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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019835
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】新規口腔ケア用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/368 20060101AFI20240206BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20240206BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 31/222 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 36/05 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 36/58 20060101ALI20240206BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20240206BHJP
【FI】
A61K8/368
A61Q11/00
A61K8/60
A61K8/99
A61P1/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/222
A61K31/7048
A61K36/05
A61K36/58
A61K8/9789
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122560
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000119472
【氏名又は名称】一丸ファルコス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】竹内 良太
【テーマコード(参考)】
4C083
4C084
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC691
4C083AC741
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD411
4C083AD531
4C083BB48
4C083CC41
4C083DD23
4C083DD27
4C084AA22
4C084MA57
4C084NA05
4C084ZA671
4C084ZB352
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA11
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA28
4C086MA34
4C086MA57
4C086NA05
4C088AA15
4C088AB42
4C088AC01
4C088AC05
4C088BA08
4C088BA10
4C088BA11
4C088BA14
4C088MA08
4C088MA17
4C088MA28
4C088MA34
4C088MA57
4C088NA05
4C088ZA67
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB54
4C206KA01
4C206KA17
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA48
4C206MA54
4C206MA77
4C206NA05
4C206ZA67
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】新たに口腔ケア用製品及び口腔ケア用製品に含有される素材を生み出す。
【解決手段】(A)ロスマリン酸と、(B)ルテオニングルクロニドとの含有比率が、重量比にて、(A):(B)=1:0.2~1.5である、口腔ケア用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ロスマリン酸と、(B)ルテオニングルクロニドとの含有比率が、重量比にて、(A):(B)=1:0.2~1.5である、口腔ケア用組成物。
【請求項2】
ミル科藻類抽出物を有効成分として更に含有する、請求項1に記載の口腔ケア用組成物。
【請求項3】
ニーム抽出物を有効成分として更に含有する、請求項1又は請求項2に記載の口腔ケア用組成物。
【請求項4】
さらに抗菌成分を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の口腔ケア用組成物。
【請求項5】
前記抗菌成分が、塩化セチルピリジニウム(CPC)、クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリウム、グルコン酸クロルヘキシジン、プロタミン、ドデシルジアミノエチルグリシン、トリクロサン、3-メチル-4-イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、チモール、カルバクロール、ファルネソール、ビサボロール、シネオール、ヒノキチオール、ラウロイルサルコシンナトリウム、l-メントールからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項4に記載の口腔ケア用組成物。
【請求項6】
前記抗菌成分が、前記組成物の全量に対して0.0001~1質量%含有される、請求項4又は請求項5に記載の口腔ケア用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト等において、新規口腔ケア用組成物などに関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、口腔内の病原性細菌の1種である歯周病原因菌が口腔内に定着することにより始まる炎症性疾患である。口腔清掃が不十分であると歯垢(口腔細菌とその代謝物)が歯肉と歯の境目に付着後、定着し、増殖する。この異物に反応して好中球やマクロファージが浸潤し、炎症が起こる。早めの段階でブラッシング等により口腔清掃ができればこの炎症は改善される。しかし、歯垢が蓄積した状態を放置すると炎症は拡大し、歯周ポケットが形成されると、そこに蓄積された歯垢はブラッシング等では除去し難くなる。そのため、歯周病の予防・改善に有効な手段として歯垢の抑制、即ち、口腔内の病原性細菌を殺菌・静菌することが有用であると言われている。
【0003】
近年、歯垢はバイオフィルムとして捉えられ、口腔バイオフィルム(歯垢)中の細菌は、浮遊性細菌と比較すると細菌のタンパク質発現パターンや薬剤耐性が大きく異なり、浮遊性細菌に有効であった薬剤がバイオフィルム構成細菌に対して有効でないことが明らかになってきた。
【0004】
これまでに殺菌手段として数多くの抗菌剤、例えば塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン等のカチオン性抗菌剤や、トリクロサン等の非イオン性抗菌剤が、口腔用組成物に配合され有効であることが知られている。しかしながら、これら抗菌剤は、バイオフィルム細菌の薬剤耐性メカニズムにより、これだけでは十分なバイオフィルム抑制効果が得られない。これら抗菌剤の殺菌力を向上させるべく、他の成分との併用による改善技術が提案されているが、いずれもバイオフィルムへの薬剤浸透性の低さなどにより顕著な効果が得られていない。
【0005】
これに対し、特許文献1には、Galβ1-3GalNAc及びGlcNAcの末端構造を有する糖鎖を認識する、マッシュルーム由来のレクチンABA等には、口腔内のプラーク又はバイオフィルムに対する口腔内細菌の付着及び増殖を抑制する効果があることが開示されている。また、ミル科藻類の藻体抽出物中に含まれ、GalNAcと競合する糖鎖に結合するレクチンが口腔内細菌、特に、ミュータンス菌の付着と増殖を抑制して虫歯を予防しうることが報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5558362号公報
【特許文献2】特許第5925431号公報
【特許文献3】特許第6786193号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】加齢と歯周組織、下野正基、老年歯科医学、1990年4巻1号、108~112ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
マウスウォッシュなど口腔ケア用製品に抗菌成分が含有される口腔ケア用製品を使用する場合、例えば、下痢などの副作用が生じる可能性があり、これらの副作用は通常抗菌薬の服用を中止すると消失するものである。加えて、抗菌成分は元々体内に定着している病原性のない細菌を減少させ、他の病原体が感染する機会を与える可能性もある。さらに、抗菌成分に耐性のある細菌が発生することも懸念されるため、抗菌成分を用いることの代わり(抗菌成分の含有量を低くすることも含め)となるような口腔ケア用製品及びこのような製品に含有させ得る素材を提供することが引き続き強く望まれている。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、新たに口腔ケア用製品及び口腔ケア用製品に含有される素材を生み出すことなどである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、具体的には以下の実施形態である。
[1](A)ロスマリン酸と、(B)ルテオニングルクロニドとの含有比率が、重量比にて、(A):(B)=1:0.2~1.5である、口腔ケア用組成物。
[2]ミル科藻類抽出物を有効成分として更に含有する、[1]に記載の口腔ケア用組成物。ミル科藻類抽出物に含まれる分子量5000以上のタンパク質画分を有効成分として含有する口腔ケア用組成物。このタンパク質画分は、分子量が5000以上で50000未満であることが好ましく、当該分子量が5000以上で30000未満であることがさらに好ましい。あるいは、分子量が50000以上の高分子画分に存在するタンパク質であってもよい。
[3]ニーム抽出物を有効成分として更に含有する、[1]又は[2]に記載の口腔ケア用組成物。
[4]さらに抗菌成分を含む、[1]から[3]のいずれかに記載の口腔ケア用組成物。
[5]抗菌成分が、塩化セチルピリジニウム(CPC)、クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリウム、グルコン酸クロルヘキシジン、プロタミン、ドデシルジアミノエチルグリシン、トリクロサン、3-メチル-4-イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、チモール、カルバクロール、ファルネソール、ビサボロール、シネオール、ヒノキチオール、ラウロイルサルコシンナトリウム、l-メントールからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、[4]に記載の口腔ケア用組成物。
[6]抗菌成分が、組成物の全量に対して0.0001~1質量%含有される[4]又は[5]に記載の口腔ケア用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の口腔ケア用組成物によれば、抗菌成分を用いることなしに又はその濃度を低くしても、口腔内に浮遊する細菌の歯への付着を抑制することなどができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について、説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
(1.口腔ケア用組成物)
本明細書において、「口腔ケア用組成物」は、例えば以下である。
・通常の使用方法において、特定の治療剤の全身投与を目的として意図的に飲み込むのではなく、むしろ、口腔内活動の目的で実質的にすべての歯面及び/又は口腔組織に接触するのに十分な時間、口腔内に保持される製品(口腔ケア用製品)。
・当該製品に含有される素材。当該素材に、ミル科藻類抽出物が含有される。
【0014】
口腔ケア用製品は、マウスウォッシュ、口内洗浄剤、歯磨き剤、練り歯磨き、ジェル、又は溶液などの形態であってもよい。口腔ケア用製品はまた、口腔表面への直接塗布若しくは付着のためのフロス、ストリップ、又はフィルムに組み込まれてもよく、又は歯ブラシ若しくは回転塗布剤などのデバイス若しくはアプリケータに組み込まれてもよい。かかるアプリケータは、使い捨て又は複数回使用用であってもよい。
【0015】
本発明において、例えば、ペパーミント抽出物とミル科藻類抽出物とを含む組成物、ペパーミント抽出物とニーム抽出物とを含む組成物、も挙げられる。
【0016】
(2.ペパーミント、ロスマリン酸、ルテオニングルクロニド)
本発明で用いられるロスマリン酸及びルテオニングルクロニドは、例えばペパーミント抽出物に含有されている(特許文献3)。
【0017】
ペパーミント(別名:セイヨウハッカ、コショウハッカ)は、シソ科ハッカ属植物:ペパーミント(Mentha piperita L.)である。「ペパーミント」の抽出物を製造する際には、材料として、例えば、根、根茎、葉、茎、花全草、又はこれらの混合物を用いるが、有効成分も葉に多くあると考えられることから、材料として葉を用いるのが好ましいと考えられる。
【0018】
ペパーミントの抽出物は、例えば、材料を生のまま又は乾燥したものを粉砕後搾取して作製、材料を生のまま又は乾燥したものを粉砕後溶媒で抽出して作製、する。例えば、以下製造例により、ペパーミントの抽出物を製造する。なお、以下実施例で用いるペパーミントの抽出物は、以下製造例に従い、製造された。
以下実施例で用いられるペパーミントの抽出物中には、ロスマリン酸403.55ppm、ルテオニングルクロニド166.35ppmが含有され、(A)ロスマリン酸と(B)ルテオニングルクロニドとの含有比率が、重量比にて、(A):(B)=1:0.41、であった。
【0019】
本発明の組成物に含有されるペパーミント抽出物は、例えば、所望の効果(美白効果など)を発揮するために、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.5%以上含有される。また、本発明の組成物に含有されるペパーミント抽出物は、例えば、所望の毒性などを考慮して、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下含有される。
【0020】
本発明の組成物に含有されるペパーミント抽出物が1%の場合、組成物における(A)ロスマリン酸と(B)ルテオニングルクロニドの含有量を算出した結果を以下表1に記載する。
【0021】
【表1】
【0022】
本発明の組成物に含有されるペパーミント抽出物が0.5%の場合、組成物における(A)ロスマリン酸と(B)ルテオニングルクロニドの含有量を算出した結果を以下表2に記載する。
【0023】
【表2】
【0024】
(2-1.ペパーミントの抽出物の製造例)
ペパーミントの葉を粉砕し、粉砕物を作製する。この粉砕物100gを50%エタノール溶液2kgに浸漬する。約10℃~約30℃の環境で、5~10日間、この浸漬を行う。この浸漬を経て得られる溶液を、カラム(HP-20)にて分画して、ロスマリン酸とルテオニングルクロニドとが含有されている画分を取り出す。この取り出す画分を、更にカラム(HP-20)にて精製する。
精製後の溶液は、好ましくは「(A)ロスマリン酸と、(B)ルテオニングルクロニドとの含有比率が、重量比にて、(A):(B)=1:0.2~1.5((A)が1の際に、(B)が0.2以上1.5以下)」となっている。
なお、下記実施例で用いるペパーミントの抽出物は、(A)ロスマリン酸と、(B)ルテオニングルクロニドとの含有比率が、重量比にて、(A):(B)=1:0.46である。
【0025】
(2-2.ロスマリン酸)
ロスマリン酸(Rosmaric acid)は、ポリフェノール類で、エタノールに可溶性である。本発明の組成物に含有されるロスマリン酸は、例えば、所望の効果(美白効果など)を発揮するために、好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは0.2ppm以上、更に好ましくは0.5ppm以上含有される。また、本発明の組成物に含有されるロスマリン酸は、例えば、所望の毒性などを考慮して、好ましくは20ppm以下、より好ましくは15ppm以下、更に好ましくは10ppm以下含有される。
【0026】
(2-3.ルテオニングルクロニド)
ルテオリングルクロニド(Luteolin glucuronide)は、フラボノイドで、例えば、ルテオリン7-グルクロニドや、ルテオリン3′‐グルクロニドが挙げられる。本発明の組成物に含有されるルテオリングルクロニドは例えば、所望の効果(美白効果など)を発揮するために、好ましくは0.08ppm以上、より好ましくは0.16ppm以上、更に好ましくは0.40ppm以上含有される。また、本発明の組成物に含有されるペパーミント抽出物は、例えば、所望の毒性などを考慮して、好ましくは16ppm以下、より好ましくは12ppm以下、更に好ましくは8ppm以下含有される。
【0027】
(2-4.ロスマリン酸とルテオニングルクノニドとの含有比率)
本発明の組成物は、活性を発揮させる観点で、好ましくは、(A)ロスマリン酸と、(B)ルテオニングルクロニドとの含有比率が、重量比にて、(A):(B)=1:0.2~1.5((A)が1の際に、(B)が0.2以上1.5以下)、より好ましくは(A):(B)=1:0.2~1.2((A)が1の際に、(B)が0.2以上1.2以下)、より好ましくは(A):(B)=1:0.25~1.18((A)が1の際に、(B)が0.25以上1.18以下)、更に好ましくは(A):(B)=1:0.3~1.16((A)が1の際に、(B)が0.3以上1.16以下)である。
【0028】
(2-5.ペパーミントの抽出物の製造の際に用いる抽出溶媒)
抽出溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコール或いは含水低級アルコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,3,5-ペンタントリオール、グリセリン、ポリエチレングリコール(分子量100~10万)等の多価アルコール或いは含水多価アルコール、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、キシレン、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、フェノール、トルエン等の各種有機溶媒や、適宜規定度を調製した酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸等)やアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等)の中から選ばれる1種もしくは2種以上の混液が挙げられるが、溶媒を置換するケースも想定できるようにする観点で、エタノールを用いるのが好ましい。
【0029】
(2-6.その他)
本発明で用いるペパーミントの抽出物は、溶媒抽出後、更に適宜精製操作を施すことも可能である。精製操作は、例えば、酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、有機酸等)又はアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等)添加による分解、微生物による発酵又は代謝変換、イオン交換樹脂や活性炭、ケイ藻土等による成分吸着、種々の分離モード(イオン交換、親水性吸着、疎水性吸着、サイズ排除、配位子交換、アフィニティー等)を有するクロマトグラフィーを用いた分画、濾紙やメンブランフィルター、限外濾過膜等を用いた濾過、加圧又は減圧、加温又は冷却、乾燥、pH調整、脱臭、脱色、長時間の静置保管等であり、これらを任意に選択し、組合わせた処理を行うことも可能である。
【0030】
(3.ミル科藻類抽出物)
本発明の一実施形態で用いられるミル科藻類抽出物(以下、「本発明の抽出物」と称する。)は、緑藻綱(Chlorophyceae)、ミル目(Codiales、最近の分類ではハネモ目(Bryopsidalesとされる場合がある。)のミル科(Codiaceae)に属する藻類から抽出されたものである。この藻類は、ミル(Codium fragile)、イセモミル(Codium tomentosum)、タマミル(Codium minus)、コブシミル(Codium spongiosum)、クロミル(Codium subtubulosum)、モツレミル(Codium intricatum)、ハイミル(Codium adhaerens)、ナンバンハイミル(Codium arabicum)、ネザシミル(Codium coactum)、ヒゲミル(Codium barbatum)、サキブトミル(Codium contractum)、ヒラミル(Codium latum)及びナガミル(Codium cylindricum)を含むが、これらに限られない、ミル属(Codium)の生物種に属する場合がある。
【0031】
本発明の抽出物を回収する方法は、口腔細菌と唾液の生体高分子との結合を抑制又は阻害する活性を実質的に損なわないことを条件として、いかなる方法であってもかまわない。
【0032】
本発明の抽出物は、藻体のいかなる組織から採取されてもよい。藻体は、洗浄後、ホモジナイザー等で破砕された後か、あるいは凍結乾燥で粉末状にされるか、粉砕機で粉末状にされた後に抽出処理を施される場合がある。抽出に用いる水溶液には、生理食塩水のようにNaClその他の塩類を含む水溶液と、アセトンその他の水溶性有機溶媒及び/又はアルコールと水との混合液と、精製水又は脱イオン水とを含むが、これらに限定されない、その他の当業者に周知の水性溶媒を用いることができる。ここで、アルコールは、エタノール、エチレングリコール、ブチレングリコール、グリセリンを含むが、これらに限定されない。水性溶媒は酸性又はアルカリ性のpHを有する場合がある。水性溶媒のpHを調整するためには、アジピン酸、クエン酸、グルコン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸塩類のカリウム又はナトリウム塩を含むが、これらに限られない。またpHを一定に保つために、トリス塩酸バッファー、Hepesバッファー、リン酸バッファー、酢酸バッファー、クエン酸バッファー、グリシン-塩酸バッファーを含むが、これらに限られない。抽出方法は、浸漬抽出方法、加圧抽出方法、超臨界又は亜超臨界抽出方法などから適宜選択するか又はこれらを組み合わせて用いることができる。抽出条件は、口腔細菌と唾液の生体高分子との結合を抑制又は阻害する活性を実質的に損なわないことを条件として、いかなる条件であってもかまわないが、抽出時間は10分間から24時間が好ましく、抽出温度は、4℃以上であってもよく、室温以上であることが好ましく、15℃以上であることがより好ましい。
【0033】
続いて、上記本発明の抽出物をそのままで、あるいは精製若しくは濃縮することにより、口腔ケア用組成物としての有効成分を得ることができる。好ましい実施形態において、この有効成分は、分子量5000以上のタンパク質画分中に存在する。より好ましくは分子量5000以上50000未満の画分、さらに好ましくは分子量5000以上30000未満の画分、である。
【0034】
ミル科藻類抽出物の精製及び濃縮は、遠心分離、塩析、透析、減圧濃縮、限外濾過、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等を含むが、これらに限られない技術を、単独で、あるいは、いずれか2種以上を組み合わせて行うことができる。精製又は濃縮後は、必要に応じて、藻類抽出物を減圧乾燥してもかまわないし、溶媒で希釈して用いてもかまわない。
【0035】
本発明の有効成分の候補の1つは、例えば、GalNAcと競合する糖鎖に結合するレクチンである、とも考えられる(特許文献2参照)。しかし、この有効成分は、末端にGalNAcを有する全ての糖鎖と結合するとは限らない。また、末端から2番目ないし3番目の糖残基が特定の構造の糖鎖とだけ結合するが、GalNAc存在下では結合が阻害される可能性がある。
【0036】
本明細書においてレクチンとは、動物の免疫系に関与する抗体、T細胞レセプター、Toll様受容体その他の免疫タンパク質以外のタンパク質であって、糖鎖に特異的に結合する能力を有するタンパク質をいう。通常、レクチンは赤血球その他の動物細胞を凝集することができる。堀貫治(化学と生物、32:586-594、(1994))によると、ミル科藻類由来のレクチンはGalNacと競合する糖鎖に結合するという共通点がある。
いかなる理論にも拘束されないが、本発明の有効成分は、唾液の生体高分子に含まれる多糖類によって形成される膜の表面に存在するGalNAcに結合し、これに対する口腔細菌の付着を阻害すると考えられる。
【0037】
本発明の有効成分は、口腔細菌と唾液の生体高分子との結合を抑制又は阻害する活性を実質的に損なわないことを条件として、いかなる濃度であってもかまわないが、好ましくはミル科藻類抽出物換算で上記口腔ケア用組成物の全量に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。また、その上限は、5質量%以下であり、4質量%以下が好ましく、3質量%以下がさらに好ましく、2質量%以下がさらになお好ましい。
【0038】
本発明の有効成分に含まれるタンパク質濃度は、口腔細菌と唾液の生体高分子との結合を抑制又は阻害する活性を実質的に損なわないことを条件として、いかなる濃度であってもかまわないが、0.5μg/mL以上が好ましく、5μg/mL以上がより好ましい。
【0039】
(4.ニーム抽出物)
本発明で用いられるニーム抽出物について記載する。ニームは、センダン科の植物:ニーム (Melia azadirachta L.(=Azadirachta indica Juss.))であり、別名では、例えば、インドセンダン、マルゴーサ、と言われ、その他、同属種のAzadirachta excelsa 等も挙げられる。当該抽出物の作製で用いられるニームの部位は、花、花穂、果皮、莢実、葉、枝葉、樹皮、根茎、根皮、根、種子、地上部又は全草であるが、好ましくは葉である。ニームは、羽状複葉を有する常緑の高木、インドのデカン高原からミャンマーにかけての乾燥林に分布し、インドやマレーシア地域mアフリカ地帯で広く栽培されている。インドでは皮膚病に使われ、セッケンの製造にも利用できる。樹皮は薬用になり、熱病や強壮剤にされている。葉も薬用にされ、本の間に挟んでおくと虫害を防ぐとされている。
【0040】
当該ニーム抽出物を作製する際に、ニームの所定部位に用いる抽出溶媒は、供する製品の使用目的、種類、あるいは後に行う加工処理等を考慮した上で選択すれば良いが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコール或いは含水低級アルコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,3,5-ペンタントリオール、グリセリン、ポリエチレングリコール(分子量100~10万)等の多価アルコールあるいは含水多価アルコール、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、キシレン、ベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、フェノール、トルエン等の各種有機溶媒や、適宜規定度を調製した酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸等)やアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等)、などから選ばれる1種の液体又は2種以上を含有する液体である。また、適宜搾取抽出を行っても良い。
【0041】
抽出方法については、その溶媒の温度や原料に対する溶媒の重量比率、又は抽出時間についても、種々の原料及び使用する溶媒に対しそれぞれを任意に設定することができる。溶媒の温度としては、例えば、-4℃から100℃の範囲で任意に設定できる。原料に対する溶媒の重量比率も、例えば原料:溶媒が、4:1~1:100の範囲内で任意に設定することができる。
【0042】
本発明では、溶媒抽出後、更に適宜精製操作を施すことが可能で、精製操作としては、酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、有機酸等)又はアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等)添加による分解、微生物による発酵又は代謝変換、イオン交換樹脂や活性炭、ケイ藻土等による成分吸着、種々の分離モード(イオン交換、親水性吸着、疎水性吸着、サイズ排除、配位子交換、アフィニティー等)を有するクロマトグラフィーを用いた分画、濾紙やメンブランフィルター、限外濾過膜等を用いた濾過、加圧又は減圧、加温又は冷却、乾燥、pH調整、脱臭、脱色、長時間の静置保管等が例示でき、これらを任意に選択し組合わせた処理を行うことが可能である。
【0043】
本発明で使用するニーム抽出物の形態としては、液状、固形状、粉末状、ペースト状、ゲル状等いずれの形状でも良く、最終的な製品を構成する上で最適な形状を任意に選択することができる。
【0044】
(5.抗菌成分)
本発明の口腔ケア用組成物は所定量の抗菌成分を含むことが好ましい。抗菌成分は、抗菌作用のある成分である。抗菌作用は、例えば、滅菌作用、殺菌作用、消毒作用、静菌作用、制菌作用、除菌作用、防腐作用、防菌作用、防カビ作用である。抗菌剤は、抗菌成分が含有される剤である。抗菌剤としては、例えば、殺菌剤、抗菌剤、防カビ剤、抗カビ剤、防腐剤、消臭剤、殺虫剤が挙げられ、中でも、殺菌剤、抗菌剤、防カビ剤、抗カビ剤等の微生物制御剤や消臭剤を好適に用いることができる。本発明の口腔ケア用組成物に含有される抗菌成分としては、上記の作用を有する公知の化合物を適宜選択して使用すればよい。
【0045】
公知の抗菌剤としては、例えば、有機合成系抗菌剤、天然物系抗菌剤、無機物系抗菌剤などが挙げられる。当該抗菌剤に含有される抗菌成分は、例えば、塩化セチルピリジニウム(CPC)、クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリウム、グルコン酸クロルヘキシジン、プロタミン、ドデシルジアミノエチルグリシン、トリクロサン、3-メチル-4-イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、チモール、カルバクロール、ファルネソール、ビサボロール、シネオール、ヒノキチオール、ラウロイルサルコシンナトリウム、l-メントールなど、である。これらの抗菌剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これら抗菌成分の使用濃度は、使用目的と抗菌活性を考慮して、抗菌成分ごとに適宜決定されるが、例えばカチオン系抗菌剤の場合は0.00001~0.5質量%の範囲で、好ましくは0.0001~0.01質量%の範囲で用いることが出来る。酸性抗菌剤を用いる場合は0.01~0.5質量%の範囲で用いられる。炭素数5~6のポリオールの場合は0.1~5.0質量%の範囲が好ましく、1.0~4.0質量%がより好ましい。
【0046】
薬用歯みがき類に関する効能又は効果をうたう口腔用の外用剤についての製造販売承認基準(薬食発0325第37号、平成27年3月25日、厚生労働省医薬食品局長)には、効能又は効果ごとに、使用できる有効成分の種類、規格及び分量が規定されている。例えば、歯周炎(歯槽膿漏)の予防に使用できる抗菌成分として、塩酸クロルヘキシジンの配合濃度は0.001~0.05質量%であることが記載されている。また、歯肉炎の予防に使用できる抗菌成分としては、塩化セチルピリジニウムの配合濃度は0.01~0.05成分%であり、塩化ベンザルコニウムの配合濃度は0.01成分%であり、イソプロピルメチルフェノールの配合濃度は0.02~0.1成分%であることが記載されている(製造販売承認基準(薬食発0325第37号、平成27年3月25日、厚生労働省医薬食品局長)別表1参照)。本発明の口腔ケア用組成物は、これらの抗菌剤について記載された所定の規格及び分量にて含むことにより、口腔細菌と唾液の生体高分子との結合を抑制又は阻害する作用が増強されるとともに、口腔細菌に対する殺菌又は静菌作用も同時に発揮することが可能となる。あるいは、ここに記載された分量(濃度)以下の低減された配合量にて上記抗菌剤を含んでもよい。この場合においても、抗菌剤の副作用を低減しながら、口腔細菌と唾液の生体高分子との結合を抑制又は阻害する作用を増強することが可能である。
【0047】
例えば、ミル科藻類抽出物と抗菌剤との相乗効果については、いかなる理論にも拘束されるものではないが、イオン性の抗菌剤の方が非イオン性の抗菌剤よりも相乗効果が大きいことから、本発明の有効成分と抗菌剤とが何らかの形で複合体を形成しレクチン活性をより高めていると考えられる。本発明の有効成分が唾液由来の生体高分子、特に、ガラクトースを末端に含む糖鎖と口腔内細菌との相互作用を阻害すると考えられるところ、抗菌成分が共存することによって口腔内細菌の細胞膜構造が変化し、膜表面に存在する、口腔内細菌由来のレクチン様物質の結合力が低下することによる可能性もある。
いずれにしても、きわめて低濃度の抗菌成分存在下において、ミル科藻類抽出物が有する口腔細菌と唾液の生体高分子との結合抑制又は阻害活性が増強されることから、微生物が形成するバイオフィルムによって引き起こされる様々な問題を解決する手段として利用できる可能性がある。例えば、医療分野においては、カテーテルの表面に形成されたバイオフィルムが重篤な感染症を引き起こす原因になることが指摘されているが、ミル科藻類抽出物と抗菌成分とを含む組成物を用いて医療機器を処理することで、医療機器表面におけるバイオフィルムの生成を抑制することも可能である。
【0048】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。なお、以下の実施例において、各種成分の添加量を示す数値の単位%は、質量%(w/v%)を意味する。
【実施例0049】
以下、本発明の実施例について、実験例を用いて説明する。以下、実験例で挙げる実験で用いた実験材料は次の通りである。
・正常ヒト成人口腔繊維芽細胞:クラボウ、KF-4309
・FibroLifeTM S2 Comp kit:正常ヒト皮膚繊維芽細胞増殖用低血清液体培地を含むキット、クラボウ、LFC-LL0011
・MEMα培地:イーグル基礎培地を改良した培地、富士フイルム和光純薬、135-15175
・Cell Counting Kit-8:Dojindo、CK04
・ASA-PMg:L-アスコルビン酸りん酸エステルマグネシウム塩n水和物、富士フイルム和光純薬、013-12061、所定細胞への添加によりコラーゲン産生効果が確認されており実験におけるポジティブコントロールとして用いられる物
・Procollagen Type I C-peptide (PIP) EIA Kit:タカラバイオ、タカラバイオのコードがMK101
・ATP:Sigma-Aldrich、A2383、Adenosine 5′-triphosphate disodium salt hydrate 99%
【0050】
・ペパーミント抽出液:ペパーミント抽出物の実施例。セイヨウハッカ Mentha × piperita L.(Labiatae)の葉から水及びエタノールを加えて抽出して得られるエキスを濃縮し、1,3-ブチレングリコール溶液を加えて溶解したもの。ロスマリン酸403.55ppm、ルテオニングルクロニド166.35ppmが含有され、(A)ロスマリン酸と(B)ルテオニングルクロニドとの含有比率が、重量比にて、(A):(B)=1:0.41。
・ミル抽出液:ミル科藻類抽出物の実施例。褐藻類 Phaeophyceae、紅藻類Rhodophyta 及び緑藻類 Chlorophyta の全藻に1,3-ブチレングリコール溶液を加えて抽出し、ろ過してろ液を得て、当該ろ液を精製後、調製し(有効成分として含まれるタンパク質の分子量が5000以上)、1,2-ペンタンジオール及び1,3-ブチレングリコールを加え、ろ過した液。
・ニーム葉抽出液:ニーム抽出物の実施例。Melia azadirachta L.(Meliaceae) の葉を加熱処理した後、所定濃度の1,3-ブチレングリコール溶液を加えて抽出し、所定の条件でろ過した液。製品例:ニーフリーフリキッド(一丸ファルコス)。
【0051】
[実験例1]正常ヒト成人口腔繊維芽細胞の増殖試験
当該細胞において、ミル抽出液及びニーム葉抽出液を添加した場合の細胞増殖の程度を確認した。
【0052】
(実験方法)
FibroLife S2 Comp kitを使用して当該細胞の前培養を行った。当該Kitの培地にL-Glutamin(最終濃度2mM)及びFBS(最終濃度10%)になるように添加し、さらに、当該キットに含まれる成分(FGF-b、Insulin、Ascorbic Acid、Hydrocortisone)を当該キットの培地に全量添加して、前培養用の培地を作製した。当該前培養用の培地に、2×10個の正常ヒト成人口腔繊維芽細胞を96well plateに播種し、5%CO、37℃の条件で24時間培養(前培養)した。
【0053】
当該培養(前培養)後、所定の方法で当該細胞(正常ヒト成人口腔繊維芽細胞の)を回収した。当該回収後、当該回収した細胞を、本培養培地にて、5%CO、37℃の条件で48時間培養した。本培養培地は、FBS(最終濃度0.25%)を添加したMEMα培地である。
【0054】
当該48時間の培養後、各群において、培地を表3及び表4に示す培地(培養条件)に置換して、5%CO、37℃の条件で72時間培養した。
【0055】
Cell Counting Kit-8(Dojindo)を用いて、当該72時間培養後の各群の細胞数の測定を行った。当該細胞数の測定のためのサンプルに当該kit-8を入れた。当該入れた後、5%CO、37℃の条件で2時間培養した。当該培養後、「Cell Counting Kit-8(Dojindo)」の説明書に沿って450nmの吸光度で、各群の発色を確認した。各群(n=4)で各群の発色の確認を行った。更に、各群の当該発色の確認した結果の平均値を求めて、更にコントロール群の値を100.0として、各群の数値はコントロール群と比較しての相対値を求めた。表3及び表4では、当該相対値を示す。
【0056】
(実験結果)
当該試験の結果を表3及び表4に示す。表3及び表4中の*印は、Dunnett検定において、コントロール群(数値を100.0)との比較による有意差(p<0.05)を示す。ニーム葉の添加及びミル抽出液の添加により、コントロール群に比べ、有意な口腔繊維芽細胞の増殖効果が確認された。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
[実験例2]正常ヒト成人口腔繊維芽細胞におけるCollagen type-1 産生促進効果の確認試験
当該細胞において、ペパーミント抽出液を添加した場合のCollagen type-1 産生促進効果を確認した。
【0060】
(実験方法)
FibroLife S2 Comp kitを使用して当該細胞の前培養を行った。当該Kitの培地にL-Glutamin(最終濃度2mM)及びFBS(最終濃度10%)になるように添加し、さらに、当該キットに含まれる成分(FGF-b、Insulin、Ascorbic Acid、Hydrocortisone)を当該キットの培地に全量添加して、前培養用の培地を作製した。当該前培養用の培地に、2×10個の正常ヒト成人口腔繊維芽細胞を24well plateに播種し、5%CO、37℃の条件で72時間培養(前培養、実験1と異なりこの実験2ではこの前培養の過程で細胞がサブコンフルエントにした状態)した。
【0061】
当該培養(前培養)後、所定の方法で当該細胞(正常ヒト成人口腔繊維芽細胞の)を回収した。当該回収後、当該回収した細胞を、本培養培地にて、5%CO、37℃の条件で6時間培養した。本培養培地は、FBS(最終濃度0.25%)を添加したMEMα培地である。
【0062】
当該48時間の培養後、各群において、培地を表5に示す培地(培養条件)に置換して、5%CO、37℃の条件で72時間培養した。
【0063】
当該72時間培養後の各群の細胞培養液の上清を回収し、Procollagen Type I C-peptide (PIP) EIA Kitを用いて、プロコラーゲンI型C末端ペプチド(PIP)の量を測定した。当該測定により、Collagen type-1の検出を行った。この測定後、各群(n=3)の平均値を求めて、更にコントロール群の値を100.0として、各群の数値はコントロール群と比較しての相対値を求めた。表5では、当該相対値を示す。
【0064】
なお、Collagen type-1は、例えば、ヒト等の歯茎の組織を維持する因子の一つである。当該歯茎の菲薄化、歯周炎による影響、などを予防等するために、Collagen type-1は必要な因子と考えられている(非特許文献1)。
【0065】
当該Collagen type-1の検出と並行して、当該Cell Counting Kit-8(Dojindo)を用いて、当該72時間培養後の各群の細胞数の測定を行った。当該細胞数の測定のためのサンプルに当該kit-8を入れた。当該入れた後、5%CO、37℃の条件で2時間培養した。当該培養後、「Cell Counting Kit-8(Dojindo)」の説明書に沿って450nmの吸光度で、各群の発色を確認した。各群(n=3)で各群の発色の確認を行った。各群の当該発色の確認した結果の平均値を求めて、更にコントロール群の値を100.0として、各群の数値はコントロール群と比較しての相対値を求めた。表5では、当該相対値を示す。
【0066】
(実験結果)
当該試験の結果を表5に示す。表5中の*印は、Dunnett検定において、コントロール群(数値を100.0)との比較による有意差(p<0.05)を示す。ペパーミント抽出液の添加により、コントロール群に比べ、有意にCollagen type-1の検出が確認された。また、ペパーミント抽出液の添加によっても、コントロール群と比べ、細胞数の増殖に変化がなく、細胞毒性も確認されなかった。
【0067】
【表5】
【0068】
[実験例3]正常ヒト成人口腔線維芽細胞における細胞外ATP刺激によるCollagen type-1 産生効果の確認試験
当該細胞において、細胞外ATPを添加した環境(強制的に皮膚(歯茎など)で老化を起こすシミュレーション、特許文献3に記載)の下で、ペパーミント抽出液を添加した場合のCollagen type-1 産生促進効果を確認した。
【0069】
(実験方法)
FibroLife S2 Comp kitを使用して当該細胞の前培養を行った。当該Kitの培地にL-Glutamin(最終濃度2mM)及びFBS(最終濃度10%)になるように添加し、さらに、当該キットに含まれる成分(FGF-b、Insulin、Ascorbic Acid、Hydrocortisone)を当該キットの培地に全量添加して、前培養用の培地を作製した。当該前培養用の培地に、2×10個の正常ヒト成人口腔繊維芽細胞を24well plateに播種し、5%CO、37℃の条件で72時間培養(前培養、実験1と異なりこの実験3ではこの前培養の過程で細胞がサブコンフルエントにした状態)した。
【0070】
当該培養(前培養)後、所定の方法で当該細胞(正常ヒト成人口腔繊維芽細胞の)を回収した。当該回収後、当該回収した細胞を、本培養培地にて、5%CO、37℃の条件で6時間培養した。本培養培地は、FBS(最終濃度0.25%)を添加したMEMα培地である。
【0071】
当該48時間の培養後、各群において、培地を表6に示す培地(培養条件)に置換して、5%CO、37℃の条件で72時間培養した。
【0072】
当該72時間培養後の各群の細胞培養液の上清を回収し、Procollagen Type I C-peptide (PIP) EIA Kitを用いて、プロコラーゲンI型C末端ペプチド(PIP)の量を測定した。当該測定により、Collagen type-1の検出を行った。この測定後、各群(n=3)の平均値を求めて、更にコントロール群の値を100.0として、各群の数値はコントロール群と比較しての相対値を求めた。表4では、当該相対値を示す。
【0073】
なお、Collagen type-1は、例えば、ヒト等の歯茎の組織を維持する因子の一つである。当該歯茎の菲薄化、歯周炎による影響、などを予防等するために、Collagen type-1は必要な因子と考えられている(非特許文献1)。
【0074】
当該Collagen type-1の検出と並行して、当該Cell Counting Kit-8(Dojindo)を用いて、当該72時間培養後の各群の細胞数の測定を行った。当該細胞数の測定のためのサンプルに当該kit-8を入れた。当該入れた後、5%CO、37℃の条件で2時間培養した。当該培養後、「Cell Counting Kit-8(Dojindo)」の説明書に沿って450nmの吸光度で、各群の発色を確認した。各群(n=3)で各群の発色の確認を行った。各群の当該発色の確認した結果の平均値を求めて、更にコントロール群の値を100.0として、各群の数値はコントロール群と比較しての相対値を求めた。表6では、当該相対値を示す。
【0075】
(実験結果)
当該試験の結果を表6に示す。表6中の†印は、Dunnett検定において、ネガティブコントロール群との比較による有意差(p<0.05)を示す。ペパーミント抽出液の添加により、コントロール群などに比べ、Collagen type-1の検出が確認された。また、ペパーミント抽出液の添加によっても、コントロール群と比べ、細胞数の増殖に変化がなく、細胞毒性も確認されなかった。
【0076】
【表6】
【0077】
[実験例4]正常ヒト成人口腔繊維芽細胞の増殖試験
当該細胞において、ペパーミント抽出液を添加した場合の細胞増殖の程度を確認した。
【0078】
(実験方法)
FibroLife S2 Comp kitを使用して当該細胞の前培養を行った。当該Kitの培地にL-Glutamin(最終濃度2mM)及びFBS(最終濃度10%)になるように添加し、さらに、当該キットに含まれる成分(FGF-b、Insulin、Ascorbic Acid、Hydrocortisone)を当該キットの培地に全量添加して、前培養用の培地を作製した。当該前培養用の培地に、2×10個の正常ヒト成人口腔繊維芽細胞を96well plateに播種し、5%CO、37℃の条件で24時間培養(前培養)した。
【0079】
当該培養(前培養)後、所定の方法で当該細胞(正常ヒト成人口腔繊維芽細胞の)を回収した。当該回収後、当該回収した細胞を、本培養培地にて、5%CO、37℃の条件で48時間培養した。本培養培地は、FBS(最終濃度0.25%)を添加したMEMα培地である。
【0080】
当該48時間の培養後、各群において、培地を表7に示す培地(培養条件)に置換して、5%CO、37℃の条件で72時間培養した。
【0081】
Cell Counting Kit-8(Dojindo)を用いて、当該72時間培養後の各群の細胞数の測定を行った。当該細胞数の測定のためのサンプルに当該kit-8を入れた。当該入れた後、5%CO、37℃の条件で2時間培養した。当該培養後、「Cell Counting Kit-8(Dojindo)」の説明書に沿って450nmの吸光度で、各群の発色を確認した。各群(n=4)で各群の発色の確認を行った。更に、各群の当該発色の確認した結果の平均値を求めて、更にコントロール群の値を100.0として、各群の数値はコントロール群と比較しての相対値を求めた。表7では、当該相対値を示す。
【0082】
(実験結果)
当該試験の結果を表7に示す。表7中の*印は、Dunnett検定において、コントロール群(数値を100.0)との比較による有意差(p<0.05)を示す。ペパーミント抽出液の添加により、コントロール群に比べ、有意な口腔繊維芽細胞の増殖効果が確認された。
【0083】
【表7】
【0084】
[実験例5]正常ヒト成人口腔繊維芽細胞の増殖試験
当該細胞において、ペパーミント抽出液とミル抽出液とを添加した場合の細胞増殖の程度を確認した。
【0085】
(実験方法)
FibroLife S2 Comp kitを使用して当該細胞の前培養を行った。当該Kitの培地にL-Glutamin(最終濃度2mM)及びFBS(最終濃度10%)になるように添加し、さらに、当該キットに含まれる成分(FGF-b、Insulin、Ascorbic Acid、Hydrocortisone)を当該キットの培地に全量添加して、前培養用の培地を作製した。当該前培養用の培地に、2×10個の正常ヒト成人口腔繊維芽細胞を96well plateに播種し、5%CO、37℃の条件で24時間培養(前培養)した。
【0086】
当該培養(前培養)後、所定の方法で当該細胞(正常ヒト成人口腔繊維芽細胞の)を回収した。当該回収後、当該回収した細胞を、本培養培地にて、5%CO、37℃の条件で48時間培養した。本培養培地は、FBS(最終濃度0.25%)を添加したMEMα培地である。
【0087】
当該48時間の培養後、各群において、培地を表8に示す培地(培養条件)に置換して、5%CO、37℃の条件で72時間培養した。
【0088】
Cell Counting Kit-8(Dojindo)を用いて、当該72時間培養後の各群の細胞数の測定を行った。当該細胞数の測定のためのサンプルに当該kit-8を入れた。当該入れた後、5%CO、37℃の条件で2時間培養した。当該培養後、「Cell Counting Kit-8(Dojindo)」の説明書に沿って450nmの吸光度で、各群の発色を確認した。各群(n=4)で各群の発色の確認を行った。更に、各群の当該発色の確認した結果の平均値を求めて、更にコントロール群の値を100.0として、各群の数値はコントロール群と比較しての相対値を求めた。表8では、当該相対値を示す。
【0089】
(実験結果)
当該試験の結果を表8に示す。表8中の*印は、Dunnett検定において、コントロール群(数値を100.0)との比較による有意差(p<0.05)を示す。ペパーミント抽出液及びミル抽出液の添加により、コントロール群に比べ、有意な口腔繊維芽細胞の増殖効果が確認された。
【0090】
【表8】
【0091】
以上、本発明の実施の形態(実施例も含め)について、図面を参照して説明してきたが、本発明の具体的構成は、これに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、設計変更等があっても、本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、例えば、主にヒトなどの口腔ケア用製品及び口腔ケア用製品などとして利用される。