(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019810
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240206BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240206BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240206BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20240206BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H01L29/78 657D
H01L29/78 658A
H01L29/78 658E
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 653A
H01L29/78 652T
H01L29/91 C
H01L29/91 F
H01L29/91 A
H01L29/91 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122508
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100171077
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 健
(72)【発明者】
【氏名】綾 淳
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩
(57)【要約】
【課題】信頼性が確保された半導体装置と、その半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、第1導電型の炭化珪素で形成された基板と、第1導電型の炭化珪素で形成されたエピタキシャル層と、第2導電型の炭化珪素で形成された複数のベース層と、第1導電型の炭化珪素でそれぞれ形成された複数のソース層と、第2導電型の炭化珪素でそれぞれ形成された複数のコンタクト層と、隣接したベース層のそれぞれのソース層と接触するように形成された複数のゲート絶縁層と、複数のゲート絶縁層にそれぞれ形成された複数のゲート電極層と、複数のベース層のそれぞれの上において、ソース層とコンタクト層とにまたがって形成された複数のソース電極層と、基板に形成されたドレイン電極層と、上面視においてエピタキシャル層の転移欠陥が存在する領域で、コンタクト層の表層部に形成されたイオン注入層と、を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の炭化珪素で形成された基板と、
前記基板の第1面において前記基板よりも低不純物濃度の第1導電型の炭化珪素で形成され、転位欠陥を含んだエピタキシャル層と、
前記エピタキシャル層の上において第2導電型の炭化珪素で形成された複数のベース層と、
前記複数のベース層のそれぞれの上において前記エピタキシャル層よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素でそれぞれ形成された複数のソース層と、
前記複数のベース層のそれぞれの上においてソース層に囲まれ、ベース層よりも高不純物濃度の第2導電型の炭化珪素でそれぞれ形成された複数のコンタクト層と、
隣接したベース層のそれぞれのソース層と接触するように形成された複数のゲート絶縁層と、
前記複数のゲート絶縁層にそれぞれ形成された複数のゲート電極層と、
前記複数のベース層のそれぞれの上において、ソース層とコンタクト層とにまたがって形成された複数のソース電極層と、
前記基板の第2面に形成されたドレイン電極層と、
上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域で、コンタクト層の表層部に形成されたイオン注入層と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記イオン注入層は、前記エピタキシャル層よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素で形成された請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記イオン注入層は、深い準位となるように形成された請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記イオン注入層は、上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域で、コンタクト層よりもソース層の側にはみ出すように形成された請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記イオン注入層は、上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域で、コンタクト層から少なくともソース層と接する領域までと、ソース電極層との接触を妨げるように形成された請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記イオン注入層は、上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域に流れる電流値が転位欠陥を含まない領域に流れる電流値の100万分の1以上かつ10分の1以下となるように形成された請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記イオン注入層は、窒素濃度が1×1018cm-3以上かつ1×1021cm-3以下となるように形成された請求項2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記イオン注入層は、アルミニウム濃度に対する窒素濃度の比が1倍以上3倍以下となるように形成された請求項2に記載の半導体装置。
【請求項9】
第1導電型の炭化珪素で形成された基板の第1面において前記基板よりも低不純物濃度の第1導電型の炭化珪素のエピタキシャル層を形成するエピタキシャル層形成工程と、
前記エピタキシャル層の転位欠陥を検知する転位欠陥検知工程と、
前記エピタキシャル層の上において第2導電型の炭化珪素で複数のベース層を形成するベース層形成工程と、
前記複数のベース層のそれぞれの上において前記エピタキシャル層よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素で複数のソース層をそれぞれ形成するソース層形成工程と、
前記複数のベース層のそれぞれの上においてソース層に囲まれるように、ベース層よりも高不純物濃度の第2導電型の炭化珪素で複数のコンタクト層をそれぞれ形成するコンタクト層形成工程と、
隣接したベース層のそれぞれのソース層と接触するように複数のゲート絶縁層を形成するゲート絶縁層形成工程と、
前記複数のゲート絶縁層の上に複数のゲート電極層をそれぞれ形成するゲート電極層形成工程と、
前記複数のベース層のそれぞれの上において、ソース層とコンタクト層とにまたがるように複数のソース電極層をそれぞれ形成するソース電極層形成工程と、
前記基板の第2面にドレイン電極層を形成するドレイン電極層形成工程と、
前記ソース電極層形成工程の前に、上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域で、コンタクト層の表層部にイオン注入層を形成するイオン注入層形成工程と、
を備えた半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記イオン注入層形成工程は、前記イオン注入層が前記エピタキシャル層よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素となるようにイオン注入法により前記イオン注入層を形成する工程を含んだ請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記イオン注入層形成工程は、前記イオン注入層が深い準位となるようにイオン注入法により前記イオン注入層を形成する工程を含んだ請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記イオン注入層形成工程は、上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域で、コンタクト層よりもソース層の側にはみ出すように前記イオン注入層を形成する工程を含んだ請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記イオン注入層形成工程は、上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域で、コンタクト層から少なくともソース層と接する領域までと、ソース電極層との接触を妨げるように前記イオン注入層を形成する工程を含んだ請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記イオン注入層形成工程は、上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域に流れる電流値が転位欠陥を含まない領域に流れる電流値の100万分の1以上かつ10分の1以下となるように前記イオン注入層を形成する工程を含んだ請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記イオン注入層形成工程は、窒素濃度が1×1018cm-3以上かつ1×1021cm-3以下となるように前記イオン注入層を形成する工程を含んだ請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記イオン注入層形成工程は、アルミニウム濃度に対する窒素濃度の比が1倍以上3倍以下となるように前記イオン注入層を形成する工程を含んだ請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記エピタキシャル層と前記複数のベース層と前記複数のソース層と前記複数のコンタクト層とを覆うようにレジストを形成するレジスト形成工程と、
上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域で、前記レジストの一部を除去してコンタクト層を露出させるコンタクト層露出工程と、
を備え、
前記イオン注入層形成工程は、コンタクト層の表層部に前記イオン注入層を形成する請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置と、その半導体装置の製造方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の基材において、転位欠陥が存在する場合、転位の種類によっては電流通電時に積層欠陥が拡大する。特許文献1は、当該転位の拡大を防止するための半導体装置の製造方法を開示する。当該製造方法によれば、転位欠陥が存在する領域のゲート電極層を除去することで、転位欠陥による半導体装置への影響を抑制し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、転位欠陥が存在する領域のゲート電極層を除去した場合、半導体装置における電界分布が大きく変わる。このため、半導体装置の耐圧性の劣化、しきい値電圧の変動等が発生し、半導体装置の信頼性を確保しにくい。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、信頼性が確保された半導体装置と、その半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、
第1導電型の炭化珪素で形成された基板と、
前記基板の第1面において前記基板よりも低不純物濃度の第1導電型の炭化珪素で形成され、転位欠陥を含んだエピタキシャル層と、
前記エピタキシャル層の上において第2導電型の炭化珪素で形成された複数のベース層と、
前記複数のベース層のそれぞれの上において前記エピタキシャル層よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素でそれぞれ形成された複数のソース層と、
前記複数のベース層のそれぞれの上においてソース層に囲まれ、ベース層よりも高不純物濃度の第2導電型の炭化珪素でそれぞれ形成された複数のコンタクト層と、
隣接したベース層のそれぞれのソース層と接触するように形成された複数のゲート絶縁層と、
前記複数のゲート絶縁層にそれぞれ形成された複数のゲート電極層と、
前記複数のベース層のそれぞれの上において、ソース層とコンタクト層とにまたがって形成された複数のソース電極層と、
前記基板の第2面に形成されたドレイン電極層と、
上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域で、コンタクト層の表層部に形成されたイオン注入層と、
を備えた。
【0007】
前記イオン注入層は、前記エピタキシャル層よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素で形成されたことが、本開示の一形態とされる。
【0008】
前記イオン注入層は、深い準位となるように形成されたことが、本開示の一形態とされる。
【0009】
前記イオン注入層は、上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域で、コンタクト層よりもソース層の側にはみ出すように形成されたことが、本開示の一形態とされる。
【0010】
前記イオン注入層は、上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域で、コンタクト層から少なくともソース層と接する領域までと、ソース電極層との接触を妨げるように形成されたことが、本開示の一形態とされる。
【0011】
前記イオン注入層は、上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域に流れる電流値が転位欠陥を含まない領域に流れる電流値の100万分の1以上かつ10分の1以下となるように形成されたことが、本発明の一形態とされる。
【0012】
前記イオン注入層は、窒素濃度が1×1018cm-3以上かつ1×1021cm-3以下となるように形成されたことが、本発明の一形態とされる。
【0013】
前記イオン注入層は、アルミニウム濃度に対する窒素濃度の比が1倍以上3倍以下となるように形成されたことが、本開示の一形態とされる。
【0014】
本開示に係る半導体装置の製造方法は、
第1導電型の炭化珪素で形成された基板の第1面において前記基板よりも低不純物濃度の第1導電型の炭化珪素のエピタキシャル層を形成するエピタキシャル層形成工程と、
前記エピタキシャル層の転位欠陥を検知する転位欠陥検知工程と、
前記エピタキシャル層の上において第2導電型の炭化珪素で複数のベース層を形成するベース層形成工程と、
前記複数のベース層のそれぞれの上において前記エピタキシャル層よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素で複数のソース層をそれぞれ形成するソース層形成工程と、
前記複数のベース層のそれぞれの上においてソース層に囲まれるように、ベース層よりも高不純物濃度の第2導電型の炭化珪素で複数のコンタクト層をそれぞれ形成するコンタクト層形成工程と、
隣接したベース層のそれぞれのソース層と接触するように複数のゲート絶縁層を形成するゲート絶縁層形成工程と、
前記複数のゲート絶縁層の上に複数のゲート電極層をそれぞれ形成するゲート電極層形成工程と、
前記複数のベース層のそれぞれの上において、ソース層とコンタクト層とにまたがるように複数のソース電極層をそれぞれ形成するソース電極層形成工程と、
前記基板の第2面にドレイン電極層を形成するドレイン電極層形成工程と、
前記ソース電極層形成工程の前に、上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域で、コンタクト層の表層部にイオン注入層を形成するイオン注入層形成工程と、
を備えた。
【0015】
前記イオン注入層形成工程は、前記イオン注入層が前記エピタキシャル層よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素となるようにイオン注入法により前記イオン注入層を形成する工程を含んだことが、本開示の一形態とされる。
【0016】
前記イオン注入層形成工程は、前記イオン注入層が深い準位となるようにイオン注入法により前記イオン注入層を形成する工程を含んだことが、本開示の一形態とされる。
【0017】
前記イオン注入層形成工程は、上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域で、コンタクト層よりもソース層の側にはみ出すように前記イオン注入層を形成する工程を含んだことが、本開示の一形態とされる。
【0018】
前記イオン注入層形成工程は、上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域で、コンタクト層から少なくともソース層と接する領域までと、ソース電極層との接触を妨げるように前記イオン注入層を形成する工程を含んだことが、本開示の一形態とされる。
【0019】
前記イオン注入層形成工程は、上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域に流れる電流値が転位欠陥を含まない領域に流れる電流値の100万分の1以上かつ10分の1以下となるように前記イオン注入層を形成する工程を含んだことが、本開示の一形態とされる。
【0020】
前記イオン注入層形成工程は、窒素濃度が1×1018cm-3以上かつ1×1021cm-3以下となるように前記イオン注入層を形成する工程を含んだことが、本開示の一形態とされる。
【0021】
前記イオン注入層形成工程は、アルミニウム濃度に対する窒素濃度の比が1倍以上3倍以下となるように前記イオン注入層を形成する工程を含んだことが、本開示の一形態とされる。
【0022】
前記エピタキシャル層と前記複数のベース層と前記複数のソース層と前記複数のコンタクト層とを覆うようにレジストを形成するレジスト形成工程と、
上面視において前記エピタキシャル層の転位欠陥が存在する領域で、前記レジストの一部を除去してコンタクト層を露出させるコンタクト層露出工程と、
を備え、
前記イオン注入層形成工程は、コンタクト層の表層部に前記イオン注入層を形成することが、本開示の一形態とされる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、信頼性が確保された半導体装置と、その半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施の形態1における半導体装置の要部の縦断面図である。
【
図2】実施の形態1における半導体装置の要部の上面図である。
【
図3】実施の形態1における半導体装置のベース層とコンタクト層とイオン注入層との不純物濃度の例を説明するための図である。
【
図4】実施の形態1における半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】実施の形態1における半導体装置の順方向電流の流れを説明するための図である。
【
図6】実施の形態1における半導体装置のボディーダイオード電流の流れを説明するための図である。
【
図7】実施の形態2における半導体装置の要部の縦断面図である。
【
図8】実施の形態3における半導体装置の要部の縦断面図である。
【
図9】実施の形態4における半導体装置の要部の縦断面図である。
【
図10】実施の形態5における半導体装置の要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における半導体装置の要部の縦断面図である。
【0026】
図1において、半導体装置1は、炭化珪素のMOSFETである。半導体装置1は、基板2とエピタキシャル層3と複数のベース層4と複数のソース層5とコンタクト層6と複数のゲート絶縁層7と複数のゲート電極層8と複数の層間絶縁層9と複数のソース電極層10と配線電極層11とドレイン電極層12とイオン注入層13とを備える。
【0027】
基板2は、第1導電型の炭化珪素で形成される。例えば、基板2は、n
+型の基板である。例えば、基板2は、窒素を不純物として形成される。エピタキシャル層3は、基板2の第1面(
図1においては上面)に形成される。エピタキシャル層3は、基板2よりも低不純物濃度の第1導電型の炭化珪素で形成される。例えば、エピタキシャル層3は、n
-型の層である。例えば、エピタキシャル層3は、エピタキシャル成長により基板2の上に形成される。エピタキシャル層3は、転位欠陥を含む。例えば、領域Aは、単位構造において転位欠陥が含まれない領域である。例えば、領域Bは、単位構造において転位欠陥が含まれる領域である。
図1において、転位欠陥は、Cで示される。
【0028】
複数のベース層4は、エピタキシャル層3の上に形成される。複数のベース層4は、第2導電型の炭化珪素で形成される。例えば、複数のベース層4は、p-型の層である。例えば、複数のベース層4は、アルミニウムを不純物としてイオン注入により形成される。複数のソース層5は、複数のベース層4のそれぞれの上に形成される。複数のソース層5は、エピタキシャル層3よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素で形成される。例えば、複数のソース層5は、n+型の層である。例えば、複数のソース層5は、窒素を不純物としてイオン注入法により形成される。複数のコンタクト層6は、複数のベース層4のそれぞれの上に形成される。複数のベース層4のそれぞれにおいて、コンタクト層6は、ソース層5に囲まれる。複数のコンタクト層6は、複数のベース層4よりも高不純物濃度の第2導電型の炭化珪素で形成される。例えば、複数のコンタクト層6は、p+型の層である。例えば、複数のコンタクト層6は、アルミニウムを不純物としてイオン注入法により形成される。
【0029】
複数のゲート絶縁層7は、隣接したベース層4のそれぞれのソース層5と接触するように形成される。具体的には、複数のゲート絶縁層7は、エピタキシャル層3と隣接したベース層4と、その内側に存在するそれぞれのソース層5にまたがるように形成される。例えば、複数のゲート絶縁層7は、熱酸化により形成される。複数のゲート電極層8は、複数のゲート絶縁層7の上にそれぞれ形成される。例えば、複数のゲート電極層8は、CVD法によりポリシリコンで形成される。
【0030】
複数の層間絶縁層9は、複数のゲート電極層8をそれぞれ覆うように形成される。例えば、複数の層間絶縁層9は、CVD法により形成される。複数のソース電極層10は、複数のベース層4のそれぞれに対応して形成される。ソース電極層10は、ソース層5とコンタクト層6とにまたがるように形成される。例えば、複数のソース電極層10は、スパッタ法によりNi等を成膜し、熱処理して形成される。配線電極層11は、複数のソース電極層10を覆うように形成される。例えば、配線電極層11は、スパッタ法によりアルミニウム合金で形成される。
【0031】
ドレイン電極層12は、基板2の第2面(
図1においては下面)に形成される。例えば、ドレイン電極層12は、スパッタ法によりNi等を成膜し、熱処理して形成される。
【0032】
本実施の形態においては、イオン注入層13が付加される。イオン注入層13は、上面視においてエピタキシャル層3の転位欠陥Cが存在しない領域Aに形成されない。イオン注入層13は、上面視においてエピタキシャル層3の転位欠陥Cが存在する領域Bに形成される。イオン注入層13は、領域Bにおいてコンタクト層6の表層部に形成される。
【0033】
イオン注入層13は、領域Bで、コンタクト層6よりもソース層5の側にはみ出すように形成される。イオン注入層13は、領域Bで、コンタクト層6から少なくともソース層と接する領域までと、ソース電極層10との接触を妨げるように形成される。イオン注入層13は、領域Bに流れる電流値が領域Aに流れる電流値の100万分の1以上かつ10分の1以下となるように形成される。
【0034】
例えば、イオン注入層13は、エピタキシャル層3よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素で形成される。例えば、イオン注入層13は、n+型の層である。例えば、イオン注入層13は、窒素を不純物としてイオン注入法により形成される。例えば、イオン注入層13は、窒素濃度が1×1018cm-3以上かつ1×1021cm-3以下となるように形成される。例えば、イオン注入層13は、アルミニウム濃度に対する窒素濃度の比が1倍以上3倍以下となるように形成される。
【0035】
次に、
図2を用いて、イオン注入層13の詳細を説明する。
図2は実施の形態1における半導体装置の要部の上面図である。
図2においては、基板2とエピタキシャル層3と複数のベース層4と複数のゲート絶縁層7と複数のゲート電極層8と配線電極層11とドレイン電極層12とは、図示されない。
【0036】
図2において、転位欠陥Cは、3つの単位構造にまたがって存在する。これらの3つの単位構造において、転位欠陥Cが含まれる領域Bは、破線で示された領域である。煩雑さを避けるため、図示されないが、各単位構造において、転位欠陥Cが含まれない領域Aは、図示された領域B以外の領域である。なお、D-D線における断面において、領域Eに対応した断面は、
図1の断面に対応する。
【0037】
図2の例においては、3つの領域Bに対応して、3つのイオン注入層13が形成される。例えば、領域Bが存在する3つの単位構造において、イオン注入層13は、領域Bだけでなく予め設定された量だけ領域Aの側にはみ出して形成される。例えば、イオン注入層13は、転位欠陥Cの深さに応じて設定された量だけ領域Aの側にはみ出して形成される。
【0038】
次に、
図3を用いて、半導体装置1のベース層4とコンタクト層6とイオン注入層13との不純物濃度の例を説明する。
図3は実施の形態1における半導体装置のベース層とコンタクト層とイオン注入層との不純物濃度の例を説明するための図である。
図3の横軸は、半導体装置1の上面からの深さ(μm)である。
図3の縦軸は、不純物濃度(cm
-3)である。
【0039】
図3において、ベース層4とコンタクト層6との境界X1は、半導体装置1の上面から0.40μmの深さの位置と定義される。コンタクト層6とイオン注入層13との境界X2は、アルミニウム濃度と窒素濃度とがほぼ同じ濃度となる位置に定義される。
図3においては、コンタクト層6とイオン注入層13との境界X2は、0.08μmの深さの位置と定義される。
【0040】
ここで、Fは、ベース層4の不純物濃度としてのアルミニウム濃度である。Gは、コンタクト層6の不純物濃度としてのアルミニウム濃度である。Hは、イオン注入層13の不純物濃度としてのアルミニウム濃度である。Jは、イオン注入層13の不純物濃度としての窒素濃度である。Kは、コンタクト層6の不純物濃度としての窒素濃度である。
【0041】
図3の例では、ベース層4において、アルミニウム濃度の最大値は、1×10
18cm
-3程度の値である。コンタクト層6において、アルミニウム濃度の最大値は、1×10
19cm
-3よりもやや小さい値である。イオン注入層13において、窒素濃度の最大値は、1×10
19cm
-3よりもやや小さい値である。
【0042】
次に、
図4を用いて、半導体装置1の製造方法を説明する。
図4は実施の形態1における半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0043】
図4に示されるように、半導体装置1は、基板形成工程とエピタキシャル層形成工程と転位欠陥検知工程とベース層形成工程とソース層形成工程とコンタクト層形成工程とレジスト形成工程とコンタクト層露出工程とイオン注入層形成工程とアニール工程とゲート絶縁層形成工程とゲート電極層形成工程と層間絶縁層形成工程とソース電極層形成工程と配線電極層形成工程とドレイン電極層形成工程とを経て製造される。
【0044】
ステップS1において、基板形成工程が行われる。基板形成工程においては、基板2が形成される。その後、ステップS2において、エピタキシャル層形成工程が行われる。エピタキシャル層形成工程においては、エピタキシャル層3が形成される。その後、ステップS3において、転位欠陥検知工程が行われる。転位欠陥検知工程においては、フォトルミネセンス法、X線トポグラフィー等によりエピタキシャル層3の転位欠陥Cが検知される。転位欠陥Cが検知された箇所の情報は、コンピュータ(図示されず)に記憶される。
【0045】
その後、ステップS4において、ベース層形成工程が行われる。ベース層形成工程においては、複数のベース層4が形成される。その後、ステップS5において、ソース層形成工程が行われる。ソース層形成工程においては、複数のソース層5が形成される。その後、ステップS6において、コンタクト層形成工程が行われる。コンタクト層形成工程においては、複数のコンタクト層6が形成される。
【0046】
その後、ステップS7において、レジスト形成工程が行われる。レジスト形成工程においては、エピタキシャル層3と複数のベース層4と複数のソース層5と複数のコンタクト層6とを覆うようにレジストが形成される。その後、ステップS8において、コンタクト層露出工程が行われる。コンタクト層露出工程においては、ステップS3において、転位欠陥検知工程で検知され、コンピュータに記憶された箇所の情報から、転位欠陥Cが存在する領域Bが特定される。その後、領域Bに対応した箇所において、レジストの一部がレーザ描画法または電子線描画法等により露光される。その後、レジスト現像工程を経て、露光されたレジストが除去される。その結果、領域Bに対応した箇所において、コンタクト層6から少なくともソース層と接する領域までが露出する。その後、ステップS9において、イオン注入層形成工程が行われる。イオン注入層形成工程においては、コンタクト層6の表層部にイオン注入層13が形成される。その後、ステップS10において、アニール工程が行われる。アニール工程においては、イオン注入された不純物を活性化させるために、アニール処理が行われる。
【0047】
その後、ステップS11において、ゲート絶縁層形成工程が行われる。ゲート絶縁層形成工程においては、複数のゲート絶縁層7が形成される。その後、ステップS12において、ゲート電極層形成工程が行われる。ゲート電極層形成工程においては、複数のゲート電極層8が形成される。その後、ステップS13において、層間絶縁層形成工程が行われる。層間絶縁層形成工程においては、層間絶縁層9が形成される。
【0048】
その後、ステップS14において、ソース電極層形成工程が行われる。ソース電極層工程においては、ソース電極層10が形成される。その後、ステップS15において、配線電極層形成工程が行われる。配線電極層形成工程においては、配線電極層11が形成される。その後、ステップS16において、ドレイン電極層形成工程が行われる。ドレイン電極層形成工程においては、ドレイン電極層12が形成される。
【0049】
次に、
図5を用いて、順方向電流の流れを説明する。
図5は実施の形態1における半導体装置の順方向電流の流れを説明するための図である。
【0050】
図5に示されるように、順方向電流は、ドレイン電極層12から基板2に到達する。その後、順方向電流は、エピタキシャル層3に到達する。その後、順方向電流は、ゲート電極層8に向かって流れる。その後、順方向電流は、ゲート電極層8の両側のベース層4に到達する。その後、順方向電流は、ゲート電極層8の両側のソース層5に到達する。その後、順方向電流は、ソース電極層10に到達する。
【0051】
この際、領域Bにおいて、順方向電流は、イオン注入層13を通過しない。このため、順方向電流に対し、イオン注入層13は、影響しない。
【0052】
次に、
図6を用いて、ボディーダイオード電流の流れを説明する。
図6は実施の形態1における半導体装置のボディーダイオード電流の流れを説明するための図である。
【0053】
図6に示されるように、ボディーダイオード電流は、ソース電極層10からコンタクト層6に向かって流れる。その後、ボディーダイオード電流は、ベース層4に到達する。その後、ボディーダイオード電流は、エピタキシャル層3に到達する。
【0054】
この際、領域Aにおいて、ボディーダイオード電流は、ソース電極層10から直接的にコンタクト層6に流れる。これに対し、領域Bにおいて、ボディーダイオード電流は、ソース電極層10からイオン注入層13を経由してコンタクト層6に流れる。このため、領域Bにおけるボディーダイオード電流の値は、領域Aにおけるボディーダイオード電流の値よりも大幅に小さい。
【0055】
以上で説明された実施の形態1によれば、イオン注入層13は、上面視においてエピタキシャル層3の転位欠陥Cが存在する領域Bで、コンタクト層6の表層部に形成される。このため、半導体装置1の信頼性を確保することができる。
【0056】
また、イオン注入層13は、領域Bで、コンタクト層6よりもソース層5の側にはみ出すように形成される。イオン注入層13は、領域Bで、コンタクト層6から少なくともソース層と接する領域までと、ソース電極層10との接触を妨げるように形成される。このため、領域Bにおけるボディーダイオード電流の値を確実に小さくすることができる。その結果、転位欠陥Cの拡張を抑制し、半導体装置1の信頼性をより確実に確保することができる。
【0057】
具体的には、イオン注入層13は、領域Bに流れる電流値が領域Aに流れる電流値の100万分の1以上かつ10分の1以下となるように形成される。イオン注入層13により電流はわずかに流れ、絶縁されないため、半導体装置1の実動作時においても、電界分布は、ほとんど乱れない。その結果、半導体装置1の信頼性をより確実に確保することができる。
【0058】
例えば、イオン注入層13は、エピタキシャル層3よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素で形成される。例えば、イオン注入層13は、窒素濃度が1×1018cm-3以上かつ1×1021cm-3以下となるように形成される。例えば、イオン注入層13は、窒素濃度に対するアルミニウム濃度の比が1倍以上3倍以下となるように形成される。このため、領域Bにおけるボディーダイオード電流の値を大幅に小さくすることができる。その結果、転位欠陥Cの拡張を抑制し、半導体装置1の信頼性をより確実に確保することができる。
【0059】
また、イオン注入層13は、レジスト形成工程とコンタクト層露出工程とを経て領域Bに対応した箇所に形成される。このため、簡単な工程の追加で半導体装置1の信頼性を確保することができる。
【0060】
特に、炭化珪素のMOSFETにおいては、1000Vを超える高耐圧素子として、電界集中を避けるために多くの付加的な電界緩和層が設けられる。これに対し、本開示によれば、ゲート電極層8およびソース電極層10は除去されない。このため、精密に設計された電界分布は乱されない。その結果、耐圧の劣化としきい値電圧の変動とを引き起こすことなく、半導体装置1の信頼性を確保することができる。
【0061】
なお、
図2において、領域Bが存在する3つの単位構造において、イオン注入層13は、領域Aの側にはみ出さなくてもよい。例えば、イオン注入層13の端部が領域Bと領域Aとの境界に配置されるように、イオン注入層13を形成してもよい。例えば、イオン注入層13の端部が領域Bと領域Aとの境界よりも予め設定された量だけ領域Bの側に配置されるように、イオン注入層13を形成してもよい。
【0062】
実施の形態2.
図7は実施の形態2における半導体装置の要部の縦断面図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0063】
図7において、イオン注入層14は、深い準位となるように形成される。例えば、イオン注入層14は、バナジウム等の遷移金属を不純物としてイオン注入法により形成される。例えば、イオン注入層14は、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等を不純物としてイオン注入法により形成される。不純物が水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等である場合には、
図4において、ステップS7からステップS9までの工程は、ステップS10以降からステップS14の前までに行われてもよい。
【0064】
以上で説明された実施の形態2によれば、イオン注入層14は、深い準位となるように形成される。このため、イオン注入層14の抵抗は、大きくなる。例えば、イオン注入層14の抵抗により、領域Bに流れる電流値が領域Aに流れる電流値の100万分の1以上かつ10分の1以下となる。その結果、転位欠陥Cの拡張を抑制し、半導体装置1の信頼性をより確実に確保することができる。
【0065】
実施の形態3.
図8は実施の形態3における半導体装置の要部の縦断面図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0066】
図8において、イオン注入層15は、エピタキシャル層3よりも高不純物濃度の第1導電型の炭化珪素で形成される。イオン注入層15の幅は、ソース電極層10の幅と同じかまたは、それよりも広くなるように形成される。
【0067】
以上で説明された実施の形態3によれば、イオン注入層15の幅は、ソース電極層10の幅と同じかまたは、それよりも広くなるように形成される。このため、例えば、ボディーダイオード電流だけでなく、順方向電流も、領域Bに流れる電流値が領域Aに流れる電流値の100万分の1以上かつ10分の1以下となる。その結果、転位欠陥Cの拡張を抑制し、半導体装置1の信頼性をより確実に確保することができる。
【0068】
実施の形態4.
図9は実施の形態4における半導体装置の要部の縦断面図である。なお、実施の形態2の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0069】
図9において、イオン注入層16は、深い準位となるように形成される。イオン注入層16の幅は、ソース電極層10の幅と同じかまたは、それよりも広くなるように形成される。
【0070】
以上で説明された実施の形態4によれば、イオン注入層16の幅は、ソース電極層10の幅と同じかまたは、それよりも広くなるように形成される。このため、ボディーダイオード電流だけでなく、順方向電流も、領域Bに流れる電流値が領域Aに流れる電流値の100万分の1以上かつ10分の1以下となる。その結果、転位欠陥Cの拡張を抑制し、半導体装置1の信頼性をより確実に確保することができる。
【0071】
実施の形態5.
図10は実施の形態5における半導体装置の要部の縦断面図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0072】
図10に示されるように、半導体装置1は、トレンチ型である。当該半導体装置1に対しても、イオン注入層13が付加される。
【0073】
以上で説明された実施の形態5によれば、半導体装置1がトレンチ型であっても、イオン注入層13が付加される。このため、半導体装置1の信頼性を確保することができる。
【0074】
なお、実施の形態1から実施の形態5において、第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としてもよい。この場合も、半導体装置1の信頼性を確保することができる。
【0075】
少なくとも一つの実施形態のいくつかの側面が説明されたが、様々な改変、修正および改善が当業者にとって容易に想起されることを理解されたい。かかる改変、修正および改善は、本開示の一部となることが意図され、かつ、本開示の範囲内にあることが意図される。
【0076】
理解するべきことだが、ここで述べられた方法および装置の実施形態は、上記説明に記載され又は添付図面に例示された構成要素の構造および配列の詳細への適用に限られない。方法および装置は、他の実施形態で実装し、様々な態様で実施又は実行することができる。
【0077】
特定の実装例は、例示のみを目的としてここに与えられ、限定されることを意図しない。
【0078】
本開示で使用される表現および用語は、説明目的であって、限定としてみなすべきではない。ここでの「含む」、「備える」、「有する」、「包含する」およびこれらの変形の使用は、以降に列挙される項目およびその均等物並びに付加項目の包括を意味する。
【0079】
「又は(若しくは)」の言及は、「又は(若しくは)」を使用して記載される任意の用語が、当該記載の用語の一つの、一つを超える、およびすべてのものを示すように解釈され得る。
【0080】
前後左右、頂底上下、横縦、表裏への言及は、いずれも、記載の便宜を意図する。当該言及は、本開示の構成要素がいずれか一つの位置的又は空間的配向に限られるものではない。したがって、上記説明および図面は、例示にすぎない。
【符号の説明】
【0081】
1 半導体装置、 2 基板、 3 エピタキシャル層、 4 ベース層、 5 ソース層、 6 コンタクト層、 7 ゲート絶縁層、 8 ゲート電極層、 9 層間絶縁層、 10 ソース電極層、 11 配線電極層、 12 ドレイン電極層、 13~16 イオン注入層