(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001976
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20231228BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231228BHJP
G03B 21/14 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H05K5/02 B
G09F9/00 360K
G09F9/00 351
G09F9/00 312
G03B21/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100871
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 航平
【テーマコード(参考)】
2K203
4E360
5G435
【Fターム(参考)】
2K203FA82
2K203FB03
2K203KA03
2K203KA07
2K203KA75
2K203MA23
4E360AC13
4E360AC17
4E360EA22
4E360EC14
4E360EC15
4E360EC16
4E360ED04
4E360ED27
4E360GA08
4E360GA46
4E360GB01
5G435AA01
5G435BB17
5G435DD03
5G435DD04
5G435DD06
5G435EE02
5G435EE17
5G435LL15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】容易に正確なチルト角を調整する電子機器を提供する。
【解決手段】プロジェクタ1は、載置面に載置されて用いられ、筐体10と、筐体の一部を支持し、筐体との位置関係が固定された回転軸20aの回りに回転可能であり、回転の前後に亘って載置面に一部が接触する接触面Sを有する支持部20と、を備え、支持部の基準状態からの回転角φの変動に応じて、載置面に対する筐体のチルト角θが変動し、かつ、回転軸に平行な軸方向から見て、支持部の接触面における載置面との接触点が、基準状態における接触点である基準接触点P
10から接触面内で移動し、軸方向から見た、回転軸及び接触点を通る第1仮想線と、回転軸及び基準接触点に対応する対応基準接触点P
20を通る第2仮想線とが、回転角φに応じてなす角度をψとした場合に、接触面はn及びaを定数として、任意の回転角φに対して、θ=n(φ-ψ)及びψ=aφの関係が満たされる形状を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置面に載置されて用いられる電子機器であって、
筐体と、
前記筐体の一部を支持する支持部であって、前記筐体との位置関係が固定された回転軸の回りに回転可能であり、前記回転の前後に亘って前記載置面に一部が接触する接触面を有する支持部と、
を備え、
前記支持部の基準状態からの回転角φの変動に応じて、前記載置面に対する前記筐体のチルト角θが変動し、
前記支持部の前記基準状態からの前記回転角φの変動に応じて、前記回転軸に平行な軸方向から見て、前記支持部の前記接触面における前記載置面との接触点が、前記基準状態における接触点である基準接触点から前記接触面内で移動し、
前記軸方向から見た、前記回転軸及び前記接触点を通る第1仮想線と、前記回転軸及び前記基準接触点に対応する対応基準接触点を通る第2仮想線とが、前記回転角φに応じてなす角度をψとした場合に、前記接触面は、n及びaを定数として、任意の前記回転角φに対して
θ=n(φ-ψ)
ψ=aφ
の関係が満たされる形状を有する電子機器。
【請求項2】
前記軸方向から見た、前記載置面に対する前記筐体の回転の支点を原点とし、
前記軸方向に垂直、かつ、前記軸方向から見て、前記原点及び前記基準状態における前記支持部の前記基準接触点を通り、前記原点から、前記基準状態における前記支持部の前記基準接触点に向かう方向を正方向とする軸をx軸とし、
前記x軸に垂直、かつ、前記原点から前記載置面に向かう方向を正方向とする軸をy軸とし、
前記原点から前記回転軸までの+x方向の距離をlとし、
前記原点から前記回転軸までの-y方向の距離をhとし、
前記軸方向から見て、前記基準状態において前記回転軸及び前記基準接触点を通る線と、前記回転軸を通り前記x軸に平行な直線とがなす角をφ
0とした場合に、
前記基準状態における前記支持部の前記接触面上の点P
1(x
1,y
1)の座標が、前記回転角φをパラメータとして
x
1=rcos(φ
0-aφ)+l
y
1=rsin(φ
0-aφ)-h
により表される、請求項1に記載の電子機器。
(ただし、
【数1】
【数2】
【数3】
である。)
【請求項3】
載置面に載置されて用いられる電子機器であって、
筐体と、
前記筐体の一部を支持する支持部であって、前記筐体との位置関係が固定された回転軸の回りに回転可能であり、前記回転の前後に亘って前記載置面に一部が接触する接触面を有する支持部と、
を備え、
前記支持部の基準状態からの回転角φの変動に応じて、前記載置面に対する前記筐体のチルト角θが変動し、
前記支持部の前記基準状態からの前記回転角φの変動に応じて、前記回転軸に平行な軸方向から見て、前記支持部の前記接触面における前記載置面との接触点が、前記基準状態における接触点である基準接触点から前記接触面内で移動し、
前記軸方向から見た、前記回転軸及び前記接触点を通る第1仮想線と、前記回転軸及び前記基準接触点に対応する対応基準接触点を通る第2仮想線とが、前記回転角φに応じてなす角度をψとし、
前記軸方向から見た、前記載置面に対する前記筐体の回転の支点を原点とし、
前記軸方向に垂直、かつ、前記軸方向から見て、前記原点及び前記基準状態における前記支持部の前記基準接触点を通り、前記原点から、前記基準状態における前記支持部の前記基準接触点に向かう方向を正方向とする軸をx軸とし、
前記x軸に垂直、かつ、前記原点から前記載置面に向かう方向を正方向とする軸をy軸とし、
前記原点から前記回転軸までの+x方向の距離をlとし、
前記原点から前記回転軸までの-y方向の距離をhとし、
前記基準状態における前記基準接触点のx座標をx
10とし、
前記回転角φが最大値であるφ
maxとなるときの前記接触点の、前記基準状態における対応点のx座標をx
1max、y座標をy
1maxとした場合に、
前記基準状態における前記支持部の前記接触面上の点P
1(x
1,y
1)の座標が、前記回転角φをパラメータとして
x
1=rcos(φ
0-aφ)+l
y
1=rsin(φ
0-aφ)-h
により表される電子機器。
(ただし、
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
である。)
【請求項4】
前記接触面は、任意の前記回転角φに対してy1≦0を満たす形状を有する、請求項2又は3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記筐体に、前記支持部の前記回転角φ、又は当該回転角φに対応する前記チルト角θを表す目盛りが設けられている、請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記支持部を回転させる駆動部と、
前記駆動部を動作させて前記支持部の前記回転角φを制御する処理部と、
を備える、請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記筐体の内部に、光源から射出された光を用いて投影面に画像を投影する投影部を備える、請求項1に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、載置面に載置して使用するプロジェクタなどの電子機器において、電子機器の筐体の載置面からのチルト角(仰角)を調整するための機構が知られている。このような機構の1つとして、特許文献1には、筐体のうち載置面に対向する底面側に、底面に平行な回転軸を中心に回転可能な支持部を設け、筐体の底面よりも載置面側に支持部が突出するように支持部を回転させることで筐体のチルト角を調整する機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の機構では、支持部の回転角と、筐体のチルト角とが線形の関係とならない。このため、所望のチルト角に調整するために必要な支持部の回転角が分かりにくく、チルト角を正確に調整することが難しいという課題がある。
【0005】
この発明の目的は、容易かつ正確にチルト角を調整することができる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る電子機器は、
載置面に載置されて用いられる電子機器であって、
筐体と、
前記筐体の一部を支持する支持部であって、前記筐体との位置関係が固定された回転軸の回りに回転可能であり、前記回転の前後に亘って前記載置面に一部が接触する接触面を有する支持部と、
を備え、
前記支持部の基準状態からの回転角φの変動に応じて、前記載置面に対する前記筐体のチルト角θが変動し、
前記支持部の前記基準状態からの前記回転角φの変動に応じて、前記回転軸に平行な軸方向から見て、前記支持部の前記接触面における前記載置面との接触点が、前記基準状態における接触点である基準接触点から前記接触面内で移動し、
前記軸方向から見た、前記回転軸及び前記接触点を通る第1仮想線と、前記回転軸及び前記基準接触点に対応する対応基準接触点を通る第2仮想線とが、前記回転角φに応じてなす角度をψとした場合に、前記接触面は、n及びaを定数として、任意の前記回転角φに対して
θ=n(φ-ψ)
ψ=aφ
の関係が満たされる形状を有する。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る電子機器は、
載置面に載置されて用いられる電子機器であって、
筐体と、
前記筐体の一部を支持する支持部であって、前記筐体との位置関係が固定された回転軸の回りに回転可能であり、前記回転の前後に亘って前記載置面に一部が接触する接触面を有する支持部と、
を備え、
前記支持部の基準状態からの回転角φの変動に応じて、前記載置面に対する前記筐体のチルト角θが変動し、
前記支持部の前記基準状態からの前記回転角φの変動に応じて、前記回転軸に平行な軸方向から見て、前記支持部の前記接触面における前記載置面との接触点が、前記基準状態における接触点である基準接触点から前記接触面内で移動し、
前記軸方向から見た、前記回転軸及び前記接触点を通る第1仮想線と、前記回転軸及び前記基準接触点に対応する対応基準接触点を通る第2仮想線とが、前記回転角φに応じてなす角度をψとし、
前記軸方向から見た、前記載置面に対する前記筐体の回転の支点を原点とし、
前記軸方向に垂直、かつ、前記軸方向から見て、前記原点及び前記基準状態における前記支持部の前記基準接触点を通り、前記原点から、前記基準状態における前記支持部の前記基準接触点に向かう方向を正方向とする軸をx軸とし、
前記x軸に垂直、かつ、前記原点から前記載置面に向かう方向を正方向とする軸をy軸とし、
前記原点から前記回転軸までの+x方向の距離をlとし、
前記原点から前記回転軸までの-y方向の距離をhとし、
前記基準状態における前記基準接触点のx座標をx
10とし、
前記回転角φが最大値であるφ
maxとなるときの前記接触点の、前記基準状態における対応点のx座標をx
1max、y座標をy
1maxとした場合に、
前記基準状態における前記支持部の前記接触面上の点P
1(x
1,y
1)の座標が、前記回転角φをパラメータとして
x
1=rcos(φ
0-aφ)+l
y
1=rsin(φ
0-aφ)-h
により表される。
(ただし、
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容易かつ正確にチルト角を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】プロジェクタの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】チルトアームを回転させた状態のプロジェクタの側面図である。
【
図4】初期状態のチルトアームの着座部を拡大して示す側面図である。
【
図5】比較例に係るプロジェクタを示す側面図である。
【
図6】本実施形態及び比較例における、回転角φとチルト角θとの関係を示す図である。
【
図7】チルトアームが初期状態となっているときのプロジェクタの各部の位置関係を示す図である。
【
図8】チルトアームが初期状態と最大回転状態の中間位置にあるときのプロジェクタの各部の位置関係を示す図である。
【
図9】チルトアームが最大回転状態となっているときのプロジェクタの各部の位置関係を示す図である。
【
図10】チルト角θ及び回転角φの定義を示す図である。
【
図12】情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図13】変形例に係るプロジェクタの一部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
<プロジェクタの構成>
図1は、本実施形態のプロジェクタ1の構成を示す斜視図である。
プロジェクタ1(電子機器)は、略直方体形状の筐体10と、筐体10の一部を支持するチルトアーム20(支持部)とを備える。プロジェクタ1は、平面の載置面2に載置された状態で用いられる。筐体10の内部には、光源151(
図2参照)から射出された光を用いて投影面に画像を投影する投影部15(
図2参照)が設けられている。以下では、筐体10のうち使用時に載置面2に対向(または傾いた状態で対向)する面を「筐体底面10b」と記し、筐体底面10bに隣接する4つの面のうち投影部15による投影光が射出される面を「筐体前面10a」と記し、筐体前面10a及び筐体底面10bに隣接する2つの面を「筐体側面10c」と記す。投影部15による画像の投影光は、筐体前面10aに設けられた投影レンズ153から、筐体前面10aに略垂直な方向に照射される。
【0012】
チルトアーム20は、筐体側面10cに垂直な回転軸20aの回りに回転可能に設けられており、筐体10がその回転角に応じた姿勢となるように筐体10の一部(筐体10の重心よりも筐体前面10a側)を支持する。詳しくは、チルトアーム20は、筐体10のうち各筐体側面10cの近傍において回転軸20aの回りに回転可能に取り付けられた2本の支柱22と、支柱22の先端部同士を繋ぎ、筐体側面10cに垂直な方向に延びる着座部21とを有する。チルトアーム20の回転機構は、特には限られないが、例えば、筐体10(又は筐体10の内部の構造体)及び支柱22のうちの一方に設けられた、回転軸20aに沿って延びる軸と、他方に設けられた軸受けと、が組み合わされた機構とすることができる。よって、回転軸20aは、筐体10との位置関係が固定されている。
【0013】
チルトアーム20は、回転前の初期状態(基準状態)では、
図1において二点鎖線で示すように、着座部21が筐体底面10bに接しており、かつ支柱22が筐体10の内部に格納されている。チルトアーム20は、この初期状態から、
図1の矢印Aに示すように、筐体底面10bに対して載置面2側への突出量が増大するように、回転軸20aの回りに回転する。以下では、チルトアーム20を最大まで回転させた状態を「最大回転状態」と記す。着座部21は、この回転の前後に亘って載置面2に一部が接触する曲面の接触面Sを有する。着座部21の接触面Sを載置面2に接触させながらチルトアーム20を矢印Aの方向に回転させることで、筐体10(筐体底面10b)の載置面2に対するチルト角θ(仰角)が増大する。これにより、投影レンズ153からの投影光の照射方向を調整することができる。筐体10は、筐体底面10bから載置面2に向かって突出した2つの後脚10dを有する。後脚10dは、筐体底面10bのうち、筐体前面10a側とは反対側の端部近傍であって各筐体側面10cの近傍の位置に1つずつ設けられている。チルトアーム20の回転時には、この後脚10dを支点として筐体10が回転する。
従来、筐体から載置面2に向けて支持脚を延ばすことでチルト角θを調整する機構が知られているが、このような機構では、延ばすことができる支持脚の長さが筐体の厚さにより制限されるため、筐体が薄いと大きなチルト角θが得られない。これに対し、本実施形態のプロジェクタ1は、チルトアーム20の回転によりチルト角θを調整できるため、筐体10の厚さに関わらず大きなチルト角θが得られる。
【0014】
図2は、プロジェクタ1の機能構成を示すブロック図である。
プロジェクタ1は、CPU11(Central Processing Unit)と、RAM12(Random Access Memory)と、記憶部13と、操作部14と、投影部15と、チルトアーム駆動部16(駆動部)と、通信部17と、バス18などを備える。プロジェクタ1の各部は、バス18を介して接続されている。
【0015】
CPU11は、記憶部13に記憶されているプログラム131を読み出して実行し、各種演算処理を行うことで、プロジェクタ1の動作を制御するプロセッサ(処理部)である。なお、プロジェクタ1は、複数のプロセッサ(例えば、複数のCPU)を有していてもよく、本実施形態のCPU11が実行する複数の処理を、当該複数のプロセッサが実行してもよい。この場合には、複数のプロセッサにより処理部が構成される。この場合において、複数のプロセッサが共通の処理に関与してもよいし、あるいは、複数のプロセッサが独立に異なる処理を並列に実行してもよい。
【0016】
RAM12は、CPU11に作業用のメモリ空間を提供し、一時データを記憶する。
【0017】
記憶部13は、コンピュータとしてのCPU11により読み取り可能な非一時的な記録媒体であり、プログラム131及び各種データを記憶する。記憶部13は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性メモリを含む。プログラム131は、コンピュータが読み取り可能なプログラムコードの形態で記憶部13に格納されている。
【0018】
操作部14は、各種の操作ボタンや操作スイッチなどを有し、ユーザの入力操作を受け付けて、入力操作に応じた操作情報をCPU11に出力する。
【0019】
投影部15は、光源151及び表示素子152などを備える。投影部15は、光源151から出力された光の強度分布を、画像データに応じて表示素子152により変調し、投影レンズ153を通してプロジェクタ1の外部に照射することで画像を投影する。
【0020】
光源151は、青色の波長帯域の光(青色光)、緑色の波長帯域の光(緑色光)、及び赤色の波長帯域の光(赤色光)を発する。各色の光は、レーザーダイオード又はLEDといった発光素子が射出した光をそのまま用いたものであってもよいし、発光素子が射出した光を蛍光体に入射させることで蛍光体が発生させた蛍光であってもよい。
【0021】
表示素子152は、空間的光変調素子(SOM:Spatial Optical Modulator)であり、例えば、デジタルマイクロミラー素子(DMD)である。DMDは、アレイ状に配列された複数の微小ミラーの各傾斜角度を、画像データの画素値に応じて個々に高速で切り替えて、各画素単位各画像フレーム単位でレンズ群への光反射の有無を定めることで、その反射光により、光像を形成する。1つの表示素子152に、赤色、緑色及び青色の光を時分割で入射することでカラー画像を投影してもよいし、赤色、緑色及び青色に対応する3つの表示素子152が変調した光を統合することでカラー画像を投影してもよい。表示素子152により変調された光像は、レンズ群により集光されて、投影レンズ153から投影される。
【0022】
チルトアーム駆動部16は、チルトアーム20を回転軸20aの回りに回転させるモータを有し、CPU11から送信された制御信号に応じた回転量(回転角の変化量)となるようにチルトアーム20を回転させる。CPU11は、チルトアーム駆動部16を動作させてチルトアーム20の回転角を制御する。
【0023】
通信部17は、ネットワークカード又は通信モジュール等により構成され、外部装置との間で所定の通信規格に従ってデータの送受信を行う。
【0024】
<チルト角の調整に係る構成>
次に、チルト角θの調整に係る構成について詳細に説明する。
図3は、チルトアーム20を回転させた状態のプロジェクタ1の側面図である。
図3では、初期状態のチルトアーム20の着座部21が鎖線で描かれており、最大回転状態のチルトアーム20が実線で描かれている。
図3では、説明の都合上、チルトアーム20の回転の前後で筐体10の位置を固定して描いている(後述する
図5、7-9、13も同様)。実際には、チルトアーム20の回転に伴って、筐体10の載置面2に対する仰角が増大するように筐体10の姿勢が変化する。
【0025】
図4は、初期状態のチルトアーム20の着座部21を拡大して示す側面図である。
図4に示すように、チルトアーム20の着座部21は、初期状態において載置面2に接する初期接触平面Siと、初期接触平面Siから筐体前面10a側に延び、初期状態から最大回転状態にかけて載置面2に接触する曲面の接触面Sとを有する。以下では、回転軸20aに平行な軸方向から見たときの接触面S上の点を点P
1と記す。また、点P
1のうち、初期接触平面Si側の端点を初期接触点P
10(基準接触点)とする。初期状態では、初期接触平面(初期接触面)Siが載置面2に接触するとともに、接触面Sのうち初期接触点P
10が載置面2に接触する。
図3に示すようにチルトアーム20が初期状態から回転すると、回転角φの増大に応じて、着座部21のうち載置面2に接触する点P
1が、初期状態における初期接触点P
10から接触面S内で移動する。詳しくは、初期状態から最大回転状態にかけて、接触面Sのうち載置面2に接触する点P
1は、初期接触点P
10から最終接触点P
1maxまで、回転角φに応じて変動する。したがって、接触面Sは、
図4における初期接触点P
10から最終接触点P
1maxまでの範囲である。ただし、実際の載置面2との接触位置は、
図4に示す点P
1を回転軸20aの回りに回転角φだけ回転させた位置となる。
【0026】
チルトアーム20が初期状態となっているときにチルト角θが0となるように、後脚10d及び着座部21の形状が調整されている。すなわち、筐体底面10bに垂直な方向について、後脚10dの高さと、初期状態における着座部21の筐体底面10bからの厚さとが等しくなっている。より具体的には、本実施形態では、初期状態における筐体底面10bと、載置面2とは平行である。
【0027】
以下では、
図3に示すx軸及びy軸を用いて、プロジェクタ1の各部の動作を説明する。x軸及びy軸は、回転軸20aに平行な軸方向(筐体側面10cに垂直な方向)に対して垂直であり、x軸及びy軸の原点Oは、軸方向から見て、後脚10dのうち、筐体10が載置面2に対して回転するときの支点である。x軸は、原点O及び初期接触点P
10を通り、原点Oから初期接触点P
10に向かう方向を正方向とする軸である。y軸は、x軸に垂直、かつ原点Oから載置面2に向かう方向を正方向とする軸である。また、チルトアーム20が初期状態から回転している場合において、原点Oと、着座部21のうち載置面2との接触点とを結ぶ線(後脚10d及びチルトアーム20に接する面がなす接線)が、x軸に対してなす角をチルト角θとする。以下では、着座部21の接触面S上の点P
1の座標を、点P
1(x
1,y
1)と記す(
図4参照)。
【0028】
なお、「軸方向から見て」とは、「プロジェクタ1の各部を、回転軸20aに垂直な面に投影させた投影面において」と言い換えることができる。よって、例えば、後脚10dと載置面2とが接触する位置と、チルトアーム20と載置面2とが接触する位置とが、回転軸20aに垂直な同一平面上にない場合であっても、これらを投影させた上記の投影面において本実施形態の説明が成り立っていればよい。
【0029】
本実施形態のプロジェクタ1では、チルトアーム20の回転角φの変動に応じて、チルトアーム20の接触面Sのうち載置面2と接触する点P1が、初期接触点P10から最終接触点P1maxまで接触面S内で移動する構成とすることで、回転角φに対してチルト角θが線形に変化するようになっている。言い換えると、接触面Sの形状は、回転角φに対してチルト角θが線形に変化するように調整されている。
【0030】
図5に、チルトアーム20の回転時に、チルトアーム20と載置面2との接触点Prが移動しない、比較例に係るプロジェクタを示す。このような比較例の構造では、チルトアーム20の回転角φに対してチルト角θは非線形に変化する。
【0031】
図6は、本実施形態及び比較例における、回転角φとチルト角θとの関係を示す図である。
図6のグラフに示すように、
図5の比較例のプロジェクタでは、チルトアーム20の回転角φが増大するに従って、回転角φの変化量に対するチルト角θの変化量が低減していく。よって、回転角φに対してチルト角θは非線形に変化する。
これに対し、本実施形態の構成では、チルトアーム20の回転角φの全範囲に亘って、チルト角θの変化量に対するチルト角θの変化量が一定である。すなわち、チルト角θは回転角φに対して線形に変化する(本実施形態では、チルト角θは回転角φに比例する)。
このように回転角φに対してチルト角θが線形に変化する構成とすることで、所望のチルト角θに調整するために必要なチルトアーム20の回転角φが分かりやすくなり、容易かつ正確にチルト角θを調整することができる。
【0032】
以下、
図7~11を参照して、回転角φに対してチルト角θが線形に変化するための接触面Sの形状について説明する。
図7は、チルトアーム20が初期状態となっているときのプロジェクタ1の各部の位置関係を示す図である。
図8は、チルトアーム20が初期状態と最大回転状態の中間位置にあるときのプロジェクタ1の各部の位置関係を示す図である。
図9は、チルトアーム20が最大回転状態となっているときのプロジェクタ1の各部の位置関係を示す図である。
図7~9では、チルトアーム20のうち代表的な点のみが示され、チルトアーム20の輪郭は省略されている。
【0033】
図7~9の各図における符号は、以下の内容を表す。
O…原点
20a…チルトアーム20の回転軸
φ…チルトアーム20の回転角
φ
0…初期状態におけるチルトアーム20の角度(初期接触点P
10と回転軸20aとを通る線と、回転軸20aを通りx軸に平行な直線とがなす角度)
φ
max…回転角φの最大値(最大回転状態における回転角φ)
θ…筐体10のチルト角
θ
max…チルト角θの最大値(最大回転状態におけるチルト角θ)
ψ…接触点変動角(後述)
ψ
max…接触点変動角ψの最大値(最大回転状態における接触点変動角ψ)
P
1(x
1,y
1)…初期状態における接触面S上の任意の点、及びその座標
P
10…初期接触点(接触面Sのうち、初期接触面Si側の端点)
x
10…原点Oから初期接触点P
10までのx方向の距離(初期接触点P
10のx座標)
P
1max(x
1max,y
1max)…初期状態における接触面S上の最終接触点、及びその座標
P
2(x
2,y
2)…回転角φが0より大きい状態における接触面Sと載置面2との接触点、及びその座標
P
0…回転角φが0より大きい状態における接触面Sのうち初期接触点P
10に対応する対応初期接触点(対応基準接触点)
P
max…回転角φが0より大きい状態における接触面Sのうち最終接触点P
1maxに対応する点
P
20…最大回転状態における接触面Sのうち初期接触点P
10に対応する対応初期接触点(対応基準接触点)
P
2max(x
2max,y
2max)…最大回転状態における接触面Sと載置面2との最終接触点(最大回転状態における接触面Sのうち最終接触点P
1maxに対応する点)、及びその座標
r…回転角φが0より大きい状態における接触点P
2と、回転軸20aとの距離
r
1…初期状態における初期接触点P
10と、回転軸20aとの距離
r
max…最大回転状態における最終接触点P
2maxと、回転軸20aとの距離
L0…初期状態における初期接触点P
10と回転軸20aとを通る仮想線
L1…チルトアーム20の回転角φが0より大きい状態において、回転軸20a及び接触点P
2を通る第1仮想線
L2…チルトアーム20の回転角φが0より大きい状態において、回転軸20a及び対応初期接触点P
0を通る第2仮想線
l…原点Oから回転軸20aまでの+x方向の距離(回転軸20aのx座標)
h…原点Oから回転軸20aまでの-y方向の距離(回転軸20aのy座標の絶対値)
【0034】
図10は、チルト角θ及び回転角φの定義を示す図である。
チルト角θは、x軸に対する反時計回りの角度を表す。チルト角θの変動範囲は、0≦θ≦θ
maxである。また、通常、θ
max≦90°である。
回転角φは、初期状態における初期接触点P
10と回転軸20aとを通る仮想線L0(初期状態においてx軸との間で角度φ
0をなす線)に対する反時計回りの角度を表す。回転角φの変動範囲は、0≦φ≦φ
maxである。また、通常、φ
max≦90°である。
【0035】
図11は、接触点変動角ψの定義を示す図である。
接触点変動角ψは、チルトアーム20の回転角φが0より大きい状態において、第1仮想線L1と第2仮想線L2とがなす角度であって、第2仮想線L2に対する時計回りの角度を表す。接触点変動角ψの変動範囲は、0≦ψ≦ψ
maxである。
上述のとおり、第2仮想線L2は、回転角φが0より大きい状態での接触面Sにおける対応初期接触点P
0を通り、第1仮想線L1は、回転角φが0より大きい状態での接触面Sのうちその時点における載置面2との接触点P
2を通るため、接触点変動角ψは、回転角φに応じた、対応初期接触点P
0からの接触点P
2の移動量を、回転軸20aの回りの角度で表した量に相当する。よって、接触点変動角ψは、回転角φが増大するに従って単調増加する。
【0036】
図7に示すように、初期状態において、初期接触点P
10はx軸上にあり、チルト角θは0°である。また、このときの回転軸20aと、初期接触点P
10との距離はr
1である。また、接触面Sのうち載置面2との接触する点が、初期接触点P
10から移動していないため(言い換えると、初期状態では、仮想線L0が第1仮想線L1及び第2仮想線L2の双方に相当するため)、接触点変動角ψは0°である。
【0037】
図8は、
図7に示す初期状態からチルトアーム20が回転角φだけ回転した状態を表している。
図8に示す状態では、チルトアーム20の回転に伴って、接触面Sのうち載置面2と接触する点が初期接触点P
10から移動している。すなわち、この時点における接触面S上の接触点P
2は、初期接触点P
10に対応する対応初期接触点P
0とは異なっている。接触面S内における接触点P
2の移動により、第2仮想線L2と第1仮想線L1とがなす角である接触点変動角ψが0より大きい値となっている。また、このときの回転軸20aと接触点P
2との距離rは、
図7の距離r
1よりも大きい。
【0038】
チルトアーム20の回転角φが0°からφmaxまで増大するに従って、接触点P2は、初期接触点P10と、最大回転状態における最終接触点P2maxとを結ぶ軌跡Bに沿って移動する。また、回転角φが0°からφmaxまで増大するに従って、回転軸20aと接触点P2との距離rは、距離r0から距離rmaxまで単調増加する。
【0039】
図8に示す点P
1は、
図8のチルトアーム20を初期状態に戻したと仮定したときに接触点P
2に重なる点P
1(言い換えると、初期状態におけるチルトアーム20の接触面S上の点のうち、接触点P
2に対応する点)である。
回転角φを0°からφ
maxまで変えていった場合に、各回転角φにおける接触点P
2にそれぞれ対応する点P
1をプロットして繋げたものが、初期状態における接触面Sの形状を表す。
【0040】
図9では、
図8に示す状態からさらにチルトアーム20を回転させて、最大回転状態となった場合が示されている。最大回転状態では、回転角φがφ
maxとなり、チルト角θがθ
maxとなり、接触点変動角ψがψ
maxとなっている。また、接触面Sのうち載置面2との接触点は、最終接触点P
2max(初期状態における最終接触点P
1maxに対応する点)であり、回転軸20aと最終接触点P
2maxとの距離はr
maxとなっている。
【0041】
図7~9に示すチルトアーム20の回転動作において、チルト角θは、xy平面における接触点P
2の位置に応じて定まる。ここで、回転角φが0より大きい状態(
図8)における接触点P
2を通る第1仮想線L1が、初期状態(
図7)における仮想線L0に対してなす角は、接触点P
2が対応初期接触点P
0(初期接触点P
10に対応する点)から移動することに起因して、(φ-ψ)となる。すなわち、チルトアーム20が回転角φだけ回転したときに、接触点を通る第1仮想線L1の、仮想線L0からの回転角は、φではなく(φ-ψ)となる。よって、回転角φに対してチルト角θが線形に変化する(本実施形態では、比例する)ためには、チルト角θが角度(φ-ψ)に比例し、かつ、角度(φ-ψ)が回転角φに比例すればよい。すなわち、任意のφに対して、n、aを定数(ただし、n≠0、a≠0)として下式(1)、(2)を満たせばよい。
θ=n(φ-ψ) …(1)
ψ=aφ …(2)
言い換えると、接触面Sは、任意のφに対して上記式(1)、(2)の関係が満たされる形状を有している。
式(1)、(2)が満たされれば、関係式
θ=(1-a)nφ …(3)
が満たされるため、チルト角θが回転角φに対して線形に変化することとなる。
【0042】
次に、初期状態における接触面Sの形状を表す点P
1(x
1,y
1)を、回転角φをパラメータとして、定数n、a、φ
0を用いて表す。
まず、
図8において点P
1(x
1,y
1)に対応する接触点P
2(x
2,y
2)の座標を導出する。
図8において、原点Oと接触点P
2との位置関係と、式(1)、(2)から、下式(4)が得られる。
【数9】
また、
図8において、回転軸20aと接触点P
2との位置関係から、下式(5)が得られる。
【数10】
式(4)、(5)の右辺同士から、下記式(6)が得られる。
【数11】
また、式(4)、(6)から、下記式(7)が得られる。
【数12】
回転角φをパラメータとする式(6)、(7)は、回転角φが変化したときの接触点P
2の軌跡を表す。
【0043】
図8における回転軸20aと接触点P
2との距離rは、下式(8)により表される。
【数13】
この式(8)に式(6)、(7)を代入することで、距離rを、φ、φ
0、n、aを用いて表すことができる。
【0044】
図8において、初期状態の接触面S上の点P
1(x
1,y
1)と、回転軸20aとを通る線が、x軸に対してなす角は(φ
0-ψ)=(φ
0-aφ)であるので、点P
1(x
1,y
1)の座標は下式(9)、(10)により表される。
x
1=rcos(φ
0-aφ)+l …(9)
y
1=rsin(φ
0-aφ)-h …(10)
式(9)及び式(10)に式(6)~(8)を代入することで、点P
1(x
1,y
1)の座標を、φ、φ
0、n、aを用いて表すことができる。よって、式(9)及び式(10)は、初期状態における接触面Sの形状を、回転角φをパラメータとして表す。
【0045】
なお、
図8におけるチルト角θは、下式(11)により表される。
【数14】
この式(11)に式(6)、(7)を代入することで、チルト角θを、φ、φ
0、n、aを用いて表すことができる。
【0046】
上記では、式(1)、(2)を満たす定数n、aが定められている前提で接触面Sの形状を表す式(9)、(10)を導出したが、実際にプロジェクタ1を設計する場合には、幾つかの設定値に基づいて、定数n、a、及び接触面Sの形状を表す点P1(x1,y1)を導出することとなる。以下では、プロジェクタ1の設計段階等において、長さl、長さh、長さx10(初期接触点P10の座標)、初期状態における最終接触点P1maxの座標(x1max,y1max)、及びチルトアーム20の最大の回転角φmax(以下、これらのパラメータl、h、x10、x1max、y1maxをまとめて「設計パラメータ」と記す)が決定している場合に、接触面S上の点P1(x1,y1)、及び定数n、aを、上記の設計パラメータを用いて導出する方法を説明する。
【0047】
図9に示す最大回転状態における接触点変動角ψ
maxは、
図7において、回転軸20a及び最終接触点P
1maxを通る線と、仮想線L0とがなす角に相当することから、下式(12)が得られる。
【数15】
ここで、φ
0は、
図7における初期接触点P
10と回転軸20aとの位置関係から、下式(13)のように表される。
【数16】
【0048】
図9に示す最大回転状態における最終接触点P
2max(x
2max、y
2max)は、
図7における最終接触点P
1maxを、回転軸20aの回りに角度φ
maxだけ回転させた点に相当するため、最終接触点P
2max(x
2max、y
2max)の座標は、回転移動の座標変換公式を用いて下式(14)により表される。
【数17】
【0049】
最大のチルト角θ
maxは、
図9における原点Oと最終接触点P
2maxとの位置関係、及び式(14)から、下式(15)により表される。
【数18】
【0050】
上述の式(1)、(2)は、最大回転状態においても成り立つため、下式(16)、(17)が得られる。
θmax=n(φmax-ψmax) …(16)
ψmax=aφmax …(17)
【0051】
式(16)、(17)に、式(12)、(13)、(15)を代入することで、定数n、aを上述の設計パラメータにより表すことができる。この定数n、aを、上述の式(9)、(10)(及び、付随する式(6)~(8))に代入することで、接触面S上の点P1(x1,y1)、すなわち接触面Sの形状を、上述の設計パラメータにより表すことができる。
なお、設計段階等において、初期状態の接触面Sのうち最終接触点P1max以外の任意の点(初期接触点P10を除く)が定められている場合にも、上記の最終接触点P1maxの座標を当該任意の点の座標に置き換えることで、同様の方法で接触面Sの形状を導出することができる。
【0052】
接触面Sの形状は、例えば、
図12に示す情報処理装置100により導出することができる。
情報処理装置100は、CPU101と、RAM102と、記憶部103と、バス104などを備える。情報処理装置100の各部は、バス104を介して接続されている。
【0053】
CPU101は、記憶部103に記憶されているプログラム1031を読み出して実行し、各種演算処理を行うことで、上述の計算方法により、上述の式(9)、(10)(及び、付随する式(6)~(8))で表される接触面Sの形状を導出する。
【0054】
RAM102は、CPU101に作業用のメモリ空間を提供し、一時データを記憶する。
【0055】
記憶部103は、コンピュータとしてのCPU101により読み取り可能な非一時的な記録媒体であり、プログラム1031及び各種データを記憶する。記憶部13は、例えばHDD、SSD等の不揮発性メモリを含む。
【0056】
<接触面の形状の適用条件>
上記で導出した接触面Sの形状を適用する場合には、或る適用条件を満たしていることが望ましい。具体的には、上記の適用条件は、接触面S上の点P1のy座標(式(10)により表されるy1)が、任意の回転角φに対して下式(18)を満たすこと(接触面Sが、任意の回転角φに対して下式(18)を満たす形状を有すること)、である。
y1≦0 …(18)
式(18)が満たされない場合、接触面S上の点P1が、初期接触点P10よりも+y方向側、すなわち載置面2側に位置することとなり、初期状態において初期接触点P10以外の点が載置面2に接触し、チルト角θが0より大きくなってしまうためである。この適用条件が満たされないことが判明した場合には、上述の設計パラメータのうち、長さx10(初期接触点P10のx座標)を調整することで、比較的容易に適用条件を満たすようにすることができる。長さx10は、初期状態における載置面2との接触点の位置にのみ関わるパラメータであること、また、設計パラメータのうち他のパラメータ(l、h、x1max、y1max、及びφmax)とは異なり、チルトアーム20の設計において重要な仕様となるφmaxに影響しないパラメータであることから、変更が容易なためである。
【0057】
<変形例>
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
図13は、変形例に係るプロジェクタ1の一部を示す側面図である。
変形例に係るプロジェクタ1では、筐体10の筐体側面10cに、チルトアーム20の回転角φを表す目盛り10sが設けられている。また、チルトアーム20の表面のうち回転軸20aに平行な軸方向から視認可能な位置に、チルトアーム20の延在方向を示す基準線20sが描かれている。目盛り10sは、軸方向から見て、回転軸20aを通り、所定の回転角φだけ回転したときのチルトアーム20の基準線20sと重なる向きに延びる直線である。よって、軸方向から見て、所望の回転角φに対応する目盛り10sと、チルトアーム20の基準線20sとが一直線状に重なる位置でチルトアーム20の回転を止めることで、回転角φ及びチルト角θを所望の値に調整することができる。また、目盛り10sは、
図13に例示した実線の各目盛り10s上の少なくとも一部を含むものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、目盛り10sは、破線や鎖線等であってもよいし、筐体側面10c下端の縁に設けられた点などの印であってもよい。また、目盛り10sの近傍には、対応する回転角φの値が付記されていてもよい。また、回転角φに代えて、回転角φに対応するチルト角θの値が付記されていてもよい。すなわち、目盛り10sは、チルト角θを表すものであってもよい。
【0058】
<効果>
以上のように、本実施形態に係るプロジェクタ1は、載置面2に載置されて用いられ、筐体10と、筐体10の一部を支持するチルトアーム20であって、筐体10との位置関係が固定された回転軸20aの回りに回転可能であり、回転の前後に亘って載置面2に一部が接触する接触面Sを有するチルトアーム20と、を備え、チルトアーム20の初期状態からの回転角φの変動に応じて、載置面2に対する筐体10のチルト角θが変動し、チルトアーム20の初期状態からの回転角φの変動に応じて、回転軸20aに平行な軸方向から見て、チルトアーム20の接触面Sにおける載置面2との接触点P2(点P1)が、初期状態における接触点である初期接触点P10(対応初期接触点P0)から接触面S内で移動し、軸方向から見た、回転軸20a及び接触点P2を通る第1仮想線L1と、回転軸20a及び対応初期接触点P0を通る第2仮想線L2とが、回転角φに応じてなす角度をψとした場合に、接触面Sは、n及びaを定数として、任意の回転角φに対して
θ=n(φ-ψ)
ψ=aφ
の関係が満たされる形状を有する。
これにより、チルトアーム20の回転角φと、筐体10のチルト角θとが線形の関係となるようにすることができる。このため、所望のチルト角θに調整するために必要なチルトアーム20の回転角φが把握しやすくなる。よって、容易かつ正確にチルト角を調整することができる。
例えば、壁や天井等に組み込まれるプロジェクタ1のような、組み込み式のプロジェクタなどでは、正確な角度で対象物に画像を投影することが求められる場合があるが、一旦、壁等の内部に組み込まれると、投影される画像を見ながらプロジェクタの位置や角度を微調整することが難しいことがある。これに対し、本実施形態のプロジェクタ1は、上述のような場合であっても、チルトアーム20の角度を調整することで簡易に所望のチルト角θとなるように設置することができる。また、設置時にプロジェクタ1に電源を投入できない場合等、設置時には投影される画像を正確に視認できない場合であっても、チルトアーム20の角度を調整することで簡易に所望のチルト角θとなるように投影することができる。
【0059】
また、軸方向から見た、載置面2に対する筐体10の回転の支点を原点Oとし、軸方向に垂直、かつ、軸方向から見て、原点O及び初期状態におけるチルトアーム20の初期接触点P
10を通り、原点Oから、初期状態におけるチルトアーム20の初期接触点P
10に向かう方向を正方向とする軸をx軸とし、x軸に垂直、かつ原点Oから載置面2に向かう方向を正方向とする軸をy軸とし、原点Oから回転軸20aまでの+x方向の距離をlとし、原点Oから回転軸20aまでの-y方向の距離をhとし、軸方向から見て、初期状態において回転軸20a及び初期接触点P
10を通る線と、回転軸20aを通りx軸に平行な直線とがなす角をφ
0とした場合に、初期状態におけるチルトアーム20の接触面S上の点P
1(x
1,y
1)の座標が、回転角φをパラメータとして
x
1=rcos(φ
0-aφ)+l
y
1=rsin(φ
0-aφ)-h
により表される。(ただし、
【数19】
【数20】
【数21】
である。)
このような形状の接触面Sとすることで、チルトアーム20の回転角φと、筐体10のチルト角θとが、任意の回転角φに対して
θ=n(φ-ψ)
ψ=aφ
の関係を満たすようにすることができる。すなわち、回転角φと、チルト角θとが線形の関係となるようにすることができる。よって、容易かつ正確にチルト角を調整することができる。
【0060】
また、本実施形態に係るプロジェクタ1は、載置面2に載置されて用いられ、筐体10と、筐体10の一部を支持するチルトアーム20であって、筐体10との位置関係が固定された回転軸20aの回りに回転可能であり、回転の前後に亘って載置面2に一部が接触する接触面Sを有するチルトアーム20と、を備え、チルトアーム20の初期状態からの回転角φの変動に応じて、載置面2に対する筐体10のチルト角θが変動し、チルトアーム20の初期状態からの回転角φの変動に応じて、回転軸20aに平行な軸方向から見て、チルトアーム20の接触面Sにおける載置面2との接触点P
2(点P
1)が、初期状態における接触点である初期接触点P
10(対応初期接触点P
0)から接触面S内で移動し、軸方向から見た、回転軸20a及び接触点P
2を通る第1仮想線L1と、回転軸20a及び対応初期接触点P
0を通る第2仮想線L2とが、回転角φに応じてなす角度をψとし、軸方向から見た、載置面2に対する筐体10の回転の支点を原点Oとし、軸方向に垂直、かつ、軸方向から見て、原点O及び初期状態におけるチルトアーム20の初期接触点P
10を通り、原点Oから、初期状態におけるチルトアーム20の初期接触点P
10に向かう方向を正方向とする軸をx軸とし、x軸に垂直、かつ原点Oから載置面2に向かう方向を正方向とする軸をy軸とし、原点Oから回転軸20aまでの+x方向の距離をl、原点Oから回転軸20aまでの-y方向の距離をhとし、初期状態における初期接触点P
10のx座標をx
10とし、回転角φが最大値であるφ
maxとなるときの最終接触点P
2maxの、初期状態における対応点(最終接触点P
1max)のx座標をx
1max、y座標をy
1maxとした場合に、初期状態におけるチルトアーム20の接触面S上の点P
1(x
1,y
1)の座標が、回転角φをパラメータとして
x
1=rcos(φ
0-aφ)+l
y
1=rsin(φ
0-aφ)-h
により表される。(ただし、
【数22】
【数23】
【数24】
【数25】
【数26】
【数27】
【数28】
【数29】
である。)
これにより、チルトアーム20の回転角φと、筐体10のチルト角θとが線形の関係となるようにすることができる。このため、所望のチルト角θに調整するために必要なチルトアーム20の回転角φが把握しやすくなる。よって、容易かつ正確にチルト角を調整することができる。
また、上記の式によれば、l、h、x
10、x
1max、y
1maxが与えられた状態において、チルトアーム20の回転角φと、筐体10のチルト角θとが線形の関係となるような接触面Sの形状を決定することができる。
【0061】
また、接触面Sは、任意の回転角φに対してy1≦0を満たす形状を有する。これにより、初期状態でチルト角θが0°より大きくならないようにすることができる。
【0062】
また、変形例に係るプロジェクタ1は、筐体10に、チルトアーム20の回転角φ、又は当該回転角φに対応するチルト角θを表す目盛り10sが設けられている。これにより、目視で正確な角度を確認しながらチルト角θを調整することができる。
【0063】
また、プロジェクタ1は、チルトアーム20を回転させるチルトアーム駆動部16と、チルトアーム駆動部16を動作させてチルトアーム20の回転角φを制御するCPU11と、を備える。これにより、チルトアーム20を回転させる制御によりチルト角θを正確に調整することができる。
【0064】
また、プロジェクタ1は、筐体10の内部に、光源151から射出された光を用いて投影面に画像を投影する投影部15を備える。これにより、プロジェクタ1からの画像の投影方向を正確に調整することができる。
【0065】
<その他>
なお、上記実施形態における記述は、本発明に係る電子機器の一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、チルトアーム駆動部16が、CPU11による制御に従ってチルトアーム20を回転させる例を用いて説明したが、これに限られず、チルトアーム20をユーザが手動で回転可能な構成としてもよい。この場合、プロジェクタ1は、チルトアーム駆動部16を有していなくてもよい。
【0066】
また、支持部として、着座部21及び2本の支柱22を有するチルトアーム20を例示したが、これに限定する趣旨ではない。支持部は、筐体10の筐体底面10bよりも載置面2側に突出するように回転し、かつ回転角φの変動に応じて載置面2との接触点が接触面S内で移動する構造であれば、どのようなものであってもよい。
【0067】
また、基準状態として、チルトアーム20の初期状態を例示したが、これに限られず、初期状態と最大回転状態との間の任意の状態を基準状態としてもよい。この場合の回転角φは、負の値となることがあってもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、軸方向から見て後脚10dの角部が1点で載置面2に接触する態様を例示したが、これに限られない。例えば、後脚10dの角部が僅かに丸みを帯びており、チルト角θの変化に応じて後脚10dのうち載置面2と接触する点が僅かに移動する態様であってもよい。ここで、後脚10dの角部の丸みが僅かであるとは、当該丸みに起因して式(1)及び式(2)に生じる誤差が無視できる程度であること、すなわち、チルト角θと回転角φとが実質的に線形の関係を有しており、かつ接触点変動角ψと回転角φとが実質的に線形の関係を有している、とみなすことのできる程度であることをいう。
【0069】
また、電子機器としてプロジェクタ1を例示したが、これに限られない。電子機器は、載置面に載置されて用いられ、筐体の載置面に対するチルト角θを調整する機能を有する任意の機器であってもよい。
【0070】
また、上記実施形態におけるプロジェクタ1の各構成要素の細部構成及び細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。
【0071】
本発明の実施の形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
載置面に載置されて用いられる電子機器であって、
筐体と、
前記筐体の一部を支持する支持部であって、前記筐体との位置関係が固定された回転軸の回りに回転可能であり、前記回転の前後に亘って前記載置面に一部が接触する接触面を有する支持部と、
を備え、
前記支持部の基準状態からの回転角φの変動に応じて、前記載置面に対する前記筐体のチルト角θが変動し、
前記支持部の前記基準状態からの前記回転角φの変動に応じて、前記回転軸に平行な軸方向から見て、前記支持部の前記接触面における前記載置面との接触点が、前記基準状態における接触点である基準接触点から前記接触面内で移動し、
前記軸方向から見た、前記回転軸及び前記接触点を通る第1仮想線と、前記回転軸及び前記基準接触点に対応する対応基準接触点を通る第2仮想線とが、前記回転角φに応じてなす角度をψとした場合に、前記接触面は、n及びaを定数として、任意の前記回転角φに対して
θ=n(φ-ψ)
ψ=aφ
の関係が満たされる形状を有する電子機器。
<請求項2>
前記軸方向から見た、前記載置面に対する前記筐体の回転の支点を原点とし、
前記軸方向に垂直、かつ、前記軸方向から見て、前記原点及び前記基準状態における前記支持部の前記基準接触点を通り、前記原点から、前記基準状態における前記支持部の前記基準接触点に向かう方向を正方向とする軸をx軸とし、
前記x軸に垂直、かつ前記原点から前記載置面に向かう方向を正方向とする軸をy軸とし、
前記原点から前記回転軸までの+x方向の距離をlとし、
前記原点から前記回転軸までの-y方向の距離をhとし、
前記軸方向から見て、前記基準状態において前記回転軸及び前記基準接触点を通る線と、前記回転軸を通り前記x軸に平行な直線とがなす角をφ
0とした場合に、
前記基準状態における前記支持部の前記接触面上の点P
1(x
1,y
1)の座標が、前記回転角φをパラメータとして
x
1=rcos(φ
0-aφ)+l
y
1=rsin(φ
0-aφ)-h
により表される、請求項1に記載の電子機器。
(ただし、
【数30】
【数31】
【数32】
である。)
<請求項3>
載置面に載置されて用いられる電子機器であって、
筐体と、
前記筐体の一部を支持する支持部であって、前記筐体との位置関係が固定された回転軸の回りに回転可能であり、前記回転の前後に亘って前記載置面に一部が接触する接触面を有する支持部と、
を備え、
前記支持部の基準状態からの回転角φの変動に応じて、前記載置面に対する前記筐体のチルト角θが変動し、
前記支持部の前記基準状態からの前記回転角φの変動に応じて、前記回転軸に平行な軸方向から見て、前記支持部の前記接触面における前記載置面との接触点が、前記基準状態における接触点である基準接触点から前記接触面内で移動し、
前記軸方向から見た、前記回転軸及び前記接触点を通る第1仮想線と、前記回転軸及び前記基準接触点に対応する対応基準接触点を通る第2仮想線とが、前記回転角φに応じてなす角度をψとし、
前記軸方向から見た、前記載置面に対する前記筐体の回転の支点を原点とし、
前記軸方向に垂直、かつ、前記軸方向から見て、前記原点及び前記基準状態における前記支持部の前記基準接触点を通り、前記原点から、前記基準状態における前記支持部の前記基準接触点に向かう方向を正方向とする軸をx軸とし、
前記x軸に垂直、かつ、前記原点から前記載置面に向かう方向を正方向とする軸をy軸とし、
前記原点から前記回転軸までの+x方向の距離をlとし、
前記原点から前記回転軸までの-y方向の距離をhとし、
前記基準状態における前記基準接触点のx座標をx
10とし、
前記回転角φが最大値であるφ
maxとなるときの前記接触点の、前記基準状態における対応点のx座標をx
1max、y座標をy
1maxとした場合に、
前記基準状態における前記支持部の前記接触面上の点P
1(x
1,y
1)の座標が、前記回転角φをパラメータとして
x
1=rcos(φ
0-aφ)+l
y
1=rsin(φ
0-aφ)-h
により表される電子機器。
(ただし、
【数33】
【数34】
【数35】
【数36】
【数37】
【数38】
【数39】
【数40】
である。)
<請求項4>
前記接触面は、任意の前記回転角φに対してy
1≦0を満たす形状を有する、請求項2又は3に記載の電子機器。
<請求項5>
前記筐体に、前記支持部の前記回転角φ、又は当該回転角φに対応する前記チルト角θを表す目盛りが設けられている、請求項1に記載の電子機器。
<請求項6>
前記支持部を回転させる駆動部と、
前記駆動部を動作させて前記支持部の前記回転角φを制御する処理部と、
を備える、請求項1に記載の電子機器。
<請求項7>
前記筐体の内部に、光源から射出された光を用いて投影面に画像を投影する投影部を備える、請求項1に記載の電子機器。
【符号の説明】
【0072】
1 プロジェクタ(電子機器)
2 載置面
10 筐体
10a 筐体前面
10b 筐体底面
10c 筐体側面
10d 後脚
10s 目盛り
11 CPU(処理部)
12 RAM
13 記憶部
131 プログラム
14 操作部
15 投影部
151 光源
152 表示素子
153 投影レンズ
16 チルトアーム駆動部(駆動部)
17 通信部
18 バス
20 チルトアーム(支持部)
20a 回転軸
20s 基準線
21 着座部
22 支柱
100 情報処理装置
101 CPU
103 記憶部
1031 プログラム
L0 仮想線
L1 第1仮想線
L2 第2仮想線
O 原点
P10 初期接触点(基準接触点)
P20、P0 対応初期接触点(対応基準接触点)
P1 接触面S上の点
P1max、P2max、Pmax 最終接触点
P2 接触点
S 接触面
Si 初期接触平面
θ、θmax チルト角
φ、φmax 回転角
ψ、ψmax 接触点変動角