(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019777
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】掘削装置のメインフレーム旋回機構及び旋回方法
(51)【国際特許分類】
E21B 7/20 20060101AFI20240206BHJP
E21B 11/04 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
E21B7/20
E21B11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122446
(22)【出願日】2022-08-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.展示会 第4回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO2022) 幕張メッセ 展示ホール3 F-61 2022年5月25日公開 2.セミナー 第4回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO2022) 幕張メッセ 製品・技術PRセミナーI会場 2022年5月25日公開 3.自社(山本基礎工業株式会社)ウェブサイト https://www.youtube.com/watch?v=Zwy7uH74IHw 2022年7月5日公開
(71)【出願人】
【識別番号】501273303
【氏名又は名称】山本基礎工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【弁理士】
【氏名又は名称】浅川 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100197996
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 武彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 武一
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AB16
2D129BA03
2D129BB03
2D129DC11
2D129EA02
2D129EA11
2D129EB14
(57)【要約】
【課題】 ベース部に備わるチュービングユニット、ケーシングチューブ及び旋回補助冶具を用いることで、メインフレームをベース部上で所定位置に簡易且つ安定した状態で旋回可能とする掘削装置のメインフレーム旋回機構を提供することである。
【解決手段】 チュービングユニット12を中心として設けられるベースフレーム14aと、チュービングユニット12上でハンマーグラブを水平移動させる水平フレーム部13及び水平フレーム部13をベースフレーム14a上に支持する柱部17a~17dを有するメインフレーム11とを備え、チュービングユニット12に配置されるケーシングチューブ19と水平フレーム部13とが旋回補助冶具24を介して連結され、柱部17a~17dがベースフレーム14aから離脱された状態でケーシングチューブ19を回転させ、旋回補助冶具24と共にメインフレーム11を所定位置に旋回させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チュービングユニットと、
チュービングユニットを中心として設けられるベースフレームと、
チュービングユニット上でハンマーグラブを水平移動させるスライドベースを有する水平フレーム部及び該水平フレーム部を前記ベースフレーム上に支持する複数の柱部を有するメインフレームと、を備えた掘削装置において、
前記複数の柱部がベースフレームと着脱自在に設けられると共に、前記チュービングユニットに配置されるケーシングチューブと前記水平フレーム部とが旋回補助冶具を介して連結され、
前記複数の柱部が前記ベースフレームから離脱された状態で前記ケーシングチューブを回転させ、前記旋回補助冶具と共に前記メインフレームを所定位置に旋回させる掘削装置のメインフレーム旋回機構。
【請求項2】
前記ケーシングチューブと水平フレーム部との間に配置された旋回補助冶具が、ケーシングチューブに連結される第1連結部と、水平フレーム部に連結される第2連結部と、を備える請求項1に記載の掘削装置のメインフレーム旋回機構。
【請求項3】
前記複数の柱部は、前記チュービングユニットを中心として回転対称形に配置されている請求項1に記載の掘削装置のメインフレーム旋回機構。
【請求項4】
前記ケーシングチューブは、前記チュービングユニットの回転駆動に伴って回転する請求項1に記載の掘削装置のメインフレーム旋回機構。
【請求項5】
チュービングユニットと、
チュービングユニットを中心として設けられるベースフレームと、
チュービングユニット上でハンマーグラブを水平移動させるスライドベースを有する水平フレーム部及び該水平フレーム部を前記ベースフレーム上に支持する複数の柱部を有するメインフレームと、を備えた掘削装置において、
前記チュービングユニットに配置されるケーシングチューブと前記水平フレーム部との間に旋回補助冶具を配置し、旋回補助冶具をケーシングチューブと水平フレーム部のそれぞれに連結し、前記複数の柱部をベースフレームから離脱させたのち、前記チュービングユニットを回転駆動してケーシングチューブを回転させ、前記旋回補助冶具と共に前記メインフレームを所定位置に旋回させる掘削装置のメインフレーム旋回方法。
【請求項6】
前記メインフレームを、前記チュービングユニットを中心とした所定位置に旋回させたのち、ベースフレームにメインフレームの複数の柱部を固定する請求項5に記載の掘削装置のメインフレーム旋回方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回可能なメインフレームを備えた掘削装置のメインフレーム旋回機構及び旋回方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設現場における基礎杭造成工事では、ケーシングチューブを地中に埋設して孔壁を形成するチュービングユニットと、前記孔壁内に落下させて地中を掘削し、掘削された土砂を把持して排出するハンマーグラブとを備えた掘削機によるオールケーシング工法が用いられている(特許文献1,2)。
【0003】
上記オールケーシング工法にあっては、ハンマーグラブをメインフレームによって高所から吊下げた状態で掘削や搬送を行うため、上空に広い作業空間を要していた。このため、屋根のある場所やトンネル等の高さ制限のある場所ではこのような工法は使用できないといった問題があった。これを改善する手段として、メインフレームを水平方向にスライドさせてケーシングチューブやH鋼等を移送可能とした吊込搬送装置が開示されている(特許文献3)。この吊込搬送装置は、自走可能な台車上にメインフレームを載置して上空制限のある狭い作業場所近辺まで移動することができる。そして、先端部に掘管等を吊下げたレールを左右方向にスライド移動させ、所定の掘削場所に掘管等を埋め込むことを繰り返し行うものである。
【0004】
また、特許文献4には、幅や高さ制限のある狭い掘削場所にも搬入設置可能で、低空での掘削作業を容易に行うことができると共に、掘削された土砂等をその掘削場所を中心とした周囲の空きスペースに向けて旋回移動させることで、土砂の排出方向を変更可能とした掘削装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-205261号公報
【特許文献2】特開平10-205263号公報
【特許文献3】特開平8-48492号公報
【特許文献4】特許第5621026号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に開示されている従来の掘削装置にあっては、クレーン等の重機によってチュービングユニットを掘削場所に搬送及び設置して掘削作業を行うため、作業スペースが狭い場所での作業が困難であった。また、高さ制限のある場所では、大型のクレーンが使用できないため、十分な深さの掘削ができないといった問題があった。
【0007】
一方、特許文献3に開示されている搬送装置にあっては、従来の架台に相当する第1、第2のレールを水平方向に設置した構成となっているため、上空制限のある狭い場所において、掘管やH鋼といった被搬送物を前記レールによってスライド移動させることで所定の作業場所に搬送することが可能である。しかしながら、この種の搬送装置は、掘管やH鋼といった搬送物を水平方向に吊下げた状態で搬送させることを目的とした装置である。このため、レールの先端部に前記被搬送物を吊下げる構造となっているが、その構造上、前記被搬送物を装置本体部から大きく突出させることができず、作業範囲が限られたものとなる場合がある。さらに、ハンマーグラブやケーシングチューブなどは重量があるため、前記レールのみでは搬送自体が容易でないといった問題も有している。
【0008】
また、ハンマーグラブで掘り起こした土砂を掘削場所から排出する際には、クレーンを旋回させるなどして移動しなければならず、土砂の排出作業も煩雑であった。
【0009】
特許文献4にあっては、掘削された土砂をその掘削場所を中心とした周囲の空きスペースに向けて旋回移動させることで土砂の排出が容易となるが、ハンマーグラブを吊り下げ移動させるメインフレームの旋回構造が複雑で部品点数も多くなっている。また、前記メインフレームの旋回機構部がチュービングユニットの回転部上に構成されるため、支持が不安定となるおそれがあった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、ベース部に備わるチュービングユニット、ケーシングチューブ及び旋回補助冶具を用いることで、メインフレームをベース部上で、所定位置に簡易且つ安定した状態で旋回させることのできる掘削装置のメインフレーム旋回機構及び旋回方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の掘削装置のメインフレーム旋回機構は、チュービングユニットと、チュービングユニットを中心として設けられるベースフレームと、チュービングユニット上でハンマーグラブを水平移動させるスライドベースを有する水平フレーム部及び該水平フレーム部を前記ベースフレーム上に支持する複数の柱部を有するメインフレームと、を備えた掘削装置において、前記複数の柱部がベースフレームと着脱自在に設けられると共に、前記チュービングユニットに配置されるケーシングチューブと前記水平フレーム部とが旋回補助冶具を介して連結され、前記複数の柱部が前記ベースフレームから離脱された状態で前記ケーシングチューブを回転させ、前記旋回補助冶具と共に前記メインフレームを所定位置に旋回させる。
【0012】
また、本発明の掘削装置のメインフレーム旋回方法は、チュービングユニットと、チュービングユニットを中心として設けられるベースフレームと、チュービングユニット上でハンマーグラブを水平移動させるスライドベースを有する水平フレーム部及び該水平フレーム部を前記ベースフレーム上に支持する複数の柱部を有するメインフレームと、を備えた掘削装置において、前記チュービングユニットに配置されるケーシングチューブと前記水平フレーム部との間に旋回補助冶具を配置し、旋回補助冶具をケーシングチューブと水平フレーム部のそれぞれに連結し、前記複数の柱部をベースフレームから離脱させたのち、前記チュービングユニットを回転駆動してケーシングチューブを回転させ、前記旋回補助冶具と共に前記メインフレームを所定位置に旋回させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の掘削装置のメインフレーム旋回機構によれば、掘削装置の基本構成要素であるチュービングユニット及びチュービングユニットに配置されるケーシングチューブと、専用の旋回補助冶具といった最小部品点数による簡易な構成でありながら、水平フレーム部及び複数の柱部からなるメインフレームをベースフレーム上で所定位置に旋回させることができる。これによって、掘削及び掘削された土砂の排出を作業現場の環境に応じて効率よく行うことができる。
【0014】
また、本発明の掘削装置のメインフレーム旋回方法によれば、チュービングユニットに配置されるケーシングチューブとメインフレームの水平フレーム部との間に連結される旋回補助冶具を用いることで、メインフレーム全体を所定位置に容易且つ安定的に旋回させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】正面方向に向けてメインフレームを旋回させた掘削装置の斜視図である。
【
図3】側面方向に向けてメインフレームを旋回させた掘削装置の斜視図である。
【
図4】メインフレームの旋回機構を示す分解斜視図である。
【
図5】ケーシングチューブ及び旋回補助冶具の斜視図である。
【
図6】掘削エリアに向けて移動する掘削装置の平面図である。
【
図7】旋回補助冶具をケーシングチューブ上に向けて搬送する状態を示す側面図である。
【
図8】旋回補助冶具をケーシングチューブ及び水平フレーム部に連結した状態を示す側面図である。
【
図9】メインフレームが側面方向に旋回する状態を示す側面図である。
【
図10】メインフレームの旋回状態を示す平面図である。
【
図11】メインフレームを旋回させた掘削装置を掘削エリアに移動した状態を示す平面図である。
【
図12】ハンマーグラブを掘削エリアに移動する状態を示す側面図である。
【
図13】ハンマーグラブを排出エリアに移動する状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の掘削装置10は、上空スペースが限られた低空頭での掘削作業を容易にする構造となっており、
図1乃至
図4に示すように、ベース部14と、ベース部14上で所定位置に向けて旋回可能に配置されるメインフレーム11とによって構成されている。ベース部14は、ケーシングチューブ19を用いて地中に孔壁を形成するチュービングユニット12と、チュービングユニット12上でメインフレーム11の柱部17a~17dが着脱可能に連結される台座部18a~18dを有するベースフレーム14aと、ベースフレーム14aを支持する支持フレーム14bと、支持フレーム14bに取り付けられ、掘削装置10を走行させる一対のクローラ15と、を備えている。
【0017】
チュービングユニット12は、ケーシングチューブ19をクランプするクランプ機能、クランプしたケーシングチューブ19を地中に押し込む押込機能、押し込んだケーシングチューブ19を地中から引き抜く引抜機能及び押込/引抜方向を回転の中心として時計周り/反時計周りにケーシングチューブ19を回転させる回転機能を有している。メインフレーム11は、チュービングユニット12上において、ケーシングチューブ19やハンマーグラブ22等を水平方向に移動させるスライドベース29を有する水平フレーム部13と、水平フレーム部13をベースフレーム14a上に支持する複数(4本)の柱部17a~17dとによって一体形成されている。4本の柱部17a~17dは、ベースフレーム14a上に設けられている4か所の台座部18a~18dに着脱可能に固定される。
【0018】
水平フレーム部13は、4本の柱部17a~17dの上端部で支持される基部13aと、2本の柱部17a,17bから水平方向に延設し、ベースフレーム14a上から外方向に張り出す張出部13bとによって形成されている。張出部13bは、チュービングユニット12上からスライドベース29を退避させて、ケーシングチューブ19やハンマーグラブ22等を取り付けるために設けられ、又はハンマーグラブ22によって掘削された土砂を所定位置に排出するために設けられている。スライドベース29は、ケーシングチューブ19やハンマーグラブ22を吊り下げた状態で、水平フレーム部13の基部13aと張出部13bとの間を往復移動する。なお、スライドベース29の移動機構、ハンマーグラブ22やケーシングチューブ19等の吊り下げ昇降機構、一対のクローラ15による走行機構等については、周知の電動あるいは油圧等による駆動機構を用いるものであるので、詳細については省略する。
【0019】
図1及び
図2は、水平フレーム部13の張出部13bがクローラ15の走行方向(正面方向)に向くように、メインフレーム11を旋回させた形態を示したものである。
図3は、メインフレーム11を反時計周りに90度水平方向に旋回させて、張出部13bがクローラ15の走行方向と直交する方向(側面方向)に位置させた形態を示したものである。
【0020】
図4は、メインフレーム11を前記正面方向から側面方向に向けて旋回する機構を示したものである。メインフレーム11の旋回操作は、柱部17a~17dをベースフレーム14a上の台座部18a~18dから離脱させたのち、チュービングユニット12に配置されるケーシングチューブ19と、このケーシングチューブ19の上部に連結される旋回補助冶具24とを用いて行われる。旋回の駆動は、ケーシングチューブ19及び旋回補助冶具24を一体としたチュービングユニット12のクランプ機能、押込/引抜機能及び押込/引抜方向の中心軸Cを中心とした時計周り/反時計周りの回転機能を用いて行われる。所定位置に旋回したメインフレーム11は、ベースフレーム14aの台座部18a~18dに、旋回後の対応する柱部17a~17dが連結される。メインフレーム11の旋回機構の詳細については後述する。
【0021】
ベース部14には、一対のクローラ15を駆動させるコントローラ(図示せず)が設けられる。コントローラからの遠隔操作によって離れた場所から、一対のクローラ15の前進、後進、左右方向の旋回の各動作及び速度調整などが可能となっている。遠隔操作は有線又は無線を利用することができる。
【0022】
チュービングユニット12の底部12bには、掘削装置10全体を地面に対して安定的に支持する4本の支持脚12cが、前記底部12bの四隅に伸縮可能に設けられている。4か所に設けられた支持脚12cは、クローラ15によって走行する際は、チュービングユニット12内に収容され、メインフレーム11の旋回作業や掘削作業を行う際に、4か所の支持脚12cが底部12bから下方に伸びて、掘削装置10が地面に対して平衡状態を維持するように支持される。
【0023】
図4に示したように、ベースフレーム14aには、メインフレーム11の4本の柱部17a~17dが連結される台座部18a~18dが設けられている。メインフレーム11の4本の柱部17a~17dは、チュービングユニット12を中心とした回転対称形に配置されている。また、ベースフレーム14aの4か所の台座部18a~18dも4本の柱部17a~17dと対応するような回転対称形の配置となっている。このため、ベース部14に対して、メインフレーム11の向きを90度単位で変更することができる。このようにして、メインフレーム11の向きを変更したのち、台座部18a~18dと柱部17a~17dとはボルト等を介して固定される。
【0024】
チュービングユニット12には、ハンマーグラブ22を挿通する中空部23を有する円筒状の回転部12aを備えている。また、回転部12aの内周面にはケーシングチューブ19の外周面をクランプするクランプ部材20が設けられている。
【0025】
メインフレーム11の水平フレーム部13は、平行に延びる一対のガイドレール27と、この一対のガイドレール27間を移動するスライドベース29とを有している。前記一対のガイドレール27の対向する内側面には、スライドベース29を水平方向に移動可能に載置するためのガイド溝(図示せず)がそれぞれ形成されている。
【0026】
前記スライドベース29には、
図4に示したケーシングチューブ19、旋回補助冶具24及び
図2に示したハンマーグラブ22を、ワイヤ(図示せず)を介して吊下げる滑車32が設けられている。滑車32は、水平フレーム部13の張出部13bの端部に設けられるウインチ(図示せず)を介して巻き上げ操作される。
【0027】
前記ハンマーグラブ22は、建築基礎の深孔掘削や根切りに使用するもので、
図2に示したように、ケース22aと、このケース22aの先端に開閉可能に設けられる一対のシェル22bとを備えている。ケース22aには、滑車32を介したワイヤの巻き上げ操作によりシェル22bを開閉させるための機構(図示せず)が組み込まれている。
【0028】
図4に示したメインフレーム11の旋回機構は、チュービングユニット12と、チュービングユニット12に配置されるケーシングチューブ19と、このケーシングチューブ19と水平フレーム部13との間に介在させる旋回補助冶具24とによって構成されている。ケーシングチューブ19は、スライドベース29(
図1乃至
図3参照)に吊り下げてチュービングユニット12上に移送し、回転部12a内に降下させたのち、クランプ部材20によってクランプする。その後、スライドベース29に旋回補助冶具24を付け替え、チュービングユニット12内にクランプされたケーシングチューブ19上に移送し、ケーシングチューブ19の上部に旋回補助冶具24を連結する。
【0029】
図5は、ケーシングチューブ19と旋回補助冶具24との連結構造を示したものである。旋回補助冶具24は、ケーシングチューブ19の端部に連結される円筒状の第1連結部25と、第1連結部25の上方から水平方向に突出するアーム状の第2連結部26とによって一体形成されている。第1連結部25は、ケーシングチューブ19と同径の円筒体によって形成され、ケーシングチューブ19の端部に設けられている接続面19aに沿って係合される外周面25aと、外周面25aの上部を覆う天板部25dとによって形成されている。前記天板部25dの中央部には、旋回補助冶具24をスライドベース29(
図1乃至
図3参照)に吊り下げる吊下具(図示せず)を通す挿通孔25cが設けられている。ケーシングチューブ19の接続面19aには、ケーシングチューブ同士を連結固定するための接続孔19bが複数設けられており、この複数の接続孔19bに対応するように、第1連結部25の外周面25aにも複数の接続孔25bが設けられている。
【0030】
第1連結部25は、ケーシングチューブ19と同形状の別のケーシングチューブを所定の長さに加工することによって形成することができる。第1連結部25とケーシングチューブ19とは、第1連結部25の外周面25aをケーシングチューブ19の接続面19aに被せるようにして係合させたのち、ケーシングチューブ19の接続面19aに設けられている複数の接続孔19bと第1連結部25に設けられている複数の接続孔25bとをボルトを介して固定される。なお、ボルトによる固定箇所は、第1連結部25がケーシングチューブ19から容易に外れないように、少なくとも対向する2か所以上であればよい。
【0031】
第2連結部26は、第1連結部25の天板部25dの中心部の挿通孔25cを挟んで平行に延びる一対のアーム26aによって形成されている。一対のアーム26aは、両端が第1連結部25より外側に突出しており、その両端部には水平フレーム部13との連結を図るための係合溝26bが4か所に設けられている。なお、上記旋回補助冶具24を構成する第1連結部25及び第2連結部26は一例であり、このような形状に限定されるものではなく、ケーシングチューブ19と水平フレーム部13とを確実且つ安定的に連結可能なものであればよい。
【0032】
旋回補助冶具24と水平フレーム部13との連結は、
図4に示したように、一対のガイドレール27の下方の4か所に設けられている係合片13cに、旋回補助冶具24の一対のアーム26aに設けられている4か所の係合溝26bを係合させ、ボルトを介して固定する(
図8参照)。これによって、ケーシングチューブ19とメインフレーム11とが旋回補助冶具24を介して連結され、ベースフレーム14a上から離脱させたメインフレーム11を、ケーシングチューブ19が配置されているチュービングユニット12の上記各機能を用いることによって、所定位置に向けて旋回させることができる。
【0033】
上記旋回機構によって
図1に示した正面位置から
図3に示した側面位置に旋回されたメインフレーム11は、柱部17aが台座部18bに、柱部17bが台座部18cに、柱部17cが台座部18dに、柱部17dが台座部18aに、それぞれ入れ替わった形で連結されている。このように、メインフレーム11の90度単位の旋回によって柱部17a~17dと、台座部18a~18dの対応位置が変動する。
【0034】
次に
図6乃至
図10に基づいて、メインフレーム11の旋回方法について説明する。本実施形態では、
図6に示すように、建造物等によってL字状に区画された角部を掘削エリアA、この掘削エリアAの図中右方向のスペースを排出エリアBとする。また、ケーシングチューブ19は、予めチュービングユニット12に移送されて配置されているものとする。
(1)クローラ15を駆動して、
図1及び
図2に示した形態の掘削装置10を掘削エリアAに向かう手前の所定位置に移動する(
図6)。移動したのち、
図2に示したように、チュービングユニット12に備わる4か所の支持脚12cを地面上に接地させて、掘削装置10が平衡状態となるように支持する。
(2)スライドベース29を水平フレーム部13の張出部13bまで移動させたのち、スライドベース29にワイヤ33を介して旋回補助冶具24を吊り下げ、チュービングユニット12に配置されているケーシングチューブ19の上方に向けて旋回補助冶具24を移動させる(
図7)。
(3)
図5に示したように、旋回補助冶具24の第1連結部25をケーシングチューブ19に連結すると共に、旋回補助冶具24の第2連結部26に設けられている係合溝26bに、水平フレーム部13に設けられている係合片13cを係合させて連結する(
図8)。
(4)ベースフレーム14aの台座部18a~18dと、メインフレーム11の柱部17a~17dとの結合を解除したのち、チュービングユニット12の引抜機能を用いてメインフレーム11をリフトアップすると共に、回転部12aを回転駆動させて、ケーシングチューブ19及び旋回補助冶具24と一体となったメインフレーム11全体を、ベースフレーム14a上で旋回させる(
図9)。
(5)
図10に示すように、メインフレーム11を反時計周りに90度となる右側面位置まで旋回させたのち、
図3に示したように、対応する柱部17a~17dと、ベースフレーム14a上の台座部18a~18dとを対向させ、この位置でチュービングユニット12の押込機能を用いてメインフレーム11をリフトダウンさせたのち、柱部17a~17dと台座部18a~18dとをボルトによって再び固定する。
上記(1)~(5)の工程によってメインフレーム11の旋回作業が終了したのち、旋回補助冶具24の連結を水平フレーム部13及びケーシングチューブ19から解除する。その後、旋回補助冶具24を吊り下げているスライドベース29を、水平フレーム部13の張出部13bに向けて移動し、旋回補助冶具24を取り外す。さらに、チュービングユニット12に配置されているケーシングチューブ19を、ワイヤを介してスライドベース29に吊り下げ、前記同様に水平フレーム部13の張出部13bまで移動させて取り外す。
【0035】
次に、
図11乃至
図13を参照しつつ、ハンマーグラブ22による掘削工程及び排出工程について説明する。
図11に示すように、メインフレーム11が90度旋回した掘削装置10を掘削エリアAに移動する。その後、
図12に示すように、スライドベース29によって、ハンマーグラブ22をチュービングユニット12上にスライド移動させ、この高さ位置から回転部12a内に向けて投下する。シェル22bは開いた状態で投下され、そのまま地中に突き刺さる。この状態からハンマーグラブ22を吊り下げているワイヤを、水平フレーム部13上に設けられているウインチ(図示せず)によって巻き上げることで、土や岩石などの掘削物を抱えた状態でシェル22bが閉じられる。
【0036】
その後、
図13に示すように、シェル22bを閉じたままハンマーグラブ22を地中から引き上げ、さらに、チュービングユニット12の上方に引き上げる。続いて、ハンマーグラブ22を吊り下げたスライドベース29を水平フレーム部13の張出部13bに向けて移動させる。そして、排出エリアBにおいて、シェル22bを開くことで、掘り出された土や岩石などの掘削物を排出することができる。このような操作を繰り返し行い、ハンマーグラブ22を掘削エリアAから排出エリアBまでの間をスライドベース29によって、水平方向に往復動させることで、上空制限のある場所での掘削及び排出作業を簡易且つ効率的に行うことができる。
【0037】
本実施形態の掘削装置10は、
図12及び
図13に示したように、地表面Gから天井面Sまでの高さ制限のある作業空間において、低空姿勢の状態で目的の掘削エリアAに向けて自走移動可能な構成となっており、水平フレーム部13によってハンマーグラブ22を最も低い位置で吊り下げ支持することができる。この構成の掘削装置10にあっては、水平フレーム部13をハンマーグラブ22と略同じ高さの柱部17a~17dによってベース部14上に支持しているため、基準となる地表面Gから滑車32の上端までの高さHを抑制することができる。このため、屋根のある建物内や坑道内等においても容易に進入可能となり、その場で掘削作業を行うことができる。
【0038】
以上説明したように、本発明の掘削装置のメインフレーム旋回機構及び旋回方法によれば、上空スペースが制限された作業環境に適応できると共に、掘削装置に備わるチュービングユニットの各機能を利用して、ハンマーグラブを搬送支持するメインフレームを所定位置に容易に変更することができる。これによって、掘削装置の進入経路が狭く、また、方向転換が困難な場所においても掘削及び排出作業を容易且つ作業効率よく行うことができる。本実施形態の掘削装置は、高さ方向及び平面方向の作業スペースが限られた掘削現場に適応させるため、低空頭であると共に、メインフレームの旋回機構を含めた構成が簡易且つコンパクトとなっている。このため、狭小且つ低空頭での作業はもとより、あらゆる作業環境下においても有用である。
【符号の説明】
【0039】
A 掘削エリア
B 排出エリア
C 中心軸
G 地表面
S 天井面
10 掘削装置
11 メインフレーム
12 チュービングユニット
12a 回転部
12b 底部
12c 支持脚
13 水平フレーム部
13a 基部
13b 張出部
13c 係合片
14 ベース部
14a ベースフレーム
14b 支持フレーム
15 クローラ
17a~17d 柱部
18a~18d 台座部
19 ケーシングチューブ
19a 接続面
19b 接続孔
20 クランプ部材
22 ハンマーグラブ
22a ケース
22b シェル
23 中空部
24 旋回補助冶具
25 第1連結部
25a 外周面
25b 接続孔
25c 挿通孔
25d 天板部
26 第2連結部
26a アーム
26b 係合溝
27 ガイドレール
29 スライドベース
32 滑車
33 ワイヤ