(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019813
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】酸化チタン中空粒子及びその製造方法、並びにその用途
(51)【国際特許分類】
C01G 23/053 20060101AFI20240206BHJP
B01J 13/02 20060101ALI20240206BHJP
C09C 1/36 20060101ALI20240206BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C01G23/053
B01J13/02
C09C1/36
C09D17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122512
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西川 慧史
(72)【発明者】
【氏名】古江 誠
(72)【発明者】
【氏名】有福 達治
(72)【発明者】
【氏名】原 幸広
【テーマコード(参考)】
4G005
4G047
4J037
【Fターム(参考)】
4G005AA02
4G005AB03
4G005AB13
4G005BB06
4G005BB12
4G005BB17
4G005DA05Z
4G005DA12Z
4G005DC58Y
4G005DD46Z
4G005EA03
4G005EA06
4G047CA02
4G047CB06
4G047CC01
4G047CC02
4G047CD03
4G047CD04
4J037AA22
4J037DD02
4J037EE06
4J037EE08
4J037EE26
4J037EE28
(57)【要約】
【課題】
本発明は、従来製造が困難とされていた小粒径のルチル型中空酸化チタン粒子およびその効率的な製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
1次粒子径が50nm~150nmであるルチル型酸化チタン中空粒子であって、好ましくは中空構造の内径Aと1次粒子径Bとの比A/Bが0.3~0.95であり、さらには粒子中に0.5質量%以上14.0質量%以下のシリカを含有するルチル型酸化チタン中空粒子とそれを用いた分散液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次粒子径が50nm~150nmであるルチル型酸化チタン中空粒子。
【請求項2】
中空構造の内径Aと1次粒子径Bとの比A/Bが0.3~0.95である、請求項1に記載のルチル型酸化チタン中空粒子。
【請求項3】
粒子中にシリカを含有する請求項1又は2に記載のルチル型酸化チタン中空粒子。
【請求項4】
前記シリカの含有率が0.5質量%以上14.0質量%以下である請求項3に記載のルチル型酸化チタン中空粒子。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のルチル型酸化チタン中空粒子とルチル型酸化チタン中実粒子を含有する粒子組成物。
【請求項6】
(I)請求項1又は2に記載のルチル型酸化チタン中空粒子、及び(II)溶剤を含有する分散液。
【請求項7】
更に(III)分散剤を含有する請求項6に記載の分散液。
【請求項8】
以下工程1~工程3を有する請求項5に記載の粒子組成物の製造方法。
(工程1)コアとなるテンプレート粒子の表面に酸化チタン前駆体を含有するシェルを形成し、コア/シェル粒子を得る工程
(工程2)前記コア/シェル粒子に対して(B)ルチル型酸化チタン中実粒子を添加する工程
(工程3)前記コアシェル粒子とルチル型酸化チタン中実粒子の混合物を焼成する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空粒子及びその製造方法、並びにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
中空粒子は、その粒子内部に種々の機能物質を包含したマイクロカプセルとして広く利用されており、また内部空孔による特異な光散乱特性を利用して、紙、繊維、皮革、ガラス、金属等へのコーティング、インク及び塗料や化粧品等の分野において、光輝、光沢、不透明度、白色度などの性能を付与する為の光散乱剤、光散乱助剤としても有用であることが知られている。さらに、内部が空孔である為、屈折率調整剤、誘電率調整剤、軽量剤、遮音材、断熱材としての効果も期待できる。
中空粒子の中でも、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物の中空粒子は、構造安定性、化学的安定性にすぐれていることから、工業的に有用である。特に、酸化チタンを含有する中空粒子は、高屈折率であること、触媒活性を有すること等の理由から、光散乱材料や触媒材料として有用とされている。中空酸化チタン粒子の製造方法は、例えば、特許文献1及び2に開示されている。
【0003】
上述の通り、中空酸化チタン粒子は内部の空隙を調節することにより、屈折率を大きく変化させることが可能である。また、小粒径化することにより高い透明性を付与できるため、透明樹脂の屈折率調整剤として有用である。従って、特に透明性の必要な分野においては、より小粒径の中空酸化チタン粒子が望まれている。
【0004】
しかし、従来の技術では、150nm以下の小粒径の中空酸化チタン粒子は、アナターゼ型のみ調製可能であった。アナターゼ型の酸化チタンは高い触媒活性を示し、混合した部材の損傷を引き起こすため、触媒活性の低いルチル型とすることが望ましい。しかし、アナターゼ型の酸化チタンをルチル型に結晶転換させるためには、1000℃を超える高温での焼成が必要である。その際、粒子に高いエネルギーが加わるため、外殻の薄い小粒径粒子は中空構造が崩壊する。従って、150nm以下のルチル型中空酸化チタン粒子の調製は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-43788号公報
【特許文献2】国際公開2019/117075
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情を鑑みて発明したものであり、小粒径のルチル型中空酸化チタン粒子およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、中空酸化チタンの焼成時にルチル型の酸化チタン粒子を少量添加すると、150nm以下のルチル型の中空粒子が調製可能なことを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の1)~8)に関する。
1)
1次粒子径が50nm~150nmであるルチル型酸化チタン中空粒子。
2)
中空構造の内径Aと1次粒子径Bとの比A/Bが0.3~0.95である、上記1)に記載のルチル型酸化チタン中空粒子。
3)
粒子中にシリカを含有する上記1)又は2)に記載のルチル型酸化チタン中空粒子。
4)
前記シリカの含有率が0.5質量%以上14.0質量%以下である上記3)に記載のルチル型酸化チタン中空粒子。
5)
上記1)乃至4)のいずれか一項に記載のルチル型酸化チタン中空粒子とルチル型酸化チタン中実粒子を含有する粒子組成物。
6)
(I)上記1)乃至5)のいずれか一項に記載のルチル型酸化チタン中空粒子、及び(II)溶剤を含有する分散液。
7)
更に(III)分散剤を含有する上記6)に記載の分散液。
8)
以下工程1~工程3を有する上記5)に記載の粒子組成物の製造方法。
(工程1)コアとなるテンプレート粒子の表面に酸化チタン前駆体を含有するシェルを形成し、コア/シェル粒子を得る工程
(工程2)前記コア/シェル粒子に対して(B)ルチル型酸化チタン中実粒子を添加する工程
(工程3)前記コアシェル粒子とルチル型酸化チタン中実粒子の混合物を焼成する工程
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小粒径のルチル型の中空酸化チタンおよびそれを用いた分散液を容易に調製することができる。当該粒子は、例えば、透明樹脂に添加する屈折率調整剤として用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[(A)ルチル型酸化チタン中空粒子]
本発明の(A)ルチル型酸化チタン中空粒子は内部に空孔が形成され、殻がルチル型酸化チタンで形成されている球状、略球状、凹凸状、異形状等の粒子であり、球状又は略球状である場合が好ましく、球状である場合が更に好ましい。また中空粒子内部の空孔は、空孔を球と見なしたときに真円度が高いものが好ましい。なお、ルチル型酸化チタン中空粒子は以下単に、中空酸化チタンとして表現される場合もある。
ルチル型酸化チタンは、光触媒機能が低い、屈折率が高いので波長に対する反射率を制御できる点において優れる。なお本明細書中においてルチル型酸化チタンとは、ルチル化率が51質量%以上である場合と定義するが、好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であり、上限は100質量%でよい。なお当該割合はX線回折ピークから算出される値であり、詳細は実施例において記載する。
また本実施形態に用いるルチル型酸化チタン中空粒子は、単結晶である場合が好ましい。酸化チタンが単結晶であることは、公知の方法で確認することができる。公知の方法としては、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して、単粒子の電子回折像を測定する方法が挙げられる。本明細書において「単結晶」とは、単粒子の電子回折像がスポット像であることを意味する。
【0010】
[1次粒子径]
本発明のルチル型酸化チタン中空粒子は、1次粒子径が50nm~150nmである。
1次粒子径とは、過型電子顕微鏡(TEM)で無作為に撮影した中空構造粒子10個の外径をImageJ等の画像解析ソフトウェアを用いて測長したものの算術平均値である。なお本明細書において、「~」は前後の数値を含むものとする。
1次粒子径の上限としてより好ましくは、順に145nm、140nm、135nmであり、特に好ましくは130nmである。また下限として好ましくは、順に60nm、70nm、75nm、80nm、90nmであり、特に好ましくは95nmである。すなわち1次粒子径として最も好ましくは、95nm以上130nm以下である。
【0011】
[中空径と粒子径のパラメーター A/B]
本発明の組成物に用いられる(A)酸化チタン中空粒子は、中空粒子の中空径をA(nm)、上記中空粒子の1次粒子径をB(nm)としたとき、A/Bが0.30~0.95である場合が好ましい。A/Bの好ましい下限の値は順に0.40、0.50、0.68、0.70、0.73であり、特に好ましくは0.75である。また、上限の値は、好ましい順に0.88、0.86、0.84、0.82、0.80であり、特に好ましくは0.78である。すなわち、A/Bの最も好ましい範囲は0.75~0.78である。殻の厚みが薄過ぎる場合は混合時に中空構造が崩壊することがあり、殻の厚みが厚過ぎる場合は密度が高くなって沈殿することがあるので好ましくない。
なお、本実施形態に係る中空粒子としては、粒子の表面から内部の空孔へと通じる細孔を有さないものが好ましい。そのような細孔を有するか否かは、例えば、細孔分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製、BELSORP-mini II)を用いて、相対圧力に対する吸着量及び脱着量を測定することにより確認することができる。本明細書において「内部の空孔へと通じる細孔を有さない」とは、吸着量及び脱着量から作成される吸脱着等温線がIUPAC分類におけるIV型又はV型ではないことを意味する。IUPAC分類の中では、II型及びIII型が好ましく、II型がより好ましい。
中空粒子の中空径A及び中空粒子の1次粒子径Bは、透過型電子顕微鏡(TEM)で無作為に撮影した中空構造粒子10個の中空構造の中空径A、及び中空粒子の1次粒子径Bの算術平均値である。比A/Bの有効数字が小数点以下1桁のときは、小数点以下2桁目を四捨五入して算出する。また、比A/Bの有効数字が小数点以下2桁のときは、小数点以下3桁目を四捨五入して算出する。
なお本明細書において、中空粒子の中空径を内径と表現する場合がある。
【0012】
[シリカ]
本発明の組成物に用いられる中空酸化チタンは、その殻にシリカが併存する場合が好ましい。このシリカは結晶性であってもアモルファスであってもよいが、アモルファスであることが好ましい。シリカがアモルファスであることは、公知の方法で確認することができる。公知の方法としては、例えば、X線回折装置等を使用して、シリカ結晶(例えばα-SiO2)に由来する回折ピークを測定する方法が挙げられる。本明細書において「アモルファス」とは、結晶に由来する明確な回折ピークが現れないことを意味する。
また、(A)酸化チタン中空粒子中にシリカを有する場合、酸化チタンの含有率が70.0質量%以上99.5質量%以下であることが好ましい。酸化チタンの含有率の上限としてより好ましい値は、順に99.0質量%、98.5質量%であり、特に好ましくは98.0質量%である。また下限としてより好ましい値は、75.0質量%、80.0質量%、85.0質量%、90.0質量%、95.0質量%、95.5質量%、96.0質量%、96.5質量%であり、特に好ましくは97.0質量%である。従って、酸化チタンの含有率として最も好ましくは97.0質量%以上98.0質量%以下である。
また、本実施形態に係る中空粒子は、シリカの含有率が0.5質量%以上30.0質量%以下であることが好ましい。シリカの含有率の上限としてより好ましい値は、順に25.0質量%、20.0質量%、15.0質量%、10.0質量%、5.0質量%、4.5質量%、4.0質量%、3.5質量%であり、特に好ましくは3.0質量%である。また下限としてより好ましい値は、0.5質量%、1.0質量%、1.5質量%であり、特に好ましくは2.0質量%である。従って、シリカの含有率として最も好ましくは2.0質量%以上3.0質量%である。
中空粒子が含有する酸化チタン及びシリカの含有率は、中空粒子を製造する際の酸化チタン前駆体及びシリカ前駆体が、100%の変換率で酸化チタン及びシリカに変換されたものとして算出する。これらの含有率を算出するときは、小数点以下2桁目を四捨五入して、小数点以下1桁目までを記載する。
なお、この中空粒子は、中空構造を有する酸化チタン層とシリカ層の境界は複合酸化物となっていても良い。なおシリカがこの範囲であることにより、ブルーライトである波長400~500nmの透過率を効率的に遮蔽することができる。
【0013】
<ルチル型酸化チタン中空粒子のその他の構成>
本発明のルチル型酸化チタン中空粒子は、金属酸化物の他に、上記シリカ、更には、例えば、Sn、Cd、Fe、Ni、Zn、Mn、Co、Cr、Cu、K、Na、Li、P、S等から選択される元素を含有しても良い。これらの元素は、1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0014】
本発明のルチル型酸化チタン中空粒子が、酸化チタン及びシリカ以外の元素をさらに含有する場合、これらの元素の総含有率は、酸化チタン中のチタンのモル数に対して、通常0.1質量%~15質量%、好ましくは0.1質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%である。このような範囲とすることにより、着色が少ない中空粒子を得やすい傾向がある。
【0015】
本発明のルチル型酸化チタン中空粒子は、必要に応じて、その表面に他の物質の層をさらに有していてもよい。他の物質としては、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、ジルコニア、有機物等が挙げられる。
またフッ素化合物、シリコーン化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等の1種又は2種以上を用いて表面処理を施してあってもよい。
【0016】
[ルチル型酸化チタン中実粒子]
本発明は、上記ルチル型酸化チタン中空粒子に、更にルチル型酸化チタン中実粒子を混合した粒子組成物でもある。中空粒子と中実粒子の混合は、以下説明するとおり、本発明である一定の1次粒子径のルチル型酸化チタン中空粒子の実現を可能とするのみでなく、中空粒子間隙に中実粒子が存在することで粒子干渉による沈降抑制が可能であるという技術的側面や、低コストであるといった経済的側面において有効である。
なおルチル型酸化チタン中実粒子とは、中空形状でない点を除いて、上記中空粒子の形状等の説明が妥当する。ただし、好ましい1次粒子径は以下に説明する。また、本明細書においてルチル型酸化チタン中実粒子を単に中実粒子と省略表記する場合がある。
【0017】
<ルチル型酸化チタン中実粒子の1次粒子径>
上記ルチル粒子の1次粒子径は10nm以上100nm以下である場合が好ましい。上限としてさらに好ましい値は順に90nm、80nm、70nm、65nmであり、特に好ましくは60nmである。また下限としてさらに好ましい値は順に、15mn、20nm、であり、特に好ましくは25nmである。すなわちルチル型酸化チタン中実粒子の平均粒子径の範囲として最も好ましくは、25nm以上60nm以下である。中実粒子の粒子径が小さいほど比表面積が増大するため、以下説明する製造方法でより効果を発揮できる。
【0018】
<ルチル型酸化チタン中実粒子の添加量>
本発明の粒子組成物で用いられるルチル型酸化チタン中実粒子の添加量はルチル型酸化チタン中空粒子に対して0.5質量%以上50質量%以下である場合が好ましい。当該含有量の更に好ましい範囲として、上限は好ましい順に、45質量%、40質量%、35質量%であり、特に好ましくは30質量%である。また好ましい下限は、順に1質量%、2質量%、3質量%、4質量%であり、特に好ましくは5質量%である。すなわち当該含有量の最も好ましい範囲は、5質量%以上30質量%以下である。
【0019】
<本発明のルチル型酸化チタン中空粒子の製造方法>
本発明のルチル型酸化チタン中空粒子の製造方法を以下に記載する。ただし、この方法に限定されるものではない。
例えば、Xiong Wen(David)Lou,Lynden A.Archer and Zichao Yang,Adv.Mater.,2008,20,3987-4019等に記載されている公知の方法で製造することができる。
【0020】
特にコアとなるテンプレート粒子の表面に、酸化チタン前駆体及びシリカ前駆体を含有するシェルを形成し、コア/シェル粒子を得る工程(以下、「第1工程」ともいう。)と、コア/シェル粒子からテンプレート粒子を除去してシェル粒子を得る工程(以下、「第2工程」ともいう。)と、シェル粒子を空気雰囲気下で焼成して中空粒子を得る工程(以下、「第3工程」ともいう。)と、を含む製造方法が好ましい。
【0021】
以下に記載する各工程は、特に断りの無い限り、撹拌下に行うのが好ましい。
【0022】
<第1工程>
第1工程としては、テンプレート粒子と酸化チタン前駆体及びシリカ前駆体とを、有機溶媒中で塩基の存在下に反応させる工程が挙げられる。シリカ前駆体は、酸化チタン前駆体の添加後に添加してもよく、酸化チタン前駆体と同時に添加してもよい。第1工程により、コアとなるテンプレート粒子の表面に酸化チタン前駆体及びシリカ前駆体を含有するシェルが形成されたコア/シェル粒子を得ることができる。
【0023】
テンプレート粒子としては、ポリマー粒子及び無機粒子から選択される粒子が挙げられる。その具体例としては、例えば、(メタ)アクリレート系、ビニル系、スチレン系、ウレタン系から選択される少なくとも1種類のモノマーを重合することにより得られるポリマー粒子;炭酸カルシウム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化クロム、酸化ニッケル等の無機粒子;が挙げられる。これらの中ではポリマー粒子が好ましく、構成モノマーとしてスチレンを含むポリマー粒子がより好ましく、スチレン-(メタ)アクリル酸ポリマー粒子がさらに好ましく、スチレン-メタクリル酸ポリマー粒子が特に好ましい。
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味し、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。
【0024】
酸化チタン前駆体としては、化学的又は物理的な方法により酸化チタンに変換できる物質であれば特に制限されない。酸化チタン前駆体の中では、チタニウムアルコキシドが好ましい。チタニウムアルコキシドとしては、チタニウムテトラアルコキシドが好ましく、チタニウムテトラC1-C6アルコキシドがより好ましく、チタニウムテトラブトキシドがさらに好ましい。
【0025】
酸化チタン前駆体を添加する量を制御することにより、シェルの厚さを制御することができる。酸化チタン前駆体は、シェルを特定の厚さにする必要量を、一度に添加してもよく、数度に分けて添加してもよい。酸化チタン前駆体を数度に分けて添加することにより、シェルの厚さがより均一になる傾向にある。
【0026】
シリカ前駆体としては、化学的又は物理的な方法によりシリカに変換できる物質であれば特に制限されない。シリカ前駆体の中では、シランアルコキシドが好ましい。シランアルコキシドとしては、シランテトラアルコキシドが好ましく、シランテトラC1-C4アルコキシドがより好ましく、シランテトラエトキシドがさらに好ましい。
【0027】
有機溶媒としては、例えば、炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン等)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t-ブタノール、ベンジルアルコール等)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル等)、エーテル系溶媒(イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等)、グリコール系溶媒(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、オクチレングリコール等)、グリコールエーテル系溶媒(ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、グリコールエステル系溶媒(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等)、グライム系溶媒(モノグライム、ジグライム等)、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム等)、アミド系溶媒(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン)、ピリジン、スルホラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0028】
有機溶媒は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。2種類以上の有機溶媒を併用し、その比率、テンプレート粒子の濃度、塩基を加える方法等を制御することにより、反応液の分散状態を良好に維持しながら第1工程を行うことができる。
【0029】
塩基としては、無機塩基及び有機塩基が挙げられる。無機塩基としては、例えば、周期表の第1族元素又は第2族元素の水酸化物、好ましくはNa、K、Ca、Mg、Al、Fe等の水酸化物;アンモニア;などが挙げられる。有機塩基としては、例えば、ピリジン等の複素芳香環化合物;トリエチルアミン等のアルキルアミン(好ましくはトリアルキルアミン、より好ましくはトリC1-C4アルキルアミン);トリエタノールアミン等のヒドロキシアルキルアミン(好ましくはトリ(ヒドロキシアルキル)アミン、より好ましくはトリ(ヒドロキシC1-C4アルキルアミン));などが挙げられる。
【0030】
第1工程は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
第1工程の反応温度は、通常-30℃~80℃、好ましくは0℃~50℃である。
第1工程の反応時間は、反応温度、シェルの厚さ等によって変わるため、一概に決めることは困難である。その目安としては、通常0.1時間~10時間、好ましくは0.5時間~7時間程度である。
【0031】
なお、テンプレート粒子がポリマー粒子であり、その表面電位が酸化チタンと同じ符号であるときは、以下の方法によりコア/シェル粒子を形成することもできる。
すなわち、上記の表面電位と反対符号を有する有機ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン等)をテンプレート粒子の表面に吸着させる。次いで、酸化チタンの微粒子を有機ポリマーの表面に堆積又は吸着させ、必要に応じて酸化チタン前駆体を加えることにより、コア/シェル粒子を形成することができる。酸化チタンの微粒子として、例えばルチル型の酸化チタンを用いることにより、酸化チタン前駆体から生成する酸化チタンの結晶型をルチル型にすることができる。
【0032】
第1工程は、分散液の状態で反応が行われる。このため、その分散液の分散安定性を向上する目的で、第1工程は分散剤の存在下に行うのが好ましい。分散剤の種類は、シェルの形成を妨害しなければ特に制限されない。そのような分散剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリビニルピロリドン;共栄社化学株式会社製のフローレンシリーズ;ビックケミー・ジャパン株式会社製のDISPERBYKシリーズ;日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパースシリーズ;味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーシリーズ;楠本化成株式会社製のディスパロンシリーズ;などが挙げられる。
【0033】
<第2工程>
第2工程としては、テンプレート粒子を溶剤により溶解して除去する工程が挙げられる。そのような溶剤としては、シェル粒子を溶解又は破壊しない溶剤が好ましい。テンプレート粒子がポリマー粒子の場合、第2工程で使用する溶剤としては、メチルエチルケトン、トルエン、テトラヒドロフラン、クロロホルム等の有機溶剤が挙げられる。また、テンプレート粒子が無機粒子の場合、第2工程で使用する溶剤としては、希塩酸、希硝酸、希硫酸等の酸の水溶液が挙げられる。
【0034】
<第3工程>
第3工程としては、第2工程で得られたシェル粒子を焼成することにより、中空粒子を得る工程が挙げられる。通常、焼成は、空気、窒素、アルゴン、水素、アンモニア等の1種類以上から選択されるガスの雰囲気下で行うことができるが、単結晶の酸化チタンを得るためには、空気雰囲気下で焼成するのが好ましい。
【0035】
上記第3工程の前に、ルチル型酸化チタン中実粒子を添加する方法が好ましい。
上記の通り、アナターゼ型の酸化チタンをルチル型に結晶転換させるためには、通常1000℃を超える高温での焼成が必要である。その際、粒子に高いエネルギーが加わるため、中空構造を維持したままルチル化させることは容易ではなく、また、中空粒子の小粒径化を試みる場合には、外殻が薄くなるため、その難易度は極めて高くなる。
1000℃未満の温度で焼成時間を延ばしたり、昇温速度を工夫したりと様々な試みがされているが、本発明者らは、より効率的にルチル化を進行させるために、ルチル型酸化チタン中実粒子を添加する方法を見出した。この効果の詳細は未確定であるが、ルチル型への結晶転換は粒子表面から内部に向けて生じる性質上、中空粒子に隣接する粒子がルチル型である場合、それが核となって結晶転換の活性障壁が低下すると予想している。
この予測からは、添加するルチル型酸化チタン中実粒子と隣接するアナターゼ型酸化チタン中空粒子との接触面積が多くなる程、ルチル化が促進されると考えられる。この理由から、ルチル型酸化チタン中実粒子の1次粒子径は小さい方が好ましく、上記25nm以上60nm以下が好ましい。また、添加するルチル粒子の量が多いほどルチル化が促進されるが、その後、中空粒子とルチル粒子の分離が困難となるため、上記範囲に収まっていることが好ましい。
ルチル型酸化チタン中実粒子は、中空粒子の形成を阻害しない限りは、上記のいずれの工程で添加してもよい。例えば、第1工程のコア/シェル粒子を形成させる過程で、ルチル型酸化チタン中実粒子が混在している場合、テンプレート粒子のコア/シェル化が阻害されるため好ましくない。また、調製したルチル型酸化チタン中空粒子のルチル化率が低い場合、更にルチル型酸化チタン中実粒子を添加し追加焼成を行うことによってルチル化の促進が可能である。
【0036】
第3工程の焼成温度は、中空粒子の材質等によって変わるため、一概に決めることは困難である。その目安としては、通常600℃~1500℃以下、好ましくは650℃~1400℃、より好ましくは700℃~1300℃、さらに好ましくは750℃~1200℃程度である。
第3工程の焼成時間は、焼成温度等によって変わるため、一概に決めることは困難である。その目安としては、通常0.5時間~数十時間、好ましくは1時間~10時間程度である。
【0037】
なお、テンプレート粒子がポリマー粒子である場合、上記の第2工程が不要となる。すなわち、第1工程で得られるコア/シェル粒子を焼成する第3工程により、テンプレート粒子の除去とシェル粒子の焼成とが同時に行える。このため、第1工程及び第3工程の2工程のみで、中空粒子を製造することができる。
【0038】
第3工程で得られる中空粒子には、形状が不均一な副生成物の粒子が含まれることがある。副生成物の粒子の割合は、通常10%以下、好ましくは5%以下である。合成条件を精密に制御すること等により、副生成物の粒子の生成を抑制することができる。副生成物の含有率は、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)で無作為に撮影した中空粒子100個のうちの、形状が不均一な粒子の個数により算出することができる。
【0039】
[分散液]
本発明の分散液は、(I)上記ルチル型酸化チタン中空粒子、及び(II)溶剤を含有する。
本発明の分散液の総質量に対して、(I)ルチル型酸化チタン中空粒子の含有量は1~60質量%であることが好ましい。含有率の上限としては、40質量%がより好ましく、30質量%が更に好ましく、25質量%が特に好ましい。また下限としては、5質量%がより好ましく、8質量%が更に好ましく、10質量%が特に好ましい。従って、(I)ルチル型酸化チタン中空粒子の最も好ましい含有率は10質量%以上25質量%以下である。
また、ルチル型酸化チタン中空粒子とルチル型酸化チタン中実粒子を有する上記粒子組成物を成分(I)とし、成分(II)として溶剤を含有する分散液も同様に本発明の構成に含まれる。
【0040】
[(II)溶剤]
溶剤は、水溶性であっても非水溶性であっても良い。
非水溶性溶剤としては、例えば、炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン等)、ケトン系溶媒(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル等)、エーテル系溶媒(イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1、4-ジオキサン等)、グリコールエーテル系溶媒(ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、グリコールエステル系溶媒(エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等)、グライム系溶媒(モノグライム、ジグライム等)、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム等)、テトラヒドロフランが挙げられる。
水溶性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1-C6アルコール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルピロリジン-2-オン等のラクタム;1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン、1,3-ジメチルヘキサヒドロピリミド-2-オン等の環式尿素類;アセトン、2-メチル-2-ヒドロキシペンタン-4-オン、エチレンカーボネート等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、分子量400、800、1540、又はそれ以上のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール等のC2-C6ジオール、又はC2-C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール若しくはチオグリコール;グリセリン、ジグリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、トリメチロールプロパン等のポリオール(トリオール);ジメチルスルホキシド;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルブチレート、プロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート等のグリコールエーテル類又はグリコールエーテルアセテート類;などが挙げられる。
【0041】
なお、上記の水溶性有機溶剤には、例えばトリメチロールプロパン等のように、常温で固体の物質も含まれている。しかし、該物質等は固体であっても水溶性を示し、さらに該物質等を含有する水溶液は水溶性有機溶剤と同様の性質を示し、同じ効果を期待して使用することができる。このため本明細書においては、便宜上、このような固体の物質であっても上記と同じ効果を期待して使用できる限り、水溶性有機溶剤の範疇に含むこととする。
【0042】
上記の水溶性有機溶剤として好ましいものは、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、2-ピロリドン、ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、トリメチロールプロパン、及びブチルカルビトールであり、より好ましくはイソプロパノール、グリセリン、ジエチレングリコール、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、及びブチルカルビトールである。これらの水溶性有機溶剤は、単独又は混合して用いられる。
本発明の分散液の総質量に対して、(II)溶剤の含有量は1~90質量%である場合が好ましい。なお、上記(I)組成物と併せて100質量%に満たない場合は、残部は水、又は以下の分散剤、添加剤等である。
含有率の上限としては、80質量%がより好ましく、60質量%が更に好ましく、40質量%が特に好ましい。また下限としては、10質量%がより好ましく、20質量%が更に好ましく、30質量%が特に好ましい。従って、(II)溶剤の最も好ましい含有率は30質量%以上40質量%以下である。
【0043】
[(III)分散剤]
本発明の樹脂組成物は、成分(III)として分散剤を含有してもよい。
(III)分散剤としては、脂肪酸塩(石けん)、α-スルホ脂肪酸エステル塩(MES)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ABS)、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、アルキル硫酸塩(AS)、アルキルエーテル硫酸エステル塩(AES)、アルキル硫酸トリエタノールといった低分子陰イオン性(アニオン性)化合物、脂肪酸エタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(APE)、ソルビトール、ソルビタンといった低分子非イオン系化合物、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルピリジニウムクロリド、といった低分子陽イオン性(カチオン性)化合物、アルキルカルボキシルベタイン、スルホベタイン、レシチンといった低分子両性系化合物や、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩、ビニル化合物とカルボン酸系単量体の共重合体塩、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどに代表される高分子水系分散剤、ポリアクリル酸部分アルキルエステル、ポリアルキレンポリアミンといった高分子非水系分散剤、ポリエチレンイミン、アミノアルキルメタクリレート共重合体といった高分子カチオン系分散剤が代表的なものであるが、本発明の樹脂組成物に好適に適用されるものであれば、ここに例示したような形態のもの以外の構造を有するものを排除しない。
【0044】
添加する分散剤としては、具体的名称を挙げると次のようなものが知られている。フローレンDOPA-15B、フローレンDOPA-17(共栄社化学株式会社製)、ソルプラスAX5、ソルプラスTX5、ソルスパース9000、ソルスパース12000、ソルスパース17000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース35100、ソルスパース54000、ソルシックス250、(日本ルーブリゾール株式会社製)、EFKA4008、EFKA4009、EFKA4010、EFKA4015、EFKA4046、EFKA4047、EFKA4060、EFKA4080、EFKA7462、EFKA4020、EFKA4050、EFKA4055、EFKA4400、EFKA4401、EFKA4402、EFKA4403、EFKA4300、EFKA4320、EFKA4330、EFKA4340、EFKA6220、EFKA6225、EFKA6700、EFKA6780、EFKA6782、EFKA8503(エフカアディディブズ社製)、アジスパーPA111、アジスパーPB711、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPN411、フェイメックスL-12(味の素ファインテクノ株式会社製)、TEXAPHOR-UV21、TEXAPHOR-UV61(コグニスジャパン株式会社製)、DisperBYK101、DisperBYK102、DisperBYK106、DisperBYK108、DisperBYK111、DisperBYK116、DisperBYK130、DisperBYK140、DisperBYK142、DisperBYK145、DisperBYK161、DisperBYK162、DisperBYK163、DisperBYK164、DisperBYK166、DisperBYK167、DisperBYK168、DisperBYK170、DisperBYK171、DisperBYK174、DisperBYK180、DisperBYK182、DisperBYK192、DisperBYK193、DisperBYK2000、DisperBYK2001、DisperBYK2020、DisperBYK2025、DisperBYK2050、DisperBYK2070、DisperBYK2155、DisperBYK2164、BYK220S、BYK300、BYK306、BYK320、BYK322、BYK325、BYK330、BYK340、BYK350、BYK377、BYK378、BYK380N、BYK410、BYK425、BYK430(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、ディスパロン1751N、ディスパロン1831、ディスパロン1850、ディスパロン1860、ディスパロン1934、ディスパロンDA-400N、ディスパロンDA-703-50、ディスパロンDA-725、ディスパロンDA-705、ディスパロンDA-7301、ディスパロンDN-900、ディスパロンNS-5210、ディスパロンNVI-8514L、ヒップラードED-152、ヒップラードED-216、ヒップラードED-251、ヒップラードED-360(楠本化成株式会社)、FTX-207S、FTX-212P、FTX-220P、FTX-220S、FTX-228P、FTX-710LL、FTX-750LL、フタージェント212P、フタージェント220P、フタージェント222F、フタージェント228P、フタージェント245F、フタージェント245P、フタージェント250、フタージェント251、フタージェント710FM、フタージェント730FM、フタージェント730LL、フタージェント730LS、フタージェント750DM、フタージェント750FM(株式会社ネオス製)、AS-1100、AS-1800、AS-2000(東亞合成株式会社製)、カオーセラ2000、カオーセラ2100、KDH-154、MX-2045L、ホモゲノールL-18、ホモゲノールL-95、レオドールSP-010V、レオドールSP-030V、レオドールSP-L10、レオドールSP-P10(花王株式会社製)、エバンU103、シアノールDC902B、ノイゲンEA-167、ブライサーフA219B、ブライサーフAL(第一工業製薬株式会社製)、メガファックF-477、メガファック480SF、メガファックF-482、(DIC株式会社製)、シルフェイスSAG503A、ダイノール604(日信化学工業株式会社製)、SNスパーズ2180、SNスパーズ2190、SNレベラーS-906(サンノプコ株式会社製)、S-386、S-420(AGCセイミケミカル株式会社製)といったものが例示できる。
【0045】
このうち、分子内にカルボニル基(-C(=O)-)、又はアミノ基(-NR3 Rは水素原子又はアルキル基を表す)を有する非シリコーン系分散剤である場合が、本発明の樹脂組成物用途としては特に好適である。カルボニル基は、炭素-酸素二重結合を有する基であり、本明細書においてはカルボキシ基中の-C(=O)-もカルボニル基として定義する。またアミノ基は、1~4級のいずれであっても良い。すなわち-NR3という基において、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基のいずれであっても良く、その数も任意に設定できる。またアルキル基で置換された4級アンモニウム基の場合、上記Rが全てアルキル基のものが分散剤分子に共有結合で結合していても、分散剤分子と4級アンモニウムがイオン結合または配位結合で結合していてもよい。すなわち分散剤分子内にアミノ基が存在すれば、本発明の効果は奏する。なお上記Rにおけるアルキル基とは、炭素数1-10のアルキル基を表し、直鎖、分岐、環状のいずれであっても良いが、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。またRにおけるアルコキシ基も同様に炭素数1-10のアルコキシ基を表し、直鎖、分岐、環状のいずれであって良く、例えばメトキシ基、エトキシ基等を挙げることができる。
当該分散剤としての具体例としては、エチレングリコールとポリカプロラクトンのブロック共重合体のリン酸エステル化合物、ポリエステル酸アミドアミン塩、及びポリアルキレングリコールアクリレート、5-(モルホリノメチル)-3-[(5-ニトロフルフリリデン)アミノ]-2-オキサゾリジノン、アルキロールアンモニウム塩、アルキロールアミノアマイド、変性アクリル系ブロック共重合物、2級アミノ基を含有するポリウレタン系ブロック共重合体の混合物、ポリウレタン-ポリオキシエチレン系ブロック共重合体、ポリエステル系グラフト共重合体、ポリエステル-ポリオキシエチレン系グラフト共重合体、ポリウレタン-ポリエステル系ブロック共重合体、等を挙げることができる。製品名としては、DISPERS BYK-111、2013、2158(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、ディスパロンDA7301、703-50(楠本化成株式会社製)を挙げることができる。
【0046】
<その他成分>
本発明の樹脂組成物は、上記成分(I)~(III)以外に界面活性剤、粉体、水溶性高分子、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、アミノ酸、高分子エマルジョン、pH調整剤、酸化防止剤、酸化防止助剤等を必要に応じて適宜含有することができる。
【0047】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、親油性非イオン界面活性剤、親水性非イオン界面活性剤等を挙げることができる。なお、本発明の分散液の総質量に対して、界面活性剤の含有量は0.1~20質量%、好ましくは0.2~10質量%である。
(アニオン性界面活性剤)
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケン(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等);高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等);アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POE-ラウリル硫酸トリエタノールアミン、POE-ラウリル硫酸ナトリウム等);N-アシルサルコシン酸(例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム等);高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N‐ステアロイルーNーメチルタウリンナトリウム、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム、ラウリルメチルタウリッドナトリウム等);リン酸エステル塩(POE-オレイルエーテルリン酸ナトリウム、POE-ステアリルエーテルリン酸等);スルホコハク酸塩(例えば、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等);アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等);高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等);N-アシルグルタミン酸塩(例えば、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム等);硫酸化油(例えば、ロート油等);POE-アルキルエーテルカルボン酸;POE-アルキルアリルエーテルカルボン酸塩;α-オレフィンスルホン酸塩;高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;二級アルコール硫酸エステル塩;高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム;N-パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン;カゼインナトリウム等を使用することができる。
(カチオン性界面活性剤)
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等);アルキルピリジニウム塩(例えば、塩化セチルピリジニウム等);塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩;塩化ポリ(N,N’-ジメチル-3,5-メチレンピペリジニウム);アルキル四級アンモニウム塩;アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;アルキルイソキノリニウム塩;ジアルキルモリホニウム塩;POE-アルキルアミン;アルキルアミン塩;ポリアミン脂肪酸誘導体;アミルアルコール脂肪酸誘導体;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
(両性界面活性剤)
シル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等);ベタイン系界面活性剤(例えば、2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)等が挙げられる。
(親油性非イオン界面活性剤)
親油性非イオン界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);グリセリンポリグリセリン脂肪酸(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α'-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等);プロピレングリコール脂肪酸エステル(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);硬化ヒマシ油誘導体;グリセリンアルキルエーテル等が挙げられる。
(親水性非イオン界面活性剤)
親水性非イオン界面活性剤としては、例えば、POE-ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンモノステアレート、POE-ソルビタンモノオレエート、POE-ソルビタンテトラオレエート等);POE-ソルビット脂肪酸エステル(例えば、POE-ソルビットモノラウレート、POE-ソルビットモノオレエート、POE-ソルビットペンタオレエート、POE-ソルビットモノステアレート等);POE-グリセリン脂肪酸エステル(例えば、POE-グリセリンモノステアレート、POE-グリセリンモノイソステアレート、POE-グリセリントリイソステアレート等のPOE-モノオレエート等);POE-脂肪酸エステル(例えば、POE-ジステアレート、POE-モノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等);POE-アルキルエーテル(例えば、POE-ラウリルエーテル、POE-オレイルエーテル、POE-ステアリルエーテル、POE-ベヘニルエーテル、POE-2-オクチルドデシルエーテル、POE-コレスタノールエーテル等);プルロニック(登録商標)型(例えば、プルロニック(登録商標)等);POE・POP-アルキルエーテル(例えば、POE・POP-セチルエーテル、POE・POP-2-デシルテトラデシルエーテル、POE・POP-モノブチルエーテル、POE・POP-水添ラノリン、POE・POP-グリセリンエーテル等);テトラPOE・テトラPOP-エチレンジアミン縮合物(例えば、テトロニック等);POE-ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(例えば、POE-ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE-硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE-硬化ヒマシ油マレイン酸等);POE-ミツロウ・ラノリン誘導体(例えば、POE-ソルビットミツロウ等);アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等);POE-プロピレングリコール脂肪酸エステル;POE-アルキルアミン;POE-脂肪酸アミド;ショ糖脂肪酸エステル;アルキルエトキシジメチルアミンオキシド;トリオレイルリン酸等が挙げられる。
【0048】
<粉体>
粉体としては成分(I)上記素背物とは別に通常の分散液に使用されるものであればその形状(球状、針状、板状、等)や粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)を問わず、使用することができるが、例えば以下に挙げるもののうち1種又は2種以上を使用することができる。無機粉体として、例えば酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、合成雲母、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、モンモリロナイト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、窒化ホウ素、窒化ボロン等;有機粉体として、例えばポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、テトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロースパウダー、シルクパウダー、ナイロンパウダー、12ナイロンパウダー、6ナイロンパウダー、スチレン・アクリル酸共重合体パウダー、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体パウダー、ビニル樹脂パウダー、尿素樹脂パウダー、フェノール樹脂パウダー、フッ素樹脂パウダー、ケイ素樹脂パウダー、アクリル樹脂パウダー、メラミン樹脂パウダー、エポキシ樹脂パウダー、ポリカーボネイト樹脂パウダー、微結晶繊維パウダー、ラウロイルリジン等;有色顔料として、例えば酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、γ-酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した複合粉体等;パール顔料として、例えば酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母等;金属粉末顔料として、例えばアルミニウムパウダー、カッパーパウダー、ステンレスパウダー等;タール色素として、例えば赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等;天然色素として、例えばカルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等が挙げられる。なお、これらの粉体を複合化したり、油剤やシリコーン、又はフッ素化合物等で表面処理を行った粉体を用いても良い。
【0049】
<水溶性高分子>
水溶性高分子としては、天然、合成のいずれであっても用いることができ、また併用することも可能である。
天然の水溶性高分子としては、例えば、植物系高分子(例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸);微生物系高分子(例えば、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等);動物系高分子(例えば、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等)等が挙げられる。
合成の水溶性高分子としては、例えば、デンプン系高分子(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等);セルロース系高分子(メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等);アルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)、ビニル系高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等);ポリオキシエチレン系高分子(例えば、ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,0000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等);アクリル系高分子(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等);ポリエチレンイミン;カチオンポリマー等が挙げられる。
【0050】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤としては、例えば、安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルメトキシシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等);3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン、ジモルホリノピリダジノ;2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート;2,4-ビス-{[4-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}-6-(4-メトキシフェニル)-(1,3,5)-トリアジン等が挙げられる。
【0051】
<金属イオン封鎖剤>
金属イオン封鎖剤としては、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸3ナトリウム等が挙げられる。
【0052】
<アミノ酸>
アミノ酸としては、例えば、中性アミノ酸(例えば、スレオニン、システイン等);塩基性アミノ酸(例えば、ヒドロキシリジン等)等が挙げられる。また、アミノ酸誘導体として、例えば、アシルサルコシンナトリウム(ラウロイルサルコシンナトリウム)、アシルグルタミン酸塩、アシルβ-アラニンナトリウム、グルタチオン、ピロリドンカルボン酸等が挙げられる。
【0053】
<有機アミン>
有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等が挙げられる。
【0054】
<高分子エマルジョン>
高分子エマルジョンとしては、例えば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリアクリル酸エチルエマルジョン、アクリルレジン液、ポリアクリルアルキルエステルエマルジョン、ポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン、天然ゴムラテックス等が挙げられる。
【0055】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、例えば、乳酸-乳酸ナトリウム、クエン酸-クエン酸ナトリウム、コハク酸-コハク酸ナトリウム等の緩衝剤等が挙げられる。
【0056】
<酸化防止剤>
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸エステル類等が挙げられる。
【0057】
<酸化防止助剤>
酸化防止助剤としては、例えば、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、ケファリン、ヘキサメタフォスフェイト、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
【0058】
本発明の分散液は、バインダー樹脂を用いて樹脂組成物とすることも可能である。また、さらに、この樹脂組成物には、熱硬化剤及び/又はラジカル重合開始剤を含有しても良い。
【0059】
バインダー樹脂としては、特に制限はなく、例えばアクリルモノマーのような低分子化合物も、バインダーとして使用されうるものであれば、本明細書においてはバインダー樹脂と表現する。
バインダー樹脂として用いられうる熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、超低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン酢酸ビニルコポリマー、アイオノマー樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、エチレンアクリル酸エチル共重合体、アクリロニトリル・スチレン樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリスチレン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル・EPDM・スチレン共重合樹脂、シリコーンゴム・アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、セルロース・アセテート・ブチレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、メタクリル樹脂、エチレン・メチルメタクリレートコポリマー樹脂、エチレン・エチルアクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ4フッ化エチレン樹脂、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合樹脂、4フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、4フッ化エチレン・エチレン共重合樹脂、ポリ3フッ化塩化エチレン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ナイロン4,6、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン12、ナイロン6,T、ナイロン9,T、芳香族ナイロン樹脂、ポリアセタール樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、非晶性コポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン樹脂、ポリフロロアルコキシ樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリケトン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、生分解樹脂、バイオマス樹脂等が挙げられる。しかし、これらに限定されるものではない。また、これらの樹脂2種以上を混合させたものであっても良い。これらの熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000~1,000,000程度であり、好ましくは2000乃至500,000程度、より好ましくは2000~200,000程度である。熱可塑性樹脂として好ましい樹脂は、透明性等の観点から(メタ)アクリル樹脂が好ましく、例えば(メタ)アクリレートポリマー、特に(メタ)アクリル共重合体等が好ましい。
【0060】
バインダー樹脂として用いられうる熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテルを有する硬化性化合物が挙げられる。
上記環状エーテルを有する熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂(脂環式エポキシ樹脂を含む脂肪族エポキシ樹脂または芳香族エポキシ樹脂)、オキセタン樹脂、フラン樹脂等が挙げられる。なかでも、反応速度や汎用性の観点からエポキシ樹脂(脂肪族環、例えば炭素数3~12の脂肪族環を含んでいても良い)、オキセタン樹脂が好適である。上記エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビフェニルノボラック型、トリスフェノールノボラック型、ジシクロペンタジエンノボラック型等のノボラック型;ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、2,2’-ジアリルビスフェノールA型、水添ビスフェノール型、ポリオキシプロピレンビスフェノールA型等のビスフェノール型等が挙げられる。また、その他にグリシジルアミン等も挙げられる。
上記エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、エピクロン(登録商標)N-740、N-770、N-775(以上、いずれも大日本インキ化学工業株式会社製)、エピコート(登録商標)152、エピコート(登録商標)154(以上、いずれもジャパンエポキシレジン株式会社製)等が挙げられる。クレゾールノボラック型としては、例えば、エピクロン(登録商標)N-660、N-665、N-670、N-673、N-680、N-695、N-665-EXP、N-672-EXP(以上、いずれも大日本インキ化学工業株式会社製);ビフェニルノボラック型としては、例えば、NC-3000P(日本化薬社製);トリスフェノールノボラック型としては、例えば、EP1032S50、EP1032H60(以上、いずれもジャパンエポキシレジン株式会社製);ジシクロペンタジエンノボラック型としては、例えば、XD-1000-L(日本化薬株式会社製)、HP-7200(大日本インキ化学工業株式会社製);ビスフェノールA型エポキシ化合物としては、例えば、エピコート(登録商標)828、エピコート(登録商標)834、エピコート1001、エピコート(登録商標)1004(以上、いずれもジャパンエポキシレジン株式会社製)、エピクロン(登録商標)850、エピクロン(登録商標)860、エピクロン(登録商標)4055(以上、いずれも大日本インキ化学工業株式会社製);ビスフェノールF型エポキシ化合物の市販品としては、例えば、エピコート(登録商標)807(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、エピクロン(登録商標)830(大日本インキ化学工業株式会社製);2,2’-ジアリルビスフェノールA型としては、例えば、RE-810NM(日本化薬株式会社製);水添ビスフェノール型としては、例えば、ST-5080(東都化成株式会社製);ポリオキシプロピレンビスフェノールA型としては、例えば、EP-4000、EP-4005(以上、いずれも旭電化工業株式会社製)等が挙げられる。
上記オキセタン化合物の市販品として、例えば、エタナコール(登録商標)EHO、エタナコール(登録商標)OXBP、エタナコール(登録商標)OXTP、エタナコール(登録商標)OXMA(以上、いずれも宇部興産株式会社製)等が挙げられる。また、上記脂環式エポキシ化合物としては特に限定されず、例えば、セロキサイド(登録商標)2021、セロキサイド(登録商標)2080、セロキサイド(登録商標)3000(以上、いずれもダイセル・ユーシービー株式会社製)等が挙げられる。これらの環状エーテル基を有する硬化性化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
バインダー樹脂として用いられうる光硬化性樹脂としては、例えば、ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、マレイミド基、(メタ)アクリロイル基等を有する樹脂が挙げられる。なかでも反応性や汎用性の面より(メタ)アクリロイル基を有する樹脂、例えば(メタ)アクリレート化合物、が好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」等の用語は、「アクリロイル」又は「メタクリロイ」を意味し、例えば「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。
(メタ)アクリロイル基を有する樹脂としては例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、水酸基含有(メタ)アクリレートと多カルボン酸化合物の酸無水物の反応物であるハーフエステル,ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε-カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬株式会社製、KAYARAD(登録商標)HX-220、HX-620等)、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールとε-カプロラクトンの反応物のポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(例えば日本化薬(株)製、KAYARAD(登録商標)DPHA等)、モノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。
モノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートに用いられるグリシジル化合物としては、特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’-ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル-4,4’-ビフェノール、ジメチル-4,4’-ビフェニルフェノール、1-(4-ヒドロキシフェニル)-2-[4-(1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン骨格を有するフェノール類、1,1-ジ-4-ヒドロキシフェニルフルオレン等のフルオレン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、ブロム化ビスフェノールA、ブロム化ビスフェノールF、ブロム化ビスフェノールS、ブロム化フェノールノボラック、ブロム化クレゾールノボラック、クロル化ビスフェノールS、クロル化ビスフェノールA等のポリフェノール類のグリシジルエーテル化物が挙げられる。
これらモノ又はポリグリシジル化合物と(メタ)アクリル酸の反応物であるエポキシ(メタ)アクリレートは、そのエポキシ基に当量の(メタ)アクリル酸をエステル化反応させる事によって得ることができる。この合成反応は一般的に知られている方法により行うことができる。例えば、レゾルシンジグリシジルエーテルにその当量の(メタ)アクリル酸を、触媒(例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン等)及び重合防止剤(例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエン等)と共に添加して、例えば80~110℃でエステル化反応を行う。こうして得られた(メタ)アクリル化レゾルシンジグリシジルエーテルは、ラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基を有する樹脂である。
【0062】
バインダー樹脂としては、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が好ましく、光硬化性樹脂である場合が更に好ましい。
また、分子内に3以上の(メタ)アクリロイル基とを併せ持つバインダー樹脂である場合が特に好ましい。
分子内に3以上の(メタ)クリロイル基と極性官能基を併せ持つバインダー樹脂としては、例えば、ペンタエリスリトルトリアクリレート(KAYARAD PET-30 日本化薬製)、ジペンタエリスリトルペンタアクリレートとジペンタエリスリトルヘキサアクリレートの混合物(KAYARAD DPHA 日本化薬製)、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート(701A 新中村化学製)、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(A-9300 新中村化学製)、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(A-9300-1CL 新中村化学)等の(メタ)アクリレートモノマー化合物、ビスフェノールA型エポキシアクリレート(R-115F、R-130、R-381等 日本化薬製)、ビスフェノールF型エポキシアクリレート(ZFA-266H 日本化薬製)、酸変性エポキシアクリレート(ZARシリーズ、ZCRシリーズ 日本化薬製)等のエポキシアクリレート樹脂、ポリエステル系ウレタンアクリレート(UX3204、UX-4101、UXT-6100 日本化薬製)、混合系ウレタンアクリレート(UX-6101、UX-8101 日本化薬製)、ポリエーテル系ウレタンアクリレート(UX-937、UXF-4001-M35 日本化薬製)、エステル系ウレタンアクリレート(DPHA-40H、UX-5000、UX-5102D-M20、UX-5103D、UX-5005 日本化薬製)等のウレタンアクリレート樹脂を挙げることができる。
分子内に3以上の(メタ)アクリロイル基を持つバインダー樹脂としては、より好ましくは3以上10以下の(メタ)クリロイル基を持つ場合であり、更に好ましくは4以上8以下の(メタ)アクリロイル基をもつ場合である。
本発明の分散液の総質量に対して、バインダー樹脂の含有量は0~50質量%、好ましくは5~40質量%である。
【0063】
バインダー樹脂として、熱硬化性樹脂が用いられる場合には、熱硬化剤を併用し、光硬化性樹脂が用いられる場合には、光開始剤を併用する場合が好ましい。ただし、光硬化性樹脂は不飽和二重結合のラジカル重合反応によって硬化する為、熱ラジカル重合開始剤を用いても同様である。
【0064】
用いられうる熱硬化剤としては、非共有電子対や分子内のアニオンによって、求核的に反応するものであって、例えばアミン系硬化剤(以下アミン類とも言う)、ヒドラジド系硬化剤(以下ヒドラジド類とも言う)、イミダゾール系硬化剤(以下イミダゾール類とも言う)、ポリアミド樹脂、ジシアンジアミド、イソシアネート、チオール系硬化剤(チオール類)、フェノール系硬化剤(フェノール類)等を挙げることができる。ただしこれらに限定されるものではない。
アミン類としては、脂肪族鎖状アミン、脂肪族環状アミン、芳香族アミン、変性アミン(アミンアダクト、ケチミン等)等を挙げることができる。また1級アミン、2級アミン、3級アミン、4級アミンのいずれであっても良いが、反応性の見地からは1級又は2級アミンが好ましい。
アミン類として具体的には、例えばジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジエチルメチルベンゼンジアミン、2-メチル-4,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、ビスアニリン、ジエチルトルエンジアミンを、ジエチルチオトルエンジアミン、N,N’-ビス(sec-ブチルアミノ)ジフェニルメタン等の芳香族アミン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノルボルナンジアミン、ポリエーテルアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン、変性アミン等が挙げられる。特に好ましくは、ジエチルメチルベンゼンジアミン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミンを挙げることができる。
ヒドラジド類としては、有機酸ヒドラジド化合物が特に好適に用いられる。例えば、芳香族ヒドラジドであるサリチル酸ヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6-ピリジンジヒドラジド、1,2,4-ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8-ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等をあげることができる。また、脂肪族ヒドラジド化合物であれば、例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、1,4-シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N’-ヘキサメチレンビスセミカルバジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントイン等のヒダントイン骨格、好ましくはバリンヒダントイン骨格(ヒダントイン環の炭素原子がイソプロピル基で置換された骨格)を有するジヒドラジド化合物、トリス(1-ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(1-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3-ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレート、ビス(2-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等をあげることができる。硬化反応性と潜在性のバランスから好ましくは、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、トリス(ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(1-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3-ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレートであり、特に好ましくはトリス(2-ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレートである。
イミダゾール類としては、例えば2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-ウンデシルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-エチル,4-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-3,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-3,5-ジシアノエトキシメチルイミダゾールの各種イミダゾール類、及び、それらイミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸、蓚酸等の多価カルボン酸との塩類が挙げられる。
チオール類としては、カレンズMT PE1、BD1、NR1、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)(いずれも昭和電工(株)製)等を挙げることができる。なお、チオール系硬化剤とは、分子内に少なくとも1つのチオール基(SH)を有する硬化剤である。
フェノール類としては、フェノール(各種置換基を有しても良い)にホルマリンを酸触媒下で縮合反応させて得られるフェノールノボラック類やビスフェノールA、ビスフェノールS等を例示することができる。
【0065】
熱硬化剤が用いられる場合には、熱硬化促進剤を併用しても良い。硬化促進剤としては、硬化促進剤としては、フェノール類、有機酸、ホスフィン類、イミダゾール等を挙げることができる。
有機酸としては、有機カルボン酸や有機リン酸等が挙げられるが、有機カルボン酸である場合が好ましい。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フランジカルボン酸等の芳香族カルボン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、チオジプロピオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリス(2-カルボキシメチル)イソシアヌレート、トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-カルボキシプロピル)イソシアヌレート、ビス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
ホスフィン類としてはトリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等を挙げることができる。
イミダゾール類としては、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-ウンデシルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-エチル-4-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6(2’-メチルイミダゾール(1’))エチル-s-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-3,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-3,5-ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0066】
用いられうるラジカル重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤及び/又は熱ラジカル重合開始剤を意味する。これらは、本発明の熱線吸収膜である熱線遮蔽構造体の製造方法によって使い分けることができる。
用いられうる光ラジカル重合開始剤としては、紫外線や可視光の照射によって、ラジカルや酸を発生し、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2-エチルアンスラキノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-1-プロパン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスヒンオキサイド、カンファーキノン、9-フルオレノン、ジフェニルジスルヒド等を挙げることができる。具体的には、IRGACURERTM 651、184、2959、127、907、369、379EG、819、784、754、500、OXE01、OXE02、DAROCURERTM1173、LUCIRINRTM TPO(いずれもBASF社製)、セイクオールRTMZ、BZ、BEE、BIP、BBI(いずれも精工化学株式会社製)等を挙げることができる。
また、365nmにおけるモル吸光係数(ε)が50以上10000(mL/g・cm)以下である場合が好ましく、100以上8000(mL/g・cm)以下である場合がさらに好ましく、1000以上7500(mL/g・cm)以下である場合が特にに好ましい。なお、モル吸光係数は、メタノール又はアセトニトリルを溶剤として測定したものである。
365nmにおけるモル吸光係数(ε)が100以上10000(mL/g・cm)以下である光重合開始剤とは、OmniradRTM 651(メタノール中ε=360mL/g・cm)、OmniradRTM 907(メタノール中ε=4700mL/g・cm)、OmniradRTM 369(メタノール中ε=7900mL/g・cm)、OmniradRTM 379(メタノール中ε=7900mL/g・cm)、OmniradRTM 819(メタノール中ε=2300mL/g・cm)、OmniradRTM TPO(アセトニトリル中ε=4700mL/g・cm)、IRGACURERTM OXE-01(アセトニトリル中ε=7000mL/g・cm)、IRGACURERTM OXE-02(アセトニトリル中ε=7700mL/g・cm)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
光ラジカル重合開始剤が用いられる場合、その含有量はバインダー樹脂の総量100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、7質量部、更に好ましくは5質量部、特に好ましくは4質量部、最も好ましくは3質量部である。
また好ましい下限としては、0.01質量部、更に好ましくは0.1質量部、特に好ましくは1質量部、最も好ましくは1.5質量部である。
【0067】
用いられうる熱ラジカル重合開始剤としては、当該熱ラジカル重合開始剤は、加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾピナコール等が挙げられ、ベンゾピナコールが好適に用いられる。例えば、有機過酸化物としては、カヤメック(登録商標)A、M、R、L、LH、SP-30C、パーカドックスCH-50L、BC-FF、カドックスB-40ES、パーカドックス14、トリゴノックスRTM22-70E、23-C70、121、121-50E、121-LS50E、21-LS50E、42、42LS、カヤエステルRTMP-70、TMPO-70、CND-C70、OO-50E、AN、カヤブチルRTMB、パーカドックス16、カヤカルボン(登録商標)BIC-75、AIC-75(化薬アクゾ株式会社製)、パーメック(登録商標)N、H、S、F、D、G、パーヘキサ(登録商標)H、HC、TMH、C、V、22、MC、パーキュアー(登録商標)AH、AL、HB、パーブチル(登録商標)H、C、ND、L、パークミル(登録商標)H、D、パーロイル(登録商標)IB、IPP、パーオクタ(登録商標)ND(日油株式会社製)などが市販品として入手可能である。また、アゾ化合物としては、VA-044、V-070、VPE-0201、VSP-1001(和光純薬工業株式会社製)等が市販品として入手可能である。
熱ラジカル重合開始剤が用いられる場合、その含有量はバインダー樹脂の総量100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下が好ましい。
この含有量の好ましい上限としては、7質量部、更に好ましくは5質量部、特に好ましくは4質量部、最も好ましくは3質量部である。
また好ましい下限としては、0.01質量部、更に好ましくは0.1質量部、特に好ましくは1質量部、最も好ましくは1.5質量部である。
樹脂組成物中の含有量として最も好ましい範囲は1.5質量部以上3質量部以下である。
【0068】
[用途]
本発明の分散液は、450nm付近の波長を有するブルーライトを効率的にカットしながら、その他の波長の透過性に優れるという特徴を有する。従って例えばアイウェア用途として非常に有用である。特にアイウェア用途の中でも、パソコンやスマートフォン、タブレット等の電子機器、通信機器から発せられるブルーライトをカットし、目の負担を軽減する用途や、また白内障手術後の保護メガネ用途として効果的に用いられる。
【0069】
また、発光装置用部材、光散乱用膜、量子ドットカラーレジスト、遮光レジスト、電子部品用接着剤等の光学素子用途としても有用である。
例えば、発光装置用部材としては、本発明の樹脂組成物を硬化した硬化膜は、中空構造粒子の粒子径と中空径を調整することで特に青色を選択的に散乱できるので、効率的な発光装置用部材となる。特に液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置用途として好適に用いられる。
光散乱用膜は、本発明の樹脂組成物中の金属酸化物中空粒子が、形状と粒子径において均一である為、均一な散乱光を発生させる層を形成することができ有用である。
量子ドットカラーレジストは、本発明の樹脂組成物中の中空粒子が、光源から出た光を多重散乱させることで量子ドットへ光を効率的に誘導し、発光強度を高めることができ、且つ通常の酸化チタン粒子よりも沈降安定性に優れる為有用である。
遮光レジストは、本発明の樹脂組成物中の中空粒子による多重散乱によって、効率的に遮光するので、マイクロLED等の遮光隔壁剤として有用である。
【0070】
[硬化フィルム]
上記用途のうち、フィルム(膜)として使用する用途においては、本発明の分散液を硬化してなる硬化膜が非常に有用である。この硬化膜の製造方法としては、コンマコーター、スプレーコーター、ロールコーター、ナイフコーター、バーコーター、スピンコーター、ダイコーター、マイクログラビアコーター、スクリーン印刷、ディスペンサー、カーテンコーター、ディップコーター、インクジェット、ラミネート等の転写法等で塗工した後、紫外線照射機により100~10000mJ/cm2、より好ましくは1000~6000mJ/cm2程度の紫外線を照射させて光硬化させ、または50~200℃、より好ましくは80~130℃程度で、0.1時間~5時間、より好ましくは0.5~2時間程度熱硬化させ、または上記光硬化と熱硬化を併用することで製造できる。
なお評価においては5μmの硬化フィルムを作成するが、ブルーライトカットフィルムとして使用する場合には、1μm~300μm程度である場合が好ましい。より好ましくは2μm~200μm程度であり、更に好ましくは3μm~100μm程度であり、特に好ましくは4μm~50μm程度である。
【0071】
[分散液の製造方法]
本発明の分散液を得る方法の一例としては、次に示す方法がある。まず必要に応じて用いる(II)成分、(III)その他成分を混合溶解する。必要であれば加熱溶解しても良い。次いで(I)成分を添加し、公知の混合装置、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル、ビーズミル等により均一に混合し、金属メッシュにて濾過することにより本発明の樹脂組成物を製造することができる。
【実施例0072】
以下、実施例、比較例により本発明を詳細に説明する。尚、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
金属酸化物中空粒子合成例において、1回の合成操作等で目的とする物質の量が得られなかったときは、目的とする物質の量が得られるまで、その合成操作等を繰り返し行った。
金属酸化物中空粒子ならびにテンプレート粒子の1次粒子径、及び、その中空構造の内径の測定が必要なときは、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製のJEM-2800)を用いて測定した。
また、アナターゼ型とルチル型の量比は、粉末X線回析装置(パナリティカル製、X’Pert PRO)を用い、下記式(1)で算出することが出来る。その際、添加したルチル型の酸化チタンが示すピーク強度を除し、中空粒子の示すピーク比を算出した。
【0073】
下記式(1)中の略号等は、以下の意味を有する。
FR:ルチル型酸化チタン質量含有率。
IA(101):粉末X線回折装置で測定したアナターゼ結晶(101)面の強度。
IR(110):粉末X線回折装置で測定したルチル結晶(110)面の強度。
【0074】
【0075】
[合成例1:テンプレート粒子のエタノール分散液(エマルジョン1)の調製]
蒸留水900gにスチレン10g、メタクリル酸2g、過硫酸カリウム0.1gを加え、85℃で乳化重合を行い、スチレン-メタクリル酸ポリマー粒子を含有する水分散液を得た。得られたテンプレート粒子の1次粒子径は、100nmであった。
前記のようにして得た水分散液を、エバポレータで濃縮しながらエタノールを加え、水をエタノールで置換することにより、エマルジョン1を調製した。エマルジョン1中のテンプレート粒子の含有量は、6%であった。
エマルジョン2中のテンプレート粒子の含有量は、6%であった。
[合成例2:テンプレート粒子のエタノール分散液(エマルジョン2)の調製]
合成例1の反応温度を85℃から90℃に変更した以外は、合成例1と同様にしてエマルジョン2を調製した。得られたテンプレート粒子の1次粒子径は、60nmであった。
[合成例3:テンプレート粒子のエタノール分散液(エマルジョン3)の調製]
合成例1の反応温度を85℃から75℃に変更した以外は、合成例1と同様にしてエマルジョン3を調製した。得られたテンプレート粒子の1次粒子径は、180nmであった。
【0076】
[実施例1]
(工程1):第1のコア/シェル粒子を得る工程。
エタノール15g、アセトニトリル8g、ポリビニルピロリドン0.1g、及び、エマルジョン1(18g)を10℃に冷却して液を得た。この液に、チタニウムテトラブトキシド12g、及び2%アンモニア水6gを6回に分けて、0.5時間おきに加え、10℃で4時間反応させることにより、第1のコア/シェル粒子を含有する液を得た。得られた液は、単離/精製することなく、次の工程2に使用した。
【0077】
(工程2):第2のコア/シェル粒子を得る工程。
実施例1の工程1により得た液に、オルトケイ酸テトラエチル0.17gと、蒸留水7gとを25℃で加え、25℃で10時間反応させて液を得た。
得られた液を15000rpmで25分間、遠心分離して上澄み液を除去し、残渣を60℃に加熱した減圧乾燥機で乾燥させることにより、目的とする第2のコア/シェル粒子4gを得た。
【0078】
(工程3):第2のコア/シェル粒子とルチル型酸化チタン中実粒子の混合物を焼成し、テンプレート粒子の除去と共にルチル型酸化チタン中空粒子を製造する工程。
実施例1の工程2により得た第2のコア/シェル粒子30gに対して1.5gのルチル型酸化チタン中実粒子(TTO-55(A):石原産業、FR=100%)を混合した。セラミックボードに乗せて焼成炉にセットし、空気雰囲気下、850℃で1時間焼成することにより、酸化チタン及びシリカを含有するルチル型酸化チタン中空粒子18gを得た。
【0079】
[実施例2]
実施例1において、添加するルチル型実酸化チタン中実粒子を4.5gに変更した以外は実施例1と同様の処理を行い、ルチル型酸化チタン中空粒子18gを得た。
【0080】
実施例1において、添加するルチル型酸化チタン中実酸化チタンを9.0gに変更した以外は実施例1と同様の処理を行い、ルチル型酸化チタン中空粒子18gを得た。
【0081】
[実施例4]
実施例3において、工程1において使用するエマルジョン1をエマルジョン2に変更し、工程2において添加したオルトケイ酸テトラエチルを0.31gに変更した以外は実施例2と同様の処理を行い、ルチル型酸化チタン中空粒子18gを得た。
【0082】
[比較例1]
実施例1の工程3において、ルチル型酸化チタン中実粒子を添加しなかった以外は実施例1と同様の処理を行い、酸化チタン中空粒子18gを得た。
【0083】
[比較例2]
実施例4の工程3において、ルチル型酸化チタン中実粒子を添加しなかった以外は実施例4と同様の処理を行い、酸化チタン中空粒子6.5gを得た。
【0084】
[比較例3]
比較例1において、焼成温度を1000℃に変更した以外は比較例1と同様の処理を行い、ルチル型酸化チタン粒子18gを得た。ただし、中空構造は維持できていなかった。
【0085】
[比較例4]
比較例2において、焼成温度を1000℃に変更した以外は比較例2と同様の処理を行い、ルチル型酸化チタン粒子18gを得た。ただし、中空構造は維持できていなかった。
【0086】
[比較例5]
実施例1の工程1において、使用するエマルジョン1をエマルジョン3に変更し、工程2において添加したオルトケイ酸テトラエチルを0.23gに変更し、工程3において焼成前にルチル型酸化チタン中実粒子を添加せず、焼成温度を1000℃に変更した以外は実施例1と同様の処理を行い、ルチル型酸化チタン中空粒子18gを得た。
【0087】
実施例1~3、比較例1~5で得た金属酸化物中空粒子の一次粒子径、焼成条件、ルチル型中実粒子添加量、内径と一次粒子径の比(内径A/一次粒子径B)、ルチル化率(FR)、焼成後に中空構造を維持していたかを下記表1に示す。なお、中空維持の評価は、電子顕微鏡によってサンプルを撮像し、全粒子に対する割れた粒子の比が5%以下であるものを〇とし、5%より大きいものを×とした。
【0088】
[表1]
表1より、小粒径の粒子は1000℃での焼成によってルチル化が促進されたが、中空構造が崩壊した。一方、焼成時にルチル型の中実酸化チタンを添加し低温で焼成することによって、中空構造の崩壊なくルチル化を進行させることが出来た。
【0089】
[実施例5]
実施例3で調製したルチル型酸化チタン中空粒子1.5g及び分散剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、DISPERBYK-111)0.15gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)5.85gに添加し、フィルミックス(プライミクス株式会社製、RM)に加え、回転数5000rpmで10分間処理することにより、実施例5の分散液を得た。
【0090】
得られた実施例5の分散液7.5gと、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARADDPHA)9.15g、光反応開始剤として2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(IGM-RESINS B.V.社製、Omnirad 907)0.3g、溶剤としてPGMEA3.05gを混合して本発明のブルーライトカット用樹脂組成物を作製した。100μmPET基板(コスモシャインA4360、東洋紡株式会社製)上にスピンコーターを用いて、加熱処理後の膜厚が5μmとなるように塗布し、ホットプレートを用いて100℃で2分間乾燥させた。次いでUV照射することで膜厚5μmの実施例5の光学フィルムを作製した。
【0091】
[実施例6、比較例6]
実施例6、比較例6のそれぞれに対して、実施例5と同様の処理を行い、それぞれ実施例6、比較例6の光学フィルムを作製した。
【0092】
[透明性試験]
実施例5、実施例6、比較例6の光学フィルムの透過スペクトルを分光光度計(UV-3600、島津製作所)を用いて測定した。その550nmにおける透過率を以下の表2に示す。
【0093】
[表2]
表2から明らかなように、小粒形の酸化チタン中空粒子を用いることで、可視光の透過率が大きく上昇した。また、調製したフィルムに添加した粒子が小粒径である程、フィルムの透明性が上昇した。
本発明によれば、小粒径のルチル型酸化チタン中空粒子およびそれを用いた分散液を容易に調製することができる。調製した粒子は、例えば、透明樹脂に添加する屈折率調整剤として用いることができる。