(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019826
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】糖度計
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3563 20140101AFI20240206BHJP
【FI】
G01N21/3563
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122541
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】301016159
【氏名又は名称】システムエルエスアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】中浦 一浩
(72)【発明者】
【氏名】重松 則夫
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB11
2G059EE01
2G059EE11
2G059HH01
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】測定対象物の糖度を正確に測定できる糖度計を提供する。
【解決手段】糖度計10は、対象物11の糖度18を非破壊的に計測する。糖度計10は、発光部12と、受光部13と、回転支持部14と、演算制御部15と、を具備する。発光部12は、対象物11に向かって光線16を射出する。受光部13は、対象物11を透過した光線16を受光し、且つ、光線16の強度に応じた電気信号17を出力する。演算制御部15は、回転支持部14により、発光部12および受光部13を、対象物11の周囲において相対回転させ、受光部13が出力する電気信号17に基づいて、対象物11の糖度18を算出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の糖度を非破壊的に計測する糖度計であり、
発光部と、受光部と、回転支持部と、演算制御部と、を具備し、
前記発光部は、前記対象物に向かって光線を射出し、
前記受光部は、前記対象物を透過した前記光線を受光し、且つ、前記光線の強度に応じた電気信号を出力し、
前記演算制御部は、
前記回転支持部により、前記発光部および前記受光部を、前記対象物の周囲において相対回転させ、
前記受光部が出力する前記電気信号に基づいて、前記対象物の前記糖度を算出することを特徴とする糖度計。
【請求項2】
前記演算制御部は、
前記回転支持部により前記発光部および前記受光部を回転させつつ、前記光線の発光、受光および出力を複数回行い、
出力された複数の前記電気信号に基づき前記糖度を算出することを特徴とする請求項1に記載の糖度計。
【請求項3】
前記発光部は、第1光線を前記対象物に対して射出する第1発光部と、前記第1光線とは波長が異なる第2光線を前記対象物に対して射出する第2発光部と、を有し、
前記演算制御部は、前記受光部が受光した前記第1光線の強度、および、前記受光部が受光した前記第2光線の強度に基づき、前記対象物の前記糖度を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の糖度計。
【請求項4】
前記第1発光部と前記第2発光部とは離間して配置され、
前記演算制御部は、
前記第1発光部から前記第1光線を発光させ、前記対象物を透過した前記第1光線を前記受光部が受光した後に、
前記回転支持部により、前記第2発光部を移動させ、
前記第2発光部から前記第2光線を発光させ、前記対象物を透過した前記第2光線を前記受光部が受光することを特徴とする請求項3に記載の糖度計。
【請求項5】
前記演算制御部は、
前記回転支持部により前記発光部および前記受光部を第1方向に回転させつつ、前記光線の発光、受光および出力を複数回行い、出力された複数の前記電気信号に基づき、前記糖度を算出し、
その後、別の前記対象物の前記糖度を算出する際には、前記回転支持部により前記発光部および前記受光部を、逆方向である第2方向に回転させつつ、前記光線の発光、受光および出力を複数回行い、出力された複数の前記電気信号に基づき、前記糖度を算出することを特徴とする請求項1に記載の糖度計。
【請求項6】
温度センサを更に具備し、
前記演算制御部は、前記温度センサの出力値に基づいて、前記糖度の算出値を補正することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の糖度計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖度計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非破壊的に果物など対象物の糖度を推定する糖度計が利用されている。
【0003】
一例として、特許文献1には、波長の異なる複数の光を果物等に投光し、投光されたそれぞれの光に対する吸光度を測定し、同測定結果に基づいて果物等の糖度を測定する果物等の糖度測定方法が記載されている。具体的には、投光装置が発光し同軸ファイバに送られた波長の異なる複数の光が、上記同軸ファイバの端部より果物等に投光され、果物等に投光された光の反射光が、同軸ファイバの端部に受光されてセンサに送られて上記光の吸光度が測定される。
【0004】
特許文献2には、糖度測定のための発光部を回転させる糖度計が記載されている。具体的には、被測定物を載せるための回転手段を有している。また、回転手段が、載置台の上の被測定物に対し、その周囲で光源を相対的に回転させる。回転手段により、被測定物に対しその周囲で相対的に回転しながら、光源が被測定物に近赤外線を照射する。更に、被測定物の表面近傍から中心までの糖度を求めるよう、光源の照射エネルギーを変化させて照射する。その被測定物を透過した近赤外線の透過光を、光電変換部の受光部で受ける。受光部で受けた透過光の特定波長の吸光度に基づき、制御演算部の計算手段により被測定物の糖度を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-59081号公報
【特許文献2】特開2007-24651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した糖度測定装置は、より正確に糖度を測定する観点から改良の余地があった。
【0007】
詳しくは、測定対象の一例としての蒲萄の糖度を光学的に測定しようとする場合、蒲萄の形状は厳密には球形状ではなく、球形状から離れた、いびつな形状を呈している。係る場合、特許文献1に記載された発明を用いると、測定する角度によって蒲萄を通過する光路長が異なることから、糖度を正確に計測することが難しい。また、特許文献2に記載された測定方法では、光源のみが測定対象の周囲を回転することから、糖度を正確に計測することが依然として難しい課題があった。
【0008】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、測定対象物の糖度を正確に測定できる糖度計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の糖度計は、対象物の糖度を非破壊的に計測する糖度計であり、発光部と、受光部と、回転支持部と、演算制御部と、を具備し、前記発光部は、前記対象物に向かって光線を射出し、前記受光部は、前記対象物を透過した前記光線を受光し、且つ、前記光線の強度に応じた電気信号を出力し、前記演算制御部は、前記回転支持部により、前記発光部および前記受光部を、前記対象物の周囲において相対回転させ、前記受光部が出力する前記電気信号に基づいて、前記対象物の前記糖度を算出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の糖度計では、前記演算制御部は、前記回転支持部により前記発光部および前記受光部を回転させつつ、前記光線の発光、受光および出力を複数回行い、出力された複数の前記電気信号に基づき前記糖度を算出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の糖度計では、前記発光部は、第1光線を前記対象物に対して射出する第1発光部と、前記第1光線とは波長が異なる第2光線を前記対象物に対して射出する第2発光部と、を有し、前記演算制御部は、前記受光部が受光した前記第1光線の強度、および、前記受光部が受光した前記第2光線の強度に基づき、前記対象物の前記糖度を算出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の糖度計では、前記第1発光部と前記第2発光部とは離間して配置され、前記演算制御部は、前記第1発光部から前記第1光線を発光させ、前記対象物を透過した前記第1光線を前記受光部が受光した後に、前記回転支持部により、前記第2発光部を移動させ、前記第2発光部から前記第2光線を発光させ、前記対象物を透過した前記第2光線を前記受光部が受光することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の糖度計では、前記演算制御部は、前記回転支持部により前記発光部および前記受光部を第1方向に回転させつつ、前記光線の発光、受光および出力を複数回行い、出力された複数の前記電気信号に基づき、前記糖度を算出し、その後、別の前記対象物の前記糖度を算出する際には、前記回転支持部により前記発光部および前記受光部を、逆方向である第2方向に回転させつつ、前記光線の発光、受光および出力を複数回行い、出力された複数の前記電気信号に基づき、前記糖度を算出することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の糖度計では、温度センサを更に具備し、前記演算制御部は、前記温度センサの出力値に基づいて、前記糖度の算出値を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の糖度計は、対象物の糖度を非破壊的に計測する糖度計であり、発光部と、受光部と、回転支持部と、演算制御部と、を具備し、前記発光部は、前記対象物に向かって光線を射出し、前記受光部は、前記対象物を透過した前記光線を受光し、且つ、前記光線の強度に応じた電気信号を出力し、前記演算制御部は、前記回転支持部により、前記発光部および前記受光部を、前記対象物の周囲において相対回転させ、前記受光部が出力する前記電気信号に基づいて、前記対象物の前記糖度を算出することを特徴とする。本発明の糖度計によれば、回転支持部により発光部および受光部を回転させながら、対象物を透過する光線の強度に基づいて糖度を計測することにより、対象物に対して様々な光路を形成することができる。よって、対象物の形状が、球形状から離れた形状であっても、対象物の糖度を正確に算出することができる。
【0016】
また、本発明の糖度計では、前記演算制御部は、前記回転支持部により前記発光部および前記受光部を回転させつつ、前記光線の発光、受光および出力を複数回行い、出力された複数の前記電気信号に基づき前記糖度を算出することを特徴とする。本発明の糖度計によれば、複数の前記電気信号に基づいて糖度を算出することにより、更に正確に糖度を推定できる。
【0017】
また、本発明の糖度計では、前記発光部は、第1光線を前記対象物に対して射出する第1発光部と、前記第1光線とは波長が異なる第2光線を前記対象物に対して射出する第2発光部と、を有し、前記演算制御部は、前記受光部が受光した前記第1光線の強度、および、前記受光部が受光した前記第2光線の強度に基づき、前記対象物の前記糖度を算出することを特徴とする。本発明の糖度計によれば、波長が異なる第1光線および第2光線を利用することにより、更に正確に糖度を推定できる。
【0018】
また、本発明の糖度計では、前記第1発光部と前記第2発光部とは離間して配置され、前記演算制御部は、前記第1発光部から前記第1光線を発光させ、前記対象物を透過した前記第1光線を前記受光部が受光した後に、前記回転支持部により、前記第2発光部を移動させ、前記第2発光部から前記第2光線を発光させ、前記対象物を透過した前記第2光線を前記受光部が受光することを特徴とする。本発明の糖度計によれば、波長が異なる第1光線の光路と、第2光線の光路とを略一致させ、更に正確に糖度を推定できる。
【0019】
また、本発明の糖度計では、前記演算制御部は、前記回転支持部により前記発光部および前記受光部を第1方向に回転させつつ、前記光線の発光、受光および出力を複数回行い、出力された複数の前記電気信号に基づき、前記糖度を算出し、その後、別の前記対象物の前記糖度を算出する際には、前記回転支持部により前記発光部および前記受光部を、逆方向である第2方向に回転させつつ、前記光線の発光、受光および出力を複数回行い、出力された複数の前記電気信号に基づき、前記糖度を算出することを特徴とする。本発明の糖度計によれば、2回目の糖度計測の際に、発光部および受光部を、逆方向である第2方向に回転させることで、発光部および受光部の電気的接続に用いられる配線の断線や捻れを防止できる。
【0020】
また、本発明の糖度計では、温度センサを更に具備し、前記演算制御部は、前記温度センサの出力値に基づいて、前記糖度の算出値を補正することを特徴とする。本発明の糖度計によれば、温度センサの出力値に基づいて糖度の算出値を補正することにより、糖度を更に精度高く算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】本発明の実施形態に係る糖度計を前方から見た斜視図である。
【
図1B】本発明の実施形態に係る糖度計を後方から見た斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る糖度計を示す図であり、カバーを部分的に外した糖度計を示す斜視図である。
【
図3A】本発明の実施形態に係る糖度計の回転支持部等を示す斜視図である。
【
図3B】本発明の実施形態に係る糖度計の回転支持部等を別の角度から示す斜視図である。
【
図4A】本発明の実施形態に係る糖度計の回転支持部等を示す分解斜視図である。
【
図4B】本発明の実施形態に係る糖度計の回転支持部等を別の角度から示す分解斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る糖度計の接続構成を示すブロック図である。
【
図6A】本発明の実施形態に係る糖度計の光学的構成を示す図である。
【
図6B】本発明の実施形態に係る糖度計の光学的構成を示す図である。
【
図7A】本発明の実施形態に係る糖度計を用いて糖度を測定する方法を示す図である。
【
図7B】本発明の実施形態に係る糖度計を用いて糖度を測定する方法を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る糖度計糖度において、糖度を測定する際に、回転支持部が回転する状況を逐次的に示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る糖度計糖度において、糖度を測定する際に、回転支持部が逆方向に回転する状況を逐次的に示す図である。
【
図10A】本発明の実施形態に係る糖度計糖度において、糖度を測定する具体的な方法を示す図である。
【
図10B】本発明の実施形態に係る糖度計糖度において、糖度を測定する具体的な方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る糖度計10を図面に基づき詳細に説明する。以下の説明に於いて、左右方向とは、糖度計10を前方から見た場合の左右である。また、以下の説明では、同一の部材には原則的に同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0023】
図1Aは、糖度計10を前方から見た斜視図である。
図1Bは、糖度計10を後方から見た斜視図である。
【0024】
糖度計10は、ここでは図示しない対象物11の糖度を非破壊的に計測する装置であり、携行可能とされている。対象物11としては、蒲萄、イチゴ等の果物を採用できる。また、糖度計10には、操作スイッチ20、表示部21および収納部22が備えられている。
【0025】
糖度計10の全体は、カバー19により覆われている。カバー19は、例えば射出成形された合成樹脂板から成り、ユーザが携行しやすい形状および大きさを呈している。カバー19の下方部分は把持部23を形成しており、把持部23はユーザの手により把持しやすい形状を呈している。カバー19の上方部分に、糖度を計測するための各構成機器が収納されている。カバー19の上面には、後述する対象物11の挿入を許容するための、略円状の開口が形成されている。
【0026】
操作スイッチ20は、カバー19の前面に配設されたプッシュ型のスイッチである。ユーザが操作スイッチ20を押下することで、糖度計10に内蔵された各機器が動作し、これにより後述する対象物11の糖度が計測される。
【0027】
表示部21は、カバー19の後面に配置された液晶画面等である。表示部21は、糖度計10により測定された糖度を示す数字を映し出す。
【0028】
図2は、糖度計10を示す図であり、カバー19を部分的に外した糖度計10を示す斜視図である。
【0029】
カバー19の内部であって上端近傍には容器部32が配設される。容器部32は、球状の容器の下方部分を呈する部材である。容器部32は、糖度を計測する対象物である、後述する対象物11の下方部分を収納できる形状および大きさを呈している。容器部32はカバー19に固定されており、糖度計10の計測動作に伴い容器部32は変位しない。
【0030】
カバー19の内部には、糖度を計測するための各機器や、制御基板である基板34が収納されている。各機器の構成および動作は、
図3A以降の図を参照して後述する。また、糖度を計測するための各機器や基板34は、電気信号や電力を伝送するための配線を経由して相互に接続される。
【0031】
ここで、カバー19の上端内側部と、容器部32の上端との間には間隙33が形成されている。本実施形態では、間隙33を経由して、収納部22に収納される、後述する対象物11に対して光線を照射し、対象物11を透過した光線の強度に基づいて、対象物11の糖度を検出している。
【0032】
図3Aないし
図4Bを参照して、前述したカバー19の内部に組み込まれる回転支持部14およびそれに支持される計測機構の構造を説明する。
図3Aは、糖度計10の回転支持部14等を示す斜視図である。
図3Bは、糖度計10の回転支持部14等を別の角度から示す斜視図である。
図4Aは、糖度計10の回転支持部14等を示す分解斜視図である。
図4Bは、糖度計10の回転支持部14等を別の角度から示す分解斜視図である。
【0033】
図3Aおよび
図3Bを参照して、回転支持部14は略円筒状を呈する可動部材である。回転支持部14の形状は、肉抜きされた略円筒形状を呈している。回転支持部14の上端部および下端部は、略リング形状に形成される。後述するように、回転支持部14の下端は、モータ24に接続している。
【0034】
回転支持部14の上端部近傍には、受光開口部30および発光開口部31が形成されている。
【0035】
図3Aおよび
図4Bを参照して、受光開口部30は、回転支持部14の上端部近傍を貫通する開口であり、受光部13が外側から望んでいる。
【0036】
図3Bおよび
図4Aを参照して、発光開口部31は、受光開口部30と対峙する位置で、回転支持部14の上端部近傍を貫通する開口である。
図3Aに示すように、後述する発光部12が外側から望んでいる。
【0037】
回転支持部14の側面には、受光部支持基板29および発光部支持基板28が外側から取り付けられている。発光部支持基板28は、合成樹脂等の絶縁基板から成り、ビス等の取付手段を介して、回転支持部14の外側面に取り付けられ、発光部12が実装される。受光部支持基板29も同様に、合成樹脂等の絶縁基板から成り、ビス等の取付手段を介して、回転支持部14の外側面に取り付けられ、受光部13が実装される。発光部支持基板28と受光部支持基板29とは、回転支持部14を挟んで対峙するように配置される。また、発光部支持基板28および受光部支持基板29は、ここでは図示しない配線を経由して、前述した基板34と電気的に接続される。
【0038】
図4Aおよび
図4Bを参照して、回転支持部14は、支持本体部141と、支持接続部142と、を有する。支持本体部141は、前述したように、略円筒形状を呈する部位であり、発光部支持基板28および受光部支持基板29が取り付けられる。支持接続部142は、支持接続部142の下端から中心に向かって略棒状に伸びる部位である。支持接続部142の下面であって、回転支持部14の回転中心に相当する部分には、挿入孔143が形成される。挿入孔143は、モータ24の回転軸241が相対回転不能な状態で挿入される。係る構成により、モータ24の回転駆動力により、回転支持部14、発光部支持基板28および受光部支持基板29を、上方から見て、時計回りおよび反時計回りに、回転させることができる。
【0039】
図5は、糖度計10の接続構成を示すブロック図である。
【0040】
糖度計10は、演算制御部15と、温度センサ26と、受光部13と、バッテリ27と、操作スイッチ20と、第1発光部121と、第2発光部122と、モータ24と、表示部21と、を主要に有する。
【0041】
演算制御部15は、CPU、RAM、ROM等を有し、予め組み込まれたプログラムに基づいて所定の演算および制御を実行するマイコンである。ここで、温度センサ26、受光部13、バッテリ27および操作スイッチ20は、演算制御部15の入力側端子に接続される。また、第1発光部121、第2発光部122、モータ24および表示部21は、演算制御部15の出力側端子に接続される。
【0042】
温度センサ26は、糖度測定時の、糖度計10の内部の周囲温度を測定する部位である。温度センサ26は、例えば、
図2に示した基板34に実装される。温度センサ26が計測した温度を示す情報は、演算制御部15に伝送される。後述するように、温度センサ26の出力値である温度を用いて、対象物11の糖度の算出値が補正される。
【0043】
受光部13は、対象物11を透過した光線16を受光し、且つ、光線16の強度に応じた電気信号17を出力する。具体的には、受光部13は、例えば、ホトダイオードであり、前述した第1発光部121および第2発光部122から発せられ、対象物11を透過した光線を受光する。受光部13は、受光した第1発光部121の強度を示す情報を演算制御部15に伝送する。更に、受光部13は、受光した第2発光部122の強度を示す情報を演算制御部15に伝送する。
【0044】
バッテリ27は、充電可能な2次電池である。バッテリ27は、糖度計10を構成する各構成機器に電力を供給する。
【0045】
操作スイッチ20は、前出したように、ユーザが対象物11の糖度を計測する際に押下する装置である。ユーザが操作スイッチ20を押下したら、操作スイッチ20は、その旨を示す電気信号を演算制御部15に伝送する。演算制御部15は、当該電気信号に基づき、対象物11の糖度を計測するための所定の動作を実行する。
【0046】
第1発光部121は、演算制御部15の指示に基づいて、例えば、対象物11の糖度に依存する波長の第1光線161を対象物11に対して射出する。第1光線161の波長は、対象物11の糖度に依存する波長が採用され、例えば、1150nmである。
【0047】
第2発光部122は、演算制御部15の指示に基づいて、第1光線161とは波長が異なる第2光線162を対象物11に対して射出する。第2光線162の波長は、対象物11の糖度に依存しない波長が採用され、例えば、850nmである。
【0048】
モータ24は、演算制御部15からの指示に基づいて、前述した回転支持部14を回転させる。モータ24としては、例えば、ステッピングモータが採用される。
【0049】
表示部21は、演算制御部15から入力される情報に基づいて、糖度を表示する。
【0050】
図6Aおよび
図6Bは、糖度計10の光学的構成を示す図である。
【0051】
対象物11は、例えば蒲萄である。一般的に、蒲萄である対象物11の形状は、球形状から離れた、いびつな形状を呈している。本実施形態では、係る形状の対象物11の糖度を正確に計測するために
図7A以降の図に示す構成および動作を採用している。
【0052】
対象物11を挟むように、発光部支持基板28および受光部支持基板29が配置されている。発光部支持基板28の対象物11を向く面には、発光部12としての第1発光部121および第2発光部122が実装されている。また、受光部支持基板29の対象物11を向く面には、受光部13が実装されている。
【0053】
第1発光部121から受光部13に向かって、一定の幅を持って第1光線161が放射される。ここでは、第1光線161の中心を、破線で示している。
図6Aでは、第1光線161が放射される領域をハッチングで示し、
図6Bでは第1光線161の中心に対応する光路を破線で示している。
【0054】
第2発光部122から受光部13に向かって、一定の幅を持って第2光線162が放射される。ここでは、第1光線161の中心を、一点鎖線で示している。
図6Aでは、第2光線162が放射される領域をハッチングで示し、
図6Bでは第2光線162の中心に対応する光路を一点鎖線で示している。
【0055】
図7Aおよび
図7Bは、糖度計10を用いて糖度を測定する方法を示す図である。
【0056】
前述したように、例えば蒲萄である対象物11は、いびつな形状を呈している場合がある。よって、発光部12および受光部13の回転位置により、対象物11を通過する光線の長さが異なる。具体的には、
図7Aを参照して、第1発光部121から受光部13に向かって第1光線161を放射した場合に対象物11を通過する長さをL10とする。一方、
図7Aに示す状態から回転支持部14を90度反時計回りに回転させた状態で、
図7Bに示すように、第1発光部121から受光部13に向かって第1光線161を放射した場合に対象物11を通過する長さをL11とする。この場合、L10とL11とで長さが大きく異なる。よって、何ら対策を施さなければ、
図7Aに示す場合と、
図7Bに示す場合とで、算出される対象物11の条件が異なり、正確な糖度の計算値が得られないことが考えられる。同様のことは、第2発光部122から放射される第2光線162に関しても言える。
【0057】
このことから、本実施形態では、後述するように、回転支持部14を回転させながら、第1発光部121、第2発光部122および受光部13を用いた光学的な糖度検出を行うことにより、対象物11がいびつな形状であっても、対象物11の糖度を正確に算出している。
【0058】
図8は、糖度を測定する際に、回転支持部14が、第1方向である反時計回りに回転する状況を逐次的に示す図である。ここでは、回転支持部14が反時計回りに逐次回転することで、位置角度が異なる第1状態ないし第9状態をとる場合を例示するが、係る状態の数は任意である。例えば、係る状態の数を18、27等に変更することもできる。
【0059】
演算制御部15は、モータ24の回転駆動力により、回転支持部14に支持される発光部12および受光部13を、対象物11の周囲において相対回転させ、受光部13が出力する電気信号17に基づいて、対象物11の糖度を算出する。また、演算制御部15は、回転支持部14により発光部12および受光部13を回転させつつ、光線16の発光、受光および出力を複数回行い、出力された複数の電気信号17に基づき、対象物11の糖度を算出する。
【0060】
具体的には、第1状態は回転支持部14の最初の状態である。この第1状態で、演算制御部15の指示に基づき、第1発光部121から第1光線161が放射され、第1光線161は対象物11を透過して受光部13に至る。更に、演算制御部15の指示に基づき、第2発光部122から第2光線162が放射され、第2光線162は対象物11を透過して受光部13に至る。
【0061】
回転支持部14は、第1光線161の放射から第2光線162の放射までの間に後述する微少回転を行うが、係る微少回転は
図10Aおよび
図10Bを参照して後述する。その後、演算制御部15は、受光部13で受光した第1光線161および第2光線162の強度、更には、温度センサ26で検知した対象物11の温度も考慮し、対象物11の糖度を算出して推定する。波長が異なる第1光線161および第2光線162を利用することにより、更に正確に糖度を推定できる。
【0062】
その後、演算制御部15の指示に基づき、モータ24の回転駆動力により回転支持部14を、反時計回りに45度回転させることにより、第1状態から第2状態とする。第2状態に於いて、第1状態の際と同様に、演算制御部15の指示に基づき、第1発光部121および第2発光部122から各光線を照射し、受光部13および温度センサ26からの出力に基づき、対象物11の糖度を算出する。
【0063】
上記した一連の動作を、その後、第3状態ないし第9状態で実行する。
【0064】
その後、演算制御部15は、第1状態ないし第9状態の各状態で算出された糖度の平均値を求め、係る糖度の平均値を、糖度計10が計測した最終的な推定値とする。本実施形態によれば、回転支持部14により発光部12および受光部13を回転させながら、対象物11を透過する光線16の強度に基づいて糖度を計測することにより、対象物11に対して様々な光路を形成することができる。よって、対象物11の形状が、球形状から離れた形状であっても、対象物11の糖度を正確に算出することができる。
【0065】
図9は、次回の対象物11の糖度を測定する際に、回転支持部14が、第2方向である時計回りに回転する状況を逐次的に示す図である。
図8に示した第1状態から第9状態に至るまでの計測を実行した場合、
図2に示す回転支持部14は、反時計回りに略360度回転することになる。この状態では、回転支持部14と他構成部位とを接続する配線に、回転支持部14が回転することによる捻れが発生する。また、
図8に示した回転計測動作を続行した場合、係る配線の捻れが繰り返されることに成り、配線の断線を招く恐れがある。そこで、
図9に示す様に、対象物11の次回の糖度計測では、回転支持部14を逆方向に回転させながら、対象物11の糖度計測を行っている。ここで、
図8に示す第1状態ないし第9状態と、
図9に示す第1状態ないし第9状態とは、回転位置が対応している。
【0066】
具体的には、先ず、第9状態において、
図8に示した場合と同様に、対象物11の糖度を算出する。具体的には、この第9状態で、演算制御部15の指示に基づき、第1発光部121から第1光線161が放射され、第1光線161は対象物11を透過して受光部13に至る。更に、演算制御部15の指示に基づき、第2発光部122から第2光線162が放射され、第2光線162は対象物11を透過して受光部13に至る。その後、演算制御部15は、受光部13で受光した第1光線161および第2光線162の強度、更には、温度センサ26で検知した温度も考慮し、対象物11の糖度を算出して推定する。
【0067】
その後、演算制御部15の指示に基づき、モータ24の回転駆動力により回転支持部14を、時計回りに45度回転させることにより、第9状態から第8状態とする。第8状態に於いて、第1状態の際と同様に、演算制御部15の指示に基づき、第1発光部121および第2発光部122から各光線を照射し、受光部13および温度センサ26からの出力に基づき、対象物11の糖度を算出する。
【0068】
上記した一連の動作を、その後、第7状態ないし第1状態で実行する。
【0069】
その後、演算制御部15は、第9状態ないし第1状態の各状態で算出された糖度の平均値を求め、係る糖度の平均値を、糖度計10が計測した最終的な推定値とする。更に、2回目の測定により、発光部12および受光部13と接続された配線の捻れは元に戻り、配線の断線を防止できる。
【0070】
その後、奇数回の対象物11の糖度測定においては、
図8に示したように、反時計回りに回転支持部14を回転させながら、糖度測定のための光線照射を行う。また、偶数回の対象物11の糖度測定においては、
図9に示したように、時計回りに回転支持部14を回転させながら、糖度測定のための光線照射を行う。このようにすることで、発光部12および受光部13と接続された配線の捻れや断線を防止できる。
【0071】
【0072】
図10Aを参照して、第1発光部121と第2発光部122とは離間して配置される。よって、第1光線161が対象物11を透過する光路と、第2光線162が対象物11を透過する光路とは、位置が異なり、更には対象物11を通過する光路長が異なる。具体的には、第1光線161が対象物11を通過する光路長L21と、第2光線162が対象物11を通過する光路長L22とは、長さが異なる。よって、両者の差が大きければ、第1光線161と第2光線162との光学的条件の相違により、対象物11の糖度を正確に算出することが難しいことも考えられる。このことから、本実施形態では、第1光線161の放射を行った後に、回転支持部14を僅かに回転させ、第2光線162からの放射を行っている。
【0073】
具体的には、先ず、
図10Aを参照して、第1発光部121から受光部13に向けて第1光線161を放射し、第1光線161の強度を示す電気信号を、前述した演算制御部15に伝送する。
【0074】
図10Bを参照して、その後、演算制御部15の指示に基づいて、前述したモータ24の駆動力により、回転支持部14を僅かに反時計回りに回転させることで、第2発光部122を、
図10Aに示した第1発光部121の位置まで移動させる。その状態で、演算制御部15の指示に基づいて、第2発光部122から受光部13に向けて第2光線162を放射し、第2光線162の強度を示す電気信号を、前述した演算制御部15に伝送する。その後、演算制御部15は、第1光線161および第2光線162の受光強度や、温度センサ26の出力に基づいて、対象物11の糖度を算出する。このようにすることで、第1光線161の光路と、第2光線162の光路とを略一致させ、更に正確に糖度を推定できる。
【0075】
ここで、微少回転を伴う糖度測定は、前述した第1状態ないし第9状態の夫々について行われる。
【0076】
前述した構成および動作の糖度計10を用いて対象物11である蒲萄の糖度を計測する方法を詳述する。
【0077】
先ず、結実した状態、即ち収穫される前の状態の対象物11に対して糖度計10を接近させ、糖度計10の収納部22に対象物11を収納させる。
【0078】
次に、ユーザが
図1Aに示した操作スイッチ20を押下すれば、演算制御部15の指示に基づいて、
図8ないし
図10Bに示した方法により、対象物11の糖度が算出される。算出された糖度は、表示部21に表示される。
【0079】
ここで、対象物11の糖度は、例えば、次の式1により算出される。
式1:糖度=K1×(糖度依存のある第1光線161の受光量)+K2
ここで、K1=Ka×(非糖度依存のある第2光線162の受光量)×温度+Kbにて算出される。また、Ka、Kb、K2は、対象物11である蒲萄の品種毎に、予め決定している定数である。
【0080】
更に、糖度を温度補正しない場合は、例えば、以下の式2により糖度が算出される。
式2:糖度=K1×(糖度依存のある第1光線161の受光量)+K3
ここで、K1=Kc×(非糖度依存のある第2光線162の受光量)+Kdにて算出される。また、Kc、Kd、K3は蒲萄の品種毎に予め決定している定数である。
【0081】
ユーザは、表示部21に示された糖度が一定以上であれば、例えば蒲萄である対象物11を収穫する。一方、ユーザは、表示部21に示された糖度が一定未満であれば、対象物11を収穫しない。
【0082】
このように、結実した状態の対象物11の糖度を計測することにより、十分な糖度を有する対象物11のみを収穫することができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、前述した各形態は相互に組み合わせることが可能である。
【0084】
例えば、
図8および
図9を参照した説明では、第1状態ないし第9状態で算出した値の平均値を、糖度として算出したが、例えば、中央値等の代表値を、算出される糖度として採用することもできる。
【0085】
更に、
図8および
図9を参照した説明では、測定時に、対象物11を固定した状態で、回転支持部14、発光部12および受光部13を回転させたが、逆に、回転支持部14、発光部12および受光部13の位置を固定し、対象物11を回転させることもできる。このような場合であっても、同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0086】
10 糖度計
11 対象物
12 発光部
121 第1発光部
122 第2発光部
13 受光部
14 回転支持部
141 支持本体部
142 支持接続部
143 挿入孔
15 演算制御部
16 光線
161 第1光線
162 第2光線
17 電気信号
18 糖度
19 カバー
20 操作スイッチ
21 表示部
22 収納部
23 把持部
24 モータ
241 回転軸
26 温度センサ
27 バッテリ
28 発光部支持基板
29 受光部支持基板
30 受光開口部
31 発光開口部
32 容器部
33 間隙
34 基板