(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019783
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】自動電圧調整器
(51)【国際特許分類】
H02J 3/12 20060101AFI20240206BHJP
H01F 29/04 20060101ALI20240206BHJP
H02J 3/18 20060101ALI20240206BHJP
H02M 5/12 20060101ALI20240206BHJP
G05F 1/147 20060101ALI20240206BHJP
G05F 1/10 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H02J3/12
H01F29/04 501D
H01F29/04 502B
H02J3/18 178
H02M5/12 A
G05F1/147
G05F1/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122454
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井深 直人
(72)【発明者】
【氏名】苻川 謙治
(72)【発明者】
【氏名】澤田 真樹
(72)【発明者】
【氏名】松原 和司
(72)【発明者】
【氏名】尾本 勇太
【テーマコード(参考)】
5G066
5H410
5H420
5H750
【Fターム(参考)】
5G066DA01
5G066FC01
5H410BB01
5H410BB02
5H410BB04
5H410CC04
5H410DD04
5H410EA19
5H410EB38
5H410FF03
5H410FF24
5H420BB02
5H420BB12
5H420CC05
5H420DD04
5H420EA30
5H420EA40
5H420EB38
5H420FF03
5H420FF24
5H420NB04
5H420NC26
5H750AA02
5H750CC10
5H750CC11
5H750DD25
5H750FF05
5H750GG06
(57)【要約】
【課題】 製品コストを抑制し、かつ、各相制御による電圧不平衡の是正が可能な自動電圧調整器を提供する。
【解決手段】 三相配電線路1~3の線間に電圧調整用変圧器9,10をV結線して挿入する。電圧調整用変圧器9,10の間接回路側にはタップ選択器7b,8bを接続する。また、三相配電線路1~3には直列にY結線した直列変圧器4~6を挿入する。直列変圧器4~6の間接回路側には切換開閉器7a,8aを接続する。これにより、タップ選択器7b,8bと切換開閉器7a,8aからなるタップ切換器7,8を構成し、電圧調整用変圧器9,10の間接回路側と、直列変圧器4~6の間接回路側を結合する。タップ切換器7,8は図示しない制御部によって個別に制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相配電線路の線間に挿入され、V結線される電圧調整用変圧器と、該電圧調整用変圧器の間接回路側に接続されるタップ選択器と、三相配電線路に直列に挿入され、Y結線される直列変圧器と、該直列変圧器の間接回路側に接続される切換開閉器を備え、前記タップ選択器と該切換開閉器によってタップ切換器を構成し、当該タップ切換器によって前記電圧調整用変圧器の間接回路側と、直列変圧器の間接回路側を結合し、かつ、当該タップ切換器を制御する制御部を備え、該制御部によって前記タップ切換器を制御することで、三相配電線路の電圧調整を行うことを特徴とする自動電圧調整器。
【請求項2】
前記制御部は、前記タップ切換器を各相毎に制御して、各相個別の電圧調整を可能としたことを特徴とする請求項1記載の自動電圧調整器。
【請求項3】
前記切換開閉器は真空中で接点を開閉する真空バルブを備えて構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2の何れかに記載の自動電圧調整器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品価格を抑制しつつ三相配電線の各相を個別に電圧調整することのできる自動電圧調整器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配電線の電圧は、負荷の増減によって絶えず変動している。自動電圧調整器( 以下、SVRという)は、高圧配電線に接続され、この電圧変動を抑制する機器である。
【0003】
SVRは、タップ付電圧調整用変圧器、タップ切換器、制御部から概略構成されており、あらかじめ整定された基準電圧との偏差を制御部が検知し、タップ切換器を動作させ、常に最適なタップ電圧に調整する機能を有している。
【0004】
SVRのタップ切換器は、概略、切換開閉器とタップ選択器から構成されている。切換開閉器としては、絶縁油中で接点を切り換える方式(油中スイッチ方式)の他、真空バルブ内で接点を開閉する方式(真空バルブスイッチ方式)のものが存在する。
【0005】
前記油中スイッチ方式は、切り換え時のアークによって発生するカーボンスラッジにより絶縁油が汚損されるので、タップ切換動作が10万回を超える10年程度で絶縁油を取り換える必要がある。一方、真空バルブスイッチ方式は接点が真空バルブ内にあるため、絶縁油の汚損が無い。よって、絶縁油の交換が不要となる利点があり、近年、採用される事例が多い(下記非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献1】愛知電機技報No.36p3~6自動電圧調整器とアクチエータ
図3_真空バルブ式タップ切換器
【0007】
図3に上記SVRと三相配電線路の結線図の一例を示す。SVRは三相配電線の各配電線路の入力側の端子U,V,Wに直列に切換開閉器101a~101cが接続され、各切換開閉器101a~101cにはそれぞれタップ選択器102a~102cが接続されている。タップ選択器102a~102cは、タップ付きの電圧調整用変圧器103a~103cに接続され、当該電圧調整用変圧器103a~103cは、Y結線された巻線104a~104cを三相配電線路の出力側端子u,v,wに接続している。
【0008】
各切換開閉器101a~101cは、絶縁油中や真空中で開閉する接点を備えており、各相に配置されたタップ選択器102a~102cと連動することによって、負荷をかけたまま、タップ選択器102a~102cによって変圧器103a~103cのタップを切り換えて、出力側の配電線電圧が変動することを抑制している。各切換開閉器101a~101cとタップ選択器102a~102cによりタップ切換器が構成され、該タップ切換器によるタップ切換えは図示しない制御部によって制御される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
然るに、
図3に示すSVRはそもそも三相平衡を前提とした機器であるので、これを構成する前記制御部は切換開閉器101a~101cおよびタップ選択器102a~102cを各相毎に制御することはできない。つまり、制御部は三相一括制御しか行うことができないので、各相間に電圧不平衡が生じた場合、これを抑制することができない。
【0010】
また、切換開閉器101a~101cが配電線路に直接接続されるので、切換開閉器101a~101cを構成する接点は、大電流を入り切り可能な性能を有する必要がある。そのため、接点が必然的に大型化し、かつ、高価となる問題点がある。特に切換開閉器101a~101cに真空バルブスイッチ方式を適用する場合、絶縁油の汚損が防止できる分、高額化は顕著となる。
【0011】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであり、製品コストを抑制しつつ、各相制御による電圧不平衡の是正が可能な自動電圧調整器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、三相配電線路の線間に挿入されてV結線される電圧調整用変圧器と、該電圧調整用変圧器の間接回路側に接続されるタップ選択器と、三相配電線路に直列に挿入されてY結線される直列変圧器と、該直列変圧器の間接回路側に接続される切換開閉器を備え、前記タップ選択器と切換開閉器によってタップ切換器を構成し、該タップ切換器によって前記電圧調整用変圧器の間接回路側と、直列変圧器の間接回路側を結合し、かつ、当該タップ切換器を制御する制御部を備えた自動電圧調整器であって、前記制御部によってタップ切換器を制御することで三相配電線路の電圧調整を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の自動電圧調整器において、制御部によってタップ切換器を各相毎に制御することで、各相個別の電圧調整を可能としたことを特長とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2の何れかに記載の自動電圧調整器において、切換開閉器に真空中で接点を開閉する真空バルブを備えて構成したことを特長とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、切換開閉器を構成する接点が直列変圧器の二次側に接続されるので、接点が開閉する電流値を接点の容量に合わせて選定でき、接点を小型かつ安価に構成することができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、制御部によってタップ切換器を各相制御することができるので、三相不平衡を是正することが可能となる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、切換開閉器に真空バルブスイッチ方式を適用することで、請求項1,2記載の効果に加え、絶縁油の汚損を防止でき、絶縁油の交換が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】(a)は本発明の自動電圧調整器による各相制御を示すベクトル図であり、(b)は前記自動電圧調整器の各部にかかる電圧値を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を
図1,2により説明する。
図1は本発明の自動電圧調整器Aを示す回路図であり、一般的にSVR(:Step Voltage Regulator)と呼称される。
図1に示すように、本発明の自動電圧調整器Aは、三相配電線路1,2,3の入力側端子U,V,Wと出力側端子u,v,w間に接続される。
【0020】
自動電圧調整器Aは、配電線路1,2,3に直列接続される直列変圧器4,5,6と、配電線路1,2,3に並列接続される電圧調整用変圧器9,10、直列変圧器4,5,6と電圧調整用変圧器9,10を結ぶタップ切換器7,8と、タップ切換器7,8を制御する図示しない制御部を備えて構成されている。
【0021】
タップ切換器7は、切換開閉器7aとタップ選択器7bから構成され、タップ切換器8は、切換開閉器8aとタップ選択器8bから構成される。タップ選択器7b,8bは、電圧調整用変圧器9,10のタップ巻線のうち運転するタップを選択する。切換開閉器7a,8aは、通電状態のまま、タップ選択器7b、8bによって選ばれたタップに回路を切り換える。
【0022】
自動電圧調整器A内を通る第1の電圧線1aは、入力側端子Uと直列変圧器4を接続する。直列変圧器4は出力側端子uとの間を第1の調整線1bによって接続されている。
【0023】
自動電圧調整器A内を通る第2の電圧線2aは、入力側端子Vと直列変圧器5を接続する。直列変圧器5は出力側端子uとの間を第2の調整線2bによって接続されている。
【0024】
自動電圧調整器A内を通る第3の電圧線3aは、入力側端子Wと直列変圧器6を接続する。直列変圧器6は出力側端子uとの間を第3の調整線3bによって接続されている。
【0025】
直列変圧器4は、一方端を切換開閉器7aに接続した一次巻線4aと、第1の電圧線1aと第1の調整線1bを直列接続する二次巻線4bを備える。直列変圧器4は、一次巻線4aの印加電圧に応じて、二次巻線4bに誘起電圧を生じさせ、その誘起電圧により第1の電圧線1aに対して第1の調整線1bの電圧を昇圧または降圧する。
【0026】
直列変圧器5は、一方端を直列変圧器4の他方端に接続し、他方端をタップ選択器7b,8bに接続する一次巻線5aと、第2の電圧線2aと第2の調整線2bを直列接続する二次巻線5bを備える。直列変圧器5は、一次巻線5aの印加電圧に応じて、二次巻線5bに誘起電圧を生じさせ、その誘起電圧により第2の電圧線2aに対して第2の調整線2bの電圧を昇圧または降圧する。
【0027】
直列変圧器6は、一方端を切換開閉器8aに接続し、他方端を直列変圧器4の一次巻線4aの他方端と直列変圧器5の一次巻線5aの一方端に接続する一次巻線6aと、第3の電圧線3aと第3の調整線3bを直列接続する二次巻線6bとを備える。直列変圧器6は、一次巻線6aの印加電圧に応じて、二次巻線6bに誘起電圧を生じさせ、その誘起電圧により第3の電圧線3aに対して第3の調整線3bの電圧を昇圧または降圧する。
【0028】
前記直列変圧器4,5,6はY結線されている。直列変圧器4,5,6の二次巻線4b,5b,6bに生じる誘起電圧は、一次巻線4a,5a,6aに対する二次巻線4b,5b,6bの巻数比に応じた大きさの電圧が誘起される。
【0029】
切換開閉器7aは、タップ切換器7内においてタップ選択器7bに接続される。切換開閉器8aは、タップ切換器8内においてタップ選択器8bに接続される。切換開閉器7a,8aは一次巻線4a,6aに流れる電流の通電と遮断を切り換える1つ以上の接点と限流抵抗器を備える。限流抵抗器は、切換開閉器7a,8a内を流れる循環電流(横流)を抑制する。
【0030】
前記接点は絶縁油中で開閉するもの(油中スイッチ方式)の他、真空バルブ内で開閉するもの(真空バルブスイッチ方式)がある。油中スイッチ方式は、スイッチ開閉時に発生するアークによって絶縁油が汚損されるので、汚損した絶縁油を取り換える負担を無くすのであれば真空バルブスイッチ方式を採用する。
【0031】
タップ選択器7bは、電圧調整用変圧器9に接続され、当該変圧器9の二次巻線9bに接続されるタップを選択することで、直列変圧器4,5による昇圧/降圧幅を切り換える。
【0032】
タップ選択器8bは、電圧調整用変圧器10に接続され、当該変圧器10の二次巻線10bに接続されるタップを選択することで、直列変圧器5,6による昇圧/降圧幅を切り換える。
【0033】
タップ選択器7b,8bは、一般的に、駆動軸の長手方向に可動接点を三相分配列し、駆動軸の回転によって可動接触子を駆動軸周りに回転させ、平板状の絶縁板に設置した固定接点を上下から圧縮しながら、選択したタップに対応する固定接点の位置まで移動する機械的構造を有する。
【0034】
電圧調整用変圧器9は、配電線路1,2間に接続される一次巻線9aとタップ選択器7bによって切り換え操作されるタップが接続された二次巻線9bから構成される。一次巻線9aによって取得された配電線路1,2間の電圧が、一次巻線9aと二次巻線9bの巻数比に応じた大きさで二次巻線9bに誘起される。
【0035】
電圧調整用変圧器10は、配電線路2,3間に接続される一次巻線10aとタップ選択器8bによって切り換え操作されるタップが接続された二次巻線10bから構成される。一次巻線10aによって取得された配電線路2,3間の電圧が、一次巻線10aと二次巻線10b間の巻数比に応じた大きさで二次巻線10bに誘起される。
【0036】
電圧調整用変圧器9,10はV結線されており、V結線の三相電圧をY結線の直列変圧器4,5,6に、電圧調整用変圧器9,10の調整電圧として印加する。
【0037】
次に、本発明の自動電圧調整器Aの動作について説明する。負荷変動によって配電線路の電圧が変動すると、図示しない制御部から出力される電気信号によって、配電線路1,2,3の入力側の電圧と基準電圧の差を小さくするようタップ切換器7,8によってタップ選択が行われ、それに応じて電圧調整用変圧器9,10のタップ切換えが実行される。
【0038】
このとき、タップ切換器7,8は、各々の切換開閉器7a,8aとタップ選択器7b,8bを駆動して、調整電圧を各相個別に制御する。各調整電圧は直列変圧器4,5,6の一次巻線4a,5a,6aに加えられ、直列変圧器4,5,6の二次巻線4b,5b,6bには、直列変圧器4,5,6の巻数比に比例した調整電圧が誘起され、配電線路の電圧が基準電圧に近づけられる。
【0039】
各相個別制御によって
図1に示すUV相とVW相の調整電圧の大きさが異なるので、三相不平衡の電圧を直列変圧器4,5,6に印加することができ、三相不平衡電圧の是正を可能とする。
【0040】
図2(a)は上記各相制御のベクトル図であり、同図に示す電圧のベクトル値は同図(b)に示す各部に加わる電圧値を示す。電圧調整用変圧器9,10の調整電圧(Vtapuv,Vtapvw)を直列変圧器4,5,6の一次巻線4a,5a,6aに印加し、直列変圧器4,5,6の二次巻線4b,5b,6bには、直列変圧器4,5,6の巻数比に比例した調整電圧(VTapu,VTapv,VTapw)が誘起されることで二次電圧が調整される。
【0041】
このとき、電圧調整用変圧器9,10の調整電圧Vtapuvと二次電圧V2uv、調整電圧Vtapvwと二次電圧V2vwのベクトル方向は同一となり、その調整電圧間の位相差θtapvは二次電圧の位相差θv2vと同じになる。
【0042】
そして、調整電圧(Vtapuv、Vtapvw)をY結線にして直列変圧器4,5,6の一次巻線4a,5a,6aに加えるため、直列変圧器4,5,6の一次巻線4a,5a,6aには、印加された三角形の重心を中性点とした各タップ電圧(Vtapu,Vtapv,Vtapw)が直列変圧器4,5,6に加わることとなり、各相個別の電圧調整が可能となる。なお、電圧調整用変圧器9,10で調整できる電圧はVtapuvとVtapvwのみとなり、Vtapwuは両者の合成となる。
【0043】
以上の各相個別制御による電圧調整においては、タップ切換器7,8が電圧調整用変圧器9,10の間接回路側と、直列変圧器4,5,6の間接回路側を結合して構成されているので、直列変圧器4,5,6の一次巻線4a,5a,6aを流れる電流値を接点の容量に合わせて選定することができる。その結果、各タップ切換器7,8を構成する接点を小型化かつ安価に構成することができる。
【0044】
特に、絶縁油の汚損を防止する目的で切換開閉器7a,7bに真空バルブスイッチ方式を採用した場合であっても、適用する真空バルブは小型かつ安価なものを提供できるので、自動電圧調整器のコストアップを極力抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、三相配電線路に設置される電圧調整装置に適用する技術として利用される。
【符号の説明】
【0046】
1~3 三相配電線路
1a 第一の電圧線
2a 第二の電圧線
3a 第三の電圧線
4~6 直列変圧器
4b~6b, 9b,10b 二次巻線
7,8 タップ切換器
7a,8a,101a,101b,101c 切換開閉器
7b,8b,102a,102b,102c タップ選択器
9,10,103a,103b,103c 電圧調整用変圧器
104a,104b,104c 巻線
A 自動電圧調整器