IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 鹿島道路株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社山栄産業の特許一覧

<>
  • 特開-安全支援システム 図1
  • 特開-安全支援システム 図2
  • 特開-安全支援システム 図3
  • 特開-安全支援システム 図4
  • 特開-安全支援システム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019798
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】安全支援システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
E02F9/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122480
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000181354
【氏名又は名称】鹿島道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522306446
【氏名又は名称】株式会社山栄産業
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】平藤 雅也
(72)【発明者】
【氏名】中渡瀬 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】古谷 正幸
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015GA03
2D015GB07
(57)【要約】
【課題】架空線等の障害物が存在して見張りを必要とするエリア内に移動体が進入したときに警報を出して安全を確保できる安全支援システムを提供する。
【解決手段】信号波を出して見張りエリア11を構築する赤外線照射器17と、油圧ショベル100に取り付けられて移動し、赤外線照射器17で構築された見張りエリア11内に進入すると信号波を受信する赤外線受部19と、警報を発する警報手段15と、赤外線受部19が油圧ショベル100と共に見張りエリア11内に進入すると警報手段15をオン、見張りエリア11内から退出するとオフに、自動で切り換える制御装置14と、を設けた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空線等の障害物が存在する見張りエリア内に進入した移動体に、前記障害物への接近を知らせる警報を出し、前記移動体の安全を支援する安全支援システムであって、
信号波を出して前記見張りエリアを構築する信号発信手段と、
前記移動体に取り付けられて前記移動体と共に移動し、前記信号発信手段で構築された前記見張りエリア内に進入すると前記信号波を受信する信号受信手段と、
前記警報を発する警報手段と、
前記信号受信手段が前記移動体と共に前記見張りエリア内に進入すると前記警報手段をオン、前記見張りエリア内から退出するとオフに、自動で切り換える制御装置と、を設けたことを特徴とする安全支援システム。
【請求項2】
前記移動体が、自走する下部走行体と、前記下部走行体に対して水平旋回する上部旋回体と、前記上部旋回体に対して上下方向に揺動可能な多関節型の被駆動部材と、前記被駆動部材を駆動するためのアクチュエータと、を備えている汎用建設機械であり、
少なくとも前記被駆動部材に前記信号受信手段を設置し、
前記警報手段は、前記被駆動部材が所定の高さに達している場合に、警報を発する、
ことを特徴とする請求項1に記載の安全支援システム。
【請求項3】
前記信号受信手段は、前記被駆動部材の左右両側設けられている、ことを特徴とする請求項2に記載の安全支援システム。
【請求項4】
前記信号受信手段は、前記上部旋回体の後端にさらに設けられている、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の安全支援システム。
【請求項5】
前記信号受信手段は、前記移動体にマグネットを介して着脱自在に取り付け可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の安全支援システム。
【請求項6】
前記信号発信手段は、可搬であって、移動後の位置に前記見張りエリアを再構築可能に構成してなる、ことを特徴とする請求項1に記載の安全支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は安全支援システムに関するものであり、特に、例えば架空線等の障害物が存在する建設現場等の特定のエリア内に移動体が進入したとき、障害物に接触しないように移動体側のオペレータ等に警報を出して移動体等の安全を確保するための安全支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
土木や建設現場等(以下、これらを総称して「建設現場等」という)では、建設機械の作業範囲内での接触事故が後を絶たず、現場での安全管理上における確かな対策が求められている。特に架空設置物、例えば電線・配管・信号・跨橋やカルバート天井など、重機オペレータから認知しづらい、高さ方向への気配りは、オペレータの技量や注意能力に差や限界があり、しばしば接触事故を招いているのが現状である。
【0003】
昨今の対策として重機作業装置の伸縮移動高さを機械的に制限するものや、光や電波・角度センサを用いてあらかじめ設定した高さに作業装置が到達すると、警報を発してオペレータに注意を喚起するシステムも開発されているが、すべての重機に搭載されていないのが現状である。
【0004】
また、建設現場等内で上空高さ制限が必要な場所はすべての区域ではなく、ほとんどの範囲では自由な作業ができるものの、警報装置などが頻繁に作動をしてしまい、オペレータにとっては煩わしい一面もあった。そのため、警報装置を故意に停止したまま作業を継続し、高さ制限の必要な区域等、特に注意をして作業を進めなければならない作業エリアに入っても気づかずに、上空設置物や周辺の障害物と接触する等の事故を起こしてしまうケースも多々発生しているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来における安全支援システムの方法では、例えば高さ制限の必要がない区域や障害物のない区域等での作業であっても、不要な注意喚起が頻繁に発生するという問題点があった。また、これによりオペレータの故意による警報システムの一時停止、必要区域での再起動忘れという、ヒューマンエラーを誘発してしまう恐れが大きい。特に建設現場等で使用する油圧ショベルは、工事現場において最も多用される建設機械であり、自走する車両本体(下部走行体)と、この車両本体に回転自在に取り付けられた多関節型の被駆動部材(上部旋回体及びブーム並びにアーム等)が自由に旋回できることから、被駆動部材の関節部が、例えば電線・配管・信号・跨橋やカルバート天井など、上空設置物や周囲置物の障害物と接触する可能性が非常に高い。
【0006】
そこで、架空線等の障害物が存在して見張りを必要とするエリア内に移動体が進入したときに警報を出して安全を確保するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、架空線等の障害物が存在する見張りエリア内に進入した移動体に、前記障害物への接近を知らせる警報を出し、前記移動体の安全を支援する安全支援システムであって、信号波を出して前記見張りエリアを構築する信号発信手段と、前記移動体に取り付けられて前記移動体と共に移動し、前記信号発信手段で構築された前記見張りエリア内に進入すると前記信号波を受信する信号受信手段と、前記警報を発する警報手段と、前記信号受信手段が前記移動体と共に前記見張りエリア内に進入すると前記警報手段をオン、前記見張りエリア内から退出するとオフに、自動で切り換える制御装置と、備えている、安全支援システムを提供する。
【0008】
この構成によれば、例えば電線・配管・信号・跨橋やカルバート天井など、上空設置物や周囲置物等の障害物と接触する可能性が高く、見張りを置いて作業を行う必要のある特定箇所に信号発信手段を設置して見張りエリアを構築するとともに、見張りエリア内で作業等を行う移動体に、信号発信手段からの信号波を受信する信号受信手段を設置する。そして、移動体が見張りエリアに進入すると、制御装置の操作により警報手段がオフからオンに自動的に切り換えられて、警報手段に設けられた例えばパイロットランプが点灯される。これにより、移動体が見張りエリア内に進入したことをオペレータに報知し、架空線等の障害物に注意を払いながら安全に作業を行うように支援ができる。また、移動体が見張りエリア内から退出すると、制御装置の操作により警報手段がオンからオフに自動的に切り換えられパイロットランプが消灯される。これにより、オペレータは、移動体が見張りエリア内から退出したことを知ることができる。これにより、オペレータは、見張りエリア外での作業であると認識して、作業を自由に行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記移動体が、自走する下部走行体と、前記下部走行体に対して水平旋回する上部旋回体と、前記上部旋回体に対して上下方向に揺動可能な多関節型の被駆動部材と、被駆動部材を駆動するためのアクチュエータと、を備えている汎用建設機械であり、少なくとも前記上部旋回体の後部と前記被駆動部材の左右両側に、それぞれ前記信号受信手段を設置し、前記警報手段は、前記被駆動部材が所定の高さに達している場合に、警報を発する、安全支援システムを提供する。
【0010】
この構成によれば、移動体の上部旋回体の後部が水平旋回、又は被駆動部材が所定の高さを超えて上方に揺動した状態にして、上部旋回体の後部又は被駆動部材が見張りエリアに進入すると、制御装置の操作により警報手段がオフからオンに自動的に切り換えられて、警報手段に設けられた例えばパイロットランプが点灯される。これにより、慎重な作業が必要とされる見張りエリア内での作業であることをオペレータに報知し、周囲に注意を払いながら安全に作業を行うように支援ができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成において、前記信号受信手段は、前記被駆動部材の左右両側設けられている、安全支援システムを提供する。
【0012】
この構成によれば、被駆動部材の左右両側に設けた信号受信手段により、信号発信手段からの信号波をより確実に受信することができ、検出精度が向上する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の構成において、前記信号受信手段は、前記上部旋回体の後端にさらに設けられている、安全支援システムを提供する。
【0014】
この構成によれば、上部旋回体の後部に設けた信号受信手段により、移動体がバックして見張りエリア内に進行した場合、あるいは見張りエリア内から移動体の先端側が先に退出し、後端側が残っている場合でも、信号発信手段からの信号波をより確実に受信することができ、検出精度が向上する。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記信号発信手段又は前記信号受信手段は、前記移動体にマグネットを介して着脱自在に取り付け可能である、安全支援システムを提供する。
【0016】
この構成によれば、信号発信手段又は信号受信手段を予め用意していない移動体に対しては、マグネットを介して信号受信手段を着脱自在に取り付けて使用できる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の構成において、前記信号発信手段は、可搬であって移動後の位置に前記見張りエリアを再構築可能に構成してなる、安全支援システムを提供する。
【0018】
この構成によれば、建設現場等に応じて、信号発信手段を自由に移動させて、移動後の適切な位置に前記見張りエリアを再構築して使用できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、移動体が見張りエリアに進入すると制御装置により警報手段が自動的にオフからオンに切り換わり、例えばパイロットランプが点灯し、移動体が、特に注意を必要とする見張りエリア内に入り、これからの作業が特に周囲に注意を必要とする作業となることをオペレータに報知して、安全の確保を支援できる。反対に、移動体が見張りエリアから退出すると、制御装置により警報装置がオンからオフオンに自動的に切り換わり、周囲に障害物等が存在していない作業エリアであることをオペレータに報知するので、退出後は周辺に余り気を使うことなく、迅速に作業を進めることができ、作業性の向上が期待できる。
また、見張りエリアへの進入及び退出を自動的に検出するので、オペレータにとって煩わしい確認がなくなる。さらに、煩わしさを取り除くために、警報手段を故意に停止して作業をし、見張りエリアに入っても気づかずにそのまま作業を続けて、架空線等の障害物との接触事故等を起こすようなことも無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る一実施例として示す安全支援システムの概略構成ブロック図である。
図2】同上安全支援システムで適用する移動体の一例として示す油圧ショベルで、(A)はその平面図、(B)はその側面図である。
図3】同上安全支援システムで構築される見張りエリアの一例を示すもので、(A)はその平面図、(B)はその側面図である。
図4】同上安全支援システムで、油圧ショベルが一方向に向かって進行したときの支援動作を説明する図であり、(A)はバケットが先に進入した直後の平面図で、(a)は(A)の側面図、(B)はアーム関節最高部が進入したときの平面図で、(b)は(B)の側面図、(C)はアーム関節最高部が架線高さ設定以下で通過したときの平面図で、(c)は(C)の側面図である。
図5】同上安全支援システムで、油圧ショベルが一方向に向かって進行したときの支援動作を説明する図であり、(A)は被駆動部材が先に退出した直後の平面図で、(a)は(A)の側面図、(B)は油圧ショベルにおける下部走行体が退出した直後の平面図で、(b)は(B)の側面図、(C)は油圧ショベルにおける下部走行体が退出した直後に上部旋回体が水平旋回をして被駆動部材が再び見張りエリア内に進入した状態の平面図で、(c)は(C)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、架空線等の障害物が存在して見張りを必要とするエリア内に移動体が進入したときに警報を出して移動体の安全を確保するという目的を達成するために、架空線等の障害物が存在する見張りエリア内に進入した移動体に、前記障害物への接近を知らせる警報を出し、前記移動体の安全を支援する安全支援システムであって、信号波を発信して前記見張りエリアを構築する信号発信手段と、前記移動体に取り付けられて前記移動体と共に移動し、前記信号発信手段で構築された前記見張りエリア内に進入すると前記信号波を受信する信号受信手段と、前記警報を発する警報手段と、前記信号受信手段が前記移動体と共に前記見張りエリア内に進入すると前記警報手段をオン、前記見張りエリア内から退出するとオフに、自動で切り換える制御装置と、を設けた、ことにより実現した。
【実施例0022】
以下、本発明の実施形態に係る一実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0023】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0024】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0025】
また、以下の説明において、上下や左右等の方向を示す表現は、絶対的なものではなく、本発明の安全支援システムの各部が描かれている姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。また、実施例の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付している。
【0026】
図1から図3は本発明に係る安全支援システム10の一実施例を示すものである。本実施例では、建設現場等において使用する移動体である作業機械として油圧ショベル100を一例として説明するが、油圧ショベル100の他に、クレーン、ホイールローダ等の汎用建設機械全般に適用可能であることは勿論である。ここでは、移動体として図2に示す油圧ショベル100を用いた場合を一例として説明する。
【0027】
まず、図1から図3を用いて安全支援システム10の要部構成を説明すると、図1には安全支援システム10の概略構成をブロック図で示し、図2には移動体である油圧ショベル100の構成を示し、図3には見張りエリア11の一例を示している。
【0028】
油圧ショベル100は、一般的な油圧ショベルを想定する。油圧ショベル100は、図2に詳細に示すように、車体を構成する自走する下部走行体101、下部走行体101に対して水平旋回する上部旋回体102と、上部旋回体102上に取り付けられてそれぞれが上下方向に回動するブーム103A、アーム103B、バケット103Cを連結して構成してなる多関節型の被駆動部材103と、被駆動部材103を上下方向に駆動するアクチュエータ104と、を備えている。油圧ショベル100に搭乗するオペレータは、上部旋回体102に設けられた操縦室102Aに備えられている、図示しない操作装置を用いて油圧ショベル100の操作を行う。
【0029】
安全支援システム10は、油圧ショベル100の見張りエリア11を構築する見張りエリア構築部12と、移動体搭載部13と、制御装置14と、警報手段15と、電波受信機16等を備える。移動体搭載部13は、本実施例では、上部旋回体102の操縦室102A及び被駆動部材103等に設けられている。
【0030】
また、制御装置14は、マイクロコンピュータ(通称「マイコン」)等で構成されており、マイクロコンピュータに組み込まれたプログラムにより安全支援システム10の全体を決められた手順で制御するものであり、見張りエリア構築部12側に配設される制御装置14Aと油圧ショベル100側に配設される制御装置14Bとを備える。
【0031】
見張りエリア構築部12は、制御装置14Aと、赤外線照射器17と、設定部18Aと、を備える。見張りエリア構築部12はユニット化されて可搬で、建設現場等に応じて自由な場所に移動させて設置可能になっている。
【0032】
赤外線照射器17は、信号発信手段であり、図3に示すように信号波としての赤外線を発信して見張りエリア11の範囲を設定するためのものである。見張りエリア11の範囲の設定は、設定部18Aを用い、かつ制御装置14Aを介して赤外線照射器17の赤外線を照射する垂直方向の範囲と水平方向の範囲をそれぞれ変えることにより、自由に設定可能である。赤外線照射器17は、持ち運び移動が可能で、移動させることにより移動後の位置で見張りエリア11の範囲を再構築することができる。ここでの見張りエリア11は、建設現場でコンクリート柱・鉄塔等によって空中に張り渡した電線、すなわち架空線50を含むエリアであり、垂直方向は油圧ショベル100のブーム103Aの上端部と関節結合されているアーム103Bの基部となるアーム関節最高部105が架空線50と接触可能な範囲を含み、水平方向は油圧ショベル100の上部がアーム旋回した時に、被駆動部材103との接触の可能がある範囲を含むものである。しかし、これらの範囲が周辺事情に応じて変化することは当然である。
【0033】
制御装置14Aは、見張りエリア構築部12の全体を制御するものであり、設定部18Aは赤外線照射器17で設定される見張りエリア11の範囲を調整する等に使用する。
【0034】
油圧ショベル100に設置される移動体搭載部13は、制御装置14Bと設定部18と警報手段15を有するコントローラ22と、電波受信機16と、赤外線受部19と、角度センサ20と、を備える。
【0035】
制御装置14Bは、移動体搭載部13の全体を制御するものであり、設定部18Bは移動体搭載部13における各種の設定を調整するのに使用する。
【0036】
警報手段15は、ブザーや警笛及び/又は光等で、作業者等に警告を発して安全を支援するものである。本実施例では、警報手段15は、操縦室102A内に設けられる、警報音30を鳴らして警告する警報機15Aと点灯・消灯可能なパイロットランプ15B等を備える。パイロットランプ15Bは、例えば赤色等のLED電球である。
【0037】
電波受信機16は、制御装置14Bに内蔵されている。制御装置14Bには、警報手段15における警報機15Aとパイロットランプ15Bが接続されている。
【0038】
赤外線受部19は、赤外線照射器17で設定された見張りエリア11内に油圧ショベル100と共に進入すると、赤外線照射器17で照射された赤外線を受光し、その受光信号を制御装置14Bに入力するものである。赤外線受部19には、無線送信機21が内蔵されており、赤外線受部19が赤外線照射器17からの赤外線を受光すると、無線送信機21と電波受信機16を介して、制御装置14B側に送られるようになっている。なお、制御装置14Bでは、赤外線受部19が赤外線を受光すると、角度センサ20の電源をオフからオンに切り換えるとともに、警報手段15における警報機15A及びパイロットランプ15Bの電源をオフからオンに切り換え、パイロットランプ15Bを点灯させ、赤外線の受光がなくなると、警報機15A及びパイロットランプ15Bの電源をオンからオフに切り換え、パイロットランプ15Bを消灯させる。
【0039】
赤外線受部19は、本実施例では図2に示すように、油圧ショベル100のブーム103Aの上部と関節連結されているアーム103Bの基部で、かつ、その左右両側にそれぞれ取り付けられた赤外線受部19R及び赤外線受部19Lと、同じく図2に示すように油圧ショベル100の上部旋回体102の後端部に取り付けられた赤外線受部19Bとでなる。これら赤外線受部19R、赤外線受部19L、赤外線受部19Bは、例えばマグネットにより油圧ショベル100の必要な位置に着脱自在に取り付け可能である。また、ユニット化されている移動体搭載部13毎、別の油圧ショベル100等の汎用建設機械に移動させて、必要な位置に付け替えて使用することも可能である。さらに、赤外線受部19は、赤外線受部19R、赤外線受部19L、赤外線受部19Bの以外にも、必要に応じて数を増減させて使用することも可能である。
【0040】
角度センサ20は、油圧ショベル100のブーム103Aの上下方向の角度(仰角)を検出するセンサである。角度センサ20で検出されたブーム103Aの仰角の情報は制御装置14Bに送られる。そして、制御装置14Bでは、図3の(B)に示すアーム103Bのアーム関節最高部105の高さhは、架空線50の高さHから安全な逃げ幅を差し引いて警報発生閾値とする。したがって、制御装置14Bは、角度センサ20で検出されたブーム103Aの角度から、アーム関節最高部105の高さhが警報発生閾値内になると判定されると、警報機15Aに警報音30を鳴らす指示を出す。これにより、警報機15Aが警報音30を鳴らす。また、アーム関節最高部105の高さhが警報発生閾値内になると、警報機15Aによる警報音30の発声音を止める。
【0041】
次に、このように構成された安全支援システム10の動作を、図4及び図5の動作説明図を加えて説明する。図4は、安全支援システム10において、油圧ショベル100が見張りエリア11内を横切って一方向に向かって進行する(本実施例では右側から左側に向かって進む)ときの一般的な支援動作の一例を示す図である。図5は、同じく安全支援システム10において、油圧ショベル100の下部走行体が見張りエリア11内から退出した直後に上部旋回体102が水平旋回をし、被駆動部材103が見張りエリア11内に再び進入したとき等の支援動作の一例を示す図である。
【0042】
まず、安全支援システム10を実施する場合、建設現場等において作業をする周囲の障害物を考慮し、その建設現場等に見張りエリア構築部12の赤外線照射器17を配置して、見張りエリア11を設定する。本実施例の図3図4及び図5では、建設現場等に存在する架空線50を障害物と認定し、その架空線50の高さに応じて、赤外線照射器17で赤外線を照射する範囲、すなわち見張りエリア11を設定する。なお、図3図4及び図5では、その見張りエリア11を既に設定した状態を示している。ここでの見張りエリア11は、油圧ショベル100が被駆動部材103を上方に高さhを超えて動かしたとき、地上からの高さがHである架空線50に被駆動部材103がぶつかり、事故の危険性がある、警報発生閾値内になると想定している。なお、見張りエリア11の設定は、例えば設定部18Aの切り換えで、範囲の切り換えを例えば2段階切り返し式にし、ロングレンジは約15メートル、ショートレンジは約10メートとなるように設定することも可能である。
【0043】
したがって、この安全支援システム10では、図4の(A)、(a)に示すように、油圧ショベル100の赤外線受部19が見張りエリア11内に入っていないときには、警報手段の一部を構成しているパイロットランプ15Bは不点灯で、同じく警報手段の一部を構成している警報機15Aによる警告音も停止している。
【0044】
しかし、図4の(B)、(b)に示すように、油圧ショベル100が見張りエリア11内に向かって進行して行き、被駆動部材103に取り付けられた赤外線受部19Lと赤外線受部19Rが見張りエリア11内に入ると、油圧ショベル100に取り付けられている赤外線受部19Lと赤外線受部19Rの両方、または一方が、赤外線照射器17からの赤外線を受け、これが制御装置14Bに入力される。すると、制御装置14Bでは、角度センサ20の電源をオフからオンに切り換えるとともに、警報手段15における警報機15A及びパイロットランプ15Bの電源をオフからオンに切り換え、パイロットランプ15Bを点灯させ、油圧ショベル100のオペレータに、油圧ショベル100が見張りエリア11内に入ったことを知らせる。そして、油圧ショベル100のオペレータに、見張りエリア11内での作業であるため、注意をしながら作業をするように促し、作業の安全を支援する。
【0045】
また、制御装置14Bでは、見張りエリア11内における作業において、ブーム103Aの角度を検出している角度センサ20からの信号により、アーム関節最高部105の高さhが警報発生閾値を超えているとき、制御装置14Bは警報機15Aを介して警報音30を鳴らす。そして、この警報音30を聞いた油圧ショベル100のオペレータは、図4の(C)、(c)に示すように、被駆動部材103が架空線50に触れないようにしながら作業を進める。警報機15Aによる警報音30は、上記警報発生閾値を超えている期間中、あるいは所定の時間中だけ鳴らして支援する。
【0046】
また、支援状態は、図5の(A)、(a)、図5の(B)、(b)に示すように、油圧ショベル100の赤外線受部19が見張りエリア11内から完全に退出するまで続く。
そして、油圧ショベル100の全ての赤外線受部19(19L、19R、19B)が見張りエリア11から退出すると、制御装置14Bが、角度センサ20の電源をオンからオフに切り換えるとともに、警報手段15における警報機15A及びパイロットランプ15Bをオンからオフに切り換え、パイロットランプ15Bを消灯する。なお、警報機15Aが警報音30を発している最中に油圧ショベル100が見張りエリア11外に出た場合には、油圧ショベル100が見張りエリア11から出た後も約5秒間は、警報音30が鳴り続くように設定してある。また、パイロットランプ15Bが消灯することにより、油圧ショベル100が見張りエリア11から退出したことを、オペレータ等に認識させることができる。
【0047】
また、油圧ショベル100が見張りエリア11から一度退出し、その後、例えば図5の(C)、(c)に示すように、上部旋回体102を略180度水平旋回させて、油圧ショベル100の赤外線受部19Lと赤外線受部19Rとが見張りエリア11内に入れると、制御装置14Bが再び、角度センサ20の電源をオフからオンに切り換えるとともに、警報手段15における警報機15A及びパイロットランプ15Bの電源をオフからオンに切り換えてパイロットランプ15Bを点灯させる。これにより、油圧ショベル100が見張りエリア11内に再び進入したことをオペレータに認識させる。さらに、アーム関節最高部105の高さhが警報発生閾値を超えると、制御装置14Bでは、警報機15Aを介して警報音30を鳴らす。
【0048】
また、油圧ショベル100の全ての赤外線受部19(19L、19R、19B)が見張りエリア11から再び退出すると、制御装置14Bが角度センサ20の電源をオンからオフに切り換えるとともに、警報手段における警報機15A及びパイロットランプ15Bの電源をオンからオフに切り換えてパイロットランプ15Bを消灯する。これにより、油圧ショベル100が見張りエリア11から退出したことをオペレータに認識させることができる。
【0049】
したがって、本実施例による安全支援システム10によれば、例えば電線・配管・信号・跨橋やカルバート天井など、架空線50や周囲置物の障害物と接触する可能性が高く、見張りを置いて作業を行う必要のある特定箇所に、信号発信手段としての赤外線照射器17を設置して見張りエリア11を構築するとともに、見張りエリア11内及びその周辺で作業等を行う移動体である油圧ショベル100に、見張りエリア11内及びその近傍で信号発信手段からの信号波を受信する信号受信手段としての赤外線受部19を取り付け、油圧ショベル100が見張りエリア11に進入すると、制御装置14の操作により警報手段15としてのパイロットランプ15B及び警報機15Aがそれぞれオフからオンに自動的に切り換えられて、パイロットランプ15Bの点灯及び警報機15Aから警報音30等が鳴るようにしている。これにより、油圧ショベル100が見張りエリア11内に進入すると、見張りエリア11内に油圧ショベル100が進入したことをオペレータ等に報知し、周囲に注意を払いながら安全に作業を行うように支援ができる。また、油圧ショベル100が見張りエリア11内から退出すると、制御装置14の操作により、パイロットランプ15B及び警報機15Aがオンからオフに自動的に切り換えられてパイロットランプ15Bの消灯及び警報機15Aの警報音30の停止等の行為を行うので、オペレータ等は、油圧ショベル100が見張りエリア11内から退出したことを知ることができる。これにより、オペレータ等は、見張りエリア11外での作業と認識して、作業を自由に迅速に進めることができる。
【0050】
なお、上記実施例では、赤外線照射器17と赤外線受部19を使用して見張りエリア11を構築する場合として説明したが、赤外線照射器17と赤外線受部19に限らず、一般的な電波信号を使用して行うことも可能であり、本発明での信号発信手段及び信号受信手段は、それらも包括するものである。但し、赤外線を用いた場合では、赤外線は雨、風の影響や、油圧ショベル100等の重機の影響を受けずに、動作が安定するというメリットがある。
【0051】
また、赤外線照射器17の設置は、例えば建設現場等で一般的に使用されているロードコーンの先端部に被せて取り付けて使用するようにしてもよく、これ以外に三脚、パイプ支柱、バリケード等に取り付けて使用してもよい。
【0052】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を成すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0053】
10 :安全支援システム
11 :見張りエリア
12 :見張りエリア構築部
13 :移動体搭載部
14、14A、14B:制御装置
15 :警報手段
15A :警報機
15B :パイロットランプ
16 :電波受信機
17 :赤外線照射器(信号発信手段)
19、19B、19L、19R:赤外線受部(信号受信手段)
22 :コントローラ
30 :警報音
50 :架空線
100 :油圧ショベル(移動体)
101 :下部走行体
102 :上部旋回体
103 :被駆動部材
103A:ブーム
103B:アーム
103C:バケット
104 :アクチュエータ
105 :アーム関節最高部
H :架空線の高さ
h :アーム関節最高部の高さ
図1
図2
図3
図4
図5