(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001972
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】給湯システム
(51)【国際特許分類】
F24H 15/184 20220101AFI20231228BHJP
F24H 15/219 20220101ALI20231228BHJP
F24H 15/395 20220101ALI20231228BHJP
F24H 1/14 20220101ALI20231228BHJP
【FI】
F24H15/184
F24H15/219
F24H15/395
F24H1/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100864
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】五島 大輔
(72)【発明者】
【氏名】若竹 孝史
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎之介
(72)【発明者】
【氏名】輿水 連太郎
【テーマコード(参考)】
3L034
【Fターム(参考)】
3L034BA22
3L034BB03
(57)【要約】
【課題】給湯装置の故障診断時に、作業者が高温出湯の湯水や、熱交換器などの高温部分に不用意に触れる虞を適切に解消することが可能な給湯システムを提供する。
【解決手段】加熱用気体供給手段1から供給される加熱用気体が内部に供給される缶体20内に湯水加熱用の伝熱管21が配された熱交換器HTを有する給湯装置WHと、この給湯装置WHの故障診断が可能であり、かつ情報の報知手段80,SPを有する故障診断装置Aと、伝熱管21内の湯水温度またはこれに対応する温度を検出可能な温度センサSaと、を備えており、故障診断装置Aを利用した給湯装置WHの故障診断がなされている場合において、温度センサSaによる検出温度が所定の基準温度以上に上昇したときには、給湯装置WHから高温出湯の可能性がある旨の注意喚起情報が、報知手段80,SPを利用して報知される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用気体供給手段、およびこの加熱用気体供給手段から供給される加熱用気体が内部に供給される缶体内に湯水加熱用の伝熱管が配された熱交換器を有する給湯装置と、
この給湯装置の故障診断が可能であり、かつ情報の報知手段を有する故障診断装置と、
前記伝熱管内の湯水温度またはこれに対応する温度を検出可能な温度センサと、
を備えており、
前記故障診断装置を利用した前記給湯装置の故障診断がなされている場合において、前記温度センサによる検出温度が所定の基準温度以上に上昇したときには、前記給湯装置から高温出湯の可能性がある旨の注意喚起情報が、前記報知手段を利用して報知されるように構成されていることを特徴とする、給湯システム。
【請求項2】
請求項1に記載の給湯システムであって、
前記注意喚起情報の報知は、前記加熱用気体供給手段が動作して前記加熱用気体により前記伝熱管が加熱されている期間中は行なわれず、この期間が終了したにも拘わらず、前記検出温度が前記基準温度以上であるときに、その時点で開始されるように構成されている、給湯システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の給湯システムであって、
前記注意喚起情報の報知は、この報知が開始された後に、前記検出温度が前記基準温度未満に低下するまで継続するように構成されている、給湯システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の給湯システムであって、
前記給湯装置の故障診断時において、前記検出温度が前記基準温度以上に上昇したときには、それ以降は前記故障診断の全部、または少なくとも出湯動作を伴う一部の故障診断を進めていくことは制限され、
この制限は、前記検出温度が前記基準温度未満まで低下したときに解除されるように構成されている、給湯システム。
【請求項5】
請求項1または2に記載の給湯システムであって、
前記給湯装置の故障診断時において、前記検出温度が前記基準温度以上にあるときには、前記故障診断を終了することは不可とされている、給湯システム。
【請求項6】
請求項1または2に記載の給湯システムであって、
前記給湯装置は、給湯動作時における出湯温度を変更可能な第1の弁、および/または出湯流量を変更可能な第2の弁を備えており、
前記給湯装置の故障診断時において、前記検出温度が前記基準温度以上に上昇したときには、出湯温度が低下するように前記第1の弁を設定し、および/または出湯流量が減少するように前記第2の弁を設定する制御が実行されるように構成されている、給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯装置の故障診断が可能とされた給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
給湯システムの具体例としては、特許文献1~3に示すように、給湯装置に故障診断装置を接続することにより、給湯装置の各部の故障診断を行なうことが可能とされているものがある。
ここで、給湯装置としては、たとえばバーナと、熱交換器とを備えている。熱交換器は、バーナにより発生された燃焼ガス(加熱用気体)が内部に供給される缶体内に、湯水加熱用の伝熱管が配された構成である。
このような給湯装置を備えた給湯システムにおいては、バーナも故障診断の対象とされる。
【0003】
しかしながら、前記した給湯システムにおいては、次に述べるように、改善すべき余地がある。
【0004】
すなわち、バーナの故障診断を行なうべく、バーナを駆動燃焼させた場合には、熱交換器の各部や伝熱管内の湯水が加熱されて高温となり、バーナの駆動燃焼を停止させた後であっても、暫くの期間中はそれらが高温のままである場合がある。このため、バーナを駆動燃焼させた後に、熱交換器から出湯を行なわせた場合に、作業者が予期しないほどに高温の出湯(高温出湯)を生じる虞がある。また、そのような高温出湯が行なわれない場合であっても、熱交換器の高温部分に、作業者の手が触れてしまう虞もある。作業者の安全性を向上させる観点からすると、前記したような虞は適切に解消されることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2726623号公報
【特許文献2】特開2004-308935号公報
【特許文献3】特開2013-195007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、給湯装置の故障診断時に、作業者が高温出湯の湯水や、熱交換器などの高温部分に不用意に触れる虞を適切に解消し、作業者の安全性を向上させることが可能な給湯システムを提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される給湯システムは、加熱用気体供給手段、およびこの加熱用気体供給手段から供給される加熱用気体が内部に供給される缶体内に湯水加熱用の伝熱管が配された熱交換器を有する給湯装置と、この給湯装置の故障診断が可能であり、かつ情報の報知手段を有する故障診断装置と、前記伝熱管内の湯水温度またはこれに対応する温度を検出可能な温度センサと、を備えており、前記故障診断装置を利用した前記給湯装置の故障診断がなされている場合において、前記温度センサによる検出温度が所定の基準温度以上に上昇したときには、前記給湯装置から高温出湯の可能性がある旨の注意喚起情報が、
前記報知手段を利用して報知されるように構成されていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、給湯装置の故障診断時において、加熱用気体供給手段(たとえば、バーナ)から熱交換器に加熱用気体が供給されると、熱交換器の伝熱管内の湯水温度や熱交換器の各部の温度がかなりの高温となる場合がある。この場合、温度センサによる検出温度は、所定の基準温度以上に上昇し、給湯装置から高温出湯の可能性がある旨の注意喚起情報が、報知手段を利用して報知されることとなり、故障診断の作業者は、その旨を適切に察知することとなる。したがって、作業者は、給湯装置からの高温出湯に注意を払う他、熱交換器に安易に触れること等を避けることとなり、作業者の安全性を向上させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記注意喚起情報の報知は、前記加熱用気体供給手段が動作して前記加熱用気体により前記伝熱管が加熱されている期間中は行なわれず、この期間が終了したにも拘わらず、前記検出温度が前記基準温度以上であるときに、その時点で開始されるように構成されている。
【0011】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、給湯装置の故障診断時に、加熱用気体によって伝熱管が加熱され、出湯が行なわれている場合、作業者はそのような期間中は熱交換器の各所が高温または比較的高温となっていることを知っているのが一般的である。したがって、そのような期間中は、高温出湯が生じる可能性がある旨の注意喚起情報を、あえて報知する必要は少ないと考えられる。前記構成は、そのような事情に合致する。
また、たとえば熱交換器の缶体温度が、温度センサによる検出温度とされる場合には、伝熱管が加熱されている期間中、実際の出湯温度よりも温度センサによる検出温度(缶体温度)の方が高くなる場合がある。したがって、余り高温ではない出湯がなされているにも拘わらず、検出温度が高温となる場合があるが、このような場合に、前記構成とは異なり、高温出湯の可能性がある旨の注意喚起情報の報知がなされることは、作業者に混乱を生じさせる虞がある。前記構成によれば、そのような虞も回避される。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記注意喚起情報の報知は、この報知が開始された後に、前記検出温度が前記基準温度未満に低下するまで継続するように構成されている。
【0013】
このような構成によれば、注意喚起情報の報知を作業者に察知させることがより徹底され、作業者の安全性を向上させる上で一層好ましい。
【0014】
本発明において、好ましくは、前記給湯装置の故障診断時において、前記検出温度が前記基準温度以上に上昇したときには、それ以降は前記故障診断の全部、または少なくとも出湯動作を伴う一部の故障診断を進めていくことは制限され、この制限は、前記検出温度が前記基準温度未満まで低下したときに解除されるように構成されている。
【0015】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、前記とは異なり、温度センサによる検出温度が基準温度以上である場合に、故障診断を進めていくことができるとすると、作業者が故障診断を進めようとして給湯装置の高温部分に触れる可能性、あるいは高温出湯の湯水に触れる可能性が高くなる。これに対し、前記構成によれば、そのようなことを適切に回避することが可能である。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記給湯装置の故障診断時において、前記検出温度が前記基準温度以上にあるときには、前記故障診断を終了することは不可とされている。
【0017】
このような構成によれば、温度センサによる検出温度が基準温度以上の高温であるにも拘わらず、この状態を放置したまま故障診断が終了されることがなくなる。したがって、故障診断を終えた直後に、作業者あるいは給湯装置のユーザが、給湯装置を動作させた際に、高温出湯が生じる虞をなくすことが可能である。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記給湯装置は、給湯動作時における出湯温度を変更可能な第1の弁、および/または出湯流量を変更可能な第2の弁を備えており、前記給湯装置の故障診断時において、前記検出温度が前記基準温度以上に上昇したときには、出湯温度が低下するように前記第1の弁を設定し、および/または出湯流量が減少するように前記第2の弁を設定する制御が実行されるように構成されている。
【0019】
このような構成によれば、温度センサによる検出温度が基準温度以上に上昇した場合に、仮に出湯がなされたとしても、前記した第1の弁、および/または第2の弁の設定制御により、出湯温度は低下し、および/または出湯流量が減少する。したがって、作業者が高温湯水に触れる虞をより少なくし、作業者の安全性を向上させることができる。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る給湯システムの一例を示す説明図である。
【
図2】
図1に示す給湯システムにおける動作手順の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図1に示す給湯システムにおける動作手順の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
図1に示す給湯システムSYは、給湯装置WHと、故障診断装置Aとを備えている。故障診断装置Aは、故障診断中継ユニット7と、パーソナルコンピュータ8(以下、「パソコン8」と適宜称する)とを組み合わせたものである。ただし、後述するように、本発明における故障診断装置は、そのような組み合わせのものに限らない。
【0024】
給湯装置WHは、バーナ1、ファン12、熱交換器HT、排気口13aを有する集合筒ケース13、制御部31、およびこれら全体を囲む外装ケース9を備えている。
【0025】
バーナ1は、たとえばガスバーナであり、本発明でいう加熱用気体供給手段の一例に相当する。このバーナ1は、バーナケース10内に配されており、ガス配管部からの燃料ガスの供給およびファン12からの燃焼用空気の供給を受け、燃料ガスを燃焼させる駆動燃焼動作が可能である。
【0026】
熱交換器HTは、バーナ1の上側に設けられ、バーナ1により発生された燃焼ガス(加熱用気体)が内部に供給される缶体20と、この缶体20内に配された熱回収用の伝熱管21とを備えている。伝熱管21には、外部から入水口40aに供給された湯水が、内部入水路40を介して送り込まれ、この湯水は伝熱管21を通過する過程において燃焼ガスにより加熱される。この加熱された湯水は、内部出湯路41を介して出湯口41aに到達し、給湯栓49に供給される。
【0027】
なお、給湯装置WHには、バイパス弁V1および出湯流量制御弁V2が設けられている
。
バイパス弁V1は、本発明でいう第1の弁の具体例に相当し、内部入水路40および内部出湯路41の途中箇所を連通させるバイパス流路42に設けられている。内部入水路40の本来の湯水流量Q0に対し、バイパス弁V1を制御することにより、伝熱管21側および内部出湯路41側へのそれぞれの湯水流量Q1,Q2の比率を制御可能である。
出湯流量制御弁V2は、本発明でいう第2の弁の具体例に相当し、内部出湯路41の流量を変更可能である。
【0028】
制御部31は、マイクロコンピュータなどを用いて構成されており、バーナ1の燃焼駆動や、バイパス弁V1や出湯流量制御弁V2などの各種の弁の開閉動作を始めとして、給湯装置WHの各部の動作、ならびに各種のデータ処理を実行する。また、故障診断装置Aが接続された場合には、故障診断装置Aによる各部の故障診断を可能とする故障診断モードに設定可能であり、かつこのモードにおいては故障診断装置Aからの制御コマンドに対応した応答を行なうように構成されている。
この制御部31は、熱交換器HTの缶体温度を検出可能である。缶体温度は、熱交換器HTの缶体20に取付けられた温度センサSaによって検出される温度であり、熱交換器HTの伝熱管21内の湯水温度に対応する温度であって、本発明でいう「温度センサによる検出温度」の具体例に相当する。
【0029】
パソコン8は、このパソコン8のデータ記憶部に、給湯装置WHの故障診断を行なうための制御プログラムが記憶されたものであり、後述するような動作手順での故障診断およびこれに付随する制御を実行可能とされている。パソコン8は、所望の画像を表示可能な表示部80、複数の操作キーを有する操作部81、スピーカSP、マイクMCなどを備えている。
【0030】
故障診断中継ユニット7は、給湯装置WHの制御部31とパソコン8との相互間のデータ伝送を可能とするものであり、制御部31の端子部31aおよびパソコン8に対しての配線La,Lbを用いた通信接続を可能とする端子部70a,70b、および中継回路71を備えている。中継回路71は、給湯装置WH側での通信方式とパソコン8側での通信方式との相互変換を図るためのマイクロコンピュータ71aやレシーバ回路71bを備えている。
【0031】
次に、前記した給湯システムSYの動作処理手順の一例について、
図2に示したフローチャートを参照して説明し、併せてその作用も説明する。
【0032】
まず、
図1に示したように、給湯装置WHに故障診断中継ユニット7を介してパソコン8が接続され、給湯装置WHの故障診断が開始されると、温度センサSaによる検出温度としての缶体温度が監視される(S1:YES,S2)。一方、故障診断時において、たとえばバーナ1の駆動燃焼が行なわれると、缶体温度が上昇する。このようなことにより、缶体温度が所定の基準温度以上に上昇し、かつその後にバーナ1が非駆動燃焼状態になると、その時点でパソコン8の表示部80には、「給湯装置から高温出湯の可能性がある」旨の注意喚起情報が表示される(S3:YES,S4:YES,S5)。この注意喚起情報の表示は、たとえば表示部80の片隅にポップアップ表示され、継続される。また、パソコン8のスピーカSPからは、アラーム音が一時的に出力され、表示部80に表示された注意喚起情報に注目を集めるようにされる。勿論、「給湯装置から高温出湯の可能性がある」旨の音声メッセージを出力させる構成とすることもできる。表示部80およびスピーカSPのそれぞれは、本発明でいう報知手段の具体例に相当する。
【0033】
前記した注意喚起情報の報知がなされると、故障診断の作業者は、給湯装置WHから高温出湯の可能性がある旨を的確に察知する。その結果、作業者が高温出湯された湯水に触
れることや、高温の熱交換器HTに触れることを避けるように気を付けることが促され、作業者の安全性が高められる。
前記した注意喚起情報の報知は、バーナ1の駆動燃焼時にはなされず、バーナ1の駆動燃焼を終了した後になされるが、このような構成によれば、次のような利点も得られる。すなわち、たとえばバーナ1が駆動燃焼して適正な温度の出湯がなされているにも拘わらず、燃焼ガスによって缶体20が加熱され、その缶体温度が基準温度よりも高温となる場合があり得る。このような場合に、高温出湯の可能性がある旨の報知がなされたのでは、作業者には無用な混乱を生じさせてしまう。これに対し、本実施形態によれば、そのような不具合を適切に防止することが可能である。
【0034】
また、前記した注意喚起情報の報知が行なわれる場合には、内部入水流量Q0に対するバイパス流路42の流量Q2の割合が増加、好ましくは所定の最大割合まで増加するように、バイパス弁V1が特定状態に設定される。また、内部出湯路41からの出湯流量が減少、好ましくは所定の最大絞り量まで減少するように、出湯流量制御弁V2も特定状態に設定される(S6)。
このような設定がなされると、仮に、出湯動作が生じたとしても、バイパス流路42から内部出湯路41への非加熱の湯水の流入量が多くなるため、その出湯温度は低くなり、高温出湯が生じることは防止される。また、出湯口41aからの出湯流量が少なくされる。したがって、高温の湯水が給湯装置WHから多量に出湯することは解消され、作業者に安心感をもたらすことが可能である。
【0035】
さらに、前記した注意喚起情報の報知が行なわれた場合には、故障診断を進めることについての制限を受け、故障診断のいずれについてもそれ以上進めることができない全部制限状態に設定される(S7)。このような設定がなされると、作業者は故障診断を中断し、缶体温度が基準温度未満に低下するまで待機せざるを得ないこととなる。したがって、作業者が高温の熱交換器HTに触れる機会を少なくし、作業者を保護することができる。
【0036】
その後、缶体温度が基準温度未満に低下したときには、前記した注意喚起情報の報知が停止される(S8:YES,S9)。具体的には、パソコン8の表示部80における注意喚起情報の画面表示が停止される。また、これに伴い、バイパス弁V1および出湯流量制御弁V2が元の通常状態に復帰する制御が実行されるとともに、故障診断の動作制限が解除される(S10,S11)。このようなことにより、給湯装置WHは、缶体温度が基準温度以上に上昇していない元の通常状態に復帰することとなり、以降は、それまで制限を受けていた残りの故障診断を適切に進めていき、全部の故障診断を適切に終了することが可能である(S12:YES)。
【0037】
本実施形態の給湯システムSYにおいては、前記した
図2に示す前記動作手順の制御に代えて、
図3に示す動作手順の制御を実行可能な構成とすることも可能である。
なお、
図3においては、
図2に示したステップと同一のものについては、同一の符号を付しており、その重複説明は省略する。
【0038】
図3に示す動作手順の制御については、
図2とは異なり、ステップS7’において、故障診断のうち、出湯を伴う一部の故障診断が制限を受けるように構成されている。このような構成によれば、
図2に示した場合と同様に、高温出湯は適切に防止される。ただし、そのように一部の故障診断が制限されるに過ぎない場合には、それ以外の他の故障診断を進めていくことにより、缶体温度が基準温度未満に低下する前に全部の故障診断の終了に到る場合があり得る(S7’,S8:NO,S13:YES)。このような場合、全部の故障診断が終了した後であっても、注意喚起情報の報知がその後に所定時間継続して実行されるように構成されている(S14)。具体的には、パソコン8の表示部80における注意喚起情報の画面表示は、全部の故障診断が終了した後に所定時間継続した後に終了す
る。また、好ましくは、スピーカSPからアラーム音の一時的な出力が再度実行される。このように、給湯装置WHの故障診断が終了した後においても、注意喚起情報を報知させれば、故障診断後においても高温出湯に作業者は注意を払うこととなり、安全性が高められる。
【0039】
フローチャートを用いた図示説明は、省略するが、本実施形態の給湯システムSYにおいては、上述した内容とは異なり、給湯装置WHの故障診断中において、缶体温度が基準温度以上にあるときには、故障診断を終了することが不可とされた構成とすることも可能である。
このような構成によれば、缶体温度が基準温度以上の高温であるにも拘わらず、この状態を放置したまま故障診断が終了されることはなくなる。その結果、故障診断を終えた直後に、作業者あるいは給湯装置WHのユーザなどが給湯装置WHを運転させた際に、高温出湯が生じる虞をなくすことが可能である。
【0040】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る給湯システムの各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0041】
上述の実施形態においては、高温出湯の可能性を判断するための温度(温度センサによる検出温度)として、缶体温度が採用されているが、本発明はこれに限定されない。伝熱管内の湯水温度またはこれに対応する温度であればよく、缶体温度以外の温度を採用することが可能である。
本発明における基準温度は、一定でなくてもよく、たとえば外気温や入水温度などに対応し、制御部の制御により変化させるようにしてもよい。また、高温出湯になる可能性が発生したか否かを判断するための基準温度(第1の基準温度)と、高温出湯の可能性が発生した後において、そのような可能性が未だにあるか否かを判断するための基準温度(第2の基準温度)とを相違させてもよい。たとえば、熱交換器の缶体は、温度上昇を一旦生じた後には、伝熱管よりも外気の影響などを受けて温度低下を生じ易い。このため、缶体温度が所定温度まで低下したとしても、伝熱管内の湯水温度は前記所定温度よりも高温にあり、缶体に遅れて温度低下を生じる場合がある。このようなことを考慮し、基準温度として、高温出湯の可能性が発生した場合と、可能性がなくなった場合とをそれぞれ判断するための基準温度の具体的な値を相違させ、基準温度に幅をもたせてもよい。
【0042】
上述の実施形態では、高温出湯の可能性がある場合に、バイパス弁V1が出湯温度を低下させ、かつ出湯流量制御弁V2が出湯流量を減少させるように制御されたが、これら2つの弁V1,V2のうち、少なくとも一方のみが制御されるように構成されていてもよい。また、本発明でいう第1の弁および第2の弁は、バイパス弁V1および出湯流量制御弁V2に限定されない。たとえば、第1の弁としては、内部入水路40とバイパス流路42との交差部分に設けられた三方流量制御弁とすることもできる。
【0043】
本発明でいう加熱用気体は、燃焼ガスに限らず、たとえばコージェネレーションシステムなどから排出される高温の排ガスとすることも可能である。したがって、加熱用気体供給手段も、バーナに限らない。
熱交換器は、加熱用気体が供給される缶体内に伝熱管が配された構成であるが、缶体や伝熱管の具体的な構成も限定されない。
【0044】
本発明における故障診断装置は、上述したように、故障診断中継ユニットとパソコンとを組み合わせた構成に限らない。たとえば、パソコンに代えて、タブレットやスマートホンなどの他のデータ処理装置を用いてもよいことは勿論のこと、全体が1つの装置として纏められた専用装置として構成することも可能である。また、給湯装置内に故障診断装置が組み込まれた構成とすることも可能である。
報知手段としては、画像表示可能な表示部などに代えて、または加えて、種々の報知手段を用いることが可能である。
本発明の「給湯装置から高温出湯の可能性がある旨の注意喚起情報」の具体的な表現態様も限定されない。
【符号の説明】
【0045】
A 故障診断装置
HT 熱交換器
WH 給湯装置
SP スピーカ(報知手段)
SY 給湯システム
Sa 温度センサ
V1 バイパス弁(第1の弁)
V2 出湯流量制御弁(第2の弁)
1 バーナ(加熱用気体供給手段)
20 缶体(熱交換器の)
21 伝熱管(熱交換器の)
7 故障診断中継ユニット(故障診断装置)
8 パソコン(故障診断装置)
80 表示部(報知手段)