(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019830
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】時系列データ解析システム
(51)【国際特許分類】
G06F 17/10 20060101AFI20240206BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240206BHJP
G01D 3/032 20060101ALI20240206BHJP
G01K 3/08 20060101ALI20240206BHJP
G01D 1/10 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G06F17/10 V
G05B23/02 Z
G01D3/032
G01K3/08
G01D1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122546
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】591030237
【氏名又は名称】BIPROGY株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】大塚 洋
(72)【発明者】
【氏名】吉本 昌平
【テーマコード(参考)】
2F075
3C223
5B056
【Fターム(参考)】
2F075AA04
2F075AA05
2F075EE14
2F075EE18
2F075FF02
3C223AA11
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223FF04
3C223FF06
3C223FF08
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH28
5B056BB03
5B056GG03
5B056HH07
(57)【要約】
【課題】ノイズが多く含まれるデータに対してもより有効にデータの解析を行うことを可能とするデータ解析システム及び時系列データ解析方法を提供する。
【解決手段】時系列データ解析システムは、バンドパスフィルタ処理部16、移動平均処理部18、微分処理部20、積分階差処理22、減算処理部24、パルス生成処理部26、閾値処理部28、分割点探索処理部30、範囲設定処理部32を含んでいる。これらの各処理部において、時系列データに対して各種の処理をさまざまに適用し実行することによって、時系列データの中の屈折点、すなわちトレンドが変化する点を高い精度で見いだすことができる。範囲設定処理部32は、例えば、ユーザが時間軸に直接範囲を設定する処理を実行する。さらに、分割点探索処理部によって、コンピュータに対する負荷の少ない処理により時系列データによくフィットする近似曲線を求める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列データに対して時間微分を実行し、必要に応じて時間微分後の時系列データの波形図を表示する時間微分処理手段と、
処理対象となる時系列データに対し、前記時間微分処理部による時間微分処理を実行するときに時間範囲を時間軸上で設定する範囲設定処理部と、
前記範囲設定処理部によって設定された時間範囲において、処理対象となる時系列データがピークとなる位置を検出するピーク位置検出部と、
を備える、時系列データ解析システム。
【請求項2】
前記範囲設定処理部は、時系列データの時間軸上に、前記時間範囲の少なくとも一方の境界をユーザが直接設定するものである、請求項1に記載の時系列データ解析システム。
【請求項3】
前記範囲設定処理部は、ユーザが縦軸の特定の値を設定し、それに対応する時間軸上の値を前記時間範囲の少なくとも一方の境界とするものである、請求項1に記載の時系列データ解析システム。
【請求項4】
前記範囲設定処理部は、ピーク位置検出部によって検出された時系列データの縦軸のピーク値を検索し、当該ピーク値に対応する時間軸上の値を、前記時間範囲の一方の境界とするものである、請求項1に記載の時系列データ解析システム。
【請求項5】
さらに、ノイズ除去手段として、時系列データに対して移動平均処理を実行し、必要に応じて移動平均処理後の時系列データの波形図を表示する移動平均処理部、及び、時系列データに対して積分階差処理を実行し、必要に応じて積分階差処理後の時系列データの波形図を表示する積分階差処理部のいずれか一方又は両方を備える、請求項1に記載の時系列データ解析システム。
【請求項6】
時系列データに対してバンドパスフィルタ処理を実行するバンドパスフィルタ処理部をさらに有する請求項1に記載の時系列データ解析システム。
【請求項7】
ユーザがユーザデータを入力するユーザ入力処理部をさらに有する請求項5に記載の時系列データ解析システム。
【請求項8】
外部から時系列データをシステム内に取り込むデータ入力部をさらに有する請求項5に記載の時系列データ解析システム。
【請求項9】
時系列データに対して時間微分を実行し、必要に応じて時間微分後の時系列データの波形図を表示する時間微分処理手段と、
時系列データに対して、その値が連続して正である時間の長さをパルス幅、連続して正である時間の長さをパルス高とする第1のパルス波形と、その値が連続して負である時間の長さをパルス幅、連続して負である時間の長さをパルス高とする第2のパルス波形とを求め、必要に応じて第1のパルス波形及び第2のパルス波形の両方又はいずれか一方の波形図を表示するパルス生成部と、
複数の時系列データの間又は複数のパルス波形の間で減算処理を実行し、必要に応じてその減算後の時系列データ又はパルス波形を表示する減算処理部と、
パルス波形の値を予め指定された閾値と比較し、当該閾値より大きいパルス又は小さいパルスを選択する閾値処理部と、
を備える時系列データ解析システム。
【請求項10】
さらに、ノイズ除去手段として、時系列データに対して移動平均処理を実行し、必要に応じて移動平均処理後の時系列データの波形図を表示する移動平均処理部、及び、時系列データに対して積分階差処理を実行し、必要に応じて積分階差処理後の時系列データの波形図を表示する積分階差処理部のいずれか一方又は両方を備える、請求項9に記載の時系列データ解析システム。
【請求項11】
時系列データに対してバンドパスフィルタ処理を実行するバンドパスフィルタ処理部をさらに有する請求項9に記載の時系列データ解析システム。
【請求項12】
ユーザがユーザデータを入力するユーザ入力処理部をさらに有する請求項9に記載の時系列データ解析システム。
【請求項13】
外部から時系列データをシステム内に取り込むデータ入力部をさらに有する請求項9に記載の時系列データ解析システム。
【請求項14】
時系列データ解析システムに取り込まれた時系列データの屈折点を求める方法であって、
前記時系列データ解析システムに含まれる微分処理部によって、取り込まれた第1の時系列データに対して3回の時間微分を行って第2の時系列データを得る第1ステップと、
前記時系列データ解析システムに含まれるパルス生成部によって、前記第2の時系列データが連続して正である時間の長さをパルス幅、連続して正である時間の長さをパルス高とする第1のパルス波形と、前記第4の時系列データが連続して負である時間の長さをパルス幅、連続して負である時間の長さをパルス高とする第2のパルス波形とを求める第2ステップと、
前記時系列データ解析システムに含まれる減算処理部によって、前記第1のパルス波形と前記第2のパルス波形との減算を行って第3のパルス波形を求める第3ステップと、
前記微分処理部によって、前記第3のパルス波形に対して時間微分を行って第4のパルス波形を求める第4ステップと、
前記時系列データ解析システムに含まれる閾値処理部によって、前記第4のパルス波形に対して閾値処理を行い、所定の閾値を超えるパルスのみを選択して、前記第1の時系列データの屈折点とする第5ステップと、
を含む、時系列データ解析方法。
【請求項15】
前記第1ステップで、2回目の時間微分を行って得られる時系列データに対して積分階差を行ってノイズを除去したあとに3回目の時間微分を実行して第2の時系列データとする、請求項14に記載の時系列データ解析方法。
【請求項16】
時系列データの波形図の近似曲線を求めることによって時系列データを解析する時系列データ解析方法であって、
予め指定された始点と終点との間の前記時系列データ上に第1分割点から第n分割点(nは2以上の整数)までを仮に配置するステップと、
第1分割点を始点から第2分割点まで移動させたときに始点と第1分割点とを結ぶ第1直線がその範囲で時系列データと最も良くフィットする点を第1分割点の位置と決定し、
第2分割点を第1分割点から第3分割点まで移動させたときに第1分割点と第2分割点とを結ぶ第2直線がその範囲で時系列データと最も良くフィットする点を第2分割点の位置と決定するステップと、
以下同様の手順を続行し、第n分割点を第n-1分割点から終点まで移動させたときに第n-1分割点と第2分割点とを結ぶ第n直線がその範囲で時系列データと最も良くフィットする点を第n分割点の位置と決定するステップと、
前記始点と、第1分割点と、・・・第n分割点と、終点とをこの順番で直線によって連結して得られる曲線を前記時系列データの近似曲線とするステップと、
を含む時系列データ解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の測定装置や各種のセンサなどから出力される時系列データを解析するための、時系列データ解析システム及び時系列データ解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造業の生産現場では、さまざまな測定装置やセンサによって各種のデータが取得されており、製品の品質の維持・向上のためには、これらのデータを解析することが必要不可欠とされている。このようなデータ解析のための従来の方法としては、これまでのところ、MT法などの波形全体の特徴を捉える方法が主流であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、実際のデータには多数のノイズが含まれており、このようなノイズを多く含むデータに対しては、従来のMT法などでは、波形に含まれる「特定の形」を演算で取り出すことが難しかった。
【0004】
そこで、本発明は、ノイズが多く含まれるデータに対してもより有効にデータの解析を行うことを可能とするデータ解析システム及び時系列データ解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明に係る時系列データ解析システムは、
時系列データに対して時間微分を実行し、必要に応じて時間微分後の時系列データの波形図を表示する時間微分処理手段と、
処理対象となる時系列データに対し、前記時間微分処理部による時間微分処理を実行するときに時間範囲を時間軸上で設定する範囲設定処理部と、
前記範囲設定処理部によって設定された時間範囲において、処理対象となる時系列データがピークとなる位置を検出するピーク位置検出部と、
を備える(第1発明)。
【0006】
上記の第1発明において、前記範囲設定処理部は、時系列データの時間軸上に、前記時間範囲の少なくとも一方の境界をユーザが直接設定することができる(第2発明)。
【0007】
上記の第1発明において、前記範囲設定処理部は、ユーザが縦軸の特定の値を設定し、それに対応する時間軸上の値を前記時間範囲の少なくとも一方の境界とすることができる(第3発明)。
【0008】
上記の第1発明において、前記範囲設定処理部は、ピーク位置検出部によって検出された時系列データの縦軸のピーク値を検索し、当該ピーク値に対応する時間軸上の値を、前記時間範囲の一方の境界とすることができる(第4発明)。
【0009】
上記の第1発明において、さらに、ノイズ除去手段として、時系列データに対して移動平均処理を実行し、必要に応じて移動平均処理後の時系列データの波形図を表示する移動平均処理部、及び、時系列データに対して積分階差処理を実行し、必要に応じて積分階差処理後の時系列データの波形図を表示する積分階差処理部のいずれか一方又は両方を備えることができる(第5発明)。
【0010】
上記の第1発明において、時系列データに対してバンドパスフィルタ処理を実行するバンドパスフィルタ処理部をさらに有することができる(第6発明)。
【0011】
上記の第5発明において、ユーザがユーザデータを入力するユーザ入力処理部をさらに有することができる(第7発明)。
【0012】
上記の第5発明において、外部から時系列データをシステム内に取り込むデータ入力部をさらに有することができる(第8発明)。
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係る時系列データ解析システムは、
時系列データに対して時間微分を実行し、必要に応じて時間微分後の時系列データの波形図を表示する時間微分処理手段と、
時系列データに対して、その値が連続して正である時間の長さをパルス幅、連続して正である時間の長さをパルス高とする第1のパルス波形と、その値が連続して負である時間の長さをパルス幅、連続して負である時間の長さをパルス高とする第2のパルス波形とを求め、必要に応じて第1のパルス波形及び第2のパルス波形の両方又はいずれか一方の波形図を表示するパルス生成部と、
複数の時系列データの間又は複数のパルス波形の間で減算処理を実行し、必要に応じてその減算後の時系列データ又はパルス波形を表示する減算処理部と、
パルス波形の値を予め指定された閾値と比較し、当該閾値より大きいパルス又は小さいパルスを選択する閾値処理部と、
を備える(第9発明)。
【0014】
上記の第9発明において、さらに、ノイズ除去手段として、時系列データに対して移動平均処理を実行し、必要に応じて移動平均処理後の時系列データの波形図を表示する移動平均処理部、及び、時系列データに対して積分階差処理を実行し、必要に応じて積分階差処理後の時系列データの波形図を表示する積分階差処理部のいずれか一方又は両方を備えることができる(第10発明)。
【0015】
上記の第9発明において、時系列データに対してバンドパスフィルタ処理を実行するバンドパスフィルタ処理部をさらに有することができる(第11発明)。
【0016】
上記の第9発明において、ユーザがユーザデータを入力するユーザ入力処理部をさらに有することができる(第12発明)。
【0017】
上記の第9発明において、外部から時系列データをシステム内に取り込むデータ入力部をさらに有することができる(第13発明)。
【0018】
上記の課題を解決するために、時系列データ解析システムに取り込まれた時系列データの屈折点を求める方法は、
前記時系列データ解析システムに含まれる微分処理部によって、取り込まれた第1の時系列データに対して3回の時間微分を行って第2の時系列データを得る第1ステップと、
前記時系列データ解析システムに含まれるパルス生成部によって、前記第2の時系列データが連続して正である時間の長さをパルス幅、連続して正である時間の長さをパルス高とする第1のパルス波形と、前記第4の時系列データが連続して負である時間の長さをパルス幅、連続して負である時間の長さをパルス高とする第2のパルス波形とを求める第2ステップと、
前記時系列データ解析システムに含まれる減算処理部によって、前記第1のパルス波形と前記第2のパルス波形との減算を行って第3のパルス波形を求める第3ステップと、
前記微分処理部によって、前記第3のパルス波形に対して時間微分を行って第4のパルス波形を求める第4ステップと、
前記時系列データ解析システムに含まれる閾値処理部によって、前記第4のパルス波形に対して閾値処理を行い、所定の閾値を超えるパルスのみを選択して、前記第1の時系列データの屈折点とする第5ステップと、
を含む(第14発明)。
【0019】
上記の第14発明において、前記第1ステップで、2回目の時間微分を行って得られる時系列データに対して積分階差を行ってノイズを除去したあとに3回目の時間微分を実行して第2の時系列データとするとすることができる(第15発明)。
【0020】
上記の課題を解決するために、本発明における時系列データ解析方法は、
時系列データの波形図の近似曲線を求めることによって時系列データを解析する時系列データ解析方法であって、
予め指定された始点と終点との間の前記時系列データ上に第1分割点から第n分割点(nは2以上の整数)までを仮に配置するステップと、
第1分割点を始点から第2分割点まで移動させたときに始点と第1分割点とを結ぶ第1直線がその範囲で時系列データと最も良くフィットする点を第1分割点の位置と決定し、
第2分割点を第1分割点から第3分割点まで移動させたときに第1分割点と第2分割点とを結ぶ第2直線がその範囲で時系列データと最も良くフィットする点を第2分割点の位置と決定するステップと、
以下同様の手順を続行し、第n分割点を第n-1分割点から終点まで移動させたときに第n-1分割点と第2分割点とを結ぶ第n直線がその範囲で時系列データと最も良くフィットする点を第n分割点の位置と決定するステップと、
前記始点と、第1分割点と、・・・第n分割点と、終点とをこの順番で直線によって連結して得られる曲線を前記時系列データの近似曲線とするステップと、
を含む(第16発明)。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る時系列データ解析システムの機能ブロックズである。
【
図2】射出成形時に樹脂が流し込まれてから固化するまでの圧力の変化を測定する圧力センサの出力の時系列データである。
【
図3】
図2の波形図の一部を時間方向に引き延ばした波形図である。
【
図4】時系列データに時間微分を行って得られる時系列データの一例を示す波形図である。
【
図5】時系列データに対して移動平均をとって得られる時系列データの一例を示す波形図である。
【
図6A】時系列データに対する積分階差について説明するための図である。
【
図6B】時系列データに対する積分階差について説明するための図である。
【
図7】ゼロを通過する時点を閾値処理で判定する場合の問題点を示す図である。
【
図8】微分によって得られた波形図に基づいてパルスを生成するパルス生成部の動作を示す波形図である。
【
図9】時系列データに対して各種処理を実行して、元の時系列データの屈折点を求める例を示す波形図である。
【
図10】
図9で求めた屈折点に対して閾値処理を実行して所定の閾値以上のパルスを選択することを示した波形図である。
【
図11】ノイズが多く含まれる波形図から正しくピークの時点を求める方法を示す波形図である。
【
図12】元の波形図の一つの屈折点を求める方法の一例を示した波形図である。
【
図13】元の波形図の一つの屈折点を求める方法の一例を示した波形図である。
【
図14】本発明の実施の一形態のシステムで実行できる処理ことをまとめた図である。
【
図15】本発明の実施の一形態のシステムのユーザインターフェイスを示す図である。
【
図16】時系列データ全体に対して階差処理を行った場合の問題点を説明する図である。
【
図17】移動平均の度合いを強めることによってノイズを低減できるとこを説明する図である。
【
図18】移動平均の点数を増やすことによる問題点を説明する図である。
【
図19】オペレータが手動で時間範囲を設定する場合について説明する図である。
【
図20】縦軸の値域に着目して範囲を決める方法について説明する図である。
【
図21】特徴点の特性に基づいて検索する範囲を設定する方法について説明する図である。
【
図22】速度データの最大点に基づいて範囲を設定する方法について説明する図である。
【
図23】複数の時系列データのお互いの関係性に基づいて処理範囲を設定する処理について説明する図である。
【
図24】実際に時系列データに対して処理範囲を設定する具体的な方法について説明する図である。
【
図25】実際に時系列データに対して処理範囲を設定する具体的な方法について説明する図である。
【
図26】実際に時系列データに対して処理範囲を設定する具体的な方法について説明する図である。
【
図27】元の時系列データの近似曲線を求める方法を説明するための図である。
【
図28】元の時系列データの近似曲線を求める方法を説明するための図である。
【
図29】元の時系列データの近似曲線を求める方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の実施の一形態に係る時系列データ解析システムの主要部の機能ブロック図である。
図1に示す各処理部は、パーソナルコンピュータを含む一般のコンピュータにおけるプロセッサ、DRAM等の一時的記憶装置、HDD装置等の非一時的記憶装置、データ入力手段としてのキーボードやマウス、ディスプレイ装置等のハードウェアと、記憶装置から読み出されてプロセッサによって実行されるコンピュータプログラム等のソフトウェアとの組み合わせによって、各種処理が行われる。
【0023】
図1において、データ入力処理部10は、測定装置や各種のセンサなどからの時系列データをシステム内に取り込む処理を行う。ここで、時系列データとは、一定の時間間隔で取り込まれたデータ、あるいは既にシステムに取り込まれた時系列データに対して何らかの処理が行われたデータを指す。ユーザ入力処理部12は、ユーザがキーボードやマウス等から入力したデータをシステム内に取り込む処理を行う。画像出力処理部14は、文字、図形等を含むユーザインターフェイスや、実際の時系列の波形データ等をディスプレイや、必要に応じてプリンタ等の出力装置に出力する処理を行う。
【0024】
バンドパスフィルタ処理部16は、システムに取り込まれた時系列データに対して、あるいは既にシステムに取り込まれて何らかの処理がなされた時系列データに対して、バンドパスフィルタ処理を実行し、必要に応じて得られた波形図を表示する。なお、バンドパスフィルタ処理部16は、時系列データに対して直接バンドパスフィルタ処理を実行するだけでなく、必要に応じて高速フーリエ変換を行い、周波数空間でバンドパスフィルタ処理を行ってから逆高速フーリエ変換を行って時間空間に戻す処理を実行することもできる。移動平均処理部18は、システムに取り込まれた時系列データに対して、あるいは既にシステムに取り込まれて何らかの処理がなされた時系列データに対して、隣接する所定の数の時間位置で平均をとる処理を実行する。この所定の数は、デフォルトで設定されているものをそのまま使用することも、後述するユーザインターフェイスを介してユーザが設定した値を使用することもできる。
【0025】
微分処理部20は、システムに取り込まれた時系列データに対して、あるいは既にシステム内で何らかの処理がなされた時系列データに対して、時間微分演算を実行し、必要に応じて得られた波形図を表示する。時系列データを取り込む時間間隔(サンプリング周波数の逆数)が例えば1000分の1秒であったとすると、この1000分の1秒の間隔で隣り合う2つのデータの値の差を1000分の1秒で割ることによって時間微分が得られる。ただし、この時系列ごとに1つ置き又は2つ置き等時間間隔を広げて微分処理を実行することもできる。このように有限の時間間隔で時間微分をとることを、階差とも呼ぶ。積分階差処理部22は、システムに取り込まれた時系列データに対して、あるいは既にシステム内で何らかの処理がなされた時系列データに対して、積分演算を実行し、さらに得られた積分データに対して、階差処理を実行して、必要に応じて得られた波形図を表示する。
【0026】
減算処理部24は、ある二つの波形データの間で減算処理を実行し、必要に応じて得られた波形図を表示する。パルス生成部26は、時系列データに対して、その値が連続して正である時間の長さをパルス幅、連続して正である時間の長さをパルス高とする第1のパルス波形と、その値が連続して負である時間の長さをパルス幅、連続して負である時間の長さをパルス高とする第2のパルス波形とを求め、必要に応じて第1のパルス波形及び第2のパルス波形の両方又はいずれか一方の波形図を表示する。閾値処理部28は、ユーザが閾値を設定することによって、複数のパスルの中からその閾値を超える、又はその閾値を下回るパルスを選択するという処理を実行し、必要に応じて選択されたパルスを表示する。分割点探索処理部30は、ある時系列データのある始点から終点までの範囲を、その範囲に含まれるいくつかの点(分割点)を直線でつないだ直線からなる曲線で近似するときに、その時系列データの特性を判断するのに十分な近似ができるように、これらの分割点の位置を決めるという処理を実行する。
【0027】
処理範囲設定処理部32は、システムに取り込まれた時系列データ、あるいは既にシステム内で何らかの処理がなされた時系列データの全体を処理対象とするのではなく、ある一定のルールに基づいて時間範囲を設定し、その設定された時間範囲の時系列データだけを処理対象とする処理を実行する。処理範囲設定処理部32によって行う具体的な処理の内容については後に詳述する。
【0028】
図1に示す移動平均処理部18及び積分階差処理部22は、ノイズ除去処理を行うものであり、システムの構成として必ず必要なものというわけではなく、必要に応じてこれらのうちのいずれか一方又は両方を備えるようシステムを構成することができる。また、
図1に示したすべての処理部を備えていなければ本発明が実現できないというものではない。例えば、微分処理部20、範囲設定処理部32、ピーク位置検出部34だけを含んでいれば、時系列データに対する最低限必要な処理を行うシステムを構築することができるし、微分処理部20、パルス生成部26、減算処理部24、閾値処理部28だけを含んでいても、時系列データに対する最低限必要な処理を行うシステムを構築することができる。あとは、実際の処理の必要性に応じて
図1に示すその他の処理部を追加してシステムを構築することができる。
【0029】
図2は、射出成形において、樹脂が型に流し込まれてから固化するまでの間に加わる圧力(縦軸)が時間(横軸)とともにどのように変化するかを示した、実際の圧力センサの出力の時系列データを示している。このようなデータの時系列データ解析システムへの取り込みは、
図1のデータ入力処理部10によって行われる。
【0030】
図2には、信号波形に重ねて4カ所に円10a、10b、10c、10dが示されている。
図2に示す信号波形において、一番左の円10aは、圧力がほぼゼロの状態から急激に増大し始める時点であり、樹脂が型の内部全体に行き渡る直前の瞬間を示している。そして、10aの時点から圧力が急激に増大して円10bのピークに到達する。このピークは、樹脂が型全体に充填され、樹脂の流し込みが停止された時点に対応する。樹脂の流し込みが停止されると圧力は急速に低下するとともに、円10cの時点からしばらく圧力一定の状態が続く。この圧力一定の期間は、樹脂の温度が冷やされている期間に対応する。そして、樹脂が十分に冷やされて固化すると、円10dの時点から再び急速に圧力が低下する。
【0031】
図2に示した型の内部の圧力の時系列的な変化の仕方は、型の大きさや種類、樹脂の組成等によって変わってくる。したがって、例えば
図2の円10a、10b、10c、10dに対応する特徴的な変化が時系列の中で現れる時点(屈折点)を捉えることで、成形品の不良の発生や、射出成形作業の不具合等を知ることができる。すなわち、射出成形作業そのものや成形品の状態を、圧力センサによってモニタすることができる。
【0032】
ところで、射出成形作業や鋼板の切り出し作業を圧力センサや加重センサでモニタする場合には、大量のデータが得られる。このような大量のデータから上述のような特徴的な屈折点を正確に抽出するには、迅速な処理が必要となるので、処理の高速化が求められ、それだけ計算機に対する負荷が増大する。そこで、本実施形態では、以下のようなデータ処理を行う。
【0033】
上述の射出成形の例で、樹脂が型の内部全体に行き渡る瞬間(
図2の円10a)の前後の変化を、時間を大きく引き延ばすと、
図3(a)のようになると考えられる。
図3(a)に円11aで示す、樹脂が型の内部全体に行き渡る時点から圧力が上昇し始める。すなわち、この時点が屈折点となる。屈折点を知りたい場合に、まず
図1に示した微分処理部20により、
図3(a)に示したグラフに対して時間微分をとると、
図3(b)のような時系列データの曲線が得られる。
図3(a)の変化を変位(displacement)と考えれば、
図3(b)の波形は速度(velocity)に対応する。そして
図3(b)の曲線に対し、微分処理部20によりさらに微分をとると、
図3(c)に示す曲線が得られる。これは加速度(acceleration)に対応する。この
図3(c)の曲線において、円11bのような極大点が見つかれば、その時点が、樹脂が型の内部全体に行き渡った瞬間の屈折点であると判断することができる。
【0034】
そこで、
図3(c)と同じ
図4(a)の曲線に対し、微分処理部20によりさらにもう1回時間微分を行って、
図4(b)の曲線を得る。この
図4(b)の曲線がゼロを通過する時点(上向き矢印で示す)が分かれば、この時点が
図4(a)の曲線の極大点、すなわち樹脂が型の内部全体に行き渡った時点であると判断することができる。しかしながら、
図3(a)に示した曲線は、樹脂が型の内部全体に行き渡った場合の圧力の変化を想定した曲線に過ぎず、実際の圧力センサの信号波形はこのような滑らかなグラフにはならず、これにかなりのノイズが載った状態で出力される。
【0035】
図5は、ノイズが多く含まれる時系列データから極大点を求めようとした場合の問題点を示している。
図5(a)は、
図4(a)に対応する、極大点を求めようとする信号波形の一例を示しており、
図4(a)の曲線と比較するとかなりのノイズが含まれている。そこで、まず、
図1の移動平均処理部18により移動平均をとる。この
図5(a)の信号波形に対して、49点移動平均をとったものが
図5(b)の波形であり、99点移動平均をとったものが
図5(c)の波形であり、199点移動平均をとったものが
図5(d)の波形である。ここで、複数点移動平均は、階差すなわち微分を行ったことに相当するが、一般には、移動平均の点数が多くなればそれだけノイズは減少する。
【0036】
図5の(b)、(c)、(d)の波形は、異なる点数で移動平均をとったものであるが、(b)、(c)、(d)の波形がゼロを通過するそれぞれの時点t
b、t
c、t
dは一致してはおらず、前後に多少ずれている。このことは、データの処理の仕方によって、すなわちこの場合だと、何点で移動平均処理を行うかによって、得られた波形がゼロを通過する時点が変わってしまうことを示している。したがって、上記
図4に示した、加速度に対して微分(階差)をとるという方法では、ノイズが含まれる出力信号から、トレンドが変わる時点を正確に求めることはできない。
【0037】
そこで、上記の問題を改善するために、本実施形態では、積分階差という処理を実行する。すなわち、ゼロを通過する時点を求めたい波形に対して、ある等間隔の時間で積分を行い、この積分値に対して差分をとる。具体的には、
という計算を実行する。
【0038】
上記の積分階差の式について、
図6A及び
図6Bを参照しながら説明する。まず、
図6A及び
図6Bの(a)の波形(
図5(a)の波形と同じである)において、いま注目している時点をiとし、積分範囲をwとすると、上記の式の右辺第1項は、波形aの値をiからi+wまで積算したもの、すなわちiからi+wまでのaの曲線の下側の面積(ハッチングで示す)に対応する。同様に右辺第2項は、波形aの値をi-wからiまで積算したもの、すなわちi-wからiまでの曲線の下側の面積(梨子地で示す)に対応する。したがって、積分階差は、iの右側の面積とiの左側の面積との差を表している。ここで、wが99であれば99点積分階差、wが199であれば199点積分階差という。
【0039】
図6A及び
図6Bにおいて、(b)の波形は、(a)の波形aに対して、99点積分階差を実行して得られた波形図を示している。そして、
図6Aでは、積分階差の値がゼロとなる場合に対応し、
図6Bでは、右辺第1項と第2の差がほぼ極小となっている場合に対応している。
図6A及び
図6Bにおける(b)の波形を見ると分かるように、元の波形の特徴を大きく失うことなく、極大点、すなわちゼロを通過する時点を特定するのに支障がない範囲でノイズが除去されていることが分かる。
図6Aの(a)の波形を見ると、iの時点よりもやや左側にこの波形が実際にピークとなる時点がある。人がこのピークを見れば、このピークがノイズに起因するものだと判断することができるが、このような判断をコンピュータに実行させようとすることは非常に難しい。これに対して、上記の積分階差処理を実行して得られる
図6Aの(b)の波形をみると、この波形がゼロを通過する時点が、
図6Aの(a)の波形曲線の全体的な極大点と一致していることが分かる。
【0040】
次に、
図6Aの(b)に示すような波形がゼロを通過する時点をコンピュータによって判定する具体的な方法について説明する。
図6Aの(b)に示す波形も、実際には飛び飛びの時間(横軸)に対してプロットし、これを曲線で結んだ時系列のデータである。
図7(a)、(b)は、上の波形図が、
図6Aの(b)に対応するものであり、下の波形図は上の波形図を時間微分したものである。したがって、下の波形図がゼロになる時点が、上の波形図がゼロを通過する時点となる。しかし下の波形図も上の波形図と同様に飛び飛びの時間に対してプロットされるものである。このように時間解像度が有限であるため、
図7(a)、(b)の下に示す時系列データに完全なゼロが含まれるとは稀である。
【0041】
データがゼロとなる点を探索する場合には、
図7(a)、(b)の下の波形図に示すように、縦軸のゼロを中心とした一定幅のしきい値(横軸の時間軸を中心とする一定幅の帯状の部分)を設定し、この範囲に含まれるデータをゼロと判定することが考えられる。
図7(a)、(b)の下の図で、閾値の範囲にあるデータについて、分かりやすいように縦軸に平行な線で示している。この場合、閾値の幅が(a)のように狭いと、曲線が大きく変化する範囲に該当するデータが存在しない場合があったり、また、閾値の幅が(b)のように広いと、該当するデータが多数存在して本来見つけたいデータを見つけることができないといった事態が生じる。このように、アプリケーションごとに適切な閾値を設定することは容易ではなく、効率も悪いという問題がある。別の方法として、時系列データを1点ずつ探索し、符号がプラスからマイナスへ、あるいはマイナスからプラスへ変わる時点を見つける方法も考えられる。しかしながら、この方法では処理がスカラー処理となるため、効率が悪い。
【0042】
そこで本実施形態では、次のようにして波形図がゼロを通過する時点を見いだす。
図8(a)は、
図7(a)、(b)の上の波形図に対応し、
図8(b)は、
図7(a)、(b)の下の波形図に対応するもので、
図8(b)は
図8(a)の波形を時間微分した波形である。この
図8(b)の波形について、
図1に示したパルス生成部26によって、
図8(c)、(d)のようなパルス波形を導く。
図8(c)のパルス波形は、
図8(b)の波形において、連続して正である時間の長さをパルス幅、連続して正である時間の長さをパルス高として導いたものである。例えば、
図8(b)の中央の大きく変化する部分でT
1の時間幅に対応する
図8(c)の部分にそのT
1の値に対応する高さのパルスが示されている。一方、
図8(d)のパルス波形は、
図8(b)の波形において、連続して負である時間の長さをパルス幅、連続して負である時間の長さをパルス高として導いたものである。例えば、
図8(b)の中央の大きく変化する部分でT
2の時間幅に対応する
図8(d)の部分にそのT
2の値に対応する高さのパルスが示されている。
図8の(c)と(d)は、縦軸の値は別として、時間軸で見ると互い違いになっている。
【0043】
次に、
図9に示すように(
図9(a)~(d)は、
図8(a)~(d)に対応する)、
図1の減算処理部24によって、
図9(d)と
図9(c)を減算して差分をとると、
図9(e)の波形図が得られ、さらに
図9(e)の波形図に対して時間微分を行うと、
図9(f)に示すような、正から負へ切り換わった時点と負から正に切り換わった時点のみにパルスが残る波形図が得られる。そしてこのパルスが正か負かによって、正から負に切り換わったのか、負から正に切り換わったのかが分かる。
図9(f)の波形図の各ピークは、極大点の時間的な位置に対応し、各ピークの高さは各階差が同じ符号で連続する長さを反映している。なお、ここまでの処理はすべてベクトル処理であり、データを一つひとつ検索する必要がないため、計算処理の負荷が大幅に軽減される。
【0044】
さらに、
図9(f)の波形図に対して、前述の積分階差を実行すると、
図10(h)の波形図が得られる(
図10の(a)は、型の内部の圧力を検出する圧力センサの出力波形であり、(b)~(g)は、
図9の(a)~(f)に対応する)。ここで、
図1の閾値処理部26により、ある一定の閾値を設定しておいて、これを超えるパルスのみを選択すれば、この時点が
図10(a)の時系列データの屈折点、すなわちトレンドが変化した時点であることが分かる。
【0045】
次に、ノイズの含まれるデータから実際のピークとなる時点を探索する例について説明する。
図11において、(a)は実際の型の内部の圧力を検出する圧力センサの出力データであり、このかなりのノイズが含まれるデータから圧力の最大点を求める。
図11において、横軸は時間である。この
図11(a)の出力データに対して、高速フーリエ変換(FFT)を実行し、得られたスペクトルに対してバンドパスフィルタで不要な成分を除去し、さら逆FFTを実行して得られたのが、
図11(b)に示す波形である。なお、
図11(b)において、「0-40Hz」は、40Hzより大きい周波数の波形をカットして0~40Hzの周波数の波形だけを取り出すことを意味する。
【0046】
そして、
図11(b)の波形に対して、9点の移動平均をとったものが
図11(c)に示した波形である。この
図11(c)の波形の最大点が、圧力の最大時点と考えることができる。ところで、
図11(a)の波形と
図11(c)の波形を比較すると、
図11(a)の実際のピークの位置は、
図11(c)のピークの位置よりも左側にずれている。これは、ノイズの影響によるものと考えられる。このようにノイズによってピークの位置がずれるような場合であっても、
図11の(a)→(b)→(c)の処理を行うことによって、ノイズの影響を排除して圧力が最大となる時点を求めることができる。この
図11の(a)→(b)→(c)の処理を行う部分は、機能的には
図1に示すピーク位置検出部34に対応する。
【0047】
次に、
図2の圧力センサの出力波形の円10cに当たる時点、すなわち樹脂が充填され圧力がピークになった直後に、圧力が急激に低下したあとにほぼ一定の安定な期間が始まる時点を見いだす処理について説明する。
図12において、(a)は
図2に示した圧力センサの出力波形を、横軸の時間軸の方向に伸ばした状態を示している。
図12の(a)の波形に対して、
図1のバンドパスフィルタ処理部16によって、
図11の(b)と同様のバンドパスフィルタ処理を施して得られたのが、
図12の(b)に示す波形である。
【0048】
そして、(b)の波形に対して、
図1の移動平均処理部18によって9点の移動平均をとって得られたのが(c)に示す波形である。そしてさらに、(c)の波形に対して微分処理部20によって時間微分を行って得られたのが(d)に示す波形であり、これにさらに時間微分を行って得られたのが(e)に示す波形である。この(e)に示す波形には、横軸の値が600のやや手前にピークが見られるが、(a)の波形と対照させると、この時点が、安定な期間の開始する時点であることが分かる。
【0049】
続いて、
図2の圧力センサの出力波形の円10dに当たる時点、すなわち樹脂が十分に冷やされて固化して圧力が低下する時点を見いだす処理について説明する。
図13において、(a)は
図2に示した圧力センサの出力波形を、横軸の時間軸の方向に伸ばした状態を示しており、(a)の円で示した部分が、樹脂が十分に冷やされて固化して圧力が低下する時点に該当する。
図13(a)の波形に対して、
図1のバンドパスフィルタ処理部16によって、
図11の(b)と同様のバンドパスフィルタ処理を施して得られたのが、
図13の(b)に示す波形である。
【0050】
そして、
図13の(b)の波形に対して、
図1の移動平均処理部18によって9点の移動平均をとって得られたのが(c)に示す波形である。そしてさらに、(c)の波形に対して微分処理部20によって時間微分を行って得られたのが(d)に示す波形である。ここでは、この(d)に示す波形から、あるほぼ一定の正の値から一時的に負になる時点が、
図13(a)の円で示した部分に対応することが分かる。なお、この例では、(d)の波形に対してさらに時間微分を行って得られる(e)の波形、すなわち加速度に対応する波形では、下降の動きが緩やかであるため、この時点をうまく検出することは難しい。
【0051】
これまで説明してきたように、
図1に示した各処理部により、時系列データに対して各種の処理をさまざまに適用し実行することによって、時系列データの中の屈折点、すなわちトレンドが変化する点を高い精度で見いだすことができる。
図14は、本実施形態のシステムでできることをまとめた図である。データ処理としてできる基本的な処理は、バンドパスフィルタ処理、移動平均処理、階差積分処理、微分処理の4つで、これらを組み合わせることによって各種のデータ処理が可能となる。そして、処理がなされたデータに対して、最大値、最大値の位置(時間)、最小値の位置(時間)、閾値処理、積分のうちの1つ又はいくつかを求めることによって屈折点、すなわちトレンドの変化点を特定することができる。
【0052】
図15は、
図1に示した時系列データ解析システムのユーザインターフェイスの一例を示している。このようなユーザインターフェイスを利用することにより、ユーザが実際に時系列データに対する処理を実行する際の利便性が向上する。このユーザインターフェイスを介して、任意の時系列データに対して上述の各処理を実行し、その処理結果を直ちに視覚的に見ることができる。この画面の左上の「データソース」欄には、処理対象となる時系列データの名称が記載され、このすぐ右側の「Raw data」欄に、圧力センサや加重センサの出力データなどの、処理の対象となるコンピュータに入力された実際の時系列データが表示される。
【0053】
さらに、その右側には「FFT spectrum」欄が設けられ、ここには「Raw data」欄に表示されている波形図に対して高速フーリエ変換(FFT)が行われたFFTスペクトルが表示される。このFFT処理は、「Raw data」欄に表示される入力データすべてに対して実行することもできるし、ユーザがFFT処理を実行するかどうかを選択するようにもできる。なお、この「FFT spectrum」欄では、バンドパスの設計が可能である。
図15の「FFT spectrum」欄の波形を見ると、横軸の50Hz前後にピークが集中していることが分かる。そこで、ここではバンドパスの上限として25Hzが指定されており(25Hzより高い周波数部分のグレーの網かけがそのことを示している)、25Hz以下の波形だけが抽出されている。
【0054】
また、
図15において、「データソース」欄の下には、サンプリングレートを選択する欄が設けられている。このサンプリングデータは、時系列データの隣り合う個々のデータの時間間隔に対応するものであり、ここでは「100Hz(100分の1秒間隔)」、「1000Hz(1000分の1秒間隔)」、「100kHz(10万分の1秒間隔)」のうちのいずれかを選択することができるようになっている(
図15では1000Hzが選択されている)。その下の「検出モード」欄では、時系列データに対して変位(displacement)、速度(velocity)、加速度(acceleration)のいずれかを選択して表示させることができる。さらにその下の「バンドパス下限(Hz)」及び「バンドパス上限(Hz)」では、バンドパス処理の上限値及び下限値を、画面上でグラフィック的に設定できるようになっている。
【0055】
その下の「移動平均範囲」欄は、移動平均をとる範囲、すなわち平均をとる連続する時系列データの数を設定するものであり、1から19までの範囲で設定できる。その下の「center」欄は、移動平均の中央を選択するスイッチである。その下の「屈折点検出」欄は、屈折点検出を実行するかどうかをチェック欄にチェックするかしないかで設定する。その下の「ピーク方向」欄は、ピークを検出する場合に、上方向のピーク及び下方向のピークのいずれか又は両方を検出することを選択する欄である。「ピーク幅」欄は、ピークを検出する場合に、ここで設定した幅以下の幅のピークだけ検出するように設定する欄である。「ピーク閾値(最大ピークに対する割合)」は、ここで設定した閾値を超える値を有するもののみをピークとして検出するように設定する欄である。そして、
図15の右下で最も広い領域には、これまでの各欄で設定した内容に基づいて入力された時系列データを処理して得られる波形図が示されている。
【0056】
以上の説明から理解されるように、時系列データが特徴的な変化を示す屈折点は、変位、速度、加速度のいずれかのピークとして見いだすことができる。そして、変位から速度を求める方法、及び、速度から加速度を求める実際の方法は、実装上は時間微分、すなわち階差をとることによる。しかしながら、入力された時系列データの全体に対して階差をとる処理を行うと、その時系列データにおける長期のトレンドが失われることになる。長期のトレンドが失われることは、短期の変動、すなわちノイズを強調することになって、特徴点の抽出の妨げとなる。
図16はこのことを説明する図であり、(a)は、ある荷重の変化を示す時系列データ、(b)は、(a)の時系列データを時間微分して得られる速度データ、(c)は(b)の速度データを時間微分して得られた加速度データを示している。
図16の(c)に示すように、(a)の時系列データ全体に対して時間微分を求める処理を連続して行うと、ノイズが強調されて、(a)に円で示したトレンドが変化した特徴点を見つけることが困難となる。
【0057】
また、
図17は、移動平均の度合いを強めることによってノイズを低減できるとこを示している。
図17の(a)は、速度及び加速度に対して5点移動平均をとったもの、(b)は9点移動平均をとったもの、(c)は19点移動平均をとったものを示している。これらの図で、図の下に示した上向きの矢印は、特徴点と判定された時点を示しているが、(a)では、荷重が低下し始める特徴点ではなくそれよりも右側にずれた時点を特徴点として抽出している。(b)では、(a)に比べてノイズは低減されており、特徴点を検出できているが、たまたま検出できた可能性が高く、堅牢性に問題がありうる。(c)では、ノイズはかなり除去されており、ノイズはさらに低減されて特徴件が検出されている。
【0058】
しかしながら、移動平均の点数を増やすと、
図18に示すような問題が生じうる。
図18において、実線が荷重の変動を示す実際の曲線を、点線は元の荷重のデータに対して19点移動平均を取った曲線を、一点鎖線は元の荷重のデータに対して39点移動平均を取った曲線をそれぞれ示している。
図18において、例えば荷重のかかり始めを示す曲線の立ち上がりを知りたいときに、39点移動平均を取ってしまうと、実際の立ち上がりの時点から左側(時間の早い側)に大きくずれてします。このように、移動平均を取る点数を増やしてゆくと、元の曲線から大きく波形が変化してしまい、単純に移動平均の点数を増やしてゆくだけでは正確な特徴点が難しくなる。
【0059】
図19の一番上のグラフは、射出成形において、樹脂が型に流し込まれてから固化するまでの間に加わる圧力(縦軸)が時間(横軸)とともにどのように変化するかを示した圧力センサの出力の時系列データのグラフを示しており、2番目のグラフは一番上の時系列データに対し、一回の微分を行って速度を求めた時系列データのグラフであり、一番下のグラフは、さらにもう一回微分して加速度を求めた時系列データを示している。一番上のグラフでは、横軸の値が250の辺り(t
1で示す)で縦軸の値が急激に上昇し、300を少し過ぎた辺り(t
2で示す)でピークに達して低下し始め、400を少し超えた辺り(t
3で示す)で低下速度が急速に減少してからしばらくほぼ一定の値が続いている。このように、横軸が200から500までの間に大きく3つのトレンドの変化が認められ、それぞれに意味が異なっている。
【0060】
圧力センサからの出力が、
図19の一番上のグラフのような挙動を示すことを分かっていれば、例えばt
3の特徴点を抽出しようとするオペレータは、横軸が400を少し超えた辺りの前後の適当な範囲に限定して、
図3から
図13に示したような処理を実行するようにすれば、特徴点の抽出処理を効率化することができるとともに、精度も向上する。そこで、本実施形態では、
図19のような時系列データに対して特徴点の抽出処理を実行するときに、
図19の時系列データを表示させた状態で、横軸が400を少し超えた辺りの前後にグレーの時間幅を手動で直接設定することによって、その設定範囲についてのみ
図3から
図13に示したような処理を実行するようシステムに指示することができる。
【0061】
図20は、横軸の時間軸ではなく、縦軸の値域に着目して範囲を決める方法を示している。
図20に示すグラフは、
図19に示したグラフと同じであるが、2番目に示した速度のグラフにおいて、縦軸の値がマイナス0.1以下になる範囲を設定し、この設定範囲についてのみ
図3から
図13に示したような処理を実行するようシステムに指示する。このようにすることによって、横軸が300前後になる加速度が大きく変化する部分を、特徴点の探索処理から排除することができる。このように、縦軸の値に基づいて閾値を指定し、それよりも元の値が小さい範囲又は大きい範囲を指定することで、本当に見つけたい特徴点を確実に見つけることができる。
【0062】
図21は、
図19、
図20と同じグラフであり、ここでは、
図19のt
3に対応する時点の前後で加速度が最大となる時点を見つけようとしている。そこで、時刻t
3の前後のある範囲(ここでは150ポイントの範囲)に限定し
図3から
図13に示したような処理を実行するようシステムに指示する。このようにして特徴点の特性に基づいて検索する範囲を設定することによっても、特徴点の抽出処理を効率化することができ、精度も向上する。
【0063】
図22は、
図19~
図21に示したセンサセンサの時間的変化を示すグラフのうち、加速度最小点と速度最大点の間を検索範囲とし、この範囲で加速度が最大となる点を検索するたに、
図3から
図13に示したような処理を実行するようシステムに指示する例である。
【0064】
次に、複数の時系列データのお互いの関係性に基づいて処理範囲を設定する処理について説明する。
図23の上のグラフには、同時に取り込まれた3つの時系列データが示されている。これらは、射出成形の型の3カ所に設けられた圧力センサからの出力が、樹脂が型に重点される前後で圧力が時間的にどのように変化するかを示したグラフである。3つの圧力センサから同時に3チャネルのデータが発生し、システムに入力される。
図23の上に示すグラフから分かるように、同じ一つの型の内部でも、場所によって圧力の変化が同一ではないが、全体としての変化の傾向は類似していることが分かる。この3つセンサからのデータの関係性をみて、範囲を設定することについて説明する。
【0065】
図23の上に示した3チャネルの時系列データから、圧力上昇が開始される点を見つける場合を考える。
図23の下に示すグラフは、上に示す3つのデータについての分散(3つの時系列データの各時点における平均値とそれぞれのデータとの差分をとり、さらに各差分を2乗して合計したもの)を求めたものである。
図23の下のグラフを見ると、樹脂が充填される前はほとんど変化がない。圧力センサが設けられた位置は互いに異なるため、圧力が上昇し始める時刻が異なるため、3つの圧力が上昇を始める直前に分散がなり最大となり、そしていったん樹脂が充填されると、圧力センサの出力は再び類似した挙動に戻る。そこで、
図23の下に示す例では、分散が最初にピークとなる時点の前後の-50~+10ポイントの範囲を検索対象として設定すれば、3つの圧力センサの立ち上がり点を検索範囲とすることができる。
【0066】
次に、
図24~26を参照して、DSLを用いて、実際に時系列データに対して処理範囲を設定する具体的な方法について説明する。
図24は、下部に
図19に示した時系列データのグラフを示し、上部に、下の時系列データに対してオペレータが処理範囲を指定するためのデータ入力のためのDSLの一例を示している。この例では、オペレータが、図の下部の時系列データを見ながら「HORIZONTAL_LIMIT = 」の右側の括弧内に「380」及び「450」と入力した状態を示している。この操作により、時系列データには、横軸(時間軸)が350から450までの範囲にグレーの帯が表示され、この範囲が処理範囲として指定される。このグレーの帯の幅を見て適切でないと判断したときは、「HORIZONTAL_LIMIT = 」の右側の括弧内の数字を変更して適切な範囲を再度設定することができる。なお、「ROLLING_MEAN = 5」は、移動平均の点数が「5」であることを示しており、「VERTICAL_LIMIT = [None, None]」は、垂直方向の範囲指定をしないことを示しており、「TARGET = IDXMIN(ACC)」は、加速度(ACC)が最小になる位置を検索することを指示したことを示している
【0067】
図25は、
図20に示した時系列データに対して、縦軸の値域に着目してDSLを用いて処理範囲を設定する具体的な方法を示している。
図25では、「HORIZONTAL_LIMIT = [None, None]」となっており、横軸について範囲設定は行わないが、代わりに「VERTIAL_LIMIT = [None, -0.1,VCT]」と設定されて、2番目の速度の縦軸の値が-0.1以下の範囲について検索することを指示したこと示している。なお、「ROLLING_MEAN = 5」は、移動平均の点数が「5」であることを示しており、「TARGET = IDXMAN(ACC)」は、加速度が最大にある位置を検索することを指示したことを示している。
【0068】
図26は、の下部には、
図22に示した時系列データに対して、加速度最大点を検索するための、DSLを用いた処理範囲の設定の仕方を示している。
図26において、「HORIZONTAL_LIMIT = [IDXMAX(DST), IDXMAX(DST)+150]」とあるのは、元波形(DST)の値域が最大となる点を検索範囲の左端とし、元波形の縦軸の値が+150である点を検索範囲の右端として設定したことを示している。また、「TARGET = IDXMAX(ACC)」とあるのは、加速度が最大となる位置を検索することを指示したことを示している。
【0069】
以上のように、オペレータが時系列データの特性を知っている場合には、その特性に合わせて容易に範囲を設定して、時系列データの全体ではなく設定された一部の範囲だけをシステム検索させることができる。このようにすることによって、検索処理効率及び検索精度を向上させることができ、合わせて
図18に関連して説明した問題点を回避することができる。
【0070】
次に、時系列データに対し少ない数の直線を分割点で連結して時系列データにより良くフィットする近似曲線を求める実施形態につい手説明する。
図27は、プレス加工の際に使用する歪みゲージというセンサからの出力データの波形を示している。
図27の出力データの波形に矢印x
1、x
2で示した2つのピークの間の波形の様子を見ることによって、プレス加工がうまくいったか、あるいは何か不都合が生じたか等を知ることができることが経験的に知られている。そこで、プレス加工がうまくいったかどうかを自動的に判定するために、2つのピークであるx
1とx
2の間をなるべく少ない数で分割し、その分割点を直線でつなぐことによって最も良く出力データの波形にフィットする近似曲線を求め、この近似曲線に基づいて上記のような判断を行う。そのために、本実施形態では、
図1に示した時系列データ解析システムの分割点探索処理部30により、以下のような処理を実行する。
【0071】
図28に示した波形は、
図27に示した波形と同じではないが、大体の傾向は一致しているので、
図28を用いて、分割点探索処理について説明する。
図28において、始点x
1と終点x
2という2つのピークの間にp
1、p
2、p
3という3つの分割点を波形データの上に仮に置き、その間を直線でつなぐ。分割点p
1、p
2、p
3の仮の位置は、分割点探索処理部24により、例えばx
1とx
2の間に均等に配置することもできるが、それ以外の仮の配置をユーザが選択して設定することもできる。
【0072】
p
1、p
2、p
3の最初の位置が決まれば、x
1とp
1とをつなぐ直線a、p
1とp
2とをつなぐ直線b、p
2とp
3とをつなぐ直線c、p
3とx
2とをつなぐ直線dという4つの直線a、b、c、dが得られる。分割点p
1、p
2、p
3はあくまでも仮に置かれた点なので、この時点の4つの直線a、b、c、dからなる曲線が、
図27の出力データの波形を最も良く表している可能性は低い。しかしながら、分割点p
1、p
2、p
3の数がこのように少数であっても、これらをx
1、x
2の2点間のすべての点で任意に移動させて最小二乗法により直線で近似する回帰演算は、アルゴリズム自体は短いが、複数の分割点を組み合わせることで、計算量は大幅に増大する。
【0073】
そこで、3つの分割点p
1、p
2、p
3を移動させて、
図27の出力データの波形を最も良く表す4つの曲線a、b、c、dを求めることを考える。
図29は、3つの分割点p
1、p
2、p
3の位置を最終的にどのように決めるかを説明するための図である。まず、
図29(a)では、x
1と、仮に決められたp
2の位置を固定する。
図29(a)の横軸の目盛りでは、x
1は210の辺り、p
2は240の辺りに位置している。この間でp
1を決められた間隔、例えば横軸の目盛りで1ずつ移動させ、各点において、x
1とp
1とを結ぶ直線aが、対応する範囲の出力データの波形と最も良くフィットする点としてp
1の位置を決定する。
【0074】
ここで、最もよくフィットする点とは、例えば直線aと出力データ波形とを最小二乗法により近似する回帰演算を行って、回帰の誤差が最小となるp1の点として決定する。ここまでの処理では、横軸の210から240までの30点で計算が必要となるが、分割点p1は1つだけなので、ループ処理は1回で済み、コンピュータの負荷はそれほど大きくはない。
【0075】
次に、
図29(b)に示すように、決定したp
1から、仮に決められたp
3までの間でp
2を1ずつ移動させ、各点においてp
1とp
2とを結ぶ直線bが、対応する範囲の出力データの波形と最も良くフィットする点としてp
2の位置を決定する。さらに、
図29(c)に示すように、決定したp
2からx
2までの間でp
3を1ずつ移動させ、各点においてp
2とp
3とを結ぶ直線cが、対応する範囲の出力データの波形と最も良くフィットする点としてp
3の位置を決定する。以上のようにして決定したp
1、p
2、p
3を結ぶ直線a、b、c、dによって得られる近似曲線は、出力データの波形と比較してかなりよく近似された曲線となっている。これにより、直線a、b、c、dによって得られる近似曲線に基づいて、プレス加工がうまくいったかどうかを判定することができる。しかも、上で説明した処理は、移動させる点が1つだけなので、計算負荷はそれほど高くなく、通常のパーソナルコンピュータでも十分に実行可能である。
【0076】
なお、
図28及び
図29に示した処理を一回行っただけでは十分にフィットする曲線が得られない場合には、このような処理を複数回行って、回帰誤差が最も小さくなる回の曲線を採用することもできる。そのような場合であっても、一回の処理にかかるコンピュータに対する負荷及び要する時間が大きくないので、全体としてコンピュータに対する負荷及び要する時間を削減することができる。
【0077】
例えば、射出成形では金型内部に圧力センサを設けて、実際に射出成形を行う際に内部の圧力を圧力センサで検知し、その出力データの波形を得ることができる。金型内部の圧力は、液体状の樹脂を注入している段階では高まるが、樹脂の注入が終わり、内部の樹脂が冷えて固まるに従って圧力は徐々に低下し、最終的に金型から成形品を取り出す段階では内部の圧力は急減する。射出成形の工程が適正に行われたかどうかを、このような出力センサの出力データの波形を見ることによって確認することができる。このような場合に、本実施形態のシステムを活用することができる。
【0078】
上述の例では、分割点の数はp
1、p
2、p
3の3点だったが、このような圧力変化の特性が予め分かっていれば、それに基づいて、分割点の数を増減させてその用途に合う適切な数とすることができる。また、本実施形態を適用できるデータは、時系列のデータであれば、どのようなものにも適用できる。例えば、
図2に示した圧力センサの出力データも時系列データであることら、第2実施形態における適切な数の分割点を使ってフィットする曲線を求め、それに基づいて鋼板の切断作業が適切に行われたかどうかを判定する、という用途に本実施形態のシステムを用いることができる。
【符号の説明】
【0079】
10 データ入力部
12 ユーザ入力処理部
14 画像出力処理部
16 バンドパスフィルタ処理部
18 移動平均処理部
20 微分処理部
22 積分階差処理
24 減算処理部
26 パルス生成部
28 閾値処理部
30 分割点探索処理部
32 範囲設定処理部