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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001975
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】粉砕材樹脂材料の成形支援方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
B29C45/76
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100868
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小塚 誠
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AA50
4F206AP11
4F206AP14
4F206JA07
4F206JD03
4F206JL02
4F206JL03
4F206JM01
4F206JN03
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP15
4F206JP22
4F206JP30
4F206JQ16
4F206JQ88
(57)【要約】
【課題】 粉砕材樹脂材料を使用する際に、不適切なスクリュの使用を回避し、成形品質及び均質性の向上を図るとともに、成形不良を低減する。
【解決手段】 粉砕材Qcを少なくとも一部に含ませた粉砕材樹脂材料Qを、加熱筒2に内挿したスクリュ3を回転させることにより、可塑化して射出成形を行うに際し、粉砕材Qcの使用前に、当該粉砕材Qcの粒形状Qcgに対する一方向からの面積Acを計測処理するとともに、スクリュ溝Gsの深さDsに対する面積Acの相対的な大きさを示す粉砕材形状指標Kiを演算処理により求め、この粉砕材形状指標Kiの大きさが予め設定した設定値Ks以上のときは、スクリュ3が不適切であると判定処理し、当該判定処理の判定結果を少なくとも表示処理する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕材を少なくとも一部に含ませた粉砕材樹脂材料を、加熱筒に内挿したスクリュを回転させることにより、可塑化して射出成形を行う粉砕材樹脂材料の成形支援方法であって、粉砕材の使用前に、当該粉砕材の粒形状に対する一方向からの面積を計測処理するとともに、スクリュ溝の深さに対する前記面積の相対的な大きさを示す粉砕材形状指標を演算処理により求め、この粉砕材形状指標の大きさが予め設定した設定値以上のときは、スクリュが不適切であると判定処理し、当該判定処理の判定結果を少なくとも表示処理することを特徴とする粉砕材樹脂材料の成形支援方法。
【請求項2】
前記面積は、前記粉砕材の粒形状を撮像部により撮像し、前記撮像部から得られる画像信号に対して画像処理により計測処理することを特徴とする請求項1記載の粉砕材樹脂材料の成形支援方法。
【請求項3】
前記粉砕材形状指標は、粉砕材の粒形状の面積をAc,面積Acの標準偏差をσ,スクリュ溝の深さをDsとしたとき、次のスクリュ判定式により求めることを特徴とする請求項1記載の粉砕材樹脂材料の成形支援方法。
【数1】
【請求項4】
前記判定処理の判定結果が不適切のときは、適切なスクリュの条件を当該判定結果と一緒に表示処理することを特徴とする請求項1記載の粉砕材樹脂材料の成形支援方法。
【請求項5】
前記粉砕材は、バージン材と所定の比率で混合して使用することを特徴とする請求項1記載の粉砕材樹脂材料の成形支援方法。
【請求項6】
前記粉砕材と前記バージン材を混合して使用する際は、予め、前記バージン材及び前記粉砕材の嵩密度を測定し、測定により得られた前記粉砕材の嵩密度に係わる粉砕材嵩密度データと前記バージン材の嵩密度に係わるバージン材嵩密度データに基づいて前記バージン材と前記粉砕材を所定の比率で混合した際における所定の成形条件に対する変換係数を求めて登録するとともに、粉砕材の使用時に、少なくとも使用する粉砕材の嵩密度を測定し、測定により得られた粉砕材嵩密度データ,バージン材嵩密度データ,及び変換係数に基づいて成形条件を修正処理することを特徴とする請求項5記載の粉砕材樹脂材料の成形支援方法。
【請求項7】
前記嵩密度の測定は、成形機の機能を利用して測定することを特徴とする請求項6記載の粉砕材樹脂材料の成形支援方法。
【請求項8】
前記変換係数は、粉砕材の面積,粉砕材の寸法,スクリュの形状の一又は二以上により補正することを特徴とする請求項6記載の粉砕材樹脂材料の成形支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕材を少なくとも一部に含ませた粉砕材樹脂材料を可塑化して射出成形を行う粉砕材樹脂材料の成形支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、射出成形機を使用する生産工場等では、成形用の樹脂材料としてバージン材のみではなく、成形後に発生するスプール・ランナ及び成形不良品等の不要成形物を再利用する場合も多い。この場合、これらの不要成形物を細かく粉砕した粉砕材を製作し、この粉砕材を所定の比率でバージン材(ペレット)に混合することにより、粉砕材樹脂材料として使用する。
【0003】
従来、このような粉砕材樹脂材料を利用して成形を行う成形手段としては、特許文献1に記載されるプラスチック成形機構及び特許文献2に記載されるスプール・ランナの再利用機能を備えた樹脂成形装置が知られている。
【0004】
特許文献1に記載のプラスチック成形機構は、粗砕材と原料との混合を安定的かつ効率的に実施する回収成形物の再利用を行うプラスチック成形機構の提供を目的としたものであり、具体的には、成形金型から取り出された回収成形物を取出装置の材料落下口上方へ直接搬送する搬送手段と、材料落下口上部に固着した原料送り量調整手段の上面に配設され、搬送された回収成形物を粗砕する粗砕手段と、粗砕手段で粗砕された回収成形物を材料落下口へ落下させる貫通穴を有するとともに、原料をその送り量を調整しつつ貫通穴へ搬送して回収成形物及び原料を混合する原料送り量調整手段とを備えて構成したものである。
【0005】
また、特許文献2に記載の樹脂成形装置は、成形機にスプール・ランナの粉砕材を輸送するための大掛かりな装置を別途設けるような必要を無くし、樹脂成形装置全体の構成の簡素化、及び品種替えに際しての清掃の容易化を図ることを目的としたものであり、具体的には、成形機の樹脂成形位置からスプール・ランナを取り出すための取出手段と、この取出手段によって取り出されたスプール・ランナを粉砕するための粉砕機とを備えた樹脂成形装置であって、粉砕機は、取出手段から供給されたスプール・ランナを粉砕して得られる粉砕材を成形機内へ供給するようにその粉砕材排出口が成形機に接続して設けられたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-125818号公報
【特許文献2】特開平7-304038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した粉砕材樹脂材料を使用する従来の成形手段は、次のような課題も存在した。
【0008】
即ち、使用する粉砕材は、個々の粒形状や大きさが一定ではなく、ランダムな形態になるため、可塑化時における射出成形機のスクリュ内では溶融樹脂に空隙が生じやすい。この結果、樹脂の溶融不足やバラツキが発生し、成形品質の低下、更には成形不良の増加を来すなど、安定した成形及び生産を行うことができない難点がある。
【0009】
特に、粉砕材の個々の粒形状とスクリュの形状の関係は重要であり、スクリュ溝の深さに対して粉砕材の粒形状が大きすぎる場合には十分な可塑化が行われず、可塑化時間が長くなる傾向があるなど、粉砕材の粒形状の大きさに対して可塑化に使用するスクリュの形態が適切であるか否かの問題があった。したがって、不適切なスクリュを使用した場合には、可塑化処理を十分に行えないため、成形品質及び均質性の低下を招くとともに、成形不良の増加を招いてしまう課題が存在した。
【0010】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した粉砕材樹脂材料の成形支援方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る粉砕材樹脂材料の成形支援方法は、上述した課題を解決するため、粉砕材Qcを少なくとも一部に含ませた粉砕材樹脂材料Qを、加熱筒2に内挿したスクリュ3を回転させることにより、可塑化して射出成形を行うに際し、粉砕材Qcの使用前に、当該粉砕材Qcの粒形状Qcgに対する一方向からの面積Acを計測処理するとともに、スクリュ溝Gsの深さDsに対する面積Acの相対的な大きさを示す粉砕材形状指標Kiを演算処理により求め、この粉砕材形状指標Kiの大きさが予め設定した設定値Ks以上のときは、スクリュ3が不適切であると判定処理し、当該判定処理の判定結果を少なくとも表示処理するようにしたことを特徴とする。
【0012】
この場合、発明の好適な態様により、面積Acは、粉砕材Qcの粒形状Qcgを撮像部4により撮像し、撮像部4から得られる画像信号に対して画像処理により計測処理することができる。また、粉砕材形状指標Kiは、粉砕材Qcの粒形状Qcgの面積をAc,面積Acの標準偏差をσ,スクリュ溝Gsの深さをDsとしたとき、次の[スクリュ判定式]により求めることができる。
【0013】
【数1】
【0014】
この際、判定処理の判定結果が不適切のときは、適切なスクリュ3の条件を当該判定結果と一緒に表示処理することができる。一方、粉砕材Qcは、バージン材Qpと所定の比率で混合して使用することが望ましい。粉砕材Qcとバージン材Qpを混合して使用する際は、予め、バージン材Qp及び粉砕材Qcの嵩密度を測定し、測定により得られた粉砕材Qcの嵩密度に係わる粉砕材嵩密度データDcとバージン材Qpの嵩密度に係わるバージン材嵩密度データDpに基づいてバージン材Qpと粉砕材Qcを所定の比率で混合した際における所定の成形条件に対する変換係数Kcを求めて登録するとともに、粉砕材Qcの使用時に、少なくとも使用する粉砕材Qcの嵩密度を測定し、測定により得られた粉砕材嵩密度データDc,バージン材嵩密度データDp,及び変換係数Kcに基づいて成形条件を修正処理することができる。なお、嵩密度の測定は、成形機Mの機能を利用して測定することができるとともに、変換係数Kcは、粉砕材Qcの面積Ac,粉砕材Qcの寸法(Vc,Wc),スクリュ3の形状の一又は二以上により補正することができる。
【発明の効果】
【0015】
このような本発明に係る粉砕材樹脂材料の成形支援方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0016】
(1) 粒形状Qcgや大きさ(面積Ac)が一定ではなく、ランダムな形態になる粉砕材Qcを使用する場合であっても、使用する粉砕材Qcとスクリュ3の関係が適切であるか不適切であるかを迅速かつ的確に判断することができる。これにより、不適切なスクリュ3の使用が回避され、不適切なスクリュ3の使用による不具合、即ち、十分な可塑化処理を行えないことに伴う不具合を解消し、成形品質及び均質性の向上を図ることができるとともに、成形不良を低減することができる。
【0017】
(2) 好適な態様により、面積Acを求めるに際して、粉砕材Qcの粒形状Qcgを撮像部4により撮像し、撮像部4から得られる画像信号に対して画像処理により計測処理するようにすれば、例えば、構造的には粉砕材Qcを撮像するカメラ等をホッパーの近傍に追加設置するのみで容易に実施可能になるとともに、画像信号に対する画像処理により粒形状Qcgの計測処理を迅速に行うことができる。
【0018】
(3) 好適な態様により、粉砕材形状指標Kiを求めるに際し、面積Acの標準偏差をσとしたとき、前述した[スクリュ判定式]により求めるようにすれば、比較的シンプルな演算式により容易に求めることができるなど、目的とする粉砕材形状指標Kiを速やかに得ることができる。
【0019】
(4) 好適な態様により、判定処理に基づく判定結果が不適切のときに、適切な推奨スクリュの条件を当該判定結果と一緒に表示処理するようにすれば、ユーザーは、使用中のスクリュ3が不適切であることを把握できることに加え、適切なスクリュの条件に係わる情報を知ることができるため、スクリュ3の選定及び交換を迅速かつ的確に行うことができる。
【0020】
(5) 好適な態様により、粉砕材Qcを使用するに際し、バージン材Qpと所定の比率で混合して使用するようにすれば、粉砕材Qcを所定の比率で混合して実際に使用する粉砕材樹脂材料Qに応用できるため、粉砕材Qcを使用した成形に対して有効に利用することができる。
【0021】
(6) 好適な態様により、粉砕材Qcとバージン材Qpを混合して使用するに際し、予め、バージン材Qp及び粉砕材Qcの嵩密度を測定し、測定により得られた粉砕材Qcの嵩密度に係わる粉砕材嵩密度データDcとバージン材Qpの嵩密度に係わるバージン材嵩密度データDpに基づいてバージン材Qpと粉砕材Qcを所定の比率で混合した際における所定の成形条件に対する変換係数Kcを求めて登録するとともに、粉砕材Qcの使用時に、少なくとも使用する粉砕材Qcの嵩密度を測定し、測定により得られた粉砕材嵩密度データDc,バージン材嵩密度データQp,及び変換係数Kcに基づいて成形条件を修正処理するようにすれば、バージン材Qpに対して、ランダムな粒形状Qcg及び大きさ(面積Ac)を有する粉砕材Qcを混合して使用する場合であっても、溶融不足やバラツキを回避し、樹脂の溶融状態を安定化させることができる。これにより、成形品質の向上及び均質化、更には成形不良の低減を図れるとともに、生産の遅れを伴うことなく生産の安定化を図ることができる。しかも、専門知識のないユーザー等であっても容易に実施することができる。
【0022】
(7) 好適な態様により、嵩密度を測定するに際し、成形機Mの機能を利用して測定すれば、別途の大掛かりな測定装置等を用意する必要がないため、小規模の生産工場などであっても低コストに実施することができる。具体的には、粉砕材Qc又はバージン材Qpを、成形機Mのホッパー5に投入し、当該ホッパー5の少なくともシャッター6より上方位置まで投入したなら当該シャッター6を閉じ、この後、スクリュ3を回転させることにより、ノズル7から排出されるドローリング状態の樹脂Qpr,Qcrの重量を測定することにより実現できる。このように、実際の生産に使用するユーザーが所有する射出成形機Mを直接利用できるため、ユーザーは、射出成形機M自身の操作により容易かつ迅速に測定することができる。
【0023】
(8) 好適な態様により、変換係数Kcを、粉砕材Qcの面積Ac,粉砕材Qの寸法(Vc,Wc),スクリュ3の形状の一又は二以上により補正するようにすれば、影響を受けやすい物理的要素により変換係数Kcに対する微調整を行うことができるため、成形条件或いは関連する条件を、微調整の観点からより最適化することができる。特に、粉砕材Qcの面積Ac,粉砕材Qの寸法(Vc,Wc),スクリュ3の形状は、本実施形態に係る成形支援方法の実施により予め得られるデータのため、そのまま有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の好適実施形態に係る粉砕材樹脂材料の成形支援方法の処理手順を示すフローチャート、
図2】同成形支援方法を実施できる射出成形機の機械的構造を示す構成図、
図3】同成形支援方法を実施できる射出成形機における処理系(制御系)のブロック系統図、
図4】同成形支援方法を実施できる射出成形機に備えるディスプレイにおける設定画面図、
図5】同成形支援方法に使用する粉砕材の粒形状の面積とスクリュ溝の深さの関係を示す説明図、
図6】同成形支援方法に使用する[スクリュ判定式]の結果と可塑化時間の関係を示す相関特性図、
図7】同成形支援方法の一部を示す工程説明図、
図8】同成形支援方法による判定結果を示す判定結果表示画面図、
図9】本発明の変更実施形態に係る粉砕材樹脂材料の成形支援方法の処理手順を示すフローチャート、
図10】同変更実施形態に係る成形支援方法に使用する粉砕材及びバージン材の説明図、
図11】同変更実施形態に係る成形支援方法に使用する粉砕材及びバージン材のドローリング量とゆるみ嵩密度の相関特性図、
図12】同変更実施形態に係る成形支援方法におけるディスプレイの一部をのみを抽出して示す設定画面図、
図13】同変更実施形態に係る成形支援方法の工程説明図、
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0026】
まず、本実施形態に係る粉砕材樹脂材料の成形支援方法の理解を容易にするため、同成形支援方法を利用できる射出成形機Mの概略構成について、図2図5及び図7を参照して説明する。
【0027】
図2は、射出成形機M、特に、型締装置を省略した射出装置Miを示す。射出装置Miにおいて、2は加熱筒であり、この加熱筒2の前端部にはヘッド部2hを介してノズル7を備える。ノズル7は加熱筒2内部の溶融樹脂を仮想線で示す金型Cに対して射出する機能を有する。
【0028】
一方、加熱筒2の後端付近の上部にはホッパー5を備える。図7に示すように、このホッパー5の下端開口5dは、加熱筒2に貫通形成した材料落下口2dを通して加熱筒2の内部に連通する。これにより、ホッパー5内の粉砕材樹脂材料Qは、材料落下口2dを通して加熱筒2の内部に供給される。さらに、下端開口5dには、この下端開口5dを開閉するシャッター6を配設する。このシャッター6は、図7に示す右側(射出成形機Mの後側)の位置へ変位させることにより、下端開口5dを閉塞する全閉ポジション、左側(射出成形機Mの前側)の位置へ変位させることにより、下端開口5dを開放する全開ポジションとなる。また、粉砕材樹脂材料Qは、バージン材Qpと粉砕材Qcを所定の比率により混合した樹脂材料である。
【0029】
なお、図2中、8sは、ホッパー5の外周面に付設して、ホッパー5の内部に収容した樹脂材料Qを加熱するヒータ、8jは、材料落下口2dの周囲における加熱筒2に形成したウォータージャケットをそれぞれ示す。このヒータ8sは、温調ドライバ8dにおける給電回路8eに接続するとともに、ウォータージャケット8jは、温調ドライバ8dにおける温調水循環回路8wに接続する。温調水循環回路8wは、温調された水媒体(温水又は冷却水)をウォータージャケット8jに循環させることにより、材料落下口2dを通過する樹脂材料Qを温調(加熱又は冷却)することができる。さらに、給電回路8e及び温調水循環回路8wはコントローラ本体22にそれぞれ接続する。これにより、コントローラ本体22から温調ドライバ8dには、給電回路8e及び温調水循環回路8wに対する制御指令が付与される。
【0030】
また、加熱筒2の内部にはスクリュ3を回動自在及び進退自在に装填する。なお、スクリュ表面には、耐久性等を考慮した所定の表面素材(金属)によるコーティング処理が施されている。スクリュ3は、前側から後側に、メターリングゾーンZm,コンプレッションゾーンZc,フィードゾーンZfを有する。一方、スクリュ3の後端部は、スクリュ駆動部13に結合する。スクリュ駆動部13は、スクリュ3を回転させるスクリュ回転機構13r及びスクリュ3を前進及び後退させるスクリュ進退機構13mを備える。スクリュ回転機構13r及びスクリュ進退機構13mの駆動方式は、例示の場合、電動モータを用いた電気方式を示しているが、油圧回路を用いた油圧方式であってもよく、その駆動方式は問わない。そして、スクリュ回転機構13r及びスクリュ進退機構13mは給電ドライバ13dに接続するとともに、この給電ドライバ13dはコントローラ本体22に接続する。これにより、コントローラ本体22から給電ドライバ13dに、スクリュ回転機構13r及びスクリュ進退機構13mに対する制御指令が付与される。また、スクリュ3の速度及び位置等の物理量は、図示を省略した速度センサ及び位置センサ等により検出され、この検出信号は給電ドライバ13dに付与される。
【0031】
さらに、加熱筒2は、前側から後側に、加熱筒前部2f,加熱筒中部2m,加熱筒後部2rを有し、各部2f,2m,2rの外周面には、前部加熱部9f,中部加熱部9m,後部加熱部9rをそれぞれ付設する。同様に、ヘッド部2hの外周面には、ヘッド加熱部9hを付設するとともに、ノズル7の外周面には、ノズル加熱部9nを付設する。これらの各加熱部9f,9m,9r,9h,9nはバンドヒータ等により構成できる。したがって、ノズル加熱部9n,ヘッド加熱部9h,前部加熱部9f,中部加熱部9m,後部加熱部9rは、加熱群部9を構成する。そして、この加熱群部9はヒータドライバ9dに接続するとともに、ヒータドライバ9dはコントローラ本体22に接続する。これにより、コントローラ本体22からヒータドライバ9dに、各加熱部9f,9m,9r,9h,9nに対する制御指令が付与され、また、加熱温度は、図示を省略した温度センサ(熱電対等)により検出され、この検出信号はヒータドライバ9dに付与される。
【0032】
一方、図3には、射出成形機Mの全体制御を司る成形機コントローラ21を示す。成形機コントローラ21は、CPU及び内部メモリ22m等のハードウェアを内蔵したコンピュータ機能を有する上述したコントローラ本体22を備えるとともに、コントローラ本体22には、ディスプレイ23を接続する。ディスプレイ23は、必要な情報表示を行う表示部23dを備えるとともに、タッチパネル23tが付設され、このタッチパネル23tを用いて、入力,設定,選択等の各種入力操作を行うことができる。また、コントローラ本体22には、各種アクチュエータを駆動(作動)するドライバ群24を接続する。このドライバ群24には、図2に示した前述の給電回路8e及び温調水循環回路8wを含む温調ドライバ8d,給電ドライバ13d及びヒータドライバ9dが含まれる。
【0033】
したがって、成形機コントローラ21は、HMI制御系及びPLC制御系を包含し、内部メモリ22mには、PLCプログラム及びHMIプログラムを格納する。PLCプログラムにより、射出成形機Mにおける各種工程のシーケンス動作や射出成形機Mの監視等が実行されるとともに、HMIプログラムにより、射出成形機Mの動作パラメータの設定及び表示,射出成形機Mの動作監視データの表示等が実行される。
【0034】
また、コントローラ本体22に付属する内部メモリ22mには、本発明に関連して本実施形態に係る成形支援方法を実現するアプリケーションプログラム、即ち、流動解析処理プログラムPs及び粉砕材支援処理プログラムPiを格納するとともに、各種スクリュ、より具体的には、図5に示すスクリュ溝Gsの深さDsに対応した各種スクリュ3に係わるスクリュデータベースBsを備える。これにより、成形機コントローラ21は、同成形支援方法に係わる主要な機能部となる。粉砕材画像処理機能部Fv,粉砕材形状計測機能部Fm,スクリュ判定式演算機能部Fa,スクリュ判定機能部Fj,判定結果処理機能部Fdを実現する。
【0035】
さらに、図4は、ディスプレイ23に表示される設定画面Vsを示す。設定画面Vsは、図4中、左側上部に、成形機及び樹脂設定欄31,中央上部に樹脂物性値設定欄32、右側上部に粘度設定欄33、下部左側に粉砕材設定欄34及び設定値入力部35、下部中央から下部右側に温度設定欄36、をそれぞれ配置するとともに、温度設定欄36の下方には、「流動解析開始」キー37及び「成形品の同一化」キー38を配置した画面構成を備える。この場合、成形機及び樹脂設定欄31には、成形機種の設定部31a、スクリュ種の設定部31b、樹脂種の設定部31c、強化繊維種の設定部31dを、それぞれ備えるとともに、樹脂物性値設定欄32には、比熱,熱伝導率,密度,融点,分解温度,溶融温度,吸水率,等の各種詳細物性値の入力部を備える。
【0036】
また、粉砕材設定欄34には、粉砕材の使用有無を選択する粉砕材使用の選択部34s,重量平均面積表示部34a,標準偏差表示部34bを備えるとともに、設定値入力部35には少なくとも計量時間入力部35aが含まれる。
【0037】
次に、このような射出成形機Mを利用して実施できる本実施形態に係る成形支援方法の概要について、図5図8及び図10を参照して説明する。
【0038】
一般に、粉砕材樹脂材料Qに使用する粉砕材Qcは、個々の粒形状Qcgや大きさがランダムになるため、可塑化時における射出成形機Mのスクリュ3内では溶融樹脂に空隙が発生しやすい。この結果、樹脂の溶融不足やバラツキが発生し、成形品質及び均質性の低下、更には成形不良の増加を来すなど、安定した成形及び生産を行うことができない難点がある。
【0039】
特に、図5に示すように、スクリュ溝Gsの深さDsと粉砕材Qcの粒形状Qcgの大きさの関係は重要であり、深さDsに対して粒形状Qcgが大きすぎる場合、即ち、粒形状Qcgの一方向からの面積Acが大きすぎる場合には、可塑化時間が長くなる傾向があり、粒形状Qcgの大きさと可塑化処理するスクリュ3の形態の関係が適切であるか否かが問題になる。なお、図5中、3fはスクリュ3のフライト部、3sはスクリュ3のスクリュ軸部をそれぞれ示す。
【0040】
そこで、本実施形態に係る成形支援方法は、スクリュ溝Gsの深さDsに対して、使用する粉砕材Qcの粒形状Qcgに対する一方向からの面積Acの相対的な大きさを示す粉砕材形状指標Kiを用い、粉砕材Qcを使用する前に、粉砕材Qcの粒形状Qcgに対する一方向からの面積Acを計測処理するとともに、得られた面積Acにより粉砕材形状指標Kiを演算処理により求め、この粉砕材形状指標Kiの大きさが予め設定した設定値Ks以上のときは、スクリュ3が不適切であると判定処理するとともに、当該判定処理に基づく判定結果を少なくとも表示処理するようにした。
【0041】
この場合、図5に一例として示す粉砕材Qcの粒形状Qcgは、一方向から見たときの面積はAc〔平方mm〕であり、縦方向の長さはVc〔mm〕,横方向の長さはWc〔mm〕である。一方向から見たときの面積は、粉砕材画像処理機能部Fv及び粉砕材形状計測機能部Fmにより得ることができる。即ち、粉砕材画像処理機能部Fvの機能により、図7に示すように、ホッパー5に投入した粉砕材Qcを、カメラ等を用いた撮像部4により撮像し、二次元の画像信号から、画像処理することにより一方向から見たときの粒形状Qcgを特定することができる。この際の粒形状Qcgに対する測定数をできるだけ多くすれば、バラツキを小さくすることができる。実施形態における測定数(サンプル数)は「100」である。また、粒形状Qcgの面積Acは、粉砕材形状計測機能部Fmの機能により得ることができる。即ち、粒形状Qcgが特定されるため、粒形状Qcgの外形寸法を画像処理により計測し、必要な演算処理を行うことにより、面積Ac〔平方mm〕を得ることができる。
【0042】
このように、面積Acを求めるに際して、粉砕材Qcの粒形状Qcgを撮像部4により撮像し、撮像部4から得られる画像信号に対して画像処理により計測処理するようにすれば、例えば、構造的には粉砕材Qcを撮像するカメラ等をホッパーの近傍に追加設置するのみで容易に実施可能になるとともに、画像信号に対する画像処理により粒形状Qcgの計測処理を迅速に行うことができる。
【0043】
なお、図10には、バージン材Qpと粉砕材Qc(Qcm,Qcs)の具体的なイメージを示す。図10(a)は、バージン材Qpによるペレットである。ほぼ一定の粒形状を有している。図10(b)は、スプール・ランナ等を粉砕して得た標準的な大きさの粉砕材Qc(Qcm)であり、ランダムな粒形状Qcgを有している。図10(c)は、より細かく粉砕した粉砕材(微粉砕材)Qc(Qcs)であり、同様のランダムな粒形状Qcgを有している。
【0044】
図10(a),(b),(c)に示したバージン材Qp,粉砕材Qcm,微粉砕材Qcsの、ゆるみ嵩密度〔kg/リットル〕,粒形状Qcgの面積Ac〔平方mm〕,面積Acの標準偏差σ〔平方mm〕を[表1]に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
また、スクリュ溝Gsの深さDsに対する粒形状Qcgの面積Acの相対的な大きさを示す粉砕材形状指標Kiは演算処理により求めることができる。本実施形態では、粉砕材形状指標Kiとして、以下に示す[スクリュ判定式]を用いた。
【0047】
【数2】
【0048】
[数2]の[スクリュ判定式]において、Acは粉砕材Qcの粒形状Qcgの面積、σは面積Acの標準偏差、Dsはスクリュ溝Gsの深さである。このような[スクリュ判定式]により粉砕材形状指標Kiを求めれば、比較的シンプルな演算式により容易に求めることができるなど、目的とする粉砕材形状指標Kiを速やかに得ることができる。この[スクリュ判定式]により粉砕材形状指標Kiを求める演算処理は、前述したスクリュ判定式演算機能部Faによる機能となる。
【0049】
図6は、[スクリュ判定式]により得た粉砕材形状指標Kiの結果と可塑化時間〔秒〕の関係を示す相関特性を示す。図6から明らかなように、粉砕材形状指標Kiが大きい値になるほど可塑化時間が長くなる。なお、図6は、サンプル毎に、粉砕材Qcの形態(形状や面積)やスクリュ溝Gsの深さDsを変更し、粉砕材形状指標Kiの値を異ならせたときの可塑化時間〔秒〕の測定結果を示す。この結果、相関係数は、R=0.74となった。
【0050】
図6から明らかなように、粉砕材形状指標Kiが「0.85」を下回っ場合、粉砕材Qc(粒形状Qcg)の面積Acや形状に関係なく、概ね類似する可塑化時間が得られることを確認できた。そこで、本実施形態では、粉砕材形状指標Kiを判定するための設定値Ksを「1.0」に設定した。したがって、前述したスクリュ判定機能部Fjは、予め、この設定値Ksを設定し、[スクリュ判定式]により得られる粉砕材形状指標Kiの大きさ(演算値)が設定値Ks以上のときは、スクリュ3が不適切であると判定処理するようにした。
【0051】
さらに、判定処理に基づく判定結果は、前述した判定結果処理機能部Fdの機能によりディスプレイ23の表示部23dにより表示処理する。図8は、判定結果表示画面Vjの一例を示す。判定結果表示画面Vjは、不適切又は適切の判定結果を表示するとともに、不適切の場合には、許容できるスクリュ溝Gsの深さDsを有するスクリュをスクリュデータベースBsから選定し、推奨スクリュ3として対応するスクリュ溝Gsの深さDsの値〔mm〕を表示するようにした。
【0052】
このように、判定処理に基づく判定結果が不適切のとき、適切なスクリュ3の条件を当該判定結果と一緒に表示処理するようにすれば、ユーザーは、使用中のスクリュ3が不適切であることを把握できることに加え、適切なスクリュ3の条件に係わる情報を知ることができるため、スクリュ3の選定及び交換を迅速かつ的確に行うことができる。
【0053】
次に、本実施形態に係る粉砕材樹脂材料の成形支援方法の処理手順について、各図を参照しつつ図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0054】
最初に、生産(成形)後に発生するスプール・ランナ及び成形不良品等の不要成形物を、不図示の粉砕機等により粉砕して使用する粉砕材Qcを製作する(ステップS1)。実施形態では、前述した図10(b)に示す粉砕材Qcmを製作した場合を想定する。
【0055】
次いで、製作した粉砕材Qcmを、図7に示すように、シャッター6が全開ポジションにあるホッパー5に投入する(ステップS2)。これにより、粉砕材Qcmは、材料落下口2d、更に、この下端開口から下方に位置するスクリュ3における一定範囲に蓄積される。この後、粉砕材Qcmが徐々に蓄積され、粉砕材Qcmの上面がシャッター6の上方における規定位置に達したならシャッター6を全閉ポジションに切換える(ステップS3,S4)。この状態が図7の状態となる。
【0056】
次いで、カメラ等の撮像部4を不図示のリリース位置から、図7に示すホッパー5の上方に位置する使用位置へ移動させるとともに、必要なフォーカス調整等を行った後、ホッパー5内における粉砕材Qcmの上面を撮像する(ステップS5)。撮像部4により得られた画像信号はコントローラ本体22に供給され、粉砕材画像処理機能部Fvによる画像処理により各粒形状Qcg…が認識される(ステップS6)。また、粉砕材形状計測機能部Fmにより、各粒形状Qcgの外形寸法を計測処理する(ステップS7)。
【0057】
そして、計測結果が得られたなら、必要な演算処理を行うことにより、各粒形状Qcgの面積Ac〔平方mm〕(平均値)を求めるとともに、面積Acの標準偏差σ〔平方mm〕を求める。なお、使用中のスクリュ3に係わるスクリュ溝Gsの深さDsは、既知(登録済)のため、前述した[数2]の[スクリュ判定式]を用いた演算処理を行うことにより、粉砕材形状指標Kiを求める(ステップS8)。
【0058】
粉砕材形状指標Kiが得られたなら設定値Ksに対して比較する判定処理を行なう(ステップS9)。例示の場合、前述した[表1]から、面積Acは14.81〔平方mm〕,標準偏差σは4.75〔平方mm〕である。このため、スクリュ溝Gsの深さDsが、5.39〔mm〕のときに、粉砕材形状指標Kiは、1.0(=設定値Ks)となる。したがって、スクリュ溝Gsの深さDsが5.39〔mm〕以下の場合、粉砕材形状指標Kiは「1.0」以上となり、スクリュ3は不適切と判定されるとともに、他方、スクリュ溝Gsの深さDsが5.39〔mm〕未満の場合、粉砕材形状指標Kiは「1.0」未満となり、スクリュ3は適切と判定処理される(ステップS10)。
【0059】
今、判定結果が不適切と判定された場合を想定する。この場合、ディスプレイ23の表示部23dには、図8に示す判定結果表示画面Vjが表示され、判定表示部41により不適切表示が行われる(ステップS11)。また、推奨スクリュ表示部42には、スクリュデータベースBsから選定した推奨スクリュが表示される。図8は、「5.6」mm以上のスクリュ溝Gsの深さDsを有するスクリュ3が例示されている(ステップS12)。なお、同図中、43は確認ボタンを示す。
【0060】
したがって、ユーザーは、判定結果表示画面Vjを確認し、スクリュ3を適切なスクリュ、即ち、推奨スクリュに交換すればよい(ステップS13)。これにより、通常の成形(生産)処理を行うことができる(ステップS14.S15)。
【0061】
よって、このような本実施形態に係る成形支援方法によれば、基本的な手法として、粉砕材Qcの使用前に、当該粉砕材Qcの粒形状Qcgに対する一方向からの面積Acを計測処理するとともに、スクリュ溝Gsの深さDsに対する面積Acの相対的な大きさを示す粉砕材形状指標Kiを演算処理により求め、この粉砕材形状指標Kiの大きさが予め設定した設定値Ks以上のときは、スクリュ3が不適切であると判定処理し、当該判定処理の判定結果を少なくとも表示処理するようにしたため、粒形状Qcgや大きさ(面積Ac)が一定ではなく、ランダムな形態になる粉砕材Qcを使用する場合であっても、使用する粉砕材Qcとスクリュ3の関係が適切であるか不適切であるかを迅速かつ的確に判断することができる。
【0062】
これにより、不適切なスクリュ3の使用が回避され、不適切なスクリュ3の使用による不具合、即ち、十分な可塑化処理を行えないことに伴う不具合を解消し、成形品質及び均質性の向上を図ることができるとともに、成形不良を低減することができる。
【0063】
他方、前述したステップS10の判定処理において、スクリュ3が適切と判定された場合は、スクリュ3をそのまま使用して、通常の成形(生産)処理を行うことができる(ステップS10,S16,S14)。
【0064】
ところで、使用する粉砕材Qcは、図10(b)及び(c)に示すように、個々の粒形状Qcgや大きさがランダムになるとともに、実際の生産工程では、粒形状Qcgとバージン材Qp(図10(a))を所定の比率で混合して使用する場合も多い。
【0065】
そこで、本実施形態に係る成形支援方法は、成形工場等の生産現場において、粉砕材Qcの嵩密度の度合を、ユーザーが容易かつ的確に把握することができるようにするとともに、生産時の成形条件に直接反映させることができるようにした。
【0066】
即ち、成形工場等に備える射出成形機Mを利用することにより、使用する粉砕材Qcの嵩密度を簡便かつ迅速に測定可能にするとともに、この測定した結果により、実際に使用するバージン材Qpと粉砕材Qcを混合した粉砕材樹脂材料Qにマッチングするように、成形条件を修正できるようにした(ステップS16,S17)。このように、粉砕材Qcを使用するに際し、バージン材Qpと所定の比率で混合して使用するようにすれば、粉砕材Qcを所定の比率で混合して実際に使用する粉砕材樹脂材料Qに応用できるため、粉砕材Qcを利用した成形に対して有効に利用することができる。
【0067】
以下、粉砕材Qcとバージン材Qpを混合した粉砕材樹脂材料Qを使用する際における成形条件の修正方法について、図7及び図11図13を参照しつつ、図9(及び図1)に示すフローチャートに従って説明する。
【0068】
今、射出成形機Mは、図7に示す状態、即ち、図1のステップS4において、シャッター6を全閉ポジションに切換えた状態にある場合を想定する。この場合、シャッター6の下面から材料落下口2dの内部、さらに材料落下口2dの下端開口から下方に位置するスクリュ3の一定範囲に、一定の体積Vqの粉砕材Qcが充填された状態にあり、この状態は、粉砕材Qcが一定の体積Vqに計量された状態となる。
【0069】
この状態でスクリュ3を回転させれば、図13に示すように、粉砕材Qcは前方へ移送されるとともに、加熱部9r等を含む加熱群部9により加熱された加熱筒2により可塑化される(ステップS17,S171)。そして、可塑化された溶融樹脂Qcrは、ドローリング状態となり、ノズル7の先端から外部に排出される(ステップS172)。
【0070】
この排出工程は、全ての溶融樹脂Qcrがノズル7の先端から排出されるまで継続する(ステップS173)。一方、排出された溶融樹脂Qcrは、セットした容器Biにより受け取るとともに、排出が終了したならドローリング量に係わる重量〔g〕を測定する。この容器Biは、例えば、重量計を兼ねていてもよい。そして、測定したドローリング量は粉砕材嵩密度データDcとして登録する(ステップS174)。
【0071】
次いで、バージン材Qpに係るドローリング量(嵩密度)を取得する(ステップS175)。この場合、バージン材Qpのドローリング量(嵩密度)に関するデータが既に登録されていれば、そのデータを読み出す(ステップS176)。一方、登録されていなければ、上述した粉砕材Qcの測定と同様に測定することができる。即ち、シャッター6が全開ポジションにあるホッパー5にバージン材(ペレット)Qpを投入し、投入したバージン材Qpの上面が少なくともシャッター6の上方位置に達したならシャッター6を全閉ポジションに切換える(ステップS177,S178)。この後、スクリュ3を回転させ、バージン材Qpを前方へ移送し、加熱筒2により可塑化するとともに、可塑化されたドローリング状態の溶融樹脂Qcrをノズル7から排出させる(ステップS179,S180)。そして、全ての溶融樹脂Qcrが排出されたならドローリング量に係わる重量〔g〕を測定するとともに、測定したドローリング量は、バージン材嵩密度データDpとして登録する(ステップS181,S182)。
【0072】
このように、嵩密度(ゆるみ嵩密度)を測定するに際し、成形機Mの機能を利用して測定するようにすれば、別途の大掛かりな測定装置等を用意する必要がないため、小規模の生産工場などであっても低コストに実施することができる。即ち、実際の生産に使用するユーザーが所有する射出成形機Mを直接利用できるため、ユーザーは、射出成形機M自身の操作により容易かつ迅速に測定することができる。
【0073】
以上の測定工程により、バージン材Qp及び粉砕材Qcの嵩密度(ドローリング量)を得れるため、図12に示した設定画面Vsにおける粉砕材設定欄34におけるデータ入力を行う(ステップS183)。図12は、図4に示した設定画面Vsにおける粉砕材設定欄34を、ドローリング重量入力部34mの表示に切替えた状態を示し、ドローリング重量を入力するバージン材重量入力部34f及び粉砕材重量入力部34gを備えるとともに、バージン材Qpと粉砕材Qcの混合比率を入力する混合比率入力部34eを備える。
【0074】
例示は、バージン材重量入力部34fに、バージン材Qpのドローリング重量〔g〕として「133.1」を入力し、また、粉砕材重量入力部34gに、粉砕材Qcのドローリング重量〔g〕として「92.6」を入力した場合を示す。なお、この場合、登録したデータDp,Dcをそのまま設定画面Vsに反映(転送)させてもよい。さらに、混合比率入力部34eに、バージン材Qpと粉砕材Qcの混合比率(重量比)を入力する。図12は、バージン材Qpの配合量〔%〕として「70」を入力し、粉砕材Qcの配合量〔%〕として「30」を入力した例を示す。
【0075】
ところで、粉砕材Qcとバージン材Qpを混合して使用するに際しては、予め、バージン材Qp及び粉砕材Qcの嵩密度を測定し、測定により得られた粉砕材Qcの嵩密度に係わる粉砕材嵩密度データDcとバージン材Qpの嵩密度に係わるバージン材嵩密度データDpに基づいてバージン材Qpと粉砕材Qcを所定の比率で混合した際における所定の成形条件に対する変換係数Kcを求めて登録するとともに、粉砕材Qcの使用時に、少なくとも使用する粉砕材Qcの嵩密度を測定し、測定により得られた粉砕材嵩密度データDc,バージン材嵩密度データQp,及び変換係数Kcに基づいて成形条件を修正処理することができる。このような修正処理を行えば、バージン材Qpに対して、ランダムな粒形状Qcg及び大きさ(面積Ac)を有する粉砕材Qcを混合して使用する場合であっても、溶融不足やバラツキを回避し、樹脂の溶融状態を安定化させることができる。これにより、成形品質の向上及び均質化、更には成形不良の低減を図れるとともに、生産の遅れを伴うことなく生産の安定化を図ることができる。しかも、専門知識のないユーザー等であっても容易に実施することができる。
【0076】
成形条件を修正処理する原理は次のようになる。図11に、図10(a)-(c)に示した粉砕材Qcm,Qcs及びバージン材(ペレット)Qpのドローリング量〔g〕対ゆるみ嵩密度〔kg/リットル〕の関係を示す。図11に示すように、測定により得られる上述したドローリング量とゆるみ嵩密度は、十分な相関関係を有していることを確認できる。
【0077】
そこで、比較的簡便な方法として、変換係数Kcを設定し、所定の成形条件(設定値)に、変換係数Kcを乗ずることにより、所定の成形条件を容易に修正できるようにした。なお、成形条件とは、成形を行う前に設定する設定条件値のみならず、成形後に生じる成形状態の良否を把握するモニタ値等も含む概念である。
【0078】
成形条件の一例となる可塑化時間の場合、バージン材Qpのゆるみ嵩密度(ドローリング量)と粉砕材Qcのゆるみ嵩密度(ドローリング量)が既知であれば、変換係数Kcとして、「Kc=(バージン材Qpの嵩密度)/(粉砕材Qcの嵩密度)」により求めることができる。これにより、バージン材Qpに対する粉砕材Qcの混合比率が明らかになっていれば、この混合比率の度合により、上述した射出成形機Mにより求めたバージン材Qpと粉砕材Qcのゆるみ嵩密度(ドローリング量〔g〕)、即ち、変換係数Kcに基づいて可塑化時間を修正することができる。
【0079】
具体的には、バージン材Qpのみの可塑化時間は、前述した流動解析処理プログラムPsにより求めることができるため、バージン材Qpのゆるみ嵩密度(ドローリング量)及び粉砕材Qcのゆるみ嵩密度(ドローリング量)を測定することにより、上述した変換係数Kcを求めるとともに、バージン材Qpと粉砕材Qcの混合比率に基づいて、粉砕材Qcを混合して使用する際の可塑化時間Tmsを予測することができる。即ち、バージン材Qpのみの可塑化時間をTmとした場合、予測値となる可塑化時間Tmsは、「Tms=Tm×Kc」により得ることができる。
【0080】
この変換係数Kcは、粉砕材Qcにおける粒形状Qcgの一方向からの面積Ac,寸法,スクリュ形状等により変動するため、これらの形態により補正するとともに、この補正量は、必要に応じて実験等により調整し、最適化した変換係数Kcを登録する。このように、変換係数Kcを、粉砕材Qcの面積Ac,粉砕材Qの寸法(Vc,Wc),スクリュ3の形状の一又は二以上により補正するようにすれば、影響を受けやすい物理的要素により変換係数Kcに対する微調整を行うことができるため、成形条件或いは関連する成形条件を、微調整の観点からより最適化することができる。特に、粉砕材Qcの面積Ac,粉砕材Qの寸法(Vc,Wc),スクリュ3の形状は、本実施形態に係る成形支援方法の実施により予め得られるデータのため、そのまま有効に利用することができる。
【0081】
そして、設定画面Vsにおけるデータ入力が終了したなら、流動解析開始キー36をONする(ステップS184)。これにより、流動解析処理プログラムPsが起動し、流動解析処理が行われる(ステップS185)。この流動解析処理は、既に本出願人が提案した射出成形機の成形支援装置(特開2020-1183号公報,特願2021-121959号参照)を利用することができる。即ち、推定処理機能により樹脂材料に係る溶融状態の的確な情報(データ)を数値的に推定することができるとともに、特に、推定固相率,推定樹脂分解率,強化繊維の推定破損率,さらに、これらに基づく可塑化時間,発熱量を得ることができる。
【0082】
この流動解析処理では、基本的に、少なくともバージン材Qpに対する成形条件、特に、例示の場合、可塑化時間,発熱量を得るため、粉砕材Qcを混合して使用する場合における修正処理を行う(ステップS186)。この場合、可塑化時間に対して変換係数Kcを乗じて修正値を求めるとともに、発熱量に対して変換係数Kcを乗じて修正値を求める。なお、可塑化時間に対する変換係数Kcと発熱量に対する変換係数Kcはそれぞれ個別に設定されている。
【0083】
所定の成形条件の一例として、可塑化時間を示したが、その他、粉砕材Qcのゆるみ嵩密度により大きく影響を受けやすい上記の発熱量をはじめ、他の成形条件であっても同様に修正することができる。所定の成形条件に、少なくとも、可塑化時間,発熱量,の一方又は双方を含ませれば、ランダムな粒形状や大きさを有する粉砕材Qcにより大きく影響を受けやすい可塑化時間や発熱量を修正できるため、これらの成形条件或いは関連する成形条件を容易に最適化することができる。なお、成形条件とは、成形を行う前に設定する設定条件値のみならず、成形後に生じる成形状態の良否を把握するモニタ値等も含む概念である。
【0084】
このように、バージン材Qpの成形条件に対して、嵩密度を考慮した変換係数Kcにより修正したいわば予測値は、実測値に近い値として予測処理することができ、生産現場において実用的に利用することが可能である。なお、上述した発熱量は、金型Cに排出された樹脂の温度を測定する測定装置を使用し、排出時の最大樹脂温度と設定温度の差を発熱量とした。
【0085】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,材料,数量,数値,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0086】
例えば、面積Acは、粉砕材Qcの粒形状Qcgを撮像部4により撮像し、撮像部4から得られる画像信号に対して画像処理により計測処理した例を示したが、射出成形機M以外の他の計測装置等を利用して計測してもよいし、画像処理以外の他の手法により計測してよく、要は、粒形状Qcgの面積Acを計測できればよい。また、粉砕材形状指標Kiとして、前述した[スクリュ判定式]により求めた例を示したが、他の演算式により求める場合を排除するものではない。一方、判定処理の判定結果が不適切のときは、適切なスクリュ3の条件を当該判定結果と一緒に表示処理することが望ましいが、必須の要件ではない。なお、バージン材Qpと粉砕材Qcを所定の比率により混合した粉砕材樹脂材料Qとは、バージン材Qpと粉砕材Qcのみを混合する意味ではなく、バージン材Qpと粉砕材Qcが含まれていれば足り、バージン材Qpと粉砕材Qcに加えて他の材料が含まれる場合を排除するものではない。また、この場合の所定の比率にはバージン材Qpが「0」の場合も含まれる。他方、成形条件を修正する変更実施形態も、必須の要件となるものではなく、必要により実施することができる。この場合、変換係数Kcは、単純な数値による係数であってもよいし、変数や式が含まれる係数であってもよい。さらに、嵩密度には、ゆるみ嵩密度を用いることが望ましいが、一定の圧力を加えて体積を圧縮するなど、一定条件下の嵩密度を排除するものではない。他方、成形機Mの機能を利用して嵩密度を測定することが望ましいが、同様の機能を有する他の測定装置似より測定する場合を排除するものではない。また、成形機Mを利用する場合、粉砕材Qc又はバージン材Qpを、成形機Mのホッパー5に投入し、当該ホッパー5の少なくともシャッター6より上方位置まで投入したなら当該シャッター6を閉じ、この後、スクリュ3を回転させることにより、ノズル7から排出されるドローリング状態の樹脂Qpr,Qcrの重量を測定することができるが、その他、升等の容器により体積を測定した粉砕材Qc又はバージン材Qpをホッパー5に投入してもよい。さらに、所定の成形条件に、可塑化時間,発熱量を例示したが他の成形条件にも同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る粉砕材樹脂材料の成形支援方法は、粉砕材を少なくとも一部に含ませた粉砕材樹脂材料を可塑化して射出成形を行う各種射出成形機をはじめ、各種射出成形方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
2:加熱筒,3:スクリュ,4:撮像部,Q:粉砕材樹脂材料,Qc:粉砕材,Qcg:粉砕材の粒形状,Qp:バージン材,Ac:粒形状に対する一方向からの面積,Gs:スクリュ溝,Ds:スクリュ溝の深さ,Ki:粉砕材形状指標,Vc:粉砕材の寸法(縦寸法),Wc:粉砕材の寸法(横寸法)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13