(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019717
(43)【公開日】2024-02-09
(54)【発明の名称】細胞培養において産生される抗体の総非フコシル化グリコフォーム
(51)【国際特許分類】
C12P 21/08 20060101AFI20240202BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240202BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20240202BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240202BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240202BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240202BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240202BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20240202BHJP
【FI】
C12P21/08 ZNA
C12N15/13
C12N1/00 F
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 Y
C07K16/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023222458
(22)【出願日】2023-12-28
(62)【分割の表示】P 2020551498の分割
【原出願日】2019-03-26
(31)【優先権主張番号】62/648,308
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】プリンス ビーブ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ジェルムス
(72)【発明者】
【氏名】アイリーン リウ
(72)【発明者】
【氏名】カート クナス
(57)【要約】
【課題】細胞培養において産生される抗体の総非フコシル化グリコフォームの提供。
【解決手段】本明細書では、所望の、又は所定の、又は予め選択されたレベルの総非フコシル化(TAF)グリコフォームを含む抗体組成物を産生する方法が提供される。代表的な実施形態において、本方法は、所望されるTAFグリコフォームのレベルに応じて、本明細書に記載されるとおりの特定の濃度でフコース及び/又はグルコースを含む細胞培養培地中においてグリコシル化適格細胞を維持することを含む。グリコシル化タンパク質及びそのTAFグリコフォームを含む関連組成物も本明細書中で提供される。細胞培養培地もまた提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月26日に出願された米国仮特許出願第62/648,308号に対する優先権を主張する。各出願の内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
電子ファイルでの提出物の参照による援用
本明細書と同時に提出されたコンピューター可読のヌクレオチド/アミノ酸配列リストは、その全体が参照によって援用され、当該リストは、以下:28,547バイトASCII(テキスト)ファイル、ファイル名「52249A_Seqlisting.txt」、2019年3月26日作成、として識別される。
【背景技術】
【0003】
グリコシル化は、例えば、タンパク質折り畳み、品質管理、分子輸送及び局在化、並びに細胞表面受容体相互作用を含む複数の細胞機能に関与するため、最も一般的で、また重要な翻訳後修飾の1つである。グリコシル化は、治療用糖タンパク質の生理活性、薬物動態、免疫原性、溶解度、及びインビボクリアランスに影響を与えるため、組換えタンパク質薬の治療効果に影響を及ぼす。Fcグリコフォームプロファイルは、特に、抗体の臨床効果及び薬物動態に直接影響を及ぼすため、組換え抗体に関する重要な製品品質特性である。
【0004】
高マンノース(HM)グリコフォーム含量は、ある種の治療用抗体の薬物動態特性に影響を及ぼすことが判明している(Goetze,et al.,(2011)Glycobiology 21,949-59;Yu,et al.,(2012)MAbs 4,475-87)。HMグリコフォームは、抗体の血清クリアランス速度に影響を与えるだけでなく、このようなグリコフォームは、非フコシル化(非フコ)グリコフォームに加えて、抗体エフェクター機能又は抗体依存性細胞傷害(ADCC)としても知られる抗体介在性の標的細胞死滅にも影響し得る。
【0005】
多くの要因がグリカン構造、したがってタンパク質(糖タンパク質)の最終的なグリコシル化形態(グリコフォーム)に影響を与える。例えば、抗体を発現する細胞株、細胞培養培地、フィード培地組成、及び細胞培養中の供給のタイミングは、タンパク質のグリコフォームの産生に影響し得る。
研究グループにより、抗体の特定のグリコフォームのレベルに影響を与えるための多くの方法が示唆されている一方で、治療用抗体の組換え産生中に総非フコシル化(TAF)グリコフォームのレベルを操作し、調節するための単純且つ効率的な方法が生物学的製剤産業において依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Goetze,et al.,(2011)Glycobiology 21,949-59
【非特許文献2】Yu,et al.,(2012)MAbs 4,475-87
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
最初に記載されるのは、組換えグリコシル化タンパク質(例えば、抗体又は抗体結合タンパク質)を産生する細胞を含む細胞培養培地におけるフコース及び/又はグルコースの濃度が、産生される組換えグリコシル化タンパク質のTAFグリコフォームのレベルに影響を与えることを実証するデータである。組換えグリコシル化タンパク質(例えば、抗体又は抗体結合タンパク質)のTAFグリコフォームのレベルにおける比較的大きい変化は、組換えグリコシル化タンパク質(例えば、抗体又は抗体結合タンパク質)を産生する細胞を含む細胞培養培地中のフコースの濃度を操作することによって実現され得るが、TAFグリコフォームレベルにおける比較的小さい変化は、本明細書に記載されるとおりの細胞培養培地中のグルコースの濃度を変化させることによって実現され得る。また、データは、細胞培養培地のグルコース濃度が、高マンノースグリカン及び非フコシル化グリカンのレベルに影響を及ぼす一方で、細胞培養培地のフコース濃度は、非フコシル化グリカンのレベルに影響を及ぼすが、高マンノースグリカンレベルに影響を及ぼさないことを実証している。化学式においてただ1つの酸素原子が異なるこれらの糖の各々がTAFグリコフォームレベルに対して差次的効果をもたらすという発見は、予想されなかった。特定の理論に束縛されることなく、本明細書で教示されるとおりの濃度でフコース及び/又はグルコースを含む細胞培養培地において組換えグリコシル化タンパク質(例えば、抗体又は抗体結合タンパク質)を産生する細胞を維持することは、所望の又は既定の又は事前に選択されたレベルのTAFグリコフォーム(例えば、高マンノースグリカン及び非フコシル化グリカン)を有する組換えグリコシル化タンパク質(例えば、抗体又は抗体結合タンパク質)組成物の産生を可能にする。したがって、本開示は、所望の又は既定の又は事前に選択されたレベルのTAFグリコフォームを含む組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)を産生する方法に関する。
【0008】
本開示は、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)を産生する方法を提供する。代表的な実施形態において、本方法は、所望されるTAFグリコフォームのレベルに応じて、本明細書に記載されるとおりの特定の濃度でフコース及び/又はグルコースを含む細胞培養培地中においてグリコシル化適格細胞を維持することを含む。
【0009】
代表的な実施形態において、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)中のTAFグリコフォームのレベルは、約10%又はそれ未満であり、代表的な態様において、本方法は、フコースを含む細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持することを含み、フコースは、約0.17g/Lと約1.0g/Lの間の濃度で培養培地中に存在する。
【0010】
代表的な実施形態において、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)中のTAFグリコフォームのレベルは、約10%又はそれ未満であり、代表的な態様において、本方法は、フコースを含む細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持することを含み、フコースは、約0.1g/Lと約1.0g/Lの間の濃度で培養培地中に存在し、且つグリコシル化適格細胞は、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されない。
【0011】
本開示はまた、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)を産生する方法であって、フコースが、約0.1g/L~約1.0g/Lの濃度で培養培地中に存在する、フコース及びグルコースを含む細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持し、且つ約10g/L又はそれ未満の平均グルコース濃度を実現するグルコース供給スケジュールに従って細胞培養培地にグルコースを添加することを含む方法を提供する。
【0012】
本開示の方法によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)が、本明細書で提供される。さらに、関連する医薬組成物及び細胞培養培地が提供される。代表的な態様において、細胞培養培地は、抗体(例えば、IgG抗体)をコードする外来核酸及び約0.1g/L~約1.0g/L又は約0.17g/L~約1.0g/Lの濃度でフコースを含む培養培地を含む。いくつかの例において、グリコシル化適格細胞は、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されない。必要に応じて、グリコシル化適格細胞は、GDP-ケト-6-デオキシマンノース-3,5-エピメラーゼ,4-レダクターゼをコードする遺伝子をノックアウトするように遺伝的に改変されない。いくつかの態様において、培養培地はさらに、約10g/L未満、必要に応じて、約9g/L未満又は約6g/L又はそれ未満(例えば、約0.5g/L~約4g/L)の濃度でグルコースを含む。代表的な例において、培養培地のpHは、約6.85~約7.05、例えば、約6.90~約7.00である。いくつかの例において、細胞培養培地は、マンノースを含まない。ある種の態様において、抗体は、IgG1抗体である。代表的な態様において、抗体は、配列番号3を含むものなど、腫瘍関連抗原に特異的である。
【0013】
細胞培養培地中においてグリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)のTAFグリカンのレベルを変えるか又は調節する方法がさらに、本明細書において提供される。代表的な態様において、本方法は、(A)TAFグリカンのレベルを低減するために約0.1g/L~約1.0g/Lのフコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にフコースを添加すること;(B)TAFのレベルを増大させるために約10g/L未満のグルコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にグルコースを添加すること;又は(C)(A)と(B)の両方の組合せを含む。
【0014】
また、グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを調節する方法が提供される。代表的な実施形態において、本方法は、(A)非フコシル化グリカンのレベルを低減するために約0.1g/L~約1.0g/Lのフコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にフコースを添加すること;(B)非フコシル化グリカンのレベルを増大させるために10g/L未満又は約10g/Lのグルコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にグルコースを添加すること;又は(C)(A)と(B)の両方の組合せを含む。
【0015】
本開示はさらに、グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の高マンノース(HM)グリカンのレベルを調節する方法を提供する。代表的な実施形態において、本方法は、HMグリカンのレベルを増大させるために約10g/L未満のグルコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にグルコースを添加することを含む。
【0016】
また、本開示によって、グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを調節する方法であって、組成物の非フコシル化グリカンのレベルを約0.5%~約2%低減するために細胞培養培地のpHを約0.03~約1.2下げること又は組成物の非フコシル化グリカンのレベルを約0.5%~約2%増大させるために細胞培養培地のpHを約0.03~約1.2上げることを含む方法が提供される。
【0017】
グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを約1%~約2%低減する方法であって、細胞培養培地のpHを約0.05~約1.2下げることを含む方法が、本開示において提供される。
【0018】
さらに、グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを約0.5%~約1.1%低減する方法であって、細胞培養培地のpHを約0.03~0.07下げることを含む方法が提供される。
【0019】
本開示はさらに、グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを約1%~約2%増大させる方法であって、細胞培養培地のpHを約0.05~約1.2上げることを含む方法を提供する。
【0020】
また、グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを約0.5%~約1.1%増大させる方法であって、細胞培養培地のpHを約0.03~0.07上げることを含む方法も提供される。
【0021】
本開示はさらに、グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)のTAFグリカンのレベルを調節する方法であって、非フコシル化グリカンのレベルを調節するか、低減するか又は増大させる本明細書で開示される方法に従って組成物の非フコシル化グリカンのレベルを調節するか、低減するか又は増大させることを含む方法を提供する。
【0022】
本開示は、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)を産生する方法であって、組成物中の非フコシル化グリカンのレベルが、約6.2%~約8.4%であって、細胞培養培地中においてグリコシル化適格細胞を7.05より高く且つ7.2未満のpHで維持することを含み、(A)細胞培養培地中のpHが、培養期間中に0.15未満(必要に応じて0.10未満)変化するか又は(B)細胞培養培地の温度が、2℃以下変化するか又は方法が、マンガン又はベタインを含む細胞培養培地中で細胞を培養することを含まないか又は(D)(A)、(B)、及び(C)のうちの2つ又は3つの組合せである方法を提供する。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
抗体組成物を産生する方法であって、前記抗体組成物中の総非フコシル化(TAF)グリカンのレベルが、約10%未満であり、前記方法が、フコースを含む細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持することを含み、フコースが、約0.17g/L~約1.0g/Lの濃度で前記培養培地中に存在する、方法。
(項目2)
抗体組成物を産生する方法であって、前記抗体組成物中の総非フコシル化(TAF)グリカンのレベルが、約10%未満であり、前記方法が、フコースを含む細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持することを含み、フコースが、約0.1g/L~約1.0g/Lの濃度で前記培養培地中に存在し、且つ前記グリコシル化適格細胞が、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されない、方法。
(項目3)
抗体組成物を産生する方法であって、フコース及びグルコースを含む細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持することを含み、フコースが、約0.1g/L~約1.0g/Lの濃度で前記培養培地中に存在し、且つグルコースが、約10g/L又はそれ未満の平均グルコース濃度を実現するグルコース供給スケジュールに従って前記細胞培養培地に添加される、方法。
(項目4)
フコースが、約0.75g/L未満の濃度で前記培養培地中に存在する、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
フコースが、約0.6g/L未満の濃度で前記培養培地中に存在する、項目4に記載の方法。
(項目6)
フコースが、約0.2g/L~約0.5g/Lの濃度で前記培養培地中に存在する、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記フコースが、前記グリコシル化適格細胞が細胞培養中で維持される全期間において前記培養培地中に存在する、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
初期の期間に第1の細胞培養培地中で前記グリコシル化適格細胞を維持し、続いて第2の細胞培養培地中で前記グリコシル化適格細胞を維持することを含み、前記第1の細胞培養培地が、約0.1g/L~約1.0g/Lの濃度でフコースを含まず、且つ前記第2の細胞培養培地が、約0.1g/L~約1.0g/Lの濃度でフコースを含む、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記初期の期間が、約24~約72時間である、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記初期の期間が、約72時間又は約72時間超であるが156時間未満又は約156時間である、項目8に記載の方法。
(項目11)
フコースが、細胞培養接種後の6日目に前記第1の培養培地に添加されて、前記第2の細胞培養培地が得られる、項目8~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
フコースの前記濃度が、前記グリコシル化適格細胞がフコースを含む前記細胞培養培地中で維持される期間に約0.2g/L又はそれ未満変動する、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
フコースの前記濃度が、前記グリコシル化適格細胞がフコースを含む前記細胞培養培地中で維持される期間に約0.1g/L又はそれ未満変動する、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記細胞培養培地が、初期の期間中に初期のグルコース濃度を含む、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記初期のグルコース濃度が、約1g/L~約15g/Lである、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記初期のグルコース濃度が、約12g/L±1g/Lである、項目15に記載の方法。
(項目17)
グルコース供給スケジュールに従って前記細胞培養培地にグルコースを添加することをさらに含む、項目1、2、及び4~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記グルコース供給スケジュールが、細胞培養接種後の約4~約6日目に開始される、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記グルコース供給スケジュールが、細胞培養接種後の約6日目に開始される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記グルコース供給スケジュールが、前記細胞培養培地中で約10g/L又はそれ未満の平均グルコース濃度を実現する、項目17~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記グルコース供給スケジュールが、前記細胞培養培地中で約9g/L又はそれ未満の平均グルコース濃度を実現する、項目3及び17~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記グルコース供給スケジュールが、前記細胞培養培地中で約6g/L又はそれ未満の平均グルコース濃度を実現する、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記グルコース供給スケジュールが、前記細胞培養培地中で約0.5g/L~約4g/Lの平均グルコース濃度を実現する、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記グルコース供給スケジュールが、前記細胞培養培地中のフコースの前記濃度に基づく平均グルコース濃度を実現する、項目17~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記平均グルコース濃度が、式I:
T=3.354-1.388F+0.111G+[F-0.4375]×[1.9527(F-0.4375)]
(式I)
(式中、Tは、前記抗体組成物中の標的の%総非フコシル化(TAF)グリカンであり、これは約2.5%~約6%、約2.75%~約5.5%、又は約3%~約5%であり、Fは、前記培地中のフコースの濃度(g/L)であり、Gは、前記培地中の前記平均グルコース濃度(g/L)である)に基づいて計算される、項目24に記載の方法。
(項目26)
(i)フコースの前記濃度が約0.2±0.1g/Lであり、且つ前記平均グルコース濃度が約2~約4g/Lであるか;(ii)フコースの前記濃度が約0.5±0.1g/Lであり、且つ前記平均グルコース濃度が約3~約6g/Lであるか;又は(iii)フコースの前記濃度が約0.75±0.1g/Lであり、且つ前記平均グルコース濃度が約4.5~約9g/Lである、項目24又は25に記載の方法。
(項目27)
前記細胞培養培地のpHが、約6.85~約7.05である、項目1~26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記細胞培養培地のpHが、約6.90~約7.00である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記グリコシル化適格細胞が、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されない、項目1及び3~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記グリコシル化適格細胞が、GDP-ケト-6-デオキシマンノース-3,5-エピメラーゼ,4-レダクターゼをコードする遺伝子をノックアウトするように遺伝的に改変されない、項目2及び29に記載の方法。
(項目31)
前記抗体組成物中の総非フコシル化(TAF)グリカンのレベルが、約10%未満である、項目3~30のいずれか一項に記載の方法。
(項目32)
TAFグリカンのレベルが、約2%~約6%である、項目1~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
TAFグリカンのレベルが、約2%~約5%である、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記抗体組成物中のTAFグリカンのレベルが、約2%~約4%である、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記抗体組成物中の高マンノースグリカンのレベルが、約3.5%未満である、項目1~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記抗体組成物中の高マンノースグリカンのレベルが、約0.7%~約3.0%である、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記抗体組成物中の非フコシル化グリカンのレベルが、約3.5%未満である、項目1~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記抗体組成物中の非フコシル化グリカンのレベルが、約0.8%~約2.8%である、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記グリコシル化適格細胞が、IgG抗体を産生する、項目1~38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記グリコシル化適格細胞が、IgG1抗体を産生する、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記IgG1抗体が、腫瘍関連抗原に特異的である、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記腫瘍関連抗原が、配列番号3を含む、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記培養培地が、マンノースを含まない、項目1~42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
項目1~43のいずれか一項に記載の方法によって産生される抗体組成物。
(項目45)
項目44に記載の抗体組成物及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物。
(項目46)
a.抗体をコードする外来核酸を含むグリコシル化適格細胞;及び
b.約0.1g/L~約1.0g/L又は約0.17g/L~約1.0g/Lの濃度でフコースを含む培養培地
を含む細胞培養培地。
(項目47)
前記グリコシル化適格細胞が、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されず、必要に応じて、前記グリコシル化適格細胞が、GDP-ケト-6-デオキシマンノース-3,5-エピメラーゼ,4-レダクターゼをコードする遺伝子をノックアウトするように遺伝的に改変されない、項目46に記載の細胞培養培地。
(項目48)
前記培養培地がさらに、約10g/L未満、必要に応じて約9g/L未満の濃度でグルコースを含む、項目46又は47に記載の細胞培養培地。
(項目49)
グルコースの前記濃度が、約6g/L又はそれ未満である、項目48に記載の細胞培養培地。
(項目50)
グルコースの前記濃度が、約0.5g/L~約4g/Lである、項目49に記載の細胞培養培地。
(項目51)
前記培養培地のpHが、約6.85~約7.05である、項目46~50のいずれか一項に記載の細胞培養培地。
(項目52)
前記細胞培養培地のpHが、約6.90~約7.00である、項目51に記載の細胞培養培地。
(項目53)
前記細胞培養培地が、マンノースを含まない、項目46~52のいずれか一項に記載の細胞培養培地。
(項目54)
前記抗体が、IgG抗体である、項目46~53のいずれか一項に記載の細胞培養培地。
(項目55)
前記IgG抗体が、IgG1抗体である、項目54に記載の細胞培養培地。
(項目56)
前記IgG1抗体が、腫瘍関連抗原に特異的である、項目55に記載の細胞培養培地。
(項目57)
前記腫瘍関連抗原が、配列番号3を含む、項目56に記載の細胞培養培地。
(項目58)
グリコシル化適格細胞によって産生される抗体組成物のTAFグリカンのレベルを調節する方法であって、(A)TAFグリカンのレベルを低減するために約0.1g/L~約1.0g/Lのフコース濃度を実現するように前記グリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にフコースを添加すること;若しくは(B)TAFグリカンのレベルを増大させるために約10g/L未満のグルコース濃度を実現するように前記グリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にグルコースを添加すること;又は(C)(A)及び(B)の両方を含む、方法。
(項目59)
グリコシル化適格細胞によって産生される抗体組成物の非フコシル化グリカンのレベルを調節する方法であって、(A)非フコシル化グリカンのレベルを低減するために約0.1g/L~約1.0g/Lのフコース濃度を実現するように前記グリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にフコースを添加すること;若しくは(B)非フコシル化グリカンのレベルを増大させるために10g/L未満又は約10g/Lのグルコース濃度を実現するように前記グリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にグルコースを添加すること;又は(C)(A)及び(B)の両方を含む、方法。
(項目60)
グリコシル化適格細胞によって産生される抗体組成物の高マンノースグリカンのレベルを調節する方法であって、高マンノースグリカンのレベルを増大させるために10g/L未満又は約10g/Lのグルコース濃度を実現するように前記グリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にグルコースを添加することを含む、方法。
(項目61)
前記グリコシル化適格細胞が、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されない、項目58~60のいずれか一項に記載の方法。
(項目62)
前記グリコシル化適格細胞が、GDP-ケト-6-デオキシマンノース-3,5-エピメラーゼ,4-レダクターゼをコードする遺伝子をノックアウトするように遺伝的に改変されない、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記抗体組成物中のTAFグリカンのレベルが、10%未満又は約10%である、項目58~62のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
TAFグリカンのレベルが、約2%~約6%である、項目63に記載の方法。
(項目65)
TAFグリカンのレベルが、約2%~約5%である、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記抗体組成物中のTAFグリカンのレベルが、約2%~約4%である、項目65に記載の方法。
(項目67)
前記抗体組成物中の高マンノースグリカンのレベルが、3.5%未満又は約3.5%である、項目58~66のいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
前記抗体組成物中の高マンノースグリカンのレベルが、約0.7%~約3.0%である、項目67に記載の方法。
(項目69)
前記抗体組成物中の非フコシル化グリカンのレベルが、3.5%未満又は約3.5%である、項目58~68のいずれか一項に記載の方法。
(項目70)
前記抗体組成物中の非フコシル化グリカンのレベルが、約0.8%~約2.8%である、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記フコース濃度が、約0.17g/L~約1.0g/Lである、項目58~70のいずれか一項に記載の方法。
(項目72)
前記フコース濃度が、約0.2g/L~約0.5g/Lである、項目71に記載の方法。
(項目73)
約10g/L、必要に応じて未満の平均グルコース濃度を実現するグルコース供給スケジュールに従ってグルコースを前記細胞培養培地に添加することをさらに含む、項目58~72のいずれか一項に記載の方法。
(項目74)
前記平均グルコース濃度が、約6.0g/L未満、必要に応じて、約4.0g/L未満である、項目73に記載の方法。
(項目75)
前記平均グルコース濃度が、前記細胞培養培地の前記フコース濃度に基づく、項目73又は74に記載の方法。
(項目76)
前記平均グルコース濃度が、式I:
T=3.354-1.388F+0.111G+[F-0.4375]×[1.9527(F-0.4375)]
式I
(式中、Tは、抗体組成物中の標的の%総非フコシル化(TAF)グリカンであり、これは約3%~約5%であり、Fは、前記培地中のフコースの濃度(g/L)であり、Gは、前記平均グルコース濃度(g/L)である)に基づいて計算される、項目75に記載の方法。
(項目77)
グリコシル化適格細胞によって産生される抗体組成物の非フコシル化グリカンのレベルを調節する方法であって、抗体組成物の非フコシル化グリカンのレベルを約0.5%~約2%低減するために前記細胞培養培地のpHを約0.03~約1.2下げること又は抗体組成物の非フコシル化グリカンのレベルを約0.5%~約2%増大させるために前記細胞培養培地のpHを約0.03~約1.2上げることを含む、方法。
(項目78)
前記抗体組成物の非フコシル化グリカンのレベルを約1%~約2%低減するために前記細胞培養培地のpHを約0.05~約1.2下げること又は前記抗体組成物の非フコシル化グリカンのレベルを約1%~約2%増大させるために前記細胞培養培地のpHを約0.05~約1.2上げることを含む、項目77に記載の方法。
(項目79)
前記抗体組成物の非フコシル化グリカンのレベルを約0.5%~約1.1%低減するために前記細胞培養培地のpHを約0.03~約0.07下げること又は前記抗体組成物の非フコシル化グリカンのレベルを約0.5%~約1.1%増大させるために前記細胞培養培地のpHを約0.03~約0.07上げることを含む、項目77に記載の方法。
(項目80)
グリコシル化適格細胞によって産生される抗体組成物の非フコシル化グリカンのレベルを約1%~約2%低減する方法であって、前記細胞培養培地のpHを約0.05~約1.2下げることを含む、方法。
(項目81)
約1%の非フコシル化グリカンの減少のために前記pHを約0.05~約0.07下げることを含む、項目80に記載の方法。
(項目82)
約1.5%を超える非フコシル化グリカンの減少のために前記pHを約0.09~約1.2下げることを含む、項目80に記載の方法。
(項目83)
約7.10~約7.20、必要に応じて約7.12~約7.19のpHで前記細胞を培養することを含む、項目80に記載の方法。
(項目84)
グリコシル化適格細胞によって産生される抗体組成物の非フコシル化グリカンのレベルを約0.5%~約1.1%低減する方法であって、前記細胞培養培地のpHを約0.03~約0.07下げることを含む、方法。
(項目85)
約0.8%の非フコシル化グリカンの減少のために前記pHを約0.03~約0.06下げることを含む、項目84に記載の方法。
(項目86)
約1%の非フコシル化グリカンの減少のために前記pHを約0.05~約0.07下げることを含む、項目84に記載の方法。
(項目87)
約7.05より高く且つ7.15未満又は約7.15、必要に応じて約7.07~約7.13のpHで前記細胞を培養することを含む、項目84に記載の方法。
(項目88)
グリコシル化適格細胞によって産生される抗体組成物の非フコシル化グリカンのレベルを約1%~約2%増大させる方法であって、前記細胞培養培地のpHを約0.05~約1.2上げることを含む、方法。
(項目89)
約1%の非フコシル化グリカンの減少のために前記pHを約0.05~約0.07上げることを含む、項目88に記載の方法。
(項目90)
約1.5%を超える非フコシル化グリカンの減少のために前記pHを約0.09~約1.2上げることを含む、項目88に記載の方法。
(項目91)
約7.10~約7.20、必要に応じて約7.12~約7.19のpHで前記細胞を培養することを含む、項目88に記載の方法。
(項目92)
グリコシル化適格細胞によって産生される抗体組成物の非フコシル化グリカンのレベルを約0.5%~約1.1%増大させる方法であって、前記細胞培養培地のpHを約0.03~0.07上げることを含む、方法。
(項目93)
約0.8%の非フコシル化グリカンの減少のために前記pHを約0.03~約0.06上げることを含む、項目92に記載の方法。
(項目94)
約1%の非フコシル化グリカンの減少のために前記pHを約0.05~約0.07上げることを含む、項目92に記載の方法。
(項目95)
7.05より高く且つ7.15未満又は約7.15、必要に応じて約7.07~約7.13のpHで前記細胞を培養することを含む、項目92に記載の方法。
(項目96)
前記培養全体にわたる前記細胞培養培地の前記pHが、7.0より高く、必要に応じて7.05より高く且つ7.2未満である、前述の項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目97)
前記抗体組成物中の非フコシル化グリカンのレベルが、約10%未満である、前述の項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目98)
前記抗体組成物中の非フコシル化グリカンのレベルが、約6.2%~約8.4%である、項目97に記載の方法。
(項目99)
前記温度が、前記培養期間中に2℃未満変化する、前述の項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目100)
前記培養の前記温度が、1.5℃以下又は1.0℃以下変化する、項目99に記載の方法。
(項目101)
前記細胞培養培地が、検出可能な量のマンガンもベタインも含まない、前述の項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目102)
前記細胞培養培地が、約0.10g/L~約1.0g/Lのフコース、必要に応じて、約0.17~約1.0g/Lのフコースを含む、前述の項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目103)
フコースが、約0.75g/L未満、約0.6g/L未満、又は約0.2g/L~約0.5g/Lの濃度で前記培養培地中に存在する、項目102に記載の方法。
(項目104)
前記グリコシル化適格細胞が、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されない、前述の項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目105)
グルコースが、約10g/L又はそれ未満の平均グルコース濃度を実現するグルコース供給スケジュールに従って前記細胞培養培地に添加される、前述の項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目106)
グリコシル化適格細胞によって産生される抗体組成物のTAFグリカンのレベルを調節する方法であって、項目77~79のいずれか一項に記載の方法に従って前記抗体組成物の非フコシル化グリカンのレベルを調節すること、項目80~87のいずれか一項の方法に従って前記抗体組成物の非フコシル化グリカンのレベルを低減すること、又は項目88~105のいずれか一項の方法に従って前記抗体組成物の非フコシル化グリカンのレベルを増大させることを含む、方法。
(項目107)
抗体組成物を産生する方法であって、前記抗体組成物中の非フコシル化グリカンのレベルが、約6.2%~約8.4%であって、前記方法が、細胞培養培地中においてグリコシル化適格細胞を7.05より高く且つ7.2未満のpHで維持することを含み、
ここで、
(A)前記細胞培養培地のpHが、培養期間中に0.15未満(必要に応じて0.10未満)変化するか、又は
(B)前記細胞培養培地の温度が、2℃以下変化するか、又は
(C)前記方法が、マンガン又はベタインを含む細胞培養培地中で前記細胞を培養することを含まないか、又は
(D)(A)、(B)、及び(C)のうちの2つ又は3つの組合せを含む、方法。
(項目108)
前記pHが、培養期間中に約7.07~約7.19のpHで維持され、必要に応じて、前記pHが、約7.07又はそれ超且つ7.10未満、又は約7.10又はそれ超且つ7.15未満、又は約7.15又はそれ超から最大約7.19で維持される、項目107に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】3種類のN-グリカン(オリゴマンノース、複合及びハイブリッド)及びこのような糖類に関して一般的に使用される記号の図解である。
【
図2】フコース代謝のサルベージ経路及びデノボ経路の図である。サルベージ経路において、遊離L-フコースはGDP-フコースに変換されるが、デノボ経路において、GDP-フコースは、GMD及びFXにより触媒される3つの反応を介して合成される。次に、GDP-フコースは、GDP-Fucトランスフェラーゼによって細胞基質からゴルジ内腔に輸送され、アクセプターオリゴ糖及びタンパク質へ移される。他の反応産物であるGDPは、内腔のヌクレオチドジホスファターゼによって、グアノシン5-一リン酸(GMP)及び無機リン酸(Pi)に変換される。前者は、細胞質基質に排出されるが(GDP-フコースの輸送と共役される対向輸送系を介して)、後者は、ゴルジアニオンチャネルであるGOLACを介してゴルジ内腔を離れると想定される。例えば、Nordeen et al.2000;Hirschberg et al.2001を参照されたい。
【
図3】(A)細胞培養行程の期間にわたる対照培地(白抜きの三角を伴う線)、第1の試験培地(白抜きの丸を伴う線)、及び第2の試験培地(白抜きの六角形を伴う線)を使用する細胞培養物のグルコース濃度(g/L)、(B)細胞培養行程にわたる第2の試験培地(白抜きの四角を伴う線)を使用する細胞培養物のフコース濃度(g/L)、並びに(C)細胞培養行程の期間にわたる対照培地(黒塗りの三角を伴う点線)、第1の試験培地(黒塗りの丸を伴う点線)、及び第2の試験培地(黒塗りの六角形を伴う点線)を使用する細胞培養物のTAFグリカンレベル(%)を示すグラフである。
【
図4】(A)細胞培養行程の期間にわたる対照培地(白抜きの三角を伴う線)、第1の試験培地(白抜きの丸を伴う線)、及び第2の試験培地(白抜きの六角形を伴う線)を使用する細胞培養物のグルコース濃度(g/L)、並びに(B)細胞培養行程の期間にわたる対照培地(黒塗りの三角を伴う点線)、第1の試験培地(黒塗りの丸を伴う点線)、及び第2の試験培地(黒塗りの六角形を伴う点線)を使用する細胞培養物の高マンノース(HM)グリカンレベル(%)を示すグラフである。
【
図5】(A)細胞培養行程の期間にわたる対照培地(白抜きの三角を伴う線)、第1の試験培地(白抜きの丸を伴う線)、及び第2の試験培地(白抜きの六角形を伴う線)を使用する細胞培養物のグルコース濃度(g/L)、並びに(B)細胞培養行程の期間にわたる対照培地(黒塗りの三角を伴う点線)、第1の試験培地(黒塗りの丸を伴う点線)、及び第2の試験培地(黒塗りの六角形を伴う点線)を使用する細胞培養物の非フコシル化(afuc)グリカンレベル(%)を示すグラフである。
【
図6】0×グルコース、1×グルコース又は2×グルコースを含有する細胞培養培地中のフコース濃度(g/L)の関数としてのTAFグリカンレベル(%)のグラフである。
【
図7】0×グルコース、1×グルコース又は2×グルコースを含有する細胞培養培地中のフコース濃度(g/L)の関数としてのADCCレベル(同じアミノ酸配列を有する対照抗体に対する%として表される)のグラフである。
【
図8】TAFグリカンレベル(%)に対するグルコース及びフコースの効果のモデルを示すグラフである。QTPPに従う最小、最大、及び平均TAFが示される。グラフの下の式は、グルコース、フコース及びTAFの間の数理的関係を示す。
【
図9A】(i)細胞培養培地中のフコース濃度(g/L)の関数としてのTAFグリカンレベル(%)(左上の四半分)又は細胞培養培地中のグルコース濃度(g/L)の関数としてのTAFグリカンレベル(%)(右上の四半分)及び(ii)細胞培養培地中のフコース濃度(g/L)の関数としてのADCCレベル(同じアミノ酸配列を有する対照抗体に対する%として表される)(左下の四半分)又は細胞培養培地中のグルコース濃度(g/L)の関数としてのADCCレベル(右下の四半分)を示す一連のグラフである。TAFグリカンレベル(%)の範囲は、3.30684~3.73083であり、ADCCレベルの範囲は、78.3092~90.4408である。0.2g/Lフコース及び3.0g/Lグルコースにおいて、TAFグリカンレベル(%)は3.518836であり、ADCCレベル(%)は、84.37501であった。
【
図9B】(i)細胞培養培地中のフコース濃度(g/L)の関数としてのTAFグリカンレベル(%)(左上の四半分)又は細胞培養培地中のグルコース濃度(g/L)の関数としてのTAFグリカンレベル(%)(右上の四半分)及び(ii)細胞培養培地中のフコース濃度(g/L)の関数としてのADCCレベル(刷新者又は市販の抗体に対する%として表される)(左下の四半分)又は細胞培養培地中のグルコース濃度(g/L)の関数としてのADCCレベル(右下の四半分)を示す一連のグラフである。TAFグリカンレベル(%)の範囲は、3.52301~4.0559であり、ADCCレベルの範囲は、75.6911~90.9385である。0g/Lフコース及び0.554g/Lグルコースにおいて、TAFグリカンレベル(%)は3.789458であり、ADCCレベル(%)は、83.3148であった。
【
図9C】(i)細胞培養培地中のフコース濃度(g/L)の関数としてのTAFグリカンレベル(%)(左上の四半分)又は細胞培養培地中のグルコース濃度(g/L)の関数としてのTAFグリカンレベル(%)(右上の四半分)及び(ii)細胞培養培地中のフコース濃度(g/L)の関数としてのADCCレベル(刷新者又は市販の抗体に対する%として表される)(左下の四半分)又は細胞培養培地中のグルコース濃度(g/L)の関数としてのADCCレベル(右下の四半分)を示す一連のグラフである。TAFグリカンレベル(%)の範囲は、2.9975~3.68468であり、ADCCレベルの範囲は、79.2215~98.8836である。0.492g/Lフコース及び6.0g/Lグルコースにおいて、TAFグリカンレベル(%)は3.341092であり、ADCCレベル(%)は、89.05256であった。
【
図10】フコース濃度の関数としてプロットされた浸透圧のグラフである。
【
図11】細胞培養物における時間(継続時間)の関数としてプロットされたフコース濃度のグラフである。
【
図12】それぞれ時間の関数としてプロットされた%TAF及びフコースの供給のグラフである。
【
図13】6日目以前から標的範囲においてグルコースを制御することにより、同等のTAF結果が得られることを実証しているグラフの対である。
【
図14】培養時間の関数としてプロットされた%非フコシル化のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
多くの分泌タンパク質が翻訳後グリコシル化され、この過程により、糖部分(例えば、グリカン、糖類)がタンパク質の特定のアミノ酸に共有結合される。真核細胞において、2種類のグリコシル化反応:(1)グリカンが認識配列Asn-X-Thr/Ser(「X」はプロリンを除く任意のアミノ酸である)のアスパラギンに連結されるN結合型グリコシル化、及び(2)グリカンがセリン又はスレオニンに連結されるO結合型グリコシル化が起こる。グリコシル化のタイプ(N結合型又はO結合型)にかかわらず、各部位(O又はN)と結合されるグリカン構造は広範囲にわたるため、タンパク質グリコフォームには微小不均一性がある。
【0025】
全てのN-グリカンは、共通のコア糖配列:Manα1-6(Manα1-3)Manβ1-4GlcNAcβ1-4GlcNAcβ1-Asn-X-Ser/Thr(Man
3GlcNAc
2Asn)を有し、3つのタイプのうちの1つ:(A)2個のN-アセチルグルコサミン(GalNAc)部分及び多数(例えば5、6、7、8又は9個)のマンノース(Man)残基からなる高マンノース(HM)又はオリゴマンノース(OM)型、(B)3個以上のGlcNAc部分及びあらゆる数の他の糖タイプを含む複合型又は(C)分枝の一方にMan残基を、複合枝の基部にGlcNAcを含むハイブリッド型に分類される。
図1A(Stanley et al.,Chapter 8:N-Glycans,Essentials of Glycobiology,2
nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press;2009から得た)は、N-グリカンの3つのタイプを示す。
【0026】
N結合型グリカンは、一般的には、ガラクトース(Gal)、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、ガラクトサミン(GalN)、グルコース(GLc)、N-アセチルグルコサミン(ClcNAc)、グルコサミン(GlcN)、マンノース(Man)、N-アセチルマンノサミン(ManNAc)、マンノサミン(ManN)、キシロース(Xyl)、N0アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、N-グリコシルノイラミン酸(Neu5Gc)、2-ケト-3-ドキシノノン酸(doxynononic acid)(Kdn)、フコース(Fuc)、グルクロン酸(GLcA)、イズロン酸(IdoA)、ガラクツロン酸(GalA)、マヌロン酸(ManA)のうち1つ又はそれより多くの単糖類を含む。このような糖類に対して一般的に使用される記号は、
図1Aにおいて示される。代表的なグリカン及びそれらの個々の特性は、
図1Bにおいて示される。
【0027】
N結合型グリコシル化は小胞体(ER)において開始され、複雑な一連の反応の結果、基本的に2個のGlcNAc残基及び3個のMan残基から作られるコアグリカン構造の連結が起こる。ERにおいて形成されるグリカン複合体は、ゴルジ装置において酵素の作用により修飾される。糖類が酵素に比較的接近しにくい場合、これは、一般的には元来のHM形態にとどまる。酵素が糖類に接近し得る場合、Man残基の多くが切り離され、糖類がさらに修飾され、その結果、複合型のN-グリカン構造が生じる。例えばcis-ゴルジに位置するマンノシダーゼ-1は、HMグリカンを切断又は加水分解し得、一方でメディアル-ゴルジに位置するフコシルトランスフェラーゼFUT-8はグリカンをフコシル化する(Hanrue Imai-Nishiya(2007),BMC Biotechnology,7:84)。
【0028】
したがって、グリカン構造の糖組成及び構造立体配置は、とりわけ、ER及びゴルジ装置におけるグリコシル化機序、その機序の酵素のグリカン構造への到達性、各酵素の作用の順序及びタンパク質がグリコシル化機序から放出される段階に依存して変動する。
【0029】
本明細書で提供される開示は、所望の、又は所定の、又は予め選択されたレベルのTAFグリコフォームを含む抗体組成物を産生する方法に関する。代表的な実施形態において、本方法は、所望されるTAFグリコフォームのレベルに応じて、本明細書に記載されるとおりの特定の濃度でフコース及び/又はグルコースを含む細胞培養培地中においてグリコシル化適格細胞を維持することを含む。また、本開示は、所望の、又は所定の、又は予め選択されたレベルの非フコシル化グリコフォームを含む抗体組成物を産生する方法であって、例えば、抗体組成物中の非フコシル化グリカンのレベルが、約6.2%~約8.4%である方法に関する。代表的な実施形態において、本方法は、7.05より高く且つ7.2未満のpHレベルで細胞培養培地中のグリコシル化適格細胞を維持することを含み、(A)細胞培養培地中のpHが、培養期間中に0.15未満(必要に応じて0.10未満)変化するか又は(B)細胞培養培地の温度が、2℃以下変化するか又は方法が、マンガン又はベタインを含む細胞培養培地中で細胞を培養することを含まないか又は(D)(A)、(B)、及び(C)のうちの2つ又は3つの組合せである。特定の理論に縛られるものではないが、本開示の方法は、特定の量の所与の抗体の特定のグリコフォームを含むテーラーメイドの組成物に対する手段を提供すると考えられる。
【0030】
代表的な実施形態において、TAFグリカンのレベルが調節される。本明細書で使用する場合、「総非フコシル化グリカン」又は「TAFグリカン」又は「総非フコシル化グリコフォーム」又は「TAFグリコフォーム」は、高マンノース(HM)グリカン及び非フコシル化グリカンの合計量を指す。代表的な実施形態において、HMグリカンのレベルが調節される。本明細書で使用する場合、「高マンノースグリカン」又は「HMグリカン」又は「高マンノースグリコフォーム」又は「HMグリコフォーム」又は「HM」という用語は、それぞれMan5、Man6、Man7、Man8、及びMan9と略称される、5、6、7、8、又は9個のマンノース残基を含むグリカンを包含する。代表的な実施形態において、非フコシル化グリカンのレベルが調節される。本明細書で使用する場合、「非フコシル化グリカン」又は「非フコグリカン」又は「非フコシル化グリコフォーム」又は「非フコ」という用語は、コアフコース、例えば、N-グリコシル化部位のAsnとともにアミド結合において含まれるGlcNAc残基上のα1,6-結合型フコースを欠くグリコフォームを指す。非フコシル化グリコフォームとしては、A1G0、A2G0、A2G1a、A2G1b、A2G2及びA1G1M5が挙げられるが限定されない。さらなる非フコシル化グリカンとしては、例えば、A1G1a、G0[H3N4]、G0[H4N4]、G0[H5N4]、FO-N[H3N3]が挙げられる。例えば、Reusch
and Tejada,Glycobiology 25(12):1325-1334(2015)を参照されたい。代表的な態様において、本明細書において実施例1でさらに記載されるとおり、TAFのレベル、HMグリコフォーム及び非フコシル化グリコフォームの量は、親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)を介して決定される。N-グリカンの酵素切断の後、いくつかのピークがあり、その各ピークが様々なグリコフォームの平均分布(量)に相当するクロマトグラムを得るために、HILICを行う。これらの目的に対して、%ピーク面積=ピーク面積/総ピーク面積×100%及び%総ピーク面積=試料総面積/標準の総面積×100%である。%TAFを決定する目的のために使用される計算は、次のとおりに行われ得る:%非フコシル化グリコフォーム=%A1G0+%A2G0+%A2G1a+%A2G1b+%A2G2+%A1G1M5。
【0031】
%高マンノースグリコフォーム=%Man5(検出可能な場合)+%Man6(検出可能な場合)+%Man7(検出可能な場合)+%Man8(検出可能な場合)+%Man9(検出可能な場合)である。
【0032】
本開示は、組換えグリコシル化タンパク質組成物を産生する方法を提供する。代表的な実施形態において、組換えグリコシル化タンパク質組成物は、抗体組成物である。代表的な実施形態において、本方法は、所望されるTAFグリコフォームのレベルに応じて、本明細書に記載されるとおりの特定の濃度でフコース及び/又はグルコースを含む細胞培養培地中においてグリコシル化適格細胞を維持することを含む。
【0033】
フコース
本明細書で開示される方法の代表的な実施形態において、フコースは、約0.1g/L~約2.0g/L、必要に応じて、約0.1g/L~約1.75g/L、約0.1g/L~約1.5g/L、又は約0.1g/L~約1.2g/Lの濃度で培養培地中に存在する。代表的な例において、フコースは、1.2g/L未満又は約1.2g/Lの濃度で培養培地中に存在する。代表的な例において、フコースは、約0.1g/L~約1.0g/Lの濃度で培養培地中に存在する。代表的な例において、培養培地は、約0.17g/L~約2.0g/L、約0.17g/L~約1.75g/L、約0.17g/L~約1.5g/L、又は約0.17g/L~約1.2g/Lの濃度でフコースを含む。代表的な態様において、フコースは、約0.17g/L~約1.2g/Lの濃度で培養培地中に存在する。代表的な例において、フコースは、約0.17g/L~約1.0g/Lの濃度で培養培地中に存在する。代表的な例では、培養培地は、約0.2g/L~約2.0g/L、約0.2g/L~約1.75g/L、約0.2g/L~約1.5g/L、又は約0.2g/L~約1.2g/Lの濃度でフコースを含む。代表的な例において、フコースは、約0.2g/L~約1.0g/Lの濃度で培養培地中に存在する。代表的な例において、フコースは、1.0g/L未満又は約1.0g/Lの濃度で培養培地中に存在する。例えば、いくつかの例では、培養培地のフコース濃度は、約0.10g/L、約0.11g/L、約0.12g/L、約0.13g/L、約0.14g/L、約0.15g/L、約0.16g/L、約0.17g/L、約0.18g/L、約0.19g/L、又は約0.20g/Lである。いくつかの例において、培養培地のフコース濃度は、約0.3g/L、約0.4g/L、約0.5g/L、約0.6g/L、約0.7g/L、約0.8g/L、又は約0.9g/Lである。代表的な態様において、フコース濃度は、1.0g/L以下若しくは約1.0g/L、0.9g/L以下若しくは約0.9g/L、0.8g/L以下若しくは約0.8g/L、又は0.7g/L以下若しくは約0.7g/Lである。代表的な例において、フコースは、0.75g/L未満若しくは約0.75g/L、又は約0.25g/L~約0.75g/L、例えば、約0.4g/L~約0.5g/L、又は約0.6g/Lの濃度で培養培地中に存在する。代表的な態様において、フコースは、約0.6g/L未満、例えば、約0.2g/L~約0.5g/Lの濃度で培養培地中に存在する。
【0034】
代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)を産生する方法は、2種の異なる細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持することを含む。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)を産生する方法は、初期の期間に第1の細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持し、続いて第2の細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持することを含み、必要に応じて、第1の細胞培養培地は、約0.1g/L~約1.0g/Lの濃度でフコースを含まず、且つ第2の細胞培養培地は、約0.1g/L~約1.0g/Lの濃度でフコースを含み、且つ第2の細胞培養培地は、例えば、上記の濃度の1つでフコースを含む。代表的な例において、初期の期間は、細胞が細胞培養培地、例えば、当該細胞培養培地を含むバイオリアクター中に接種されるときに始まる。いくつかの態様において、初期の期間は、約1日~約3日、例えば、約24時間~約72時間である。代表的な態様において、初期の期間は、約3日(約72時間)より長いが、約10日(約240時間)未満又は約156時間未満である。代表的な態様において、初期の期間は、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、又は約9日である。代表的な態様において、本方法は、初期の期間後に培養培地にフコースを添加することを含む。いくつかの態様において、フコースを第1の培養培地に添加して、第2の細胞培養培地を得る。例えば、様々な態様において、本方法は、約1日~約3日後、約3日後であるが約10日未満、又は約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、又は約9日後にフコースを添加することを含む。代表的な態様において、本方法は、細胞培養接種後6日目、7日目、8日目、又は9日目にフコースを細胞培養培地、例えば、第1の細胞培養培地に添加することを含む。代表的な態様において、フコースは、約0.1g/Lを超えるか、約0.17g/Lを超えるか、又は約0.2g/Lを超え、且つ約2.0g/L未満の最終濃度まで添加される。代表的な態様において、第1の細胞培養培地は、フコースを含まない。代表的な態様において、第1の細胞培養培地は、フコースを含むが、検出不能若しくは測定不能な濃度、又は第2の細胞培養培地のフコース濃度を実質的に下回る濃度、例えば、実質的に0.1g/L未満、約0.17g/L未満、又は約0.2g/L未満である。
【0035】
代替的な態様において、本方法は、グリコシル化適格細胞が細胞培養物中で維持される期間全体、又は培養期間の大部分にわたって、フコースを(例えば、約0.1g/Lを超えるか、約0.17g/Lを超えるか、又は約0.2g/Lを超え、且つ約2.0g/L未満の濃度で)含む細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持することを含む。いくつかの態様において、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)を産生する方法は、フコースを含む細胞培養培地を含むバイオリアクター中でグリコシル化適格細胞を接種すること及び細胞培養の期間全体にわたって実質的に同じに維持されるフコースの濃度で細胞培養培地中において細胞を維持することを含む。
【0036】
代表的な実施形態において、フコースの濃度は、細胞培養の期間中ほとんど変動しない。代表的な態様において、フコース濃度は、グリコシル化適格細胞がフコースを含む細胞培養培地中で維持される期間に約0.2g/L又はそれ未満変動する。代表的な態様において、フコースの濃度は、グリコシル化適格細胞がフコースを含む細胞培養培地中で維持される期間に約0.1g/L又はそれ未満変動する。代表的な態様において、フコースが細胞培養培地に加えられるとき、例えば、初期の細胞培養期間の後、フコースは、細胞培養期間の間1回又は2回以下培地に添加される。
【0037】
グルコース
本明細書で開示される方法の代表的な実施形態において、グルコースが培養培地中に存在する。代表的な態様において、グルコースは、10g/L未満又は約10g/L、9.0g/L未満又は約9.0g/L、又は6.0g/L未満又は約6.0g/Lの濃度で培養培地中に存在する。代表的な態様において、グルコースは、約0.5g/L~約4.0g/Lの濃度で培養培地中に存在する。代表的な態様において、グルコースは、約Xg/L~約Yg/Lの濃度で存在し、Xは、約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、又は3.9であり、且つYは、約0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、又は5.0であるが、但し、XはY未満である。
【0038】
代表的な態様において、本方法は、細胞培養期間と同じ期間において細胞培養培地中でグルコースの濃度を維持することを含む。代表的な例において、細胞培養培地中のグルコースの濃度を維持することは、定期的に、例えば、1時間毎、2時間毎、3、4、5、又は6時間毎に1回、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回などで細胞培養培地をサンプリングすること、サンプリングされた細胞培養培地のグルコース濃度を測定すること、及びサンプリングされた細胞培養培地のグルコース濃度が、維持された所望のグルコース濃度未満である場合に細胞培養物にグルコースを添加することを含む。代表的な態様において、細胞培養培地中のグルコースの濃度を維持することは、グルコースセンサーを介して細胞培養培地のグルコース濃度を測定することを含む。代表的な態様において、グルコース濃度は、一定の間隔、例えば、1時間毎、2時間毎、3、4、5、又は6時間毎に1回、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回などでグルコースセンサーを介して測定され、グルコースは、グルコース濃度が、維持された所望のグルコース濃度未満であるとグルコースセンサーを介して決定される場合に細胞培養物に添加される。代替的な態様において、本方法は、グルコースを含む細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持するが、初期の期間の後においてのみ細胞培養培地中のグルコースの濃度を維持することを含む。代表的な態様において、初期の期間は、約1日~約3日(約24時間~約72時間)である。いくつかの例において、初期の期間は、6日未満又は約6日であり、必要に応じて、初期の期間は、細胞培養接種後の3日間又は4日間又は5日間である。代替的な態様において、本方法は、グルコースを含む細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持し、且つ接種後6日目及びその後に細胞培養培地中のグルコースの濃度を維持することを含む。代表的な態様において、グルコースの濃度は、初期の期間後の少なくとも約4日間又は約5日間維持されるか、又は必要に応じて、初期の期間後の少なくとも約6日間維持される。
【0039】
代表的な態様において、細胞培養培地は、初期の期間において初期のグルコース濃度を含む。例えば、様々な態様において、初期のグルコース濃度は、約1.0g/L~約15g/L、約1.0~約12g/L、又は約1.0g/L~約10g/Lである。いくつかの態様において、初期のグルコース濃度は、約1.0g/L、約1.5g/L、約2.0g/L、約2.5g/L、約3.0g/L、約3.5g/L、約4.0g/L、約4.5g/L、約5.0g/L、約5.5g/L、約6.0g/L、約6.5g/L、約7.0g/L、約7.5g/L、約8.0g/L、約8.5g/L、約9.0g/L、約9.5g/L、約10.0g/L、約10.5g/L、約11.0g/L、約11.5g/L、又は約12.0g/Lである。いくつかの態様において、初期のグルコース濃度は、約12g/L±1g/L又は約9g/L±1g/L又は約6g/L±1g/Lである。いくつかの態様において、初期のグルコース濃度は、約5.0g/L未満又は約4.0g/L未満である。代表的な態様において、初期のグルコース濃度は、初期の期間中に使用される細胞培養培地のグルコース濃度である。代表的な態様において、初期のグルコース濃度は、初期の期間中に維持される細胞培養培地のグルコース濃度である。
【0040】
代表的な態様において、初期のグルコース濃度は、初期の期間の後に維持されるグルコース濃度と同じである。代替的な態様において、初期のグルコース濃度は、初期の期間後に維持されるグルコース濃度とは異なる。代表的な態様において、本方法は、初期の期間後に細胞培養培地にグルコースを添加すること及び初期のグルコース濃度に対して異なる濃度でグルコースを維持することを含む。代表的な態様において、本方法は、初期のグルコース濃度に対して異なる濃度でグルコースを維持するために初期の期間後に細胞培養培地にグルコースを添加することを含み、グルコースを加える工程は、約10g/L又はそれ未満(例えば、約9g/L又はそれ未満、約6g/L又はそれ未満、約0.5g/L~約4g/L)のグルコース濃度を実現する。
【0041】
代表的な態様において、本方法は、グルコース供給スケジュールに従って細胞培養培地にグルコースを添加することを含む。いくつかの態様において、グルコース供給スケジュールは、初期の期間後に開始される。例えば、いくつかの態様において、初期の期間は、少なくとも3日又は4日であり、グルコース供給スケジュールは、細胞培養接種の約4~約6日後、例えば、細胞培養接種の約4日後、約5日後、約6日後に開始される。代表的な例において、グルコース供給スケジュールは、約10g/L又はそれ未満(例えば、約9g/L又はそれ未満、約6g/L又はそれ未満、約0.5g/L~約4g/L)の平均グルコース濃度を実現する。用語「平均グルコース濃度」は、ある期間(例えば、1~2日)にわたってグルコースセンサーによって決定されるとおりの細胞培養培地中のグルコースの平均濃度を指す。代表的な例において、グルコース供給スケジュールは、細胞培養培地のフコースの濃度に基づいて平均グルコース濃度を実現する。いくつかの態様において、平均グルコース濃度は、式Iに基づいて計算される:
T=3.354-1.388F+0.111G+[F-0.4375]×[1.9527(F-0.4375)]
(式I)
(式中、Tは、標的の%総非フコシル化(TAF)グリカンであり、これは約2.5%~約6%、約2.75%~約5.5%、又は約3%~約5%であり、Fは、培地中のフコースの濃度(g/L)であり、Gは、平均グルコース濃度(g/L)である)。
【0042】
代表的な例において、(i)フコースの濃度は約0.2±0.1g/Lであり、且つ平均グルコース濃度は約2~約4g/Lであるか;(ii)フコースの濃度は約0.5±0.1g/Lであり、且つ平均グルコース濃度は約3~約6g/Lであるか;又は(iii)フコースの濃度は約0.75±0.1g/Lであり、且つ平均グルコース濃度は約4.5~約9g/Lである。
【0043】
TAF、HM、及び非フコシル化グリカンレベル
代表的な実施形態において、本明細書で開示される方法は、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)を産生し、組成物中のTAFグリカンのレベルは、10%未満又は約10%である。代表的な態様において、組成物中のTAFグリカンのレベルは、9%未満又は約9%、8%未満又は約8%、7%未満又は約7%、6%未満又は約6%、5%未満又は約5%である。代表的な態様において、組成物中のTAFグリカンのレベルは、4%を超えるか又は約4%、例えば、約4%と約10%の間である。いくつかの態様において、組成物中のTAFグリカンのレベルは、約2%~約6%又は約2.5%~約5%である。いくつかの態様において、TAFグリカンのレベルは、約2.0%、約2.5%、約3.0%、約3.5%、約4.0%、約4.5%、約5%、約5.5%、又は約6.0%である。代表的な態様において、TAFグリカンのレベルは、約2%~約5%又は約2%~約4%である。
【0044】
組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)を産生する方法の代表的な態様において、フコースは、約0.1g/Lと約1.0g/Lの間、又は約0.17g/Lと約1.0g/Lの間の濃度で培養培地中に存在し、組成物中のTAFグリカンのレベルは、約10%未満である。
【0045】
代表的な実施形態において、本明細書で開示される方法は、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)を産生し、抗体組成物中の高マンノースグリカンのレベルは、3.5%未満又は約3.5%、例えば、3.25%未満又は約3.25%、3.0%未満又は約3.0%、2.5%未満又は約2.5%、2.0%未満又は約2.0%である。代表的な態様において、抗体組成物中の高マンノースグリカンのレベルは、約0.7%~約3.0%、必要に応じて、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、約2.0%、約2.1%、約2.2%、約2.3%、約2.4%、約2.5%、約2.6%、約2.7%、約2.8%、約2.9%、又は約3.0%である。
【0046】
代表的な実施形態において、本明細書で開示される方法は、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)を産生し、抗体組成物中の非フコシル化グリカンのレベルは、3.5%未満又は約3.5%、例えば、3.25%未満又は約3.25%、3.0%未満又は約3.0%、2.5%未満又は約2.5%、2.0%未満又は約2.0%である。代表的な態様において、抗体組成物中の非フコシル化グリカンのレベルは、約0.8%~約2.8%、必要に応じて、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、約2.0%、約2.1%、約2.2%、約2.3%、約2.4%、約2.5%、約2.6%、約2.7%、又は約2.8%である。
【0047】
グリコフォーム測定の方法
糖タンパク質含有組成物中に存在するグリコフォームを評価するため、又は糖タンパク質を含む特定の試料のグリコフォームプロファイルを決定するか、検出するか若しくは測定するために、様々な方法が当技術分野で知られている。適切な方法としては、陽イオンMALDI-TOF分析、陰イオンMALDI-TOF分析、弱陰イオン交換(WAX)クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー(NP-HPLC)、エキソグリコシダーゼ消化、Bio-Gel P-4クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー及び一次元n.m.r.分光法、並びにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Mattu et al.,JBC 273:2260-2272(1998);Field et al.,Biochem J 299(Pt 1):261-275(1994);Yoo et al.,MAbs 2(3):320-334(2010)Wuhrer M.et al.,Journal of Chromatography B,2005,Vol.825,Issue 2,124-133頁;Ruhaak L.R.,Anal Bioanal Chem,2010,Vol.397:3457-3481及びGeoffrey,R.G.et.al.Analytical Biochemistry 1996,Vol.240,210-226頁を参照されたい。また、本明細書中で示す例は、糖タンパク質含有組成物中に存在するグリコフォームを評価するための適切な方法を記載する。
【0048】
本開示に関して、細胞培養は、組換えグリコシル化タンパク質産生に適切な何らかの一連の条件に従い維持され得る。例えば、いくつかの態様において、細胞培養は、特定のpH、温度、細胞密度、培養体積、溶解酸素レベル、圧力、浸透圧などで維持され得る。代表的な態様において、CO2インキュベーター中、標準的な加湿条件下にて5%CO2で接種前の細胞培養物を振盪する(例えば70rpm)。代表的な態様において、1.5L培地中約106個細胞/mLの接種密度で細胞培養物が接種される。
【0049】
代表的な態様において、本開示の方法は、約6.85~約7.05、例えば、様々な態様では、約6.85、約6.86、約6.87、約6.88、約6.89、約6.90、約6.91、約6.92、約6.93、約6.94、約6.95、約6.96、約6.97、約6.98、約6.99、約7.00、約7.01、約7.02、約7.03、約7.04、又は約7.05のpHで細胞培養培地中においてグリコシル化適格細胞を維持することを含む。いくつかの態様において、細胞培養培地は、約6.9~約7.0のpHを有する。
【0050】
代表的な態様において、本方法は、30℃と40℃の間の温度で細胞培養を維持することを含む。代表的な実施形態において、温度は、約32℃~約38℃又は約35℃~約38℃である。
【0051】
代表的な態様において、本方法は、約200mOsm/kg~約500mOsm/kgの浸透圧を維持することを含む。代表的な態様において、本方法は、約225mOsm/kg~約400mOsm/kg又は約225mOsm/kg~約375mOsm/kgの浸透圧を維持することを含む。代表的な態様において、本方法は、約225mOsm/kg~約350mOsm/kgの浸透圧を維持することを含む。様々な態様において、浸透圧(mOsm/kg)は、約200、225、約250、約275、約300、約325、約350、約375、約400、約425、約450、約475、又は約500で維持される。
【0052】
代表的な態様において、本方法は、初期細胞培養期間中、約20%~約60%酸素飽和度で細胞培養の溶解酸素(DO)レベルを維持することを含む。代表的な例において、本方法は、初期細胞培養期間中、約30%~約50%(例えば約35%~約45%)の酸素飽和度に細胞培養のDOレベルを維持することを含む。代表的な例において、本方法は、初期細胞培養期間中、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、又は約60%酸素飽和度で細胞培養のDOレベルを維持することを含む。代表的な態様において、DOレベルは、約35mmHg~約85mmHg又は約40mmHg~約80mmHg又は約45mmHg~約75mmHgである。
【0053】
細胞培養は、任意の1つ又はそれより多くの培養培地中で維持される。代表的な態様において、細胞培養は、細胞増殖に適切な培地中で維持され、且つ/又は任意の適切な供給スケジュールに従って1つ又はそれより多くのフィード培地とともにもたらされる。代表的な態様において、本方法は、グルコース、乳酸塩、アンモニア、グルタミン及び/又はグルタメートを含む培地中で細胞培養を維持することを含む。代表的な態様において、本方法は、初期細胞培養期間中、1μM未満又は約1μMの濃度でマンガンを含む培地中で細胞培養を維持することを含む。代表的な態様において、本方法は、約0.25μM~約1μMマンガンを含む培地中で細胞培養を維持することを含む。代表的な態様において、本方法は、無視できる量のマンガンを含む培地中で細胞培養を維持することを含む。代表的な態様において、本方法は、初期細胞培養期間中、50ppb未満又は約50ppbの濃度で銅を含む培地中で細胞培養を維持することを含む。代表的な態様において、本方法は、初期細胞培養期間中、40ppb未満又は約40ppbの濃度で銅を含む培地中で細胞培養を維持することを含む。代表的な態様において、本方法は、初期細胞培養期間中、30ppb未満又は約30ppbの濃度で銅を含む培地中で細胞培養を維持することを含む。代表的な態様において、本方法は、初期細胞培養期間中、20ppb未満又は約20ppbの濃度で銅を含む培地中で細胞培養を維持することを含む。代表的な態様において、培地は、約5ppbを超えるか若しくは約5ppb又は約10ppbを超えるか若しくは約10ppbの濃度で銅を含む。代表的な態様において、細胞培養培地は、マンノースを含む。代表的な態様において、細胞培養培地は、マンノースを含まない。
【0054】
代表的な実施形態において、細胞培養のタイプは、流加培養法又は連続灌流培養法である。しかし、本開示の方法は、有利に、いずれの特定のタイプの細胞培養にも限定されない。
【0055】
細胞
本開示は、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)を産生する方法であって、細胞培養培地中においてグリコシル化適格細胞を維持することを含む方法に関する。代表的な態様において、グリコシル化適格細胞は、酵母細胞、糸状菌細胞、原生生物細胞、藻類細胞、昆虫細胞又は哺乳動物細胞を含むが限定されない真核細胞である。このような宿主細胞は、当技術分野で記載されている。例えば、Frenzel,et al.,Front Immunol 4:217(2013)を参照されたい。代表的な態様において、真核細胞は哺乳動物細胞である。代表的な態様において、哺乳動物細胞は非ヒト哺乳動物細胞である。いくつかの態様において、細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞及びその誘導体(例えばCHO-K1、CHO pro-3)、マウス骨髄腫細胞(例えばNS0、GS-NS0、Sp2/0)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)活性を欠くように操作された細胞(例えばDUKX-X11、DG44)、ヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞又はその誘導体(例えばHEK293T、HEK293-EBNA)、アフリカミドリザル腎臓細胞(例えばCOS細胞、VERO細胞)、ヒト子宮頸癌細胞(例えばHeLa)、ヒト骨の骨肉腫上皮細胞U2-OS、腺癌ヒト肺胞基底上皮細胞A549、ヒト線維肉腫細胞HT1080、マウス脳腫瘍細胞CAD、胚性癌腫細胞P19、マウス胚性繊維芽細胞NIH 3T3、マウス繊維芽細胞L929、マウス神経芽腫細胞N2a、ヒト乳癌細胞MCF-7、網膜芽腫細胞Y79、ヒト網膜芽腫細胞SO-Rb50、ヒト肝臓癌細胞Hep G2、マウスB骨髄腫細胞J558L又は新生児ハムスター腎臓(BHK)細胞(Gaillet et al.2007;Khan,Adv Pharm Bull 3(2):257-263(2013))である。
【0056】
グリコシル化に適格ではない細胞はまた、例えば、グリコシル化に必要な関連酵素をコードする遺伝子をそれらに遺伝子導入することによって、グリコシル化適格細胞に形質転換され得る。代表的な酵素としては、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、グリコシダーゼ、グルコシダーゼI、グルコシデアーゼ(glucosidease)II、カルネキシン/カルレティキュリン、グリコシルトランスフェラーゼ、マンノシダーゼ、GlcNAcトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、及びシアリルトランスフェラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
代表的な実施形態において、グリコシル化適格細胞は、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されない。フコース代謝のこれらの2つの経路は、
図2において示される。代表的な実施形態において、グリコシル化適格細胞は、フコシル-トランスフェラーゼ(FUT、例えば、FUT1、FUT2、FUT3、FUT4、FUT5、FUT6、FUT7、FUT8、FUT9)、フコースキナーゼ、GDP-フコースピロホスホリラーゼ、GDP-D-マンノース-4,6-デヒドラターゼ(GMD)、及びGDP-ケト-6-デオキシマンノース-3,5-エピメラーゼ,4-レダクターゼ(FX)のいずれか1つ又はそれより多くの活性を変えるように遺伝的に改変されない。代表的な実施形態において、グリコシル化適格細胞は、FXをコードする遺伝子をノックアウトするように遺伝的に改変されない。
【0058】
代表的な実施形態において、グリコシル化適格細胞は、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GNTIII)又はGDP-6-デオキシ-D-リキソ-4-ヘキスロースレダクターゼ(RMD)の活性を変えるように遺伝的に改変されない。代表的な態様において、グリコシル化適格細胞は、GNTIII又はRMDを過剰発現するように遺伝的に改変されない。
【0059】
組換えグリコシル化タンパク質
代表的な実施形態において、組換えグリコシル化タンパク質は、式:
Asn-Xaa1-Xaa2
(式中、Xaa1はProを除く任意のアミノ酸であり、Xaa2はSer又はThrである)の1つ又はそれより多くのN-グリコシル化コンセンサス配列を含むアミノ酸配列を含む。
【0060】
代表的な実施形態において、組換えグリコシル化タンパク質は、結晶性断片(Fc)ポリペプチドを含む。「Fcポリペプチド」という用語は、本明細書中で使用される場合、抗体のFc領域由来のポリペプチドのネイティブ及びムテイン形態を含む。二量体化を促進するヒンジ領域を含有するこのようなポリペプチドの短縮型も含まれる。Fc部分を含む融合タンパク質(及びそれから形成されるオリゴマー)は、プロテインA又はプロテインGカラム上のアフィニティークロマトグラフィーによる容易な精製の利点をもたらす。代表的な実施形態において、組換えグリコシル化タンパク質は、IgG、例えば、ヒトIgGのFcを含む。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質は、IgG1又はIgG2のFcを含む。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質は、抗体、抗体タンパク質生成物、ペプチボディ、又はFc-融合タンパク質である。
【0061】
代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質は抗体である。本明細書中で使用される場合、「抗体」という用語は、重及び軽鎖を含み、且つ可変及び定常領域を含む、従来の免疫グロブリン形式を有するタンパク質を指す。例えば、抗体は、ポリペプチド鎖の2つの同一のペアの「Y型」構造であるIgGであり得、各ペアは、1本の「軽」(一般的には分子量が約25kDa)及び1本の「重」鎖(一般的には分子量が約50~70kDa)を有する。抗体は可変領域及び定常領域を有する。IgG形式で、可変領域は一般に約100~110又はそれより多くのアミノ酸であり、3個の相補性決定領域(CDR)を含み、抗原認識に主に関与し、異なる抗原に結合する他の抗体間で実質的に変動する。例えば、Janeway et al.,“Structure of the Antibody Molecule and the Immunoglobulin
Genes”,Immunobiology:The Immune System in Health and Disease,4th ed.Elsevier Science Ltd./Garland Publishing,(1999)を参照されたい。
【0062】
簡潔に述べると、抗体骨格において、CDRは、重及び軽鎖可変領域におけるフレームワーク内に埋め込まれ、それらは抗原結合及び認識に大きく関与する領域を構成する。可変領域は、少なくとも3つの重鎖又は軽鎖のCDRを含み(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,Md.;Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothia et al.,1989,Nature 342:877-883)、それらはフレームワーク領域(Kabat et al.,1991によってフレームワーク領域1~4、FR1、FR2、FR3、及びFR4と呼ばれている;Chothia and Lesk,1987、前掲も参照のこと)の中にある。
【0063】
ヒト軽鎖はカッパ及びラムダ軽鎖として分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ又はイプシロンとして分類され、それぞれIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEとして抗体のアイソタイプを定める。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含むが限定されないいくつかのサブクラスを有する。IgMは、IgM1及びIgM2を含むが限定されないサブクラスを有する。本開示の実施形態は、抗体の全てのこのようなクラス又はアイソタイプを含む。軽鎖定常領域は、例えばカッパ又はラムダ型軽鎖定常領域、例えばヒトカッパ又はラムダ型軽鎖定常領域であり得る。重鎖定常領域は、例えばアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ又はミュー型重鎖定常領域、例えばヒトアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ又はミュー型重鎖定常領域であり得る。したがって、代表的な実施形態において、本抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のいずれか1つを含む、アイソタイプIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMの抗体である。
【0064】
様々な態様において、抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であり得る。いくつかの態様において、抗体は、哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ブタ、ヒトなどにより産生される天然に存在する抗体と実質的に同様である配列を含む。この点において、抗体は、哺乳動物抗体、例えば、マウス抗体、ラット抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ウマ抗体、ニワトリ抗体、ハムスター抗体、ブタ抗体、ヒト抗体などとみなされ得る。ある種の態様において、組換えグリコシル化タンパク質は、モノクローナルヒト抗体である。ある種の態様において、組換えグリコシル化タンパク質は、キメラ抗体又はヒト化抗体である。「キメラ抗体」という用語は、本明細書中で、ある1つの種由来の定常ドメイン及び第2の種類由来の可変ドメインを含有する、又はより一般には少なくとも2種由来のアミノ酸配列のひと続きを含有する抗体を指すために使用される。「ヒト化」という用語は、抗体に関して使用される場合、元の起源の抗体よりも真のヒト抗体と類似している構造及び免疫学的機能を有するように操作されている非ヒト起源由来の少なくともCDR領域を有する抗体を指す。例えば、ヒト化は、非ヒト抗体、例えばマウス抗体など由来のCDRをヒト抗体に移植することを含み得る。ヒト化は、非ヒト配列をよりヒト配列に見えるようにするためのアミノ酸置換の選択も含み得る。
【0065】
抗体は、様々な態様において、例えば、パパイン及びペプシンなどの酵素により切断されて断片になる。パパインは、抗体を切断して2個のFab断片及び1個のFc断片をもたらす。ペプシンは、抗体を切断してF(ab’)2断片及びpFc’断片をもたらす。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質は、少なくとも1個のグリコシル化部位を保持する抗体断片、例えば、Fab、Fc、F(ab’)2又はpFc’である。本開示の方法に関して、抗体は、抗体のある種の部分を欠く場合があり、抗体断片であってもよい。様々な態様において、抗体断片は、グリコシル化部位を含む。いくつかの態様において、断片は、真核細胞において翻訳後修飾によりグリコシル化される抗体のFc領域の少なくとも一部を含む「グリコシル化Fc断片」である。
【0066】
少なくとも又は約12~150kDaの分子量範囲及び単量体(n=1)、二量体(n=2)及び三量体(n=3)から四量体(n=4)及び場合によってはそれより高い結合価(n)範囲に広がる代替的な抗体形式の範囲を増大させるために抗体の構造が利用されており;このような代替的な抗体形式は、本明細書中で「抗体タンパク質生成物」又は「抗体結合タンパク質」と呼ばれる。
【0067】
抗体タンパク質生成物は、完全な抗原結合能を保持する、抗体断片、例えば、scFv、Fab及びVHH/VHに基づく抗原結合形式であってもよい。その完全な抗原結合部位を保持する最小の抗原結合断片はFv断片であり、これは完全に可変(V)領域からなる。分子の安定性のためにscFv(一本鎖断片可変)断片にV領域を連結するために、可溶性の柔軟性のあるアミノ酸ペプチドリンカーを使用するか、又は定常(C)ドメインをV領域に付加してFab断片[断片、抗原結合]を生成する。scFv及びFabの両方は、原核宿主において容易に作製され得る広く使用される断片である。他の抗体タンパク質生成物としては、オリゴマー化ドメインに連結されるscFvからなる異なる形式を含むダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディ、又はミニボディ(ミニAbs)のようなジスルフィド結合で安定化されるscFv(ds-scFv)、一本鎖Fab(scFab)、並びに二量体及び多量体抗体形式が挙げられる。最小断片は、ラクダ科動物重鎖AbのVHH/VH及び単一ドメインAb(sdAb)である。新規抗体形式を作製するために最も頻繁に使用されるビルディングブロックは一本鎖可変(V)ドメイン抗体断片(scFv)であり、これは、約15アミノ酸残基のペプチドリンカーにより連結される重鎖及び軽鎖由来のVドメイン(VH及びVLドメイン)を含む。ペプチボディ又はペプチド-Fc融合は、また別の抗体タンパク質生成物である。ペプチボディの構造は、Fcドメイン上に移植された生物学的に活性のあるペプチドからなる。ペプチボディは、当技術分野で詳細に記載されている。例えば、Shimamoto et al.,mAbs 4(5):586-591(2012)を参照されたい。
【0068】
他の抗体タンパク質生成物としては、一本鎖抗体(SCA)、ダイアボディ;トリアボディ;テトラボディ;二重特異性又は三重特異性抗体などが挙げられる。二重特異性抗体は、5つの主要なクラス:BsIgG、付加IgG、BsAb断片、二重特異性融合タンパク質及びBsAbコンジュゲートに分類することができる。例えば、Spiess et al.,Molecular Immunology 67(2)Part A:97-106(2015)を参照されたい。
【0069】
代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質は、これらの抗体タンパク質生成物(例えば、scFv、Fab VHH/VH、Fv断片、ds-scFv、scFab、二量体抗体、多量体抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、ミニAb、ラクダ科動物の重鎖抗体のペプチボディVHH/VH、sdAb、ダイアボディ;トリアボディ;テトラボディ;二重特異性又は三重特異性抗体、BsIgG、付加IgG、BsAb断片、二重特異性融合タンパク質、及びBsAbコンジュゲート)のいずれか1つを含み、且つ1つ又はそれより多くのN-グリコシル化コンセンサス配列、必要に応じて、1つ又はそれより多くのFcポリペプチドを含む。様々な態様において、抗体タンパク質生成物は、グリコシル化部位を含む。代表的な態様において、抗体タンパク質生成物は、抗体結合断片にコンジュゲートされたグリコシル化Fc断片(「グリコシル化Fc断片抗体生成物」)であってもよい。
【0070】
組換えグリコシル化タンパク質は、単量体形態、又は多量体、オリゴマー、若しくは多量体形態の抗体タンパク質生成物であり得る。抗体が2つ又はそれより多くの個別の抗原結合領域断片を含むある種の実施形態において、抗体は、抗体により認識され、結合される個別のエピトープの数に依存して、二重特異性、三重特異性若しくは多重特異性又は二価、三価若しくは多価とみなされる。
【0071】
有利に、本方法は、抗体の抗原特異性に限定されない。したがって、抗体は、実質的にあらゆる抗原に対する何らかの結合特異性を有する。代表的な態様において、抗体は、ホルモン、増殖因子、サイトカイン、細胞表面受容体又は何らかのそのリガンドに結合する。代表的な態様において、抗体は、免疫細胞の細胞表面上で発現されるタンパク質に結合する。代表的な態様において、抗体は、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD9、CD10、CD11A、CD11B、CD11C、CDw12、CD13、CD14、CD15、CD15s、CD16、CDw17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31,CD32、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD42a、CD42b、CD42c、CD42d、CD43、CD44、CD45、CD45RO、CD45RA、CD45RB、CD46、CD47、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD50、CD51、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD59、CDw60、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64、CD65、CD66a、CD66b、CD66c、CD66d、CD66e、CD66f、CD68、CD69、CD70、CD71、CD72、CD73、CD74、CD75、CD76、CD79α、CD79β、CD80、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CDw92、CD93、CD94、CD95、CD96、CD97、CD98、CD99、CD100、CD101、CD102、CD103、CD104、CD105、CD106、CD107a、CD107b、CDw108、CD109、CD114、CD 115、CD116、CD117、CD118、CD119、CD120a、CD120b、CD121a、CDw121b、CD122、CD123、CD124、CD125、CD126、CD127、CDw128、CD129、CD130、CDw131、CD132、CD134、CD135、CDw136、CDw137、CD138、CD139、CD140a、CD140b、CD141、CD142、CD143、CD144、CD145、CD146、CD147、CD148、CD150、CD151、CD152、CD153、CD154、CD155、CD156、CD157、CD158a、CD158b、CD161、CD162、CD163、CD164、CD165、CD166、及びCD182からなる群から選択される表面抗原分類分子に結合する。
【0072】
代表的な態様において、抗体は、米国特許第7947809号明細書及び米国特許出願公開第20090041784号明細書(グルカゴン受容体)、米国特許第7939070号明細書、米国特許第7833527号明細書、米国特許第7767206号明細書、及び米国特許第7786284号明細書(IL-17受容体A)、米国特許第7872106号明細書及び米国特許第7592429号明細書(スクレロスチン)、米国特許第7871611号明細書、米国特許第7815907号明細書、米国特許第7037498号明細書、米国特許第7700742号明細書、及び米国特許出願公開第20100255538号明細書(IGF-1受容体)、米国特許第7868140号明細書(B7RP1)、米国特許第7807159号明細書及び米国特許出願公開第20110091455号明細書(ミオスタチン)、米国特許第7736644号明細書、米国特許第7628986号明細書、米国特許第7524496号明細書、及び米国特許出願公開第20100111979号明細書(上皮増殖因子受容体の欠失変異体)、米国特許第7728110号明細書(SARSコロナウイルス)、米国特許第7718776号明細書及び米国特許出願公開第20100209435号明細書(OPGL)、米国特許第7658924号明細書及び米国特許第7521053号明細書(アンジオポエチン-2)、米国特許第7601818号明細書、米国特許第7795413号明細書、米国特許出願公開第20090155274号明細書、米国特許出願公開第20110040076号明細書(NGF)、米国特許第7579186号明細書(II型TGF-β受容体)、米国特許第7541438号明細書(結合組織増殖因子)、米国特許第7438910号明細書(IL1-R1)、米国特許第7423128号明細書(プロパージン)、米国特許第7411057号明細書、米国特許第7824679号明細書、米国特許第7109003号明細書、米国特許第6682736号明細書、米国特許第7132281号明細書、及び米国特許第7807797号明細書(CTLA-4)、米国特許第7084257号明細書、米国特許第7790859号明細書、米国特許第7335743号明細書、米国特許第7084257号明細書、及び米国特許出願公開第20110045537号明細書(インターフェロン-ガンマ)、米国特許第7932372号明細書(MAdCAM)、米国特許第7906625号明細書、米国特許出願公開第20080292639号明細書、及び米国特許出願公開第20110044986号明細書(アミロイド)、米国特許第7815907号明細書及び米国特許第7700742号明細書(インスリン様増殖因子I)、米国特許第7566772号明細書及び米国特許第7964193号明細書(インターロイキン-1β)、米国特許第7563442号明細書、米国特許第7288251号明細書、米国特許第7338660号明細書、米国特許第7626012号明細書、米国特許第7618633号明細書、及び米国特許出願公開第20100098694号明細書(CD40)、米国特許第7498420号明細書(c-Met)、米国特許第7326414号明細書、米国特許第7592430号明細書、及び米国特許第7728113号明細書(M-CSF)、米国特許第6924360号明細書、米国特許第7067131号明細書、及び米国特許第7090844号明細書(MUC18)、米国特許第6235883号明細書、米国特許第7807798号明細書、及び米国特許出願公開第20100305307号明細書(上皮増殖因子受容体)、米国特許第6716587号明細書、米国特許第7872113号明細書、米国特許第7465450号明細書、米国特許第7186809号明細書、米国特許第7317090号明細書、及び米国特許第7638606号明細書(インターロイキン-4受容体)、米国特許出願公開第20110135657号明細書(ベータ-クロトー)、米国特許第7887799号明細書及び米国特許第7879323(線維芽細胞増殖因子様ポリペプチド)、米国特許第7867494号明細書(IgE)、米国特許出願公開第20100254975号明細書(アルファ-4ベータ-7)、米国特許出願公開第20100197005号明細書及び米国特許第7537762号明細書(アクチビン受容体様キナーゼ-1)、米国特許第7585500号明細書及び米国特許出願公開第20100047253号明細書(IL-13)、米国特許出願公開第20090263383号明細書及び米国特許第7449555号明細書(CD148)、米国特許出願公開第20090234106(アクチビンA)、米国特許出願公開第20090226447号明細書(アンジオポエチン-1及びアンジオポエチン-2)、米国特許出願公開第20090191212号明細書(アンジオポエチン-2)、米国特許出願公開第20090155164号明細書(C-FMS)、米国特許第7537762号明細書(アクチビン受容体様キナーゼ-1)、米国特許第7371381号明細書(ガラニン)、米国特許出願公開第20070196376号明細書(インスリン様増殖因子)、米国特許第7267960号明細書及び米国特許第7741115号明細書(LDCAM)、米国特許第7265212号明細書(CD45RB)、米国特許第7709611号明細書、米国特許出願公開第20060127393号明細書及び米国特許出願公開第20100040619号明細書(DKK1)、米国特許第7807795号明細書、米国特許出願公開第20030103978号明細書及び米国特許第7923008号明細書(オステオプロテジェリン)、米国特許出願公開第20090208489号明細書(OV064)、米国特許出願公開第20080286284号明細書(PSMA)、米国特許第7888482号明細書、米国特許出願公開第20110165171号明細書、及び米国特許出願公開第20110059063号明細書(PAR2)、米国特許出願公開第20110150888号明細書(ヘプシジン)、米国特許第7939640号明細書(B7L-1)、米国特許第7915391号明細書(c-Kit)、米国特許第7807796号明細書、米国特許第7193058号明細書、及び米国特許第7427669号明細書(ULBP)、米国特許第7786271号明細書、米国特許第7304144号明細書、及び米国特許出願公開第20090238823号明細書(TSLP)、米国特許第7767793号明細書(SIGIRR)、米国特許第7705130号明細書(HER-3)、米国特許第7704501号明細書(アタキシン-1-様ポリペプチド)、米国特許第7695948号明細書及び米国特許第7199224号明細書(TNF-α変換酵素)、米国特許出願公開第20090234106号明細書(アクチビンA)、米国特許出願公開第20090214559号明細書及び米国特許第7438910号明細書(IL1-R1)、米国特許第7579186号明細書(II型TGF-β受容体)、米国特許第7569387号明細書(TNF受容体様分子)、米国特許第7541438号明細書、(結合組織増殖因子)、米国特許第7521048号明細書(TRAIL受容体-2)、米国特許第6319499号明細書、米国特許第7081523号明細書、及び米国特許出願公開第20080182976号明細書(エリスロポエチン受容体)、米国特許出願公開第20080166352号明細書及び米国特許第7435796号明細書(B7RP1)、米国特許第7423128号明細書(プロパージン)、米国特許第7422742号明細書及び米国特許第7141653号明細書(インターロイキン-5)、米国特許第6740522号明細書及び米国特許第7411050号明細書(RANKL)、米国特許第7378091号明細書(炭酸脱水酵素IX(CAIX)腫瘍抗原)、米国特許第7318925号明細書及び米国特許第7288253号明細書(副甲状腺ホルモン)、米国特許第7285269号明細書(TNF)、米国特許第6692740号明細書及び米国特許第7270817号明細書(ACPL)、米国特許第7202343号明細書(単球走化性タンパク質-1)、米国特許第7144731号明細書(SCF)、米国特許第6355779号明細書及び米国特許第7138500号明細書(4-1BB)、米国特許第7135174号明細書(PDGFD)、米国特許第6630143号明細書及び米国特許第7045128号明細書(Flt-3リガンド)、米国特許第6849450号明細書(メタロプロテイナーゼ阻害剤)、米国特許第6596852号明細書(LERK-5)、米国特許第6232447号明細書(LERK-6)、米国特許第6500429号明細書(脳由来神経栄養因子)、米国特許第6184359号明細書(上皮由来T細胞因子)、米国特許第6143874号明細書(神経栄養因子NNT-1)、米国特許出願公開第20110027287号明細書(プロタンパク質転換酵素サブチリシンケキシン9型(PCSK9))、米国特許出願公開第20110014201号明細書(IL-18受容体)、及び米国特許出願公開第20090155164号明細書(C-FMS)において記載されるものの1つである。上記の特許及び公開特許出願は、可変ドメインポリペプチド、可変ドメインをコードする核酸、宿主細胞、ベクター、前記の可変ドメインをコードするポリペプチドを作製する方法、医薬組成物及び可変ドメイン含有抗原結合タンパク質又は抗体の個々の標的に付随する疾患を治療する方法のそれらの開示の目的のために、それらの全体において参照により本明細書中に組み込まれる。
【0073】
代表的な実施形態において、抗体は、ムロモナブ-CD3(商品名Orthoclone Okt3(登録商標)で市販される製品)、アブシキシマブ(商品名Reopro(登録商標)で市販される製品)、リツキシマブ(商品名MabThera(登録商標)、Rituxan(登録商標)で市販される製品)、バシリキシマブ(商品名Simulect(登録商標)で市販される製品)、ダクリズマブ(商品名Zenapax(登録商標)で市販される製品)、パリビズマブ(商品名Synagis(登録商標)で市販される製品)、インフリキシマブ(商品名Remicade(登録商標)で市販される製品)、トラスツズマブ(商品名Herceptin(登録商標)で市販される製品)、アレムツズマブ(商品名MabCampath(登録商標)、Campath-1H(登録商標)で市販される製品)、アダリムマブ(商品名Humira(登録商標)で市販される製品)、トシツモマブ-I131(商品名Bexxar(登録商標)で市販される製品)、エファリズマブ(商品名Raptiva(登録商標)で市販される製品)、セツキシマブ(商品名Erbitux(登録商標)で市販される製品)、イブリツモマブ・チウキセタン(商品名Zevalin(登録商標)で市販される製品)、オマリズマブ(商品名Xolair(登録商標)で市販される製品)、ベバシズマブ(商品名Avastin(登録商標)で市販される製品)、ナタリズマブ(商品名Tysabri(登録商標)で市販される製品)、ラニビズマブ(商品名Lucentis(登録商標)で市販される製品)、パニツムマブ(商品名Vectibix(登録商標)で市販される製品)、エクリズマブ(商品名Soliris(登録商標)で市販される製品)、セルトリズマブ・ペゴル(商品名Cimzia(登録商標)で市販される製品)、ゴリムマブ(商品名Simponi(登録商標)で市販される製品)、カナキヌマブ(商品名Ilaris(登録商標)で市販される製品)、カツマキソマブ(商品名Removab(登録商標)で市販される製品)、ウステキヌマブ(商品名Stelara(登録商標)で市販される製品)、トシリズマブ(商品名RoActemra(登録商標)、Actemra(登録商標)で市販される製品)、オファツムマブ(商品名Arzerra(登録商標)で市販される製品)、デノスマブ(商品名Prolia(登録商標)で市販される製品)、ベリムマブ(商品名Benlysta(登録商標)で市販される製品)、ラキシバクマブ、イピリムマブ(商品名Yervoy(登録商標)で市販される製品)及びペルツズマブ(商品名Perjeta(登録商標)で市販される製品)のうち1つである。代表的な実施形態において、抗体は、アダリムマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、及びセルトリズマブ・ペゴルなどの抗TNFアルファ抗体;カナキヌマブなどの抗IL1.ベータ抗体;ウステキヌマブ及びブリアキヌマブなどの抗IL12/23(p40)抗体;並びにダクリズマブなどの抗IL2R抗体のうち1つである。代表的な態様において、抗体は、腫瘍関連抗原に結合し、且つ抗癌抗体である。適切な抗癌抗体の例としては、ベリムマブなどの抗BAFF抗体;リツキシマブなどの抗CD20抗体;エプラツズマブなどの抗CD22抗体;ダクリズマブなどの抗CD25抗体;イラツムマブなどの抗CD30抗体、ゲムツズマブなどの抗CD33抗体、アレムツズマブなどの抗CD52抗体;イピリムマブなどの抗CD152抗体;セツキシマブなどの抗EGFR抗体;トラスツズマブ及びペルツズマブなどの抗HER2抗体;シルツキシマブなどの抗IL6抗体;並びにベバシズマブなどの抗VEGF抗体;トシリズマブなどの抗IL6受容体抗体が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な態様において、腫瘍関連抗原はCD20であり、抗体は抗CD20抗体である。代表的な態様において、腫瘍関連抗原は、配列番号3を含む。代表的な例において、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列及び配列番号2のアミノ酸配列を含む。代表的な態様において、抗体は、抗CD20抗体、例えば、抗CD20モノクローナル抗体である。代替的な態様において、IgG1抗体は、リツキシマブ、又はそのバイオシミラーである。リツキシマブという用語は、CD20抗原に結合するIgG1カッパキメラマウス/ヒトモノクローナル抗体を指す(CAS番号:174722-31-7;DrugBank-DB00073;京都遺伝子ゲノム百科事典(KEGG)エントリーD02994を参照のこと)。代表的な態様において、抗体は、表Aに記載されるCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖を含む。代表的な態様において、抗体は、表Aに記載されるCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖を含む。様々な例において、抗体は、表Aに列挙されるVH及びVLを含むか又はVH-IgG1及びVL-IgGカッパ配列を含む。
【0074】
【0075】
代表的な態様において、抗体は、抗EGFR抗体、例えば、抗HER2モノクローナル抗体である。代表的な態様において、抗体は、トラスツズマブ、又はそのバイオシミラーである。トラスツズマブという用語は、HER2/neu抗原に結合するIgG1カッパヒト化モノクローナル抗体を指す(CAS番号:180288-69-1;DrugBank-DB00072;京都遺伝子ゲノム百科事典(KEGG)エントリーD03257を参照のこと)。代表的な態様において、抗体は、表Bに記載されるCDR1、CDR2、及びCDR3を含む軽鎖を含む。代表的な態様において、抗体は、表Bに記載されるCDR1、CDR2、及びCDR3を含む重鎖を含む。様々な例において、抗体は、表Bに列挙されるVH及びVLを含むか又はVH-IgG1及びVL-IgGカッパ配列を含む。
【0076】
【0077】
追加の工程
本明細書で開示される方法は、様々な態様において、追加の工程を含む。例えば、いくつかの態様において、本方法は、組換えグリコシル化タンパク質を産生し、精製し、製剤化することに関与する1つ又はそれより多くの上流工程又は下流工程を含む。代表的な実施形態において、本方法は、組換えグリコシル化タンパク質(例えば、抗体又は抗体結合タンパク質)を発現する宿主細胞を作製するための工程を含む。宿主細胞は、いくつかの態様において、原核宿主細胞、例えばE.コリ(E.coli)又はバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)であるか、又は宿主細胞は、いくつかの態様において、真核宿主細胞、例えば、酵母細胞、糸状菌細胞、原生動物細胞、昆虫細胞、又は哺乳動物細胞(例えばCHO細胞)である。このような宿主細胞は、当技術分野で記載されている。例えば、Frenzel,et al.,Front Immunol 4:217(2013)及び本明細書の「細胞」の節を参照されたい。例えば、本方法は、いくつかの例において、組換えグリコシル化タンパク質、又はそのポリペプチド鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むベクターを宿主細胞に導入することを含む。
【0078】
代表的な実施形態において、本明細書で開示される方法は、培養物から組換えグリコシル化タンパク質(例えば、組換え抗体)を単離及び/又は精製するための工程を含む。代表的な態様において、本方法は、例えば、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー、及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィーを含むが、これらに限定されない1つ又はそれより多くのクロマトグラフィー工程を含む。代表的な態様において、本方法は、組換えグリコシル化タンパク質を含む溶液から結晶性生体分子を生成させるための工程を含む。
【0079】
本開示の方法は、様々な態様において、組成物を作製するための1つ又はそれより多くの工程を含み、いくつかの態様において、精製組換えグリコシル化タンパク質を含む医薬組成物を含む、組成物を作製するための1つ又はそれより多くの工程を含む。そのような組成物は、以下で論じられる。
【0080】
組成物
本明細書では、組換えグリコシル化タンパク質を含む組成物が提供される。代表的な実施形態において、組成物は、本明細書に記載される組換えグリコシル化タンパク質組成物を産生する本発明の方法によって作製される。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質は抗体である。したがって、抗体組成物が本明細書で提供される。代表的な実施形態において、抗体組成物は、抗体の様々なグリコフォームを含む。代表的な実施形態において、抗体組成物は、TAFグリコフォーム、HMグリコフォーム、及び/又は抗体の非フコシル化グリコフォームを含む。抗体断片又は抗体タンパク質生成物を含む組成物もまた提供される。様々な態様において、抗体断片、抗体タンパク質生成物、グリコシル化Fc断片、又はグリコシル化Fc断片抗体生成物は、グリコシル化部位を含む。代表的な実施形態において、抗体組成物は、フコースを含む細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持することを含む方法であって、フコースが約0.17g/Lと約1.0g/Lの間の濃度で培養培地中に存在する方法によって産生される。代表的な実施形態において、抗体組成物は、フコースを含む細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持することを含む方法であって、フコースが、約0.1g/Lと約1.0g/Lの間の濃度で培養培地中に存在し、且つグリコシル化適格細胞が、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されない方法によって産生される。代表的な実施形態において、抗体組成物は、フコースが、約0.1g/L~約1.0g/Lの濃度で培養培地中に存在する、フコース及びグルコースを含む細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持し、且つ約10g/L又はそれ未満の平均グルコース濃度を実現するグルコース供給スケジュールに従って細胞培養培地にグルコースを添加することを含む方法によって産生される。代表的な実施形態において、抗体組成物は、グリコシル化適格細胞によって産生される抗体組成物のTAFグリカン、非フコシル化グリカン、又は高マンノースグリカンのレベルを調節する方法の実践に基づいて産生される。代表的な態様において、抗体組成物は、(A)TAFグリカンのレベルを低減するために約0.1g/L~約1.0g/Lのフコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にフコースを添加すること;(B)TAFグリカンのレベルを増大させるために約10g/L未満のグルコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にグルコースを添加すること;又は(C)(A)と(B)の両方を含むTAFグリカンのレベルを調節する方法の実践に基づいて産生される。代表的な態様において、抗体組成物は、(A)非フコシル化グリカンのレベルを低減するために約0.1g/L~約1.0g/Lのフコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にフコースを添加すること;(B)非フコシル化グリカンのレベルを増大させるために10g/L未満又は約10g/Lのグルコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にグルコースを添加すること;又は(C)(A)と(B)の両方を含む、グリコシル化適格細胞によって産生される抗体組成物の非フコシル化グリカンのレベルを調節する方法の実践に基づいて産生される。代表的な例において、抗体組成物は、高マンノースグリカンのレベルを増大させるために10g/L未満又は約10g/Lのグルコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にグルコースを添加することを含む、グリコシル化適格細胞によって産生される抗体組成物の高マンノースグリカンのレベルを調節する方法の実践に基づいて産生される。
【0081】
代表的な態様において、組成物中の組換えグリコシル化タンパク質の50%未満又は約50%(例えば、40%未満又は約40%、30%未満又は約30%、25%未満又は約25%、20%未満又は約25%、15%未満又は約15%)が、TAFグリコフォームである。代表的な態様において、組成物中の組換えグリコシル化タンパク質の約10%未満(例えば、9%未満又は約9%、8%未満又は約8%、7%未満又は約7%、6%未満又は約6%、5%未満又は約5%、4%未満又は約4%、3%未満又は約3%、2%未満又は約2%)が、TAFグリコフォームである。代表的な態様において、組成物中の組換えグリコシル化タンパク質の約4%~約10%が、TAFグリコフォームである。代表的な態様において、組成物中の組換えグリコシル化タンパク質の約2%~約6%が、TAFグリコフォームである。代表的な態様において、組成物中の組換えグリコシル化タンパク質の約2.5%~約5%が、TAFグリコフォームである。代表的な態様において、組成物中の組換えグリコシル化タンパク質の4%未満又は約4%が、TAFグリコフォームである。さらなる代表的な態様において、組成物中の組換えグリコシル化タンパク質の4%未満又は約4%であり且つ2%を超えるか又は約2%が、TAFグリコフォームである。
【0082】
代表的な態様において、本開示の組成物は、50%未満又は約50%(例えば、40%未満又は約40%、30%未満又は約30%、25%未満又は約25%、20%未満又は約20%、15%未満又は約15%)TAFグリコフォームであるグリコフォームプロファイルを有する。代表的な態様において、本開示の組成物は、10%未満又は約10%(例えば、9%未満又は約9%、8%未満又は約8%、7%未満又は約7%、6%未満又は約6%、5%未満又は約5%、4%未満又は約4%、3%未満又は約3%、2%未満又は約2%)TAFグリコフォームであるグリコフォームプロファイルを有する。代表的な態様において、本開示の組成物は、約4%~約10%のTAFグリコフォームを含むグリコフォームプロファイルを有する。代表的な態様において、本開示の組成物は、約2%~約6%のTAFグリコフォームであるグリコフォームプロファイルを有する。代表的な態様において、本開示の組成物は、約2.5%~約5%のTAFグリコフォームであるグリコフォームプロファイルを有する。代表的な態様において、本開示の組成物は、4%未満又は約4%のTAFグリコフォームであるグリコフォームプロファイルを有する。代表的な態様において、本開示の組成物は、4%未満又は約4%以下であり且つ2%を超えるか又は約2%のTAFグリコフォームであるグリコフォームプロファイルを有する。
【0083】
代表的な態様において、組成物中の組換えグリコシル化タンパク質(例えば、抗体又は抗体結合タンパク質)の5%未満又は約5%が、非フコシル化グリコフォームである。代表的な態様において、組成物中の組換えグリコシル化タンパク質(例えば、抗体又は抗体結合タンパク質)の4%未満又は約4%が、非フコシル化グリコフォームである。代表的な態様において、組成物中の組換えグリコシル化タンパク質(例えば、抗体又は抗体結合タンパク質)の3.5%未満又は約3.5%が、非フコシル化グリコフォームである。代表的な態様において、組成物中の組換えグリコシル化タンパク質の約0.8%~約2.8%が、非フコシル化グリコフォームである。代表的な態様において、抗体組成物中の非フコシル化グリカンのレベルは、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、約2.0%、約2.1%、約2.2%、約2.3%、約2.4%、約2.5%、約2.6%、約2.7%、又は約2.8%である。
【0084】
代表的な態様において、組成物中の組換えグリコシル化タンパク質(例えば、抗体又は抗体結合タンパク質)の5%未満又は約5%が、高マンノースグリコフォームである。代表的な態様において、組成物中の組換えグリコシル化タンパク質(例えば、抗体又は抗体結合タンパク質)の4%未満又は約4%が、高マンノースグリコフォームである。代表的な態様において、組成物中の組換えグリコシル化タンパク質(例えば、抗体又は抗体結合タンパク質)の3.5%未満又は約3.5%が、高マンノースグリコフォームである。代表的な態様において、組成物中の組換えグリコシル化タンパク質の約0.7%~約3.0%が、高マンノースグリコフォームである。いくつかの態様において、抗体組成物中の高マンノースグリカンのレベルは、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1.0%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、約2.0%、約2.1%、約2.2%、約2.3%、約2.4%、約2.5%、約2.6%、約2.7%、約2.8%、約2.9%、又は約3.0%である。
【0085】
代表的な実施形態において、組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせられる。したがって、本明細書では、本明細書に記載される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物が提供される。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容可能な担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水又は水/油エマルションなどのエマルション、及び様々なタイプの湿潤剤などの標準的な医薬担体のいずれかを含む。
【0086】
細胞培養培地
本明細書では、(a)抗体をコードする外来ヌクレオチド配列を含むグリコシル化適格細胞;及び(b)約0.1g/L~約1.0g/L又は約0.17g/L~約1.0g/Lの濃度でフコースを含む培養培地を含む細胞培養培地が提供される。グリコシル化適格細胞は、本明細書に記載されるいずれかの細胞であり得る。代表的な例において、グリコシル化適格細胞は、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されず、必要に応じて、グリコシル化適格細胞は、GDP-ケト-6-デオキシマンノース-3,5-エピメラーゼ,4-レダクターゼをコードする遺伝子をノックアウトするように遺伝的に改変されない。代表的な実施形態において、培養培地はさらに、グルコースを含む。いくつかの態様において、培養培地は、約10g/L未満又は約9g/L未満、例えば、約6g/L若しくはそれ未満又は約0.5g/L~約4g/Lの濃度でグルコースを含む。いくつかの態様において、培養培地は、フコースを含む。代表的な態様において、培養培地のpHは、約6.85~約7.05、必要に応じて、約6.90~約7.00である。代表的な例において、グリコシル化適格細胞は、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されない。例えば、グリコシル化適格細胞は、GDP-ケト-6-デオキシマンノース-3,5-エピメラーゼ,4-レダクターゼをコードする遺伝子をノックアウトするように遺伝的に改変されない。代表的な態様において、抗体は、IgG抗体、必要に応じて、IgG1抗体である。代表的な態様におけるIgG1抗体は、腫瘍関連抗原、例えば、CD20に特異的である。代表的な態様において、細胞培養培地は、マンノースを含まない。
【0087】
調節方法
細胞培養培地中においてグリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)のTAFグリカンのレベルを変えるか又は調節する方法がさらに、本明細書において提供される。代表的な態様において、本方法は、(A)TAFグリカンのレベルを低減するために約0.1g/L~約1.0g/Lのフコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にフコースを添加すること;(B)TAFグリカンのレベルを増大させるために約10g/L未満のグルコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にグルコースを添加すること;又は(C)(A)と(B)の両方を含む。
【0088】
本開示はまた、グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを調節する方法を提供する。代表的な態様において、本方法は、(A)非フコシル化グリカンのレベルを低減するために約0.1g/L~約1.0g/Lのフコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にフコースを添加すること;(B)非フコシル化グリカンのレベルを増大させるために約10g/L未満のグルコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にグルコースを添加すること;又は(C)(A)と(B)の両方を含む。
【0089】
また、グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の高マンノースグリカンのレベルを調節する方法が提供される。代表的な実施形態において、本方法は、HMグリカンのレベルを増大させるために約10g/L未満のグルコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にグルコースを添加することを含む。
【0090】
したがって、いくつかの代表的な実施形態において、本開示の方法は、細胞培養において細胞により産生されるタンパク質、例えば、抗体のTAF、HM、又は非フコシル化グリカンのレベルを増大させることに関する。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のHMグリコフォームのレベルは、対照細胞培養と比較して増大される。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のMan5、Man6、Man7、Man8、及び/又はMan9のうち1つ又はそれより多くのレベルは、対照細胞培養と比較して増大される。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質の非フコシル化グリコフォームのレベルは、対照細胞培養と比較して増大される。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のA1G0、A2G0、A2G1a、A2G1b、A2G2、及びA1G1M5のうち1つ又はそれより多くのレベルは、対照細胞培養と比較して増大される。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のA1G1a、G0[H3N4]、G0[H4N4]、G0[H5N4]、及びFO-N[H3N3]のうち1つ又はそれより多くのレベルは、対照細胞培養と比較して増大される。いくつかの態様において、この増大は、親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)によって決定される、対照細胞培養に対しての増大である。いくつかの態様において、この増大は、当業者に知られる方法によって決定される、対照細胞培養に対しての増大である。
【0091】
いくつかの態様において、本開示の方法は、対照細胞培養と比較して任意の程度又はレベルまで、TAF、HM、又は非フコグリコフォームレベルを増大させる。例えば、いくつかの態様において、本開示の方法によりもたらされる増大は、対照細胞培養と比較して、少なくとも又は約1%~約10%の増大(例えば、少なくとも又は約1%の増大、少なくとも又は約2%の増大、少なくとも又は約3%上昇、少なくとも又は約4%の増大、少なくとも又は約5%の増大、少なくとも又は約6%の増大、少なくとも又は約7%の増大、少なくとも又は約8%の増大、少なくとも又は約9%の増大、少なくとも又は約9.5%の増大、少なくとも又は約9.8%の増大、少なくとも又は約10%の増大)である。代表的な実施形態において、本開示の方法によりもたらされる増大は、対照細胞培養と比較して、100%超、例えば、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、又はさらに1000%である。代表的な実施形態において、タンパク質のTAF、HM、又は非フコグリコフォームのレベルは、対照細胞培養と比較して、少なくとも約1.5倍増大する。代表的な実施形態において、タンパク質のTAF、HM、又は非フコグリコフォームのレベルは、対照細胞培養と比較して、少なくとも約2倍増大する。代表的な実施形態において、タンパク質のTAF、HM、又は非フコグリコフォームのレベルは、対照細胞培養と比較して、少なくとも約3倍増大する。代表的な実施形態において、タンパク質のTAF、HM、又は非フコグリコフォームのレベルは、対照細胞培養と比較して、少なくとも約4倍又は約5倍増大する。
【0092】
代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のTAFグリコフォームのレベルの増大は、フコース及び/又はグルコース濃度が変えられた後の1日目という早期に、観察されるか又は観察可能であるか又は検出されるか又は検出可能である。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のTAFグリコフォームのレベルの増大は、変化後の2日目という早期に、観察されるか又は観察可能であるか又は検出されるか又は検出可能である。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のTAFグリコフォームのレベルの増大は、変化後の3日目という早期に、観察されるか又は観察可能であるか又は検出されるか又は検出可能である。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のTAFグリコフォームのレベルの増大は、変化後の約4日目という早期に、観察されるか又は観察可能であるか又は検出されるか又は検出可能である。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のTAFグリコフォームのレベルの増大は、変化後の約5日目という早期に、観察されるか又は観察可能であるか又は検出されるか又は検出可能である。代表的な態様において、タンパク質のTAFグリコフォームのレベルの増大は、細胞培養から組換えグリコシル化タンパク質が回収される時点で観察されるか又は観察可能であるか又は検出されるか又は検出可能である。
【0093】
代表的な態様において、細胞培養の約4日目、5日目、又は6日目より長い間、組換えグリコシル化タンパク質のTAFグリコフォームのレベルの増大が観察される。代表的な態様において、細胞培養(接種後)の7、8、9、10、11又は12日間にわたり、又はより長く(例えば、約2週間、約3週間、約4週間、約1か月、約2か月、約3か月、約6か月、又は約1年)、組換えグリコシル化タンパク質のTAFグリコフォームのレベルの増大が観察される。代表的な態様において、タンパク質のTAFグリコフォームレベルの増大は、細胞培養からタンパク質が回収される時点で観察される。
【0094】
他の態様において、本開示の方法は、細胞培養において細胞により産生されるタンパク質のTAFグリコフォームのレベルを低減することに関する。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のHMグリコフォームのレベルは、対照細胞培養と比較して低減される。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のMan5、Man6、Man7、Man8、及び/又はMan9のうち1つ又はそれより多くのレベルは、対照細胞培養と比較して低減される。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質の非フコシル化グリコフォームのレベルは、対照細胞培養と比較して低減される。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のA1G0、A2G0、A2G1a、A2G1b、A2G2、及びA1G1M5のうち1つ又はそれより多くのレベルは、対照細胞培養と比較して低減される。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のA1G1a、G0[H3N4]、G0[H4N4]、G0[H5N4]、及びFO-N[H3N3]のうち1つ又はそれより多くのレベルは、対照細胞培養と比較して低減される。代表的な態様において、本方法は、TAFグリコフォームのレベルを約1%~約4%低減する方法であり、且つ本方法は、第1の細胞培養培地細胞中でグリコシル化適格細胞を維持すること及びフコース濃度を約0.1g/L~約1.0g/Lまで増大させることを含む。いくつかの態様において、この低減は、HILICによって決定される、対照細胞培養に対しての低減である。いくつかの態様において、この低減は、当業者に知られる方法によって決定される、対照細胞培養に対しての低減である。
【0095】
いくつかの態様において、本開示の方法は、対照細胞培養と比較して任意の程度又はレベルまで、TAF、HM、又は非フコグリコフォームのレベルを低減する。例えば、本開示の方法によりもたらされる低減は、対照細胞培養のレベルと比較して、少なくとも又は約0.1%~約1%の低減(例えば、少なくとも又は約0.1%の低減、少なくとも又は約0.2%の低減、少なくとも又は約0.3%低減、少なくとも又は約0.4%の低減、少なくとも又は約0.5%の低減、少なくとも又は約0.6%の低減、少なくとも又は約0.7%の低減、少なくとも又は約0.8%の低減、少なくとも又は約0.9%の低減、少なくとも又は約0.95%の低減、少なくとも又は約0.98%の低減、少なくとも又は約1.0%の低減)である。代表的な実施形態において、本開示の方法によりもたらされる低減は、対照細胞培養のレベルと比較して、約100%超、例えば、約200%、約300%、約400%、約500%、約600%、約700%、約800%、約900%、又はさらに約1000%である。代表的な実施形態において、タンパク質のTAF、HM、又は非フコグリコフォームのレベルは、対照細胞培養と比較して少なくとも約1.5倍低減する。代表的な実施形態において、タンパク質のTAF、HM、又は非フコグリコフォームのレベルは、対照細胞培養と比較して少なくとも約2倍低減する。代表的な実施形態において、タンパク質のTAF、HM、又は非フコグリコフォームのレベルは、対照細胞培養と比較して少なくとも約3倍低減する。代表的な実施形態において、タンパク質のTAF、HM、又は非フコグリコフォームのレベルは、対照細胞培養と比較して、少なくとも約4倍又は少なくとも約5倍低減する。
【0096】
代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のTAFグリコフォームのレベルの低減は、接種後の約1日目という早期に、観察されるか又は観察可能であるか又は検出されるか又は検出可能である。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のTAFグリコフォームのレベルの低減は、接種後の約2日目という早期に、観察されるか又は観察可能であるか又は検出されるか又は検出可能である。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のTAFグリコフォームのレベルの低減は、接種後の約3日目という早期に、観察されるか又は観察可能であるか又は検出されるか又は検出可能である。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のTAFグリコフォームのレベルの低減は、接種後の約4日目という早期に、観察されるか又は観察可能であるか又は検出されるか又は検出可能である。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のTAFグリコフォームのレベルの低減は、接種後の約5日目という早期に、観察されるか又は観察可能であるか又は検出されるか又は検出可能である。代表的な態様において、組換えグリコシル化タンパク質のTAFグリコフォームのレベルの低減は、細胞培養からタンパク質が回収される時点の近傍で観察されるか又は観察可能であるか又は検出されるか又は検出可能である。
【0097】
代表的な態様において、細胞培養の約4日目、約5日目、若しくは約6日目よりも長いか、又は初期の細胞培養期間を超えて、タンパク質のTAFグリコフォームのレベルの低減が観察される。代表的な態様において、細胞培養(接種後)の約7、約8、約9、約10、約11又は約12日間にわたり、又はより長く(例えば、約2週間、約3週間、約4週間、約1か月、約2か月、約3か月、約6か月、又は約1年)、タンパク質のTAFグリコフォームのレベルの低減が観察される。代表的な態様において、タンパク質のTAFグリコフォームのレベルの低減は、タンパク質が細胞培養から回収される時点の近傍で観察される。
【0098】
本開示の方法に関して、このような方法により影響を受ける調節、増大又は低減は、「対照」又は「対照細胞培養」に対するものである。代表的な態様において、対照は、本発明の方法の工程が行われないときのタンパク質のTAFグリコフォームのレベルである。代表的な態様において、対照は、組換え産生の既知の方法が行われるときのタンパク質のTAFグリコフォームのレベルである。代表的な態様において、対照は、既知のグルコース又はフコース濃度が組換え産生中に維持されるときのTAFグリコフォームのレベルである。本明細書で使用する場合、「対照細胞培養」という用語は、フコース/グルコース濃度を除いて、本発明の方法の工程が行われる細胞培養(例えば、開示される方法の細胞培養)と同じ様式で維持される細胞培養を意味する。代表的な態様において、対照細胞培養は、対照フコース/グルコース濃度を含む、既知の操作又は標準パラメーターで維持される細胞培養である。本明細書で使用する場合、「対照フコース濃度」又は「対照グルコース濃度」という用語は、既知の操作のフコース/グルコース濃度、例えば、第1の時点又は本開示の方法を行う前の時点で維持された細胞培養のフコース/グルコース濃度を指し得る。代表的な態様において、対照フコース/グルコース濃度は、TAFレベルが既知であるか又は決定されている細胞培養のフコース/グルコース濃度である。
【0099】
本開示の方法を調節する代表的な態様において、グリコシル化適格細胞は、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されない。必要に応じて、グリコシル化適格細胞は、GDP-ケト-6-デオキシマンノース-3,5-エピメラーゼ,4-レダクターゼをコードする遺伝子をノックアウトするように遺伝的に改変されない。
【0100】
代表的な態様において、本開示の方法が行われた後、抗体組成物中のTAFグリカンのレベルは、約10%未満、例えば、約2%~約6%、約2%~約5%、又は約2%~約4%である。
【0101】
代表的な態様において、本開示の方法が行われた後、抗体組成物中の高マンノースグリカンのレベルは、約3.5%未満、必要に応じて、約0.7%~約3.0%である。
【0102】
代表的な態様において、本開示の方法が行われた後、抗体組成物中の非フコシル化グリカンのレベルは、約3.5%未満、必要に応じて、約0.8%~約2.8%である。
【0103】
フコースを添加することを含む本明細書に記載される方法を調節することに関して、細胞培養培地の最終フコース濃度は、様々な態様において、約0.17g/L~約1.0g/L、又は約0.2g/L~約0.5g/Lである。しかしながら、本明細書に記載されるフコース濃度のいずれかが企図される。
【0104】
細胞培養培地にグルコースを添加することを含む本明細書に記載される方法を調節することに関して、いくつかの態様において、グルコースは、約10g/L又はそれ未満又は約9g/L又はそれ未満の平均グルコース濃度を実現するグルコース供給スケジュールに従って添加される。いくつかの態様において、平均グルコース濃度は、約6.0g/L未満、必要に応じて、約4.0g/L未満である。いくつかの例において、平均グルコース濃度は、細胞培養培地のフコース濃度に基づく。例えば、平均グルコース濃度は、式Iに基づいて計算され得る:
T=3.354-1.388F+0.111G+[F-0.4375]×[1.9527(F-0.4375)]
式I
(式中、Tは、標的の%TAFグリカンであり、これは2.5%~約6%、約2.75%~約5.5%、又は約3%~約5%であり、Fは、培地中のフコースの濃度(g/L)であり、Gは、平均グルコース濃度(g/L)である)。
【0105】
本開示はさらに、グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを調節する(低減するか又は増大させる)方法を提供する。代表的な実施形態において、本方法は、細胞培養培地のpHを約0.03~約1.2(例えば、0.05~約1.0)下げて、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを約0.5%~約2%(例えば、0.5%~約1.5%、0.5%~約1.0%、1.0%~約2%、1.5%~約2.0%)低減すること又は細胞培養培地のpHを約0.03~約1.2(例えば、0.05~約1.0)上げて、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを約0.5%~約2%(例えば、0.5%~約1.5%、0.5%~約1.0%、1.0%~約2%、1.5%~約2.0%)増大させることを含む。代表的な態様において、本方法は、細胞培養培地のpHを約0.05~約1.2(例えば、0.06、0.07、0.08、0.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.20)下げて、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを約1%~約2%(例えば、1.0%~1.5%、1.5%~2.0%)低減すること又は細胞培養培地のpHを約0.05~約1.2(例えば、0.06、0.07、0.08、0.09、1.1、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.20)上げて、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを約1%~約2%(例えば、1.0%~1.5%、1.5%~2.0%)増大させることを含む。様々な例において、本方法は、細胞培養培地のpHを約0.03~約0.07(例えば、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07)下げて、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを約0.5%~約1.1%(例えば、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、1.0%、1.01%、1.02%、1.03%、1.04%、1.05%、1.06%、1.07%、1.08%、1.09%、1.10%)低減すること又は細胞培養培地のpHを約0.03~約0.07(例えば、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07)上げて、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを約0.5%~約1.1%(例えば、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、1.0%、1.01%、1.02%、1.03%、1.04%、1.05%、1.06%、1.07%、1.08%、1.09%、1.10%)増大させることを含む。
【0106】
グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを約1%~約2%低減する方法もまた本明細書で提供される。代表的な実施形態において、本方法は、細胞培養培地のpHを約0.05~約1.2下げることを含む。必要に応じて、本方法は、約1%の非フコシル化グリカンの低減のためにpHを約0.05~約0.07下げること又は約1.5%を超える非フコシル化グリカンの低減のためにpHを約0.09~約1.2下げることを含む。様々な態様において、本方法は、約7.10~約7.20、必要に応じて、約7.12~約7.19のpHで細胞を培養することを含む。
【0107】
グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを約0.5%~約1.1%低減する方法もさらに提供される。代表的な実施形態において、本方法は、細胞培養培地のpHを約0.03~0.07下げることを含む。様々な態様において、本方法は、約0.8%の非フコシル化グリカンの低減のためにpHを約0.03~約0.06下げることを含む。いくつかの態様において、本方法は、約1%の非フコシル化グリカンの低減のためにpHを約0.05~約0.07下げることを含む。様々な例において、本方法は、約7.05~約7.15、必要に応じて、約7.07~約7.13のpHで細胞を培養することを含む。
【0108】
グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを約1%~約2%増大させる方法が、本開示によって提供される。代表的な実施形態において、本方法は、細胞培養培地のpHを約0.05~約1.2上げることを含む。必要に応じて、本方法は、約1%の非フコシル化グリカンの低減のためにpHを約0.05~約0.07上げること又は約1.5%を超える非フコシル化グリカンの低減のためにpHを約0.09~約1.2上げることを含む。いくつかの態様において、本方法は、約7.10~約7.20、必要に応じて、約7.12~約7.19のpHで細胞を培養することを含む。
【0109】
本開示はまた、グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを約0.5%~約1.1%増大させる方法を提供する。代表的な実施形態において、本方法は、細胞培養培地のpHを約0.03~0.07上げること又は約0.8%の非フコシル化グリカンの低減のためにpHを約0.03~約0.06上げること若しくは約1%の非フコシル化グリカンの低減のためにpHを約0.05~約0.07上げることを含む。様々な例において、本方法は、約7.05~約7.15、必要に応じて、約7.07~約7.13のpHで細胞を培養することを含む。
【0110】
前述の方法のいずれかにおいて、培養全体にわたる細胞培養培地のpHは、7.0より高く、必要に応じて7.05より高く且つ7.2未満である。いくつかの態様において、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルは、約10%未満、例えば、約6.2%~約8.4%である。前述の方法のいずれかにおいて、温度は、培養期間中に2℃未満変化する。例えば、いくつかの態様において、培養の温度は、1.5℃以下又は1.0℃以下変化する。前述の方法のいずれかにおいて、細胞培養培地は、検出可能な量のマンガンもベタインも含まない。いくつかの態様における細胞培養培地は、約0.10g/L~約1.0g/Lのフコース、必要に応じて、約0.17~約1.0g/Lのフコースを含む。必要に応じて、フコースは、約0.75g/L未満、約0.6g/L未満、又は約0.2g/L~約0.5g/Lの濃度で培養培地中に存在する。培養培地中のフコースの添加又は存在は、本明細書で提供される教示のいずれかに従い得る。代表的な態様において、グリコシル化適格細胞は、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されない。前述の方法のいずれかにおいて、グルコースは、約10g/L又はそれ未満の平均グルコース濃度を実現するグルコース供給スケジュールに従って細胞培養培地に添加される。グルコースは、本明細書で提供される教示のいずれかに従って添加され得る。
【0111】
上記のとおり、TAFグリカンは、HMグリカン及び非フコシル化グリカンの合計である。したがって、非フコシル化グリカンを調節する本開示の方法は、様々な例において、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)のTAFグリカンのレベルを調節することになる。したがって、グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)のTAFグリカンのレベルを調節する方法が、本明細書で提供される。代表的な態様における本方法は、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを、非フコシル化グリカンのレベルを調節する本開示の方法に従って調節することを含む。代表的な実施形態において、TAFグリカンを調節する方法は、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを、非フコシル化グリカンのレベルを低減する本開示の方法に従って低減すること又は組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを、非フコシル化グリカンを増大させる本開示の方法に従って増大させることを含む。
【0112】
抗体組成物中の非フコシル化グリカンのレベルが約6.2%~約8.4%である抗体組成物を産生する方法がさらに、本開示によって提供される。代表的な実施形態において、本方法は、7.05より高く且つ7.2未満のpHで細胞培養培地中のグリコシル化適格細胞を維持することを含み、
必要に応じて、
(A)細胞培養培地のpHは、培養期間中に0.15未満(必要に応じて0.10未満)変化するか、又は
(B)細胞培養培地の温度は、2℃以下変化するか、又は
(C)本方法は、マンガン又はベタインを含む細胞培養培地中で細胞を培養することを含まないか、又は
(D)(A)、(B)、及び(C)のうちの2つ又は3つの組合せを含む。
【0113】
様々な態様において、pHは、培養期間中に約7.07~約7.19(例えば、7.08、7.09、7.10、7.11、7.12、7.13、7.14、7.15、7.16、7.17、7.18、又は7.19)のpHで維持され、必要に応じて、pHは、約7.07若しくはそれ超且つ7.10未満、又は約7.10若しくはそれ超且つ7.15未満、又は約7.15若しくはそれ超から最大約7.19で維持される。様々な態様において、抗体組成物中の非フコシル化グリカンのレベルは、約10%未満、必要に応じて、約6.2%~約8.4%である。様々な例において、温度は、培養期間中に2℃未満変化し、必要に応じて、培養の温度は、1.5℃以下又は1.0℃以下変化する。様々な態様において、細胞培養培地は、検出可能な量のマンガンもベタインも含まない。代表的な態様において、細胞培養培地は、約0.10g/L~約1.0g/Lのフコース、必要に応じて、約0.17g/L~約1.0g/Lのフコースを含み、必要に応じて、フコースは、約0.75g/L未満、約0.6g/L未満、又は約0.2g/L~約0.5g/Lの濃度で培養培地中に存在する。いくつかの態様において、グリコシル化適格細胞は、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されず、且ついくつかの態様において、グルコースは、約10g/L又はそれ未満の平均グルコース濃度を実現するグルコース供給スケジュールに従って細胞培養培地に添加される。
【0114】
代表的な実施形態
本開示は、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)を産生する方法を提供する。代表的な実施形態において、本方法は、所望されるTAFグリコフォームのレベルに応じて、本明細書に記載されるとおりの特定の濃度でフコース及び/又はグルコースを含む細胞培養培地中においてグリコシル化適格細胞を維持することを含む。代表的な実施形態において、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)中のTAFグリコフォームのレベルは、10%未満又は約10%であり、代表的な態様において、本方法は、フコースを含む細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持することを含み、フコースは、約0.17g/Lと約1.0g/Lの間の濃度で培養培地中に存在する。代表的な実施形態において、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)中のTAFグリコフォームのレベルは、10%未満又は約10%であり、代表的な態様において、本方法は、フコースを含む細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持することを含み、フコースは、約0.1g/Lと約1.0g/Lの間の濃度で培養培地中に存在し、且つグリコシル化適格細胞は、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されない。本開示はまた、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)を産生する方法であって、フコースが、約0.1g/L~約1.0g/Lの濃度で培養培地中に存在する、フコース及びグルコースを含む細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持し、且つ約10g/L又はそれ未満の平均グルコース濃度を実現するグルコース供給スケジュールに従って細胞培養培地にグルコースを添加することを含む方法を提供する。代表的な態様において、フコースは、約0.75g/L未満、必要に応じて、約0.6g/L未満の濃度で培養培地中に存在する。代表的な例において、フコースは、約0.2g/L~約0.5g/Lの濃度で培養培地中に存在する。いくつかの態様において、フコースは、グリコシル化適格細胞が細胞培養中で維持される全期間において培養培地中に存在する。代表的な例において、組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)を産生する方法は、初期の期間に第1の細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持し、続いて第2の細胞培養培地中でグリコシル化適格細胞を維持することを含み、第1の細胞培養培地は、約0.1g/L~約1.0g/Lの濃度でフコースを含まず、且つ第2の細胞培養培地は、約0.1g/L~約1.0g/Lの濃度でフコースを含む。いくつかの例において、初期の期間は、約24~約72時間である。代替的な態様において、初期の期間は、約72時間又は約72時間超であるが156時間未満又は約156時間である。いくつかの態様において、フコースが、細胞培養接種後の6日目に第1の培養培地に添加されて、第2の細胞培養培地が得られる。フコースの濃度は、グリコシル化適格細胞がフコースを含む細胞培養培地中で維持される期間中に約0.2g/L又はそれ未満(例えば、0.1g/L又はそれ未満)変動する。いくつかの態様において、細胞培養培地は、初期の期間において初期のグルコース濃度を含む。必要に応じて、初期のグルコース濃度は、約1g/L~約15g/L、例えば、約12g/L±1g/Lである。代表的な態様において、本方法はさらに、グルコース供給スケジュールに従って細胞培養培地にグルコースを添加することを含む。代表的な態様において、グルコース供給スケジュールは、細胞培養接種後の約4~約6日目に開始される。例えば、グルコース供給スケジュールは、細胞培養接種後の約6日目に開始され得る。代表的な例において、グルコース供給スケジュールは、約10g/L又はそれ未満(例えば、細胞培養培地中において約9g/L又はそれ未満、約6g/L又はそれ未満、約0.5g/L~約4g/L)の平均グルコース濃度を実現する。代表的な態様において、グルコース供給スケジュールは、細胞培養培地中のフコースの濃度に基づいて平均グルコース濃度を実現する。代表的な態様において、平均グルコース濃度は、式Iに基づいて計算される:
T=3.354-1.388F+0.111G+[F-0.4375]×[1.9527(F-0.4375)]
(式I)
(式中、Tは、抗体組成物中の標的の%総非フコシル化(TAF)グリカンであり、これは約2.5%~約6%、約2.75%~約5.5%、又は約3%~約5%であり、Fは、培地中のフコースの濃度(g/L)であり、Gは、培地中の平均グルコース濃度(g/L)である)。代表的な態様において、(i)フコースの濃度は約0.2±0.1g/Lであり、且つ平均グルコース濃度は約2~約4g/Lであるか;(ii)フコースの濃度は約0.5±0.1g/Lであり、且つ平均グルコース濃度は約3~約6g/Lであるか;又は(iii)フコースの濃度は約0.75±0.1g/Lであり、且つ平均グルコース濃度は約4.5~約9g/Lである。代表的な態様において、細胞培養培地のpHは、約6.85~約7.05(例えば、約6.90~約7.00)である。いくつかの態様において、グリコシル化適格細胞は、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されない。例えば、グリコシル化適格細胞は、GDP-ケト-6-デオキシマンノース-3,5-エピメラーゼ,4-レダクターゼをコードする遺伝子をノックアウトするように遺伝的に改変されない。代表的な例において、抗体組成物中の総非フコシル化(TAF)グリカンのレベルは、約10%未満(例えば、約2%~約6%、約2%~約5%、約2%~約4%)である。代表的な例において、抗体組成物中の高マンノースグリカンのレベルは、約3.5%未満(例えば、約0.7%~約3.0%)である。代表的な例において、抗体組成物中の非フコシル化グリカンのレベルは、約3.5%未満(例えば、約0.8%~約2.8%)である。いくつかの態様では、グリコシル化適格細胞は、IgG抗体、必要に応じて、IgG1抗体を産生する。いくつかの態様において、IgG1抗体は、腫瘍関連抗原(例えば、CD20)に特異的である。代表的な態様において、培養培地は、マンノースを含まない。
【0115】
(a)抗体をコードする外来核酸を含むグリコシル化適格細胞;及び(b)約0.1g/L~約1.0g/L又は約0.17g/L~約1.0g/Lの濃度でフコースを含む培養培地を含む細胞培養培地。代表的な態様において、グリコシル化適格細胞は、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されず、必要に応じて、グリコシル化適格細胞は、GDP-ケト-6-デオキシマンノース-3,5-エピメラーゼ,4-レダクターゼをコードする遺伝子をノックアウトするように遺伝的に改変されない。代表的な態様において、培養培地はさらに、約10g/L未満、例えば、約9g/L未満、約6g/L未満、又は約0.5g/L~約4g/Lの濃度でグルコースを含む。代表的な態様において、培養培地のpHは、約6.85~約7.05、例えば、約6.9~約7.0である。いくつかの態様において、細胞培養培地は、マンノースを含まない。代表的な態様において、抗体は、IgG抗体、例えば、IgG1抗体である。代表的な例において、IgG1抗体は、腫瘍関連抗原、例えば、CD20に特異的である。
【0116】
細胞培養培地中においてグリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)のTAFグリカンのレベルを変えるか又は調節する方法がさらに、本明細書において提供される。代表的な態様において、本方法は、(A)TAFグリカンのレベルを低減するために約0.1g/L~約1.0g/Lのフコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にフコースを添加すること;(B)TAFグリカンのレベルを増大させるために約10g/L未満のグルコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にグルコースを添加すること;又は(C)(A)と(B)の両方を含む。また、グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の非フコシル化グリカンのレベルを調節する方法が提供される。代表的な実施形態において、本方法は、(A)非フコシル化グリカンのレベルを低減するために約0.1g/L~約1.0g/Lのフコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にフコースを添加すること;(B)非フコシル化グリカンのレベルを増大させるために10g/L未満又は約10g/Lのグルコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にグルコースを添加すること;又は(C)(A)と(B)の両方を含む。本開示はさらに、グリコシル化適格細胞によって産生される組換えグリコシル化タンパク質組成物(例えば、抗体組成物又は抗体結合タンパク質組成物)の高マンノースグリカンのレベルを調節する方法を提供する。代表的な実施形態において、本方法は、HMグリカンのレベルを増大させるために約10g/L未満のグルコース濃度を実現するようにグリコシル化適格細胞を含む細胞培養培地にグルコースを添加することを含む。調節する方法の代表的な態様において、グリコシル化適格細胞は、デノボ経路又はサルベージ経路の酵素の活性を変えるように遺伝的に改変されない。例えば、グリコシル化適格細胞は、いくつかの態様において、GDP-ケト-6-デオキシマンノース-3,5-エピメラーゼ,4-レダクターゼをコードする遺伝子をノックアウトするように遺伝的に改変されない。いくつかの態様において、抗体組成物中のTAFグリカンのレベルは、10%未満又は約10%(例えば、約2%~約6%、約2%~約5%、約2%~約4%)である。いくつかの態様において、抗体組成物中の高マンノースグリカンのレベルは、3.5%未満又は約3.5%(例えば、約0.7%~約3.0%)である。いくつかの態様において、抗体組成物中の非フコシル化グリカンのレベルは、3.5%未満又は約3.5%(例えば、約0.8%~約2.8%)である。代表的な態様において、フコース濃度は、約0.17g/L~約1.0g/L、必要に応じて、約0.2g/L~約0.5g/Lである。いくつかの態様において、本方法はさらに、約10g/L(例えば、約9.0g/L未満、約6.0g/L未満、約4.0g/L未満)の平均グルコース濃度を実現するグルコース供給スケジュールに従って細胞培養培地にグルコースを添加することを含む。いくつかの例において、平均グルコース濃度は、細胞培養培地のフコース濃度に基づく。例えば、いくつかの態様において、平均グルコース濃度は、式Iに基づいて計算される:
T=3.354-1.388F+0.111G+[F-0.4375]×[1.9527(F-0.4375)]
式I
(式中、Tは、抗体組成物中の標的の%総非フコシル化(TAF)グリカンであり、これは約2.5%~約6%、約2.75%~約5.5%、又は約3%~約5%であり、Fは、培地中のフコースの濃度(g/L)であり、Gは、平均グルコース濃度(g/L)である)。
【0117】
以下の実施例は、単に本開示を説明するために与えられ、決してその範囲を限定するものではない。
【実施例0118】
実施例1
この実施例は、実施される方法及び実施例2の実験において使用される材料を記載する。
【0119】
細胞株、細胞培養及び培地
全ての実験は、配列番号1を含む軽鎖及び配列番号2を含む重鎖を含む抗体を発現するクローンを使用して実施された。全ての実験は、25日間培養された細胞の別々のバイアルを使用して実施された。以下のパラメーターが一定に保たれた:期間(12日)、溶解酸素(48mmHg~74mmHg)、pH(6.85~7.05)、撹拌(350RPM、20W/m3)、温度(36.0℃)。
【0120】
親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)グリカンマップ
HILICを使用して、酵素的に放出されるN結合型グリカンのグリカンマップを決定した。簡潔に述べると、約37℃で約2時間、PNGase F及びリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)を含む溶液とともにグリカンを温置した。次に、2-アミノ安息香酸(2-AA)及びシアノ水素化ホウ素ナトリウムを含む標識溶液をPNGase Fで処理したグリカンに添加し、約80℃で約75分間、混合物を温置した。温置後、沈殿タンパク質のペレットを得るために、混合物を遠心分離した。上清を回収し、バイアルに入れた。
【0121】
グリカンは、蛍光検出器に基づきHILICによって分離された:グリカンを注入し、高有機条件でカラムに結合させ(移動相A及び移動相Bはそれぞれギ酸アンモニウム及びアセトニトリルであった)、続いて水性ギ酸アンモニウム緩衝液の勾配を漸増させて溶出させた。1.7μm小粒子カラム方式及び150mmカラム長を使用して、高分解能が達成された。カラム再平衡化を含む総運転時間は155分間であった。
【0122】
実施例2
この実施例は、TAF%に対して培養培地中のグルコース及びフコースレベルを増大させる効果を実証する。
【0123】
配列番号1の軽鎖及び配列番号2の重鎖を含む抗体を発現する細胞を、3種の培養培地:対照培養培地、第1の試験培養培地、及び第2の試験培養培地の1つを含有するバイオリアクターに添加した。第1の試験培養培地は、2倍量のグルコースを含有したことを除いて対照培養培地と同一であり、且つ第2の試験培養培地は、0.5g/Lフコースを含む対照培養培地であった。培養培地の各々は、マンノースを欠いた。細胞培養は、6.85と7.05の間のpHで12日間維持された。
【0124】
培地試料は、グルコース濃度、TAFレベル及びADCCレベルの測定のために、バイオリアクターから定期的に採取された。TAF及び/又は非フコシル化(非フコ)グリカンレベルは、HILIC N-グリカンマッピング工程により評価され、ADCCを刺激する能力は、インビトロアッセイを使用して試験された。結果は、以下の表1において示される。
【0125】
【0126】
グルコース濃度は、培養行程全体にわたって決定され、これらの測定値は、時間の関数として及び各細胞培養培地タイプにおいて産生される抗体のTAFレベルに対してプロットされた。結果は、
図3において示される。この図において示されるとおり、第1の試験培養において培養される細胞によって産生された抗体は、TAFの増加を実証し、この増加は、細胞培養中のグルコースレベルの増加と一致した。これらの結果(及び表1の結果)は、グルコースがTAFレベル及びADCCに影響を及ぼすことができることを示唆する。
【0127】
0.5g/Lフコースを含む第2の試験培養培地において培養される細胞によって産生される抗体は、TAFの約1%の減少を示した(
図3)。
図3において示されるとおり、フコース濃度は、12日間の行程にわたって大きく変化しなかったが、これは、細胞によるフコースの取込みが無視できたためであると考えられる。
【0128】
各種培養培地の各々において産生される抗体の別々のグリカン種のさらなる分析が行われた。興味深いことに、
図4において示されるとおり、細胞が、対照培地と比較して2倍量のグルコースを含有した第1の試験培地において培養されたとき、%高マンノース(HM)グリカンは増加した。%HMグリカンのこの増加は、フコースを含有する第2の試験培地において培養された細胞によっては実現されなかった。
図4において示されるとおり、フコースを含有する第2の試験培地において培養された細胞によって産生された抗体の%HMグリカンは、対照培地において培養された細胞によって産生された抗体の%HMグリカンとほぼ同じであった。
【0129】
%非フコシル化グリカンに対する2倍量のグルコースを含有する培地(第1の試験培地)又はフコースを含有する培地(第2の試験培地)において培養する効果は、%TAFグリカンに対するそれらの効果と同様であった。
図5において示されるとおり、高グルコース濃度を含む第1の試験培地において培養された細胞は、非フコシル化グリカンの増加を実証したが、フコースを含む第2の試験培地において培養された細胞は、非フコシル化グリカンの減少を伴う抗体を産生した。
【0130】
この実施例は、グルコース及びフコースが、高マンノース及び非フコシル化グリカンレベルを調節し、ADCCに影響を及ぼすために使用され得る手段であることを実証した。
【0131】
実施例3
この実施例は、TAFレベル及びADCCの調節のための手段としてのグルコース及びフコースを実証する追加の試験を示す。
【0132】
追跡多変量要因実験を設計して、(1)フルクトース及びグルコース変量の主効果、相互作用効果及び二次効果を解明し、且つ(2)TAFグリカン及びADCCレベルの変更をもたらすことになるこれらの変量に関する量を見出した。フコースは、0g/L、0.5g/L及び1g/Lの濃度で培養培地中において評価された。グルコースは、0×、1×(対照)及び2×の比率で供給された。0×は、グルコース原液が培養に添加されないことを意味し、これは、細胞培養の6日目の後の約1g/Lの残留グルコース濃度に変換された。グルコースは、12g/Lの糖を含有した培地を介してのみ供給された。1×の供給では、グルコースは、グルコース供給開始後に3±1g/Lの平均濃度で維持された。2×の供給において、平均グルコースレベルは、6±1g/Lで維持された。結果は、フコース濃度を変えて、TAFレベル(
図6)及びADCCレベル(
図7)に影響を与えることができることを示す。
【0133】
これらの実験において、グルコース濃度は、供給開始後(すなわち、6日後)3±1g/Lで制御された。グルコース濃度が4g/Lを超えた場合、追加のグルコースは添加されず、細胞は、グルコースレベルが制御範囲内になるまでバイオリアクター中の残留グルコース及び灌流培地を介して入ってくるグルコースに依存することになった。これらの実験に基づいて、TAF値は、
図8において示されるモデルに従って、様々なフコース及びグルコース濃度について予測された。モデルは、目標製品品質プロファイル(QTTP)が、約0.1g/L~約1.0g/Lフコース及び/又は約0.5g/L~約4.0g/Lグルコースを含む培養培地中で細胞を培養する際に達成され得ることを実証している。TAF値は、このモデルを利用する以下の様々なフコース及びグルコース濃度について予測された:0.2g/Lフコース及び3g/Lグルコース、0g/Lフコース及び0.554g/Lグルコース;及び0.492g/Lフコース及び6g/Lグルコース。
図9A~9C。これらの結果は、所望のTAFレベル及びADCCレベルに到達するためのいくつかの方法があることを示唆した。
【0134】
図9A~9Cの予測を確認するために、追加の実験が行われた。実験の概要は、表2において提供される。
【0135】
【0136】
この実施例は、グルコース濃度及びフコース濃度の両方が、TAF及びADCCのレベルを変えるために操作され得る変量であることを実証した。
【0137】
実施例4
この実施例は、細胞培養に対するフコースの影響を実証する。
【0138】
追加の分析が、上記の細胞培養に対して実施された。例えば、細胞培養の浸透圧が測定され、約175mOsm/kg~約345mOsm/kgの範囲であった。細胞培養浸透圧とフコース濃度の間の相関の欠如が観察された。
図10を参照されたい。この図において示されるとおり、培養培地へのフコースの添加は、いずれの特定の様式においても浸透圧に影響を及ぼすように見えない。浸透圧が対照条件(フコースを伴わない)において大幅に変動したことは、培養培地中の構成成分(フコース以外)が浸透圧に活発に影響を及ぼすことを示唆する。
【0139】
このフコース試験の1つの実験において、細胞は、5つのバイオリアクターのうちの1つに接種され、そのうちの2は、フコースを伴わない培養培地を含有し(ctrl_a及びctrl_b)、且つそのうちの3つは、0.5g/Lのフコースを伴う培養培地を含有した(fuc_a、fuc_b、及びfuc_c)。5つの細胞培養からの培地試料を、12日の培養期間全体にわたって、0日目、3日目、5日目、7日目、9日目、及び12日目に回収した。試料は、フコース濃度について測定された。
図11において示されるとおり、フコースの濃度は、培養期間全体にわたって実質的に変化しなかったが、これは、この培養プロセス中のフコースの少量且つ/又は緩徐な消費を示唆している。
【0140】
このフコース試験の別の実験において、細胞は、フコースを含有しない培養培地中で12日間細胞培養において維持された。この特定の実験において、細胞培養のpHは、7.1から変動したが、このことが5日目~約8日目にTAF%を約5.5%まで増加させた。TAF%は、5日目から毎日測定された。TAFレベルを調節して4.0%の目標値に戻す試みの中で、フコースは、1日当たり0.9g/Lの供給速度で培養の9日目に添加された。
図12において示されるとおり、TAF%は、培養培地へのフコースの添加時に約5.5%から減少した。TAF%は、12日目の約3.8%まで減少し続けた。これらのデータは、フコースの添加が、培養期間の後期に起こり、それでもなおTAF%の調節をもたらす可能性があることを示唆する。
【0141】
この実施例は、TAFのレベルに対する、培養期間中のフコース濃度の影響を実証した。
【0142】
実施例5
この実施例は、標的範囲におけるグルコースの維持が、培養期間の後期に起こり得ることを実証する。
【0143】
3つの実験を行って、12日の培養期間中に標的となるグルコース範囲に到達したタイミングをモニターした。各実験に関して、各細胞培養の初期グルコース濃度は、約5.0g/L~約6.0g/Lの範囲であった。細胞培養培地のグルコース濃度は、毎日モニターされた。
図13において示されるとおり、細胞培養の各々は、培養期間の異なる日に標的となるグルコース濃度(0.5g/L~4.0g/L)に達した。1つの実験において(白抜きの四角を伴う線)、標的となる範囲は2日目に実現された。第2の実験において(白抜きの菱形を伴う点線)、標的となる範囲は4日目に実現されたが、第3の実験において(白抜きの丸を伴う点線)、6日目に標的となる範囲に達した。これらの相違にもかかわらず、各細胞培養は、標的となるTAF%の範囲(約2.0%~約4.3%)を実現した(
図13の左のグラフ;白抜きの丸によって表される第3の実験;白抜きの菱形によって表される第2の実験;白抜きの四角によって表される第1の実験)。これらのデータは、培養期間中の早期に維持された培養の同じTAFレベルを実現するために、培養期間の後期にグルコースの維持が起こり得ることを示唆する。
【0144】
これらのデータは、グルコース濃度の早期及び後期の制御が、同様のTAFレベルをもたらすことを実証している。
【0145】
実施例6
この実施例は、フコースの添加の有り無し両方で、抗体の非フコシル化のレベルに対する細胞培養のpHを下げることの効果を実証する。
【0146】
細胞培養の試料は、2000Lのバイオリアクターから取り出され、これを使用して対応している3Lのバイオリアクターに接種した。2000L及び3Lのバイオリアクターは、連続した流加培養プロセスを使用して12日間フィードA及びフィードBを供給された。3Lのバイオリアクターのうちの2つは、5日目の1.0g/Lの最終濃度までフコースを供給された。非フコシル化レベルは、実施例1において記載されるとおりに測定され、結果は表3において提供される。
【0147】
【0148】
表3において示されるとおり、フコースの添加がない場合、pHが7.1未満であったとき、平均%非フコシル化は6.39であったが、pHが7.10を超えるが7.15未満であったとき、平均%非フコシル化は、より高かった(%非フコシル化=7.185)。pHが7.15を超えたとき、平均%非フコシル化はさらに高かった(%非フコシル化=8.276)。したがって、比較的低いpHが比較的低い%非フコシル化と関連した。
【0149】
フコースが細胞培養に添加されたとき(1.0g/Lのフコースの最終濃度を実現するように)、%非フコシル化は、比較的低いpH(7.07)及び比較的高いpH(7.18)の両方で実質的に減少した。これらのpHレベルの各々に関して、フコースが添加されたとき、%非フコシル化における平均の減少は2.18%であった。
【0150】
これらの結果は、細胞培養培地のpHを下げること及び/又は細胞培養培地にフコースを添加することが、非フコシル化のパーセントを下げることを示唆する。pHが下げられ且つフコースが細胞培養培地に添加されたとき、非フコシル化のパーセントのより大幅な減少が観察された。
【0151】
実施例7
この実施例はさらに、フコースの添加の有り無し両方で、抗体の非フコシル化のレベルに対する細胞培養のpHを下げることの効果を実証する。
【0152】
2000Lのバイオリアクターからの細胞培養の試料を使用して、対応している3Lのバイオリアクターに接種した。2000L及び3Lのバイオリアクターは、連続した流加培養プロセスを使用して12日間フィードA及びフィードBを供給された。バイオリアクター(すなわち、細胞培養)の一部は、5日目の0.25、0.5又は1g/Lの最終濃度までフコースを供給された。非フコシル化レベルは、実施例1において記載されるとおりに測定され、結果は
図14において提供される。
【0153】
図14において示されるとおり、対照3Lバイオリアクター(対照pH7.1)は、元の2000Lのバイオリアクターと同様の非フコシル化のレベルを示した。両方ともに、約6.5%又はそれを超える%非フコシル化を示した。試験されたレベルのいずれかでのフコースの添加は、%非フコシル化(5.5%又はそれ未満)の実質的な減少をもたらした。非フコシル化のパーセントは、0.25g/Lのフコースの添加において最も低かった。
【0154】
また、
図14において示されるとおり、培養培地にフコースを添加することなくpHを7.1から7.0に下げることもまた、少なくとも約1.0%の非フコシル化の減少をもたらした。
【0155】
本明細書中に引用される刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が参照によって援用されるように個別的且つ具体的に指定され、その全体が本明細書に記載されているかのような場合と同程度まで、参照により本明細書に援用される。
【0156】
本開示の説明に関する(とりわけ以下の特許請求の範囲に関する)「ある(a)」及び「ある(an)」並びに「その(the)」という用語、並びに類似の指示対象の使用は、本明細書に別段の指示がない限り又は文脈と明確に矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含するものと解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」という用語は、特記しない限り、オープンエンドの用語(即ち「含むが、それに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。
【0157】
本明細書における値の範囲の記載は、本明細書に別段の指示がない限り、単に、その範囲及び各端点にある別個の値の各々を個々に指す簡略法の役目をするものに過ぎず、別個の値及び端点の各々は、それが個々に本明細書に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0158】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り又は文脈と明確に矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるあらゆる例又は例示的な語(例えば、「など」)の使用は、単に本開示をさらに明らかにするものであり、別段の主張がない限り、本開示の範囲に限定を課すものではない。本明細書におけるいかなる語も、任意の特許請求されていない要素を本開示の実施に必須として示していると解釈されるべきではない。
【0159】
本開示を実行するために、本発明者らには既知の最良の形態を含む、本開示の好ましい実施形態が本明細書に記載される。それらの好ましい実施形態の変形形態は、上述の記載を読めば、当業者には明らかになるであろう。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのような変形形態を採用することを期待し、また、本発明者らは、本明細書で具体的に記載されている形態以外で本開示が実施されることを意図している。したがって、本開示は、適用される法により認められるとおり、本明細書に添付される特許請求の範囲に列挙される主題の全ての変更形態及び均等物を含む。さらに、上記の要素の全ての可能な変形形態におけるそれらの要素の任意の組合せが、本明細書に別段の指示がない限り又は文脈と明確に矛盾しない限り、本開示に包含される。