのため、第1実施形態のガイドワイヤ100においては、第1のコアシャフト部11の低偏平部112よりもガイドワイヤ100の先端側に位置する高偏平部110のシェイピングによる曲がり角度が、第1のコアシャフト部11の低偏平部112のシェイピングによる曲がり角度よりも大きい状態となりやすい。従って、第1実施形態のガイドワイヤ100は、第1のコアシャフト部11の低偏平部112を比較的小さく曲げ、高偏平部110よりも先端側に位置する高偏平部110を比較的大きく曲げた状態としてガイドワイヤ100を用いる場合に特に好適である。
【0054】
また、第1実施形態のガイドワイヤ100では、第1のコアシャフト部11の低偏平部112の最大径D21の方向と、第1のコアシャフト部11の高偏平部110の最大径D11の方向とは、互いに平行である。そのため、第1のコアシャフト部11の低偏平部112と高偏平部110とにおけるシェイピングによる曲がり方向は、最大径D11、D21の方向よりも直交径D12、D22の方向に沿う傾向となる結果、略同一の面方向となる。従って、第1のコアシャフト部11の低偏平部112と高偏平部110との間で3次元シェイプが発生することが抑制され、これにより、シェイピングによるガイドワイヤ100の変形の方向性が特定面方向(または、特定面方向に近い方向)に限定されるようにすることができる。
【0055】
また、第1実施形態のガイドワイヤ100では、第1のコアシャフト部11の高偏平部110は、ステンレス鋼を含む材料によって形成されている。そのため、第1実施形態のガイドワイヤ100では、第1のコアシャフト部11の高偏平部110が塑性変形しやすいステンレス鋼を含む材料によって形成されていることにより、シェイピングによる変形が元に戻らずに残りやすいため、容易にシェイピングを行うことができる。
【0056】
また、第1実施形態のガイドワイヤ100では、コアシャフト10は、第1のコアシャフト部11の低偏平部112よりもガイドワイヤ100の基端側に位置し、超弾性合金を含む材料によって形成された第2のコアシャフト部12を有する。第1実施形態のガイドワイヤ100では、第1のコアシャフト部11の低偏平部112よりもガイドワイヤ100の基端側に位置する第2のコアシャフト部12が超弾性合金を含む材料によって形成されていることにより、第2のコアシャフト部12の復元性を発揮することができ、これにより、ガイドワイヤ100の操作性や血管選択性を確保することができる。従って、第1実施形態のガイドワイヤ100によれば、上述したようにシェイピングにおいて容易に第1のコアシャフト部11の低偏平部112を特定面方向に曲げることができる構成でありながら、ガイドワイヤ100の操作性や血管選択性を確保することができる。
【0057】
A-4.第1実施形態の性能評価:
A-4-1.シェイピングの方向性に関する評価:
ガイドワイヤのサンプルを作製し、該サンプルを用いてガイドワイヤのシェイピングの方向性に関する評価を行った。図6および図7は、本実施形態におけるシェイピングの方向性に関する評価結果を示す説明図である。
【0058】
A-4-1-1.各サンプルについて:
図6および図7に示すように、本性能評価には、ガイドワイヤの30個のサンプル(サンプル1、2、・・・、30)について、シェイピングの方向性に関する評価を行った。30個のサンプルは、全体として、上述のガイドワイヤ100と略同一構成である。具体的には、30個のサンプルは、コアシャフトと、コイル体等とを備えるガイドワイヤである。コアシャフトは、その先端を含み、ステンレス鋼を含む材料により形成された第1のコアシャフト部と、第1のコアシャフト部に対してコアシャフトの基端側に位置し、Ni-Ti合金等の超弾性合金を含む材料により形成された第2のコアシャフト部とを備えている。
【0059】
30個のサンプルは、素線径(横断面(XY断面)において長さが最大である径)と、偏平率との少なくとも一方が互いに異なっている。具体的には、サンプル1~6では、素線径が80μmであり、サンプル7~12では、素線径が70μmであり、サンプル13~18では、素線径が55μmであり、サンプル19~24では、素線径が40μmであり、サンプル25~30では、素線径が30μmである。
【0060】
サンプル1~6は、図6に示すように、偏平率が互いに異なっている。具体的には、サンプル1における偏平率は0%であり、サンプル2における偏平率は7.5%であり、サンプル3における偏平率は15%であり、サンプル4における偏平率は23%であり、サンプル5における偏平率は35%であり、サンプル6における偏平率は38%である。同様に、サンプル7~12、サンプル13~18、サンプル19~24、およびサンプル25~30も、それぞれ、図6および図7に示すように、偏平率が互いに異なっている。
【0061】
なお、各サンプルにおける最大径および直交径(ひいては、偏平率)とは、横断面が円形状である素線にプレス加工を施すことにより上述のような形状である横断面を有する第1のコアシャフト部を製造する際に、プレスの押し込み量を変えることにより調整することができる。具体的には、プレスの押し込み量を大きくするほど、最大径を大きくするとともに直交径を小さくすることができる(ひいては、偏平率を大きくすることができる)。
【0062】
A-4-1-2.最大径および直交径の特定方法:
各サンプルにおける最大径および直交径は、例えば、次のようにして特定する。まず、各サンプルのコアシャフトを切り出して、その切断面を、電子顕微鏡により例えば100,000倍の倍率で断面観察することにより特定する。このように第1のコアシャフト部において互いに異なる複数箇所(例えば10箇所)のそれぞれの最大径および直交径を算出し、それらの複数箇所の最大径の平均値を、第1のコアシャフト部の最大径とし、それらの複数箇所の直交径の平均値を、第1のコアシャフト部の直交径とする。または、測定方法は、各サンプルのコアシャフトの外周にレーザー等を照射して、コアシャフトの外形形状を抽出して最大径及び直交径を算出するものであっても良く、特に限定されるものではない。
【0063】
A-4-1-3.シェイピングの方向性の評価方法:
図8は、シェイピングの方向性を測定する方法を説明するための説明図である。なお、図8では、本実施形態の第1のコアシャフト部11を備えるサンプルにおける低偏平部112が模式的に示されている。シェイピングの方向性は、次のようにして評価した。まず、図8に示すように、第1のコアシャフト部の先端を、直交径の方向に沿う面方向A(図8のYZ面方向)に沿って90°湾曲させる。次に、第1のコアシャフト部の先端に面方向Aに略直交する面方向B(図8のXZ面方向)に沿う力を加える。この際に面方向A(または、面方向Bよりも面方向Aに近い面方向)に湾曲したら「○」(合格)と判定し、面方向B(または、面方向Aよりも面方向Bに近い面方向)に湾曲したら「×」(不合格)と判定した。
【0064】
A-4-1-4.シェイピングの方向性の評価結果:
図6および図7に示すように、サンプル1、7、13、19では、シェイピングの方向性の評価結果が「×」であった。一方、サンプル2~6、8~12、14~18、20~24では、シェイピングの方向性の評価結果が「○」であった。このことは、偏平率を7%以上にすることにより、シェイピングの方向性が特定面方向(直交径の方向に沿う面方向A)に限定される傾向となることを意味する。
【0065】
また、サンプル25~30では、シェイピングの方向性の評価結果が「×」であった。一方、上述したように、サンプル20~24等では、シェイピングの方向性の評価結果が「○」であった。このことは、素線径を40μm以上とすることにより、シェイピングの方向性が特定面方向(直交径の方向に沿う面方向A)に限定される傾向となり、素線径を40μm未満とした場合には、偏平率に関わらず、シェイピングの方向性が特定面方向に限定される傾向となりにくいことを意味する。
【0066】
A-4-2.回転性能に関する評価:
上記のシェイピングの方向に関する評価に用いた30個のサンプルを用いてガイドワイヤの回転性能に関する評価を行った。図9および図10は、本実施形態における回転性能の評価結果を示す説明図である。図11は、本実施形態における回転性能に関する測定結果の例を示す説明図である。
【0067】
A-4-2-1.回転性能の評価方法:
回転性能は、次のようにして評価した。ガイドワイヤの基端部を(ガイドワイヤの軸の周方向に)回転させた際に、基端部が180°回転するまでにガイドワイヤの先端部(本性能評価では、第1コアシャウト部)の回転が生じるか否かにより評価する。
【0068】
図12は、回転性能を測定する方法を説明するための説明図である。図12では、本実施形態のガイドワイヤ100をサンプルとして用いた場合の状態が示されている。具体的には、まず、図12に示すように、第1コアシャウト部の先端部(本実施形態のガイドワイヤ100では、低偏平部112)を曲率半径5mmで90°に湾曲させ、その基端側の部分を先端部とは反対側に曲率半径70mmで湾曲させた状態のガイドワイヤを準備する。ガイドワイヤの基端部に、ガイドワイヤを(ガイドワイヤの軸の周方向に)回転させるためのモーターMを取り付ける。そして、モーターMを駆動させ、ガイドワイヤを(ガイドワイヤの軸の周方向に)回転させる。この際の第1コアシャウト部の先端部(言い換えると、ガイドワイヤの先端部)を、カメラCを用いて動画撮影し、該動画の内容に基づいて、ガイドワイヤの先端部(第1コアシャウト部)の回転の有無を判定する。
【0069】
そして、基端部が180°回転するまでにガイドワイヤの先端部(本性能評価では、第1コアシャウト部)の回転が生じる場合には「○」(合格)と判定し、180°回転するまでに回転が生じない場合には「×」(不合格)と判定した。なお、第1コアシャウト部の先端部における曲率半径が小さいほど、基端部の回転角度に対する先端部の回転角度の遅延は大きくなる傾向となるので、第1コアシャウト部の先端部における曲率半径によって回転性能の評価の合否基準は異なるものとなる。
【0070】
A-4-2-2.回転性能の評価結果:
図9および図10に示すように、サンプル1~4では、回転性能の評価結果が「○」であった。一方、サンプル5、6では、回転性能の評価結果が「×」であった。このことは、偏平率を35%未満とすることにより、ガイドワイヤの回転性能が向上することを意味する。なお、ガイドワイヤの回転性能が向上する理由としては、偏平率が十分小さいことにより、上記のウィップの発生が抑制されることが考えられる。
【0071】
なお、図11には、本性能評価におけるガイドワイヤの回転性能の測定結果の例として、サンプル1、3、5の測定結果が示されている。サンプル1では、入力回転角度(ガイドワイヤの基端部の回転角度)と出力回転角度(ガイドワイヤの先端部の回転角度)とが傾きが1に近い略線形の対応関係となっている。すなわち、ガイドワイヤの基端部を回転させた際に、先端部は基端部の回転角度と略同一の回転角度で回転する。従って、サンプル1では、基端部が180°回転するまでにガイドワイヤの先端部の回転が生じるので、サンプル1は「○」と判定された。また、サンプル3では、基端部が180°よりも小さい回転角度を回転するまでに先端部の回転が生じているので、サンプル3は「○」と判定された。また、サンプル5では、基端部が180°よりも大きい回転角度を回転するまでに先端部の回転が生じているので、サンプル5は「×」と判定された。
【0072】
また、サンプル7~30では、回転性能の評価結果が「○」であった。このことは、素線径を80μm未満とした場合には、偏平率に関わらずに十分な回転性能を確保しやすく、上記のような回転性能に関する課題は、素線径を80μm以上とした場合に生じやすいことを意味する。
【0073】
なお、後述する第2~4実施形態および変形例における性能評価(シェイピングの方向性および回転性能に関する評価)の結果も、第1実施形態における性能評価の結果と同様のものとなる。
【0074】
B.第2実施形態:
B-1.ガイドワイヤ100Aの構成:
図13は、第2実施形態におけるガイドワイヤ100Aの全体構成を概略的に示す側面図である。図13には、X軸正方向視におけるガイドワイヤ100Aの全体構成が示されている。図14は、第2実施形態におけるコアシャフト10Aの一部を拡大して示す側面図である。図14には、X軸正方向視におけるコアシャフト10Aの一部(図13のX2の部分)の構成が示されている。図15は、図14のXV-XVの位置におけるコアシャフト10Aの横断面構成を示す断面図である。図15には、Z軸負方向視におけるコアシャフト10Aの横断面構成が示されている。
【0075】
図13および図14に示すように、第2実施形態のガイドワイヤ100Aの構成は、上述した第1実施形態のガイドワイヤ100の構成と比較して、第1のコアシャフト部11Aの形状が異なっている。以下では、第2実施形態のガイドワイヤ100Aの構成の内、上述した第1実施形態のガイドワイヤ100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0076】
図13および図14に示すように、第2実施形態のコアシャフト10Aは、コアシャフト10Aの先端を含む第1のコアシャフト部11Aと、第1のコアシャフト部11Aに対してコアシャフト10Aの基端側に位置する第2のコアシャフト部12とを備えている。
【0077】
図15に示すように、第1のコアシャフト部11Aの横断面(本実施形態では、XY断面)は、X軸方向の径を長径とし、Y軸方向の径を短径とする偏平形状(略矩形または略楕円形)をなしている。第1のコアシャフト部11Aの横断面においては、当該長径が最大径(コアシャフト10Aの軸方向に直交する断面(本実施形態では、XY断面)において長さが最大である径)D31に相当し、当該短径が直交径(コアシャフト10Aの軸方向に直交する断面において最大径の方向に直交する方向の長さが最大である径)D32に相当する。
【0078】
第2実施形態の第1のコアシャフト部11Aは、棒状の部材である。第1のコアシャフト部11Aにおける偏平率は、7%以上かつ35%以下である。具体例としては、第1のコアシャフト部11Aの素線径が40μmの場合、偏平率が30.0%であれば、最大径D31は、46μmであり、直交径D32は、32μmである。また偏平率が7.3%であれば、最大径D31は41μmであり、直交径D32は38μmである。第1のコアシャフト部11Aにおける偏平率は、7%以上かつ35%以下である他の値であってもよい。素線径を変更した場合の最大径D31と直交径D32は、第1実施態様で説明したのと同様である。本実施形態の第1のコアシャフト部11Aは、特許請求の範囲の第1の特定部分の一例である。
【0079】
第2実施形態の第1のコアシャフト部11Aの横断面の形状は、第1のコアシャフト部11Aの軸方向(本実施形態では、Z軸方向)の全長にわたって均一である。
【0080】
B-2.第2実施形態の効果:
以上説明したように、第2実施形態のガイドワイヤ100Aは、コアシャフト10Aを備える。コアシャフト10Aは、コアシャフト10Aの先端側に位置し、偏平率が7%以上かつ35%以下である第1のコアシャフト部11Aを有する。コアシャフト10Aの軸方向(本実施形態では、Z軸方向)における第1のコアシャフト部11Aの長さは、5mm以上である。
【0081】
第2実施形態のガイドワイヤ100Aでは、上述したように、第1のコアシャフト部11Aにおける偏平率は、7%以上かつ35%以下である。そのため、第2実施形態のガイドワイヤ100Aにおいては、第1実施形態の場合と同様の理由から、第1のコアシャフト部11Aの横断面が円形である構成に比べて、シェイピングにおいて第1のコアシャフト部11Aの曲がり方向が特定面方向(具体的には、コアシャフト10Aの軸方向および直交径D32の方向に沿った面(本実施形態では、YZ面)に沿う方向)に限定される傾向となる。そのため、第2実施形態のガイドワイヤ100Aによれば、シェイピングにおいて、容易に第1のコアシャフト部11Aを特定面方向(または、特定面方向に近い方向)に曲げることができる。さらに、第2実施形態のガイドワイヤ100Aでは、上述したように第1のコアシャフト部11Aの偏平率が35%未満である。そのため、第2実施形態のガイドワイヤ100Aによれば、上述したようにシェイピングにおいて容易に第1のコアシャフト部11Aを特定面方向に曲げることができる構成でありながら、第1実施形態の場合と同様の理由から、ガイドワイヤ100Aの回転性能を確保することができる。
【0082】
なお、コアシャフト10Aの軸方向における第1のコアシャフト部11Aの長さが5mm未満である構成においては、先端部の形状付けが行い難く、本実施形態では、コアシャフト10Aの軸方向における第1のコアシャフト部11Aの長さが5mm以上であることにより、先端部の形状付けが行い易くなる。また、コアシャフト10Aの軸方向における第1のコアシャフト部11Aの長さが過度に長いと、ウィップが発生し易くなる恐れがあるため、コアシャフト10Aの軸方向における第1のコアシャフト部11Aの長さは、例えば、15mm以下であることが好ましい。
【0083】
また、第2実施形態のガイドワイヤ100Aでは、第1のコアシャフト部11Aは、ステンレス鋼を含む材料によって形成されている。そのため、第2実施形態のガイドワイヤ100Aでは、第1のコアシャフト部11Aが塑性変形しやすいステンレス鋼を含む材料によって形成されていることにより、シェイピングによる変形が元に戻らずに残りやすいため、容易にシェイピングを行うことができる。
【0084】
また、第2実施形態のガイドワイヤ100Aでは、コアシャフト10Aは、第1のコアシャフト部11Aよりもガイドワイヤ100Aの基端側に位置し、超弾性合金を含む材料によって形成された第2のコアシャフト部12を有する。そのため、第2実施形態のガイドワイヤ100Aによれば、上述したようにシェイピングにおいて容易に第1のコアシャフト部11Aを特定面方向に曲げることができる構成でありながら、第1実施形態の場合と同様の理由から、ガイドワイヤ100Aの操作性や血管選択性を確保することができる。
【0085】
C.第3実施形態:
C-1.ガイドワイヤ100Bの構成:
図16は、第3実施形態におけるガイドワイヤ100Bの全体構成を概略的に示す側面図である。図17は、図16のXV-XVの位置におけるコアシャフト10Bの横断面構成を示す断面図である。図18は、図16のXVIII-XVIIIの位置におけるコアシャフト10Bの横断面構成を示す断面図である。第3実施形態のガイドワイヤ100Bの構成は、上述した第1実施形態のガイドワイヤ100の構成と比較して、コアシャフト10Bの構成が異なっている。以下では、第2実施形態のガイドワイヤ100Aの構成の内、上述した第1実施形態のガイドワイヤ100の構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0086】
図16に示すように、第3実施形態のコアシャフト10Bは、先端側が細径であり、基端側が太径である棒状の部材である。コアシャフト10Bは、コアシャフト10Bの先端を含む第1のコアシャフト部11Bと、第1のコアシャフト部11Bに対してコアシャフト10Bの基端側に位置する第2のコアシャフト部12とを備えている。コアシャフト10Bは、第1のコアシャフト部11Bと、第2のコアシャフト部12とが一体に形成されている。本実施形態では、コアシャフト10Bは、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)を含む材料によって形成されている。
【0087】
図17および図18に示すように、第1のコアシャフト部11Bは、第1実施形態における第1のコアシャフト部11の高偏平部110、テーパ部111、および低偏平部112と同様の形状をなす横断面を有する、高偏平部110B、テーパ部111B、および低偏平部112Bを備えている。
【0088】
C-2.第3実施形態の効果:
第3実施形態のガイドワイヤ100Bは、コアシャフト10Bを備える。コアシャフト10Bは、コアシャフト10Bの先端側に位置し、偏平率が7%以上かつ35%以下である(第1のコアシャフト部11Bの)低偏平部112Bを有する。コアシャフト10Bの軸方向(本実施形態では、Z軸方向)における第1のコアシャフト部11Bの低偏平部112Bの長さは、5mm以上である。
【0089】
そのため、第3実施形態のガイドワイヤ100Bによれば、第1実施形態の場合と同様の理由から、シェイピングにおいて容易に第1のコアシャフト部11Bの低偏平部112Bを特定面方向に曲げることができる構成でありながら、ガイドワイヤ100Bの回転性能を確保することができる。
【0090】
また、第3実施形態のガイドワイヤ100Bでは、第1のコアシャフト部11Bの低偏平部112Bの素線径は、40μm以上である。そのため、本実施形態によれば、第1実施形態の場合と同様の理由から、ガイドワイヤ100Bの回転性能をより確実に確保することができる。
【0091】
また、第3実施形態のガイドワイヤ100Bでは、第1のコアシャフト部11Bの低偏平部112の最大径D51(または素線径)は、80μm以上である。
【0092】
また、第3実施形態のガイドワイヤ100Bでは、第1のコアシャフト部11Bの低偏平部112Bは、ステンレス鋼を含む材料によって形成されている。そのため、第3実施形態のガイドワイヤ100Bでは、第1のコアシャフト部11Bの低偏平部112Bが塑性変形しやすいステンレス鋼を含む材料によって形成されていることにより、シェイピングによる変形が元に戻らずに残りやすいため、容易にシェイピングを行うことができる。
【0093】
また、第3実施形態のガイドワイヤ100Bでは、コアシャフト10Bは、第1のコアシャフト部11Bの低偏平部112Bよりもコアシャフト10Bの先端側に位置し、偏平率が40%以上である(第1のコアシャフト部11Bの)高偏平部110Bを有する。そのため、第3実施形態のガイドワイヤ100Bは、第1実施形態の場合と同様の理由から、第1のコアシャフト部11Bの低偏平部112Bを比較的小さく曲げ、高偏平部110Bよりも先端側に位置する高偏平部110Bを比較的大きく曲げた状態としてガイドワイヤ100Bを用いる場合に特に好適である。
【0094】
また、第3実施形態のガイドワイヤ100Bでは、第1のコアシャフト部11Bの低偏平部112Bの最大径D51の方向と、第1のコアシャフト部11Bの高偏平部110Bの最大径D51の方向とは、互いに平行である。そのため、第1実施形態の場合と同様の理由から、シェイピングによるガイドワイヤ100Bの変形の方向性が特定面方向(または、特定面方向に近い方向)に限定されるようにすることができる。
【0095】
また、第3実施形態のガイドワイヤ100Bでは、第1のコアシャフト部11Bの高偏平部110Bは、ステンレス鋼を含む材料によって形成されている。そのため、第3実施形態のガイドワイヤ100Bでは、第1のコアシャフト部11Bの高偏平部110Bが塑性変形しやすいステンレス鋼を含む材料によって形成されていることにより、シェイピングによる変形が元に戻らずに残りやすいため、容易にシェイピングを行うことができる。
【0096】
D.第4実施形態:
D-1.ガイドワイヤ100Cの構成:
図19は、第4実施形態におけるガイドワイヤ100Cの全体構成を概略的に示す側面図である。図20は、図19のXX-XXの位置におけるコアシャフト10Cの横断面構成を示す断面図である。第4実施形態のガイドワイヤ100Cの構成は、上述した第2実施形態のガイドワイヤ100Aの構成と比較して、コアシャフト10Cの構成が異なっている。以下では、第2実施形態のガイドワイヤ100Aの構成の内、上述した第2実施形態のガイドワイヤ100Aの構成と同一の構成については、同一の符号を付すことによってその説明を適宜省略する。
【0097】
図19に示すように、第4実施形態のコアシャフト10Cは、先端側が細径であり、基端側が太径である棒状の部材である。第4実施形態のコアシャフト10Cは、コアシャフト10Cの先端を含む第1のコアシャフト部11Cと、第1のコアシャフト部11Cに対してコアシャフト10Cの基端側に位置する第2のコアシャフト部12とを備えている。コアシャフト10Cは、第1のコアシャフト部11Cと、第2のコアシャフト部12Cとが一体に形成されている。本実施形態では、コアシャフト10Cは、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)を含む材料によって形成されている。
【0098】
図20に示すように、第1のコアシャフト部11Cは、第2実施形態における第1のコアシャフト部11Aと同様の形状をなす横断面を有している。
【0099】
D-2.第4実施形態の効果:
第4実施形態のガイドワイヤ100Cは、コアシャフト10Cを備える。コアシャフト10Cは、コアシャフト10Cの先端側に位置し、偏平率が7%以上かつ35%以下である第1のコアシャフト部11Cを有する。コアシャフト10Cの軸方向(本実施形態では、Z軸方向)における第1のコアシャフト部11Cの長さは、5mm以上である。
【0100】
第4実施形態のガイドワイヤ100Cでは、上述したように、第1のコアシャフト部11Cにおける偏平率は、7%以上かつ35%以下である。そのため、第4実施形態のガイドワイヤ100Cによれば、第2実施形態および第2実施形態の場合と同様の理由から、シェイピングにおいて容易に第1のコアシャフト部11Cを特定面方向に曲げることができる構成でありながら、第2実施形態および第1実施形態の場合と同様の理由から、ガイドワイヤ100Cの回転性能を確保することができる。
【0101】
また、第4実施形態のガイドワイヤ100Cでは、第1のコアシャフト部11Cは、ステンレス鋼を含む材料によって形成されている。そのため、第4実施形態のガイドワイヤ100Cでは、第1のコアシャフト部11Cが塑性変形しやすいステンレス鋼を含む材料によって形成されていることにより、シェイピングによる変形が元に戻らずに残りやすいため、容易にシェイピングを行うことができる。
【0102】
E.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0103】
上記実施形態におけるガイドワイヤ100、100Aの構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0104】
例えば、上記第1実施形態において、第1のコアシャフト部11の低偏平部112の最大径D21の方向と、第1のコアシャフト部11の高偏平部110の最大径D11の方向とは、互いに平行ではない構成であってもよい。
【0105】
また、上記実施形態において、ガイドワイヤ100、100A、100B、100Cは、先端側接合部30を備えていなくてもよい。
【0106】
また、上記実施形態のガイドワイヤ100、100A、100B、100Cを構成する各部材の材料は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0107】
本明細書で開示される技術は、例えば以下の形態として実現できる。
[形態1]
コアシャフトを備えるガイドワイヤであって、
前記コアシャフトの軸方向に直交する断面において長さが最大である径を最大径とし、前記断面において前記最大径の方向に直交する方向の径を直交径とし、前記最大径と前記直交径との差を前記最大径で除した値を偏平率としたとき、
前記コアシャフトは、前記コアシャフトの先端側に位置し、前記偏平率が7%以上かつ35%以下である第1の特定部分を有し、
前記軸方向における前記第1の特定部分は、5mm以上である、
ガイドワイヤ。
[形態2]
形態1に記載のガイドワイヤであって、
前記第1の特定部分は、ステンレス鋼を含む材料によって形成されている、
ガイドワイヤ。
[形態3]
形態1または形態2に記載のガイドワイヤであって、
前記コアシャフトは、前記第1の特定部分よりも前記コアシャフトの先端側に位置し、前記偏平率が40%以上である第2の特定部分を有する、
ガイドワイヤ。
[形態4]
形態3に記載のガイドワイヤであって、
前記第1の特定部分の前記最大径の方向と、前記第2の特定部分の前記最大径の方向とは、互いに平行である、
ガイドワイヤ。
[形態5]
形態3または形態4に記載のガイドワイヤであって、
前記第2の特定部分は、ステンレス鋼を含む材料によって形成されている、
ガイドワイヤ。
[形態6]
形態1から形態5までのいずれか一項に記載のガイドワイヤであって、
前記コアシャフトは、前記第1の特定部分よりも前記ガイドワイヤの基端側に位置し、超弾性合金を含む材料によって形成された超弾性部分を有する、
ガイドワイヤ。
【符号の説明】
【0108】
10: (第1実施形態の)コアシャフト
10A: (第2実施形態の)コアシャフト
10B: (第3実施形態の)コアシャフト
10C: (第4実施形態の)コアシャフト
11: (第1実施形態の)第1のコアシャフト部
11A: (第2実施形態の)第1のコアシャフト部
11B: (第3実施形態の)第1のコアシャフト部
11C: (第4実施形態の)第1のコアシャフト部
12: 第2のコアシャフト部
20: コイル体
30: 先端側接合部
40: 基端側接合部
100: (第1実施形態の)ガイドワイヤ
100A: (第2実施形態の)ガイドワイヤ
100B: (第3実施形態の)ガイドワイヤ
100C: (第4実施形態の)ガイドワイヤ
110: (第1実施形態の)第1のコアシャフト部の高偏平部
110B: (第3実施形態の)第1のコアシャフト部の高偏平部
111: (第1実施形態の)第1のコアシャフト部のテーパ部
111B: (第3実施形態の)第1のコアシャフト部のテーパ部
112: (第1実施形態の)第1のコアシャフト部の低偏平部
112B: (第3実施形態の)第1のコアシャフト部の低偏平部
120: 第2のコアシャフト部の細径部
121: 第2のコアシャフト部の太径部
122: 第2のコアシャフト部のテーパ部
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