(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019808
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】カップ部を有する衣類
(51)【国際特許分類】
A41C 3/12 20060101AFI20240206BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20240206BHJP
A41D 13/05 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
A41C3/12 A
A41D13/00 117
A41D13/05 118
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122505
(22)【出願日】2022-08-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り Web会議システムを利用した「〔大阪店〕ルシアン 2022年秋冬インナー商談会」、令和4年3月2日~3月4日 〔刊行物等〕 Web会議システムを利用した「〔東京店〕ルシアン 2022年秋冬インナー商談会」、令和4年3月8日~3月11日 〔刊行物等〕 株式会社ルシアン大阪店及び東京店、令和4年3月14日~8月1日
(71)【出願人】
【識別番号】715003523
【氏名又は名称】株式会社ルシアン
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 葉月
(72)【発明者】
【氏名】長光 菜都美
【テーマコード(参考)】
3B011
3B131
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AB11
3B011AC17
3B011AC20
3B131AA14
3B131AA16
3B131AB03
3B131BA05
3B131BA11
3B131BA13
3B131BA21
3B131BA41
3B131BB01
3B131BB05
3B131BB24
3B131BB28
3B131CA04
3B131DA02
3B131DA10
3B211AA01
3B211AB01
3B211AB11
3B211AC17
3B211AC20
(57)【要約】
【課題】圧迫感を軽減しつつ、乳房の揺れを抑えることができるカップ部を有する衣類を提供する。
【解決手段】バストトップと該バストトップより下側の乳房を少なくとも覆う一対のカップ部10と、前記一対のカップ部10の下辺にそれぞれ接続された、前記一対のカップ部10を連結する連結部40と、前記バストトップより上側の前記乳房を覆うように前記一対のカップ部10の表側にそれぞれ配置された伸縮性を有する一対のパネル部20と、を有し、前記一対のパネル部20はそれぞれ、前中心側側辺が前記各カップ部10又は前記連結部40と縫合され、脇側側辺が前記各カップ部10と縫合され、下辺が自由端である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バストトップと該バストトップより下側の乳房を少なくとも覆う一対のカップ部と、
前記一対のカップ部の下辺にそれぞれ接続された、前記一対のカップ部を連結する連結部と、
前記バストトップより上側の前記乳房を覆うように、前記一対のカップ部の表側にそれぞれ配置された伸縮性を有する一対のパネル部と、
を有し、
前記一対のパネル部はそれぞれ、前中心側側辺が前記各カップ部又は前記連結部と縫合され、脇側側辺が前記各カップ部と縫合され、下辺が自由端である
カップ部を有する衣類。
【請求項2】
前記パネル部の上下方向の幅が、前中心側から脇側に向かって徐々に広くなるように構成されている請求項1に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項3】
前記パネル部の上辺が、前記乳房の上辺に沿うように弧状に形成されている請求項1又は2に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項4】
さらに、
一対の伸縮性を有する肩紐と、
前記乳房の全体を覆うように、前記一対のカップ部及び前記一対のパネル部の表側にそれぞれ配置された一対の表布と
を有し、
前記一対のカップ部、前記一対のパネル部、及び前記一対の表布それぞれの脇側側辺が、前記一対の肩紐にそれぞれ縫合されている、請求項1又は2に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項5】
前記パネル部の上辺が前記表布と縫合されている請求項4に記載のカップ部を有する衣類。
【請求項6】
前記パネル部が、前記前中心側側辺と前記脇側側辺の間の一箇所で、前記カップ部と縫合されている請求項1又は2に記載のカップ部を有する衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ部を有する衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活の中で走ったり階段を昇り降りしたりする際に、乳房が揺れて不快に感じることがある。特に乳房のサイズが大きい場合は揺れが大きくなり、乳房が揺れ落ちた際の衝撃で痛みを感じることがある。さらに、乳房の揺れは乳房が下垂する原因にもなる。そこで、乳房の揺れを軽減する機能を有するブラジャーが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたブラジャーは、左右カップ部の上辺より上方に位置し、左右カップ部を接続するように設けられた上バスト被覆部を有する。上バスト被覆部は左右方向に伸縮性を有しており、非着用時の大きさが着用時の大きさよりも小さくなるよう形成されている。そのため、着用時には上バスト被覆部が着用者の体型(バストの横幅、乳房の大きさ等)に合わせて伸長し、その復元力により上バスト被覆部に接続する左右カップ部が中央に引き寄せられ、着用者の乳房が体の中心に向かう方向に押圧される。着用者が静止している状態では、カップ部が乳房にフィットするとともに、着用者が動いている状態では、乳房の動きにあわせて上バスト被覆部が伸縮し、乳房の揺れが吸収される。
【0004】
引用文献2に記載されたブラジャーは、一対のカップ部のそれぞれの内側に設けられ、その上辺がカップ部の上辺と縫い合わされたバスト押さえパネルを有する。バスト押さえパネルにはパワーネット等の伸縮性素材が使用されている。ブラジャー着用時には、バスト押さえパネルが着用者の乳房上部に押されて伸長し、その復元力により乳房上部が押圧され、乳房の揺れ上がりが抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2016/117064号
【特許文献2】実用新案登録第3217535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に記載のブラジャーは、着用すると上バスト被覆部やバスト押さえパネル、及びカップ部が乳房を押圧するため、着用者が動作状態、静止状態のいずれの状態にあっても圧迫感や窮屈さを感じてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、圧迫感を軽減しつつ、乳房の揺れを抑えることができるカップ部を有する衣類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために成された本発明に係るカップ部を有する衣類は、
バストトップと該バストトップより下側の乳房を少なくとも覆う一対のカップ部と、
前記一対のカップ部の下辺にそれぞれ接続された、前記一対のカップ部を連結する連結部と、
前記バストトップより上側の乳房を覆うように、前記一対のカップ部の表側にそれぞれ配置された伸縮性を有する一対のパネル部と、
を有し、
前記一対のパネル部はそれぞれ、前中心側側辺が前記各カップ部又は前記連結部と縫合され、脇側側辺が前記各カップ部と縫合され、下辺が自由端であることを特徴とする。
【0009】
上記カップ部を有する衣類では、バストトップと該バストトップよりも下側の乳房を少なくとも覆うように一対のカップ部が設けられており、一対のカップ部の表側に該一対のカップ部に対応して一対のパネル部がバストトップよりも上側の乳房を覆うように設けられている。このため、カップ部を有する衣類を着用したとき、着用者の乳房の下半部は主に一対のカップ部によって覆われ、乳房の上半部は主に一対のパネル部によって覆われる。また、各パネル部はその両端である前中心側側辺及び脇側側辺でのみ対応するカップ部又は連結部と縫合されており、その間の部分は、着用者の乳房の形状やサイズに合わせて変位し、伸縮する。したがって、着用者が静止している状態、動いている状態のいずれにおいても、着用者に圧迫感を与えることがない。また、着用者が動くことで乳房の揺れ上がりが生じたときは、それに応じてパネル部が伸長するため、その復元力によって乳房の揺れを抑えることができる。
【0010】
上記カップ部を有する衣類においては、さらに
前記パネル部の上下方向の幅が、前中心側から脇側に向かって徐々に広くなるように構成されていることが好ましい。
【0011】
これにより、揺れ上がりが生じる乳房上部をパネル部によって広く覆うことができ、乳房の揺れを効果的に抑えることができる。
【0012】
上記カップ部を有する衣類においては、さらに
前記パネル部の上辺が、前記乳房の上辺に沿うように弧状に形成されていることが好ましい。
【0013】
これにより、乳房をつぶさずに優しく覆うことができ、より圧迫感を軽減しつつ乳房の揺れを抑えることができる。
【0014】
上記カップ部を有する衣類においては、さらに
一対の伸縮性を有する肩紐と、
前記乳房の全体を覆うように、前記一対のカップ部及び前記一対のパネル部の表側にそれぞれ配置された一対の表布と
を有し、
前記一対のカップ部、前記一対のパネル部、及び前記一対の表布それぞれの脇側側辺が、前記一対の肩紐にそれぞれ縫合されていることが好ましい。
【0015】
本発明に係るカップ部を有する衣類では、パネル部とカップ部という上下に分断された二つのパーツから一つの乳房が覆われることになるが、上記構成によれば、パネル部とカップ部を1つの表布で覆い隠すことができる。したがって、レース生地等で表布を形成すれば装飾性を高めることができる。さらに、カップ部、パネル部及び表布それぞれの脇側側辺が肩紐に縫合されているため、肩紐が伸長すると、それに追従してカップ部、パネル部及び表布が引き上げられ、カップ部、パネル部及び表布が乳房にフィットする。したがって、乳房の揺れを効果的に抑えることができる。伸縮性を有する素材で表布を形成すれば、より効果的に乳房の揺れを抑えることができる。
【0016】
上記カップ部を有する衣類においては、さらに
前記パネル部の上辺が前記表布と縫合されていることが好ましい。
【0017】
これにより、肩紐が伸長したときに表布と、パネル部及び該パネル部に縫合されたカップ部とが一体的に引き上げられるため、カップ部、パネル部及び表布がより乳房にフィットする。
【0018】
上記カップ部を有する衣類においては、さらに
前記パネル部が、前記前中心側側辺と前記脇側側辺の間の一箇所で、前記カップ部と縫合されていることが好ましい。
【0019】
これにより、パネル部がカップ部に対して変位する余地を残しつつ、パネル部が適切な位置からずれるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るカップ部を有する衣類によれば、圧迫感を軽減しつつ乳房の揺れ上がりを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】
図1のブラジャーのうち着用者の右側乳房を覆う部分を示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1は、本発明に係るカップ部を有する衣類の一実施形態であるブラジャー1の正面図であり、
図2はブラジャー1のうち着用者の右側乳房を覆う部分の背面図である。
【0024】
本実施形態に係るブラジャー1は、バストトップ及びバストトップより下側の乳房を少なくとも覆う一対のカップ部10と、バストトップより上側の乳房を覆う一対のパネル部20と、乳房の全体を覆う一対の表布30を備える。さらに、本実施形態のブラジャー1は、一対のカップ部10を連結する連結部40と、一対のバック部50と、一対の肩紐60を備える。なお、
図1では分かりやすいようにパネル部20をハッチングにより示している。
【0025】
(カップ部)
カップ部10はいわゆる3/4カップタイプのものであり、乳房のうちバストトップを含む該バストトップよりも下の部分とバストトップよりも上の一部を覆い、乳房の形状に沿った立体形状となるように形成されている。このため、カップ部10の下半部は正面視ほぼ半円状に、上半部は正面視ほぼ三角形状に構成されている。本実施形態では、カップ部10は伸縮性を有するモールド成型材により形成されている。カップ部の下縁にはワイヤーが収容されている。カップ部10のサイズとしては、JIS規格(JIS L4006:1998)のファンデーションサイズが適用される。
【0026】
(連結部)
連結部40は、一対のカップ部10をその下辺102(カップくりとも呼ばれる)の前中心側で連結するように各カップ部10に接続されている。連結部40は、カップ部10と同じ素材の、伸縮性を有するモールド成型材で形成されている。
【0027】
(バック部)
一対のバック部50は、連結部40の左右の側端部402及び左右のカップ部10の下辺102の脇側に接続されており、成型編みで編成された、いずれの方向にも伸縮性を有する一枚の生地から構成されている。バック部50の上部51と下部52では編目が異なっており、下部52は生地端が折り返されて上部51の下辺511と縫合されることにより生地が二重になっている。したがって、バック部50の上部51に比べ、下部52の弾性が高くなっている。一対のバック部50の先端部503には、該一対のバック部50を連結するためのホック部70がそれぞれ設けられている。
【0028】
連結部40およびバック部50の表側は伸縮性レース(図示せず)で覆われている。伸縮性レースは、2枚のレース生地が前中心で縫合されて形成され、連結部40の上辺401、バック部50の上辺501、バック部50の先端部503、カップ部10の下辺102に接する辺で連結部40及びバック部50と縫合されている。また、伸縮性レースは、連結部40の下縁の中央部で点止めS1により、バック部50の下縁のカップ部10側の位置で点止めS2により連結部40及びバック部50とそれぞれ縫合されている。点止めS1、S2は、例えば長さ5mm~10mm程度の縫目により形成されたものである。
【0029】
(肩紐)
バック部50の上辺501全体には、1本の伸縮性テープ部材の一部が縫い付けられている。伸縮性テープ部材の残りの部分は、カップ部10の脇側側辺の下端103からバック部50の上辺501の端部(装着時における背中の中心)寄りの箇所まで延びており、該箇所に取り付けられた丸環63とエイト環64によって、長さ調節可能にバック部50の上辺501に取り付けられている。伸縮性テープ部材のうち前記下端103からエイト環64を経て丸環63に至る部分は肩紐60を構成する。伸縮性テープ部材は、伸縮性をそれぞれ有する前側テープ部材61と後側テープ部材62を着用者の肩よりもやや背中側のあたりで継ぎ合わせて構成されている。前側テープ部材61には、カップ部10、パネル部20、及び表布30それぞれの脇側側辺が縫合されている。前側テープ部材61は、バック部50の上辺501や、カップ部10、パネル部20、及び表布30それぞれの脇側側辺と縫合し易いよう、後側テープ部材62に対して相対的に厚みが小さいテープ部材で構成されている。後側テープ部材62は、前側テープ部材61に対して相対的に厚みが大きいテープ素材で構成されている。
【0030】
(パネル部)
パネル部20は、カップ部10の上縁を覆いつつ、カップ部10の上辺101より上方に拡がるようカップ部10の表側に配置されている。パネル部20は、パワーネット等の伸縮性生地からなり、カップ部の上縁と沿う方向に大きく伸縮する。また、その他の方向においても伸縮性を有する。本実施形態では、パネル部20はその下辺202が折山となるようパワーネットを二つ折りにして形成されている。このようにすれば、一枚の生地で形成される場合に比べ、その弾性を高めることができ、また、下辺202の端処理をする必要がない。
【0031】
パネル部20は、前中心側から脇側に向かって徐々に広くなるよう構成されている。例えば、パネル部20の幅(上辺201から下辺202の間の長さ)は、前中心側側辺において2cm~3cm程度であり、脇側に向かって徐々に広くなり、脇側側辺において7cm~9cm程度になるよう構成されている。また、パネル部20の上辺201は、乳房の上辺に沿うように上側に凸の弧状に形成されている。
【0032】
パネル部20の前中心側端部は、カップ部10とほぼ重なり合っており、脇側に近づくにつれ、カップ部10の上辺101からパネル部20の上辺201までの長さが大きくなっている。カップ部10とパネル部20の重なり具合や、パネル部20がカップ部10の上辺101からどの程度上方に拡がるかは、カップ部10及びパネル部20の形状によって異なる。カップ部10とパネル部20が重なる部分は、前中心側から脇側にかけて一定の幅であってもよく、そうでなくてもよいが、その幅は、例えば1cm~5cm、好ましくは2cm~4cm程度になるよう構成されている。
【0033】
パネル部20の前中心側側辺はカップ部10の下辺102の前中心側端部と縫合されている。また、パネル部20の脇側側辺はカップ部10の脇側側辺、表布30の脇側側辺とともに、肩紐60の前側テープ部材61に縫合されている。パネル部20の脇側側辺をこれらと縫合する際は、パネル部20、前側テープ部材61、及び表布30をやや伸長させた状態にしておく。このように縫合されたパネル部20は、着用していない状態で弛みを有する。パネル部20の上辺201は表布30と縫合されているが、パネル部20の下辺202はどことも縫合されていない。また、パネル部20は、その左右方向中心部よりやや脇側の1箇所で、カップ部10の上縁及び表布30と点止めS3により縫合されている。点止めS3は、例えば長さ5mm~10mm程度の縫目により形成されたものである。
【0034】
(表布)
表布30は、連結部40およびバック部50を覆う伸縮性レースと同じ生地ではあるが別々に形成されており、乳房の全体を覆うように(カップ部10およびパネル部20の全体を覆うように)、カップ部10及びパネル部20の表側に設けられている。表布30はパネル部20より伸びやすく、パネル部20と同様にカップ部10の上縁と沿う方向に大きく伸縮する。表布30は、パネル部20の上辺201より上方に拡がるよう形成されており、先端部301に近づくにつれ、幅が狭くなるように構成されている。表布30の脇側側辺は、カップ部10、パネル部20それぞれの脇側側辺とともに前側テープ部材61に縫合され、表布30の下辺はカップ部10の下辺102と縫合されている。先端部301は、前側テープ部材61と後側テープ部材62が継ぎ合わされた位置で肩紐60に縫合されている。
【0035】
次に、本実施形態に係るブラジャー1の作用効果について説明する。
図3は、ブラジャー1の着用状態を説明する図である。
図3では、着用状態においてブラジャー1に作用する力を矢印により示している。
【0036】
本実施形態に係るブラジャー1は、バストトップと該バストトップよりも下側の乳房を少なくとも覆うように一対のカップ部10が設けられており、一対のカップ部10の表側に該一対のカップ部10に対応して一対のパネル部20がバストトップよりも上側の乳房を覆うように設けられている。パネル部20は非着用状態で弛みを有し、各サイズに対応する平均的なサイズの乳房を有する女性が着用したときに弛みがない状態になるよう形成されている。このため、各サイズに対応する平均的なサイズの乳房を有する女性がブラジャー1を着用した場合、カップ部10及びパネル部20が着用者の乳房に優しくフィットし、着用者に圧迫感を与えることがない。
【0037】
また、本実施形態に係るブラジャー1において、パネル部20は前中心側側辺及び脇側側辺でのみカップ部10と縫合されており、パネル部20の前中心側側辺と脇側側辺との間は、カップ部10に対して変位可能になっている。カップ部10のサイズに対して、やや大きい乳房のサイズを有する女性がブラジャー1を着用した場合、
図3に示すように、パネル部20には、パネル部20と縫合されている肩紐60(前側テープ部材61)及び表布30により斜め上方(
図3中の矢印Aの方向)に引き上げられる力が働くとともに、カップ部10には、着用者の乳房により前方(
図3中の矢印Bの方向)に押し出される力が働く。その結果、パネル部20がカップ部10に対して斜め上方にずれる。パネル部20がずれることにより、カップ部10及びパネル部20が乳房を覆う面積が増えるため、着用者の乳房をその形状に沿って優しく包むことができる。したがって、カップ部10のサイズに対してやや大きい乳房のサイズを有する女性が着用した場合でも、着用者に圧迫感を与えることがない。
【0038】
ブラジャー1のパネル部20の上辺201は、乳房の上辺に沿うよう弧状に形成されているため、乳房を潰すことなく優しく覆うことができる。これにより、圧迫感をより軽減できる。
【0039】
着用者が動くことで乳房の揺れ上がりが生じたときは、それに応じてパネル部20が伸長し、その復元力によって乳房の上部が押し返され、乳房の揺れを抑えることができる。
【0040】
ブラジャー1のパネル部20は、カップ部10の上辺101よりも上方に拡がるよう形成されているため、パネル部20の上部により直接、乳房が押さえられ、乳房の揺れを効果的に抑えることができる。
【0041】
ブラジャー1のパネル部20は、前中心側から脇側に向かって徐々に広くなるよう構成されており、乳房の揺れ上がりが生じる領域(乳房のバストトップより上側部分)をパネル部20により広く覆うことができる。これにより、乳房の揺れを効果的に抑えることができる。
【0042】
また、ブラジャー1は、一対のカップ部10及び一対のパネル部20の表側に、乳房全体を覆うように一対の表布30が設けられており、カップ部10、パネル部20、及び表布30のそれぞれの脇側側辺は、肩紐60(前側テープ部材61)に縫合されている。ブラジャー1を着用したときには、前側テープ部材61が伸長し、それに追従してカップ部10、パネル部20、表布30が引き上げられ、カップ部10、パネル部20、及び表布30が乳房によりフィットする。
【0043】
さらに、パネル部20の上辺201は表布30と縫合されているため、前側テープ部材61が伸長したときに、表布30と、パネル部20及び該パネルに縫合されたカップ部10とが一体的に引き上げられる。これにより、カップ部10、パネル部20、及び表布30が乳房にさらにフィットする。また、ブラジャー1は、表布30とカップ部10の間にパネル部20が挟まれているため、パネル部20によりカップ部10が押さえられ、カップ部10が乳房によりフィットする。
【0044】
さらに、パネル部20は、カップ部10及び表布30と点止めS3により縫合されているため、パネル部20がカップ部10から完全にずれ上がってしまうことがない。また、縫合される箇所は1箇所であるため、縫合されていたとしてもパネル部20はカップ部10に対して変位することができる。
【0045】
本実施形態に係るブラジャー1では、パネル部20は乳房の全体を覆っていないため、圧迫感を軽減しつつ、効率よく乳房の揺れを抑えることができる。
【0046】
このように、本実施形態のブラジャー1によれば、着用者に圧迫感を与えることなく、乳房の揺れを抑えることができる。加えて、本実施形態のブラジャー1によれば、着用者の乳房の形状やサイズに合うようにパネル部20がカップ部10に対して変位可能であるため、一つのカップサイズである程度の範囲の乳房のサイズに対応することができる。また、ブラジャー1を構成する各部(カップ部10、パネル部20、表布30、連結部40、パック布50、肩紐60)は全て伸縮性素材で形成されており、この点からも、様々なバストサイズ(乳房の大きさ、アンダーバストの大きさ)に対応することができる。
【0047】
本実施形態に係るブラジャー1では、カップサイズやアンダーバストサイズで細かく区分されたJIS規格のファンデーションサイズを適用している。そのため、着用者は自分の体型に合ったサイズを選択することができ、バストを美しく見せることができる。一方で、JIS規格のファンデーションサイズはサイズの適用範囲が狭く、例えばホルモンバランスの変化、妊娠、授乳、体のむくみ等により乳房のサイズが変化した場合に、該サイズに合ったブラジャーを買い直さなければならない場合がある。本実施形態のブラジャー1によれば、バストを美しく見せつつ、つけ心地がよいまま、ある程度の範囲の乳房のサイズに対応することができる。
【0048】
(変形例)
以上、本発明を実施するための形態について具体例を挙げて説明を行ったが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で適宜変更が許容される。
【0049】
例えば、上記実施形態において、カップ部を有する衣類はブラジャーの場合を説明したが、カップ部を有するキャミソールやハーフトップ等の下着、ボディースーツ、水着等であってもよい。
【0050】
上記実施形態では、カップ部10は3/4カップタイプであったが、1/2カップタイプやフルカップタイプであってもよい。パネル部20と共に乳房上部の揺れ上がりを軽減する観点から、乳房の全体を覆うものでないのが好ましく、3/4カップタイプ、1/2カップタイプであるのが好ましい。
【0051】
パネル部20の幅は、カップ部10の形状(カップタイプ)に応じて設定され、例えば1/2カップタイプである場合は、前中心側側辺において2cm~3cm程度であり、脇側側辺において7cm~12cm程度になるよう構成される。また、カップ部10とパネル部20が重なる部分の幅もカップ部の形状に応じて設定される。
【0052】
上記実施形態では、ブラジャーのサイズとしてJIS規格のファンデーションサイズを適用していたが、例えば、Lサイズ、Mサイズ、Sサイズとしてもよい。このようなサイズ展開とすれば、ブラジャーの販売者は、Lサイズ、Mサイズ、Sサイズ等の3つ程度のサイズに対応するブラジャーを用意すればよく(カップサイズやアンダーバストサイズで細かく区分された様々なサイズのブラジャーを用意する必要がなく)、様々なサイズのブラジャーを用意することにかかる手間を省き費用を削減することができる。
【0053】
上記実施形態では、カップ部10の下部にワイヤーが収容されていたが、ノンワイヤータイプであってもよい。
【0054】
上記実施形態では、パネル部20の前中心側側辺がカップ部10と縫合されていたが、例えばカシュクールタイプのブラジャーのように、連結部40に縫合されていてもよい。
【0055】
上記実施形態では、カップ部10と連結部40は別部材で形成されていたが、モールド成型により一体的に形成されていてもよい。
【0056】
上記実施形態では、表布30を有していたが、パネル部20により乳房の上部が広く覆われていれば、表布30が無くてもよい。
【0057】
上記実施形態では、表布30が伸縮性を有するレースで形成されていたが、非伸縮性の生地により形成されていてもよい。その場合、乳房の揺れに応じてパネル部20が伸長できるよう、着用時にゆとりが生じるように構成されるのがよい。
【0058】
上記実施形態では、点止めS3により、カップ部10、パネル部20、及び表布30が縫合されていたが、カップ部10とパネル部20のみが縫合されていてもよい。また、いずれも縫合されていなくてもよい。
【0059】
上記実施形態において、点止めS3の位置は特に限定されず、カップ部10とパネル部20の重なり具合に応じて設定される。カップ部10とパネル部20の重なりが小さい箇所に点止めS3を配置すれば、パネル部20がカップ部10に対してずれ上がるのを効果的に防ぐことができる。
【0060】
上記実施形態では、連結部40およびバック部50の表側を伸縮性レースで覆い、該伸縮性レースを連結部40およびバック部50に点止めS1、S2しているが、これらの位置は特に限定されず、点止めがなくてもよい。さらに、連結部40およびバック部50の表側は伸縮性レースで覆われていなくてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10…カップ部
20…パネル部
30…表布
40…連結部
50…バック部
60…肩紐