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特開2024-19815作業機械の制御装置及びこれを備えた作業機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019815
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】作業機械の制御装置及びこれを備えた作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240206BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20240206BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20240206BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
E02F9/00 D
E02F9/22 R
F02D29/00 B
F15B11/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122516
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】菅野 直紀
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 允紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀典
(72)【発明者】
【氏名】小田 開成
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
3G093
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB05
2D003AB06
2D003BA05
2D003BB01
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB01
2D003DB02
2D003DB03
2D003DB06
2D003FA02
2D015CA01
3G093AA10
3G093BA19
3G093DA01
3G093DB22
3G093DB27
3G093EA03
3G093EC04
3H089AA21
3H089AA60
3H089BB01
3H089BB15
3H089CC01
3H089CC08
3H089CC11
3H089DA03
3H089DA13
3H089DA17
3H089DB03
3H089DB43
3H089EE03
3H089EE36
3H089FF07
3H089FF08
3H089FF09
3H089GG02
3H089JJ01
(57)【要約】
【課題】作業現場で行われる様々な重負荷作業を安定して行うことが可能であるとともに、軽負荷作業時の燃料消費を節減することが可能な作業機械の制御装置及びこれを備えた作業機械を提供する。
【解決手段】制御装置100のコントローラ50は、重負荷制御または軽負荷制御を実行する。重負荷制御では、操作部24が受ける重負荷許諾操作の操作量の増加及び減少に応じてエンジン20の回転数を第1基準回転数から増加及び減少させ、操作部24が軽負荷許諾操作を受けるとエンジン20の回転数を前記第1基準回転数以下に設定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、所定の作業を行うことが可能な作業部材と、前記エンジンによって駆動され作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの作動油の供給を受けて前記作業部材を動かすように作動するアクチュエータと、前記作業部材を動かすための操作を受ける操作部とを含む作業機械の制御装置であって、
前記操作部が重負荷許諾操作を受けた場合当該操作の操作量の増加及び減少に応じて前記エンジンの回転数を第1基準回転数から増加及び減少させ、前記操作部が軽負荷許諾操作を受けると前記エンジンの回転数を前記第1基準回転数以下に設定する制御である重負荷制御と、
前記操作部が前記軽負荷許諾操作を受けた場合当該操作の操作量の増加及び減少に応じて前記エンジンの回転数を第2基準回転数から減少及び増加させ、前記操作部が前記重負荷許諾操作を受けると前記エンジンの回転数を前記第2基準回転数以上に設定する制御である軽負荷制御とのうちの少なくとも一方の制御を実行する制御部を備え、
重負荷作業は、前記エンジンに所定の基準トルク以上のトルクが要求され、軽負荷作業は前記基準トルク未満の前記エンジンのトルクで作業可能であり、
前記重負荷許諾操作及び前記軽負荷許諾操作は予め許諾された操作である、作業機械の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記重負荷制御において、前記操作部が重負荷許諾操作を受けた場合当該操作の操作量の増加に応じて前記エンジンの回転数を前記第1基準回転数から重負荷作業に対応する第1補正回転数まで増加させる一方、前記操作部が受ける前記重負荷許諾操作の操作量の減少に応じて前記エンジンの回転数を前記第1補正回転数から前記第1基準回転数まで減少させ、
前記軽負荷制御において、前記操作部が前記軽負荷許諾操作を受けた場合当該操作の操作量の増加に応じて前記エンジンの回転数を前記第2基準回転数から第2補正回転数まで減少させる一方、前記操作部が受ける前記軽負荷許諾操作の操作量の減少に応じて前記エンジンの回転数を前記第2補正回転数から前記第2基準回転数に増加させる、請求項1に記載の作業機械の制御装置。
【請求項3】
前記作業機械は、機体を有し、
前記作業部材は、前記機体に起伏可能に支持されたブームと、前記ブームに回動可能に支持されたアームと、前記アームに回動可能に支持されたバケットと、を有し、
前記重負荷許諾操作は、アーム引き操作およびブーム上げ操作のうちの少なくとも一方の操作を含み、
前記軽負荷許諾操作は、排土操作およびアーム押し操作が同時に行われる操作、又はブーム下げ操作および前記アーム押し操作が同時に行われる操作を含み、
前記ブーム上げ操作は前記ブームを起立方向に回動させる操作であり、前記ブーム下げ操作は前記ブームを倒伏方向に回動させる操作であり、
前記アーム引き操作は前記アームを前記機体側に回動させる操作であり、前記アーム押し操作は前記アームを前記機体とは反対側に回動させる操作であり、
前記排土操作は、土砂を排出する方向に前記バケットを回動させる操作である、請求項1に記載の作業機械の制御装置。
【請求項4】
前記機体は、走行面を走行可能な下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に支持された上部旋回体と、を有し、
前記操作部は、前記上部旋回体を前記下部走行体に対して旋回させるための旋回操作を更に受けることが可能であり、
前記重負荷許諾操作は、少なくとも前記ブーム上げ操作および旋回操作が同時に行われる操作を含む、請求項3に記載の作業機械の制御装置。
【請求項5】
前記機体は、走行面を走行可能な下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に支持された上部旋回体と、を有し、
前記操作部は、前記上部旋回体を前記下部走行体に対して旋回させるための旋回操作を更に受けることが可能であり、
前記軽負荷許諾操作は、前記ブーム下げ操作、前記アーム押し操作および旋回操作が同時に行われる操作を含む、請求項3に記載の作業機械の制御装置。
【請求項6】
前記油圧ポンプは、可変容量式のポンプであり、
入力される指令信号に応じて前記油圧ポンプの容量を増減させることが可能な容量調整部を更に備え、
前記制御部は、少なくとも前記軽負荷制御を実行するものであって、前記第2基準回転数から前記第2補正回転数までの前記エンジンの回転数の減少に応じて前記油圧ポンプのポンプ容量を増加させるように、前記容量調整部に前記指令信号を入力する、請求項2に記載の作業機械の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、
予め設定された実行条件が成立していない場合に前記エンジンの回転数を予め設定された第3基準回転数に設定し、前記実行条件が成立している場合に前記エンジンの回転数が前記第3基準回転数よりも小さい回転数の領域で推移するように前記重負荷制御を実行し、
更に、当該重負荷制御において、第1ポンプ処理と第2ポンプ処理とを準備し、前記第1ポンプ処理では前記ポンプ容量を前記操作部が受ける操作量の大きさに応じた第1容量に設定し、前記第2ポンプ処理では前記油圧ポンプの吐出圧が予め設定された閾値圧力を上回った場合に前記油圧ポンプの出力トルクが予め設定された閾値トルクを維持するように前記吐出圧の変化に応じて前記ポンプ容量を第2容量に設定し、前記第1容量および前記第2容量のうちの相対的に小さい容量に応じた前記指令信号を前記容量調整部に入力し、
前記第2ポンプ処理における前記閾値トルクは、前記重負荷制御における前記第1補正回転数に基づく前記油圧ポンプの出力トルクが、前記実行条件が成立していない場合の前記第3基準回転数に基づく前記油圧ポンプの出力トルクに近似するように設定されている、請求項6に記載の作業機械の制御装置。
【請求項8】
前記制御部によって制御される前記エンジンの回転数の設定領域に関する情報を受け付けるエンジン回転数入力部を更に備え、
前記制御部は、前記エンジン回転数入力部に入力される前記設定領域が、前記エンジンの燃料消費率の極小値に応じて設定された閾値よりも大きい場合に、前記重負荷制御または前記軽負荷制御を実行する、請求項1に記載の作業機械の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記作動油の温度、前記エンジンの冷却水温度、前記エンジンの吸気温度のうちの少なくとも一つの温度が、各々に対して予め設定された閾値よりも低い場合に、前記重負荷制御または前記軽負荷制御を実行する、請求項1に記載の作業機械の制御装置。
【請求項10】
エンジンと、
所定の作業を行うことが可能な作業部材と、
前記エンジンによって駆動され作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプからの作動油の供給を受けて前記作業部材を動かすように作動するアクチュエータと、
前記作業部材を動かすための操作を受ける操作部と、
前記エンジンの回転数を制御する、請求項1に記載の作業機械の制御装置と、
を備える作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の制御装置及びこれを備えた作業機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、掘削作業などを行う作業機械が知られている。当該作業機械は、エンジンと、前記エンジンによって駆動され作動油を吐出する油圧ポンプと、作業アタッチメントと、当該作業アタッチメントを動かす油圧アクチュエータとを有する。例えば、作業機械が油圧ショベルの場合、前記作業アタッチメントは、ブームと、アームと、バケットとを有する。前記油圧アクチュエータは、前記油圧ポンプからの作動油の供給を受けて前記ブームを起伏させるブームシリンダと、前記作動油の供給を受けて前記アームを前記ブームに対して回動させるアームシリンダと、前記作動油の供給を受けて前記バケットを前記アームに対して回動させるバケットシリンダとを含む。
【0003】
特許文献1には、ブーム、アームおよびバケットをそれぞれ操作するために操作レバーが受ける操作の大きさと油圧ポンプのポンプ圧とから、油圧ショベルが掘削作業を行っているか否かを判定し、掘削作業を行っていると判定した場合、エンジン回転数を大きくする技術が開示されている。また、特許文献2には、アクチュエータを操作するための操作量の大きさに応じてエンジンの回転数を増減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-236751号公報
【特許文献2】特開2018-188827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載された技術では、作業現場で行われる様々な重負荷作業を安定して行うことが難しいという問題があるとともに、軽負荷作業時に過剰に燃料を消費しやすいという問題がある。
【0006】
具体的に、特許文献1に記載された技術では、バケットによって少量の土砂を掘削するような作業時には掘削作業と判定されずにエンジン回転数の補正が行われず、この結果バケットを地面に進入させる際の掘削力が不足する場合がある。また、油圧ショベルの作業では、上記のような掘削作業のみならず、バケットが掘削した土砂を抱えたままブームが起立しながら上部旋回体が旋回するという、いわゆる持ち上げ旋回動作なども、エンジンに比較的大きなトルクが要求される重負荷作業に含まれる。特許文献1に記載された技術では、このように掘削作業とは異なる重負荷作業において、作業アタッチメントの作業能力が不足する場合がある。
【0007】
更に、特許文献2に記載された技術では、軽負荷操作、重負荷操作に関わらず、操作レバーが受ける操作量の増加に応じてエンジンの回転数が増加するため、特に軽負荷操作時にエンジンの回転数が過剰に増加され、無駄な燃料消費が生じるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、作業現場で行われる様々な重負荷作業を安定して行うことが可能であるとともに、軽負荷作業時の燃料消費を節減することが可能な作業機械の制御装置及びこれを備えた作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により提供されるのは、エンジンと、所定の作業を行うことが可能な作業部材と、前記エンジンによって駆動され作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの作動油の供給を受けて前記作業部材を動かすように作動するアクチュエータと、前記作業部材を動かすための操作を受ける操作部とを含む作業機械に用いられる制御装置である。当該制御装置は、重負荷制御と軽負荷制御とのうちの少なくとも一方の制御を実行する制御部を備える。前記重負荷制御は、前記操作部が重負荷許諾操作を受けた場合当該操作の操作量の増加及び減少に応じて前記エンジンの回転数を第1基準回転数から増加及び減少させ、更に前記操作部が軽負荷許諾操作を受けると前記エンジンの回転数を前記第1基準回転数以下に設定する制御である。前記軽負荷制御は、前記操作部が前記軽負荷許諾操作を受けた場合当該操作の操作量の増加及び減少に応じて前記エンジンの回転数を第2基準回転数から減少及び増加させ、前記操作部が前記重負荷許諾操作を受けると前記エンジンの回転数を前記第2基準回転数以上に設定する制御である。重負荷作業は、前記エンジンに所定の基準トルク以上のトルクが要求され、軽負荷作業は前記基準トルク未満の前記エンジンのトルクで可能な作業である。また、前記重負荷許諾操作及び前記軽負荷許諾操作は予め許諾された操作である。
【0010】
本構成によれば、制御部が重負荷制御を実行すると、操作部が受ける重負荷許諾操作の操作量の増加に応じてエンジンの回転数が増加するため、たとえ当該操作量が小さい場合でも前記回転数の増加によってエンジンの出力トルクを大きくして作業部材の作業能力を高めることができる。このため、作業現場で行われる様々な重負荷作業を安定して行うことが可能になる。更に、重負荷制御下で操作部が軽負荷許諾操作を受けると、エンジンの回転数が前記第1基準回転数以下に設定されるため、重負荷作業時と比較して無駄な燃料消費を抑制することができる。一方、制御部が軽負荷制御を実行すると、操作部が受ける軽負荷許諾操作の操作量の増加に応じてエンジンの回転数が減少するため、エンジンが無駄に高い回転数で回転することがなく、燃料消費を抑制して省エネ効果を高めることができる。更に、軽負荷制御下で操作部が重負荷許諾操作を受けると、エンジンの回転数が前記第2基準回転数以上に設定されるため、軽負荷作業時と比較してエンジンの出力を高めることで、様々な重負荷作業を安定して行うことが可能になる。
【0011】
上記の構成において、前記制御部は、前記重負荷制御において、前記操作部が重負荷許諾操作を受けた場合当該操作の操作量の増加に応じて前記エンジンの回転数を前記第1基準回転数から重負荷作業に対応する第1補正回転数まで増加させる一方、前記操作部が受ける前記重負荷許諾操作の操作量の減少に応じて前記エンジンの回転数を前記第1補正回転数から前記第1基準回転数まで減少させ、前記軽負荷制御において、前記操作部が前記軽負荷許諾操作を受けた場合当該操作の操作量の増加に応じて前記エンジンの回転数を前記第2基準回転数から第2補正回転数まで減少させる一方、前記操作部が受ける前記軽負荷許諾操作の操作量の減少に応じて前記エンジンの回転数を前記第2補正回転数から前記第2基準回転数に増加させることが望ましい。
【0012】
上記の構成において、前記作業機械は、機体を有し、前記作業部材は、前記機体に起伏可能に支持されたブームと、前記ブームに回動可能に支持されたアームと、前記アームに回動可能に支持されたバケットと、を有し、前記重負荷許諾操作は、アーム引き操作およびブーム上げ操作のうちの少なくとも一方の操作を含み、前記軽負荷許諾操作は、排土操作およびアーム押し操作が同時に行われる操作、又はブーム下げ操作および前記アーム押し操作が同時に行われる操作を含み、前記ブーム上げ操作は前記ブームを起立方向に回動させる操作であり、前記ブーム下げ操作は前記ブームを倒伏方向に回動させる操作であり、前記アーム引き操作は前記アームを前記機体側に回動させる操作であり、前記アーム押し操作は前記アームを前記機体とは反対側に回動させる操作であり、前記排土操作は、土砂を排出する方向に前記バケットを回動させる操作であってもよい。
【0013】
本構成によれば、重負荷許諾操作がアーム引き操作又はブーム上げ操作を含み、作業部材に大きな負荷がかかりやすいこれらの操作に対応してエンジンの回転数を増加させることで、上記操作に代表される重負荷作業時に作業部材の作業能力を十分確保することができる。また、軽負荷許諾操作が、排土操作およびアーム押し操作が同時に行われる操作、又はブーム下げ操作およびアーム押し操作が同時に行われる操作を含み、アクチュエータに比較的大きな力が要求されないこれらの操作に対応してエンジンの回転数を減少させることで、軽負荷作業時の省エネ効果を高めることができる。
【0014】
上記の構成において、前記機体は、走行面を走行可能な下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に支持された上部旋回体と、を有し、前記操作部は、前記上部旋回体を前記下部走行体に対して旋回させるための旋回操作を更に受けることが可能であり、前記重負荷許諾操作は、少なくとも前記ブーム上げ操作および旋回操作が同時に行われる操作を含むものでもよい。
【0015】
本構成によれば、下部走行体および上部旋回体を含む作業機械において、上部旋回体を旋回させながらブームを起立方向に回動させる、いわゆる持ち上げ旋回操作を行なう際に、エンジンの回転数を増加させることで作業部材の作業能力を十分確保することができる。
【0016】
上記の構成において、前記機体は、走行面を走行可能な下部走行体と、前記下部走行体に旋回可能に支持された上部旋回体と、を有し、前記操作部は、前記上部旋回体を前記下部走行体に対して旋回させるための旋回操作を更に受けることが可能であり、前記軽負荷許諾操作は、前記ブーム下げ操作、前記アーム押し操作および旋回操作が同時に行われる操作を含むものでもよい。
【0017】
本構成によれば、下部走行体および上部旋回体を含む作業機械において、上部旋回体を旋回させながらアームを伸ばす、いわゆる復帰旋回操作を行なう際に、エンジンの回転数を減少させることで省エネ効果を高めることができる。
【0018】
上記の構成において、前記油圧ポンプは、可変容量式のポンプであり、入力される指令信号に応じて前記油圧ポンプの容量を増減させることが可能な容量調整部を更に備え、前記制御部は、少なくとも前記軽負荷制御を実行するものであって、前記第2基準回転数から前記第2補正回転数までの前記エンジンの回転数の減少に応じて前記油圧ポンプのポンプ容量を増加させるように、前記容量調整部に前記指令信号を入力するものでもよい。
【0019】
本構成によれば、軽負荷制御時のエンジン回転数の減少に伴ってポンプ容量を増加させることで、油圧ポンプからアクチュエータに供給される作動油の流量を維持して、作業部材の作業能力の低下を抑制することができる。
【0020】
上記の構成において、前記制御部は、予め設定された実行条件が成立していない場合に前記エンジンの回転数を予め設定された第3基準回転数に設定し、前記実行条件が成立している場合に前記エンジンの回転数が前記第3基準回転数よりも小さい回転数の領域で推移するように前記重負荷制御を実行し、更に、当該重負荷制御において、第1ポンプ処理と、第2ポンプ処理とを準備し、前記第1ポンプ処理では前記ポンプ容量を前記操作部が受ける操作量の大きさに応じた第1容量に設定し、前記第2ポンプ処理では前記油圧ポンプの吐出圧が予め設定された閾値圧力を上回った場合に前記油圧ポンプの出力トルクが予め設定された閾値トルクを維持するように前記吐出圧の変化に応じて前記ポンプ容量を第2容量に設定し、前記第1容量および前記第2容量のうちの相対的に小さい容量に応じた前記指令信号を前記容量調整部に入力し、前記第2ポンプ処理における前記閾値トルクは、前記重負荷制御における前記第1補正回転数に基づく前記油圧ポンプの出力トルクが、前記実行条件が成立していない場合の前記第3基準回転数に基づく前記油圧ポンプの出力トルクに近似するように設定されているものでもよい。
【0021】
本構成によれば、重負荷制御下におけるエンジンの回転数を実行条件が成立していない場合の回転数よりも小さくすることで、重負荷作業時にも燃料消費を抑制して省エネ効果を高めることができる。この際、第2ポンプ処理において維持される油圧ポンプの出力トルクが、実行条件が成立していない場合の前記出力トルクに近似するように設定されているため、第1ポンプ処理と第2ポンプ処理との低位選択によってポンプ容量を調整しても、油圧ポンプからアクチュエータに供給される作動油の流量を維持することが可能になり、作業部材の作業能力の低下を抑制することができる。
【0022】
上記の構成において、前記制御部によって制御される前記エンジンの回転数の設定領域に関する情報を受け付けるエンジン回転数入力部を更に備え、前記制御部は、前記エンジン回転数入力部に入力される前記設定領域が、前記エンジンの燃料消費率の極小値に応じて設定された閾値よりも大きい場合に、前記重負荷制御または前記軽負荷制御を実行するものでもよい。
【0023】
本構成によれば、エンジンの本来の特性として燃料消費率が悪化する低い回転数領域において、制御部が重負荷制御または軽負荷制御を実行することを防止することができる。
【0024】
上記の構成において、前記制御部は、前記作動油の温度、前記エンジンの冷却水温度、前記エンジンの吸気温度のうちの少なくとも一つの温度が、各々に対して予め設定された閾値よりも低い場合に、前記重負荷制御または前記軽負荷制御を実行するものでもよい。
【0025】
本構成によれば、作動油の温度、エンジンの冷却水温度、同吸気温度のすべての温度が高い状態で、制御部がエンジンの回転数を減少させる制御を行うことに起因して、エンジンの自己冷却能力が低下し作動油の温度が更に高くなることを防止することができる。
【0026】
本発明によって提供されるのは、エンジンと、所定の作業を行うことが可能な作業部材と、前記エンジンによって駆動され作動油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの作動油の供給を受けて前記作業部材を動かすように作動するアクチュエータと、前記作業部材を動かすための操作を受ける操作部と、前記エンジンの回転数を制御する、上記に記載の制御装置と、を備える作業機械である。
【0027】
本構成によれば、制御部が重負荷制御を実行すると、操作部が受ける重負荷許諾操作の操作量の増加に応じてエンジンの回転数が増加するため、たとえ当該操作量が小さい場合でも前記回転数の増加によってエンジンの出力トルクを大きくして作業部材の作業能力を高めることができる。このため、作業現場で行われる様々な重負荷作業を安定して行うことが可能になる。更に、操作部が軽負荷許諾操作を受けると、エンジンの回転数が前記第1基準回転数以下に設定されるため、重負荷作業時と比較して無駄な燃料消費を抑制することができる。一方、制御部が軽負荷制御を実行すると、操作部が受ける軽負荷許諾操作の操作量の増加に応じてエンジンの回転数が減少するため、エンジンが無駄に高い回転数で回転することがなく、燃料消費を抑制して省エネ効果を高めることができる。更に、操作部が重負荷許諾操作を受けると、エンジンの回転数が前記第2基準回転数以上に設定されるため、軽負荷作業時と比較してエンジンの出力を高めることで、様々な重負荷作業を安定して行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、作業現場で行われる様々な重負荷作業を安定して行うことが可能であるとともに、軽負荷作業時の燃料消費を節減することが可能な作業機械の制御装置及びこれを備えた作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態に係る作業機械を示す側面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る作業機械の油圧回路図およびブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る作業機械の油圧アクチュエータと操作部との関係を示すブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る作業機械のコントローラのブロック図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る作業機械における重負荷操作のレバー操作量とエンジン回転数との関係を示すグラフである。
図6】本発明の第1実施形態に係る作業機械において制御装置が実行する処理のフローチャートである。
図7】本発明の第1実施形態に係る作業機械における各操作レバーの操作量の推移を示すグラフである。
図8】本発明の第1実施形態に係る作業機械における各エンジン回転数指令およびポンプ容量補正係数の推移を示すグラフである。
図9】本発明の第1実施形態に係る作業機械におけるエンジン回転数指令、エンジン出力、ポンプ出力および燃料消費量の推移を示すグラフである。
図10】本発明の第1実施形態の変形例に係る作業機械におけるエンジン回転数とポンプPQ制御トルク設定値との関係を示すグラフである。
図11】本発明の第2実施形態に係る作業機械における軽負荷操作のレバー操作量とエンジン回転数との関係を示すグラフである。
図12】本発明の第2実施形態に係る作業機械において制御装置が実行する処理のフローチャートである。
図13】本発明の第2実施形態に係る作業機械における各エンジン回転数指令およびポンプ容量補正係数の推移を示すグラフである。
図14】本発明の第2実施形態に係る作業機械におけるエンジン回転数指令、エンジン出力、ポンプ出力および燃料消費量の推移を示すグラフである。
図15】エンジン回転数と燃料消費率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0031】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る油圧ショベル1(作業機械)の側面図である。図2は、本実施形態に係る油圧ショベル1の油圧回路図およびブロック図である。図3は、本実施形態に係る油圧ショベル1の油圧アクチュエータと操作部との関係を示すブロック図である。図4は、本実施形態に係る油圧ショベル1のコントローラのブロック図である。
【0032】
本実施形態では、油圧ショベル1は、地面G(走行面)上を走行可能なクローラ式の下部走行体10と、地面Gに対して垂直な旋回中心軸まわりに旋回可能となるように下部走行体10の上に搭載される上部旋回体12と、この上部旋回体12に搭載され所定の作業を行うことが可能な作業アタッチメント3(作業部材)と、を備える。また、作業アタッチメント3は、前記上部旋回体12に起伏可能に支持されるブーム4と、当該ブーム4の先端に回動可能に連結されるアーム5と、当該アーム5の先端に回動可能に連結されるバケット6とを備える。下部走行体10および上部旋回体12は、油圧ショベル1の機体を構成する。また、上部旋回体12は、旋回フレーム16と、カウンタウエイト17と、キャブ18とを有する。
【0033】
油圧ショベル1は、上部旋回体12に対して前記ブーム4を起伏させるように作動するブームシリンダ231と、当該ブーム4に対して前記アーム5を回動させるように作動するアームシリンダ232と、当該アーム5に対して前記バケット6を回動させるように作動するバケットシリンダ233と、を備える。
【0034】
更に、図2に示すように、油圧ショベル1は、エンジン20と、ECU20Sと、油圧ポンプ21と、コントロールバルブ22と、油圧アクチュエータ23(アクチュエータ)と、前述の下部走行体10、上部旋回体12および作業アタッチメント3などを動かすための操作を受ける操作部24と、ポンプレギュレータとしてのレギュレータ25と、比例弁26と、リリーフ弁27と、ポンプ圧検出部28と、作動油温度検出部29と、パイロット圧検出部30と、コントローラ50と、作業入力部51と、エンジン回転数入力部52と、吸気温度検出部53と、冷却水温度検出部54と、制御装置100とを備える。制御装置100は、図2に含まれる部材によって構成され、油圧ショベル1のエンジン20の回転数を制御する機能を有する。また、図2には、制御装置100に含まれる油圧回路100Sが図示されている。
【0035】
エンジン20は、油圧ショベル1の駆動源である。エンジン20は、例えば、過給機を備えていてもよい。ECU20Sは、エンジン20に含まれる、点火機構、燃料系統、吸排気系統、動弁機構、始動制御などを総合的に司る。特に、ECU20Sは、前記燃料系統に含まれる燃料噴射装置を制御して、エンジン20に対する燃料噴射量を調整することで、エンジン20の回転数を制御する。ECU20Sは、後記のコントローラ50から受ける指令信号に応じた燃料噴射量でエンジン20に燃料を供給する。
【0036】
油圧ポンプ21は、エンジン20によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ21は、可変容量式の油圧ポンプである。油圧ポンプ21は、可変の傾転角を有している。当該傾転角がレギュレータ25及び比例弁26によって調節されることで、油圧ポンプ21の吐出流量が制御される。換言すれば、レギュレータ25および比例弁26は、本発明の容量調整部を構成する。当該容量調整部は、入力される指令信号に応じて油圧ポンプ21の容量を増減させることができる。
【0037】
油圧アクチュエータ23は、油圧ポンプ21が吐出する作動油(つまり、油圧ポンプ21から供給される作動油)によって駆動される。油圧アクチュエータ23は、前述のブームシリンダ231、アームシリンダ232、バケットシリンダ233に加え、油圧式の旋回モータ234を含む。ブームシリンダ231、アームシリンダ232およびバケットシリンダ233は、油圧ポンプ21からの作動油の供給を受けて作業アタッチメント32を動かすように作動する。旋回モータ234は、前記作動油の供給を受けて、上部旋回体12を下部走行体10に対して旋回させる駆動力を発生する。なお、図1乃至図3には示していないが、油圧ショベル1は、下部走行体10の走行動作を実現するための、不図示の油圧式走行モータを更に備える。
【0038】
コントロールバルブ22は、油圧ポンプ21から油圧アクチュエータ23に供給される作動油の方向及び流量を変化させる。コントロールバルブ22は、例えば、第1及び第2のパイロットポートを有する3位置のパイロット操作切換弁であり、第1及び第2のパイロットポートに対してパイロット圧が入力されることで駆動される。なお、図2では、一つのコントロールバルブ22が図示されているが、油圧アクチュエータ23のブームシリンダ231、アームシリンダ232、バケットシリンダ233および旋回モータ234に応じて、複数のコントロールバルブ22が配置されている。この際、複数のアクチュエータへの作動油の供給機能を兼ね備えるコントロールバルブ22が用いられてもよい。
【0039】
操作部24は、キャブ18内に配置され、各油圧アクチュエータ23を駆動するために、コントロールバルブ22の動作状態を切り換える操作を受ける。操作部24は、操作装置としての操作レバー24Aと、弁本体24Bとを含む(図2)。弁本体24Bは、操作レバー24Aに与えられる操作に基づいて、コントロールバルブ22を作動させるためのパイロット圧を出力する。図3を参照して、操作部24は、ブーム操作部241と、アーム操作部242と、バケット操作部243と、旋回操作部244とを含む。ブーム操作部241は、ブーム4の起伏動作(ブーム上げ、ブーム下げ)のための操作を受ける。アーム操作部242は、アームの回動動作(アーム押し、アーム引き)のための操作を受ける。バケット操作部243は、バケットの回動動作(掘削、排土)のための操作を受ける。旋回操作部244は、上部旋回体12の旋回動作(右旋回、左旋回)のための操作を受ける。各操作部は、第1方向および当該第1方向とは反対の第2方向へ傾動可能とされ、当該傾動方向が上記の各動作に対応する。なお、各操作部が受ける操作の操作量(大きさ)に応じて、上記の各動作における駆動速度が調整される。
【0040】
リリーフ弁27は、油圧ポンプ21から吐出される作動油の圧力が所定の圧力を超えないように、開閉動作を行う。
【0041】
ポンプ圧検出部28は、油圧ポンプ21が吐出する作動油の圧力であるポンプ圧を検出する。ポンプ圧検出部28によって検出されたポンプ圧に関する信号(ポンプ圧信号)は、コントローラ50に入力される。
【0042】
作動油温度検出部29は、作動油の温度を検出する。作動油温度検出部29が検出した作動油の温度に関する信号(温度信号)は、コントローラ50に入力される。
【0043】
パイロット圧検出部30は、操作部24の操作レバー24Aに与えられる操作の有無とその操作量に関する情報として、操作部24のパイロット圧を検出する。パイロット圧検出部30によって検出された操作部24のパイロット圧に関する信号(レバー操作信号)は、コントローラ50に入力される。なお、パイロット圧検出部30は、操作部24のブーム操作部241、アーム操作部242、バケット操作部243および旋回操作部244のそれぞれに対応して設けられている。
【0044】
コントローラ50は、比例弁26を介してレギュレータ25の動作を制御することにより、油圧ポンプ21の傾転、吐出量を調整する。具体的に、コントローラ50は、比例弁26に対して流量指令用の指令信号を入力し、この指令信号に応じて比例弁26が開弁することで、レギュレータ25による油圧ポンプ21の傾転角の調整が行われる。また、コントローラ50は、油圧ショベル1において実行される作業に応じてエンジン20の回転数を調整するように、ECU20Sにエンジン回転数指令用の指令信号を入力する。
【0045】
作業入力部51は、キャブ18内に配置され、オペレータによって油圧ショベル1の作業情報(モード)に関する情報の入力を受ける。一例として、前記作業情報は、作業量優先モード、省エネ優先モード、オプションモードなどを含む。また、予め設定された動作を油圧ショベル1が自動で行うマシンコントロールモードが、前記作業情報に含まれても良い。
【0046】
エンジン回転数入力部52は、キャブ18内に配置され、オペレータによって操作される。エンジン回転数入力部52は、アクセル操作部ともいう。エンジン回転数入力部52は、コントローラ50によって制御されるエンジン20の回転数の設定領域に関する情報の入力を受け付ける。一例として、オペレータは、エンジン回転数入力部52を操作して、エンジン20の回転数を低速領域または高速領域に設定することができる。
【0047】
吸気温度検出部53は、エンジン20の吸気温度を検出することができる。一例として、吸気温度検出部53は、熱電対などの温度センサからなる。
【0048】
冷却水温度検出部54は、エンジン20の冷却水温度を検出することができる。冷却水温度検出部54も、例えば、熱電対などの温度センサからなる。
【0049】
図4を参照して、コントローラ50は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。コントローラ50は、前記CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、作業情報判定部501、エンジン回転数決定部502、ポンプ制御部503および記憶部504を備えるように機能する。これらの機能部は、実体を有するものではなく、前記プログラムによって実行される機能の単位に相当する。すなわち、これらの機能部が実行する制御は、実質的にコントローラ50が統括的に実行するということができる。なお、各機能部は、複数のコントローラに分かれて配置されるものでもよい。
【0050】
作業情報判定部501は、オペレータによって操作部24が受ける操作の操作量に応じて、油圧ショベル1の作業情報を判定する。具体的に、操作部24のブーム操作部241、アーム操作部242、バケット操作部243および旋回操作部244の各々にはパイロット圧検出部30(図2)が接続されている。作業情報判定部501は、パイロット圧検出部30が検出するパイロット圧に基づいて、ブーム操作部241がブーム上げ操作またはブーム下げ操作を受けていること、アーム操作部242がアーム押し操作またはアーム引き操作を受けていること、バケット操作部243がバケットの掘削操作または排土操作を受けていること、旋回操作部244が上部旋回体12の右旋回操作または左旋回操作を受けていることを、それぞれ判定する。
【0051】
なお、前記ブーム上げ操作はブーム4を起立方向に回動させる操作であり、前記ブーム下げ操作はブーム4を倒伏方向に回動させる操作である。前記アーム引き操作はアーム5を上部旋回体12側(後方向)に回動させる操作であり、前記アーム押し操作はアーム5を上部旋回体12とは反対側(前方向)に回動させる操作である。前記排土操作は、土砂を排出する方向(前方向)にバケット6を回動させる操作であり、前記掘削操作は、土砂を掘削する(掻き取る)方向(後方向)にバケット6を回動させる操作である。
【0052】
エンジン回転数決定部502は、操作部24の各操作部が受ける操作に基づいて、エンジン20の回転数指令値を決定する。エンジン回転数決定部502による前記回転数指令値の決定手順については、後記で詳述する。
【0053】
ポンプ制御部503は、比例弁26(図2)に対して流量指令用の比例電流を入力することで、油圧ポンプ21の傾転角、すなわち、吐出流量を調整する。特に、ポンプ制御部503は、エンジン回転数決定部502が決定するエンジン回転数に応じて、前記吐出流量を調整する機能を有している。
【0054】
記憶部504は、作業情報判定部501、エンジン回転数決定部502およびポンプ制御部503が実行する各処理において参照される閾値、マップ、パラメータなどを予め記憶している。
【0055】
本実施形態では、コントローラ50が、油圧ショベル1の作業内容に応じてエンジン20の回転数を好適に制御する。特に、コントローラ50は、予め設定された実行条件が成立している場合に、重負荷制御を実行する。例えば、キャブ18内に配置される不図示の実行スイッチをオペレータがONした場合に、前記実行条件が成立する。
【0056】
前記重負荷制御において、コントローラ50は、操作部24が受ける重負荷許諾操作の操作量の増加に応じてエンジン20の回転数を第1基準回転数から重負荷作業に対応する第1補正回転数まで増加させる一方、操作部24が受ける前記重負荷許諾操作の操作量の減少に応じてエンジン20の回転数を前記第1補正回転数から前記第1基準回転数まで減少させる。また、コントローラ50は、操作部24が軽負荷許諾操作を受けるとエンジン20の回転数を前記第1基準回転数以下に設定する。ここで、重負荷作業は、エンジン20に所定の基準トルク以上のトルクが要求される、作業アタッチメント3が実行する作業であり、軽負荷作業は前記基準トルク未満のエンジン20のトルクで作業アタッチメント3が実行可能な作業である。
【0057】
前記重負荷許諾操作は、操作部24に入力される操作のうち前記重負荷作業に対応するものとして予め許諾された操作であり、前記軽負荷許諾操作は操作部24に入力される操作のうち前記軽負荷作業に対応するものとして予め許諾された操作である。換言すれば、前記重負荷許諾操作は、操作部24に入力される操作のうち前記重負荷作業を代表するように設定された操作であり、前記軽負荷許諾操作は操作部24に入力される操作のうち前記軽負荷作業を代表するように設定された操作である。
【0058】
次に、コントローラ50が実行する重負荷制御について、更に詳述する。図5は、本実施形態に係る油圧ショベル1における重負荷操作のレバー操作量とエンジン回転数との関係を示すグラフである。図6は、油圧ショベル1において制御装置100が実行する処理のフローチャートである。図7は、油圧ショベル1における各操作レバーの操作量の推移を示すグラフである。図8は、油圧ショベル1における各エンジン回転数指令およびポンプ容量補正係数の推移を示すグラフである。図9は、油圧ショベル1におけるエンジン回転数指令、エンジン出力、ポンプ出力および燃料消費量の推移を示すグラフである。
【0059】
以下では、油圧ショベル1が、作業現場において、掘削作業、持ち上げ旋回作業、排土作業、復帰旋回作業を順に行う場合(掘削積み込み操作)について説明する。掘削作業は、例えば、アーム5を上部旋回体12側に回動させながら作業アタッチメント3のバケット6で地面を掘削して、バケット6内に土砂を保持する作業である。持ち上げ旋回作業は、バケット6内に土砂を保持した状態で、ブーム4を起立方向に回動させながら上部旋回体12を旋回させ、輸送車両の荷台上にバケット6を移動させる作業である。排土作業は、アーム5を伸ばしながら前記荷台の上方でバケット6を排土方向に回動させ、土砂を荷台に向かって排出する作業である。復帰旋回作業は、排土作業後に、ブーム4を倒伏させかつアーム5を伸ばしながら上部旋回体12を旋回させ、バケット6を再び掘削位置に移動させる作業である。
【0060】
本実施形態では、油圧ショベル1の作業が開始されると、操作部24のブーム操作部241、アーム操作部242、バケット操作部243および旋回操作部244の各操作レバーが受ける操作の操作方向および操作量が、コントローラ50の作業情報判定部501に入力される。当該操作方向および操作量は、前述のパイロット圧検出部30の大きさに基づいて検出される。
【0061】
作業情報判定部501は、上記の何れかの操作部のレバー操作の有無を判定する(図6のステップS1)。ここで、レバー操作がない場合(ステップS1でNO)、コントローラ50は、エンジン20の回転数制御を終了する。この場合、エンジン20は回転数N0でアイドル回転する。一方、レバー操作がある場合(ステップS1でYES)、作業情報判定部501は予め設定された重負荷許諾操作があるか否かを判定する(ステップS2)。具体的に、エンジン回転数決定部502は、掘削作業、持ち上げ旋回作業に対応する重負荷操作の代表的な操作であるアーム引き操作(掘削作業を代表)およびブーム上げ操作(持ち上げ旋回作業を代表)のそれぞれの操作の有無を判定する。ここで、これらの重負荷許諾操作がない場合(ステップS2でNO)、コントローラ50はエンジン20の回転数制御を終了する(エンジンは回転数N0で回転)。一方、アーム引き操作またはブーム上げ操作がある場合(ステップS2でYES)、エンジン回転数決定部502は、重負荷許諾操作毎に、図5のグラフからエンジン回転数指令値NCを演算する(ステップS3)。
【0062】
図5では、重負荷操作レバーの操作量が大きくなると、所定の操作量まではエンジン回転数(指令値)がN0で維持され、その後、操作量の増加とともにエンジン回転数がN1まで増加し、更に操作量が増加するとエンジン回転数はN1で維持される。すなわち、図5において、回転数N0は、重負荷操作が行われていない状態の回転数に相当し、回転数N1は重負荷操作の操作量が最大の状態の回転数に相当する。なお、図5のグラフに示される特性は、アーム引き操作およびブーム上げ操作で共通の特性としてもよく、また各操作で個別の特性を準備してもよい。
【0063】
次に、エンジン回転数決定部502は、上記により計算された各操作に基づくエンジン回転数指令値NCの高位選択を行うことで、最終のエンジン回転数指令最終値NCEを決定する(ステップS4)。そして、エンジン回転数決定部502は、決定されたエンジン回転数指令最終値NCEをECU20Sに入力することで、エンジンの回転数を制御する(ステップS5)。
【0064】
次に、ポンプ制御部503が、上記のエンジン回転数指令最終値NCEと予め設定された基準エンジン回転数(例えばN1)とに基づいて、油圧ポンプ21のポンプ容量の補正量を計算する(ステップS6)。本実施形態では、以下の式1、式2に基づいて、ポンプ容量補正係数が算出される。
q2=q1×C ・・・(式1)
C=N1/NCE ・・・(式2)
なお、q1は補正前のポジコン制御下のポンプ容量であり、q2は補正後のポジコン制御化のポンプ容量であり、Cはポンプ容量補正係数である。なお、油圧ポンプ21のポジコン制御については、後記で詳述する。上記の油圧ポンプ21のポンプ容量の補正を終えると、一連の制御が終了する。なお、図6のフローは、操作部24のレバー操作が行われている間、繰り返される。
【0065】
次に上記の制御を踏まえた、油圧ショベル1の動作について更に説明する。図7は、油圧ショベル1の掘削積み込み操作時のレバー操作パターンを示している。前述のように、掘削操作では、オペレータは、アーム引き操作を主に入れながら、ブーム上げ操作、バケット掘削操作(図では省略)を同時に操作する。持ち上げ旋回操作では、オペレータは、ブーム上げ操作と旋回操作とを同時に操作する。排土操作では、オペレータは、排土操作とアーム押し操作とを同時に操作する。復帰旋回操作では、オペレータは、ブーム下げ操作、旋回操作、アーム押し操作を同時に操作する。この内、掘削操作および持ち上げ旋回操作が重負荷操作に相当し、排土操作および復帰旋回操作は軽負荷操作に相当する。図7では、上記の各操作に対応して操作レバーの操作量が増減する様子が示されている。
【0066】
図8は、図7の掘削積み込み操作時の回転数指令およびポンプ容量補正値(前述の補正係数C)がそれぞれ図示されている。図5のステップS3において、重負荷作業に対応するアーム引き操作(掘削操作時の代表レバー操作)およびブーム上げ操作(持ち上げ旋回時の代表レバー操作)のそれぞれに対して、図7のアーム引きレバー操作量、ブーム上げレバー操作量と図5の特性とから、アーム引きエンジン回転数指令およびブーム上げエンジン回転数指令が設定された様子が、図8に図示されている。また、図5のステップS4において、アーム引きエンジン回転数指令とブーム上げエンジン回転数指令の高位選択を行うことで、エンジン回転数指令最終値NCEが設定されている。図8に示すように、この高位選択によって、掘削作業、持ち上げ旋回作業のいずれにおいても、エンジン回転数指令最終値NCEがN1に設定されている。更に、エンジン基準回転数をN1とした場合、前述の式1、式2に基づいて、ポンプ容量補正係数Cが算出される(図5のステップS6)。図8では、エンジン回転数指令最終値NCEがN1に設定される掘削作業、持ち上げ旋回作業において、補正係数CがC0に設定され、排土作業、復帰旋回作業において補正係数CがC1に設定されている。この結果、補正係数C1の排土作業、復帰旋回作業において、ポンプ容量が増加する。
【0067】
なお、コントローラ50は上記のエンジン回転数を制御するにあたって、決定されたエンジン回転数指令最終値NCEに対し、レートリミッタ処理(時間あたりのエンジン回転数の変化量を設定値以下に抑制する処理)や移動平均処理などを行うことで、その変化量を緩やかに調整してもよい。これによりエンジン回転数の急峻な変動を抑えることができる。また、これらの処理において、例えばエンジン回転数が減少する側に変化する場合の設定値を高くしてもよい。このような処理によってエンジン回転数が上昇する際にはその影響を小さくすることができるため、重負荷操作を行う場合には素早くエンジン回転数を立ち上げることができる。
【0068】
上記のような制御を行うことで、図9に示すように、重負荷作業に相当する掘削作業、持ち上げ旋回作業ではエンジン回転数が増加するとともに、軽負荷操作に相当する排土作業、復帰旋回作業ではエンジン回転数が減少するよう制御され、更に、エンジン回転数が減少した分、ポンプ容量が増加するよう制御される。
【0069】
この結果、重負荷作業では、エンジン回転数が増加するため、エンジン20の最大出力が増加する。この状態では、油圧ポンプ21の負荷圧が高くなるため、油圧ポンプ21は高圧時にそのポンプ容量を低下させるPQ制御領域に入り、ポンプ出力もPQ制御による最大出力となっている。油圧ポンプ21も最大出力となるようにPQ制御がかかっているが、上記のようにエンジン回転数が増加しエンジン20の最大出力も増加しているため、PQ制御による油圧ポンプ21の出力を高く維持することが可能になり、この油圧ポンプ21の出力の増加によって重負荷作業での油圧ショベル1の作業量を高く確保することができる。
【0070】
一方、軽負荷作業では、コントローラ50がエンジン回転数を低くなるように制御するとともに、エンジン回転数が減少した分、油圧ポンプ21のポンプ容量を増加させるよう制御する。この際、エンジン回転数が低くなる結果、エンジン20の最大出力は減少する。しかしながら、行われている作業が軽負荷作業の場合、油圧ポンプ21に要求される出力も相対的に小さいため、エンジン20の最大出力が下がっても、作業アタッチメント3の作業量に問題があるような影響は生じない。
【0071】
なお、上記の軽負荷作業では、油圧ポンプ21の負荷圧が低下する結果、低位選択によってPQ制御には掛からなくなり、ポジコン制御が優先的に作動する領域となっている。このため、エンジン20の最大出力が減少したとしても、エンジン20の最大出力よりも油圧ポンプ21の出力が低いため、エンジン出力の制約により作業量が低下する問題はない。更に、エンジン回転数が減少した分、ポンプ制御部503がポンプ容量を増加させているため、油圧ポンプ21の流量(=エンジン回転数×ポンプ容量)が減少することはなく、この結果、作業アタッチメント3の作業量が低下することはない。一方、軽負荷作業時には、エンジン回転数を低下させることによって、エンジン20に付随する不図示のファンなどの補器の連れまわり損失が低下する。また、油圧ポンプ21のポンプ容量を増加させることで油圧ポンプ21の効率が向上する。更に、エンジン20を低回転にすることでエンジン燃費率が改善する。この結果、作業アタッチメント3の作業量を維持しつつ、省エネ性を高めることができる。
【0072】
次に、上記の第1実施形態の変形例について説明する。図10は、本変形例に係る油圧ショベル1におけるエンジン回転数と油圧ポンプ21のPQ制御トルク設定値との関係を示すグラフである。図5におけるエンジン回転数N1は、前述の重負荷制御が実行されない場合(制御オフ状態)と同様に、オペレータがエンジン回転数入力部52を通じて入力する回転数(アクセル指令値)に応じて設定してもよいが、エンジン回転数N1は、図10のように制御オフ状態でオペレータのアクセル指令値に応じて設定されるエンジン回転数N4よりも低く設定されてもよい。この場合、油圧ポンプ21のPQ制御におけるトルク設定値T1をエンジン回転数N4の時のトルク設定値T4より大きな値に設定しても良い。例えば、以下の式3によってトルク設定値T1を算出することができる。
T1=T4×N4/N1 ・・・(式3)
これにより、油圧ポンプ21の出力はトルク×回転数となるため、下記の式4、式5ように制御オン状態のポンプ出力と重負荷制御が実行される場合(制御オン状態)のポンプ出力は同じになる。
制御オフ時のポンプ出力=T4×N4 ・・・(式4)
制御オン時のポンプ出力=T1×N1=(T4×N4/N1)×N1=T4×N4 ・・・(式5)
【0073】
コントローラ50が実行する上記のような制御では、重負荷作業時にエンジン回転数を下げることによる出力減少に起因する作業量低下を防止し、制御オフ時と同じ作業量を確保することができる。また、重負荷作業においても、制御オフ時と比較して相対的にエンジン回転数を下げることで、省エネ性を向上させることができる。なお、このようにエンジン回転数を減少した場合、油圧ポンプ21のポンプ容量を補正するポンプ容量補正係数Cの算出のために、下記の式6に基づいて、エンジン回転数の基準値(エンジン回転数N4)を設定してもよい。
C=N4/NCE ・・・(式6)
この結果、ポンプ流量は制御オフ時のエンジン回転数N4のときのポンプ流量と同じになるように補正されるため、制御オフの場合と同じ作業量を得ることができる。
【0074】
なお、本発明の各実施形態では、油圧ポンプ21の制御として、ポジコン制御およびPQ(Pressure - Quantity of flow)制御が選択的に実行される。ポジコン制御では、操作部24のレバー操作量の大きさに応じてポンプ容量が増加される。一方、PQ制御では、油圧ポンプ21の圧力(負荷圧、吐出圧)が予め設定された設定値以上に増加した場合に、油圧ポンプ21のトルクが一定になるように前記圧力の増加に応じてポンプ容量を減少させる。なお、ポンプ制御部503は、最終的に比例弁26に入力するポンプ容量指令値を、ポジコン制御で決定されるポンプ容量とPQ制御で決定されるポンプ容量との低位選択によって決定する。
【0075】
PQ制御時は、下記の式7で演算される油圧ポンプ21のトルクが一定になるように制御されており、これがPQ制御のトルク設定値となる。
T=P×q/(2π)(Pは圧力、qはポンプ容量) ・・・(式7)
【0076】
この結果、軽負荷作業時はポジコン制御によってポンプ容量が決定される。一方、重負荷作業時には、油圧ポンプ21のポンプ圧が設定値以上になるとPQ制御によってポンプ容量が決定される。仮に、エンジン回転数N1をエンジン回転数N4と同じ、すなわち、重負荷作業時のエンジン回転数指令値を制御オフ時と同じに設定した場合、ポジコン制御のポンプ容量補正係数は、下記の式8で算出される。
C=N1/NCE=N4/NCE ・・・(式8)
【0077】
一方、PQ制御時には、重負荷制御によりエンジン回転数が増加しN4、すなわち、制御オフ時のエンジン回転数と同じになるように制御される(NCE=N4)。このため、式8において、C=N4/N4=1となり、ポンプ容量の補正は行われない。すなわち、PQ制御のトルク設定値は、制御オフ時のPQ制御トルク設定値と同じになる。
【0078】
一方、仮にエンジン回転数N1をエンジン回転数N4より低く設定した場合、ポジコン制御のポンプ容量補正値はC=N4/NCEとなる。また、PQ制御のトルク設定値も上記のように、T1=T4×N4/N1とすれば、PQ制御時のポンプ容量も回転数がN4からN1に下がっただけトルクが増加する効果により容量が増加する。
【0079】
なお、実際の制御では、ポジコン制御において上記ポンプ容量補正係数Cによってポンプ容量の補正を行う一方、PQ制御のトルクも上記のようにトルクを増加させて算出した上で、両者の低位選択を行う方法をとってもよい。あるいは、ポジコン制御とPQ制御との低位選択を先に行い、得られた結果に上記補正係数Cによる補正を行う方法をとっても良い。いずれの方法でも、ポジコン制御が掛かる領域、PQ制御が掛かる領域のいずれにおいても、エンジン回転数がN4から低下した分に対応する分だけ、ポンプ容量が増加(PQ制御ではトルクが増加)するため、エンジン回転数を低下させた分に見合った分だけ油圧ポンプ21のポンプ容量が増加し、ポンプ流量が制御オフ時と同じになるように制御されるため、作業量の低下を防止することができる
【0080】
以上のように、上記の第1実施形態では、重負荷制御が実行されると、コントローラ50は、操作部24が受ける重負荷許諾操作の操作量の増加に応じてエンジン20の回転数をN0(第1基準回転数)からN1(第1補正回転数)まで増加するため、たとえ当該操作量が小さい場合でも前記回転数の増加によってエンジン20の出力トルクを大きくして作業アタッチメント3の作業能力を高めることができる。このため、油圧ショベル1が作業現場で行われる様々な重負荷作業を安定して行うことが可能になる。また、操作部24が軽負荷許諾操作を受けると、コントローラ50がエンジン20の回転数を回転数N0に設定する。このため、重負荷作業と比較して相対的に低い回転数でエンジン20が回転するため、無駄な燃料消費を抑制することができる。なお、操作部24が軽負荷許諾操作を受けると、コントローラ50はエンジン20の回転数を回転数N0未満の低い回転数に設定してもよい。
【0081】
また、本実施形態では、重負荷許諾操作がアーム引き操作又はブーム上げ操作を含み、作業アタッチメント3に大きな負荷がかかりやすいこれらの操作に対応してエンジン20の回転数を増加させることで、上記操作に代表される重負荷作業時に作業アタッチメント3の作業能力を十分確保することができる。
【0082】
なお、前記重負荷許諾操作は、少なくともブーム上げ操作および旋回操作が同時に行われる操作を含むものでもよい。この場合、下部走行体10および上部旋回体12を含む油圧ショベル1において、オペレータが、上部旋回体12を旋回させながらブーム4を起立方向に回動させる、いわゆる持ち上げ旋回操作を行なう際に、エンジン20の回転数を増加させることで作業アタッチメント3の作業能力を十分確保することができる。特に、重負荷許諾操作として旋回操作を含むため、ブーム上げ操作のみを重負荷許諾操作とする場合と比較して、持ち上げ旋回操作を正確に検出して、エンジン20の回転数制御を行うことができる。
【0083】
また、上記の実施形態では、コントローラ50は、前記実行条件が成立していない場合にエンジン20の回転数をN4(予め設定された第3基準回転数)に設定し、前記実行条件が成立している場合にエンジン20の回転数がN0以上N1以下(前記第3基準回転数よりも小さい回転数)の領域で推移するように前記重負荷制御を実行する。更に、コントローラ50は、当該重負荷制御において、前記ポンプ容量を操作部24が受ける操作量の大きさに応じた第1容量に設定する第1ポンプ処理(ポジコン制御)と、油圧ポンプ21の吐出圧が予め設定された閾値圧力を上回った場合に油圧ポンプ21の出力トルクが予め設定された閾値トルクを維持するように前記吐出圧の変化に応じて前記ポンプ容量を第2容量に設定する第2ポンプ処理(PQ制御)とを準備する。そして、コントローラ50は、前記第1容量および前記第2容量のうちの相対的に小さい容量に応じた指令信号を比例弁26に入力する。ここで、前記第2ポンプ処理における前記閾値トルクは、前記重負荷制御におけるエンジンの回転数(第1補正回転数)に基づく油圧ポンプ21の出力トルクが、前記実行条件が成立していない場合のエンジンの回転数(第3基準回転数)に基づく油圧ポンプ21の出力トルクに近似するように設定されている。
【0084】
このような構成によれば、重負荷制御下におけるエンジン20の回転数を実行条件が成立していない場合の回転数よりも小さくすることで、重負荷作業時にも燃料消費を抑制して省エネ効果を高めることができる。この際、第2ポンプ処理において維持される油圧ポンプ21の出力トルクが、実行条件が成立していない場合の前記出力トルクに近似するように設定されているため、第1ポンプ処理と第2ポンプ処理との低位選択によってポンプ容量を調整しても、油圧ポンプ21から油圧アクチュエータ23に供給される作動油の流量を維持することが可能になり、作業アタッチメント3の作業能力の低下を抑制することができる。
【0085】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に説明する。図11は、本実施形態に係る油圧ショベル1における軽負荷操作のレバー操作量とエンジン回転数との関係を示すグラフである。図12は、油圧ショベル1において制御装置100が実行する処理のフローチャートである。図13は、油圧ショベル1における各エンジン回転数指令およびポンプ容量補正値の推移を示すグラフである。図14は、油圧ショベル1におけるエンジン回転数指令、エンジン出力、ポンプ出力および燃料消費量の推移を示すグラフである。
【0086】
本実施形態では、先の実施形態と逆に、コントローラ50は、軽負荷作業が行われていることを条件として、エンジン20の回転数を減少させる。具体的に、コントローラ50は、操作部24が受ける前記軽負荷許諾操作の操作量の増加に応じて、エンジン20の回転数を第2基準回転数から第2補正回転数まで減少させる一方、操作部24が受ける前記軽負荷許諾操作の操作量の減少に応じてエンジン20の回転数を前記第2補正回転数から前記第2基準回転数に増加させる。また、コントローラ50は、操作部24が前記重負荷許諾操作を受けると、エンジン20の回転数を前記第2基準回転数以上に設定する。以下に、その詳細について説明する。
【0087】
当該軽負荷制御が開始されると、作業情報判定部501(図4)は、図12に示すように、各レバー操作が受ける操作量を検出し(ステップS11)、その中の軽負荷許諾操作の有無を判定する(ステップS12)。ここで、軽負荷作業の排土、復帰旋回作業にそれぞれ対応する操作がある場合には(ステップS12でYES)、排土操作の代表操作であるアーム押し操作およびバケット排土操作、ならびに復帰旋回操作の代表操作であるブーム下げ操作およびアーム押し操作のそれぞれのレバー操作量から、図11の特性に基づいて、各操作に対応するエンジン回転数指令値NCを演算する(ステップS13)。なお、図11の特性も、アーム押し操作、バケット排土操作およびブーム下げ操作において、共通の特性としてもよく、また操作毎に個別に特性を準備してもよい。
【0088】
次に、エンジン回転数決定部502が、上記により演算された各操作のエンジン回転数指令値NCの低位選択を行うことで、最終的なエンジン回転数指令最終値NCEを決定する(ステップS14)。そして、エンジン回転数決定部502がこのエンジン回転数指令最終値NCEをECU20Sに入力することで、エンジン回転数を制御する(ステップS15)。この軽負荷操作時においても、エンジン20の回転数が低下するが、ポンプ制御部503は先の実施形態と同様に、油圧ポンプ21のポンプ容量を補正する(ステップS16)。
【0089】
図13を参照して、上記の処理について更に詳述する。エンジン回転数決定部502は、アーム押しレバー操作量、バケット排土レバー操作量、ブーム下げレバー操作量のそれぞれについて、図11からアーム押しエンジン回転数指令値(アーム押しレバー操作に対するエンジン回転数指令)、バケット排土エンジン回転数指令値(バケット排土レバー操作に対するエンジン回転数指令)、ブーム下げエンジン回転数指令値(ブーム下げレバー操作に対するエンジン回転数指令)をそれぞれ求める。次に、エンジン回転数決定部502が、各エンジン回転数指令値の低位選択を行うことで、図13に示すように、各作業時のエンジン回転数指令最終値NCEが決定する。更に、ポンプ制御部503は、エンジン基準回転数をN1とした場合、図13のようにポンプ容量補正係数Cを設定する。
【0090】
次に、図14を参照して、軽負荷操作時の省エネ効果と重負荷操作時の作業量向上の効果について更に説明する。本実施形態では、先の実施形態と比較して、スタンバイ状態(レバー中立状態)時に、エンジン20の回転数が相対的に高く設定される。このスタンバイ状態から、オペレータが重負荷操作を行った場合、エンジン20の回転数が引き続き高い状態に維持されるため、エンジン20の回転時の立ち上がりの応答遅れに起因して、作業アタッチメント3の作業量が低下することが防止される。したがって、作業アタッチメント3の重負荷作業を安定して行うことができる。
【0091】
一方、軽負荷操作時には、エンジン20の回転数、出力が相対的に低くなるが、ポンプ制御部503によって油圧ポンプ21のポンプ容量、出力が増加される。この結果、軽負荷作業時にも作業アタッチメント3の作業量を安定して確保しつつ、エンジン20の燃料消費量を従来(図14の破線)よりも抑えることが可能になる。
【0092】
以上のように、本実施形態では、コントローラ50が軽負荷制御を実行すると、操作部24が受ける軽負荷許諾操作の操作量の増加に応じてエンジン20の回転数が減少するため、エンジン20が無駄に高い回転数で回転することがなく、燃料消費を抑制して省エネ効果を高めることができる。更に、軽負荷制御下で操作部24が重負荷許諾操作を受けると、エンジン20の回転数が前記第2基準回転数以上に設定されるため、軽負荷作業時と比較してエンジン20の出力を高めることで、様々な重負荷作業を安定して行うことが可能になる。
【0093】
また、本実施形態では、軽負荷許諾操作が、排土操作およびアーム押し操作が同時に行われる操作、又はブーム下げ操作およびアーム押し操作が同時に行われる操作を含むため、油圧アクチュエータ23に大きな力が要求されないこれらの操作に対応してエンジン20の回転数を減少させて、省エネ効果を高めることができる。
【0094】
なお、前記軽負荷許諾操作は、前記ブーム下げ操作、前記アーム押し操作および旋回操作が同時に行われる操作を含むものでもよい。このような構成によれば、下部走行体10および上部旋回体12を含む油圧ショベル1において、上部旋回体12を旋回させながらアーム5を伸ばす、いわゆる復帰旋回操作を行なう際に、エンジン20の回転数を減少させることで省エネ効果を高めることができる。特に、軽負荷許諾操作として旋回操作を含むため、アーム押し操作のみを軽負荷許諾操作とする場合と比較して、復帰旋回操作を正確に検出して、エンジン20の回転数制御を行うことができる。
【0095】
また、本実施形態において、コントローラ50は、軽負荷制御を実行するにあたって、図14の回転数N1(第2基準回転数)から回転数N0(第2補正回転数)までのエンジン20の回転数の減少に応じて油圧ポンプ21のポンプ容量を増加させるように、比例弁26に指令信号を入力する。このような構成によれば、軽負荷制御の実行時にエンジン20の回転数を減少させることに伴ってポンプ容量を増加させることで、油圧ポンプ21から油圧アクチュエータ23に供給される作動油の流量を維持して、作業アタッチメント3の作業能力の低下を抑制することができる。
【0096】
以上、本発明に係る制御装置100およびこれを備えた油圧ショベル1について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば以下のような変形実施形態をとることができる。
【0097】
(1)上記の各実施形態では、コントローラ50が重負荷制御または軽負荷制御を実行する態様にて説明したが、コントローラ50は重負荷制御および軽負荷制御の両方を実行するものでもよい。この場合、図9の重負荷制御における掘削、持ち上げ旋回作業の制御が実行された後に、図14の軽負荷制御における排土、復帰旋回作業の制御が実行されればよい。この際、図14におけるエンジン回転数N1は、図9におけるエンジン回転数N0に対応して設定されればよい。
【0098】
(2)図15は、エンジン20のエンジン回転数とその燃料消費率との関係を示すグラフである。一般的に、エンジン20の特性として、所定の低回転領域では、燃料消費率が高くなる傾向にある。一例として、図15では、エンジン20の回転数がN3近傍において、燃料消費率が最も低くなる(極小値)。なお、回転数N3を超える領域では、回転数の増加とともに、燃料消費率が高くなる。
【0099】
上記の特性を踏まえて、例えば、オペレータが、エンジン回転数入力部52を通じて、コントローラ50によって制御されるエンジン20の回転数の設定領域に関する情報を入力した場合、エンジン回転数入力部52に入力される前記設定領域が、エンジン回転数N3(前記エンジンの燃料消費率の極小値に応じて設定された閾値)よりも大きいことを実行条件として、コントローラ50が前記重負荷制御または軽負荷制御を実行してもよい。この場合、エンジン20の本来の特性として燃料消費率が悪化する低い回転数領域において、コントローラ50が重負荷制御または軽負荷制御を実行することを防止することができる。なお、オペレータがエンジン回転数入力部52を通じて入力する回転数の設定領域がエンジン回転数N3未満の場合には、コントローラ50が実行する重負荷制御および軽負荷制御をオフにして、通常のエンジン回転数制御を実行すればよい。
【0100】
(3)コントローラ50による上記の重負荷制御または軽負荷制御の実行条件について、表1に示すように所定の状態では各制御の実行が禁止されてもよい。
【表1】
具体的に、油圧ショベル1が作業アタッチメント3によって地面の均し作業を行う場合(均し操作)や、油圧ショベル1が予め設定されたプログラムに基づいてマシンコントロール(自動制御)などの高精度な作業を行う場合には、エンジン回転数の変動による均し精度の悪化などを抑止するために、上記の回転数制御はオフされてもよい。
【0101】
また、オペレータが作業入力部51(図4)から入力する作業モードとして、作業量優先モードや、更には、重量の大きいアタッチ(オプション部材)をバケット6に代えて作業アタッチメント3に装着して作業する場合(オプション操作)、下部走行体10による走行時などは、エンジン回転数の減少による作業速度の低下や走行速度の低下を抑止するために、上記の回転数制御はオフされてもよい。一方、省エネ優先モードが入力された場合は、上記の回転数制御がオンされることが望ましい。
【0102】
更に、油圧ショベル1に関連する各種の油温が設定値以上の場合には上記の制御をオフにすることで、エンジン回転数の低下によるファン風量の減少によって、油温が高くなることを防止することができる。表2は、油圧ショベル1の各温度が閾値を超えた場合に制御をオフする条件を示している。
【表2】
表2に示すように、作動油の温度(油温)、エンジン20の冷却水温度(エンジン水温)、エンジン20の吸気温度の全て、あるいは、これらの温度のうちのいずれかが、各々に設定された閾値を超えた場合に、上記の回転数制御をオフにしてもよい。換言すれば、前記実行条件は、前記作動油の温度、前記エンジンの冷却水温度、前記エンジンの吸気温度のうちの少なくとも一つの温度が、各々に対して予め設定された閾値よりも低いことを含むものでもよい。このような構成によれば、作動油の温度、エンジンの冷却水温度、同吸気温度のすべての温度が高い状態で、制御部がエンジン20の回転数を減少させる制御を行うことに起因して、ファン回転などのエンジン20の自己冷却能力が低下し作動油の温度が更に高くなることを防止することができる。
【0103】
なお、本発明に係る制御のオン/オフの切り替えは、手動で切り替えてもよいし、また下部走行体10の走行に関するレバー操作量の検出結果やマシンコントロール用のスイッチがオンになっていることに連動して自動的に切り替えられてもよい。
【符号の説明】
【0104】
1 油圧ショベル(作業機械)
10 下部走行体
100 制御装置
100S 油圧回路
12 上部旋回体(機体)
16 旋回フレーム
17 カウンタウエイト
18 キャブ
20 エンジン
20S ECU
21 油圧ポンプ
22 コントロールバルブ
23 油圧アクチュエータ(アクチュエータ)
231 ブームシリンダ
232 アームシリンダ
233 バケットシリンダ
234 旋回モータ
24 操作部
241 ブーム操作部
242 アーム操作部
243 バケット操作部
244 旋回操作部
25 レギュレータ
26 比例弁
27 リリーフ弁
28 ポンプ圧検出部
29 作動油温度検出部
30 パイロット圧検出部
3 作業アタッチメント(作業部材)
4 ブーム
5 アーム
50 コントローラ(制御部)
501 作業情報判定部
502 エンジン回転数決定部
503 ポンプ制御部
504 記憶部
51 作業入力部
52 エンジン回転数入力部
53 吸気温度検出部
54 冷却水温度検出部
6 バケット
G 地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15