(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019740
(43)【公開日】2024-02-13
(54)【発明の名称】布状構造及びマット体
(51)【国際特許分類】
D03D 15/44 20210101AFI20240205BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20240205BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20240205BHJP
A47G 27/02 20060101ALI20240205BHJP
D04H 3/04 20120101ALI20240205BHJP
【FI】
D03D15/44
D03D1/00 Z
D03D15/283
A47G27/02 102
D04H3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122394
(22)【出願日】2022-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】000178583
【氏名又は名称】山崎産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095522
【弁理士】
【氏名又は名称】高良 尚志
(72)【発明者】
【氏名】浅見 傑
【テーマコード(参考)】
3B120
4L047
4L048
【Fターム(参考)】
3B120AA15
3B120AA19
3B120AA20
3B120AA24
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA23
4L047AB07
4L047AB09
4L047BD02
4L047BD03
4L047CB07
4L047CB08
4L047CB10
4L048AA15
4L048AA20
4L048AA24
4L048AA34
4L048AB10
4L048AB11
4L048AB26
4L048AC15
4L048BA06
4L048CA07
4L048DA15
(57)【要約】
【課題】 吸水性を有するモール状糸部の通気性及び乾燥効率において良好な布状構造及びその布状構造を有するマット体の提供。
【解決手段】 互いに隣接してほぼ並列状をなす多数の吸水性を有するモール状糸部Ma,Mb,Mc,Md....同士が、各モール状糸部の軸線方向における間隔おきの連結位置La1,Lb1,Lc1,Ld1....において、それぞれ隣接連結され、各モール状糸部の軸線方向における間隔おきの連結位置同士の間の部分である間隔部Spは、隣接モール状糸部同士においてほぼ並列状に隣接し、各モール状糸部の横断面が、間隔部よりも、連結位置の方が縮小している布状構造。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接してほぼ並列状をなす多数の吸水性を有するモール状糸部同士が、前記各モール状糸部の軸線方向における間隔おきの連結位置において、それぞれ隣接連結されてなる布状構造であって、
前記各モール状糸部の軸線方向における間隔おきの前記連結位置同士の間の部分である間隔部は、前記隣接モール状糸部同士においてほぼ並列状に隣接していることを特徴とする布状構造。
【請求項2】
上記各モール状糸部の横断面が、上記間隔部よりも、上記連結位置の方が縮小している請求項1記載の布状構造。
【請求項3】
上記の互いに隣接してほぼ並列状をなすモール状糸部同士において、並列状に隣接する間隔部同士が、布状構造の表裏方向において中心軸線位置がずれると共に布状構造の表裏方向に直交し且つ前記モール状糸部の軸線方向に直交する方向において当該間隔部の外周部において重なり合う隣接間隔部同士の構造を、
全体又は部分に有する請求項2記載の布状構造。
【請求項4】
上記各モール状糸部の軸線方向における上記連結位置同士の間隔が、上記間隔部の外径の2倍以上である請求項1乃至3の何れか1項に記載の布状構造。
【請求項5】
上記モール状糸部が、そのモール状糸部を構成するモール状糸の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように周方向に密設されて内方に向かうほど高密度状態となり且つ軸線方向に密設された状態をなす、吸水性に乏しい単繊維からなる多数の飾り糸を備え、毛管現象により内方に向かう吸水力が作用する請求項1乃至3の何れか1項に記載の布状構造。
【請求項6】
前記吸水性に乏しい単繊維は、例えば、吸水率が20℃相対湿度65%において5%以下であるか又はポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維若しくはポリアミド系繊維である請求項5記載の布状構造。
【請求項7】
上記単繊維が、0.03乃至5デニールの単繊維である請求項5記載の布状構造。
【請求項8】
上記の互いに隣接してほぼ並列状をなす多数のモール状糸部の連結位置同士の連結が、連結用の糸状体又はその他の連結用の条体により行われたものである請求項1乃至3の何れか1項に記載の布状構造。
【請求項9】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の布状構造を有するマット体。
【請求項10】
上記布状構造の裏側がシート体により覆われていない請求項9記載のマット体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列状をなす多数の吸水性を有するモール状糸部からなる布状構造及びその布状構造を有するマット体に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2012-102438号公報には、タテ糸に90デニールから700デニールの繊度の糸を配し、タテ糸に対し約90度に配置されるヨコ糸に、糸の長さ方向において複数の色彩のパイル糸を有するシェニール糸(10)を配し、絵柄を描出するシェニール織物に関する発明が記載されている。
【0003】
また特開2007-138344号公報には、ヨコ糸が、糸の長さ方向において色彩が変化しているシェニール糸によって構成され、図柄が描出されている織物の製織法に関する発明が記載されている。
【0004】
しかしながら、それらの織物の吸水及び乾燥に関する記載は見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-102438号公報
【特許文献2】特開2007-138344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、並列状をなす多数の吸水性を有するモール状糸部からなり、そのモール状糸部の通気性及び乾燥効率において良好な布状構造及びその布状構造を有するマット体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば次のように表すことができる。
【0008】
(1) 互いに隣接してほぼ並列状をなす多数の吸水性を有するモール状糸部同士が、前記各モール状糸部の軸線方向における間隔おきの連結位置において、それぞれ隣接連結されてなる布状構造であって、
前記各モール状糸部の軸線方向における間隔おきの前記連結位置同士の間の部分である間隔部は、前記隣接モール状糸部同士においてほぼ並列状に隣接していることを特徴とする布状構造。
【0009】
(2) 上記各モール状糸部の横断面が、上記間隔部よりも、上記連結位置の方が縮小している上記(1)記載の布状構造。
【0010】
(3) 上記の互いに隣接してほぼ並列状をなすモール状糸部同士において、並列状に隣接する間隔部同士が、布状構造の表裏方向において中心軸線位置がずれると共に布状構造の表裏方向に直交し且つ前記モール状糸部の軸線方向に直交する方向において当該間隔部の外周部において重なり合う隣接間隔部同士の構造を、
全体又は部分に有する上記(2)記載の布状構造。
【0011】
(4) 上記各モール状糸部の軸線方向における上記連結位置同士の間隔が、上記間隔部の外径の2倍以上である上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の布状構造。
【0012】
(5) 上記モール状糸部が、そのモール状糸部を構成するモール状糸の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように周方向に密設されて内方に向かうほど高密度状態となり且つ軸線方向に密設された状態をなす、吸水性に乏しい単繊維からなる多数の飾り糸を備え、毛管現象により内方に向かう吸水力が作用する上記(1)乃至(4)の何れか1項に記載の布状構造。
【0013】
(6) 前記吸水性に乏しい単繊維は、例えば、吸水率が20℃相対湿度65%において5%以下であるか又はポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維若しくはポリアミド系繊維である上記(5)記載の布状構造。
【0014】
(7) 上記単繊維が、0.03乃至5デニールの単繊維である上記(5)又は(6)記載の布状構造。
【0015】
(8) 上記の互いに隣接してほぼ並列状をなす多数のモール状糸部の連結位置同士の連結が、連結用の糸状体又はその他の連結用の条体により行われたものである上記(1)乃至(7)の何れか1項に記載の布状構造。
【0016】
(9) 上記(1)乃至(8)の何れか1項に記載の布状構造を有するマット体。
【0017】
(10) 上記布状構造の裏側がシート体により覆われていない上記(9)記載のマット体。
【発明の効果】
【0018】
本発明の布状構造及び本発明のマット体における前記布状構造は、吸水性を有するモール状糸部の通気性及び乾燥効率において良好である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】マット体を部分的に裏返した状態の要部拡大平面図である。
【
図6】モール状糸部を糸状体により並列状に連結する工程の一部を示す模式的な要部拡大断面図である。
【
図8】マット体の製造工程の一部を示す模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[1] 本発明の実施の形態の例としてのモール状糸製マットについて、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
このモール状糸製マットMTは、互いに隣接してほぼ並列状をなす多数のモール状糸部同士Mが、前記各モール状糸部Mの中心軸線方向における間隔おきの連結位置Lにおいて、それぞれ隣接連結されてなる平面視長方形状の3つの布状構造体Fs1・Fs2・Fs3が、並列状に(各布状構造体のモール状糸部が直列状をなすように)連結されて全体として平面視長方形状をなし、その全外周縁部の外周側及び表裏をくるんで覆うように布テープNが縫い付けられたものである。
【0022】
本モール状糸製マットMTの裏側は、基布又はその他のシート体により覆われてはいない。
【0023】
このモール状糸製マットMTは、可撓性を有し、水平面上に載置することにより概ね平面状をなすものである。
【0024】
(1) モール状糸
【0025】
モール状糸部Mを構成するモール状糸MYは、ポリエステル系の複数本の糸状体からなる芯糸(図示せず)に、飾り糸fyとして0.7デニールで長さ約9mmの多数のポリエステル系単繊維(吸水率が20℃相対湿度65%において0.5%以下)を、それらの長さ方向中央部において、前記芯糸に対しほぼ直交状に保持した状態で、撚りをかけられてなるものである。
【0026】
このモール状糸MYは、飾り糸fyが、軸線に沿う芯糸を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように周方向に密設されて内方に向かうほど高密度状態となり且つ軸線方向に密設された状態をなすものであり、飾り糸の密度がモール状糸の内方に向かうほど高くなって、毛管現象により内方に向かう吸水力が作用して優れた吸水性を発揮し得ると共に、モール状糸の径方向を含む側方のクッション性が良好である。
【0027】
(2) 互いに隣接してほぼ並列状をなす多数のモール状糸部
【0028】
1本のモール状糸が一定長おきに折り返され、そのモール状糸の各折り返し部Dと次の折り返し部Dの間、並びに、始端部と最初の折り返し部Dとの間、及び、最後の折り返し部Dとそのモール状糸の末端部との間が、多数のモール状糸部Mとして互いに隣接してほぼ並列状をなす。各モール状糸部Mは、同等である。
【0029】
(3) 互いに隣接してほぼ並列状をなす多数のモール状糸部M同士は、各モール状糸部Mの軸線方向における一定間隔おきの連結位置Lにおいて、それぞれ隣接連結されて布状構造をなす。この例における連結位置L同士の一定間隔は、モール状糸部の軸線方向における間隔おきの連結位置L同士の間の部分である間隔部Sp(ほぼ円形断面)の大部分の直径(約7mm)の約2.7倍(約19mm)である。
【0030】
互いに隣接してほぼ並列状をなす多数のモール状糸部M(Ma,Mb,Mc...)同士が、各モール状糸部Mの連結位置L(La1,Lb1,Lc1....、La2,Lb2,Lc2....、La3,Lb3,Lc3....等)において、連結用のポリエステル繊維製の糸状体T(T1,T2,T3....)により、次のように(すだれを編むのに似た態様で)連結されている。
【0031】
糸状体T1により、モール状糸部Maの連結位置La1の外周を括り、続いてその糸状体T1により、モール状糸部Maに隣接するモール状糸部Mbにおける連結位置La1に隣接する連結位置Lb1を括り、続いてその糸状体T1により、モール状糸部Mbに対しモール状糸部Maと逆の側に隣接するモール状糸部Mcにおける連結位置Lb1に隣接する連結位置Lc1を括る。
【0032】
これにより、連結位置La1、連結位置Lb1、連結位置Lc1が、各モール状糸部の軸線方向に対し概ね直交する方向に接するものとすると共に、各モール状糸部において、連結位置Lの横断面(ほぼ円形断面であり直径約5mm)は、間隔部Spの横断面よりも全外周にわたり縮小したものとする。
【0033】
同時に、糸状体T2により同様に、モール状糸部Maの連結位置La2の外周を括り、続いてその糸状体T2により、モール状糸部Maに隣接するモール状糸部Mbにおける連結位置La2に隣接する連結位置Lb2の外周を括り、続いてその糸状体T2により、モール状糸部Mbに対しモール状糸部Maと逆の側に隣接するモール状糸部Mcにおける連結位置Lb2に隣接する連結位置Lc2の外周を括る。
【0034】
La3,Lb3,Lc3....等についても、、糸状体T3、T4...により同様に外周を括り、更に、モール状糸部Md、Me...についても続いて同様にすることにより、布状構造体Fs1が構成されている。布状構造体Fs2及び布状構造体Fs3も同様である。
【0035】
なお、
図8における布状構造体Fs1の右端部と布状構造体Fs2の左端部の連結位置は、それぞれの対応するモール状糸部MaとM2a,モール状糸部MbとM2b,モール状糸部McとM2c....の共通の連結位置La7,Lb7,Lc7....である。糸状体T7により、連結位置La7におけるモール状糸部MaとM2aが一括され、連結位置Lb7におけるモール状糸部MbとM2bが一括され、連結位置Lc7以下も同様に一括されることにより、布状構造体Fs1と布状構造体Fs2が連結されている。布状構造体Fs2と布状構造体Fs3も、糸状体T13により同様に処理されて同様に連結されている。
【0036】
(4) 各モール状糸部Ma,Mb,Mc,Md....の軸線方向における一定間隔おきの連結位置L同士の間の部分である間隔部Spは、互いに隣接してほぼ並列状をなすモール状糸部Ma,Mb,Mc,Md....同士においてほぼ並列状に隣接する。
【0037】
(5) 布状構造体Fs1・Fs2・Fs3における各モール状糸部の横断面(ほぼ円形断面)は、間隔部Sp(大部分が直径約7mm)よりも、間隔部Spの軸線方向両側の連結位置La2乃至Lg2等(直径約5mm)の方が全外周にわたり縮小しており、連結位置L同士が接している。なお、模式図である
図5及び8における連結位置Lは、縮小状態としては描かれてはいない。
【0038】
これらの布状構造体においては、互いに隣接してほぼ並列状をなすモール状糸部Ma,Mb,Mc,Md....同士において並列状に隣接する間隔部Sp同士が、
図7に模式的に示されるように、布状構造の表裏方向において中心軸線位置がずれる(概ね、中心軸線が表側又は裏側にやや湾曲するようにずれる)と共に布状構造の表裏方向に直交し且つ前記モール状糸部の軸線方向に直交する方向おいて当該間隔部Spの外周部において重なり合う隣接間隔部Sp同士の構造を、大部分に有し、その隣接間隔部Sp同士の間にやや間隙を有するものとなり易い。すなわち、布状構造体Fs1が水平面に沿うものとした場合、表裏方向は上下方向で、間隔部Spの中心軸線は、ほぼ水平方向となる。その場合に、大部分において、一方の間隔部Spの中心軸線位置と、隣接する他方の間隔部Spの中心軸線位置が、上下方向にずれ、ほぼ並列状に隣接する間隔部Spの外周部同士が横幅方向において概ね約1mmずつ重なり合うものとなり、両間隔部Sp間にやや間隙を有するものとなり易い。
【0039】
このモール状糸製マットMTを構成するモール状糸は、前記のように、内方に向かって優れた吸水性を発揮し得るものであるため、前記隣接間隔部Sp同士の構造の間隔部Spを構成するモール状糸部、及び、前記隣接間隔部Sp同士の構造以外の間隔部Spを構成するモール状糸部は、何れも、マット上に載った水に濡れた足などの水分が付着した対象から水分を効果的に吸収し得る。
【0040】
また、(布状構造の表裏方向において中心軸線位置がずれると共に布状構造の表裏方向に直交し且つ前記モール状糸部の軸線方向に直交する方向おいて当該間隔部Spの外周部において重なり合う)前記隣接間隔部Sp同士の構造により、両間隔部同士の飾り糸が密接して密度が高い状態となることが防がれ、表裏の通気性がより良好なものとなり、モール状糸部の乾燥効率が高まる。特に、隣接間隔部Sp間にやや間隙を有するものとなり易いことにおいて、通気性及び乾燥性の効果向上に結び付く。
【0041】
本モール状糸製マットMTは、裏側が基布又はその他のシート体により覆われたものではなく、各モール状糸部が露出している点においても、水分を吸収したモール状糸部の乾燥効率が良い。
【0042】
[2] 本発明の実施の形態を、上記以外の形態を含めて更に説明する。
【0043】
本発明の布状構造は、互いに隣接してほぼ並列状をなす多数の吸水性を有するモール状糸部同士が、前記各モール状糸部の中心軸線方向における間隔おきの連結位置において、それぞれ隣接連結されてなるものである。
【0044】
本発明の布状構造を有する布状体、マット体又はその他の物は、全体が前記布状構造からなるものとすることができる他、部分が前記布状構造であるものとすることができる。
【0045】
本発明の布状構造部分は、可撓性を有するものとすることができ、水平面上に載置することにより概ね平面状をなすものとすることができるものであることが好ましい。
【0046】
(1) モール状糸
【0047】
モール状糸部を構成し得る吸水性を有するモール状糸は、その軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように多数の飾り糸を備えたものである。
【0048】
モール状糸の好ましい態様として、前記飾り糸が、モール状糸の軸線を中心としてほぼ径方向に放射状をなすように周方向に密設されて内方に向かうほど高密度状態となり且つ軸線方向に密設された状態をなすものを挙げることができる。この場合、モール状糸の径方向を含む側方のクッション性を高めることができる。また、飾り糸が吸水性に乏しい単繊維である場合、飾り糸の密度がモール状糸の内方に向かうほど高くなって、毛管現象により内方に向かう吸水力が作用する。
【0049】
前記吸水性に乏しい単繊維は、例えば、吸水率が20℃相対湿度65%において5%以下であるか又はポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維若しくはポリアミド系繊維であるものとすることができる。前記吸水性に乏しい単繊維は、吸水性を高める上で、例えば、0.03乃至5デニールの単繊維(好ましくは3デニール以下の単繊維、より好ましくは1.5デニール以下、更に好ましくは0.8デニール以下の単繊維)とすることができる。
【0050】
吸水性を有する飾り糸を用いることによりモール状糸が吸水性を有するものとすることもできる。
【0051】
モール状糸のより具体的な例としては、芯糸に、多数の飾り糸(好ましくは一定長の飾り糸、例えば一定長の同一材質及び同一太さの飾り糸)を、その飾り糸の長さ方向中間部(好ましくは中央部)において、前記芯糸に対し横方向状(好ましくはほぼ直交状)をなすように保持したものからなるもの、例えば、その芯糸を中心として撚りをかけられてなるもの、芯糸に多数の飾り糸が保持されたものが複数本撚り合わされてなるもの、或いは、芯糸に多数の飾り糸が保持されたものが折り返されて平行状となった部分同士が撚り合わされてなるもの等を挙げることができる。前記芯糸は、飾り糸を挟んだ状態で保持し得る複数本からなるものや折り返して複数状となったものとすることができる。前記芯糸は、例えば飾り糸と同様の意味の吸水性に乏しいモノフィラメントからなる芯糸とすることができるがこれに限るものではない。
【0052】
(2) 互いに隣接してほぼ並列状をなす多数のモール状糸部の例としては、
(a) 多数本のモール状糸が、それぞれモール状糸部として互いに隣接してほぼ並列状をなすもの、
(b) 1本のモール状糸が一定長若しくは可変長おきに折り返され、そのモール状糸の始端部と最初の折り返し部との間、各折り返し部と次の折り返し部の間、及び、最後の折り返し部とそのモール状糸の末端部との間のうち、多数の部分が、それぞれモール状糸部として互いに隣接してほぼ並列状をなすもの
を挙げることができる。
【0053】
但し、本発明における互いに隣接してほぼ並列状をなす多数のモール状糸部はこれらに限るものではない。また、各モール状糸部の長さは一定とすることができ、一定でないものとすることもできる。更に、各モール状糸部は、直径、構成材料(飾り糸や芯糸等)の太さや材質、飾り糸の密度、色等において、同一又は実質上同一とすることができる他、複数種のモール状糸部を用いることもできる。
【0054】
また、上記(a)同士、(b)同士、若しくは(a)と(b)を、例えば並列状に(各布状構造体のモール状糸部が直列状をなすように)連結すること、又は、直列状に(各布状構造体のモール状糸部が並列状をなすように)連結することもできる。このような布状構造体の連結は、各布状構造体をを製造しつつ(例えば各布状構造体を構成するモール状糸部を順次隣接させてほぼ並列状に糸状体等により連結しつつ、隣り合う布状構造体をそれぞれ構成するモール状糸部同士を糸状体等により結合することにより)行うことが可能であり、各布状構造体を製造した後に行うこともできる。
【0055】
(3) 互いに隣接してほぼ並列状をなす多数のモール状糸部同士は、前記各モール状糸部の軸線方向における間隔おきの連結位置において、それぞれ隣接連結されて布状構造をなす。この布状構造は、糸を縦横に組み合わせて作られた布地である織物とは異なる。
【0056】
各モール状糸部の軸線方向における間隔おきの連結位置は、好ましくは、各モール状糸部の軸線方向における一定間隔おきの位置であるが、一定間隔おきに限るものではない。各モール状糸部の軸線方向における前記連結位置同士の間隔は、一定間隔である場合及び一定間隔でない場合を含めて、例えば当該モール状糸部の軸線方向における間隔おきの連結位置同士の間の部分である間隔部の外径の2倍以上、好ましくは2.5倍以上とすることができ、例えば5倍以下とすることができるが、これらに限るものではない。
【0057】
互いに隣接してほぼ並列状をなす多数のモール状糸部の連結位置同士の連結は、例えば、連結用の糸状体又はその他の連結用の条体により行われたものとすることができる。
【0058】
連結の例としては、例えば、連結用の糸状体T1(例えば、合成繊維糸、天然繊維糸、吸水性に乏しいもの、吸水性が少なくとも比較的高いもの等)により、モール状糸部Maの連結位置La1を括り、その糸状体T1により、モール状糸部Maに隣接するモール状糸部Mbにおける前記連結位置La1に隣接する連結位置Lb1を括る。これにより、連結位置La1と連結位置Lb1が、各モール状糸部の軸線方向に対し概ね直交する方向に接するか又は近接するものとすることができる。
【0059】
当該モール状糸部において、軸線方向における間隔おきの連結位置同士の間の部分である間隔部の横断面よりも、連結位置(例えば当該間隔部の軸線方向両側の連結位置)の横断面が縮小したものとすることもできる。連結用の糸状体等の条体を含めた連結位置の横断面についても、間隔部の横断面よりも縮小したものとすることもできる。
【0060】
糸状体T1により、互いに隣接してほぼ並列状をなす多数のモール状糸部Ma,Mb,Mc,Md....の各連結位置La1,Lb1,Lc1,Ld1....をこのように連結すると共に、それぞれのモール状糸部Ma,Mb,Mc,Md....における間隔おきの連結位置La2,Lb2,Lc2,Ld2....,La3,Lb3,Lc3,Ld3....,La4,Lb4,Lc4,Ld4....,La5,Lb5,Lc5,Ld5....等も、それぞれ糸状体T2,T3,T4,T5等により同様に連結することにより、本発明の布状構造とすることができる。
【0061】
なお、本発明の布状構造を構成する上で、互いに隣接してほぼ並列状をなす多数のモール状糸部同士の連結は、必ずしも、糸状体等の連結用の条体によってこのように連結するものに限るものではない。
【0062】
(4) 各モール状糸部の軸線方向における間隔おきの連結位置同士の間の部分である間隔部は、互いに隣接してほぼ並列状をなすモール状糸部同士においてほぼ並列状に隣接する。
【0063】
互いに隣接してほぼ並列状をなすモール状糸部同士においてほぼ並列状に隣接する間隔部同士は、互いの拘束性が比較的に低く、布状構造の表裏方向において互いの中心軸線位置がずれて、両間隔部同士の飾り糸が密接して密度が高い状態となることが防がれることや、表裏の通気性がより良好なものとなること(特に、両間隔部間にやや間隙を有するものとなること)が生じ易く、モール状糸部の乾燥効率を高める効果も生じ得る。
【0064】
モール状糸部の横断面は、ほぼ円形横断面であるとした場合におけるモール状糸部の直径において、連結位置では、間隔部の大部分の例えば10分の9以下、5分の4以下又は10分の7以下で、例えば10分の6以上であるものとすることができるが、これに限るものではない。
【0065】
このような連結位置の横断面の縮小は、
糸状体又はその他の条体により括られて連結されること又はその他の連結手段によって、
連結位置における布状構造の表側及び裏側の両方にわたるものであるものとすることができ、また、連結位置の全外周にわたり若しくは横断面全体にわたり縮小するもの
とすることができる。
【0066】
(5) 本発明の布状構造は、各モール状糸部の横断面が、上記間隔部よりも、当該間隔部の軸線方向両側の上記連結位置の方が縮小しており、
互いに隣接してほぼ並列状をなすモール状糸部同士において、並列状に隣接する間隔部同士が、布状構造の表裏方向において中心軸線位置がずれる(一方の間隔部の中心軸線位置が、隣接する他方の間隔部の中心軸線位置よりも[例えば、概ね、中心軸線が表側又は裏側にやや湾曲するように]表側又は裏側にずれる。)と共に布状構造の表裏方向に直交し且つ前記モール状糸部の軸線方向に直交する方向において当該間隔部の外周部において重なり合う(布状構造が水平面に沿うものとした場合に、平面視において、並列状に隣接する間隔部の外周部同士が重なり合う)隣接間隔部同士の構造(好ましくは、両間隔部Sp間にやや間隙を有する構造)を、
全体又は部分に有するものとすることができる。また、それ以外の並列状に隣接する間隔部同士は、例えば概ね布状構造の表裏方向において中心軸線位置がずれずに接し合うものとすることができる。
【0067】
前記隣接間隔部同士の構造の間隔部を構成する吸水性を有するモール状糸部、及び、前記隣接間隔部同士の構造以外の間隔部を構成する吸水性を有するモール状糸部は、何れも、マット上に載った水に濡れた足などの水分が付着した対象から水分を効果的に吸収し得る。
【0068】
また、前記隣接間隔部同士の構造は、両間隔部同士の飾り糸が密接して密度が高い状態となることを防ぎ、表裏の通気性をより良好なものとし、モール状糸部の乾燥効率を高める上で効果的である。特に、隣接間隔部間にやや間隙を有するものとなり易いことにおいて、通気性及び乾燥性の効果向上に結び付く。
【0069】
前記の布状構造が水平面に沿うものとした場合に、平面視において、並列状に隣接する間隔部の外周部同士が重なり合う部分は、当該間隔部の外径の、例えば4分の1以下又は5分の1以下であるものとすることができるがこれに限るものではない。
【0070】
また、上記間隔部のうち、並列状に隣接する片側又は両側の間隔部との間で、布状構造の表裏方向において中心軸線位置がずれると共に布状構造の表裏方向に直交し且つ前記モール状糸部の軸線方向に直交する方向おいて当該間隔部の外周部において重なり合うものは、全間隔部の4分の1以上であるものとすることができる。好ましくは3分の1以上、より好ましくは2分の1以上、更に好ましくは3分の2以上、一層好ましくは5分の4以上である。
【0071】
また、上記間隔部のうち、並列状に隣接する両側の間隔部との間で布状構造の表裏方向において中心軸線位置がずれると共に布状構造の表裏方向に直交し且つ前記モール状糸部の軸線方向に直交する方向おいて当該間隔部の外周部において重なり合うものが、全間隔部の4分の1以上であるものとすることができる。好ましくは3分の1以上、より好ましくは2分の1以上、更に好ましくは3分の2以上、一層好ましくは5分の4以上である。
【0072】
本発明の布状構造を有するマット体は、前記布状構造の裏側が基布又はその他のシート体により覆われていないものとすることにより、水分を吸収したモール状糸部の裏側が露出してより乾燥効率が良いものとすることができる。
【符号の説明】
【0073】
D 折り返し部
L 連結位置
La1,Lb1,Lc1...La2乃至Lg2...La7,Lb7,Lc7 連結位置
Fs1 布状構造体
Fs2 布状構造体
Fs3 布状構造体
fy 飾り糸
MY モール状糸
M モール状糸部
Ma乃至Mg モール状糸部
M2a乃至M2g モール状糸部
M3a乃至M3g モール状糸部
MT モール状糸製マット
N 布テープ
Sp 間隔部
T 糸状体
T1乃至T19 糸状体