IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小林 博の特許一覧

特開2024-19746グラフェン接合体同士の間隙にグラフェンの集まりを析出させ、該グラフェンの集まりの摩擦圧接によって、グラフェン接合体同士を接合させ、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を製造する方法
<>
  • 特開-グラフェン接合体同士の間隙にグラフェンの集まりを析出させ、該グラフェンの集まりの摩擦圧接によって、グラフェン接合体同士を接合させ、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を製造する方法 図1
  • 特開-グラフェン接合体同士の間隙にグラフェンの集まりを析出させ、該グラフェンの集まりの摩擦圧接によって、グラフェン接合体同士を接合させ、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を製造する方法 図2
  • 特開-グラフェン接合体同士の間隙にグラフェンの集まりを析出させ、該グラフェンの集まりの摩擦圧接によって、グラフェン接合体同士を接合させ、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を製造する方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019746
(43)【公開日】2024-02-13
(54)【発明の名称】グラフェン接合体同士の間隙にグラフェンの集まりを析出させ、該グラフェンの集まりの摩擦圧接によって、グラフェン接合体同士を接合させ、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/194 20170101AFI20240205BHJP
【FI】
C01B32/194
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122402
(22)【出願日】2022-07-31
(71)【出願人】
【識別番号】512150358
【氏名又は名称】小林 博
(72)【発明者】
【氏名】小林 博
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB07
4G146AD19
4G146AD20
4G146AD22
4G146AD23
4G146CB01
4G146CB10
4G146CB19
4G146CB33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を製造する方法を提供する。
【解決手段】グラフェンの集まり3をメタノールに分散した懸濁液と、グラフェン接合体4の集まりを混合し、混合物を容器に注入する。容器に3方向の振動加速度を繰り返し加え、面を上にしてグラフェンの集まりを平面状に並ばせ、また、面を上にしてグラフェン接合体の集まりを平面状に並ばせる。この後、メタノールを気化させ、容器内のグラフェン接合体の集まりを圧縮する。これによって、グラフェン接合体同士の間隙を埋め尽くしたグラフェンの集まりが、グラフェン接合体に摩擦圧接し、また、グラフェン同士が摩擦圧接し、摩擦圧接したグラフェンの集まりを介して、グラフェン接合体同士が接合され、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体が形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェン接合体同士の間隙にグラフェンの集まりを析出させ、該グラフェンの集まりの摩擦圧接によって、グラフェン接合体同士を接合させ、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を製造する方法は、
グラフェンの集まりをメタノールに分散した懸濁液を作成し、グラフェン接合体の集まりを、前記グラフェンの集まりの重量より多い重量として秤量し、該グラフェン接合体の集まりを、前記懸濁液に混合して第一の混合物を作成する第一の工程と、
前記第一の混合物の一部を容器に注入し、該容器に、左右、前後、上下の3方向の0.3-0.5Gからなる振動加速度を、各々の方向に順番に繰り返し加え、最後に、0.3-0.5Gからなる上下方向の振動加速度を加える、これによって、前記グラフェンの集まりが前記メタノールを介して面を上にして平面状に並ぶとともに、前記グラフェン接合体の集まりも前記メタノールを介して面を上にして平面状に並び、該グラフェンの集まりと、該グラフェン接合体の集まりとが、ランダムにメタノール中で積層して、メタノール中に分散した第二の混合物を作成する第二の工程と、
前記容器を前記メタノールの沸点に昇温し、該容器から前記メタノールを気化させ、前記面を上にして平面状に並んだグラフェンの集まりと、前記面を上にして平面状に並んだグラフェン接合体の集まりが、互いに重なり合ってランダムに積層し、前記全てのグラフェン接合体同士の間隙が前記グラフェンの集まりで埋め尽くされた第三の混合物が、前記容器の底面に形成される第三の工程と、
前記第三の混合物の表面全体を板材で覆い、該板材の表面全体を均等に圧縮し、前記第三の混合物の表面全体を均等に圧縮する、これによって、前記全てのグラフェン接合体同士の間隙を埋め尽くした前記グラフェンの集まりが、前記グラフェン接合体に摩擦圧接するとともに、前記グラフェン同士が摩擦圧接し、前記全てのグラフェン接合体同士の間隙が、前記摩擦圧接したグラフェンの集まりで埋め尽くされ、該摩擦圧接したグラフェンの集まりを介して、前記グラフェン接合体同士が接合され、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体が前記容器の底面に該底面の形状として形成される第四の工程と、
前記容器の底面の5-9個所に、0.3-0.5Gからなる衝撃加速度を断続的に繰り返し加え、該容器の底面に形成された前記グラフェン接合体を、該容器の底面から引き剥がし、該グラフェン接合体を取り出す第五の工程とからなり、
前記した5つの工程における全ての処理を順番に連続して実施することで、グラフェン接合体同士の間隙にグラフェンの集まりを析出させ、該グラフェンの集まりの摩擦圧接によって、グラフェン接合体同士が接合され、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体が製造される方法。
【請求項2】
請求項1に記載したグラフェンの集まりがメタノールに分散した懸濁液を作成する方法は、
2枚の平行平板電極からなる電極板対の一方の平行平板電極を容器に配置させ、該一方の平行平板電極の表面に、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりを平坦に引き詰め、さらに、前記容器にメタノールを注入し、前記一方の平行平板電極と前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりを、前記メタノール中に浸漬させる、さらに、前記電極板対を構成する他方の平行平板電極板を、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりを介して、前記一方の平行平板電極の上に重ね合わせ、前記2枚の平行平板電極からなる電極板対を前記メタノール中に浸漬させる、この後、該電極板対の間隙に、前記鱗片状黒鉛粒子ないしは前記塊状黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる基底面の層間結合を破壊させることができる大きさからなる直流の電位差を印加する、これによって、該直流の電位差の大きさを前記電極板対の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりに印加され、該電界の印加によって、前記鱗片状黒鉛粒子ないしは前記塊状黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の全てが同時に破壊され、前記電極板対の間隙に前記基底面からなるグラフェンの集まりが析出する、この後、前記電極板対の間隙を拡大し、さらに、該電極板対をメタノール中で傾斜させ、さらに、前記容器に左右、前後、上下の3方向の0.2-0.3Gからなる振動加速度を、各々の方向に順番に加え、前記グラフェンの集まりを、前記電極板対の間隙から前記メタノール中に移動させる、この後、前記容器から前記電極板対を取り出す、
前記した全ての処理を順番に連続して実施することで、グラフェンの集まりがメタノールに分散した懸濁液が作成される方法。
【請求項3】
請求項1に記載したより面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を製造する方法は、
請求項1に記載したグラフェン接合体の集まりが、同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体であって、該同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体を、請求項1に記載したグラフェン接合体の集まりとして用い、請求項1に記載した製造方法に従って、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を製造する方法。
【請求項4】
請求項3に記載した同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体を同時に製造する方法は、
同一の形状と、同一の深さとからなる複数の溝を容器に形成し、請求項1に記載したグラフェンの集まりがメタノールに分散した懸濁液の同じ量を、前記複数の溝の各々の溝に注入し、さらに、前記容器に対し、左右、前後、上下の3方向の0.3-0.5Gからなる振動加速度を、各々の方向に順番に繰り返し加え、最後に、0.3-0.5Gからなる上下方向の振動加速度を加える、これによって、前記溝に注入した懸濁液における前記メタノール中に分散されたグラフェンの集まりが、前記メタノール中で面を上にして平面状に並ぶとともに、該平面状に並んだグラフェンの集まりが、前記メタノールを介して互いに重なり合ったグラフェンの集まりが前記溝内に形成される第一の工程と、
前記容器を前記メタノールの沸点に昇温し、前記複数の溝から前記メタノールを気化させ、該複数の溝の底面に、前記平面状に並んだグラフェンの集まりが、互いに重なり合って積層した該グラフェンの集まりを形成させる、この後、前記容器の複数の溝の側面と接触する位置に形成される第一の特徴と、前記複数の溝の深さより長さが長い同一の長さを持つ第二の特徴と、前記複数の溝と同じ数からなる第三の特徴とを兼備する複数の突起を形成した板材を用意し、該板材の複数の突起が、前記容器の複数の溝に挿入するように、該板材を前記容器の上に重ね合わせ、該板材の前記突起が形成された反対側の表面の全体を均等に圧縮し、前記複数の突起の先端が、前記複数の溝の底面に形成された前記平面状に並んだグラフェンの集まりが互いに重なり合って積層した該グラフェンの集まりを圧縮する、これによって、該平面状に並んで重なり合ったグラフェン同士が、該重なり合った面で摩擦圧接し、該摩擦圧接で接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が前記複数の溝の底面に、該底面の形状として形成される第二の工程と、
前記複数の溝が形成された前記容器の底面に該当する複数の部位に、0.3-0.5Gからなる衝撃加速度を断続的に繰り返し加え、前記複数の溝の底面に形成された前記グラフェン接合体を、該複数の溝の底面から引き剥がし、該グラフェン接合体を前記複数の溝から取り出す第三の工程とからなり、
前記した3つの工程における全ての処理を順番に連続して実施することで、同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体が複数の溝に同時に製造される、同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体を同時に製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全てのグラフェン接合体同士の間隙を、面を上にして析出したグラフェンの集まりで埋め尽くし、この後、グラフェン接合体の集まりを圧縮し、グラフェンの集まりをグラフェン接合体に摩擦圧接させるとともに、グラフェン同士が摩擦圧接し、該グラフェンの集まりの摩擦圧接を介してグラフェン接合体同士が接合され、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を形成させる発明である。
つまり、グラフェンの厚みが0.332nmと極めて薄いため、グラフェンの厚みに対する面積の比率であるアスペクト比が極めて大きい。また、グラフェンの面同士を接合したグラフェン接合体は、グラフェン接合体の厚みの増大に比べ、グラフェン接合体の面積の増大が著しく大きくなるため、厚みに対する面積の比率であるアスペクト比がさらに大きい。いっぽう、グラフェンの大きさは、グラフェン接合体の大きさより著しく小さい。従って、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を形成するに当たり、グラフェン接合体同士を直接摩擦圧接するより、グラフェン接合体同士の間隙に、グラフェンの集まりが面を上にして析出させ、該グラフェンの集まりの摩擦圧接によって、グラフェン接合体同士を接合する方が容易である。
これによって、接合するグラフェン接合体の数が多くなるほど、また、接合するグラフェン接合体の面積が大きいほど、ないしは、厚みが厚いほど、接合されたグラフェン接合体の面積が大きく、ないしは、厚みが厚い。
【背景技術】
【0002】
面を上にしてグラフェン同士が接合したグラフェン接合体は、グラフェンに近い性質を持つ。また、グラフェン接合体同士を、面を上にしたグラフェンの集まりによって接合したグラフェン接合体は、グラフェンに近い性質を持つ。つまり、グラフェンの厚み方向の熱伝導率は小さく、面方向に熱が優先して伝わる。また、グラフェンの厚み方向の導電率は小さく、面方向に電子が優先して伝わる。このように、グラフェンの性質は異方性を持つ。従って、グラフェン接合体の面同士が、面同士で接合したグラフェンの集まりによって接合すれば、接合したグラフェン接合体は、全てのグラフェンが平面状に並んで接合したグラフェン接合体で構成されるため、グラフェンに近い性質を持つ。いっぽう、グラフェンの厚みが0.332nmと極めて薄く、グラフェンの厚みに対する面積の比率であるアスペクト比が極めて大きい。さらに、グラフェン同士を接合したグラフェン接合体は、接合したグラフェンの枚数に比べ、接合したグラフェンによる面積の増加の方が著しく大きくなり、グラフェン接合体のアスペクト比は、グラフェンのアスペクト比よりさらに大きい。このため、グラフェン同士を接合させる際には、面を上にしてグラフェン同士が接合する。また、グラフェン接合体同士を接合させる際に、面を上にしてグラフェン接合体同士が接合する。
ここで、グラフェンの性質を説明する。前記したように、グラフェンは異方性に基づく様々な優れた性質を持つ。つまり、グラフェンの厚みは0.332nmと極めて薄いため、グラフェンの性質は厚み方向に垂直な面方向の性質になる。
例えば、熱伝導率が1880W/mKで、金属の中で最も熱伝導率が高い銀の熱伝導率の4.5倍に相当する熱伝導率を持つ。体積固有抵抗率は1.3μΩcmで、金属の中で最も体積固有抵抗率が小さい銀の体積固有抵抗率である1.6μΩcmよりさらに小さい。融点が3000℃を超える単結晶材料で、耐熱温度が3000℃を超える。破断強度が42N/mであり、鋼の100倍を超える強度を持ち、ヤング率が1020GPaと極めて大きい強靭な素材である。酸およびアルカリと反応しないない極めて安定した物質である。いっぽう、グラフェンの面同士で接合したグラフェン接合体は、グラフェンの異方性によって、例えば、グラフェン同士が重なり合ったグラフェンの面の方向に、熱が優先して伝わり、また、グラフェンの面の方向に、電子が優先して移動する。このため、グラフェン接合体の熱伝導率はグラフェンの熱伝導率に近く、導電率はグラフェンの導電率に近い。さらに、グラフェン接合体の面同士が、面同士で接合したグラフェンの集まりによって接合したグラフェン接合体は、全てのグラフェンが平面状に並んで接合したグラフェン接合体で構成されるため、グラフェン接合体は、グラフェンの面の方向に、熱が優先して伝わり、また、グラフェンの面の方向に、電子が優先して移動する。このため、銀より優れた熱伝導性と電気導電性を持つ。
このグラフェン接合体の優れた熱伝導性と電気導電性を利用して、例えば、面積が1cm×1cmより小さく、厚みが0.1μmより薄い電極や接点として、また、例えば、面積が0.5cm×10cmで、厚みが0.1μm前後の細長い配線パターンとして用いることができる。いっぽう、グラフェンの導電性によって、グラフェン接合体は、グラフェンの体積固有抵抗率に応じた電磁波のシールド性を発揮し、電磁波遮蔽被膜として作用する。また、グラフェンの導電性によって、グラフェン接合体は、帯電防止被膜として作用する。また、グラフェンの熱伝導性によって、グラフェン接合体は、放熱被膜として作用する。さらに、グラフェン接合体の表面は、グラフェンの厚みに相当する0.332nmに過ぎない平坦度を有するため、完全な平面に近く、グラフェン接合体は、潤滑性被膜として作用する。また、グラフェンが耐食性と耐熱性とに優れているため、グラフェン接合体は、耐食性被膜や耐熱性被膜として作用する。さらに、グラフェンは、せん断弾性率が440GPaで、最も強靭な物質であるため、グラフェン接合体は、耐摩耗性被膜や非破壊性被膜として作用する。これらのグラフェン接合体からなる被膜の面積は、例えば、面積が1m×1mを超え、厚みが1μmを超える場合もある。こうした被膜を基材や部品の表面に摩擦圧接すれば、前記したグラフェン接合体の様々な性質が、基材や部品に付与できる。
前記のように、グラフェン接合体の用途が広いため、グラフェン接合体は、用途に応じた面積と厚みが必要になる。いっぽう、グラフェンのせん断弾性率が440GPaで、最も強靭な物質であるため、グラフェン接合体を切断することができない。
ところで、グラフェン接合体同士を接合し、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を形成するに当たり、グラフェン接合体同士を重ね合わせた面でグラフェン接合体同士を直接摩擦圧接させる場合は、グラフェン接合体同士が重なり合った面の比率に応じて、接合したグラフェン接合体の接合強度が変わる。従って、グラフェン接合体同士が重なり合った面の比率が高まるように、グラフェン接合体同士を重ね合わせることが必要になる。しかし、グラフェン接合体の大きさと形状にバラツキがある場合は、グラフェン接合体同士が重なり合った面の比率を高めることが困難になる。また、接合するグラフェン接合体の集まりの面積が大きくなるほど、また、厚みが厚くなるほど、グラフェン接合体の集まりを、均一に圧縮することが難しくなり、全てのグラフェン接合体を、直接摩擦圧接させることが難しくなる。
これに対し、全てのグラフェン接合体同士の間隙にグラフェンの集まりを析出させ、該全てのグラフェン接合体同士の間隙をグラフェンの集まりで埋め尽くし、この後、全てのグラフェン接合体の集まりを圧縮する。この際、グラフェンの大きさがグラフェン接合体の大きさより著しく小さいため、グラフェンの集まりが全てのグラフェン接合体に摩擦圧接し、また、グラフェン同士が摩擦圧接し、全てのグラフェン接合体同士の間隙は、摩擦圧接したグラフェンの集まりで埋め尽くされる。この結果、摩擦圧接したグラフェンの集まりを介して、全てのグラフェン接合体同士が接合される。従って、グラフェン接合体同士が重なり合った面の比率の如何に関わらず、また、接合させるグラフェン接合体の集まりの大きさと厚みとに関わらず、グラフェン接合体同士が接合できる。本発明は、こうした考えに基づく。
【0003】
ここで、本発明に関わりがある本発明者の先行出願特許を説明する。
第一の先行出願特許は、メタノール中で、黒鉛粒子の集まりにおける黒鉛結晶の層間結合を同時に破壊して、グラフェンの集まりを容器内に製造し、該容器に3方向の振動を繰り返し加え、グラフェンの扁平面同士がメタノールを介して重なり合った該グラフェンの集まりを、容器の底面に該底面の形状として形成し、この後、グラフェンの集まりの上方の平面を均等に圧縮し、グラフェン同士を同時に摩擦圧接によってグラフェン接合体を製造する方法に関わる特許である(特許文献1)。
第二の先行出願特許は、有機化合物のメタノール希釈液中にグラフェンの集まりを分散させたペーストを製造し、該ペーストを新たな容器に移し、この後、新たな容器に3方向の振動加速度を繰り返し加え、グラフェン同士を有機化合物のメタノール希釈液を介して重なり合わせ、該グラフェン同士が前記有機化合物のメタノール希釈液を介して重なり合った該グラフェンの集まりを形成する方法に関わる特許である(特許文献2)。
【0004】
本発明は、全てのグラフェン接合体同士の間隙に、グラフェンの集まりを析出させ、全てのグラフェン接合体同士の間隙を、グラフェンの集まりで埋め尽くし、グラフェン接合体の集まりを圧縮し、グラフェンの集まりをグラフェン接合体に摩擦圧接させるとともに、グラフェン同士が摩擦圧接し、該摩擦圧接したグラフェンの集まりを介して、グラフェン接合体同士が接合し、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を形成させる。
いっぽう、第一の先行出願は、容器の底面に重なり合ったグラフェンの集まりを形成し、グラフェンの集まりの上方の平面を均等に圧縮し、グラフェン同士を同時に摩擦圧接によってグラフェン接合体を製造する。このため、グラフェンの集まりの面積と厚みとが大きくなるほど、グラフェンの集まりを均等に圧縮することが困難になる。従って、製造するグラフェン接合体の大きさと厚みに制約がある。これに対し、本発明では、グラフェン接合体同士の間隙に、グラフェン接合体より面積が著しく小さく、厚みも著しく薄いグラフェンの集まりを析出させ、該グラフェンの集まりを摩擦圧接させ、グラフェン接合体同士を接合させるため、接合するグラフェン接合体の大きさと厚みに制約がない。このため、本発明は第一の先行出願に比べ、より面積が広く、より厚みが厚いグラフェン接合体が形成できる。
第二の先行出願では、有機化合物を介してグラフェン同士を重ね合わせたグラフェンの集まりからなるペーストを製造する方法に関わる。従って、第二の先行出願も、第一の先行出願と同様に、グラフェン接合体を製造するに当たり、グラフェン同士を同時に摩擦圧接することによってグラフェン接合体を製造するため、製造するグラフェン接合体の大きさと厚みに制約がある。これに対し、本発明では、グラフェンの集まりがメタノールに分散した懸濁液に、グラフェン接合体の集まりを混合し、該混合物を容器に注入し、メタノールを気化させた後に、混合物の表面全体を圧縮する。これによって、全てのグラフェン接合体同士の間隙を埋め尽くして析出したグラフェンの集まりが圧縮され、該グラフェンの集まりがグラフェン接合体に摩擦圧接し、また、グラフェン同士が摩擦圧接する。この摩擦圧接したグラフェンの集まりを介して、グラフェン接合体同士を接合される。従って、接合するグラフェン接合体の大きさは、容器の大きさで決まり、接合するグラフェン接合体の厚みは、容器に注入する混合物の量で決まる。従って、本発明は第二の先行出願に比べ、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体が形成できる。
つまり、グラフェン接合体同士を重ね合わせ、全てのグラフェン接合体同士を同時に摩擦圧接し、さらに面積が大きい、さらに厚みが厚いグラフェン接合体を製造する際に、製造するグラフェン接合体の面積が大きくなるほど、ないしは、製造するグラフェン接合体の厚みが厚くなるほど、重ね合わせるグラフェン接合体の数が多くなり、また、重ね合わせるグラフェン接合体の面積が大きくなり、全てのグラフェン接合体を均等に圧縮し、全てのグラフェン接合体を同時に摩擦圧接することが難しくなる。
これに対し、全てのグラフェン接合体同士の間隙にグラフェンの集まりを析出させ、全てのグラフェン接合体同士の間隙をグラフェンの集まりで埋め尽くし、この後、グラフェン接合体の集まりを圧縮すると、グラフェンが、グラフェン接合体より面積が著しく小さく、厚みが著しく薄いため、グラフェンの集まりが、グラフェン接合体に容易に摩擦圧接し、また、グラフェン同士が容易に摩擦圧接し、全てのグラフェン接合体同士の間隙は、摩擦圧接したグラフェンの集まりで埋め尽くされる。この結果、摩擦圧接したグラフェンの集まりを介して、グラフェン接合体同士が容易に接合される。これによって、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体が形成できる。
従って、接合するグラフェン接合体の数が多くなるほど、また、接合するグラフェン接合体の面積が大きいほど、ないしは、厚みが厚いほど、接合されたグラフェン接合体の面積が大きく、ないしは、厚みが厚い。
つまり、グラフェン接合体同士を直接摩擦圧接させる場合は、摩擦圧接されるグラフェン接合体の全ての面に圧縮応力を加える必要がある。これに対し、グラフェン接合体より著しく面積が小さく、厚みが薄いグラフェンに、圧縮応力を加えることは容易である。従って、全てのグラフェン接合体同士の間隙に、グラフェンの集まりを析出させ、該グラフェンの集まりの摩擦圧接を介して、グラフェン接合体同士を接合させることは容易である。この考えから本発明に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2019-107537
【特許文献2】特願2020-112197
【特許文献3】特許第6166860号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
2段落で説明したように、グラフェン接合体の用途が広いため、グラフェン接合体は、用途に応じて面積と厚みとが大きく異なる。また、グラフェンが最も固い物質であるため、グラフェン接合体を切断することができない。従って、面積と厚みとが異なる多くの種類のグラフェン接合体が容易に製造できれば、用途に応じた面積と厚みとを有するグラフェン接合体が選択できる。
いっぽう、本発明におけるより面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を形成するに当たっては、次の3つの課題がある。本発明が解決しようとする課題は、これら3つの課題である。
第一に、全てのグラフェン接合体同士の間隙に、グラフェンの集まりを析出させ、全てのグラフェン接合体同士の間隙を、グラフェンの集まりで埋め尽くす方法を見出す。なお、グラフェンは、グラフェン接合体同士を接合させる接合材の役割を担うため、グラフェン接合体同士の間隙に析出するグラフェンの集まりは、少なくてよい。
第二、面を上にしてグラフェンの集まりを平面状にランダムに並ばせ、また、面を上にしてグラフェン接合体の集まりを平面状にランダムに並ばせ、こうしたグラフェンの集まりと、こうしたグラフェン接合体の集まりが、ランダムに積層した混合物を作成する方法を見出す。つまり、この混合物の表面全体を均等に圧縮すると、平面状に並んだグラフェン接合体同士が圧縮され、これによって、グラフェン接合体同士の間隙に積層した平面状に並んだグラフェンの集まりが圧縮され、グラフェンがグラフェン接合体に摩擦圧接するとともに、グラフェン同士が摩擦圧接し、該摩擦圧接したグラフェンの集まりによって、グラフェン接合体同士が接合され、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体が容易に形成できる。
第三に、同一の形状と同一の厚みからなるグラフェン接合体を製造する方法を見出す。つまり、同一の形状と同一の厚みからなるグラフェン接合体同士を、摩擦圧接したグラフェンの集まりを介して接合したグラフェン接合体の集まりは、グラフェン接合体同士が重なり合う面積の割合が増えるため、接合したグラフェン接合体の集まりの機械的強度が高まる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明におけるグラフェン接合体同士の間隙にグラフェンの集まりを析出させ、該グラフェンの集まりの摩擦圧接によって、グラフェン接合体同士を接合させ、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を製造する方法は、
グラフェンの集まりをメタノールに分散した懸濁液を作成し、グラフェン接合体の集まりを、前記グラフェンの集まりの重量より多い重量として秤量し、該グラフェン接合体の集まりを、前記懸濁液に混合して第一の混合物を作成する第一の工程と、
前記第一の混合物の一部を容器に注入し、該容器に、左右、前後、上下の3方向の0.3-0.5Gからなる振動加速度を、各々の方向に順番に繰り返し加え、最後に、0.3-0.5Gからなる上下方向の振動加速度を加える、これによって、前記グラフェンの集まりが、前記メタノールを介して面を上にして平面状に並ぶとともに、前記グラフェン接合体の集まりも、前記メタノールを介して面を上にして平面状に並び、該グラフェンの集まりと、該グラフェン接合体の集まりとが、ランダムにメタノール中で積層して、メタノール中に分散した第二の混合物を作成する第二の工程と、
前記容器を前記メタノールの沸点に昇温し、該容器から前記メタノールを気化させ、前記面を上にして平面状に並んだグラフェンの集まりと、前記面を上にして平面状に並んだグラフェン接合体の集まりが、互いに重なり合ってランダムに積層し、前記全てのグラフェン接合体同士の間隙が前記グラフェンの集まりで埋め尽くされた第三の混合物が、前記容器の底面に形成される第三の工程と、
前記第三の混合物の表面全体を板材で覆い、該板材の表面全体を均等に圧縮し、前記第三の混合物の表面全体を均等に圧縮する、これによって、前記全てのグラフェン接合体同士の間隙を埋め尽くした前記グラフェンの集まりが、前記グラフェン接合体に摩擦圧接するとともに、前記グラフェン同士が摩擦圧接し、前記全てのグラフェン接合体同士の間隙は、前記摩擦圧接したグラフェンの集まりで埋め尽くされ、該摩擦圧接したグラフェンの集まりを介して、前記グラフェン接合体同士が接合され、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体が前記容器の底面に該底面の形状として形成される第四の工程と、
前記容器の底面の5-9個所に、0.3-0.5Gからなる衝撃加速度を断続的に繰り返し加え、該容器の底面に形成された前記グラフェン接合体を、該容器の底面から引き剥がし、該グラフェン接合体を取り出す第五の工程とからなり、
前記した5つの工程における全ての処理を順番に連続して実施することで、グラフェン接合体同士の間隙にグラフェンの集まりを析出させ、該グラフェンの集まりの摩擦圧接によって、グラフェン接合体同士が接合され、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体が製造される方法である。
【0008】
本発明は、5つの工程からなる。
第一の工程は、グラフェンの集まりをメタノールに分散した懸濁液を作成し、グラフェン接合体の集まりを、グラフェンの集まりの重量より多い重量として秤量し、該グラフェン接合体の集まりを、懸濁液に混合して混合物を作成する。
つまり、グラフェンの厚みは0.332nmと極めて薄いため、殆ど質量を持たない。このグラフェンの集まりを、低粘度で低密度のメタノールに混合し、メタノールを撹拌すれば、グラフェンがメタノールに分散した懸濁液が作成される。この後、グラフェン同士を接合したグラフェン接合体を、グラフェンの集まりの重量より多い重量として秤量し、懸濁液に混合して混合物を作成する。つまり、グラフェンは、グラフェン接合体同士を接合させる接合材の役割を担うため、グラフェン接合体同士の間隙を埋め尽くすグラフェンの集まりの量は、グラフェン接合体を構成するグラフェンの量より少ない。また、グラフェン同士を接合したグラフェン接合体も、殆ど質量を持たないため、グラフェン接合体の集まりを懸濁液に混合し、メタノールを撹拌すれば、グラフェン接合体は、グラフェンとともにメタノールに容易に分散する。例えば、グラフェンを10枚重ね合わせて接合したグラフェン接合体の厚みは、僅かに3.32nmである。従って、グラフェン接合体の面積が1cm×1cmであっても、グラフェン接合体の質量は極僅かである。
第二の工程は、前記した混合物の一部を容器に注入し、容器の大きさに応じて、容器に、左右、前後、上下の3方向の0.3-0.5Gからなる振動加速度を、例えば、各々の方向の振動加速度を5秒間ずつ5回繰り返して加え、この後、上下方向の振動加速度を5秒間加える。
この際、グラフェンが殆ど質量を持たず、厚みに対する面積の比率であるアスペクト比が大きいため、メタノール中に分散されたグラフェンの集まりが、3方向の振動加速度を受けると、振動加速度の方向にメタノールとともに移動するが、グラフェンのアスペクト比が大きいため、面を上にしてメタノール中を移動するのが最もグラフェンに負荷が加わらない。このため、グラフェンは、面を上にしてメタノール中を移動する。グラフェンの集まりが3方向の振動加速度を繰り返し受けることで、グラフェンの集まりは、メタノール中でランダムに平面状に並ぶ。また、グラフェン接合体も殆ど質量を持たず、厚みに対する面積の比率であるアスペクト比は、グラフェンよりさらに大きい。このため、メタノール中に分散されたグラフェン接合体も、3方向の振動加速度を受けると、振動加速度の方向にメタノールとともに移動するが、グラフェン接合体のアスペクト比が大きいため、面を上にしてメタノール中を移動するのが最もグラフェン接合体に負荷が加わらない。このため、グラフェン接合体も、面を上にしてメタノール中を移動する。グラフェン接合体の集まりが3方向の振動加速度を繰り返し受けることで、グラフェン接合体の集まりは、メタノール中でランダムに平面状に並ぶ。なお、加える振動加速度の大きさは、溝の大きさに応じて、0.3-0.5Gからなる振動加速度を加える。
つまり、グラフェンとグラフェン接合体とは、低粘度で低密度のメタノールで覆われ、メタノール中に分散している。メタノール中に分散しているグラフェンとグラフェン接合体とが注入されている容器に、3方向の振動加速度を繰り返して加えると、低粘度で低密度のメタノールが、殆ど質量を持たないグラフェンとグラフェン接合体とを伴って振動加速度の方向に移動する。いっぽう、グラフェンのアスペクト比を、厚みに対する面積の比率とすると、厚みが僅かに0.322nmであるため、アスペクト比は極めて大きい。また、グラフェン接合体は、厚みがグラフェンより厚いが、面積がグラフェンより著しく大きいため、グラフェン接合体のアスペクト比は、グラフェンのアスペクト比より著しく大きい。いっぽう、グラフェンとグラフェン接合体は、アスペクト比が大きいため、面を上にしてメタノール中を移動するのが、グラフェンとグラフェン接合体に最も負荷が加わらない。このため、グラフェンとグラフェン接合体は、面を上にしてメタノール中を移動し、繰り返し3方向の振動加速度を受けることで、グラフェンとグラフェン接合体はメタノール中でランダムに平面状に並ぶ。この結果、面を上にして平面状に並んだグラフェンの集まりと、面を上にして平面状に並んだグラフェン接合体の集まりとが、ランダムにメタノール中で積層し、かつ、メタノール中に分散した混合物が、容器に形成される。最後に、上下方向の振動加速度を加え、平面状に並んだグラフェンの集まりと、平面状に並んだグラフェン接合体の集まりとが、互いに重なり合ってメタノール中にランダムに積層した混合物が、確実に容器に形成される。なお、容器に加える振動加速度の大きさは、容器の大きさに応じて、0.3-0.5Gからなる振動加速度を加える。これによって、6段落に記載した第二の課題が解決される。
第三の工程は、容器をメタノールの沸点に昇温し、容器からメタノールを気化させ、面を上にして平面状に並んだグラフェンの集まりと、面を上にして平面状に並んだグラフェン接合体の集まりが、互いに重なり合ってランダム積層した混合物が、容器の底面に該底面の形状として形成される。いっぽう、グラフェンの大きさが、グラフェン接合体の大きさより、著しく小さいため、メタノールを気化させると、グラフェン接合体同士の間隙を埋め尽くしてグラフェンの集まりが析出する。この結果、平面状に並んだ全てのグラフェン接合体同士の間隙が、平面状に並んだグラフェンの集まりで埋め尽くされる。これによって、6段落に記載した第一の課題が解決される。
第四の工程は、容器内に形成された混合物の表面全体を板材で覆い、該板材の表面全体を均等に圧縮し、混合物の表面全体を均等に圧縮する。これによって、全てのグラフェン接合体同士の間隙を埋め尽くして析出したグラフェンの集まりが、グラフェン接合体に摩擦圧接するとともに、グラフェン同士が摩擦圧接し、グラフェン接合体同士の全ての間隙は、摩擦圧接したグラフェンの集まりで埋め尽くされる。この結果、摩擦圧接したグラフェンの集まりを介して、グラフェン接合体同士が接合され、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体が容器の底面に該底面の形状として形成される。なお、混合物の表面に存在するグラフェン接合体と、混合物の裏面に存在するグラフェン接合体との双方のグラフェン接合体も、面を埋め尽くして析出したグラフェンの集まりが、グラフェン接合体の表面に摩擦圧接するとともに、グラフェン同士が摩擦圧接し、摩擦圧接したグラフェンがグラフェン接合体の表面に摩擦圧接する。
第五の工程は、容器の底面の5-9個所に、0.3-0.5Gからなる衝撃加速度を断続的に繰り返し加え、容器の底面に形成されたグラフェン接合体を、容器の底面から引き剥がし、グラフェン接合体を取り出す。
【0009】
以上に説明した方法で形成したグラフェン接合体は、グラフェン同士が面を上にして重なり合い、重なり合ったグラフェン同士が摩擦熱で直接接合し、また、摩擦圧接したグラフェンの集まりを介して、グラフェン接合体同士が接合した。このため、グラフェン接合体は、面同士が重なり合ったグラフェンの集まりで構成されるため、2段落に記載したグラフェンに近い性質を持つ。
第一に、グラフェンが20枚重なり合って接合したグラフェン接合体の厚みは、僅かに6.64nmであり、大きさが1cm×1cmのグラフェン接合体であっても、重量は僅かである。このグラフェン接合体の10枚が、10層を形成して重なり合ったグラフェンによって接合しても、厚みは僅かに3.32nmに過ぎない。従って、グラフェン接合体同士が接合しても、重量は極めて小さい。このため、グラフェン接合体の重量は極めて小さく、殆ど質量を持たない。
第二に、グラフェン接合体が、面を上にして接合したグラフェンの集まりで構成されるため、グラフェン接合体は、重なり合ったグラフェンの面の方向に熱が優先して伝わる。このため、グラフェン接合体の熱伝導率は、グラフェンの熱伝導率に近い。つまり、グラフェンの厚み方向の熱伝導率は極めて小さく、面方向に熱が優先して伝わる。従って、グラフェン接合体は、銀より優れた熱伝導性を持つ基板として作用する。
第三に、グラフェン接合体に照射された電磁波は、重なり合ったグラフェンの面の方向に電磁波が伝わり、グラフェンの体積固有抵抗率に応じた電磁波のシールド性を発揮する。このため、銀より優れた電磁波シールド性を被膜として作用する。
第四に、厚みに対する面積の比率であるアスペクト比が極めて大きいグラフェンが、グラフェン同士が重なり合った面で強固に接合するため、グラフェン接合体の機械的強度は、グラフェンの機械的強度に近い。グラフェンの破断強度が42N/mと大きく、鋼の100倍を超える強度を持つため、極めて高い破断強度を持つ被膜として作用する。
第五に、摩擦熱でグラフェン同士が接合したグラフェン接合体の耐熱性は、グラフェンの耐熱性に近い。このため、金属の融点を超える耐熱性を持つ被膜として作用する。
第六に、グラフェン接合体の形状と面積は、混合物を注入する容器の形状に応じて自在に変えられる。いっぽう、グラフェンの大きさが、グラフェン接合体の大きさより著しく小さいため、混合物からメタノールを気化させると、全てのグラフェン接合体同士の間隙を埋め尽くして平面状に並んだグラフェンの集まりが析出する。この結果、全てのグラフェン接合体同士の間隙が、平面状に並んだグラフェンの集まりで埋め尽くされる。この後、混合物を圧縮すると、グラフェンの集まりが、全てのグラフェン接合体に摩擦圧接するとともに、グラフェン同士が摩擦圧接し、全てのグラフェン接合体同士が、摩擦圧接したグラフェンの集まりを介して接合される。従って、製造するグラフェン接合体の形状と面積に制約がない。
第七に、接合するグラフェン接合体の数が多くなるほど、また、接合するグラフェン接合体の面積が大きいほど、ないしは、厚みが厚いほど、接合されたグラフェン接合体の面積が大きく、ないしは、厚みが厚くなる。従って、本発明におけるより面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を製造するグラフェン接合体の大きさと厚みに制約がない。このため、面積と厚みとが異なる多くの種類のグラフェン接合体が容易に製造でき、用途に応じた面積と厚みとを有するグラフェン接合体が選択できる。
【0010】
7段落に記載したグラフェンの集まりがメタノールに分散した懸濁液を作成する方法は、
2枚の平行平板電極からなる電極板対の一方の平行平板電極を容器に配置させ、該一方の平行平板電極の表面に、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりを平坦に引き詰め、さらに、前記容器にメタノールを注入し、前記一方の平行平板電極と前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりを、前記メタノール中に浸漬させる、さらに、前記電極板対を構成する他方の平行平板電極板を、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりを介して、前記一方の平行平板電極の上に重ね合わせ、前記2枚の平行平板電極からなる電極板対を前記メタノール中に浸漬させる、この後、該電極板対の間隙に、前記鱗片状黒鉛粒子ないしは前記塊状黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる基底面の層間結合を破壊させることができる大きさからなる直流の電位差を印加する、これによって、該直流の電位差の大きさを前記電極板対の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、前記鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは前記塊状黒鉛粒子の集まりに印加され、該電界の印加によって、前記鱗片状黒鉛粒子ないしは前記塊状黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の全てが同時に破壊され、前記電極板対の間隙に前記基底面からなるグラフェンの集まりが析出する、この後、前記電極板対の間隙を拡大し、さらに、該電極板対をメタノール中で傾斜させ、さらに、前記容器に左右、前後、上下の3方向の0.2-0.3Gからなる振動加速度を、各々の方向に順番に加え、前記グラフェンの集まりを、前記電極板対の間隙から前記メタノール中に移動させる、この後、前記容器から前記電極板対を取り出す、
前記した全ての処理を順番に連続して実施することで、グラフェンの集まりがメタノールに分散した懸濁液が製造される方法である。
【0011】
つまり、極めて簡単な以下の処理を連続して実施すると、グラフェンの集まりがメタノールに分散した懸濁液が製造される。
最初に、2枚の平行平板電極の間隙に引き詰められた鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりを、絶縁体であるメタノール中に浸漬させ、2枚の平行平板電極間に予め決めた大きさからなる直流の電位差を印加させる。これによって、電位差を2枚の平行平板電極の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、鱗片状黒鉛粒子の集まりないしは塊状黒鉛粒子の集まりが存在する電極間隙に発生する。この電界は、前記した黒鉛粒子の全てに対し、黒鉛結晶からなる基底面の層間結合を破壊させるのに十分なクーロン力を、基底面の層間結合の担い手である全てのπ電子に同時に与える。これによって、π電子はπ軌道上の拘束から解放され、全てのπ電子がπ軌道から離れて自由電子となる。つまり、π電子に作用するクーロン力が、π軌道の相互作用より大きな力としてπ電子に与えられると、π電子はπ軌道の拘束から解放されて自由電子になる。この結果、基底面の層間結合の担い手である全てのπ電子が、π軌道上に存在しなくなり、黒鉛粒子の全てについて、黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の全てが同時に破壊される。この結果、2枚の平行平板電極の間隙に、基底面の集まり、すなわちグラフェンの集まりが瞬時に製造される。製造されたグラフェンは、不純物がなく、黒鉛結晶のみからなる真性な物質である。なお、2枚の平行平板電極がメタノール中に浸漬しているため、2枚の平行平板電極の間隙に析出したグラフェンの集まりは飛散しない。
なお、絶縁体であるメタノール中に浸漬した2枚の平行平板電極間に、電位差を印加させると、2枚の平行平板電極の間隙に電界が発生する。すなわち、メタノールは比抵抗が3MΩcm以上で、誘電率が33の絶縁体である。また、エタノールも誘電率が24からなる絶縁体である。なお、エタノールの電気導電率は7.5×10-6S/mで、鱗片状黒鉛粒子の電気伝導度が43.9S/mである。従って、エタノールは、導電体である鱗片状黒鉛粒子に比べ、電気導電度が1.7×10倍低い絶縁体である。
次に、グラフェンの集まりを、2枚の平行平板電極の間隙からメタノール中に移動させる。このため、2枚の平行平板電極の間隙を、メタノール中で拡大させ、さらに、メタノール中で傾斜させ、この後、メタノールが充填された容器に3方向の振動加速度を加える。これによって、グラフェンの集まりが、2枚の平行平板電極の間隙からメタノール中に移動する。この後、2枚の平行平板電極を容器から取り出す。この結果、容器内に、グラフェンの集まりがメタノールに分散した懸濁液が製造される。
【0012】
ここで、2枚の平行平板電極対の間隙に印加した電界によって、2枚の平行平板電極対の間隙に引き詰められた黒鉛粒子において、黒鉛粒子を形成する黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の全てが、同時に破壊される現象を説明する。
黒鉛粒子における黒鉛結晶からなる基底面を形成する炭素原子は4つの価電子を持つ。このうちの3つの価電子は、黒鉛結晶からなる基底面、すなわち、グラフェンを形成するσ電子である。このσ電子は、基底面上で隣り合う3つの炭素原子が持つσ電子と互いに120度の角度をなして共有結合し、六角形の強固な網目構造を2次元的に形成する。残り一つの価電子はπ電子であり、基底面に垂直な方向に伸びるπ軌道上に存在する。このπ電子は、基底面に垂直な上下方向で隣り合う炭素原子が持つπ電子と弱い結合力で結合し、この弱い結合力に基づいて基底面同士が層状に積層される。つまり、基底面、すなわち、グラフェンは、弱い結合力であるπ軌道の相互作用によって互いに層状に結合されている。このため、黒鉛粒子は、黒鉛結晶からなる基底面で剥がれ易い性質、すなわち、機械的な異方性を持つ。この機械的な異方性は、黒鉛粒子の潤滑性として知られている。
こうした黒鉛粒子に電界を印加させると、全てのπ電子に電界によるクーロン力が作用する。π電子に作用するクーロン力が、π電子に作用しているπ軌道の相互作用より大きな力としてπ電子に作用すると、π電子はπ軌道上の拘束から解放される。この結果、全てのπ電子がπ軌道から離れて自由電子となる。これによって、黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の担い手である全てのπ電子がπ軌道上にいなくなるため、全ての基底面の層間結合は同時に破壊される。すなわち、π電子がクーロン力Fによって黒鉛結晶の層間距離bの距離を動く際に、π電子は仕事W(W=b・F)を行う。この仕事Wが、π電子に作用する1原子当たりのπ軌道の相互作用の大きさである35ミリエレクトロンボルト (エレクトロンボルトは電子が持つエネルギーの大きさを表す単位で、1エレクトロンボルトは1.62×10-19ジュールに相当する)を超えると、π電子はπ軌道の相互作用の拘束から解放されて自由電子になる。例えば、2枚の平行平板電極対の間隙を100μmで離間させ、この電極間に10.6キロボルト以上の直流の電位差を印加させると、黒鉛結晶からなる全ての基底面の層間結合が瞬時に破壊される。このように、安価な黒鉛粒子の集まりに電界を印加するという極めて簡単な手段によって、大量のグラフェンが安価に製造できる。また、全ての基底面の層間結合が同時に破壊するため、得られる微細な物質は、確実に黒鉛結晶からなる基底面、すなわち、グラフェンである。
なお、ここで言う黒鉛粒子の集まりとは、1gから100g程度の比較的少量の黒鉛粒子の集まりを言う。つまり、鱗片状黒鉛粒子ないしは塊状黒鉛粒子は、嵩密度が0.2-0.5g/cmで、粒子の大きさが1-300ミクロンの分布を持つ微細な粒子である。従って、黒鉛粒子の集まりを2枚の平行平板電極対の間隙に引き詰めることは容易で、2枚の平行平板電極対に電位差を印加することも容易である。2枚の平行平板電極対の間隙に電位差を印加すると、黒鉛粒子が引きつめられた全ての領域に電界が発生する。この電界が、π軌道の相互作用より大きなクーロン力としてπ電子に作用し、π電子はπ軌道上の拘束から解放され、自由電子になる。この結果、黒鉛粒子における黒鉛結晶からなる基底面の層間結合の全てが同時に破壊され、2枚の平行平板電極対の間隙に、黒鉛結晶からなる基底面、すなわち、グラフェンの集まりが製造される。
ここで、グラフェンの数を算術で求める。ここでは、全ての黒鉛粒子が、直径が25ミクロンの球から構成されると仮定し、黒鉛の真密度が2.25×10kg/mであるから、黒鉛粒子の1個の重さは僅かに1.84×10-8gになる。また、黒鉛粒子の厚みの平均値が10ミクロンと仮定すると、層間距離が3.354オングストロームであるので、10ミクロンの厚みを持つ鱗片状黒鉛粒子には297,265個の基底面、すなわち、グラフェンが積層されている。従って、黒鉛結晶からなる基底面の層間結合を全て破壊することで、僅か1個の球状の黒鉛粒子から297,265個のグラフェンの集まりが得られる。このため、球状の黒鉛粒子の僅か1gの集まりについて、基底面の層間結合の全てを破壊した際に、1.62×1013個からなるグラフェンの集まりが得られる。従って、僅かな量の黒鉛粒子の集まりから、莫大な数からなるグラフェンの集まりが得られる。なお、以上に説明した黒鉛粒子の集まりからグラフェンの集まりを製造する方法は、本発明者による特許文献3に記載されている。
【0013】
7段落に記載したより面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を製造する方法は、
7段落に記載したグラフェン接合体の集まりが、同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体であって、該同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体を、7段落に記載したグラフェン接合体の集まりとして用い、7段落に記載した製造方法に従って、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体を製造する方法である。
【0014】
つまり、同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体を、7段落に記載したグラフェン接合体の集まりとして用い、7段落に記載した製造方法に従って、グラフェン接合体同士を、摩擦圧接したグラフェンの集まりを介して接合すると、グラフェン接合体同士が重なり合う面積の割合が増えるため、接合したグラフェン接合体の集まりの機械的強度が高まる。
最初に、同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体を製造する。この複数のグラフェン接合体を、7段落に記載した製造方法に従って、グラフェンの集まりの重量より多い重量として秤量し、該グラフェン接合体の集まりを、グラフェンの集まりがメタノールに分散した懸濁液に混合して混合物を作成する。
次に、7段落に記載した製造方法に従って、混合物の一部を容器に注入し、容器の大きさに応じて、容器に、左右、前後、上下の3方向の0.3-0.5Gからなる振動加速度を、例えば、各々の方向の振動加速度を5秒間ずつ5回繰り返して加え、この後、上下方向の振動加速度を5秒間加える。
この際、グラフェンが殆ど質量を持たず、アスペクト比が大きいため、グラフェンが振動加速度を受けると、面を上にしてメタノール中を移動する移動が、グラフェンに最も負荷が加わらない。このため、グラフェンの集まりが3方向の振動加速度を繰り返し受けると、メタノール中でグラフェンが面を上にして平面状にランダムに並ぶ。また、グラフェン接合体も殆ど質量を持たず、厚みに対する面積の比率であるアスペクト比がさらに大きいため、グラフェン接合体が振動加速度を受けると、面を上にしてメタノール中を移動する移動が、グラフェン接合体に最も負荷が加わらない。このため、メタノール中に分散されたグラフェン接合体も、3方向の振動加速度を繰り返し受けると、メタノール中でグラフェン接合体が面を上にして平面状にランダムに並ぶ。こうした面を上にして平面状に並んだグラフェンの集まりと、面を上にして平面状に並んだグラフェン接合体の集まりとが、ランダムにメタノール中で積層して、メタノール中に分散する。
つまり、グラフェンと同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体との双方は、低粘度で低密度のメタノールで覆われ、メタノール中に分散している。グラフェンの集まりと同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体がメタノール中に分散している容器に、3方向の振動加速度を加えると、低粘度で低密度のメタノールが、殆ど質量を持たないグラフェンとグラフェン接合体とを伴って振動加速度の方向に移動する。いっぽう、グラフェンのアスペクト比を、厚みに対する面積の比率とすると、厚みが僅かに0.322nmであるため、アスペクト比は極めて大きい。また、同一の形状と同一の厚みからなるグラフェン接合体は、厚みがグラフェンより厚いが、面積がグラフェンより著しく大きいため、グラフェン接合体のアスペクト比は、グラフェンのアスペクト比より著しく大きい。このため、グラフェンと同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体の双方は、面を上にしてメタノール中を移動する移動が、グラフェンとグラフェン接合体とに最も負荷が加わらない。このため、グラフェンとグラフェン接合体は、面を上にしてメタノール中を移動し、グラフェンとグラフェン接合体は、メタノール中でメタノールを介してランダムに平面状にランダムに並ぶ。この結果、平面状に並んだグラフェンの集まりと、平面状に並んだグラフェン接合体の集まりの双方が、互いにランダムに積層し、メタノール中に分散した混合物が、容器に形成される。この後、上下方向の振動加速度を加え、平面状に並んだグラフェンの集まりとグラフェン接合体の集まりとが、互いに重なり合ってメタノール中にランダムに積層した集まりが、確実に容器に形成される。
この後、7段落に記載した製造方法に従って、容器をメタノールの沸点に昇温し、容器からメタノールを気化させると、面を上にして平面状に並んだグラフェンの集まりと、面を上にして平面状に並んだ同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体が、互いにランダム重なり合って積層した混合物が、容器の底面に該底面の形状として形成される。いっほう、グラフェンの大きさが、グラフェン接合体の大きさより著しく小さいため、メタノールを気化させると、全てのグラフェン接合体同士の間隙を埋め尽くしてグラフェンの集まりが析出する。この結果、全てのグラフェン接合体同士の間隙が、平面状に並んだグラフェンの集まりで埋め尽くされる。
この後、7段落に記載した製造方法に従って、容器内に形成された混合物の表面全体を板材で覆い、板材の表面全体を均等に圧縮し、混合物の表面全体を均等に圧縮する。これによって、同一の形状と同一の厚みからなる全てのグラフェン接合体同士の間隙を埋め尽くして析出したグラフェンの集まりが、グラフェン接合体に摩擦圧接するとともに、グラフェン同士が摩擦圧接し、全てのグラフェン接合体同士の間隙は、摩擦圧接したグラフェンの集まりで埋め尽くされる。なお、混合物の表面に存在するグラフェン接合体と、混合物の裏面に存在するグラフェン接合体との双方も、面を埋め尽くして析出したグラフェンの集まりが、グラフェン接合体の表面に摩擦圧接するとともに、グラフェン同士が摩擦圧接し、摩擦圧接したグラフェンがグラフェン接合体を埋め尽くす。この結果、摩擦圧接したグラフェンの集まりを介して、同一の形状と同一の厚みからなる全てのグラフェン接合体同士が接合され、より面積が広く、厚みが厚いグラフェン接合体が容器の底面に該底面の形状として形成される。
なお、グラフェン接合体の集まりが、同一の形状と同一の厚みからなるグラフェン接合体の集まりである場合は、グラフェン接合体同士が重なり合う面積の割合が増えるため、接合したグラフェン接合体の集まりの機械的強度が高まる。
【0015】
13段落に記載した同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体を同時に製造する方法は、
同一の形状と、同一の深さとからなる複数の溝を容器に形成し、7段落に記載したグラフェンの集まりがメタノールに分散した懸濁液の同じ量を、前記複数の溝の各々の溝に注入し、さらに、前記容器に対し、左右、前後、上下の3方向の0.3-0.5Gからなる振動加速度を、各々の方向に順番に繰り返し加え、最後に、0.3-0.5Gからなる上下方向の振動加速度を加える、これによって、前記溝に注入した懸濁液における前記メタノール中に分散されたグラフェンの集まりが、前記メタノール中で面を上にして平面状に並ぶとともに、該平面状に並んだグラフェンの集まりが、前記メタノールを介して互いに重なり合ったグラフェンの集まりが前記溝内に形成される第一の工程と、
前記容器を前記メタノールの沸点に昇温し、前記複数の溝から前記メタノールを気化させ、該複数の溝の底面に、前記平面状に並んだグラフェンの集まりが、互いに重なり合って積層した該グラフェンの集まりを形成させる、この後、前記容器の複数の溝の側面と接触する位置に形成される第一の特徴と、前記複数の溝の深さより長さが長い同一の長さを持つ第二の特徴と、前記複数の溝と同じ数からなる第三の特徴とを兼備する複数の突起を形成した板材を用意し、該板材の複数の突起が、前記容器の複数の溝に挿入するように、該板材を前記容器の上に重ね合わせ、該板材の前記突起が形成された反対側の表面の全体を均等に圧縮し、前記複数の突起の先端が、前記複数の溝の底面に形成された前記平面状に並んだグラフェンの集まりが互いに重なり合って積層した該グラフェンの集まりを圧縮する、これによって、該平面状に並んで重なり合ったグラフェン同士が、該重なり合った面で摩擦圧接し、該摩擦圧接で接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が前記複数の溝の底面に、該底面の形状として形成される第二の工程と、
前記複数の溝が形成された前記容器の底面に該当する複数の部位に、0.3-0.5Gからなる衝撃加速度を断続的に繰り返し加え、前記複数の溝の底面に形成された前記グラフェン接合体を、該複数の溝の底面から引き剥がし、該グラフェン接合体を前記複数の溝から取り出す第三の工程とからなり、
前記した3つの工程における全ての処理を順番に連続して実施することで、同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体が複数の溝に同時に製造される、同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体を同時に製造する方法である。
【0016】
最初に、同一の底面の形状と同一の深さとからなる複数の溝を有する容器を用意し、複数の溝の各々に、7段落に記載したグラフェンの集まりがメタノールに分散した懸濁液の同じ量を注入する。なお、溝の底面に予め設定した厚みからなるグラフェン接合体を形成するのに必要な懸濁液の量を予め明らかにし、該懸濁液の同じ量を複数の溝の各々の溝に注入する。さらに、容器に対し、左右、前後、上下の3方向の0.3-0.5Gからなる振動加速度を、例えば、各々の方向の振動加速度を5秒間ずつ5回繰り返して加え、この後、上下方向の振動加速度を5秒間加える。この際、グラフェンのアスペクト比が大きいため、面を上にしてグラフェンがメタノール中を移動する移動が、グラフェンに最も負荷が加わらない。このため、3方向の振動加速度が繰り返しグラフェンの集まりに加えられることで、グラフェンの集まりは、メタノール中でグラフェンが面を上にして平面状にランダムに並ぶ。なお、加える振動加速度の大きさは、溝の大きさに応じて、0.3-0.5Gからなる振動加速度を加える。
つまり、グラフェンは、低粘度で低密度のメタノールで覆われ、メタノール中に分散している。メタノール中に分散しているグラフェンの集まりが注入されている溝に、3方向の振動加速度を加えると、低粘度で低密度のメタノールが、殆ど質量を持たないグラフェンを伴って振動加速度の方向に移動する。いっぽう、グラフェンのアスペクト比を、厚みに対する長径の比率とすると、黒鉛粒子から製造したグラフェンのアスペクト比は、3×10-9×10と極めて大きい。この際、グラフェンは、面を上にして、メタノール中を振動加速度の方向に移動する移動が、最もグラフェンに負荷が加わらない。このため、3方向の振動加速度を繰り返し受けることで、グラフェンの集まりが、メタノール中で面を上にして平面状に並ぶ。この結果、平面状に並んだグラフェンが、メタノールを介して重なり合ってランダムに積層したグラフェンの集まりが、全ての溝に形成される。最後に、上下方向の振動加速度を加え、平面状に並んだグラフェンが、メタノールを介して重なり合って積層したグラフェンの集まりが、確実に溝に形成される。これによって、平面状に並んだグラフェンがメタノールを介して重なり合って積層した該グラフェンの集まりの同じ量が、全ての溝に形成される。なお、容器に加える振動加速度の大きさは、溝の大きさに応じて、0.3-0.5Gからなる振動加速度を加える。
なお、黒鉛粒子における黒鉛結晶を破壊して製造したグラフェンは、黒鉛粒子が微細な粒子であるため、グラフェンの大きさは1-300μmである。また、グラフェンの厚みは、0.332nmと極めて薄い。従って、グラフェンのアスペクト比を、厚みに対する長径の比率とすると、アスペクト比は、前記したように、3×10-9×10と極めて大きい。このため、メタノール中に分散したグラフェンの集まりに3方向の振動加速度を加えると、最もグラフェンに負荷が加わらない面を上にしてメタノールと共に、振動加速度の方向にグラフェンが移動する。このため、3方向の振動加速度が繰り返し加わることで、グラフェンがメタノール中で面を上にして平面状に並ぶとともに、平面状に並んだグラフェンが、メタノールを介して重なり合って積層したグラフェンの集まりが、溝に形成される。
次に、容器をメタノールの沸点に昇温し、全ての溝からメタノールを気化させる。これによって、平面状に並んだグラフェンの集まりが、重なり合って積層した該グラフェンの集まりが、各々の溝に形成される。この後、複数の溝の側面と接触する位置に形成され、複数の溝の深さより長さが長く、同一の長さを持ち、複数の溝と同数からなる複数の突起を有する板材を用意する。この板材を、容器の上に重ね合わせる。さらに、板材の表面の全体を均等に圧縮し、複数の突起によって、複数の溝の底面に形成されたグラフェンの集まりを圧縮する。これによって、平面状に並んで重なり合って積層した全てのグラフェンが圧縮され、重なり合った全てのグラフェン同士が該重なり合った面で摩擦圧接し、摩擦圧接で接合したグラフェンの集まりからなるグラフェン接合体が、複数の溝の底面に、該底面の形状として同時に形成される。さらに、複数の溝が形成された容器の複数の底面に該当する部位に、衝撃加速度を、例えば、5秒間断続的に加え、複数の溝に形成されたグラフェン接合体を、複数の溝の底面から引き剥がす。なお、容器に加える衝撃加速度の大きさは、容器の大きさに応じて、0.3-0.5Gからなる振動加速度を加える。この結果、同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体が、同時に製造される。これによって、6段落に記載した第三の課題が解決される。この結果、6段落に記載した全ての課題が解決される。なお、同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体が、複数の溝の底面に、該底面の形状として同時に形成されるため、グラフェン接合体の形状は、溝の底面の形状になる。また、グラフェン接合体の厚みは、溝に注入するグラフェンの集まりがメタノールに分散した懸濁液の量によって決まる。従って、溝の底面の大きさを変えることで、また、溝に注入する懸濁液の量を変えることで、製造されるグラフェン接合体の形状とグラフェン接合体の厚みとが、自在に変えられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体を同時に製造する際に用いる100個の溝を形成した板材の正面図である。
図2】同一の形状と同一の厚みからなる100枚のグラフェン接合体を同時に製造した該グラフェン接合体の側面を模式的に表した図である。
図3】100枚のグラフェン接合体を、25枚のグラフェン接合体が1層のグラフェン接合体を形成し、該グラフェン接合体の4層を、摩擦圧接したグラフェンの集まりを介して接合したグラフェン接合体の側面を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施例1
本実施例は、10段落に記載した方法に従って、グラフェンの集まりがメタノールに分散した懸濁液を作成する。
最初に、3リットルのメタノールを、1.2m×1.2mの底面をもち、底が浅い容器に充填した。
次に、2枚の平行平板電極の間隙に電界が発生する電極の有効面積が、1m×1mである平行平板電極を用意し、2枚の平行平板電極を100μmの間隙で重ね合わせ、この間隙に黒鉛粒子を満遍なく引き詰め、メタノール中に浸漬する。なお、黒鉛粒子を粒径が25μmの球と仮定し、2枚の平行平板電極で作られる100μmの間隙に、黒鉛粒子を満遍なく引き詰めた場合、6.4×10個の黒鉛粒子が存在する。この黒鉛粒子の集まりに、10.6キロボルト以上の直流電圧を印加すると、全ての黒鉛粒子の基底面の層間結合が同時に破壊される。この際、1.9×1013個のグラフェンの集まりが得られ、用いる黒鉛粒子の集まりは、僅かに1.18gである。
このため、電界が発生する電極の有効面積が1m×1mである平行平板電極の表面に、鱗片状黒鉛粒子(例えば、伊藤黒鉛工業株式会社のXD100)の12gを重ねて引き詰めた。この平行平板電極を、メタノールが充填された容器に浸漬し、さらに、もう一方の平行平板電極を前記の平行平板電極の上に重ね合わせ、2枚の平行平板電極を100μmの間隙で離間させ、12キロボルトの直流電圧を電極間に加えた。次に、2枚の平行平板電極の間隙を拡大し、さらに、2枚の平行平板電極をメタノール中で傾斜させ、0.2Gからなる3方向の振動加速度を容器に繰り返し加え、この後、容器から2枚の平行平板電極を取り出した。
次に、作成した試料の一部を取り出し、電子顕微鏡を用いて、試料の観察と分析を行なった。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100ボルトからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる特徴を持つ。
試料の表面からの反射電子線の900-1000ボルトの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料は、厚みが極めて薄い扁平な物質であることが確認できた。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理した結果、炭素原子のみ存在した。このため、試料は、グラフェンであることが確認できた。
これによって、2枚の平行平板電極の間隙に、鱗片状黒鉛粒子の集まりを引き詰め、電極間に直流の電位差を与え、この電位差を2枚の平行平板電極対の間隙の大きさで割った値に相当する電界が、鱗片状黒鉛粒子の集まりが存在する電極間隙に発生し、この電界によって、全ての黒鉛粒子に対し、黒鉛結晶からなる基底面の層間結合を破壊させるのに十分なクーロン力を、基底面の層間結合の担い手である全てのπ電子に同時に与えられ、この結果、黒鉛結晶の層間結合の全てが同時に破壊され、黒鉛結晶からなる基底面、すなわち、グラフェンの集まりが製造できることが確認された。
【0019】
実施例2
本実施例は、15段落に記載した方法に従って、同一の形状と同一の厚みからなる複数のグラフェン接合体を同時に製造する実施例で、実施例1で製造したグラフェンがメタノールに分散した懸濁液を用い、直径が20mmの円板からなるグラフェン接合体の100枚を同時に製造する。
31cm×31cm×2cm(厚み)からなる第一の板材に、直径が20mmで、深さが10mmからなる円柱の溝を、10mmの等間隔で横方向に10個、縦方向に10個形成した。図1に第一の板材の正面図を示す。1は円柱からなる溝である。また、31cm×31cm×2cm(厚み)からなる第二の板材に、直径が20mmで、長さが15mmからなる円柱の突起を形成した。次に、100個からなる各々の溝に、実施例1で製造したグラフェンがメタノールに分散した懸濁液の0.15gずつを注入し、第一の板材に0.3Gの3方向の振動加速度を、各々の方向の振動加速度を5秒間ずつ5回繰り返して加え、この後、上下方向の振動加速度を5秒間加えた。さらに、第一の板材をメタノールの沸点に昇温し、100個の円柱の溝からメタノールを気化させた。この後、円柱の突起が設けられた第二の板材を重ね合わせ、円柱の突起が形成された部位に該当する反対側の表面に、1kgからなる100個の重りを置いて、円柱の突起の先端で、円柱の溝の底面に存在するグラフェンの集まりを圧縮した。この後、重ね合わせた第二の板材を取り外し、円柱の溝が形成された部位に相当する裏面の100か所に、0.4Gからなる衝撃加速度を3回繰り返し同時に加え、溝の底面に形成された試料を、溝の底面から引き剥がした。溝から剥がした試料の表面に、板材をかぶせ、板材に10kgの重りを置いたが、試料に変化は見られなかったので、一定の接合力で接合されている。
次に、溝の底面から剥がした試料を、実施例1で用いた電子顕微鏡を用いて観察と分析を行なった。最初に、試料の側面からの反射電子線の900-1000ボルトの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料の側面は、極めて厚みが薄い物質が積層して6.64nmの厚みを形成しているのが確認できた。次に、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理した結果、炭素原子のみが存在した。従って、試料は、グラフェンの扁平面同士が20層積層した試料であることが確認できた。図2に、グラフェンの扁平面同士が重なり合ったグラフェン接合体の側面の一部を拡大し、模式的に表した。2は重なり合ったグラフェンの集まりである。
なお、第一の板材に形成する溝を円柱形状にした。この理由は、溝の底面の形状が円になり、円は中心から端部までの距離が同一である。これに対し、四角形は中心から端部までの距離は同一でなく、角部で最も長くなる。従って、底面が円からなる溝に注入したグラフェンの集まりを圧縮すると、グラフェンの集まりが均一に圧縮されやすい。これに対し、底面が四角形からなる溝に注入したグラフェンの集まりは、同一の形状の四角柱の突起で圧縮しても、角部で同一の圧縮応力が加わりにくいため、角部に近い領域では、グラフェン同士が摩擦圧接しない恐れがある。つまり、黒鉛粒子における黒鉛結晶の基底面同士の層間結合を同時に破壊して製造したグラフェンの大きさが、1-300μmの幅である。このため、微細なグラフェンほど、角部に近い領域に存在するグラフェンが圧縮されにくくなる。このため、第一の板材に形成する溝を円柱形状にした。
【0020】
実施例3
本実施例は、実施例1で製造したグラフェンがメタノールに分散した懸濁液に、実施例2で作成したグラフェン接合体の集まりを混合し、実施例2で作成した全てのグラフェン接合体同士の間隙を、摩擦圧接したグラフェンの集まりを介して、全てのグラフェン接合体同士を接合する実施例である。
11cm×11cm×2cm(厚み)からなる容器に、10cm×10cm×1cm(深さ)からなる溝を形成した。実施例1で製造したグラフェンがメタノールに分散した懸濁液の3gを容器に注入し、さらに、実施例2で作成したグラフェン接合体の100枚を混合し、容器に0.3Gの3方向の振動加速度を、各々の方向の振動加速度を5秒間ずつ5回繰り返して加え、この後、上下方向の振動加速度を5秒間加えた。さらに、容器をメタノールの沸点に昇温し、容器からメタノールを気化させた。次に、10cm×10cm×2cm(厚み)からなる板材を用意し、該板材を容器内の試料の表面全体を覆うように被せ、この後、板材の上に10kgの重り9個を等間隔において試料を圧縮し、この後、板材を取り除き、容器の底面の等間隔なる9個所に、0.4Gからなる衝撃加速度を同時に3回繰り返し加え、容器の底面に形成された試料を底面から引き剥がした。剥がした試料の表面に、再度板材をかぶせ、板材の上に10kgの重り9個を等間隔に置いたが、試料に変化は見られなかったので、一定の接合力で接合されている。
次に、容器の底面から剥がした試料を、実施例1で用いた電子顕微鏡を用いて観察と分析を行なった。最初に、試料の側面からの反射電子線の900-1000ボルトの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料の側面は、極めて微細な物質が重なり合って1.66nmの厚みを成して積層した層が5層を形成し、極めて厚みが薄い物質が積層して6.64nmの厚みを形成している層が4層を形成し、両者の1層ずつが互いに重なり合って積層しているのが確認できた。次に、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理した結果、全ての物質が炭素原子のみが存在した。従って、試料は、実施例2で作成したグラフェン接合体の4枚が、グラフェンの集まりを介して、グラフェン接合体同士が接合した試料であることが確認できた。従って、試料の面積は100cmで、厚みは34.86nmになる。図3に、試料の側面の一部を拡大し、模式的に表した。3はグラフェンの集まりで、4はグラフェン接合体である。
また、作成した試料を2mの高さから自然落下させたが、試料に変化は見られなかった。さらに、作成した試料を4mの高さから自然落下させたが、試料に変化は見られなかった。このため、グラフェンの集まりを介して、グラフェン接合体同士が一定の接合力で接合されている。また、摩擦圧接したグラフェンの集まりも、一定の接合力で接合されている。
【0021】
実施例4
本実施例は、実施例1で製造したグラフェンがメタノールに分散した懸濁液に、実施例2で作成したグラフェン接合体の集まりの400個を混合し、実施例2で作成した全てのグラフェン接合体同士の間隙を、摩擦圧接したグラフェンの集まりを介して、全てのグラフェン接合体同士を接合する実施例である。
つまり、実施例3では、直径が20mmの円板からなるグラフェン接合体の100枚を、25枚のグラフェン接合体が1層を形成し、合計で4層を形成させて積層させた。このため、11cm×11cm×2cm(厚み)からなる容器に、10cm×10cm×1cm(深さ)からなる溝を形成した。従って、実施例3で製造したグラフェン接合体の面積は、100cmになる。
これに対し、本実施例では、直径が20mmの円板からなるグラフェン接合体の400枚を、100枚のグラフェン接合体が1層を形成し、合計で4層を形成させて積層させる。このため、21cm×21cm×2cm(厚み)からなる容器に、20cm×20cm×1cm(深さ)からなる溝を形成した。本実施例で製造するグラフェン接合体の面積は、400cmになる。このように、グラフェンの集まりをメタノールに分散した懸濁液と、グラフェン接合体の集まりとからなる混合物を注入する容器の形状によって、グラフェン接合体の大きさが変わる。
最初に、実施例2に記載した方法に従って、直径が20mmの円板からなるグラフェン接合体の100枚を4回繰り返して製造し、直径が20mmの円板からなるグラフェン接合体の400個を製造する。
次に、21cm×21cm×2cm(厚み)からなる容器に、20cm×20cm×1cm(深さ)からなる溝を形成した。実施例1で製造したグラフェンがメタノールに分散した懸濁液の12gを容器に注入し、さらに、実施例2で作成したグラフェン接合体の400枚を混合し、容器に0.4Gの3方向の振動加速度を、各々の方向の振動加速度を5秒間ずつ5回繰り返して加え、この後、上下方向の振動加速度を5秒間加えた。さらに、容器をメタノールの沸点に昇温し、容器からメタノールを気化させた。次に、20cm×20cm×2cm(厚み)からなる板材を用意し、該板材を容器内の試料の表面全体を覆うように被せ、この後、板材の上に15kgの重り9個を等間隔において試料を圧縮し、この後、板材を取り除き、容器の底面の等間隔なる9個所に、0.5Gからなる衝撃加速度を同時に3回繰り返し加え、容器の底面に形成された試料を底面から引き剥がした。剥がした試料の表面に、再度板材をかぶせ、板材の上に15kgの重り9個を等間隔に置いたが、試料に変化は見られなかったので、一定の接合力で接合されている。
次に、容器の底面から剥がした試料を、実施例1で用いた電子顕微鏡を用いて観察と分析を行なった。最初に、試料の側面からの反射電子線の900-1000ボルトの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料の側面は、極めて微細な物質が重なり合って1.66nmの厚みを成して積層した層が5層を形成し、極めて厚みが薄い物質が積層して6.64nmの厚みを形成している層が4層を形成し、両者の1層ずつが互いに重なり合って積層しているのが確認できた。次に、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理した結果、全ての物質が炭素原子のみが存在した。従って、試料は、実施例2で作成したグラフェン接合体の4枚が、グラフェンの集まりを介して、グラフェン接合体同士が接合した試料であることが確認できた。従って、試料の面積は400cmで、厚みは34.86nmになる。
【0022】
実施例3および実施例4で作成したグラフェン接合体は一例に過ぎない。つまり、グラフェン接合体の形状と面積は、グラフェンの集まりがメタノールに分散した懸濁液に、グラフェン接合体の集まりを混合し、該混合物を注入する容器の形状に応じて自在に変えられる。また、混合物からメタノールを気化させると、全てのグラフェン接合体同士の間隙を埋め尽くして平面状に並んだグラフェンの集まりが析出し、この後、混合物を圧縮すると、グラフェンの集まりが、全てのグラフェン接合体に摩擦圧接するとともに、グラフェン同士が摩擦圧接し、全てのグラフェン接合体同士が、摩擦圧接したグラフェンの集まりを介して接合される。従って、製造するグラフェン接合体の形状と面積に制約がない。
つまり、グラフェンの大きさは、グラフェン接合体より著しく小さいため、混合物からメタノールを気化させると、全てのグラフェン接合体同士の間隙が、平面状に並んだグラフェンの集まりで埋め尽くされる。また、グラフェンが極めて強靭な素材であり、グラフェンを重なり合わせたグラフェンの集まりに、過大な圧縮応力を加えても、グラフェンは破壊しない。従って、重なり合ったグラフェンに過大な圧縮応力を加えると、重なり合った部位に摩擦熱が発生し、グラフェン同士が摩擦熱で接合する。また、グラフェンがグラフェン接合体に摩擦圧接する。従って、混合物を注入する容器の形状に応じて、グラフェン接合体の形状と面積は自在に変えられるため、実施例3-4で作成したグラフェン接合体は一例に過ぎない。
【符号の説明】
【0023】
1 円柱からなる溝 2 重なり合ったグラフェンの集まり 3 グラフェンの集まり 4 グラフェン接合体
図1
図2
図3