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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019712
(43)【公開日】2024-02-09
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20240202BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20240202BHJP
   B60N 2/14 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/06
B60N2/14
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221158
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2022006142の分割
【原出願日】2017-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邉 仁一
(72)【発明者】
【氏名】新妻 健一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英俊
(57)【要約】
【課題】 回転可能な乗物用シートにおいて、小さなスペースで回転可能にする。
【解決手段】 乗物のフロア2に設けられたシートクッション7及びシートクッションに設けられたシートバック8を有する乗物用シート1であって、シートクッションは、略鉛直方向に延びる複数の回動軸線Aを中心としてフロアに対して回動可能に設けられている。フロアとシートクッションとの間には、複数の回動軸線から選択した1つの回動軸線を中心とした回動を可能にし、かつ残りの回動軸線を中心とした回動を規制する回動装置4が設けられているとよい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物のフロアに設けられたシートクッション及び前記シートクッションに設けられたシートバックを有する乗物用シートであって、
前記フロアと前記シートクッションとの間に設けられ、略鉛直方向に延びる複数の回動軸線から選択した1つの前記回動軸線を中心とした前記シートクッションの回動を可能にし、かつ残りの前記回動軸線を中心とした前記シートクッションの回動を規制する回動装置と、
前記回動装置を制御する制御装置と、
前記制御装置に接続され、乗員が回転方向を選択するためのスイッチとを有し、
前記回動装置は、複数の回動軸ユニットを有し、
複数の前記回動軸ユニットのそれぞれは、
前記フロアに対して固定され、水平方向における第1方向に延びた下レールと、
前記シートクッションに対して固定され、水平方向において前記第1方向と異なる第2方向に延びた上レールと、
前記下レールにスライド移動可能に設けられた下スライダと、
前記上レールにスライド移動可能に設けられると共に、略鉛直方向に延びる軸線を中心として前記下スライダに回動可能に結合した上スライダと、
前記下レールに対する前記下スライダの移動及び前記上レールに対する前記上スライダの移動を選択的に規制することによって前記回動軸ユニットのロック状態及びロック解除状態を切り替える規制部材と、
前記規制部材を駆動するアクチュエータとを有し、
前記制御装置は、前記スイッチからの信号に基づいて前記アクチュエータを制御することによって複数の前記回動軸ユニットの前記ロック状態及び前記ロック解除状態を切り替え、回動中心となる前記回動軸線を選択する乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
略鉛直方向に延びる軸線を中心として自動車のフロアに回動可能に設けられたシートが公知である(例えば、特許文献1)。このシートは、シートの回転位置によって、乗員同士の会話や休憩、景色の観賞に適した様々なシートアレンジを実現することができる。このシートを自動運転車両に適用すると、運転席も自動運転中に様々なシートアレンジを取ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-97780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートの周囲には、車両を構成するドアやピラー、ダッシュボード、センターコンソール等の構造体が存在するため、シートの回転スペースを確保することが難しい。特に、シートの後部には後方に迫り出したシートバックが設けられるため、車室側壁との接触を避けることが困難である。そのため、周囲の構造体との接触を避けて小さなスペースで回転することができるシートが望まれている。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、回転可能な乗物用シートにおいて、小さなスペースで回転可能にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、乗物のフロア(2)に設けられたシートクッション(7)及び前記シートクッションに設けられたシートバック(8)を有する乗物用シート(1)であって、前記シートクッションは、略鉛直方向に延びる複数の回動軸線(A)を中心として前記フロアに対して回動可能に設けられていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、乗物用シートは、複数の回動軸線から1つの回動軸線を選択して回動することによって、様々な位置に移動することができる。これにより、乗物用シートは、小さなスペースで、周囲の構造体を避けるように回動することができる。
【0008】
また、上記の態様において、前記フロアと前記シートクッションとの間には、複数の前記回動軸線から選択した1つの前記回動軸線を中心とした回動を可能にし、かつ残りの前記回動軸線を中心とした回動を規制する回動装置(4)が設けられているとよい。
【0009】
この構成によれば、乗物用シートは、回動装置によって回動軸線を1つに固定することができ、回動態様を規制して円滑に回動することができる。
【0010】
また、上記の態様において、前記回動装置は、回動方向に応じて回動を可能にする前記回動軸線を選択するとよい。
【0011】
この構成によれば、乗物用シートは、回動方向に応じて回動軸線を選択することによって、周囲の構造体を避けるように回動することが可能になる。
【0012】
また、上記の態様において、前記回動軸線は、前記シートクッションの前部に配置された前側回動軸線(A1、A2)と、前記シートクッションの後部に配置された後側回動軸線(A3、A4)とを含み、前記回動装置は、前記シートクッションの前部を後部に対して前記乗物の幅方向内方に向ける内回動時に、前記後側回動軸線を中心とした前記シートクッションの回動を可能にするとよい。
【0013】
この構成によれば、乗物用シートは、内回動時にシートバックと乗物の車幅方向外方にある構造体との接触を避けることができる。
【0014】
また、上記の態様において、前記後側回動軸線(A3)は、前記シートクッションの幅方向において中心よりも前記乗物の幅方における内方に配置されているとよい。
【0015】
この構成によれば、乗物用シートは、内回動時にシートバックと乗物の車幅方向外方にある構造体との接触を一層避けることができる。
【0016】
また、上記の態様において、前記回動軸線は、前記シートクッションの前部に配置された前側回動軸線(A1、A2)と、前記シートクッションの後部に配置された後側回動軸線(A3、A4)とを含み、前記回動装置は、前記シートクッションの前部を後部に対して前記乗物の幅方向外方に向ける外回動時に、前記前側回動軸線を中心とした前記シートクッションの回動を可能にするとよい。
【0017】
この構成によれば、乗物用シートは、外回動時にシートクッションの前端と乗物の車幅方向外方にある構造体との接触を避けることができる。
【0018】
また、上記の態様において、前記回動装置は、複数の回動軸ユニット(17)を有し、複数の前記回動軸ユニットは、前記フロアに対して固定され、水平方向における第1方向に延びた下レール(21)と、前記シートクッションに対して固定され、水平方向において前記第1方向と異なる第2方向に延びた上レール(22)と、前記下レールにスライド移動可能に設けられた下スライダ(23)と、前記上レールにスライド移動可能に設けられると共に、略鉛直方向に延びる軸線を中心として前記下スライダに回動可能に結合した上スライダ(24)と、前記下レールに対する前記下スライダの移動及び前記上レールに対する前記上スライダの移動を選択的に規制する規制装置(25、26)とを有するとよい。
【0019】
この構成によれば、複数の回動軸線のいずれかを選択して回動することができる回動装置を構成することができる。
【0020】
また、上記の態様において、前記回動装置は、上下に配列された複数の回動部材(52、53、54)と、上下に隣り合う前記回動部材を回動可能に接続する複数の回動軸(55、56)と、上下に隣り合う前記回動部材の回動を選択的に規制する規制装置(57、58)とを有するとよい。
【0021】
この構成によれば、複数の回動軸線のいずれかを選択して回動することができる回動装置を簡素な構成にすることができる。
【0022】
また、本発明の他の態様は、乗物のフロアに設けられた下回動部材(72)及び下回動部材に略鉛直方向に延びる回動軸線を中心として回動可能に設けられた上回動部材(73)を備えた回動装置(71)と、前記上回動部材に結合されたロアスライドレール(12)及び前記ロアスライドレールに変位可能に設けられたアッパスライドレール(13)を備えたスライド装置(3)と、前記アッパスライドレールに結合されたシートクッション(7)と、前記シートクッションに設けられたシートバック(8)とを有することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、回動軸線が1つであっても、シートクッションが回動軸線に対して相対変位するため、シートクッションの回動中心の位置を変化させることができる。
【0024】
また、上記の態様において、前記ロアスライドレールに対する前記アッパスライドレールの位置に応じて前記下回動部材に対する前記上回動部材の回動方向が規制されるとよい。
【0025】
この構成によれば、シートクッションの回動中心位置に応じて回動方向を規制することによって、シートクッション及びシートバックと乗物の構造体との接触を避けることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様によれば、乗物用シートは、複数の回動軸線を有し、それらの内から1つの回動軸線を選択して回動することによって、様々な位置に移動することができる。これにより、乗物用シートは、小さなスペースで、周囲の構造体を避けるように回動することができる。
【0027】
また、上記の態様において、複数の回動軸線から選択した1つの回動軸線を中心とした回動を可能にし、かつ残りの回動軸線を中心とした回動を規制する回動装置を設けることによって、乗物用シートは、回動軸線を1つに固定することができ、回動態様を規制して円滑に回動することができる。
【0028】
また、上記の態様において、回動装置が回動方向に応じて回動を可能にする回動軸線を選択することによって、乗物シートは回動方向に応じて周囲の構造体を避けるように回動することが可能になる。
【0029】
また、上記の態様において、シートクッションの内回動時に、回動装置が後側回動軸線を中心としたシートクッションの回動を可能にすることによって、シートバックと乗物の車幅方向外方にある構造体との接触を避けることができる。
【0030】
また、上記の態様において、後側回動軸線をシートクッションの幅方向において中心よりも乗物の幅方向中心側に配置することによって、内回動時にシートバックと乗物の車幅方向外方にある構造体との接触を一層避けることができる。
【0031】
また、上記の態様において、シートクッションの外回動時に、回動装置が前側回動軸線を中心としたシートクッションの回動を可能にすることによって、シートクッションの前端と乗物の車幅方向外方にある構造体との接触を避けることができる。
【0032】
また、上記の態様において、回動装置が複数の回動軸ユニットを有する構成にすることによって、複数の回動軸線から1つの回動軸線を選択して回動することができる回動装置を構成することができる。
【0033】
また、上記の態様において、回動装置が、複数の回動部材と、回動部材を回動可能に接続する複数の回動軸と、回動部材の回動を選択的に規制する規制装置とを有する構成にすることによって、複数の回動軸線から1つの回動軸線を選択して回動することができる回動装置を簡素な構成にすることができる。
【0034】
また、乗物のフロアに設けられた下回動部材及び下回動部材に略鉛直方向に延びる回動軸線を中心として回動可能に設けられた上回動部材を備えた回動装置と、上回動部材に結合されたロアスライドレール及び前記ロアスライドレールに変位可能に設けられたアッパスライドレールを備えたスライド装置と、アッパスライドレールに結合されたシートクッションと、シートクッションに設けられたシートバックとを有する構成にすることによって、回動軸線が1つであっても、シートクッションが回動軸線に対して相対変位するため、シートクッションの回動中心の位置を変化させることができる。
【0035】
また、上記の態様において、ロアスライドレールに対するアッパスライドレールの位置に応じて下回動部材に対する上回動部材の回動方向が規制されるように構成することによって、シートクッション及びシートバックと乗物の構造体との接触を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】第1実施形態に係るシートの斜視図
図2】スライド装置及び回動装置を示す分解斜視図
図3】回動装置の1つの回動軸ユニットを示す断面図
図4】シートの制御系を示すブロック図
図5】内回動時及び外回動時のシートの回動態様を示す説明図
図6】第2実施形態に係るシートの側面図
図7】第2実施形態に係る回動装置を示す分解斜視図
図8】第3実施形態に係るシートの側面図
図9】第3実施形態に係るシートの(A)内回動時、(B)外回動時の回動態様を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本発明の乗物用シートを自動車用のシートに適用した実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明では、乗物用シートに着座した乗員を基準にして前後左右を定める。
【0038】
(第1実施形態)
図1に示すように、シート1は、車両のフロア2の上面に設けられたスライド装置3と、スライド装置3の上部に設けられた回動装置4と、回動装置4の上部に設けられたシート本体5とを有する。シート1は、運転席、助手席、後部座席のいずれであってもよい。本実施形態では、シート1は車室の右前部に配置される運転席として構成されている。
【0039】
フロア2は、略水平方向に延在している。スライド装置3は、回動装置4及びシート本体5をフロア2に対して略水平方向にスライド移動可能にフロア2に支持する。回動装置4は、略鉛直方向に延びる複数の回動軸線を中心としてフロア2に対して回動可能にスライド装置3に設けられ、シート本体5をフロア2に対して複数の回動軸線回りに回転可能に支持する。シート本体5は、回動装置4の上部に設けられたシートクッション7と、シートクッション7の後部に設けられたシートバック8とを有する。
【0040】
図1及び図2に示すように、スライド装置3は、前後に延びる左右一対のスライドレール11を有する。各スライドレール11は、互いにスライド移動可能なロアスライドレール12及びアッパスライドレール13を有する。ロアスライドレール12は、前後に延び、フロア2の上面に結合されている。アッパスライドレール13は、前後に延び、ロアスライドレール12に前後方向に変位可能に支持されている。各スライドレール11は、ロアスライドレール12に対するアッパスライドレール13のスライド移動を規制するロック装置(不図示)を有する。
【0041】
図2及び図3に示すように、回動装置4は、上下に互いに対向したロアプレート15及びアッパプレート16と、ロアプレート15及びアッパプレート16間に介装された4つの回動軸ユニット17とを有する。回動軸ユニット17は、本実施形態では4つであるが、他の実施形態では例えば2つや3つ等の複数であってもよい。ロアプレート15は、面が上下を向く板状部材であり、左右のアッパスライドレール13の上部に結合されている。アッパプレート16は、面が上下を向く板状部材であり、シートクッション7の下部に結合されている。
【0042】
4つの回動軸ユニット17は、ロアプレート15及びアッパプレート16間の前左部、前右部、後左部及び後右部に配置されている。各回動軸ユニット17は、下レール21、上レール22、下スライダ23、上スライダ24、下規制部材25及び上規制部材26を有する。
【0043】
下レール21は、ロアプレート15の上面に結合され、水平方向における第1方向に延びている。下レール21はロアプレート15及びスライド装置3を介してフロア2に対して固定されている。上レール22は、アッパプレート16に結合され、水平方向において下レール21の延在方向(第1方向)と異なる第2方向に延びている。上レール22は、アッパプレート16を介してシートクッション7に固定されている。本実施形態では、下レール21の延在方向である第1方向は前後方向であり、上レール22の延在方向である第2方向は第1方向と直交する左右方向(車幅方向)である。上レール22は、下レール21の上方に配置されている。上方から見て、上レール22は下レール21と交差する位置に配置される。
【0044】
下レール21は、ロアプレート15に結合された下レール下壁21Aと、下レール下壁21Aの両側縁から上方に突出する一対の下レール側壁21Bと、各下レール側壁21Bの上端のそれぞれから互いに近づく側に突出した一対の下レール上壁21Cとを有する。下レール下壁21A、一対の下レール側壁21B及び一対の下レール上壁21Cは第1方向に延び、一対の下レール上壁21C間には第1方向に延びる下レールスリット21Dが形成されている。
【0045】
上レール22は、アッパプレート16に結合された上レール上壁22Aと、上レール上壁22Aの両側縁から下方に突出する一対の上レール側壁22Bと、各上レール側壁22Bの下端のそれぞれから互いに近づく側に突出した一対の上レール下壁22Cとを有する。上レール上壁22A、一対の上レール側壁22B及び一対の上レール下壁22Cは第2方向に延び、一対の上レール下壁22C間には第2方向に延びる上レールスリット22Dが形成されている。
【0046】
下スライダ23は、下レールスリット21Dを通過し、一対の下レール上壁21Cの縁部に係止されている。下スライダ23は、下レール上壁21Cに当接することによって上下への移動が規制される一方、下レールスリット21D内を移動することによって下レール21の延在方向にスライド移動可能となっている。
【0047】
上スライダ24は、上レールスリット22Dを通過し、一対の上レール下壁22Cの縁部に係止されている。上スライダ24は、上レール下壁22Cに当接することによって上下への移動が規制される一方、上レールスリット22D内を移動することによって上レール22の延在方向にスライド移動可能となっている。
【0048】
下スライダ23の上端には鉛直上方に突出した軸部23Aが形成され、上スライダ24の下端には鉛直上方に凹んだ断面円形の軸受孔24Aが形成されている。軸部23A及び軸受孔24Aには、Cリング等の公知の抜け出し防止手段が設けられている。軸受孔24Aに軸部23Aが回転可能に受容されることによって、下スライダ23と上スライダ24とは、互いに鉛直方向に延びる軸線を中心として回転可能に結合している。下スライダ23及び上スライダ24の回動軸線を回動軸ユニット17の回動軸線A(A1、A2、A3、A4)とする。
【0049】
下規制部材25は、下レール21の内部における下スライダ23の下端と下レール下壁21Aとの間に配置された下係合部材31と、下係合部材31と下レール下壁21Aとの間に介装され、下係合部材31を下スライダ23側に付勢する下付勢部材32と、下係合部材31に結合し、下付勢部材32の付勢力に抗して下係合部材31を下レール下壁21A側に移動させる下アクチュエータ33とを有する。上規制部材26は、上レール22の内部における上スライダ24の上端と上レール上壁22Aとの間に配置された上係合部材35と、上係合部材35と上レール上壁22Aとの間に介装され、上係合部材35を上スライダ24側に付勢する上付勢部材36と、上係合部材35に結合し、上付勢部材36の付勢力に抗して上係合部材35を上レール上壁22A側に移動させる上アクチュエータ37とを有する。下付勢部材32及び上付勢部材36は、圧縮コイルばねや板ばねであってよい。
【0050】
下係合部材31は下スライダ23の下面に係合することによって下スライダ23の下レール21に対する移動を規制する。下係合部材31及び下スライダ23の互いの接触面には互いに噛み合う歯が形成されていてもよい。上係合部材35及び上スライダ24の構成は、下係合部材31及び下スライダ23の構成と同様である。
【0051】
下アクチュエータ33及び上アクチュエータ37は、例えばソレノイドであってよい。下アクチュエータ33は、ロアプレート15に結合された本体部33Aと、本体部33Aから下レール下壁21Aを貫通して下係合部材31に結合した駆動軸33Bとを有する。上アクチュエータ37は、アッパプレート16に結合された本体部37Aと、本体部37Aから上レール上壁22Aを貫通して上係合部材35に結合した駆動軸37Bとを有する。
【0052】
回動軸ユニット17のロック状態では、下アクチュエータ33は駆動せず、下付勢部材32に付勢された下係合部材31が下スライダ23に係合し、下レール21に対する下スライダ23の移動が規制される。また、上アクチュエータ37は駆動せず、上付勢部材36に付勢された上係合部材35が上スライダ24に係合し、上レール22に対する上スライダ24の移動が規制される。このとき、下スライダ23及び上スライダ24は、回動軸線Aを中心として互いに回動することができる。
【0053】
回動軸ユニット17のロック解除状態では、下アクチュエータ33が駆動することによって、下係合部材31は下付勢部材32の付勢力に抗して下スライダ23から離れる方向に移動し、下スライダ23が下レール21に対して移動可能になる。また、上アクチュエータ37の駆動によって、上係合部材35は上付勢部材36の付勢力に抗して上スライダ24から離れる方向に移動し、上スライダ24が上レール22に対して移動可能になる。
【0054】
回動装置4は、4つの回動軸ユニット17の全てをロック状態にすることによって、ロアプレート15に対するアッパプレート16の位置を固定することができる。回動装置4は、4つの回動軸ユニット17から選択した1つの回動軸ユニット17をロック状態にし、かつ他の3つの回動軸ユニット17をロック解除状態にすることによって、選択した回動軸ユニット17の回動軸線Aを中心としてロアプレート15に対するアッパプレート16の回転が可能になる。4つの回動軸ユニット17の全てをロック解除状態にすることによって、ロアプレート15に対するアッパプレート16の水平方向への変位及び回転が可能になる。
【0055】
図4に示すように、シート1は、制御装置40を有している。制御装置40は、CPUやメモリ、ドライバを備えた電子制御装置である。制御装置40には、乗員がシート1の回転方向を選択するための内回動スイッチ41及び外回動スイッチ42と、4つの回動軸ユニット17の各アクチュエータ33、37とが接続されている。ここで、内回動はシートクッション7の前端が初期位置から車幅方向内方に向けて回動することをいい、外回動はシートクッション7の前端が初期位置から車幅方向外方に向けて回動することをいう。
【0056】
内回動スイッチ41及び外回動スイッチ42は乗員によって操作されている間、制御装置40にON信号を出力する。内回動スイッチ41及び外回動スイッチ42は、シートクッション7の側面に設けられている。制御装置40は、4つの回動軸ユニット17の各アクチュエータ33、37の駆動を制御することによって、4つの回動軸ユニット17を独立してロック状態又はロック解除状態にする。
【0057】
制御装置40は、内回動スイッチ41及び外回動スイッチ42のいずれも操作されていない場合、内回動スイッチ41が操作された場合、及び外回動スイッチ42が操作された場合で、4つの回動軸ユニット17のロック状態及びロック解除状態を変更する。
【0058】
本実施形態では、制御装置40は、内回動スイッチ41及び外回動スイッチ42のいずれからもON信号を受けていない場合、全ての回動軸ユニット17をロック状態にする。これにより、回動装置4は回動が規制され、シートクッション7はフロア2に対して変位できなくなる。
【0059】
また、制御装置40は、内回動スイッチ41からON信号を受けている間、後左の回動軸ユニット17をロック状態にし、残りの前左、前右及び後右の回動軸ユニット17をロック解除状態にする。これにより、回動装置4は、後左の回動軸ユニット17の回動軸線A3を中心とした回動が可能になり、シートクッション7はフロア2に対して後左の回動軸ユニット17の回動軸線A3を中心として回動することができる。
【0060】
また、制御装置40は、外回動スイッチ42からON信号を受けている間、前右の回動軸ユニット17をロック状態にし、残りの前左、後左及び後右の回動軸ユニット17をロック解除状態にする。これにより、回動装置4は、前右の回動軸ユニット17の回動軸線A2を中心とした回動が可能になり、シートクッション7はフロア2に対して前右の回動軸ユニット17の回動軸線A2を中心として回動することができる。
【0061】
シート1は、内回動スイッチ41が操作された場合と、外回動スイッチ42が操作された場合とで、回動中心となる回動軸線Aが変化する。すなわち、シート1の回動方向に応じて、回動を可能にする回動軸線Aを選択することができる。
【0062】
図5に示すように、内回動スイッチ41が操作されたときに、シートクッション7が後左の回動軸ユニット17の回動軸線A3を中心として回動することによってシートバック8とシート1の側方に位置する車室側壁45との接触を避けることができる。シート1が車室の前右部に設けられた運転席である場合、車室側壁45はシート1の右方に位置するドアやピラー等によって構成される。シート本体5が内回動するときには、回動軸線Aはシートクッション7の中央よりもよりも後側に配置された回動軸線A3(又はA4)が選択されることによって、シート本体5と車室側壁45との接触を避けることができる。また、シート本体5が内回動するときには、回動軸線Aはシートクッション7の中央よりもよりも後側かつ車幅方向内側に配置された回動軸線A3が選択されることがより好ましい。
【0063】
外回動スイッチ42が操作されたときに、シートクッション7が前右の回動軸ユニット17の回動軸線A2を中心として回動することによってシートクッション7の前端と車室側壁45との接触を避けることができる。シート本体5が外回動するときには、回動軸線Aはシートクッション7の中央よりも前側に配置された回動軸線A2(又はA1)が選択されることによって、シート本体5と車室側壁45との接触を避けることができる。
【0064】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るシート50は、第1実施形態に係るシート1と比較して回動装置51の構成が異なる。図6及び図7に示すように、回動装置51は、上下に配列された第1プレート52、第2プレート53、及び第3プレート54と、上下に延びて第1プレート52及び第2プレート53を回転可能に連結する第1回動軸55と、上下に延びて第2プレート53及び第3プレート54を回転可能に連結する第2回動軸56と、第1プレート52及び第2プレート53の間に設けられた第1回動規制装置57と、第2プレート53及び第3プレート54の間に設けられた第2回動規制装置58とを有する。
【0065】
第1回動軸55は回動装置4の前部(前後方向における中心よりも前側部分)に配置され、第2回動軸56は回動装置4の後部(前後方向における中心よりも後側部分)に配置されている。更に、第1回動軸55は回動装置4の車幅方向における中心よりも車室内方に配置されてもよく、第2回動軸56は回動装置4の回動装置4の車幅方向における中心よりも車室外方に配置されてもよい。
【0066】
第1回動規制装置57及び第2回動規制装置58は、制御装置40に接続され、制御装置40によって制御される。第1回動規制装置57は第1プレート52及び第2プレート53の相対回動を選択的に規制する装置であり、第2回動規制装置58は第2プレート53及び第3プレート54の相対回動を選択的に規制する装置である。第1回動規制装置57及び第2回動規制装置58は、例えばソレノイド及びソレノイドによって進退する連結ピンを有し、連結ピンによって隣り合うプレートを結合してもよい。また、第1回動規制装置57及び第2回動規制装置58は、電磁クラッチであり、磁力によって隣り合うプレートを結合してもよい。
【0067】
制御装置40は、内回動スイッチ41からON信号を受けているときに第1回動規制装置57をロック状態にすると共に第2回動規制装置58をロック解除状態にする。これにより、第1回動軸55(回動軸線A5)を中心とした回動が規制され、第2回動軸56(回動軸線A6)を中心とした回動が可能になる。また、制御装置40は、外回動スイッチ42からON信号を受けているときに第2回動規制装置58をロック状態にすると共に第1回動規制装置57をロック解除状態にする。これにより、回動装置51は、第2回動軸56(回動軸線A6)を中心とした回動が規制され、第1回動軸55(回動軸線A5)を中心とした回動が可能になる。また、制御装置40は、内回動スイッチ41及び外回動スイッチ42のいずれからもON信号を受けていないときに第1回動規制装置57及び第2回動規制装置58をロック状態にする。これにより、回動装置51の回動が規制される。
【0068】
本実施形態では、回動装置51が第1~第3プレート52~54の3つの回動部材を含む構成としたが、他の実施形態では回動部材の数を4以上の複数としてもよい。そして、隣り合う回動部材のそれぞれを回動軸及び回動規制装置で連結するとよい。このように構成することで、回動装置51の選択可能な回動軸を増加させることができる。
【0069】
(第3実施形態)
第3実施形態に係るシート70は、第1実施形態に係るシート1と比較して回動装置71の構成が異なり、スライド装置3及び回動装置71の配置が異なる。図8に示すように、回動装置71は、フロア2に設けられた下回動部材72及び下回動部材72に略鉛直方向に延びる回動軸線A7を中心として回動可能に設けられた上回動部材73を有する。下回動部材72及び上回動部材73は、面が上下を向く板状に形成されている。回動装置71の回動軸線A7は、平面視で回動装置71の略中央に配置されている。スライド装置3の各ロアスライドレール12は、上回動部材73の上面に設けられている。各アッパスライドレール13の上端には、シートクッション7が設けられている。各スライドレール11は、初期状態において前後に配置されている。
【0070】
図9に示すように、上回動部材73とシートクッションとの間には、回動方向規制装置74が設けられている。回動方向規制装置74は、上回動部材73の上面に設けられた規制壁75と、シートクッション7の下面から下方に突出した前ストッパ76及び後ストッパ77とを有する。規制壁75は、回動軸線A7を中心として径方向に前後に延びている。前ストッパ76はシートクッション7の下面前端に設けられ、後ストッパ77はシートクッション7の下面後端に設けられている。前ストッパ76及び後ストッパ77は、規制壁75の車幅方向内方に配置されている。規制壁75の前後方向における長さは、前ストッパ76及び後ストッパ77間の距離よりも短く形成されている。
【0071】
シート70では、スライド装置3によって、回動装置71に対してシート本体5がスライド移動することができる。そのため、回動装置71の回動軸線A7とシート本体5との相対位置が変化する。図9(A)に示すように、スライド装置3によってシート本体5を回動装置71に対して後方に配置することによって、回動軸線A7をシート本体5の前側に配置することができる。このとき、規制壁75の前端の車幅方向内方に前ストッパ76が配置され、規制壁75の前端と前ストッパ76とが当接することによってシートクッション7の内回動が規制される。これにより、シートクッション7は外回動のみが可能になる。
【0072】
図9(B)に示すように、スライド装置3によってシート本体5を回動装置71に対して前方に配置することによって、回動軸線A7をシート本体5の後側に配置することができる。このとき、規制壁75の後端の車幅方向内方に後ストッパ77が配置され、規制壁75の後端と後ストッパ77とが当接することによってシートクッション7の外回動が規制される。これにより、シートクッション7は内回動のみが可能になる。このように、ロアスライドレール12に対するアッパスライドレール13の位置に応じて、下回動部材72に対する上回動部材73の回動方向が規制される。
【0073】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上述した回動装置4、51、71の構成は例示であり、これらに限定するものではない。回動装置は、複数の回動軸線から選択した1つの回動軸線を中心とした回動を可能にし、かつ残りの回動軸線を中心とした回動を規制するものであればよく、様々な構造を適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1、50、70 :シート
2 :フロア
3 :スライド装置
4、51、71 :回動装置
7 :シートクッション
8 :シートバック
11 :スライドレール
12 :ロアスライドレール
13 :アッパスライドレール
15 :ロアプレート
16 :アッパプレート
17 :回動軸ユニット
21 :下レール
22 :上レール
23 :下スライダ
24 :上スライダ
25 :下規制部材
26 :上規制部材
31 :下係合部材
32 :下付勢部材
33 :下アクチュエータ
35 :上係合部材
36 :上付勢部材
37 :上アクチュエータ
40 :制御装置
41 :内回動スイッチ
42 :外回動スイッチ
45 :車室側壁
52 :第1プレート
53 :第2プレート
54 :第3プレート
55 :第1回動軸
56 :第2回動軸
57 :第1回動規制装置
58 :第2回動規制装置
72 :下回動部材
73 :上回動部材
74 :回動方向規制装置
A(A1~A7) :回動軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9