(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019742
(43)【公開日】2024-02-13
(54)【発明の名称】金型反転装置及び金型反転方法
(51)【国際特許分類】
B21D 37/04 20060101AFI20240205BHJP
【FI】
B21D37/04 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122397
(22)【出願日】2022-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】596037194
【氏名又は名称】パスカルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134131
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 知理
(74)【代理人】
【識別番号】100092738
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】北浦 一郎
【テーマコード(参考)】
4E050
【Fターム(参考)】
4E050CA04
4E050CB03
4E050CC04
4E050CD03
4E050CD04
(57)【要約】
【課題】 構造簡単にして金型の離脱を容易とした金型反転装置の提供すること。
【解決手段】 金型2の左右両側を保持して回転することで、該金型2の上下面を反転させる保持部11を有した金型反転機1において、前記保持部11は、前記金型2の両側部に設けられた被係合部16に、係脱自在に係合する係合部22を有し、前記係合部22と被係合部16は、下降する金型2と係合して該金型2を保持し、前記反転中も係合を維持して前記金型2を保持し、反転後、前記金型2の上昇を許容するよう構成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の左右両側を保持して回転することで、該金型の上下面を反転させる保持部を有した金型反転機において、
前記保持部は、前記金型の両側部に設けられた被係合部に、係脱自在に係合する係合部を有し、
前記係合部と被係合部は、下降する金型と係合して該金型を保持し、前記反転中も係合を維持して前記金型を保持し、反転後、前記金型の上昇を許容するよう構成されている金型反転機。
【請求項2】
前記被係合部は、前記金型の左右両側面に形成された、上方及び側方に開口する第1長孔と、下方及び側方に開口する第2長孔とで構成され、
前記係合部は、前記第1及び第2長孔に左右方向から係脱自在に係合する係合ピンで構成されている請求項1記載の金型反転装置。
【請求項3】
前記係合ピンは、前記保持部に設けられたシリンダ装置のピストンピンで構成されている請求項2記載の金型反転装置。
【請求項4】
前記被係合部は、金型側面に取り付けられるアダプタプレートに設けられている請求項3記載の金型反転装置。
【請求項5】
前記保持部には、金型側面との密着を検出する検出装置が設けられている請求項4記載の金型反転装置。
【請求項6】
前記保持部は、前記反転を行う回転軸の端部に設けられ、
左右両側の保持部の前記回転軸は、同一軸心上に配置され、その一方の回転軸は、固定機枠に回転自在に設けられ、その他方の回転軸は、移動機枠に回転自在に設けられ、
前記移動機枠を前記軸心方向に移動させる移動装置が設けられている請求項5記載の金型反転装置。
【請求項7】
前記回転軸には、前記シリンダ装置や前記検出装置に接続するロータリージョイントが設けられている請求項6記載の金型反転装置。
【請求項8】
前記第1長孔は、前記回転軸の軸心を挟んだ両側の対称位置に設けられ、前記第2長孔は、前記回転軸の軸心を挟んだ両側の対称位置に設けられている請求項7記載の金型反転装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一つに記載の金型反転装置に金型を装着し、反転させ、取り外す金型反転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速打ち抜きプレス等の金型のメンテナンスのために使用される金型反転装置及び金型反転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特開平5-200455号公報(特許文献1)や特開2000-313018号公報(特許文献2)に記載の金型反転装置がある。
【0003】
この従来のものは、金型を左右両側の保持手段で着脱自在に挟持して、この保持手段を回転させることにより金型の上下面を反転させるものであった。
【0004】
そして、この保持手段は、金型に側方から接近して金型を保持し、また、反対方向に移動してその保持を解除するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-200455号公報
【特許文献2】特開2000-313018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1や2に記載のものは、金型をクレーン等で吊り持ちして、保持手段まで移動させて、左右両側から保持手段で保持し、金型を反転させた後に、金型をクレーンで吊り持ちして、反転装置から金型を取り出す際、保持手段と金型の係合解除の時に、金型が落下する恐れがあった。
【0007】
すなわち、金型をクレーン等で吊り持ちした状態で、保持手段の係合を解除する作業は熟練を要し、つり上げ力と引き抜き力の微妙な調整をしながら、作業を行う必要があった。その調整作業を失敗すると、保持手段の係合解除が困難となり、また、吊り持ち状態の金型のバランスが崩れて、金型が傾く等が生じた。
【0008】
そこで、本発明は、構造簡単にして金型の離脱を容易とした金型反転装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、次の手段を講じた。すなわち、本件発明は、金型の左右両側を保持して回転することで、該金型の上下面を反転させる保持部を有した金型反転機において、前記保持部は、前記金型の両側部に設けられた被係合部に、係脱自在に係合する係合部を有し、前記係合部と被係合部は、下降する金型と係合して該金型を保持し、前記反転中も係合を維持して前記金型を保持し、反転後、前記金型の上昇を許容するよう構成されている。
【0010】
前記被係合部は、前記金型の左右両側面に形成された、上方及び側方に開口する第1長孔と、下方及び側方に開口する第2長孔とで構成され、前記係合部は、前記第1及び第2長孔に左右方向から係脱自在に係合する係合ピンで構成されているのが好ましい。
【0011】
前記係合ピンは、前記保持部に設けられたシリンダ装置のピストンピンで構成されているのが好ましい。
【0012】
前記被係合部は、金型側面に取り付けられるアダプタプレートに設けられているのが好ましい。
【0013】
前記保持部には、金型側面との密着を検出する検出装置が設けられているのが好ましい。
【0014】
前記保持部は、前記反転を行う回転軸の端部に設けられ、左右両側の保持部の前記回転軸は、同一軸心上に配置され、その一方の回転軸は、固定機枠に回転自在に設けられ、その他方の回転軸は、移動機枠に回転自在に設けられ、前記移動機枠を前記軸心方向に移動させる移動装置が設けられているのが好ましい。
【0015】
前記回転軸には、前記シリンダ装置や前記検出装置に接続するロータリージョイントが設けられているのが好ましい。
【0016】
前記第1長孔は、前記回転軸の軸心を挟んだ両側の対称位置に設けられ、前記第2長孔は、前記回転軸の軸心を挟んだ両側の対称位置に設けられているのが好ましい。
【0017】
本発明の金型反転方法は、前記金型反転装置に金型を装着し、反転させ、取り外すものである。
【発明の効果】
【0018】
本件発明によれば、係合部と被係合部は、下降する金型と係合して該金型を保持し、前記反転中も係合を維持して前記金型を保持し、反転後、前記金型の上昇を許容するよう構成されているので、金型の離脱が簡単に行えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図6】金型反転装置における金型つり込みの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1~
図3に示す金型反転装置1は、例えば、モータコアを打ち抜く高速プレスに用いられる金型2の上下面を反転させるものである。
【0021】
この金型反転装置1は、基台3上に固定された固定機枠4と、基台3上を左右方向に移動自在に設けられた移動機枠5を有する。なお、「左右方向」とは、
図1、2における左右方向である。
【0022】
移動機枠5は、基台3に設けられたガイドレール6上を移動自在とされている。基台3の側方に、移動機枠5を左右方向に移動させる移動装置7が設けられている。この移動装置7は、エアシリンダ8(
図6参照)を有する。エアシリンダ8の伸縮動作で、移動機枠5が移動するよう構成されている。なお、移動装置7は、エアシリンダ8に限定されず、モータ駆動のスクリューネジ等で構成されたものであってもよい。
【0023】
固定機枠4及び移動機枠5には、左右方向の同一軸心上に回転軸9が回転自在に設けられている。それぞれの回転軸9の外端部には、ロータリージョイント10が設けられている。それぞれの回転軸9の内端部には、金型2を保持する保持部11が設けられている。
【0024】
固定機枠4内に、回転軸9を回転させる駆動装置12が設けられている。駆動装置12は、モータ13と、このモータ13の出力軸に設けられた駆動スプロケット14と、回転軸9に設けられた従動スプロケット15と、これら両スプロケット14,15に巻きかけられたチェーンにより構成されている。
【0025】
前記金型2は、矩形平板状を呈し、幅W、長さ(左右方向)L、厚みTを有する。金型2のこれら寸法は、各種のものがあり、その長さLに合わせて、移動機枠5が移動するよう構成されている。
【0026】
金型2の両側部に被係合部16が設けられている。この被係合部16は、この実施の形態では、金型2の側面に固定されたアダプタプレート17に形成されている。アダプタプレート17は、金型2の左右両側面に、ネジ18により取り付けられている。
【0027】
図4、5に示すものは、アダプタプレート17である。アダプタフレート17は、金型2の側面に適合する寸法とされた矩形形状のプレートである。アダプタプレート17には、ネジ18の取付穴19が、金型2の幅W方向中心を介してその両側に一対設けられている。
【0028】
前記被係合部16は、アダプタプレート17に形成された、上方及び側方に開口する第1長孔20と、下方及び側方に開口する第2長孔21とで構成されている。なお、「上下方向」とは、
図4における上下方向をいう。
【0029】
第1長孔20及び第2長孔21は、金型2の幅W方向中心を介してその両側にそれぞれ一対設けられている。
図4における第1長孔20の半円弧状底部の中心と、及び、第2長孔21の半円弧状頂部の中心は、金型2の幅W方向中心線上に位置している。
【0030】
図6に示すように、前記保持部11に、前記被係合部16に係脱自在に係合する係合部22が設けられている。
【0031】
係合部22は、前記第1長孔20及び第2長孔21に左右方向から係脱自在に係合する係合ピン23で構成されている。この係合ピン23は、保持部11に設けられたシリンダ装置24のピストンピンで構成されている。シリンダ装置24は、エアシリンダからなり、前記ロータリージョイント10からエアが吸排気される。
【0032】
係合ピン23は、第1長孔20に係合する第1ピン23aと、第2長孔21に係合する第2ピン23bが、回転軸の回転中心を挟んでその両側の対称位置に設けられている。
【0033】
図6(b)に示すように、保持部11の金型幅方向端部に、サイドガイド25が設けられ、アダプタプレート17の端面の位置決めを行う。
【0034】
図7(b)に示すように、サイドガイド25とアダプタプレート17の位置決めがされ、アダプタプレート17が、保持部11の端面に密着した状態を検出する検出装置26が、保持部11に設けられている。
【0035】
この密着検出装置26は、エアセンサにより構成され、供給されるエア圧が所定圧になれば、密着状態を検出するものである。この検出装置26に前記ロータリージョイント10を介してエアが供給される。
【0036】
図6~
図11を用いて、前記係合部22と被係合部16が、下降する金型2と係合して該金型2を保持し、金型2の反転中も係合を維持して金型2を保持し、反転後、金型2の上昇を許容するよう構成されている点を以下説明する。
【0037】
図6は、金型2の吊り込み状態を示すもので、同図(a)に示すように、金型2がクレーンによりワイヤ27に吊り下げられて、左右の保持部11,11間の上方に位置している。移動機枠5は、金型2の長さLに合わせて、エアシリンダ8により位置決めされている。同図(b)に示すように、第2ピン23bが突出し、第1ピン23aは、後退位置にある。同図(c)に示すように、アダプタプレート17の第2長孔21の下方開口部が、第2ピン23bに対向している。
【0038】
図7は、金型2を下降させて、第2長孔21の頂部に、第2ピン23bを係合させ、その後、第1ピン23aを前進させ、第1長孔20に係合する。
【0039】
図8は、エアシリンダ8を駆動して移動機枠5を金型2側に移動させて、左右両保持部11とアダプタプレート17を密着させた状態を示す。密着状態は、検出装置26により検出される。この密着状態において、金型2の反転が可能となる。
【0040】
図9は、金型反転動作の説明である。駆動装置12のモータ13の回転により、回転軸9が回転する。回転軸9の回転により保持部11も回転する。保持部11が回転すると、係合部22と被係合部16の係合により、金型2が回動して、金型の上下面が反転する。この時、移動機枠5の回転軸9も回転する。同図(c)に示すように、金型2が反転するとき、第1長孔20に係合した第1ピン23aと、第2長孔21に係合した第2ピン23bにより、金型2は保持されるので、金型2は落下することはない。反転が終了すると、第1長孔20の開口は下方を向き、第2長孔21の開口は上方を向き、
図6(c)に示す反転前の状態と上下が逆になる。
【0041】
図10は、金型引き上げ可能状態を示し、同図(b)に示すように、第2ピン23bが後退位置にあり、金型2の上方移動を許容する。金型2は、第1長孔20と第1ピン23aの係合により、落下が防止されている。
【0042】
図11は、金型引き上げの説明図である。クレーンのワイヤ27を金型2に張力を張らずに掛ける。エアシリンダ8により移動機枠5を金型密着状態を解除する方向に僅かに移動させ、かつ、ワイヤ27に張力を付与して吊り上げる。この吊り上げ作業において、金型2の傾きが生じても、金型2は、第1長孔20と第1ピン23aの係合により、落下が防止されているので、傾きを容易に修正でき、安全にかつ円滑に吊り上げることができる。
【0043】
本発明の金型反転方法の実施の形態は、上記の金型反転装置を用いて、
図6~
図11に示す手順を行うものである。
【0044】
本発明は、実施例に示したものに限定されない。例えば、金型2の側面にアダプタプレート17を設けて被係合部16を形成したものを例示したが、金型2の側面に被係合部16が形成されたものであってもよく、また、係合部22は凸部で被係合部16は凹部で形成されたものを例示したが、凹凸係合を反対にして、凹部を保持部11に出没自在に設けたものであっても良い。
【0045】
本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 金型反転装置
2 金型
3 基台
4 固定機枠
5 移動機枠
6 ガイドレール
7 移動装置
8 エアシリンダ
9 回転軸
10 ロータリージョイント
11 保持部
12 駆動装置
13 モータ
14 駆動スプロケット
15 従動スプロケット
16 被係合部
17 アダプタプレート
18 ネジ
19 取付穴
20 第1長孔
21 第2長孔
22 係合部
23 係合ピン
23a 第1ピン
23b 第2ピン
24 シリンダ装置
25 サイドガイド
26 密着検出装置
27 ワイヤ
W 金型の幅
L 金型の長さ
T 金型の厚み