(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001980
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】釣竿用グリップ
(51)【国際特許分類】
A01K 87/08 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A01K87/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100878
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】小澤 知之
(72)【発明者】
【氏名】山中 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 魁
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AA06
2B019AC00
(57)【要約】
【課題】釣竿用グリップの外径を簡単に調整し、ユーザが握り易い形状に調整することができる機構を提供すること。
【解決手段】このグリップ10は、釣竿本体12が挿通されたリールシート13に装着される。グリップ10は、スライドベース31と、スライダ32と、グリップ本体33と、ロックナット34とを有する。スライドベース31は、釣竿本体12に固定される。スライダ32は、スライドベース31とネジ機構を介して填まり合う。スライダ32は、円錐台部39を有し、グリップ本体33は、円錐台部39と嵌め合わされる。グリップ本体33は、径方向に弾性的に拡縮する。ロックナット34は、スライダ32とネジ機構を介して填まり合い、グリップ本体33を固定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣竿に装着されるグリップであって、
前記釣竿の軸方向に移動可能に設けられ、前記軸方向に沿って外径が漸次変化する第1筒体と、
前記第1筒体の移動によって外径が変化するグリップ本体と、
を備えるグリップ。
【請求項2】
前記グリップ本体は、弾性体を含む、請求項1に記載のグリップ。
【請求項3】
前記釣竿には第2筒体が設けられ、
前記第1筒体は、前記第2筒体に設けられる、請求項1に記載のグリップ。
【請求項4】
前記第1筒体を前記第2筒体に対して前記軸方向に沿ってスライドさせるスライド機構をさらに備える、請求項3に記載のグリップ。
【請求項5】
前記スライド機構は、
前記第2筒体の外周面に設けられた案内部と、
前記第1筒体の内周面に設けられ、前記案内部によって案内される被案内部と、
を有する、請求項4に記載のグリップ。
【請求項6】
前記案内部及び前記被案内部は、互いに填まり合うネジ機構からなる、請求項5に記載のグリップ。
【請求項7】
前記第1筒体は、円錐台部を有し、
前記グリップ本体は、環状、且つ、内周面の形状が前記円錐台部の外周面に対応する円錐台状に形成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のグリップ。
【請求項8】
前記グリップ本体は、
径方向に分割される中心部材と、
前記中心部材の外側に嵌め合わされ、弾性力により前記中心部材を環状に保持する保持部材と、
を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のグリップ。
【請求項9】
前記グリップ本体が前記釣竿に対して前記軸方向を中心として回転することを規制する第1規制部を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のグリップ。
【請求項10】
前記第1規制部は、前記釣竿に嵌まり込む凸部からなる、請求項9に記載のグリップ。
【請求項11】
前記グリップ本体が前記釣竿に対して前記軸方向に変位することを規制する第2規制部を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のグリップ。
【請求項12】
前記第2規制部は、前記第1筒体にネジを介して填まり合い、前記軸方向に変位して前記グリップ本体を前記釣竿との間で挟み込むナットを有する、請求項11に記載のグリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、釣竿に適用されるグリップの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
釣竿は、一般にグリップを備えている。実釣において釣人は、グリップを握って釣竿を操作する。グリップの形状は、釣人にとって握り易く、釣竿を操作し易いものであることが要請される。なお、釣用リールが装着される釣竿の場合、釣用リールを保持するリールシートがグリップを兼ねる場合もある。
【0003】
従来のグリップの形状は、握り易さや滑り難さ等を考慮して設計されているが、釣人の手のサイズは様々であり、ユーザによっては必ずしも最適な形状とは言えないことがある。そのため、グリップ乃至リールシートにサポートグリップが着脱自在に設けられる構造が提案されている(たとえば特許文献1~特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-146504号公報
【特許文献2】特開2019-146536号公報
【特許文献3】特開2019-165656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の構造では、ユーザがサポートグリップを交換することによってグリップ乃至リールシートの外形形状が変更される。したがって、ユーザにとって最適なグリップが実現されるために、ユーザは、実釣においてサポートグリップの交換という煩わしい作業をしなければならなかった。
【0006】
そこで、本件発明は、実釣においてユーザが簡単且つ迅速に握り易い形状に調整することができる釣竿用グリップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 前記課題を解決するために、本件発明の第1側面の釣竿用グリップは、釣竿に装着されるグリップであって、前記釣竿の軸方向に移動可能に設けられ、前記軸方向に沿って外径が漸次変化する第1筒体と、前記第1筒体の移動によって外径が変化するグリップ本体と、を備える。
【0008】
この構成によれば、第1筒体が釣竿の軸方向に沿って移動する。移動する第1筒体は、グリップ本体の外径を変化させる。すなわち、釣竿のユーザは、前記第1筒体を操作することによりグリップ本体の外径を変化させることができる。したがって、ユーザは、実釣において簡単な操作によってグリップ本体の外径を自在に設定することができ、グリップを握り易い形状に迅速に調整することができる。
【0009】
(2) 本件発明の第1側面にしたがう第2側面の釣竿用グリップにおいては、前記グリップ本体は弾性体を含む。
【0010】
この構成では、グリップ本体が変形しやすい。したがって、ユーザーは、より簡単な第1筒体の操作によってグリップ本体の外径を自在に変化させることができる。
【0011】
を
(3) 本件発明の第1側面にしたがう第3側面の釣竿用グリップにおいては、前記釣竿には第2筒体が設けられ、前記第1筒体は、前記第2筒体に設けられる。
【0012】
この構成では、第1筒体が第2筒体に設けられるから、第1筒体は、釣竿に沿って移動する。すなわち、釣竿に設けられた第2筒体がスライドベースとして機能し、第1筒体がこれに沿って移動するスライダとして機能する。したがって、第1筒体は、正確に前記軸方向に沿って移動することができ、ユーザは、円滑に第1筒体を操作することができる。
【0013】
(4) 本件発明の第3側面にしたがう第4側面の釣竿用グリップにおいては、前記第1筒体を前記第2筒体に対して前記軸方向に沿ってスライドさせるスライド機構をさらに備える。
【0014】
この構成では、ユーザはスライド機構を介して第1筒体を移動させる。すなわち、スライド機構が第2筒体に対して第1筒体をスライドさせる。
【0015】
(5) 本件発明の第4側面にしたがう第5側面の釣竿用グリップにおいては、前記スライド機構は、前記第2筒体の外周面に設けられた案内部と、前記第1筒体の内周面に設けられ、前記案内部によって案内される被案内部と、を有する。
【0016】
この構成では、第1筒体の内周面が第2筒体の外周面に案内されることによって、第1筒体が第2筒体に対して相対的にスライドする。したがって、第1筒体は、より安定してスライドすることができる。
【0017】
(6) 本件発明の第5側面にしたがう第6側面の釣竿用グリップにおいては、前記案内部及び前記被案内部は、互いに填まり合うネジ機構からなる。
【0018】
この構成では、前記スライド機構がネジ機構からなるので、第1筒体は、きわめて安定して第2筒体に対してスライドすることができる。
【0019】
(7) 本件発明の第1側面から第6側面にしたがう第7側面の釣竿用グリップにおいては、前記第1筒体は、円錐台部を有し、前記グリップ本体は、環状、且つ、内周面の形状が前記円錐台部の外周面に対応する円錐台状に形成される。
【0020】
この構成では、第1筒体とグリップ本体との接触面は円錐台状を形成する。したがって、第1筒体が前記軸方向に沿って移動すると、グリップ本体の内周面が第1筒体の外周面に押圧され、グリップ本体の内径が第1筒体によって拡縮される。
【0021】
(8) 本件発明の第1側面から第7側面にしたがう第8側面の釣竿用グリップにおいては、前記グリップ本体は、径方向に分割される中心部材と、前記中心部材の外側に嵌め合わされ、弾性力により前記中心部材を環状に保持する保持部材と、を有する。
【0022】
この構成では、分割された中心部材がグリップ本体を構成し、各中心部材は、保持部材によって弾性的に環状に保持されている。したがって、前記軸方向に沿って移動する第1筒体によって、各中心部材が径方向に移動し、グリップ本体の外径が変化する。
【0023】
(9) 本件発明の第1側面から第8側面にしたがう第9側面の釣竿用グリップにおいては、前記グリップ本体が前記釣竿に対して前記軸方向を中心として回転することを規制する第1規制部を有する。
【0024】
この構成では、第1筒体が操作されることに起因してグリップ本体が回転すること(いわゆる供回り)が規制される。したがって、グリップ本体は、釣竿に対する姿勢が保持された状態で、その外径だけが変化する。
【0025】
(10)本件発明の第9側面にしたがう第10側面の釣竿用グリップにおいては、前記第1規制部は、前記釣竿に嵌まり込む凸部からなる。
【0026】
この構成では、グリップ本体に設けられた凸部が釣竿に嵌まり込んで、グリップ本体の回転が規制される。すなわち、前記第1規制部の構造がきわめて簡単である。
【0027】
(11)本件発明の第1側面から第10側面にしたがう第11側面の釣竿用グリップにおいては、前記グリップ本体が前記釣竿に対して前記軸方向に変位することを規制する第2規制部を有する。
【0028】
この構成では、第1筒体を介してグリップ本体の外径が変化しても、グリップ本体の位置が変わることがない。したがって、グリップ本体は、釣竿に対する位置決めがなされた状態で、その外径だけが変化する。
【0029】
(12)本件発明の第11側面にしたがう第12側面の釣竿用グリップにおいては、前記第2規制部は、前記第1筒体にネジを介して填まり合い、前記軸方向に変位して前記グリップ本体を前記釣竿との間で挟み込むナットを有する。
【0030】
この構成では、第1筒体に嵌まり込んだナットによりグリップ本体の位置決めがなされる。したがって、前記第2規制部の構造がきわめて簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本件発明の一実施形態に係る釣竿用グリップ10が装着された釣竿11の要部拡大図である。
【
図2】
図2は、釣竿11に装着された釣用グリップ10の外観図である。
【
図3】
図3は、釣竿11に装着された釣用グリップ10の断面図である。
【
図4】
図4は、スライドベース31及びスライダ32の取付要領を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、スライドベース31及びスライダ32の取付要領を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、グリップ本体33の外観斜視図である。
【
図10】
図10は、本実施形態の変形例に係るグリップ本体63の要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本件発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施の形態は、本件発明に係る釣竿用グリップの一態様にすぎず、本件発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0033】
1 概要及び特徴点
【0034】
図1は、本件発明の一実施形態に係る釣竿用グリップ10が装着された釣竿11の要部拡大図である。
図2及び
図3は、それぞれ、釣竿11に装着された釣用グリップ10の外観図及び断面図である。これら同図において、矢印21、22は、それぞれ釣竿11の前方、後方を指す。
【0035】
図1が示すように、釣竿11は、釣竿本体12と、リールシート13とを備える。釣竿本体12は、典型的には繊維により強化された樹脂からなり、同図が示すように細長の円筒状に形成されている。釣竿本体12は、単一のブランクから構成されてもよいし、複数のブランクが継がれて構成されてもよい。なお、釣竿本体12の軸方向23は、釣竿11の軸方向であり、前記前方21及び後方22と一致する。
【0036】
図1及び
図2が示すように、リールシート13は、樹脂又は金属からなり、概ね筒状に形成されている。リールシート13は、ユーザが釣竿11を操作する際に握る部分であり、ユーザが握り易い外径、形状に設計される。リールシート13は、釣用リールを保持する。釣用リールを保持する構造は既知であるため、その詳しい説明は省略される。
【0037】
図3が示すように、釣竿本体12の基端部14(釣竿本体12の軸方向23の後方22側の部分)は、シールシート13に挿通されている。リールシート13と釣竿本体12とは、既知の手段にて互いに固着され、リールシート13は、釣竿本体12の所定位置に固定される。
【0038】
釣竿用グリップ(以下、「グリップ」と称される。)10は、釣竿11に設けられている。このグリップ10の特徴とするところは、その外径が後述の要領で拡縮されるようになっている点である。グリップ10の外径が拡縮することにより、ユーザは、実釣において簡単な操作によってグリップ10を握り易い形状に調整することができる。
【0039】
図2及び
図3が示すように、リールシート13の前端部に回転規制部材15が設けられている。本実施形態では、この回転規制部材15に凹部16(
図4参照)が設けられている。この回転規制部材15については後述される。
【0040】
2 グリップの構成
【0041】
グリップ10は、リールシート13の前方21に配置されている。グリップ10は、釣竿本体12に設けられたスライドベース31(特許請求の範囲に記載された「第2筒体」に相当)と、これと填まり合うスライダ32(特許請求の範囲に記載された「第1筒体」に相当)と、グリップ本体33と、ロックナット34とを有する。
【0042】
図4及び
図5は、スライドベース31及びスライダ32の取付要領を示す斜視図である。
【0043】
図3及び
図4が示すように、スライドベース31は、円筒状に形成されている。本実施形態では、スライドベース31は、ポリアミド(PA)又はアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)等の樹脂、金属、木材等からなり、接着剤35を介して釣竿本体12の所定の位置に固定されている。スライドベース31の外周面37に雄ネジ36(特許請求の範囲に記載された「案内部」に相当)が形成されている。
【0044】
スライダ32は、概ね円筒状に形成されており、スライドベース31の外周面37と填まり合っている。スライダ32の材質は、スライドベース31と同様に、ポリアミド(PA)又はアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)等の樹脂、金属、木材等が採用される。スライダ32は、真直部38及び円錐台部39を有し、これらは前記軸方向23に沿って連続している。
図3が示すように、スライダ32の内周面に雌ネジ40(特許請求の範囲の範囲に記載された「被案内部」に相当)が形成されている。スライドベース31の雄ネジ36及びスライダ32の雌ネジ40が互いに填まり合っており、両者によりネジ機構が構成されている。スライダ32が前記軸方向23を中心として回転すると、スライダ32は、スライドベース31に対して前記軸方向23に沿ってスライドする。つまり、前記雌ネジ40及び雄ネジ36は、スライダ32をスライドさせるスライド機構を構成している。
【0045】
スライダ32の真直部38は、外径が一定の円筒部材である。この真直部38の外周面41に雄ネジ42が形成されている。この真直部38の後方22に前記円錐台部39が連続しており、この円錐台部39の外径は、前記軸方向23に沿って一様に変化している。すなわち、
図4及び
図5が示すように、前記円錐台部39の外周面43を規定する母線は直線であり、前記軸方向23に対して所定の角度θで傾斜している。この角度θは、4°(degree)~10°に設定され、好ましくは6°~8°である。本実施形態では、7°に設定されている。スライダ32が回転して後方22にスライドすると、前記円錐台部39が相対的にリールシート13内に進入し(
図4参照)、スライダ32が前方21にスライドすると、前記円錐台部39は、相対的にリールシート13から退出する(
図5参照)。
【0046】
前記回転規制部材15は、リールシート13の前端部に固定されている。本実施形態では、回転規制部材15は、樹脂又は金属からなる。回転規制部材15は、リング状に形成された平板からなり、その中央に貫通孔が設けられている。この回転規制部材15に前記凹部16が設けられている。本実施形態では、一対の凹部16が回転規制部材15の径方向に対向して配置されている。この回転規制部材15は、後述のようにグリップ本体33の回転(軸方向23を回転中心とする回動)を規制する。
【0047】
【0048】
図3及び
図6が示すように、グリップ本体33は、円筒状に形成されている。グリップ本体33は、フレーム44(特許請求の範囲に記載された「中心部材」に相当)と、保持リング45(特許請求の範囲に記載された「保持部材」に相当)とを有する。
図6が示すように、フレーム44は、二分割されている。すなわち、フレーム44は、中心を通り軸方向23に延びる仮想平面VII-VIIで切断されており、一対のフレーム片46、47からなる。
【0049】
図7は、
図6におけるVII-VII矢視図であり、フレーム片46の構造を示している。
【0050】
図6及び
図7が示すように、フレーム片46は、内側部材48及び外側部材49を有する。なお、フレーム片47は、フレーム片46と同様の構造あり、両者が対向して当接することにより、
図6が示すような筒状のフレーム44が形成される。
【0051】
内側部材48は、二分割された円筒状に形成され、後方22の端面に半円形のフランジ50が形成されている。内側部材48は、樹脂又は金属から構成される。前記フランジ50の周方向の中央に凸部51が形成されている。本実施形態では、この凸部51の形状は直方体であり、軸方向23の後方22に突出している。この凸部51の外形形状は、前記回転規制部材15(
図4参照)に設けられた凹部16の内壁面形状に対応しており、前記凸部51は、前記凹部16に嵌まり込むようになっている。なお、凸部51の位置、数、外形形状は、特に限定されるものではなく、これに対応して前記凹部16の位置、数、内壁面形状が設計される。つまり、前記凸部51と前記凹部16とが嵌まり合うように設計される。
【0052】
内側部材48が二分割された円筒状に形成されることにより、内側部材48は、溝52を有する格好となる。この溝52の内周面は半円形である。
図7が示すように、この溝52は前記軸方向23に沿って延びている。溝52の幅寸法Dは、前方21から後方22に向かって漸次小さくなっており、内側部材48の前端の幅寸法D1は、後端の幅寸法D2よりも大きい。このため、溝52の内周面は、前記軸方向23に沿って所定の角度θで傾斜している。この角度θは、前記円錐台部39の外周面43の傾斜角度θと同じであり、本実施形態では、この角度θは、7°に設定されている。もっとも、この溝52の内周面の角度θは、前記円錐台部39の外周面43の傾斜角度θに対応して、4°~10°、好ましくは6°~8°に設定される。
【0053】
図6が示すように、フレーム片46とフレーム片47とが向かい合って当接すると、前記内側部材48の内壁面同士が対向し、これにより、フレーム44の中央に前記軸方向23に沿って貫通する孔53が形成される。
図3が示すように、この孔53に前記スライダ32の円錐台部39が嵌め込まれる。
【0054】
外側部材49は、樹脂、金属、木材等からなり、二分割された円筒状に形成されている。本実施家形態では、外側部材49は、コルクからなる。外側部材49の内径はフレーム44の外径(フランジ50が設けられていない部分の外径)に対応している。したがって、フレーム片46とフレーム片47とが向かい合って当接すると、外側部材49は、
図7が示すようにフレーム44を囲繞する。
【0055】
【0056】
同図及び
図3が示すように、保持リング45は、円筒状に形成されている。保持リング45の内径D3は、後方22側の端部において拡大されている。すなわち、保持リング45の後端部の内径D4は、D3よりも大きく、これらの境界に段部54が形成されている。もっとも、この段部54が形成されず、D3=D4であってもよい。
【0057】
保持リング45は、本実施形態ではゴム等の弾性体からなる。前記フレーム片46とフレーム片47とが向かい合って当接した状態で、保持リング45がフレーム44の外側に嵌め合わされる(
図3参照)。保持リング45の内径D3は、フレーム44の外径よりも小さく設定されている。したがって、保持リング45がフレーム44に嵌め合わされると、保持リング45が径方向に弾性的に伸び、その結果、前記フレーム片46及びフレーム片47は、保持リング45の所定の弾性緊迫力によって当接状態が保持される。
【0058】
図9は、ロックナット34の斜視図である。同図(a)(b)は、それぞれ、後方視斜視図及び前方視斜視図である。
【0059】
同図及び
図3が示すように、ロックナット34は、円筒状に形成されており、前記スライダ32に填め合わされている。ロックナット34の前方21側に結合部55が形成されている。この結合部55の内径D5は、その余の部分の内径D6よりも小さく設定されている。このため、ロックナット34の内壁面に段部56が形成されている。前記結合部55の内周面に雌ネジ57が形成されている。この雌ネジ57が前記スライダ32の雄ネジ42と填め合わされている。
【0060】
したがって、ロックナット34が操作されることにより、ロックナット34が軸方向23に沿って前方21あるいは後方22に移動する。ロックナット34の後方22の端面にフランジ58が形成されている。
図3において、ロックナット34が後方22に移動すると、前記フランジ58がグリップ本体33に当接する。これにより、グリップ本体33は、リールシート13に押圧され、確実に固定される。なお、ロックナット34に前記段部56が形成されず、D5=D6であってもよい。
【0061】
3 グリップの作用効果
【0062】
ユーザは、実釣においてグリップ10の外径を所望に調整することができる。
【0063】
図1において、ユーザは、ロックナット34を操作して、前記軸方向23を中心として回転させる。ロックナット34が所定方向に回転すると、
図3が示すように、ロックナット34が前方21に移動し、グリップ本体33から離反する。これにより、グリップ本体33の固定が解除される。ユーザは、スライダ32を操作して、前記軸方向23を中心として回転させる。スライダ32が所定方向に回転すると、
図3が示すように、スライダ32は、スライドベース31に対して移動し、前方21に移動する。スライダ32は前記円錐台部39を備えているから、グリップ本体33は、前方21に移動する円錐台部39により径方向外側へ押圧される。グリップ本体33のフレーム44は二分割されているから、前方21に移動する円錐台部39により径方向外側に拡がると共に、保持リング45によって径方向内側に弾性力を受ける。したがって、グリップ本体33は、円筒状の外形を維持しつつ、その外径が大きくなる。
【0064】
逆に、スライダ32が前記軸方向23を中心として反所定方向に回転すると、スライダ32は、スライドベース31に対して後方に22に移動する。これにより、前記円錐台部39は、相対的にグリップ本体33のフレーム44から径方向に離反するように変位する。フレーム44は、前記保持リング45によって径方向内側に弾性力を受けているから、グリップ本体33は、外径が小さくなるように径方向に変形する。ユーザがロックナット34を反所定方向に回転させると、ロックナット34が後方22に移動し、グリップ本体33を押圧する。これにより、グリップ本体33は、リールシート13に固定される。
【0065】
このように、ユーザがグリップ10を操作すると、スライダ32が釣竿11の軸方向23に沿って移動し、グリップ本体33の外径が変化する。すなわち、ユーザは、グリップ本体33の外径を簡単に変化させることができ、実釣においてグリップ10を握り易い形状に迅速に調整することができる。
【0066】
本実施形態では、グリップ本体33がゴム等の弾性体からなる保持リング45を備えているから、グリップ本体33が容易に弾性変形することができる。したがって、ユーザは、グリップ本体33の外径をきわめて簡単且つ自在に変化させることができる。なお、前記フレーム44も弾性体から構成されていてもよい。その場合、フレーム44は二分割されずに単一の部材から構成されてもよいし、さらに、保持リング45と一体的に形成されていてもよい。
【0067】
図3及び
図4が示すように、本実施形態では、スライダ32がスライドベース31に設けられ、このスライドベース31が釣竿本体12に固定されている。したがって、スライダ32は、前記軸方向23に沿って正確に移動することができ、ユーザは、円滑且つ正確にスライダ32を操作することができる。その結果、ユーザは、グリップ10を握り易い形状により正確に調整することができる。なお、スライドベース31が省略されてもよい。その場合、スライドベース31に形成された雄ネジ36は、釣竿本体12の外周面に形成される。
【0068】
本実施形態では、前記スライダ32は、スライド機構を介して前記スライドベース31に対してスライドする。このスライド機構は、スライドベース31に形成された雄ネジ36及びスライダ32に形成された雌ネジ40により構成される。すなわち、スライダ32の内周面がスライドベース31の外周面によって案内され、スライダ32は、より安定してスライドすることができる。
【0069】
特に、前記スライド機構はネジ機構からなるので、ユーザは、スライダ32をきわめて円滑且つ安定して移動させることができる。
【0070】
図3及び
図4が示すように、本実施形態では、スライダ32とグリップ本体33との接触面は円錐台状を形成し、円錐台部39の外径は、前記軸方向23に沿って一様に変化している。したがって、スライダ32の移動に対して一様にグリップ本体33の内径が拡縮する。その結果、ユーザにとってグリップ本体33の外径の調整がしやすい。
【0071】
本実施形態では、グリップ本体33は、径方向に分割されたフレーム44及び保持リング45とを有し、保持リング45がフレーム44を弾性的に環状に保持している。したがって、グリップ本体33の外径の拡縮がきわめて簡単に行われる。しかも、フレーム44は、コルクからなる外側部材49を備えているので、ユーザにとってグリップ10の握り心地が良くなる。
【0072】
図5及び
図6が示すように、本実施形態では、グリップ本体33の凸部51がリールシート13の凹部16に嵌め込まれる。これにより、グリップ本体33が釣竿11に対して前記軸方向23を中心として回転することがない。すなわち、ユーザがスライダ32を操作した場合、グリップ本体33が前記軸方向23に回転することが規制される。したがって、グリップ本体33は、釣竿11に対する姿勢が保持された状態でその外径だけが変化するので、ユーザは、グリップ10の外径の調整がよりし易くなる。
【0073】
このグリップ本体33の回転規制は、グリップ本体33に設けられた凸部51がリールシート13側に設けられた凹部16に嵌まり込むことにより実現されるから、その構造がきわめて簡単である。もっとも、グリップ本体33の回転を規制するための前記凸部51は、省略されてもよい。
【0074】
本実施形態では、前記ロックナット34が前記スライダ32に掛けられることにより、グリップ本体33がロックされ、釣竿11に対して前記軸方向23に変位することが規制される。すなわち、ユーザがスライダ32を操作してグリップ本体33の外径を調整しても、グリップ本体33の位置は不変である。したがって、ユーザは、グリップ10の外径調整をより簡単に行うことができる。しかも、前記ロックナット34は、ネジを介してスライダ32に設けられているから、グリップ本体33をリールシート13に位置決めし、固定する構造がきわめて簡単且つ安価なものである。もっとも、このロックナット34は省略されてもよい。
【0075】
4.変形例
【0076】
図10は、本実施形態の変形例に係るグリップ本体63の要部拡大斜視図である。
【0077】
同図は、本変形例に係る外側部材69の構造を示している。この変形例に係る外側部材69が前記実施形態に係る外側部材49(
図3及び
図6参照)と異なるところは、二分割された外側部材49が対向する面60は平面であるのに対し、二分割された外側部材69の対向する面70は、
図10が示すように櫛状に形成され、互いに交差している点である。なお、前記外側部材69のその他の構成については、前記外側部材49と同様である。
【0078】
このように外側部材69の対向する面70同士が交差しているので、グリップ本体33の外径が拡縮したときに、前記対向する面70同士の間に隙間が形成されることがない。すなわち、前記外側部材49のように、対向する面60が平面である場合、グリップ本体33の外径が変化する際に前記面60同士の間に隙間が形成され、しかもこの隙間の大きさも変化する。その結果、ユーザがグリップ10を握った際に、前記隙間に起因する段差を感知することがある。このことは、ユーザによっては違和感になることも考えられるが、本変形例に係る外側部材69の場合は、ユーザは、前記隙間に起因する段差を感知することがないという利点がある。
【符号の説明】
【0079】
10・・・ グリップ
11・・・釣竿
12・・・釣竿本体
13・・・リールシート
15・・・回転規制部材
16・・・凹部
23・・・軸方向
31・・・スライドベース
32・・・スライダ
33・・・グリップ本体
34・・・ロックナット
36・・・雄ネジ
39・・・円錐台部
40・・・雌ネジ
42・・・雄ネジ
44・・・フレーム
45・・・保持リング
46・・・フレーム片
47・・・フレーム片
48・・・内側部材
49・・・外側部材
50・・・フランジ
51・・・凸部
55・・・結合部
57・・・雌ネジ
58・・・フランジ
60・・・面
63・・・グリップ本体
69・・・外側部材