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  • 特開-感染性疾患の診断および処置 図1
  • 特開-感染性疾患の診断および処置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019730
(43)【公開日】2024-02-09
(54)【発明の名称】感染性疾患の診断および処置
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20240202BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240202BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALN20240202BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALN20240202BHJP
   C12Q 1/689 20180101ALN20240202BHJP
【FI】
C12Q1/68
C12N15/09 Z
C12Q1/04
C12Q1/6844 Z
C12Q1/689 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024000152
(22)【出願日】2024-01-04
(62)【分割の表示】P 2017565195の分割
【原出願日】2016-06-17
(31)【優先権主張番号】1510876.4
(32)【優先日】2015-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1609529.1
(32)【優先日】2016-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】508159514
【氏名又は名称】ケンブリッジ エンタープライズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ヘレン リー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル パウエル
(57)【要約】
【課題】感染性疾患の診断および処置の提供。
【解決手段】微生物により引き起こされる感染性疾患を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、抗微生物剤に対して感受性である微生物の株に感染しているのかどうかを決定するための方法であって、抗微生物剤に対して耐性である微生物の異なる株が存在する方法について記載される。方法は、対象に感染する微生物の株の核酸が、保存的ヌクレオチド位置において、野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップを含み、その位置における突然変異が、耐性である異なる株の核酸内で、抗微生物剤に対する耐性と関連する。方法は特に、淋病を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、抗微生物剤に対して感受性であるNeisseria gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定するのに適用可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染性疾患、例えば、淋病(Gonorrhoea)などの性感染疾患を診断および処置するための方法、ならびにこのような方法における使用のためのキットに関する。本発明はまた、感染性疾患を引き起こす微生物の、抗微生物剤に対する耐性の蔓延を低減するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
Neisseria gonorrhoeaeは、グラム陰性菌であり、公衆衛生上の懸念の重大な対象である性感染症の淋病の病原作用物質である。Gonorrhoeaへの感染は、増大しつつある。世界保健機構(WHO)は、世界中の成人の間で、年間1億600万例の淋病の新たな症例が見られ、2005年における感染率で、21%の増大であると推定している。淋病感染は、女性では無症状性であることが多い(症例のうちの≧50%)。これは重大な問題であり、なぜならば、未診断の感染症は子宮内膜炎および骨盤内炎症性疾患をもたらす可能性があり、結果として、不妊症または子宮外妊娠による死亡をもたらしうるからである。男性における感染は一般に、精巣上体炎、陰茎の分泌物、腫脹、および疼痛を含む症候を伴う症状性(症例のうちの≧90%において)である。特に、男性との性交渉を行う男性において、性器外感染が一般的であるが、性交渉歴に応じて、異性愛者においても見出されうる。性器外感染は、高頻度で無症状性であるが、性交渉の相手の間の淋病感染の伝播に著明に寄与する。
【0003】
淋病への感染の診断は、合併症を軽減し、一層の伝播を低減するのに極めて重要である。しかし、集中化したクラミジア感染症(Chlamydia)/淋病診断の結果として、現行の
臨床経路に内在する遅延は、著明な数の症状性患者が、陽性診断の非存在下で、患者の性交渉歴および症候に従い、経験的に処置されていることを意味する。淋病感染が、他の多数の性感染症と症候を共有することを踏まえると、症状性患者は、感染の病因についての知見を伴わずに、複数の抗生剤のカクテルで処置されるので、過剰処置が重大な問題である。このような無差別的な抗生剤の使用は、Gonorrhoeaにおける抗微生物剤耐性の発生に対する著明な寄与因子となっており、そのスーパー耐性菌状態への進化をもたらしている。
【0004】
多年にわたり、広範にわたる抗生剤が、淋病感染の処置に使用されている。しかし、N.gonorrhoeaeは、抗微生物剤の選択圧の非存在下でであってもなお、抗微生物剤耐性機構をたやすく発生させやすいことが実証されている。エリスロマイシンの化学的誘導体であるアジスロマイシンは、1980年代初頭以来、淋病の処置に使用されていた(エリスロマイシンは、処置に十分に効果的ではなかった)。しかし、その実施後、アジスロマイシンに対する耐性が急速に発生し、抗生剤の単剤療法では、もはや使用されていない。シプロフロキサシンは、1980年代半ばから、淋病感染を処置するのに広く使用された。当初は、低用量が使用されたが、1990年までに感受性の低減が観察された。最小推奨用量が増大した。しかし、耐性が発生し、2000年代半ばまでに、シプロフロキサシンが処置選択肢として放棄される程度にまで、急速に拡散した。セフィキシムおよびセフトリアキソンという、2つの広域スペクトルセファロスポリン(ESC)が、淋病感染を処置するために広く使用されている。セフィキシムは、>95%の治癒率についての基準を満たしたので、世界保健機構(WHO)により、第1選択治療に推奨された、唯一の経口ESCであった。しかし、セフィキシムに対する感受性の低減が、2000年代末に最初に観察されて以来、推奨処置は、セフトリアキソンおよびアジスロマイシンによる二重療法へと切り換えられた。
【0005】
多剤耐性Gonorrhoeaへの不安は、感染を処置するための、広範にわたる抗生剤の自由適用により増幅されている。処置のための新たな抗生剤の導入の後に、N.gonorrhoeaeによる薬物耐性の発生が急速に続いている。世界中で蔓延するGonorrhoea型の大部分は、超多剤耐性(XDR)株(少なくとも2つの一般に使用される抗微生物剤に対して耐性である株)への発生まで、今や少数の耐性マーカーを隔てるに過ぎない。実際、それぞれ、H041株およびF89株という、2つのXDR株が、近年、日本および欧州で同定されている。いずれの株も、淋病の処置のために、単剤療法で使用されうる、最後の完全に効果的な抗微生物剤である、広域スペクトルセファロスポリン(ESC)のセフトリアキソンに対して耐性である。
【0006】
一般に、特定の抗生剤の広範な使用は、選択圧を介して、耐性を推進することにより、時間経過と共に、それらの有効性を減殺する。逆に、抗生剤の使用の減少は、時間経過と共に、特定の薬物に対する耐性の蔓延を低減しうるであろう。したがって、処置を、N.gonorrhoeaeが感受性である、最も狭い範囲の抗生剤へと限定することにより、多剤耐性Gonorrhoeaの発生を緩徐化することが可能である。これは、抗微生物剤のスチュワードシップとしてとして公知である。
【0007】
抗生剤使用の低減を容易とするため、Gonorrhoeaへの感染を、迅速に診断することが可能であれば、これは、症状性患者における症候群管理の結果としての過剰処置を低減するので、有益であろう。Gonorrhoea陽性である患者にとって、抗生剤処置に対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのか、耐性株に感染しているのかを知ることは、著明に有益であろう。これは、感染を効果的に処置し、これにより、淋病の処置に現在利用可能な薬物の有用性を拡大するのに、可能な最も狭い範囲の抗生剤の処方を誘導するであろう。
【0008】
今日では、核酸増幅検査が、淋病感染の診断のための「ゴールドスタンダード」であるので、多くの臨床検査室は、もはや、Gonorrhoeaの培養技法により抗生剤感受性を決定するのに適する試料は受領しない。代わりに、培養物/寒天希釈液により完全耐性プロファイルが確立される、「前哨」地点における集団についてのランダムサンプリングによる、抗微生物剤耐性株の監視が企図されている。この情報は、処置ガイドラインを改変するのに使用されるが、全集団を代表しうるわけではない。診療所に来院したときに、各患者について分子検査を実施しうるなら、症例ごとのベースで、効果的処置を投与し、抗微生物剤に対するスチュワードシップおよび処置の転帰を改善しうるであろう。
【0009】
現在のところ、非培養検体に由来する抗生剤感受性検査を可能とする、信頼できる技術は存在しない。抗微生物剤耐性の決定因子について、文献では、多数の診断アッセイについて記載されている(ペニシリン、テトラサイクリン、マクロリド、フルオロキノロン、および広域スペクトルセファロスポリンについて)が、それらの感度/特異度は、最適未満であることが多い。また、抗生剤耐性の一因となる、多くの異なる突然変異も存在するので、どの耐性株が存在するのかを決定するのに、各異なる突然変異について調べることは、実践的ではない。Gonorrhoeaの抗生剤耐性/感受性パターンを確立するための、市販の診断用プラットフォームは現在のところ存在しない。
【0010】
したがって、淋病を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、抗生剤による処置に対して感受性または耐性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを迅速に決定するのに使用しうる検査が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人は、対象に感染する株の識別を決定するのに、標準的な培養技法による感受性検査を実行したり、複数の異なる核酸検査を実行したりするのではなく、感染する株の核酸が、野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することだけが必要であることを察知している。特に、感染する株の核酸が、それに関する突然変異が、抗微生物剤に対する耐性と関連することが公知である核酸の領域内に、野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかは、簡単に決定することができる。対象が、野生型ヌクレオチド配列を含む株に感染している場合、対象に、抗微生物剤を、単剤療法として投与することができる。対象が、野生型配列を含まない株に感染している場合、対象に、異なる抗微生物剤または抗微生物剤の組合せを投与することができる。
【0012】
このような方法の使用は、抗微生物剤を、抗微生物剤により効果的に処置される可能性が高い対象だけに投与し、耐性株に感染した対象には投与しないため、抗微生物剤耐性の発生および/または拡散を制限するであろう。
【0013】
本出願人は、そのN.gonorrhoeaeの耐性株が発生している、各異なる抗生剤について、この抗生剤に対して耐性である、大半の株またはほぼ全ての株では、ヌクレオチド配列内の一部の位置が突然変異することを認識している。本出願人は、これらの保存的ヌクレオチド位置のうちの1または複数が、野生型ヌクレオチド配列を含有するのかどうかを評価することにより、特定の株が、抗生剤に対して感受性であるのかどうかをたやすく決定しうることを察知している。これは、Gonorrhoeaの培養技法を実施する必要を伴わずに、核酸検査により行うことができる。
【0014】
本出願人はまた、このような方法が、抗微生物剤に対して感受性である微生物の株と、抗微生物剤に対して耐性である微生物の異なる株とが存在する微生物により引き起こされる、他の感染性疾患に適用可能であることも認識している。
【0015】
本発明に従い、微生物により引き起こされる感染性疾患を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、抗微生物剤に対して感受性である微生物の株に感染しているのかどうかを決定する方法であって、抗微生物剤に対して耐性である微生物の1または複数の異なる株が存在し、対象に感染する微生物の株の核酸が、野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップを含む方法が提供される。
【0016】
特に、本発明の方法は、対象に感染する微生物の株の核酸が、それに関する突然変異が、抗微生物剤に対する耐性と関連することが公知である核酸の領域内に、野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップを含みうる。
【0017】
領域は、感染する株の任意の長さの核酸領域、例えば、遺伝子の場合もあり、遺伝子の部分、例えば、遺伝子のエクソンもしくはイントロンの場合もあり、複数の連続的ヌクレオチドの場合もあり、抗微生物剤に対する耐性と関連する一塩基多型(SNP)など、単一のヌクレオチドの場合もある。
【0018】
特に、本発明の方法は、対象に感染する微生物の株の核酸が、保存的ヌクレオチド位置において、野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップを含んでもよく、その位置における突然変異は、異なる耐性株の核酸内で、抗微生物剤に対する耐性と関連する。
本発明の実施形態の例として、以下の項目が挙げられる。
(項目1)
微生物により引き起こされる感染性疾患を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、抗微生物剤に対して感受性である前記微生物の株に感染しているのかどうかを決定するための方法であって、前記抗微生物剤に対して耐性である前記微生物の異なる株が存在し、前記方法は、前記対象に感染する前記微生物の前記株の核酸が、保存的ヌクレオチド位置において、野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップを含み、保存的ヌクレオチド位置における突然変異が、耐性である前記異なる株の核酸内で、前記抗微生物剤に対する耐性と関連する、方法。
(項目2)
前記対象に感染する前記株の核酸が、第1の保存的ヌクレオチド位置および異なる第2の保存的ヌクレオチド位置において、野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定し、この場合、前記第1の保存的ヌクレオチド位置が、前記抗微生物剤に対して耐性である前記微生物の株の第1のサブセット内で突然変異しており、前記第2の保存的ヌクレオチド位置が、前記抗微生物剤に対して耐性である前記微生物の株の第2のサブセット内で突然変異している、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記抗微生物剤が、第1の抗微生物剤であり、前記方法が、前記対象が、第2の抗微生物剤に対して感受性である前記微生物の株に感染しているのかどうかを決定するステップをさらに含み、前記第2の抗微生物剤に対して耐性である前記微生物の異なる株が存在し、前記対象に感染する前記微生物の前記株の核酸が、保存的ヌクレオチド位置において、野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップを含み、保存的ヌクレオチド位置における突然変異が、耐性の前記異なる株の核酸内で、前記第2の抗微生物剤に対する耐性と関連する、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記対象が、前記第1の抗微生物剤に対して耐性である前記微生物の株に感染していることが決定される場合に、前記対象が、前記第2の抗微生物剤に対して感受性である前記微生物の株に感染しているのかどうかを決定する、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記野生型ヌクレオチド配列について特異的に検出することにより、前記対象に感染する前記微生物の前記株が、前記野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記対象から得られた、前記対象に感染する前記株の核酸の増幅を含む方法を使用して、前記野生型ヌクレオチド配列について特異的に検出するステップを含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
ディップスティックを使用して、前記核酸の増幅から生じる産物について検出するステップをさらに含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
厳密な条件下で、前記野生型ヌクレオチド配列と同じ配列であるかまたはこれと相補的な配列を含む核酸とハイブリダイズするが、厳密な条件下で、前記抗微生物剤に対する耐性と関連する前記保存的ヌクレオチド位置において突然変異を含むヌクレオチド配列と同じ配列であるかまたはこれと相補的な配列を含む核酸とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチドを使用して、前記野生型ヌクレオチド配列について特異的に検出するステップを含む、項目5から7のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記感染性疾患が、性感染疾患である、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記感染性疾患が、淋病である、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
淋病を患う対象が、Neisseria gonorrhoeaeの抗生剤感受性株に感染しているのかどうかを決定するためのものであり、Neisseria gonorrhoeaeの前記株が、penAモザイク遺伝子、gyrA遺伝子、または23SリボソームRNAの保存的ヌクレオチド位置において、野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップを含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記対象が、Neisseria gonorrhoeaeのセファロスポリン感受性株に感染しているのかどうかを決定するためのものであり、Neisseria gonorrhoeaeの前記株が、penAモザイク遺伝子のF504位および/またはA510位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定する、項目11に記載の方法。
(項目13)
Neisseria gonorrhoeaeの前記株が、penAモザイク遺伝子のA501位および/またはA516位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップをさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
淋病を患う対象が、Neisseria gonorrhoeaeのセファロスポリン感受性株に感染しているのかどうかを決定するためのものであり、Neisseria gonorrhoeaeの前記株が、penA非モザイク遺伝子の保存的位置、好ましくは、penA非モザイク遺伝子のA501位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップを含む、項目10に記載の方法。
(項目15)
前記対象が、Neisseria gonorrhoeaeのシプロフロキサシン感受性株に感染しているのかどうかを決定するためのものであり、Neisseria gonorrhoeaeの前記株が、gyrA遺伝子のS91位および/またはD95位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定する、項目11から14のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記対象が、Neisseria gonorrhoeaeのアジスロマイシン感受性株に感染しているのかどうかを決定するためのものであり、Neisseria gonorrhoeaeの前記株が、23SリボソームRNAのC2611位および/またはA2059位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定し、任意選択で、Neisseria gonorrhoeaeの前記株が、23SリボソームRNAのC2611位および/またはA2059位をコードする突然変異体ヌクレオチド配列を含まないのかどうかを決定する、項目11から15のいずれかに記載の方法。
(項目17)
N.gonorrhoeaeの前記株が、野生型のmtrRプロモーター配列および/またはmtrR遺伝子のG45位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップをさらに含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
i)項目11から17のいずれかに記載の方法を使用して、前記対象が、セファロスポリン、シプロフロキサシン、およびアジスロマイシンから選択される第1の抗微生物剤に対して感受性であるNeisseria gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定するステップと;前記対象が、前記第1の抗微生物剤に対して耐性であるNeisseria gonorrhoeaeの株に感染していることが決定される場合、
ii)項目11から17のいずれかに記載の方法を使用して、前記対象が、セファロスポリン(Cephalopsorin)、シプロフロキサシン、およびアジスロマイシンから選択さ
れる異なる第2の抗微生物剤に対して感受性であるNeisseria gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定するステップと;前記対象が、前記第2の抗微生物剤に対して耐性であるNeisseria gonorrhoeaeの株に感染していることが決定される場合、
iii)項目11から17のいずれかに記載の方法を使用して、前記対象が、セファロスポリン、シプロフロキサシン、およびアジスロマイシンから選択される異なる第3の抗微生物剤に対して感受性であるNeisseria gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定するステップと
を含む、項目11に記載の方法。
(項目19)
微生物により引き起こされる感染性疾患を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象を処置するかまたはこの処置を処方する方法であって、
項目1から8のいずれかに記載の方法を使用して、抗微生物剤に対して感受性である前記微生物の株に感染しているのかどうかを決定するステップであり、前記抗微生物剤に対して耐性である前記微生物の異なる株が存在する、ステップと;
前記対象が、前記抗微生物剤に対して感受性である前記微生物の株に感染していることが決定される場合に、前記対象へ、有効量の前記抗微生物剤を単剤療法として投与するかまたは投与するために処方するステップと
を含む方法。
(項目20)
項目1から8のいずれかに記載の方法を使用して、前記対象が、第1の抗微生物剤に対して感受性である前記微生物の株に感染しているのかどうかを決定するステップであり、前記第1の抗微生物剤に対して耐性である前記微生物の異なる株が存在する、ステップと;
前記対象が、前記第1の抗微生物剤に対して感受性である前記微生物の株に感染していることが決定される場合に、前記対象へ、有効量の前記第1の抗微生物剤を単剤療法として投与するかまたは投与するために処方するステップと
を含むか;あるいは
項目1から8のいずれかに記載の方法を使用して、前記対象が、前記第1の抗微生物剤に対して耐性である前記微生物の株に感染していることが決定される場合、前記対象が、異なる第2の抗微生物剤に対して感受性である前記微生物の株に感染しているのかどうかを決定するステップであり、前記第2の抗微生物剤に対して耐性である前記微生物の異なる株が存在する、ステップと;
前記対象が、前記第2の抗微生物剤に対して感受性である前記微生物の株に感染していることが決定される場合に、前記対象へ、有効量の前記第2の抗微生物剤を単剤療法として投与するかもしくは投与するために処方するか;または
前記対象が、前記第2の抗微生物剤に対して耐性である前記微生物の株に感染していることが決定される場合に、前記対象へ、有効量の前記第1の抗微生物剤および前記第2の抗微生物剤を、組合せ療法として投与するかもしくは投与するために処方するステップとを含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記感染性疾患が、淋病であり、前記方法が、
Neisseria gonorrhoeaeの前記株が、penAモザイク遺伝子、gyrA遺伝子、または23SリボソームRNAをコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することにより、前記対象が、N.gonorrhoeaeの抗生剤感受性株に感染しているのかどうかを決定するステップと;
N.gonorrhoeaeの前記株が、penAモザイク遺伝子をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むことが決定される場合に、セファロスポリンを、前記対象へ、単剤療法として投与するかもしくは投与するために処方するか;
N.gonorrhoeaeの前記株が、gyrA遺伝子をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むことが決定される場合に、シプロフロキサシンを、前記対象へ、単剤療法として投与するかもしくは投与するために処方するか;または
N.gonorrhoeaeの前記株が、23SリボソームRNAの野生型ヌクレオチド配列を含むことが決定される場合に、アジスロマイシンを、前記対象へ、単剤療法として投与するかもしくは投与するために処方するステップと
を含む、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記感染性疾患が、淋病であり、前記方法が、
Neisseria gonorrhoeaeの前記株が、penAモザイク遺伝子、penA非モザイク遺伝子、gyrA遺伝子、または23SリボソームRNA、ならびに、任意選択で、mtrR遺伝子および/またはmtrRプロモーターをコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することにより、前記対象が、N.gonorrhoeaeの抗生剤感受性株に感染しているのかどうかを決定するステップと;
N.gonorrhoeaeの前記株が、penAモザイク遺伝子またはpenA非モザイク遺伝子をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むことが決定される場合に、セファロスポリンを、前記対象へ、単剤療法として投与するかもしくは投与するために処方するか;
N.gonorrhoeaeの前記株が、gyrA遺伝子をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むことが決定される場合に、シプロフロキサシンを、前記対象へ、単剤療法として投与するかもしくは投与するために処方するか;または
N.gonorrhoeaeの前記株が、23SリボソームRNA、ならびに、任意選択で、mtrR遺伝子および/もしくはmtrRプロモーターの野生型ヌクレオチド配列を含むことが決定される場合に、アジスロマイシンを、前記対象へ、単剤療法として投与するかもしくは投与するために処方するステップと
を含む、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記感染性疾患が、淋病であり、前記第1の抗微生物剤および前記第2の抗微生物剤が各々、セファロスポリン、シプロフロキサシン、およびアジスロマイシンから選択され、N.gonorrhoeaeの前記株が、penAモザイク遺伝子をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することにより、前記対象が、セファロスポリン感受性株に感染しているのかどうかを決定し、N.gonorrhoeaeの前記株が、gyrA遺伝子をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することにより、前記対象が、シプロフロキサシン耐性株に感染しているのかどうかを決定し、N.gonorrhoeaeの前記株が、23SリボソームRNAの野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することにより、前記対象が、アジスロマイシン耐性株に感染しているのかどうかを決定する、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記感染性疾患が、淋病であり、前記第1の抗微生物剤および前記第2の抗微生物剤が各々、セファロスポリン、シプロフロキサシン、およびアジスロマイシンから選択され、N.gonorrhoeaeの前記株が、penAモザイク遺伝子またはpenA非モザイク遺伝子をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することにより、前記対象が、セファロスポリン感受性株に感染しているのかどうかを決定し、N.gonorrhoeaeの前記株が、gyrA遺伝子をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することにより、前記対象が、シプロフロキサシン耐性株に感染しているのかどうかを決定し、N.gonorrhoeaeの前記株が、23SリボソームRNAの野生型ヌクレオチド配列、ならびに、任意選択で、mtrR遺伝子および/またはmtrRプロモーターを含むのかどうかを決定することにより、前記対象が、アジスロマイシン耐性株に感染しているのかどうかを決定する、項目20に記載の方法。
(項目25)
Neisseria gonorrhoeaeの前記株が、penAモザイク遺伝子のF504位および/またはA510位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することにより、前記対象が、Neisseria gonorrhoeaeのセファロスポリン感受性株に感染しているのかどうかを決定するステップと;N.gonorrhoeaeの前記株が、penAモザイク遺伝子のF504位および/またはA510位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むことが決定される場合に、有効量のセファロスポリンを、前記対象へ、単剤療法として投与するかまたは投与するために処方するステップとを含む、項目21から24のいずれかに記載の方法。
(項目26)
Neisseria gonorrhoeaeの前記株が、penAモザイク遺伝子のA501位および/またはA516位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップと;N.gonorrhoeaeの前記株が、penAモザイク遺伝子のF504位および/またはA510位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むことが決定される場合に、有効量のセファロスポリンを、前記対象へ、単剤療法として投与するかまたは投与するために処方するステップとをさらに含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
Neisseria gonorrhoeaeの前記株が、penA非モザイク遺伝子のA501位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することにより、前記対象が、Neisseria gonorrhoeaeのセファロスポリン感受性株に感染しているのかどうかを決定するステップと;N.gonorrhoeaeの前記株が、penA非モザイク遺伝子のA501位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むことが決定される場合に、有効量のセファロスポリンを、前記対象へ、単剤療法として投与するかまたは投与するために処方するステップとを含む、項目22または24に記載の方法。
(項目28)
Neisseria gonorrhoeaeの前記株が、gyrA遺伝子のS91位および/またはD95位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することにより、前記対象が、Neisseria gonorrhoeaeのシプロフロキサシン感受性株に感染しているのかどうかを決定するステップと;N.gonorrhoeaeの前記株が、gyrA遺伝子のS91位および/またはD95位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むことが決定される場合に、有効量のシプロフロキサシンを、前記対象へ、単剤療法として投与するかまたは投与するために処方するステップとを含む、項目21から27のいずれかに記載の方法。
(項目29)
Neisseria gonorrhoeaeの前記株が、23SリボソームRNAのC2611位および/またはA2059位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することにより、前記対象が、Neisseria gonorrhoeaeのアジスロマイシン感受性株に感染しているのかどうかを決定するステップと;N.gonorrhoeaeの前記株が、23SリボソームRNAの野生型ヌクレオチド配列を含むことが決定される場合に、有効量のアジスロマイシンを、単剤療法として投与するかまたは投与するために処方するステップとを含む、項目21から28のいずれかに記載の方法。
(項目30)
Neisseria gonorrhoeaeの前記株が、23SリボソームRNAのC2611位および/またはA2059位をコードする突然変異体ヌクレオチド配列を含まないのかどうかを決定するステップと;N.gonorrhoeaeの前記株が、23SリボソームRNAの野生型ヌクレオチド配列を含み、23SリボソームRNAの突然変異体ヌクレオチド配列を含まないことが決定される場合に、有効量のアジスロマイシンを、単剤療法として投与するかまたは投与するために処方するステップとをさらに含む、項目29に記載の方法。
(項目31)
N.gonorrhoeaeの前記株が、野生型のmtrRプロモーター配列および/またはmtrR遺伝子のG45位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップと;N.gonorrhoeaeの前記株が、23SリボソームRNAの野生型ヌクレオチド配列を含み、任意選択で、23SリボソームRNAの突然変異体ヌクレオチド配列を含まず、N.gonorrhoeaeの前記株が、野生型のmtrRプロモーター配列および/またはmtrR遺伝子のG45位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むことが決定される場合に、有効量のアジスロマイシンを、単剤療法として投与するかまたは投与するために処方するステップとをさらに含む、項目29または30に記載の方法。
(項目32)
淋病を患う対象が、Neisseria gonorrhoeaeの抗生剤感受性株に感染しているのかどうかを決定するためのキットであって、
i)厳密な条件下で、penAモザイク遺伝子の野生型ヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり、penAモザイク遺伝子のF504位および/もしくはA510位をコードする野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかもしくはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含み、厳密な条件下で、penAモザイク遺伝子のF504位および/もしくはA510位における突然変異をコードするN.gonorrhoeaeの耐性株のヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチド;ならびに/または
ii)厳密な条件下で、penAモザイク遺伝子の野生型ヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり、penAモザイク遺伝子のA501位および/もしくはA516位をコードする野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかもしくはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含み、厳密な条件下で、penAモザイク遺伝子のA501位および/もしくはA516位における突然変異をコードするN.gonorrhoeaeの耐性株のヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチド;ならびに/または
iii)厳密な条件下で、gyrA遺伝子の野生型ヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり、gyrA遺伝子のS91位および/もしくはD95位をコードする野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかもしくはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含み、厳密な条件下で、gyrA遺伝子のS91位および/もしくはD95位における突然変異をコードするN.gonorrhoeaeの耐性株のヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチド;ならびに/または
iv)厳密な条件下で、23SリボソームRNAの野生型ヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり、23SリボソームRNAのC2611位および/もしくはA2059位をコードする野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかもしくはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含み、厳密な条件下で、23SリボソームRNAのC2611位および/もしくはA2059位における突然変異をコードするN.gonorrhoeaeの耐性株のヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチド
を含むキット。
(項目33)
(i)および/もしくは(ii)および/もしくは(iii)および/もしくは(iv)の前記オリゴヌクレオチド、ならびに/または
v)厳密な条件下で、penA非モザイク遺伝子の野生型ヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり、penA非モザイク遺伝子のA501位をコードする野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかもしくはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含み、厳密な条件下で、penA非モザイク遺伝子のA501位における突然変異をコードするN.gonorrhoeaeの耐性株のヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチドを含む、項目32に記載のキット。
(項目34)
(iv)の前記オリゴヌクレオチドを含み、
vi)厳密な条件下で、mtrRプロモーターの-10~-35位における野生型ヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり、mtrRプロモーターの-10~-35における野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかもしくはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含み、厳密な条件下で、mtrRプロモーターの-10~-35位における突然変異を含むN.gonorrhoeaeの耐性株のヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチド;および/または
vii)厳密な条件下で、mtrR遺伝子のG45位をコードする野生型ヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり、mtrR遺伝子のG45位をコードする野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかもしくはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含み、厳密な条件下で、mtrR遺伝子のG45位における突然変異をコードするN.gonorrhoeaeの耐性株のヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチド
をさらに含む、項目32または33に記載のキット。
(項目35)
前記オリゴヌクレオチドが、厳密な条件下で、
AAACCGGCACGGCGCGCAAGTTCGTCAACGGGCGT(配列番号1);
TATGCCGACAACAAACACGTCGCTACCTTTATCGG(配列番号2);
AAATACCACCCCCACGGCGATTCCGCAGTTTACGAC(配列番号3);
ACCATCGTCCGTATGGCGCAAAATTTCGCTATGCGT(配列番号4);
GAAGATGCAATCTACCCGCTGCTAGACGGAAAGACCCCGTGAACCTTTACTGTAGCTTTGC(配列番号5);または
CATTTAAAGTGGTACGTGAGCTGGGTTTAAAACGTCGTGAGACAGTTTGGTCCCTATCTGCAGTGGG(配列番号6)
のヌクレオチド配列と同じ配列であるかまたはこれと相補的な配列を含む核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドから選択される、項目32から34のいずれかに記載のキット。
(項目36)
厳密な条件下で、
AAACCGGCACGGCGCGCAAGTTCGTCAACGGGCGT(配列番号1);
TATGCCGACAACAAACACGTCGCTACCTTTATCGG(配列番号2);
AAATACCACCCCCACGGCGATTCCGCAGTTTACGAC(配列番号3);
ACCATCGTCCGTATGGCGCAAAATTTCGCTATGCGT(配列番号4);
GAAGATGCAATCTACCCGCTGCTAGACGGAAAGACCCCGTGAACCTTTACTGTAGCTTTGC(配列番号5);または
CATTTAAAGTGGTACGTGAGCTGGGTTTAAAACGTCGTGAGACAGTTTGGTCCCTATCTGCAGTGGG(配列番号6);または
AAACCGGCACGGCGCGCAAGTTCGTCAACGGGCGTTATGCCGACAACAAACACGTCGCTACCTTTATCGG(配列番号7);または
AAATACCACCCCCACGGCGATTCCGCAGTTTACGACACCATCGTCCGTATGGCGCAAAATTTCGCTATGCGT(配列番号8)
のヌクレオチド配列と同じ配列であるかまたはこれと相補的な配列を含む核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドから選択されるオリゴヌクレオチドを含む、項目32から34のいずれかに記載のキット。
(項目37)
厳密な条件下で、
GAAGATGCAATCTACCCGCTGCTAGACGGAAAGACCCCGTGAACCTTTACTGTAGCTTTGC(配列番号5);
CATTTAAAGTGGTACGTGAGCTGGGTTTAAAACGTCGTGAGACAGTTTGGTCCCTATCTGCAGTGGG(配列番号6);
AAACCGGCACGGCGCGCAAGTTCGTCAACGGGCGTTATGCCGACAACAAACACGTCGCTACCTTTATCGG(配列番号7);または
AAATACCACCCCCACGGCGATTCCGCAGTTTACGACACCATCGTCCGTATGGCGCAAAATTTCGCTATGCGT (配列番号8)のヌクレオチド配列と同じ配列であるかまたはこれと相補的な配列を含む核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドから選択されるオリゴヌクレオチドを含む、項目32から34のいずれかに記載のキット。
(項目38)
penAモザイク遺伝子のA501位および/もしくはA516位;gyrA遺伝子のS91位および/もしくはD95位;または23SリボソームRNAのC2611位および/もしくはA2059位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むNeisseria gonorrhoeae核酸を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含む、項目32から37のいずれかに記載のキット。
(項目39)
penAモザイク遺伝子のF504位および/もしくはA510位、ならびに、任意選択で、penAモザイク遺伝子のA501位および/もしくはA516位;gyrA遺伝子のS91位および/もしくはD95位;または23SリボソームRNAのC2611位および/もしくはA2059位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むNeisseria gonorrhoeae核酸を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含む、項目32から37のいずれかに記載のキット。
(項目40)
penAモザイク遺伝子のF504位および/またはA510位、ならびに、任意選択で、penAモザイク遺伝子のA501位および/またはA516位;penA非モザイク遺伝子のA501位;gyrA遺伝子のS91位および/またはD95位;23SリボソームRNAのC2611位および/またはA2059位、ならびに、任意選択で、mtrRプロモーターの-10~-35位および/またはmtrR遺伝子のG45位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むNeisseria gonorrhoeae核酸を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含む、項目32から38のいずれかに記載のキット。
【0019】
本発明の実施形態について、添付の図面を参照しながら、下記に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1Aは、100を超えるpenA配列のうちの、ヌクレオチド1590~1660の配列アライメントを示す図である。野生型と異なる残基を強調する。penA突然変異体内の保存的突然変異の箇所を示す。図1Bは、penA野生型配列を検出するためにターゲティングする領域の一次ヌクレオチド配列を示す図である。モザイクpenA対立遺伝子内で突然変異している残基を強調する。
【0021】
図2図2Aは、Gonorrhoeaのおよそ150のgyrA配列のうちの、ヌクレオチド210~340の配列アライメントを示す図である。野生型と異なる残基を強調する。gyrA突然変異体内の保存的突然変異の箇所を示す。図2Bは、gyrA野生型配列を検出するためにターゲティングする領域の一次ヌクレオチド配列を示す図である。シプロフロキサシン耐性gyrA突然変異体内で突然変異している残基を強調する。
【0022】
図3図3Aは、野生型についての、A2059G突然変異体との配列アライメントを示す図であり、突然変異を2列目に示す(この領域内の、他の全てのヌクレオチドは、野生型と突然変異体との間で同じである)。図3Bは、野生型についての、C2611T突然変異体との配列アライメントを示す図であり、突然変異を2、3、および4列目に示す。この領域内の、他の全てのヌクレオチドは、野生型と突然変異体との間で同じである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書では、「保存的ヌクレオチド位置」という用語は、耐性株について、この位置におけるヌクレオチド配列が、感受性株内の対応する位置におけるヌクレオチド配列と異なるので、このヌクレオチド位置における配列は、抗微生物剤に対する耐性と関連することを意味するのに使用される。場合によって、保存的ヌクレオチド位置は、一塩基多型(SNP)、例えば、保存的ヌクレオチド位置が見出されるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列の変化を結果としてもたらすSNP(非同義SNP)の場合もあり、コードされるアミノ酸配列の変化を結果としてもたらさないSNP(同義SNP)の場合もある。また、抗微生物剤に対する耐性と関連する、2カ所またはこれを超えて隣接する保存的ヌクレオチド位置が存在することも可能である。
【0024】
一部の実施形態では、保存的ヌクレオチド位置は、抗微生物剤に対して耐性である公知の微生物の株全てにおいて突然変異している可能性があり、抗微生物剤に対して感受性である公知の株全てにおいて突然変異していない可能性がある。抗微生物剤に対して耐性である公知の微生物の株全てが、保存的ヌクレオチド位置において突然変異している場合、この保存的ヌクレオチド位置における野生型配列の存在を決定するだけで、対象に感染する株が、抗微生物剤に対して感受性であることを決定することが可能となるであろう。
【0025】
しかし、一部の抗微生物剤については、この抗微生物剤に対して耐性である公知の微生物の株全てにおいて突然変異した保存的ヌクレオチド位置が存在しない場合もある。このような状況下では、感染する株が、この抗微生物剤に対して耐性であるのかどうかに関して、信頼できる決定を下しうるように、対象に感染する株の核酸が、異なる保存的ヌクレオチド位置の組合せであって、各公知の微生物の耐性株が、組合せの保存的ヌクレオチド位置のうちの一方または他方において、突然変異を含む組合せにおいて、野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することが必要でありうる。例えば、第1の保存的ヌクレオチド位置は、抗微生物剤に対して耐性である公知の微生物の株の第1のサブセット内で突然変異している可能性があり、第2の保存的ヌクレオチド位置は、抗微生物剤に対して耐性である公知の微生物の株の異なる第2のサブセット内で突然変異している可能性がある。抗微生物剤に対して耐性である公知の微生物の株全てが、第1のサブセットと第2のサブセットとの組合せに含まれている場合、対象が、抗微生物剤による処置に対して感受性である微生物の株に感染しているのかどうかを決定するには、対象に感染する株の核酸が、第1の保存的ヌクレオチド位置および第2の保存的ヌクレオチド位置において、野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することが要請されるであろう。
【0026】
代替的に、抗微生物剤に対して耐性である公知の微生物の株全てにおいて突然変異している保存的ヌクレオチド位置も存在せず、そのうちの少なくとも1つが、各公知の微生物の耐性株において突然変異している保存的ヌクレオチド位置の組合せも存在しない、例えば、公知の耐性株の大部分の各々だけにおいて(または少なくとも60%、70%、80%、もしくは90%において)突然変異している保存的ヌクレオチド位置の組合せも存在しない場合、感染する株の核酸が、この位置またはこの位置の組合せにおいて、野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することにより、対象に感染する株が、抗微生物剤に対して感受性である可能性が高いのかどうかを決定することもできる。
【0027】
抗微生物剤に対して感受性であることが公知の微生物の1または複数の株のヌクレオチド配列を、抗微生物剤に対して耐性であることが公知の微生物の1または複数の株のヌクレオチド配列とアライメントすることにより、ヌクレオチド位置が、保存的ヌクレオチド位置であるのかどうかを決定することができる。突然変異が耐性株には存在するが感受性株には存在しない任意のヌクレオチド位置は、耐性と関連する保存的ヌクレオチド位置であろう。同様の方法を使用して、より長いヌクレオチド配列の領域が、耐性と関連するのかどうかを決定することができる。
【0028】
当業者には、核酸配列アライメントプログラムが周知である。適切なプログラムの例は、BLAST、Clustal Omega、およびMultiple Sequence Comparison by Log-Expectation(MUSCLE)など、複数の配列アライメントプログラムを含む。
【0029】
株の増殖を阻害する抗微生物剤の最小濃度(最小阻害濃度(MIC))を決定するために、例えば寒天培養ディッシュ上で、株の培養物を抗微生物剤の異なる希釈液へと曝露することにより、微生物の株が、抗微生物剤に対して感受性であるのかどうかを決定することができる。当業者には、このような技法が周知である。抗微生物剤に対して感受性である微生物の株は、MICが耐性株より小さいであろう。
【0030】
微生物は、関与性の抗微生物剤について、感受性微生物、中程度に感受性の微生物、および耐性微生物へと類別することができる。感受性微生物を、非感受性微生物から区別する濃度を、S切断点と呼び、S≦Xmg/L(式中、Xは、MIC値である)と表し、耐性微生物を、非耐性微生物(例えば、感受性微生物または中程度に感受性の微生物)から区別する濃度を、R切断点と呼び、R>Ymg/L(式中、Yは、Xと同じであるかまたはこれを超えるMIC値でありうる)と表す。臨床切断点とは、処置が成功する可能性が高い株を、処置が失敗する可能性が高い株から区別するMICを指す。欧州では、European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing(EUCAST)が、European Medicines Agency(EMA)と共に、抗微生物剤についての臨床切断点を決定している(Kahlmeter、Upsala Journal of Medical Sciences、2014年、119巻:7
8~86頁)。これらは、公表されており、EUCASTのウェブサイト(www.eucast.org)上で利用可能である。米国では、切断点は、Clinical & Laboratory Standards Institute(CLSI)(www.clsi.org)により決定されている。
【0031】
「野生型ヌクレオチド配列」とは、抗微生物剤に対して感受性である微生物の1または複数の株には存在するが、抗微生物剤に対して耐性である1または複数の株には存在しない配列であって、野生型配列の突然変異が、抗微生物剤に対する耐性と関連する配列を意味することが察知される。
【0032】
抗微生物剤は、抗微生物剤に対して感受性である微生物の株の増殖または複製を防止または阻害し、対象において、株により引き起こされる感染性疾患を処置するために使用されうる、任意の抗微生物剤でありうる。例は、抗生剤、抗ウイルス剤、または抗真菌剤を含む。抗生剤は、例えば、静菌剤の場合もあり、殺菌剤の場合もある。
【0033】
1または複数の抗微生物剤に対して耐性である微生物の異なる株が存在することが公知の微生物により引き起こされる感染性疾患の例を、下記の表1に明示する。
【表1-1】
【表1-2】
【0034】
淋病を処置するために、過去または現在において推奨されている抗微生物剤に対する、Neisseria gonorrhoeaeにおける耐性の決定因子および機構については、UnemoおよびShafer、Clinical Microbiology Reviews、2014年、27巻(3号):587~613頁により、特に、この文献の表1において記載されている。抗微生物剤処置に対するNeisseria gonorrhoeaeの耐性と関連する公知の突然変異を、下記の表2にまとめる。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0035】
感染性疾患は、性感染疾患でありうる。特定の実施形態では、感染性疾患は、淋病である。このような実施形態では、抗微生物剤は、セファロスポリン、シプロフロキサシン、またはアジスロマイシンなど、抗生剤でありうる。セファロスポリンは、セフィキシムまたはセフトリアキソンなど、広域スペクトルセファロスポリン(ESC)でありうる。
【0036】
Neisseria gonorrhoeaeについてのEUCAST MIC切断点(2015年1月1日から有効)は、セフィキシム:S≦0.125mg/L;R>0.125mg/L;セフトリアキソン:S≦0.125mg/L;R>0.125mg/L;シプロフロキサシン:S≦0.03125mg/L;R>0.0625mg/L;アジスロマイシン:S≦0.25mg/L;R>0.5mg/L(www.eucast.org)である。
【0037】
感染性疾患が淋病である、他の実施形態では、抗微生物剤は、スルホンアミド、ペニシリン(例えば、ペニシリンGまたはアンピシリン)、テトラサイクリン(例えば、テトラサイクリンまたはドキシサイクリン)、スペクチノマイシン、キノロン(例えば、シプロフロキサシン(ciproflaxin)またはオフロキサシン)、マクロリド(例えば、エリスロ
マイシンまたはアジスロマイシン)、またはセファロスポリン(例えば、セフチブテン、セフポドキシム、セフィキシム、セフォタキシム、またはセフトリアキソン)でありうる。このような実施形態では、本発明の方法は、対象に感染するNeisseria gonorrhoeaeの株の核酸が、上記の表2で列挙した遺伝子のうちのいずれか、または上記の表2で列挙した遺伝子の領域もしくは保存的ヌクレオチド位置(特に、SNP)のうちのいずれかであって、それに関する突然変異が、抗微生物剤に対する耐性と関連することが公知である遺伝子または遺伝子の領域もしくは保存的ヌクレオチド位置において、野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップを含みうる。
【0038】
penA遺伝子(ペニシリン結合性タンパク質2;PBP2をコードする)内の複数の突然変異が、淋病におけるESC耐性に関与しており、これらのうちで著明な関与性を有するのは、penAモザイク対立遺伝子であると考えられている。モザイクpenAは、Neisseria gonorrhoeaeにより、遺伝子形質転換を介して獲得された可能性が高い、多数の異なるNeisseria属種に由来する複数の領域を含む。30を超えるモザイク対立遺伝子が、循環中に存在し、これらの各々は、突然変異の数および識別が、野生型のGonorrhoea配列と比べて変動している。しかし、ある特定の突然変異は、大部分のpenAモザイク対立遺伝子の間で保存的である。
【0039】
モザイクpenAが、セフィキシム耐性の発生における、唯一の著名な決定因子であると考えられる。しかし、耐性を決定的に付与する、単一のモザイク対立遺伝子は存在しない。しかし、本出願人は、野生型penA配列を伴う患者を同定することにより、セフィキシム処置に対して感受性である、全ての患者を同定することが可能であることを察知している。セフトリアキソン耐性の機構は、セフィキシムについての機構より著明に複雑である。30を超えるpenAモザイク対立遺伝子のうちのいずれか1つの存在は、耐性の発生における主要な因子であるが、耐性を確保するわけではない。むしろ、耐性は、penA遺伝子、mtrR遺伝子、およびporB遺伝子における、複雑な相乗作用突然変異に依存する。しかし、現在、高レベルのセフトリアキソン耐性を伴うと同定されている、全てのGonorrhoea株は、モザイクpenAを有する。どの対象が、野生型penAを含むN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかの決定は、セフトリアキソンによる処置に対して感受性である淋病感染を伴う対象の同定を可能とする。
【0040】
シプロフロキサシンなどのキノロンは、DNA代謝に要請される2つの酵素である、DNAギラーゼおよびトポイソメラーゼIVの活性を阻害することにより作用する。キノロンに対する耐性は、DNAギラーゼおよびトポイソメラーゼIV(それぞれ、gyrAおよびparC)をコードする遺伝子における、一塩基多型(SNP)の獲得を介して発生した。gyrA単独における特異的SNP(S91およびD95における)で、低~中レベルの耐性を誘発するのに十分である。高レベルの耐性は、gyrAおよびparCの両方における突然変異を要請する。どの対象が、野生型gyrAを含むN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかの決定は、シプロフロキサシンによる処置に対して感受性である淋病を伴う対象の同定を可能とする。これは、淋病を患う対象のうちの約50%を占める可能性が高く、ESCなどの薬物の使用を、処置選択肢として、可能な限り温存しながら、廉価な抗生剤の使用を可能とするであろう。
【0041】
アジスロマイシンは、50Sサブユニットの一部である、23SリボソームRNA(rRNA)に結合することから、細菌タンパク質合成の阻害をもたらすことにより作用する。アジスロマイシンに対する耐性は、23S rRNAのメチラーゼ修飾;細胞からの抗生剤の除去を増大させるように作用しうる、排出ポンプの過剰発現;または23S rRNAの特定のヌクレオチドの一塩基多型(SNP)により生じうる。アジスロマイシンは、Gonorrhoea陽性患者において高頻度で見出される、Chlamydia属感染に推奨される処置である。多くの先進国では、処置の成功を確保するのに、セフトリアキソンと共に、アジスロマイシンを投与する。対象が、アジスロマイシン感受性Gonorrhoeaに感染しているのかどうかについて知ることにより、それをこれらの患者のために、単剤療法として使用することを可能とし、これにより、ESCは、アジスロマイシンに対して耐性であるNeisseria gonorrhoeaeの株に感染している他の対象のための処置選択肢として温存される。23S rRNA配列内のSNPの結果として生じる耐性を検出することが可能なのは、核酸検査だけである。しかし、メチラーゼ修飾は、アジスロマイシン株では、極めてまれである。核酸検査はまた、排出ポンプの過剰発現の結果として生じる、アジスロマイシンに対する耐性を検出するのにも使用することができる。
【0042】
本発明に従い、淋病を患う対象が、Neisseria gonorrhoeaeの抗生剤感受性株に感染しているのかどうかを決定する方法であって、Neisseria gonorrhoeaeの株が、penAモザイク遺伝子、gyrA遺伝子、または23SリボソームRNAをコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップを含む方法が提供される。
【0043】
本発明に従い、淋病を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、抗微生物剤に対して感受性であるNeisseria gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定する方法であって、対象に感染するN.gonorrhoeaeの株の核酸が、保存的ヌクレオチド位置において、野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップを含み、その位置における突然変異が、N.gonorrhoeaeの異なる株であり抗微生物剤に対して耐性である株の核酸内で、抗微生物剤に対する耐性と関連する、方法もまた提供される。
【0044】
本発明の一部の実施形態に従い、penAモザイク遺伝子内の1または複数の保存的ヌクレオチド位置における突然変異は、セファロスポリンに対する耐性と関連する。特に、penAモザイク遺伝子のF504位およびA510位をコードするヌクレオチド配列における突然変異が、セファロスポリンに対して耐性である株内の、ほぼ全てのモザイク対立遺伝子において保存的である一方、penAモザイク遺伝子のA501位およびA516位をコードするヌクレオチド配列における突然変異は、セファロスポリンに対して耐性である株内の、モザイク対立遺伝子のより小さなサブセットにおいて保存的である。
【0045】
したがって、本発明の一部の実施形態では、淋病を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、セファロスポリンに対して感受性であるNeisseria gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定する方法であって、N.gonorrhoeaeの株が、penAモザイク遺伝子のF504位および/またはA510位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップを含む方法が提供される。これに代えてまたは加えて、方法は、Neisseria gonorrhoeaeの株が、penAモザイク遺伝子のA501位および/またはA516位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップも含みうる。
【0046】
他の実施形態では、非モザイクpenA遺伝子のA501位をコードするヌクレオチド配列における突然変異(特に、A501V)は、セファロスポリン(とりわけ、セフトリアキソンおよびセフィキシム)に対して耐性である株内で保存的である(UnemoおよびShafer、Clinical Microbiology Reviews、2014年、27巻(3号):587~613頁)。したがって、本発明に従い、淋病を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、セファロスポリンに対して感受性であるNeisseria gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定する方法であって、N.gonorrhoeaeの株が、penA非モザイク遺伝子のA501位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップを含む方法もまた提供される。
【0047】
本発明の他の実施形態に従い、gyrA遺伝子内の1または複数の保存的ヌクレオチド位置における突然変異は、シプロフロキサシンに対する耐性と関連する。特に、gyrA遺伝子のS91位および/またはD95位をコードするヌクレオチド配列における突然変異は、シプロフロキサシンに対して耐性である株内で保存的である。
【0048】
したがって、本発明の一部の実施形態では、淋病を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、シプロフロキサシンに対して感受性であるNeisseria gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定する方法であって、N.gonorrhoeaeの株が、gyrA遺伝子のS91位および/またはD95位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップを含む方法が提供される。
【0049】
本発明のさらなる実施形態に従い、23SリボソームRNA内の、1または複数の保存的ヌクレオチド位置における突然変異は、アジスロマイシンに対する耐性と関連する。特に、23SリボソームRNAのC2611位および/またはA2059位をコードするヌクレオチド配列における突然変異は、アジスロマイシンに対して耐性である株内で保存的である。
【0050】
23SリボソームRNAの特異点における突然変異は、様々な程度の耐性を結果としてもたらしうる。例えば、C2611Tが、低レベルの耐性を有する株と関連するのに対し、A2059Gは、高レベルの耐性を有する株と関連する。アジスロマイシンに対する耐性のレベルはまた、突然変異した23S対立遺伝子の数とも連関する。N.gonorrhoeaeは、23SリボソームRNA遺伝子の4つのコピーを有する。突然変異が、対立遺伝子のうちの1つだけにおいて観察される場合、突然変異が、A2059Gであっても、観察される耐性は、低レベルであろう。しかし、単一の突然変異した対立遺伝子を伴う株は、アジスロマイシンによる処置に対して感受性であっても、急速に、高レベルの耐性を発生させるであろう。
【0051】
したがって、本発明の一部の実施形態では、淋病を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、アジスロマイシンに対して感受性であるNeisseria gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定する方法であって、N.gonorrhoeaeの株が、23SリボソームRNAのC2611位および/またはA2059位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップを含む方法が提供される。任意選択で、方法はさらに、N.gonorrhoeaeの株が、23SリボソームRNAのC2611位および/またはA2059位をコードする突然変異体ヌクレオチド配列を含まないのかどうかを決定するステップを含みうる。
【0052】
株が、23SリボソームRNAのC2611位および/またはA2059位をコードする、検出可能な突然変異体ヌクレオチド配列を含まない場合、23SリボソームRNA遺伝子の4つのコピー全ては、野生型であり、対象は、アジスロマイシンに対して感受性であるNeisseria gonorrhoeaeの株に感染していることが結論付けられうる。
【0053】
株が、C2611位および/またはA2059位をコードする突然変異体ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することができる。何らかの突然変異体配列が存在する場合(例えば、23SリボソームRNA遺伝子の単一のコピーだけが、突然変異体配列を含む場合であっても)、アジスロマイシン耐性を選択しないように、アジスロマイシンによる処置を回避すべきである。
【0054】
N.gonorrhoeaeの株が、23SリボソームRNAのC2611位および/またはA2059位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含む(かつ、任意選択で、C2611位および/またはA2059位をコードする突然変異体ヌクレオチド配列を含まない)のかどうかの決定は、野生型(および、任意選択で、突然変異体)のコード配列自体について検出することにより実行することもでき、このような配列によりコードされる野生型(および、任意選択で、突然変異体)の23SリボソームRNA配列について検出することにより実行することもできる。
【0055】
Ngら(Antimicrobial Agents and Chemotherapy、2002年、46巻(9号):3020~3025頁)は、23S rRNA対立遺伝子の各々:
対立遺伝子1:TCAGAATGCCACAGCTTACAAACT(配列番号10);対立遺伝子2:GCGACCATACCAAACACCCACAGG(配列番号11);対立遺伝子3:GATCCCGTTGCAGTGAAGAAAGTC(配列番号12);対立遺伝子4:AACAGACTTACTATCCCATTCAGC(配列番号13)
に特異的なプライマーと対合させた、配列:ACGAATGGCGTAACGATGGCCACA(配列番号9)のPCRフォワードプライマーを使用するPCRによる、Neisseria gonorrhoeaeの23SリボソームRNAの4つの対立遺伝子の特異的な増幅について記載している。
【0056】
対立遺伝子特異的プライマーは、23S rRNAの下流においてプライミングする。
【0057】
Ngらにより使用されたPCR条件は、94℃で1分間の変性、アニーリングのための66℃(対立遺伝子2および3について)または68℃(対立遺伝子1および4について)で1.5分間、および伸長のための72℃で2.5分間の30サイクルにわたる条件であった。
【0058】
次いで、得られた単位複製配列を、配列番号9のPCRフォワードプライマーと、配列:TTCGTCCACTCCGGTCCTCTCGTA(配列番号14)のリバースプライマーとを使用する、第2のPCR反応における鋳型として使用した。この第2のPCR反応のための条件は、94℃で1分間の変性、アニーリングのための59℃で1分間、および伸長のための72℃で1分間の35サイクルにわたる条件であった。
【0059】
本発明に従う同様の方法を使用して、対象に感染するNeisseria gonorrhoeaeの株が、23S rRNAのC2611位および/またはA2059位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含み、任意選択で、23S rRNAのC2611位および/またはA2059位をコードする突然変異体ヌクレオチド配列を含まないのかどうかを決定することができる。例えば、第2のPCR反応の産物を、シーケンシングするか、またはハイブリダイズ条件下で、野生型配列を含むPCR産物と、突然変異体配列を含むPCR産物とを識別することが可能な、標識化オリゴヌクレオチドプローブと共にインキュベートすることができる。
【0060】
核酸検査はまた、排出ポンプの過剰発現の結果として生じる、アジスロマイシンに対する耐性を検出するのにも使用することができる。MtrCDE排出ポンプは、構造的に多様な疎水性抗微生物剤を移出しうる。MtrCDE排出ポンプの基質に対する中程度レベルの耐性を示す淋菌株は、mtrCDEプロモーターに結合するMtrRリプレッサーをコードする、mtrR遺伝子のDNA結合性ドメインコード領域内のミスセンス突然変異(一般に、アミノ酸残基32~53のヘリックス-ターン-ヘリックスドメイン内のG45D置換)を有することが典型的である。高レベルの耐性を発現させる株は、mtrRプロモーター内に、突然変異(最も高頻度には、-10~-35におけるヘキサマー配列の間の13塩基対の逆位リピート配列内の、単一の「A」ヌクレオチドの欠失)を有する。このような突然変異は、MtrCDE排出ポンプの過剰発現およびMtrCDE排出ポンプからの排出の増大を結果としてもたらす(UnemoおよびShafer、Clinical Microbiology Reviews、2014年、27巻(3号):587~613頁)。
【0061】
したがって、本発明の一部の実施形態では、淋病を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、アジスロマイシンに対して感受性であるNeisseria gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定する方法はさらに、N.gonorrhoeaeの株が、野生型のmtrRプロモーター配列(特に、-10~-35におけるヘキサマー配列の間の野生型の13塩基対のリピート配列)、および/またはmtrR遺伝子のアミノ酸残基32~53のヘリックス-ターン-ヘリックスドメイン内のG45位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するステップを含みうる。
【0062】
Zarantonelliら(Antimicrobial Agents and Chemotherapy、1999年、43巻(10号):2468~2472頁)およびNgら(Antimicrobial Agents and Chemotherapy、2002年、46巻(9号):3020~3025頁)は、プライマー:ACTGAAGCTTATTTCCGGCGCAGGCAGGG(配列番号15)およびGACGACAGTGCCAATGCAACG(配列番号16)を使用して、プロモーター領域を含むmtrR遺伝子をPCR増幅するための方法について記載している。このような方法は、本発明に従い、対象に感染するNeisseria gonorrhoeaeの株が、野生型のmtrRプロモーター配列および/またはmtrR遺伝子のG45位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定するのに使用することができる。例えば、PCR反応の産物を、シーケンシングするか、またはハイブリダイズ条件下で、野生型配列を含むPCR産物と、突然変異体配列を含むPCR産物とを識別することが可能な、標識化オリゴヌクレオチドプローブと共にインキュベートすることができる。
【0063】
Neisseria gonorrhoeaeの複数の株について、ゲノム配列が決定されている。例えば、Lewisら、The Complete Genome Sequence of Neisseria gonorrhoeae(GenBank受託番号:AE004969、Neisseria gonorrhoeae FA1090、完全ゲノム);Chungら、Complete Genome Sequence
of Neisseria gonorrhoeae NCCP11945、Journal of Bacteriology、2008年、6035~6036頁(GenBank受託番号:CP001050);Hessら、Genome
Sequence of a Neisseria gonorrhoeae Isolate of a Successful International Clone with Decreased Susceptibility and Resistance to Extended-Spectrum Cephalosporins、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、2012年、56巻(11号):5633~5641頁(SM-3株)を参照されたい。
【0064】
Neisseria gonorrhoeae株LM306についての、ペニシリン結合性タンパク質2(penA)遺伝子の配列であって、NCBI GenBank受託番号:M32091(version M32091.1;Spratt、Nature(1988年)、332巻(6160号)、173~176頁)に基づく配列と、Neisseria gonorrhoeae株FA1090についての、gyrA遺伝子、およびmtrR遺伝子、ならびに23SリボソームRNAの対立遺伝子の配列であって、NCBI基準配列:NC_002946.2に基づく配列とを、下記に提示する。これらの配列(または他の利用可能なNeisseria gonorrhoeae配列)を使用して、特定の野生型配列(または野生型配列の組合せ)が、対象に感染するNeisseria gonorrhoeaeの株内に存在するのかどうかを決定するように、適切なオリゴヌクレオチドプライマーおよびオリゴヌクレオチドプローブをデザインすることができる。
【0065】
Neisseria gonorrhoeaeの株が、penAモザイク遺伝子をコードする野生型ヌクレオチド配列を含む場合、対象を、単剤療法としてのセファロスポリンにより、効果的に処置しうることが予測される。Neisseria gonorrhoeaeの株が、gyrA遺伝子をコードする野生型ヌクレオチド配列を含む場合、対象を、単剤療法としてのシプロフロキサシンにより、効果的に処置しうることが予測される。Neisseria gonorrhoeaeの株が、23SリボソームRNAをコードする野生型ヌクレオチド配列を含む(かつ、任意選択で、23SリボソームRNAのC2611位および/またはA2059位をコードする突然変異体ヌクレオチド配列を含まない)場合、対象を、単剤療法としてのアジスロマイシンにより、効果的に処置しうることが予測される。同様に、Neisseria gonorrhoeaeの株がまた、野生型のmtrRプロモーター配列および/またはmtrR遺伝子のG45位をコードする野生型ヌクレオチド配列も含む場合、対象を、単剤療法としてのアジスロマイシンにより、効果的に処置しうることが予測される。
【0066】
本発明の一部の実施形態では、対象が、複数の異なる抗微生物剤のうちのいずれかに対して感受性である微生物の株に感染しているのかどうかを決定することができる。このような実施形態では、異なる抗微生物剤に関する決定を、例えば、単回の検査で、同時に下すことができる。例えば、淋病を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、シプロフロキサシン、アジスロマイシン、およびセファロスポリン;シプロフロキサシンおよびアジスロマイシン;シプロフロキサシンおよびセファロスポリン;またはアジスロマイシンおよびセファロスポリンの各々に対して感受性であるNeisseria gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定することができる。
【0067】
他の実施形態では、抗微生物剤のうちの1つについて、感染性疾患を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、この抗微生物剤に対して感受性である微生物の株に感染しているのかどうかを、まず決定することができる。対象が、抗微生物剤に対して感受性である微生物の株に感染していることが見出される場合、対象に、抗微生物剤を、単剤療法として投与するかまたは投与するために処方することができる。対象が、抗微生物剤に対して耐性である微生物の株に感染していることが見出される場合、対象が、第2の抗微生物剤に対して感受性である微生物の株に感染しているのかどうかを決定することができる。対象が、第2の抗微生物剤に対して感受性である微生物の株に感染していることが見出される場合、対象に、第2の抗微生物剤を、単剤療法として投与するかまたは投与するために処方することができる。対象が、第2の抗微生物剤に対して耐性である微生物の株に感染していることが見出されており、微生物に対するさらなる抗微生物剤が公知である場合、対象に感染する株が感受性である抗微生物剤が見出されるまで、対象が、第3の抗微生物剤などに対して感受性である微生物の株に感染しているのかどうかを決定することができる。対象に感染する株が感受性である抗微生物剤が存在しない場合、対象に、株が耐性である抗微生物剤のうちの2つまたはこれを超える組合せを投与するかまたは投与するために処方することができる。
【0068】
例えば、本発明の一部の実施形態では、淋病を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、シプロフロキサシン、アジスロマイシン、およびセファロスポリンから選択される抗微生物剤のうちのいずれかに対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを、まず決定することができる。対象が、選択される抗微生物剤に対して感受性である株に感染していることが見出される場合、対象に、この抗微生物剤を、単剤療法として投与することができる。対象が、選択される抗微生物剤に対して耐性である株に感染していることが見出される場合、対象が、残りの抗微生物剤のうちの1つに対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定することができる。対象が、第2の選択される抗微生物剤に対して感受性である株に感染していることが見出される場合、対象に、この抗微生物剤を、単剤療法として投与することができる。対象が、第2の選択される抗微生物剤に対して耐性である株に感染していることが見出される場合、対象が、残りの抗微生物剤に対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定することができる。対象が、第3の選択される抗微生物剤に対して感受性である株に感染していることが見出される場合、対象に、この抗微生物剤を、単剤療法として投与することができる。対象が、第3の選択される抗微生物剤に対して耐性である株に感染していることが見出される場合、対象に、第1の選択される抗微生物剤と第2の選択される抗微生物剤との組合せ、第1の選択される抗微生物剤と第3の選択される抗微生物剤との組合せ、もしくは第2の選択される抗微生物剤と第3の選択される抗微生物剤との組合せ、または3つの抗微生物剤全てを投与することができる。
【0069】
このような方法により、抗微生物剤の使用は、単剤療法として選択される抗微生物剤に対して感受性であることが公知の株により引き起こされる感染の処置に限定され、抗微生物剤に対して耐性である株に対する抗微生物剤の使用は、最小化され、これにより、このような耐性株に対する選択量が低減される。このような方法は、抗微生物剤に対する耐性の蔓延のほか、耐性の発生または拡散、および複数の抗微生物剤に対する耐性(多剤耐性)の発生も低減する。
【0070】
例えば、シプロフロキサシン、アジスロマイシン、およびセファロスポリンについての感受性の決定は、以下の順序:セファロスポリン、次いで、アジスロマイシン、次いで、シプロフロキサシン;セファロスポリン、次いで、シプロフロキサシン、次いで、アジスロマイシン;アジスロマイシン、次いで、シプロフロキサシン、次いで、セファロスポリン;アジスロマイシン、次いで、セファロスポリン、次いで、シプロフロキサシン;シプロフロキサシン、次いで、セファロスポリン、次いで、アジスロマイシン;シプロフロキサシン、次いで、アジスロマイシン、次いで、セファロスポリンのうちのいずれかで下すことができる。
【0071】
例えば、本発明の一部の実施形態では、淋病を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、シプロフロキサシンに対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを、まず決定することができる。対象が、シプロフロキサシンに対して感受性である株に感染していることが見出される場合、対象に、シプロフロキサシンを、単剤療法として投与することができる。対象が、シプロフロキサシンに対して耐性である株に感染していることが見出される場合、対象が、アジスロマイシンに対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定することができる。対象が、アジスロマイシンに対して感受性である株に感染していることが見出される場合、対象に、アジスロマイシンを、単剤療法として投与することができる。対象が、アジスロマイシンに対して耐性である株に感染していることが見出される場合、対象が、セファロスポリンに対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定することができる。対象が、セファロスポリンに対して感受性である株に感染していることが見出される場合、対象に、セファロスポリンを、単剤療法として投与することができる。対象が、セファロスポリンに対して耐性である株に感染していることが見出される場合、対象に、アジスロマイシンおよびセファロスポリン、またはシプロフロキサシンおよびアジスロマイシン、またはシプロフロキサシンおよびセファロスポリンを投与することができる。
【0072】
他の実施形態では、淋病を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、アジスロマイシンに対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを、まず決定することができる。対象が、アジスロマイシンに対して感受性である株に感染していることが見出される場合、対象に、アジスロマイシンを、単剤療法として投与することができる。対象が、アジスロマイシンに対して耐性である株に感染していることが見出される場合、対象が、シプロフロキサシンに対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定することができる。対象が、シプロフロキサシンに対して感受性である株に感染していることが見出される場合、対象に、シプロフロキサシンを、単剤療法として投与することができる。対象が、シプロフロキサシンに対して耐性である株に感染していることが見出される場合、対象が、セファロスポリンに対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定することができる。対象が、セファロスポリンに対して感受性である株に感染していることが見出される場合、対象に、セファロスポリンを、単剤療法として投与することができる。対象が、セファロスポリンに対して耐性である株に感染していることが見出される場合、対象に、アジスロマイシンおよびセファロスポリン、またはシプロフロキサシンおよびアジスロマイシン、またはシプロフロキサシンおよびセファロスポリンを投与することができる。
【0073】
代替的に、シプロフロキサシン、アジスロマイシン、およびセファロスポリンのうちの2つについての感受性の決定は、任意の順序、例えば、シプロフロキサシン、次いで、アジスロマイシン;シプロフロキサシン、次いで、セファロスポリン;アジスロマイシン、次いで、セファロスポリン;アジスロマイシン、次いで、シプロフロキサシン;セファロスポリン、次いで、シプロフロキサシン;またはシプロフロキサシン、次いで、セファロスポリンの順序で下すことができる。
【0074】
また、本発明に従い、N.gonorrhoeaeに感染した対象を処置するための方法であって、
N.gonorrhoeaeの株が、penAモザイク遺伝子、gyrA遺伝子、または23SリボソームRNAをコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することにより、対象が、N.gonorrhoeaeの抗生剤感受性株に感染しているのかどうかを決定するステップと;
N.gonorrhoeaeの株が、penAモザイク遺伝子をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むことが決定される場合、セファロスポリンを、対象へ、単剤療法として投与するか;または
N.gonorrhoeaeの株が、gyrA遺伝子をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むことが決定される場合、シプロフロキサシンを、対象へ、単剤療法として投与するか;または
N.gonorrhoeaeの株が、23SリボソームRNAの野生型ヌクレオチド配列を含むことが決定される場合、アジスロマイシンを、対象へ、単剤療法として投与するステップとを含む方法
も提供される。
【0075】
対象が、N.gonorrhoeaeのセファロスポリン感受性株に感染しているのかどうかは、N.gonorrhoeaeの株が、penAモザイク遺伝子のF504位および/またはA510位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することにより決定することができる。任意選択で、N.gonorrhoeaeの株が、penAモザイク遺伝子のA501位および/またはA516位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかもさらに決定することができる。他の実施形態では、対象が、N.gonorrhoeaeのセファロスポリン感受性株に感染しているのかどうかは、N.gonorrhoeaeの株が、penA非モザイク遺伝子のA501位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することにより決定することができる。
【0076】
対象が、N.gonorrhoeaeのシプロフロキサシン感受性株に感染しているのかどうかは、N.gonorrhoeaeの株が、gyrA遺伝子のS91位および/またはD95位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定することにより決定することができる。
【0077】
対象が、N.gonorrhoeaeのアジスロマイシン感受性株に感染しているのかどうかは、N.gonorrhoeaeの株が、23SリボソームRNAのC2611位および/またはA2059位をコードする野生型ヌクレオチド配列を伴う核酸を含むのかどうかを決定することにより決定することができる。任意選択で、また、N.gonorrhoeaeの株が、23SリボソームRNAのC2611位および/またはA2059位をコードする突然変異体ヌクレオチド配列を含まないのかどうかを決定することができる。任意選択で、N.gonorrhoeaeの株がまた、野生型のmtrRプロモーター配列(特に、-10~-35におけるヘキサマー配列の間の野生型の13塩基対のリピート配列)および/またはmtrR遺伝子のG45位をコードする野生型ヌクレオチド配列も含むのかどうかを決定することができる。
【0078】
N.gonorrhoeaeに感染した対象を処置するための本発明の一部の方法は、
i)淋病を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、第1の抗微生物剤に対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定するステップと;
ii)対象が、第1の抗微生物剤に対して感受性である株に感染していることが見出される場合、第1の抗微生物剤を、単剤療法として、対象へ投与するステップと;
iii)対象が、第1の抗微生物剤に対して耐性である株に感染していることが見出される場合、対象が、第2の抗微生物剤に対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定するステップと;
iv)対象が、第2の抗微生物剤に対して感受性である株に感染していることが見出される場合、第2の抗微生物剤を、単剤療法として、対象へ投与するステップと;
v)対象が、第2の抗微生物剤に対して耐性である株に感染していることが見出される場合、第1の抗微生物剤および第2の抗微生物剤を、組合せ療法として、対象へ投与するステップと
を含む。
【0079】
第1の抗微生物剤および第2の抗微生物剤は、シプロフロキサシン、アジスロマイシン、およびセファロスポリンから選択することができる。例えば、第1の抗微生物剤および第2の抗微生物剤はそれぞれ、シプロフロキサシンおよびアジスロマイシン;シプロフロキサシンおよびセファロスポリン;アジスロマイシンおよびセファロスポリン;アジスロマイシンおよびシプロフロキサシン;セファロスポリンおよびシプロフロキサシン;またはシプロフロキサシンおよびセファロスポリンでありうる。
【0080】
他の実施形態では、第1の抗微生物剤および第2の抗微生物剤は、上記の表2で列挙した抗微生物剤のうちのいずれかから選択することができる。
【0081】
3つの抗微生物剤について調べる、一部の実施形態では、N.gonorrhoeaeに感染した対象を処置するための本発明の方法は、
i)感染性疾患を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、第1の抗微生物剤に対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定するステップと;
ii)対象が、第1の抗微生物剤に対して感受性である株に感染していることが見出される場合、第1の抗微生物剤を、単剤療法として、対象へ投与するステップと;
iii)対象が、第1の抗微生物剤に対して耐性である株に感染していることが見出される場合、対象が、第2の抗微生物剤に対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定するステップと;
iv)対象が、第2の抗微生物剤に対して感受性である株に感染していることが見出される場合、第2の抗微生物剤を、単剤療法として、対象へ投与するステップと;
v)対象が、第2の抗微生物剤に対して耐性である株に感染していることが見出される場合、対象が、第3の抗微生物剤に対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定するステップと;
vi)対象が、第3の抗微生物剤に対して感受性である株に感染していることが見出される場合、第3の抗微生物剤を、単剤療法として、対象へ投与するステップと;
vii)対象が、第3の抗微生物剤に対して耐性である株に感染していることが見出される場合、第1の抗微生物剤および第2の抗微生物剤、第1の抗微生物剤および第3の抗微生物剤、第2の抗微生物剤および第3の抗微生物剤、または第1の抗微生物剤、第2の抗微生物剤、および第3の抗微生物剤を、組合せ療法として、対象へ投与するステップとを含みうる。
【0082】
例えば、第1の抗微生物剤、第2の抗微生物剤、および第3の抗微生物剤はそれぞれ、セファロスポリン、アジスロマイシン、およびシプロフロキサシン;セファロスポリン、シプロフロキサシン、およびアジスロマイシン;アジスロマイシン、シプロフロキサシン、およびセファロスポリン;アジスロマイシン、セファロスポリン、およびシプロフロキサシン;シプロフロキサシン、セファロスポリン、およびアジスロマイシン;またはシプロフロキサシン、アジスロマイシン、およびセファロスポリンでありうる。
【0083】
他の実施形態では、第1の抗微生物剤、第2の抗微生物剤、および第3の抗微生物剤は、上記の表2で列挙した抗微生物剤のうちのいずれかから選択することができる。
【0084】
例えば、N.gonorrhoeaeに感染した対象を処置するための本発明の方法は、
i)淋病を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、シプロフロキサシンに対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定するステップと;
ii)対象が、シプロフロキサシンに対して感受性である株に感染していることが見出される場合、シプロフロキサシンを、単剤療法として、対象へ投与するステップと;
iii)対象が、シプロフロキサシンに対して耐性である株に感染していることが見出される場合、対象が、アジスロマイシンに対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定するステップと;
iv)対象が、アジスロマイシンに対して感受性である株に感染していることが見出される場合、アジスロマイシンを、単剤療法として、対象へ投与するステップと;
v)対象が、アジスロマイシンに対して耐性である株に感染していることが見出される場合、対象が、セファロスポリンに対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定するステップと;
vi)対象が、セファロスポリンに対して感受性である株に感染していることが見出される場合、セファロスポリンを、単剤療法として、対象へ投与するステップと;
vii)対象が、セファロスポリンに対して耐性である株に感染していることが見出される場合、アジスロマイシンおよびセファロスポリン、シプロフロキサシンおよびアジスロマイシン、またはシプロフロキサシンおよびセファロスポリンを、組合せ療法として、対象へ投与するステップと
を含みうる。
【0085】
代替的な例では、N.gonorrhoeaeに感染した対象を処置するための本発明の方法は、
i)淋病を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、アジスロマイシンに対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定するステップと;
ii)対象が、アジスロマイシンに対して感受性である株に感染していることが見出される場合、アジスロマイシンを、単剤療法として、対象へ投与するステップと;
iii)対象が、アジスロマイシンに対して耐性である株に感染していることが見出される場合、対象が、シプロフロキサシンに対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定するステップと;
iv)対象が、シプロフロキサシンに対して感受性である株に感染していることが見出される場合、シプロフロキサシンを、単剤療法として、対象へ投与するステップと;
v)対象が、シプロフロキサシンに対して耐性である株に感染していることが見出される場合、対象が、セファロスポリンに対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定するステップと;
vi)対象が、セファロスポリンに対して感受性である株に感染していることが見出される場合、セファロスポリンを、単剤療法として、対象へ投与するステップと;
vii)対象が、セファロスポリンに対して耐性である株に感染していることが見出される場合、アジスロマイシンおよびセファロスポリン、シプロフロキサシンおよびアジスロマイシン、またはシプロフロキサシンおよびセファロスポリンを、組合せ療法として、対象へ投与するステップと
を含みうる。
【0086】
対象は、ヒト対象であることが典型的である。対象は、男性のヒト対象の場合もあり、女性のヒト対象の場合もある。対象は、感染性疾患について、症状性の場合もあり、無症状性の場合もある。
【0087】
対象に感染する微生物の株の核酸が、野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定する方法は、対象から得られた核酸を使用して実行することもでき、対象から得られた核酸から導出された核酸を使用して実行することもできる。核酸は、例えば、対象から得られた核酸の核酸増幅または対象から得られた核酸と相補的な核酸鎖(すなわち、配列)の合成により、対象から得られた核酸から導出することができる。
【0088】
対象に感染する微生物の株の核酸が、野生型ヌクレオチド配列を含むのかどうかを決定する方法は、in vitro方法でありうる。方法は、対象から得られた生体試料に対して実行することができる。生体試料は、野生型配列の検出を可能とするのに十分な数量の、感染する微生物の株の核酸を含有しうる、任意の生体試料でありうる。例えば、生体試料は、血液試料、血漿試料、または尿試料でありうる。生体試料の他の例は、直腸試料、口腔咽頭試料、膣試料、尿道試料、外陰部試料、尿道口試料、子宮頸管試料、血清試料、皮膚試料、または結膜試料を含む。N.gonorrhoeae核酸の存在について調べるための生体試料の例は、直腸試料、口腔咽頭試料、膣試料、尿試料、尿道試料、外陰部試料、尿道口試料、子宮頸管試料を含む。MRSAについて調べるための生体試料の例は、鼻腔、鼠径部、腋窩、または皮膚から採取されたスワブを含む。
【0089】
任意の適切な方法を使用して、対象が、野生型ヌクレオチド配列を含む核酸を含む微生物の株に感染しているのかどうかを決定することができる。一部の実施形態では、野生型ヌクレオチド配列について特異的に検出することにより、対象が、野生型ヌクレオチド配列を含む核酸を含む微生物の株に感染しているのかどうかを決定する。例えば、野生型ヌクレオチド配列は、野生型ヌクレオチド配列と相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドを活用するために、特異的に検出することができる。適切な厳密性の条件下で、相補的なオリゴヌクレオチドは、野生型ヌクレオチド配列を含む核酸とはハイブリダイズするが、突然変異体配列を含む核酸とはハイブリダイズしない。オリゴヌクレオチドが、核酸とハイブリダイズしたのかどうかの検出を使用して、野生型ヌクレオチド配列が存在するのかどうかを決定することができる。当業者には、このような方法を実行するのに適する技法が周知である。
【0090】
他の実施形態では、野生型ヌクレオチド配列は、野生型ヌクレオチド配列と同じ配列である配列を含むオリゴヌクレオチドを活用するために、検出することができる。適切な厳密性の条件下で、このようなオリゴヌクレオチドは、野生型ヌクレオチド配列と相補的な核酸とはハイブリダイズするが、突然変異体配列と相補的な核酸とはハイブリダイズしない。オリゴヌクレオチドが、相補的な核酸とハイブリダイズしたのかどうかの検出を使用して、野生型ヌクレオチド配列が存在するのかどうかを決定することができる。当業者には、このような方法を実行するのに適する技法が周知である。
【0091】
対象に感染する微生物の株の核酸は、生体試料中に極めて低量で存在する場合がある。したがって、野生型配列が存在するのかどうかの決定を可能とするには、感染する株の核酸を増幅することが必要でありうる。当業者には、核酸増幅の方法が周知である。適切な増幅方法の例は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写PCR(RT-PCR)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、転写を介する増幅(TMA)、自己持続配列複製(3SR)など、転写ベースの増幅を含む等温核酸増幅(ChanおよびFox、Rev. Med. Microbiol.、10巻:185~196頁(1999年);Guatelliら、Proc. Natl. Acad.
Sci.、87巻:1874~1878頁(1990年);Compton、Nature、350巻:
91~92頁(1991年))を含む。適切な等温核酸増幅方法のさらなる例は、ループを介する等温増幅(LAMP)である(Notomiら、Nucleic Acids Res.、28巻(12号):E63頁)。
【0092】
対象に感染する微生物の株の核酸であって、野生型ヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的なオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションのために使用されるか、または野生型配列が存在するのかどうかの決定を可能とするように増幅される核酸は、微生物ゲノム核酸、特に微生物ゲノムDNAまたは微生物ゲノムRNA(例えば、レトロウイルスなど、RNAウイルスのゲノムRNA)の場合もあり、微生物ゲノムDNAから転写された微生物RNA(例えば、23SリボソームRNAなど)の場合もあることが察知されるであろう。
【0093】
本発明の特定の実施形態に従い、増幅産物は、ディップスティックを使用して検出することができる。ディップスティック検出の適切な方法では、増幅産物は、毛細管作用により、ディップスティックに沿って、ディップスティックの捕捉帯域へと輸送され、捕捉帯域において検出される。増幅産物は、捕捉プローブとのハイブリダイゼーションにより、増幅産物を、ディップスティックの捕捉帯域に固定化し、検出プローブとのハイブリダイゼーションにより、捕捉帯域において検出する、サンドイッチ核酸ディップスティック検出アッセイを使用して、捕捉および検出することができる。
【0094】
当業者には、ディップスティックアッセイによる核酸の検出方法が公知である。本出願人は、ディップスティック検出の、特に高感度な方法を開発したが、これらは、WO02/004667、WO02/04668、WO02/004669、WO02/04671、WO2008/090340、およびDinevaら(Journal of Clinical Microbiology、2005年、43巻(8号):4015~4021頁)において記載されている。
【0095】
従来の核酸増幅反応の欠点は、偽陽性をもたらしうる非標的核酸の、標的核酸との夾雑の危険性であることが周知である。従来、核酸増幅反応における夾雑の危険性は、検査室内で、試料の調製、核酸の増幅、および増幅された核酸の検出に特化した別個の領域を使用して反応を実行することにより最小化されている。しかし、これは、核酸増幅反応を、このような施設から離れた場所で実行する場合(例えば、現場、医師の診療室、自宅、遠隔地方、または専門施設が利用可能でない場合がある開発途上国において)、不可能であることが察知されるであろう。
【0096】
本出願人は、核酸増幅反応を、専門検査施設から離れた場所で実行する場合、増幅反応を、外部環境から密封された加工チャンバー内で実施することにより夾雑の危険性を低減しうることを察知している。次いで、増幅産物の検出を、これもまた外部環境から密封された、解析チャンバー内で実行することができる。
【0097】
加工チャンバーおよび解析チャンバーは、デバイスにより提供することができる。デバイスには、標的核酸の増幅に要請される試薬(酵素活性を含む)および/または増幅産物の検出に要請される試薬(凍結乾燥形態であることが適する)をあらかじめロードすることができる。
【0098】
他の試料の、増幅産物との夾雑の危険性は、そのさらなる増幅を防止する核酸修飾剤または加水分解剤で、増幅産物を処理することにより低減することができる。適切な処理は、核酸を修飾および分解する化学的処理、例えば、化学的ヌクレアーゼによる核酸の非酵素的分解である。化学的ヌクレアーゼの例は、Sigmanら(J.Biol. Chem(1979年)
、254巻、12269~12272頁)およびChiou(J. Biochem(1984年)、96巻、1307~1310頁)により記載されている、銅フェナントロリン-Cu(II)切断剤またはアスコルベート-Cu(II)切断剤などの二価金属キレート錯体である。代替的に、標的核酸内に天然では存在しない塩基を、増幅産物へと組み込むこともできる。例えば、dUTPを使用して、ウラシルを、DNA増幅産物へと組み込むことができる(US5,035,996において記載されている通り)。次いで、増幅の前に、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)を、このようなDNA増幅産物と夾雑している可能性がある試料へと添加すれば、これは、試料中の天然のDNAに影響を及ぼさずに、任意の夾雑する増幅産物(ウラシルを含有する)の酵素的加水分解を引き起こすであろう。
【0099】
標的核酸の増幅および/または増幅産物の検出に要請される試薬は、凍結乾燥形態で提供することができる。凍結乾燥は、試薬の安定性を改善し、これにより、試薬を、高温で、より長期にわたり保管することを可能とする。凍結乾燥はまた、それらの輸送が容易となるように、試薬の重量および容量も低減する。したがって、凍結乾燥試薬の使用は、本発明の方法を、現場で実行するために有利である。
【0100】
本出願人は、(凍結乾燥させると、)試薬を、少なくとも1年間にわたり、最大37℃の温度で、安定状態に維持することが可能な、凍結乾燥製剤(すなわち、WO2008/090340において記載されている、凍結乾燥に適する製剤)を開発した。これは、試薬の低温保存またはコールドチェーン輸送に対する要請を除去する。製剤はまた、凍結乾燥の後で、迅速に再水和させうるという利点も有する。現場では、核酸標的の増幅または増幅産物の検出に要請される試薬が、増幅方法または検出方法の間に、たやすく再水和しなければ、検査の速度または精度が悪影響を受けるので、これは、特に、核酸検査に使用される凍結乾燥製剤の所望の特性である。
【0101】
野生型ヌクレオチド配列の検出のために、検出試薬を使用することができる。検出試薬は、増幅産物または標的核酸の検出に適する、任意の試薬でありうる。検出試薬は、増幅産物または標的核酸とハイブリダイズする検出プローブを含みうる。検出試薬自体を標識し(1または複数の標識で)、これにより、検出試薬を活用して、増幅産物または標的核酸の直接的な検出を可能とすることができる。代替的に、検出試薬に結合する標識化試薬(1または複数の標識を含む)を用意し、これにより、検出試薬および標識化試薬を活用して、増幅産物または標的核酸の間接的な検出を可能とすることができる。
【0102】
検出試薬の標識(検出試薬を標識する場合)または標識化試薬は、目視により検出可能な標識でありうる。本明細書では、十分な量で存在する場合に、装置の補助を伴わずに、眼により検出されうる標識を含むように、「目視により検出可能な標識」を使用する。目視により検出可能な標識の例は、コロイド状金属ゾル粒子、ラテックス粒子、または繊維色素粒子を含む。コロイド状金属ゾル粒子の例は、金コロイド粒子である。
【0103】
検出試薬は、それらの各々に標識化試薬が結合しうる、複数の検出用リガンド(例えば、ビオチン)と共に用意されうる検出プローブでありうる。各標識化試薬は、各検出リガンド結合性部分が、検出試薬の検出リガンドに結合することが可能な、複数の検出リガンド結合性部分を含みうる。このような標識化試薬の例は、抗ビオチン抗体へとコンジュゲートさせた金コロイドである。検出プローブおよび標識化試薬の例は、それぞれ、Dinevaら(Journal of Clinical Microbiology、2005年、43巻(8号):4015~
4021頁)において記載および例示されている、検出用プローブおよび有色抗ハプテン検出コンジュゲートである。
【0104】
増幅産物または標的核酸の検出は、標準的なハイブリダイゼーション緩衝液中で行うことができる。典型的な標準的ハイブリダイゼーション緩衝液の例は、塩(100~400mMが適切である)、界面活性剤(PVPなど)、および洗浄剤を含む、トリスまたはリン酸緩衝液を含む。
【0105】
生体試料から単離された核酸の増幅および検出に好ましい方法については、WO2008/090340において記載されている。
【0106】
淋病を患うかまたはこれを患うことが疑われる対象が、抗微生物剤に対して感受性であるN.gonorrhoeaeの株に感染しているのかどうかを決定するための本発明の方法における使用のための、増幅産物を作出するのに適する核酸増幅プライマーの例、ならびにこの使用の適する捕捉プローブおよび検出プローブの例は、
i)厳密なハイブリダイゼーション条件下で、図1に示されるN.gonorrhoeae核酸配列の上流とハイブリダイズする5’側核酸増幅プライマー;厳密なハイブリダイゼーション条件下で、図1に示されるN.gonorrhoeae核酸配列の下流の逆鎖とハイブリダイズする3’側核酸増幅プライマー;ならびに厳密なハイブリダイゼーション条件下で、penAモザイク遺伝子のF504位およびA510位をコードするN.gonorrhoeae核酸の領域とハイブリダイズする捕捉プローブおよび/または検出プローブであって、penAモザイク遺伝子のF504位およびA510位をコードする野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかまたはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含む捕捉プローブおよび/または検出プローブと;
ii)厳密なハイブリダイゼーション条件下で、penAモザイク遺伝子のF504位をコードするN.gonorrhoeae核酸の領域とハイブリダイズする5’側核酸増幅プライマーであって、penAモザイク遺伝子のF504位をコードする野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかまたはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含む5’プライマー;厳密なハイブリダイゼーション条件下で、図1に示されるN.gonorrhoeae核酸配列の下流の逆鎖とハイブリダイズする3’側核酸増幅プライマー;厳密なハイブリダイゼーション条件下で、penAモザイク遺伝子のA510位をコードするN.gonorrhoeae核酸の領域とハイブリダイズする捕捉プローブおよび/または検出プローブであって、penAモザイク遺伝子のA510位をコードする野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかまたはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含む捕捉プローブおよび/または検出プローブと;
iii)厳密なハイブリダイゼーション条件下で、図1に示されるN.gonorrhoeae核酸配列の上流とハイブリダイズする5’側核酸増幅プライマー;厳密なハイブリダイゼーション条件下で、penAモザイク遺伝子のA510位をコードするN.gonorrhoeae核酸の領域に対する逆鎖とハイブリダイズする3’側核酸増幅プライマーであって、penAモザイク遺伝子のA510位をコードする野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかまたはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含む3’プライマー;厳密なハイブリダイゼーション条件下で、penAモザイク遺伝子のF504位をコードするN.gonorrhoeae核酸の領域とハイブリダイズする捕捉プローブおよび/または検出プローブであって、penAモザイク遺伝子のF504位をコードする野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかまたはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含む捕捉プローブおよび/または検出プローブと
を含む。
【0107】
また、本発明に従い、淋病を患う対象が、Neisseria gonorrhoeaeの抗生剤感受性株に感染しているのかどうかを決定するためのキットであって、
i)厳密な条件下で、penAモザイク遺伝子の野生型ヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり、penAモザイク遺伝子のF504位および/もしくはA510位をコードする野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかもしくはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含み、厳密な条件下で、penAモザイク遺伝子のF504位および/もしくはA510位における突然変異をコードするN.gonorrhoeaeの耐性株のヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチド;または
ii)厳密な条件下で、penAモザイク遺伝子の野生型ヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり、penAモザイク遺伝子のA501位および/もしくはA516位をコードする野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかもしくはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含み、厳密な条件下で、penAモザイク遺伝子のA501位および/もしくはA516位における突然変異をコードするN.gonorrhoeaeの耐性株のヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチド;または
iii)厳密な条件下で、gyrA遺伝子の野生型ヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり、gyrA遺伝子のS91位および/もしくはD95位をコードする野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかもしくはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含み、厳密な条件下で、gyrA遺伝子のS91位および/もしくはD95位における突然変異をコードするN.gonorrhoeaeの耐性株のヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチド;または
iv)厳密な条件下で、23SリボソームRNAの野生型ヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり、23SリボソームRNAのC2611位および/もしくはA2059位をコードする野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかもしくはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含み、厳密な条件下で、23SリボソームRNAのC2611位および/もしくはA2059位における突然変異をコードするN.gonorrhoeaeの耐性株のヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチド
を含むキットも提供される。
【0108】
また、本発明に従い、淋病を患う対象が、Neisseria gonorrhoeaeの抗生剤感受性株に感染しているのかどうかを決定するためのキットであって、上記の(i)および/もしくは(ii)および/もしくは(iii)および/もしくは(iv)のオリゴヌクレオチド、ならびに/または
(v)厳密な条件下で、penA非モザイク遺伝子の野生型ヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり、penA非モザイク遺伝子のA501位をコードする野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかもしくはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含み、厳密な条件下で、penA非モザイク遺伝子のA501位における突然変異をコードするN.gonorrhoeaeの耐性株のヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチド
を含むキットも提供される。
【0109】
上記の(iv)のオリゴヌクレオチドを含む本発明のキットはさらに、
vi)厳密な条件下で、mtrRプロモーターの-10~-35位における野生型ヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり、mtrRプロモーターの-10~-35における野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかもしくはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含み、厳密な条件下で、mtrRプロモーターの-10~-35位における突然変異を含むN.gonorrhoeaeの耐性株のヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチド;および/または
vii)厳密な条件下で、mtrR遺伝子のG45位をコードする野生型ヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり、mtrR遺伝子のG45位をコードする野生型ヌクレオチド配列と相補的であるかもしくはこれと同じ配列であるヌクレオチド配列を含み、厳密な条件下で、mtrR遺伝子のG45位における突然変異をコードするN.gonorrhoeaeの耐性株のヌクレオチド配列と同じ配列であるかもしくはこれと相補的な配列を含むN.gonorrhoeae核酸とハイブリダイズしないオリゴヌクレオチド
を含みうる。
【0110】
オリゴヌクレオチドは、厳密な条件下で、
AAACCGGCACGGCGCGCAAGTTCGTCAACGGGCGT(配列番号1);
TATGCCGACAACAAACACGTCGCTACCTTTATCGG(配列番号2);
AAATACCACCCCCACGGCGATTCCGCAGTTTACGAC(配列番号3);
ACCATCGTCCGTATGGCGCAAAATTTCGCTATGCGT(配列番号4);
GAAGATGCAATCTACCCGCTGCTAGACGGAAAGACCCCGTGAACCTTTACTGTAGCTTTGC(配列番号5);または
CATTTAAAGTGGTACGTGAGCTGGGTTTAAAACGTCGTGAGACAGTTTGGTCCCTATCTGCAGTGGG(配列番号6)または;
AAACCGGCACGGCGCGCAAGTTCGTCAACGGGCGTTATGCCGACAACAAACACGTCGCTACCTTTATCGG(配列番号7);または
AAATACCACCCCCACGGCGATTCCGCAGTTTACGACACCATCGTCCGTATGGCGCAAAATTTCGCTATGCGT(配列番号8)
のヌクレオチド配列と同じ配列であるかまたはこれと相補的な配列を含む核酸とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドから選択することができる。
【0111】
オリゴヌクレオチドは、少なくとも10、15、または20ヌクレオチドの長さでありうる。オリゴヌクレオチドは、最大で30、40、50、または100ヌクレオチドの長さでありうる。
【0112】
オリゴヌクレオチドは、少なくとも25、30、35、40、45、50、または50を超えるヌクレオチドの長さ、例えば、50を超えて100ヌクレオチドまでの長さでありうる。
【0113】
オリゴヌクレオチドは、配列番号1~8のうちのいずれかまたはその相補体のヌクレオチド配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一なヌクレオチド配列、またはこれと100%同一なヌクレオチド配列を含みうる。
【0114】
ハイブリダイゼーションの厳密性は、温度、塩濃度、イオン強度、およびハイブリダイゼーション緩衝液の組成などの条件の影響を受ける。一般に、低厳密性の条件は、規定のイオン強度およびpHにおける、特異的な配列の熱融解点(Tm)より約30℃低くなるように選択する。中程度の厳密性条件は、温度がTmを20℃下回る場合であり、高厳密性条件は、温度がTmを10℃下回る場合である。高厳密性のハイブリダイゼーション条件は、標的核酸配列との配列類似性が高い、ハイブリダイジング配列を単離するために使用されることが典型的である。しかし、核酸は、遺伝子コードの縮重性のために、配列が逸脱しながら、やはり実質的に同一なポリペプチドをコードする場合がある。したがって、場合によって、このような核酸分子を同定するには、中程度の厳密性ハイブリダイゼーション条件が必要とされうる。
【0115】
Tmとは、規定のイオン強度およびpH下における温度であって、標的配列のうちの50%が、完全にマッチさせたプローブとハイブリダイズする温度である。Tmは、溶液条件および塩基組成ならびにプローブの長さに依存する。例えば、長い配列は、高温で、特異的にハイブリダイズする。最大のハイブリダイゼーション率は、Tmを約16℃~最大32℃下回る温度で得られる。ハイブリダイゼーション溶液中の、一価カチオンの存在は、2つの核酸鎖の間の静電的斥力を低減し、これにより、ハイブリッド体の形成を促進するが、この効果は、最大0.4Mのナトリウム濃度で明らかとなる(より高濃度では、この効果は、無視しうる)。ホルムアミドは、DNA間二重鎖およびDNA-RNA二重鎖の融解温度を、ホルムアミド1パーセント当たり、0.6~0.7℃ずつ低減し、50%ホルムアミドの添加は、ハイブリダイゼーション率は低下するが、ハイブリダイゼーションを、30~45℃で実施することを可能とする。塩基対のミスマッチは、ハイブリダイゼーション率および二重鎖の熱安定性を低減する。平均で、かつ、大型のプローブの場合、Tmは、塩基ミスマッチ1%当たり、約1℃ずつ低下する。Tmは、ハイブリッド体の種類に応じて、以下の式:
1)DNA間ハイブリッド体(MeinkothおよびWahl、Anal. Biochem.、138巻:2
67~284頁、1984年):
=81.5℃+16.6×log10[Na+0.41×[G/C%]-500×[L-1-0.61×ホルムアミド%;
2)DNA-RNAハイブリッド体またはRNA間ハイブリッド体:
=79.8℃+18.5(log10[Na)+0.58(G/C%)+11.8(G/C%-820/L
3)オリゴ-DNAハイブリッド体またはオリゴ-RNAハイブリッド体:
<20ヌクレオチドの場合:T=2(l);
20~35ヌクレオチドの場合:T=22+1.46(l);
または他の一価カチオンの場合、0.01~0.4Mの範囲内に限り正確である
30%~75%の範囲内のGC%に限り正確である
L=塩基対単位の二重鎖の長さ
オリゴ、オリゴヌクレオチド;l=プライマーの有効長=2×(G/Cの数)+(NTの数)
を使用して計算することができる。
【0116】
ハイブリダイゼーション条件のほかに、ハイブリダイゼーションの特異性はまた、ハイブリダイゼーション後洗浄の機能にも依存することが典型的である。非特異的ハイブリダイゼーションから生じるバックグラウンドを除去するため、試料を、希釈塩溶液で洗浄する。このような洗浄の最重要因子は、最終洗浄溶液のイオン強度および温度を含む:塩濃度が低く、洗浄温度が高いほど、洗浄の厳密性は上昇する。洗浄条件は、ハイブリダイゼーションの厳密性で、またはこれを下回るように実施することが典型的である。陽性のハイブリダイゼーションは、バックグラウンドの少なくとも2倍のシグナルをもたらす。一般に、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ手順または遺伝子増幅検出手順に適する厳密性条件は、上記で明記した通りである。また、より高度な厳密性の条件も選択することができ、より低度な厳密性の条件も選択することができる。当業者は、洗浄時に変更することができ、厳密性条件を維持する場合もあり、変化させる場合もある、多様なパラメータに精通している。
【0117】
例えば、50ヌクレオチドより長いDNAハイブリッド体に典型的な厳密な条件(また、高厳密性のハイブリダイゼーション条件とも称する)は、1倍濃度のSSC中65℃におけるハイブリダイゼーションまたは1倍濃度のSSCおよび50%のホルムアミド中42℃におけるハイブリダイゼーションに続く、0.3倍濃度のSSC中65℃における洗浄を包摂する。ハイブリッド体の長さとは、ハイブリダイズする核酸について予測される長さである。配列が公知の核酸をハイブリダイズさせる場合、ハイブリッド体の長さは、配列をアライメントし、本明細書で記載される保存的領域を同定することにより決定することができる。1倍濃度のSSCとは、0.15MのNaClおよび15mMのクエン酸ナトリウムであり、ハイブリダイゼーション溶液と、洗浄液とは併せて、5倍濃度のデンハルト試薬、0.5~1.0%のSDS、100μg/mlの変性させ、断片化させた、サケ精子DNA、0.5%のリン酸ナトリウムを含みうる。
【0118】
厳密性のレベルを規定する目的では、Sambrookら(2001年)、Molecular Cloning: a laboratory manual、3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、CSH、New York;またはCurrent Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons
、N.Y.(1989年および毎年の改訂)を参照することができる。オリゴヌクレオチドは、例えば、目視により検出可能な標識で標識することができる。目視により検出可能な標識の例は、コロイド状金属ゾル粒子、ラテックス粒子、または繊維色素粒子を含む。コロイド状金属ゾル粒子の例は、金コロイド粒子である。
【0119】
本発明のキットは、上記のオリゴヌクレオチド(i)、(ii)、(iii)、および(iv)の任意の組合せ、例えば、(i)+(ii)、(ii)+(iii)、(iii)+(iv)、(i)+(iii)、(i)+(iv)、(ii)+(iv)、または(i)+(ii)+(iii)、(i)+(ii)+(iv)、(i)+(iii)+(iv)、(ii)+(iii)+(iv)、または(i)+(ii)+(iii)+(iv)を含みうる。オリゴヌクレオチド(ii)が存在する場合、オリゴヌクレオチド(i)もまた存在することが好ましい。
【0120】
他の実施形態では、本発明のキットは、上記のオリゴヌクレオチド(i)~(vii)の任意の組合せ、例えば、
(i)(任意選択で、+(ii))+(iii);
(i)(任意選択で、+(ii))+(iv)(任意選択で、+(vi)、および/または(vii);
(i)(任意選択で、+(ii))+(iii)+(iv)(任意選択で、+(vi)、および/または(vii);
(v)+(iii);
(v)+(iv)(任意選択で、+(vi)、および/または(vii);
(v)+(iii)+(iv)(任意選択で、+(vi)、および/または(vii);
(iii)+(iv)(任意選択で、+(vi)、および/または(vii);
(iii)+(v);
(iv)+(vi)、および/または(vii)
を含みうる。
【0121】
本発明のキットは、penAモザイク遺伝子のA501位および/もしくはA516位;gyrA遺伝子のS91位および/もしくはD95位;または23SリボソームRNAのC2611位および/もしくはA2059位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むN.gonorrhoeae核酸を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含みうる。
【0122】
本発明のキットは、penAモザイク遺伝子のF504位および/もしくはA510位、ならびに、任意選択で、penAモザイク遺伝子のA501位および/もしくはA516位;gyrA遺伝子のS91位および/もしくはD95位;または23SリボソームRNAのC2611位および/もしくはA2059位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むNeisseria gonorrhoeae核酸を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含みうる。
【0123】
本発明のキットは、penAモザイク遺伝子のF504位および/またはA510位、ならびに、任意選択で、penAモザイク遺伝子のA501位および/またはA516位;penA非モザイク遺伝子のA501位;gyrA遺伝子のS91位および/またはD95位;23SリボソームRNAのC2611位および/またはA2059位、ならびに、任意選択で、mtrRプロモーターの-10~-35位および/またはmtrR遺伝子のG45位をコードする野生型ヌクレオチド配列を含むNeisseria gonorrhoeae核酸を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーをさらに含みうる。
【0124】
Neisseria gonorrhoeae株LM306についての、ペニシリン結合性タンパク質2(penA)遺伝子の配列であって、NCBI GenBank受託番号:M32091(version M32091.1;Spratt、Nature(1988年)、332巻(6160号)、173~176頁)に基づく配列、ならびに遺伝子によりコードされるアミノ酸配列を、下記に提示する。その突然変異が抗微生物耐性と関連する保存的ヌクレオチド位置、およびそれらの対応するコードアミノ酸配列を、下線を付し、太字で示し、強調する。
ペニシリン結合性タンパク質2(penA)遺伝子:ヌクレオチド配列(NCBI受託:M32091;Version M32091.1;GI 150278)(配列番号17)
【化1-1】
【化1-2】

ペニシリン結合性タンパク質2(penA)遺伝子:タンパク質配列(NCBI受託:M32091;Version M32091.1;GI 150278;protein
id:AAA25463.1)(配列番号18)
【化2】
【0125】
Neisseria gonorrhoeae株FA1090についての、gyrA遺伝子、およびmtrR遺伝子、ならびに23SリボソームRNAの対立遺伝子の配列であって、NCBI基準配列:NC_002946.2(locus NC_002946;GenBank:AE004969.1)に基づく配列、ならびにgyrA遺伝子およびmtrR遺伝子によりコードされるアミノ酸配列を、下記に提示する。その突然変異が抗微生物耐性と関連する保存的ヌクレオチド位置、およびそれらの対応するコードアミノ酸配列(該当する場合)を、下線を付し、太字で示し、強調する。
gyrA遺伝子:ヌクレオチド配列(NCBI GeneID:3282891;Gene symbol:NGO0629)(配列番号19)
【化3-1】
【化3-2】

gyrA遺伝子:タンパク質配列(GenBank受託番号:AAW89357)(配列番号20)
【化4】

23S rRNA対立遺伝子1ヌクレオチド配列(NCBI GeneID:3370843;Gene symbol:NGO_r02)(配列番号21)
【化5-1】
【化5-2】

23S rRNA対立遺伝子2ヌクレオチド配列(NCBI GeneID:3370844;Gene symbol:NGO_r05)(配列番号22)
【化6-1】
【化6-2】
【化6-3】

23S rRNA対立遺伝子3ヌクレオチド配列(NCBI GeneID:3370845;Gene symbol:NGO_r08)(配列番号23)
【化7-1】
【化7-2】

23S rRNA対立遺伝子4ヌクレオチド配列(NCBI GeneID:3370846;Gene symbol:NGO_r11)(配列番号24)
【化8-1】
【化8-2】

mtrR遺伝子:ヌクレオチド配列(NCBI GeneID:3281546;Gene symbol:NGO1366)(配列番号25)
【化9】

mtrR遺伝子:タンパク質配列(GenBank受託番号:AAW90014)(配列番号26)
【化10-1】
【化10-2】

Neisseria gonorrhoeae株FA19のmtrRプロモーター領域
【化11】
【0126】
上記のmtrRプロモーター領域配列(配列番号27)では、-10および-35におけるヘキサマーを、ボックス内に示し、13塩基対の逆位リピートを、下線を付して示し、単一の「A」ヌクレオチド欠失の位置を、強調して示す(Zarantonelliら、Antimicrobial Agents and Chemotherapy、1999年、43巻(10号):2468~2472頁)。
【実施例0127】
(実施例1)
セファロスポリンについての感受性検査
penA遺伝子内の複数の突然変異が、淋病における広域スペクトルセファロスポリン耐性に関与しており、これらのうちで著明な関与性を有するのは、penAモザイク対立遺伝子であると考えられている。モザイクpenAは、Neisseria gonorrhoeaeにより、遺伝子形質転換を介して獲得された可能性が高い、多数の異なるNeisseria属種に由来する複数の領域を含む。30を超えるモザイク対立遺伝子が、循環中に存在し、これらの各々は、突然変異の数および識別が、野生型のGonorrhoea配列と比べて変動している。しかし、ある特定の突然変異は、大部分のpenAモザイク対立遺伝子の間で保存的である。
【0128】
ESCに対する感受性の決定は、耐性でない患者を、セフィキシムまたはセフトリアキソン単独で処置することを可能とし、これにより、著明な数の患者に、さらなる処置選択肢をもたらすかまたは単剤療法を可能とする。モザイクpenAが、セフィキシム耐性の発生における、唯一の著名な決定因子であると考えられるが、耐性を決定的に付与する、単一のモザイク対立遺伝子は存在しない。しかし、本発明者らは、野生型penA配列を伴う患者を同定することにより、セフィキシム処置に対して明確に感受性である、全ての患者を同定することが可能であることを察知している。
【0129】
セフトリアキソン耐性の機構は、セフィキシムについての機構より著明に複雑である。セフィキシムと同様に、penAモザイク対立遺伝子の存在は、耐性の発生における主要な因子である。30を超えるpenAモザイク対立遺伝子のうちのいずれか1つの存在が、耐性を確保するわけではなく、むしろ、耐性は、penA遺伝子、mtrR遺伝子、およびporB遺伝子における、複雑な相乗作用突然変異に依存する。しかし、現在、高レベルのセフトリアキソン耐性を伴うと同定されている、全てのGonorrhoea株は、モザイクpenAを有する。したがって、本発明者らは、野生型penAを伴う患者の同定が、セフトリアキソンで効果的に処置されうる全ての患者の決定を可能とすることを察知している。
【0130】
penAモザイク対立遺伝子には、著明な多様性が存在する。現在のところ、30を超える異なる配列が同定されている。可能な限り多くの症例において、野生型penA遺伝子を検出するため、突然変異が大部分のpenAモザイク対立遺伝子の間で保存的な野生型残基をターゲティングするオリゴヌクレオチドを使用する。これは、野生型の特異的な検出を可能とし、Gonorrhoea突然変異体に対する交差反応を防止する。
【0131】
図1Aは、野生型対立遺伝子およびモザイク対立遺伝子の両方を含む、100を超えるpenAヌクレオチド配列についてのアライメントを示す。垂直方向の直線は、モザイク対立遺伝子内で突然変異している位置を指し示す。F504L突然変異およびA510V突然変異は、ほぼ全てのモザイク対立遺伝子内に存在するが、A501突然変異およびA516突然変異は、Gonorrhoea株のうちの、より小さなサブセット内に存在する。
【0132】
図1Bは、突然変異が、大部分のpenAモザイク対立遺伝子内に存在する、図1Aで示した領域の野生型ヌクレオチド配列を示す。突然変異の箇所に下線を付す。これは、突然変異が大部分のpenAモザイク対立遺伝子内に存在する唯一の領域であるので、これは、野生型配列の特異的な検出のためにターゲティングする領域である。他の領域を検出するのでは、野生型対立遺伝子と、ある特定の突然変異体対立遺伝子との間の鑑別が可能とならないであろう。
(実施例2)
シプロフロキサシンについての感受性/耐性検査
【0133】
シプロフロキサシンなどのキノロンは、DNA代謝に要請される2つの酵素である、DNAギラーゼおよびトポイソメラーゼIVの活性を阻害することにより作用する。キノロンに対する耐性は、DNAギラーゼおよびトポイソメラーゼIV(それぞれ、gyrAおよびparC)をコードする遺伝子における、一塩基多型(SNP)の獲得を介して発生した。gyrA単独における特異的SNP(S91およびD95における)で、低~中レベルの耐性を誘発するのに十分である。高レベルの耐性は、gyrAおよびparCの両方における突然変異を要請する。
【0134】
野生型gyrAを伴う患者を同定すれば、シプロフロキサシンによる処置に対して感受性である淋病感染を伴う患者の同定が可能となるであろう。これは、患者のうちの約50%を占める可能性が高く、ESCなどの薬物の使用を、処置選択肢として、可能な限り温存しながら、廉価な抗生剤の使用を可能とするであろう。
【0135】
図2Aは、野生型配列および突然変異体配列を含む、およそ150のgyrA配列についてのアライメントを示す。垂直方向の直線は、gyrA突然変異体内で突然変異しているヌクレオチドを示す。これらは、シプロフロキサシンに対して耐性に連関する、gyrA内の唯一の突然変異であるので、これは、野生型gyrAの特異的な検出のためにターゲティングする領域である。
【0136】
図2Bは、耐性Gonorrhoea株内で突然変異している、図2Aで示した領域の野生型ヌクレオチド配列を示す。突然変異の箇所に下線を付す。この領域のターゲティングは、突然変異体株に対する交差反応を防止しながら、野生型Gonorrhoeaの特異的な検出を可能とする。
(実施例3)
マクロリド耐性についての検査(アジスロマイシン)
【0137】
Gonorrhoeaの、アジスロマイシンに対する耐性について知ることは、3つの理由:1)アジスロマイシンは、Gonorrhoea陽性患者において高頻度で見出される、Chlamydia属感染に推奨される処置であること;2)多くの先進国では、処置の成功を確保するのに、セフトリアキソンと共に、アジスロマイシンを投与すること;3)患者が、アジスロマイシン感受性Gonorrhoeaに感染しているのかどうかについて知ることにより、それをある比率の患者のために、単独で使用することを可能とし、これにより、ESCを、処置選択肢として温存しうることのために、関心の的である。
【0138】
アジスロマイシンは、50Sサブユニットの一部である、23SリボソームRNA(rRNA)に結合することから、細菌タンパク質合成の阻害をもたらすことにより作用する。アジスロマイシンに対する耐性は、3つの機構:1)23S rRNAのメチラーゼ修飾;2)細胞からの抗生剤の除去を増大させるように作用しうる、排出ポンプの過剰発現;3)23S rRNAの特定のヌクレオチドのSNPにより生じうる。
【0139】
23S rRNA配列内のSNPの結果として生じる耐性を検出することが可能なのは、核酸検査だけである。しかし、メチラーゼ修飾は、アジスロマイシン株では、極めてまれである。
【0140】
アジスロマイシン標的である23S rRNAの特異点における突然変異は、様々な程度の耐性(C2611T:低レベルの耐性;A2059G:高レベルの耐性)を結果としてもたらしうる。アジスロマイシン耐性のレベルはまた、突然変異した23S対立遺伝子の数とも連関する(Neisseria gonorrhoeaeは、23S rRNA遺伝子の4つのコピーを有する)。突然変異が、4つの対立遺伝子のうちの1つだけにおいて観察される場合、突然変異が、A2059Gであっても、観察される耐性は、低レベルであろう。しかし、単一の突然変異した対立遺伝子を伴う株は、処置に対して感受性であっても、急速に、高レベルの耐性を発生させるであろう。
【0141】
アジスロマイシンによる処置に対して「高危険性」となりうる株を決定するのに、これらの点突然変異をターゲティングすることにより、異なる抗生剤を、処置のために選択することを可能としうるであろう。
図1
図2
図3
【配列表】
2024019730000001.app
【外国語明細書】