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  • 特開-ローラ急加減速検知システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019812
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】ローラ急加減速検知システム
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/25 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
E01C19/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122510
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000208204
【氏名又は名称】大林道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197848
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 良一
(72)【発明者】
【氏名】金井 大翔
(72)【発明者】
【氏名】川田 良秀
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052DA00
(57)【要約】
【課題】従来よりも効率的かつ効果的に、ローラにおける急加減速を検知することが可能な、ローラ急加減速検知システムを提供する。
【解決手段】ローラに搭載されるローラ急加減速検知システム1であって、前記ローラにおける加速度を検出可能な加速度検出部14と、前記加速度検出部14が検出した加速度に基づいて前記ローラにおける急加減速の有無を判定することが可能な検出制御部13と、前記検出制御部13による判定結果に基づいて警告表示を行うことが可能な表示部11と、を少なくとも有することを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラに搭載されるローラ急加減速検知システムであって、
前記ローラにおける加速度を検出可能な加速度検出部と、
前記加速度検出部が検出した加速度に基づいて前記ローラにおける急加減速の有無を判定することが可能な検出制御部と、
前記検出制御部による判定結果に基づいて警告表示を行うことが可能な表示部と、を少なくとも有する
ことを特徴とするローラ急加減速検知システム。
【請求項2】
前記検出制御部は、
前記加速度検出部が検出した加速度から前記ローラにおける振動ノイズを除去する振動ノイズ除去手段と、前記ローラにおける傾きによる重力加速度の影響を除去する傾き影響除去手段と、を備えている
請求項1に記載のローラ急加減速検知システム。
【請求項3】
前記検出制御部は、
所定秒間あたりの前記傾き影響除去手段によって算出された加速度の最大値が、所定の閾値を超えたか否かを判別して前記ローラにおける急制動の有無を判定する急制動判定手段を備えている
請求項2に記載のローラ急加減速検知システム。
【請求項4】
前記表示部は、リアルタイムで前記ローラにおける加速度を表示することが可能である
請求項1乃至3に記載のローラ急加減速検知システム。
【請求項5】
前記表示部は、前記ローラにおける切り返し回数及び警告回数のうち少なくともいずれかを表示可能である
請求項1乃至3に記載のローラ急加減速検知システム。
【請求項6】
前記検出制御部は、前記ローラにおける急加速と急減速とのうち、少なくともいずれか一方を検出可能である
請求項1乃至3に記載のローラ急加減速検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転圧用のローラにおける急加減速を検知することが可能な、ローラ急加減速検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、転圧用のローラによる舗装の転圧作業においては、舗装の平坦性に及ぼす影響を考慮して、前後進の折り返し操作では緩やかな加速及び減速による運転操作が求められている。特に高い平坦性が求められる舗装では、前後進の折り返し操作による平坦性への影響を最小限とするために、色水を入れたペットボトルをローラの運転席近傍に設置し、色水の揺れが少なるなるようにオペレータが前後進操作を行っていた。
【0003】
また従来技術として、特許文献1には、障害物の検出した場合に、舗装の仕上げ品質を考慮して、ローラが急制動されることなく、段階的に減速制御されるようにした発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6845206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した色水を入れたペットボトルによる方法にあっては、ローラのオペレータの感覚に左右され、舗装の品質を一定に保つことが困難であった。また、特許文献1に開示された方法にあっては、そもそも障害物を検出した際の減速制御に関する技術であり、オペレータによる前後進の折り返し操作において、急な加減速を検知するようなものではない。
【0006】
そこで、本発明は上記した問題点に鑑み、従来よりも効率的かつ効果的に、ローラにおける急加減速を検知することが可能な、ローラ急加減速検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)に係る発明は、ローラに搭載されるローラ急加減速検知システムであって、前記ローラにおける加速度を検出可能な加速度検出部と、前記加速度検出部が検出した加速度に基づいて前記ローラにおける急加減速の有無を判定することが可能な検出制御部と、前記検出制御部による判定結果に基づいて警告表示を行うことが可能な表示部と、を少なくとも有することを特徴とするローラ急加減速検知システムである。
【0008】
(2)に係る発明は、前記検出制御部は、前記加速度検出部が検出した加速度から前記ローラにおける振動ノイズを除去する振動ノイズ除去手段と、前記ローラにおける傾きによる重力加速度の影響を除去する傾き影響除去手段と、を備えている上記(1)に記載のローラ急加減速検知システムである。
【0009】
(3)に係る発明は、前記検出制御部は、所定秒間あたりの前記傾き影響除去手段によって算出された加速度の最大値が、所定の閾値を超えたか否かを判別して前記ローラにおける急制動の有無を判定する急制動判定手段を備えている上記(2)に記載のローラ急加減速検知システムである。
【0010】
(4)に係る発明は、前記表示部は、リアルタイムで前記ローラにおける加速度を表示することが可能である上記(1)乃至(3)に記載のローラ急加減速検知システムである。
【0011】
(5)に係る発明は、前記表示部は、前記ローラにおける切り返し回数及び警告回数のうち少なくともいずれかを表示可能である上記(1)乃至(3)に記載のローラ急加減速検知システムである。
【0012】
(6)に係る発明は、前記検出制御部は、前記ローラにおける急加速と急減速とのうち、少なくともいずれか一方を検出可能である上記(1)乃至(3)に記載のローラ急加減速検知システムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来、オペレータの感覚に頼っていたローラの転圧作業に代わって、ローラにおける急加減速の有無を判定することが可能な検出制御部と、当該検出制御部による判定結果に基づいて、適切にオペレータに対して警告表示を行うことが可能となる。これにより、効率的かつ効果的にローラにおける急加減速を検知し、舗装の品質向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例における、ローラ急加減速検知システムの概略ブロック図である。
図2】本発明の実施例における、表示部の表示態様の一例を示す正面図である。
図3】本発明の実施例における、表示部の記録情報の呼び出し表示態様の一例を示す正面図である。
図4】本発明の実施例における、表示部の警告表示態様の一例を示す正面図である。
図5】本発明の実施例における、加速度データの処理フローである。
図6】本発明の実施例における、加速度β3の経時的変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明のローラ急加減速検知システムの一実施例について説明する。
【0016】
図1には、本実施例におけるローラ急加減速検知システム1の概略ブロック図が図示されている。すなわち、本実施例のローラ急加減速検知システム1は、ローラ急加減速検知装置10と、動画像又は静止画像を撮像可能な撮像部15と、警告ランプを灯火可能な警告灯16とを有している。
【0017】
また、上記したローラ急加減速検知装置10は、各種の情報表示を行うことが可能なタッチパネル表示装置等から成る表示部11と、ローラの加速度を検出することが可能な加速度検出部14と、当該加速度検出部14の検出データに基づいて、急加減速の有無の判定や、種々の制御を実行する検出制御部13と、当該検出制御部13の実行指示に基づいて、種々のデータを記録することが可能な記憶部12とを、少なくとも備えている。
【0018】
本実施例では、上記したローラ急加減速検知装置10及び警告灯16を、ローラの運転席近傍に配置し、ローラのオペレータの操作性や視認性の向上を図っている。また、上記した撮像部15は、ローラの前方に配置するとともに、転圧する舗装面とその周辺画像を撮像可能としている。上記ローラ急加減速検知装置10及び警告灯16、撮像部15は、ローラに対して容易に着脱可能に構成されている。
【0019】
なお、ローラ急加減速検知装置10及び警告灯16、撮像部15は、不図示の電源手段に接続されて動作するように構成されている。電源手段としてはローラのバッテリーのほか、ローラに搭載した発電機とすることも可能である。さらに充電可能な専用蓄電池を、ローラ急加減速検知装置10に接続するようにしてもよいし、当該ローラ急加減速検知装置10の筐体内に収容可能に構成してもよい。
【0020】
上記撮像部15は、ローラ急加減速検知装置10によってローラの急加減速が検知された場合に、検知箇所の動画像又は静止画像の撮影を行い、記憶部12に撮影データを保存することが可能となっている。これにより、当該検知箇所を正確に特定することができるので、必要に応じて舗装の補修を行うことが可能となる。
【0021】
続いて図2には、本実施例における表示部11の表示態様の一例が示されている。図示されるように、0.013秒ごとの加速度γ1を、リアルタイムにゲージで表示するゲージ表示部111と、1秒ごとの加速度γ2を経時的にグラフ表示するグラフ表示部112とを備えている。
【0022】
なお、図示されるように、上記グラフ表示部112には、ローラにおいて急加減速があったか否かの目安として、急加減速閾値ライン113が表示されている。したがって、ローラのオペレータは、グラフ表示部112を視認することで、急加減速が生じないようにローラを運転操作することが可能となる。
【0023】
加えて、上記表示部11には、ローラ急加減速検知装置10による加速度の計測開始アイコン114や、計測終了アイコン115が表示されており、これらアイコンをタッチ操作することで、ローラ急加減速検知装置10による加速度の計測開始及び終了操作が可能となっている。
【0024】
また、表示部11のmenuアイコン116をタッチ操作することで、各種設定操作や表示切替操作などが可能となっている。さらに、表示部11の状態表示部117には、現在のローラ急加減速検知装置10の動作状況や設定状況が表示されるように構成されている。
【0025】
次に、図3には、本実施例における表示部11の記録情報の呼び出し表示態様の一例が示されている。すなわち、ローラのオペレータ等によるmenuアイコン116の操作によって、記録情報呼出しウインドウ118が表示されるように構成されている。
【0026】
本実施例のローラ急加減速検知装置10は、ローラが前進から後進、及び、後進から前進に切り返した回数をカウントする切り返し回数カウント手段を有しており、カウントされて記憶部12に保存されたローラの切り返し回数を、呼び出し操作によって図示されるように表示出力することが可能となっている。
【0027】
加えて、ローラ急加減速検知装置10は、ローラにおいて急加減速があったと判断して警告した回数をカウントする警告回数カウント手段を有しており、カウントされて記憶部12に保存された警告回数を、呼び出し操作によって図示されるように表示出力することが可能となっている。
【0028】
次に、図4には、本実施例における表示部11の警告表示態様の一例が示されている。すなわち、ローラ急加減速検知装置10は、ローラにおいて急加減速があったと判断した場合には、表示部11の全画面において「急制動検知」などの表示が行われ、ローラのオペレータに対して警告表示が行われるように構成されている。
【0029】
(制御処理構成)
次に、本実施例における加速度データの処理構成について説明する。図5には、本実施例の加速度検出部14によって検出された加速度データの処理フローが図示されている。まず、加速度検出部14により、0.013秒ごとの加速度αが取得される(ステップS100)。その後、検出制御部13において、30個分の上記加速度αの平均加速度として加速度β1が算出され(ステップS110)、さらに、15個分の当該加速度β1の平均加速度として加速度β2が算出される(ステップS120)。これらステップS110及びステップS120の処理は、ローラにおける振動ノイズを除去する振動ノイズ除去手段として機能し、振動ノイズによる影響分を除去することが可能となっている。
【0030】
続いて、上記加速度β2から過去1000個分の加速度αの平均加速度を差し引いて、加速度β3を算出する(ステップS130)。ステップS130の処理は、ローラにおける傾きによる重力加速度の影響を除去する傾き影響除去手段として機能し、ローラの傾きに起因する重力加速度の影響分を除去することが可能となっている。そして、上記加速度β3の絶対値を加速度γ1として算出する(ステップS140)。
【0031】
前述したように、上記加速度γ1は、表示部11のゲージ表示部111に表示出力される。続いて検出制御部13は、1秒間における上記加速度γ1(約80個分)の最大値を加速度γ2として算出する(ステップS150)。当該加速度γ2は、前述したように、表示部11のグラフ表示部112において経時的にグラフ表示される。
【0032】
次に、検出制御部13における、ローラが後進から前進、及び、前進から後進に切り返した回数をカウントする切り返し回数カウント手段について説明する。図6には、前述した加速度β3の経時的変化がグラフで示されているが、本実施例では、加速度β3の値が0.5m/sを超えて、その後、-0.5m/sを下回った際に1往復動作があったと判断し、ローラの切り返し回数をカウントしている。
【0033】
本実施例の上記した処理構成によれば、緩やかな加減速により、切り返し動作が行われるローラにおいても、ローラ転圧時0.5~1.5m/sの小さな加速度を、振動の影響を受けることなく検出することが可能となる。
【0034】
(他の実施形態)
以上、本実施例について説明したが、本発明は必ずしも前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、ローラにおける急加減速が検出された舗装箇所の記録に際し、撮像手段のほか、GPSを利用することも可能である。
【0035】
また、前述した実施例では、撮像部15と警告灯16を設けたが、必ずしもこれらを設けなくても本発明の効果を得ることができる。
【0036】
また、前述した実施例では、ローラにおける急加減速を検出する例を説明したが、必ずしもこのような態様に限定されるものではなく、急加速と急減速とのうち、少なくともいずれか一方を検出可能であればよい。
【0037】
また、急加減速の判定に使用される加速度の閾値は、舗装の種類や品質条件などに応じて、ローラ急加減速検知装置10に適宜設定できるように構成してもよい。
【0038】
以上のとおり、本発明の実施例及び他の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記した実施例の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。また、上記実施例に記載された具体的な材質、寸法形状等は本発明の課題を解決する範囲において、変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ローラ急制動検知システム
10 ローラ急制動検知装置
11 表示部
12 記憶部
13 検出制御部
14 加速度検出部
15 撮像部
16 警告灯
111 ゲージ表示部
112 グラフ表示部
113 急制動閾値ライン
114 計測開始アイコン
115 計測終了アイコン
116 menuアイコン
117 状態表示部
118 記録情報呼出しウインドウ


図1
図2
図3
図4
図5
図6